説明

プラットホームドア装置

【課題】プラットホームに容易に設置可能なプラットホームドア装置を提供する。
【解決手段】プラットホームPHに設けられ、鉄道車両の乗降口に対応して出入口を形設するプラットホームドア装置であって、プラットホームPHの側縁部に沿って並設され、線路側に向けて凸となる湾曲形状に形成されて、側縁部よりも外側において上下方向に回転開閉する複数のドア2と、湾曲形状に形成され、ドア2の移動をガイドするガイドレール25と、を備え、ガイドレール25の湾曲形状部を、ドア2に取り付けたガイドローラ23で挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホームに設けられ、鉄道車両の乗降口に対応して出入口を形設するプラットホームドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでプラットホームに設置するドア装置としては、横開きスライド式のものが多く開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、横開きスライド式のドア装置の場合、ドア格納部として固定設置部分が必要となることや、予め開閉位置が決まってしまうため、車両の停止位置のずれや乗車口位置の異なる車両の入線等に対応しづらいという問題がある。この問題に対処したものとして、複数のレールを備えてドアを選択的に動かし、間口をフレキシブルに形成する横開きスライド式のドア装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に記載のドア装置では、既設のプラットホームに設置するに際してプラットホームの改造コストが高くなりやすい。
【0003】
一方、横開き式ではなく、ドアを上下方向に開閉させるタイプのドア装置が特許文献3に記載されている。このドア装置でも、ドアを選択的に開くことで間口をフレキシブルに形成できる。
【特許文献1】特開平6−239223号公報
【特許文献2】特開2004−196040号公報
【特許文献3】特開2004−268634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3に記載のドア装置は、ドアをプラットホームに形成した凹部に格納させる構造であり、やはり、ドア装置を設置するに際してプラットホームの改造コストが高くなりやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解消するために創作されたものであり、プラットホームに容易に設置可能なプラットホームドア装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、プラットホームに設けられ、鉄道車両の乗降口に対応して出入口を形設するプラットホームドア装置であって、プラットホームの側縁部に沿って並設され、線路側に向けて凸となる湾曲形状に形成されて、前記側縁部よりも外側において上下方向に回転開閉する複数のドアと、湾曲形状に形成され、前記ドアの移動をガイドするガイドレールと、を備え、前記ガイドレールの湾曲形状部を、前記ドアに取り付けたガイドローラで挟持する構成としたことを特徴とするプラットホームドア装置とした。
【0007】
このプラットホームドア装置によれば、プラットホームの側縁部よりも外側にドアを配する構造のため、プラットホーム上にドア格納用の凹部を設ける必要がない。したがって、既設のプラットホームに対してさほど改造工事を施すことなくプラットホームの側縁部周りにプラットホームドア装置を容易に設置できる。そして、ガイドレールの湾曲形状部をガイドローラで挟持する構成とすることにより、湾曲形状のドアを回転開閉させるにあたり、部品点数が少なく、組み付け性に優れた開閉ガイド構造となる。
【0008】
また、本発明においては、前記ガイドレールを挟持する一対のガイドローラは一体的に揺動可能に構成されていることを特徴とするプラットホームドア装置とした。
【0009】
ガイドレールを湾曲形状に加工する場合、局部的な変形が生じやすい。この問題に対して、本発明のプラットホームドア装置によれば、ガイドレールが局部的に変形している場合であっても、変形箇所に追従するように一対のガイドローラがガイドレールの挟持部を中心に揺動し、ガイドレールの変形分を吸収する。各ガイドローラを独立に可変させる構造とした場合には、各ガイドローラの動きが一様でなく、ドアの回転軌跡がぶれやすくなるのに対し、一対のガイドローラを一体的に揺動させることで、ドアの回転軌跡を大きく逸脱することなく維持でき、ドアをスムースに回転開閉させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラットホームドア装置を設置するにあたり設置工数の低減が図れ、また、湾曲形状のドアを回転開閉させるにあたり、部品点数が少なく、組み付け性に優れた開閉ガイド構造となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1、図2はそれぞれ本発明に係るプラットホームドア装置を線路側から見た場合とプラットホーム側から見た場合の外観斜視図であり、各(a)はドアが全て閉じた状態、各(b)は一部のドアが開いた状態を示している。
