説明

プリント配線基板、4方向リードフラットパッケージICの半田付方法および空気調和機

【課題】半田ショートや半田屑の発生を防止可能なプリント配線基板を得ること。
【解決手段】4方向リードフラットパッケージICを装着するための半田付ランド群を有し、半田付ランド群は前方半田付ランド群および後方半田付ランド群からなるプリント配線基板1であって、後方半田付ランド群6に隣接し、後方半田付ランド群6を構成している後方半田付けランド6aの長手方向と略平行かつ前記長手方向と同程度かそれ以上の長さの前端を有し、半田フロー進行方向に対して水平方向に2分割され、かつ、2分割された各ランドの間隔は前方よりも後方が広い構成をとり、前記長手方向と略平行なスリットを前端付近に有する後方半田引きランド9、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴流式半田槽を用いた半田付により4方向リードフラットパッケージICが実装されるプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプリント配線基板は、部品実装密度の細密化が益々要求されていることから、狭ピッチの4方向リードフラットパッケージIC等の基板実装化が必要となっている。一方では、環境問題を配慮した鉛フリー半田の実用化が急激に進んでいる。しかしながら鉛フリー半田は、従来使用していた鉛入り共晶半田より半田付け性が悪く、そのため、4方向リードフラットパッケージIC等のリード端子間での半田による短絡が発生していた。
【0003】
従来、この種のプリント配線基板では、半田ブリッジの発生を防止するため、前方半田付ランド群と後方半田付ランド群との間の一側にハトメを設け、前方半田付ランド群と後方半田付ランド群との間の他側および後方半田付ランド群の最後尾に格子状の半田引きランドを備えたものがあった。(例えば:特許文献1参照)。
【0004】
また、前方半田付ランド群と前記前方半田付ランド群に隣接する後方半田付ランド群との隣接部および/または後方半田付ランド群の最後尾に半田引きランドを備え、半田引きランドにその半田引きランドの前方に隣接する前方半田付ランド群もしくは後方半田付ランド群の半田付ランドの並びと略平行なスリットを備えたものがあった。(例えば:特許文献2参照)。
【0005】
また、前方半田付ランド群と前記前方半田付ランド群に隣接する後方半田付ランド群との隣接部および/または後方半田付ランド群の最後尾に半田引きランドを備え、第1の後方半田引きランドよりも大きく、少なくともその一部分が第1の後方半田引きランドの半田進行方向に対し後方位置に形成される第2の後方半田引きランドで構成される後方半田引きランドを備えたものがあった。(例えば:特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−175186号公報(第1〜3頁、図1〜図11)
【特許文献2】特開2007−48874号公報(第1頁〜4頁、図1〜図4)
【特許文献3】特開2000−40869号公報(第5頁、図1〜図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の上述したプリント配線基板では、4方向リードフラットパッケージICのリード間に半田ブリッジが発生しない安定した高品質の半田付を維持するには製造工程の緻密な管理が必要となり、それはリードが狭ピッチになるほど、又半田付け性の悪い鉛フリー半田を使用する場合、より正確な精度を維持することが困難であるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、4方向リードフラットパッケージICの半田付において、従来と比較してより容易な管理の下でリード間の半田ショートや半田屑の発生を防止可能なプリント配線基板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、4方向リードフラットパッケージICを装着するための半田付ランド群を有し、前記半田付ランド群は前方半田付ランド群および後方半田付ランド群からなるプリント配線基板であって、前記後方半田付ランド群に隣接し、前記後方半田付ランド群を構成している半田付けランドの長手方向と略平行かつ前記長手方向と同程度かそれ以上の長さの前端を有し、半田フロー進行方向に対して水平方向に2分割され、かつ、2分割された各ランドの間隔は前記進行方向側である前方よりも後方が広い構成をとり、さらに、前記長手方向と略平行なスリットを前記前端付近に有する後方半田引きランド、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるプリント配線基板によれば、4方向リードフラットパッケージICを装着するための半田付ランド群の後方に後方半田引きランドを備え、この後方半田引きランドは、隣接している半田付ランド群の各半田付けランドの長手方向と略平行かつ長手方向と同程度かそれ以上の長さの前端を有するとともに、半田フロー進行方向に対して水平方向に2分割され、2分割された各ランドの間隔は前方よりも後方が広い構成をとり、前記長手方向と略平行なスリットを前記前端付近に有しているので、従来と比較してより容易な管理の下で、4方向リードフラットパッケージICのリード間の半田ショートや半田屑の発生を防止できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明にかかるプリント配線基板を裏から見た概略配置構成を示す平面図である。
【図2】図2は、プリント配線基板の要部平面図である。
【図3】図3は、プリント配線基板の後方半田付けランド群の後尾部分を示す図である。
【図4】図4は、4方向リードフラットパッケージICの噴流式半田付け作業工程を示すフローチャートである。
【図5】図5は、プリント配線基板を配設した空気調和機の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかるプリント配線基板、4方向リードフラットパッケージICの半田付方法および空気調和機の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態.
