説明

プリント基板製造システム及び製造方法

【課題】半田付検査の虚報の件数を削減することを可能とすること。
【解決手段】半田印刷検査工程は、前記プリント基板に半田ペーストを印刷するときに使用する前記プリント基板上の多数のパッドに対応して開口部が設けられたメタルマスクの厚さと前記開口部の口径とから計算される前記メタルマスクの開口部内に埋め込まれる半田ペーストの体積である理論体積と、前記多数のパッド上に印刷された全ての実半田ペーストの体積との比率である実半田ペーストの体積比率をパッド毎に算出しておき、半田付検査工程は、前記多数のパッド上に印刷された全ての実半田ペーストの体積比率を平均して平均体積比を算出し、算出した平均体積比から、電子部品とプリント基板との間のプリント基板面から半田付検査の検査位置までの距離を算出し、検査プログラムに算出した距離を検査位置として設定して半田付けが正常に行われているか否かを検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板製造システム及び製造方法に係り、特に、基板上に電子部品を半田付けしてプリント基板を製造するプリント基板製造システム及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、基板上に電子部品を半田付けしてプリント基板を製造するプリント基板の製造の従来技術を図面により説明する。
【0003】
図7は従来技術によるプリント基板製造システム及び製造方法を説明する図である。
【0004】
図7(a)に示すように、従来技術によるプリント基板の製造は、半田ペーストを基板上に印刷する半田印刷工程、印刷された半田ペーストの検査を行う半田印刷検査工程、電子部品を基板上に搭載する部品搭載工程、半田ペーストを溶解させて電子部品を基板上に半田付けするリフロー工程、半田付けが正常に行われているか否かを検査する半田付検査工程の各工程を経て行われる。
【0005】
そして、前述の各工程は、図7(b)に示すように、印刷装置21、印刷検査装置22、部品搭載装置23、リフロー装置24、半田付検査装置25の各装置により行われ、これらの各装置は、コンベア26により接続されている。プリント基板は、コンベア26で印刷装置21から順に各装置へ送られながら電子部品の半田付けが行われる。印刷検査装置22は、印刷検査結果格納サーバ27とLAN28を介して接続されている。また、印刷検査装置22は、プリント基板に予め刻印されたバーコードを読み取ることが可能であり、印刷検査装置22での検査結果をテキストファイル形式で、LAN28を介して印刷検査結果格納サーバ27に格納する。その際、印刷検査装置22の検査結果ファイル名は、検査したプリント基板のバーコードを読み取ったデータに設定される。
【0006】
図8は半田ペーストを基板上に印刷する半田印刷工程について説明する図であり、次に、図8を参照して、印刷装置21による半田印刷工程について説明する。
【0007】
まず、図8(a)に示すように、プリント基板2上のパッド34に合わせた大きさの開口部を設けたメタルマスク33をプリント基板2上に重ね、スキージ31を動かして、半田ペースト32を印刷する。これにより、プリント基板2上のパッド34の上のメタルマスク33の開口部に半田ペースト32が埋め込まれ、半田ペースト32がパッド34上に印刷される。
【0008】
その後、メタルマスク33を外すと、図8(b)に示すように、印刷済半田ペースト35がプリント基板2上のパッド34上に転写された状態になる。
【0009】
印刷検査装置22による半田印刷検査工程は、メタルマスク33の厚さと開口部の口径とから計算される前述のメタルマスクの開口部内に埋め込まれた半田ペーストの体積である理論体積を100%(理論体積比)としたとき、印刷検査装置22が計測した実半田ペーストの体積の前述した理論体積に対する比率を算出し、その体積比が基準の範囲内に収まっているか否かを確認する工程である。そして、印刷検査装置22は、検査結果として、多数のパッド34上の全ての実半田ペーストのそれぞれの体積比率を、テキストファイル形式で、印刷検査結果格納サーバ27に格納する。
【0010】
印刷検査結果格納サーバ27に格納された前述の検査結果は、後刻、プリント基板製造システムの機能の検証等のために利用される。
【0011】
部品搭載装置23による部品搭載工程は、印刷工程でプリント基板2上に印刷された半田ペースト35上に電子部品の接続端子が接触するように、BGA、チップ抵抗等の電子部品をプリント基板2上に搭載する工程である。この工程は、半田ペーストが融解させられる前に行われる工程であり、プリント基板上のパッドと電子部品との溶着を行うことのない工程である。
【0012】
リフロー装置24によるリフロー工程は、炉内温度が半田ペースト35の融解温度以上に保たれたリフロー装置24の炉内に電子部品が搭載されたプリント基板2を格納し、電子部品の接続端子がパッド34に接続されように電子部品が搭載されている半田ペースト35を融解させ、プリント基板2上のパッド34と電子部品とを溶着させる工程である。
