説明

プリンタ

【課題】記録紙の詰まりの原因となる遮蔽物を設けることなく、プリンタの筐体内の光センサが、外光に起因して誤動作することを防止できること。
【解決手段】プリンタ1のシステムコントローラ10は、搬送装置(24,240,22,220)に対し、記録紙4をその一部が排出口61から外側へはみ出す遮光位置まで搬送する動作を実行させ、その搬送動作が実行された後に、光センサ50の投光部51による光の照射を実行させつつ受光部52の検出信号を入力し、得られた検出信号のレベルに応じて被検出物の状態を判定する。光センサ50の受光部52は、筐体60内において排出口61よりも低い位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙などの被検出物を検出する光センサを備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタは、記録紙などの被検出物の状態を検出するセンサとして、光センサを備えることが多い。例えば、プリンタにおいて、光センサは、記録紙などの被検出物が所定の位置に存在するか否かを検出するために用いられる。
【0003】
光センサは、被検出物の位置へ光を照射する投光部及びその投光部からの光を受光する受光部とを備え、受光部の検出信号のレベルが、被検出物の有無の指標となる。なお、被検出物の位置とは、被検出物が配置されているはずの位置を意味する。
【0004】
例えば、透過型の光センサは、被検出物の位置の両側に対向して配置された投光部及び受光部を備える。そして、被検出物が存在しない場合に、受光部が投光部から直接到達する直接光を受光し、受光部の検出信号のレベルが、所定のしきい値を超える。
【0005】
また、反射型の光センサは、被検出物の位置から見て180度未満の角度の範囲内に配置された投光部及び受光部を備える。そして、被検出物が存在する場合に、受光部が投光部の光が被検出物で反射した反射光を受光し、受光部の検出信号のレベルが、所定のしきい値を超える。
【0006】
ところで、光センサは、投光部からの光(直接光又は反射光)以外の外乱光が受光部に到達すると、誤った検出信号を出力してしまい、それが被検出物の誤検出の原因となる場合がある。プリンタにおいては、外装を形成する筐体の外部から筐体内へ入射する太陽光又は室内照明の光などの外光が、光センサに対する外乱光となる。
【0007】
従来、プリンタにおいて、外光に起因する光センサの誤動作を防止する対策が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1に示されるプリンタは、投光部が消灯されている状態での受光部の検出信号のレベルと、投光部が点灯されている状態での受光部の検出信号のレベルとの差に応じて、記録紙の有無を判定する。この判定手法は、受光部の検出信号のレベルが、外光の強度と投光部からの光の強度との加算値に相当する、ということを前提にしている。
【0009】
また、特許文献2に示されるプリンタは、記録紙搬送路の開口部に、外光を遮断するひさしを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−68529号公報
【特許文献2】特開2006−298532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、プリンタ内に入った外光の強度が強い場合、受光部の検出信号におけるSN比が悪化し、投光部からの光の有無に応じた受光部の検出信号のレベルの変化が生じにくくなる。そのため、特許文献1に示される第一の従来技術は、外光に起因する光センサの誤動作の防止策として十分ではないという問題を有している。
【0012】
即ち、外光に起因する光センサの誤動作を防止するためには、そもそも外光がプリンタの筐体内に極力入らない状態で、光センサを動作させることが重要である。
【0013】
また、特許文献2に示される第二の従来技術は、外光を十分に遮断できる大きなひさしが設けられた場合に、そのひさしが記録紙の詰まりを引き起こしやすいという問題点を有している。さらに、第二の従来技術は、記録紙の詰まりが生じない程度の比較的小さなひさしが設けられた場合に、そのような小さなひさしによって外光を十分に遮断することは難しいという問題点を有している。
【0014】
本発明の目的は、記録紙の詰まりの原因となる遮蔽物を設けることなく、プリンタの筐体内の光センサが、外光に起因して誤動作することを防止できることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るプリンタは、記録紙に画像を形成する装置であり、上記目的を達成するために以下に示される各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、記録紙を、筐体内の供給部からその筐体に形成された排出口に至る搬送経路に沿って搬送する搬送部である。
