説明

プリント配線板用シールドフィルム及びその製造方法

【課題】接着剤からガスが発生したり、フィルムに含まれる水分が蒸発したりしても、金
属薄膜層と接着剤層とが剥離しないプリント配線板用シールドフィルム及びその製造方法
を提供する。
【解決手段】プリント配線板用シールドフィルム1は、絶縁層2の片面に透気性金属箔か
らなる金属薄膜層3と、接着剤層4とを順次設けてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ、通信機器、ビデオカメラなどの装置内等において用いられるプリント配線板用のシールドフィルム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属薄膜を用いたプリント配線板用シールドフィルム及びその製造方法は公知となっている。
例えば、下記特許文献1に開示されるものがある。この特許文献1のものは、フィルムの片面に接着剤を塗布して接着剤層を形成し、続いて、極薄銅箔を支持材に剥離層を介して設けた貼合部材の極薄銅箔側を該接着剤層上に貼り、接着剤層の硬化後に支持材を剥離し、フレキシブルプリント配線板用基板を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−102693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものは、加熱プレスされる工程において、加熱されると接着剤から発生するガスや蒸気が逃げ場をなくし、プリント配線板用基板の極箔銅箔と接着剤層の間に残存してしまう。
また、上述の残存したガスは、はんだリフローを行う場合に、急激な加熱により極箔銅箔と接着剤層とで作用し、極箔銅箔と接着剤層とを剥離させてしまう。はんだリフローは、近年、鉛フリー化によりリフロー温度が20〜50℃上昇しているため、この問題が顕著化している。
【0005】
そこで、本発明の目的は、はんだリフローを行う場合のようにあとの工程で加熱される場合の環境下において、上述の残存ガスによって金属薄膜層と接着剤層とが剥離しないプリント配線板用シールドフィルム及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、絶縁層の片面に金属薄膜層と、接着剤層とを順次設けてなり、加熱プレスされ、はんだリフローが行われるプリント配線板と接着されるプリント配線板用シールドフィルムであって、前記金属薄膜層の膜厚は1〜35μmであり、前記金属薄膜層が、径が0.1〜10μm、穴数が10〜1000個/cm、であるピンホールを複数有する金属箔からなるものである。
上記構成により、本発明のプリント配線板用シールドフィルムが、加熱プレスされる際、接着剤から発生するガスやフィルムから発生する水蒸気が金属薄膜層を通り抜けることができるので、金属薄膜層と接着剤層との剥離を生じないプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。また、絶縁層により、金属薄膜層が剥き出しとならないので、確実に回りの回路と短絡することを防止できる。
【0007】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、前記接着剤層が導電性接着剤層であることが好ましい。
上記構成により、グランドパターンと金属薄膜層とを導電接続させるので、電磁波シールド性に優れたプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0008】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、絶縁層の片面に金属薄膜層と、接着剤層とを順次設けてなるプリント配線板用シールドフィルムであって、前記金属薄膜層は、紫外線又は電子線透過性金属箔からなり、前記接着剤層は、導電性フィラー含有接着性樹脂からなり、前記接着性樹脂は、紫外線又は電子線の照射によって硬化する紫外線又は電子線硬化性樹脂である。
上記構成により、金属薄膜層を紫外線又は電子線が透過するので、紫外線又は電子線硬化性樹脂に紫外線又は電子線を照射でき、硬化させることができるという特性を有するプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。また、絶縁層により、金属薄膜層が剥き出しとならないので、確実に回りの回路と短絡することを防止できる。
【0009】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、前記紫外線硬化性樹脂が、硬化が逐次的に進む逐次重合性重合体であることが好ましい。
上記構成により、金属薄膜層を透過した紫外線が逐次重合性重合体に一時的に照射されたとき、照射終了後でも、逐次重合性重合体の硬化が逐次的に進むこととなる。つまり、短時間の紫外線の照射後、放置していても硬化し、硬化後は高温に耐えうるという特性を有するプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0010】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、前記導電性接着剤層は、導電性フィラー含有接着性樹脂からなり、前記導電性フィラーが、少なくとも2成分からなる金属で、溶融後合金を形成し、当該合金の再溶融温度が最初の溶融点よりも高くなる低融点金属からなるものであることが好ましい(以下、機能性合金フィラーという)。ここで、低融点金属とは、少なくとも2成分からなる金属で、溶融後合金を形成し、該合金は再溶融温度が前記溶融温度よりも高くなるものをいう。
