説明

プラットホームドア用安全装置

【課題】 従来より耐久性を向上することができるプラットホームドア用安全装置を提供する。
【解決手段】 プラットホームドア用安全装置30は、プラットホームドア20に設置されてプラットホームドア20の近傍に存在する物体を検出するタイムオブフライト方式の三次元センサ40と、入射光に対して反射光を減衰する光減衰部50とを備えており、三次元センサ40は、所定の範囲に赤外光を発する複数のLEDと、複数のLEDから発せられて物体によって反射された赤外光を受ける複数の受光素子とを備えており、複数の受光素子は、前記所定の範囲のうち各々の担当の範囲からの光を受け、複数のLEDは、複数の受光素子の各々の担当の範囲に光を同時に発し、光減衰部50は、複数のLEDから発せられた赤外光の少なくとも一部が入射する位置に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホームドアに設置されてプラットホームドアの近傍に存在する物体を検出するプラットホームドア用安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラットホームドア用安全装置として、所要の角度でレーザー光を走査させて扇状の検知エリアを形成する距離画像センサユニットを備えており、距離画像センサユニットによってプラットホームドアの近傍に存在する物体を検出する自動ドア用安全装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−294053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプラットホームドア用安全装置は、レーザー光を走査するための機械的な部分が存在するので耐久性が低いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来より耐久性を向上することができるプラットホームドア用安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラットホームドア用安全装置は、プラットホームドアに設置されて前記プラットホームドアの近傍に存在する物体を検出するタイムオブフライト(TOF)方式の三次元センサと、入射光に対して反射光を減衰する光減衰部とを備えており、前記三次元センサは、所定の範囲に光を発する発光部と、前記発光部から発せられて前記物体によって反射された光を受ける複数の受光素子とを備えており、前記複数の受光素子は、前記所定の範囲のうち各々の担当の範囲からの光を受け、前記発光部は、前記複数の受光素子の各々の担当の範囲に光を同時に発し、前記光減衰部は、前記発光部から発せられた光の少なくとも一部が入射する位置に配置されていることを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明のプラットホームドア用安全装置は、光を走査するための機械的な部分が必要ないので、従来より耐久性を向上することができる。また、本発明のプラットホームドア用安全装置は、所定の範囲に存在する物体を同時に検出するので、従来より高速に物体を検出することができる。なお、本発明のプラットホームドア用安全装置は、光減衰部を備えていない場合、発光部から発せられてプラットホームドアなど、本来の検出対象の物体以外の物体で反射した光が三次元センサ内で複雑に反射して本来受けられるべき受光素子以外の受光素子にも受けられてしまい、結果として物体を誤検出してしまう可能性がある。しかしながら、本発明のプラットホームドア用安全装置は、発光部から発せられた光の少なくとも一部が入射する位置に配置されている光減衰部を備えているので、このような誤検出を抑えることができる。
【0008】
また、本発明のプラットホームドア用安全装置の前記光減衰部は、入射光を拡散することによって入射光に対して反射光を減衰しても良い。
【0009】
この構成により、本発明のプラットホームドア用安全装置は、光減衰部が入射光を吸収することによって入射光に対して反射光を減衰する構成と比較して、光減衰部の色の自由度が高いので、プラットホームドアのデザインへの影響を抑えることができる。
【0010】
また、本発明のプラットホームドア用安全装置の前記光減衰部は、入射光を拡散する透明なシートであっても良い。
【0011】
この構成により、本発明のプラットホームドア用安全装置は、光減衰部が目立つことを抑えることができるので、プラットホームドアのデザインへの影響を抑えることができる。
【0012】
