説明

プリント配線板、プリント配線板の製造方法、及びインプリントモールド

【課題】表面の平坦化を図ることが可能なプリント配線板を提供する。
【解決手段】プリント配線板30は、基材31と、基材31を貫通するバイアホール32と、を備え、バイアホール32は、基材31に埋設されていると共に、基材31の一方の主面315から露出したランド部33と、ランド部33から基材31の他方の主面316に貫通した貫通部34と、を有しており、貫通部34は、少なくとも一つの段差341を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、そのプリント配線板の製造方法、及びその製造方法に用いられるインプリントモールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造方法として、貫通孔を有する絶縁性基材を形成し、電解めっきによって当該貫通孔に銅を充填することで、バイアホールを有するプリント配線板を製造する方法が知られている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Proc. of SPIE., vol.5992, pp.786-794 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術によって、バイアホールと配線パターンを同時に形成する場合、バイアホールは配線パターンと比較して容積が大きいため、電解めっきの際に、添加剤(抑制剤や促進剤)によって、配線パターンよりもバイアホールにおける銅めっきの充填速度を速めることが行われている。
【0005】
しかしながら、こうした添加剤を利用しても、容積の大きなバイアホールでは銅めっきの充填量が不十分となり、プリント配線板の表面が平坦にならない場合があるという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、表面の平坦化を図ることが可能なプリント配線板、プリント配線板の製造方法、及びインプリントモールドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係るプリント配線板は、基材と、前記基材を貫通するバイアホールと、を備え、前記バイアホールは、前記基材に埋設されていると共に、前記基材の一方の主面から露出したランド部と、前記ランド部から前記基材の他方の主面に貫通した貫通部と、を有しており、前記貫通部は、少なくとも一つの段差を有していることを特徴とする。
【0008】
[2]上記発明において、前記貫通部は、前記基材の他方の主面に向かうに従って段階的に細くなる先細形状を有してもよい。
【0009】
[3]上記発明において、前記基材の一方の主面に埋設されていると共に、前記基材の一方の主面から露出した配線パターンを備えており、前記ランド部の側面が平坦であると共に、前記配線パターンの側面も平坦であってもよい。
【0010】
[4]また、本発明に係るプリント配線板の製造方法は、上記のプリント配線板の製造方法であって、前記ランド部に対応した大径部と、前記貫通部に対応した小径部と、を有する貫通孔を前記基材に形成する第1の工程と、前記基材の表面に給電層を形成する第2の工程と、硫酸銅めっき浴を用いた電解銅めっき法によって、前記貫通孔の内部に銅を充填して、前記基材にめっき層を形成する第3の工程と、前記めっき層を平坦化する第4の工程と、を備えており、前記小径部は、少なくとも一つの段差を有することを特徴とする。
【0011】
[5]本発明に係るインプリントモールドは、支持部と、前記支持部から突出した突起部と、を備え、前記突起部は、前記支持部に設けられた台座部と、前記台座部から突出した柱部と、を有しており、前記柱部は、少なくとも一つの段差を有することを特徴とする。
【0012】
[6]上記発明において、前記柱部は、前記柱部の先端に向かうに従って段階的に細くなる先細形状を有してもよい。
【0013】
[7]上記発明において、前記突起部とは独立して、前記支持部から突出した凸部をさらに備えており、前記台座部の側面が平坦であると共に、前記凸部の側面も平坦であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バイアホールの貫通部が少なくとも一つの段差を有することで、電解めっきの際にバイアホールのめっき充填速度が速まるので、プリント配線板の表面の平坦化を図ることができる。
【0015】
