説明

プレバイオティックであるイソマルトオリゴ糖を含む穀物組成物、及び、この製造方法、並びに、その用途

イソマルトオリゴ糖を含む基質、穀物、及び、塊茎組成物の製造方法を開示する。この方法は、(a)マルトースを生産するために、マルトース転化酵素及びデンプン液化酵素を、穀粒あるいは塊茎等の基質を含む非ゼラチン化デンプンと接触させる工程と、(b)トランスグルコシダーゼ酵素と前記マルトースとを接触する工程であって、前記工程(a)及び工程(b)が、デンプンゼラチン化温度以下で行われることを特徴とする工程、及び(c)前記オリゴ糖が、前記基質、穀粒、又は、塊茎から供給されることを特徴とする、酵素的に生産されたイソマルトオリゴ糖を有する基質、粒、又は、塊茎組成物を得る工程を、含む方法である。このマルトース化酵素(マルトース転化酵素)は、穀粒の内因性マルトース転化酵素、又は、外因性マルトース化酵素のいずれかである。接触工程は、連続的か、あるいは、同時に行われる。本発明は、説明された方法で製造された穀物組成物を含む小麦粉、飲料、添加物、についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソマルトオリゴ糖を含む穀物組成物並びにその製造方法について述べる。この方法は、穀物中に含まれるデンプン由来のオリゴ糖を提供することを含む。
【背景技術】
【0002】
イソマルトオリゴ糖(IMOs)は、1,4アルファ及び/又は1,6アルファグルコシド結合を有するオリゴ糖の混合結合物である。それらは、変則的に結合されたオリゴ糖(ALOs)として知られている。イソマルトオリゴ糖は、イソマルトース、パノース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラノース、イソパノース、及び、高分岐オリゴ糖糖の多くの分岐オリゴ糖を含む。
【0003】
IMOs含有製品に対する需要がある。IMO製品は、製品形態により、粉体、あるいは、液体で販売されている。IMO含有製品の多くは、食品工業分野でとり扱われている。IMO製品の例は、調味料(マヨネーズ、酢、スープの素等)、菓子(飴、チューイングガム、チョコレート、アイスクリーム、シャーベット、シロップ)、果物又は野菜の加工食品(ジャム、マーマレード、フルーツソース、ピクルス)肉あるいは魚食品(ハム、ソーセージ等)焼成食品(パン、ケーキ、クッキー、ペストリー)調理食品(サラダ、煮豆等)、缶及び瓶詰め食品、インスタント食品(インスタントコーヒー、インスタントケーキベース等)及びアルコール(リカー、セージュ(seju)、ワイン、酒、ビール[国際公開公報No. WO 02/20712 A1])及びノンアルコール(コーヒー、ジュース、ネクター、炭酸飲料、レモネード、コーラ)の飲料である。イソマルトオリゴ糖はさらに、家畜及びペットの飼料成分として用いることができる。食品以外の適用分野は、化粧品及び医薬品分野(たばこ、口紅、歯磨き、内服薬等)である。
【0004】
イソマルトオリゴ糖は、機能性健康食品に属するオリゴ糖(FHFO)に分類される。典型的な、IMOsは、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、及び、ゲンチオオリゴ糖を含む。IMOsは、日常生活において経口的に摂取することにより人及び動物の健康を増進することに関係し、「プレバイオティクス」に分類される。プレバイティクスは、腸内に存在する、あるいは、腸内へ治療的に導入された有益微生物の成長及びそれらの生物学的活性を選択的に刺激することにより、ヒトへ生物化学的影響を及ぼす非消化性物質(例えば、食物繊維)として定義される(Przemylaw Jan tomasik and Piotr Tomasik. 2003 American Association of Cereal Chemists, Inc. 80(2): 113-117)。オリゴ糖のこのプレバイオティック作用は、大腸のビフィドバクテリア及びラクトバシルス(プロバイオティック)の数を増やし、腐敗菌の数及び濃度を減らす。ビフィドバクテリアは、酸形成、あるいは、抗微生物活性を高めるといったいずれかの性質により病原体の成長を抑制し、健康を改善する。このような作用は、免疫系の調整(抗腫瘍作用)、トリグリセリド及びコレステロールレベルの減少、ビタミン(B群)の生産、血中アンモニア濃度の減少、癌転移の抑制、抗生物質治療後の腸内菌層の正常化、消化酵素の生産、抗生物の副作用の減少等の複数の効果と関連している(Kohmoto T., Fukui F.,Takaku H., Machida Y., et al., Bifidobacteria Microflora, 7(2)(1988), 61-69; Kohmoto K., Tsuji K., Kaneko T., Shiota M., et al., Biosc. Biotech. Biochem., 56(6)(1992), 937-940;Kaneko T., Kohmoto T., Kikuchi H., Fukui F., et al., Nippon Nogeikagaku Kaishi, 66(8)(1992), 1211-1220;Park J-H, Jin-Young Y., Ok-Ho S., Hyun-Kyung S., et al., Kor. J. Appl. Microbiol. Biotechnol., 20(3) (1992),237- 242、及び、Modler, H. W., 1992,“Compounds which enhance the growth of Prebiotic Bacteria", presented at the International Roundtable on Animal Feed Biotechnology, Ottawa, Ontario, Canada.)。
【0005】
イソマルトオリゴ糖は、D-グルコシルトランスフェラーゼ(E.C.2.4.1.24、トランスグルコシダーゼ、アルファ-グルコシダーゼ)により促進されるトランスグルコシレーション反応により合成される。この酵素は、アルファ-D-グルコ-オリゴ糖とインキュベートしたときに、加水分解反応、及び、転移反応の両方を触媒する。この転移は、6-OH(6位水酸基のグルコース分子)において、最も頻繁に起こり、D-グルコースからのイソマルトースの生成、または、マルトースから、パノースの生成を促進する。この酵素もまた、コージビオース(kojibiose)又はニゲロースを形成するためにD-グルコースの2-OH又は3-OHへの転化、あるいは、マルトースを再生するめに、4-OHへの転化も促進する。トランスグルコシダーゼ反応の結果、マルトオリゴ糖は、非還元末端からグルコース分子の一級水酸基に結合するグルコース分子を高い割合で含むオリゴ糖(例えば、アルファD-1,6グルコシド結合による、イソマルトオリゴ糖)に転化される。アスペルギウスニガー(Aspergillus niger)由来のトランスグルコシダーゼは、重合度(DP)が低いオリゴ糖のみに作用する(McCleary B. V., Gibson T. S., Carbohydrate Research 185(1989)147-162 ; BensonC. P., Kelly C.T., Fogarty W.M., J. Chem. Tech. Biotechnol., 32(1982) 790-798 及びPazur J.H., Tominaga Y., Debrosse C.W., Jackman L.M., Carbohydrate Research, 61(1978)279-290)。重合の程度は、デキストロース単位の数で表す。例えば、マルトース等の2分子の糖は、2のDPを有する。これらの糖は、虫歯を防ぐ作用(Oshima, et al., 1988 ; The. Caries inhibitory effects of gos-sugar in vitro and rat experiments. Microbial Immunol. 32, 1093-1105)及びビフィズス菌の成長因子(前生物的)として作用し、ヒトの腸内細菌層を改善する(Komoto, et al., 1988 ; Effect of Isomalto-oligosaccharides on human fecal flora, Bifidobacteria Micro flora 7, 61-69)という論文があることから、食品添加物をして注目を集めている。
【0006】
イソマルトオリゴ糖は違った方法でも得ることができる。例えば、高い固形分濃度を有する(すなわち60-80 %)グルコースシロップをグルコアミラーゼで処理すると、主にDP2を有するイソマルトオリゴ糖が得られる。この固形分レベルが高いと、通常の加水分解とは逆方向の反応が強制的に起る。
【0007】
小麦、大麦等を含む穀物は、小麦粉、デンプン、デンプン分解物(グルコース、フルクトース、マルトース高含有シロップ等)及び小麦グルテン等の多機能性食品添加物の生産において、優れた原材料である。マルトースを多く含むシロップはまた、抗体、医薬品、ワクチン、アルコール(飲料及び燃料用の両方)、アミノ酸、有機酸等、そして、イソマルトオリゴ糖と呼ばれる機能性健康食品のオリゴ糖等を、生化学的手法で製造するために、各種微生物発酵の炭素源として用いられる。マルトースシロップ等のデンプン加水分解物の簡便な生産過程において、不溶性穀物デンプンは、通常、デンプンの液化酵素、及び、アルファアスペルギウスアミラーゼ酵素による、加水分解に先立って、他の小麦細胞成分から分離される。マルトースは、2のグルコシル残基を有するα1,4-結合により結合している二糖である、及び、マルトオリゴ糖の中では、最小の糖である。マルトースは各種精製度において、シロップ、粉体及び結晶として、大規模に生産されている。各種マルトースシロップは、ビール醸造、焼き物、ソフトドリンク、缶製造、菓子及び他の食品及び飲料製造において、市販製品として取引されている。日本では、高精製マルトースは静脈栄養として使用されている。マルチトールとなるマルトースの触媒還元物は、低カロリー甘味料になる。近年、マルトース高含有シロップが、イソマルトオリゴ糖の工業生産において、重要な原材料となっている(J.K. Shetty and O.J. Lantero, 1999“Transglucosilation of Malto-oligosaccharides.” Papre present at 50th Starch Convention, Detmold, Germany)。
【0008】
マルトース高含有シロップ等の、デンプン加水分解物の生成に関する簡易的な方法は、まず、バシルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis)あるいは、バシルスステアロセレモフォリス(Bacillus stearothermophilus)のいずれか由来の熱安定性αアミラーゼ[E.C.3.2.1.2,アルファ(1,4)-グルカングルカノハイドラーゼ]による加水分解の前に、不溶性デンプンを単離する。精製デンプンの加水分解には、30-35 %溶解固形分ベース[dsb]の、不溶性穀物デンプンの懸濁液を用いる。デンプンを溶かし、加水分解をしやくするために、85 ℃から120 ℃の間の温度で加熱する。この液化デンプンは、デンプン加水分解物を得るために、55 %以下のマルトース含有シロップに対しては、糸状菌由来のアルファアミラーゼ(ジェネンカーインターナショナル(Genencor Inter National, Palo Alto, CA) より「CLARSEL」の商標で市販されている)、及び、55 %から62 %の間のマルトースを含むシロップ、及び、1 %以下のグルコースを含むシロップに対しては、βアミラーゼ(ジェネンカーインターナショナル(Genencor Inter National, Palo Alto, CA )より「OPTIMALT BBA」の商標で市販されている)等の、特定のマルトース転化酵素により処理された、別の糖質組成物と共に、更なるデンプン加水分解工程を経る。62 %以上のマルトースを含むシロップに対しては、βアミラーゼの結合中の、脱分岐酵素(ジェネンカーインターナショナル(Genencor Inter National, Palo Alto, CA) より「OPTIMAL-1000」の商標で市販されている)の添加が有効である(Faigh, J.; Duan, G.; Strohm, B. and Shetty, J.(2002)“Production of Maltose, High Maltose & Very High Maltose Syrups,”Technical Bulletin, Genencor International Inc.)。
【0009】
デンプンがゼラチン化する温度より低い温度で、細菌由来のアミラーゼを用いて加水分解を行い(Leach et al., 1978 ; US Pat. No. 4,113,509)、その後に、マルトース高含量シロップを生産するためにベータアミラーゼによる加水分解(Leach et al., 1975 ; US Pat. No. 3,922,196)を行う工程により、穀物デンプン(精製されたものでもよい)を加水分解物へ添加することに関するプロセスが報告されている。しかしながら、そのような方法で製造されたシロップは、総糖量に対して55%のマルトースしか含んでおらず、このほかにマルトトリオースが多く含まれている。液化デンプンを用いたマルトース高含量シロップを生産するこの方法(熱安定性アルファアミラーゼを用いて、ゼラチン化の後に加水分解する方法)は、European Patent Application #0905256(ChristopHersen, et al., 2000)及び U.S. Pat. No. 5,141, 859 (Nimmi, et al., 1992)に開示されている。このプロセスは、煩雑で、高価で、他の細胞成分から、デンプンを分離すこと、高価なマルトース転化酵素の添加、並びに、高い反応温度と長い反応時間が必要となる。European Patent Application #0350737 A2(Shinke, et al., 1989)は、バシルスステアロセルモフィリス(Bacillus stearothermophilus)由来のアルファアミラーゼを用いて、液化工程(ゼラチン化の後に高温条件で液化する)を省き、60℃で、コーン、小麦、ポテト、甘藷由来の穀物デンプン(精製されたこのでもよい)の加水分解により、マルトースシロップを生産する方法を開示している。しかしながら、この方法により加水分解されたデンプンのマルトース含量は、50 %から55 %である。このシロップもまた、多量のマルトトリオース(30-36 %)を含んでいた。この方法は、デンプンの起源に関係なく、マルトース対マルトトリオースの比が、2.0未満となる方法であった。マルトトリオースを多く含むマルトースシロップは、マルトトリオースの代謝が困難であることから、酵母によるアルコール発酵を含む多くの微生物発酵に提供される炭素基質としては好ましくない。マルトースは、イソマルトオリゴ糖の生産において、グルコシルトランスフェラーゼにより触媒されるトランスグリコシレーション反応において、グリコシル残査の好ましい提供源である(J.K. Shettv and O.J. Lantero, 1999 “Transglucosylation of Malto-oligosaccharides.” Paper presented at 50th Starch Convention, Detmold, Germary)。U.S.Pat. No.6,361,809は、E.C.3.2.1.133として分類される、バシルスステアロセレモフォリス(Bacillus stearothermophilus)由来の加水分解酵素である、マルトゲナーゼアルファアミラーゼで、精製されたもちトウモロコシ(waxy maize)を処理することにより、マルトース及び制限デキストリンを製造する方法を開示する。マルトースを含む希浸漬液のエバポレーションは、高いエネルギーコストがかかることから高価であり微生物汚染の危険性も高い。
