説明

プリント回路基板

局在したはんだ接続が形成されるプリント回路基板。当該プリント回路基板の表面は、厚さが1nmから10μmであるハロハイドロカーボンポリマーを有する組成物の連続的又は非連続的コーティングを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロハイドロカーボンでコーティングされたプリント回路基板を有する製造物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板(PCB)は、エレクトロニクス産業においては、電気及び電子部品を機械的に支持して電気的に接続するのに用いられている。PCBは、上に伝導性トラック-典型的には銅で作られている-が存在する絶縁材料からなる基板又は他の基板を有する。これらの伝導性トラックは、後でたとえばはんだ付けによって基板に取り付けられる電気部品間のワイヤとして機能する。大部分のPCBは、銅の層を基板に堆積されるかさもなければ接合し、続いて化学エッチングによって意図しない銅を取り除いて必要な配置の銅トラックを残すことによって製造される。この段階では、何も取り付けられていないPCBは通常、はんだ付け法によって電子部品が取り付けられる前に、様々な期間-最大で数ヶ月-保存されるものと思われる。
【0003】
プリント回路基板上の伝導性トラックは如何なる伝導性材料で作られても良い。トラックにとって好適な材料は銅である。銅は主としてどの電気伝導度の高さ故に伝導性トラックに適した材料であるが、不幸なことに銅は大気中ですぐに酸化されてしまうことで、金属表面上に銅酸化物-すなわち曇り(tarnish)-の層を生成してしまう。この酸化は、何も取り付けられていないPCBの製造から電気部品を取り付けるまでの期間が長期間である場合に、特に顕著である。その部品ははんだ付けによって取り付けられるが、銅トラック上の酸化層の存在によって、はんだの実効性が弱められてしまう恐れがある。特にデバイスの動作中に故障する傾向を有する芋はんだでは、低機械強度の弱い接合が形成される恐れがある。接合が全く電気的接続を形成し損ねることが時折ある。同様の問題は、伝導性トラックが銅以外の伝導性材料を有するときにも起こる。
【0004】
これらの問題を最小限に抑制するため、PCB製造者らは、コーティング又は表面仕上げ物を、はんだが必要とされる領域に成膜する。たとえばスズ、銀、又はニッケル/金の混合体のような金属が通常は用いられる。これらの仕上げ物を成膜するプロセスは時間のかかるものであり、さらに用いられるべき金属を必要とし、その結果環境問題が生じる。プロセス及び材料の中には健康問題を生じさせる恐れのあるものもある。さらに用いられる金属の中にはたとえば金のように高価なものもある。同様な手法は、たとえばベンジミダゾールのような有機化合物、及びはんだに対して濡れる金属又ははんだ(たとえば特許文献1を参照のこと)を含むコーティングによってトラックをコーティングすることによって、前記トラックが酸化条件に曝露されるのを防ぐ工程を有する。はんだ付け中、有機層は簡単に除去される。これらの有機コーティングは典型的には多数の熱サイクルには持ちこたえられず、これらの有機コーティングのプロセス前の保存寿命は比較的短い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第97/39610号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまで製造者らによって採用されてきた手法は、高価であるか、かつ/又は時間を要する(製造プロセスに余計な工程を必要とする)ものであり、貴金属を含む再生可能ではない資源を消耗する。はんだ付けによって電気部品を取り付ける前に伝導性トラックの酸化を防止する安価かつ/又は高性能な方法が必要である。
【0007】
分離問題とは、PCBが通常、非常に厳しくて腐食を起こす環境で用いられるデバイス中に必要とされることである。そのような条件下では、PCB上の伝導性トラックは腐食して、回路基板の寿命が、予想されていたよりもはるかに短くなってしまう恐れがある。そのような条件はたとえば、デバイスが、溶解した気体を含む微小水滴が腐食性溶液を生成する非常に湿気の多い環境で用いられるときに生じる恐れがある。ここで溶解した気体とはたとえば、二酸化硫黄、硫化水素、二酸化窒素、塩化水素、塩素、及び水蒸気である。それに加えて、水滴は、PCB上の伝導性トラック間に、薄膜又は腐食堆積物を生成する恐れがある。PCB製造者らが、デバイスが不利な条件で用いられると予想する状況では、PCB製造者らは、環境に対するバリアを形成するポリマーのコンフォーマルコーティングによってアセンブリされたPCBをコーティングしようとしてきた。しかしそのようなコーティングは成膜するには高価であり、かつPCBがアセンブリされた後製造プロセスにおいてコーティングを成膜する新たな工程を必要とし、かつ一般的にはその後にそのコーティングを取り除く工程をも必要とする。これは、損傷を受けたすなわち故障したPCBを再度動作させるとき、又はPCBの性能を保証して問題を解決するための検査中にも、問題を生じさせる恐れがある。完成したPCBを環境から保護する安価でかつ/又は高性能な方法は、製造者らにとって大きな関心事である。
【0008】
