説明

プリント基板

【課題】搭載するICのリード端子間に生じる半田ブリッジを抑制可能なプリント基板を提供することである。
【解決手段】プリント基板1は、フロー工程に投入されて半田付けが行われるものであり、進行方向Aへ搬送されるものである。プリント基板1は、ICを搭載可能な複数のランド2を有している。ランド2は、ランド列3〜6を形成し、ランド列5,6は、半田の流れ方向下流側に位置している。ランド列5とランド列6との間には、引きランド10が設けられている。引きランド10は、前方引きランド11,12と、後方引きランド13とを有している。後方引きランド13は、近隣側ランド部14と遠方側ランド部15とに区分されており、近隣側ランド部14と遠方側ランド部15の境目に括れ部16を有している。近隣側ランド部14は、遠方側ランド部15よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント基板に関し、さらに詳細には、噴流式半田付け方法によって半田付けされたプリント基板に関するものである。また本発明は、印刷済であって、電子部品が取り付けられる前のプリント基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機器の制御や情報処理、数値計算等が可能なCPU(中央演算処理装置)は、携帯電話機器や情報端末から産業用機器に至るまで、あらゆる分野で利用されている。
CPUは、一般的にフラットパッケージ型ICで構成され、プリント基板等で構成された電子回路基板に搭載され用いられている。フラットパッケージ型ICとは、表面実装用のICを指すものであり、プリント基板の表面に取り付けられるものである。詳細には、プリント基板の表面に形成されたランドと呼ばれるパッド状の電極に、フラットパッケージ型ICが有するリード端子を半田等で機械的に接合することで、プリント基板とフラットパッケージ型ICとを電気的に接合できる。
【0003】
プリント基板とフラットパッケージ型ICとの半田付け方法は、半田ゴテを用いた手作業による半田付けと、コンベア装置等を利用した自動半田付け方法とに分けられ、自動半田付け方法としては、リフローとフローの2種類に大別される。
【0004】
リフローは、ペースト状の半田が塗布されたプリント基板のランドに、フラットパッケージ型ICのリード端子を載せ、コンベアで前記プリント基板を炉内に移動させ、温風等で熱を加えて半田を溶かすことで、前記ランドと前記リード端子とを半田で接合するものである。
なお、リフローでは、ペースト状の半田を前記ランドに塗布する際に、メタルマスクと呼ばれる金属板が用いられる。メタルマスクは複数の開口を有し、前記開口は前記ランドに相当する位置に設けられている。そのため、メタルマスクをプリント基板の上に載せ、その上からペースト状の半田をへらやスキージ等で延ばすことで、当該ランドのみに半田を塗布することができる。
【0005】
一方、フローは、噴流式半田付け方法とも呼ばれ、コンベアでプリント基板を移動させ、噴流した半田を浴びせることで、プリント基板の半田付けを行うものである。
詳細には、フラットパッケージ型ICのIC本体に接着剤等を塗布し、且つ前記ICのリード端子をプリント基板のランドに当接させた状態でプリント基板に仮留めする。そして、前記プリント基板を天地逆さまにしてコンベアに装着して移動させ、溶融した半田を噴流させている半田槽に、プリント基板の片面を浸漬させる。その結果、仮留めされたプリント基板のランドと前記ICのリード端子とに溶融した半田が付着されて、半田付けされる。
【0006】
前述の通り、リフローでは、ペースト状の半田と、メタルマスクを用いている。ペースト状の半田は、冷暗所での保管が必要であり、開封後には使用期限が限定される。また、メタルマスクは、複数の開口に半田残渣が付着するため、定期的に清掃が必要である。そのため、リフローにおいては、半田の管理や、メタルマスクのメンテナンスに手間が掛かる。
【0007】
一方、フローにおいては、半田槽における半田の管理は余り必要がなく、メンテナンスが容易である。ところが、フローでは、略液状の半田をプリント基板に搭載された部品に浴びせるため、半田付け不良が生じ易い。例えば、高性能なフラットパッケージ型ICでは、IC本体の四方の各辺に、多くのリード端子が備えられている。この様な高密度化が図られた前記ICでは、リード端子間のピッチは狭いため、リード端子間を不用意に半田で接合させるいわゆる半田ブリッジが容易に発生してしまう。発生した半田ブリッジは、例えば、半田吸い取り線と呼ばれる金属繊維を編んだ部材と半田ゴテを用いることで修正可能であるが、手作業で行う必要があり手間が掛かる。特許文献1には、四方の各辺にリード端子を有したフラットパッケージ型ICの半田ブリッジ対策が施されたプリント基板が開示されている。