上記構成により、本発明のプリント配線板用シールドフィルムを加熱してプリント配線板に接着させる場合に、接着性樹脂に含まれる機能性合金フィラーは溶融点が低いので、プリント配線板の部品等へのダメージを防止できる程度に低く抑えた温度で上述の樹脂を溶融して接着できる。また、上述の樹脂が溶融後に冷却されて固体となった場合、機能性合金フィラーは合金化され、機能性合金フィラーの再溶融点は最初の溶融点よりも高くなっているので、高温環境下に本発明のプリント配線板用シールドフィルムがさらされても、加熱後固体化した上述の機能性合金フィラーは再溶融しにくいという利点も有することとなる。また、絶縁層により、金属薄膜層が剥き出しとならないので、確実に回りの回路と短絡することを防止できる。したがって、これらの特性を有するプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0011】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムの製造方法は、はんだリフローが行われるプリント配線板と接着されるプリント配線板用シールドフィルムの製造方法であって、径が0.1〜10μm、穴数が10〜1000個/cmであるピンホールを複数有する金属箔からなり、膜厚が1〜35μmである金属薄膜層の片面に絶縁層を設ける工程と、他面に接着剤を塗布する工程と、加熱プレスされる工程とからなるものである。
上記構成により、本発明のプリント配線板用シールドフィルムが、加熱プレスされる際、接着剤から発生するガスやフィルムから発生する水蒸気が金属薄膜層を通り抜けることができ、金属薄膜層と接着剤層との剥離を生じないプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。また、絶縁層により、金属薄膜層が剥き出しとならないので、確実に回りの回路と短絡することを防止できる。
【0012】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムの製造方法は、前記接着剤層を導電性接着剤層とすることが好ましい。
上記構成により、グランドパターンと金属薄膜層とを導電接続させるので、電磁波シールド性に優れたプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0013】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムの製造方法は、紫外線又は電子線透過性金属箔からなる金属薄膜層の片面に絶縁層を設ける工程と、他面に導電性フィラー含有接着性樹脂であって、紫外線又は電子線の照射によって硬化する紫外線又は電子線硬化性樹脂でもある接着剤を塗布する工程とからなるものである。
上記構成により、金属薄膜層を紫外線又は電子線が透過するので、紫外線又は電子線硬化性樹脂に紫外線又は電子線を照射でき、硬化させることができるという特性を有するプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。また、絶縁層により、金属薄膜層が剥き出しとならないので、確実に回りの回路と短絡することを防止できる。また、屈曲性が向上するので、プリント配線板用シールドフィルムを補強でき、ハウジングとのこすれ防止、金属薄膜層の酸化防止もできる。
【0014】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムの製造方法は、前記紫外線硬化性樹脂を硬化が逐次的に進む逐次重合性重合体とすることが好ましい。
上記構成により、金属薄膜層を透過した紫外線が逐次重合性重合体に一時的に照射されたとき、照射終了後でも、逐次重合性重合体の硬化が逐次的に進むこととなる。つまり、短時間の紫外線の照射後、放置していても硬化するので生産効率がよく、硬化後は高温に耐えうるという特性を有するプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0015】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムの製造方法は、前記他面に接着剤を塗布する工程が、導電性フィラー(機能性合金フィラー)含有接着性樹脂である接着剤を塗布する工程であり、前記導電性フィラーが、少なくとも2成分からなる金属で、溶融後合金を形成し、当該合金の再溶融温度が最初の溶融点よりも高くなる低融点金属からなることが好ましい。
