説明

プレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法及び制御システム

【課題】プレコート式回転ドラム型固液分離装置による固液分離において、処理対象液W1中の微小固形物でプレコート層PCを形成させることによって、濾過速度を調節し、安定的かつ効率よく固液分離を行う。
【解決手段】処理槽1と、処理対象液供給手段4と、外周壁がメッシュ材からなる固液分離ドラム2と、前記メッシュ材の外周面に付着・堆積した懸濁固形物からなるプレコート層PCを剥離回収する回収手段3と、固液分離ドラム2内へ通過した濾液W2を排出する濾液排出手段5を備えるプレコート式回転ドラム型固液分離装置において、固液分離ドラム2内の濾液W2を排出すると共に処理槽1へ処理対象液W1を供給するのに伴い、処理対象液W1の液面レベルWLが所定の高レベルに上昇したときに固液分離ドラム2の回転を開始又は加速し、液面レベルWLが所定の低レベルに下降したときに固液分離ドラム2の回転を停止又は減速する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面に固液分離処理対象液中の懸濁固形物によるプレコート層を形成するドラム状フィルタを用いて前記懸濁固形物を分離回収する固液分離装置の制御方法及び制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、廃棄物の減量や再利用による資源の循環及び有効利用の重要性が高まっており、液体に含まれる微小固形物やその溶媒においても例外ではない。ところが、食品系工場においては多量の排水(廃水)に含まれる微小有機固形物や、ディスポーザによって処理された生ごみ排水(廃水)中に含まれる微小有機固形物や、湖沼、河川に発生する微細藻類等は、資源の循環、有効利用されることなくそのまま処理あるいは放置されているのが現状である。これらの微小有機固形物はそのままバイオマス資源として利用するには低濃度であり、排水(廃水)処理を行うには負荷が高すぎるといった問題があるからである。
【0003】
また、金属加工工場等で発生する無機性の排水(廃水)や、切削油中に含まれる金属は、沈殿するものに関しては回収が容易であるが、微小固形物は回収が困難であり、繰り返し使用することによって微小固形物が高濃度となり切削時に噛み込みの原因となるため、交換されている。そして、これらの微小固形物が懸濁されている排水(廃水)の処理においては、凝集剤等の助剤を用いて微小固形物を沈殿させて回収しているため、回収された固形物を有効に利用しにくい状態となってしまっている。
【0004】
このような排水(廃水)から懸濁固形物を分離回収する固液分離装置としては、下記の特許文献に開示されているようなプレコート式の回転ドラム型固液分離装置が知られており、製紙業界において、パルプの濃縮や白水処理に用いられている。すなわちこの種のプレコート式回転ドラム型固液分離装置は、処理対象液を貯留する処理槽と、この処理槽内に水平軸心を中心として回転可能に配置され、外周壁がワイヤクロスや濾布などのメッシュ材からなる固液分離ドラムと、前記メッシュ材の外周面に付着・堆積した懸濁固形物からなるプレコート層を剥離回収するスクレーパ又はカッタとを備える。
【0005】
そしてこのプレコート式回転ドラム型固液分離装置は、処理槽内へ処理対象液を供給すると共に、回転する固液分離ドラムの内部空間から、この固液分離ドラム内へ濾過された水(濾液)を排水することによって、固液分離ドラムのメッシュ材の外周面に処理対象液中の懸濁固形物が付着・堆積したプレコート層を形成させ、このプレコート層自体の濾過機能を利用して、メッシュ材の目開きサイズより粒子の細かい懸濁固形物を分離可能としている。そしてこのようにして固液分離ドラムのメッシュ材の外周面にプレコート層として付着・堆積された固形物は、スクレーパ又はカッタによって剥離・回収される。
【0006】
また、このプレコート式回転ドラム型固液分離装置では、ドラムの回転速度によって処理槽内の処理対象液と固液分離ドラム内の濾液との水頭差を制御することで、排水(廃水)処理量、プレコート層の厚さ、及び濾液の水質を調整することができる。なお、処理対象液の懸濁固形物の濃度が低いとプレコート層の形成が不均一になるため、濃度は0.5%以上であることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−213819号公報
【特許文献2】特開2000−254418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術によれば、例えば食品工場の排水(廃水)、生活雑排水(廃水)、無機排水(廃水)、金属切削油、湖沼・河川等の液体中の懸濁固形物などは、粒子が細かく、形状も不均一で低濃度に存在しているため、製紙に用いられているメッシュサイズの粗い固液分離ドラム(目開き300μm程度)では、このような排水(廃水)から懸濁固形物を効率よく回収することが困難であった。
【0009】
したがって、メッシュサイズの粗い固液分離ドラムによって、懸濁固形物の粒子がより細かい排水(廃水)を処理するには、凝集沈殿剤等の助剤を添加することによってプレコート層の形成を促す手法や、予め固液分離ドラムのメッシュ材にプレコート剤をコーティングし、固液分離工程においてメッシュ材に形成された懸濁固形物によるプレコート層を、前記プレコート剤と共に剥離し回収する手法が採られている。しかしながらこの場合は、凝集沈殿剤やプレコート剤を用いることによるコストアップが懸念され、しかも回収物に助剤やプレコート剤が混入してしまうことになるため、回収物を有効利用するには不都合である。