(2)第2の構成要素は、筐体内において被検出物の位置へ光を照射する投光部及びその投光部からの光を受光する受光部を備えた光センサである。
(3)第3の構成要素は、搬送部に対し、記録紙をその一部が排出口から外側へはみ出す遮光位置まで搬送する動作を実行させる第一搬送制御部である。
(4)第4の構成要素は、第一搬送制御部による搬送動作が実行された後に、投光部による光の照射を実行させつつ受光部の検出信号を入力する第一光センサ制御部である。
(5)第5の構成要素は、第一光センサ制御部により得られた受光部の検出信号のレベルに応じて被検出物の状態を判定する第一判定部である。
【発明の効果】
【0016】
プリンタにおいて、記録紙は、その一部が排出口から外側へはみ出す位置(遮光位置)まで搬送されると、排出口をほぼ塞ぐ状態となる。本発明に係るプリンタは、記録紙が遮光位置に存在する状態、即ち、外光が筐体内にほぼ入らない状態で、光センサを動作させ、その動作により得られた受光部の検出信号が、被検出物の状態の判定に用いられる。その結果、外光に起因する光センサの誤動作を防止することが可能となる。しかも、記録紙そのものが外光を遮断し、記録紙の詰まりの原因となる遮蔽物を排出口又は記録紙の搬送経路に設けることは不要である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタ1の第一の状態における概略図である。
【図2】プリンタ1の第二の状態における概略図である。
【図3】プリンタ1が備えるシステムコントローラのブロック図である。
【図4】プリンタ1が実行する第一実施例に係る光センシング処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】プリンタ1が実行する第二実施例に係る光センシング処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】プリンタ1が備える光センサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0019】
本発明の実施形態に係るプリンタ1は、サーマルヘッドを備えた面順次方式の熱転写プリンタである。
【0020】
<装置の構成>
まず、図1、図2、図3及び図6を参照しつつ、本発明の実施形態に係るプリンタ1の構成について説明する。図1及び図2に示されるように、プリンタ1の画像形成部は、サーマルヘッド21、ヘッド変位装置210、プラテンローラ22、プラテンローラ駆動モータ220、ピンチローラ機構24、ピンチローラ駆動モータ240、インクシートユニット30及び切断装置23を備えている。さらに、プリンタ1は、システムコントローラ10、ペーパーロール40及び光センサ50を備えている。
【0021】
以上に示したプリンタ1の各構成要素は、プリンタ1の外装を形成する筐体60の内側に収容されている。
【0022】
さらに、図3に示されるように、システムコントローラ10は、通信インターフェース11、マイクロコンピュータ12、操作部13、表示部14、アクチュエータ駆動回路15、メモリ16、画像処理回路17、サーマルヘッドコントローラ18を備える。通信インターフェース11、マイクロコンピュータ12、操作部13、表示部14、画像処理回路17及びサーマルヘッドコントローラ18は、例えば、バスを介して相互にデータの受け渡しが可能である。
【0023】
<画像形成部の基本構成>
インクシートユニット30は、帯状のインクシート3がロール状に巻かれた部分である繰り出し部31と、繰り出し部31から繰り出されたインクシート3が巻き取られた部分である巻き取り部32とを備える。また、インクシート3は、帯状のフィルムからなる基材層の表面に複数の色の昇華性の染料インクの層が形成された部分であるインク形成部と、基材層の表面に透明な保護材の層が形成された部分である保護材形成部とを有している。インク形成部各々及び保護材形成部は、帯状のインクシート3の長手方向において予め定められた順番で繰り返し配列されている。
【0024】
インクシートのインク形成部は、例えば、イエローのインク層の部分、マゼンタのインク層の部分、及びシアンのインク層の部分を含む。なお、インク形成部が、ブラックのインク層の部分を含む場合もある。
【0025】
ペーパーロール40は、帯状の記録紙4が巻き取られてロール状にまとめられた物である。昇華型熱転写プリンタ用の記録紙4は、シート状の基材層の表面に受容層が形成された構造を有している。受容層は、染料インクとの親和性の高い樹脂の層であり、インクシート3のインクは、記録紙4の受容層へ転写される。