(構成の説明)
まず、本実施の形態のプリント配線基板(4方向リードフラットパッケージICが実装されるプリント配線基板)の構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、本実施の形態によるプリント配線基板を裏から見た概略配置構成を示す平面図である。図2は、図1に示したプリント配線基板の要部平面図であり、部品が実装された後の状態を示している。具体的には、4方向リードフラットパッケージICとその周囲を示した要部平面図である。図3は、本実施の形態によるプリント配線基板において、4方向リードフラットパッケージICを装着する半田付ランドを構成している後方半田付けランド群の後尾部分を示す図であり、図3(a)には4方向リードフラットパッケージICが装着された状態における要部拡大平面図を、図3(b)には後方半田引きランド部分を説明する拡大平面図を示している。
【0014】
図において、プリント配線基板1には、表面に自動実装される部品(例えば、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップダイオード、ディスクリート抵抗、ディスクリートコンデンサ、ディスクリートダイオード等)(いずれも図示されていない)と、手挿入部品(例えば、大容量抵抗、ハイブリッドIC、トランス、コイル、大容量半導体、大型コンデンサ等)(いずれも図示されていない)が配設される。
【0015】
また、このプリント配線基板1の裏面には、銅箔(図示されていない)を設けており、また、この裏面を可能な限り平面状態を保つ様に、自動実装着されるSOPパッケージIC(Small Outline Package IC)2が設けられていると共に、4方向リードフラットパッケージIC3を図2の矢印で示す方向、即ち、噴流式半田付け進行方向(DIP方向)に対して1つの角部が先頭となり対角の角部が後尾となるよう45°傾斜して自動実装機(図示せず)により実装装着配置されている。
【0016】
この4方向リードフラットパッケージIC3は、図2に示したとおり、リードに対応するように形成された先頭角部を形成する左右の前方半田付ランド群5と後尾角部を形成する後方半田付ランド群6をプリント配線基板1に設けている。そして、この前方半田付ランド群5の後方にはその前方の他の半田付ランドである前方半田付ランド5aより長く形成した後方ランドである前方半田付ランド群後方ランド5bを設けている。同様に、後方半田付ランド群6の後方にはその前方の他の半田付ランドである後方半田付ランド6aより長く形成した後方ランドである後方半田付ランド群後方ランド6bを設けている。なお、図2では、後方半田付ランド群6の最後尾の1つのランドを後方半田付ランド群後方ランド6bとした例を示したが、最後尾から2つ以上のランドを後方半田付ランド群後方ランド6bとしてもよい。上記の前方半田付ランド群後方ランド5bも同様に、前方半田付ランド群5の最後尾の1つまたは2つ以上のランドを前方半田付ランド群後方ランド5bとしてもよい。また、前方半田付ランド群5と後方半田付ランド群6との間には側方半田引きランド7を設けている。なお、本実施の形態において、「前方」は、噴流式半田付け進行方向(DIP方向)を示し、「後方」は、噴流式半田付け進行方向と逆の方向を示すものとする。また、「左右」とは、噴流式半田付け進行方向を基準とした場合の方向を示すものとする。例えば図1〜図3においては、紙面上方が「右」、紙面下方が「左」となる。
【0017】
また、後尾角部を形成する左右の後方半田付ランド群6(図2参照)の後方には、図3(a)に示したとおり、左右それぞれの後方半田付ランド群6と並行な(すなわち、後方半田付ランド6aの長手方向と平行な)スリット9aを有し、且つ左右に2分割され(噴流式半田付け進行方向に対して水平方向に2分割され)、更に左右2分割させたその間隔の前方を狭く、後方を広く構成した後方半田引きランド9が設けられている。後方半田引きランド9の前端(左右の後方半田付ランド群6と隣接する直線部分)は、隣接している後方半田付ランド群6と並行(略並行であればよい)となるように形成されている。
【0018】
本実施の形態によるプリント配線基板1の主な特徴とする点は、後方半田引きランド9を従来と異なる形状としたことにある。具体的には、プリント配線基板1における後方半田引きランド9は、図2〜図3に示すように、この後方半田引きランド9の前方に隣接するそれぞれの後方半田付ランド群6の各後方半田付ランド6aの長手方向と同方向に長く形成され後方半田付ランド6aと略平行なスリット9aを設け、さらに、左右2分割にし、かつ左右2分割させた後方半田引きランド9の間隔を、前方を狭く、後方を広く構成している。
