説明

プリオンタンパク質構造変換抑制剤

【課題】正常型プリオンタンパク質への結合を介して感染型プリオンタンパク質の生成を効率よく抑制することができる化合物、当該化合物を含むプリオンタンパク質構造変換抑制剤、及びプリオン病の予防・治療剤を提供する。
【解決手段】下記式(1)


(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基等を示す。R〜R12は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基等を示す。Xは単結合又は連結基を示す。環Z及び環Zは、それぞれ置換基を有していてもよい窒素原子含有環を示す。但し、R〜Rの少なくとも一つは水素原子以外の基を示す)で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常型プリオンタンパク質の結合ポケットへの結合を介して感染型プリオンの生成を抑制することができる新規な化合物、当該化合物を有効成分として含むプリオンタンパク質構造変換抑制剤、プリオン病の予防・治療剤、及び前記化合物を用いてプリオンタンパク質の構造変換抑制活性を有する化合物をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリオン病とは、プリオンタンパク質の異常によって引き起こされる疾患の総称であって、例えば、羊のスクレイピー、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、GSS、FFI、クールー(S.B.Prusiner, Science, 216, 136-144 (1982)、S.B.Prusiner, Science, 252, 1515-1522(1991)、S.B.Prusiner, Prions. Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A., 95, 13363-13383 (1998))、変異型ヤコブ病(G.Chazot et al., Lancet, 347, 1181-1181(1996)、R.G.Will et al., Lancet, 347, 921-925(1996))などの神経変性疾患などが知られている。このようなプリオン病を治療する方法として、従来、放射線、煮沸、化学薬品等を用いてプリオンを不活化する方法や、種々の手段により感染力を減衰させる方法などが試みられているが、プリオンの耐性は強く必ずしも効果があがっていなかった。
【0003】
ここで、プリオン病は、プリオンタンパク質の異常に起因する疾患であって、具体的には、正常型プリオン(PrPC)が構造変換し、アミロイド前駆体特殊構造(PrP*)を経由して感染型プリオン(PrPSc)を生成し、感染型プリオンが体内で正常型プリオンと結合して、正常型プリオンは感染型プリオンに次々に変換されて症状が進行すると考えられている。(S.B.Prusiner, Science, 216, 136-144(1982)、S.B.Prusiner, Science, 252, 1515-1522(1991)、K.Kuwata et al., Biochemistry 41, 12277-12283(2002))。V.Perrier et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 97, 6073-6078(2000)には、正常型構造のプリオンタンパク質に結合して構造変換を阻害する活性を有する化合物を抗プリオン薬の開発に利用することが示唆されているが、その薬理効果は 証されていない。
【0004】
現在まで、マウス(R.Riek et al., Nature, 382, 180-182 (1996))、ハムスター(T.L.James et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 94, 10086-10091(1997))、ウシ(F.Lopez Garcia, R.Zahn, R.Riek, K.Wuthrick, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 97, 8334-8339(2000))、ヒト(L.Calzolai et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97, 8340-8345(2000))に関してNMRによる三次元構造決定が行われている。これらの構造は、かなり良く似ていて、アミノ酸残基第128番から第231番までは、αへリックスからなるまとまった構造と不完全な柔らかいβシートからなる。N端から113番までは構造を取らず、113番から128番までは疎水性のクラスターを形成しており、複数の構造を形成している(H.Liu et al., Biochemistry 38, 5362-5377(1999))。また、これまで、プリオンタンパク質の構造変換に関連して、プリオン中間体が観測されている(H.Zhang et al., Biochemistry 36, 3543-53(1997)、S.Hornemann, R.A.Glockshuber, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 95, 6010-6014(1998)、A.C.Apetri, W.K.Surewicz, Biol.Chem. 277, 44589-44592(2002))。近年、高圧NMR法(K.Kuwata et al., Biochemistry 41, 12277-12283(2002))により、プリオンのフォールディング中間体PrP*が同定され、その構造の特徴が明らかになった。PrP*においてはヘリックスBとCが変性しているが、へリックスAは保たれている。また、PrP*は生理的条件下で1%存在していることが分かっている(K.Kuwata et al.,Biochemistry 41, 12277-12283(2002))。
【0005】
上記知見に基づき、本発明者らは、正常型プリオンの構造体におけるA-S 2ループとヘリックスBのC端側との間にある結合ポケットを焦点に当てたドッキングシミュレーションにより、正常型プリオンタンパク質との結合を介して構造変換を抑制し、フォールディング中間体PrP*の生成を強く抑制する化合物のスクリーニングを行い、そのような化合物として2-pyrrolidin-1-yl-N-[4-[4-(2-pyrrolidin-1-yl-acetylamino)-benzyl]-phenyl]-acetamideを得ている(特開2005−120002号公報)。しかし、この化合物は、正常型プリオンと結合して構造変換を抑制しうるが、感染型プリオンの生成量の低減により優れた効果を発揮しうる化合物が求められていた。
【0006】
【非特許文献1】V.Perrier et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 97, 6073-6078(2000)
【非特許文献2】R.Riek et al., Nature, 382, 180-182(1996)
【非特許文献3】T.L.James et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 94, 10086-10091(1997)
【非特許文献4】F.LopezGarcia, R.Zahn, R.Riek, K.Wuthrick, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 97, 8334-8339(2000)
【非特許文献5】L.Calzolai et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 97, 8340-8345(2000)
【非特許文献6】H.Liu et al., Biochemistry 38, 5362-5377(1999)
【非特許文献7】H.Zhang et al., Biochemistry 36, 3543-53(1997)
【非特許文献8】S.Hornemann, R.A.Glockshuber, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 95, 6010-6014(1998)
【非特許文献9】A.C.Apetri, W.K.Surewicz, Biol.Chem. 277, 44589-44592(2002)
【非特許文献10】K.Kuwata et al.,Biochemistry 41, 12277-12283(2002)
【特許文献1】特開2005−120002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、正常型プリオンタンパク質への結合を介して感染型プリオンタンパク質の生成を効率よく抑制することができる化合物、当該化合物を含むプリオンタンパク質構造変換抑制剤、及びプリオン病の予防・治療剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、プリオンタンパク質の構造変換抑制効果に優れた化合物を効率よくスクリーニングする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物によれば、プリオンタンパク質へ強固に結合することにより、当該プリオンタンパク質の正常型から感染型への構造変換を効率よく抑制し、プリオン病の発病や進行の防止に優れた効果を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】


