説明

プレス装置およびプレス方法

【課題】 ポンプから加圧用シリンダに作動油を供給して3分間以上の加圧工程により成形材を加圧するプレス装置およびプレス方法において、油圧回路を複雑化することなく加圧時の省エネルギー化を図りつつ、低圧領域の加圧制御も良好に行うことのできるプレス装置またはプレス方法を提供する。
【解決手段】 ポンプ21から加圧用シリンダ14に作動油を供給してポンプから加圧用シリンダに作動油を供給して3分間以上の加圧工程Hにより成形材Pを加圧するプレス装置11において、サーボモータ20またはインバータ制御モータにより回転数を制御可能かつ吐出量を変更可能なポンプ21が設けられ、前記ポンプ21を制御して設定油圧2MPa以下の低圧領域の加圧工程B,Dを含む加圧工程Hにより成形材Pを加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプから加圧用シリンダに作動油を供給して3分間以上の加圧工程により成形材を加圧するプレス装置およびプレス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板等の積層に使用されるホットプレス装置は、特許文献1ないし特許文献3に記載されたもの等が知られている。回路基板等の積層に使用されるホットプレスは加圧工程の時間が長く、一般的には短いものでは3分〜30分、標準的には30分〜2時間、長いものでは2時間〜5時間に及ぶものがある。そのために熱板を多段構成にして一度に多くの成形材を加圧できるようにしたものが多い。また回路基板等の積層に使用されるホットプレス装置は加圧工程の時間が長いため、加圧時間中の加圧に関する電力消費量を少なくして省エネルギー化を図ることを目的としたものもある。特許文献1では、油圧機構の油圧源として、大容量ポンプと小容量ポンプを有し、大容量ポンプと小容量ポンプにより可動盤の上昇を行い、熱板閉鎖後に大容量ポンプの作動を停止し、小容量ポンプのみにより加圧を行う。しかし特許文献1については、油圧配管やバルブの配置が複雑になる上に、加圧時間中は小容量ポンプの回転を継続しているので省エネルギー化の点で満足のいく結果が得られなかった。またポンプが常に回転していることにより、油温の上昇の問題や騒音の発生の問題もあった。更にまた特許文献1では、電磁リリーフバルブを使用して圧力制御を行っているが、特に低圧領域では精度よく制御を行うことができないものであった。そのため特許文献1のものは、太陽電池用の積層プレスにおけるガラスなどの脆性材料を含む成形材、ビルドアップ基板の2次プレス装置など軟化点以上の温度の樹脂材料を含む成形材、および急速に強圧を加えるとボイドが発生しやすい成形材等、低圧加圧を必要とする成形材をプレス成形する場合には、良好な低圧領域の加圧制御ができなかった。
【0003】
前記の問題に対応するものとして特許文献2には、低圧領域の圧締力を良好に制御するためのホットプレス装置が開示されている。特許文献2は、圧締用のシリンダに減圧シリンダを接続して使用することにより、ポンプ圧力よりも低い油圧で圧締力を制御可能となっている。しかし特許文献2についても、特許文献1と同様に、油圧配管やバルブの配置が複雑になる上に、加圧時間の間、小容量ポンプは回転を継続しているので省エネルギー化の点で満足のいく結果が得られないものであった。
【0004】
一方特許文献3には、電動サーボモータの回転により直接加圧を行うホットプレス装置が開示されている。特許文献3は電動サーボモータを使用するので低圧領域における加圧制御は良好に出来るものと推測される。しかし特許文献3については、加圧時間が長い場合、サーボモータを比較的高トルク状態で継続的に駆動させる必要があるので、サーボモータの負荷が問題となり、前記負荷に対応するサーボモータを選定すると非常に大型のサーボモータが必要となり、コストが上昇するという問題があった。またサーボモータを加圧工程の間、常時駆動させる必要があることから、必ずしも省エネルギー化が図れない場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−200300号公報(請求項1、図1)
【特許文献2】特開2003−166501号公報(請求項1、図1)