【0019】
次に、後方半田引きランド9などの寸法等の一例を説明する。例えば、図3に示すように4方向リードフラットパッケージIC3の各リード4の幅A寸法は0.35mmで、リード4のピッチB寸法が0.65mmである。なお、前方半田付ランド5aおよび後方半田付けランド6aの短手側の幅およびピッチは、ほぼリード4の幅A寸法およびピッチB寸法と同じにして半田付けが行い易いようにしている。
【0020】
そして、図3等に示すように銅箔で形成される後方半田引きランド9は左右に分割され、それらの左右のランドは線対称(鏡面対称)の関係にある。それらの各ランドの寸法は、後方半田付ランド群6と隣接する後方半田引きランド先頭部(前端)の銅箔幅Fを4.3mmとしている。また、銅箔の無いスリット9aの位置C寸法を0.4mmとしている。すなわち、スリット9aを、それぞれの隣接する後方半田付ランド群6に対するように、後方半田引きランド9の前端から0.4mmの位置に設けている。また、スリット9aの長手方向の両端側には、後方半田引きランド9のスリット9aより前方部分9bとスリット9aより後方部分9cとを接続する銅箔の接続部9dである銅箔残り部分を形成している。接続部9dは、後方半田付ランド6aの並び(長手方向)と垂直方向に、つまり左右の後方半田引きランド9の両端に形成している。接続部9dのうち、噴流式半田付け進行方向に対して後方に形成されている接続部9dの幅Gの寸法は、0.5mmとする。また、スリット9aの幅D寸法は0.7mm幅で設けてある。後方半田引きランド9の長さは、先頭部の半田引き込み部Jの寸法を3.6mmとし、後部の逃がし部Kの寸法を5.8mmとしている。左右の後方半田引きランドの間隔は先頭部の引き込み部Lの間隔を0.5mm、後部の逃がし部Mの間隔を1.0mmとしている。
【0021】
なお、この例ではスリット9aを後方半田引きランド9に隣接する左右それぞれの後方半田付ランド群6に対応して後方半田引きランド9のそれぞれの前方の辺から0.4mmの同じ位置(C寸法)に形成し、スリット9aが隣接する後方半田付ランド6aの並びと垂直方向に、つまり後方半田引きランド9の両端側に細い銅箔を残して形成している。そしてこのスリット9aを設けたことにより、後方半田引きランド9の前方部分9b(スリット9aよりも前方の部分)の面積を小さくし、後方部分9c(スリット9aよりも後方の部分)の面積を前方部分9bの面積より大きく形成して前方部分9bから後方部分9cへ半田を引き込み易く、また、後方部分9cから前方部分9bへの半田の戻りを抑制できる。すなわち、本実施の形態では、後方半田引きランド9を、隣接する後方半田付ランド群6から後方半田引きランド9へ半田を引き込みやすく、かつ、後方半田引きランド9から後方半田付ランド群6側への半田の戻りや半田屑の発生を防止するように形成している。また、後方半田引きランド9は左右の後方半田付ランド群6から流れる半田が、4方向リードフラットパッケージIC3側の端部で衝突し、後方半田付ランド群6側に戻ることを防止するために左右に分割され、更に後方半田引きランド9の先頭部の面積を大きく確保している。また、半田の引き込み力を強くするために左右それぞれの後方半田引きランド9の先頭部の間隔を狭くする一方で、後方部分9cから前方部分9bへの半田の戻り力を低減させるように後部の逃がし部の間隔を広くし、後方半田付ランド群6の後部に半田ブリッジが発生しないようにしている。
【0022】
また、後方半田付ランド群後方ランド6bの長さ寸法Iは、図3に示すように他の半田付ランド6aの長さ寸法Hより長い寸法形状にしている。即ち、後方半田付ランド群6の後方ランド6bの寸法Iを、その前方の半田付ランド6aの寸法Hより長く形成している。例えば、3.5mm≦H<I≦4.3mmの寸法とする。この例では後方ランド6bの寸法Iを、隣接する後方半田引きランド9の前方部分9bの長さ寸法となる後方半田引きランド9の前辺(後方半田付ランド群6に隣接する一辺)の外形F寸法4.3mm以上にして、後方半田付ランド群6側から後方半田引きランド9へと半田を引く隣接部分の長さが同じか大きくなる(I≦Fとなる)ようにして半田を後方半田引きランド9側へ引き込みやすいようにしている。なお、図3に示した例では半田付ランド6aの寸法Hをリード4の半田付部分の長さ3.5mm以上にしている。
【0023】
(半田付け方法の説明)