また、インプリントモールドの柱部が少なくとも一つの段差を有することで、バイアホールの貫通部に対応する貫通孔の小径部に段差を形成することができるので、プリント配線板の表面の平坦化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は、本発明の実施形態におけるインプリントモールドの断面図、図1(b)は、図1(a)のIB部の拡大図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態におけるインプリントモールドの第1変形例を示す拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態におけるインプリントモールドの第2変形例を示す拡大断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す断面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVB部の拡大図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、図5の各ステップを示す断面図であり、図6(a)は図5のステップS111を示す図であり、図6(b)は図5のステップS112を示す図であり、図6(c)は図5のステップS113を示す図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、図5の各ステップを示す断面図であり、図7(a)は図5のステップS130を示す図であり、図7(b)は図5のステップS140を示す図であり、図7(c)は図5のステップS400を示す図である。
【図8】図8(a)は、本発明の実施形態における絶縁性基板の貫通孔への促進剤の吸着を示す概念図であり、図8(b)は、従来構造の基板の貫通孔への促進剤の吸着を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
先ず、プリント配線板の製造に使用されるインプリントモールド10の構成について、図1(a)及び図1(b)を参照しながら説明する。図1(a)は本実施形態におけるインプリントモールドの断面図であり、図1(b)は図1(a)のIB部の拡大図である。
【0019】
本実施形態におけるインプリントモールド10は、例えば、シリコン(Si)から構成される熱インプリント用の金型である。このインプリントモールド10は、図1(a)に示すように、ベース11と、突起部12と、凸部15と、を備えている。
【0020】
なお、インプリントモールド10を、シリコン(Si)に代えて、石英(SiO)、シリコンカーバイト(SiC)、グラッシーカーボン(GC)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、タンタル(Ta)等で構成してもよい。
【0021】
突起部12は、ベース11の一方の主面(図中における下面)111から突出しており、台座部13と柱部14とを有している。台座部13は、ベース11の一方の主面111上に設けられている。そして、柱部14は、この台座部13の上面から下方に向かって突出している。
【0022】
この突起部12は、プリント配線板30のバイアホール32(図4(a)参照)に対応するように配置されており、この突起部12によって、バイアホール32を形成するための貫通孔311(図4(b)参照)が形成される。この突起部12の台座部13によって、バイアホール32のランド部33に対応する貫通孔311の大径部312(図4(b)参照)が形成される。また、突起部12の柱部14によって、バイアホール32の貫通部34に対応する貫通孔311の小径部313(図4(b)参照)が形成される。
【0023】
一方、凸部15は、上述の突起部12とは独立して、ベース11の一方の主面111上に設けられている。この凸部15も、突起部12と同様に、ベース11の一方の主面111から下方に向かって突出している。この凸部15によって、配線パターン35を形成するための溝部314(図4(b)参照)が、絶縁性基材31に形成される。
【0024】
なお、バイアホール32に対応する突起部12は、平面視において円形、矩形、或いは多角形等となっているのに対し、配線パターン35に対応する凸部15は、平面視においてベース11上に線状に延在している。また、図1(a)に示すインプリントモールド10における突起部12や凸部15の配置は一例に過ぎず、プリント配線板30のバイアホール32や配線パターン35の配置に応じて決定される。
【0025】
本実施形態では、図1(b)に示すように、突起部12の柱部14が複数(本例では2つ)の段差141を有しており、この柱部14は、その先端に向かうに従って外径が段階的に小さくなる先細形状を有している。こうした段差141は、電子ビームリソグラフィ、フォトリソグラフィ、エッチングといった半導体製造技術等によって形成される。なお、柱部14が有する段差141の数は特に限定されない。
【0026】
なお、図1(b)に示す例では、複数の段差141がほぼ等間隔で配置されているが、特にこれに限定されない。図2及び図3は本実施形態におけるインプリントモールドの変形例を示す拡大断面図である。
