説明

プリント配線板

【課題】ボイド除去のための樹脂注入等の処理工程を介在させることなく経済的に有利な製造技術で信頼性の高い部品内蔵プリント配線板を製造すること。
【解決手段】内蔵部品となる電子部品20がはんだ接合される電極12,12にボイド誘導溝13,13を設けてボイド誘導路(aa)を形成したことにより、電子部品20の下面と部品実装面部との間隙に発生するボイド(V)を確実に排除することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に介在されるチップ部品を内蔵したプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板を対象とした部品実装技術として、部品実装時に於けるボイドの弊害に対処する技術が種々提案されている。具体例を挙げると、BGA(ball grid array)部品実装時のボイド発生に対して、ボイドを特定のエリアに集中させることによって、温度サイクルによるはんだクラックの発生を抑止する技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−274211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年では、電子回路装置に用いられる、複数層を形成するプリント配線板として、内層側のパターン形成面に形成した導体パターン(パッド)上に受動素子等のチップ部品を半田接合し、上記内層側に絶縁材料を積層して、チップ部品を絶縁材料で覆うことによって電子部品内蔵プリント配線板を製造する基板製造技術が実用化に向けて開発されている。このような構造の部品内蔵プリント配線板に於いては、チップ部品と、このチップ部品に回路接合した導体パターンの形成面との間の間隙部にボイド(空気溜まり若しくはガス溜まり)が形成される。この間隙部に形成されたボイドが、後の積層工程、部品実装(リフロー)工程等を含む基板製造時に於ける各種の加熱処理加工、若しくは電子機器内への組み込み後に於ける受熱等に於いて加熱されると、ボイドの熱膨張により、導体パターンの剥離、チップ部品の損傷、回路切断、基板の剛性劣化等、種々の不具合を招く虞がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みなされたもので、信頼性の高いプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によるプリント配線板は、部品実装面を含むパターン形成面を具備する基材と、前記パターン形成面に形成された2つの電極と、前記2つの電極に接続される電子部品と、を具備し、前記2つの電極の対向する部分は前記部品実装面の中央に向かって尖鋭部が形成され、前記2つの電極は前記部品実装面の中央に向かって漸次高さが低くなるプリント配線板である。
【0007】
他の実施形態によるプリント配線板は、部品実装面を含むパターン形成面を具備する基材と、前記パターン形成面に形成された2つの電極と、前記2つの電極に接続される電子部品と、を具備し、前記2つの電極の対向する部分は前記部品実装面の中央に向かって円弧が形成され、前記2つの電極は前記部品実装面の中央に向かって漸次高さが低くなるプリント配線板である。
【0008】
他の実施形態によるプリント配線板は、部品実装面を含むパターン形成面を具備する基材と、前記パターン形成面に形成された2つの電極と、前記2つの電極に接続される電子部品と、を具備し、前記2つの電極の対向する部分は一方に前記部品実装面の中央に向かって凸部が形成され、他方に凹部が形成され、前記2つの電極は前記部品実装面の中央に向かって漸次高さが低くなるプリント配線板である。
【0009】
他の実施形態によるプリント配線板は、部品実装面を含むパターン形成面を具備する基材と、前記パターン形成面に形成された2つの電極と、前記2つの電極に接続される電子部品と、を具備し、前記2つの電極の対向する部分は凹円弧が形成され、前記2つの電極は前記部品実装面の中央に向かって漸次高さが低くなるプリント配線板である。
【発明の効果】
【0010】
信頼性の高いプリント配線板を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の構造を示す図。
【図2】上記第1実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の構造を示す図。
【図3】上記第1実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の構造を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電子機器の構成を示す図。