次に、4方向リードフラットパッケージIC3をプリント基板1に半田付けする方法について説明する。図4はこの実施の形態における4方向リードフラットパッケージICの噴流式半田付け作業工程を示すフローチャートである。この図4に従い、噴流半田槽(図示せず)を用いて4方向リードフラットパッケージIC3をプリント配線基板1に半田付けする手順を説明する。
【0024】
プリント配線基板1に4方向リードフラットパッケージIC3を半田付けする場合には、まず、プリント配線基板1の表面及び裏面に対し、自動実装機により自動実装部品(例えば、チップ部品抵抗、チップ部品コンデンサ、チップ部品ダイオード、ディスクリート抵抗、ディスクリートコンデンサ、ディスクリートダイオード等)(図示されていない)と4方向リードフラットパッケージIC3を実装する(ステップS1)。次に、手挿入部品(例えば、大容量抵抗、ハイブリッドIC、トランス、コイル、大容量半導体、大型コンデンサ等)を手挿入実装する(ステップS2)。次に、ステップS3のフラックス塗布工程において、自動実装部品および手挿入部品が実装された状態のプリント配線基板1の裏面に対し、半田が銅箔になじむようにするフラックス活性剤を塗布する(ステップS3)。そして、ステップS3で塗布したフラックスが最良の活性温度となるように加熱するプリヒートを実施する(ステップS4)。
【0025】
その後、プリント配線基板1の裏面に対し、多数の穴のあいたノズルから半田を噴水の水のように噴出させる半田噴出手段(図示せず)から、半田を満遍なく部品のリード部分に噴射して半田付けする(ステップS5)。次に、ステップS5の一次半田噴流工程を実行した直後の状態では部品のリード間に半田ブリッジが発生している箇所が存在するため、次に、平らな半田液面を有する半田槽の液面上を図2に示す矢印方向(DIP方向)にプリント配線基板1を通過させることにより4方向リードフラットパッケージIC3のリード4等のリード間でブリッジした状態の半田を除去して半田ブリッジを解消する(ステップS6)。最後に、各種部品が半田付けされたプリント配線基板1を冷却し(ステップS7)、プリント配線基板1に対して4方向リードフラットパッケージIC3を含む各種部品を半田付けする作業は終了となる。
【0026】
(4方向リードフラットパッケージIC3の半田付け動作の詳細)
次に、プリント配線基板1に対する4方向リードフラットパッケージIC3の半田付けについてさらに詳細に説明する。実装された4方向リードフラットパッケージIC3は、上記ステップS5の一次噴流工程において噴流半田槽の半田噴流部へ進入した際、半田は4方向リードフラットパッケージIC3の左右両側の前方半田付ランド群5に対応する前方の半田付けリード4即ち、両前方の半田付ランド5a部分を伝って後方へ流れる。この時、半田は前方半田付ランド群5の前方半田付ランド5aと、4方向リードフラットパッケージIC3の個々のリード4との表面・界面張力の作用により、次々とブリッジを作りながら後方へ移動する。そして、前方半田付ランド群5の後方へ移動した半田は隣接する側方半田引きランド7(図2参照)に引き込まれる。
【0027】
また、後方半田付けランド群6でも同様に、半田は4方向リードフラットパッケージIC3の左右両側の後方半田付ランド群6に対応する後方の半田付けリード4即ち、両後方の半田付ランド6a部分を伝って後方へ流れる。この時、半田は後方半田付ランド群6の後方半田付ランド6aと4方向リードフラットパッケージIC3の個々のリード4との表面・界面張力の作用により、次々とブリッジを作りながら後方へ移動する。そして、後方半田付ランド群6の後方へ移動した半田は隣接する後尾の後方半田引きランド9に引き込まれる。
【0028】
このように、後方半田引きランド9を形成したことにより、半田付け(一次噴流工程)の際には後方半田付ランド群6の後方から後方半田引きランド9へ半田が引き込まれるが、その際、後方半田引きランド9上に引き込まれた半田には、半田の表面・界面張力の作用により、後方半田引きランド9から隣接する後方半田付ランド群6側にそれぞれ戻る力が働く。
【0029】