【0026】
ピンチローラ機構24は、記録紙4を第1方向及びその反対の第2方向へ搬送する機構であり、記録紙4を挟み込んで回転するピンチローラ241及びグリップローラ242を備える。また、ピンチローラ駆動モータ240は、ピンチローラ241を正回転及び逆回転させるモータである。
【0027】
プラテンローラ22は、被転写体である記録紙4及び現像体であるインクシート3をサーマルヘッド21との間に挟んで回転するローラである。また、プラテンローラ駆動モータ220は、プラテンローラ22を正回転及び逆回転させるモータである。
【0028】
プリンタ1の筐体60には、記録紙4の排出口61が形成されている。排出口61は、筐体60の内側と外側とに連通する貫通孔である。
【0029】
ピンチローラ機構24、ピンチローラ駆動モータ240、プラテンローラ22及びプラテンローラ駆動モータ220は、記録紙4を、筐体60内のペーパーロール40から排出口61に至る搬送経路に沿って搬送する搬送装置の一例である。以下、ピンチローラ駆動モータ240、プラテンローラ22及びプラテンローラ駆動モータ220の全体を、搬送装置(24,240,22,220)と総称する。なお、ペーパーロール40は、筐体60内における記録紙4の供給部の一例である。
【0030】
サーマルヘッド21は、インクシート3におけるインク形成部各々及び保護材形成部を順次加熱する装置である。サーマルヘッド21におけるインクシート3との接触部にはヒータ211が設けられている。サーマルヘッド21は、画像のピクセル単位でインクシート3の加熱エネルギーを調節できる。
【0031】
ヘッド変位装置210は、サーマルヘッド21を移動可能に支持するアクチュエータである。サーマルヘッド21は、ヘッド変位装置210により、プラテンローラ22に近接し、プラテンローラ22との間にインクシート3を挟み込む記録位置と、プラテンローラ22から離れた待避位置との間で移動可能に支持されている。ヘッド変位装置210は、例えばソレノイドなどである。なお、図1及び図2は、サーマルヘッド21が待避位置に存在する状態を示している。
【0032】
切断装置23は、筐体60内における排出口61の近傍に配置され、ペーパーロール40側と連なったまま排出口61から排出された記録紙4を、1ページ分ずつ切断する装置である。
【0033】
プリント処理が実行される場合、まず、サーマルヘッド21が退避位置に存在する状態において、記録紙4は、第一方向に回転するピンチローラ機構24及びプラテンローラ22によって、ペーパーロール40から繰り出されつつ、プラテンローラ22とインクシート3との間を経て排出口61へ向かう順方向へ搬送される。図1は、記録紙4が順方向へ搬送されている状態を示す。その際、インクシート3は、図1に示されるように、記録紙4から離れた状態で停止している。
【0034】
次に、サーマルヘッド21が記録位置に存在する状態において、記録紙4は、第二方向に回転するピンチローラ機構24及びプラテンローラ22により、排出口61からペーパーロール40へ向かう逆方向へ搬送される。その際、インクシート3は、記録紙4に密着した状態で繰り出し部31から巻き取り部32へ移動する。
【0035】
さらに、サーマルヘッド21が、移動中のインクシート3を加熱し、画像又はオーバーコート層をインクシート3から記録紙4へ転写させる。その際、サーマルヘッド21は、画像データにおける各ピクセルの濃度に応じた加熱エネルギーでインクシート3のインク形成部を加熱する。
【0036】
画像が形成された記録紙4は、再び、ピンチローラ機構24及びプラテンローラ22によって順方向へ搬送され、排出口61から排出される。最後に、切断装置23が、記録紙4を切断する。
【0037】
以上に示されるように、プリンタ1は、プリント処理において、サーマルヘッド21を待避位置に移動させて記録紙4を1ページ分だけ順方向へ搬送する動作と、サーマルヘッド21を記録位置に移動させてインクシート3を加熱しつつ記録紙4を逆方向へ搬送することにより画像の転写を行う動作と、を順次繰り返す。
【0038】
プリント処理により、各色のインクの画像がインクシート3から記録紙4へ順次重ねて転写される。さらに、オーバーコート層が、インクシート3から記録紙4へ、記録紙4上のカラー画像を覆うように転写される。プリント処理を実行する各機器は、マイクロコンピュータ12によって制御される。
【0039】
また、プリンタ1は、図2に示されるように、サーマルヘッド21が待避位置に存在する状態で、記録紙4を逆方向へ搬送することも可能である。この場合、記録紙4に対する画像形成は実行されない。