【図5】本発明の第3実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【図6】本発明の第4実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【図7】本発明の第5実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【図8】本発明の第6実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【図9】本発明の第7実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【図10】本発明の第8実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【図11】本発明の第9実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造(a)、および第10実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造(b)を示す図。
【図12】本発明の第11実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【図13】本発明の第12実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【図14】本発明の第13実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【図15】本発明の第14実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【図16】本発明の第15実施形態に係る部品内蔵プリント配線板の電極構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、プリント配線板に於いて、内蔵する電子部品を実装する部品実装面部に、電子部品の実装時に発生するボイドを実装面の外部に誘導する誘導路を形成したことを特徴とするもので、以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0013】
本発明の第1実施形態を図1乃至図3を参照して説明する。なお、この第1実施形態に於いては、内蔵部品(内層側のパターン形成面に実装される電子部品)として、直方体形状の部品本体に一対の端子を設けた、例えばコンデンサ、抵抗素子等のチップ部品を例に採るが、これらのチップ部品に限らず、特定の動作機能を有する2端子若しくは3端子以上の能動素子であってもよい。
【0014】
本発明の第1実施形態に係る部品内蔵プリント配線板は、図1乃至図3に示すように、基材10の内層側パターン形成面の予め定められた部品実装面部にパターン形成した電極12,12に、ボイドを外部に誘導する誘導路を形成した構造を特徴とする。
【0015】
電気絶縁基板を構成する基材10の内層側パターン形成面の予め定められた部品実装面部には、内蔵部品となる電子部品20をはんだ接合する一対の電極12,12がパターン形成されて設けられる。この電極12,12には、実装された電子部品20の下面に溜まる気体(ガス、空気等)により生成されるボイド(V)を部品実装面部の外に導くボイド誘導溝13,13が形成される。このボイド誘導溝13,13は一対の電極12,12の互いに向かい合う辺に開口を有する切り溝によって構成される。
【0016】
上記電極12,12に、電子部品20の端子21,21が溶融はんだにより、はんだ接合され、電子部品20が部品実装面部に実装されることにより、上記切り溝の開口部を入口として、はんだ接合部15,15の下を通り、切り溝の終端開口部14を出口としたボイド誘導路(aa)が形成される。
【0017】
上記基材10の内層側パターン形成面に電子部品20が実装された後、上記基材10の内層側パターン形成面上に絶縁層を形成する層間樹脂30が供給される。この層間樹脂30の供給時に於いて、電子部品20の下面と部品実装面部との間隙にボイド(V)が発生すると、このボイド(V)は、樹脂30の供給量がL1の位置から矢印b方向にさらに増加してL2の位置に至るまでの間に、上記ボイド誘導路(aa)を通って開口部14から抜け出る。これにより、図2に示すように、基材10の内層側パターン形成面上に、所定量の層間樹脂30が供給された状態では、電子部品20の下面と部品実装面部との間隙にボイド(V)は存在せず、上記間隙部分およびボイド誘導溝13,13がすべて層間樹脂30で埋まった状態になる。
【0018】
このように本発明の第1実施形態では、電極12,12にボイド誘導溝13,13を設けてボイド誘導路(aa)を形成したことにより、電子部品20の下面と部品実装面部との間隙に発生するボイド(V)を確実に排除することができる。このボイド排除機能は、基材10の内層側パターン形成面に形成する電極12,12の形状を工夫するのみで実現することができる。従ってボイド除去のための樹脂注入等の処理工程を介在させることなく、経済的に有利な製造技術で、信頼性の高い部品内蔵プリント配線板を製造することができる。