【0013】
図9はプリント基板2及び電子部品1を接続している半田の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図であり、次に、図9を参照して、半田付けが正常に行われているか否かを検査する半田付検査装置25による半田付検査工程での検査について説明する。なお、ここでは、電子部品1として、BGAによる電子部品をプリント基板2上に半田付けしたものとして説明する。
【0014】
電子部品1とプリント基板2とは、図9(a)に示すように、リフロー工程で半田36により溶着されている。電子部品1とプリント基板2との間の高さ37は、半田印刷工程で印刷された半田ペースト35の体積で決まる。半田36は、通常、樽形の形状となる。
【0015】
半田付検査は、X線撮影を行って、図9(b)に示すように、切断線3を基準に半田36の水平面の断面を断面写真38として撮影してその断面直径39を測定し、この断面直径39の測定値と判定値とを比較することにより行われる。
【0016】
前述の判定値としては、未接続不良判定値12とショート不良判定値20との2つが予め設定されている。そして、半田付検査装置25は、撮影された半田36の切断線3での断面直径39が未接続不良判定値12より短い(小さい)場合、未接続不良であると検出し、断面直径39がショート不良判定値20より長い(大きい)場合、ショート不良であると検出する。前述の未接続不良とは、電子部品とプリント基板とが溶着されていない状態の不良であり、また、ショート不良とは、隣同士の半田36が接触した状態の不良である。
【0017】
切断線3は、プリント基板2の上面からの相対距離4で決められ、この相対距離4は、半田印刷工程において、使用したメタルマスク33の厚さと開口部の口径とから計算される前述した理論体積から電子部品1とプリント基板2とを溶着している半田36の高さ37の中央となるように算出した値である。
【0018】
図10はショート不良を生じている場合のプリント基板2及び電子部品1を接続している半田の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【0019】
図10(a)に示しているように、ショート不良を生じている場合、隣同士の半田が接触した状態41となっている。このようなショート不良の検出は、図9により説明したように、電子部品1とプリント基板2とを溶着している半田を切断線3を基準に断面を撮影し断面直径を測定して行われる。半田付検査装置25は、図10(b)に示しているように、半田40について切断線3を基準に断面を撮影した断面写真42の断面直径43とショート不良判定値20とを比較したとき、断面直径43がショート不良判定値20より大きいため、半田40がショート不良であるとして検出することができる。
【0020】
図11は未接続不良を生じている場合のプリント基板2及び電子部品1を接続している半田の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【0021】
図11(a)に示しているように、未接続不良を生じている場合、電子部品とプリント基板とが溶着されていない未接続状態45となっている。このような未接続不良の検出は、図9により説明したように、電子部品1とプリント基板2とを溶着している半田を切断線3を基準に断面を撮影し断面直径を測定して行われる。半田付検査装置25は、図11(b)に示しているように、切断線3を基準に半田36の断面を撮影し、断面写真46から断面直径を測定する。しかし、未接続状態45となっている部位の半田44の断面写真46には、半田44が写りこんでいないため、半田付検査装置25は、断面直径が0であると測定し、この断面直径が、未接続不良判定値12より小さいため、半田44が未接続不良であるとして検出することができる。
【0022】
なお、プリント基板の製造に関する従来技術として、例えば、特許文献1等に記載された技術が知られている。この従来技術は、不良が発生した際に、不良箇所の半田量のアンバランスさから不良原因を推定するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2006−216589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
前述した従来技術は、プリント基板の製造において、半田付検査装置25が検出した不良の中には、実際には不良でない場合があり、あるいは、不良と判定されなかったにもかかわらず、実際には不良である場合があるという問題点を有している。これらの誤判定の報告を、以下では虚報ということとする。以下、虚報の例を図面により説明する。
【0025】
