説明

プラント制御システム、イコライズデータ選択装置、および、イコライズデータ選択方法

【課題】冗長系システムにおいてイコライズするデータを効率的に選択させること。
【解決手段】支援装置1は、候補データの変数を、変数ごとにリストとして提示して、そのリストから同一化対象データを選択させる対象選択部11と、制御用プログラムを構成する機能素子ごとに、その機能素子が扱う各変数のデータが同一化対象データの候補データとして記憶されている対象一覧テーブル12と、選択された同一化対象データの特定情報である変数ごとのイコライズ可否情報を運転系制御装置2と待機系制御装置3とにそれぞれ通知して、運転系制御装置2から待機系制御装置3への同一化対象データの変数ごとの同一化処理を実行させる対象通知部13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イコライズデータ選択装置、および、イコライズデータ選択方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
冗長系システムでは、複数の装置が並行して動作しており、ある装置が故障したときには、別の装置が動作を引き継ぐことにより、高信頼性を実現する。冗長系システムにおいては、ある装置内のデータを別の装置へとコピーする処理が、データの同一化を示すイコライズ(equalize)処理として、一般に行われている(特許文献1〜3など)。このイコライズ処理により、計算途中のデータを別の装置へと引き継ぐことができるので、冗長系システムでの動作移行を円滑に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−236006号公報
【特許文献2】特開2005−327284号公報
【特許文献3】特開平8−328891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冗長系システムにおけるイコライズするデータとして、全てのデータをイコライズしてしまうと、イコライズ処理が冗長系システムの本処理(プラント制御処理など)を圧迫してしまう。よって、冗長系システムが有するデータの中から、必要なデータだけをイコライズ対象として選択する必要がある。
【0005】
しかし、従来の技術(特許文献1〜3)では、イコライズするデータをユーザに正しくかつ効率的に選択する仕組みを提供していないため、イコライズするデータの選択漏れや、余分な選択を行ってしまうことがあり、効率的かつ高信頼なイコライズ処理を実現できていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、冗長系システムにおいてイコライズするデータを効率的に選択させることを、主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、プラントシステムを制御するための制御用プログラムをそれぞれ実行する運転系制御装置と待機系制御装置とで冗長化されているシステムにおいて、前記運転系制御装置内の制御用データを、前記待機系制御装置内の制御用データとして同一化するときに、その同一化対象データを選択するイコライズデータ選択装置であって、
前記制御用プログラムを構成する機能素子ごとに、その機能素子が扱う各変数のデータが前記同一化対象データの候補データとして記憶されている記憶手段と、
前記記憶手段から読み込んだ前記候補データの変数を、変数ごとにリストとして提示して、そのリストから前記同一化対象データを選択させる対象選択手段と、
選択された前記同一化対象データの特定情報である変数ごとのイコライズ可否情報を前記運転系制御装置と前記待機系制御装置とにそれぞれ通知して、前記運転系制御装置から前記待機系制御装置への前記同一化対象データの変数ごとの同一化処理を実行させる対象通知手段と、を有することを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冗長系システムにおいてイコライズするデータを効率的に選択させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に関する制御システムを示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に関する制御システムの各装置を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に関する制御システムで動作するユーザプログラムを示す構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に関するユーザプログラムの構成要素とイコライズ対象との関係を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