また、本発明のプラットホームドア用安全装置の前記三次元センサは、前記プラットホームドアの線路側に配置されていても良い。
【0013】
この構成により、本発明のプラットホームドア用安全装置は、プラットホームドアと車両とによって挟まれた狭い空間で発光部が所定の範囲に光を発するので、光減衰部の有効性が高い。
【0014】
本発明のプラットホームドア用安全装置の前記三次元センサは、前記プラットホームドアの戸袋に固定されており、前記光減衰部は、前記三次元センサが固定されている前記戸袋に少なくとも配置されていても良い。
【0015】
この構成により、本発明のプラットホームドア用安全装置は、発光部から近い戸袋に光減衰部が配置されているので、光減衰部の有効性が特に高い。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプラットホームドア用安全装置は、従来より耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るプラットホームドア用安全装置が設置されたプラットホームの側面図である。
【図2】図1に示すプラットホームの一部の平面図である。
【図3】図1に示す三次元センサの正面図である。
【図4】三次元センサの検出の領域を示した図1に示すプラットホームの側面図である。
【図5】三次元センサの検出の領域を示した図1に示すプラットホームの一部の平面図である。
【図6】図1に示す赤外線拡散シートの一部の拡大図である。
【図7】図1に示す三次元センサの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
まず、本実施の形態に係るプラットホームドア用安全装置の構成について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るプラットホームドア用安全装置30が設置されたプラットホーム10の側面図である。図2は、プラットホーム10の一部の平面図である。
【0021】
図1および図2に示すように、プラットホーム10には、プラットホームドア20が設置されている。
【0022】
プラットホームドア20は、ドア本体21、22と、ドア本体21、22をそれぞれ収納する戸袋23、24とを備えている。戸袋23、24には、ドア本体21、22をそれぞれ駆動する図示していない駆動部が内部に収納されている。
【0023】
プラットホームドア用安全装置30は、プラットホームドア20に設置されてプラットホームドア20の近傍に存在する物体を検出するタイムオブフライト方式の三次元センサ40と、入射される赤外光を拡散することによって、入射される赤外光に対して反射される赤外光を減衰する光減衰部50とを備えている。
【0024】
三次元センサ40は、プラットホームドア20の戸袋23の線路側に固定されており、カバー60によって覆われている。
【0025】
図3は、三次元センサ40の正面図である。図4は、三次元センサ40の検出の領域40aを示したプラットホーム10の側面図である。図5は、三次元センサ40の検出の領域40aを示したプラットホーム10の一部の平面図である。
【0026】
図3〜図5に示すように、三次元センサ40は、斜線で示した領域40aを検出するために所定の角度の範囲40bに赤外光を発する発光部である複数のLED(Light Emitting Diode)41と、複数のLED41から発せられて物体によって反射された赤外光を受ける複数の受光素子42と、受光素子42の前に配置されているバンドパスフィルタ43とを備えている。
【0027】
複数のLED41は、複数の受光素子42を囲むように配置されている。LED41は、所定の波長の赤外光のみを発するものである。
【0028】
複数の受光素子42は、上下左右に整列して配置されていて、範囲40bのうち各々の担当の範囲からの光を受ける。複数のLED41は、複数の受光素子42の各々の担当の範囲に光を同時に発する。
【0029】
バンドパスフィルタ43は、LED41が発する赤外光の波長を含む所定の範囲の波長の赤外光のみを通すものである。
【0030】
三次元センサ40としては、例えば、スイスMESA社製のSR4000を採用することができる。
【0031】
図1および図2に示すように、光減衰部50は、三次元センサ40が固定されている戸袋23に配置されている赤外線拡散シート51と、三次元センサ40を覆っているカバー60に配置されている赤外線拡散シート52とを備えている。なお、光減衰部50は、赤外線拡散シート51、52以外にも、プラットホーム10上など、LED41から発せられた赤外光の少なくとも一部が入射する位置に配置されている赤外線拡散シートを備えていても良い。特に、光減衰部50は、三次元センサ40の近傍に配置されていると良い。
