プレキャスト部材
【課題】 接合状態における鉄筋連結強度を高めたり、コンクリート強度を高めることができるプレキャスト部材を提供する。
【解決手段】 プレキャスト部材10は、コンクリート11に埋め込まれて垂直に延びる複数の鉄筋12、13および筒形状の複数の継手14を備えている。鉄筋12,13の下端部は、継手14の内部空間14aの上部に入り込むか、又は継手14の上端部に螺合している。プレキャスト部材10は、排気路16,17を有している。排気路16,17の内端が継手14の内部空間14aの上端部に連なり、外端がコンクリート11の側面に開口している。プレキャスト部材10を仕口部20に接合する際には、継手14の内部空間14aに、仕口部20から上方に突出する複数の鉄筋22,23を入り込ませてモルタル40充填する。排気路16a,17aは、外端に向かって上向きをなす勾配を有し、その外端が内端より高くなっている。
【解決手段】 プレキャスト部材10は、コンクリート11に埋め込まれて垂直に延びる複数の鉄筋12、13および筒形状の複数の継手14を備えている。鉄筋12,13の下端部は、継手14の内部空間14aの上部に入り込むか、又は継手14の上端部に螺合している。プレキャスト部材10は、排気路16,17を有している。排気路16,17の内端が継手14の内部空間14aの上端部に連なり、外端がコンクリート11の側面に開口している。プレキャスト部材10を仕口部20に接合する際には、継手14の内部空間14aに、仕口部20から上方に突出する複数の鉄筋22,23を入り込ませてモルタル40充填する。排気路16a,17aは、外端に向かって上向きをなす勾配を有し、その外端が内端より高くなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱や壁等を構成する鉄筋コンクリート製のプレキャスト部材に関し、特にその下端部に設けられた接合構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プレキャスト柱(プレキャスト部材)を建造物の下側構成部に接合するための構造が開示されている。この接合構造は、コンクリートの下端部に垂直をなして埋め込まれた筒形状の複数の継手を備えている。継手の下端(開口端)はコンクリートの下面側に開放されている。継手の内部空間の上部には、プレキャスト柱の鉄筋の下端部が入り込んでいる。
【0003】
上記プレキャスト柱は、さらに、複数の排気路と1つの注入路とを備えている。上記排気路の内端は継手の内部空間の上端部に連なり、その外端はコンクリートの外周面に開口している。また、注入路の内端は、選択された継手の内部空間の下端部に連なり、その外端はコンクリートの外周面に開口している。これら排気路と注入路は水平をなしている。
【0004】
上記プレキャスト柱を建造物の下側構成部に接合する際には、プレキャスト柱を吊り下げて下側構成部の上方に位置させ、プレキャスト柱の継手の内部空間の下部に、下側構成部から上方に突出する鉄筋の上端部を入り込ませるとともに、プレキャスト柱の下面と下側構成部の上面との間に目地空間となる隙間を形成する。この状態で、上記注入路からモルタル(充填材)を注入する。これによりモルタルは、注入路が接続された継手を介して目地空間を満たし、さらに全ての継手の内部空間を満たし、さらに排気路を通って、その外端に達する。このモルタル充填の過程で、目地空間や継手の内部空間のエアは、排気路から排出される。
【0005】
上記のようにして、プレキャスト柱が下側構成部に接合される。プレキャスト柱の鉄筋の下端部と下側構成部の鉄筋の上端部とは、継手および継手内充填されたモルタルを介して連結される。
【特許文献1】特開平9−177249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のプレキャスト柱では、排気路が水平をなしているため、継手の内部空間の上端部や排気路の上側にエアが残ったままの状態で、モルタルが排気路の外端に達する可能性があった。特許文献1における鉄筋同士の連結強度は規格上十分なものであるが、さらに連結強度を向上を図る際に、上記継手の内部空間上端部の残留エアが支障となる。同様に、コンクリート強度は規格上十分なものであるが、さらにコンクリート強度の向上を図る際に、上記排気路の残留エアが支障となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のプレキャスト部材は、(a)コンクリートと、(b)内部空間を有し、上記コンクリートの下端部に垂直をなして埋め込まれ、内部空間の開口端がコンクリートの下面側に開放された筒形状の複数の継手と、(c)上記コンクリートに埋め込まれて垂直に延び、下端部が上記継手の内部空間の上部に入り込むか又は継手の上端部に螺合された複数の鉄筋と、(d)上記コンクリートに形成され、内端が各継手の内部空間の上端部に連なり、外端が上記コンクリートの外周面に開口する複数の排気路と、 を備え、上記継手の内部空間に、下側構成部から上方に突出する複数の鉄筋を入り込ませて充填材を充填することにより、下側構成部に接合されるプレキャスト部材において、上記複数の排気路のうちの少なくとも一部の排気路が、外端に向かって上向きをなす勾配を有し、当該排気路の外端が内端より高いことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、排気路が上向きの勾配を有するので、充填材が継手の内部空間に充填される際に、継手の内部空間のエア抜きを良好に行なえ、充填材を確実に充填することができる。その結果、鉄筋同士の連結強度をより一層高めることができる。また、排気路内でのエア抜きも良好に行なえ、排気路内に充填材を確実に充填できるので、コンクリートの強度をより一層高めることができる。
【0009】
好ましくは、複数の鉄筋が、コンクリートの外周面に沿って配置された複数の主筋と、これら主筋よりも内側に配置された複数の芯筋とを有し、これら芯筋を挿入ないしは螺合させた継手に連なる排気路が、上記勾配を有する。これによれば、芯筋を挿入ないしは螺合させた継手に連なる排気路が長いにも拘わらず、良好にエア抜きが行なわれる。
好ましくは、上記排気路の全てが上向きの勾配を有している。これにより、全ての継手における鉄筋同士の連結強度を向上させることができ、コンクリート強度を最大限に高めることができる。