【0010】
小麦、麦芽、サトウモロコシ(マイロ)、キビ(ラギ(ragi))、等の伝統的穀物、特に、全粒穀物は、タンパク質、繊維、及び、ビタミン等のマクロあるいはミクロ栄養素として用いられている。この穀粒穀物の大部分は、生体内で容易に消化され、プレバイオティクス、あるいは、他の栄養機能の役割を果たす。変性された消化物、及び、難消化性の穀物が、腸内細菌を制御するプレバイオティクスとして機能することが報告されている(Gibson, G. R, and Roberfroid, M. B. 1995, Dietary modulation of the human colonicmicrflora : Introducing the Concept of prebiotics. J. Nutr. 125,1401-1412)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
糖転移反応の前に、デンプンを他の穀物成分から分離する、及び/又は、ジェットクッキング(jet cooking)の高い温度に基質のデンプンをさらすことなく、例えば穀粒、あるいは、塊茎等の基質から、酵素学的手法により得られるイソマルトオリゴ糖を含む穀物組成物の生産に対する興味が今も存在する。このような方法は、微生物汚染の危険性を最小限にするため低いpHで行うことが望まれている。本発明は、これらの課題に取り組んでいる。
【発明を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、(a)マルトースを生産するために、マルトース転化酵素と、デンプン液化酵素とを、穀物を含む、非ゼラチン化デンプンと接触させる工程、(b)前記マルトースとトランスグルコシダーゼを接触させる工程であって、工程(a)及び工程(b)がデンプンのゼラチン化温度より低い温度で行われることを特徴とする工程、及び、(c)前記オリゴ糖が穀物由来であることを特徴とする酵素を用いて生産されたイソマルトオリゴ糖を含む穀物組成物を得る工程を含む、イソマルトオリゴ糖含有穀物組成物を製造する方法について述べる。
【0013】
ある態様において、工程(a)及び工程(b)は、同時に行われる。他の態様において、この方法は、さらに得られた穀物組成物を乾燥する工程を含む。他の態様において、この穀物は、小麦、大麦、ライ麦、麦芽、及び、コメから成る群より選択される。他の態様において、このマルトース転化酵素は、ベータアミラーゼである。他の態様において、このマルトース転化酵素は、前記穀物の内因性物質である。他の態様において、この穀物酵素は、前記穀物の外因性物質である。他の態様において、デンプン液化酵素は、バチルス(Bacillus)由来のアルファアミラーゼである。他の態様において、デンプン液化酵素は、バチルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis)又はバチルススレアロセレモフィリス( Bacillus stearothermophilus)由来の酵素である。他の態様において、グルコシド転移酵素は、トランスグルコシダーゼである。他の態様において、このトランスグルコシダーゼは、アスペルギウス(Aspergillus)由来である。他の態様において、このトランスグルコシダーゼは、(Aspergillus niger)由来である。他の態様として、本発明は、前記方法に従って製造された穀物組成物を含む。他の態様として、本発明は、上で述べた穀物組成物を含む食品添加物を含む。
【0014】
本発明は、ゼラチン化温度以下で、マルトースシロップを生産するために、内因性マルトース転化酵素を含有する非ゼラチン化穀物を、バチルス(Bacillus)種から選択される酵素と接触することを特徴とする、イソマルトオリゴ糖高含有小麦粉を生産する方法も開示する。このマルトースシロップは、その穀物自身に由来するイソマルトオリゴ糖を含む基質(塊茎又は穀物)組成物を作るために、さらに、トランスグルコシダーゼと接触させる。
【0015】
本発明はまた、ゼラチン化温度以下で、内因性マルトース転化酵素(小麦、大麦等)を有する、非ゼラチン化穀物を、内因性マルトース転化酵素を有しない穀物(例えば、ソルガム、キビまたは、コメ)と混合し、この穀物混合物を、マルトースシロップを生産するためにバチルス(Bacillus)属から選択される酵素と接触することを特徴とする、イソマルトオリゴサッカライド高含有小麦粉を開示する。このマルトースシロップは、穀物混合物自身に由来するイソマルトオリゴ糖を含んだ基質(塊茎又は穀物)組成物を作るために、トランスグルコシダーゼと接触させられる。
【0016】
本発明は、(a)マルトースを生産するために、バチルス(Bacillus)種由来のデンプン液化アルファアミラーゼと、内因性マルトース生産ベータアミラーゼを有する非ゼラチン化小麦を接触させる工程と、(b)前記マルトースをトランスグルコシダーゼと接触させる工程であって、工程(a)及び工程(b)が、小麦のゼラチン化温度より低い温度で起ることを特徴とする工程、及び(c)前記オリゴ糖が、非ゼラチン化穀物由来であることを特徴とする、酵素を用いて生産されたイソマルトオリゴ糖を含む小麦穀物組成物を得る工程を含む、小麦穀物組成物を製造する方法を開示する。
【0017】
加えて、本発明の他の態様において、この方法は、食品添加物の製造に用いる穀物組成物を作ることに用いる。他の態様は、この方法に従って製造された穀物組成物を含む。他の態様は、上で開示された穀物組成物を含む穀物粉体を含む。他の態様は、上の方法に従って製造されたイソマルトオリゴ糖を含む。他の態様は、前記イソマルトオリゴ糖を含む経口補水溶液を含む。他の態様は、前記イソマルトオリゴ糖が、前記非ゼラチン化穀物から酵素を用いて提供されることを特徴とする、非ゼラチン化穀物と少なくとも1のオリゴ糖を含有する穀物組成物を含む。他の態様は、この穀物組成物は、少なくとも1のイソマルトオリゴ糖を1重量%含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
定義
「穀物(穀粒)」の語は、植物、シリアルとして分類される植物または、単子葉植物として分類されるポアレスオーダー(Poales order)に属する、具体的には、イネ科の植物を言う。これらに属する植物の例は、コムギ属(Triticum (小麦))、オオムギ属(Hordeum (大麦))、 ライムギ属(Secale (ライ麦))、トウモロコシ属(Zea(コーン(corn)又は メイズ(maize)) 、カラスムギ属(Avena(オーツ麦))、ソバ属(Fagopryum(そば))、モロコシ属(Sorghum(ソルガム 又はマイロ)、キビ属(Panicum)又は、エセタリア属(Setalia)(キビ又はラギ(ragi))、あるいは、イネ属(Orvza)(コメ)から選択される植物である。
【0019】
例えば、一の態様において、「小麦」の語は、パン小麦(Triticum aestivum)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0020】
例えば、一の態様において、「大麦」の語は、六条大麦(Hordeum vulgare)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0021】
例えば、一の態様において、「ライ麦」の語は、ライ麦(Secale cereal)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0022】
例えば、一の態様において、「トウモロコシ」の語は、トウモロコシ(Zea mays)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0023】
例えば、一の態様において、「オーツ麦」の語は、えん麦(Avena sativa)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0024】
例えば、一の態様において、「そば」の語は、ソバ(Fagoprvum esculentum)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0025】
例えば、一の態様において、「ソルガム」の語は、ソルガムビカラー(Sorghum bicolor)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0026】
例えば、一の態様において、「キビ」の語は、キビ(Panicum miliaceum)または アワ(Setaria italic)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0027】
例えば、一の態様において、「コメ」の語は、イネ(Orvza sativa)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0028】
「塊茎」の語は、地下の茎または根の末端部に隆起を形成してデンプン質を貯蔵している有機物(例えば、ポテト、甘藷、ヤムイモ、マニオカ等)を言う。
【0029】
例えば、一の態様において、「ポテト」の語は、ジャガイモ(Solanum tuberosum)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0030】
例えば、一の態様において、「甘藷」の語は、サツマイモ(Ipom[oe]a balatas)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0031】
例えば、一の態様において、「ヤムイモ」の語は、ヤマイモ(Dioscorea sativa)、メキシコヤムイモ(D. villosa)、ナガイモ(D. batatas)の系統として分類されるまたは分類されていた植物を言う。
【0032】
「基質」の語は、マルトース、それからIMOに酵素的に変換することができる原料を意味する。「基質」の語は、例えば、穀物及び塊茎を含む。さらに、「基質」の語は、穀物の全ての形態(脱穀精製されたもの、あるいは、脱穀精製されていないもの)、又は、塊茎を含む、全粒穀物、粉砕穀物、粗引き穀物、及び、粉末及び任意の植物部分を含む。
【0033】
「デンプン」という語は、植物の少糖類の複合体を含むあらゆる物質であって、アミロース及びアミロペクチンを含む化学式(C6H10O5X(Xは任意の整数)で表されるあらゆる物質を言う。
【0034】
「粒デンプン」という語は、ゼラチン化されていない、非加熱(生の)デンプン、を言う。「ゼラチン化」という語は、粘性のある懸濁液を形成するためのデンプンの可溶化を言う。
【0035】
非ゼラチン化デンプンを含む「基質」、「穀物」又は「塊茎」という語は、ゼラチン化温度、あるいは、液化温度よりも高い温度にされされたことのないデンプンを含む基質、穀物、または、塊茎、を意味する。
【0036】
「マルトース」という語は、アルファ1,4D-グルコシド結合により結合されている2のグルコース残基から成る糖を言う。
【0037】
「イソマルトース」の語は、アルファ1,6D-グルコシド結合により結合されている2のグルコース残基から成る糖を言う。
【0038】
「イソマルトオリゴ糖(IMO)」という語は、非還元末端に、アルファ1,6グルコシド結合により結合している、少なくとも2のグルコシド残基を有する糖を言う。加えて、この語は、アルファ1,6及びアルファ1,4グルコシド結合を有する、変則的に結合したオリゴ糖も意味する。典型的な、イソマルトオリゴ糖は、イソマルトース、パノース、及びイソマルトトリオースを含む。
【0039】
「イソマルトオリゴ糖穀物組成物」の語は、高速液体クロマトグラフィーで測定される、糖の総量に対するイソマルト(オリゴ糖)糖類の量が少なくとも1 %(w/w%)である穀物組成物を言う。
【0040】
「マルトース転化酵素」は、デンプンをマルトースに転化する酵素を意味する。通常、マルトース転化酵素は、糸状菌、バクテリア、及び植物由来のアルファアアミラーゼ及びベータアミラーゼである。
【0041】
「アミラーゼ」の語は、デンプンの加水分解を触媒する酵素を言う。
【0042】
「アルファアミラーゼ」という語は、アルファ1,4グルコシド結合の加水分解を触媒するE.C.3.2.1.1及び/又は3.2.1.133に分類される酵素を言う。これらの酵素もまた、1,4-アルファ結合を有するDグルコース単位を含む多糖中の1,4-アルファDグルコシド結合のエキソ及びエンド型加水分解に作用することが知られている。グリコゲナーゼもこれらの酵素と同義である。通常これらの酵素は、アルファ1,4グルカン4-グルカノヒドラーゼ、グルカノハイドラーゼを含む。
【0043】
「ベータアミラーゼ」という語は、アルファ1,4-グルコシド結合の加水分解を触媒し、マルトース単位を放出するE.C.3.2.1.2クラスの酵素を言う。これらの酵素もまた、糖鎖の非還元末端から、連続的にマルトース単位を切り離すために、多糖中の1,4-アルファ-D-グルコシド結合の加水分解に作用することが知られている。
【0044】
「グルコース転移酵素」の語は、アルファD-オリゴ糖と共にインキュベーションすると、加水分解と転移反応の両方を触媒する酵素を言う。通常、これらの酵素は、トランスグルコシダーゼ及び/又は、例えば、D-グルコシルトランスフェラーゼ等の、E.C.2.4.1.24クラスの酵素を言う。これらの酵素はまた、1,4-アルファ-グルカン 6-アルファ-グルコシルトランスフェラーゼ 及び オリゴグルカン-分岐グリコシルトランスフェラーゼとも言われる。