【0027】
図2に示すように、柱部14Bの先端に向かうに従って、段差141の間隔が狭まってもよい。或いは、図3に示すように、柱部14Cの先端に向かうに従って、段差141の間隔が広がってもよい。
【0028】
因みに、図1(a)及び図1(b)に示すように、突起部12の台座部13や凸部15には段差が形成されておらず、台座部13及び凸部15は平坦な側面131,151をそれぞれ有している。
【0029】
本実施形態では、こうした段差141を有するインプリントモールド10を用いて絶縁性基材31を形成することで、バイアホール32を形成する貫通孔311の表面積を大きくすることができる。このため、後述するように、電解めっきの際にバイアホール32におけるめっき充填速度が速まるので、プリント配線板30の表面の平坦化を図ることができる。
【0030】
また、バイアホール32のめっき充填速度が速まることで、めっき工程や平坦化工程の短縮を図ることもできる。
【0031】
なお、本実施形態におけるベース11が本発明における支持部の一例に相当し、本実施形態における突起部12が本発明における突起部の一例に相当し、本実施形態における台座部13が本発明における台座部の一例に相当し、本実施形態における柱部14が本発明における柱部の一例に相当し、本実施形態における凸部15が本発明における凸部の一例に相当し、本実施形態における段差141が本発明における段差の一例に相当する。
【0032】
因みに、本実施形態では、台座部13の外径が、柱部14の上部(根元部)の外径よりも大きいため、台座部13と柱部14との間にも段差16が形成されているが、この段差16は本発明における段差に相当するものではない。
【0033】
次に、上記のインプリントモールド10を用いて製造されるプリント配線板20の構成について、図4(a)及び図4(b)を参照しながら説明する。図4(a)は本実施形態におけるプリント配線板20を示す断面図、図4(b)は図4(a)のIVB部の拡大図である。
【0034】
本実施形態におけるプリント配線板20は、図4(a)に示すように、複数(本例では3枚)のプリント配線板30〜50を積層することで構成される多層フレキシブルプリント配線板である。なお、以下に説明する多層プリント配線板20の構成は一例に過ぎず、例えば、多層プリント配線板を構成するプリント配線板の枚数、配線パターンやバイアホールの配置等は、特にこれに限定されない。
【0035】
第1のプリント配線板30は、絶縁性基材31と、バイアホール32と、配線パターン35と、を有している。第2及び第3のプリント配線板40,50も、第1のプリント配線板30と同様に、絶縁性基材41,51と、バイアホール42,52と、配線パターン45,55と、をそれぞれ有している。なお、図4(a)に示す例では、プリント配線板30〜50におけるバイアホールや配線パターンの配置が同一となっているが、特にこれに限定されず、プリント配線板30〜50の間でバイアホールや配線パターンの配置を異ならせてもよい。
【0036】
以下に、第1のプリント配線板30を例にとって、多層プリント配線板20の各層の構成について詳細に説明する。
【0037】
絶縁性基材31は、例えば、ポリイミド(PI)、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性樹脂材料から構成されており、電気絶縁性を有している。図4(a)及び図4(b)に示すように、この絶縁性基材31には、後述する熱インプリント法によって、バイアホール32に対応する貫通孔311や、配線パターン35に対応する溝部314が一体的に形成されている。この貫通孔311は、比較的大きな内径を有する大径部312を上部に有していると共に、大径部312よりも小さな内径を有する小径部313を下部に有している。
【0038】
本実施形態におけるバイアホール32は、図4(b)に示すように、ランド部33を上部に有すると共に、貫通部34を下部に有している。
【0039】
ランド部33は、絶縁性基材31の大径部312内に充填された銅(Cu)等の金属材料から構成されている。このランド部33は、絶縁性基材31の一方の主面315(図中において上面)に埋設されていると共に、ランド部33の上面が絶縁性基材31の一方の主面315から露出している。
【0040】
貫通部34も、絶縁性基材31の小径部313内に充填された銅(Cu)等の金属材料から構成されており、ランド部33と貫通部34とは一体的に形成されている。この貫通部34は、ランド部33から絶縁性基材31の他方の主面316(図中において下面)まで絶縁性基材31を貫通している。
【0041】