【特許文献3】特開昭62−146608号公報(請求項1、第1図、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように長時間の加圧を行うホットプレス装置には、電動サーボモータの駆動力により直接加圧を行う従来の電動プレス装置は適しておらず、従来の油圧プレス装置についてもそれぞれ省エネルギー化の点について問題があった。また特には低圧領域での制御を良好に行おうとすると、更に別途にシリンダやバルブを取り付ける必要があり、構造が複雑化していた。そこで本発明では、ポンプから加圧用シリンダに作動油を供給して3分間以上の加圧工程により成形材を加圧するプレス装置において、油圧回路を複雑化することなく加圧時の省エネルギー化図るとともに、低圧領域の加圧制御も良好に行うことのできるプレス装置またはプレス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載のプレス装置は、ポンプから加圧用シリンダに作動油を供給して3分間以上の加圧工程により成形材を加圧するプレス装置において、サーボモータまたはインバータ制御モータにより回転数を制御可能かつ吐出量を変更可能なポンプが設けられ、前記ポンプを制御して設定油圧2MPa以下の低圧領域の加圧工程を含む加圧工程により成形材を加圧することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載のプレス装置は、請求項1において、前記ポンプと前記加圧用シリンダの間には、圧力制御バルブまたは流量制御バルブが配設されておらず、前記ポンプのサーボモータまたはインバータ制御モータの回転数の制御と、吐出量の制御により加圧用シリンダの作動油を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載のプレス方法は、ポンプから加圧用シリンダに作動油を供給して3分間以上の加圧工程により成形材を加圧するプレス方法において、サーボモータまたはインバータ制御モータにより回転数を制御可能かつ吐出量を変更可能なポンプが設けられ、前記ポンプを制御して設定油圧2MPa以下の低圧領域の加圧工程を含む加圧工程により成形材を加圧することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載のプレス方法は、請求項3において、前記成形材は、脆性材料または軟化点以上の温度の樹脂材料を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポンプから加圧用シリンダに作動油を供給して3分間以上の加圧工程により成形材を加圧するプレス装置およびプレス方法は、サーボモータまたはインバータ制御モータにより回転数を制御可能かつ吐出量を変更可能なポンプが設けられ、前記ポンプを制御して設定油圧2MPa以下の低圧領域の加圧工程を含む加圧工程により成形材を加圧するので、油圧回路を複雑化することなく、省エネルギー化を図るとともに低圧領域の加圧を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のプレス装置の概略説明図である。
【図2】本実施形態のプレス方法の1サイクル分の加圧制御を示す図である。
【図3】本実施形態のプレス方法の主に低圧領域の加圧工程におけるポンプの制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示されるプレス装置11は、脆性材料であるガラス板を含む成形材を積層する太陽電池を成形用の多段のプレス装置11である。図1においてプレス装置11の構造は、一部を省略して記載されているが、下方の基盤12とその上方の上盤13の間は図示しない複数のタイバー等で連結されている。そして基盤12の下側には加圧用シリンダ14が固定され、加圧用シリンダ14のピストンを兼ねたラム15が可動盤17の下面に固定されている。加圧用シリンダ14は、加圧用油室14aのみを有する単動シリンダである。従って可動盤17は、加圧用シリンダ14の加圧用油室14aにポンプ21から作動油を供給することにより、上昇・加圧されるようになっている。
【0014】
上面に熱板18aが固定された可動盤17と下面に熱板18bが固定された上盤13の間には、下降時に図示しない段板に載置されるように複数の中間の熱板18cが配置されている。なお本発明では熱板18a,18b,18cの枚数は限定されない。熱板18a,18b,18cは、平行かつ平坦なプレス面18dを上面および下面に有する所定厚みの板体である。そして熱板内の図示しない流路に、蒸気と冷却水、または熱媒油と冷媒油といった熱媒を流通させたり、または熱板内に設けた電気ヒータと流路に流される冷却媒体の流通の組合せにより、自在に昇温と降温が可能となっている。プレス装置11には、可動盤17の下降完了位置と上昇完了位置を検出する検出手段であるリミットスイッチ19a,19bが配置されている。またプレス装置11は、真空ポンプを備えた真空室16内に配置されている。