【0012】
プラットホームドア装置1は、鉄道車両の乗降口に対応して出入口を形設するものであって、プラットホームPHの側縁部Sに沿って並設され、側縁部Sよりも外側(線路側)において上下方向に開閉する複数のドア2と、ドア2毎に設けられ、プラットホームPHの側縁部Sよりも外側(線路側)において開閉するドア通過用のステップ3と、を有する。ドア2は、上下方向に長尺の矩形状部材であり、ステップ3が上方に回転すると同時に、側縁部Sよりも外側において上下に昇降する構造である。ドア2が上昇して閉じた際、ドア2の上端は概ね成人男子の胸辺りの高さ程度に位置する。開いた状態ではドア2全体が側縁部Sの下方に格納される。後に詳述するが、符号4は各ドア2の駆動機構5(図8)等を覆うカバーであり、同機構等の防水、防塵機能等を有するほか、対向プラットホーム上からの視線に対して意匠板としての機能も担う。
【0013】
通常時、ドア2は図1(a)や図2(a)のように全て閉じており、車両が進入してきて停車すると、車両の乗降口に対向したドア2が開く。本実施形態では、1つの乗降口に対し複数のドア2が開く構成である。ドア2の幅寸法は適宜に決められるが、例としては間口寸法1.5メートルの車両の乗降口に対し、4枚程度開いて対応できる寸法とする。図3は車両の乗降口に対応して複数のドア2を開けた場合を示す平面図であり、(a)は車両が正規な位置に停車した場合を示し、このとき4枚のドア2a〜2dが開く。同じ車両が正規な位置から若干ずれて停車し、ドア2a〜2dで対応しきれない場合には、(b)に示すように乗降口に対向する5枚のドア2a〜2eを開くようにする。ドア2の幅寸法(ピッチ)を小さくするほど、乗降口の位置や間口寸法の異なる全ての車両に対し、ドア2の出入り口の間口寸法を乗降口の間口寸法に合わせることができる。
【0014】
図4はステップ3の外観斜視図、図5はドア2が閉じた状態の側面説明図である。ステップ3は、前記したようにプラットホームPHの側縁部Sよりも外側(線路側)において開閉するように設けられている。ステップ3は側縁部Sに沿う水平軸回りに回転開閉する構造であり、側縁部S寄りを回転基端部として回転する。ドア2が下降しているとき、つまりドア2の開状態においては、ステップ3は、そのステップ面3aが水平となってプラットホームPHと略面一に連なり、先端が車両の乗降口に向けて延設され、乗降の際の踏み板となる。この状態がステップ3の閉状態である。
【0015】
ドア2が上昇しているとき、つまりドア2の閉状態においては、図5からも判るように、ステップ3はドア2よりもホーム内側において上方かつホーム方向に回転した状態となる。この状態がステップ3の開状態である。ステップ3をプラットホームPHの端からホーム中央へ向けて回転させる構成とすることにより、駆け込み乗車時の足元の規制機能を持たせることができ、手前にせりあがるように回転するため心理的にも駆け込み乗車を抑制できる。
【0016】
このように、プラットホームPHの側縁部Sに沿って並設され、側縁部Sよりも外側において上下方向に開閉する複数のドア2と、ドア2毎に設けられ、プラットホームPHの側縁部Sよりも外側において開閉するドア通過用のステップ3と、を有する構成とすれば、プラットホームPH上にドア格納用の凹部を設ける必要がないため、プラットホームPHに対してさほど改造工事を施すことなくプラットホームPHの側縁部S周りにプラットホームドア装置1を容易に設置できる。例えば、後記するように図8の駆動機構5や連結機構6、ガイドレール25等を側縁部Sの下方空間に配することで容易な設置工事が可能となり、特にこれら駆動機構5等を筐体26に収装してワンユニット化し、これを側縁部Sの下方空間に設置する構造とすれば、設置作業の効率化が図れる。
【0017】
なお、ステップ3を平板から構成した場合、隣接し合う2つのステップ3において、一方のみが上方に回転したときには、その回転したステップ3の側部に隙間が形成されることになる。この隙間が大きい場合には、ステップ3に一対の側板3bを形成し、隣のステップ3との間に生じる隙間をこの側板3bで閉塞する構造とすればよい。側板3bの形状はドア2と干渉しないようにして隙間形状に合わせて適宜に決められる。