電子部品をPCBへはんだ付けした後に生じる恐れのある他の問題は、はんだ接合物上に金属化合物のデンドライトが形成されることである。これらのデンドライトは、コンタクト間での短絡を起こすため、アセンブリされたPCBの故障を引き起こす恐れがある。デンドライトは、表面に沿った非常に微細な成長である。その結果エレクトロマイグレーションが起こってシダ状パターンを形成する。デンドライトの成長機構は「すずウイスカー」とは異なり十分理解されている。その成長機構は、電磁場の存在中でのエレクトロマイグレーションによって再分配される金属イオンを生成する水蒸気の存在を必要とする。本発明のコーティングは、通常デンドライトが成長するPCBの表面に水蒸気が到達するのを防止することによって、デンドライトの形成から保護する。デンドライト材料の表面コーティングに対する接合は弱く、その表面コーティングがコンタクトと部品との間でのデンドライトの形成を減少させることで、そのコーティングはさらなる保護を与える。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般的に局在したはんだ接続が作られるプリント回路基板を供する。前記プリント回路基板の表面は1つ以上のハロハイドロカーボンを有する組成物のコーティングを有し、前記コーティングは単一層又は多層で、前記コーティングの厚さはハロハイドロカーボンの1分子層(通常は数オングストローム(Å))から10μmである。前記コーティング組成物と前記プリント回路基板の伝導性トラックとの間にははんだが(基本的に)存在しない。ポリマーには、単一又は多数のモノマーからその場で生成されるポリマー、直線状の、分岐した、又は接続及び架橋されたコポリマー、オリゴマー、マルチポリマー、マルチモノマーポリマー、ポリマー混合物、接続したコポリマー、ブレンド、及びポリマー合金、並びに相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)が含まれる。
【0010】
コーティングの厚さは典型的には1nm〜2μmで、より典型的には1nm〜500nmで、さらにより典型的には10nm〜500nmで、最も典型的には10nm〜250nmである。このコーティングは10nm〜100nmの厚さが好ましいが、広い範囲の中で100nmが好ましい厚さである。他の実施例では、コーティングの厚さは10nm〜30nmである。しかしコーティングの最適厚さはPCBに必要とされる特性に依存する。たとえば非常に強い環境耐性が必要とされる場合(高腐食及び摩耗耐性)、厚いコーティングが用いられて良い。それに加えてコーティング厚さは、最適化される特徴に依存して(たとえば環境保護に対するZ軸の伝導性)、PCB全体にわたる様々な位置での様々な厚さで最適化されて良い。コーティング厚さ及びフラックス組成物は、環境保護特性を最適化し、特に強いはんだ接合を与えるように変化して良い。
【0011】
ハロハイドロカーボンコーティングは、連続的、実質的に連続的(具体的にははんだ付けされる表面、及びその表面間又はその表面に隣接するはんだ付けされない表面全体にわたって連続的であって、より具体的にはPCBの全ての曝露されている脆弱な表面全体にわたって連続的)、又は非連続的であって良い。環境保護のレベルが非常に高い場合、実質的に連続的なコーティングが必要とされるものと思われる。しかし他の目的にとっては非連続的なコーティングでも十分であると思われる。
【0012】
ハロハイドロカーボンポリマーとは、直線状若しくは分岐した鎖、又は環状の炭素構造であって、構造中の炭素には、1、2、又は3のハロゲン原子が結合するものを意味する。ハロゲン原子は同一のハロゲン(たとえばフッ素)又はハロゲンの混合物(たとえばフッ化物又は塩化物)であって良い。本明細書において用いられている「ハロハイドロカーボンポリマー」という語は、1つ以上の不飽和基-たとえば炭素-炭素二重及び三重結合-、並びに1つ以上のヘテロ原子(C、H、又はハロゲンではない原子)-たとえばN、S、及びO-を含むポリマーを有する。しかし現時点では、ポリマーは実質的に不飽和を含まず、かつ実質的にヘテロ原子を含まないことが好ましい。ポリマーは、そのポリマー中の原子の合計数の割合にして5%未満のヘテロ原子を含むことが好ましい。ポリマーは、そのポリマー中の原子の合計数の割合にして5%未満の炭素-炭素二重又は三重結合を含むことが好ましい。ポリマーの分子量は1000amuよりも大きいことが好ましい。
【0013】
ポリマー鎖は直線状であっても良いし、又は分岐していても良い。ポリマー鎖間には架橋が存在しても良い。ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であって良い。ポリマーは、フルオロハイドロカーボンポリマー、クロロハイドロカーボンポリマー、又はフルオロクロロハイドロカーボンポリマーであることが好ましい。これらでは、0、1、2、若しくは3のフッ素又は塩素原子が鎖中の各炭素原子に結合する。
【0014】
好適なポリマーの例には、
- PTFE、PTFE型材料、フッ素化ハイドロカーボン、塩化フッ素化ハイドロカーボン、ハロゲン化ハイドロカーボン、ハロハイドロカーボン若しくはコポリマー、オリゴマー、マルチポリマー、マルチモノマーポリマー、ポリマー混合物、ブレンド、合金、分岐鎖、接続コポリマー、これらの材料の架橋した変化型、及び相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)、
- PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、及びコポリマー、オリゴマー、マルチポリマー、マルチモノマーポリマー、ポリマー混合物、ブレンド、合金、分岐鎖、接続コポリマー、これらの材料の架橋した変化型、及び相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)、
- EPCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレンのエチレンコポリマー)、及びコポリマー、オリゴマー、マルチポリマー、マルチモノマーポリマー、ポリマー混合物、ブレンド、合金、分岐鎖、接続コポリマー、これらの材料の架橋した変化型、及び相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)、
- 以下の材料、及びコポリマー、オリゴマー、マルチポリマー、マルチモノマーポリマー、ポリマー混合物、ブレンド、合金、分岐鎖、接続コポリマー、これらの材料の架橋した変化型、及び相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を有する他のフルオロプラスチック、
が含まれる。ここで他のフルオロプラスチックとは、ETFE(エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマー)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー)、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロビニルエーテルのコポリマー)、PVDF(フッ化ビニリデンポリマー)、THV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのコポリマー)、PVDFHFP(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー)、MFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー)、EFEP(エチレン、テトラフルオロエチレン、及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー)、HTE(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンのコポリマー)、又はフッ化ビニリデンとクロロトリフルオロエチレンと他のフルオロプラスチックのコポリマー、である。
【0015】
ポリマーはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)型材料で、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が最も好ましい。
【0016】
低い濡れ性は、ハロハイドロカーボンが多く分岐したポリマー、コポリマー、ポリマーブレンド、又はポリマー混合物であるようなコーティングを用いることによって実現されて良い。
【0017】
コーティング組成物は、以下の特性のうちの1つ以上-好適には実質的に全て-を有することが望ましい。その特性とは、クラック、穴、若しくは欠陥のない連続膜としての成膜が可能であること;気体の侵襲に対する重要なバリアを供して、コーティングを「介した」気体による腐食及び酸化を防止する相対的に低い気体浸透率;従来技術の除去を必要とせずに選択的なはんだ付けを実現し、かつ他の現時点において利用可能な表面仕上げに匹敵する良好なはんだによる接合を実現する能力;多重熱サイクルに耐えられる能力;腐食性気体、液体、及び塩化物溶液、特に環境汚染物に対する化学的耐性;低い表面エネルギー及び「濡れ性」を示すこと;通常のPCB温度において安定な不活性材料であること;良好な機械的特性-PCB材料に対する良好な接合及び良好な機械的摩耗耐性を含む-を有すること;改善された静電保護;コーティングを「介した」液体の腐食を防止する相対的に低い液体及び塩化物溶液の浸透率;並びに、この用途に用いられるときの既存のプロセスに匹敵する程度に環境的に有利であること;である。
【0018】
本発明はまた、他の電気及び/若しくは電子デバイス、又は、たとえばコーティングを有していて、はんだ接続が形成されている他の製品(たとえばパイプ又は他の配管装置)をも供して良い。たとえば本発明は、ワイヤボンディング方法に用いられるむき出しのワイヤ(特に銅ワイヤ)をコーティングするのに用いられて良い。ワイヤボンディングは、むき出しのダイ形式の集積回路間、及び集積回路内部又はむき出しのダイとPCBとの間のリードフレームに接続を形成する。用いられるワイヤは従来金又はアルミニウムであったが、最近では金との顕著な価格差を含む多数の理由により、銅ワイヤが非常に関心を持たれている。ワイヤボンディングにおいては、2つの接合方法が一般的に用いられている。その2つの接合方法とはウエッジボンディング法とボールボンディング法である。いずれの方法も、熱、圧力、及び超音波エネルギーの様々な組合せを用いて、ワイヤの一端又は両端に接合を形成する。ワイヤとパッドとの間での良好な結合を実現するため、酸化を含む汚染が存在しないようにしなければならない。結合パッドへ金の仕上げ物を堆積して酸化を防ぐのは標準的な方法である。銅の結合パッドへの本発明のコーティングは酸化の起こらない表面をも供する。それにより、ウエッジボンディング又はボールボンディングのいずれによっても、結合パッド上での標準的な金の仕上げ物よりも顕著に低いコストで、金、アルミニウム、又は銅ワイヤを用いた結合物の形成が可能となる。銅ワイヤが用いられるときには、ワイヤが作られた後であって保存される前に、ハロハイドロカーボンコーティングをワイヤへ堆積して酸化を防ぐことも有利である。またハロハイドロカーボンコーティングは、結合プロセス中さらなる酸化に対する保護を供する。あるいはその代わりに本発明の他の実施例では、電子部品の電極がコーティングされても良い。ポリマーコーティングは、大気中の気体及び液体の浸透に対する良好なバリアを供することが好ましい。大気中の気体及び液体のうちで最も重要なものは酸素である。酸素は通常伝導性トラックと-典型的には銅トラック-と反応してそのトラック表面上に曇りの層-典型的には銅酸化物-を形成する。その結果、コーティングされた回路基板は、伝導性トラックの酸化が起こることによる損傷を生じさせることなく、最大で数ヶ月又は数年もの長期間にわたって保存可能となる。光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、及び後方散乱電子イメージングが、コーティングの性質、連続性、及び厚さを調べるのに用いられた。X線によるエネルギー分散解析は、コーティング中におけるハロゲンの準位及び分布のマッピングに用いられた。化学溶媒溶液を用いた表面活性化及び表面濡れ性の測定は、保護コーティングとして機能する可能性を示唆している。