【0015】
次にプレス装置11の加圧用シリンダ14の油圧機構について説明する。図1に示されるように本実施形態の油圧機構の作動油の供給源は、サーボモータ20により回転数を制御可能、かつ斜板の傾転角を変更することにより吐出量を変更可能なアキシャルピストンポンプ21(以下単にポンプ21と略す)であり、全体でポンプユニット22を構成している。ポンプ21は、図示しないサクションフィルタを介してタンク23に接続されている。ポンプ21の吐出量(ピストンストローク)を規定する斜板の角度は、傾転角制御用シリンダ24により変更され、傾転角制御用シリンダ24は、電磁切換バルブ25により前後進変更可能となっている。また斜板の角度は、パイロット圧による比例切換バルブ26により圧力に応じて自動的に調整可能となっている。そして前記電磁切換バルブ25は、ポンプユニット22の制御装置27から切換制御がなされる。またポンプユニット22には、第1の圧力センサ28が設けられ、検出された作動油の圧力値は、第1の圧力センサ28に接続された前記ポンプユニット22の制御装置27へ送られるようになっている。更にポンプユニット22の制御装置27は、サーボモータ20に接続され、制御装置27からサーボモータ20への駆動信号が送られる。またサーボモータ20の回転を検出するロータリエンコーダ29は前記制御装置27に接続され、サーボモータ20の回転数がフィードバックされる。そしてまたポンプユニット22の制御装置27は、プレス装置11全体を司る制御装置30に接続され、制御装置30から指令信号を受け取る。そして制御装置27によって、ポンプユニット22の流量指令値(傾転角の制御とサーボモータ20の回転数制御)と圧力指令値(傾転角の制御と前記の第1の圧力センサ28等の検出値に基づくサーボモータ20の回転数制御)に基づく制御が可能となっている。
【0016】
またポンプ21から加圧用シリンダ14の加圧用油室14aへ接続される主管路31には、電磁切換バルブ32が設けられている。そして主管路31(または加圧用シリンダ14に直接か主管路31から分岐した部分)には第2の圧力センサ33が設けられ、加圧用シリンダ14の作動油の圧力は、第2の圧力センサ33により検出され、第2の圧力センサ33に接続された制御装置30に送られるようになっている。また主管路31から分岐してタンク23へ向けて可動盤17等を下降させる際にタンク23へ作動油が戻すための管路34が設けられている。管路34には、流量調整バルブ付きパイロットチェックバルブ35が設けられている。また主管路31から分岐したパイロット管路36が前記流量調整バルブ付きパイロットチェックバルブ35に接続され、そのパイロット管路36の途中に電磁切換バルブ37が設けられている。本実施形態では、ポンプ21と加圧用シリンダ14の間の主管路31、または主管路31に連通される回路には圧力制御バルブまたは流量制御バルブが配設されていない。そしてポンプユニット22を除く油圧機構は、主に上記の3つのバルブ32,35,37により作動され、高価なサーボバルブやそれに類する流量制御バルブ等が設けられていないので、油圧機構の構造を簡略化することができる。
【0017】
なお本発明の油圧機構の流量調整バルブ付きパイロットチェックバルブ35については、管路34を単に開閉する機能を有するだけのバルブでもよく、他のバルブについても同じ機能を有する他のバルブを使用してもよい。また本実施形態では圧力が上昇した際には、圧力調整用の比例切換バルブ26により斜板の角度を調整することにより、ポンプ21からの作動油の吐出量が0になるので、リリーフバルブは設置されていない。しかし別途にリリーフバルブを取付けるようにしてもよい。また回転数を制御するポンプユニット22の場合、常時ポンプ21が作動して不要な油をタンク23へアンロードしていないので、油温の上昇が無視できる程度であり、オイルクーラーも設置されていない。
【0018】
次に本実施形態のプレス装置11を用いたプレス方法、とりわけ太陽電池の積層成形方法について説明する。本実施形態により成形される太陽電池はシリコン系の薄膜型のであり、Pin型のタンデム型のものである。しかし本発明のプレス装置11は、別のタイプの太陽電池の積層工程にも応用することができる。太陽電池用の成形材Pは、ガラス基板に太陽電池セルが張付けられたセル付ガラス、封止材であるPVB樹脂またはEVA樹脂、保護フィルムであるPET樹脂を、重ねたものである。これらの成形材Pは、熱板18a,18cの1枚のプレス面18dに前記組合せ1セット分が載置されたもの以外に、一例としては3セットないし10セットが重ねて載置されたものも想定される。また載置の際には、上下のプレス面18dに接する面または各セットの間に緩衝材を配置してもよく、その場合は、熱板閉鎖時に衝撃を緩和することができる。しかし緩衝材を用いずにそのまま載置してもよい。これらの太陽電池用の成形材Pのプレス成形は、少なくともポンプ21の制御を行い、設定油圧2MPa以下の低圧領域の加圧工程を含む3分間以上の加圧工程により行われる。