に関する制御システムにおけるイコライズ処理の概要を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に関するイコライズ対象の選択画面(メイン画面)を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に関するイコライズ対象の選択処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に関するイコライズ対象の選択画面(サブ画面)を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施形態に関する制御システムにおけるイコライズ処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、制御システムを示す構成図である。制御システムは、制御側の各装置(支援装置1、運転系制御装置2、待機系制御装置3、運転系入出力装置2a、待機系入出力装置3a)と、被制御側のプラントシステム4とがネットワークで接続されて構成されている。
なお、制御側の各装置は、CPU(Central Processing Unit)とメモリとハードディスク(記憶手段)とネットワークインタフェースを有するコンピュータとして構成され、このコンピュータは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラムを実行することにより、各処理部を動作させる。
【0012】
各制御装置(運転系制御装置2、待機系制御装置3)は、プラントシステム4との間で制御用データをやりとりするユーザプログラムを動作させることで、プラントシステム4を制御する装置である。なお、後記する図3では、ユーザプログラムを、FBD(Function Block Diagram)で記載されたシートとして例示している。
図1では、制御装置が運転系と待機系というように2台の装置として冗長化されており、メインに動作する運転系制御装置2に対して障害が発生したときには、待機系制御装置3が動作を引き継ぐ。
運転系制御装置2は、プラントシステム4からのデータ(例えば、センサによる計測データ)を運転系入出力装置2aを介して読み込むとともに、正常時にはプラントシステム4へのデータ(例えば、モータの回転数などの制御用データ)を書き出す。
待機系制御装置3は、プラントシステム4からのデータを待機系入出力装置3aを介して読み込むとともに、運転系制御装置2の障害時にはプラントシステム4へのデータを運転系制御装置2に代行して書き出す。
なお、運転系制御装置2から待機系制御装置3への引き継ぎ契機としては、例えば、運転系制御装置2や運転系入出力装置2aが扱うデータに異常値が発見されたときとする。
【0013】
支援装置1は、各制御装置上で動作するユーザプログラムが扱うデータのうち、運転系制御装置2から待機系制御装置3へイコライズ(データコピー)するデータを、イコライズ対象としてユーザに指定させ、その指定させたデータのイコライズを各制御装置に指示する。
プラントシステム4は、例えば、火力・原子力などの発電制御監視システムや交通制御監視システム、上下水制御監視システム、鉄鋼や化学プラントなどの産業制御監視システムの制御対象や監視対象となる各システムである。
【0014】
図2は、制御システムの各装置を示す構成図である。
支援装置1は、対象選択部11と、対象一覧テーブル12と、対象通知部13と、変数個数テーブル14とを含めて構成される。
運転系制御装置2は、管理テーブル作成部21と、送信管理テーブル22と、データ送信部23と、送信バッファ24と、送信側ワーク領域25と、送信側実行部26とを含めて構成される。
待機系制御装置3は、管理テーブル作成部31と、受信管理テーブル32と、データ受信部33と、受信バッファ34と、受信側ワーク領域35と、受信側実行部36とを含めて構成される。待機系制御装置3は、運転系制御装置2が正常に動作しているときに、並行して動作する装置である。
【0015】
対象選択部11は、イコライズ対象の指定画面(図6,図8)を介してユーザからイコライズ対象に関する情報を指定させ、その結果を対象一覧テーブル12(詳細は表1で後記)に書き出す。
対象通知部13は、対象一覧テーブル12内のイコライズ対象を、管理テーブル作成部21および管理テーブル作成部31にそれぞれ通知する。ここで、対象通知部13は、変数個数テーブル14(詳細は表2で後記)から取得したイコライズ対象の変数に関する情報も含めて、通知する。
【0016】
管理テーブル作成部21は、対象通知部13から通知されたイコライズ対象について、送信側ワーク領域25内のアドレスに対応づけて送信管理テーブル22(詳細は表3で後記)に書き出す。