【0010】
また、ドラム回転速度の制御が処理槽内の処理対象液と固液分離ドラム内の濾液との水頭差のみに依存されるため、微小固形物を安定的に回収することが困難であった。すなわち、ドラム回転速度の制御に際しては、水頭差が維持されれば固液分離ドラムにプレコート層が形成されて目詰まっている状態であると想定されるが、濾過速度より処理対象液の供給速度が高い場合、水頭差を維持することが可能であるため、固液分離ドラムから回収用ドラムに回収固形物(プレコート層)が転写された後、プレコートが形成されていない固液分離ドラム部分が再度処理対象液中へ進入する部分において濾過速度が高くなり、濾液中の固形物濃度が高くなってしまうため、回収率が安定しないといった問題があった。
【0011】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、処理対象液中の微小固形物にて固液分離ドラム上にプレコート層を形成させることによって、濾過速度を調節し、安定的かつ効率よく固液分離を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法は、処理槽と、この処理槽へ処理対象液を供給する処理対象液供給手段と、前記処理槽内に前記処理対象液に一部浸漬された状態で水平軸心を中心として回転可能に配置され外周壁がメッシュ材からなる固液分離ドラムと、前記メッシュ材の外周面に付着・堆積した懸濁固形物からなるプレコート層を剥離回収する回収手段と、前記固液分離ドラム内へ通過した濾液を排出する濾液排出手段を備えるプレコート式回転ドラム型固液分離装置において、前記固液分離ドラム内の濾液を排出すると共に前記処理槽へ処理対象液を供給するのに伴い、前記処理対象液の液面レベルが所定の高レベルに上昇したときに前記固液分離ドラムの回転を開始又は加速し、前記液面レベルが所定の低レベルに下降したときに前記固液分離ドラムの回転を停止又は減速することを特徴とするものである。
【0013】
すなわちこの方法においては、処理槽内の処理対象液の液面レベルが所定の低レベルにあることによって、固液分離ドラムの回転が停止又は低速回転している状態では、この固液分離ドラム内の濾液を排出すると共に処理槽へ処理対象液を供給するのに伴い、固液分離ドラムのメッシュ材の外周面へ、処理対象液中の懸濁固形物が付着・堆積することによってプレコート層が形成され、その層厚が増大して行き、それと共に処理槽から固液分離ドラム内への濾加速度が低下して処理槽内の処理対象液の液面レベルが上昇する。また、液面レベルが所定の高レベルに達した時点で前記固液分離ドラムの回転を開始又は加速すれば、液面の上に露出してプレコート層の形成が行われていない部分が処理対象液中へ回転移動して行き、あるいはその移動速度が速くなることによって、濾過速度が速くなるので、処理槽内の処理対象液の液面レベルが低下し、前記液面レベルが所定の低レベルに達した時点で、固液分離ドラムの回転を停止又は減速することによって、プレコート層の形成が行われていない部分にプレコート層が形成され、その層厚が増大して行く。そしてこのような制御が繰り返されることによって、固液分離ドラム内の濾液の懸濁固形物濃度を低くかつ安定させることができる。
【0014】
また、処理槽の処理対象液の液面レベルが所定の高レベルから下降する過程では、液面に浮遊している固形物がドラム上に乗るため、処理対象液中に懸濁している固形物だけでなく、液面に浮遊している固形物も効率よく分離回収される。
【0015】
請求項2の発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法は、請求項1に記載の方法において、固液分離ドラム内の濾液の懸濁固形物濃度が高いほど前記固液分離ドラムの回転速度を低くすることを特徴とするものである。
【0016】
すなわちこの方法によれば、固液分離ドラムの回転速度を固液分離ドラム内の濾液の懸濁固形物濃度に応じて決定するため、処理対象液の種類による性状や物性に適した濾加速度を設定することができる。
【0017】
請求項3の発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法は、請求項1に記載の方法において、処理対象液の液面レベルが所定の高レベルに上昇したときに処理対象液供給手段の駆動を停止することを特徴とするものである。
【0018】
すなわち、液面レベルが所定の高レベルに達した時点で固液分離ドラムの回転を開始又は加速すると、露出してプレコート層の形成が行われていない液面上の部分が処理対象液中へ回転移動して行くので、処理対象液の懸濁固形物がプレコート層によって十分に濾過されずに濃度の高い濾液が固液分離ドラム内へ流入することになる。このため、濾過による液面レベルの低下速度が遅いと、液面レベルが所定の低レベルに達することによって固液分離ドラムが停止されるまでの時間が長くなって、処理対象液の液面下でプレコート層が十分に形成されていない領域が占める割合が大きくなり、処理対象液の懸濁固形物がプレコート層によって十分に濾過されずに濃度の高い濾液が多量に排出されてしまうが、請求項3の方法によれば、所定の高レベルに上昇した処理対象液の液面レベルが短時間で所定の低レベルに下降して固液分離ドラムが停止するため、プレコート層が十分に形成されていない領域の多くが処理対象液の液面下へ入って濾液の液質が悪化(懸濁固形物濃度が上昇)してしまうのを抑制することができる。