【0019】
各熱板18a,18cのプレス面18d上に成形材Pをそれぞれ略同時に載置すると真空室16を閉鎖し、真空ポンプを作動させて真空室16内を真空化(減圧)する。また略同時に熱板内の通路に熱媒油または蒸気等の熱媒を流通させ(熱板に電気ヒータが組み込まれているタイプでは電気ヒータに通電)、熱板18a,18b,18cおよび成形材Pを昇温する。図2に示されるように、当初の熱板18a,18b,18cの温度は30℃〜80℃であるが、加熱することにより一例として150℃、望ましくは120℃〜200℃程度、更に望ましくは130℃〜170℃に昇温させる。熱板18a,18cの温度が上昇されるにつれて、載置された成形材Pは、載置面のほうが先に加熱されて熱膨張に差が出るので、ごく僅かに反りが発生する。また複数枚が重ねてセットされたものでは、熱板18,18cに近い側と遠い側で熱膨張に差が出る。これらの成形材Pの上下の熱膨張の差は、真空室16内の雰囲気温度の上昇と、成形材P全体への伝熱により、載置から加圧が開始されるまでの時間(5〜30分)のうちに再び小さくなる。
【0020】
成形材Pを載置して真空室16を真空化している際、加圧用シリンダ14のラム15の位置は最下降位置にあり、ポンプ21の回転は停止しており、各バルブは図1の状態にある。即ち電磁切換バルブ32によりポンプ21と加圧用シリンダ14の加圧用油室14aの間の主管路31は接続されており、加圧用シリンダ14とタンク23の間の管路34は遮断されている。そして図3に示されるように、制御装置30からポンプユニット22の制御装置27を介して信号を送りサーボモータ20を駆動させてポンプ21を作動させ、主管路31を通じて加圧用シリンダ14の加圧用油室14aへ作動油を送り、ラム15および可動盤17等を上昇させる上昇制御工程Aを開始する。そして可動盤17の上昇とともに中間の熱板18cについても下方から順に1段づつ当接し上昇される。
【0021】
図3に示されるように本実施形態では、上昇制御工程Aの際のポンプ21の斜板の傾転角は、大傾転角に制御されている。またポンプ21の制御は、回転数が一例として2000rev/minとなるように制御される。しかし可動盤17等を高速で上昇させる際、前記のようにポンプ21の回転数はクローズドループ制御されているが、可動盤17等の直接的な位置および速度は検出されておらず、オープン制御により可動盤17等を上昇させる。この際に第1の圧力センサ28によって検出される作動油の設定油圧p1(圧力指令値)は2.0MPa(2MPa)に設定されているが、可動盤17等の上昇とともに加圧用油室14aの容積が拡大していき、電磁切換バルブ32による圧力損失も大きいので、加圧用シリンダ14側の圧力は、0.2MPa〜0.3MPa程度にしかならない。従って実質的には前記の回転数(流量指令値)を優先した制御となる。ただしもし第1の油圧センサ28の検出値が2.0MPaに到達した場合、圧力制御に切換わり、ポンプ21の回転数を低下させるか、或いは圧力制御用の比例切換バルブ26が働き、ポンプ21の傾転角を変更し(カットオフ制御を行い)、吐出量を減少または停止させる。
【0022】
図3に示されるように、可動盤17等が上昇して熱板18a,18cの成形材Pが上方の熱板18b,18cの下面のプレス面と当接し熱板閉鎖(熱板18b,18cの下面と成形材Pの当接)されたことが上昇確認位置に配置されたリミットスイッチ19bによって検出されると、加圧用シリンダ14側の油圧とポンプユニット22側の油圧の圧力差が急速に縮小されることになる。本実施形態では、前記熱板閉鎖からはポンプユニット22側の作動油の設定油圧p1を0.5MPaに下降させ、第1の低圧加圧工程B(低圧領域の加圧工程)を行う。この際にポンプ21の回転数は、電圧制御により2000revから40rev/minに回転数を低下させるが、サーボモータ20を用いることにより急速に指令した回転数に落とすことができる。そして第2の圧力センサ33によって検出される作動油の圧力が0.5MPaに到達するまでは、ポンプ21の回転数は40revで回転される。従って第1の低圧制御工程Bは、圧力指令値が優先されているものの、加圧用シリンダ14側の圧力は必ずしも一定ではなく、当初はサーボモータ20の回転数(流量指令値)が一定となっている。