【0018】
本実施形態において、ドア2は線路側に向けて凸となる湾曲形状に形成されている。湾曲形状例としては、経済性や意匠性を考慮して、上端から下端までにわたり一定の曲率半径を有する形状とする。曲率半径の中心位置は、例えばプラットホームPHの面上、或いは面近傍とする。ドア2を湾曲形状とした場合、開閉動作としては直線移動ではなく、湾曲形状に沿って回転開閉する構成とすることが望ましい。つまり、ドア2を一定の曲率半径の形状とした場合には、ドア2をその曲率中心回りに回転開閉させる。これにより、ドア2の移動に要するスペースも小さくて済み、動的意匠も美しいものになる。
【0019】
ドア2は、最も上昇したときにおいて、その上端がプラットホームPHの側縁部Sよりもホーム内側に位置している。図5には、ドア2の上端と側縁部Sとのホーム幅方向における距離を符号Lで示している。このように、ドア2が上昇したときにおいて、その上端を側縁部Sよりもホーム内側に位置させるレイアウトとすれば、上半身がドア2の上端部で規制されることにより、上半身の側縁部Sから線路側へのはみ出しが防止される。しかも、足元のスペースは側縁部Sまで使えるため、混雑時等において足元が窮屈になることもない。
【0020】
ドア2の一構造例について図6、図7を参照して説明する。なお、以降、ドア2の両面に関してプラットホーム側に臨む面を内面といい、線路側に臨む面を外面という。図6において、(a)は内面側から見たドア2の正面図、(b)は側断面図、図7(a)、(b)はそれぞれ図6(a)におけるA−A断面図、B−B断面図である。また、図7(c)は重なり代Wを設ける際の変形例を示す平断面説明図である。
【0021】
ドア2は、型材から構成される矩形状の枠組み11に、内面パネル12および外面パネル13を取り付けた構造からなる。枠組み11を構成する型材としては、アルミニウム合金の押出し型材が好適である。ドア2の大きさに合わせて枠組み11には適宜に補強用の梁14、15が設けられる。枠組み11に対する内面パネル12、外面パネル13の取り付け態様としては、図6、図7に示すように、枠組み11に形成された溝にパネル縁部を嵌め込む方法の他、ねじ止めや接着剤を用いる方式などが挙げられる。内面パネル12、外面パネル13は、意匠面を構成するものであって、合成樹脂板やガラス板、金属板等から構成され、特に合成樹脂板とする場合にはアクリル樹脂板が好適である。また、無色透明、有色透明の合成樹脂板やガラス板を使用した場合には、線路側に対する視界を確保できる。図6(b)に示すように、外面パネル13はドア2の上端から下端までにわたって取り付けられ、内面パネル12はプラットホーム上に臨む部位にだけ取り付けられる。
【0022】
以上のように、ドア2を、一定形状を呈する板状構造体から構成することで、蛇腹式等の形状が可変するドア構造に比して、製作コストの低減や組み付けの簡略化等が図れ、経済的なプラットホームドア装置1となる。
【0023】
また、図7(a)に示すように、隣接するドア2同士の側部に重なり代Wを設ければ、ドア2を正面視した際に見えるドア2間の隙間を確実に塞ぐことができるため、風の吹き通しを防止できる。ここでいう重なり代Wとは勿論、ドア2の幅方向に関する重なり代を指すものである。重なり代Wを設けるにあたっては、図7(c)のように、ドア2の側部周りを単に2枚重ねする構造も考えられるが、この構造では、大きな風圧を受けた場合にドア2がぶれやすい。これに対して図7(a)に示すように、ドア2の一方の側部に形成した溝16に、他方の側部に形成した突部17を係合させる構造とすれば、大きな風圧を受けた場合であっても、突部17と溝16とがドア2の両側部で規制し合うためドア2のぶれや撓み等が抑制される。溝16、突部17の形成は、適宜な断面形状の型材(枠組み11)を使用することで容易に実現できる。このように、重なり代Wを有するようにドア2を並設させれば、ドア2のぶれを隣のドア2で規制できるため、プラットホーム上においてドア2間に別途に支柱等を設ける必要がない。したがって、ドア2を開いた際には、支柱等の通行障害物の無い出入り口を形成できる。
【0024】
図7(a)に示す重なり代Wにおいては、ドア2の製作誤差や組み付け誤差等を考慮してドア厚み方向のクリアランスC1が設けられている。図7(a)では、溝16にゴム材等からなる緩衝部材18を取り付けており、この場合のクリアランスC1は緩衝部材18と突部17との間隔として表される。クリアランスC1の寸法はなるべく小さい方が望ましいが、ドア2の上下にわたってクリアランスC1の寸法を一様に小さく設定すると、ドア2の製作誤差や組み付け誤差等によって重なり代Wにおいてドア2同士が干渉し、ドア2の開閉動作がスムースに行われないおそれがある。また、ドア2の上下にわたってクリアランスC1の寸法を一様に大きく設定すると、風圧を受けた際のドア2のぶれの許容量(ドア厚み方向の移動量)が大きくなる。
