説明

プリント基板

【課題】はんだ接合部の劣化や亀裂の発生・進展を抑制できるプリント基板を提供する。
【解決手段】実施の形態は、電気部品を実装するための基板11の部品実装予定部位に実装する部品14の輪郭と相似の形状のスリット12を設け、実装部品を前記基板の表面より浮かせた状態で実装し、前記部品の端子16を前記基板におけるスリットの周縁部にはんだ付けしたプリント基板を特徴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施の形態は、プリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板では、IC、リレー、コイル、チップ部品などの多数の部品がはんだにより接合されている。はんだ材料としては、Sn−Pb(スズ-鉛)や環境的配慮から鉛を含まないはんだ材料が使用されている。はんだ材料は、電気接続を維持するために取り扱われているが、近年、車載などに使用されるプリント基板は、使用負荷が上がり高温環境や温度サイクル負荷の高い場所で使用されることが多くなっている。
【0003】
プリント基板の部品実装に使用されるはんだ接合部は、電子部品から発生する熱や環境負荷および高密度に組み込みされた状態でのシステムからの発熱などを繰り返し受けている。温度の繰り返し幅、温度差が大きいほど、プリント基板自体と電気部品との熱膨張率の差に起因し、接合部にかかる機械的なひずみは大きくなる。このひずみが大きいほど、劣化や亀裂の発生・進展が速くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−148771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施の形態は、上記の従来技術の課題に鑑みてなされたもので、はんだ接合部の劣化や亀裂の発生・進展を抑制できるプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態は、電気部品を実装するための基板の部品実装予定部位に、実装する部品の輪郭と相似の形状のスリットを設け、実装部品を前記基板の表面より浮かせた状態で実装し、前記部品の端子を前記基板の前記スリットの周縁部にはんだ付けしたプリント基板を特徴する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリント基板におけるはんだ接合部分の断面図。
【図2】プリント基板におけるはんだ接合部に70℃、−10℃の温度を繰り返し加えた時のはんだ接合部AにかかるひずみのFEM解析結果のコンター図。
【図3】プリント基板におけるはんだ接合部に110℃、−10℃の温度を繰り返し加えた時のはんだ接合部AにかかるひずみのFEM解析結果のコンター図。
【図4】実施の形態のプリント基板の上方から撮影した写真。
【図5】実施の形態の実装部品と比較例の実装部品とを共に実装したプリント基板の断面図。
【図6】実施の形態の実装部品と比較例の実装部品とを共に実装したプリント基板を斜め下方から上向きに見たときの斜視図。
【図7】実施の形態のプリント基板の底面図。
【図8】ドリルで切断したスリットの模式図。
【図9】レーザーで処理したスリットの模式図。
【図10】実施の形態のプリント基板におけるスリットの切断面部分を樹脂でコーティングした状態の模式図。
【図11】比較例のプリント基板のスリットなし及び浮かしなしのはんだ接合部、ピン1〜ピン4、マイナス端子ピン、プラス端子ピンの表面状態の写真。
【図12】実施例のプリント基板のスリットあり及び浮かしありのはんだ接合部、ピン1〜ピン4、マイナス端子ピン、プラス端子ピンの表面状態の写真。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態を図に基づいて詳説する。プリント基板の部品実装に使用されるはんだ接合部は、電子部品から発生する熱や環境負荷および高密度に組み込まれた状態で、システムからの発熱などのストレスを繰り返し受けている。この発熱の繰り返しは、電子部品の劣化とその接合部に影響を及ぼす。特に、接合部には、熱ストレスに弱いはんだ材料が使用されることがほとんどである。また、図1〜図3に、プリント基板の基板11上のはんだ接合部13に加熱、冷却を繰り返して大きな幅の温度変化を与えた時に、はんだ接合部にかかるひずみをFEM(Finite Element Method―有限要素法)により解析した結果を示している。この図1〜図3に示すように、はんだ接合部13には、温度の繰り返し幅、温度差が大きいほど大きなひずみがかかる。一般的には、このひずみが大きいほど、劣化や亀裂の発生・進展が速くなる。基板、部品、はんだなどの伸びは、温度差が大きいほど大きくなる傾向にある。図2よりも図3の方がひずみの等高線が混んでいることが分かる。
【0009】
図4、図5〜図7に示すように、実施の形態のプリント基板1では、ベースとなる基板11の実装部品14の下方部分にスリット12を設けることによって、基板11の膨張収縮を抑制し、はんだ接合部13の劣化や亀裂の発生や発生した亀裂の進展を抑制する。また、スリット12の部分からの吸湿が問題となることがあるので、コーティング15などの処理を実施し、水分や湿度の吸湿を防止することにより、内層の腐食やパターンのマイグレーションを抑制し、製品の信頼性向上を図り、トラブルの未然防止を可能とする。すなわち、ベースをなす基板11の部品の挿入実装予定部位にスリット12を形成し、また、端子接続位置にスルーホールを形成する。
【0010】
本実施の形態のプリント基板1では、基板11における挿入実装部品14の実装予定部位にスリット12を設けることにより、はんだ接合部13での亀裂の発生やその亀裂の進展を抑制する。また、部品直下に形成するスリット12は、導電性部品14間、又は導電性部品14と機器との導電性結合部、筐体表面の沿面距離をとることにも寄与する。
【0011】
尚、実施の形態の場合、基板11に対する表面実装部品に対して該当部位にスリットを設けるよりも、挿入実装部品に対して該当部位にスリット12を設ける場合に適用する方が好ましい。挿入実装部品の場合、接続端子16でのみ基板11側の配線パターンに接続するから、基板11の印刷パターンに対する影響が少ないためである。
【0012】