【0023】
第1の低圧制御工程Bの開始時に、ポンプユニット22の制御装置27から電磁切換バルブ25にはポンプ21の傾転角を大傾転角から小傾転角に切り換える指令を出す。しかしポンプ21の傾転角についてはこの段階ではまだ大傾転角のままである。ポンプ21の斜板にはポンプユニット22の傾転角制御用シリンダ24に対向する方向に向けて斜板角度を安定させるためのバネが入っており、低圧(一例として2.0MPa以下)では斜板の角度が変更されないようになっているからである。第1の低圧制御工程Bは、熱板閉鎖から5〜30秒程度行われ、設定油圧p1(圧力指令値)に到達する。そしてこの熱板閉鎖後、または型に近接後にポンプ21のサーボモータ20の回転数と設定油圧p1を設定することにより第1の低圧制御工程Bの圧力と時間を自由にコントロールすることができる。第1の低圧制御工程Bの設定油圧p1(主にポンプユニット22側n作動油の設定油圧p1)はポンプユニット22の制御の下限である0.3MPaから2.0MPa、より好ましくは0.3MPaから1.5MPa、太陽電池等のプレス成形で更に好ましくは0.3MPa〜0.8MPaの間で選択される。またポンプ21の回転数は指令可能な下限の回転数〜1000rev/min以下、更に好ましくは下限の回転数〜200rev/min以下とすることが望ましい。
【0024】
一方従来の圧力制御バルブ等を用いた油圧にプレス装置は、図3において破線で示されるように熱板閉鎖のタイミングで大容量ポンプを停止しても制御遅れ等の問題からピーク圧が出てしまい良好な低圧制御が行えないという問題があった。しかし本実施形態は、サーボモータ20を使用したポンプ21を使用して熱板閉鎖後に低圧制御工程を行うことにより、上記のようにポンプ21の回転数を敏感に変更可能となり、それに伴って加圧用シリンダ14の作動油の圧力が制御可能となったので、図2において実線で示される従来のポンプを使用した例ように、ピーク圧が検出されることがなくなった。
【0025】
また太陽電池用の成形材Pの場合は、当初からピーク圧等により強圧(油圧ベースで2.0MPa以上)が加えられるとボイドが発生しやすいという問題がある。更には熱膨張の差からセル付ガラスに反りが残っているとそこへ一度に強圧が加えられるとセル付ガラスの一部の部分に加圧力が集中してしまい、割れやひび等の不良品の発生に繋がる畏れがある。しかし本発明では設定油圧2.0MPa以下の低圧で第1の低圧制御工程Bおよび次の第2の低圧制御工程Dを行うことにより、ボイドの発生やセル付ガラスの割れやひび等の発生がほとんど無くなった。
【0026】
なお本実施形態において、なお加圧用シリンダ14の設定油圧p1と成形材Pに直接的に加えられる面圧p2の関係は、次の式で表される。
「面圧p2=(設定油圧p1×シリンダ加圧面積a1―可動盤等の重量w)÷成形材Pの面積a2」
よって成形材Pに加えられる面圧p2は、加圧用シリンダ14の設定油圧p1をかなり下回る。これは成形に用いられる熱板18cの枚数(段数)、成形材Pの重量および面積a2、作動油の設定油圧p1、およびシリンダの加圧面積a1の値によっても相違するが、面圧p2は設定油圧p1の25〜60%となる。
【0027】
図3に示されるように、本実施形態では、第1の低圧制御工程Bは、第2の圧力センサ33による検出圧力が所定の時間(一例として15秒)を経過すると終了し、次に第2の低圧制御工程Dへ向けての昇圧制御工程Cを行う。なお第1の低圧制御工程Bは、第1の圧力センサ33の値が所定の検出値に到達した時点で切換えるようにしてもよい。昇圧制御工程Cにおいては、ポンプユニット22の制御装置27からサーボモータ20に指令を送り、ポンプ21の回転数(流量指令値)を800rev/minに増加させる。また設定油圧p1の上昇度に応じて、第2の圧力センサ33により実測される圧力が上昇するように圧力指令値を上昇させる制御を行う。即ちポンプ21の回転数は前記の800rev/minにするが、第2の圧力センサ33が設定油圧p1となるとポンプ21の回転数を低下させるように圧力制御優先のクローズドループ制御を行う。なお第1の低圧制御工程Bの後については、作動油の流動量が減少し、電磁切換バルブ32を境としてポンプ21側の第1の圧力センサ28と加圧用シリンダ14側の第2の圧力センサ33の差圧は非常に小さくなる。
【0028】