ここで、本実施の形態で提案する後方半田引きランド9においては、後方半田付ランド群6の後方半田付ランド6aの並びと略平行なスリット9aを設けたことにより、後方半田引きランド9に半田を引き込みやすくし、更に、一度引き込んだ後方半田引きランド9上の半田の表面・界面張力を分散させて前方に隣接する後方半田付けランド群6に戻る力が少なくなる。また、後方半田引きランド9を左右2分割にし、その左右2分割された後方半田引きランドの間隔の前方部を狭く、後方部を広くすることにより、後方半田付ランド群6から流れ込む半田を引き込む力を大きくし、なおかつ、左右2つの後方半田引きランド9に引き込んだ半田同士が衝突するのを防止しつつ後方に逃がすことができる。その結果、後方半田付ランド群6の半田ブリッジが大幅に減少する。なお、発明者は、後方半田引きランド9にスリット9aを設けず、従来技術のように半田引きランドを平坦な形状や格子状にしたり、また後方の半田引きランドを分割せず一体化したり、後方の半田引きランドを左右2分割しても前方の間隔と後方の間隔を同一にすると、リード4の間隔が狭い4方向リードフラットパッケージICや表面・界面張力の大きい鉛フリー半田を用いた場合、本実施の形態のプリント配線基板1と比較して、後方半田付ランド群6の半田ショート(ブリッジ)や半田付時に発生する泡による半田屑が非常に多いことを検証によって確認した。
【0030】
また、後方半田引きランド9においては、スリット9aより前の前方部分9bの半田引きランドが小さく(面積が狭く)、かつスリット9aより後ろの後方部分9cの半田引きランドが前方部分9bより大きく(面積が広く)なるようにスリット9aを配置するとともに、前方部分9bの小面積半田引きランドと後方部分9cの大面積半田引きランドの両端側を細い銅箔を残すように接続部9dを設けたことにより、一度引き込んだ後方半田引きランド9上の半田の表面・界面張力による前方に隣接する後方半田付ランド群6方向への半田の戻り力を両端側に残された細い銅箔の接続部9dにより調整して抑えることができ、かつ、スリット9aにより半田を分散させ泡の発生を防ぐことが可能となり、泡による半田付後の半田屑の発生が低減されることを確認した。この結果、後工程での半田屑を取る手修正作業工程を省くことが可能となり、省工程が実現できる。
【0031】
また、後方半田引きランド9を左右2分割にし、更に左右2分割させたその間隔の前方を狭く、後方を広くすることにより、後方半田付ランド群6から流れ込む半田を引き込む力を大きくし、なおかつ、左右2つの後方半田引きランド9に引き込んだ半田同士が衝突するのを防止しつつ後方に逃がすことができる。その結果、後方半田付ランド群6の半田ブリッジが大幅に減少させることができること検証によって確認した。
【0032】
また、4方向リードフラットパッケージIC3の後方半田付ランド群6の後方ランド6bをそれぞれ他の後方半田付ランド6aより長い形状とすることにより半田の引き込み力が増大し、より半田ショートを減少させる効果が大きくなることが実証できた。
【0033】
(後方半田引きランド9の半田引き込み動作)
次に、後方半田引きランド9の半田引き込み動作を説明する。後方半田引きランド9は、既に説明したように、左右の各後方半田付ランド群6に対応させて左右2分割した構成としている。これにより、左右の各後方半田付ランド群6から流れ込む半田が後方半田引きランド9において衝突することが無くなる。さらに、左右の後方半田引きランド6の間隔の前方を狭くし後方を広くすることにより、後方半田付ランド群6に隣接する後方半田引きランドの先頭部の面積をできるだけ大きくして後方半田付ランド群6から流れ込む半田の引き込む力を増大させ、かつ引き込んだ後の半田の衝突力を軽減する。加えて、後方へ逃がす半田の流れもスムーズになる。さらに、後方半田付ランド6aの並びに略平行なスリット9a、小面積の前方部分9b、大面積の後方部分9c及びスリット9a両端側の細い銅箔の接続部9dを有しているため、スムーズに前方部分9bから後方部分9cへと半田が引き込まれる。この結果、後方半田付ランド群6側から後方半田引きランド9へと半田がスムーズに引き込まれるようになる。また、上述したように、後方部分9cから前方部分9bへの半田の戻りを抑制しているが、抑制しきれずに前方部分9bへ戻る半田については、スリット9aの両端側の接続部9dにより前方部分9bへとスムーズに戻るので、戻った半田の衝突により後方半田付ランド群6で半田ショートを生じさせたり、多くの半田屑を生じさせたりするなどの不具合を防止できる。
【0034】
なお、後方半田引きランド9の先頭部の長さ(J)と後方部の長さ(K)の比は4:6程度の比であれば十分な効果が得られる。また、後方半田引きランド9のスリット9aが前方に隣接する後方半田付ランド群6の半田付ランド6aの並びに略平行な度合いは、平行の精度がよいほど高い効果が得られるが、略平行であれば効果が得られ、例えば角度10度程度の差の範囲で略平行であれば十分な効果が得られる。
【0035】
以上のとおり、本実施の形態によるプリント配線基板1によれば、噴流半田槽を用いて、4方向リードフラットパッケージIC3の半田付け時に、表面・界面張力によって半田がブリッジを作りながら後方へ移動する際に発生する半田ショートと、半田付時に発生する泡による半田屑発生をより確実になくすことができるとともに、半田ショート発生可能個所の低減ができる効果が得られる。
