説明

プリント配線板の製造方法

【課題】黒色のソルダレジストや膜厚が厚いソルダレジストの仕様に対しても、アンダーカットが生じることのないソルダレジストを形成し、高い解像性を有するプリント配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】導体パターン3が形成された絶縁基板2上にソルダレジスト4aを塗布、仮硬化し、露光用マスクフィルム5を介しソルダレジスト4aを紫外線で露光する工程において、ソルダレジスト4aの全面を露光する第1の露光工程と露光用マスクフィルム5を剥離したのち選択的に露光する第2の露光工程を用いてソルダレジストを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパソコン、移動体通信用機器、ビデオカメラ等、各種電子機器などに用いられるプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器等に多く使用されているプリント配線板は、電子機器の小型化や多機能化に伴い配線の高密度化や電子部品の表面実装化が著しくなってきている。
【0003】
このために、プリント配線板の形態もますます小型、薄型、軽量化の傾向が進む中で配線密度も高密度化し、この配線パターンを被覆するソルダレジストも高解像度、高位置精度、細線被覆性が要求されてきている。
【0004】
以下に従来のプリント配線板の製造方法について説明する。
【0005】
図4は従来のプリント配線板の製造方法を示す断面図である。
【0006】
まず図4(a)に示すように、絶縁基板22の表裏の金属層に対してエッチングなどの手段を用いて導体パターン23を形成したプリント配線板21に、感光性材料である写真現像型ソルダレジストインキ24aを塗布する。塗布後、80℃、20分程度の乾燥により仮硬化される。
【0007】
次に図4(b)に示すように、ネガパターンの露光用マスクフィルム25、アクリル板26を重ねて載置し、次に図4(c)に示すように、紫外光Uの照射による露光工程で、必要な部分を選択的に光重合させて露光させる。露光工程を終了したプリント配線板は、露光部分のみ硬化される。
【0008】
次に図4(d)のように、未露光部は次の炭酸ナトリウム溶液などによる現像工程で溶解され、露光部はソルダレジスト24bとして溶解されずに絶縁基板22に形成される。その後、約150℃、1時間程度の熱処理により熱硬化され、ソルダレジストが形成される。
【0009】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−29417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記従来のプリント配線板の製造方法では、特にソルダレジストの厚みが50μm以上になるとソルダレジストの最深部まで透過しにくくなる。
【0012】
通常は、前述の図4(d)に示すような断面形状でソルダレジスト24bが形成されるが、ソルダレジストの厚みが50μm以上になると、最深部は紫外光が透過しにくくなるため、図5に示すように、ソルダレジスト24bのアンダーカットが発生し、絶縁基板22との密着性が低下し、剥離することもあった。
【0013】
特にソルダレジスト幅が100μm以下の場合、ソルダレジストの形成が困難となり、さらにソルダレジストの色調が黒色の場合、最深部への光透過率が40〜50%に低下し、アンダーカットの発生が顕著となるという問題を有していた。
【0014】
この課題を解決するため、露光工程での積算光量を高く設定して露光を行う方法があるが、生産性の低下を招くとともに、露光装置内の温度上昇により、露光用マスクフィルムの寸法変化を引き起こし、高い位置精度を要求されるソルダレジストの形成方法として推奨されるものではなかった。
【0015】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、アンダーカットが生じることのないソルダレジストを形成し、高い解像性を有するプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するために本発明のプリント配線板の製造方法は、導体パターンが形成された絶縁基板上にソルダレジストを塗布し、仮硬化する工程と、前記絶縁基板上のソルダレジストの全面に露光用マスクフィルムを位置合わせし、真空密着させる工程と、前記露光用マスクフィルムを介して前記ソルダレジストを紫外光で露光する第1の露光工程と、真空を解除し前記露光用マスクフィルムを前記ソルダレジストから剥離する工程と、前記ソルダレジストを選択的に露光する第2の露光工程と、前記ソルダレジストの未露光部を現像により溶解する工程とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成は、ソルダレジストの全面を露光する第1の露光工程と、露光用マスクフィルムを前記ソルダレジストから剥離したのち、前記ソルダレジストを選択的に露光する第2の露光工程からなり、特に第2の露光工程において、ソルダレジストに選択的にオーバー露光(過露光)の状態を生じさせるものである。