【0019】
本発明の第2実施形態を図4に示す。この第2実施形態は部品内蔵プリント配線板を用いた電子機器である。
【0020】
上記第1実施形態の部品内蔵プリント配線板を用いたプリント回路板を実装した電子機器の構成を図4に示している。この図4は、上記第1実施形態に係る部品内蔵プリント配線板をポータブルコンピュータ等の小型電子機器に適用した例を示している。
【0021】
図4に於いて、ポータブルコンピュータ1の本体2には、表示部筐体3がヒンジ機構を介して回動自在に設けられている。本体2には、ポインティングデバイス4、キーボード5等の操作部が設けられている。表示部筐体3には例えばLCD等の表示デバイス6が設けられている。
【0022】
また本体2には、上記ポインティングデバイス4、キーボード5等の操作部および表示デバイス6を制御する制御回路を組み込んだプリント回路板(マザーボード)8が設けられている。このプリント回路板8は、上記図1乃至図3に示した第1実施形態の部品内蔵プリント配線板を用いて実現される。
【0023】
このプリント回路板8に用いた部品内蔵プリント配線板は、内蔵部品となる電子部品20をはんだ実装する電極12,12にボイド誘導溝13,13を設けてボイド誘導路(aa)を形成した構造であることから、電子部品20の下面と部品実装面部との間隙にボイド(V)は存在しない。従って、電子機器内への組み込み後に於ける受熱等に於いて、プリント回路板8が加熱されても、ボイドの熱膨張により、導体パターンの剥離、チップ部品の損傷、回路切断、基板の剛性劣化等を招くという虞がすべて排除され、安定した機器動作が可能になる。さらにプリント回路板8を構成する部品内蔵プリント配線板が安価に提供できることから製品コストを低減できる。
【0024】
上記した第1実施形態の電極構造を変形した本発明の他の実施形態を図5乃至図16に示す。なお、図5乃至図16に示す各実施形態では、電極にはんだ接合される電子部品を上記第1実施形態と同様に符号20で示している。また導体パターン(P)の端部に電極(PA,PB,PC,…)を設けたパターン構成を例に示している。
【0025】
本発明の第3実施形態に於ける電極構造を図5に示す。上記図1乃至図3に示した第1実施形態の電極12,12が、1つの切り溝によるボイド誘導溝13,13であるのに対して、この図5に示す第3実施形態の電極構造では、電極PA,PAに、複数の切り溝によるボイド誘導溝を設けている。このような電極構造とすることで、電子部品20の下面と部品実装面部との間隙に発生するボイドを並行する複数のボイド誘導路により確実に排除することができる。
【0026】
本発明の第4実施形態に於ける電極構造を図6に示す。この図6に示す第4実施形態は、図6(b)に示すように、電極PB,PBを部品実装面の中央に向かって漸次高さが低くなる形状にしたことを特徴とする。この電極PB,PBにより、パターン形成面からの電子部品20の実装位置を低く抑えて部品下にボイドが出来難い構造としている。さらに電極PB,PBの形状を図6(a)に示すように、部品実装面の中央に向かって角部を円弧状にすることで、ボイド誘導路(ab)を形成している。
【0027】
本発明の第5実施形態に於ける電極構造を図7に示す。この図7に示す第5実施形態の電極PC,PCは、面形状を部品実装面の中央に向かって斜面にしたことを特徴とする。この電極PC,PCにより、部品実装面に、ボイド誘導路(ac)を形成している。
【0028】
本発明の第6実施形態に於ける電極構造を図8に示す。この図8に示す第6実施形態の電極PD,PDは、面形状を部品実装面の中央に向かって先端部分のみ斜面にしたことを特徴とする。この電極PD,PDにより、部品実装面に、ボイド誘導路(ad)を形成している。
【0029】
本発明の第7実施形態に於ける電極構造を図9に示す。この図9に示す第7実施形態の電極PE,PEは、面形状を部品実装面の中央に向かって先端部分を除き斜面にしたことを特徴とする。この電極PE,PEにより、部品実装面に、ボイド誘導路(ae)を形成している。
【0030】
本発明の第8実施形態に於ける電極構造を図10に示す。この図10に示す第8実施形態の電極PF,PFは、面形状を部品実装面の中央に向かって尖端部を有する形状にしたことを特徴とする。この電極PF,PFにより、部品実装面に、ボイド誘導路(af)を形成している。
【0031】
本発明の第9実施形態に於ける電極構造を図11(a)に示す。この図11(a)に示す第9実施形態の電極PGa,PGaは、面形状を部品実装面の中央に向かって半円状にしたことを特徴とする。この電極PGa,PGaにより、部品実装面に、ボイド誘導路(ag)を形成している。
【0032】
本発明の第10実施形態に於ける電極構造を図11(b)に示す。この図11(b)に示す第10実施形態の電極PGb,PGbは、面形状を部品実装面の中央に向かって凸円弧にしたことを特徴とする。この電極PGa,PGaにより、部品実装面に、ボイド誘導路(ag)を形成している。