【0036】
なお、本実施の形態で示した各種寸法、すなわち、左右の後方半田引きランド9の先頭部の長さJ、後方部の長さK、左右の後方半田引きランド前方間隔L、後方間隔M、スリット9a、前方部分9b、後方部分9c、接続部9dの寸法や形状等は一例を示したもので、これに限定されず4方向リードフラットパッケージIC3の大きさや他の部品等の条件等により効果を有する範囲で適宜変えることができる。また、上記説明ではスリット9aを備えた後方半田引きランド9を左右それぞれに設けたものを示したが一方にスリット9aを備えた後方半田引きランド9を設けたものであってもスリット9aを備えた後方半田引きランド9部分については上記と同様の効果が得られる。
【0037】
(プリント配線基板1の使用例)
続いて、上記で説明したプリント配線基板1の使用例を説明する。図5は、本実施の形態によるプリント配線基板1を配設した空気調和機の一例を示す図であり、図5(a)は室外機を説明する概略上面図、図5(b)は室外機を説明する概略正面図である。図示した空気調和機において、室外機12は、送風機13aを備えた送風機室13と、圧縮機14a、扁平形状の電気品箱15から成る圧縮機室14とにより構成され、電気品箱15には電気部品15aを装着した表面を下側にし、銅箔を有する平面状態とした裏面を上側にして配置した上記の4方向リードフラットパッケージIC3を実装したプリント配線基板1を内蔵している。
【0038】
したがって、本実施の形態によるプリント配線基板1が配置される電気品箱15を高さ方向を扁平形状にして構成でき、空気調和機の室外機12の圧縮機室14の電気品箱15を扁平にして配置スペースをコンパクトにし、他の部品スペースの組込みに自由度が増し、余裕をもって組み立て作業ができる効果がある。また、4方向リードフラットパッケージIC3を半田付けする際の半田ブリッジや半田屑発生を防止可能なプリント配線基板を備えて空気調和機の品質を向上できる効果がある。
【0039】
以上のように、本実施の形態によるプリント配線基板は、4方向リードフラットパッケージIC3を装着するための前方半田付ランド群5及び後方半田付ランド群6を有するプリント配線基板1であって、後方半田付ランド群6の最後尾に後方半田引きランド9を備え、後方半田引きランド9は、左右の各後方半田付ランド群6に対応して左右(半田フロー進行方向に対する水平方向)に2分割され、左右の後方半田引きランド9の間隔の前方を狭くし後方を広くし、さらに、後方半田引きランド9の前方に隣接する後方半田付ランド群6の後方半田付ランド6aの並びと略平行なスリット9aを設けたので、後方半田付ランド群6での半田ブリッジや半田屑の発生を防止できるという効果がある。
【0040】
また、後方半田引きランド9を左右に分割したため、左右の後方半田付ランド群6から引き込んだ半田が衝突するのを防止し、後方半田付ランド群6への半田の戻り力を抑えることができるという効果がある。
【0041】
また、左右に分割した後方半田引きランド9の間隔は、先頭部を狭く、後方部を広くしたので、後方半田付ランド群6からの半田引き込み力を大きくし、引き込んだ後の半田を後方部にスムーズに流すことができるという効果がある。
【0042】
また、後方半田付ランド群6においては、後部の後方ランド6bを、その前方の半田付ランド6aより長く形成したので、半田を後方へ引き込みやすくできるという効果がある。
【0043】
また、後方半田引きランド9は、スリット9aより前方部分の面積を小さくし、スリット9aより後方部分の面積を前方部分の面積より大きくなるようにしたので、スリット9aの前方部分から後方部分へ半田を引き込みやすく、かつ、戻りを抑制できるという効果がある。
【0044】
また、後方半田引きランド9は、スリット9aの両端側にスリット9aより前方部分(後方半田付けランド群6に近い側の部分)とスリット9aより後方部分とを接続する銅箔の接続部9dを備えたので、前方部分から後方部分へ半田を引き込みやすく、かつ、半田の戻りを抑制できるという効果がある。
【0045】
また、4方向リードフラットパッケージIC3は、半田付け時に、噴流式半田槽上を半田フロー進行方向に対して傾斜しているので、半田付けが容易であるという効果がある。
【0046】
また、4方向リードフラットパッケージIC3は、半田付けに鉛フリー半田を用いるので、環境によいプリント配線基板が得られるという効果がある。
【0047】