同様に、管理テーブル作成部31は、対象通知部13から通知されたイコライズ対象について、受信側ワーク領域35内のアドレスに対応づけて受信管理テーブル32(詳細は表3で後記)に書き出す。
【0017】
送信側実行部26は、送信側ワーク領域25に格納されたデータ(イコライズ対象のデータも、対象外のデータも含む)に対して、ユーザプログラム(図3参照)を実行することで、正常時にプラントシステム4を制御する。
同様に、受信側実行部36は、受信側ワーク領域35に格納されたデータ(イコライズ対象のデータも、対象外のデータも含む)に対して、ユーザプログラム(図3参照)を実行することで、障害時にプラントシステム4を制御する。
【0018】
データ送信部23は、送信管理テーブル22内で指定されているイコライズ対象のデータを送信側ワーク領域25から読み取り、送信バッファ24に書き出すことで、受信バッファ34へとデータコピー(イコライズ)を行う。
データ受信部33は、受信管理テーブル32内で指定されているイコライズ対象のデータを受信バッファ34から読み取り、受信側ワーク領域35に書き出すことで、送信バッファ24からのデータコピー(イコライズ)を行う。
【0019】
図3は、制御システム(送信側実行部26、受信側実行部36)で動作するユーザプログラムを示す構成図である。図3では、記号記述式の制御用プログラミング言語のうち、FBD(Function Block Diagram)で記載されたシートを例示するが、SFCやラダーなどの別の制御用プログラミング言語を用いてもよい。なお、FBDは、大規模なプログラムを運用したり、長期間に渡りシステムを運用し、可用性を重視するときに適している。
このFBDのソースコード、またはそのソースコードをコンパイルした結果のプログラムコードは、各制御装置内のデータベース(図示省略)に格納されている。
【0020】
図3では、1つの四角(入力#1や、AM#12など)が1つの機能素子を示している。
機能素子内には、その機能素子を一意に特定する機能素子ID(AM#12など)が記載されており(適宜、表3参照)、その機能素子IDから#以下を除去したもの(アナログメモリを示すAMなど)が、その機能素子が属する機能種別である。なお、図3に記載されている各機能種別(入力、出力、MR、SG、SUM、PID、ASW、FG、AM、FFS)の説明については、表2の変数個数テーブル14にて後記する。例えば、機能種別「入力」とは、プラントシステム4からのデータ入力を示し、機能種別「出力」とは、プラントシステム4へのデータ出力を示す。
【0021】
機能素子間は、データの入出力を示す矢印によって、接続されている。例えば、機能素子「MR#3」は、2つの入力データ(入力#1からの入力データ、入力#2からの入力データ)をもとに、1つの出力データ(SUM#5への出力データ)を作成する。
【0022】
図4は、ユーザプログラムの構成要素とイコライズ対象との関係を示す説明図である。
【0023】
図4(a)で示すように、イコライズ対象をまとめて指定する単位として、各制御装置内に格納されているユーザプログラムの分割単位(管理単位)である、大きい粒度の「タスク」、中程度の粒度の「ループ」、小さい粒度の「シート」が挙げられる。ここで、「シート」とは、図3で説明したようなFBDが記載された電子データである。1つの制御装置内には、1つ以上のユーザプログラムのタスクが存在し、1つのタスクには、1つ以上のシートが存在する。
【0024】
図4(b)で示すように、1つのシート内には、1つ以上の機能素子(図3では、AM#12など)が存在し、その機能素子は機能種別(図3では、AMなど)によって分類されている。そして、1つの機能素子には、その機能素子単位でイコライズ対象とするか否かを示す1つの素子F(フラグ)と、その機能素子が扱う1つ以上の変数とが対応づけられている。さらに、1つの変数には、その変数単位でイコライズ対象とするか否かを示す1つの変数F(フラグ)が対応づけられている。
【0025】
ここで、素子Fと変数Fとの関係は、以下の(1)〜(4)の各ルールにより規定される。以下、ある機能素子Aの素子F(Fa)と、その機能素子A内の変数Bの変数F(Fb)と、その機能素子A内の変数Cの変数F(Fc)とがあるとする。
(1)素子Fと変数Fとが同じ値を示していたときには、そのフラグに従う。例えば、Fa=ON、かつ、Fb=ONなら、変数Bをイコライズ対象とする(ON=イコライズ対象とする旨を示す)。
(2)素子Fだけが指定されており、変数Fが未指定なら、素子Fに従う。例えば、Fa=ON、かつ、Fb=未指定なら、変数Bをイコライズ対象とする。
(3)素子Fと変数Fとが異なる値を示していたときには、変数Fのフラグに従う。例えば、Fa=ON、かつ、Fb=OFFなら、変数Bをイコライズ非対象とする(OFF=イコライズ非対象とする旨を示す)。