図12は不良と検出された場合で実際には不良でない場合の例を示すプリント基板2及び電子部品1を接続している半田の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。なお、図12には、比較のために、実際に印刷された半田ペーストの印刷体積が前述した理論体積となっている場合の例を、図の左側に示している。
【0026】
電子部品1とプリント基板2との間の高さは、すでに説明したように、半田印刷工程で印刷した半田ペースト35の印刷体積により決まる。しかし、半田ペーストの印刷体積が前述した理論体積より少ない場合、図12(a)に体積が小さい半田5として示すように、電子部品1とプリント基板2との間に存在する半田量が少ないため、電子部品1とプリント基板2の間の距離が短くなる。この場合、半田付検査装置25は、前述したように、理論体積から決められた切断線3を基準にして半田付検査を行うことになるため、図12(b)に示すように、体積が小さい半田5の断面写真8から計測される断面直径10が、未接続不良判定値12より小さいと判定することになる。しかし、実際には電子部品1とプリント基板2とは正常に溶着されている。この虚報は、体積が小さい半田5は、電子部品1とプリント基板2との間を小さい高さで溶着することになり、半田ペーストの理論体積から決められた切断線3の位置が半田5の高さの中央とならず、断面直径10が最大となる位置での計測を行うことができなかったことに起因するものである。
【0027】
図13は不良と判定されなかったにも係わらず不良である場合の例を示すプリント基板2及び電子部品1を接続している半田の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。図13に示す例は、半田ペーストの印刷体積が前述した理論体積より多い場合の例である。なお、図13には、比較のために、実際に印刷された半田ペーストの印刷体積が前述した理論体積となっている場合の例を、図の左側に示している。
【0028】
図13(a)に示すように、半田ペーストの印刷体積が前述した理論体積より多い場合、電子部品1とプリント基板2との間を接続する半田13の半田量も多くなるため、電子部品1とプリント基板2との間の距離が長くなる。この場合も、半田付検査装置25は、理論体積から決められた切断線3を基準にして半田付検査を行うことになる。このため、図13(b)に示すように、半田13の断面写真16から計測される半田13の断面直径18は、ショート不良判定値20より小さくなり、半田付検査装置25は、正常であると判定することになる。しかし、実際には電子部品1とプリント基板2とを接続している半田13の実直径19は、半田13の体積が大きいため、ショート不良判定値20より大きく、ショート不良となるものである。この虚報は、体積が大きい半田13は、電子部品1とプリント基板2との間を大きい高さで溶着することになり、理論体積から決められた切断線3の位置が半田13の高さの中央とならず、断面直径が最大となる位置での断面写真17を得ることができず、これによる計測を行うことができなかったことに起因するものである。
【0029】
このように、図13に示す例の場合、見かけ上正常な体積の多い半田の断面写真16から計測される見かけ上正常な体積の大きい半田の断面直径18が、ショート不良判定値20より小さくなり、実際には、計測すべき体積の大きい半田の断面直径19はショート不良となるところが正常とみなされ、ショート不良を見逃してしまっている。
【0030】
前述したような虚報は、使用半田ペーストの種類、メタルマスク開口部の半田ペーストのつまり等により、印刷検査では不良とならない半田ペースト印刷量のばらつきが起因となって発生する。
【0031】
また、前述したような半田付けの不良、検査結果の虚報は、同一のメタルマスク多数回に渡って使用したときに、半田ペーストによるメタルマスクの汚染の結果、印刷される半田ペーストの印刷量であるパッド毎の理想体積に対する体積比がメタルマスクの使用回数が多くなるほど小さくなることに起因して生じることが多い。従って、1枚のプリント基板に設けられる多数のパッドに印刷される半田ペーストの体積比のばらつきはそれほど大きいものではない。
【0032】
そして、一般に、半田付検査において、半田付検査装置25が不良を検出した際には、逐次、現場作業員に確認が求められる。この確認要求は、1枚の基板につき数十件程度発生し、現場作業員の負担を大きくし、プリント基板製造工程全体の効率に影響を与えている。また、不良の見逃しは、プリント基板の製造品質に大きな影響を与えることになる。
【0033】