【0025】
この問題に対し、ドア上部のクリアランスC1をドア下部のクリアランスC1よりも小さく設定すれば、ドア2のスムースな開閉動作が可能となり、かつ、特に大きくぶれやすいドア2の上端のぶれ量を抑制できる。ドア2は後記するように、その下部に取り付けたガイドローラ23を介してガイドレール25に支持されているので、ドア2の下部は風圧によるぶれの影響を受けにくい。したがって、ドア下部のクリアランスC1を大きく設定してもさほど問題はない。以上のクリアランスC1の設定は、例えばドア2の上部における緩衝部材18の厚み寸法を下部におけるそれよりも大きくする等の方法により容易に実現できる。
【0026】
図6(a)、(b)及び図7(b)において、ドア2の下部における内面側左右には、それぞれ上下方向に延設するドア支持ブラケット19が取り付けられている。各ドア支持ブラケット19の上端周りと下端周りには、ドア2の幅方向を軸方向とする支軸20が形成され、この支軸20にローラ支持ブラケット21が回転可能に取り付けられている。各ローラ支持ブラケット21には、ドア2の幅方向を軸方向とする一対のローラ軸22が形成され、各ローラ軸22にガイドローラ23が回転可能に取り付けられている。つまり、一対のガイドローラ23は、ローラ支持ブラケット21を介して支軸20を中心に一体的に回転可能な構造となっている。さらに、ドア2の下部に設けられた梁15の内面側には、後記するカム機構28の長孔37を有する駆動伝達用のブラケット24が取り付けられている。
【0027】
次に、主に図8ないし図10を参照してドア2の駆動機構5について説明する。図8は駆動機構5の一部とガイドレール25を示す分解斜視図、図9において(a)は駆動機構5の側面図、(b)はドア2がガイドレール25に支持された状態を示す側面図、図10は図9(a)におけるC−C断面図である。
【0028】
駆動機構5やガイドレール25は、プラットホームPHの側縁部Sの下方空間に設置されるものであり、後記する連結機構6(図11)も含めて図8に示すように縦長の筐体26に収装される。これらの機構が収装された後、筐体26の前面開口部にはカバー4が取り付けられる。カバー4には、前記したドア支持ブラケット19とブラケット24を通すための切欠き4a、4bが設けられている。
【0029】
筐体26の内側には一対のガイドレール25が上下方向に延設するように取り付けられる。ドア2(図9(b))が所定の回転軌跡を描くように、ガイドレール25はドア2の湾曲形状に対応して湾曲形成されており、図9(b)に示すように、各一対のガイドローラ23でガイドレール25を挟持することで、ドア2はガイドレール25に沿って回転開閉する。
【0030】
このように、ガイドローラ23でガイドレール25の湾曲形状部を挟持することで、ドア2の回転開閉をガイドさせる構成とすれば、湾曲形状のドア2を回転開閉させるにあたり、部品点数が少なく、組み付け性に優れた開閉ガイド構造となる。また、既述したように、一対のガイドローラ23は支軸20を中心に一体的に回転可能な構造となっているので、ガイドレール25を挟持した際には、その挟持部を中心に一体的な揺動が可能な状態となる。したがって、図13に示すように、ガイドレール25が局部的に変形している場合であっても、変形箇所に追従するようにガイドローラ23がガイドレール25の挟持部を中心に揺動し、ガイドレール25の変形分を吸収する。各ガイドローラ23を独立に可変させる構造とした場合には、各ガイドローラ23の動きが一様でなく、ドア2の回転軌跡がぶれやすくなるのに対し、一対のガイドローラ23を一体的に揺動させることで、ドア2の回転軌跡を大きく逸脱することなく維持でき、ドア2をスムースに回転開閉させることができる。
【0031】
図8に示すように、駆動機構5は、直線移動する駆動スライダ27と、駆動スライダ27とドア2とを連結し、駆動スライダ27の直線運動をドア2の回転運動に変換するカム機構28とを備えている。筐体26内において、上下方向に延設するように支持板29が取り付けられ、この支持板29の上下にプーリ30、31が取り付けられる。プーリ30、31間には駆動スライダ27を固定したワイヤ32が掛け回される。ワイヤ32は上下方向中程において、駆動源であるモータ33の出力軸に軸着した巻き取りドラム34に巻回されている。なお図示しないが、ワイヤ32の経路上にはワイヤ32の方向をガイドするガイド部材が適宜に設けられる。支持板29には、駆動スライダ27の直線移動をガイドするスライダガイドレール35が上下方向に延設されるように取り付けられており、図10に示すように駆動スライダ27の一部がスライダガイドレール35に摺動自在に嵌合する。