(4)ある素子に属する全変数Fの値が同じであり、かつ、その全変数Fの値と、ある素子の素子Fの値とが異なるときには、素子Fの値を変数Fの値に変更する。例えば、Fa=ON、かつ、Fb=OFF、かつ、Fc=OFFなら、FaをONからOFFに変更する。
【0026】
【表1】

【0027】
表1は、対象一覧テーブル12を示す。対象一覧テーブル12は、対象選択部11を介してユーザにより指定されたイコライズ対象の各変数について、その変数が演算出力されるシートと、その変数が属する機能素子と、その機能素子の素子Fと、イコライズ対象の変数と、その変数の変数Fとを対応づけて格納する。
【0028】
【表2】

【0029】
表2は、変数個数テーブル14を示す。変数個数テーブル14は、機能種別ごとに、その機能種別に属する機能素子が有する変数個数と、その各変数の分類(他の機能素子への出力値、または、機能素子が内部で保有する内部保有値)とを対応づけて格納する。
なお、変数個数は、受信側ワーク領域35にデータをイコライズ(配置)するときに、機能素子ごとに必要な変数の個数分のアドレスを連続して配置するために、その連続する配置領域分のサイズを特定するために用いられる。また、対象一覧テーブル12の1レコードが1変数に対応しているので、変数個数は、対象一覧テーブル12を作成するときのレコード数の特定にも使用される。
【0030】
【表3】

【0031】
表3は、送信管理テーブル22、および、受信管理テーブル32を示す。この2つのテーブルは、同じ素材(対象一覧テーブル12)から生成されるテーブルであり、表の各列は2つのテーブルで共通する。
送信管理テーブル22の左5列分は、対象一覧テーブル12と同じデータであり、右の「変数格納アドレス」は、イコライズ対象のデータが格納されるワーク領域のアドレスを示す。
送信管理テーブル22では、「変数格納アドレス」列が送信側ワーク領域25を示し、受信管理テーブル32では、「変数格納アドレス」列が受信側ワーク領域35を示す。
【0032】
図5は、制御システムにおけるイコライズ処理の概要を示すフローチャートである。この処理は、例えば、定期的に繰り返し実行される。
【0033】
S101として、対象選択部11は、イコライズ対象の指定画面(図6,図8)を介してユーザからイコライズ対象に関する情報を指定させる。
S102として、対象選択部11は、S101の指定結果を対象一覧テーブル12に書き出す。そして、対象通知部13は、対象一覧テーブル12内のイコライズ対象(機能素子ごとの素子Fや、変数ごとの変数Fなどのイコライズ可否情報)を、管理テーブル作成部21および管理テーブル作成部31にそれぞれ通知する。
S103として、管理テーブル作成部21は、対象通知部13から通知されたイコライズ対象について、送信側ワーク領域25内のアドレスに対応づけて送信管理テーブル22に書き出す。
S104として、管理テーブル作成部31は、対象通知部13から通知されたイコライズ対象について、受信側ワーク領域35内のアドレスに対応づけて受信管理テーブル32に書き出す。
【0034】
S105として、データ送信部23は、送信管理テーブル22内で指定されているイコライズ対象のデータを送信側ワーク領域25から読み取り、送信バッファ24に書き出すことで、受信バッファ34へとデータコピー(イコライズ)を行う。ここで、運転系制御装置2から待機系制御装置3に送信されるパケットは、以下の情報([ヘッダ部]、[データ部]、[フッタ部])を含む。
[ヘッダ部]データイコライズであることを示す機能コード、送信元ID、送信宛先ID、パケットの通番、電文の長さ
[データ部]送信管理テーブル22のレコード順に整列されたイコライズ対象データ。なお、イコライズ対象データか否かは、前記したように素子Fと変数Fとの関係から特定される。
[フッタ部]パケットの正しさを確認するためのCRC(Cyclic Redundancy Check)コード
【0035】
S106として、データ受信部33は、受信管理テーブル32内で指定されているイコライズ対象のデータを受信バッファ34から読み取り、受信側ワーク領域35に書き出すことで、送信バッファ24からのデータコピー(イコライズ)を行う。
【0036】
さらに、S101で選択されたイコライズ対象について、ユーザが再選択を行う処理を、以下のS101b〜S106において、説明する。なお、イコライズ対象の再選択は、例えば、ユーザプログラムの入れ替えや、プラントシステム4の構成変更などを契機に行われる。
S101bとして、S101で選択されたイコライズ対象の再選択がユーザにより行われると、その再選択の修正差分を各テーブル(対象一覧テーブル12、送信管理テーブル22、受信管理テーブル32)に反映させる(S102b〜S104b)。