【0019】
一旦製造者らが何も取り付けられていないPCBに部品を取り付ける準備をすると、PCBの洗浄、又ははんだ付け前でのコーティング層の除去の必要がなくなる。これは、驚くべきことに、用いられるハロハイドロカーボンポリマーが、通常有していない特性を有するコーティングを供するからである。その通常有していない特性とは、そのコーティングを貫通して基板上の伝導性トラックと電気部品との間にはんだ接合物を形成することが可能なことである。このはんだ付け手法では一般にフラックスが必要とされる。極端なことを言えば、熱だけを用いたはんだ付けは、たとえばレーザーはんだ付けのように、コーティングを選択的に「除去」するのに用いられて良い。溶接、レーザー支援溶接、超音波溶接、又は伝導性接合剤の使用は代替手法である。他の可能な手法は噴流はんだ付け(wave soldering)である。用いられるはんだは鉛はんだであって良いし、又は鉛フリーはんだであっても良い。一般的には予想されているようなはんだ接合物強度の減少は起こらない。特に特定の状況下では、はんだ接合物は標準的なはんだ接合物よりも強くなりうる。さらに特定の状況下では、本発明は、特になまりフリーはんだが用いられているときに、はんだ結合上へのデンドライトの形成を防止することができる。
【0020】
よって本発明は、PCBの伝導性トラックに金属(たとえばスズ、銀、ニッケル、及び金)の表面コーティングを成膜することではんだ付け前に伝導性トラックの酸化を防止する代替手法を供する。本発明は、低コストプロセスに基づくこと、ニッケルのような毒性物質を使用しないこと、環境親和性であること、現時点の産業用金属メッキプロセスよりも安全である、という利点を有する。本発明はまた、PCB製造プロセスを単純化し、かつ現在の産業用はんだ付けプロセスとも相性がよい。それに加えて、「(コーティングを)介したはんだ付け」特性という追加の利点を有する。その特性によって、はんだ付け前にコーティングを除去する必要がなくなった。
【0021】
ハロハイドロカーボンポリマーのさらなる特徴は、コーティングが、はんだ及び/又はフラックスが堆積される領域内でのみ除去されることである。よって部品が選択的なはんだ付けによって付着しないPCBの領域内では、コーティングはそのまま残る。それにより基板及び伝導性トラック全体にわたって、大気中の気体-二酸化硫黄、硫化水素、二酸化窒素、塩化水素、塩素、水蒸気、及び他の腐食性材料-による腐食に対するバリアを供する保護層が維持され、よって環境汚染物による腐食が防止される。ハロハイドロカーボンポリマーコーティングはまた液体及び腐食性液体に対して実質的に浸透させない。従って、各工程間で相当な期間が空いている一連の工程においても回路基板へ部品を取り付けることが可能である。これは製造者らにとって多くの利点を供する。このコーティングは、選ばれたはんだ領域以外でのはんだプロセスによって破壊されない。よってはんだ付けされていない領域では、PCBは、以降の段階ではんだ付けによって再度処理され、かつ/又は再度加工されて良い。さらに一旦PCBのアセンブリが完了すると、PCBのはんだ付けされていない領域は、環境の腐食物に対する永久バリアを形成するハロハイドロカーボンポリマーによってコーティングされたままである。よってたとえばコンフォーマルコーティングのようなコストのかかるさらなるオーバーコーティングを必要としない。
【0022】
プリント回路基板上の伝導性トラックは伝導性材料を有して良い。伝導性トラックの作製が可能な材料はたとえば、銅、銀、アルミニウム、又はスズ、又は伝導性ポリマー、又は伝導性インクであって良い。そのトラックの好適材料は銅である。伝導性ポリマーは水を吸収して膨張しがちである。よってハロハイドロカーボンポリマー層による伝導性ポリマーのコーティングは水の吸収を防止することが可能である。
【0023】
本発明のコーティングされたPCBの他の特徴は、z軸でのインピーダンスが、x軸及びy軸でのインピーダンスと比較して非常に小さいことである。z軸とは、PCBの面と交わる軸を意味する。コーティングはx軸及びy軸において高インピーダンスを示すので、良好な絶縁特性を示す。しかしインピーダンスはz軸では相対的に高い。このため、コーティングを除去することなく電気的コンタクトを作製することが可能となる。このことは、特にキーパッド、スイッチコンタクト、検査ポイントなどの用途にとって有利である。この特徴は、コーティングの特性-たとえば層の厚さ、組成、及びコーティングプロセスにおけるコーティング条件、及びコーティングプロセスの性質-を制御することによってさらに最適化されて良い。
【0024】
まとめると、本発明は、何も取り付けていないプリント回路基板の伝導性トラックの酸化及び/又は他の環境による損傷-たとえば熱安定性の変調、ひっかき傷、腐食-を防止し、これらの効果に対する耐性及び高いバリア効果を供し、かつ何も取り付けていないPCBをハロハイドロカーボンポリマーでコーティングする一の初期工程によって通常アセンブリされたPCBを環境から保護する。
【0025】