【0045】
「脱分岐酵素」の語は、アルファ-1,6-結合の加水分解を触媒する酵素を言う。E.C.3.2.1.41クラスの酵素は、アルファ-1-6結合の加水分解作用を有する。このクラスの典型的な酵素は、プルラナーゼであって、アルファ-デキストリン-エンド-1,6-アルファグルコシダーゼ、制限デキストリナーゼ、脱分岐酵素、アミロペクチン1,6-グルカノヒドラーゼとしても知られている。E.C.3.2.1.41クラスの他の典型的な酵素の例は、 [アルファ-(1,6)-グルカン6-グルカノヒドラーゼ、アルファ(1,6)-グルコシダーゼ]とも言われるプルラナーゼである。
【0046】
「デンプンゼラチン化温度」の語は、粒デンプンの液化またはゼラチン化に影響するのに、十分高い温度を言う。水の中でデンプンを加熱すると、デンプン粒が膨張する。所定濃度の固形物を含有する場合、この膨張した粒デンプンは空間の大部分を占有し、ペーストと言われる粘性のある塊を生じる。デンプン分子の可溶化は、ゼラチン化と言われている。ゼラチン化は、複屈折(birefringence)の喪失によって起る。デンプンゼラチン化温度は、ゼラチン化が起る温度を言う。
【0047】
「デンプン液化酵素」の語は、デンプン粒を液化させる酵素を言う。典型的なデンプン液化酵素は、E.C.3.2.1.1クラスのアルファアミラーゼである。
【0048】
「内因性酵素」の語は、穀物にマルトース転化酵素を添加することなく、穀物あるいは、塊茎中に存在している酵素を言う。
【0049】
「外因性酵素」の語は、穀物の中には本来存在しない酵素を言う。典型的な外因性酵素は、例えば、コメ、キビ等の野生型基質の中には存在しない酵素を意味する。
【0050】
「総糖含量」の語は、デンプン、穀物あるいは塊茎組成物中に存在する糖の総量を言う。
【0051】
「IMO No.(IMOナンバー)」の語は、イソマルトース、パナオース、イソマルトリオース及びDP3より大きい分岐糖の和として計算される値を言う。IMOナンバーは、組成物または溶液中に存在するIMO化合物量の指標となる。
【0052】
「分岐糖の割合(RBS)」の語は、得られた穀物組成物中に存在するマルトリオース(DP3)のレベルと比較した、マルトース(DP2)の割合を言う。
【0053】
「糖化力度(DP0)」単位の語は、100 mlの基質を、20 ℃(68 F)で、1時間インキュベートしたときに、5 mlのフェーリング溶液を還元するのに十分な量の還元糖を生産することができる、5 %のサンプル酵素溶液0.10 ml中に含まれる酵素の総量を言う。
【0054】
「DE」又は、「デキストロース当量」の語は、総還元糖の濃度を測定する工業的基準であり、乾燥重量に対する、D-グルコースの割合として計算される。非加水分解粒デンプンのDEは0であり、D-グルコースは100のDEを有する。
【0055】
「総糖含量」の語は、デンプン組成物中に存在する総糖含量を言う。
【0056】
「乾燥固形成分」及び「dsb」の語は、懸濁液中の化合物(例えば小麦)の乾燥重量成分の総量(in%)を言う。
【0057】
「乾燥固形含量」、「乾燥固形粒デンプン」、及び、「乾燥固形デンプン(dss)」の語は、懸濁液中の総デンプン量の乾燥重量(in%)を言う。
【0058】
「ブリックス」の語は、所定の温度における、溶液中の糖含量を測定するための比重単位を言う。従って、「ブリックス」は、溶液中に存在する可溶性糖の量を意味する。このブリックス計測器は、水溶性糖溶液の100グラム当たりに存在するスクロースのグラム数を測定する(可溶性固形含量の総量)。例えば、1.00ブリックスの測定値は、溶液中に、10 mg/mlの糖が存在することを意味する。ブリックス測定値は、比重計あるいは、屈折計によって測定される。
【0059】
「重合度(DP)」の語は、与えられた糖中の無水グルコピラノース単位の数を言う。DP1の例は、グルコース及びフルクトール等の、単糖である。DP2の例は、マルトース及びスクロース等の二糖である。「DP4+」は、重合の程度が3以上であるポリマーを意味する。
【0060】
「酵素的に生産される」という語は、IMOを化学的に合成あるいは有機化学的に合成するのではなく、基質からIMOへの転化を触媒する酵素を用いてIMOを生産することを言う。「糸状菌」の語は、真菌門亜門の全ての糸状菌を言う(Alexopoulos, C.J. (1962), INTRODUCTORY MYCOLOGY, New York : Wiley参照のこと)。これらの糸状菌は、菌糸の伸長及び有酸素が必須である炭素異化による栄養成長に用いられるキチン、グルカン、キトサン、マンナン、および他の複合多糖類から構成される細胞壁を有する栄養菌糸を有することが特徴である。糸状菌による栄養生長は菌糸の伸長によるものであり、炭素異化は必然的に好気性となる。本発明において、糸状菌の親細胞は、トリコデルマ(Trichoderma)、例えば、トリコデルマレーシ(Trichoderma reesei)(トリコデルマロンギブランギアタム(T.longibrachiatum)として分類されているもの、及び現時点で、ハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina)に分類されるものを含む)、トリコデルマビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマコニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマハルジアナム(Trichoderma harzianum);ペニシリウム種(Penicillium sp.);フミコーラインソランス(Humicola insolens)及びフミコーラグリセア(Humicola grisea)を含むフミコーラ種(Humicola sp);クリソスポリウムルクノエンス(C.lucknowense)を含むクリソスポリウム種(Chrysosporium sp.);グリオクラディウム種(Gliocladium sp.);アスペルギウスオリザエ(A. oryzae)、アスペルギウスニヅランス(A. nidulans)、アスペルギウスニガー(A. niger)、及びアスペルギウスアワモリ(A. awamori)を含むアスペルギウス種(Aspergillus sp.);フサリウム種(Fusarium sp.)、ニューロスポラ種(Neurospora sp.)、ハイポクレア種(Hypocrea sp.);及びエメリセラ種(Emericella sp.)であるが、これらに限定されない。参考文献は、Innis et al.,(1985)Sci. 228 : 21-26である。
【0061】
「アスペルギウス(Aspergillus)」又は「アスペルギウス種(Aspergillus sp.)」の語は、アスペルギウスとして分類されているもの、あるいは、現時点でアスペルギウスと分類されているものを言う。
【0062】
「バクテリア」の語は、バチルス種(Bacillus)の、バチルススブチルス(B. subtilis)、バチルスアミロリケファシエンス(B.amyloliauefaciesn)バチルスランタス( B.lentus)、 バチルスカルルスベルグ(B.Carlsberg)、バチルスリケニフォルミス(B.licheniformis)及びバチルスステアロセレモフィリス(B.stearothermophilus)を意味するが、これらに限定されない。
【0063】
「植物起源」という語は、例えば、麦芽、大豆、小麦、又は、大麦等の植物源から、供給、抽出、単離、発現される酵素を意味する。
【0064】
「接触」の語は、基質を所望の最終産物に転化するために、所定の酵素を所定の基質に対して、十分に近い位置に置くことを意味する。基質と1以上の酵素溶液とを混合するとも「接触」であることは、当業者に理解されている。
【0065】
「インキュベート」の語は、所定期間、所定の条件下において、例えば、液化酵素、マルトース転化酵素、又は、トランスグルコシダーゼ等の特定の酵素と基質とを混合することである。
【0066】
「酵素的転化」の語は、基質を可溶性の加水分解された粒デンプンに転化し、そして、好ましくは、さらに、グルコースに転化することを言う。
【0067】
「スラリー」の語は、不溶性粒デンプンを含んでいる水溶性混合物を言う。本明細書においては、「スラリー」及び「懸濁液」の語は、互換的に用いられる。
【0068】
「培養」という語は、液体または固形培地中の適切な条件下で、微生物細胞の塊を成長させることを言う。ある態様においては、培養は、通常、発酵管あるいは、発酵槽内で行われ、粒デンプン基質からグルコースシロップあるいは他の所望の最終生産物へ発酵により転化することを言う。例えば、ある態様においては、アルファアアミラーゼ酵素の単位の語は、pH 5.2及び40 ℃の標準条件において、1分間に、1マイクロモルのデンプン基質を加水分解するアルファアミラーゼの量であると定義される。例えば、ある態様において、ベータアミラーゼ酵素単位の語は、pH 4.6及び20 ℃の標準条件において、1分間に、1マイクロモルのデンプン基質を加水分解するベータアミラーゼの量であると定義される。例えば、ある態様において、トランスグルコシダーゼ単位は、pH 4.8及び37 ℃の標準条件において、1分間に、1マイクロモルのマルトース基質を加水分解するトランスグルコシダーゼの量であると定義される。他の態様において、トランスグルコシダーゼ単位は、pH 4.8及び37 ℃の標準条件において、1分間あたり1マイクロモルのパノースを生産するトランスグルコシダーゼの量であると定義される。
【0069】
例えば、ある態様において、1液化単位(LU)は、pH 5.6及び25 ℃の標準条件において、ヨウ素溶液の色を変化させる(この変化はデンプン基質がデキストリンに転化されたことを意味する)のに必要な酵素の消化時間を言う。
【0070】
「ATCC」の語は、バージニア州(VA)マナッサス(Manassas)20108にある、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Clture. Collection)(ATCC, www/atcc.org)を言う。
【0071】
「NRPL」の語は、イリノイ州(ILL)ピオリア(Peoria)にある、アグリカルチャラル・リサーチ・サービス・カルチャー・コレクション(Agricultural Research Service.Culture.Collection)、あるいは、農務省(USDA)の北部研究所(Northern Regional Research Laboratory)としても知られている、国立農業飼養研究センター(National Center for Agricultural Utilization Research)を意味する。
【0072】
「NCBI」の語は全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information, Natl Library Med.)(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を言う。
【0073】
「ある」、「一の」及び「この」の語は、他の表記等によって明確に定義されない限り、複数を含めるものとする。
【0074】
本発明は、イソマルトオリゴ糖含有基質、穀物、塊茎組成物の製造方法であって、前記方法が、(a)マルトースを生産するために、マルトース転化酵素及びデンプン液化酵素を、穀物又は塊茎等の基質を含む非ゼラチン化デンプンと接触させる工程と、(b)グルコース転移酵素と前記マルトースとを接触する工程であって、前記工程(a)及び工程(b)がデンプンゼラチン化温度以下で起ることを特徴とする工程、及び(c)前記オリゴ糖が、前記基質、穀物または塊茎から供給されることを特徴とする、酵素を用いて生産されたイソマルトオリゴ糖を有する基質、穀物、又は、塊茎組成物を得る工程、を含む方法について述べる。本発明の態様を図1に示す。
【0075】
本発明は、マルトースシロップを生産するために、ゼラチン化温度より低い温度で、非ゼラチン化デンプン及び内因性マルトース転化酵素を有する基質と、バシルス(Bacillus)から選択される可溶化酵素を接触させることを特徴とする、イソマルトオリゴ糖高含量の基質、穀物または塊茎組成物、小麦、経口液剤、及び/又は、食品添加物、を生産する方法についても述べる。
【0076】
イソマルトオリゴ糖を有する穀物組成物を精製するために、ゼラチン化する、あるいは、液化する温度以下の温度で、このマルトースシロップを、トランスグルコシダーゼと接触させる。ある態様において、この穀物組成物は、糖組成物中のマルトース含量が60 %以上であること、及び、分岐糖の割合が2.0から1.0より高いことが特徴である。基質からIMOへの転化は酵素的手法により行うことができる。
【0077】
本発明は、イソマルトオリゴ糖基質、穀物または塊茎組成物の製造方法であって、該方法は、 (a)マルトースを生産するために、デンプンを含む基質、穀物又は塊茎組成物とマルトース転化酵素及びデンプン液化酵素とを接触させる工程と、(b)マルトースとトランスグルコシダーゼとを接触させる工程であって、工程(a)及び(b)がデンプンゼラチン化温度以下で起ることを特徴とする工程と、及び(c)オリゴ糖が基質、穀物又は塊茎由来であることを特徴とする、酵素的手法により生産されたイソマルトオリゴ糖を有する基質、穀物又は塊茎組成物を得る工程を含む。本発明は、任意で、さらに、不溶性成分から可溶化成分を分離する付加的工程についても述べる。本発明はさらに、基質、穀物又は塊茎組成物を乾燥する工程を付加的に含む。一の態様において、穀物は、小麦、ライ麦、麦芽、そば、ソルガム(マイロ)、キビ(ラギ(ragi))、及び、コメから成る群より選択される。他の態様では、マルトース転化酵素は、ベータアミラーゼである。他の態様において、マルトース転化酵素は、穀物に含まれている酵素である。他の態様では、デンプン液化酵素は、バシルス(Bacillus)由来のアルファアミラーゼである。他の態様においては、デンプン液化酵素は、バシルスリケニフォルミス(Bacillus ilicheniformis)又はバシルスステアロセレモフォリス(Bacillusstearothermophilus)由来である。他の態様においては、グルコース転移酵素はトランスグルコシダーゼである。他の態様においては、トランスグルコシダーゼはアルペルギウス(Asperaillus)由来である。他の態様においては、アスペルギウス(Asperaillus)はアスペルギウスニガー(Asperaillus niger)である。本発明は、上記方法に従って生産された、穀物組成物、食品添加物、経口補水剤、食品及び/又は小麦粉についても開示する。