好ましくは、上記排気路がほぼ全長にわたり上向きの勾配を有している。これにより、エア抜き効果を最大限発揮することができる。この場合、上記排気路を傾斜した1本の直管により形成されば、構成を簡略化することができる。
【0010】
好ましくは、上記継手には、中心軸線が水平をなし上記内部空間の上端部に連なる連結口部が形成され、上記排気路を形成する管は、その内端から水平に延びる短い第1部分と、この第1部分より長く形成され外端に向かって上向きの勾配をなして延びる第2部分とを有し、この管の内端が、上記連結口部に挿入接続される。これによれば、継手の連結口部への管の第1部分の接続を確実に行なえ、しかも、上向き勾配の利益を享受することができる。
好ましくは、上記排気路を形成する管の第1,第2部分が別の直管からなり、これら第1,第2部分の直管がエルボ管により連結されている。これによれば、エルボ管を用いることにより、管の曲げ加工が不要となる。
【0011】
好ましくは、さらに、上記コンクリートには上記排気路より下側に位置する複数の下側通路が形成され、これら下側通路の内端が上記複数の継手の内部空間にそれぞれ連なり、外端が上記コンクリートの外周面に開口し、上記複数の下側通路のうち少なくとも一部の下側通路が、外端に向かって上向きをなす勾配を有し、当該下側通路の外端が内端より高い。複数の下側通路は、例えば選択された1本が充填材の注入路となり、他が排気路として提供される場合がある。この際、排気路となる下側通路に勾配を持たせることにより、エア抜きを良好に行なうことができる。
好ましくは、上記下側通路が共通の継手に接続された排気路と実質的に同じ構造をなしている。これにより、上記排気通路の構造に伴なう利益を享受することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エア抜きを良好に行なえるので、鉄筋同士の連結強度をより一層高めることができるとともに、コンクリートの強度をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5を参照しながら説明する。図1に示すように、プレキャスト柱10(鉄筋コンクリート製のプレキャスト部材)は、断面正方形をなすコンクリート11と、このコンクリート11内に埋め込まれた多数の鉄筋とを、基本構造として備えている。
【0014】
本実施形態のプレキャスト柱10は、鉄筋として、コンクリート11の外周面に沿って並べられた複数例えば12本の垂直な主筋12と、それより内側に配置された複数例えば4本の垂直な芯筋13とを備えている。さらに主筋12には間隔をおいて環状の剪断補強筋(図示しない)が巻かれている。
【0015】
プレキャスト柱10は、さらに上記主筋12および芯筋13の合計数と同数の継手14を備えている。これら継手14は、垂直な筒形状をなして、コンクリート11の下端部に埋め込まれている。継手14の下端(開口端)は、コンクリート11の下面側に開放されている。
【0016】
上記継手14の内部空間14aの上部には、対応する主筋12または芯筋13の下端部が入り込んでいる。継手14の上端部には、ゴムからなる環状のシール部材15が嵌め込まれている。このシール部材15は、プレキャスト柱10の製造時に、上記継手14の上端部と上記主筋12または芯筋13との間からセメントが入り込んでくるのを阻止するためのものである。
【0017】
図4,図5に示すように、上記継手14の上下端部には、径方向に突出する短筒形状の連結口部14x,14yがそれぞれ形成されている。これら連結口部14x,14yの中心軸線は水平をなし継手14の中心軸線と直交している。連結口部14xは、継手14の内部空間14aの上端部に連なっている。連結口部14yは、連結口部14xの真下に位置し、継手14の下端から所定高さにおいて内部空間14aに連なっている。
【0018】
主筋12の下端部が入り込んだ継手14の連結口部14xには、短い直管16の内端が挿入接続されている。この管16の外端は、コンクリート11の側面(外周面)に開口している。
同様に、芯筋13の下端部が入り込んだ継手14の連結口部14xにも、直管17の内端が挿入接続されており、その外端がコンクリート11の側面に開口している。
【0019】
芯筋13が主筋12より内側に配置されているので、管17は管16より長い。図3に示すように、管16はコンクリート11の側面と直交するように延びているが、管17は、主筋12が入り込んだ継手14との干渉を避けるために、コンクリート11の側面に対して斜めに延びている。
管16,17の内部空間は、後述の作用をなす排気路16a,17aを提供している。
【0020】
主筋12の下端部が入り込んだ継手14の連結口部14yには、短い直管18の内端が挿入接続されており、その外端が、コンクリート11の側面に開口している。同様に、芯筋13の下端部が入り込んだ継手14の連結口部14yにも、直管19の内端が挿入接続されており、その外端が、コンクリート11の側面に開口している。
管18,19の寸法,上から見た配置は、管16,17と同様であり、管16、17も真下に配置されている。管18,19の内部空間は後述の作用をなす下側通路18a,19aを提供している。
【0021】
管16〜19は、例えば塩化ビニル樹脂により形成されている。管16〜19は外端に向かって高くなるように傾斜している。換言すれば、排気路16a,17a,下側通路18a,19aは、外端に向かって上がり勾配を有しており、その外端はその内端より高くなっている。排気路16a,17a,下側通路18a,19aの外端と内端の高低差は、排気路16a,17aの径の1/2以上,好ましくは径以上とする。排気路16a,17a,下側通路18a,19aの角度は、1〜20°程度とする。本実施形態では、全ての通路16a〜19aを等しい角度にしている。
【0022】
上記構成をなすプレキャスト柱10は、図1に示す仕口部20(建造物の下側構成部)に接合される。この仕口部20は、上記と同じ構成をなす下階のプレキャスト柱と梁(いずれも図示せず)が接合される部位であり、下階のプレキャスト柱の上面と梁の端面との間に形成された空間にコンクリート21を打設することにより構成されている。下階のプレキャスト柱の主筋22と芯筋23は、このコンクリート21に埋設され、その上端部がコンクリート21の上面から突出している。
【0023】