本発明はまたプリント回路基板を保護する方法をも供する。その方法は、環境に曝露された表面を有する何も取り付けられていないプリント回路基板を供する工程であって、前記環境に曝露された表面には(実質的に)はんだが存在しない、工程、及び、前記表面に単分子の厚さ(通常は数オングストローム(Å))から10μmのハロハイドロカーボンを含む組成物を薄膜堆積手法によって堆積する工程を有する。薄膜堆積手法とはたとえば、プラズマ堆積、化学気相成長(CVD)、分子線エピタキシー(MBE)、相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)の生成、モノマーからなるポリマーの単分子層の表面吸着(SAM)によるその場ポリマーの生成、ポリマー合金、又はスパッタリングである。プラズマ支援化学気相成長(PE-CVD)、高圧/大気圧プラズマ堆積、有機金属気相成長(MOCVD)、及びレーザー化学気相成長(LE-CVD)が代替の堆積手法である。たとえば液体浸漬、スプレーコーティング、スピンコーティング、及びゾル/ゲル手法のような液体コーティング法はさらなる代替手法である。
【0026】
好適方法は必要とされるコーティングの厚さに依存して良い。厚いコーティングにとっては液体コーティング法が好ましく、薄いコーティングにとってはプラズマ堆積法が好ましいだろう。コーティングの厚さは典型的には1nm〜2μmで、より典型的には1nm〜500nmで、さらにより典型的には10nm〜500nmで、最も典型的には10nm〜250nmである。このコーティングは10nm〜100nmの厚さが好ましいが、広い範囲の中で100nmが好ましい厚さである。他の実施例では、コーティングの厚さは10nm〜30nmである。ハロハイドロカーボンポリマーは、フルオロハイドロカーボンポリマー、塩化ハイドロカーボンポリマー、又は塩化フルオロハイドロカーボンポリマーが好ましく、微小色素及び少量の性能用添加物(ポリマー産業においては一般的に行われている)を含んでも良く、かつたとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)型材料をも含んで良い。何も取り付けていないPCBに対してハロハイドロカーボンポリマーを堆積する好適方法はプラズマ堆積法である。とはいえ上述した他のすべての方法も適用可能である。
【0027】
プラズマ堆積法は、広範囲の産業用途において広くコーティング堆積用に用いられている。当該方法は、乾式でかつ環境親和性の手法を用いた連続的な薄膜コーティングを堆積する効率的な方法である。PCBは、電離した気体イオン、電子、原子、及び中性種を含む気体プラズマを生成する真空チャンバ内でコーティングされる。この方法では、PCBが、最初に典型的には10-3〜10mbarにまで排気される真空チャンバへ導入される。続いて気体がその真空チャンバへ導入されて安定な気体プラズマを生成する。1つ以上の先駆体化合物が、気体又は液体のいずれかとしてプラズマへ導入されることで、堆積プロセスが可能となる。
【0028】
先駆体化合物は典型的にはハロゲン含有ハイドロカーボン材料である。これは所望のコーティング特性を供するように選ばれている。気体プラズマへ導入されるとき、先駆体化合物もまた、-典型的には重合化プロセスによって-PCB表面で反応するある範囲の活性種を生成して、薄いハロハイドロカーボンコーティングを生成する。好適先駆体化合物はペルフルオロアルカン、ペルフルオロアルケン、ペルフルオロアルキン、フルオロアルカン、フルオロアルケン、フルオロアルキン、フルオロクロロアルカン、フルオロクロロアルケン、フルオロクロロアルキン、又は他のフッ化及び/若しくは塩化した有機材料(たとえばフルオロハイドロカーボン、フッ化炭素、塩化フルオロハイドロカーボン、及び塩化フッ化炭素)であって良い。
【0029】
本発明の他の態様では、PCBの伝導性トラック上のコーティングは、金属表面と直接接触する金属ハライド(好適にはフッ化銅のような金属フッ化物)の非常に薄い層を有して良い。一の実施例では、金属ハライド層は(実質的に)単分子層若しくは数分子層であって良く、又は表面に金属ハライド領域の層を有して良い。そのような金属ハライド層は非常に耐久性があって、かつ不活性であると考えられる。またそのような金属ハライド層は、酸化層又は有効なはんだ付けを妨げる他の曇りの生成を防止する。金属ハライド層は、気体プラズマ中の活性種が金属表面と反応するときに生成され、又は高濃度のフッ素を用いることによって改善することが可能である。続いてハロハイドロカーボン層が、金属ハライド層と共に堆積されて良い。2つの層は離散的であって良いし、軸に沿っていても良いし、又は特別であっても良い。あるいはその代わりに金属ハライドからハロハイドロカーボンまで段階的に遷移しても良い。金属ハライド層が酸化から金属を保護しながら、ハロハイドロカーボン層が、酸化の保護のみならず、腐食性気体及び/又は液体に対して環境的に保護することが可能である。さらにコーティングがたまたま機械的摩耗によって破損しても、下地の金属フッ化物層は酸化の発生を防止し、コンタクトの確立を可能にする。プラズマ堆積されたコーティングの性質及び組成は多数の条件に依存する。その条件とは以下である。選ばれるプラズマ気体、使用される先駆体化合物、プラズマ圧力、コーティング時間、プラズマ出力、チャンバ電極配置、入ってくるPCBの前処理、及びチャンバのサイズと幾何学形状である。典型的にはプラズマ堆積法は、上述した設定及び条件に依存して、単分子(通常は数オングストローム(Å))から10μm(好適には5μm)である。プラズマ自体はPCBの際表面と衝突するだけであり、典型的にはPCB自体とは十分相性が良い。よって損傷又は他の意図しない効果は生じない。プラズマコーティング法の利点は、堆積されたコーティングがPCBの全表面とアクセスするので、たとえば垂直面のうちPCB内の穴を介してしかアクセスできない部分及び突出部もが覆われることである。PCBの特定領域-たとえばPCB端部での金のコンタクト-がポリマーによってコーティングされない場合、これらの領域は、プラズマ堆積プロセス中マスクされて良い。
