説明

プリフォーム加熱方法、プリフォームキャリアおよび二軸延伸ブロー成形方法

【課題】加熱時にプリフォームが横倒れ、熱収縮することのないようにしたプリフォーム加熱方法を採用した二軸延伸ブロー成形機を提案すること。
【解決手段】二軸延伸ブロー成形機1の搬送路6に沿って、支持棒76を備えたプリフォームキャリア7が循環する。プリフォームキャリア7にはプリフォーム10が倒立状態で担持される。担持状態では、支持棒76がプリフォーム10の口部12から胴部11内に挿入された状態で、当該口部12が差込ノズルに差し込まれる。加熱部を経由してプリフォーム10が加熱されて軟化して自重によって横倒れ、あるいはその軸線方向に熱収縮しようとすると、挿入されている支持棒76によってそのような変形が阻止される。よって、ブロー成形に支障を来たすような大きな変形状態に陥ることなく、プリフォーム10が二軸延伸ブロー成形部4に送り込まれて精度良く二軸延伸ブロー成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形法によって製造されたプリフォーム(ブロー成形前躯体)をブロー成形に適した温度に加熱するためのプリフォーム加熱方法、当該加熱方法に用いるプリフォームキャリア、および当該加熱方法を用いる二軸延伸ブロー成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PETボトルなどの樹脂製のボトルは、射出成形法により予め製造された有底筒状のプリフォームを再加熱して二軸延伸ブロー成形などのブロー成形に適した温度状態にし、しかる後にブロー成形を施すことにより製造される。例えば、二軸延伸ブロー成形法においては、プリフォームを倒立状態でプリフォームキャリアに担持させ、プリフォームキャリアを遠赤外線ヒータなどの加熱素子が配列されている搬送経路に沿って搬送することによりプリフォームを二軸延伸ブローに適した温度状態に加熱している。加熱後のプリフォームをプリフォームキャリアと共に二軸延伸ブロー成形用のブロー金型に送り込み、ブロー金型を型締めした後に、延伸ロッドをプリフォームキャリアの中心孔を介して下側から押し上げて加熱状態のプリフォームを延伸させ、同時に、プリフォーム内にブロー成形用の圧縮空気を送り込むことにより、プリフォームを二軸延伸ブローして、ブロー金型のキャビティ内周面に沿った形状の成形品を得るようにしている。二軸延伸ブロー成形機は下記の特許文献1に開示されている。また、倒立状態でプリフォームを搬送しながら加熱する機構は、特許文献2に開示されている。
【特許文献1】WO98/003324のパンフレット
【特許文献2】特開2005−28806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、プリフォームをブロー成形に適した温度となるように加熱すると、プリフォームが軟化する。従来においては、プリフォームの肉厚が厚いので、倒立状態でブロー金型に送り込まれるプリフォームがブロー成形に悪影響を与えるような熱変形は起きない。すなわち、ブロー成形前に、加熱して軟化した倒立状態のプリフォームが、横倒れ状態に変形し、あるいは、その軸線方向に収縮して、ブロー成形を適切に行うことができないという弊害は発生していない。
【0004】
しかしながら、最近においては、PETボトルなどの軽量化を図るためにその薄肉化が要求されている。かかる要求を満たすためには、薄肉のプリフォームをブロー成形する必要がある。例えば、PET樹脂製のプリフォームの薄肉化を図ると、ブロー成形に適した温度までプリフォームを加熱すると、プリフォームが自重に耐えることができずに横倒れする可能性がある。横倒れ変形のままブロー成形されると、精度良くブロー成形が行われず、不良成形品となる可能性が高い。
【0005】
また、PP樹脂あるいはPE樹脂などからなるプリフォームの薄型化を図ると、その加熱時に、軸線方向に大きく収縮してプリフォームが全体として大きく変形し、やはり、ブロー成形を適切に行うことができない可能性が高い。
【0006】