【0019】
請求項4の発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法は、請求項1に記載の方法において、固液分離ドラムのメッシュ材の外周面に所要の層厚のプレコート層が形成されていない状態では、固液分離ドラムの回転を停止すると共に、この固液分離ドラム内の濾液を前記固液分離ドラムの外側の処理槽へ返送させることを特徴とするものである。
【0020】
すなわち、固液分離ドラムのメッシュ材の外周面に所要の層厚のプレコート層が形成されていない状態では、処理槽内の処理対象液は、懸濁固形物が十分に分離されずに固液分離ドラムのメッシュ材を通過して固液分離ドラム内へ流入することになる。したがって、固液分離ドラム内へ流入した濾液を処理槽内へ返送させて繰り返し濾過を行うことによって、前記メッシュ材の外周に懸濁固形物が付着・堆積して形成されるプレコート層の層厚が厚くなって行き、それに伴い処理槽内の処理対象液と固液分離ドラム内の濾液の液面レベル差が大きくなると共に、濾加速度及び濾液の懸濁固形物濃度が低下して行く。このため、運転開始時あるいはメンテナンス後など、固液分離ドラムのメッシュ材の外周面にプレコート層が形成されていない状態から、十分な層厚のプレコート層を形成して濾液の懸濁固形物濃度を所定値まで下げるのに有効である。
【0021】
請求項5の発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法は、請求項1に記載の方法において、処理槽内の液面レベルが予め設定された最低レベルに低下した場合に、処理槽へ処理対象液を供給する処理対象液供給手段の駆動を停止すると共に固液分離ドラムの回転を停止し、前記固液分離ドラムからの濾液の排出を停止することを特徴とするものである。
【0022】
すなわち、不定期に処理対象液が発生する場合や処理対象液の供給が減少した場合に、処理槽へ処理対象液を供給する処理対象液供給手段の駆動を停止することによって、この処理対象液供給手段の空運転による破損を防止することができ、固液分離ドラムからの濾液の排出を停止することによって、処理槽内の処理対象液と固液分離ドラム内の濾液がほぼ同等の液面レベルで残留した状態に保持され、また、固液分離ドラムの回転停止によってプレコート層は回収手段に剥離回収されることなく固液分離ドラムのメッシュ材の外周に維持される。
【0023】
請求項6の発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御システムは、請求項1に記載のプレコート式回転ドラム型固液分離装置における処理槽内の液面レベルを検出するセンサと、このセンサからの検出データに基づいて前記固液分離装置における処理対象液供給手段、固液分離ドラム、濾液排出手段の駆動を制御する制御信号を出力する制御装置を備えることを特徴とするものである。
【0024】
すなわち、このような制御システムによって、請求項1の発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法を容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、固液分離ドラムのメッシュ材の外周に良好なプレコート層の形成及び維持が可能となり、その結果、処理槽内の処理対象液からの懸濁固形物の回収が効率よく行われ、濾液中の懸濁固形物濃度を低くかつ安定させることができる。しかも固液分離ドラムが間欠運転又は適切な速度調整されるので、省エネルギー及びコストダウンを図ることができる。また、懸濁固形物の回収が効率よく行われる結果、その有効利用を促進させることができる一方、濾液は懸濁固形物濃度が低く抑えられる結果、排水(廃水)処理が容易になり、廃棄・処理コストを低減することができる。
【0026】
また、液質に応じて濾過速度が求められ、濾過速度から処理対象液の適正な供給速度を設定することができ、その結果、省エネルギーを図ることができると共にイニシャルコスト、ランニングコストを抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による制御対象のプレコート式回転ドラム型固液分離装置の一例を概略的に示す断面図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明による制御システムを概略的に示すブロック図である。
【図4】濾過速度による濾水の懸濁固形物濃度(SS濃度)の変化を確認する試験の結果を示す線図である。
【図5】濾過速度による濾水の懸濁固形物濃度(SS濃度)の変化を確認する試験の結果を示す線図である。
【図6】本発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法において、初期運転時の制御を示す説明図である。
【図7】本発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法において、通常運転時の制御を示す説明図である。
【図8】本発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法において、処理対象水が不定期に供給される場合や供給量が減少した場合の保護措置のための制御を示す説明図である。