(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環式基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換若しくは無置換カルバモイル基、シアノ基、アシル基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、又は置換若しくは無置換アミノ基を示す。R〜R12は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環式基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換若しくは無置換カルバモイル基、シアノ基、アシル基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、又は置換若しくは無置換アミノ基を示す。Xは単結合又は連結基を示す。環Z及び環Zは、それぞれ置換基を有していてもよい窒素原子含有環を示す。但し、R〜Rの少なくとも一つは水素原子以外の基を示す)
で表される化合物を提供する。
【0010】
前記式(1)中、好ましくは、R〜Rは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R〜R12は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、又は置換チオ基であり、XはC〜Cアルキレン基、酸素原子(エーテル結合;−O−)、又は硫黄原子(チオエーテル結合;−S−)であり、環Z及び環Zは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい5員環又は6員環の窒素原子含有環であって、R〜Rのうち2つが水素原子で2つが水素原子以外の基、又はR〜Rのうち3つが水素原子で1つが水素原子以外の基である。特に好ましくは、下記式(2)
【化2】


で表される化合物が用いられる。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の化合物を有効成分として含むプリオンタンパク質構造変換抑制剤を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、上記本発明の化合物を有効成分として含むプリオン病の予防・治療剤を提供する。前記プリオン病には、例えば、羊のスクレイピー、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、GSS、FFI、クールーおよび変異型ヤコブ病等が含まれる。
【0013】
本発明は、さらに、上記本発明の化合物及び/又はその誘導体と、プリオンに感染した細胞と、感染型プリオンタンパク質を検出する手段とを含むキットを提供する。
【0014】
また、本発明は、上記本発明の化合物及び/又はその誘導体を用い、正常型プリオンタンパク質とのドッキングシミュレーションにより予測される結合強さに基づき、プリオンタンパク質の構造変換抑制活性を有する化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【0015】
本願明細書中、「正常型プリオンタンパク質」とは、正常な細胞に発現している感染性を有しないプリオンタンパク質を意味しており、「感染型プリオンタンパク質」とは、正常型プリオンタンパク質とアミノ酸配列は同一であるが、立体構造が異なり、感染性を有するプリオンタンパク質を意味している。また、「プリオンに感染する」とは、感染型プリオンタンパク質に感染している状態を意味している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化合物は、プリオンタンパク質と強固に結合するため、当該プリオンタンパク質の構造変換を抑制する効果に極めて優れている。このような効果を奏する化合物は、正常型プリオンの構造変換に起因する感染型プリオンの生成を抑制する作用を奏するプリオンタンパク質構造変換抑制剤として有用である。本発明の化合物は、上記作用を奏するため、プリオン病の発症や症状の進行の防止効果に優れたプリオン病の予防・治療剤を提供することができる。本発明のスクリーニング方法によれば、上記化合物を用いるため、プリオンタンパク質の構造変換を抑制する効果に優れた化合物を効率よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の化合物は、前記式(1)で表される。式(1)中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環式基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換若しくは無置換カルバモイル基、シアノ基、アシル基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、又は置換若しくは無置換アミノ基を示す。また、RとR、RとRはそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。
【0018】
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子が挙げられる。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが複数結合した基が挙げられる。脂肪族炭化水素基として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ビニル、アリル、エチニル、1−プロピニル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜8)程度の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、ノルボルニル、アダマンチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基などの炭素数3〜20(好ましくは3〜15)程度の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基、橋架け炭素環式基等)などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0019】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基として、例えば、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、4−メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基として、例えば、ベンジル、2−フェニルエチル、1−フェニルエチル、3−フェニルプロピル等のアラルキル基;2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル基などが挙げられる。
【0020】
これらの炭化水素基は1又は2以上の置換基を有していてもよい。前記置換基として、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、複素環式基(ピロリジノ基、ピロリジノ基、モルホリノ基、イミダゾイル基、インドール基などの窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を含む3〜20員程度の複素環式基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシ−カルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換若しくは無置換カルバモイル基(カルバモイル基;メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル基等のモノ又はジ−炭化水素基置換カルバモイル基など)、シアノ基、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル基等の脂肪族アシル基;シクロヘキサンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基;アセトアセチル基など)、ニトロ基、硫黄酸基(スルホン酸基、スルフィン酸基)、硫黄酸エステル基(スルホン酸エステル基、スルフィン酸エステル基)、ヒドロキシル基、置換オキシ基(アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基など)、メルカプト基、置換チオ基(メチルチオ、エチルチオ基等のC〜Cアルキルチオ基;シクロヘキシルチオ基等のシクロアルキルチオ基;フェニルチオ基等のアリールチオ基;アセチルチオ基等のアシルチオ基など)、置換若しくは無置換アミノ基(アミノ基、モノ又はジC〜Cアルキルアミノ基など)、オキソ基これらが複数結合した基などが挙げられる。前記カルボキシル基、硫黄酸基、ヒドロキシル基、メルカプト基は保護基で保護されていてもよい。保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0021】