本発明の課題は、このような新たな問題点に鑑みて、ブロー成形前の加熱時にプリフォームが横倒れ、あるいは軸線方向に収縮することを防止あるいは抑制可能なプリフォーム加熱方法、当該加熱方法に用いるプリフォームキャリア、および当該加熱方法を用いた二軸延伸ブロー成形方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、有底筒状の胴部と口部を備えた樹脂製のプリフォームを、ブロー成形に適した温度状態となるように加熱するためのプリフォーム加熱方法において:前記プリフォームをその口部を下にして立てた状態で加熱し;遅くとも、前記プリフォームの加熱終了前の時点において、当該プリフォームの口部からその胴部内に所定長さの支持棒を挿入し;当該支持棒によって、前記プリフォームの胴部における熱変形による横倒れ、および/または、胴部における軸線方向への熱収縮を防止あるいは抑制することを特徴としている。
【0008】
ここで、前記プリフォームの加熱開始前の時点において、当該プリフォームの口部からその胴部内に前記支持棒を挿入すればよい。
【0009】
また、支持棒を挿入することによって、プリフォームの加熱に悪影響が及ぶことが無いようにするためには、前記支持棒を、前記プリフォームに挿入する前に、所定の温度に加熱しておくことが望ましい。
【0010】
さらに、前記プリフォームに挿入された前記支持棒を加熱して、前記プリフォームを内側からも加熱すれば、プリフォームを全体として均一に加熱できるので好ましい。
【0011】
次に、プリフォームの横倒れ、軸線方向の収縮を防止するためには、前記支持棒の先端が前記プリフォームの胴部底面に当たらない位置まで、当該支持棒を前記プリフォームの胴部内に挿入することが望ましい。
【0012】
さらに、プリフォームが変形して支持棒の表面に当接して当該表面に貼り付いてしまうことの無いように、前記支持棒に表面処理を施し、前記支持棒の表面に前記プリフォームの樹脂が貼り付き難くし、あるいは、プリフォームの樹脂に対するすべり性を高めておくことが望ましい。例えば、表面処理としては、プリフォームとの接触面積を少なくするために、支持棒の表面を梨地などの粗面とすればよい。あるいは、縦横に細かなスリット、突起を形成して接触面積を少なくすればよい。
【0013】
さらには、支持棒によってプリフォームに過剰な応力が作用することが無いようにするためには、前記支持棒の先端に、前記プリフォームの側から所定以上の押し付け力が作用した場合に、当該支持棒を、その軸線方向に沿って縮めるか、あるいは、前記プリフォームの口部から押し出される方向に移動させることが望ましい。
【0014】
さらにまた、前記プリフォームを二軸延伸ブロー成形する場合には、当該二軸延伸ブロー成形時に用いる延伸ロッドを、前記支持棒に兼用することもできる。
【0015】
次に、プリフォームの変形を防止するためには、前記プリフォームの加熱時に、当該プリフォーム内を加圧状態に保持することが望ましい。
【0016】
ここで、本発明では、前記プリフォームの口部に差し込み可能な差込ノズルを備えたプリフォームキャリアによって倒立状態でプリフォームを搬送しながら当該プリフォームを加熱し、前記差込ノズルのノズル穴を介して下側から前記支持棒を前記プリフォームの胴部内に挿入することができる。
【0017】
この場合に用いる本発明のプリフォームキャリアは、前記差込ノズルを備えているキャリア本体と、このキャリア本体に取り付けた前記支持棒とを有していることを特徴としている。
【0018】
ここで、前記支持棒はその軸線方向に伸縮あるいは移動可能な状態でキャリア本体に取り付け、弾性部材によって、常に伸張方向あるいはプリフォーム内に押し込まれる方向に付勢しておくことができる。
【0019】
次に、本発明は、プリフォームを二軸延伸ブロー成形に適した温度状態にする加熱工程と、加熱後のプリフォームを二軸延伸ブローして成形品を得るブロー工程とを有する二軸延伸ブロー成形方法において、前記加熱工程では、上記のプリフォーム加熱方法によってプリフォームを加熱することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、プリフォームを加熱する際に、その内部に支持棒を挿入するようにしている。したがって、プリフォームの肉厚を薄くして倒立状態で加熱しながら搬送した場合において、プリフォームが自重によって横倒れ状態に陥ることが防止され、また、軸線方向に熱収縮することが防止される。この結果、次の工程であるブロー成形において熱変形に起因して成形不良が生ずることが回避される。
【0021】
また、本発明では、挿入した支持棒を利用して、プリフォームを内側から加熱しているので、プリフォームを全体として均一に加熱できる。