【0018】
特に、光透過性が著しく低い黒色のソルダレジストや膜厚が50μm以上のソルダレジストの底部まで紫外光が透過することはなく、結果的にオーバー露光部分は光重合されることはないものの、現像後においては、アンダーカットが生じることのないソルダレジストを形成することができる。これにより部品実装工程においても、安定したソルダレジストを備えた高い解像性を有するプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を示す断面図
【図2】同実施の形態における(a)プリント配線板の製造に用いる露光用マスクフィルムを示す断面図、(b)プリント配線板の実装用導体パターンの部分を示す平面図
【図3】同実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を示す断面図
【図4】従来のプリント配線板の製造方法を示す断面図
【図5】従来のプリント配線板の製造方法における課題を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態)
本発明について、以下に図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は本発明のプリント配線板の製造方法を示す断面図である。なお、説明を簡素にするため、以下の片面のプリント配線板を用いて説明する。
【0022】
まず図1(a)に示すように、絶縁基板2上にエッチングなどの手段を用いて導体パターン3を形成したプリント配線板1に黒色の写真現像型のソルダレジスト4aを塗布、仮硬化する。
【0023】
次に図1(b)に示すように、露光用マスクフィルム5をソルダレジスト4aの上に載置し、さらにその上にアクリル板6を重ねて真空吸着させる。
【0024】
次に図1(c)に示すように、後述するマスクパターン7が描画された露光用マスクフィルム5を介して、第1の露光工程として紫外光U1の照射により絶縁基板2上のソルダレジスト4aの全面の領域を露光する。これにより、紫外光の透過部分Pに該当する部分のソルダレジスト4aを光重合させながら硬化する。
【0025】
次に真空を解除し露光用マスクフィルム5をソルダレジスト4aから剥離し、図1(d)に示すように、アクリル板6を介することなく、第2の露光工程として紫外光U2の照射により絶縁基板2上のソルダレジスト4aを選択的に露光する。これにより、部分的にソルダレジスト4aを重ねて光重合させながら硬化する。
【0026】
次に図1(e)に示すように、炭酸ナトリウム水溶液等の現像液により未露光部を溶解し、ソルダレジスト4bを形成する。その後、約150℃、1時間程度の熱処理により熱硬化され、ソルダレジスト4を完成する。
【0027】
本発明のソルダレジスト4aへの露光の特徴は、図1(c)、図2(a)に示すように、マスクパターン7が描画された露光用マスクフィルム5の紫外光の透過部分Pのうち、第2の露光工程において、露光用マスクフィルム5を剥離したのち、、図2(b)に示すような、実装部品用の導体パターン3としての接続ランド間に形成されるソルダレジスト4の仕上がりの線幅が、50〜150μmに該当する部位に選択的に露光を行うことである。
【0028】
上記の紫外光U1の照射による第1の露光工程における露光量と、紫外光U2の照射による第2の露光工程における露光量との和は、ソルダレジスト4aの適正露光量より高くすることが望ましい。
【0029】
本実施の形態におけるソルダレジスト4aの適正露光量は、500mj/cm2であるので、第1の露光工程における露光量を500mj/cm2とし、第2の露光工程における露光量を適正露光量の10〜50%の範囲となる50〜250mj/cm2の範囲に設定することが望ましい。
【0030】
また、本実施の形態における第1の露光工程は250nm〜500nmの波長を含む光にて露光し、第2の露光工程は400nm〜600nmの波長を含む光にて露光することでソルダレジスト4aを硬化することが望ましい。
【0031】
特に、第2の露光工程において、400nm〜600nmの波長領域の光を採用することにより、ソルダレジスト4aの被膜への光透過率が向上し、ソルダレジスト4aの被膜の最深部における光透過率を80%以上とすることができ、ソルダレジスト4aを十分に硬化することができ、プリント配線板1のソルダレジスト4の形成を高解像および高歩留まりで生産することが可能になるという効果を有するものである。
【0032】