【図9】本発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法において、保護措置後の復旧運転時の制御を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法及び制御システムの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
まず図1は、本発明による制御対象のプレコート式回転ドラム型固液分離装置の一例を概略的に示す断面図、図2は、図1におけるII−II断面図で、処理対象水W1を貯留する処理槽1と、この処理槽1内に配置された固液分離ドラム2と、この固液分離ドラム2の外周面に処理対象水W1中の懸濁固形物により形成されたプレコート層PCを剥離回収する回収手段3と、前記処理槽1へ処理対象水W1を供給する給水ポンプ4と、前記固液分離ドラム2内の濾水W2を排出する流路に設けられた排水弁5と、前記固液分離ドラム2内の濾水W2を前記処理槽1へ返送させる循環ポンプ6を備える。なお、処理対象水W1は、請求項1に記載された処理対象液に相当するものであり、濾水W2は請求項1に記載された濾液に相当するものである。
【0030】
プレコート式回転ドラム型固液分離装置による処理対象水W1は、粒子径1μm〜1mmの固形物が50%以上含まれる有機性排水(廃水)、無機性排水(廃水)等である。具体的には、例えば生活排水(廃水)、食品工場排水(廃水)、メタン発酵やアルコール発酵の消化液、有機汚泥、海水や湖沼・河川等の環境水、微細藻類の培養液等の有機性の液体や、無機汚泥、セメント排水(廃水)、切削油等の無機性の液体が処理可能である。
【0031】
処理槽1には、その一方の側壁11における固液分離ドラム2との対向面の下部に位置して排水口12が開設されている。そして排水弁5は、この排水口12に接続された排水管51に設けられている。なお、排水弁5及び排水管51は、請求項1に記載された濾液排出手段に相当するものである。
【0032】
固液分離ドラム2は、処理槽1内の処理対象水W1に浸漬された状態で、不図示の電動モータ及び減速装置によって、水平な仮想軸心を中心として低速回転されるものであって、図2に示されるように、軸方向一側が開放された形状となっている。そして固液分離ドラム2の円筒状の外周壁はワイヤクロスなどのメッシュ材21からなり、開放された側の外径部が、処理槽1の一方の側壁(排水口12が開設された側壁)11の内側面に摺動可能に密接されることによって、この側壁11との間に濾水貯留室Sが画成されている。なお、参照符号22は、固液分離ドラム2の開放された外径部に周設されたシール部材である。
【0033】
固液分離ドラム2のメッシュ材21としては、目開きサイズが150μm以下のものが採用される。これは、目開きサイズが150μmを超えるものでは、初期の固液分離工程においてメッシュ材21に予めプレコート剤による層を形成しておかないと、メッシュ材21の外周面に固形物の付着・堆積が起こりにくく、すなわちプレコート層PCが形成されにくいからである。メッシュ材21の材質としては、ステンレス、亜鉛、真鍮、アルミ等の金属、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂、障子紙などのパルプ繊維、ガラス繊維、炭素繊維を使用することが可能である。
【0034】
固液分離ドラム2が図1における反時計方向へ回転するものとした場合、この固液分離ドラム2の外周部(プレコート層PC)は、参照符号1aで示される側(以下、ドラム浮上側1aという)で処理対象水W1の水面から浮上し、参照符号1bで示される側(以下、ドラム没入側1bという)で処理対象水W1の水面下へ没入する。そして処理槽1の側壁には、ドラム没入側1bに位置して給水管13が開口しており、処理槽1内には、この給水管13により処理槽1内へ供給される処理対象水W1を、固液分離ドラム2の外周がその回転に伴って水面下へ没入する位置よりも回転方向前方、好ましくは固液分離ドラム2の最下部(軸心を通る鉛直線との交点位置)よりも回転方向前方で初めて固液分離ドラムの外周に接するように、かつ回転方向(反時計方向)へ供給されるように導く導流部材14が設けられている。言い換えれば、この導流部材14は、処理槽1へ供給される処理対象水W1をドラム浮上側1aに偏在する位置へ導くものである。
【0035】
処理槽1へ処理対象水W1を供給する給水ポンプ4は給水管13に設けられており、この給水管13の上流側は不図示の原水供給槽に接続されている。なお、給水ポンプ4、給水管13及び原水供給槽は、請求項1に記載された処理対象液供給手段に相当するものである。
【0036】
プレコート層PCを剥離して再利用可能な資源RSとして回収する回収手段3は、固液分離ドラム2のメッシュ材21の外周面に形成されたプレコート層PCの表面に、処理槽1における処理対象水W1の水位WLより上方で接触しながら、固液分離ドラム2と逆方向へ回転されることによって、前記固液分離ドラム2のメッシュ材21からプレコート層PCを転写・付着させるローラ31と、このローラ31に転写・付着された固形物を掻き取るスクレーパ32からなる。なお、ローラ31の表面材としては、例えばゴム、フェルト、スポンジ等、平滑度や弾力性、耐久性を重視した素材が用いられる。なお、水位WLは請求項1に記載された液面レベルに相当するものである。
【0037】