プレキャスト柱10を吊り下げ支持した状態で、その継手14の内部空間14aの下部に、上記主筋22,23の上端部が入り込むように、下降させる。これにより、継手14内において、主筋12,22同士がほぼ一直線をなして対峙し、芯筋13,23同士がほぼ一直線をなして対峙する。
【0024】
コンクリート21の上面には予めスペーサ(図示しない)が載せられており、このスペーサにプレキャスト柱10が載ることにより、図2,図4に示すように、コンクリート11の下面とコンクリート21の上面との間に狭い目地空間30が形成される。
【0025】
次に、プレキャスト柱10のコンクリート11の下端部側面に沿うようにして、コンクリート21の上面に型枠35を設置し、これにより、上記目地空間30を塞ぐ。
【0026】
次に、モルタル40(充填材)の充填を行なう。なお、プレキャスト柱10の管16〜19の外端開口(排気路16a,17a,下側通路18a,19aの外端開口)は、予め栓36により全て塞がれている。この栓36は例えばゴム製であり、切欠ないしは貫通孔からなるエア抜き通路を有している。
【0027】
上記複数の管18,19のうちの選択された1つの管、例えば管18に嵌められた栓36を取り外し、ここにモルタル注入器のノズルを押し当て、圧力をかけながらモルタル40を注入する。モルタル40は、この選択された管18の下側通路18aすなわち注入路を通って、1つの継手14の内部空間14aを通り、目地空間30を満たす。さらに注入を続けると、モルタル40は選択されなかった下側通路18a,19aを満たす。なお、この選択されなかった下側通路18a,19aは、排気路16a,17aと同様に、目地空間30および継手14の内部空間14aのエアを排出する排気路の役割を満たす。
さらに注入を続けると、モルタル40は、全ての継手14の内部空間14aを満たした後、全ての排気路16a,17aを満たす。
【0028】
モルタル40が排気路16a,17aを満たし終えると、これら排気路16a,17aに装着された栓36のエア抜き通路からモルタル40が漏れる。作業者はこのモルタル40の漏れを見て注入を終了させ、注入ノズルを選択された下側通路18aから外し、この下側通路18aを栓36で塞ぐ。
【0029】
上記のようにして充填されたモルタル40が硬化することにより、プレキャスト柱10の仕口部20への接合が完了する。なお、モルタル40の硬化後、全ての栓36が取り外される。
【0030】
上記接合状態で、主筋12,22同士が継手14および継手14内のモルタル40を介して連結され、同様に、芯筋13,23同士も継手14および継手14内のモルタル40を介して連結される。
【0031】
上記モルタル40の充填の過程で、目地空間30内のエアおよび継手14の内部空間14aのエアは、モルタル40に押し上げられ、排気路16a,17aから排出される。排気路16a,17aは、外端に向かって高くなる上り勾配を有しているため、継手14の内部空間14aの上端部および排気路16a,17aをモルタル40が通る際に、エア溜まりが生じるのを確実に防止できる。そのため、継手14内にエアが残らずモルタル40で満たされるため、主筋12,22同士,芯筋13,23同士の連結強度をより一層高めることができる。また、排気路16a,17aにエアが残らずモルタル40で満たすことができるので、圧縮荷重を負担するコンクリート11の断面積が減じるのを防止でき、コンクリート11の強度をより一層高めることができる。
【0032】
本実施形態では、下側通路18a,19aも外端に向かって高くなる上り勾配を有しているので、注入路として選択されず排気路として機能する下側通路18a,19aでも、良好なエア抜きが行なえる。また、注入路となる下側通路18aはモルタル注入方向に対して下り勾配となるので、注入も円滑に行なうことができる。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これら実施形態において、先行する実施形態に対応する構成部については、図中同符号を付してその詳細な説明を省略する。
第1実施形態では、中心軸線が水平をなす連結口部14xに傾斜した管16,17の内端を挿入接続させているが、図6に示す第2実施形態では、連結口部14x’の中心軸線は、管16,17の傾斜と同角度で傾斜している。これにより、管16,17の内端の支持を強固にすることができる。図示しないが、下側の連結口部についても同様である。
【0034】
図6の第2実施形態では、継手14の連結口部14x’の 中心軸線が管16、17に対応して傾斜するため、継手14は汎用性のある構造ではない。
図7,図8に示す第3実施形態では、第1実施形態と同様に継手14の連結口部14x,14yの中心軸線は水平をなしている。芯筋13が入り込んだ継手14に接続される管117,119は、加熱状態で折り曲げ加工されており、内端から水平に延びる短い直管状の第1部分117x,119xと、第1部分117x,119xから外端に傾斜して延びる直管状の第2部分117y,119yとを有している。第1部分117x,119xが水平であるので、その内端は、中心軸線が水平をなす連結口部14x,14yにしっかりと挿入支持される。排気路117a,119aは、第2部分117y,119yの傾斜により、上がり勾配を確保できる。主筋12が入り込んだ継手14に接続される管も、同様にして折り曲げてもよい。
【0035】
図9に示す第4実施形態では、連結口部14x、14yに接続される管117’,119’は、折り曲げ加工するのではなく、互いに別体をなす直管からなる第1部分117x’,119x’と第2部分117y’,119y’を、エルボ管200で連結することにより構成されている。第4実施形態は、第3実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0036】
図10に示す第5実施形態では、上記エルボ管200の特徴を最大限に生かしている。このエルボ管200により、第4実施形態と同様に管117’の排気路117aに上がり勾配を持たせることができるばかりか、上から見ても第1部分117x’と第2部分117y’の方向を変えることができる。その結果、排気路117aの配置,密度等を適宜変えることができる。また、継手がより多く配置される場合には、エルボ管200を用いて管117’の第2部分117y’の角度を異ならせる等により、排気路同士の干渉を回避することもできる。
第5実施形態において、管119’は、管117’と同一構造をなし、その真下に配置されているが、図示,詳細な説明を省略する。