【0008】
特許文献1に開示されたプリント基板では、端子間に生じる半田ブリッジを防止するため、搭載予定の前記ICの角部に相当する位置に、引きランドと呼ばれるランドが設けられている。引きランドは、余剰半田を吸い取ることを目的としたいわゆる捨てランドであり、電気的な役割を有していないものである。
図6に示すように、特許文献1では、搭載予定のIC101(フラットパッケージ型IC)は、プリント基板200に対して斜めに配置される。そのため、IC101用のランド102も斜めに配置されている。ランド102は、IC101の四方の各辺に複数設けられており、ランド列103〜106を形成している。フロー工程において、プリント基板200は図6、図7の様に進行方向Aの方へ搬送されるため、溶融状の半田は、逆に図6、図7の矢印B方向に流れる。そのためランド列103,104は半田の流れ方向の上流側(先に半田が触れる側、図6における右側)に、ランド列105,106は下流側(半田が後で触れる側、図6における左側)に位置することとなる。ランド列105,106同士の延長線上の交差点には、引きランド107が設けられている。
【0009】
ここで、溶融した半田の静的な性質について説明する。
溶融した半田は、流動性を有すると共に、表面張力も備えている。そのため、ランド等に付着された半田は、球形を形成しようとする。ランド間が狭い場合、隣り合う球形の半田同士が容易にくっついてしまい、半田ブリッジとなる。
また、溶融した半田は、熱容量の小さいランドから大きいランドへ移動し易い。
そのため、IC101のリード端子が当接されるランド102よりも、引きランド107の面積を大きくすることで、引きランド107側に余剰の半田を溜めることができる。
【0010】
またフロー工程において、噴流によって半田は動的な力を受ける。
そのため溶融した半田をプリント基板に噴流させるフロー工程においては、噴流による動的な力によって、半田ブリッジが力を受けてランド列上を移動し、半田の流れ方向の上流側よりも下流側に滞留することとなる。
【0011】
特許文献1に開示された引きランド107は、前記半田の静的な性質とフロー工程における半田の動的な性質を利用したものであり、プリント基板200の進行方向Aの上流側(半田の流れの下流側)に設けることで、余剰の半田を引きランド107に滞留させることができる。
さらに、特許文献1では、引きランド107よりも半田の流れ方向Bの下流側に、引きランド107と同等の大きさを有する半田留めランド108を配置している。つまり、引きランド107の半田収容量を約2倍にでき、確実に余剰半田を除去できる。すなわち、特許文献1に記載のプリント基板200を用いれば、ランド102間に半田が滞留することがなく、半田ブリッジを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−126960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、特許文献1に記載のプリント基板200にIC101を搭載し、フロー工程で半田付けを行った結果、IC101のリード端子間に半田ブリッジが発生する場合があった。この問題について研究したところ、一旦、引きランド(引きランド107及び半田留めランド108)に吸収された溶融状の半田が、固化する前にリード端子側に戻ってしまうことが原因であることが判明した。
【0014】
引きランドは、半田の静的な流れによって余剰の半田を引き込むものであるが、半田の流れ方向下流側の位置に引きランドを設けると、前記した様に動的な要因によっても引きランドに半田が溜まる。
より具体的に説明すると、本来、溶融状の半田は、表面張力や濡れ性の関係から大面積のランドに引かれる。つまり、静的な吸引力によって、リード端子に付着した溶融状の半田が、引きランドに引かれて、リード端子間の半田ブリッジが解消される。
【0015】
ところが、半田の流れ方向下流側の位置に引きランドを設けると、半田の動的な流れによっても、溶融状の半田が引きランドに入る。
つまり、半田の流れ方向下流側の位置に引きランドを設けると、半田の流れに押されて溶融状の半田が、引きランドに入るので、半田の動的な流れによって、引きランドに過剰に半田が押し込まれる。