排水管51からは、排水弁5の上流側で濾液返送管61が分岐しており、そして、固液分離ドラム2内の濾水貯留室Sの濾水W2を前記処理槽1へ返送させる循環ポンプ6は、この濾液返送管61に設けられている。
【0038】
図3は、本発明による制御システムを概略的に示すブロック図である。上記構成のプレコート式回転ドラム型固液分離装置は、図3に示される制御システムによって駆動が制御されるようになっており、すなわちこの制御システムは、レベルセンサ7,7aと、このレベルセンサ7,7aからの検出データに基づいて前記固液分離装置における給水ポンプ4の駆動回路41、固液分離ドラム2を回転させる不図示の電動モータの駆動回路23、排水弁5の駆動回路24、及び循環ポンプ6の駆動回路61を制御する制御信号を出力する制御装置8と、制御装置8に種々のデータを入力するための入力部9を備える。
【0039】
レベルセンサ7は、図1に示されるように、LL、L、H、HHの4レベルで処理槽1における処理対象水W1の水位WLを検出するものである。LL、L、H、HHの高さは、処理槽1や固液分離ドラム2の大きさによって任意に設定可能である。
【0040】
なお、レベルセンサ7としては、フロートなしセンサ、超音波センサ、フロートセンサ、静電容量型レベルセンサ、圧力レベルセンサ、マイクロウェーブ式レベルセンサ等、種々のものが使用可能である。
【0041】
制御装置8は、入力部9からの入力データによって種々の演算を行うものであり、また、処理槽1内の処理対象水W1の水位WLが上昇してレベルHに達したときのレベルセンサ7からの検出信号によって、固液分離ドラム2を回転させる不図示の電動モータの駆動回路23に駆動指令の信号を出力し、前記水位WLが下降してレベルLに下降したときに前記電動モータの駆動回路23に停止指令の信号を出力し、給水ポンプ4の駆動回路41に駆動指令の信号を出力すると共に排水弁5の駆動回路24に開放指令信号を出力し、前記水位WLがレベルLLに下降したときに排水弁5の駆動回路24に閉塞指令信号を出力し、当該固液分離装置を初期運転させる際に給水ポンプ4の駆動回路41に駆動指令の信号を出力すると共に排水弁5の駆動回路24に閉塞指令信号を出力し、これによって前記水位WLがレベルLL又はLなど所要のレベルへ上昇したときに循環ポンプ6の駆動回路61に駆動指令の信号を出力し、あるいは前記水位WLがレベルHHまで上昇した場合に不図示の警報装置に駆動指令の信号を出力し、さらには処理対象水W1の給水源である不図示の原水供給槽の残存水量が所定レベル以下になったときにこれに設置されたレベルセンサ7aからの検出信号によって給水ポンプ4の駆動回路41に停止指令の信号を出力するといった制御動作を行うものである。
【0042】
上述の構成を備えるプレコート式回転ドラム型固液分離装置によって処理対象水W1の固液分離処理を行うには、処理対象水W1の種類によって性状や物性が異なるため、処理対象水W1の濾過速度による濾水W2の水質(懸濁固形物濃度)の変化を確認するための予備試験を行う必要がある。固液分離ドラム2が回転する直前ではこの固液分離ドラム2のメッシュ材21の外周面に十分な層厚のプレコート層PCが形成されているため、濾水W2の水質が最も良い状態であり、固液分離ドラム2が回転した直後はプレコート層PCが形成されていないメッシュ材21からの処理対象水W1の流入があるため、水質が悪化する。したがって、濾水W2の評価を行う際には各々の積分値として計算する。
【0043】
なお、繊維及び粒子が混在する処理対象水W1の例として、ディスポーザ排水に模擬生活雑排水(廃水)としてきな粉を添加した液体を用いて試験を行ったところ、図4の線図に示されるような結果が得られた。また、粒子のみが固形物として存在している液体としてきな粉を懸濁した液体を用いて試験を行ったところ、図5の線図に示されるような結果が得られた。すなわち、処理対象水W1の濾加速度が早いほど、濾水W2の懸濁固形物濃度(SS濃度)が高く、すなわち水質が悪化することがわかる。なお、図4及び図5に示される近似曲線の関数において、Lnは自然対数であり、Rは相関係数である。
【0044】
したがって、このような予備試験の結果によって濾水速度の選定を適切に行うことができる。
【0045】
図6は、運転開始あるいはメンテナンス等でプレコート層PCが形成されていない状態からの運転再開など、初期運転時の制御方法を示すものである。
【0046】
この初期運転においては、先に説明したように、制御装置8から排水弁5の駆動回路24は閉塞指令信号が出力されると共に給水ポンプ4の駆動回路41に駆動指令の信号が出力されるので、まず図6(A)のように、固液分離ドラム2が停止した状態で、給水ポンプ4が駆動されると共に排水弁5が閉塞されることによって、処理槽1へ処理対象水W1が供給される。このとき、固液分離ドラム2のメッシュ材にはプレコート層が形成されていないので、処理槽1内の処理対象水W1の水位WLと固液分離ドラム2内の濾水W2の水位WLとのレベル差(水頭差)は僅かである。
【0047】
次に、処理槽1への処理対象水W1の供給によってその水位WLが所要のレベルへ上昇したことがレベルセンサ7で検出されると、制御装置8から給水ポンプ4の駆動回路41へ停止指令の信号が出力されると共に循環ポンプ6の駆動回路61へ駆動指令の信号が出力されるので、図6(B)のように、固液分離ドラム2内へ通過した濾水W2が処理槽1へ返送される。このとき、循環ポンプ6による濾水W2の返送速度は、先に説明した予備試験結果に基づいて、目標とする濾過速度となるように設定される。