さらに、第2の露光工程は、拡散光または散乱光を用いて行うことも可能である。光を拡散させる具体的な方法は、図1(d)に示すように、紫外光U2の光源8を拡散光または散乱光を用いて露光することで実現できる。
【0033】
本発明は、上記の手段を用いて、第1の露光工程に加えて第2の露光工程でソルダレジストに対して選択的に適正露光量以上の露光量で照射し、あるいは紫外線を拡散させて露光することにより、図3(a)に示すように、ソルダレジスト4aへオーバー露光(過露光)の状態で紫外光を照射させることができる。
【0034】
比較的透過率の高い緑色のソルダレジストや、膜厚が50μm以下のソルダレジストに対する露光の場合、本実施の形態の手段を用いると、オーバー露光部分Eが現像後に残存し、解像性の低下やオーバー露光部分Eの剥がれ等による実装品質の低下を招く可能性があったが、光透過性が著しく低い黒色のソルダレジストや、膜厚が50μm以上のソルダレジストに対する露光においては、オーバー露光部分Eの底部まで紫外光が透過することはなく、結果的にオーバー露光部分Eが光重合されることはない。
【0035】
従って、現像工程においては、オーバー露光部分Eが除去されることはあるものの、図3(b)に示すように、アンダーカットが生じることのないソルダレジストを形成することができる。
【0036】
以上のように、実施の形態におけるプリント配線板の製造方法および露光用マスクフィルムを用いることにより、ソルダレジストの色調が黒色の場合や膜厚が50μm以上のソルダレジストであっても、アンダーカットを発生させることなく、安定したソルダレジストの形成が可能になるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように本発明は、黒色のソルダレジストや膜厚が厚いソルダレジストの仕様に対しても、アンダーカットが生じることのないソルダレジストを形成することができる。このことから本発明は、部品実装工程においても安定したソルダレジストを備えた高い解像性を有するプリント配線板を提供しうるものであり、産業上の利用可能性は大といえる。
【符号の説明】
【0038】
1 プリント配線板
2 絶縁基板
3 導体パターン
4、4a、4b ソルダレジスト
5 露光用マスクフィルム
6 アクリル板
7 マスクパターン
8 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンが形成された絶縁基板上にソルダレジストを塗布し仮硬化する工程と、
前記絶縁基板上のソルダレジストの全面に露光用マスクフィルムを位置合わせし真空密着させる工程と、
前記露光用マスクフィルムを介して前記ソルダレジストを紫外光で露光する第1の露光工程と、
真空を解除し前記露光用マスクフィルムを前記ソルダレジストから剥離する工程と、
前記ソルダレジストを選択的に露光する第2の露光工程と、
前記ソルダレジストの未露光部を現像により溶解する工程とを備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
第1の露光工程における露光量と第2の露光工程における露光量との和は、前記ソルダレジストの適正露光量より高いことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
第1の露光工程における露光量は前記ソルダレジストの適正露光量であり、第2の露光工程における露光量は、前記ソルダレジストの適正露光量の10%〜50%の範囲であることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
第1の露光工程は250nm〜500nmの波長を含む光にて露光し、第2の露光工程は400nm〜600nmの波長を含む光にて露光することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
第2の露光工程は、拡散光または散乱光を用いて行うことを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
ソルダレジストの色調は黒色であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
ソルダレジストの厚みは50μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
400nm〜500nmの波長を含む紫外光にて露光することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−30530(P2013−30530A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163985(P2011−163985)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】