配線パターン35も、絶縁性基材31の線状の溝部314内に充填された銅(Cu)等の金属材料から構成されている。この配線パターン35は、ランド部33と同様に、絶縁性基材31の一方の主面315に埋設されていると共に、その上面が絶縁性基材31の一方の主面315から露出している。特に図示しないが、この配線パターン35は、バイアホール32のランド部33と繋がっている。
【0042】
本実施形態では、バイアホール32の貫通部34が複数(本例では2つ)の段差341を有しており、この貫通部34は、絶縁性基材31の他方の主面316に向かうに従って外径が段階的に小さくなる先細形状を有している。
【0043】
なお、段差341の数は特に限定されない。また、本例では、複数の段差341を等間隔に配置しているが、特にこれに限定されない。例えば、貫通部34の先端(絶縁性基材31の他方の主面316側)に向かうに従って、段差341の間隔を狭めたり或いは広げたりしてもよい。
【0044】
因みに、図4(b)に示すように、バイアホール32のランド部33や配線パターン35には段差が形成されておらず、ランド部33が平坦な側面331を有していると共に、配線パターン35も平坦な側面351を有している。
【0045】
本実施形態では、貫通孔311の小径部313が段差313aを有することで、貫通孔311の表面積が大きくなる。このため、後述するように、電解めっきの際にバイアホール32におけるめっき充填速度が速まるので、プリント配線板30の表面の平坦化を図ることができる。
【0046】
また、バイアホール32のめっき充填速度が速まることで、めっき工程や平坦化工程の短縮を図ることもできる。
【0047】
第1〜第3のプリント配線板30〜50は相互に積層されており、第1及び第2のプリント配線板30,40の配線パターン35,45は、第1のプリント配線板30のバイアホール32を介して電気的に接続されている。同様に、第2及び第3のプリント配線板40,50の配線パターン45,55も、第2のプリント配線板40のバイアホール42を介して電気的に接続されている。
【0048】
なお、特に図示しないが、第3のプリント配線板50の下面に、サブトラクティブ法やセミアディティブ法によって配線パターンを形成してもよい。
【0049】
本実施形態における絶縁性基材31が本発明における基材の一例に相当し、本実施形態におけるバイアホール32が本発明におけるバイアホールの一例に相当し、本実施形態におけるランド部33が本発明におけるランド部の一例に相当し、本実施形態における貫通部34が本発明における貫通部の一例に相当し、本実施形態における段差341が本発明における段差の一例に相当し、本実施形態における配線パターン35が本発明における配線パターンの一例に相当する。
【0050】
因みに、上述の段差16と同様に、本実施形態では、ランド部33の外径が貫通部34の上部の外径よりも大きいため、ランド部33と貫通部34との間にも段差が形成されているが、この段差は本発明における段差に相当するものではない。
【0051】
次に、以上に説明した多層プリント配線板20の製造方法について、図5〜図8を参照しながら説明する。
【0052】
図5は本実施形態における多層プリント配線板の製造方法を示すフローチャート、図6(a)〜図6(c)は図5のステップS111〜S113をそれぞれ示す図であり、図7(a)〜図7(c)は図5のステップS130、S140及びS400をそれぞれ示す図、図8(a)及び図8(b)は本実施形態及び従来構造の基材の貫通孔に対する促進剤の吸着をそれぞれ示す概念図である。
【0053】
本実施形態では、図5に示すように、ステップS100〜S300において、第1〜第3のプリント配線板30〜50を個別に形成した後に、ステップS400で第1〜第3のプリント配線板30〜50を相互に貼り合わせることで、多層プリント配線板20を製造する。
【0054】
第1のプリント配線板30を形成する工程S100では、先ず、ステップS110において、熱インプリント法によって、第1のプリント配線板30の絶縁性基材31を形成する。このステップS110は、同図に示すように、3つの工程S111〜S113から構成されている。
【0055】
図5のステップS111において、図6(a)に示すように、インプリント装置のステージ(下型)71の上に、絶縁性基材31を形成することとなる樹脂フィルム61を載置する。なお、同図に示すように、インプリント装置のプレスヘッド72には、上述したインプリントモールド10が固定されている。
【0056】
次いで、ステージ71やプレスヘッド72に埋設されたヒータ(不図示)によって樹脂フィルム61やインプリントモールド10を加熱した後に、図5のステップ112において、減圧下でプレスヘッド72をステージ71に向かって下降させることで、図6(b)に示すように、インプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し付ける。