【0040】
<光センサの構成>
光センサ50は、筐体60内において被検出物の有無を検出する非接触センサである。本実施形態において、プリンタ1は2つの光センサ50を備えている。以下、一方の光センサ50を第一光センサ50A、他方の光センサ50を第二光センサ50Bと称する。
【0041】
第一光センサ50Aは、ペーパーロール40が適切な位置に装着されているか否かを検出するセンサである。また、第一光センサ50Aは、ペーパーロール40に予め定められた量以上の記録紙4が残っているか否かを検出するセンサとしても機能する。
【0042】
一方、第二光センサ50Bは、記録紙4の搬送経路における画像形成位置と排出口61との間の所定位置に記録紙4が存在するか否かを検出するセンサである。
【0043】
光センサ50は、被検出物の位置へ光を照射する投光部51と、その投光部51からの光を受光する受光部52とを備える。
【0044】
図6は、光センサ50の回路図の一例である。図6に示される例では、光センサ50の投光部51を構成する回路は、電位供給部とグランドとの間に直列接続された発光ダイオード511、トランジスタ512及び抵抗素子513を備えている。トランジスタ512は、制御入力端子514に入力される制御信号に応じて、発光ダイオード511の点灯及び消灯を切り替えるスイッチ素子である。発光ダイオード511の光は、被検出物の位置へ照射される。
【0045】
また、光センサ50の受光部52を構成する回路は、電位供給部とグランドとの間に直列接続されたフォトトランジスタ521及び抵抗素子522を備えている。フォトトランジスタ521は、発光ダイオード511からの光を受光する受光素子の一例であり、受光した光の強度に応じてレベルが変化する検出信号を、信号出力端子523を通じて出力する。
【0046】
プリンタ1が備える2つの光センサ50各々の受光部52は、筐体60内における排出口61よりも低い位置に配置されている。なお、図1及び図2に示される2つの光センサ50は、いずれも透過型の光センサであるが、反射型の光センサが採用されてもよい。
【0047】
なお、透過型の光センサは、投光部51の光を受光部52に伝えやすいため、受光部52においてSN比の高い検出信号が得られ、検出精度が高い。さらに、透過型の光センサは、低コストであり、取り付けが容易である。
【0048】
一方、反射型の光センサは、投光部51及び受光部52の両方を被検出物に対して一方の側に配置することができる。そのため、反射型の光センサは、それを配置するスペースの制約が大きい場合、又は被検出物が大きい場合などに適している。
【0049】
<制御関連機器の構成>
操作部13は、操作ボタン又はタッチパネルなど、ユーザによる操作に応じて情報を入力するデバイスである。
【0050】
表示部14は、LEDランプ又は液晶表示パネルなど、プリンタ1の状態又はユーザに対する操作ガイドの情報などを表示するデバイスである。
【0051】
通信インターフェース11は、マイクロコンピュータ12と外部のホスト装置5との間のデータ通信を中継する装置である。
【0052】
マイクロコンピュータ12は、通信インターフェース11を通じてホスト装置5とデータ通信を行うとともに、画像処理回路17、サーマルヘッドコントローラ18、アクチュエータ駆動回路15及び光センサ50を制御するプロセッサである。
【0053】
マイクロコンピュータ12は、予めメモリ16に記憶されたプログラムモジュールを実行することにより、プリンタ1が備える各機器を制御する制御部として機能する。
【0054】
例えば、マイクロコンピュータ12は、光センシング処理に関するプログラムモジュールを実行することにより、イベント検出部121、搬送制御部122、投光制御部123、受光制御部124及びレベル判定部125として機能する。光センシング処理は、光センサ50各々の投光部51の点灯及び消灯を制御しつつ受光部52の検出信号を入力し、その検出信号のレベルに応じた状態判定を行う処理である。
【0055】
イベント検出部121、搬送制御部122、投光制御部123、受光制御部124及びレベル判定部125が実行する処理の詳細は後に示す。なお、イベント検出部121、搬送制御部122、投光制御部123、受光制御部124及びレベル判定部125は、それぞれの機能を果たす回路として構成されてもよい。
【0056】
メモリ16は、マイクロコンピュータ12によって実行されるプログラムモジュール及びマイクロコンピュータ12が参照する各種のパラメータを記憶する不揮発性のメモリである。
【0057】