【0037】
図11に示す第6実施形態では、プレキャスト柱10の主筋(図示しない),芯筋13がネジ鉄筋からなる。継手114の上端部内周には雌ネジ部114bが形成されていて、主筋や芯筋13の下端部が螺合されている。継手114の内部空間114aには仕口部20の鉄筋23の上端部が深く入り込むようになっている。この継手114を用いた場合も、第1〜第5実施形態の構造を適用することができる。
【0038】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態が可能である。例えば、長い排気路17aにのみ上り勾配を持たせ、短い排気路16aは水平であってもよい。排気路が長い場合にはエア溜まりが生じやすく、それ故、上り勾配による効果が顕著になるからである。
排気路を形成する管は、耐圧フレキシブルホースであってもよい。この場合、湾曲しながら上り勾配を有する排気路を形成することもできる。
排気路の中間部を上り勾配にし、内端近傍,外端近傍を水平にしてもよいし、外端近傍を水平にし、他の部分を上り勾配にしてもよい。
【0039】
上記の全ての実施形態において、下側通路を排気路と同一構造にしたが、下側通路は、水平であってもよい。
【0040】
継手の下端は、コンクリート下面より若干上に位置してもよい。この場合、継手の下端開口がコンクリートの下面に形成された穴に連なる。
栓36は、モルタル注入開始時には装着せず、注入路や排気路からモルタルが漏れてきたときに装着するようにしてもよい。
【0041】
上記実施形態に示すように、モルタルを目地空間を介して全ての継手に充填する場合には、注入路(下側通路)は1つでもよく、この注入路を、選択された1つの継手に接続するようにしてもよい。
モルタルを目地空間を介さずに継手に充填する場合には、各継手に接続された注入路(下側通路)からモルタルを注入する。
本発明はプレキャスト柱のみならず、プレキャスト壁(プレキャスト部材)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態において、プレキャスト柱を仕口部に接合する前の状態を示す縦断面図である。
【図2】同実施形態において、モルタルを用いてプレキャスト柱を仕口部に接合した直後の状態を示す縦断面図である。
【図3】図2におけるIII―III線に沿う横断面図である。
【図4】図1においてプレキャスト柱の芯筋を接続するための継手と、排気路および下側通路を拡大して示す縦断面図である。
【図5】同実施形態において、排気路を形成する管と継手との接続部を示す拡大縦断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す図5相当図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示す図4相当図である。
【図8】同第3実施形態を示す図5相当図である。
【図9】本発明の第4実施形態を示す図4相当図である。
【図10】本発明の第5実施形態を示す図3相当図である。
【図11】本発明の第6実施形態を示す図4相当図である。
【符号の説明】
【0043】
10 プレキャスト柱(プレキャスト部材)
11 コンクリート
12 主筋(鉄筋)
13 芯筋(鉄筋)
14 継手
14a 内部空間
16,17,117,117’ 管
16a,17a,117a 排気路
18,19,119,119’ 管
18a,19a,119a 下側通路
20 仕口部(建造物の下側構成部)
21 コンクリート
22 主筋(鉄筋)
23 芯筋(鉄筋)
40 モルタル
114b 雌ネジ部
117x,117x’,119x,119x’ 第1部分
117y,117y’,119y,119y’ 第2部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱や壁等を構成する鉄筋コンクリート製のプレキャスト部材に関し、特にその下端部に設けられた接合構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プレキャスト柱(プレキャスト部材)を建造物の下側構成部に接合するための構造が開示されている。この接合構造は、コンクリートの下端部に垂直をなして埋め込まれた筒形状の複数の継手を備えている。継手の下端(開口端)はコンクリートの下面側に開放されている。継手の内部空間の上部には、プレキャスト柱の鉄筋の下端部が入り込んでいる。
【0003】
上記プレキャスト柱は、さらに、複数の排気路と1つの注入路とを備えている。上記排気路の内端は継手の内部空間の上端部に連なり、その外端はコンクリートの外周面に開口している。また、注入路の内端は、選択された継手の内部空間の下端部に連なり、その外端はコンクリートの外周面に開口している。これら排気路と注入路は水平をなしている。
【0004】
上記プレキャスト柱を建造物の下側構成部に接合する際には、プレキャスト柱を吊り下げて下側構成部の上方に位置させ、プレキャスト柱の継手の内部空間の下部に、下側構成部から上方に突出する鉄筋の上端部を入り込ませるとともに、プレキャスト柱の下面と下側構成部の上面との間に目地空間となる隙間を形成する。この状態で、上記注入路からモルタル(充填材)を注入する。これによりモルタルは、注入路が接続された継手を介して目地空間を満たし、さらに全ての継手の内部空間を満たし、さらに排気路を通って、その外端に達する。このモルタル充填の過程で、目地空間や継手の内部空間のエアは、排気路から排出される。
【0005】
上記のようにして、プレキャスト柱が下側構成部に接合される。プレキャスト柱の鉄筋の下端部と下側構成部の鉄筋の上端部とは、継手および継手内充填されたモルタルを介して連結される。