そして、S105,S106で修正された各テーブルをもとに、イコライズ対象データを一部変更して、イコライズ処理を行う。例えば、S101bの修正によりイコライズ対象からイコライズ非対象に変更されたデータについて、イコライズ処理を停止させる。一方、S101bの修正によりイコライズ非対象からイコライズ対象に変更されたデータについて、イコライズ処理を開始させる。
【0037】
図6は、イコライズ対象の選択画面(メイン画面)を示す説明図である。
図7は、図6のメイン画面を介した、イコライズ対象の選択処理(S101,S101b)を示すフローチャートである。以下、図6を適宜参照しつつ、図7の処理を説明する。
【0038】
図6のメイン画面は、4つの検索条件指定ウィンドウ(イコライズ対象の指定単位、シートの絞り込み、機能種別の絞り込み、変数の絞り込み)と、3つのボタン(素子フラグ指定画面へ、変数フラグ指定画面へ、フラグ決定)とを有する。
これらの各操作手段により詳細なイコライズ対象の選択処理により、ユーザが正しくイコライズすべきデータの指定漏れを抑制する。
【0039】
S201として、メイン画面左上のイコライズ対象の指定単位ウィンドウでは、図4(a)で示したプログラムの分割単位を選択させるラジオボタンを設け、ラジオボタンで選択されたプログラムの分割単位(例えば、シート)に該当するリスト(例えば、シートの絞り込みウィンドウ)を表示させる。
【0040】
S202として、メイン画面右上のシートの絞り込みウィンドウでは、ユーザプログラムのシートのリストから、イコライズ対象を選択する素子Fや変数Fが記載されるシートを絞り込むために1つ以上選択するチェックボックスが表示される。そして、チェックボックスで選択されたシートを絞り込み条件とする。
【0041】
S203として、メイン画面左下の機能種別の絞り込みウィンドウでは、イコライズ対象を選択する素子Fを、その素子Fが属する機能種別で絞り込むために1つ以上選択するチェックボックスが表示される。そして、チェックボックスで選択された機能種別を絞り込み条件とする。
【0042】
S204として、メイン画面右下の変数の絞り込みウィンドウでは、イコライズ対象を選択する変数Fを、その変数が内部保有値か出力値かで絞り込むために選択するラジオボタンが表示される。そして、ラジオボタンで選択された変数種別を絞り込み条件とする。
【0043】
以上、S201〜S204で説明した4つのウィンドウでそれぞれ指定された絞り込み条件は、互いにAND条件(複数の条件を同時に満たす)として、後記する素子フラグ指定画面(S206)や、変数フラグ指定画面(S207)で表示させる素子や変数を絞り込むために使用される。これにより、ユーザに提示されるイコライズすべきデータを選択する対象がリスト表示の事前に絞り込まれることで、操作性が向上できるとともに、絞り込み条件によってイコライズの指定漏れを抑制できる。
【0044】
なお、待機系制御装置3が運転系制御装置2から制御動作を引き継ぐためには、プロセス入力や通信で入力する入力値と、積分・微分の蓄積値やタイマの経過時間、カウンタのカウンタ数、フリップフロップのメモリなどの、引き継いだ後の制御演算の初期値として利用するデータがイコライズされていればよいケースが多い。このため、機能種別の絞り込みウィンドウによって、これらのイコライズされていればよい機能種別を絞り込み条件として指定することにより、効率的なイコライズ対象の指定を実現できる。
【0045】
S205として、ボタン(素子フラグ指定画面へ)を押下すると、S206として後記する図8(a)の素子フラグ指定画面へ遷移し、対象一覧テーブル12内の機能素子のリストを表示して、その中からイコライズ対象をチェックボックスにより選択させ、その結果を素子Fへと反映させる。
S205として、ボタン(変数フラグ指定画面へ)を押下すると、S207として後記する図8(b)の変数フラグ指定画面へ遷移し、対象一覧テーブル12内の変数のリストを表示して、その中からイコライズ対象をチェックボックスにより選択させ、その結果を変数Fへと反映させる。
S205として、ボタン(フラグ決定)を押下すると、S101(イコライズ対象の指定)を終了し、S102(対象一覧テーブル12の作成)へと処理を進める。
【0046】
なお、図8は、イコライズ対象の選択画面(サブ画面)を示す説明図である。この画面では、イコライズするデータ(機能素子、変数)を選択させるために、候補のリストを生成してユーザに提示することにより、効率的なデータ選択操作を実現する。
【0047】
図8(a)の素子フラグ指定画面では、同一化対象データを選択させるリストとして、ユーザプログラム内の機能素子のリストを、その素子Fと、その機能素子が属するシートと併せて表示し、素子F欄をチェックさせることで、機能素子ごとにイコライズ対象とするか(チェック有り)、イコライズ非対象とするか(チェック無し)をユーザに指定させる。