画像処理回路17は、マイクロコンピュータ12から処理の開始指令を受けた場合に、ホスト装置5から受信した画像データに対してシャープネス演算及びガンマ変換などの各種の画像補正処理を施す演算を実行する回路である。
【0058】
サーマルヘッドコントローラ18は、画像処理回路17によって補正された画像データに基づいて、サーマルヘッド21の加熱エネルギーをピクセルごとに調節する回路である。
【0059】
アクチュエータ駆動回路15は、マイクロコンピュータ12からの制御指令に従って、ヘッド変位装置210、プラテンローラ駆動モータ220及びピンチローラ駆動モータ240を含むアクチュエータに対して駆動信号及び停止信号を出力する回路である。マイクロコンピュータ12は、アクチュエータ駆動回路15を通じてヘッド変位装置210、プラテンローラ駆動モータ220及びピンチローラ駆動モータ240の動作を制御する。
【0060】
<第一実施例に係る光センシング処理>
続いて、図4に示されるフローチャートを参照しつつ、プリンタ1のシステムコントローラ10が実行する光センシング処理の第一実施例について説明する。
【0061】
図4に示される処理は、例えば、プリンタ1のシステムコントローラ10に対して電力が供給され、システムコントローラ10が起動したときに開始される。
【0062】
第一実施例において、まず、イベント検出部121が、光センサ50を利用して光センシング処理を開始するイベントの発生を検知する処理を実行する(S1)。光センシング処理の開始イベントは、例えば、記録紙4の搬送動作の禁止条件が成立していない状態で、操作部13に対する予め定められた開始操作、又は通信インターフェース11を通じてホスト装置5から開始信号が入力されたこと、などである。
【0063】
また、記録紙4の搬送動作の禁止条件は、例えば、筐体60に設けられたドアが開かれていること、などである。
【0064】
そして、光センシング処理の開始イベントが検知されると、搬送制御部122が、搬送装置(24,240,22,220)に対し、記録紙4をその一部が排出口61から外側へはみ出す遮光位置まで搬送する動作を実行させる。例えば、搬送制御部122は、記録紙4が遮光位置に至るために必要な予め定められた時間だけピンチローラ駆動モータ240及びプラテンローラ駆動モータ220を正回転させる。
【0065】
図1は、記録紙4が遮光位置まで搬送された状態を示す。図1に示されるように、記録紙4は、その一部が排出口から外側へはみ出す位置(遮光位置)まで搬送されると、排出口61をほぼ塞ぐ状態となる。そのため、太陽光又は室内照明の光などの外光8は、その大部分が記録紙4における排出口61からはみ出た部分によって反射され、筐体60内へはほとんど入らない。
【0066】
次に、投光制御部123が、投光部51に制御信号を出力することにより、発光部である発光ダイオード511を点灯させる(S3)。
【0067】
また、記録紙4が遮光位置に存在し、かつ、発光ダイオード511が点灯されている状態において、受光制御部124が、受光部52の検出信号を入力する処理、即ち、受光レベルの入力処理を実行する(S4)。
【0068】
このように、ステップS3,S4において、投光制御部123及び受光制御部124は、記録紙4を遮光位置まで搬送する動作が実行された後に、投光部51による光の照射を実行させつつ受光部52の検出信号を入力する。なお、投光制御部123及び受光制御部124は、第一光センサ制御部の一例である。
【0069】
さらに、投光制御部123が、投光部51に対する制御信号の出力を停止することにより、発光部(発光ダイオード511)を消灯させる(S5)。
【0070】
そして、レベル判定部125が、ステップS4で得られた受光レベルに応じて被検出物の状態を判定する処理を実行する(S6〜S8)。なお、ステップS6〜S8の処理を実行するレベル判定部125は、第一判定部の一例である。
【0071】
より具体的には、レベル判定部125は、ステップS4で得られた受光レベルが、予め設定されたしきい値未満であるか否か判定する(S6)。そして、レベル判定部125は、受光レベルがしきい値未満であると判定した場合、被検出物の状態を示すデータである検出フラグをONに設定する(S7)。また、レベル判定部125は、受光レベルがしきい値以上であると判定した場合、検出フラグをOFFに設定する(S8)。
【0072】
透過型の光センサ50が採用されたプリンタ1において、検出フラグは、その値がONであるときに、被検出物が光の照射位置に存在することを表し、その値がOFFであるときに、被検出物が光の照射位置に存在しないことを表す。
【0073】