【特許文献1】特開平9−177249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のプレキャスト柱では、排気路が水平をなしているため、継手の内部空間の上端部や排気路の上側にエアが残ったままの状態で、モルタルが排気路の外端に達する可能性があった。特許文献1における鉄筋同士の連結強度は規格上十分なものであるが、さらに連結強度を向上を図る際に、上記継手の内部空間上端部の残留エアが支障となる。同様に、コンクリート強度は規格上十分なものであるが、さらにコンクリート強度の向上を図る際に、上記排気路の残留エアが支障となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のプレキャスト部材は、(a)コンクリートと、(b)内部空間を有し、上記コンクリートの下端部に垂直をなして埋め込まれ、内部空間の開口端がコンクリートの下面側に開放された筒形状の複数の継手と、(c)上記コンクリートに埋め込まれて垂直に延び、下端部が上記継手の内部空間の上部に入り込むか又は継手の上端部に螺合された複数の鉄筋と、(d)上記コンクリートに形成され、内端が各継手の内部空間の上端部に連なり、外端が上記コンクリートの外周面に開口する複数の排気路と、 を備え、上記継手の内部空間に、下側構成部から上方に突出する複数の鉄筋を入り込ませて充填材を充填することにより、下側構成部に接合されるプレキャスト部材において、上記複数の排気路のうちの少なくとも一部の排気路が、外端に向かって上向きをなす勾配を有し、当該排気路の外端が内端より高いことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、排気路が上向きの勾配を有するので、充填材が継手の内部空間に充填される際に、継手の内部空間のエア抜きを良好に行なえ、充填材を確実に充填することができる。その結果、鉄筋同士の連結強度をより一層高めることができる。また、排気路内でのエア抜きも良好に行なえ、排気路内に充填材を確実に充填できるので、コンクリートの強度をより一層高めることができる。
【0009】
好ましくは、複数の鉄筋が、コンクリートの外周面に沿って配置された複数の主筋と、これら主筋よりも内側に配置された複数の芯筋とを有し、これら芯筋を挿入ないしは螺合させた継手に連なる排気路が、上記勾配を有する。これによれば、芯筋を挿入ないしは螺合させた継手に連なる排気路が長いにも拘わらず、良好にエア抜きが行なわれる。
好ましくは、上記排気路の全てが上向きの勾配を有している。これにより、全ての継手における鉄筋同士の連結強度を向上させることができ、コンクリート強度を最大限に高めることができる。
好ましくは、上記排気路がほぼ全長にわたり上向きの勾配を有している。これにより、エア抜き効果を最大限発揮することができる。この場合、上記排気路を傾斜した1本の直管により形成されば、構成を簡略化することができる。
【0010】
好ましくは、上記継手には、中心軸線が水平をなし上記内部空間の上端部に連なる連結口部が形成され、上記排気路を形成する管は、その内端から水平に延びる短い第1部分と、この第1部分より長く形成され外端に向かって上向きの勾配をなして延びる第2部分とを有し、この管の内端が、上記連結口部に挿入接続される。これによれば、継手の連結口部への管の第1部分の接続を確実に行なえ、しかも、上向き勾配の利益を享受することができる。
好ましくは、上記排気路を形成する管の第1,第2部分が別の直管からなり、これら第1,第2部分の直管がエルボ管により連結されている。これによれば、エルボ管を用いることにより、管の曲げ加工が不要となる。
【0011】
好ましくは、さらに、上記コンクリートには上記排気路より下側に位置する複数の下側通路が形成され、これら下側通路の内端が上記複数の継手の内部空間にそれぞれ連なり、外端が上記コンクリートの外周面に開口し、上記複数の下側通路のうち少なくとも一部の下側通路が、外端に向かって上向きをなす勾配を有し、当該下側通路の外端が内端より高い。複数の下側通路は、例えば選択された1本が充填材の注入路となり、他が排気路として提供される場合がある。この際、排気路となる下側通路に勾配を持たせることにより、エア抜きを良好に行なうことができる。
好ましくは、上記下側通路が共通の継手に接続された排気路と実質的に同じ構造をなしている。これにより、上記排気通路の構造に伴なう利益を享受することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エア抜きを良好に行なえるので、鉄筋同士の連結強度をより一層高めることができるとともに、コンクリートの強度をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5を参照しながら説明する。図1に示すように、プレキャスト柱10(鉄筋コンクリート製のプレキャスト部材)は、断面正方形をなすコンクリート11と、このコンクリート11内に埋め込まれた多数の鉄筋とを、基本構造として備えている。
【0014】
本実施形態のプレキャスト柱10は、鉄筋として、コンクリート11の外周面に沿って並べられた複数例えば12本の垂直な主筋12と、それより内側に配置された複数例えば4本の垂直な芯筋13とを備えている。さらに主筋12には間隔をおいて環状の剪断補強筋(図示しない)が巻かれている。
【0015】
プレキャスト柱10は、さらに上記主筋12および芯筋13の合計数と同数の継手14を備えている。これら継手14は、垂直な筒形状をなして、コンクリート11の下端部に埋め込まれている。継手14の下端(開口端)は、コンクリート11の下面側に開放されている。
【0016】
上記継手14の内部空間14aの上部には、対応する主筋12または芯筋13の下端部が入り込んでいる。継手14の上端部には、ゴムからなる環状のシール部材15が嵌め込まれている。このシール部材15は、プレキャスト柱10の製造時に、上記継手14の上端部と上記主筋12または芯筋13との間からセメントが入り込んでくるのを阻止するためのものである。
【0017】
図4,図5に示すように、上記継手14の上下端部には、径方向に突出する短筒形状の連結口部14x,14yがそれぞれ形成されている。これら連結口部14x,14yの中心軸線は水平をなし継手14の中心軸線と直交している。連結口部14xは、継手14の内部空間14aの上端部に連なっている。連結口部14yは、連結口部14xの真下に位置し、継手14の下端から所定高さにおいて内部空間14aに連なっている。
【0018】
主筋12の下端部が入り込んだ継手14の連結口部14xには、短い直管16の内端が挿入接続されている。この管16の外端は、コンクリート11の側面(外周面)に開口している。
同様に、芯筋13の下端部が入り込んだ継手14の連結口部14xにも、直管17の内端が挿入接続されており、その外端がコンクリート11の側面に開口している。
【0019】
芯筋13が主筋12より内側に配置されているので、管17は管16より長い。図3に示すように、管16はコンクリート11の側面と直交するように延びているが、管17は、主筋12が入り込んだ継手14との干渉を避けるために、コンクリート11の側面に対して斜めに延びている。