上記構成により、本発明のプリント配線板用シールドフィルムを加熱してプリント配線板に接着させる場合に、機能性合金フィラー含有接着性樹脂は溶融点が低いので、プリント配線板の部品等へのダメージを防止できる程度に低く抑えた温度で上述の樹脂を溶融して接着できるという特性を有するプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。また、上述の樹脂が溶融後に冷却されて固体となった場合に、その機能性合金フィラーの再溶融点は最初の溶融点よりも高くなるので、高温環境下に本発明のプリント配線板用シールドフィルムがさらされても、加熱後固体化した上述の機能性合金フィラーは再溶融しにくいという利点も有するプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。また、絶縁層により、金属薄膜層が剥き出しとならないので、確実に回りの回路と短絡することを防止できる。
【0016】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、前記絶縁層がカバーフィルム又は絶縁樹脂コーティング層であることが好ましい。
上記構成により、屈曲性が向上し、また、プリント配線板用シールドフィルムを補強でき、ハウジングとのこすれ防止、金属薄膜層の酸化防止もできるプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0017】
本発明のプリント配線板用シールドフィルムの製造方法は、前記絶縁層がカバーフィルム又は絶縁樹脂コーティング層であることが好ましい。
上記構成により、屈曲性が向上し、また、プリント配線板用シールドフィルムを補強でき、ハウジングとのこすれ防止、金属薄膜層の酸化防止もできるプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のプリント配線板用シールドフィルムの一部横断面図。
【図2】酸素透過度の測定方法を説明するための概略図。
【図3】透湿度の測定方法を説明するための概略図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のプリント配線板用シールドフィルムの横断面図である。
図1に示すプリント配線板用シールドフィルム1は、絶縁層2の片面に透気性金属箔、紫外線又は電子線透過性金属箔、又は、透気性及び紫外線又は電子線透過性の金属箔からなる金属薄膜層3と、接着剤層4とを順次設けてなるものである。
【0020】
絶縁層2は、カバーフィルム又は絶縁樹脂のコーティング層からなる。
カバーフィルムは、エンジニアリングプラスチックからなる。例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。
あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。
絶縁樹脂は、絶縁性を有する樹脂であればよく、例えば、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂などが挙げられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、及びそれらのメタクリレート変性品などが挙げられる。なお、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などどれでもよく、硬化するものであればよい。
【0021】
金属薄膜層3を形成する金属材料としては、銅、アルミ、銀、金などを挙げることができる。金属材料は、求められるシールド特性に応じて適宜選択すればよい。
金属薄膜層3は、透気性金属箔、紫外線又は電子線透過性金属箔、又は、透気性及び紫外線又は電子線透過性の金属箔からなるが、これらの特性を有するためには、ピンホール3aが開いていなければならず、膜厚についても考慮しなければならない。したがって、上記特性を有するには、ピンホール3aの径が0.1〜10μm、穴数が10〜1000個/cm2であることが好ましい。また、膜厚は、求められるシールド特性と可撓性に応じて適宜選択されるが、一般に1〜35μmとするのが好ましい。
金属薄膜層3の形成方法としては、ロール等による圧延や電解による方法がある。
【0022】
接着剤層4としては、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系などの熱可塑性樹脂や、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキッド系などの熱硬化性樹脂が用いられる。
耐熱性が特に要求されない場合は、保管条件等に制約を受けないポリエステル系の熱可塑性樹脂が望ましく、耐熱性もしくはよりすぐれた可撓性が要求される場合においては、シールド層を形成した後の信頼性の高いエポキシ系の熱硬化性樹脂が望ましい。
また、そのいずれにおいても熱プレス時のにじみ出し(レジンフロー)の小さいものが望ましいことはいうまでもない。
【0023】
また、接着剤層4は、導電性フィラーを含有する上記樹脂で構成されるものが好ましい。
導電性フィラーとしては、カーボン、銀、銅、ニッケル、ハンダ、アルミ及び銅粉に銀メッキを施した銀コート銅フィラー、さらには樹脂ボールやガラスビーズ等に金属メッキを施したフィラー又はこれらのフィラーの混合体が用いられる。銀は高価であり、銅は耐熱の信頼性に欠け、アルミは耐湿の信頼性に欠け、さらにハンダは十分な導電性を得ることが困難であることから、比較的安価で優れた導電性を有し、さらに信頼性の高い銀コート銅フィラー又はニッケルを用いるのが好ましい。