【0016】
そして半田の流れが治まると(動的な流れが止まると)、引きランドに過剰に押し込まれていた溶融状の半田が、静的な流れによってリード端子側に戻ってしまう。
そのためリード端子間に半田ブリッジが生じてしまう。
【0017】
上記した現状に鑑み、本発明は、搭載するICのリード端子間に生じる半田ブリッジを抑制可能なプリント基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等は、鋭意研究の末、余剰半田を確実に滞留可能なランドを有するプリント基板の開発に成功した。上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、絶縁性基板に配線が描かれ、電子部品のリード端子が絶縁性基板に描かれた前記配線に半田付けされてなるプリント基板であって、電子部品の少なくとも一つが、略四角形のIC本体を有し前記IC本体の全ての辺からリード端子が突出するICであり、電子部品を絶縁性基板に配置した状態で、前記絶縁性基板に溶融状態の半田材料を一定方向に順次接触させて作られたプリント基板において、少なくとも一つのICは、IC本体の全ての辺が、半田の接触方向に対して傾斜しており、IC本体の近傍であって、半田の流れの下流側の位置に、リード端子が取り付けられることなく半田だけが存在する引きランドがあり、当該引きランドには括れ部があって、括れ部から電子部品に近い側の近隣側ランド部と遠い側の遠方側ランド部に分かれており、遠方側ランド部の面積が近隣側ランド部の面積よりも小さいことを特徴とするプリント基板である。
【0019】
本発明では、引きランドに括れ部が設けられていることから、動的な流れによって余剰に押し込まれた溶融状の半田は、括れ部を越えて、遠方側ランド部に押し込まれる。
そして動的な流れが収まると、遠方側ランド部に入っていた溶融状の半田が、近隣側ランド部に戻される。しかしながら、本発明では、近隣側ランド部の面積よりも、遠方側ランド部の面積の方が小さいことから、遠方側ランド部から戻される半田の量は少ない。そのため、近隣側ランド部からリード端子側に戻される半田の量は少なく、リード端子間には半田ブリッジは生じ難い。すなわち、搭載するICのリード端子間に生じる半田ブリッジを抑制できる。
【0020】
請求項2に記載の発明は、絶縁性基板に配線が描かれ、電子部品のリード端子が絶縁性基板に描かれた前記配線に半田付けされてなるプリント基板であって、電子部品の少なくとも一つが、略四角形のIC本体を有し前記IC本体の全ての辺からリード端子が突出するICであるプリント基板において、少なくとも一つのICは、IC本体の全ての辺が、絶縁性基板に対して傾斜しており、IC本体の近傍にリード端子が取り付けられることなく半田だけが存在する引きランドがあり、当該引きランドには括れ部があって、括れ部から電子部品に近い側の近隣側ランド部と遠い側の遠方側ランド部に分かれており、遠方側ランド部の面積が近隣側ランド部の面積よりも小さいことを特徴とするプリント基板である。
【0021】
本発明のプリント基板で採用する引きランドも、先の説明と同様の構成を有することから、搭載するICのリード端子間に生じる半田ブリッジを抑制できる。
なお、本発明のプリント基板においては、IC本体の全ての辺は、絶縁性基板に対して傾斜している。フロー工程では、一般的に、プリント基板の対向する2辺をコンベアに固定して搬送する。そのため、本発明のプリント基板は使い勝手が良い。
【0022】
請求項3に記載の発明は、絶縁性基板に配線が描かれ、電子部品のリード端子が絶縁性基板に描かれた前記配線に半田付けされる印刷済のプリント基板であって、半田付けが予定されている電子部品の少なくとも一つが、略四角形のIC本体を有し前記IC本体の全ての辺からリード端子が突出するICである印刷済のプリント基板において、前記ICが取り付けられる部位の配線は、IC本体の全ての辺が、絶縁性基板に対して傾斜する姿勢となる様に配置されており、IC本体が取り付けられる部位の近傍にリード端子が取り付けられることなく半田だけが存在することとなる引きランドがあり、当該引きランドには括れ部があって、括れ部から電子部品に近い側の近隣側ランド部と遠い側の遠方側ランド部に分かれており、遠方側ランド部の面積が近隣側ランド部の面積よりも小さいことを特徴とするプリント基板である。
【0023】
本発明のプリント基板で採用する引きランドも、先の説明と同様の構成を有することから、搭載するICのリード端子間に生じる半田ブリッジを抑制できる。