管16,17の内部空間は、後述の作用をなす排気路16a,17aを提供している。
【0020】
主筋12の下端部が入り込んだ継手14の連結口部14yには、短い直管18の内端が挿入接続されており、その外端が、コンクリート11の側面に開口している。同様に、芯筋13の下端部が入り込んだ継手14の連結口部14yにも、直管19の内端が挿入接続されており、その外端が、コンクリート11の側面に開口している。
管18,19の寸法,上から見た配置は、管16,17と同様であり、管16、17も真下に配置されている。管18,19の内部空間は後述の作用をなす下側通路18a,19aを提供している。
【0021】
管16〜19は、例えば塩化ビニル樹脂により形成されている。管16〜19は外端に向かって高くなるように傾斜している。換言すれば、排気路16a,17a,下側通路18a,19aは、外端に向かって上がり勾配を有しており、その外端はその内端より高くなっている。排気路16a,17a,下側通路18a,19aの外端と内端の高低差は、排気路16a,17aの径の1/2以上,好ましくは径以上とする。排気路16a,17a,下側通路18a,19aの角度は、1〜20°程度とする。本実施形態では、全ての通路16a〜19aを等しい角度にしている。
【0022】
上記構成をなすプレキャスト柱10は、図1に示す仕口部20(建造物の下側構成部)に接合される。この仕口部20は、上記と同じ構成をなす下階のプレキャスト柱と梁(いずれも図示せず)が接合される部位であり、下階のプレキャスト柱の上面と梁の端面との間に形成された空間にコンクリート21を打設することにより構成されている。下階のプレキャスト柱の主筋22と芯筋23は、このコンクリート21に埋設され、その上端部がコンクリート21の上面から突出している。
【0023】
プレキャスト柱10を吊り下げ支持した状態で、その継手14の内部空間14aの下部に、上記主筋22,23の上端部が入り込むように、下降させる。これにより、継手14内において、主筋12,22同士がほぼ一直線をなして対峙し、芯筋13,23同士がほぼ一直線をなして対峙する。
【0024】
コンクリート21の上面には予めスペーサ(図示しない)が載せられており、このスペーサにプレキャスト柱10が載ることにより、図2,図4に示すように、コンクリート11の下面とコンクリート21の上面との間に狭い目地空間30が形成される。
【0025】
次に、プレキャスト柱10のコンクリート11の下端部側面に沿うようにして、コンクリート21の上面に型枠35を設置し、これにより、上記目地空間30を塞ぐ。
【0026】
次に、モルタル40(充填材)の充填を行なう。なお、プレキャスト柱10の管16〜19の外端開口(排気路16a,17a,下側通路18a,19aの外端開口)は、予め栓36により全て塞がれている。この栓36は例えばゴム製であり、切欠ないしは貫通孔からなるエア抜き通路を有している。
【0027】
上記複数の管18,19のうちの選択された1つの管、例えば管18に嵌められた栓36を取り外し、ここにモルタル注入器のノズルを押し当て、圧力をかけながらモルタル40を注入する。モルタル40は、この選択された管18の下側通路18aすなわち注入路を通って、1つの継手14の内部空間14aを通り、目地空間30を満たす。さらに注入を続けると、モルタル40は選択されなかった下側通路18a,19aを満たす。なお、この選択されなかった下側通路18a,19aは、排気路16a,17aと同様に、目地空間30および継手14の内部空間14aのエアを排出する排気路の役割を満たす。
さらに注入を続けると、モルタル40は、全ての継手14の内部空間14aを満たした後、全ての排気路16a,17aを満たす。
【0028】
モルタル40が排気路16a,17aを満たし終えると、これら排気路16a,17aに装着された栓36のエア抜き通路からモルタル40が漏れる。作業者はこのモルタル40の漏れを見て注入を終了させ、注入ノズルを選択された下側通路18aから外し、この下側通路18aを栓36で塞ぐ。
【0029】
上記のようにして充填されたモルタル40が硬化することにより、プレキャスト柱10の仕口部20への接合が完了する。なお、モルタル40の硬化後、全ての栓36が取り外される。
【0030】
上記接合状態で、主筋12,22同士が継手14および継手14内のモルタル40を介して連結され、同様に、芯筋13,23同士も継手14および継手14内のモルタル40を介して連結される。
【0031】
上記モルタル40の充填の過程で、目地空間30内のエアおよび継手14の内部空間14aのエアは、モルタル40に押し上げられ、排気路16a,17aから排出される。排気路16a,17aは、外端に向かって高くなる上り勾配を有しているため、継手14の内部空間14aの上端部および排気路16a,17aをモルタル40が通る際に、エア溜まりが生じるのを確実に防止できる。そのため、継手14内にエアが残らずモルタル40で満たされるため、主筋12,22同士,芯筋13,23同士の連結強度をより一層高めることができる。また、排気路16a,17aにエアが残らずモルタル40で満たすことができるので、圧縮荷重を負担するコンクリート11の断面積が減じるのを防止でき、コンクリート11の強度をより一層高めることができる。
【0032】
本実施形態では、下側通路18a,19aも外端に向かって高くなる上り勾配を有しているので、注入路として選択されず排気路として機能する下側通路18a,19aでも、良好なエア抜きが行なえる。また、注入路となる下側通路18aはモルタル注入方向に対して下り勾配となるので、注入も円滑に行なうことができる。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これら実施形態において、先行する実施形態に対応する構成部については、図中同符号を付してその詳細な説明を省略する。
第1実施形態では、中心軸線が水平をなす連結口部14xに傾斜した管16,17の内端を挿入接続させているが、図6に示す第2実施形態では、連結口部14x’の中心軸線は、管16,17の傾斜と同角度で傾斜している。これにより、管16,17の内端の支持を強固にすることができる。図示しないが、下側の連結口部についても同様である。
【0034】