【0032】
図6は、赤外線拡散シート51の一部の拡大図である。
【0033】
赤外線拡散シート51は、入射される赤外光を拡散する透明なシートである。図6に示すように、赤外線拡散シート51は、表面に様々な大きさおよび間隔で凹凸が形成されており、入射光を拡散することによって入射光に対して反射光を減衰するシートである。なお、赤外線拡散シート51について述べたが、赤外線拡散シート52についても同様である。
【0034】
次に、プラットホームドア用安全装置30の動作について説明する。
【0035】
プラットホームドア用安全装置30は、プラットホームドア20が閉じたときなどに、三次元センサ40の複数のLED41から図4および図5に示すように範囲40bに赤外光を発する。
【0036】
次いで、プラットホームドア用安全装置30は、複数のLED41から発せられて物体によって反射された赤外光を複数の受光素子42によって受ける。
【0037】
ここで、複数のLED41から発せられた赤外光は、直接、または、他の物体で反射してから、赤外線拡散シート51、52に到達すると、赤外線拡散シート51、52によって拡散される。つまり、赤外線拡散シート51、52に到達した赤外光は、複数の受光素子42に到達しないほど光量が減衰されるか、大幅に光量が減衰されて複数の受光素子42に到達する。
【0038】
最後に、プラットホームドア用安全装置30は、複数のLED41から赤外光を発した時間と、複数の受光素子42がそれぞれ赤外光を受けた時間との差に基づいて、物体の有無と、その三次元の位置とを検出する。
【0039】
以上に説明したように、プラットホームドア用安全装置30は、赤外光を走査するための機械的な部分が必要ないので、従来より耐久性を向上することができる。
【0040】
また、プラットホームドア用安全装置30は、範囲40bに存在する物体を同時に検出するので、従来より高速に物体を検出することができる。
【0041】
なお、プラットホームドア用安全装置30は、光減衰部50を備えていない場合、LED41から発せられてプラットホームドア20など、本来の検出対象の物体以外の物体で反射した赤外光が三次元センサ40内で複雑に反射して本来受けられるべき受光素子42以外の受光素子42にも受けられてしまい、結果として物体を誤検出してしまう可能性がある。
【0042】
例えば、図7に示すように、LED41(図3参照。)から発せられてプラットホームドア20の戸袋23で反射した赤外光40cは、三次元センサ40内のレンズ44で一部が反射して赤外光40dを発生させる。赤外光40cは、複数の受光素子42のうち、本来受けられるべき受光素子42aに受けられる。一方、赤外光40dは、複数の受光素子42のうち、本来受けられるべき受光素子42a以外の受光素子42bに受けられてしまう。ここで、受光素子42bは、本来受けるべき赤外光40eを受けたとしても、赤外光40dが赤外光40eよりも進んできた距離が短く光量が大きいため、赤外光40dの影響を強く受けてしまう。したがって、三次元センサ40は、受光素子42bが受けた赤外光40dに基づいて、赤外光40eが進んできた方向において三次元センサ40の近傍に物体が存在すると誤検出してしまう。
【0043】
しかしながら、プラットホームドア用安全装置30は、LED41から発せられた赤外光の少なくとも一部が入射する位置に配置されている光減衰部50を備えているので、このような誤検出を抑えることができる。
【0044】
なお、LED41から発せられて本来の検出対象の物体以外の物体で反射した赤外光が三次元センサ40内で複雑に反射して本来受けられるべき受光素子42以外の受光素子42にも受けられることを防止する方法としては、そのような赤外光が三次元センサ40内に入り込むことを防止するフードを三次元センサ40に取り付ける方法もある。ところが、そのようなフードを三次元センサ40に取り付けると、フードの存在によって三次元センサ40自身の防水、防滴、防塵などの対策が採り難くなったり、複数の受光素子42の画角がフードによって狭くなったり、フードの存在によって全体が大きくなるため三次元センサ40の設置位置が制限されたりするなど、種々の問題が発生する。しかしながら、プラットホームドア用安全装置30は、光減衰部50を備えており、三次元センサ40にフードを取り付ける必要がないので、これらの問題の発生を防止することができる。
【0045】
以上においては、赤外光が三次元センサ40内のレンズ44で反射する例について説明しているが、赤外光は、レンズ44以外にも、三次元センサ40内の種々の構成によって複雑に反射され得る。