なお、本発明のプリント基板は、電子部品を搭載する前のプリント基板単品である。
【0024】
請求項4に記載の発明は、遠方側ランド部の面積は、近隣側ランド部の面積の50%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリント基板である。
【0025】
遠方側ランド部の面積は、近隣側ランド部の面積の50%以下とすることが好ましい。
【0026】
請求項5に記載の発明は、前記括れ部が設けられた引きランドと、IC本体又は取り付けられる予定のIC本体との中間領域にさらに別の独立した2以上のランド部とがあり、前記中間領域に設けられた複数のランド部は、IC本体又は取り付けられる予定のIC本体の対角線と平行の分離帯を挟んで対峙していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリント基板である。
【0027】
本発明のプリント基板では、引きランドに加え、別の独立した2以上のランド部を前記中間領域に設けている。2以上のランド部同士の間には、前記分離帯が設けられている。つまり、2以上のランド部も、引きランドの一部であり、それぞれのランドを独立させることで、引きランドからリード端子側に戻される半田の量をより少なくできる。
【0028】
請求項6に記載の発明は、分離帯の幅は括れ部の最も狭い部位の幅よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のプリント基板である。
【0029】
かかる構成とすることで、引きランドからリード端子側に戻される半田の量をさらに少なくできる。
【0030】
請求項7に記載の発明は、中間領域に設けられたランドは、平面形状を全体的に観察した際に、前記IC本体又は取り付けられる予定のIC本体の辺と略平行な辺を有し、近隣側ランド部は、括れ部に向かって収束する2辺を有し、前記2辺のなす角が鋭角であることを特徴とする請求項5又は6に記載のプリント基板である。
【0031】
本発明のプリント基板では、中間領域に設けられたランドが、IC本体又は搭載予定のICと平行な辺を有しているため、ICのリード端子間に滞留する余剰の半田を、中間領域に設けられたランドへと移動させ易い。
また、近隣側ランド部は、括れ部に向かって収束する2辺を有し、前記2辺のなす角が鋭角である。換言すれば、近隣側ランド部は、括れ部に向かって狭まっていく形状を有している。そのため、近隣側ランド部から遠方側ランド部へ流した半田は、動的に逆流し難い。つまり、遠方側ランド部から近隣側ランド部へと動的に半田が戻ることを抑制できる。
【0032】
請求項8に記載の発明は、遠方側ランド部は括れ部に向かって収束する2辺を有し、前記2辺のなす角は、前記近隣側ランド部の2辺のなす角よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載のプリント基板である。
【0033】
そのため、近隣側ランド部から遠方側ランド部へ流れた半田は、動的にさらに逆流し難い。つまり、遠方側ランド部から近隣側ランド部へと動的に半田が戻ることをさらに抑制できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のプリント基板によれば、搭載するICのリード端子間に生じる半田ブリッジを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプリント基板を示す平面図である。
【図2】図1のプリント基板であって電子部品を取り付ける前のIC部分の拡大図である。
【図3】プリント基板に形成されている引きランドを示す拡大平面図である。
【図4】プリント基板をフロー工程に投入しICを半田付けした際に引きランドに余剰半田が滞留する過程を示す断面図であり、(a)は引きランドに半田が未だ流入されていない状態、(b)はICのリード端子側から前方引きランドに半田が流入している状態、(c)は前方引きランドが半田で満たされ、溢れた半田が後方引きランドの近隣側ランド部に流入している状態、(d)は後方引きランドの括れ部に半田が差し掛かった状態、(e)は後方引きランドの遠方側ランド部に半田が達した状態、(f)は前方引きランドと後方引きランドの両方で半田が安定した状態である。
【図5】プリント基板とICを示す分解斜視図である。
【図6】従来のプリント基板を示す平面図である。