本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決し、半田付検査の虚報の件数を削減することを可能としたプリント基板製造システム及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明によれば前記目的は、半田ペーストをプリント基板上に印刷する半田印刷工程と、印刷された半田ペーストの検査を行う半田印刷検査工程と、電子部品を基板上に搭載する部品搭載工程と、半田ペーストを溶解させて電子部品を基板上に半田付けするリフロー工程と、半田付けが正常に行われているか否かを検査する半田付検査工程とを備えるプリント基板製造方法において、前記半田印刷検査工程は、前記プリント基板に半田ペーストを印刷するときに使用する前記プリント基板上の多数のパッドに対応して開口部が設けられたメタルマスクの厚さと前記開口部の口径とから計算される前記メタルマスクの開口部内に埋め込まれる半田ペーストの体積である理論体積と、前記多数のパッド上に印刷された全ての実半田ペーストの体積との比率である実半田ペーストの体積比率をパッド毎に算出しておき、前記半田付検査工程は、前記多数のパッド上に印刷された全ての実半田ペーストの体積比率を平均して平均体積比を算出し、算出した平均体積比から、電子部品とプリント基板との間のプリント基板面から半田付検査の検査位置までの距離を算出し、検査プログラムに算出した距離を検査位置として設定して半田付けが正常に行われているか否かを検査することにより達成される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、半田付検査装置の検査精度を向上させることができ、半田付検査の虚報件数を削減することができる。現場作業員の確認作業件数を削減と、プリント基板製造品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態により基板上に電子部品を半田付けした場合で、半田ペーストの印刷体積が理論体積より小さい場合の電子部品及びプリント基板の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態により基板上に電子部品を半田付けした場合で、半田ペーストの印刷体積が理論体積より大きい場合の電子部品及びプリント基板の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態によるプリント基板製造システム及び製造方法を説明する図である。
【図4】制御サーバでの処理動作を説明するフローチャートである。
【図5】半田印刷検査結果格納サーバに格納された半田ペーストの印刷検査装置による検査の結果である印刷検査結果ファイルの内容を説明する図である。
【図6】制御サーバ内に格納されている異なる相対距離が設定された複数の半田付検査プログラムの1つを、印刷半田ペーストの平均半田体積比から決定する検査プログラム決定テーブルの構成を説明する図である。
【図7】従来技術によるプリント基板製造システム及び製造方法を説明する図である。
【図8】半田ペーストを基板上に印刷する半田印刷工程について説明する図である。
【図9】プリント基板及び電子部品を接続している半田の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【図10】ショート不良を生じている場合のプリント基板及び電子部品を接続している半田の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【図11】未接続不良を生じている場合のプリント基板及び電子部品を接続している半田の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【図12】不良と検出された場合で実際には不良でない場合の例を示すプリント基板及び電子部品を接続している半田の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【図13】不良と判定されなかったにも係わらず不良である場合の例を示すプリント基板及び電子部品を接続している半田の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明によるプリント基板製造システム及び製造方法の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0038】
図1は本発明の一実施形態により基板上に電子部品を半田付けした場合で、半田ペーストの印刷体積が理論体積より小さい場合の電子部品1及びプリント基板2の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【0039】
半田ペーストの印刷体積が従来技術で説明した半田ペーストの理論体積より小さい場合、図2(a)に示すように、プリント基板2と電子部品1とを接続する半田5の体積が半田ペーストの理論体積で接続した半田の場合より小さくなり、また、プリント基板2と電子部品1との間の距離も半田ペーストの理論体積で接続した半田の場合より小さくなるので、図1(b)に示すように、理論体積から決められた切断線3を基準にした半田の断面写真8から計測される半田の断面直径10が、未接続不良判定値12より小さくなり、この結果、半田付検査装置が虚報を発することとなってしまう。