【0022】
さらに、本発明では、プリフォームの加熱時に、プリフォームの内圧を高めるようにしているので、プリフォームの熱による変形を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したPETボトルの二軸延伸ブロー成形機の例を説明する。
【0024】
図1は二軸延伸ブロー成形機の全体構成を示す模式図である。図2ないし図4は、それぞれ、二軸延伸ブロー成形機の側面構成図、平面構成図、および二軸延伸ブロー成形部の断面構成図である。
【0025】
図1ないし図4を参照して説明すると、二軸延伸ブロー成形機1は、プリフォーム10を供給するプリフォーム供給部2と、プリフォーム加熱部3と、加熱後のプリフォーム10を二軸延伸ブロー成形する二軸延伸ブロー成形部4と、成形品20を回収する回収部5と、これらの各部分を順次に経由する閉鎖状の搬送路6と、この搬送路6に沿って搬送される複数個のプリフォームキャリア7とを有している。
【0026】
搬送路6は、図3において太線で示すように長方形をした閉鎖形状となっており、プリフォームキャリア7の搬送方向を矢印で示してある。搬送路6は、プリフォーム10が担持されたプリフォームキャリア7をプリフォーム加熱部3および二軸延伸ブロー成形部4を介して搬送する第1の搬送路部分62(図3における点Aから点Bまでの経路)と、成形品20が回収された後のプリフォームキャリア7を二軸延伸成形部4の下側を通ってプリフォーム供給部2まで搬送する第2の搬送路部分64(図1および図3における点Cから点Dまでの経路)を備えている。図1および図4から分かるように、二軸延伸ブロー成形部4のブロー型締機構41の下側の位置を第2の搬送路部分64が通過するように構成されている。
【0027】
各搬送路部分62、64は水平な搬送経路である。従って、これらの搬送経路部分のプリフォーム供給側の搬送経路部分は下側の第2の搬送経路部分64から上側の第1の搬送経路部分62に到る上昇経路部分61(図1および図3における点Dから点Aまでの経路)となっている。逆に、成形品回収側の搬送経路部分は上側の第1の搬送経路部分62から下側の第2の搬送経路部分64に到る降下経路部分63(図1および図3における点Bから点Cまでの経路)となっている。
【0028】
図5(a)および(b)はプリフォームキャリアを示す斜視図および断面図である。これらの図に示すように、プリフォームキャリア7は、矩形の本体71と、これを上下方向に回転自在の状態で貫通している回転軸72と、この回転軸72の上端面に同軸状態に形成した円筒状のプリフォーム差込ノズル73と、回転軸72の下端側の突出部分に形成した外歯74から構成されている。回転軸72およびプリフォーム差込ノズル73の中心には貫通孔75が形成されている。この貫通孔75の下側には、後述のようにブローエアー吹き込み口コアを差し込み可能である。また、延伸ロッドをこの貫通孔75を介して上側のプリフォーム10の内部に差し込み可能となっている。
【0029】
ここで、プリフォームキャリア7の貫通孔75には、同軸状態で一回り小さな外径寸法の細長い円柱状の支持棒76が配置されている。この支持棒76はプリフォーム差込ノズル73から上方に所定の長さだけ突出している。本例では、プリフォーム差込ノズル73にプリフォーム10の口部を差し込んだ状態において、その底部内周面の近傍位置に達する長さとされている。貫通孔75の内部に位置している支持棒76の下端部分にはばね受け用の大径フランジ76aが形成されている。貫通孔75の内周面部分の下端側の部位には、内方に突出した円環状のフランジ78がばね受けとして形成されている。これら大径フランジ76aとフランジ78の間にコイルばね79が装着されている。支持棒76の下端76bは貫通孔75の下端開口75aから下方に突出している。
【0030】
プリフォーム10は、有底筒状の細長い円筒状の胴部10aと、この開口側の端に形成されている円筒状の口部10bとを備えている。口部10bと胴部10aの間の外周面部分には口部フランジ10cが形成されており、この口部10bの外周面部分には雄ねじが形成されている。口部10bは二軸延伸ブロー成形されずにそのまま成形品20の口部として残り、胴部10aのみが二軸延伸ブロー成形される。
【0031】