〜Rにおける複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリンなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジンなどの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環など)などが挙げられる。これらの複素環式基は、置換基(例えば、前記炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基、及び上記に例示の炭化水素基)を有していてもよい。
【0022】
〜Rにおける置換オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のC〜Cアルコキシ−カルボニル基;シクロヘキシルオキシカルボニル基等のシクロアルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基などが挙げられる。置換若しくは無置換カルバモイル基としては、例えば、カルバモイル基;メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル基等のモノ又はジ−炭化水素基置換カルバモイル基などが挙げられる。アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル基等の脂肪族アシル基(C〜C脂肪族アシル基等);シクロヘキサンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基;アセトアセチル基などが挙げられる。硫黄酸基として、スルホン酸基、スルフィン酸基が挙げられる。硫黄酸エステル基として、スルホン酸エステル基(スルホン酸C〜Cアルキルエステル基等)、スルフィン酸エステル基(スルフィン酸C〜Cアルキルエステル基等)が挙げられる。置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ基等のC〜Cアルコキシ基;シクロヘキシルオキシ基等のシクロアルキルオキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基(C〜Cアシルオキシ基等)などが挙げられる。置換チオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ基等のC〜Cアルキルチオ基;シクロヘキシルチオ基等のシクロアルキルチオ基;フェニルチオ基等のアリールチオ基;アセチルチオ基等のアシルチオ基(C〜Cアシルチオ基等)などが挙げられる。また、置換若しくは無置換アミノ基としては、例えば、アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ基等のモノ又はジC〜Cアルキルアミノ基;アミジノ基;グアニジノ基等が例示される。
【0023】
式(1)において、RとR、RとRが、それぞれ互いに結合して形成してもよい。環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、アダマンタン環などの3〜15員(好ましくは4〜12員、さらに好ましくは5〜8員)程度の非芳香族性炭素環(シクロアルカン環、シクロアルケン環、橋かけ炭素環)などが挙げられる。これらの環は、置換基(例えば、前記炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基)を有していてもよく、また他の環(非芳香族性環又は芳香族性環)が縮合していてもよい。
【0024】
本発明においては、R〜Rの少なくとも一つは水素原子以外の基である。具体的には、R〜Rのうち2つが水素原子で2つが水素原子以外の基、又はR〜Rのうち3つが水素原子で1つが水素原子以外の基、R〜Rのすべてが水素原子以外の基である。特に、R〜Rのうち3つが水素原子で1つが水素原子以外の基である化合物が好ましく用いられる。水素原子以外の基として、好ましくは、グリシン以外のアミノ酸の側鎖部位及びその誘導体が好ましく用いられる。ここで、アミノ酸の側鎖部位とは、アミノ酸のα炭素に結合する水素、アミノ基、カルボキシル基以外の官能基を意味しており、例えばアラニンにおけるメチル基、バリンにおけるイソプロピル基、アスパラギン酸におけるカルボキシメチル基、グルタミンにおけるカルバモイルエチル基、フェニルアラニンにおけるベンジル基等が挙げられる。なかでも、C〜C12脂肪族炭化水素基、肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基、及びこれらの誘導体、特にメチル基、及びベンジル基等が好ましい。
【0025】
式(1)におけるR〜R12は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環式基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換若しくは無置換カルバモイル基、シアノ基、アシル基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、及び置換若しくは無置換アミノ基を示し、これらは、上記に例示のものを用いることができる。なかでも、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、又は置換チオ基等が好ましく、特に、水素原子、C〜Cアルキル基、ヒドロキシル基、C〜Cアルキルオキシ基等が好ましく用いられる。
【0026】
Xにおける連結基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(C〜Cアルキレン基等)などの2価の脂肪族炭化水素基;1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基等の2価の脂環式炭化水素基;カルボニル基;酸素原子(エーテル結合;−O−);硫黄原子(チオエーテル結合;−S−);オキシカルボニル基(エステル結合;−COO−、環Z、環Z、環Z5、環Z7と結合する側は右側であっても左側であってもよい);アミノカルボニル基(アミド結合;−CONH−、隣接する基と結合する側は右側であっても左側であってもよい);及びこれらが複数個結合した基などが挙げられる。好ましい連結基として、C〜Cアルキレン基、酸素原子(エーテル結合;−O−)、硫黄原子(チオエーテル結合;−S−)及びこれらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0027】
環Z及び環Zにおける単環又は多環の窒素原子含有環としては、環を構成する原子として少なくとも一つの窒素原子を含んでいれば特に限定されず、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環のいずれであってもよい。このような環には、例えば、例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの窒素原子含有5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジンなどの窒素原子含有6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環;オキサゾリジン、モルホリンなどの環を構成する原子に窒素原子と酸素原子を含む環などが挙げられる。これらの環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記と同様のものを利用でき、なかでも、アルキル基等の炭化水素基(C〜C10の炭化水素基)、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、もしくは芳香族性複素環式基で置換されたアルキル基が挙げられる。このような置換基を有する環の代表的な例として、2−ピロリドン、スクシンイミド、マレイミド、プログルタミン酸などの窒素原子含有単環又は多環等が挙げられる。好ましくは、置換基を有していてもよい窒素原子含有5員環又は6員環が用いられ、より好ましくは、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、マレイミド、スクシンイミド等、特にピロリジン、ピペリジン等が用いられる。
【0028】
本発明の好ましい化合物としては、例えば、前記式(1)中、R〜Rが、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R〜R12が、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、又は置換チオ基であり、XがC〜Cアルキレン基、酸素原子(エーテル結合;−O−)、又は硫黄原子(チオエーテル結合;−S−)であり、環Z及び環Zが、同一又は異なって、置換基を有していてもよい5員環又は6員環の窒素原子含有環であって、R〜Rのうち少なくとも一つは置換基を有していてもよい炭化水素基である化合物が挙げられる。本発明の化合物として代表的な例として、前記式(2)で表される化合物を含む化合物の構造式を図2〜図9に示す。
【0029】
本発明の化合物は、公知の方法を用いて製造することができる。具体的には、例えば、式(1)におけるRとRの少なくとも一方及びRとRの少なくとも一方が水素原子以外の基である化合物は、次の工程に従って得ることができる。すなわち、下記式(3)
【化3】