【0048】
図8(b)の変数フラグ指定画面では、同一化対象データを選択させるリストとして、ユーザプログラム内の変数のリストを、その変数Fと、その変数が属する機能素子と、その機能素子が属するシートと併せて表示し、変数F欄をチェックさせることで、変数ごとにイコライズ対象とするか(チェック有り)、イコライズ非対象とするか(チェック無し)をユーザに指定させる。
【0049】
以上、図8で説明したように、イコライズ対象を機能素子や変数といった細かい単位で指定できるので、運転系制御装置2の送信側実行部26で動作するプログラムAと、待機系制御装置3の受信側実行部36で動作するプログラムBとがイコライズ非対象のデータの範囲で異なっていてもよい。
これにより、運転系制御装置2が改修前のプログラムAの制御動作を継続しながら、待機系制御装置3を使って改修後のプログラムBの実機での動作確認ができるので、完全性・安全性が向上できる。さらに、動作確認後に運転系制御装置2のプログラムAから待機系制御装置3のプログラムBへの切替を行うことで、プラントシステム4の設備を停止せずにプログラムの改修ができ、生産性の向上を図ることができる。
【0050】
図9は、制御システムにおけるイコライズ処理を示す説明図である。この説明図の横軸は時刻を示し、縦軸はイコライズ対象の変数の一例である、比例積分微分器(PID)における積分積算値を示す。積分積算値なので、時間経過と共に値が上昇する。以下、運転系制御装置2が動作を開始して、その後しばらくしてから待機系制御装置3が動作を開始したため、運転系制御装置2の積分積算値が待機系制御装置3の積分積算値よりも大きいケースを例に説明する。
【0051】
図9(a)において、イコライズを行わない場合には、運転系制御装置2の障害発生により待機系制御装置3へと移行するときには、運転系制御装置2の積分積算値が使用できないため、運転系制御装置2の積分積算値よりも極端に小さい値である待機系制御装置3の積分積算値がそのまま切替後にも使用される。そのため、2つの積分積算値の差が大きいために急激な値変化が発生し、プラントシステム4に影響を及ぼしてしまうため、望ましくない。
【0052】
図9(b)において、イコライズを行う場合には、運転系制御装置2の障害発生により待機系制御装置3へと移行するときには、運転系制御装置2の積分積算値がイコライズにより待機系制御装置3でも使用できるため、積分積算値の急激な値変化が発生せず、系切替でもプラントシステム4を円滑に制御できる。
【0053】
以上説明した本実施形態では、図8で示したイコライズ対象の選択画面(サブ画面)により、イコライズ対象を機能素子や変数という細かい単位で指定させることにより、冗長系システムにおいてイコライズするデータを効率的に選択させることができる。
さらに、イコライズ対象の候補数が多くなってしまうことに対しては、図6のイコライズ対象の選択画面(メイン画面)で示した絞り込み条件を指定させることで、必要なデータをリストアップする前に効率的に絞り込むことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 支援装置(イコライズデータ選択装置)
2 運転系制御装置
3 待機系制御装置
2a 運転系入出力装置
3a 待機系入出力装置
4 プラントシステム
11 対象選択部(対象選択手段)
12 対象一覧テーブル
13 対象通知部(対象通知手段)
14 変数個数テーブル
21 管理テーブル作成部
22 送信管理テーブル
23 データ送信部
24 送信バッファ
25 送信側ワーク領域
26 送信側実行部
31 管理テーブル作成部
32 受信管理テーブル
33 データ受信部
34 受信バッファ
35 受信側ワーク領域
36 受信側実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントシステムを制御するための制御用プログラムをそれぞれ実行する運転系制御装置と待機系制御装置とで冗長化されているシステムにおいて、前記運転系制御装置内の制御用データを、前記待機系制御装置内の制御用データとして同一化するときに、その同一化対象データを選択するイコライズデータ選択装置であって、
前記制御用プログラムを構成する機能素子ごとに、その機能素子が扱う各変数のデータが前記同一化対象データの候補データとして記憶されている記憶手段と、
前記記憶手段から読み込んだ前記候補データの変数を、変数ごとにリストとして提示して、そのリストから前記同一化対象データを選択させる対象選択手段と、
選択された前記同一化対象データの特定情報である変数ごとのイコライズ可否情報を前記運転系制御装置と前記待機系制御装置とにそれぞれ通知して、前記運転系制御装置から前記待機系制御装置への前記同一化対象データの変数ごとの同一化処理を実行させる対象通知手段と、を有することを特徴とする