この形状のプリフォーム10は、プリフォーム供給部2の側から地点Dに至ったプリフォームキャリア7に供給される。口部10bが上向き状態で待機しているプリフォーム10は軸線21の回りに旋回可能な旋回グリッパ22によって口部10bが把持される。次に、グリッパ22が軸線21の回りに180度旋回すると、把持されているプリフォーム10の口部10bの開口が下向きとなり、丁度、地点Dに待機しているプリフォームキャリア7の真上に位置決めされる。
【0032】
この状態において、二軸搬送機構61Aによって、プリフォームキャリア7がZ軸方向に上昇する。この結果、支持棒76がプリフォーム10の口部10bから内部に挿入され、続いて、その差込コア73が口部10bに差し込まれる。図5(b)に想像線で示すように、支持棒76はプリフォーム10内にほぼ同軸状態で挿入され、その先端面76bが、プリフォーム10の底部10dの内周面に僅かの隙間で対峙した状態になる。
【0033】
このようにして、プリフォーム10がプリフォームキャリア7に担持された後は、グリッパ22による把持が解除された後に、二軸搬送機構61Aによって、プリフォームキャリア7はY軸方向に移動して地点Aに到る。地点Aに至ったプリフォームキャリア7は、プッシュロッド61BによってX軸方向に向けて水平に押し出されて、二軸搬送機構61Aから第1の搬送路部分62に引き渡される。
【0034】
第1の搬送路部分62は、プリフォームキャリアの矩形の本体71が摺動する一対のレール62a、62bを備えている。これらのレール上に乗ったプリフォームキャリア7は、上記のプッシュロッド61Bによりプリフォームキャリア7が1個ずつ押し出される毎に、当該搬送路部分62に沿って移動する。すなわち、この搬送路部分62においては、プリフォームキャリア7の搬送方向の長さによって送りピッチが規定され、この送りピッチ毎に一列に配列されたプリフォームキャリア7が全体として間欠的に搬送されることになる。
【0035】
次に、加熱部3においては、搬送経路62に沿って片方の側にプリフォーム加熱用のヒータが配列されている。プリフォーム10、駆動プーリ、従動プーリおよびこれらの間に架け渡したタイミングベルトからなる回転機構62Aによって回転させられながら加熱部3を搬送される。すなわち、タイミングベルトがプリフォームキャリア7の歯車74に噛み合って、歯車74を回転させると、この歯車74が一体的に取付けられている回転軸72が回転して、その上端面の差込コア73に差し込まれているプリフォーム10が回転する。
【0036】
次に、加熱部3において回転しながら加熱された後のプリフォーム10は、加熱部3を通り抜けた後に一定の期間だけ冷却されて、成形に適した温度状態とされる。しかる後に二軸延伸ブロー成形部4に搬入される。
【0037】
本例のプリフォームキャリア7は支持棒76を備えており、支持棒76が胴部内に挿入された状態でプリフォーム10が加熱される。したがって、薄いプリフォーム10を加熱する場合であっても、倒立状態の当該プリフォーム10が自重によって横倒れ状態に変形することが防止あるいは抑制される。また、PP樹脂、PE樹脂などからなる薄いプリフォームの場合には、軸線方向への熱収縮が阻止あるいは抑制される。このため、二軸延伸ブロー成形部4に、大きく変形したプリフォーム10が送り込まれ、成形不良が発生するという弊害を確実に回避できる。
【0038】
また、支持棒76はコイルばね79によって支持されており、ばね力より大きな力を加えると、下方に移動可能となっている。プリフォーム10が熱変形によって支持棒76の先端面に当り、支持棒76を下方向に押し込んだ場合には、押し込み力が小さい場合にはプリフォーム10の変形が防止される。押し込み力が大きくなると、支持棒76が下方に押されて変形可能となる。したがって、プリフォーム10に悪影響を及ぼすような大きな力がプリフォーム10に作用する前に支持棒76を押し下げることができる。なお、支持棒76を伸縮式の構造として、ばね力によって伸張状態に保持しておき、所定以上の力が作用すると押し縮めることができるようにしておいてもよい。
【0039】
次に、本例では、加熱後のプリフォーム10が担持されたプリフォームキャリア7を二軸延伸ブロー成形部4に1個ずつ送り込むための送り機構9を備えている。この送り機構9は、プリフォームキャリア7を、加熱部3での送りピッチよりも広い送りピッチで1個ずつ二軸延伸ブロー成形部4に送り込むためのものである。
【0040】