(式中、R〜R10及びXは前記に同じ)
で表される化合物を、当該式(3)に含まれる一方のアミノ基を保護基(例えばtert−ブトキシカルボニル基:Boc等)で保護した後、下記式(3a)
【化4】


(式中、Z、R、R及びXは前記に同じ。但し、RとRの少なくとも一方が水素原子以外の基を示す)
で表される化合物と反応させ、次いで保護基で保護されたアミノ基を脱保護し、下記式(3b)
【化5】


(式中、Z、R、Rは前記に同じ。但し、RとRの少なくとも一方が水素原子以外の基を示す)
で表される化合物と反応させる工程(A)により得ることができる。
【0030】
また、式(1)におけるRとRが共に水素原子である化合物は、例えば、次の工程に従って得ることができる。すなわち、前記式(3)で表される化合物を、当該式(3)に含まれる一方のアミノ基を保護基で保護した後、下記式(3c)
【化6】


で表される化合物と反応させ、次いで下記式(4a)
【化7】


(式中、環Zは前記に同じ)
で表される化合物と反応させ、次いで保護基で保護されたアミノ基を脱保護した後、前記式(3b)で表される化合物を導入する工程(B)により得ることができる。
【0031】
式(1)におけるRとRが共に水素原子である化合物は、例えば、上記工程(A)中、式(3c)で表される化合物に代えて前記式(3c)で表される化合物を用いて反応させ、次いで下記式(4b)
【化8】