【0048】
その結果、固液分離ドラム2から返送された濾水W2が繰り返し固液分離ドラム2のメッシュ材を通過することになるので、その過程で、図6(C)〜(D)のように、メッシュサイズ以下の懸濁固形物が固液分離ドラム2のメッシュ材に徐々に堆積してプレコート層PCが形成されて行く。このプレコート層PCは、それ自体が濾過機能を持つようになるので、プレコート層PCの堆積厚さの増大に伴い、粒径がメッシュ材21の目開きより粒径の小さい懸濁固形物も有効に分離されるようになる。このため濾加速度が低下し、処理槽1の水位WLが上昇すると共に固液分離ドラム2内の濾水W2の水位WLが低下し、すなわち水頭差HDが大きくなり、目標とする濾水W2の水質時の濾過速度へ近似して行く。
【0049】
ここで、循環ポンプ6による濾水W2の循環にも拘らず、もし処理槽1の水位WLが所定の水位まで上昇しない場合、言い換えれば水頭差HDが大きくならず、濾加速度が目標の濾過速度まで低下しない場合は、その原因はプレコート層PCの形成が不十分であるか、投入された処理対象水W1の量が少ないためメッシュ材にプレコート層PCが形成されていない領域が多いからであると考えられ、このような場合は、処理槽1へ、プレコート層PCの形成のための懸濁固形物を補給する必要がある。したがって、例えば循環ポンプ6の駆動後、不図示のタイマで計測される所定時間が経過しても処理槽1の水位WLが所定の水位まで上昇しない場合に、制御装置8から給水ポンプ4の駆動回路41へ駆動指令の信号が出力され、これによって処理槽1へ処理対象水W1が再度供給される。
【0050】
なお、その際に初期に投入した処理対象水W1が多く、すでに水位WLが所定のレベルに達している場合は、排水弁5を開放することによって、固液分離ドラム2内の濾水W2を排水する。このときに排水される濾水W2は、プレコート層PCを形成する懸濁固形物濃度が低いものであり、目標水質を満たしているものと考えて良い。
【0051】
固液分離ドラム2のうち処理対象水W1の水面下に没入した部分におけるメッシュ材の外周に十分な層厚のプレコート層PCが形成されることによって、濾過速度が目標とする濾水W2の水質時の濾過速度まで低下すると共に、処理槽1内の処理対象水W1と固液分離ドラム2内の濾水W2の水頭差HDが大きくなって、処理対象水W1の水位WLがレベルHに達すると、処理モードは通常運転へ移行する。
【0052】
図7は、通常運転時の制御を示す説明図である。この通常運転においては、循環ポンプ6が停止されると共に、水位WLを検出するレベルセンサ7からの検出信号によって、処理対象水W1の供給ポンプ4及び固液分離ドラム2の回転が制御される。処理対象水W1の供給速度は目標となる水質の濾過速度と同じになるように設定する。
【0053】
すなわち図7(A)のように、レベルセンサ7で検出される処理槽1内の処理対象水W1の水位WLがLのときは、給水ポンプ4が駆動し、固液分離ドラム2が停止する。またこの時、排水弁5は開放状態にある。この状態では、処理槽1内の処理対象水W1は固液分離ドラム2内へ流入する過程で、この処理対象水W1中に混在する懸濁固形物が固液分離ドラム2のメッシュ材あるいはその外周に形成されたプレコート層PCにより分離されて付着・堆積し、これによってプレコート層PCの層厚が増大して行き、それと共に処理槽1から固液分離ドラム2内への濾加速度が低下して、図7(B)のように処理槽1内の処理対象水W1の水位WLが上昇する。
【0054】
そしてレベルセンサ7で検出される処理槽1内の処理対象水W1の水位WLがHまで上昇した時点で、図7(C)のように、固液分離ドラム2が回転を開始する。すると、固液分離ドラム2の回転に伴い、図7(D)のように、これまで処理対象水W1の水面より上側にあってプレコート層PCが形成されていなかった(回収手段3によってプレコート層PCが剥離された)メッシュ材の領域21aが、処理対象水W1の水面下に没入して行くため、及び給水ポンプ4による処理対象水W1の供給停止によって、水位WLが低下する。
【0055】
そして、レベルセンサ7で検出される処理槽1内の処理対象水W1の水位WLがLまで低下したら、固液分離ドラム2が停止し、すなわち図7(A)からの制御が繰り返される。
【0056】
ここで、図7(C)のように、固液分離ドラム2が回転を開始したときに、回転によって固液分離ドラム2が水中へ没入する位置は、プレコート層PCの形成が開始される部分であるため、給水ポンプ4によって不図示の原水供給槽から送られる処理対象水W1が前記没入位置へ供給される場合は、処理対象水W1に含まれる比較的粒径の大きい懸濁固形物が付着して、プレコート層PCが不均一かつ粗な状態に形成されてしまいやすく、このため濾水W2の水質が不安定になりやすい。
【0057】
これに対し、図1に示される固液分離装置によれば、処理槽1に供給される処理対象水W1は、この処理槽1内に設けられた導流部材14によって、固液分離ドラム2の最下部よりも回転方向前方、すなわちドラム浮上側1aに偏在する位置で初めて固液分離ドラム2の外周に接するように導かれているため、処理対象水W1に含まれる比較的粒径の大きい懸濁固形物は、処理槽1内におけるドラム浮上側1a(固液分離ドラム2の最下部よりも回転方向前方)に分布し、ドラム没入側1b(固液分離ドラム2の最下部よりも回転方向後方)には、相対的に粒径が小さい懸濁固形物が分布するようになる。
【0058】