図6は加熱後のプリフォームを二軸延伸成形部に送り込むための送り機構を示す説明図である。送り機構9は、搬送方向に向けて送りピッチL2の間隔で一対のグリッパ91、92を備えている。これらのグリッパは一体となって搬送方向に向けて送りピッチ2で往復移動するように構成されている。加熱部3を通過して送りピッチL1で搬送されて地点A1に至ったプリフォームキャリア7は、グリッパ92によって把持される。この状態では、前方側のグリッパ91は二軸延伸成形部4における成形位置A2に位置している。
【0041】
二軸延伸ブロー成形が終了した後は、グリッパ91、92は搬送方向に向けて送りピッチL2で移動する。この結果、図6において実線で示すように、後ろ側のグリッパ92に把持されているプリフォームキャリア7が二軸延伸成形位置A2に至り、成形品20が担持されているプリフォームキャリア7を把持している前側のグリッパ91は地点Bに到る。
【0042】
送り機構9はこのような往復動作を繰り返し行うことにより、送りピッチL1で送られて来たプリフォームキャリア7をそれよりも広い送りピッチL2で二軸延伸ブロー成形部4に搬送する。
【0043】
再び、図2、4を参照して説明すると、二軸延伸ブロー成形部4は、1組の成形型42と、この型締機構41と、プリフォームキャリア7の貫通孔75の下端開口75aから差し込まれるブローエアー吹き込み口コア43と、同じく貫通孔75の下端開口75aから差し込まれる延伸ロッド44と、これらブローエアー吹き込み口コア43および延伸ロッド44の差し込み動作を行う駆動機構45とを備えた構成となっている。
【0044】
成形時には、地点A2にプリフォーム10が搬入されると、型締機構41によって左右一対の成形型42の型締が行われる。この後に、ブローエアー吹き込み口コア43が上昇してプリフォームキャリア7の貫通孔75に連結され、プリフォーム10へのブローエアーの吹き込みが開始される。これと同時に、延伸ロッド44が上昇して、貫通孔75を通ってプリフォーム10内に差し込まれる。エアーの吹き込みと延伸ロッド44の差し込みによって二軸延伸成形が行われる。
【0045】
ここで、図7は延伸ロッド44の上昇時の状態を示してある。この図に示すように、延伸ロッド44が上昇すると、その先端面がプリフォームキャリア7の貫通孔75の下端開口から下方に突出している支持棒76の下端面に当たる。この後は、支持棒76と一体となって上昇する。延伸ロッド44と支持棒76が一本の延伸ロッドとして機能する。換言すると、支持棒76が二軸延伸ブロー成形部4では延伸ロッドとして機能する。
【0046】
この結果、従来のように延伸ロッド44を大きなストロークで昇降させる必要がなく、ブローエアー吹込み口コア43と同程度のストロークで昇降させることができ、大きなストロークで昇降させていた場合に比べて、これらの昇降に要する時間を大幅に低減でき、処理効率を向上させることができる。
【0047】
次に、二軸延伸ブロー成形によって得られた成形品20は、上述した送り機構9によって地点Bまで搬送される。この地点Bにおいて、プリフォームキャリア7は二軸搬送機構63Aに引き渡される。
【0048】
プリフォームキャリア7が二軸搬送機構63Aに引き渡されると、成形品回収部5の旋回グリッパ5Aがプリフォームキャリア7上の成形品20のネック部分を把持する。この状態で二軸搬送機構63Aはプリフォームキャリア7を降下(Z軸方向に移動)させる。この結果、成形品20の口部12からプリフォームキャリア7の側の支持棒76および差込コア73が引き抜かれる。この後は、旋回グリッパ5Aが旋回して、成形品20を回収する。二軸搬送機構63Aによる降下を利用して、成形品20をプリフォームキャリア7の側から抜き取る抜き取り機構が構成されている。従って、簡単な機構によって成形品20を回収することができる。
【0049】
二軸搬送機構63Aは降下させることにより空となったプリフォームキャリア7を第2の搬送路部分64の開始点Cに向けて搬送する(Y軸方向に搬送する)。地点Cに到ると、プッシュロッド63Bによってプリフォームキャリア7が二軸搬送機構63Aの側からX軸方向に押し出されて、第2の搬送路部分64を構成している左右一対の搬送ベルト64a,64bに乗る。これらの搬送ベルトによってプリフォームキャリア7は、二軸延伸成形部4の型締機構41の下側を通ってプリフォーム供給部2の側に向けて搬送される。
【0050】