(式中、環Zは前記に同じ)
で表される化合物を反応させる工程(C)により得ることができる。
【0032】
前記工程(A)〜(C)において、式(3a)〜(3c)及び式(4a)、(4b)で表される化合物の使用量は、式(2)で表される化合物1当量に対して、それぞれ例えば0.05〜50当量、好ましくは0.1〜10当量、さらに好ましくは0.3〜5当量程度である。式(3a)〜(3c)及び式(4a)、(4b)で表される化合物は、式(3)で表される化合物と同程度の当量で用いることもできる。
【0033】
ここで、前記式(3a)及び(3b)で表される化合物は、例えば、原料としてアミノ酸を用い、当該アミノ酸のカルボキシル基を保護基で保護した後、α−アミノ基へ環Zを導入し、次いで前記保護基を脱保護してカルボキシル基とする工程(D)に従って得ることができる。
【0034】
前記工程(A)〜(D)における各反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0035】
各反応の温度は、基質の種類、反応の種類などに応じて、例えば0〜150℃、好ましくは20〜120℃、さらに好ましくは40〜80℃程度の範囲から選択でき、反応の種類によっては常温で行うことも可能である。各反応は常圧又は加圧下で行うことができる。反応時間は、反応温度及び圧力に応じて、例えば30分〜48時間程度の範囲から適当に選択できる。反応終了後、反応生成物は、例えば、液性調整、濾過、濃縮、晶析、洗浄、再結晶、抽出、蒸留、昇華精製、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段により分離精製できる。
【0036】
本発明の化合物は、正常型プリオンタンパク質に強固に結合して、構造変換を阻止する作用がある。このため、本発明の化合物は、正常型プリオンタンパク質の構造変換抑制剤やプリオン病の予防・治療剤の有効成分として有用である。本発明の化合物は、また、食品や飲料に添加して利用することもできる。ここで、本発明におけるプリオン病とは、正常型プリオンタンパク質が構造変換して生成される感染型プリオンタンパク質により引き起こされる疾患であって、例えば、羊のスクレイピー、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、GSS、FFI、クールーおよび変異型ヤコブ病等が含まれる。
【0037】
本発明のプリオンタンパク質構造変換抑制剤及びプリオン病の予防・治療剤は、上記本発明の化合物を有効成分として含み、さらに、薬学的に許容される他の成分を含んでいてもよい。これらの薬剤は、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類などの動物に利用できる。前記薬学的に許容される成分としては、例えば、主に固形剤に用いられる賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、主に液剤に用いられる溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などが挙げられ、さらに防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤などを用いることもできる。
【0038】
剤形としては、例えば、水、生理食塩水等の希釈液又は分散媒に有効量の化合物を溶解、分散、乳化させた注射剤、クリーム、軟膏、飲料剤、エアロゾル、皮膚ゲル、点眼剤、点鼻剤等の液剤;錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、錠剤、除法剤、坐薬等の固形剤などを用いることができ、これらは有効成分がリポソームや徐放性材料等に封入された封入体や担体に担持された担持体などの形態であってもよい。
【0039】
薬剤の投与は、経口、非経口のいずれであってもよく、動脈内、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、直腸内へ、又は経呼吸、経皮、経鼻、経眼等による全身又は局所への投与等の方法により行うことができる。また、本発明の薬剤は、脳室内ポンプによって脳へ直接的に投与することもできる。
【0040】
本発明のプリオンタンパク質構造変換抑制剤及びプリオン病の予防・治療剤の投与量は、それぞれ有効成分である化合物の種類や投与方法、さらに投与対象の種、年齢、体重、症状、薬物特性、病歴などに応じて異なるが、例えば、1回あたり体重1kg当たり数μgから数十mgの範囲であり、毎週数回から1日数回投与することができる。
【0041】
薬理活性試験は、正常型プリオンタンパク質の構造変換抑制活性を評価できる方法であれば特に限定されないが、例えば、被検物質の存在下、プリオン感染細胞が生成する感染型プリオンタンパク質の生成を検出する手段を用いることができる。前記プリオン感染細胞は、プリオンに感染しうる細胞に、公知の方法でプリオンを感染させることにより生成できる。感染型プリオンタンパク質の検出は、特定のタンパク質を検出可能な公知の方法を用いることができ、好ましくは定量的な検出方法が用いられる。前記定量的な検出方法としては、例えば抗体、核酸、これらの類似体(ペプチド、PNAなど)等の特定のタンパク質を認識する手段と、蛍光体や放射線等で標識したタンパク質のイメージ解析手段(ELISA、ECL-plusウェスタンブロッティング等)等の認識されたタンパク質を定量化する手段とを組み合わせて行われる場合が多い。
【0042】
薬理活性試験の具体例としては、マウス神経細胞株にプリオンを感染させ、次いで種々の濃度で被検物質(薬剤)を添加した培地で一定期間培養した後、タンパク質を回収して感染型プリオンタンパク質を抗体等で検出し、イメージ解析等により定量化する方法等を利用できる。上記試験において、感染型プリオンタンパク質の生成量が少ないほど、プリオンタンパク質の構造変化抑制活性に優れ、プリオン病の治療・予防に高い効果を奏すると評価できる。
【0043】
上記試験方法において、本発明の化合物は、同化合物を添加しないときの感染型プリオンタンパク質の生成量を100としたとき、同生成量を相対値として、例えば20以下、好ましくは15以下、より好ましくは13.5以下、特に12以下程度まで低減する効果を奏する。本発明の化合物は、また、本発明者らによってすでに報告されている2−ピロリジン−1−イル−N−[4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−アセチルアミノ)−ベンジル]−フェニル]−アセトアミド(特開2005−120002号公報参照)と比較して、感染型プリオンタンパク質の生成を抑制する効果に優れ、特に、前記式(2)で表される化合物により高い効果を得ることができる。このように、本発明の化合物は、正常型プリオンタンパク質の構造変換抑制効果に極めて優れるため、プリオンタンパク質構造変換抑制剤やプリオン病の予防・治療剤の有効成分として用いることにより、プリオン病の発症を効果的に予防し、発症後には症状の進行を阻止又は遅延することにより優れた治療効果を発揮することができる。
【0044】
本発明のキットは、化合物及び/又はその誘導体と、プリオンに感染した細胞と、感染型プリオンタンパク質を検出する手段とを含んでいる。プリオンに感染した細胞、及び感染型プリオンタンパク質を検出する手段としては、上記薬理評価試験において例示のものを用いることができる。本発明のキットは、プリオンタンパク質の構造変換を抑制する化合物のスクリーニングや、同化合物を用いた試験、評価、研究等に利用できる。
【0045】
本発明の化合物は、また、当該化合物をベースとして、上記医薬用途により最適化された化合物を効率よくスクリーニングする方法に利用することができる。スクリーニングは、in vivo、in vitro、in silico等による公知の手法を利用できる。特に本発明では、in silicoスクリーニング(バーチャルスクリーニング)で得られた候補化合物について、in vitro及び/又はin vivoスクリーニングを行う方法を用いると、優れた薬理効果を発揮しうる化合物を効率よく選別でき好ましい。前記in silicoスクリーニグには、例えば、後述のドッキングシミュレーションを用いたスクリーニング法が好ましく用いられる。