【0078】
他の態様において、本発明は、(a)マルトースを生産するために、内因性のマルトース転化酵素アミラーゼを有する非ゼラチン化小麦穀粒とバチルス(Bacillus)由来デンプン液化酵素を接触させる工程と、(b)前期マルトースをトランスグルコシダーゼと接触させる工程(ここで、工程(a)、及び、工程(b)は、小麦ゼラチン化温度よりも低い温度で行われることを特徴とする)と、そして、(c)酵素を用いて、前記非ゼラチン化小麦由来のイソマルトオリゴ糖を有する小麦穀物組成物を得る工程、を含む方法を開示する。本発明の態様は、図2に示す。
【0079】
他の態様において、本発明の方法は、食品添加物、パン製品、経口補水剤、及び/又は小麦粉を作ることに用いられる。他の態様において、マルトース転化酵素は、ベータアミラーゼである。他の態様において、マルトース転化酵素は、穀物の内因性物質である。他の態様において、デンプン液化酵素は、微生物由来のアルファアミラーゼである。他の態様において、この微生物源は、バチルス種(Bacillus sp.)である。他の態様において、デンプン液化酵素は、バシルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、または、バチルスステアローセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus由来である。他の態様において、グルコース転移酵素は、トランスグルコシダーゼである。他の態様において、このトランスグルコシダーゼは、糸状菌由来である。他の態様において、糸状菌源は、アスペルギウス種(Aspergillus sp.)である。他の態様において、このアルペルギウス種(Aspergillus sp.)は、アスペルギウスニガー(Aspergillus niger)である。本発明は、前記方法に従って製造された、穀物組成物、食品添加物、経口補水剤、及び/又は、小麦粉も開示する。この穀物組成物は、少なくとも1重量%以上の1のイソマルトオリゴ糖を含む。この1のイソマルトオリゴ糖は、イソマルトース、パーノース、イソマルトトリオースから成る群より選択される。本発明の更なる態様において、内因性イソマルトース転化酵素は、ベータアミラーゼ及びアルファアミラーゼから選択される。本発明の更なる態様において、この可溶化酵素は、バチルス(Bacillus)由来の液化アルファアミラーゼである。さらなる態様において、この液化アミラーゼは、バシルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、または、バチルスステアローセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)由来である。
【0080】
基質
本発明は、例えば、マルトースを生産するために、マルトース転化酵素及びデンプン液化酵素と接触させたデンプン含有穀物、あるいは、デンプン含有塊茎等の、デンプン含有基質を含む。基質の語は、マルトース、それからIMOに酵素的に変換することができる物質を意味する。基質の例は、穀物あるいは塊茎からなる群より選択される少なくとも1の基質である。このマルトースは、マルトース高含有シロップ、あるいは、マルトース高含有溶液にすることができる。
【0081】
デンプンは2の形態を有する、すなわち、直鎖多糖であるアミロース及び、分岐鎖多糖であるアミロペクチンである。アミロースは、アルファ-1,4結合でつながっているD-グルコース単位の直鎖を含む(「α-1,4結合」または、「1,4-α-D-グルコシル結合」)。アミロペクチンは、高度に枝分かれした、α-1,4結合を有する主鎖と、α-1,6結合を有する枝から成る。デンプンの主な成分は、2の異なる過程で、酵素学的に加水分解される。アミロースは、α-アミラーゼ(E.C.3.2.11)例えば、α-(1,4)-グルカン4-グルカノハイドラーゼによって加水分解される。アルファアミラーゼは、α-1,4-結合を、グルコース、マルトース、マルトトリオース及び高分子糖の混合物に加水分解する。アミロースは、ベータアミラーゼ(E.C.3.2.1.2)[α(1,4)-グルカンマルトヒドラーゼ、1,4-α-D-グルカンマルトヒドラーゼ]によっても加水分解することができる。この酵素は、非還元末端から、マルトース単位を連続的に切り離すことができ、それにより、マルトースが多く生産される。アルファ及びベータアミラーゼは、アミロペクチンも加水分解することができる。アルファ及びベータアミラーゼはいずれも、アミロペクチンの枝であるアルファ1,6結合を過水分解することができない。アミロペクチンにベータアミラーゼを作用させると、最終的に、たくさんの枝分かれを有するコア、あるいは、ベータ限界デキストリンができる。脱分岐酵素(E.C.3.2.1.41、例えば、プルラナーゼ、[α-(1-6)グルカン6-グルカノハイドラーゼ、α-(1,6)-グルコシダーゼとも言われる])は、分岐ポイントのα-(1.6)結合を加水分解することができる。従って、β-アミラーゼ及びα1,6-グルコシダ−ゼを一緒に作用させると、アミロペクチンを、総糖含量に対して、60 %、65 %、79 %、75 %、80 %及びそれ以上のマルトースを含む、マルトースとグルコースの混合物に完全に分解することができる。
【0082】
本発明の目的において、デンプンを含む基質とは、穀物、塊茎及びそれらの混合物である。穀物は、デンプンを含んだ穀粒又は種である。この基質は、粉砕等の適当な手段により、粒子を細かくして酵素と接触する表面積を増やす。例えば、基質は、必要ならば、湿式粉砕又は乾燥粉砕される。本発明のある態様において、このデンプンは、穀物デンプンである。本発明において使用を意図する穀物は、焼成食品、パスタ、又は、その他に使用されるあらゆる穀物を含む。これらの穀物の非限定的な例は、小麦 (コムギ属(Triticum sp.)であって、ヒトツブ小麦( T. monococcum)、リベット小麦(T.turgidum)、スペルト小麦(T.spelta)及び パン小麦(T. aestivum)を含むがこれらに限定されない)、大麦(例えば、六条大麦( Hordeum vulaare)及び表 1に示す U.S. Pat. No. 6,492,576に記載されているもの)、ライ麦(ライムギ属(Secale sp.)であってライ麦(S. cereal)を含むがこれらに限定されない)、トウモロコシ属(Zea sp.)であってトウモロコシ(Zea mays)を含むがこれらに限定されない)、ソバ(ソバ属(Fagoprvum sp.)であって、そば(F. esculentum)を含むがこれらに限定されない)、麦芽(例えば、発芽大麦(Germinated barley))、ソルガム(ソルガム属(Sorahum sp.)であって、ソルガム(Sorghum bicolor)を含むがこれらに限定されない) または、 マイロ、キビ (ラギ(ragi))(キビ属 (Panicum sp.)及びセタリア属(Setaria sp.)であって キビ(P. milaceum)及び セタリアイタリック(S. italic)を含むがこれらに限定されない) 及び コメ(コメ属(Orvza sp.)であってコメOryza sativを含むがこれらに限定されない)を含む。野生型、あるいは、内因性酵素あるいは外因性酵素のレベルを強化した有利な性質を有する、遺伝子改変作物も本発明のデンプン含有基質として有用である。
【0083】
発芽穀類、例えば、麦芽は、高い栄養価を有することから、多くの食品及び健康ドリンク製品に、重要な成分として用いられている。麦芽含有食品の例を表Aに示す。穀物が発芽すると、内因性のマルトース転化酵素及びタンパク質分解酵素が合成され、活性化される。したがって、発芽穀物は、内因性マルトース転化酵素を含む、良い穀物源である。麦芽粉末及び麦芽抽出物は、醸造食品及び焼成食品において、分解酵素としても用いられる。発芽大麦は、消化管に到達する前に完全に消化されることから、プレバイオティクス、あるいは、栄養補助食品として、有効に機能する、消化が容易な穀物組成物を提供する。プレバイオティック組成物の有益性は、消化管下部で、発揮される。それゆえ、容易に消化されるマルト糖を、難消化性のマルト糖に転化すると、マルト糖が消化管下部まで到達し、プレバイオティク作用を発揮することにより、マルト糖の付加的機能及び健康上の有用性が提供される。麦芽抽出物を含む市販食品の例を表Aに示す。
【表1】

【0084】
従って、デンプン含有基質として麦芽を使用すると、基質内に含まれる穀物デンプンを、他の有用なオリゴ糖形態(例えば、IMO)に転化することになる。
【0085】
デンプン含有基質は、塊茎でもよい。本発明で、意図する塊茎は、ポテト(ナス属(Solanums sp.),であって 馬鈴薯(S. tuberosum)を含むがこれらに限定されない)、甘藷(イポメア属(Ipomoea sp.)であって、サツマイモ(Ipomoeabatatas)を含むがこれらに限定されない)、タピオカ(マニホット属(Manihot sp.)であって キャッサバ(Manihotesculenta)、マニホットアイピ(Manihot aipi) 及び タピオカ(Manihot utilissima)を含むがこれらに限定されない)、及び/又は、サトイモ(サトイモ属(Colocasiaso.)であって サトイモ(C. esculenta)又はコロッカシアマクロリザ(C. macrorhiza)を含むがこれらに限定されない)を含む。
【0086】
デンプン含有基質は、10 %から50 %の融解固形物(DS)量を有する水溶性スラリーの場合もある。他の態様において、このデンプン含有基質は、2-90 %のDSを有する。他の態様において、このデンプン含有基質は、5-70 %のDSを有することが特徴である。他の態様において、このデンプン含有基質は、10-60 %のDSを有することが特徴である。他の態様において、このデンプン含有基質は、20-40 %のDSを有することが特徴である。他の態様において、このデンプン含有基質は、25-35 %のDSを有することが特徴である。
【0087】
本発明の他の態様において、デンプン含有基質のpHは、1.00から9.00の間である。本発明の他の態様において、デンプン含有基質のpHは、2.00から8.00の間である。本発明の他の態様において、デンプン含有基質のpHは、3.00から7.50の間である。本発明の他の態様において、デンプン含有基質のpHは、4.00から6.50の間である。本発明の他の態様において、デンプン含有基質のpHは、4.25から5.75の間である。
【0088】
酵素
本発明は、マルトースを生産するために、デンプン含有基質にマルトース転化酵素、及び、デンプン液化酵素を接触させることを含む。マルトース転化酵素とは、酵素が酵素学的にデンプンをマルトースに転化することを言う。マルトース転化酵素の例は、アルファアミラーゼ及びベータアミラーゼである。上で述べたように、α-アミラーゼ(E.C.3.2.1.1)、例えば、α-(1,4)-グルカン-4-グルコシダーゼは、アミロースを加水分解することができる。アルファアミラーゼはα-(1,4)結合を加水分解し、グルコース、マルトース、マルトリオース及び高分子の糖の混合物を生産する。アミロースは、ベータアミラーゼ(E.C.3.2.1.2)[アルファ(1,4)-グルカンマルト加水分解酵素、1,4-β-D-グルカンマルトース加水分解酵素]によっても加水分解される。この酵素は、非還元末端から連続的に、マルトース単位を切り離し、マルトースを多量に生産する。アルファ及びベータアミラーゼは、アミロペクチンも加水分解することができる。
【0089】
アルファアミラーゼ
本発明に包含されるいくつかの態様において、アルファアミラーゼは、E.C.3.2.1.1-3、特に、E.C.3.2.1.1の酵素番号を有する糸状菌または微生物由来の酵素である。幾つかの態様において、このアルファアミラーゼは、熱安定性糸状菌アルファアミラーゼである。好適なアルファアミラーゼは、組換え体及び突然変異体アルファアミラーゼの他に、自然発生アルファアミラーゼを含む。幾つかの態様において、このアルファアミラーゼは、バチルス(Bacillus)種由来のものである。好ましいバチルス種は、バチルスアミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルスレンタス(B. lentus)、バチルスリケニフォルミス(B. licheniformis)及びバチルスステアロセレモフィリス(B. stearothermophilus)を含む。具体的な好ましい態様において、アルファアミラーゼは、アスペルギウス(Aspergillus)種由来のものである。好ましいアスペルギウス種は、アルペルギウスニガー(Asperaillus niger)及びアスペルギウスオリザエ(Aspergillus orvzae)を含む。NCIB11837の登録番号を有するものも含まれる。
【0090】
ジェネンカーインターナショナルインク(Genencor InternationalInc.)より販売されている、アスペルギウスオリザエ(Aspergillus orvzae)由来のCLARASE L、及び、ノボザイムバイオテック(Novozyme BiotE.C.h.)より販売されているバチルスステアロセレモフィリス(B. stearothermophilus)由来のNOVAMYLのような、市販のアルファアミラーゼも本発明の方法に用いることができる。
【0091】
当該技術分野において、本発明の方法に用いるアルファアミラーゼの量は、アルファアミラーゼ活性に依存することは、理解されている。通常、デンプン含有基質1メートルトン(MT)当たり約0.01から5 kgのアルファアミラーゼを添加する。いくつかの態様では、デンプン含有基質1メートルトン(MT)当たり約0.05から4 kgのアルファアミラーゼを添加する。他の態様において、このアルファアミラーゼは、MT当たり約0.1から2.5 kg添加され、MT当たり0.5から1.5 kg添加される場合もある。更なる態様において、他の割合の添加量も用いられる。例えば、CLARASEL(ジェネンカーインターナショナルインク)は、デンプン1 MTに対して、約0.01から1.5 kg添加する。他の態様において、デンプン1 MT当たり、約0.05から1.0 kgの間;約0.1から0.6 kgの間;約0.2から0.6 kgの間、及び、約0.4から0.6 kgの間の量のCLARASELを添加する。
【0092】
ベータアミラーゼ