以後、同様にしてプリフォームキャリア7が搬送路6を繰り返し移動してプリフォーム10の二軸延伸ブロー成形が行われる。
【0051】
(その他の実施の形態)
本例では、最初からプリフォームに支持棒を挿入した状態で搬送している。支持棒を挿入する時点は、本例のようにプリフォームの加熱開始前の時点でもよいが、加熱開始の時点、加熱中の時点であってもよい。場合によっては、加熱終了の時点、あるいは、加熱後の時点であってもよい。
【0052】
また、プリフォーム10に支持棒76を挿入する前に、支持棒76を所定の温度まで加熱しておいてもよい。支持棒76を挿入することによってプリフォーム10の内部が十分に加熱されず、全体として不均一な加熱状態に陥るおそれがある場合には、支持棒76を加熱しておくことが望ましい。
【0053】
さらに、支持棒76をプリフォームを加熱するために積極的に利用してもよい。すなわち、支持棒76をプリフォームに挿入した後に、支持棒76を加熱すれば、プリフォームを内側から加熱することができる。この結果、プリフォームを全体として均一に加熱できるので好ましい。
【0054】
次に、支持棒に表面処理を施し、支持棒の表面にプリフォームの樹脂が貼り付き難くし、あるいは、当該樹脂に対するすべり性を高めることが望ましい。例えば、支持棒を金属棒から形成し、この表面にテフロン(登録商標)コーティングなどの表面処理を施すことができる。また、支持棒の表面を梨地とし、あるいは、縦横の微細な溝などを形成することによって、プリフォームとの接触面積を少なくすればよい。
【0055】
さらに、本例では、支持棒を延伸ロッドとして利用している。この代わりに、支持棒を中空部材から形成し、この中を貫通させて延伸ロッドをプリフォーム内に押し込むようにしてもよい。
【0056】
次に、本例では、支持棒76を用いてプリフォームの変形を防止あるいは抑制している。この代わりに、プリフォームの加熱時に、プリフォーム内に圧縮空気を供給してその内圧を高めて変形しないようにしてもよい。勿論、支持棒を挿入すると共に、プリフォーム内圧を高めてプリフォームの変形を確実に防止できるようにしてもよい。
【0057】
なお、上記の例では、二軸延伸成形部においては1組の成形型を備えた、所謂1個取りの構成となっている。この代わりに、例えば、2個取りの構成とすることもできる。この場合には、送り機構9の代わりに、2個ずつプリフォームキャリアを搬送する送り機構を採用すればよい。この場合、搬送動作に連動させて、2個のパレットの間隔を広げる機構を付設すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を適用した二軸延伸ブロー成形機の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明を適用した二軸延伸ブロー成形機の側面構成図である。
【図3】図2の二軸延伸ブロー成形機の平面構成図である。
【図4】図2の二軸延伸ブロー成形機の二軸延伸成形部の断面構成図である。
【図5】図2の二軸延伸ブロー成形機におけるプリフォームキャリアの斜視図および断面図である。
【図6】図2の二軸延伸ブロー成形機における加熱後のプリフォームを二軸延伸ブロー成形部に送り込むための送り機構を示す説明図である。
【図7】延伸ロッドによって支持棒を押し出すときの状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 二軸延伸成形機
2 プリフォーム供給部
3 プリフォーム加熱部
4 二軸延伸成形部
5 回収部
6 搬送路
7 プリフォームキャリア
73 押し込みコア
76 支持棒
76a フランジ
79 コイルばね
9 送り機構
10 プリフォーム
10a 胴部
10b 口部
10d 底部
62 第1搬送路部分
64 第2搬送路部分
91、92 グリッパ
L1、L2 送りピッチ
10 プリフォーム
20 成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の胴部と口部を備えた樹脂製のプリフォームを、ブロー成形に適した温度状態となるように加熱するためのプリフォーム加熱方法において、
前記プリフォームをその口部を下にして立てた状態で加熱し、
遅くとも、前記プリフォームの加熱終了前の時点において、当該プリフォームの口部からその胴部内に所定長さの支持棒を挿入し、