【0024】
導電性フィラーの接着性樹脂への配合割合は、フィラーの形状等にも左右されるが、銀コート銅フィラーの場合は、接着性樹脂100重量部に対して10〜400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは20〜150重量部とするのがよい。400重量部を超えると、グランド回路(銅箔)への接着性が低下し、シールドフレキシブルプリント配線板(以下、シールドFPCとする)等の可撓性が悪くなる。また、10重量部を下回ると導電性が著しく低下する。また、ニッケルフィラーの場合は、接着性樹脂100重量部に対して40〜400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは100〜350重量部とするのがよい。400重量部を超えると、グランド回路(銅箔)への接着性が低下し、シールドFPC等の可撓性が悪くなる。また、40重量部を下回ると導電性が著しく低下する。金属フィラーの形状は、球状、針状、繊維状、フレーク状、樹脂状のいずれであってもよい。
また、上記導電性フィラーが、低融点金属であることが好ましい。
【0025】
さらに、接着剤層4は、紫外線又は電子線の照射によって硬化する紫外線又は電子線硬化性樹脂である導電性フィラー含有接着性樹脂であることが好ましい。
【0026】
紫外線硬化性樹脂の層形成成分の主体としては、カチオン重合体タイプ、ラジカル重合体タイプなどが挙げられる。カチオン重合体タイプとしては、エポキシ系、ビニルエーテル系及びオキセタン系など、ラジカル重合体タイプとしては、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、アクリルオリゴマー系アクリレート、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系などが挙げられる。ラジカル重合の特殊なものとしてチイルラジカルを介するタイプとしては、アリール基を持つポリエンとチオール基を持つポリチオールからなる組合せなどが挙げられる。
特に、本実施の形態においては、溶剤可溶型ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、カチオン重合触媒及びエポキシ変性樹脂の組合せからなるカチオン重合体などを用いるのが好ましいが、これに限られない。なお、上記カチオン重合体に用いられるエポキシ樹脂には、ビスフェノールA、F、AF型等のジグリシジルタイプ、及び、エポキシ等量が10000以下のものが使用可能である。また、エポキシ変性樹脂の代表的なものとしては、グリシジル化ポリエステル樹脂やグリシジル化ブタジエン等がある。
【0027】
また、他の紫外線硬化性樹脂の層形成成分としては、ゴム、多官能アクリレートなどがある。
ゴムとしては、スチレン−ブタジエン系ブロック、ランダムコポリマー、アクリルゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリルニトリルゴム、ポリクロロプレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー等が挙げられる。多官能アクリレートとしては、トリメチロールプロパンアクリレート等が挙げられる。
【0028】
電子線硬化性樹脂の層形成成分の主体としては、不飽和ポリエステルタイプ、エポキシアクリレートタイプ、ウレタンアクリレートタイプ、ポリエステルアクリレートタイプ、ポリエーテルアクリレートタイプ、アクリルタイプなどが挙げられる。
一般には、紫外線硬化性樹脂の組成に開始剤を含まない配合組成のものが使用できる。例えば、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、GPTA(Glyceryl Propoxy Triacrylate)及びTRPGDA(Tripropylene Glycol Diacrylate)からなる配合組成物が挙げられる。
【0029】
なお、上記の紫外線硬化性樹脂には、重合を開始させるための重合開始剤も含まれる。
ラジカル重合体タイプの重合開始剤としては、水素引き抜き型(ベンゾフェノンやチオキサントン類など)、ラジカルへの開裂型(ベンゾインエーテル類やアセトフェノン類など)及び電子移動型(芳香族ケトンと3級アミンの組合せなど)などが挙げられる。カチオン重合体タイプの重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム、芳香族ハロニウム、芳香族スルホニウムなどのオニウム塩が挙げられる。付加重合体タイプの重合開始剤としては、ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0030】
また、紫外線又は電子線硬化性樹脂中に、銀、アルミニウム若しくは金でメッキした粉体、ガラスビーズ又は樹脂ボール(アクリル樹脂などの光学特性のよいもの)を混入させてもよい。これにより、紫外線又は電子線硬化性樹脂の一部に進入した紫外線を乱反射させて、紫外線又は電子線硬化性樹脂中に行き渡らせることができ、硬化をさらに促進させることができる。
