説明

プリフォームの製造方法

【課題】繊維強化樹脂成形品を得るのに適した、強化繊維に未硬化樹脂を含浸したシート状のプリプレグを複数枚積層し、その積層プリプレグを賦形してプリフォームを作る際、賦形後の形状の戻りを防止でき、繊維配列の乱れの発生を防止できるプリフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】複数枚積層したシート状のプリプレグを予備賦形して予備賦形品を得る工程と、予備賦形品を脱気する工程とを有することを特徴とするプリフォームの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂製成形品を得るための成形材料であるプリフォームを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂の成形品を作製する方法として、例えば、強化繊維に未硬化樹脂が含浸されたシート状のプリプレグを賦形してプリフォームを製造し、このプリフォームを成形する方法が知られている。
プリフォームを製造する方法としては、例えば、プリプレグを複数枚積層し、そのプリプレグの周縁部を手作業であるいは成形機により折曲し、賦形する方法が知られている (特許文献1)。また、プリプレグを複数枚積層したプリフォーム基材を所定の凸型形状をなすプリフォームツールに置き、弾性体膜でプリフォーム基材を押し付け、真空引きしながら賦形する方法が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】再公表WO2004/018186号公報
【特許文献2】特開2006−7492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、いずれの方法でもプリフォームを製造した後に、プリフォームが元のプリプレグの形状に戻ってしまうことがあった。形状が元に戻ると、繊維配列に乱れが生じることがあり、繊維配列に乱れが生じると、得られる繊維強化樹脂の成形品の機械的物性が低くなることがあった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、賦形後の形状の戻りを防止でき、繊維配列の乱れの発生を防止できるプリフォームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者が、賦形後の形状の戻りについて調べた結果、予備賦形品においてプリプレグ同士が密着しておらず、互いを支持していないために、賦形後に形状が戻ってしまうことを見出した。そして、その知見に基づき、以下のプリフォームの製造方法を発明した。
本発明のプリフォームの製造方法は、複数枚積層したシート状のプリプレグを予備賦形して予備賦形品を得る工程と、予備賦形品を脱気する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のプリフォームの製造方法によれば、賦形後の形状の戻りを防止でき、繊維配列の乱れの発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のプリフォームの製造方法の一実施形態例について説明する。
本実施形態例の製造方法では、まず、複数枚積層したシート状のプリプレグをプリフォームの形状に予備賦形して予備賦形品を得る。
予備賦形の方法としては、例えば、手作業でプリプレグを折り曲げる方法、成形機を用いてプリプレグを折り曲げる方法などが挙げられる。
【0007】
プリプレグの形態は、強化繊維が一方向に引き揃えられたUDプリプレグであってもよいし、強化繊維が製織された織物プリプレグであってもよい。
プリプレグの形状としては、例えば、三角形状、四角形状等の多角形状、円形状、楕円形状、扇形状などが挙げられるが、目的とするプリフォームの形状に応じて適宜選択すればよい。
プリプレグの周縁部には、賦形後に余剰部分が生じないように切り込みを形成してもよい。
【0008】
プリプレグを構成する強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、高強度ポリエステル繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。これらの中でも比強度および比弾性に優れることから、炭素繊維が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硬化後の強度を高くできることから、エポキシ樹脂が好ましい。
プリプレグ中には、硬化剤、離型剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、充填材などの各種添加剤などが含まれてもよい。
【0009】
プリプレグの積層枚数としては2〜20枚であることが好ましい。プリプレグの積層枚数が2枚以上であれば、充分な強度の成形品を得ることができ、20枚以下であれば、成形品のコストを抑えることができる。
【0010】
次いで、予備賦形品を脱気して、プリフォームを得る。予備賦形品を脱気する方法としては、例えば、予備賦形品を脱気用雌型内に配置し、予備賦形品をフィルム等で覆い、雌型内を真空引きする方法などが挙げられる。
【0011】
脱気の条件は予備賦形品の形状に応じて適宜選択されるが、圧力は700mmHg以上であることが好ましい。圧力が700mmHg以上であれば、予備賦形品を容易に脱気でできる。
【0012】
このようにして得たプリフォームを、金型内に配置し、加熱することにより、所定の形状の繊維強化樹脂製の成形品を得ることができる。
【0013】
図1に示すように、予備賦形品におけるプリプレグ1,1同士の間には隙間2がある。しかし、上述したプリフォームの製造方法では、予備賦形品を脱気し、プリプレグ1,1同士の間の隙間2に存在する空気をプリプレグ1の端部側から吸い出して、図2に示すように、プリプレグ1,1同士を密着させることができる。密着したプリプレグ同士は互いに支持し合うため、賦形後の形状の戻りを防止できる。したがって、上記プリフォームの製造方法によれば、繊維配列の乱れの発生を防止できる。
【実施例】
【0014】
炭素繊維を一方向に引き揃えた一方向材にエポキシ樹脂を加熱含浸させて、一方向プリプレグを得た。このプリプレグを2枚重ねてプリプレグ積層体を得た。その際、炭素繊維の方向が交互に直交するようにプリプレグを積層した。
次いで、上記プリプレグ積層体を略正方形に裁断し、また、隅部に楔形状の切り込みを形成した。
【0015】
次いで、切り込みを形成したプリプレグ積層体(以下、「プリプレグ積層体」のことも説明の便宜上「プリプレグ」という。)を、上面にて開口したキャビティを有する雌型の開口部上に載せた。さらに、そのプリプレグの上に、切り込みを形成したプリプレグを3つ積層した。
次いで、積層したプリプレグを赤外線ヒータにより加熱した後、雄型を下降させ、雌型と雄型とで挟み込み、プリプレグの周縁部を折曲して、予備賦形品を得た。そして、雌型および雄型に空気を吹き付けて冷却した後、雄型を上昇させて、得られた予備賦形品を雌型のキャビティから取り出した。
【0016】
次いで、予備賦形品を脱気用雌型に移し変えた後、予備賦形品をバッグフィルムで覆い、脱気用雌型内を真空ポンプにより真空にして、予備賦形品を3分間脱気した。その際の圧力は730mmHgとした。
次いで、脱気後、バッグフィルム内を大気圧に戻し、予備賦形品を脱気して得たプリフォームを取り出した。
そして、得られたプリフォームを圧縮成形用の下型内に配置し、これを上型で挟み、加熱加圧して、繊維強化樹脂製の成形品を得た。
【0017】
プリプレグを予備賦形した予備賦形品を脱気した上記実施例では、プリプレグ同士を密着させることができ、賦形後の形状の戻りを防止できた。そのため、繊維配列の乱れを防止でき、得られた成形品は機械的強度に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のプリフォームの製造方法を説明する図であって、予備賦形品を脱気する前の予備賦形品を示す断面図である。
【図2】本発明のプリフォームの製造方法を説明する図であって、予備賦形品を脱気した後の予備賦形品を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 プリプレグ
2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚積層したシート状のプリプレグを予備賦形して予備賦形品を得る工程と、予備賦形品を脱気する工程とを有することを特徴とするプリフォームの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−83128(P2009−83128A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252307(P2007−252307)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】