【0032】
駆動スライダ27の一側面側にはカムピン36が突設され、このカムピン36が図9(a)にも示すように、ドア2のブラケット24に穿設されたカム溝(長孔)37に係合する。これらカムピン36、カム溝37が前記したカム機構28を構成する。駆動スライダ27側にカム溝37を形成し、ドア2側にカムピン36を設ける構成としても差し支えない。
【0033】
以上により、モータ33が正逆回転すると、巻き取りドラム34によってワイヤ32が正逆回動し、駆動スライダ27がスライダガイドレール35にガイドされて上下に直線移動する。その際、カムピン36がカム溝37内を移動しつつその孔壁を押圧することで、ドア2がガイドレール25にガイドされて回転開閉する。このように、湾曲形成されたガイドレール25と、直線移動する駆動スライダ27と、駆動スライダ27の直線運動をドア2の回転運動に変換するカム機構28とを有する構成とすれば、ドア2を回転開閉させるにあたり、部品点数が少なく、組み付け性に優れた駆動機構5となる。
【0034】
次に、ドア2とステップ3との連動構造について説明する。図11、図12は、それぞれレバー38および連結機構6の側面図、側面作用図である。図8に示した筐体26内における下方には、図11に示すように、水平方向の回転軸39回りに回転自在となるようにレバー38が取り付けられ、筐体26(図8)内における上方には、ロッド支持ブラケット40が取り付けられている。レバー38は、回転軸39への取り付け部周りを基端として略V字状に形成された部材からなり、一方のアーム38aの先端にはプッシュプルケーブル41の一端が取り付けられている。前記した駆動スライダ27の他側面側には押圧ピン42が突設されており、駆動スライダ27がその下限位置の近傍まで下降してきたとき、つまりドア2の下降終了の手前段階で、押圧ピン42は他方のアーム38bに当接してレバー38を回転させる。
【0035】
ロッド支持ブラケット40には、上下に離間した一対のロッドガイド44を介してロッド43が進退自在に取り付けられている。一対のロッドガイド44間において、ロッド43には鍔部43aが形成されていて、下方側のロッドガイド44と鍔部43aとに亘ってロッド43には圧縮コイルばね45が外嵌される。すなわち、圧縮コイルばね45は鍔部43aを介してロッド43を常に上方側に押し上げる付勢力を有するものであり、ステップ3を開く方向に常に付勢する付勢手段を構成する部材である。ロッド43の下端には、プッシュプルケーブル41の他端が取り付けられ、ロッド43の上端にはカムピン46が設けられている。ステップ3は、例えば図8に示すように筐体26の天板47に形成した支軸48回りに回転可能に取り付けられ、図11に示すように、その下面に取り付けたブラケット49のカム溝50に前記カムピン46が係合している。カムピン46とカム溝50とは、ロッド43の直線運動をステップ3の回転運動に変換するステップカム機構51を構成する。以上のプッシュプルケーブル41、直線移動するステップ駆動部材としてのロッド43、圧縮コイルばね45、ステップカム機構51が連結機構6の主な構成要素となる。
【0036】
ドア2とステップ3との連動作用について説明する。図11に示すように、ドア2が上昇しているときには、押圧ピン42とレバー38とは接触しておらず、圧縮コイルばね45の付勢力によりロッド43が上方に移動して、プッシュプルケーブル41がレバー38を図11における反時計回りに引っ張り、また、カムピン46がカム溝50の一端側に位置してステップ3が上方に回転した状態にある。
【0037】
図11の状態からドア2が下降すると、図12(a)に示すように、押圧ピン42がアーム38bの中程に接触し、次いで図12(b)に示すように、押圧ピン42がアーム38bを押し下げることでレバー38が時計回りに回転し、プッシュプルケーブル41によりロッド43が圧縮コイルばね45の付勢力に抗して引き下げられ、ステップカム機構51を介してステップ3が閉じていく。押圧ピン42が最下降位置に達したとき、ステップ3は完全に閉じる(図12(c)の状態)。ドア2が上昇していくときは、押圧ピン42が上昇することにより圧縮コイルばね45の付勢力が働き、ロッド43が押し上げられてステップ3が上方に回転する。
【0038】