本発明が意図するいくつかの態様において、マルトース転化酵素はベータアミラーゼである。アルファアミラーゼをデンプン含有基質に接触させたときに、マルトースを生産するという意味において、アルファアミラーゼは、マルトース転化酵素であるが、ベータアミラーゼは、穀物デンプンと接触させたときに、他の糖(例えば、グルコース)を除いたマルトースを生産する場合に有用である。いくつかの態様において、ベータアミラーゼは、E.C.3.2.1.2の酵素番号を有する、植物あるいは微生物由来の酵素である(例えばこれらのベータアミラーゼは、US 4,970,157及び4,647,538に開示されている)。他の態様において、このベータアミラーゼは、熱安定性微生物ベータアミラーゼである。好適なベータアミラーゼは、組替え体及び変異体ベータアミラーゼのほか、野生型ベータアミラーゼも含む。「微生物酵素」という語は、バチルス種例えば、バチルススブチリス(B. subtilis)、バチルスリケニフォルミス(B.licheniformis)、バチルスステアロセレモフィリス(B.stearothermophilus)、バチルスコアギュランス(B.coagulans)バチルスアミロリケニフォルミス(B.amyloliquefaciens)及び/又はバチルスレンタス(B.lentus.)から提供される酵素を意味する。NCIB11608の系統も用いることができる。「植物酵素」の語は、植物資源、例えば、大麦麦芽、大豆、小麦、又は、大麦から、抽出され、単離され、発現される酵素を言う。
【0093】
本発明の方法に使用することができる市販ベータアミラーゼは、「OPTIMAL BBA」、「Spezyme DBA」、及び「OPTIMAL ME」(ジェネンカーインターナショナルインク(Genencor InternationalInc.))を含む。他の市販小麦ベータアミラーゼも本発明の方法に用いることができる。
【0094】
いくつかの態様において、デンプン含有基質、例えば、小麦、ライ麦、大麦、麦芽は、イソマルトオリゴ糖に転化される十分量のマルトースを生産するための内因性マルトース転化酵素を有している。「内因性酵素」という語は、マルトース転化酵素を添加しない穀物又は塊茎中に存在する酵素、あるいは、マルトース転化酵素を生産するように遺伝的に改変された穀物中に存在する酵素を言う。
【0095】
いくつかの態様において、デンプン含有基質が、内因性マルトース転化酵素を一切含んでいないか、含んでいるとしても、低いレベルである場合(例えば、コメ、キビ、ソルガム及び/又はコーンの場合)、任意の外因性マルトース転化酵素を添加することも、本発明の範囲内である。外因性マルトース転化酵素は、十分量のマルトース転化酵素を発現させるための、宿主細胞遺伝子の操作、及び/又は、マルトース転化酵素濃縮物または他の源由来のマルトース転化酵素を添加することにより利用できる。外因性マルトース転化酵素の語は、穀物内にもともと存在しないマルトース転化酵素を言う。他の態様において、マルトース転化酵素の十分量を、マルトースを生産するために基質に接触する。
【0096】
他の態様において、デンプン含有基質に接触する外因性マルトエジェニック酵素の量は、糖化力の程度が0.005から5.000 DPo単位(ユニット)/gmになるように、決定される。他の態様において、マルトース転化酵素の0.100から2.000 DPo単位(ユニット)/gmが、デンプン含有基質に接触させられる。更なる態様において、マルトース転化酵素の0.100から3.000 DPo単位(ユニット)/gmが、デンプン含有基質に接触させられる。
【0097】
他の態様において、デンプン含有基質に接触させる外因性マルトース転化酵素の量は、メートルトン当たりの基質に対するマルトース転化酵素のkgで表すことができる。他の態様において、デンプン含有基質に接触させる外因性マルトース転化酵素の量は、乾燥重量ベースの基質1トン当たり約0.05 kgである(「kg/mt dsb」)。他の態様では、デンプン含有基質に接触させる外因性マルトース転化酵素の量は、乾燥重量ベースの基質1トン当たり約0.1kgである(「kg/mt dsb」)。他の態様において、0.2、0.4、0.6、0.8及び/又は1.0 kg/mt dsbのマルトース転化酵素、例えば、ベータアミラーゼが提供される。
【0098】
他の態様において、デンプン含有基質に接触させる外因性マルトース転化酵素の量は、基質1メートルトン当たりのマルトース転化酵素のkgで表すことができる。いくつかの態様では、基質に接触させる外因性マルトース転化酵素の量は、融解デンプン1メートルトン当たり、約0.05 kg(「kg/mt dsb」)である。他の態様において、基質に接触させる外因性マルトース転化酵素の量は、融解デンプン1メートルトン当たり、約0.1 kg(「kg/mt dsb」)である。他の態様において、0.2、0.4、0.6、0.8及び/又は1.0 kg/mt融解デンプンベースのマルトース転化酵素、例えば、ベータアミラーゼが提供される。
【0099】
他の態様において、穀物と接触させるマルトース転化酵素の量は、マルトース転化酵素単位の観点から表すことができる。マルトース転化酵素活性を測定する有用な方法は、実施例で説明する方法及びβ-アミラーゼ活性を説明する箇所で開示されている方法を含む。DPo単位の語は、サンプルを100 mlに基質に20 ℃、1時間インキュベートしたときに、5 mlのフェーリング溶液を還元して、十分量の還元糖を生成する、5 %のサンプル酵素調製液の0.10 mlに含まれる酵素の量を意味する。
【0100】
他の態様において、内因性マルトース転化酵素を有する穀物(例えば、大麦、小麦、等)は、外因性マルトース転化酵素必要とする穀物に混合することができる。この混合物が十分量のマルトース転化酵素を含むようにするためには、内因性マルトース転化酵素を有する穀物と、外因性マルトース転化酵素を利用する穀物の割合を30:70、60:40、50:50、60:40、70:30とする。このような割合の穀物混合物も、本発明の範囲内である。内因性マルトース転化酵素を使用することで、穀物混合物に添加される、あるいは、接触させる外因性酵素の使用量を減らすことができる。
【0101】
デンプン液化酵素
デンプン液化酵素は、液化されたあるいは可溶化されたデンプンの粘度を低くするために、デンプンに接触させる酵素である。他の態様において、デンプン液化酵素は、E.C.3.2.1.1から選択されるアミラーゼ(例えばアルファアミラーゼ)である。典型的なアルファアミラーゼは、微生物源から、供給、単離、精製される。他の態様において、この微生物源は、バチルス(Bacillus)である。他の態様において、アルファアミラーゼを提供するバチルス(Bacillus)は、バチルススブチルス(B. subtilis)、バチルスリケニフォルミス(B. licheniformis)、バチルスステアロセレモフィリス(B. stearothermophilus)バチルスコアギュランス(B. coagulans)、(バチルスアミロリケファセンス(B. amvloliquefaciens)及びバチルスレンタス(B. lentus)から選択される少なくとも1のバチルス(Bacillus)を含む。バチルスリケニフォルミス(B. licheniformis)、バチルスステアロセレモフィリス(B. stearothermophilus)由来の酵素は、とくに有用である。他のアミラーゼ(例えば、E.C.3.2.1.133(US Patent No. 6,361,809)を含むがこれらに限定されない)も本発明に含む。本発明で意図する他のアミラーゼは、酸及び熱安定性を強化したことが特徴的な、突然変異体、遺伝的に修飾された変異体、あるいは、U.S. Patent Nos.5,763,385、5,824,532、5,958,739及び/又は6,008,026に記載されている変異体微生物も含む。有用なアルファアミラーゼは、バチルスリケニフォルミス(B. licheniformis)系統由来のNCIN8059、ATCC6598、ATCC6634、ATCC8480, ATCC9945A, ATCC11945である。バチルスステアロセレモフィリス(B. stearothermophilus)系統ATCC39709由来のアルファアミラーゼも有用である。そのような酵素は、「SPEZYMEAA」又は「SPEZYME FRED」、「SPEZYME LT300」、及び「SPEZYME LT75」、の商標でジェネンカーインターナショナル(Genencor International (Palo Also, California, USA))より市販されている。バチルスステアロセレモフィリス(B. stearothermophilus)由来のアルファアミラーゼを含む酵素製剤は、「GZYME G997」及び「GZYME GC007」の商標名で、そして、バチルスリケニフォルミス(B.licheniformis)由来のアルファアミラーゼを含む酵素製剤は、「GC262 SP」の商標で、共に、ジェネンカーインターナショナルインクより販売されている。
【0102】
デンプンを含んだ穀物に、マルトース転化酵素と、液化酵素を接触させると、マルトースを生産する。当該技術分野で理解されているように、本発明の方法に用いるデンプン液化酵素の量は、デンプン液化酵素の活性に依存する。ある態様において、デンプン液化酵素の0.01から25液化単位/gmがデンプン含有穀物と接触される。他の態様において、デンプン液化酵素の1から10液化単位/ gmが、穀物含有デンプンと接触させる。1液化単位(LU)は、特定の条件下における、デンプン基質がデキストリン化されたことを意味する、ヨウ素溶液の色の変化に必要な消化時間を測定することによって求めることができる。
【0103】
他の態様において、0.1 kgのデンプン液化酵素が、1メートルトンの穀物融解固形ベースに添加される( kg/mt dsb)。他の態様において、0.2、0.4、0.4、0.8及び1.0 kgのデンプン液化酵素が、1トンの穀物に添加される( kg/mt 可溶性デンプンベース)、他の態様において、0.1 kgのデンプン液化酵素が、1メートルトンの可溶性デンプンに添加される( kg/mt可溶性デンプンベース)。他の態様において、0.2、0.4、0.4、0.8及び1.0 kgのデンプン液化酵素が、1トンのアミラーゼに添加される( kg/mt 可溶性デンプンベース)。デンプンデンプン液化活性を測定するのに有用な方法は、実施例で説明する。αアミラーゼ活性を検出する典型的な方法は、U.S. Pat. Nos. 5,763,385、5,824,532、5,958,739、及び/又は、6,008,026に開示されている。これらの文献を参照により本明細書に援用する。
【0104】
グルコース転移酵素
マルトースにグルコース転移酵素を接触させると、デンプン含有穀物由来の酵素学的に生産されたイソマルトオリゴ糖を有する穀物組成物が得られる。このグルコース転移酵素は、アルファ-D-グルコオリゴ糖と共に、インキュベーションすると、加水分解及び転移反応を触媒することによって、イソマルトース、パノース、コウジビオースまたは、ニゲロースを生産する。これらの糖の存在及びグルコース転移酵素の転化により、DP2(二糖)の量が多くなる。このグルコース転移酵素(E.C..2.4.1.24)が、トランスグルコシダーゼである場合もある。典型的なトランスグルコシダーゼは、「TRANSGLUCOSIDASE L-1000 」(ジェネンカーインターナショナル(Genencor International, Inc.)) 及び天野エンザイム株式会社(Amano Enzymes, Inc.)(名古屋、日本)の 「TRANSGLUCOSIDE L」である。他の態様において、グルコース転移酵素は、糸状菌源、例えば、アスペルギウス(Asperaiiius sp.)から提供される。アスペルギウス(Asperaiiius sp.)由来のグルコース転移酵素は、アスペルギウスニガー(Aspergillus niger)から提供される。他の態様において、アスペルギウスニガー(Aspergillus niger)はATCC14916の系統である。
【0105】
この態様において、十分量のグルコース転移酵素を、マルトースを生産するために、基質、例えば、デンプン含有穀粒に接触させる。当業者に理解されているように、本発明の方法に用いるグルコース転移酵素の量は、アルファアミラーゼの活性に依存している。他の態様において、0.01から25.00トランスグルコシダーゼユニット(TGU)/gmのトランスグルコシダーゼを、デンプン含有基質と接触させる。本発明の他の態様において、0.05 TGUから10.00 TGU/gmのトランスグルコシダーゼをデンプン含有基質と接触させる。更なる態様において、0.10 TGUから5.00 TGU/gmのトランスグルコシダーゼをデンプン含有基質と接触させる。「TGU」の語は、特定の条件下において、1分間に1マイクロモルのパノースを生産するのに必要な酵素の活性を言う。
【0106】
他の態様において、0.05から6.00 kgのグルコース転移酵素を1メートルトンの穀物(kg/MT dsb)に添加する。他の態様において、0.10から5.00 kgのグルコース転移酵素を1メートルトンの穀物(kg/MT dsb)に添加する。他の態様において、0.25から3.00 kgのグルコース転移酵素を1メートルトンの穀物(kg/MT dsb)に添加する。他の態様において、0.50から1.50 kgのグルコース転移酵素を1メートルトンの穀物(kg/MT dsb)に添加する。グルコース転移酵素の活性を検出するために有用な方法は、実施例及びShetty J., et al (U.S. Pat. No. 4,575, 487 (1986) entitled, "Method for Determination of transglucosidase")(参照により本発明の明細書に引用する)に記載の方法を含む。
【0107】
ある態様において、0.05から6.00 kgのグルコース転移酵素を1メートルトンの融解デンプン(kg/MT dsb)に添加する。他の態様において、0.10から5.00 kgのグルコース転移酵素を1メートルトンの融解デンプン(kg/MT dsb)に添加する。他の態様において、0.25から3.00 kgのグルコース転移酵素を1メートルトンの融解デンプン(kg/MT dsb)に添加する。他の態様において、0.50から1.50 kgのグルコース転移酵素を1メートルトンの融解デンプン(kg/MT dsb)に添加する。
【0108】