【0057】
インプリントモールド10を樹脂フィルム61に押し付けると、同図に示すように、インプリントモールド10の表面形状(突起部12や凸部15の形状)が樹脂フィルム61に転写されて、絶縁性基材31が形成される。この絶縁性基材31は、上述のように、インプリントモールド10の突起部12及び凸部15にそれぞれ対応する貫通孔311及び溝部314を有している。
【0058】
特に本実施形態では、インプリントモールド10の柱部14の複数の段差141が絶縁性基材31に転写されて、当該絶縁性基材31の貫通孔311の小径部313に複数の段差313aが形成される。
【0059】
なお、ステップS110で、貫通孔311が絶縁性基材31を完全に貫通していなくてもよい。この場合には、例えば、図5のステップS140において、絶縁性基材31から貫通孔311が露出するまでプリント配線板30を図中の下側から研磨またはエッチングする。
【0060】
次いで、図5のステップS113において、絶縁性基材31を所定温度まで冷却した後に、プレスヘッド72をステージ71から上昇させることで、インプリントモールド10を絶縁性基材31から取り外す。
【0061】
次いで、図5のステップS120において、特に図示しないが、絶縁性基材31の表面に、無電解めっきによって給電層を形成する。この給電層は、例えば、銅(Cu)やニッケル(Ni)等から構成されている。なお、無電解めっきに代えて、DPP(Direct Plating Process)、スパッタリング、真空蒸着、CVD等によって給電層を形成してもよい。
【0062】
次いで、図5のステップS130において、図7(a)に示すように、ステップS120で形成した給電層を利用して、絶縁性基材31の貫通孔311及び溝部314内に、電解めっきによって銅(Cu)を充填して、めっき層62を形成する。
【0063】
このステップS130では、硫酸銅めっき浴を用いた電解銅めっき法により形成するが、このめっき浴には、抑制剤101と促進剤102とが添加剤として添加されている(図8(a)及び図8(b)参照)。抑制剤101は、拡散速度が遅いため、基材31の凹み部分311,314への吸着量は少ないが、基材31の表層部分に多く吸着するので、当該表層部分へのめっきの析出が抑制される。これに対し、促進剤102は、拡散速度が速いため、基材31の凹み部分311,314や表層部分に一様に吸着するが、凹み部分311,314では、めっきの析出に伴って促進剤102が密となるので、表層部分と比較してめっき充填速度が速まる。
【0064】
この際、本実施形態では、図8(a)に示すように、絶縁性基材31の貫通孔311の小径部313に複数の段差313aが形成されており、貫通孔311内の表面積が、図8(b)に示す従来構造と比較して大きくなっている。上述の通り、促進剤102は、基材31の凹み部分や表層部分に一様に吸着するので、貫通孔311内の表面積が大きくなるほど、当該貫通孔311内の促進剤の吸着量が増加し、貫通孔311内におけるめっき充填速度を一層速めることができる。このため、溝部314よりも深い貫通孔311内にも銅(Cu)を十分に満たすことができる。因みに、図8(b)に示す従来構造では、貫通孔の小径部に段差が形成されておらず、その内壁面が平坦になっている。
【0065】
次いで、図5のステップS140において、図7(b)に示すように、絶縁性基材31の一方の主面315(同図における上面)が露出するまで、めっき層62をCMP(Chemical Mechanical Polishing)等によって研磨して平坦化する。これにより、第1のプリント配線板30のバイアホール32や配線パターン35が形成される。なお、めっき層62の上面をエッチングすることで平坦化してもよい。
【0066】
次いで、図5のステップS200及びS300において、特に図示しないが、上述したステップS100と同様の要領で、第2及び第3のプリント配線板40,50を形成する。
【0067】
次いで、図5のステップS400において、図7(c)に示すように、第1〜第3のプリント配線板30〜50を相互に積層して、積層プレス装置80によって一括してプレスすることで、多層プリント配線板20が完成する。
【0068】
以上のように、本実施形態では、絶縁性基材31の貫通孔311の小径部313に段差313aが形成されており、貫通孔311内の表面積が大きくなっている。このため、貫通孔311内におけるめっき充填速度を速めることができるので、バイアホール32を配線パターン35と同時に形成しても、バイアホール32内に銅(Cu)を十分に満たすことができ、第1のプリント配線板30の表面の平坦化を図ることができる。
【0069】
また、貫通孔311のめっき充填速度を速めることで、めっき時間が全体的に短縮されるので、絶縁性基材31の表層部分へのめっきの過剰な析出の低減も図ることができ、上述のステップS140における平坦化プロセスが短縮される。