また、搬送制御部122は、ステップS4において受光制御部124による受光レベルの入力が終了した後、搬送装置に対し、記録紙4をそれ全体が筐体60内に収まる待避位置まで逆搬送する動作を実行させる(S9)。なお、ステップS9の処理を行う搬送制御部122は、第二搬送制御部の一例である。
【0074】
本実施形態においては、被検出物が、記録紙4又は記録紙4の供給部であるペーパーロール40である。そのため、被検出物である記録紙4が光の照射位置に存在しない場合、記録紙4を待避位置まで逆搬送する必要がない。従って、図4に示される例において、記録紙4を待避位置まで逆搬送する処理は、検出フラグがONに設定された場合にのみ実行される(S9)。
【0075】
マイクロコンピュータ12は、以上に示されたステップS1以降の処理を定期的に繰り返す。ステップS3〜S8の処理は、プリンタ1が備える複数の光センサ50各々について実行される。光センサ50ごとに値が設定された検出フラグは、他の処理において参照される。
【0076】
例えば、第一光センサ50Aに対応する検出フラグの値がOFFである場合、マイクロコンピュータ12は、プリント処理を禁止するとともに、表示部14を通じて、ペーパーロール40が未装着である旨のエラー表示を出力する。
【0077】
また、第二光センサ50Bに対応する検出フラグの値がOFFである場合、マイクロコンピュータ12は、プリント処理を禁止するとともに、表示部14を通じて、記録紙4が残っていない旨のエラー表示を出力する。
【0078】
<効果>
以上に示されるように、システムコントローラ10は、記録紙4が、排出口61を塞ぐ遮光位置に存在する状態、即ち、外光8が筐体60内にほぼ入らない状態で、光センサ50を動作させ、その動作により得られた受光部52の検出信号が、被検出物の状態の判定に用いられる。その結果、外光8に起因する光センサ50の誤動作を防止することが可能となる。しかも、記録紙4そのものが外光8を遮断し、記録紙4の詰まりの原因となる遮蔽物を排出口61又は記録紙4の搬送経路に設けることは不要である。
【0079】
ところで、太陽光又は照明光などの外光8は、通常、プリンタ1に対して上方から入射する。一方、プリンタ1において、光センサ50の受光部52は、筐体60内における排出口61よりも低い位置に配置されている。即ち、プリンタ1においては、外光8のごく一部が、排出口61と遮光位置に位置する記録紙4との間の隙間から筐体60内に入る場合であっても、受光部52へ直接向かう外光8は、記録紙4によって必ず遮断される。そのため、被検出物の誤検出は、より確実に防止される。
【0080】
また、受光部52の検出信号が入力された後に、搬送制御部122が、搬送装置(24,240,22,220)に対し、記録紙4を待避位置まで逆搬送する動作を実行させる(S9)。そのため、プリンタ1が、記録紙4の一部が排出口61からはみ出して見た目の悪い状態となったまま放置されることが防止される。
【0081】
<第二実施例に係る光センシング処理>
次に、図5に示されるフローチャートを参照しつつ、プリンタ1のシステムコントローラ10が実行する光センシング処理の第二実施例について説明する。この第二実施例は、図4に示された第一実施例と比較して、光センサ50の受光レベルの入力処理が追加されている点、及び被検出物の状態の判定が、2つの受光レベルを用いて行われる点の二点のみが異なる。図5において、図4に示されるステップと同じ内容のステップは、同じ参照符号が付されている。以下、第二実施例における第一実施例と異なる点についてのみ説明する。
【0082】
プリンタ1において、記録紙4が存在しない状態である場合、ステップS2において記録紙4を遮光位置まで搬送する動作が実行されても、外光8が筐体60内へ入射することを防止できない。従って、ステップS2の搬送動作が実行された後に、投光部51による光照射を行わない状態で検出される受光レベルが高い状態は、記録紙4が存在しない状態であると考えられる。
【0083】
そこで、第二実施例に係る光センシング処理においては、ステップS2において記録紙4を遮光位置まで搬送する動作が実行された後、投光部51の点灯が行われる前に、以下のステップS10,S1の処理が実行される。
【0084】
即ち、ステップS10において、受光制御部124は、投光部51による光の照射を実行させずに、即ち、発光ダイオード511が点灯されていない状態において、受光部52の検出信号を入力する処理、即ち、受光レベルの入力処理を実行する(S10)。以下、このステップS10で得られる受光レベルを第一受光レベルと称し、前述のステップS4で得られる受光レベルを第二受光レベルと称する。なお、ステップS10の処理を実行する受光制御部124は、第二光センサ制御部の一例である。
【0085】