また、本実施形態の4方向リードフラットパッケージICの半田付方法は、4方向リードフラットパッケージIC3を装着するための前方半田付ランド群5及び後方半田付ランド群6を有するプリント配線基板1に対する4方向リードフラットパッケージIC3の半田付方法であり、プリント配線基板1は、前方半田付ランド群5と後方半田付ランド6との隣接部に側方半田引きランド7を、後方半田付ランド群6の最後尾に後方半田引きランド9を備え、後方半田引きランド9は、左右の各後方半田付ランド群6に対応して左右に2分割されており、各後方半田引きランド9の間隔を、前方が狭くかつ後方が広い形状としている。また、各後方半田引きランド9は線対称(鏡面対称)の関係にあり、隣接する後方半田付ランド群6の半田付ランドの並び(半田付けランドの長手方向)と略平行なスリット9aを前方に設けている。そして、この後方半田引きランド9を備えたプリント配線基板1に4方向リードフラットパッケージIC3を実装する実装工程と、4方向リードフラットパッケージIC3が実装されたプリント配線基板1にフラックス活性剤を塗布するフラックス塗布工程と、このフラックス活性剤を活性温度に加熱するプリヒート工程と、噴流式半田装置により、プリント配線基板1上の4方向リードフラットパッケージIC3のリード4部分を半田付けする一次半田噴流工程と、一次半田噴流工程において4方向リードフラットパッケージIC3のリード4間にブリッジした半田を、スリット9aを有する2分割した後方半田引きランド9で除去する二次半田噴流工程と含んでいるので、一度引き込んだ後方半田引きランド9上の半田の表面・界面張力を分散させて後方半田付けランド群6に半田が戻る力が少なくなる。その結果、後方半田付けランド群6の半田ブリッジを大幅に減少させ、後工程での手直し作業を増やすことなく作業効率を向上させる効果がある。
【0048】
また、上記の4方向リードフラットパッケージICの半田付方法において、4方向リードフラットパッケージIC3は、半田付け時に、噴流式半田槽上を半田フロー進行方向に搬送されるとともに、前方半田付けランド群5及び後方半田付ランド群6は半田フロー進行方向に対して傾斜しているので、半田付けが容易であるという効果がある。
【0049】
また、本実施の形態の空気調和機は、4方向リードフラットパッケージIC3を装着するための前方半田付ランド群5及び後方半田付ランド群6を有するプリント配線基板1であり、後方半田付ランド群6の最後尾に後方半田引きランド9を備えるとともに、左右の各後方半田付ランド群6に対応して左右2分割し、前方を狭くし後方を広くし、その後方半田引きランド9の前方に隣接する後方半田付ランド群6の半田付ランドの並びと略平行なスリット9aを有しているプリント配線基板1、を収納した電気品箱15を、圧縮機室14の圧縮機14aの上方に配置したので、後方半田付ランド群6の半田ブリッジを防止することができるプリント配線基板1を備えて空気調和機の品質を向上でき、かつ、空気調和機の室外機12の圧縮機室14の電気品箱15を扁平にでき、電機品箱15の配置スペースをコンパクトにし、他の部品スペースの組込みに自由度が増し、余裕をもって組み立て作業ができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかるプリント配線基板は、4方向リードフラットパッケージICを含む各種部品を噴流式半田付けにより半田付けするプリント配線基板に適している。
【符号の説明】
【0051】
1 プリント配線基板
2 SOPパッケージIC
3 4方向リードフラットパッケージIC
4 リード
5 前方半田付ランド群
5a 前方半田付ランド
5b 前方半田付ランド群後方ランド
6 後方半田付ランド群
6a 後方半田付ランド
6b 後方半田付ランド群後方ランド(後方ランド)
7 側方半田引きランド
9 後方半田引きランド
9a スリット
9b 前方部分
9c 後方部分
9d 接続部
12 空気調和機室外機
13 送風機室
13a 送風機
14 圧縮機室
14a 圧縮機
15 電気品箱
15a 電気部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4方向リードフラットパッケージICを装着するための半田付ランド群を有し、前記半田付ランド群は前方半田付ランド群および後方半田付ランド群からなるプリント配線基板であって、
前記後方半田付ランド群に隣接し、前記後方半田付ランド群を構成している半田付けランドの長手方向と略平行かつ前記長手方向と同程度かそれ以上の長さの前端を有し、半田フロー進行方向に対して水平方向に2分割され、かつ、2分割された各ランドの間隔は前記進行方向側である前方よりも後方が広い構成をとり、さらに、前記長手方向と略平行なスリットを前記前端付近に有する後方半田引きランド、