【0033】
本発明の第11実施形態に於ける電極構造を図12に示す。この図12に示す第11実施形態の電極PH,PHは、面形状を部品実装面の中央に向かって円弧状にしたことを特徴とする。この電極PH,PHにより、部品実装面に、ボイド誘導路(ah)を形成している。
【0034】
本発明の第12実施形態に於ける電極構造を図13に示す。この図13に示す第12実施形態の電極PI1,PI2は、面形状を部品実装面の中央に向かって凸円弧と凹円弧の組み合わせにしたことを特徴とする。この電極PI1,PI2により、部品実装面に、ボイド誘導路(ai)を形成している。
【0035】
本発明の第13実施形態に於ける電極構造を図14に示す。この図14に示す第13実施形態の電極PJ,PJは、面形状を部品実装面の中央に向かって凹円弧にしたことを特徴とする。この電極PJ,PJにより、部品実装面に、ボイド誘導路(aj)を形成している。
【0036】
本発明の第14実施形態に於ける電極構造を図15に示す。この図15に示す第14実施形態は、本発明に係る電極構造を半導体パッケージの実装面に適用したもので、この例では、例えばQFP(quad flat package)等の多ピン電子部品20Aの各端子に、はんだ接合する電極PK,PK,…をそれぞれ楕円形状として、電子部品20Aの下面に発生したボイドが隣接する電極PK,PK相互の間から抜け易い電極構造としている。
【0037】
本発明の第15実施形態に於ける電極構造を図16に示す。この図16に示す第15実施形態は、上記図15に示す第14実施形態と同様に本発明に係る電極構造を半導体パッケージの実装面に適用したもので、この例では、例えばSOP(small outline package)等の多ピン電子部品20Bの各端子に、はんだ接合する電極PL,PL,…をそれぞれ楕円形状として、電子部品20Bの下面に発生したボイドが隣接する電極PL,PL相互の間から抜け易い電極構造としている。
【0038】
なお、本発明のプリント配線板に於ける電極構造は、上記した実施形態に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…ポータブルコンピュータ、2…本体、3…表示部筐体、4…ポインティングデバイス、5…キーボード、6…表示デバイス、8…プリント回路板(マザーボード)、10…基材、12…電極、13…ボイド誘導溝、14…開口部、15…はんだ接合部、20…電子部品、21…端子、30…層間樹脂、V…ボイド、P…導体パターン、PA,PB,PC,PD,PE,PF,PGa,PGb,PH,PI1,PI2,PJ,PK,PL…電極、aa,ab,ac,ad,ae,af,ag,ah,ai,aj…ボイド誘導路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装面を含むパターン形成面を具備する基材と、
前記パターン形成面に形成された2つの電極と、
前記2つの電極に接続される電子部品と、
を具備し、
前記2つの電極の対向する部分は前記部品実装面の中央に向かって尖鋭部が形成され、
前記2つの電極は前記部品実装面の中央に向かって漸次高さが低くなるプリント配線板。
【請求項2】
部品実装面を含むパターン形成面を具備する基材と、
前記パターン形成面に形成された2つの電極と、
前記2つの電極に接続される電子部品と、
を具備し、
前記2つの電極の対向する部分は前記部品実装面の中央に向かって円弧が形成され、
前記2つの電極は前記部品実装面の中央に向かって漸次高さが低くなるプリント配線板。
【請求項3】
部品実装面を含むパターン形成面を具備する基材と、
前記パターン形成面に形成された2つの電極と、
前記2つの電極に接続される電子部品と、
を具備し、
前記2つの電極の対向する部分は一方に前記部品実装面の中央に向かって凸部が形成され、他方に凹部が形成され、
前記2つの電極は前記部品実装面の中央に向かって漸次高さが低くなるプリント配線板。
【請求項4】
部品実装面を含むパターン形成面を具備する基材と、
前記パターン形成面に形成された2つの電極と、
前記2つの電極に接続される電子部品と、
を具備し、
前記2つの電極の対向する部分は凹円弧が形成され、
前記2つの電極は前記部品実装面の中央に向かって漸次高さが低くなるプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−209594(P2012−209594A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160209(P2012−160209)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【分割の表示】特願2006−84091(P2006−84091)の分割
【原出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】