【0031】
また、上記紫外線硬化性樹脂は、逐次重合性重合体であることが好ましい。さらには、この逐次重合性重合体は、紫外線により硬化するカチオン重合体であることが好ましい。この逐次重合性重合体は、紫外線照射が短時間であっても、一旦反応が開始されると逐次的に進行し、硬化するものである。なお、反応速度を速くするために、カチオン重合体とラジカル重合体とを共存させることもある。
【0032】
上記実施の形態によれば、本発明のプリント配線板用シールドフィルムが、加熱プレスされる際、接着剤から発生するガスやフィルムから発生する水蒸気が金属薄膜層を通り抜けることができるので、金属薄膜層と接着剤層との剥離を生じないプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0033】
また、グランドパターンと金属薄膜層とを導電接続させるので、電磁波シールド性に優れたプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0034】
さらに、金属薄膜層を紫外線又は電子線が透過するので、紫外線又は電子線硬化性樹脂に紫外線又は電子線を照射でき、硬化させることができるという特性を有するプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0035】
加えて、金属薄膜層を透過した紫外線がカチオン重合体に一時的に照射されたとき、照射終了後でも、カチオン重合体の硬化が逐次的に進むこととなる。つまり、短時間の紫外線の照射後、放置していても硬化するので生産効率がよく、硬化後は高温に耐えうるという特性を有するプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0036】
また、本発明のプリント配線板用シールドフィルムを加熱してプリント配線板に接着させる場合に、接着性樹脂に含まれる機能性合金フィラーは溶融点が低いので、プリント配線板の部品等へのダメージを防止できる程度に低く抑えた温度で上述の樹脂を溶融して接着できる。また、上述の樹脂が溶融後に冷却されて固体となった場合、機能性合金フィラーは合金化され、機能性合金フィラー含有接着性樹脂の再溶融点は最初の溶融点よりも高くなっているので、例えば、真夏の車中のような高温環境下に本発明のプリント配線板用シールドフィルムがさらされたとしても、加熱後固体化した上述の機能性合金フィラーは再溶融しないという利点も有することとなる。したがって、これらの特性を有するプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0037】
なお、本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、FPC、COF(チップオンフレキ)、RF(フレックスプリント板)、多層フレキシブル基板、リジット基板などに利用できるが、必ずしもこれらに限られない。
【0038】
図1に示すプリント配線板用シールドフィルム1と同様の構成のプリント配線板用シールドフィルムを作製した。以下、実施例1、2及び比較例1のプリント配線板用シールドフィルムについて説明する。なお、実施例1、2及び比較例1において、絶縁層2として、5μmのエポキシ樹脂の樹脂コーティング層とした。
【0039】
(実施例1)
金属薄膜層3の銅箔には、圧延銅箔として、厚さが6μm、ピンホール3aの径が1μm、穴数が100〜150個/cm2のものを使用し、接着剤層4には、東亜合成(株)製の溶剤可溶型をポリエステル樹脂PES−365を100部、旭電化工業(株)製のビスフェノールF型エポキシ樹脂4900を50部、旭電化工業(株)製のエポキシ変性ゴム4023を20部、及び旭電化工業(株)製の光カチオン重合触媒SP−170を5部、混合したものを使用した。
このような材料が使用されたプリント配線板用シールドフィルムに紫外線を金属薄膜層3側から照射し、接着剤層4のカチオン重合体を紫外線硬化させた。このプリント配線板用シールドフィルムを実施例1の試料とした。
【0040】
(実施例2)
金属薄膜層3の銅箔には、圧延銅箔として、厚さが6μm、ピンホール3aの径が1μm、穴数が400〜700個/cm2のものを使用し、接着剤層4については、実施例1と同様のものを用いた。
このような材料が使用されたプリント配線板用シールドフィルムに紫外線を金属薄膜層3側から照射し、接着剤層4のカチオン重合体を紫外線硬化させた。このプリント配線板用シールドフィルムを実施例2の試料とした。
【0041】
(比較例1)
金属薄膜層3の銅箔には、厚さが6μmで穴がないものを使用し、接着剤層4については、実施例1と同様のものを用いた。
このような材料が使用されたプリント配線板用シールドフィルムに紫外線を金属薄膜層3側から照射し、接着剤層4のカチオン重合体を紫外線硬化させた。このプリント配線板用シールドフィルムを比較例1の試料とした。
【0042】
上記実施例1、2及び比較例1の試料について、酸素透過度と透湿度について測定した。