イコライズデータ選択装置。
【請求項2】
プラントシステムを制御するための制御用プログラムをそれぞれ実行する運転系制御装置と待機系制御装置とで冗長化されているシステムにおいて、前記運転系制御装置内の制御用データを、前記待機系制御装置内の制御用データとして同一化するときに、その同一化対象データを選択するイコライズデータ選択装置であって、
前記制御用プログラムを構成する機能素子ごとに、その機能素子が扱う各変数のデータが前記同一化対象データの候補データとして記憶されている記憶手段と、
前記記憶手段から読み込んだ前記候補データの変数をもとに、その変数が属する機能素子ごとにリストとして提示して、そのリストから前記同一化対象データを選択させる対象選択手段と、
選択された前記同一化対象データの特定情報である機能素子ごとのイコライズ可否情報を前記運転系制御装置と前記待機系制御装置とにそれぞれ通知して、前記運転系制御装置から前記待機系制御装置への前記同一化対象データの機能素子に属する変数ごとの同一化処理を実行させる対象通知手段と、を有することを特徴とする
イコライズデータ選択装置。
【請求項3】
前記対象選択手段は、前記制御用プログラムの分割単位ごとの絞り込み条件の入力を受け付け、受け付けた前記絞り込み条件に適合する前記候補データから、前記同一化対象データを選択させるリストを作成することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のイコライズデータ選択装置。
【請求項4】
前記対象選択手段は、前記制御用プログラムの機能素子が属する機能種別ごとの絞り込み条件の入力を受け付け、受け付けた前記絞り込み条件に適合する前記候補データから、前記同一化対象データを選択させるリストを作成することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のイコライズデータ選択装置。
【請求項5】
プラントシステムを制御するための制御用プログラムをそれぞれ実行する運転系制御装置と待機系制御装置とで冗長化されているシステムにおいて、前記運転系制御装置内の制御用データを、前記待機系制御装置内の制御用データとして同一化するときに、その同一化対象データを選択するイコライズデータ選択方法であって、
イコライズデータ選択装置は、記憶手段と、対象選択手段と、対象通知手段とを有しており、
前記記憶手段には、前記制御用プログラムを構成する機能素子ごとに、その機能素子が扱う各変数のデータが前記同一化対象データの候補データとして記憶されており、
前記対象選択手段は、前記記憶手段から読み込んだ前記候補データの変数を、変数ごとにリストとして提示して、そのリストから前記同一化対象データを選択させ、
前記対象通知手段は、選択された前記同一化対象データの特定情報である変数ごとのイコライズ可否情報を前記運転系制御装置と前記待機系制御装置とにそれぞれ通知して、前記運転系制御装置から前記待機系制御装置への前記同一化対象データの変数ごとの同一化処理を実行させることを特徴とする
イコライズデータ選択方法。
【請求項6】
プラントシステムを制御するための制御用プログラムをそれぞれ実行する運転系制御装置と待機系制御装置とで冗長化されているシステムにおいて、前記運転系制御装置内の制御用データを、前記待機系制御装置内の制御用データとして同一化するときに、その同一化対象データを選択するイコライズデータ選択方法であって、
イコライズデータ選択装置は、記憶手段と、対象選択手段と、対象通知手段とを有しており、
前記記憶手段には、前記制御用プログラムを構成する機能素子ごとに、その機能素子が扱う各変数のデータが前記同一化対象データの候補データとして記憶されており、
前記対象選択手段は、前記記憶手段から読み込んだ前記候補データの変数をもとに、その変数が属する機能素子ごとにリストとして提示して、そのリストから前記同一化対象データを選択させ、
前記対象通知手段は、選択された前記同一化対象データの特定情報である機能素子ごとのイコライズ可否情報を前記運転系制御装置と前記待機系制御装置とにそれぞれ通知して、前記運転系制御装置から前記待機系制御装置への前記同一化対象データの機能素子に属する変数ごとの同一化処理を実行させることを特徴とする
イコライズデータ選択方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−113391(P2012−113391A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259825(P2010−259825)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】