図6の第2実施形態では、継手14の連結口部14x’の 中心軸線が管16、17に対応して傾斜するため、継手14は汎用性のある構造ではない。
図7,図8に示す第3実施形態では、第1実施形態と同様に継手14の連結口部14x,14yの中心軸線は水平をなしている。芯筋13が入り込んだ継手14に接続される管117,119は、加熱状態で折り曲げ加工されており、内端から水平に延びる短い直管状の第1部分117x,119xと、第1部分117x,119xから外端に傾斜して延びる直管状の第2部分117y,119yとを有している。第1部分117x,119xが水平であるので、その内端は、中心軸線が水平をなす連結口部14x,14yにしっかりと挿入支持される。排気路117a,119aは、第2部分117y,119yの傾斜により、上がり勾配を確保できる。主筋12が入り込んだ継手14に接続される管も、同様にして折り曲げてもよい。
【0035】
図9に示す第4実施形態では、連結口部14x、14yに接続される管117’,119’は、折り曲げ加工するのではなく、互いに別体をなす直管からなる第1部分117x’,119x’と第2部分117y’,119y’を、エルボ管200で連結することにより構成されている。第4実施形態は、第3実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0036】
図10に示す第5実施形態では、上記エルボ管200の特徴を最大限に生かしている。このエルボ管200により、第4実施形態と同様に管117’の排気路117aに上がり勾配を持たせることができるばかりか、上から見ても第1部分117x’と第2部分117y’の方向を変えることができる。その結果、排気路117aの配置,密度等を適宜変えることができる。また、継手がより多く配置される場合には、エルボ管200を用いて管117’の第2部分117y’の角度を異ならせる等により、排気路同士の干渉を回避することもできる。
第5実施形態において、管119’は、管117’と同一構造をなし、その真下に配置されているが、図示,詳細な説明を省略する。
【0037】
図11に示す第6実施形態では、プレキャスト柱10の主筋(図示しない),芯筋13がネジ鉄筋からなる。継手114の上端部内周には雌ネジ部114bが形成されていて、主筋や芯筋13の下端部が螺合されている。継手114の内部空間114aには仕口部20の鉄筋23の上端部が深く入り込むようになっている。この継手114を用いた場合も、第1〜第5実施形態の構造を適用することができる。
【0038】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態が可能である。例えば、長い排気路17aにのみ上り勾配を持たせ、短い排気路16aは水平であってもよい。排気路が長い場合にはエア溜まりが生じやすく、それ故、上り勾配による効果が顕著になるからである。
排気路を形成する管は、耐圧フレキシブルホースであってもよい。この場合、湾曲しながら上り勾配を有する排気路を形成することもできる。
排気路の中間部を上り勾配にし、内端近傍,外端近傍を水平にしてもよいし、外端近傍を水平にし、他の部分を上り勾配にしてもよい。
【0039】
上記の全ての実施形態において、下側通路を排気路と同一構造にしたが、下側通路は、水平であってもよい。
【0040】
継手の下端は、コンクリート下面より若干上に位置してもよい。この場合、継手の下端開口がコンクリートの下面に形成された穴に連なる。
栓36は、モルタル注入開始時には装着せず、注入路や排気路からモルタルが漏れてきたときに装着するようにしてもよい。
【0041】
上記実施形態に示すように、モルタルを目地空間を介して全ての継手に充填する場合には、注入路(下側通路)は1つでもよく、この注入路を、選択された1つの継手に接続するようにしてもよい。
モルタルを目地空間を介さずに継手に充填する場合には、各継手に接続された注入路(下側通路)からモルタルを注入する。
本発明はプレキャスト柱のみならず、プレキャスト壁(プレキャスト部材)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態において、プレキャスト柱を仕口部に接合する前の状態を示す縦断面図である。
【図2】同実施形態において、モルタルを用いてプレキャスト柱を仕口部に接合した直後の状態を示す縦断面図である。
【図3】図2におけるIII―III線に沿う横断面図である。
【図4】図1においてプレキャスト柱の芯筋を接続するための継手と、排気路および下側通路を拡大して示す縦断面図である。
【図5】同実施形態において、排気路を形成する管と継手との接続部を示す拡大縦断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す図5相当図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示す図4相当図である。
【図8】同第3実施形態を示す図5相当図である。
【図9】本発明の第4実施形態を示す図4相当図である。
【図10】本発明の第5実施形態を示す図3相当図である。
【図11】本発明の第6実施形態を示す図4相当図である。
【符号の説明】
【0043】
10 プレキャスト柱(プレキャスト部材)
11 コンクリート
12 主筋(鉄筋)
13 芯筋(鉄筋)
14 継手
14a 内部空間
16,17,117,117’ 管
16a,17a,117a 排気路
18,19,119,119’ 管
18a,19a,119a 下側通路
20 仕口部(建造物の下側構成部)
21 コンクリート
22 主筋(鉄筋)
23 芯筋(鉄筋)
40 モルタル
114b 雌ネジ部
117x,117x’,119x,119x’ 第1部分
117y,117y’,119y,119y’ 第2部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)コンクリートと、
(b)内部空間を有し、上記コンクリートの下端部に垂直をなして埋め込まれ、内部空間の開口端がコンクリートの下面側に開放された筒形状の複数の継手と、
(c)上記コンクリートに埋め込まれて垂直に延び、下端部が上記継手の内部空間の上部に入り込むか又は継手の上端部に螺合された複数の鉄筋と、
(d)上記コンクリートに形成され、内端が各継手の内部空間の上端部に連なり、外端が上記コンクリートの外周面に開口する複数の排気路と、