【図7】フロー工程を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明のプリント基板1,100の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0037】
図1において、プリント基板100は、電子部品が装着済みの基板である。プリント基板100は、プリント基板1に電子部品を接着した状態でフロー工程に投入されて半田付けが行われたものであり、フロー工程においては、図1に示す進行方向Aへ搬送されたものである。従って、フロー工程においては、図1の矢印Bの様に、半田が流れ、図面右側が、流れ方向の上流であり、図面左側が流れ方向の下流である。
図1に示すように、プリント基板100は、配線(配線パターンの図示は省略している)が描かれた絶縁性基板(請求項3に記載のプリント基板)1にフラットパッケージIC40を含む電子部品が半田付けされたものである。フラットパッケージIC40は、略四角形のIC本体41を有し、IC本体41の全ての辺からリード端子42が突出している。
図2、図5に示すように、電子部品を取り付ける前のプリント基板1は、シンボルマーク9と、複数のランド(配線)2を有している。
【0038】
シンボルマーク9は、図5に示すIC40(フラットパッケージ型IC)を搭載する位置を示す図である。シンボルマーク9は、略四角形であり、IC本体41と同等の大きさ及び形状を有している。シンボルマーク9は、プリント基板1の各辺1a〜1dに対して斜めに設けられている。そのため、シンボルマーク9を形成する各辺9b〜9eは、プリント基板1に対して斜めに位置している。これは、IC40が、プリント基板1に対して斜めに配置されるからであり、IC40が有する四角形の各辺41b〜41eもプリント基板1の各辺1a〜1dに対して斜めに配置される。そのためフロー工程においては、IC本体41の全ての辺41b〜41eが、半田の接触方向(流れ方向 矢印B)に対して傾斜することとなる。
なお、シンボルマーク9は、プリント基板1の表面に白色のインク等で印刷されるものである。また、プリント基板1をフロー工程に投入する際には、IC40は、IC本体41の裏面に接着剤等が塗布され、シンボルマーク9に重なるように配置して仮留めされる。
【0039】
ランド2は、IC40とプリント基板1とを電気的に接続するためのパッド状の電極である。ランド2は、銅箔で形成されており、IC40が有する各リード端子42が当接されるものである。
また、ランド2は、図1に示すように、シンボルマーク9を囲む位置に複数設けられており、シンボルマーク9の各辺に設けられたランド2は、それぞれランド列3〜6を形成している。ランド列3,4は、フロー工程における半田の流れ方向Bの上流側(先に半田が触れる側)に位置し、ランド列5,6は、流れ方向Bの下流側(半田が後で触れる側)に位置している。
なお、ランド2やその他電極等を除くプリント基板1の表面7の略全面には、レジスト(絶縁膜)8が塗布されている。
【0040】
ランド列5とランド列6との間であって、ランド列5とランド列6で挟まれる角の部分には、引きランド10が設けられている。
引きランド10は、ランド列5,6に半田ブリッジが生じることを抑制するためのものである。引きランド10は、見た目はパッド状の電極であるが、他の部品等と何ら接続されておらず、電気的な役割は備えていない。
【0041】
引きランド10は、図1,2に示すように、前方引きランド11,12と、後方引きランド13とを有している。前方引きランド11,12は、シンボルマーク9に近づく位置にある。後方引きランド13は、前方引きランド11,12よりも、シンボルマーク9から遠ざかる位置にある。すなわち、半田の流れ方向下流側にある。
なお、後方引きランド13は、括れ部16が設けられた引きランドであり、前方引きランド11,12は、IC本体41又は取り付けられる予定のIC本体41と括れ部16が設けられた引きランドとの中間領域に設けられた引きランドであって、前記後方引きランド13からは独立している。
【0042】
即ち前方引きランド11,12同士の間には、レジスト8で構成された分離帯30が設けられ、前方引きランド11,12と、後方引きランド13との間には、レジスト8で構成された分離帯31が設けられている。つまり、前方引きランド11,12と、後方引きランド13は、いずれも独立して設けられている。
【0043】
前方引きランド11,12は、図3の様に各々略ホームベース形状であり、両者は分離帯30を挟んで対峙しており、且つ分離帯30を中心として線対称の関係にある。