【0046】
また、プラットホームドア用安全装置30は、光減衰部50が入射光を拡散することによって入射光に対して反射光を減衰する構成であるので、光減衰部50が入射光を吸収することによって入射光に対して反射光を減衰する構成と比較して、光減衰部50の色の自由度が高い。したがって、プラットホームドア用安全装置30は、プラットホームドア20のデザインへの影響を抑えることができる。
【0047】
また、プラットホームドア用安全装置30は、光減衰部50が入射光を拡散する透明なシートであるので、光減衰部50が目立つことを抑えることができる。したがって、プラットホームドア用安全装置30は、プラットホームドア20のデザインへの影響を抑えることができる。
【0048】
また、プラットホームドア用安全装置30は、三次元センサ40がプラットホームドア20の線路側に配置されており、プラットホームドア20と車両90とによって挟まれた狭い空間で複数のLED41が範囲40bに光を発するので、光減衰部50の有効性が高い。
【0049】
また、プラットホームドア用安全装置30は、複数のLED41から近い戸袋23に光減衰部50が配置されているので、光減衰部50の有効性が特に高い。
【0050】
なお、光減衰部50は、本実施の形態において赤外線拡散シートであるが、赤外光を減衰する構成であれば、赤外線拡散シート以外の構成であっても良い。例えば、光減衰部50は、赤外光を拡散する塗料が塗装されることによって構成されていても良い。
【0051】
また、光減衰部50は、本実施の形態において、赤外光を拡散することによって、入射される赤外光に対して反射される赤外光を減衰する構成であるが、赤外光を吸収することによって、入射される赤外光に対して反射される赤外光を減衰する構成であっても良い。例えば、光減衰部50は、赤外光を吸収する赤外線吸収シートによって構成されていても良いし、赤外光を拡散する塗料が塗装されることによって構成されていても良い。
【0052】
また、プラットホームドア用安全装置30は、本実施の形態において赤外光を利用しているが、紫外光、可視光など、赤外光以外の光を利用するようになっていても良い。
【符号の説明】
【0053】
20 プラットホームドア
23 戸袋
30 プラットホームドア用安全装置
40 三次元センサ
40b 範囲
40c 赤外光
40d 赤外光
40e 赤外光
41 LED(発光部)
42 受光素子
42a 受光素子
42b 受光素子
50 光減衰部
51、52 赤外線拡散シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームドアに設置されて前記プラットホームドアの近傍に存在する物体を検出するタイムオブフライト方式の三次元センサと、入射光に対して反射光を減衰する光減衰部とを備えており、
前記三次元センサは、所定の範囲に光を発する発光部と、前記発光部から発せられて前記物体によって反射された光を受ける複数の受光素子とを備えており、
前記複数の受光素子は、前記所定の範囲のうち各々の担当の範囲からの光を受け、
前記発光部は、前記複数の受光素子の各々の担当の範囲に光を同時に発し、
前記光減衰部は、前記発光部から発せられた光の少なくとも一部が入射する位置に配置されていることを特徴とするプラットホームドア用安全装置。
【請求項2】
前記光減衰部は、入射光を拡散することによって入射光に対して反射光を減衰することを特徴とする請求項1に記載のプラットホームドア用安全装置。
【請求項3】
前記光減衰部は、入射光を拡散する透明なシートであることを特徴とする請求項2に記載のプラットホームドア用安全装置。
【請求項4】
前記三次元センサは、前記プラットホームドアの線路側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載のプラットホームドア用安全装置。
【請求項5】
前記三次元センサは、前記プラットホームドアの戸袋に固定されており、
前記光減衰部は、前記三次元センサが固定されている前記戸袋に少なくとも配置されていることを特徴とする請求項4に記載のプラットホームドア用安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192790(P2012−192790A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56999(P2011−56999)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】