【0030】
プラズマプロセスの変化型では、活性気体プラズマを用いたプラズマ堆積の前に、PCBの表面をその場洗浄するプラズマ法を用いることが可能である。この変化型では、活性気体プラズマは典型的には、プラズマ堆積段階で先駆体化合物を導入する前のPCB洗浄用のチャンバと同一のチャンバで用いられる。活性気体プラズマは安定な気体に基づいている。安定な気体とはたとえば、水素、酸素、窒素、アルゴン、メタン、エタン、他のハイドロカーボン、テトラフルオロメタン(CF4)、ヘキサフルオロエタン(C2F6)、テトラクロロメタン(CCl4)、他のフッ化若しくは塩化ハイドロカーボン、他の希ガス、又はこれらの混合気体である。一の特定実施例では、PCBは堆積される材料と同一の材料によって洗浄されて良い。たとえばフッ化又は塩化ハイドロカーボン-たとえばテトラフルオロメタン(CF4)、又はヘキサフルオロエタン(C2F6)、又はヘキサフルオロプロピレン(C3F6)、又はオクタフルオロプロピレン(C3F8)-は、プラズマ法において、PCBの表面の洗浄と、ハロハイドロカーボンポリマー層及び/又は金属フッ化物(又は塩化物)層の堆積の両方に用いられて良い。
【0031】
本発明はまた、ハロハイドロカーボンポリマーを有する組成物によってコーティングされたプリント回路基板との接続を作製する方法をも供する。当該方法は、ある温度でかつある期間、はんだとフラックスをプリント回路基板へ堆積する工程を有する。前記工程によって、はんだは金属と結合し、組成物は局所的に分散し、及び/又は吸収され、及び/又は蒸発し、及び/又は溶解し、及び/又は反応する。フラックスと上昇した温度の作用は単独では一般的に、ハロハイドロカーボンポリマーと相互作用して、フラックスが堆積されるPCBの領域から局所的にコーティングを除去する。温度は典型的には200℃〜300℃で、好適には240℃〜280℃で、最も好適には260℃である。一の実施例では、ハロハイドロカーボンポリマーはフラックスによって溶解及び/又は吸収されて良い。私たちは、必要とされる温度とフラックスの他の反応性との間には均衡が通常存在することを発見した。よって高い温度が用いられる場合には、穏やかなフラックスで十分であり、逆も真なりである。他の実施例では、銅表面でのフッ化銅の自己フラックス作用、及びポリマーコーティングの分解によるフッ素及び/又はHFの解放が生じてフラックス(自己フラックス)が初期化される、という利点を得ることが可能である。極端な場合、特定の場合では、本発明は、十分に高い温度が用いられる場合ではフラックスを省くことが可能であるので、局所加熱が用いられて良い。驚くべきことに、組成物は一般的には、はんだ及び/又はフラックスが堆積される領域でしか選択的に除去されない。従って組成物は、はんだ接合物に至るまで、PCBの表面に付着したままである。これにより、PCBの伝導性トラックからはんだ接合物に至るまで有利な環境保護が得られる。
【0032】
本発明で用いられるフラックスは、樹脂/ロジンフラックス、有機フラックス、無機フラックス、ハライドを含まないフラックス、洗浄されていないフラックス、残余物のないフラックス、又は硬くないフラックスであって良い。樹脂/ロジンフラックスはたとえば合成樹脂又は天然ロジンであって良い。有機フラックスは、たとえば乳酸又はアクリル酸のような有機酸、たとえばジメチルアンモニウム塩化物(DMA HCl)のような有機塩、又は尿素のような有機アミンであって良い。無機フラックスはたとえば、塩化亜鉛、塩化ナトリウム、塩化カリウム、若しくはフッ化ナトリウムのような無機塩、又は塩酸若しくは硝酸のような無機酸であって良い。洗浄されていないフラックスの例はロジンフラックスである。一般的なはんだ付け、ろう付け、及び溶接のような産業用途に、又は金属表面の洗浄若しくはエッチング(たとえばホウ砂)に広く用いられている他のフラックスが本発明に用いられても良い。本方法に用いられるフラックスは典型的には、PCBを洗浄する後続の工程を必要としない「洗浄されていない」フラックスのような穏やかなフラックスである。フラックスは任意ではんだペーストの一部であって良い。フラックスの選択はコーティングの性質-特にコーティングの厚さ及び組成-に依存すると考えられる。より厚くて高抵抗のコーティングは、より反応性の高いフラックスを必要とする。基板からハロハイドロカーボン組成物を除去するフラックスの(複数の)活性成分を含む組成物が、フラックスに代わって本発明で用いられても良い。
【0033】
さらに本発明は、プリント回路基板を環境的に保護するハロハイドロカーボンポリマーを有する組成物の利用を供する。このプリント回路基板へは、はんだ接続が形成されている。そのはんだ接続は、組成物を事前に除去することなくその組成物を介して形成される。その形成は、任意でフラックスが存在する状態において、その組成物を分散、及び/又は吸収、及び/又は蒸発させることによって実現されて良い。
【0034】
環境は、たとえば二酸化硫黄、硫化水素、二酸化窒素、塩化水素、塩素、オゾン、又は水蒸気、水のような液体、腐食性気体が溶解した水、塩化物溶液、又は他の流出物を含んでいると考えられる。そのような気体は一般的に、大気汚染問題を抱えた都市のような高度に汚染した環境に存在する。本発明がPCBを保護する際の一の特別な環境の危険は、上述した腐食性気体のうちの1種類以上が溶解している大気中の水分である。私たちは、本発明がそのような厳しい環境に対してもPCBを保護できることを発見した。