前方引きランド11は、辺50,51,52,53,54によって囲まれている。またこれと対峙する前方引きランド12は、辺50’,51’,52’,53’,54’によって囲まれている。
辺53,53’は、シンボルマーク9の対角線9a(実装予定のIC本体41の対角線41a)と平行である。
また隣接する辺52,52’は、シンボルマーク9の対角線9a(実装予定のIC本体41の対角線41a)に対して垂直である。
また、前方引きランド11,12は、各々角35,35’を有している。角35は、辺52,53によって構成される角であり、角35’は、辺52’,53’によって構成される角である。どちらも分離帯30に近接する位置にあり、後方引きランド13の方に向けられている。角35,35’はいずれも直角である。
【0044】
さらに、前方引きランド11,12の、各々辺51,51’は、それぞれシンボルマーク9の辺9e,9d(実装予定のIC本体41の辺41e,41d)と平行である。即ち前方引きランド11,12の最も外側の辺51,51’は、シンボルマーク9の辺9d,9eと平行であり、前方引きランド11,12の最も外側の辺51,51’のなす角D3は、直角である。
【0045】
なお、前方引きランド11,12の面積は、1つのランド2の面積の約5〜10倍程度であることが好ましい。
【0046】
後方引きランド13は、図3に示すように、全体として略鼓状であり、近隣側ランド部14と遠方側ランド部15とに区分されている。
近隣側ランド部14はシンボルマーク9に近い位置にあり、遠方側ランド部15はシンボルマーク9から遠ざかる位置にある。すなわち、半田の流れ方向Bの下流側にある。
近隣側ランド部14と遠方側ランド部15との境目には、括れ部16が設けられている。なお、括れ部16の幅W2は、前述の分離帯30の幅W1よりも狭い。
【0047】
近隣側ランド部14は、略三角形状を成している。近隣側ランド部14の面積は、前方引きランド11の面積の約1.2〜2倍程度であることが好ましい。
近隣側ランド部14は、辺20,21,60を有している。即ち近隣側ランド部14は、括れ部16に向かって収束する2つの辺20,21を有している。辺20,21同士が成す角D1は、約60度未満であることが好ましく、より好ましくは約45度未満であり、さらに好ましいのは約30度未満である。つまり、角D1は、鋭角を成している。残る一つの辺60は、前方引きランド11,12の対向する辺52,52’と平行である。
【0048】
遠方側ランド部15は、略ホームベース状を成している。遠方側ランド部15の面積は、近隣側ランド部14よりも小さい。遠方側ランド部15は、近隣側ランド部14の面積の50%以下とすることが好ましく、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。
遠方側ランド部15は、前記した様に略ホームベース状であり、辺22,23,24,25,26によって囲まれている。即ち遠方側ランド部15は、括れ部16に向かって収束する2つの辺22,23を有している。辺22,23同士が成す角D2は、約60度以上であることが好ましく、より好ましくは約70度以上であり、さらに好ましいのは約80度以上である。ただし、少なくとも180度未満であり、好ましくは120度未満である。なお、角D2は、辺20,21同士が成す角D1よりも大きい。
最も下流側の辺25は、シンボルマーク9の対角線9a(実装予定のIC本体41の対角線41a)に対して垂直である。
従って最も下流側の辺25は、半田の流れ方向Bに対して垂直となる。
なお、図2,3に示すように、遠方側ランド部15は、半田の流れ方向Bの下流側(半田が後から接触する部位)にあり、それよりも下流側(辺25よりも下流側)には、電極等は設けられていない。つまり、遠方側ランド部15は、行き止まりのランドである。
【0049】
分離帯30は、シンボルマーク9の対角線9a(実装予定のIC本体41の対角線41a)と平行である。また、分離帯30の幅W1は、後述する括れ部16の幅W2よりも大きい。なお、分離帯30の幅W1は、ランド2の幅よりも大きいことが好ましい。
一方、分離帯31は、分離帯30と直交する関係にある。なお、分離帯31の幅は、分離帯30の幅W1よりも狭いことが好ましい。
【0050】
つぎに、本実施形態に係るプリント基板1をフロー工程に投入してIC40を半田付けした際に、引きランド10に余剰半田が滞留する過程について、図4(a)〜(f)を用いて説明する。図4(a)〜(f)は、プリント基板1の断面図を示すものであり、説明の都合上、天地逆に図示し、IC40の図示は省略している。なお、引きランド10は、フロー工程においては、図4(a)の上に図示した平面図における進行方向Aの方へ搬送される。従って、半田は矢印B方向に流れる。