当該支持棒によって、前記プリフォームの胴部における熱変形による横倒れ、および/または、胴部における軸線方向への熱収縮を防止あるいは抑制することを特徴とするプリフォーム加熱方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記プリフォームの加熱開始前の時点において、当該プリフォームの口部からその胴部内に前記支持棒を挿入することを特徴とするプリフォーム加熱方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記支持棒を、前記プリフォームに挿入する前に、所定の温度に加熱しておくことを特徴とするプリフォーム加熱方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記プリフォームに挿入された前記支持棒を加熱して、前記プリフォームを内側からも加熱することを特徴とするプリフォーム加熱方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記支持棒の先端が前記プリフォームの胴部底面に当たらない位置まで、当該支持棒を前記プリフォームの胴部内に挿入することを特徴とするプリフォーム加熱方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
前記支持棒に表面処理を施し、前記支持棒の表面に前記プリフォームの樹脂が貼り付き難くし、あるいは、当該樹脂に対するすべり性を高めることを特徴とするプリフォーム加熱方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
前記支持棒の先端に、前記プリフォームの側から所定以上の押し付け力が作用した場合には、当該支持棒を、その軸線方向に沿って縮めるか、あるいは、前記プリフォームの口部から押し出される方向に移動させることを特徴とするプリフォーム加熱方法。
【請求項8】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
前記プリフォームを二軸延伸ブロー成形に適した温度に加熱し、
二軸延伸ブロー成形時に用いる延伸ロッドを、前記支持棒として用いることを特徴とするプリフォーム加熱方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項において、
前記プリフォームの加熱時に、当該プリフォーム内を加圧状態に保持することを特徴とするプリフォーム加熱方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちのいずれかの項において、
前記プリフォームの口部に差し込み可能な差込ノズルを備えたプリフォームキャリアによって倒立状態でプリフォームを搬送しながら当該プリフォームを加熱し、
前記差込ノズルのノズル穴を介して下側から前記支持棒を前記プリフォームの胴部内に挿入することを特徴とするプリフォーム加熱方法。
【請求項11】
請求項10に記載のプリフォーム加熱方法に用いるプリフォームキャリアであって、
前記差込ノズルを備えているキャリア本体と、このキャリア本体に取り付けた前記支持棒とを有していることを特徴とするプリフォームキャリア。
【請求項12】
請求項11において、
前記支持棒はその軸線方向に伸縮あるいは移動可能な状態でキャリア本体に取り付けられており、
弾性部材によって、常に伸張方向あるいはプリフォーム内に押し込まれる方向に付勢されていることを特徴とするプリフォームキャリア。
【請求項13】
プリフォームを二軸延伸ブロー成形に適した温度状態にする加熱工程と、
加熱後のプリフォームを二軸延伸ブローして成形品を得るブロー工程とを有する二軸延伸ブロー成形方法において、
前記加熱工程は、請求項1ないし10のうちのいずれかの方法によって前記プリフォームを加熱することを特徴とする二軸延伸ブロー成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−12737(P2008−12737A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184850(P2006−184850)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(594082648)株式会社フロンティア (34)
【Fターム(参考)】