ここで、図12(c)に示すように、押圧ピン42(駆動スライダ27)が最下降位置にあるとき、押圧ピン42は、レバー38のアーム38bに形成された摺動面38cに接している。押圧ピン42が摺動面38cに接しているとき、摺動面38cは押圧ピン42の直線移動軌跡と平行な面をなす。つまり、摺動面38cは、ドア2の最下降位置近傍において、駆動スライダ27におけるレバー38の押圧機能を解除し、駆動スライダ27を空走させるために形成される。これにより、ステップ3の動作とドア2の動作の始点と終点とが一致しない分を吸収できる。
【0039】
以上のように、ドア2の開閉動作によって回転するレバー38と、このレバー38とステップ3とを連結する連結機構6とを備える構成とすれば、簡易な構造でドア2とステップ3の各開閉動作を連動させることができる。また、連結機構6として、直線移動するステップ駆動部材(ロッド43)と、このステップ駆動部材(ロッド43)の直線運動をステップの回転運動に変換するステップカム機構51とを備える構成とすれば、より一層、簡易な構造でドア2とステップ3の各開閉動作を連動させることができる。さらにプッシュプルケーブル41を用いることで、ステップ3やロッド43に対するレバー38のレイアウトの自由度が広がることになる。
【0040】
また、ステップ3を開く方向に常に付勢する付勢手段(圧縮コイルばね45)を備え、ドア2が下降するとき、付勢手段(圧縮コイルばね45)の付勢力に抗してレバー38を回転させることによりステップ3を閉じ、ドア2が上昇するとき、付勢手段(圧縮コイルばね45)の付勢力によりステップ3を開く構成とすれば、簡易な構造でドア2とステップ3の各開閉動作を連動させることができる。そして、プッシュプルケーブル41が切断するなどの緊急時にあっては、ステップ3はその付勢力により上方に回転することになる。したがって、装置の故障時にあっても起立したステップ3によりホーム端への乗降客の移動が規制され、乗降客の安全が確保される。
【0041】
以上、本発明について好適な実施形態を説明した。本発明は、図面に記載したものに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るプラットホームドア装置を線路側から見た場合の外観斜視図であり、(a)はドアが全て閉じた状態、(b)は一部のドアが開いた状態である。
【図2】本発明に係るプラットホームドア装置をプラットホーム側から見た場合の外観斜視図であり、(a)はドアが全て閉じた状態、(b)は一部のドアが開いた状態である。
【図3】車両の乗降口に対応して複数のドアを開けた場合を示す平面図である。
【図4】ステップの外観斜視図である。
【図5】ドアが閉じた状態の側面説明図である。
【図6】(a)は内面側から見たドアの正面図、(b)はドアの側断面図である。
【図7】(a)、(b)はそれぞれ図6(a)におけるA−A断面図、B−B断面図である。(c)は重なり代を設ける際の変形例を示す平断面説明図である。
【図8】駆動機構の一部とガイドレールを示す分解斜視図である。
【図9】(a)は駆動機構の側面図、(b)はドアがガイドレールに支持された状態を示す側面図である。
【図10】図9(a)におけるC−C断面図である。
【図11】レバーおよび連結機構の側面図である。
【図12】レバーおよび連結機構の側面作用図である。
【図13】ガイドローラの側面作用図である。
【符号の説明】
【0043】
1 プラットホームドア装置
2 ドア
3 ステップ
4 カバー
5 駆動機構
6 連結機構
23 ガイドローラ
25 ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームに設けられ、鉄道車両の乗降口に対応して出入口を形設するプラットホームドア装置であって、
プラットホームの側縁部に沿って並設され、線路側に向けて凸となる湾曲形状に形成されて、前記側縁部よりも外側において上下方向に回転開閉する複数のドアと、
湾曲形状に形成され、前記ドアの移動をガイドするガイドレールと、
を備え、
前記ガイドレールの湾曲形状部を、前記ドアに取り付けたガイドローラで挟持する構成としたことを特徴とするプラットホームドア装置。
【請求項2】
前記ガイドレールを挟持する一対のガイドローラは一体的に揺動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラットホームドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−279943(P2008−279943A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127078(P2007−127078)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(390023917)八千代工業株式会社 (186)
【Fターム(参考)】