【0051】
図4(a)は、IC40が仮留めされたプリント基板1をフロー工程に投入した直後の引きランド10である。この段階では、引きランド10には、溶融した半田は流れ込んでいない。
なお、引きランド10は、プリント基板1の表面8に塗布されたレジスト8の厚み分だけ低くなっている。
【0052】
図4(b)は、図示しないIC40のリード端子42側から前方引きランド11(12)に、溶融した半田80が流入している状態である。この時、リード端子42側からの半田80は、レジスト8上を流れてきている。
また、前述の通り、前方引きランド11(12)は、IC本体41の辺41d(41e)と平行な辺51(51´)を有しているため、半田80は流入し易い。
【0053】
図4(c)は、前方引きランド11(12)が溶融した半田80で満たされ、溢れた半田80が後方引きランド13の近隣側ランド部14に流入している状態である。この時、半田80は、前方引きランド11(12)と近隣側ランド部14との間に位置する分離帯31を越えて流れている。
【0054】
図4(d)は、後方引きランド13の括れ部16に、溶融した半田80が差し掛かった状態である。前述の通り、近隣側ランド部14は、括れ部16に向かって収束する2つの辺20,21を有している。そして近隣側ランド部14の、括れ部16を構成する2つの辺20,21のなす角D1は、遠方側ランド部15の括れ部16を構成する2つの辺22,23のなす角D2よりも小さいので、半田は近隣側ランド部14から遠方側ランド部15に流れ易く、且つ逆流し難い。
【0055】
図4(e)は、遠方側ランド部15に溶融した半田80が達した状態である。前述の通り、遠方側ランド部15は、進行方向Aの下流側の行き止まりのランドであり、且つ辺25が半田の流れ方向に対して垂直であるから半田は遠方側ランド部15に止まる。そのため括れ部16を越えて流入した半田80が隆起している。これは、前記した様に、括れ部16において、辺22,23同士が成す角D2(遠方側ランド部15側)が、辺20,21同士が成す角D1(近隣側ランド部14側)よりも大きいため、半田80が動的に近隣側ランド部14側に逆流し難くなっているからである。換言すれば、動的な要素を備えた半田80を遠方側ランド部15に閉じ込めたと言える。
【0056】
図4(f)は、前方引きランド11(12)と、後方引きランド13の両方で半田80が安定した状態である。この時、前方引きランド11(12)と、後方引きランド13において、半田80の高さは同等となっており、前方引きランド11(12)からIC40のリード端子42側には半田80は戻されていない。
【0057】
前述の通り、図4(a)〜(f)を経て半田付けされたプリント基板1において、遠方側ランド部15の面積を近隣側ランド部14の面積よりも50%以下としたことで、半田80の戻り量を少なくすることができた。そのため、後方引きランド13から前方引きランド11(12)へ逆流した半田80は、ごく僅かであった。その結果、IC40のリード端子42側に戻される半田80は皆無であり、リード端子42間に生じる半田ブリッジを抑制できた。
【0058】
また、後方引きランド13に設けた括れ部16において、辺22,23同士が成す角D2(遠方側ランド部15側)を、辺20,21同士が成す角D1(近隣側ランド部14側)よりも大きくしたことで、遠方側ランド部15から近隣側ランド部14へと半田80が逆流し難くすることができた。そのため、遠方側ランド部15に閉じ込めた半田80の一部が、遠方側ランド部15に留まりきらず、図示しないフロー槽の方へ落ちたことも考えられ、半田80の戻り量を少なくすることができた一つの要因であると考えられる。
【0059】
以上説明した実施形態では、前方引きランド11,12を設けたが、前方引きランド11,12は必ずしも必須ではない。
また以上説明した実施形態では、後方引きランド13を鼓形に設計したが、他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 プリント基板(絶縁性基板)
1a〜1d,20〜23,41b〜41e,51,51’ 辺
2 ランド(配線)
10 引きランド
11,12 前方引きランド
14 近隣側ランド部
15 遠方側ランド部
16 括れ部
30 分離帯
40 IC
41 IC本体
41a 対角線
42 リード端子
80 半田