【0040】
そこで、本発明の実施形態では、印刷検査結果から、体積が小さい半田5の水平断面が最も大きい部分を横切るようなプリント基板2からの相対距離7を算出し、半田の体積が小さい場合の前述で求めた相対距離7から新たに体積が小さい場合の切断線6を設定することとしている。そして、体積が小さい場合の切断線6を基準に、体積が小さい場合の切断線6による半田5の断面写真9を撮影し、体積が小さい場合の切断線6による断面直径11を計測する。
【0041】
本発明の実施形態は、前述のような方法を用いることにより、半田の体積が小さい場合場合であっても、切断線6よる断面直径11が未接続不良判定値12よりも大きいため未接続不良の虚報を発することを防止することができる。
【0042】
図2は本発明の一実施形態により基板上に電子部品を半田付けした場合で、半田ペーストの印刷体積が理論体積より大きい場合の電子部品1及びプリント基板2の溶着部分の縦断面、及び、溶着部分の水平断面を示す図である。
【0043】
半田ペーストの印刷体積が従来技術で説明した半田ペーストの理論体積より大きい場合、図2(a)に示すように、プリント基板2と電子部品1とを接続する半田5の体積が半田ペーストの理論体積で接続した半田の場合より大きくなり、また、プリント基板2と電子部品1との間の距離も半田ペーストの理論体積で接続した半田の場合より大きくなるので、図2(b)に示すように、半田ペーストの理論体積から決められた切断線3を基準にした半田の断面写真16から計測される半田の断面直径18が、ショート不良判定値20よりも小さくなるため不良の見逃しとなってしまう。
【0044】
そこで、本発明の実施形態では、印刷検査結果から体積が大きい半田13の水平断面が最も大きい部分を横切るようなプリント基板2からの相対距離15を算出し、この相対距離の位置に新たに体積が大きい場合の切断線14を設定することとしている。そして、体積が大きい場合の切断線14を基準に、計測すべき体積が大きい半田の断面写真17を撮影し、計測すべき体積が大きい半田の断面直径19を計測する。
【0045】
本発明の実施形態は、前述のような方法を用いることにより、計測すべき体積が大きい半田の断面直径19が、ショート不良判定値20よりも大きくなるため、不良の見逃しを防止して、見かけ上正常という虚報を防ぐことができる。
【0046】
図3は本発明の一実施形態によるプリント基板製造システム及び製造方法を説明する図である。
【0047】
図3(a)に示すように、本発明の実施形態によるプリント基板の製造は、前述した従来技術の場合と同様に、半田ペーストを基板上に印刷する半田印刷工程、印刷された半田ペーストの検査を行う半田印刷検査工程、電子部品を基板上に搭載する部品搭載工程、半田ペーストを溶解させて電子部品を基板上に半田付けするリフロー工程、半田付けが正常に行われているか否かを検査する半田付検査工程の各工程を経て行われる。
【0048】
そして、前述の各工程は、図3(b)に示すように、印刷装置21と、印刷検査装置22と、部品搭載装置23と、リフロー装置24と、バーコード読取装置30及び半田付検査装置25との各装置により行われ、これらの各装置は、コンベア26により接続されている。プリント基板は、コンベア26で印刷装置21から順に各装置へ送られながら電子部品の半田付けが行われる。印刷検査装置22、印刷検査結果格納サーバ27、制御サーバ29、バーコード読取装置30は、印刷検査結果格納サーバ27及び制御サーバ29とLAN28を介して接続されている。
【0049】
印刷検査装置22は、プリント基板に予め刻印されたバーコードを読み取ることが可能であり、印刷検査装置22での検査結果をテキストファイル形式で、LAN28を介して印刷検査結果格納サーバ27に格納する。その際、印刷検査装置22の検査結果ファイル名は、検査したプリント基板のバーコードを読み取ったデータに設定される。
【0050】
バーコード読取装置30は、半田付検査装置25へ送られるプリント基板に刻印されたバーコードを読み取り、読み取ったバーコードをLNA28を介して制御サーバ29へ送信する。制御サーバ29内には、後述するように、異なる相対距離4が設定された複数の半田付検査プログラムの1つを、印刷半田ペーストの平均体積比から決定する検査プログラム決定テーブルが格納されている。検査プログラムとは、半田付検査装置25を制御するプログラムであり、切断線3を設定する基準となる相対距離4等のパラメータを持っている。
【0051】
図4は制御サーバ29での処理動作を説明するフローチャート、図5は半田印刷検査結果格納サーバ27に格納された半田ペーストの印刷検査装置による検査の結果である印刷検査結果ファイルの内容を説明する図であり、以下、これらの図を参照して、制御サーバ29での処理動作を説明する
図4に示すフローによる処理動作を説明する前に、まず、図5を参照して、印刷検査結果ファイルの内容について説明する。