【0046】
本発明の方法は、上記本発明の化合物及び/又はその誘導体を用い、正常型プリオンタンパク質とのドッキングシミュレーションにより予測される結合強さに基づき、プリオンタンパク質の構造変換抑制活性を有する化合物をスクリーニングする方法である。スクリーニングには、通常、ライブラリが用いられるが、当該ライブラリは、本発明の誘導体で構成されていても良く、ソフトウェア等を用いてコンピューター上で作成された公知乃至未知の化合物であってもよく、市販のものを利用することもできる
【0047】
前記本発明の化合物の誘導体には、例えば、本発明の化合物に公知の置換基を導入等することにより部分的に改変された化合物等が含まれる。このような置換基としては、例えば上記に例示のものを利用できる。但し、本発明の化合物の誘導体には、2−ピロリジン−1−イル−N−[4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−アセチルアミノ)−ベンジル]−フェニル]−アセトアミドは含まれない。上記本発明の化合物の誘導体でライブラリを構成して、本発明の化合物の構造を用いたリード化合物の最適化に利用することができる。以下、ドッキングシミュレーションに用いる本発明の化合物、その誘導体、及びライブラリを「被検物質」と総称する場合がある。
【0048】
ドッキングシミュレーションは、一般に、被検物質及び正常型プリオンタンパク質の各立体構造情報に基づき、ドッキングシミュレーション用ソフトウェアプログラムによりコンピューター上で実施される。前記立体構造情報は、公知のタンパク質に関してはProtein Data Bank(PDB)などの公知のデータベースの登録情報として入手でき、新規物質に関しては汎用のプログラム等を用いてモデリングする等の方法により個別に作成することができる。
【0049】
本発明の被検物質の立体構造情報は、例えばCambridgeSoft社製のChemOffice等のモデリングソフトウェアを用いて作成することができる。例えば、ChemOfficeを用いてGUI上の手動操作で個別にモデリングした後、ChemOfficeに付属の半経験的分子モデリングアプリケーションCSMOPACでAM1法を用いてエネルギーの最小化を行うことにより立体構造情報を作成することができる。こうして得られた情報に、さらに、電荷の付加や水素原子の削除などの処理を施すことにより、タンパク質との相互作用をより精度良く解析することができる。具体的には、MQEq法(修正電荷平衡法:Chem-Bio Info. J. 1, 35-40(2001)等)を用いて電荷を付加した。本発明の化合物及びライブラリ化合物の立体構造情報は、公知の方法で得ることができ、上記方法に限定されない。
【0050】
プリオンタンパク質の立体構造情報は、Protein Data Bank(PDB)より入手可能であり、例えば、正常型マウスプリオンタンパク質の立体構造情報は、NMRにより構造決定された登録情報PDB code 1AG2を利用できる。さらに、電荷の付加や水素原子の削除などの処理を、AutoDockTools(Scripps Research Institute社製)を用い、Amber United-atom modelに従って行うことができる。
【0051】
ドッキングシミュレーションによる結合強さの予測は、例えば、正常型プリオンタンパク質に存在する結合ポケットに焦点を当てて、被検物質と正常型プリオンタンパク質との結合自由エネルギーを予測し、当該エネルギーが低いほど両者の結合が強いと評価する方法により行うことができる。例えば、特開2005−120002号公報に開示される方法を利用できる。
【0052】
前記結合ポケットとしては、例えば、A-S2ループとヘリックスBのC端側との間にある結合ポケットを用いることができ、「結合ポケットに焦点を当てる」とは、当該結合サイトを中心に十分な大きさのグリッドボックスを設定することを意味している。グリッドボックスのサイズは特に限定されないが、例えば45Å×45Å×30Åのサイズに設定できる。
【0053】
ドッキングシミュレーション用ソフトウェアプログラムとしては、ドッキングシミュレーション用途の一又は複数のソフトウェアプログラムを組み合わせて利用することができ、例えば、DOCK、AutoDock、GOLDなどの公知のものを利用できる。例えば、前記AutoDockによれば、正常型プリオンタンパク質の位置を固定し、化合物の構造変化のみ考慮したフレキシブルドッキング法による自動ドッキングシミュレーションを行うことができる。
【0054】
より詳細には、AutoDockを用いた自動ドッキングシミュレーションは、ライブラリと正常型プリオンタンパク質について、ラマルク的遺伝的アルゴリズムによって最適な結合状態を探索し、一つの化合物に対して、1回当たり数千万のドッキングモードを評価する方法を複数回繰り返し行い、最も低い自由エネルギーを当該化合物とプリオンタンパク質との結合自由エネルギーと予測する。一方、本発明の化合物と正常型プリオンタンパク質について、上記と同様の方法で結合自由エネルギーを予測する。こうして得られた結合自由エネルギーの値が低いものほど結合が強い、すなわち、プリオンタンパク質の構造変化を抑制する効果に優れていると評価することができる。
【0055】
具体的には、前記式(2)で表される化合物は、上記方法に基づき予測される結合自由エネルギーが-11.43kcal/molと低く、また薬理活性試験による有効性が確認されている。この知見に基づき、結合自由エネルギーが-11.43kcal/mol未満の化合物、例えば図2〜図9に示される全ての化合物は、式(2)で表される化合物と同程度又はそれ以上の有用性があると推定される。
【0056】
式(1)で表される化合物中、結合自由エネルギーを指標としてプリオン病の治療・予防剤に有用と推定される化合物群は、例えば、結合自由エネルギーが−14.00kcal/mol未満の化合物(例えば、図2〜図9中の6LQ-C-5G、5LR-C-5G、MLR-C-5G、6LK-C-5G、5LA-S-6DH、6LN-C-5G、5G-C-6DH、6LR-C-5G、5LH-C-5G等)が挙げられ、次いで、同−14.00kcal/mol以上、−13.00kcal/mol未満の化合物群、同−13.00kcal/mol以上、−12.00kcal/mol未満の化合物群の順で有効であると推定できる。さらに、結合自由エネルギーが−12.00kcal/mol以上、−11.00kcal/mol未満の化合物群は、式(2)で表される化合物と同程度の結合自由エネルギーを有するため、式(2)の化合物と同程度の薬理活性を発揮する可能性が高いと推定できる。
【0057】
さらに、これらの化合物又はその誘導体を、プリオンタンパク質の構造変換抑制活性を有する化合物をスクリーニングする方法に用いて、正常型プリオンタンパク質とのドッキングシミュレーションにより予測される結合強さに基づき、プリオン病の治療・予防剤の有効成分の探索に利用することもできる。
【0058】
本発明の化合物は、プリオンタンパク質と結合する公知の化合物と比較して、ドッキングシミュレーションによる正常型プリオンタンパク質との結合はより強く、しかも上記試験により優れた薬理活性を発揮することができる。そのため、本発明の化合物は、それ自体をプリオンタンパク質構造変換抑制剤やプリオン病の予防・治療剤の有効成分として利用できるだけでなく、当該化合物の誘導体からなるライブラリを作成することにより、さらなる薬理効果、生体適合性等に優れた薬剤の開発に好ましく利用できる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0060】
実施例1
下記式(2)
【化9】