【0035】
本発明はまた、はんだ接続が形成される何も取り付けられていないプリント回路基板を長期間安定して保存するためのハロハイドロカーボンポリマーを含む組成物の利用をも供する。上述したように、PCB上での伝導性トラックは、大気に曝露されたままであれば、酸化しがちである。酸化反応は通常大気中の酸素との反応によって金属酸化物が生成されるが、それだけではなく他の酸化反応も含まれる。他の酸化反応とはたとえば、金属の銅が酸化されてたとえばCu+又はCu2+となる反応である。本発明の組成物はこれらの酸化反応を防止する。それにより、何も取り付けていないPCBが、長期間、伝導性トラックの酸化を起こすことなく保存可能となる。よって長い保存期間後、PCBに対する良好なはんだ接続が、標準的なはんだ手法によって-好適にはフラックスの存在下において-、如何なる事前洗浄工程を行うことなく、形跡可能である。
【0036】
本発明はまた、前記伝導性トラックへのはんだの堆積前、及び/又ははんだ接続の形成前に、何も取り付けていないプリント回路基板の伝導性トラックの酸化及び/又は腐食を防止するハロハイドロカーボンポリマーを含む組成物の利用をも供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】鉛を含む市販のはんだペーストと共に用いられたリフローオーブンのはんだ付けプロファイルを図示している。
【図2】鉛フリーの市販のはんだペーストと共に用いられたリフローオーブンのはんだ付けプロファイルを図示している。
【図3】本発明のコーティングされたPCBの像である。表面上の水滴は、低い表面エネルギー、低い濡れ性、表面コーティングが液体浸透させないことを示している。
【図4】本発明のPCB上のコーティングを貫通したはんだ付けによって作られた強いはんだ接合の断面像である。
【図5】本発明のPCB上に形成された強いはんだ接合の断面像である。下側の銅表面の上面に良質の銅-スズ金属間化合物が生成されているのが示されている。
【図6】本発明のPCB上の厚さ1μmのコーティングポリマー端部のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。図は倍率×30000である。
【図7】本発明のコーティングされたPCBの典型的な領域を示すBEI(後方散乱電子)像である。被覆率が99.8%を超えるとコーティングが連続となることが示されている。
【図8】公称厚さが1μmのコーティングについて、ある温度でのフラックスの作用によって、本発明のPCBから選択的に除去されたコーティング領域のSEM/EDX像である。左側の像は、フラックスが選択的に堆積された場所を図示している。右側の像は、フラックスが堆積されている領域でコーティングが選択的に除去されたことを図示している。
【図9】本発明のPCBの銅上のコーティングの炭素/フッ素組成物を示すEDXスペクトルである。
【図10】本発明のはんだ付けされたPCBから引きはがされたIC部品の足の像である。この像は、はんだ接合物が強いことを示している。厳しい検査では、接合物は結局、はんだ接合でよりもむしろ、基板結合に対する銅パッドの破壊によって故障している。
【図11】本発明のはんだ付けされたPCBから引きはがされたはんだ付けされたパッドの像である。この像は、はんだ接合物が強いことを示している。厳しい検査では、接合物は結局、はんだ接合でよりもむしろ、基板結合に対する銅パッドの破壊によって故障している。
【図12】本発明のPCB上に形成されたはんだ接合端部にまで及ぶポリマーコーティングの存在を示すSEM像及びEDX像である。
【図13】本発明のPCB上に形成された一連の良質のはんだ接合物を示す光学顕微鏡像である。
【図14a】C-F材料及びCu-F材料からの様々な寄与を示す本発明の1組の薄いコーティングのXPSスペクトルである。
【図14b】厚いコーティングについてのC-F含有材料を示すXPSスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[コーティングされたプリント回路基板の準備]
エッチング及び洗浄がされたが表面仕上げ物が堆積されていないプリント回路基板が製造者らから得られた。続いてこれらの基板はプラズマ堆積によって処理されることで、ハロゲン含有コーティングが生成された。PCBが、最初に10-3〜10mbarの範囲の圧力にまで排気された真空チャンバ内に導入された。続いて気体が真空チャンバへ導入されることで、安定した気体プラズマが生成された。その後ハロゲン含有先駆体ハイドロカーボン化合物がプラズマに導入されることで、堆積プロセスが可能となった。気体プラズマへ導入されるとき、先駆体化合物は分解/イオン化して、PCB表面で反応するある範囲の活性種を生成して、薄いハロゲン含有コーティングを生成する。多数の実験がこれらの被処理基板上で行われた。
【0039】
[例1]
鉛を含む市販のはんだペーストが手によって、シリンジから、PCBの一面の多数の部品パッド上へ堆積された。複数の集積回路が、上にはんだを有したパッド上に設けられた。続いてPCBが、はんだ付けプロファイルが図1に図示されたように設定されたリフロー用オーブンに設置された。その結果接合部は顕微鏡を用いて視覚的に検査された。その顕微鏡では、その接合部が良好な濡れ特性を有することが分かった。接合部の中には、装置によって部品を引っ張り上げることによって、バラバラになるものがある。いずれの場合においても、集積回路の足ははんだから取り外されて、接合部はPCBパッドにそのままの状態で残る。
【0040】
[例2]
上記の試験は、図2に図示されているような修正されたリフロープロファイルを有する鉛フリーはんだペースト用いて繰り返された。同様の結果が得られた。