【0052】
半田ペーストの印刷は、図8により説明した従来技術の場合と同様に行われ、また、印刷検査装置22が計測した実半田ペーストの体積の理論体積に対する比率を算出し、その体積比が基準の範囲内に収まっているか否かを確認することも、前述した従来技術の場合と同様に行われる。
【0053】
印刷検査装置22は、検査結果として、多数のパッド34上の全ての実半田ペーストの体積比率を、テキストファイル形式でプリント基板1枚毎に、印刷結果ファイルとして作成し、印刷検査結果格納サーバ27に格納する。1つの印刷結果ファイルには、図5に示すように、1つのプリント基板2の全てのパッド34の印刷検査結果が記録されており、1行に1つのパッド34の印刷済の半田ペースト35の体積比が記録される。1行は、カンマを区切りとして、前半部が、印刷検査装置22がプリント基板2上のパッド34を一意に識別するためのパッド番号を表し、後半部が、印刷済半田ペースト35の体積比をパーセント形式で表したものとなっている。
【0054】
次に、図4の参照に戻って制御サーバ29での処理動作を説明する。
【0055】
(1)制御サーバ29は、バーコード読取装置30からバーコードが送信されてくると、受け取ったバーコードを変数[バーコード]に格納し、変数[バーコード]を検索キーとして、印刷検査結果格納サーバ27にアクセスしてファイル名検索を行う(ステップS100、S101)。
【0056】
(2)制御サーバ29は、ステップS101でのファイル名検索で該当した検査結果ファイルの内容の全て、すなわち、図5により説明したような全ての行について、カンマを区切りとした後半部の体積比を配列変数[検査結果]に格納する(ステップS102)。
【0057】
(3)その後、制御サーバ29は、配列変数[検査結果]に格納された全ての体積比の平均を算出し、変数[平均体積比]に格納し、変数[平均体積比]を検索キーとして、[検査プログラム決定テーブル]からこのテーブルに格納された半田付検査プログラムを検索し、該当する半田付検査プログラムを変数[配信検査プログラム]へ格納する(ステップS103、S104)。
【0058】
(4)制御サーバ29は、変数[配信検査プログラム]に格納された検査プログラムを半田付検査装置25へ送信する(ステップS105)。
【0059】
半田付検査装置25は、前述したような処理を行った結果として制御サーバ29から送信されてきたプリント基板面から切断線までの相対距離が動的に調整されている検査プログラムにより、半田付が正常に行われているか否かの検査を行う。
【0060】
図6は制御サーバ29内に格納されている異なる相対距離4が設定された複数の半田付検査プログラムの1つを、印刷半田ペーストの平均半田体積比から決定する検査プログラム決定テーブルの構成を説明する図である。このテーブルは、前述したステップS104の処理において、半田ペーストの平均体積比から半田付検査プログラムを検索する際に使用されるテーブルである。
【0061】
検査プログラム決定テーブルは、図6に示すように、印刷半田ペースト平均体積比と半田付プログラムとの2列から構成されている。半田付検査プログラムの列には、印刷半田ペーストの平均体積比から計算された相対距離が設定された半田付検査プログラムが格納されている。
【0062】
印刷半田ペースト平均体積比が理論体積比と同一の場合、半田付検査プログラム[i]が対応する半田付検査プログラムとして採用され、印刷半田ペースト平均体積比が、理論体積比+α以下、かつ、理論体積比より大きい場合、半田付検査プログラム[i−1]が採用される。同様に、印刷半田ペースト平均体積比が、理論体積比+β以下、かつ、理論体積比+αより大きい場合、半田付検査プログラム[i−2]が採用され、印刷半田ペースト平均体積比が、理論体積比−γより大きく、かつ、理論体積比以下の場合、半田付検査プログラム[i+1]が採用される。さらに同様に、印刷半田ペースト平均体積比が、理論体積比−θより大きく、かつ、理論体積比−γ以下場合、半田付検査プログラム[i+2]が採用される。
【0063】
本発明の実施形態は、前述のようにして、印刷半田ペースト平均体積比で検査プログラム決定テーブルを検索することにより、補正された相対距離が設定された半田付検査プログラムを選択することが可能となり、使用半田ペーストの種類、メタルマスク開口部の半田ペーストのつまり等により、印刷検査では不良とならない半田ペースト印刷量のばらつきにより発生する半田付検査装置25からの虚報を防止することができ、現場作業員の確認作業件数を削減し、プリント基板製造の品質を向上させることができる。
【0064】
前述した本発明の実施形態は、制御サーバ29が、半田ペーストの平均体積比により、プリント基板面から切断線までの相対距離を動的に調整するとして説明したが、本発明は、制御サーバの機能の全てを半田付制御装置に持たせるようにすることができ、また、バーコード読取装置の機能を半田付制御装置に持たせるようにすることもできる。さらに、本発明は、印刷検査装置内に半田ペーストの印刷状態の検査結果を格納しておくようにすることもできる。