で表される2−ピロリジン−1−イル−N−[4−{4−(2−ピロリジン−1−イル−アセチルアミノ)−ベンジル}−フェニル]−プロピオンアミドの合成
4,4’−メチレンジアニリン12gに対し、1/2当量のジカルボン酸ジ−tert−ブチル(Boc無水物)を反応させ、アミンの片方のみがBoc基で保護された反応生成物について、ニンヒドリン試薬等を用いて、薄相クロマトグラフィー(TLC)で確認しながら順相カラムクロマトグラフィにより精製を行い、ほぼ当量の4−(4−tert−ブトキシカルボニルアミノベンジル)アニリン18gを得た。
【0061】
得られた4−(4−tert−ブトキシカルボニルアミノベンジル)アニリン4gに対し、HBTU20.4gとHOBt8.2gをDMF100mL中に溶解した溶液を縮合剤に用いて、Fmoc-L-アラニンを反応させた。反応混合液を常温で1時間撹拌後、ジクロロメタンにより分配を行うことによって縮合剤を除去し、残渣を20%ピペリジン含有DMF溶液によりFmoc基を脱保護した。混合液を順相カラムクロマトグラフィにより精製を行い、下記式(X)
【化10】


で表される化合物2.8gを得た。
【0062】
得られた前記式(X)で表される化合物2gに対し、1,4−ジブロモブタン2.8gを、エタノール100mL中、NaHCO1gを共存させ、50℃で加熱撹拌することにより、下記式(Y)
【化11】


で表される化合物を1.8g得た。得られた前記式(Y)で表される化合物1gに対し、ジクロロエタン中、TFAを反応させてBoc基を脱保護し、次いで以下に示す方法で1−ピロリジン酢酸との縮合反応を行った。DMF中、4当量の1−ピロリジン酢酸、HBTU、及びHOBtの共存下、室温で2時間撹拌後、溶媒を洗浄、留去し、次いで順相カラムクロマトグラフィ及び逆相HPLCにより精製を行い、目的の2−ピロリジン−1−イル−N−[4−{4−(2−ピロリジン−1−イル−アセチルアミノ)−ベンジル}−フェニル]−プロピオンアミドを収率12.3%で得た。
以下、2−ピロリジン−1−イル−N−[4−{4−(2−ピロリジン−1−イル−アセチルアミノ)−ベンジル}−フェニル]−プロピオンアミドを、「5G-C-5LA」と称する。
[目的化合物 のスペクトルデータ]
13C-NMR(CDCl3) δ:168.9, 137.0, 136.9, 136.1, 135.9, 129.4, 119.7, 119.7, 64.2, 59.8, 54.6, 51.2, 40.8, 38.6, 29.7, 24.1, 23.6, 16.4
HR-FAB-MS: m/z 434.2680 ([M+H]+)C26H34N4O2
【0063】
実施例2
実施例1で得た化合物5G-C-5LAを用いたin silicoスクリーニング
[ライブラリの作成]
実施例1で得た化合物に各種置換基を導入して得られる誘導体からなるライブラリを作成する。
[立体構造情報の入手]
実施例1で得た化合物の立体構造情報は、ChemOffice(CambridgeSoft社)を用いて、GUI操作によって手動で個別にモデリングした後に、ChemOfficeに付属のCS MOPACでAM1法を用いてエネルギー最小化を行い作成した。電荷付与は、中野らが開発したMQEq法(修正電荷平衡法)を用いた。
正常型プリオンタンパク質の立体構造情報は、Protein Data Bank(PDB)に登録されている、NMRによって構造決定された正常型マウスプリオン蛋白質(PDB code: 1AG2)を用いた。プリオン蛋白質の各原子に対する電荷情報付加およびその後の水素削除は、米国スクリプト研究所で開発され公開されているAutoDockToolsを用いて、Amber United-Atom model法で行った。
【0064】
[結合サイトの予測]
正常型プリオンタンパク質における実施例1で得た化合物との結合サイトをNMRの遅い揺らぎの情報に基づき予測した。こうして結合サイトと予測された付近を中心に、45Åx45Åx30Åの大きさのグリッドボックスを設定し、in silicoスクリーニングに利用した。
[in silicoスクリーニング]
ライブラリ化合物と正常型マウスプリオンタンパク質について、AutoDockを用いた自動ドッキングシミュレーションを行い、両者の結合自由エネルギーを予測した。具体的には、ラマルク的遺伝的アルゴリズムによって最適な結合状態を探索し、1つの化合物に対して、1回で2500万のドッキングモードを評価し、これを10回繰り返して、その中で最も低い自由エネルギーをその化合物とマウスプリオン蛋白質の結合自由エネルギーと予測した(J. Computational Chemistry, 19: 1639-1662 (1998))。上記シミュレーションで得られた実施例1で得た化合物の結合自由エネルギーは-11.43kcal/molであった。
【0065】
上記シミュレーションの結果、ライブラリ化合物のなかでも、結合自由エネルギー値が実施例1で得た化合物より低かった化合物(-11.43kcal/mol未満)を表1に示す。表1中、「名称」は、それぞれ図2〜図9に表される構造式に対応する化合物を示す。
【0066】
【表1】