【0041】
[例3]
フラックスのみが2つのPCB領域に堆積された。前記2つのPCB領域は、それぞれ10秒間及び5分間、260℃まで加熱された。コーティングは、フラックスが堆積されたPCBのいずれの領域にもコーティングは存在しないことを、その実験結果は示した。しかしコーティングはフラックスが堆積されなかった領域内にはそのまま残っていた。
【0042】
[例4]
[剪断強度試験]
4つのPCB仕上げ物を有する8つのアセンブリが剪断試験用に準備された。各PCB仕上げ物について2つのアセンブリが存在した。各アセンブリは、7つの1206チップレジスタ及び4つの0805チップキャパシタを集積させた。各アセンブリの仕上げ物から14個の1206レジスタ及び8つの0805キャパシタが、各仕上げ物アセンブリのはんだ接合物の極限剪断強度(USS)を決定するために試験された。
【0043】
[試験条件]
基板は剪断テスタ内にマウントされた。PCB表面の上方でのチゼル工具孤立した状態での高さは80μmで、チゼル工具の幅は2mmだった。各試験の間、剪断装置は検査部品に対して所定の速度100μm/sで前方へ移動し、力ははんだ接合部の付着が壊れるまで観測された。用いられた剪断試験はDageシリーズ4000で、DS100試験用ヘッドが備えられていた。
【0044】
【表1】

[例5]
下のPCB表面エネルギーの表は、コーティングプロセス時間に対して疎水性が増大していることを示している。
【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ接続が作られるプリント回路基板であって、
前記プリント回路基板の表面は1つ以上のハロハイドロカーボンを有する組成物のコーティングを有し、
前記コーティングの厚さは1nm〜10μmで、
前記組成物のコーティングと前記プリント回路基板の伝導性トラックとの間にははんだが(基本的に)存在しない、
プリント回路基板。
【請求項2】
10nm〜100nmの厚さで1つ以上のハロハイドロカーボンポリマーを含む組成物のコーティングを有する、請求項1に記載のプリント回路基板。
【請求項3】
前記ポリマーがフルオロハイドロカーボンである、上記請求項のいずれかに記載のプリント回路基板。
【請求項4】
プリント回路基板を保護する方法であって:
環境に曝露された表面を有する何も取り付けられていないプリント回路基板を供する工程であって、前記環境に曝露された表面には(実質的に)はんだが存在しない、工程;及び
前記表面に1nm〜10μmのハロハイドロカーボンを含む組成物を、たとえばプラズマ堆積、化学気相成長、分子線エピタキシー、又はスパッタリングのような薄膜堆積手法によって堆積する工程;
を有する方法。
【請求項5】
前記堆積手法がプラズマ堆積である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ハロハイドロカーボンポリマーを有する組成物によってコーティングされたプリント回路基板への接続を作る方法であって、
当該方法ははんだとフラックスをプリント回路基板へ堆積する工程を有し、
該工程は、前記はんだが前記金属と結合し、前記組成物は局所的に分散し、及び/又は吸収され、及び/又は蒸発するような温度及び期間で実行される、
方法。
【請求項7】
はんだ接続が作られているプリント回路基板を環境的に保護するハロハイドロカーボンポリマーを有する組成物の使用であって、
該はんだ接続は、前記組成物を事前に除去することなく前記組成物を介して形成され、
該形成は、任意でフラックスが存在する状態において、前記組成物を分散、及び/又は吸収、及び/又は蒸発させることによって実現される、
使用。
【請求項8】
はんだ接続が作られる何も取り付けられていないプリント回路基板を長期間安定して保存するためのハロハイドロカーボンポリマーを有する組成物の使用。
【請求項9】
前記伝導性トラックへのはんだの堆積前、及び/又ははんだ接続の形成前に、何も取り付けていないプリント回路基板の伝導性トラックの酸化及び/又は腐食を防止するためのハロハイドロカーボンポリマーを有する組成物の使用。
【請求項10】
はんだ接続が作られるプリント回路基板であって、
当該プリント回路基板は金属フッ化物のコーティングを有し、
該コーティングの厚さは、単分子厚さから5nmである、
プリント回路基板。
【請求項11】
前記金属フッ化物のコーティング全体にわたって組成物のコーティングを有するプリント回路基板であって、
前記組成物は、厚さ1nm〜10μmで1つ以上のハロハイドロカーボンポリマーを有する、
請求項10に記載のプリント回路基板。
【請求項12】
組成物の使用であって、ハロハイドロカーボンポリマーと金属フッ化物を一緒に用いることによって、腐食耐性と酸化耐性を一緒に供し、さらに前記組成物の「はんだ貫通」(solder through)特性を可能にすることで、良好なはんだ接合の形成を可能にする、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【公表番号】特表2010−519728(P2010−519728A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549476(P2009−549476)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000552
【国際公開番号】WO2008/102113
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509232898)センブラント リミテッド (1)
【Fターム(参考)】