このため、処理槽1内の処理対象水W1には、ドラム没入側1bで相対的に低く、ドラム浮上側1aで相対的に高くなるような濃度勾配が発生する。
【0059】
したがって、処理対象水W1に含まれる比較的粒径の大きい懸濁固形物は、プレコート層PCの形成が開始されてから反時計方向へ移動するのに伴い、プレコート層PCがある程度の層厚になる固液分離ドラム2の最下部位置以降でプレコート層PCに付着することになり、ドラム没入側1bには、相対的に粒径が小さい懸濁固形物が分布することになる。したがって、プレコート層PCが未形成の領域21aが没入する位置(ドラム没入側1b)では処理対象水W1の懸濁固形物濃度が低いことから、この部分で濾過された濾液W2も水質が良好に維持される。
【0060】
また、上述のように、図7(C)において固液分離ドラム2が回転を開始すると、プレコート層PCが形成されていない液面上の領域21aが水面下へ没入して行くので、この領域21aでは、処理対象水W1の懸濁固形物がプレコート層PCによって十分に濾過されない。このため、濾過による水位WLの低下速度が遅いと、この水位WLがレベルLに達することによって固液分離ドラム2が停止されるまでの時間が長くなって、処理対象水W1の水面下でプレコート層PCが十分に形成されていない領域21aが占める割合が大きくなり、処理対象水W1中の懸濁固形物がプレコート層PCによって十分に濾過されずに濃度の高い濾水W2が多量に排出されてしまうばかりか、固形物の回収効率も低下することになる。
【0061】
そこで、図7(C)において固液分離ドラム2が回転を開始すると同時に、制御装置8から給水ポンプ4の駆動回路41へ停止指令の信号が出力され、これによって処理槽1への処理対象水W1の供給を遮断するようにする。このように制御すれば、水位WLが短時間でレベルLに下降して固液分離ドラム2が停止するため、プレコート層PCが十分に形成されていない領域21aの多くが処理対象水W1の水面下へ入って濾水W2の水質が悪化(懸濁固形物濃度が上昇)してしまうと共に回収率が低下するのを防止することができる。
【0062】
なお、処理対象水W1の水位WLがレベルLに達したときには、水面付近の固液分離ドラム2の外周にはプレコート層PCが形成されているため、これを通過した濾水W2は目標とする水質を満足するものとなる。
【0063】
また、上述の制御方法によれば、処理対象水W1中に懸濁している固形物質だけではなく、図7(C)に示されるように水面に浮遊する固形物Fも回収することができる。すなわち、水面に浮遊する固形物Fは、水位WLが一定に保持されている場合はプレコート層PCの表面には付着しにくいが、水位WLが図7(C)に示されるレベルHから図7(A)に示されるレベルLへ下降する過程で、水面に浮遊する固形物Fが図7(D)に示されるようにプレコート層PC上に乗るため、効率よく回収される。
【0064】
次に図8は、処理対象水W1が不定期に供給される場合や給水管13の上流側の原水供給槽(不図示)からの供給量が減少したときにプレコート層PCを維持するための保護措置としての制御を示す説明図である。
【0065】
すなわち処理対象水W1が不定期に発生するような条件では、原水供給槽の水位が一定レベル以下まで低下すると、これを検出するレベルセンサ7aからの検出信号によって、図8(A)に示されるように、給水ポンプ4が停止されると共に、固液分離ドラム2が停止する。これによって、前記原水供給槽内の処理対象水W1がなくなることによる給水ポンプ4の空運転が防止される。また循環ポンプ6は引き続き停止状態にある。
【0066】
給水ポンプ4の停止によって、処理槽1への処理対象水W1の流入がなくなるため、固液分離ドラム2内からの濾水W2の排出によって、水位WLが低下して行く。そして水位WLがレベルLLに達すると、排水弁5が閉塞される。
【0067】
この時点では、図8(A)に示されるように、処理槽1内の処理対象水W1と固液分離ドラム2内の濾水W2との水頭差があるため、引き続き処理槽1内から固液分離ドラム2内への濾過が行われる。このため、処理槽1内の処理対象水W1の水位WLが低下する一方、固液分離ドラム2内の濾水W2の水位WLが上昇して水頭差が無くなり、すなわち図8(B)に示されるように、ドラム内外の水位が一定となる。
【0068】
このようにすることによって、固液分離ドラム2に形成されたプレコート層PCは維持された状態で残され、固液分離ドラム2内の水質は目標となる水質を満足することができる。しかしながらこの制御はあくまで保護措置であるため、プレコート層PCが乾燥して状態が不均一になったりメッシュ材に張り付いてしまったりして、回収用のローラ31への転写が困難になるおそれがあるため、この状態を長時間維持することは好ましくない。
【0069】
また、図9は、上述した保護措置後に復旧運転を行うための制御を示す説明図である。
【0070】
すなわち、図9(A)に示される待機状態(図8(B)に示される状態)から、原水供給槽内の水位が上昇するなどによって、給水ポンプ4が空運転しない条件になると、図9(B)のように給水ポンプ4が駆動し、処理対象水W1が処理槽1へ供給される。このとき、固液分離ドラム2には十分な層厚のプレコート層PCが維持されているので、処理槽1への処理対象水W1の供給速度よりも濾過速度が低く、このため水頭差HDを生じ、レベルLLにあった処理対象水W1の水位WLが上昇する。
【0071】