【0067】
これらの結果から、表1に示される化合物は、実施例1で得た化合物5G-C-5LAと比較して、正常型プリオンタンパク質とより強固に結合することができ、当該結合を介して正常型プリオンタンパク質の構造変換を阻害する活性に優れる化合物であると容易に予測できる。ここで、5G-C-5LAは、後述の評価試験に示されるように、感染性プリオンタンパク質の生成を抑制するという優れた薬理活性を発揮する化合物であることが確認されている。従って、表1に示される化合物は、5G-C-5LAと同等又はそれ以上の薬理活性を発揮することができると予測することができる。従って、これらの化合物は、プリオン病の予防・治療剤を構成する有効成分として、又はそのような化合物を探索するリード化合物として極めて有用である。さらに、これらの化合物自体又はその誘導体を用いたin silicoスクリーニングにより、プリオンタンパク質の構造変換抑制活性を有する化合物を得ることにより、プリオン病の予防・治療に有用な化合物を容易に探索することができる。
【0068】
評価試験
実施例1で得た化合物について以下の方法で薬理試験を行った。
[細胞]
マウス視床下部神経細胞系列GT1は、マウスプリオンに感染しうる。化合物の抗プリオン作用を評価する目的で、我々はGTFK-1細胞系列を用いた(N. Nishida et al., J. Virol, 74, 320-325 (2000))。これらはGSS由来の(O. Milhavet et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 97, 13937-13942 (2000))マウス適合プリオンに安定に感染した、福岡-1株である。
[プリオン感染処理]
GT1-7細胞は、ペニシリン(GIBCO/BRL)を含むDMEM培地で培養した。3〜4日ごとに、細胞をトリプシン処理し、1:5に希釈して継代した。安定にFukuoka-1または22L株に感染したGT1-7細胞については、O.Milhavet et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97, 13937-13942 (2000)に記載されている。化合物のストック溶液(選択された59の化合物のうち19個)は、100mMのDMSO中に調製し4℃で保存した。使用前に、化合物を培地で希釈した。対照細胞を溶媒のみを含む(0.1%)培地で処理した。約2×10の細胞を6ウェルプレートの各ウェルに入れ、化合物を添加して15時間後に薬剤処理を開始した。72時間のインキュベーションの後に、細胞を回収した。
【0069】
[感染型プリオンタンパク質の定量]
回収した細胞を、1×Triton/DOC溶解バッファー(0.5% tritonX-100, 0.5% deoxycholic acid, 150mM NaCl, 25mM Tris HCl pH7.5, 2mM EDTA およびペプスタチン、ロイペプシン)150μl中に溶解させた。タンパク質濃度をBCSアッセイ(Pierce社製)で測定し、各サンプルを2mgタンパク質に標準化した。PrPsc産生を分析するために、タンパク質を10μg/mgの濃度でプロテイナーゼKで30分間37℃で消化した。消化はPMSF(2mM)で阻害し、サンプルについて15% SDS/PAGEゲルを用いてSDS/PAGEを行った。次いで、タンパク質をPVDF膜(Immobilon-P, Amersham, USA社製)に転写した。PrPresのために、抗マウスPrP抗体(SS28)を用いた。またPrPCの検出のために、SAF32抗体(Spi-Bio, France社製)を一次抗体として用いた。シグナルはECL-plusウェスタンブロッティング(Amersham社製)で可視化し、X線フィルム(Konica社製)に曝露した。シグナルの定量は、膜をFluorochem(Alpha Innotech, US社製)でスキャンすることにより行った。
【0070】
これらの結果を図1のグラフに示す。図1中、「DMSO0.1%」は、化合物を添加しなかった場合、「5G-C-5LA」は、実施例1で合成した化合物を添加した場合、「GN8」は、特開2005−120002号公報に開示されている2−ピロリジン−1−イル−N−[4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−アセチルアミノ)−ベンジル]−フェニル]−アセトアミドを添加した場合の感染型プリオンタンパク質の生成量を相対値で示している。その結果、「DMSO0.1%」を100としたとき、GN8は15.97であったのに対し、本発明の化合物である「5G-C-5LA」は13.16であった。5G-C-5LAで72時間処理された細胞は、同化合物で処理されなかった「DMSO0.1%」と比較して、感染性プリオンタンパク質の生成量が著しく低減されており、GTFK-1細胞系列においてスクレイピー型タンパク質の産生を強く抑制することが判明した。また、5G-C-5LAは、GN8に比べ、感染性プリオンタンパク質の生成を20%以上抑制していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の化合物によれば、プリオン病の予防及び治療に有用な医薬の開発を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例における薬理活性の評価試験結果を示すグラフである。
【図2】本発明の化合物の一例を示す構造式である。
【図3】本発明の化合物の他の例を示す構造式である。
【図4】本発明の化合物のさらに他の例を示す構造式である。
【図5】本発明の化合物のさらに他の例を示す構造式である。
【図6】本発明の化合物のさらに他の例を示す構造式である。
【図7】本発明の化合物のさらに他の例を示す構造式である。
【図8】本発明の化合物のさらに他の例を示す構造式である。
【図9】本発明の化合物のさらに他の例を示す構造式である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】


(式中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環式基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換若しくは無置換カルバモイル基、シアノ基、アシル基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、又は置換若しくは無置換アミノ基を示す。R〜R12は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環式基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換若しくは無置換カルバモイル基、シアノ基、アシル基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、又は置換若しくは無置換アミノ基を示す。Xは単結合又は連結基を示す。環Z及び環Zは、それぞれ置換基を有していてもよい窒素原子含有環を示す。但し、R〜Rの少なくとも一つは水素原子以外の基を示す)
で表される化合物。
【請求項2】
式(1)中、R〜Rが、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R〜R12が、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、又は置換チオ基であり、XがC〜Cアルキレン基、酸素原子(エーテル結合;−O−)、又は硫黄原子(チオエーテル結合;−S−)であり、環Z及び環Zが、同一又は異なって、置換基を有していてもよい5員環又は6員環の窒素原子含有環であって、R〜Rのうち少なくとも一つは置換基を有していてもよい炭化水素基である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
下記式(2)
【化2】


で表される化合物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかの項に記載の化合物を有効成分として含むプリオンタンパク質構造変換抑制剤。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかの項に記載の化合物を有効成分として含むプリオン病の予防・治療剤。
【請求項6】
プリオン病が、羊のスクレイピー、ウシ海綿状脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、GSS、FFI、クールーおよび変異型ヤコブ病からなる群から選択される少なくとも1種である請求項5記載のプリオン病の予防・治療剤。
【請求項7】
請求項1〜3の何れかの項に記載の化合物及び/又はその誘導体と、プリオン感染細胞と、感染型プリオンタンパク質を検出する手段とを含むキット。
【請求項8】
請求項1〜3の何れかの項に記載の化合物及び/又はその誘導体を用い、正常型プリオンタンパク質とのドッキングシミュレーションにより予測される結合強さに基づき、プリオンタンパク質の構造変換抑制活性を有する化合物をスクリーニングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−13126(P2009−13126A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178247(P2007−178247)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18、19年度 独立行政法人 医薬基盤研究所基礎研究推進事業、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【Fターム(参考)】