酸素透過度は、図2に示す概略図のように、100×100mm片のシールドフィルム1の試料を第1室5と第2室6との間にセットする。第1室5を大気圧+20mmHgの圧とし、第2室6を真空状態として、試料における透過面積70mmφの部分を透過する酸素量を測定することにより判明する。これを上記実施例1、2及び比較例1の各試料について計3回ずつ行い、各実施例等の値の平均値を計算し、この平均値を酸素透過度とした。
透湿度は、図3に示す概略図のように、JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)を用いて得た。具体的には、塩化カルシウムを入れたカップ8に透過面積70φの部分を有するシールドフィルム1の試料を載せ、さらにその上にカップ8と同径のリング状の筒11を載せ、試料1をカップ8上端部と筒11下端部とで挟み込み、試料1及びカップ8とともに筒11の周囲をロウ9で固定密封する。このように準備されたカップ8を40℃、90%RHの恒湿槽に置いた後、96時間毎に3回取り出し、その質量を測定し、時間と質量との関係をグラフ化(不図示)して、24時間換算された透湿度を得るものである。これを上記実施例1、2及び比較例1の各試料について行い、透湿度を得た。これらの結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1より、実施例1、2の試料は酸素透過度及び透湿度が非常に高いことが分かる。これに対し、比較例1は穴がないため酸素及び水蒸気の透過は全くなかったことが分かる。また、実施例1の試料と実施例2の試料とを比較すると、穴の大きさが異なるにもかかわらず、酸素透過度は同様の値が得られたのに対し、実施例1の試料に比べて、穴の数が約4倍の実施例2の試料から、実施例1の2倍以上の透湿度が得られた。
このように、実施例1、2のシールドフィルムは、酸素及び水蒸気が透過できるものであることが確認できた。
【符号の説明】
【0045】
1 プリント配線板用シールドフィルム
2 絶縁層
3 金属薄膜層
3a ピンホール
4 接着剤層
5 第1室(大気圧+20mmHgの状態)
6 第2室(真空状態)
7 (透過酸素の)透過方向
8 カップ
9 ロウ
10 (透過蒸気の)透過方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の片面に金属薄膜層と、導電性接着剤層とを順次設けてなり、加熱プレスされ、はんだリフローが行われるプリント配線板と接着されるプリント配線板用シールドフィルムであって、
前記金属薄膜層の膜厚は1〜35μmであり、前記金属薄膜層が、径が0.1〜10μm、穴数が10〜1000個/cm、であるピンホールを複数有する金属箔からなり、
前記導電性接着剤層は、接着性樹脂として熱硬化性樹脂を用いたプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項2】
前記導電性接着剤層は、導電性フィラー含有接着性樹脂からなり、前記導電性フィラーが、少なくとも2成分からなる金属で、溶融後合金を形成し、当該合金の再溶融温度が最初の溶融点よりも高くなる低融点金属からなる請求項1に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項3】
はんだリフローが行われるプリント配線板と接着されるプリント配線板用シールドフィルムの製造方法であって、
径が0.1〜10μm、穴数が10〜1000個/cmであるピンホールを複数有する金属箔からなり、膜厚が1〜35μmである金属薄膜層の片面に絶縁層を設ける工程と、他面に導電性接着剤を塗布する工程と、加熱プレスされる工程とによって形成するものであり、
前記導電性接着剤層は、接着性樹脂として熱硬化性樹脂を用いたプリント配線板用シールドフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記他面に導電性接着剤を塗布する工程が、導電性フィラー含有接着性樹脂である接着剤を塗布する工程であり、前記導電性フィラーが、少なくとも2成分からなる金属で、溶融後合金を形成し、当該合金の再溶融温度が最初の溶融点よりも高くなる低融点金属からなる請求項3に記載のプリント配線板用シールドフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記絶縁層が、カバーフィルム又は絶縁樹脂コーティング層である請求項1又は2に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項6】
前記絶縁層が、カバーフィルム又は絶縁樹脂コーティング層である請求項3又は4に記載のプリント配線板用シールドフィルムの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−84975(P2013−84975A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−271242(P2012−271242)
【出願日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【分割の表示】特願2010−123799(P2010−123799)の分割
【原出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)
【Fターム(参考)】