【0070】
なお、本実施形態における図5のステップS100が本発明における第1の工程の一例に相当し、本実施形態における同図のステップS120が本発明における第2の工程の一例に相当し、本実施形態における同図のステップS130が本発明における第3の工程の一例に相当し、本実施形態における同図のステップS140が本発明における第4の工程の一例に相当する。
【0071】
また、本実施形態における貫通孔311が本発明における貫通孔の一例に相当し、本実施形態における大径部312が本発明における大径部の一例に相当し、本実施形態における小径部313が本発明における小径部の一例に相当し、本実施形態における段差313aが本発明における段差の一例に相当し、本実施形態におけるめっき層62が本発明におけるめっき層の一例に相当する。
【0072】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0073】
例えば、上述の実施形態では、複数のプリント配線板を一括してプレスすることによって多層プリント配線板20を形成したが、特にこれに限定されず、ビルドアップ法によってプリント配線板を一層ずつ作製して積層することで多層プリント配線板20を形成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…インプリントモールド
11…ベース
12…突起部
13…台座部
131…側面
14…柱部
141…段差
15…凸部
151…側面
20…多層プリント配線板
30…第1のプリント配線板
31…絶縁性基材
311…貫通孔
312…大径部
313…小径部
313a…段差
314…溝部
32…バイアホール
33…ランド部
331…側面
34…貫通部
341…段差
35…配線パターン
351…側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材を貫通するバイアホールと、を備え、
前記バイアホールは、
前記基材に埋設されていると共に、前記基材の一方の主面から露出したランド部と、
前記ランド部から前記基材の他方の主面に貫通した貫通部と、を有しており、
前記貫通部は、少なくとも一つの段差を有していることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記貫通部は、前記基材の他方の主面に向かうに従って段階的に細くなる先細形状を有していることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリント配線板であって、
前記基材の一方の主面に埋設されていると共に、前記基材の一方の主面から露出した配線パターンを備えており、
前記ランド部の側面が平坦であると共に、前記配線パターンの側面も平坦であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記ランド部に対応した大径部と、前記貫通部に対応した小径部と、を有する貫通孔を前記基材に形成する第1の工程と、
前記基材の表面に給電層を形成する第2の工程と、
硫酸銅めっき浴を用いた電解銅めっき法によって、前記貫通孔の内部に銅を充填して、前記基材にめっき層を形成する第3の工程と、
前記めっき層を平坦化する第4の工程と、を備えており、
前記小径部は、少なくとも一つの段差を有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
支持部と、
前記支持部から突出した突起部と、を備え、
前記突起部は、
前記支持部に設けられた台座部と、
前記台座部から突出した柱部と、を有しており、
前記柱部は、少なくとも一つの段差を有することを特徴とするインプリントモールド。
【請求項6】
請求項5に記載のインプリントモールドであって、
前記柱部は、前記柱部の先端に向かうに従って段階的に細くなる先細形状を有していることを特徴とするインプリントモールド。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のインプリントモールドであって、
前記突起部とは独立して、前記支持部から突出した凸部をさらに備えており、
前記台座部の側面が平坦であると共に、前記凸部の側面も平坦であることを特徴とするインプリントモールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−51251(P2013−51251A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187247(P2011−187247)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】