を備え、上記継手の内部空間に、下側構成部から上方に突出する複数の鉄筋を入り込ませて充填材を充填することにより、下側構成部に接合されるプレキャスト部材において、
上記複数の排気路のうちの少なくとも一部の排気路が、外端に向かって上向きをなす勾配を有し、当該排気路の外端が内端より高いことを特徴とするプレキャスト部材。
【請求項2】
複数の鉄筋が、コンクリートの外周面に沿って配置された複数の主筋と、これら主筋よりも内側に配置された複数の芯筋とを有し、これら芯筋を挿入ないしは螺合させた継手に連なる排気路が、上記勾配を有することを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材。
【請求項3】
上記排気路の全てが、上記勾配を有していることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材。
【請求項4】
上記排気路がほぼ全長にわたり上向きの勾配を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレキャスト部材。
【請求項5】
上記排気路が、傾斜した1本の直管により形成されていることを特徴とする請求項4に記載のプレキャスト部材。
【請求項6】
上記継手には、中心軸線が水平をなし上記内部空間の上端部に連なる連結口部が形成され、上記排気路を形成する管は、その内端から水平に延びる短い第1部分と、この第1部分より長く形成され外端に向かって上向きの勾配をなして延びる第2部分とを有し、この管の内端が、上記連結口部に挿入接続されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレキャスト部材。
【請求項7】
上記排気路を形成する管の第1,第2部分が別の直管からなり、これら第1,第2部分の直管がエルボ管により連結されていることを特徴とする請求項6に記載のプレキャスト部材。
【請求項8】
さらに、上記コンクリートには上記排気路より下側に位置する複数の下側通路が形成され、これら下側通路の内端が上記複数の継手の内部空間にそれぞれ連なり、外端が上記コンクリートの外周面に開口し、
上記複数の下側通路のうち少なくとも一部の下側通路が、外端に向かって上向きをなす勾配を有し、当該下側通路の外端が内端より高いことを特徴とする請求項1〜6に記載のプレキャスト部材。
【請求項9】
上記下側通路が共通の継手に接続された排気路と実質的に同じ構造をなしていることを特徴とする請求項8に記載のプレキャスト部材。
【請求項1】
(a)コンクリートと、
(b)内部空間を有し、上記コンクリートの下端部に垂直をなして埋め込まれ、内部空間の開口端がコンクリートの下面側に開放された筒形状の複数の継手と、
(c)上記コンクリートに埋め込まれて垂直に延び、下端部が上記継手の内部空間の上部に入り込むか又は継手の上端部に螺合された複数の鉄筋と、
(d)上記コンクリートに形成され、内端が各継手の内部空間の上端部に連なり、外端が上記コンクリートの外周面に開口する複数の排気路と、
を備え、上記継手の内部空間に、下側構成部から上方に突出する複数の鉄筋を入り込ませて充填材を充填することにより、下側構成部に接合されるプレキャスト部材において、
上記複数の排気路のうちの少なくとも一部の排気路が、外端に向かって上向きをなす勾配を有し、当該排気路の外端が内端より高いことを特徴とするプレキャスト部材。
【請求項2】
複数の鉄筋が、コンクリートの外周面に沿って配置された複数の主筋と、これら主筋よりも内側に配置された複数の芯筋とを有し、これら芯筋を挿入ないしは螺合させた継手に連なる排気路が、上記勾配を有することを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材。
【請求項3】
上記排気路の全てが、上記勾配を有していることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材。
【請求項4】
上記排気路がほぼ全長にわたり上向きの勾配を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレキャスト部材。
【請求項5】
上記排気路が、傾斜した1本の直管により形成されていることを特徴とする請求項4に記載のプレキャスト部材。
【請求項6】
上記継手には、中心軸線が水平をなし上記内部空間の上端部に連なる連結口部が形成され、上記排気路を形成する管は、その内端から水平に延びる短い第1部分と、この第1部分より長く形成され外端に向かって上向きの勾配をなして延びる第2部分とを有し、この管の内端が、上記連結口部に挿入接続されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレキャスト部材。
【請求項7】
上記排気路を形成する管の第1,第2部分が別の直管からなり、これら第1,第2部分の直管がエルボ管により連結されていることを特徴とする請求項6に記載のプレキャスト部材。
【請求項8】
さらに、上記コンクリートには上記排気路より下側に位置する複数の下側通路が形成され、これら下側通路の内端が上記複数の継手の内部空間にそれぞれ連なり、外端が上記コンクリートの外周面に開口し、
上記複数の下側通路のうち少なくとも一部の下側通路が、外端に向かって上向きをなす勾配を有し、当該下側通路の外端が内端より高いことを特徴とする請求項1〜6に記載のプレキャスト部材。
【請求項9】
上記下側通路が共通の継手に接続された排気路と実質的に同じ構造をなしていることを特徴とする請求項8に記載のプレキャスト部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−77743(P2007−77743A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269714(P2005−269714)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(390026723)東京鐵鋼株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(390026723)東京鐵鋼株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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