を備えることを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
前記後方半田付ランド群を構成している半田付けランドのうち、後方の半田付けランドを、その前方の半田付ランドより長く形成したことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板。
【請求項3】
前記2分割された各ランドは、線対称の関係にあることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線基板。
【請求項4】
前記2分割された各ランドの先頭から所定位置までの間隔を第1の広さとし、当該所定位置より後方部分の間隔を当該第1の広さよりも広い第2の広さとすることを特徴とする請求項1、2または3に記載のプリント配線基板。
【請求項5】
前記後方半田引きランドは、前記スリットより前方部分の面積を小さくし、前記スリットより後方部分の面積を前記前方部分の面積より大きくしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のプリント配線基板。
【請求項6】
前記後方半田引きランドは、前記スリットの両端側に前記スリットより前方部分と前記スリットより後方部分とを接続する銅箔の接続部を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のプリント配線基板。
【請求項7】
前記4方向リードフラットパッケージICを装着するための半田付ランド群は、前記進行方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のプリント配線基板。
【請求項8】
装着する各部品の半田付けに鉛フリー半田を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のプリント配線基板。
【請求項9】
4方向リードフラットパッケージICを装着するための半田付ランド群を有し、前記半田付ランド群は前方半田付ランド群および後方半田付ランド群からなるプリント配線基板、に対する4方向リードフラットパッケージICの半田付方法であって、
前記プリント配線基板には、前記後方半田付ランド群に隣接し、前記後方半田付ランド群を構成している半田付けランドの長手方向と略平行かつ前記長手方向と同程度かそれ以上の長さの前端を有し、半田フロー進行方向に対して水平方向に2分割され、かつ、2分割された各ランドの間隔は前記進行方向側である前方よりも後方が広い構成をとり、さらに、前記長手方向と略平行なスリットを前記前端付近に有する後方半田引きランド、が備えられ、
前記プリント配線基板に4方向リードフラットパッケージICを実装する実装工程と、
前記4方向リードフラットパッケージICが実装されたプリント配線基板にフラックス活性剤を塗布するフラックス塗布工程と、
前記プリント配線基板に塗布された前記フラックス活性剤を活性温度に加熱するプリヒート工程と、
噴流式半田装置により、前記プリント配線基板上の前記4方向リードフラットパッケージICのリード部分を半田付けする一次半田噴流工程と、
前記一次半田噴流工程において前記4方向リードフラットパッケージICのリード間にブリッジした半田を、前記スリットを有する前記半田引きランドで除去する二次半田噴流工程と、
を含むことを特徴とする4方向リードフラットパッケージICの半田付方法。
【請求項10】
前記4方向リードフラットパッケージICは、半田付け時に、噴流式半田槽上を半田フロー進行方向に搬送されるとともに、前記前方半田付ランド群および前記後方半田付ランド群は、前記半田フロー進行方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項9に記載の4方向リードフラットパッケージICの半田付方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のプリント配線基板を収納した電気品箱を、圧縮機室の圧縮機の上方に配置したことを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−146936(P2012−146936A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6339(P2011−6339)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】