【0065】
また、前述した本発明の実施形態での処理は、制御サーバ29が、半田ペーストの平均体積比により、プリント基板面から切断線までの相対距離が動的に調整されている検査プログラムを選択した半田付検査装置25に配信するとしているが、本発明は、制御サーバが、半田ペーストの平均体積比により、プリント基板面から切断線までの相対距離を動的に調整して生成し、生成した相対距離をプログラムに埋め込んで半田付検査装置25に配信するようにしてもよく、あるいは、半田付検査装置25に、相対距離を埋め込んで使用するプログラムを持たせておき、制御サーバから生成した相対距離の情報を配信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 電子部品
2 プリント基板
3、6、14 切断線
4、7、15 相対距離
5、13 半田
8、9、16、17、38 半田の断面写真
18、19、39 半田の断面直径
20 ショート不良判定値
21 半田印刷装置
22 印刷検査装置
23 部品搭載装置
24 リフロー装置
25 半田付検査装置
27 印刷検査結果格納サーバ
28 LAN
29 制御サーバ
30 バーコード読取装置
31 スキージ
32 半田ペースト
33 メタルマスク
34 パッド
35 印刷済半田ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田ペーストをプリント基板上に印刷する半田印刷装置と、印刷された半田ペーストの検査を行う半田印刷検査装置と、電子部品を基板上に搭載する部品搭載装置と、半田ペーストを溶解させて電子部品を基板上に半田付けするリフロー装置と、半田付けが正常に行われているか否かを検査する半田付検査装置とを備えるプリント基板製造システムにおいて、
前記半田印刷検査装置は、前記プリント基板に半田ペーストを印刷するときに使用する前記プリント基板上の多数のパッドに対応して開口部が設けられたメタルマスクの厚さと前記開口部の口径とから計算される前記メタルマスクの開口部内に埋め込まれる半田ペーストの体積である理論体積と、前記多数のパッド上に印刷された全ての実半田ペーストの体積との比率である実半田ペーストの体積比率をパッド毎に算出しておき、
前記半田付検査装置は、前記多数のパッド上に印刷された全ての実半田ペーストの体積比率を平均して平均体積比を算出し、算出した平均体積比から、電子部品とプリント基板との間のプリント基板面から半田付検査の検査位置までの距離を算出し、検査プログラムに算出した距離を検査位置として設定して半田付けが正常に行われているか否かを検査することを特徴とするプリント基板製造システム。
【請求項2】
制御サーバをさらに備え、該制御サーバは、前記多数のパッド上に印刷された全ての実半田ペーストの体積比率を平均して平均体積比を算出し、算出した平均体積比から、電子部品とプリント基板との間のプリント基板面から半田付検査の検査位置までの距離を算出し、算出した距離を検査位置として設定した検査プログラムを前記半田付検査装置に配信することを特徴とする請求項1記載のプリント基板の製造システム。
【請求項3】
半田ペーストをプリント基板上に印刷する半田印刷工程と、印刷された半田ペーストの検査を行う半田印刷検査工程と、電子部品を基板上に搭載する部品搭載工程と、半田ペーストを溶解させて電子部品を基板上に半田付けするリフロー工程と、半田付けが正常に行われているか否かを検査する半田付検査工程とを備えるプリント基板製造方法において、
前記半田印刷検査工程は、前記プリント基板に半田ペーストを印刷するときに使用する前記プリント基板上の多数のパッドに対応して開口部が設けられたメタルマスクの厚さと前記開口部の口径とから計算される前記メタルマスクの開口部内に埋め込まれる半田ペーストの体積である理論体積と、前記多数のパッド上に印刷された全ての実半田ペーストの体積との比率である実半田ペーストの体積比率をパッド毎に算出しておき、
前記半田付検査工程は、前記多数のパッド上に印刷された全ての実半田ペーストの体積比率を平均して平均体積比を算出し、算出した平均体積比から、電子部品とプリント基板との間のプリント基板面から半田付検査の検査位置までの距離を算出し、検査プログラムに算出した距離を検査位置として設定して半田付けが正常に行われているか否かを検査することを特徴とするプリント基板製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−124269(P2012−124269A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272719(P2010−272719)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】