本実施の形態のプリント基板1では、基板11の部分に部品14の投影輪郭と相似形状で、好ましくはやや小さめのスリット12を設け、さらに基板11の表面よりも部品14を浮かせて隙間15を設けている。基板11に挿入された部品14を基板11より浮かせる距離(隙間)15は、部品14のリード端子長までの長さとする。但し、部品14がトランスや大型リレーである場合、隙間15は2mm以下とする。スリット12の内隅の部分はアール(R)17を取ることにより、スリット12の内隅部分から応力集中により基板11に亀裂や割れが生じるのを防止する。
【0013】
実施の形態のプリント基板1において、基板11にスリット12を形成する際には、基板11の表面荒れ、切断面の荒れを少なくするためにレーザーなどの加熱による切断方法を採用するのが好ましい。また、切断後に、切断面を加熱し、滑らかにすることも好ましい。
【0014】
図8に示したように、ドリルにて基板11を切断してスリット12を形成した場合、スリット7の周縁部に基板11に含有されているガラス繊維20が露出し、表面が荒れている。ところが、図9に示すように、基板11に対してレーザー切断加工によりスリット12を形成すると、そのスリット12の周縁の切断面が鋭利であり、基板11に含有されているガラス繊維はほとんど露出しない。したがって、後加工を施さないのであれば、スリット12の形成はレーザー加工によるのが好ましい。
【0015】
しかしながら、ドリルにてスリット12を形成した場合でも、そのスリット12の周縁部を加熱処理することにより、基板11におけるスリット12の切断面を滑らかにすることができる。加熱温度は、基板11のガラス転移点以上にする。例えば、基板11の素材がFR−4の場合、スリット12の部分の表面だけを局部的に160℃以上に加熱することにより、基板11が軟化あるいは溶融して保護層を形成し、切断面を滑らかすることができ、表面荒れ、切断面の荒れを少なくすることができる。これにより、基板11が水分を吸着したりや塵埃等を吸着したりすることを抑制できる。
【0016】
また、図10に示すように、スリット12の切断面の表面部分を樹脂18でコーティングすることもできる。滑らかな部分にアクリルやフッ素系樹脂でコーティング処理することで、水分の吸着や基板11への吸湿を防止し、内部配線(たとえば銅パターン)の腐食やマイグレーションを防止することができる。そして、スリット12を形成し、樹脂18をコーティングする際に、基板11内部へ樹脂18を含浸させることにより、基板11の内部への水分侵入を防止することができ、腐食や内部配線のマイグレーションを防止できる。この樹脂コーティング時には、減圧状態において行うことにより、切断面の微小な多数の凹凸から基板11内部深くに樹脂18を含浸させることができる。
【0017】
このようにして、基板11における実装部品14の直下となる部位にスリット12を形成し、また、実装した部品14を基板11の表面から浮かせて隙間15を設けることにより、基板11とはんだ接合部13の膨張収縮を抑え、実装部品のはんだ接合部13に発生するき裂やその進展を抑制することができる。
【0018】
図11、図12の写真は、図5、図6の試験基板11に対して亀裂発生試験を行った後の、基板11にスリット12および浮かし(隙間)15を設けた場合と設けない場合とのはんだ接合部13の表面状態を示している。はんだ接合部13の亀裂発生試験は、−40℃、125℃の加熱冷却試験を1000回繰り返す試験であり、図11は比較例(スリットなし、浮かしなし)、図12は実施例(スリットあり、浮かしあり)の試験結果の写真である。この試験結果から、亀裂21の発生の度合いがスリット12および浮かし15の有無により大きく異なっていることがわかる。すなわち、比較例でははんだ接合部13に亀裂21が発生していることが視認できるが、実施例でははんだ接合部13に亀裂の発生が認められなかった。
【0019】
このように実施の形態のプリント基板1では、電気部品を実装する基板11における部品実装予定部位にスリット12を設け、当該部位に実装部品14を実装し、当該スリット12の周縁部に設けたスルーホールに部品14の接続端子16を挿入してはんだ付けすることにより、使用中の部品の発熱にて基板11が膨張収縮を受ける度合いを抑制し、はんだ接合部13の劣化や亀裂の発生・進展を抑制できる。また、スリット12からの吸湿が問題となることがあるので、コーティングなどの処理を実施し、水分や湿度の吸湿を防止することにより、基板11の内層の腐食やパターンのマイグレーションを抑制することができ、これにより、製品を長期に亘って使用できるようになり、事故のない信頼性の高い製品を提供できる。
【0020】
尚、スリット12に代えてプリント基板11の部品実装面にパンチングによって多数の穴を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1…プリント基板
11…基板
12…スリット
13…はんだ接合部
14…部品
15…隙間
16…端子
17…アール
18…(コーティング)樹脂
20…ガラス繊維
21…亀裂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品を実装するための基板の部品実装を予定している部位に、実装する部品の輪郭と相似の形状のスリットを設け、実装部品を前記基板の表面より浮かせた状態で当該基板の前記スリットの位置に実装し、前記部品の端子を前記基板における前記スリットの周縁部にはんだ付けしたことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記スリットの大きさを部品よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記スリットは、レーザーによる加熱切断加工にて形成したことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記スリットの切断面に加熱処理を施したことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記加熱処理温度は、基板のガラス転移点以上にしたことを特徴とする請求項4に記載のプリント基板。
【請求項6】
前記スリットの切断面を樹脂でコーティングしたことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−45962(P2013−45962A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183902(P2011−183902)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】