トランスグルコシダーゼ反応の結果、マルトオリゴ糖は、非還元末端からのグルコース分子の一位水酸基に結合するグルコシル残基を多く含む新しいクラスの多糖である、イソマルトオリゴ糖に転化される。この方法によって、生産されるイソマルトオリゴ糖は、イソマルトース、パノース、イソマルト-トリオース、イソマルト-テトリオース、イソマルト-ペンタノース、イソマルト-ヘキサノース及びイソマルト-ヘプタノースを含む。これらの糖は、虫歯予防の観点(Oshima, et al., 1988, The Caries inhibitory effects of gos-sugar in vitro and rat experiments. Microbial Immunol. 32. 1093-1105)) 、及び、ビフィズス菌に対する成長因子(プレバイオティック)として働く人腸内細菌層を改善する (Komoto, et. al 1988 ; Effect of Isomalto- oligosaccharides on human fecal flora, Bifidobacteria Micro flora 7,61-69)ことから、食品添加物として注目を集めている。
【0109】
IMOsの生産を確実にするために、アッセイ、及び/又は、他の分析方法が、生成IMO量を測定するために用いることができる。生成IMOレベルを測定するための方法は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。例えば、糖混合物は、この方法によって各糖の生産レベルを測定することができる。他の有用な評価は、混合物の重合度(DP)である。重合度の語は、分子中のグルコース残基の数の相対的な量の測定値である。例えば、グルコース(1のグルコシル単位、最低の重合度)は、DP1と表される。イソマルト-オリゴ糖は、DP2(2のグルコシル単位)と表される。ある態様において、穀物組成物は、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも25重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、の少なくとも1種類のイソマルトオリゴ糖を含む。ある態様において、少なくとも1種類のイソマルトオリゴ糖は、イソマルトース、パノース、及び/又はイソマルト-トリオースの群より選択される。ある態様において、穀物組成物中に生産されたイソマルトオリゴ糖の量は、穀物組成物の1 %から99 %である。ある態様において、穀物組成物中に生産されたイソマルトオリゴ糖の量は、穀物組成物の1 %から90 %である。ある態様において、穀物組成物中に生産されたイソマルトオリゴ糖の量は、穀物組成物の1 %から80 %である。ある態様において、穀物組成物中に生産されたイソマルトオリゴ糖の量は、穀物組成物の1 %から70 %である。本発明のある態様において、上で開示された方法を経た穀物組成物中の糖は、50 %以上、60 %以上、70 %以上、または80 %以上のマルトースを有する。50 %以上のマルトースレベルは、50 %から85 %、55 %から80 %、及び/又は、60 %から70 %の幅を含む。RBS割合は、得られる穀物組成物中に存在するマルトリオース(DP3)のレベルと比較したときの、マルトース(DP2)の割合を言う。高いRBS価は、多くのマルトースが存在することを示し、従って、例えばマルトトリオース等の、他のあまり好ましくない最終生成物の存在とは対照的に、デンプンからマルトースへの転化がより完全であることを示唆する。他の態様において、RSBの割合は、2.0以上である。他の態様において、RBSの割合は、3.0以上、4.0以上である。典型的な幅は、2.0から50.0、2.0から30.0及び/又は2.0から10.0のRBS割合を含む。各種RBS割合は実施例に記載されている。市販のベータアミラーゼ(大麦あるいは小麦)で液化デンプンを加水分解すると、通常、55 %から65 %の間のマルトースを含む糖を生産する。液化デンプンを用いて50 %以上のマルトースを含む組成物を生産するために、脱分岐酵素、及び/又は、予め低いDEを有する液化デンプン必要である。任意で、脱分岐酵素の添加は、マルトースの生産を挙げるのに有用である。脱分岐酵素の語は、α-1,6結合の加水分解を触媒する酵素を言う。E.C.3.2.1.41に分類される酵素は、脱分岐作用において有用である。このクラスの典型的な酵素は、α-デキストリン エンド-1,6-αグルコシダーゼとして知られているプルラナーゼ、制限デキストリナーゼ、脱分岐酵素、アミロペクチン1,6-グルカノヒドラーゼである。
【0110】
デンプン含有穀物とマルトース転化酵素とをマルトースを生産するために接触させる工程、及び、マルトースをトランスグルコシダーゼに接触させる工程は、用いる穀物デンプンのゼラチン化温度よりも低い温度で行われる。ある酵素を別の酵素と接触させて、少なくとも12時間、少なくとも、18時間、少なくとも、24時間、少なくとも、30時間、及び/又は少なくとも、36時間インキュベーションが行われる。少なくとも記載の時間には、少なくとも12から80時間、少なくとも18-60時間及び/又は少なくとも24-48時間の幅の時間が含まれる。インキュベーション時間の語は、マルトース又は基質をIMOsに転化するための時間の期間を言う。グルコース転移酵素)は、基質(例えば、デンプン含有穀物)、マルトース転化酵素(例えば、アルファアミラーゼまたはベータアミラーゼ)及び/又は、液化酵素(例えば、アルファアミラーゼ)と、別々に、あるいは、同時に、接触させるか、又は、添加される。ある態様において、グルコース転移酵素は、液化酵素と同時に添加される。従って、ある態様において、工程(a)及び工程(b)は、同時に行われる。他の態様において、工程(a)及び工程(b)は、連続的あるいは、別々に行われる。他の態様において、工程(a)は、工程(b)の前に行われる。ゼラチン化温度の語は、穀物内に含まれているデンプンが、相を形成する、あるいは、ゼラチン化する温度のことを言う。この温度は穀物間において異なるけれども、デンプンをゼラチン化させるのに十分な温度は、45 ℃以上、50 ℃以上、60 ℃以上、70 ℃以上、80 ℃以上、及び/又は、90 ℃以上の温度を含む。ゼラチン化温度として示した温度の典型的な幅は、45 ℃から120 ℃、50 ℃から110 ℃、50 ℃から100 ℃を含む。他の態様において、例えば小麦において、ゼラチン化温度は、50 ℃以下から70 ℃、他の態様においては、55 ℃から65 ℃、及び他の態様においては、60 ℃以下から選択される温度である。例えば、ゼラチン化温度は、表1に示すように、コーン、ポテト、小麦、タピオカ、デンプントウモロコシ、ソルガム、コメ、サゴ、クズウコン、アミロメイズ(amyr omaize)及び/又は、甘藷について開示されている(Beynum, G.M.A and Roels, J.A., Starch Conversion Technology(Marcel Dekker, Inc., New York, New York(1985), pp.15-45)。
【表2】

【0111】
本発明の他の態様において、インキュベーションを経たスラリーは、酵素活性を止めるのに十分であり、かつ、スラリーのゼラチン化及び液化を起こさない程度の温度に短時間さらされる。例えば、このスラリーは、80 ℃、85 ℃、90 ℃、95 ℃、または100 ℃において、5-60分、10-40分又は30分間加熱される。
【0112】
本発明の態様は、このスラリーを不溶物及び可溶物に分離する事を含む。この分離工程は、本発明の技術分野で知られている、クロマトグラフ法で、行うことができる。この方法は、HPLC、サイズ排除クロマトグラフ法、及び/又は、チャージクロマトグラフィー(charge chromatography)を含むがこれらに限定されない。ろ過は、可溶物から不溶物を分離するのに用いることができる。不溶物又はスラリー全体は、本出願の後半で述べる乾燥工程を経る場合がある。他の態様において、分離工程を経た可溶性物は、エバポレーション(例えば、ローターエバポレーション、トレイドライ等)によって濃縮される。エバポレーションされた濃縮物は、炭素処理を受ける(炭素粒に通される)及び/又は、IMO液体濃縮物を得るために、クロマトグラム処理される。この単離されたIMO濃縮物は、IMOの濃度が、75 %以上、85 %以上、90 %以上、95 %以上、97 %以上、及び/又は99 %以上である。
【0113】
本発明の他の態様は、経口補水溶液に、非ゼラチン化デンプンを有する基質から酵素を用いて得たオリゴ糖シロップを使用すること、または、組成物として使用することである。イソマルトオリゴ糖の量は、U.S. Pat. Nos. 4,981,687、5,096,894、及び/又は、5,733,759に記載されている量である。
【0114】
本発明の他の態様は、この穀物組成物を含む粉末を生産するために、前記イソマルトオリゴ糖基質、穀物又は塊茎組成物の乾燥工程を含む。通常この乾燥工程は、熱によって促進される。この穀物組成物は、適当な乾燥方法(例えば、スプレードライヤー法、トレイドライ法、チャンバードライ法、ドラム乾燥法または、キャビネットドライ法であるが、これらに限定されない)を用いて、所望の水分含量になるまで行われる。例えば、減圧下における、スプレードライ法、エバポレーションドライ方法のような、他の乾燥方法も用いることができる。
【0115】
穀物組成物、スラリー、分離された不溶物を乾燥することによって、小麦又は他の穀物の乾燥粉末が得られる。得られた粉末又は小麦粉は、イソマルトオリゴ糖を必要とする組成物中に、例えば、食品材料(朝食用シリアル、パスタ)、食品添加物、及び、焼成食品中に添加物として使用される。この添加物の語は、素材中に点在するように、及び/又は、局所的に食品に添加される、イソマルトオリゴ糖の使用を意味する。
【0116】
他の態様において、乾燥粉末は、栄養補助食品中に使用することができる。栄養補助食品の中への乾燥粉末のとり込みは、あらゆるサプリメント、または、形態で提供することができる。栄養補助食品は、経口投与ができるように、基材を処方する。例は、粉末薬品、結晶、粒、少粒子(ミクロ球及びミクロカプセルのような、マイクロメーターオーダーのサイズの粒子を含む)、粒子(ミリメートルオーダーのサイズの粒子を含む)、ビーズ、ミクロビース、ペレット、ピル、ミクロタブレット、圧縮タブレット、または、粉末化タブレット、形成タブレット又は、粉末化タブレット、及び、カプセル化(硬質カプセル又は軟質カプセルに、該組成物を粉末として、粒子として、ビーズとして、溶液あるいは、懸濁液として含むもの)である。栄養補助食品は、溶液又は懸濁液として、ゲルカプセル内に取り込まれる液体として、又は、他の簡便な投与形態として製品化することができる。あるいは、腸管投与剤として、座薬として、浣腸剤として、又は、他の簡便な形態として、製剤化することができる。イソマルトオリゴ糖組成物は、放出制御システムに用いることもできる。
【0117】
この栄養補助食品はまた、任意の許容される賦形剤、添加剤、又は、媒体を含む。例えば、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、ソルビトール、ショ糖、イノシトール、粉糖、ベントナイト、微結晶性セルロースまたは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の希釈剤あるいは充填剤(これらに限定しない)は、組成物の嵩を増やすためにイソマルトオリゴ糖組成物に添加することができる。デンプン、ゼラチン、スクロース、グルコース、デキストロース、糖蜜、ラクトース、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモスの抽出物、パンワー(panwar)ゴム、ガティーゴム、粘液ゴム、イサプゴール(isapgol)殻の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビーガム(Veegum)並びに、デンプンアラビノガラクタン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、グリセリルモノステアレート及びロウ等の(しかしこれらに限定されない)結合剤もまた、粘性を高めるために組成物に添加することができる。
【0118】
加えて、グリセリルモノステアレート、タルク、マグネシウム15ステアリン酸塩、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、水素処理した植物油、ポリエチレン・グリコール安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、カーボワックス、ラウリル硫酸ナトリウム、そして、ラウリル硫酸マグネシウム等(しかしこれらに限定されない)の滑剤も製品に加えることができる。コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、またはタルクは、流動促進剤として、粉末製剤の流動性を改善するために製品に添加することができる。最終的に、錠剤分解物質、例えば、デンプン、クレイ、セルロース、アルギン、ゴム、架橋ポリマー(例えば、クロスカルメローセ、クロスポビドン 及びグリコールデンプンナトリウム)ビーガム(Veegum)、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、セルロース及び木抽出物、ナチュラルスポンジ、カチオン交換レジン、アルギン酸、グアガム、シトラスパルプ、カルボキシメチルセルロース、又は、ラウリル硫酸ナトリウムもデンプンと一緒に、胃、あるいは、腸のなかで錠剤が崩壊するのを促進するために添加される。
【0119】
本発明の他の態様は、各種焼成食品において使用される小麦粉の生産における本発明の基質、塊茎及び穀物組成物の使用である。焼成食品の語は、発酵及び非発酵食品を含む。発酵の語は、製造過程で、良く焼き上げるために、イーストを使用することを言う。一方、非発酵の語は、製造過程で、イーストを使用しない食品を意味する。典型的な、発酵食品は、パン、クッキー、ケーキ、パイ、ビスケット、ナン、ベーグル、パスタ、クラッカー、ロールパン、ドーナッツ、ピタパン及びペストリーを含む。典型的な、非発酵食品は、マツア(matzoh)、チャパチ、朝食用シリアル及びトルティージャを含む。本発明の他の態様は、本発明の新規な穀物組成物を、パスタに使用することである。例えば、ヌードル(ペンネ、スパゲッティ、ラザニア、うどん等)である。本発明の他の態様は、本発明の方法に従って製造された基質、塊茎及び穀物組成物である。本発明の他の態様は、本発明の方法に従って製造された基質、塊茎及び穀物組成物を含む小麦である。本発明の他の態様は、上で説明したイソマルトオリゴ糖を含む経口補水溶液である。本発明の基質、塊茎及び穀物組成物を含む小麦は、上で説明した方法に従って製造することができる。本発明の他の態様は、上で説明した方法に従って作られた、基質、塊茎又は穀物組成物である。
【0120】