100 プリント基板(電子部品装着済み基板)
A 進行方向
B 半田の接触方向
D1,D2 角
W1,W2 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板に配線が描かれ、電子部品のリード端子が絶縁性基板に描かれた前記配線に半田付けされてなるプリント基板であって、
電子部品の少なくとも一つが、略四角形のIC本体を有し前記IC本体の全ての辺からリード端子が突出するICであり、電子部品を絶縁性基板に配置した状態で、前記絶縁性基板に溶融状態の半田材料を一定方向に順次接触させて作られたプリント基板において、
少なくとも一つのICは、IC本体の全ての辺が、半田の接触方向に対して傾斜しており、IC本体の近傍であって、半田の流れの下流側の位置に、リード端子が取り付けられることなく半田だけが存在する引きランドがあり、
当該引きランドには括れ部があって、括れ部から電子部品に近い側の近隣側ランド部と遠い側の遠方側ランド部に分かれており、遠方側ランド部の面積が近隣側ランド部の面積よりも小さいことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
絶縁性基板に配線が描かれ、電子部品のリード端子が絶縁性基板に描かれた前記配線に半田付けされてなるプリント基板であって、
電子部品の少なくとも一つが、略四角形のIC本体を有し前記IC本体の全ての辺からリード端子が突出するICであるプリント基板において、
少なくとも一つのICは、IC本体の全ての辺が、絶縁性基板に対して傾斜しており、IC本体の近傍にリード端子が取り付けられることなく半田だけが存在する引きランドがあり、
当該引きランドには括れ部があって、括れ部から電子部品に近い側の近隣側ランド部と遠い側の遠方側ランド部に分かれており、遠方側ランド部の面積が近隣側ランド部の面積よりも小さいことを特徴とするプリント基板。
【請求項3】
絶縁性基板に配線が描かれ、電子部品のリード端子が絶縁性基板に描かれた前記配線に半田付けされる印刷済のプリント基板であって、
半田付けが予定されている電子部品の少なくとも一つが、略四角形のIC本体を有し前記IC本体の全ての辺からリード端子が突出するICである印刷済のプリント基板において、
前記ICが取り付けられる部位の配線は、IC本体の全ての辺が、絶縁性基板に対して傾斜する姿勢となる様に配置されており、IC本体が取り付けられる部位の近傍にリード端子が取り付けられることなく半田だけが存在することとなる引きランドがあり、
当該引きランドには括れ部があって、括れ部から電子部品に近い側の近隣側ランド部と遠い側の遠方側ランド部に分かれており、遠方側ランド部の面積が近隣側ランド部の面積よりも小さいことを特徴とするプリント基板。
【請求項4】
遠方側ランド部の面積は、近隣側ランド部の面積の50%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリント基板。
【請求項5】
前記括れ部が設けられた引きランドと、IC本体又は取り付けられる予定のIC本体との中間領域にさらに別の独立した2以上のランド部とがあり、前記中間領域に設けられた複数のランド部は、IC本体又は取り付けられる予定のIC本体の対角線と平行の分離帯を挟んで対峙していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリント基板。
【請求項6】
分離帯の幅は括れ部の最も狭い部位の幅よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のプリント基板。
【請求項7】
中間領域に設けられたランドは、平面形状を全体的に観察した際に、前記IC本体又は取り付けられる予定のIC本体の辺と略平行な辺を有し、近隣側ランド部は、括れ部に向かって収束する2辺を有し、前記2辺のなす角が鋭角であることを特徴とする請求項5又は6に記載のプリント基板。
【請求項8】
遠方側ランド部は括れ部に向かって収束する2辺を有し、前記2辺のなす角は、前記近隣側ランド部の2辺のなす角よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−30686(P2013−30686A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167200(P2011−167200)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】