第2の低圧制御工程Dは、加圧用シリンダ14の第2の圧力センサ33によって検出される設定油圧p1(圧力指令値)が1.1MPa(面圧0.5MPa)となるようにクローズドループ制御を行うものであり、ポンプ21の回転数(流量指令値)は最大800rev/minのままである。そして本実施形態で第2の低圧制御工程Dの時間は5分であるが、好ましくは3分〜20分行われる。なお第1の低圧制御工程Bと第2の低圧制御工程Dに分けずに一度だけ低圧制御工程を行うものでもよい。即ち、第1の圧力制御工程Bを設定油圧p1になっても終了せずに、タイマにより所定の時間が経過したら終了するように保持してもよい。なお第2の低圧制御工程Dを含めた低圧制御工程の設定油圧p1は、2.0MPa以下で行うことが好ましく、更には1.5MPa以下で行うことがより好ましい。なお本実施形態のポンプユニット22の場合、設定油圧0.3MPa以上での制御が可能であるので、下限は0.3MPaとなる。また第1の低圧制御工程Bまたは第2の低圧制御工程Dを含む低圧制御工程B,Dにおける成形材Pに加えられる面圧p2については、0.1MPa〜1.0MPaとすることが望ましく、0.1MPa〜0.7MPaとすることがより望ましい。
【0029】
第2の低圧制御工程Dがタイムアップして終了すると、次の加圧保持制御工程Fへ向けて昇圧制御Eを行う。この際ポンプ21の最大回転数を800rev/minのままである。前記のように熱板閉鎖の直後から継続してポンプ21の斜板の角度を大傾転角に変更する指令が出されているが、傾転角制御用シリンダ24へ送られる作動油の圧力が2.0MPaを超えると初めてポンプ21の傾転角は大傾転角から小傾転角に切換わる。ポンプ21の傾転角が小傾転角に切換わるとポンプ21の1回転あたりの吐出量が大傾転角時の1/4程度に制御され、ポンプ21のサーボモータ20に大きな負荷をかけることなく加圧用シリンダ14の加圧用油室14aを昇圧することができる。なおポンプ21と加圧用シリンダ14の間の主管路31に常時一定以上の差圧が発生する機構を設けるなどすれば、例えば第1の低圧制御工程Bの開始時から加圧用シリンダ14側を所望の低圧としながら、ポンプ21の傾転角を小傾転角に切り換えて制御することも可能である。
【0030】
そして昇圧制御工程Eに移行してから、1分程度で第2の圧力センサ33の検出圧力が予め設定され圧力を検出(本実施形態では一例として3.1MPa)まで昇圧されるか、または前記時間が経過すると、次に加圧保持制御工程Fに移行する。加圧保持制御工程Fでは、第2の圧力センサ33の圧力が設定された3.1MPa(面圧換算では1.5MPa)を維持するように、前の工程から継続して圧力優先のクローズドループ制御によりポンプ21のサーボモータ20の回転を制御する。具体的にはサーボモータ20は、圧力センサ33の値が3.1MPaとなると一旦回転を中止し、加圧用シリンダ14またはバルブ32,35等から作動油がリークして圧力が低下した分だけポンプ21のサーボモータ20を回転させるように制御する。この際一定のヒステリシス値を設けるようにしてもよい。即ち、第2の圧力センサ33の値が一例として設定油圧p1よりも下の3.0MPaとなった時点でポンプ21の回転を再開するようにしてもよい。
【0031】
加圧保持制御工程Fについてはポンプ21の傾転角は、そのまま小傾転角に維持されており、実際にポンプ21が回転されている時間は僅かである。よって従来のように加圧保持制御工程Fにも少なくとも小容量ポンプは回転を継続して作動油をタンクにアンロードしていたのと比較して大幅に省エネルギー化を図ることができる。試算によれば、電力消費量は、1/6〜1/9程度に削減することができる。なお加圧保持制御工程Fの成形材Pを加圧するために面圧p2は、一例として1.5MPa、望ましくは1.0〜3.0MPaの面圧p2で成形材Pを加圧することが望ましい。前記面圧で加圧することにより、太陽電池用の成形材Pのセル付きガラスと封止材の間や、封止材と保護フィルムの間などにボイドが発生することを防止することができる。また本実施形態では加圧保持制御工程Fは、熱板18a,18b,18cの温度は前記のように150℃、望ましくは120℃〜200℃程度、更に望ましくは130℃〜170℃として30分行われる。また加圧保持制御工程Fの時間が、望ましい範囲としては5分〜50分程度行われる。ただし本発明としては全体の加圧工程H(第1の低圧制御工程Bから降圧制御工程Gまでの間であって昇圧制御工程C,E等も含む)が少なくとも3分以上であって5時間までのものを想定している。
【0032】