本発明の他の態様は、上で説明した方法で作られる基質、塊茎又は穀物組成物である。本発明の他の態様は、発酵/麦芽汁または基質中に、新規な穀物組成物を使用することである。例えば、本発明の新規な穀物組成物は、参照により本発明の明細書に援用する国際公開公報No. WO 02/20712 A1に開示されているように、ビールの麦芽汁の中に、使用することができる。本発明の新規な穀物組成物は、ビールの中に、添加物としても使用することができる。
【0121】
基質を含むイソマルトオリゴ糖は、例えば、マルトースシロップとして、精製されたマルトースの抽出及び単離よって、マルトースを回収する、付加的な工程を経ることができる。このシロップは、本発明の分野でよく知られた方法によって、例えば、参照により本明細書に援用されるU.S. Pat. Nos. 3,922,196 及び 4,113,509に記載の方法によって、穀物組成物から、抽出及び/又は単離される。
【0122】
甘味、あるいは、イソマルトオリゴ糖含量を高めるための他の方法は、生成したイソマルトオリゴ糖シロップを、加水分解酵素(溶解された、あるいは、固定された形で)で処理して、イソマルトオリゴ糖よりも小さい分子の糖にするか、あるいは、全く親和性を有しない物質にすることである。そのような酵素の例は、優先的にイソマルトオリゴ糖を加水分解するアスペルギウスニガー(A. niger)又は、アスペルギウス種(Aspergillus sp.)あるいは、リゾープス種(Rhizopus sp.)等である(Manjunath P., Shenoy B.C., Raghavendra Rao M.R., Journal of Applied Biochemistry,5(1983), 235-260 ; Meagher M.M., et al., Biotechnology and Bioengineering, 34(1989), 681-693 ; Pazur J.H., Kleppe K., The Journal of Biological Chemistry, 237(4)(1962), 1002-1006 ; Hiromi K., Nitta Y., et al., Biochimica et Biophysica Acta, 302 (1973), 362-37)。
【0123】
バチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophiius)由来のアルファ-D-グルコピラノシダーゼのような酵素も適用できる。この酵素は、イソマルトオリゴ糖を加水分解する能力はなく、イソマルトオリゴ糖高含有シロップの中で、マルトオリゴ糖を分解するのみである(Suzuki Y., Shinji M., Nobuyuki E., Biochimica et Biophysica Acta, 787(1984), 281-289)。マルターゼと呼ばれている他のアルファ-D-グルコシダーゼも、使用することができる。例えば、イースト由来のマルターゼは、マルトースのみを加水分解して、より小さいマルトトリオースにする (Kelly C.T., Fogarty W.M., Process Biochemistry, May/June(1983), 6-12)。
【0124】
マルトオリゴ糖をグルコースに加水分解した後で、クロマトグラフ法、または、ナノ、あるいは、ウルトラろ過処理をすると、シロップ中のイソマルトオリゴ糖の濃度が高く成る。
【実施例】
【0125】
以下の具体的な実施例は、本発明の組成物及び方法を詳細に説明する。これらの実施例は説明のためのものであり、例えば、小麦、コメ、大麦、麦芽、ポテト、サツマイモ等他のデンプン高含有物質及び、酵素を生産する内因性マルトースを含む物質も使用することができる。
【0126】
酵素活性の検出
トランスグルコシダーゼ活性は、Shetty, J., et al, 1986(U.S. Pat. No. 4,575,487)の方法により測定する。
【0127】
ベータアミラーゼ活性は、20℃、pH4.6で、デンプン含有基質を30分間加水分解することにより測定する。加水分解で生産される還元糖類は、アルカリヘキサシアノ鉄酸塩を用いた、滴定によって測定される。DPとして表すジアスターゼ活性の1単位は、サンプル溶液が、20 ℃で、1時間、100 mlの基質と共にインキュベートされたときに、5 %のサンプル酵素溶液0.1 mlに含まれる、5 mlのフェーリング溶液を還元して還元糖を生成させる酵素の量を言う。
【0128】
このアルファアミラーゼ活性は、メガザイム社(Megazyme(Aust.)Pty. LtD.)より販売されている、エンドポイントアッセイキットに基づいて測定することができる。バイアル中の合成基質(p−ニトロフェニルマルトペプタオシド(p-nitropHenyl maltoheptaoside)「BPNPG7」)を、10 mlの滅菌水に溶解し、その後に、アッセイ用緩衝液(50 mM マレイン酸緩衝液、pH 6.7、5 mM 塩化カルシウム, 0.002 % Tween 20)で1:4に希釈する。アッセイは、25 ℃において、キュベット管の中に、10μlのアミラーゼを790μlの基質に添加することにより行われる。加水分解の割合は、75秒後の、410 nmの吸光度の変化の速度によって測定される。0.2吸収単位/分の割合まで線形を示すことが確認された。α-アミラーゼプロテイン濃度は、Bradord, Anal. Biochem., Vol. 72, p.248(1976)に記載の、ウシ血清アルブミンを標準液とした、バイオラドアッセイ(Bio-Rad Assay)(バイオラドラボラトリーズ(Bio-Rad Laboratories))を用いて測定した。
【0129】
基質
小麦粉は全実施例の基質として使い、小売店より購入した。他の塊茎又は穀物基質、例えば、基質として使用されるコメ及び大麦も、小売店から購入した(ホワイアンリュウジュアン食品加工会社(Huai An Liujun Food processing company)、 江蘇省、中国)。
【0130】
オリゴ糖の解析
オリゴヌクレオチドの反応生成物の組成は、屈折率(RI)検出器(アンスペック社(The Anspec Company, Inc.)のERC-7515A検出器)及び60 ℃に維持されたHPLCカラム(Rezex8 u8% H, Monosaccharides )、を装備したHPLC(アラインメント1010、パロアルト、カリフォルニア、米国(Agilent1010, Palo Alto, California, USA))、によって測定した。希硫酸(0.01N)を、0.6ml/分の流速で、移動相として使用した。20 mlの0.4 %溶液を、カラムに付加した。このカラムは、糖の分子重量に基づいて、分子を分離する。例えば、DP1の表記は、グルコース等の単糖類である、DP2の表記は、マルトース等の、二糖類である、DP3の表記は、マルトトリオース等の三糖類である、そして、DP4の表記は、重合度が4以上のオリゴ糖類である。高分子糖類(Hr.Sugar)の語は、3以上のDPを有する糖を言う。
【0131】
反応生成物中のイソ糖類、又は、分岐糖類を、屈折率(RI)検出器(アンスペック社(The Anspec Company, Inc.)のERC-7515A検出器)及び50 ℃に維持されたHPLCカラム(ショーデックスリスパークオリゴサッカライドカラム#DC-613)、を装備したHPLC(アラインメント1010、パロアルト、カリフォルニア、米国(Agilent1010, Palo Alto, California, USA))を用いて測定した。70(アセトニトリル):25(メタノール):5(水)の溶液を、移動相として使用し、流速を、2.5 ml/分とした。20 mlの4.0 %の溶液をこのカラムに付加した。このカラムで、糖の分子重量に基づいて分離を行った。
【0132】
実施例1
バチルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis (ジェネンカーインターナショナル(Genencor International, Palo Alto, CA)より、「GC262SP」の商標で販売されているアルファアミラーゼ))及びバチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophiius ジェネンカーインターナショナル(Genencor International, Palo Alto, CA)より 「GC007」の商標で販売されいているアルファアミラーゼ))由来のアルファアミラーゼを用いて、小麦粉からのマルトース生成を比較した。小売店で販売されている小麦粉150グラムを450 mlの脱イオン水に懸濁した。均一な混合物にするために、この懸濁液(pH 5.5)を、室温で15分間攪拌した。pHを、6.0 Nの硫酸(H2SO4)で調節した。得られた懸濁液を、60 ℃に維持した水槽内に保持し、酵素を添加する直前まで、均一性を保持するために攪拌を続けた。約6,000 LU/gの、バチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophiius)(0.6 kgの「GC007」(ジェネンカーインターナショナル)/メートルトン(MT)デンプンdsb)のアミラーゼ及び15,100 LU/gの、バチルスリケニフォルミス(Bacillus stearothermophiius)(0.6 kg 「GC262SP」(ジェネンカーインターナショナル)/ MT デンプンdsb)を別々に添加し、60℃の温度で、攪拌しながら保持した。サンプルを、予め決められた反応時間の終了毎に、水槽から引き上げ、糖組成を液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて、解析した。2 mlのサンプルが、各コンテナから、予め決められた時間ごとにサンプリングされ、遠心管に移された。サンプルを8000 rpmで3分間遠心分離した。この上澄みを遠心管から回収し、数滴を「Lecia AR200」 (ライカミクロシステムズ社、バファロー、ニューヨーク、米国(Leica Microsystems, Inc., Buffalo, NY, USA)) デジタル携帯屈折計のサンプルウェルに滴下し、結果を記録した(表2)。この溶液のブリックスも測定した(表2)。
【表3】

【0133】
表2の結果は、バチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)由来のアルファアミラーゼと共にインキュベートした小麦粉のマルトース含量の方が、バチルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のアルファアミラーゼとインキュベートした小麦粉のマルトース含量よりも多いことを示している。アルファアミラーゼとともにインキュベートした小麦粉は、アルファアミラーゼ無添加の小麦粉のインキュベーション産物と比較した場合、融解固形物中における穀物デンプンの加水分解物が有意に増加していることがわかる。バチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)由来のアルファアミラーゼの反応生成物は、グルコースに対するマルトースの割合と、マルトースに対するマルトトリオースの割合が、バチルスバチルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のアルファアミラーゼのインキュベーション産物よりも高いことが特徴的である。これらの結果は、バチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)由来アルファアミラーゼが、マルトース高含量シロップの生産に有用であることを示している。
【0134】
実施例2
小麦粉と共にインキュベーションした間に生産されるマルトースに対するバチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)由来アルファアミラーゼ(ジェネンカーインターナショナル(Genencor international,Palo Alto, CA)より「GC007」の商標で販売されているアルファアミラーゼ)の濃度の影響を検討した。実施条件は実施例1の条件と同様である。加えて、バチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)由来のアルファアミラーゼ(6,000unit/g)を、0.1 kg、0.2 kg、及び0.6 kg/MTのデンプンdsbに添加した。結果を表3に示す。
【表4】

【0135】
アルファアミラーゼの添加量は、小麦粉をインキュベーションしている間に生成するマルトース容量、あるいは、溶解性物質の量には影響を与えないことが示された。以下の実施例では、0.1 kg /MTデンプンdsbの「GC007」を使用する。
【0136】
実施例3
小麦粉150グラムを、450 mlの脱イオン水に懸濁し、6.0 NのH2SO4を用いて、pHを、5.00、4.50、及び4.00に調製した。このスラリーを均一にするために攪拌し、各pHが安定するまで、pHを調整した。GC007を、0.1 kgs/MT、デンプンdsbの割合で、各pHの試料に添加し、60℃でインキュベートした。このサンプルを、予め決められた試験時間に、時回収し、糖組成と、ブリックスを実施例1の方法で測定した(表4)。
【表5】

【0137】
マルトース含量は、pH 5.5から小麦粉のインキュベーションのpHが下がるに従い、多くなった。そして、pH 4.5で最高に達し、pH 4.0では減少した。植物ベータアミラーゼを含むデンプンの加水分解の間に、脱分岐酵素を添加しないで、60 %以上のマルトース含量を有する生成物を得ることは、予期しなかった結果である。市販のベータアミラーゼ(大麦または小麦粉)による液化デンプンの加水分解は、通常、55 %から60 %の間のマルトース含量を有する生成物を生産する。液化デンプンを用いて60 %以上のマルトース含有組成物を生産するためには、脱分岐酵素あるいは、非常に低いDEの液化デンプンが必要であった。本発明に開示されている過程は、近年用いられている方法よりも微生物の汚染の高いリスクを減らす条件である、pH 4.5及び60 ℃における、マルトースの生産を可能にしたということは重要である。
【0138】
実施例4
小麦粉150グラムを、450 mlの脱イオン水に懸濁し、このスラリーのpHを、4.5に調整した。このスラリーを、均一になるまで、攪拌し、6.0 NのH2SO4を用いて、pHを安定するまで、調製した。得られた懸濁液を、60 ℃に保った水槽内でインキュベートし、酵素を添加する直前まで、攪拌した。デンプン液化酵素、例えば、「GC007」(ジェネンカーインターナショナルインク)の商標で販売されているバチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)のアルファアミラーゼを、0.1 kg/MT dsb添加した。脱分岐酵素、「OPTIMAX L-100」(ジェネンカーインターナショナルインク)の商標で販売されている、プルラナーゼを、0.25 kg、0.5 kg及び1.0 kg/MT dsb添加し、60 ℃でインキュベートした。サンプルを、所定の時間(2,4,6、及び24時間)毎に、回収し、糖組成及びブリックスを実施例1に記載の方法で測定した。結果を表5に示す。