さらに、ステップS11において、レベル判定部125は、第一受光レベルに応じて、投光制御部123及び受光制御部124によるステップS3〜S5の処理、及びレベル判定部125によるステップS12,S7の処理を実行するか否かを制御する。
【0086】
なお、ステップS12の処理は、第一実施例におけるステップS6の処理に相当するが、その内容については後に説明する。また、ステップS11の処理を実行するレベル判定部125は、第二判定部の一例である。
【0087】
より具体的には、ステップS11において、レベル判定部125は、第一受光レベルが予め定められた第一しきい値未満であるか否かを判別する。第一しきい値は、記録紙4によって外光8が遮断され、かつ、投光部51による光照射が行われていないときに、受光部52の検出レベルがとりうる最大値である。
【0088】
そして、レベル判定部125は、第一受光レベルが第一しきい値以上であると判定した場合、ステップS2〜S7の処理が実行されないようにする。この場合、レベル判定部125は、検出フラグをOFFに設定する(S8)。
【0089】
また、レベル判定部125は、第一受光レベルが第一しきい値未満であると判定した場合にのみ、ステップS3〜S5,S12,S7の処理が実行されるようにする。
【0090】
さらに、第一実施例の6に相当するステップS12において、レベル判定部125は、第一受光レベルと第二受光レベルとの違いに応じて被検出物の状態を判定する。例えば、レベル判定部125は、第一受光レベルと第二受光レベルとの差が予め定められた第二しきい値未満であるか否かを判定することにより、被検出物の有無を判定する(S12)。その他、レベル判定部125が、第一受光レベルに対する第二受光レベルの比としきい値との比較により、被検出物の有無を判定することも考えられる。
【0091】
そして、レベル判定部125は、第一受光レベルに対する第二受光レベルの違いが第二しきい値未満である場合に、検出フラグをONに設定する(S7)。また、レベル判定部125は、それ以外の場合に検出フラグをOFFに設定する(S8)。
【0092】
<効果>
第二実施例に係る光センシング処理が採用された場合も、第一実施例に係る光センシング処理が採用された場合と同様の効果が得られる。
【0093】
また、第二実施例においては、レベル判定部125は、記録紙4を遮光位置へ搬送する動作の後に、投光部51による光照射なしに得られた受光部52の検出信号のレベルに応じて、ステップS3〜S5などの処理を実行するか否かを制御する(S11)。そのため、記録紙4が存在しない場合においても、外光8に起因する光センサ50の誤動作が防止される。
【0094】
また、第二実施例においては、記録紙4を遮光位置へ搬送する動作の実行後に、投光部51の光照射無しの下で得られる第一受光レベルと、投光部51の光照射有りの下で得られる第二受光レベルの違いに応じて、被検出物の状態が判定される(S12)。そのため、外光8の一部が、排出口61と遮光位置に位置する記録紙4との間の隙間から筐体60内に入る場合であっても、被検出物の誤検出は、より確実に防止される。
【0095】
<その他>
以上に示された実施形態において、ステップS3〜S8,S12の処理は、プリンタ1が備える複数の光センサ50各々について実行される。しかしながら、筐体60内の光センサ50の一部が、排出口61から遠い位置に存在するなど、外光8の影響を受けにくい位置に存在することも考えられる。そのため、外光8の影響を受けにくい一部のセンサ50について、第一実施例におけるステップS2,S9を除いた残りの処理のみが実行されることも考えられる。
【0096】
また、プリンタ1における光センサ50は、記録紙4又は記録紙4の供給元の有無を検出するセンサである。そのため、第二実施例のステップS11において、第一受光レベルが第一しきい値以上と判定された場合、被検出物の状態を表す検出フラグをOFFに設定する処理が行われた。
【0097】
しかしながら、光センサ50が、記録紙4に関連しない被検出物を検出するセンサである場合も考えられる。その場合、第二実施例のステップS11において、第一受光レベルが第一しきい値以上と判定されたときに、光センサ50を用いた検出処理そのものをスキップすることも考えられる。
【0098】
また、第二実施例において、ステップS11の処理が省略された光センシング処理が採用されることも考えられる。
【0099】