図2に示されるように、加圧保持制御工程Fの設定時間がタイムアップすると、次に降圧制御工程Gに移行する。降圧制御では制御装置27からポンプ21のサーボモータ20へ逆回転指令を送り、予め設定された圧力下降度に応じて、第2の圧力センサ33で実測される圧力が下降するように制御を行う。このようにサーボモータ20を用いて降圧制御することにより正確な降圧制御工程Gが可能となる。本実施形態では、降圧制御では10分〜30分かけてほぼ圧力センサの値が常圧となるように減少させる。また降圧制御工程Gと同時に熱板内の通路に冷媒を流通させ、熱板18a,18b,18cの温度を150℃から50℃へ低下させる。
【0033】
なお降圧制御工程Gについては、管路34を介して流量調整バルブ付きパイロットチェックバルブ35の流量を最小にし、電磁切換バルブ36を開閉制御して、所望の圧力にまで低下させるようにしてもよく、別のバルブを設けて制御するようにしてもよい。
【0034】
そして加圧用シリンダ14の検出圧力(第2の圧力センサ33)が所定の値まで下降し、かつ制御装置30のタイマが所定の時間(一例として60分)を経過したら、次に可動盤17および熱板18a,18cを下降させる下降制御工程(図示せず)を行う。可動盤17等の下降制御工程は、図1の状態から電磁切換弁を励磁して管路31を閉鎖するとともに電磁切換バルブ36を消磁して流量調整バルブ付きパイロットチェックバルブ35を開く。すると加圧用シリンダ14のラム15が可動盤17等の自重で下降して加圧用油室14aの作動油がタンク23へ戻される。そして可動盤17が下限まで下降したことがリミットスイッチ19aにより検出されると電磁切換バルブ37を励磁して管路34を閉鎖する。なお真空室16内に大気を導入する真空破壊については、本実施形態では加圧用シリンダ14の圧力および熱板温度が完全に下降される直前に開始しているので、可動盤17が下降されると真空室16の扉を開放し、加圧が終了した成形材Pを取り出す。
【0035】
本発明については、上記の制御に限定されず、各種の応用が考えられる。例えば、昇圧制御工程C,E、降圧制御工程Gともに図3に示されるパターンに限定されずに、1段階ないしは更に複数段階に昇圧や降圧を行うようにしてもよく、曲線状に昇圧や降圧を行うようにしてもよい。なおリミットスイッチ19bの位置は、熱板閉鎖直前の位置に設け、閉鎖直前の可動盤17の位置を検出してポンプ21の回転数や設定油圧p1を減少させるようにしてもよい。そうすれば更に低速で熱板閉鎖を行うことができるので、当接時に成形材Pに与える影響が小さくなる。またサーボモータ20の回転数の合計値から可動盤17の現在位置を求め、そこから低速上昇(傾転角を大傾転角から小傾転角への切換および/または回転数の変更)へ移行するようにしてもよい。また可動盤17と上盤13の間に位置センサを取付け、可動盤17を速度制御により移動させるようにしてもよい。
【0036】
また第1の圧力センサ28および第2の圧力センサ33による検出値は、上記の実施形態以外の形で制御に用いてもよい。例えば、全ての制御を第1の圧力センサ28の検出値により制御することも可能であり、両者の検出圧力を組合わせるようにしてもよい。従って可動盤17等の当接後の低圧制御工程B,Dを設定油圧2.0MPa以下または更には設定油圧1.5MPa以下とする場合に用いる圧力センサ28,33はどちらの圧力センサをあってもよい。
【0037】
使用されるポンプ21は、アキシャル型ピストンポンプ21の例について説明したが、1回転あたりの吐出量を制御して変更可能なポンプ21であれば、一例としてベーンポンプなどでもよい。またポンプ21に使用されるモータは、サーボモータ20が好適に用いられるが、回転数の制御および1成形サイクル中に停止および駆動を繰り返すことが可能なモータであれば、一例としてインバータ制御モータなどでもよい。更にポンプ21は、双方向吐出型、一方向吐出型のどちらのポンプ21であってもよい。また本実施形態では1基のプレス装置11の加圧用シリンダ14に作動油を供給するポンプ21は1台で行っているが、ポンプ21は1台に限定されない。例えば900mm×1800mmといった大型の太陽電池のプレス装置11の場合、加圧用シリンダ14も2個〜6個となり、ポンプ21も複数となることも想定される。その際、加圧用シリンダ14毎に対応してポンプユニット22を設けてもよく、サーボバルブ等や流量制御バルブ等によりポンプユニット22の作動油を各シリンダ14へ分配するものでもよい。また加圧用シリンダ14は単動シリンダの他、復動シリンダであってもよい。また比較的廉価で吐出量の大きいサーボモータを用いない歯車ポンプやピストンポンプと、サーボモータ等により吐出量を変更可能なポンプの両方を配置し、可動盤17等の上昇時には前記のサーボモータを用いない歯車ポンプ等を主に使用し、上昇完了直前または上昇完了を確認してから前記のサーボモータを用いないポンプを停止して、サーボモータ等を用いたポンプにより制御を行うようにしてもよい。