【表6】

【0139】
マルトース転化酵素(ベータアミラーゼ等)又は、デンプン液化アルファアミラーゼ(GC007等)は、デンプン基質のアミロペクチンの中の分岐ポイントの結合である、アルファ1-6グルコシル結合を加水分解することができない。従って、ベータアミラーゼと共に、デンプン基質をインキュベートする間に、65 %以上のマルトースを生産するために、脱分岐酵素、プルラナーゼ(OPTIMAX L-100(ジェネンカーインターナショナルインク))を添加することが通常行われている。小麦とGC007とをインキュベートしたときの「OPTIMAX L-100」の濃度の影響について試験を行い、結果を表5に示した。「OPTIMAX L-100」の添加により、対照と比較して、有意に高い(>75%)のマルトース(DP2)を得ることができた。
【0140】
実施例5
高温において(>90%)デンプン基質を酵素で液化し、マルトース高含量シロップを生産し、イソマルトオリゴ糖シロップを生産するために、グルコシルトランスフェラーゼで、酵素処理をすることは、工業的に良く行われていることである。この実施例は、一つの工程で小麦粉の中の穀物デンプンをイソマルトオリゴ糖に転化する方法を示す。この実施例では、275グラムの小麦粉をフラスコ内に入れ、ついでこのフラスコに688 mlの脱イオン水を入れる。懸濁液を均一にするために、15分間攪拌し、pHを6.0NのH2SO4を用いて、4.5に調整する。得られた懸濁液を、60 ℃の水槽内でインキュベートし、酵素を添加する直前まで攪拌を続ける。デンプン液化酵素、例えば、バチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)のアルファアミラーゼ([ジェネンカーインターナショナルインクより販売されているGC007](0.1 kg/MT dsb)及び、脱分岐酵素、例えば、プルラナーゼ(ジェネンカーインターナショナルインクより販売されているOPTIMAX L-100)(0.5 kg/MT dsb)を添加する。この懸濁液を、均等に2分割し、このうちの1つに、「TRANSGLUCOSIDASE L-500」(ジェネンカーインターナショナル)より販売されているアスペルギウスニガー(Aspergillus niger)トランスグルコシダーゼを、1.0 kg/MT dsbを添加し、水槽内で60℃に維持する(サンプル1)。他方のサンプルは、初めに1時間、60℃でインキュベートし、ついで、「TRANSGLUCOSIDASE L-500」(ジェネンカーインターナショナル)より販売されているアスペルギウスニガー(Aspergillus niger)トランスグルコシダーゼを、1.0 kg/MT dsb添加し、水槽内で60 ℃に維持した(サンプル2)。結果を表6に示す。表6の結果は、トランスグルコシダーゼを転化する前に、基質のプレインキュベーションを行っても、あるいは、行わなくても、基質からIMOへの転化が起ることを示している。
【表7】

【0141】
トランスグルコシダーゼ処理をした、マルトース高含量変性小麦粉のインキュベーション産物は、通常の手段により生産された組成物と同等であった。本発明の工程はシンプルで、経済的であり、容易に商業生産規模で使用することができる。
【0142】
実施例6
小麦、大麦及びライ麦のような穀類は、多量のベータアミラーゼを含むことが知られている。これらのシリアルを、pH5.5で、55 ℃から60 ℃でインキュベートすると、通常、50 %以上のマルトースを含むシロップができる。720 mlの脱イオン水に、280グラムの各穀類の粉末を添加して、小麦、大麦、及び、ライ麦の粉を28 %含むスラリーを、調製した。各調整液に対して、バチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)アルファアミラーゼ(例えば、ジェネンカーインターナショナルインクより販売されているGC007)を、粉末重量に対して、0.2 kg/MT添加した。pHを、6.0 NのH2SO4を用いて、5.5に調整し、60℃で4.5時間インキュベートした。インキュベートしたサンプルのpHを6.0 NのH2SO4を用いて、4.5に調整し、(小麦粉に対して)1.25 kg/MTのトランスグルコシダーゼ(例えば、ジェネンカーインターナショナルより販売されているTRANSGLUCOSIDASE L-500)を、添加した。このスラリーを、その後、60 ℃で48時間インキュベートした。その後、このサンプルを、遠心分離し、IMO組成を実施例1の方法に従い測定した(表7)。
【表8】

【0143】
実施例7
140グラムの麦芽(カーギルモルト/シュライヤーモルト社、ウイスコンシン、米国(Cargill Malt/Schreier-Malting Company, Wisconsin, USA))を、360グラムの脱イオン水に混合した。このスラリーを均一にするために、室温で15.0分間攪拌した。希酢酸を用いてpHを4.5に調製した。pHが安定した後、このスラリーを60 ℃の水槽内に置いた。インキュベーションは、このスラリーを攪拌しながら30分間行い、2 mlのサンプルを、ブリックス及びHPLC解析のために、回収した(0時間)。「TRANSGLUCOSIDASE L-500」を1.5 kg/MT麦芽に添加し、60℃でインキュベートした。サンプルを所定のインキュベーション時間(例えば、2、4、6、12、及び24時間)に回収し、ブリックス及びHPLC解析を実施例1の方法に従って行った(表8)。
【表9】

【0144】
表8の結果は、市販の麦芽抽出物は、イソマルトオリゴ糖を含む麦芽抽出物を生産するための、基質として適当であるということを示している。反応時間及び麦芽抽出物のIMO糖組成は、酵素の投与量によって調製するこができる。マルトース転化酵素の添加は、生成物のIMO含量を高めた。
【0145】
実施例8:ソルガム、キビ及びコメ(外因性マルトース転化酵素)
他の態様において、280グラムのソルガム、キビ、及びコメの粉末を、それぞれ、720グラムの脱イオン水に懸濁し、攪拌した。懸濁液のpHを5.5に調製し、「GC007」(ジェネンカーインターナショナルインク)の商標で販売されているバチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)アルファアミラーゼを、各サンプルに、粉末重量に対して0.5 kg/MT添加した。均一に混合した後に、懸濁液を75 ℃の水槽内に置いた。反応混合物を、6時間のインキュベーション時間の間、攪拌し続けた。その後、温度を60 ℃に低め、ベータアミラーゼ(ジェネンカーインターナショナルインクより「OPTIMAL BBA」で販売されている)を、粉末重量に対して1.0 kg/MT添加した。インキュベーションをさらに10-15時間続け、サンプルをブリックス及びHPLC測定のために回収した。所定の時間経過後、pHを6 NのH2SO4を用いて、4.5に調整し、アスペルギウスニガー(Aspergillus niger)トランスグルコシダーゼ(ジェネンカーインターナショナルよりTRANSGLUCOSIDASE L-500の商標で販売されている)を、粉末重量に対して1.0 kg/MT添加した。解析のために、サンプルを24時間及び48時間に回収した(表9)。
【表10】

【0146】
表9に支示すように、41から54 %(52.20、53.03、43.90、41.19、54.40及び51.25)のIMOナンバーを有する組成物が得られた。
【0147】
実施例9:混合穀物/穀類組成物
小麦に関する実施例5の結果、そして、大麦並びにライ麦に関する実施例6の結果は、内因性マルトース転化酵素の活性の高いものが、マルトース高含量シロップを生産することを示している。一方、内因性マルトース転化酵素を含まないとされている、穀物、例えば、ソルガム、キビ、及びコメは、トランスグルコシダーゼ処理に好適な基質を生産するために、外因性のマルトース転化酵素を添加することが必要である。この実験では、小麦又は大麦のような、マルトース転化酵素を含む穀類とソルガム及びコメを組み合わせて、マルトース転化酵素を供給することにより、トランスグルコシダーゼ処理に好適な基質を生産することできるかどうかということを検討した。通常の態様おいて、140グラムの粉を720 mlの脱イオン水に懸濁してソルガム及びコメの15%懸濁液を調製する。6.0 NのH2SO4を用いてpHを5.5に調整し、「GC007」(ジェネンカーインターナショナルインク)の商標で販売されているバチルスステアロセレモフィリス(Bacillus stearothermophilus)アルファアミラーゼを、各サンプルの粉重量に対して0.5 kg/MT添加した。得られた懸濁液を75 ℃の水槽内に置いた。反応混合物は、6時間のインキュベーション時間の間、攪拌を続けた。その後、温度を60 ℃に低めた。前処理したコメ粉体に、大麦粉体を添加するによって、粉全体の固形分を、15 %から30 %に増やした。同様に、小麦粉を前処理したソルガムに添加し固形分の最終濃度を30 %にした。インキュベーションを60 ℃で、さらに、10-12時間続けた。pHを4.5に低め、「TRANSGLUCOSIDASE L-500」を粉末重量に対して1.0 kg/MT、添加した。60 ℃でのインキュベーションを24時間及び48時間行った。サンプルは、ブリックス及びHPLC解析のために、回収し、結果を表10にまとめた。
【表11】

【0148】
表10に示すように、キビ及び大麦の混合物、並びに、コメ及び小麦の混合物は、上記インキュベーション期間終了後に、45 %から56 %のIMOを生産することが明らかになった。
【0149】
ここで説明される実施例及び実施態様は、説明目的のみに使用され、当業者によりなされる本発明の精神を逸脱しない範囲の種々の改良や改変は、本発明の特許請求の範囲内であることは、当然のことである。本発明の明細書に引用した、全出版物、特許及び特許明細書は、それらの全体を参照により本発明明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、イソマルトオリゴ糖を多く含む小麦粉の生成物を説明するフローチャートである。
【図2】図2は、イソマルトオリゴ糖を多く含む小麦粉の生成物を説明する他のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソマルトオリゴ糖穀物組成物を製造する方法であって、
(a)マルトースを製造するために、マルトース転化酵素とデンプン液化酵素とを、デンプン含有非ゼラチン化穀物と接触させる工程と、
(b)前記マルトースをグルコース転移酵素と接触させる工程であって、前記工程(a)及び工程(b)が、デンプンゼラチン化温度以下の温度で行われることを特徴とする工程と、
(c)イソマルトオリゴ糖が前記穀物由来であることを特徴とする、酵素を用いて生成したイソマルトオリゴ糖を含む穀物組成物を得る工程と
から成る方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記工程(a)及び工程(b)が同時に行われることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、さらに前記穀物組成物を乾燥する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、前記穀物が、小麦、ライ麦、大麦、及び、麦芽から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、前記穀物がキビ、ソルガム、及び、コメからなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、前記マルトース転化酵素が、ベータアミラーゼであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、前記マルトース転化酵素が、穀物の内因性の物であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、前記デンプン液化酵素が、バシルス(Bacillus)由来のアルファアミラーゼであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、前記デンプン液化酵素が、バシルスリケニフォルミス(Bacillus licheniformis)あるいはバシルスステアロセレモフォリス(Bacillus stearothermophilus)由来であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、前記グルコース転移酵素が、トランスグルコシダーゼであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法であって、前記トランスグルコシダーゼがアスペルギウス(Asprgillus)由来ののもであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、前記アスペルギウス(Aspergillus)がアスペルギウスニガー(Aspergillus niger)であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1によって製造された穀物組成物。
【請求項14】
請求項13の穀物組成物を含む食品添加物。
【請求項15】
請求項13の穀物組成物を含む穀物粉体。
【請求項16】
請求項1の方法により製造されたイソマルトオリゴ糖。
【請求項17】
請求項16のイソマルトオリゴ糖を含む経口補水溶液。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−519612(P2006−519612A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507172(P2006−507172)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/007781
【国際公開番号】WO2004/081022
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(500284580)ジェネンコー・インターナショナル・インク (67)
【Fターム(参考)】