処理対象水W1の水位WLが例えば図9(C)のようにレベルHまで上昇すると、排水弁5が開放され、固液分離ドラム2内の濾水W2が排出されるので、図9(D)のように濾水W2の水位WLが低下する。なお、排出される濾水W2は、十分な層厚のプレコート層PCによって濾過されたものであるため、目標となる水質を満足するものである。なお、この復旧運転制御においても初期運転と同様なレベルの制御を行う。
【0072】
図9(D)の状態となった後は、先に説明した図7に示される通常運転の制御へ移行することになる。
【0073】
上述した形態によれば、処理対象水W1の懸濁固形物がメッシュサイズ以下であっても、図6のような初期運転制御によって、固液分離ドラム2のメッシュ材に徐々に堆積して十分な層厚のプレコート層PCを形成することができるため、有機性排水(廃水)(生活排水(廃水)、食品工場排水(廃水)、メタン発酵消化液、有機汚泥など)中の低濃度の有機性懸濁物や、湖沼、河川などの水から微細な藻類などを分離回収する場合にも適用できる。
【0074】
なお、回収手段3によって資源RSとして回収された有機固形物は、湿式メタン発酵あるいは高温メタン発酵などの二次処理によってバイオ燃料などに変換することができ、一方、濾水W2は、排水(廃水)中の有機物をメタンガスと二酸化炭素に分解するUASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket:上向流嫌気性汚泥床)排水(廃水)処理システムなどによって二次処理を行うことができる。
【0075】
また、回収手段3によっていったん回収された有機固形物をメタン発酵させることによって発生した余剰汚泥や、濾水W2のUASB排水(廃水)処理などによって発生した余剰汚泥は、上述したプレコート式回転ドラム型固液分離装置のへ返送して一次処理としての固液分離及びその後の二次処理を再度行うことによって、最終処分(場外搬出)する余剰汚泥量を著しく削減することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 処理槽
2 固液分離ドラム
3 回収手段
4 給水ポンプ(処理対象液供給手段)
5 排水弁(濾液排出手段)
6 循環ポンプ
7,7a レベルセンサ
8 制御装置
PC プレコート層
W1 処理対象水(処理対象液)
W2 濾水(濾液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽と、この処理槽へ処理対象液を供給する処理対象液供給手段と、前記処理槽内に前記処理対象液に一部浸漬された状態で水平軸心を中心として回転可能に配置され外周壁がメッシュ材からなる固液分離ドラムと、前記メッシュ材の外周面に付着・堆積した懸濁固形物からなるプレコート層を剥離回収する回収手段と、前記固液分離ドラム内へ通過した濾液を排出する濾液排出手段を備えるプレコート式回転ドラム型固液分離装置において、前記固液分離ドラム内の濾液を排出すると共に前記処理槽へ処理対象液を供給するのに伴い、前記処理対象液の液面レベルが所定の高レベルに上昇したときに前記固液分離ドラムの回転を開始又は加速し、前記液面レベルが所定の低レベルに下降したときに前記固液分離ドラムの回転を停止又は減速することを特徴とするプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法。
【請求項2】
固液分離ドラム内の濾液の懸濁固形物濃度が高いほど前記固液分離ドラムの回転速度を低くすることを特徴とする請求項1に記載のプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法。
【請求項3】
処理対象液の液面レベルが所定の高レベルに上昇したときに処理対象液供給手段の駆動を停止することを特徴とする請求項1に記載のプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法。
【請求項4】
固液分離ドラムのメッシュ材の外周面に所要の層厚のプレコート層が形成されていない状態では、固液分離ドラムの回転を停止すると共に、この固液分離ドラム内の濾液を前記固液分離ドラムの外側の処理槽へ返送させることを特徴とする請求項1に記載のプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法。
【請求項5】
処理槽内の液面レベルが予め設定された最低レベルに低下した場合に、処理槽へ処理対象液を供給する処理対象液供給手段の駆動を停止すると共に固液分離ドラムの回転を停止し、前記固液分離ドラムからの濾液の排出を停止することを特徴とする請求項1に記載のプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御方法。
【請求項6】
請求項1に記載のプレコート式回転ドラム型固液分離装置における処理槽内の液面レベルを検出するセンサと、このセンサからの検出データに基づいて前記固液分離装置における処理対象液供給手段、固液分離ドラム、濾液排出手段の駆動を制御する制御信号を出力する制御装置を備えることを特徴とするプレコート式回転ドラム型固液分離装置の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−81450(P2012−81450A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231730(P2010−231730)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】