【0038】
またプレス装置11については、成形効率の点から多段の熱板間に成形材Pが載置されて加圧されるものが好ましいが、2枚の熱板18のプレス面間で成形材Pが加圧されるものでもよい。またプレス装置11は、上側の熱板18が下降されて加圧されるものでもよい。更にプレス装置11は、プレス面は平坦なものに限定されず、曲面や凹凸面等から形成され、曲面や凹凸面等を有する成形品を成形するものでもよい。またプレス装置11は、水平方向に可動盤17、型、熱板等が移動され加圧されるものでもよい。
【0039】
また本発明により成形される成形材Pは、太陽電池が想定されるが、それ以外にも設定油圧2MPa以下の低圧領域の加圧工程を含み少なくとも3分間以上の加圧工程が必要な、脆性材料であるグリーンシート等により形成された層を含む回路基板等であってもよい。更には別の脆性材料である強圧により変形したり折れたりする金属部を含む回路基板または回路基板以外の成形材Pであってもよい。それらの成形材Pでは、熱による成形材Pの反りの問題、熱板18の平坦度の問題、上盤13と可動盤17の平行度の問題等から強圧を加えると割れやひびなどの不良が発生したりするので、本発明が有効である。また本発明により成形される成形材は、ビルドアップ基板の2次プレス装置など軟化点以上の温度の樹脂材料を含む成形材であってもよい。これらの軟化点(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、またはそれらの混合物に関わらず、圧力を加えることにより変形可能となる温度点)以上の樹脂を加圧する場合、加圧当初に強圧を加えると所望の厚みよりも薄くなってしまったり、必要な部分の樹脂が周囲に流れてしまったりして不良品となる場合がある。そのため当接直後にピーク圧が立たないようにすることが重要となる。更には設定油圧2MPa以下の低圧領域の加圧工程を含み少なくとも3分間以上の加圧工程が必要な、成形材であれば他のものでもよい。
【符号の説明】
【0040】
11 プレス装置
14 加圧用シリンダ
17 可動盤
18a,18b,18c 熱板
20 サーボモータ
21 ポンプ
22 ポンプユニット
24 傾転角制御用シリンダ
25,32,37 電磁切換バルブ
27,30 制御装置
28 第1の圧力センサ
33 第2の圧力センサ
B 第1の低圧制御工程
D 第2の低圧制御工程
F 加圧保持制御工程
H 加圧工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプから加圧用シリンダに作動油を供給して3分間以上の加圧工程により成形材を加圧するプレス装置において、
サーボモータまたはインバータ制御モータにより回転数を制御可能かつ吐出量を変更可能なポンプが設けられ、
前記ポンプを制御して設定油圧2MPa以下の低圧領域の加圧工程を含む加圧工程により成形材を加圧することを特徴とするプレス装置。
【請求項2】
前記ポンプと前記油圧シリンダの間には、圧力制御バルブまたは流量制御バルブが配設されておらず、
前記ポンプのサーボモータまたはインバータ制御モータの回転数の制御と、吐出量の制御により加圧用シリンダの作動油を制御することを特徴とする請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
ポンプから加圧用シリンダに作動油を供給して3分間以上の加圧工程により成形材を加圧するプレス方法において、
サーボモータまたはインバータ制御モータにより回転数を制御可能かつ吐出量を変更可能なポンプが設けられ、
前記ポンプを制御して設定油圧2MPa以下の低圧領域の加圧工程を含む加圧工程により成形材を加圧することを特徴とするプレス方法。
【請求項4】
前記成形材は、脆性材料または軟化点以上の温度の樹脂材料を含む成形材であることを特徴とする請求項3に記載のプレス方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−35317(P2012−35317A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180169(P2010−180169)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】