また、本発明において、外光8を遮るために搬送される記録紙4が、ペーパーロール40から繰り出される記録紙の他、予め1ページ分のサイズごとにカットされた記録紙であることも考えられる。この場合、給紙カセットまたは給紙トレイなどが、記録紙4の供給部となる。また、本発明は、サーマル(感熱)プリンタ、昇華型熱転写プリンタ、溶融型熱転写プリンタ、インクジェットプリンタ及びレーザープリンタなどの各種のプリンタに適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 プリンタ、3 インクシート、4 記録紙、5 ホスト装置、8 外光、10 システムコントローラ、11 通信インターフェース、12 マイクロコンピュータ、13 操作部、14 表示部、15 アクチュエータ駆動回路、16 メモリ、17 画像処理回路、18 サーマルヘッドコントローラ、21 サーマルヘッド、22 プラテンローラ、23 切断装置、24 ピンチローラ機構、30 インクシートユニット、31 繰り出し部、32 巻き取り部、40 ペーパーロール、50 光センサ、50A 第一光センサ、50B 第二光センサ、51 投光部、52 受光部、60 筐体、61 排出口、121 イベント検出部、122 搬送制御部、123 投光制御部、124 受光制御部、125 レベル判定部、210 ヘッド変位装置、211 ヒータ、220 プラテンローラ駆動モータ、240 ピンチローラ駆動モータ、241 ピンチローラ、242 グリップローラ、511 発光ダイオード、512 トランジスタ、513 抵抗素子、514 制御入力端子、521 フォトトランジスタ、522 抵抗素子、523 信号出力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に画像を形成するプリンタであって、
前記記録紙を、筐体内の供給部から前記筐体に形成された排出口に至る搬送経路に沿って搬送する搬送部と、
前記筐体内において被検出物の位置へ光を照射する投光部及び該投光部からの光を受光する受光部を備えた光センサと、
前記搬送部に対し、前記記録紙をその一部が前記排出口から外側へはみ出す遮光位置まで搬送する動作を実行させる第一搬送制御部と、
前記第一搬送制御部による搬送動作が実行された後に、前記投光部による光の照射を実行させつつ前記受光部の検出信号を入力する第一光センサ制御部と、
前記第一光センサ制御部により得られた前記受光部の検出信号のレベルに応じて前記被検出物の状態を判定する第一判定部と、を備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記光センサの前記受光部は、前記筐体内における前記排出口よりも低い位置に配置されている、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第一光センサ制御部によって前記受光部の検出信号が入力された後に、前記搬送部に対し、前記記録紙をそれ全体が前記筐体内に収まる待避位置まで逆搬送する動作を実行させる第二搬送制御部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第一搬送制御部による搬送動作が実行された後に、前記投光部による光の照射を実行させずに前記受光部の検出信号を入力する第二光センサ制御部と、
前記第一光センサ制御部により得られた前記受光部の検出信号のレベルに応じて前記第一光センサ制御部及び前記第一判定部の処理を実行するか否かを制御する第二判定部と、をさらに備える請求項1から請求項3のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項5】
前記第一搬送制御部による搬送動作が実行された後に、前記投光部による光の照射を実行させずに前記受光部の検出信号を入力する第二光センサ制御部をさらに備え、
前記第一判定部は、前記第一光センサ制御部及び前記第二光センサ制御部により得られた前記受光部の検出信号のレベルの違いに応じて前記被検出物の状態を判定する、請求項1から請求項3のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項6】
前記光センサは、前記受光部が前記投光部からの直接光を受光する透過型の光センサである、請求項1から請求項5のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項7】
前記光センサは、前記受光部が前記投光部の光が前記被検出物で反射した反射光を受光する反射型の光センサである、請求項1から請求項5のいずれかに記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−171711(P2012−171711A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32862(P2011−32862)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】