説明

プレフォームを加熱する方法

本発明は、半径R、材料厚t及び材料吸収スペクトルにより特徴づけられるプレフォーム1を加熱する方法を説明する。当該方法は、所望の温度プロフィールTに依存して、プレフォームの半径R及び材料厚tに基づいてプレフォーム1に対する所望の実効吸収係数αeffを選択するステップと、実効吸収係数αeffを満たすための吸収スペクトルの吸収係数に基づいて編集される波長スペクトルを持つ放射線を有するレーザ放射ビームLを生成するステップと、プレフォーム1を加熱するためにレーザ放射ビームLをプレフォーム1に向けるステップとを有する。本発明は、更にプレフォーム加熱システム10のレーザ放射生成ユニット9を制御するための駆動装置7及びプレフォーム加熱システム10を説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフォームを加熱する方法を説明する。本発明は、また、プレフォームを加熱するための駆動装置、プレフォーム加熱システム及びコンピュータプログラムを説明する。
【背景技術】
【0002】
今日では、大多数の飲料容器は、PET(ポリエチレンテレフタル酸塩)のような材料の軽量プラスチック瓶であり、ツーステッププロセスで製造される。第1のステップにおいて、いわゆる中身のない「プレフォーム」が、例えばスローな高温押出プロセスにより原料から作られる。第2のステップにおいて、これら中身のないプレフォームの「壁」は、再び加熱され、このときこれらの再結晶点温度、すなわち約130℃より低い温度まで加熱され、その後、吹込み成形を介して所望の瓶形状に形成される。
【0003】
従来のプレフォームを加熱しているほとんどのオーブンでは、この加熱はハロゲン灯を使用して行われ、そのために、幅広い放射スペクトルの有意部分は赤外線領域にある。加熱プロセスの間、熱エネルギは、プレフォーム材料に「蓄積される」。技術的によく発達している一方、赤外線の加熱技術は、限られたエネルギ効率という欠点を持つ。低いエネルギ効率の1つの理由は、ハロゲン灯により放射される放射線が効果的に向けられていないか又は合焦できないということである。しかしながら、主要な理由は、ハロゲン灯の放射スペクトルがプレフォーム材料の吸収スペクトルに対して上手く整合していないことであり、結果的に、これはプレフォームの不適当な領域、例えばその外面でのエネルギの吸収になる。これは、結果的にプレフォーム壁の幾つかの領域での高い温度となる一方で、他の領域は十分に暖められていないことになる。例えば、内面が十分に暖められないまま、プレフォームの外表面は非常に熱くなる。更にまた、プレフォーム壁内部に蓄積されたエネルギの分布が、結果的に、材料の熱伝導率のために温度の同じ分布に必ずしもなるというわけではない。斯様な温度勾配又はホットスポットは、後続の吹込み成形ステージの一様な品質を保証することを困難にし、更に結果的にプレフォームの外面の損傷にさえなる。従って、幾つかの従来のプロセスは、加熱プロセスの間、(例えば強制空冷により)プレフォームの付加的な冷却を用いることさえあり、明らかに、エネルギ消費の観点から高コスト及び非効率的である手法であって、従って望ましくない。代わりに、従来のオーブンで、不所望な温度勾配は、「平衡フェーズ」(すなわちプレフォーム材料内部の熱伝導がプレフォーム壁の温度の同等化を導くべきである時間遅れ)により処理される。これらの平衡フェーズは、通常、数秒(最高10秒)かかる。しかしながら、加熱プロセスにこれらのフェーズを含むことは、全体のプロセス時間が長くされることを意味し、これによって、プレフォーム加熱プロセスの全体のコストを増大させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、上述の課題を回避する経済的及び効率的なプレフォーム加熱プロセスを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、請求項1に記載のプレフォームを加熱する方法により、及び請求項10に記載の駆動装置により達成される。
【0006】
本発明によると、半径、材料厚及び材料吸収スペクトルにより特徴づけられるプレフォームを加熱する方法は、所望の温度プロフィールに依存して、プレフォームの半径及び材料厚に基づいてプレフォームに対する所望の実効吸収係数を選択するステップと、実効吸収係数を満たすため吸収スペクトルの吸収係数に基づいて編集される波長スペクトルを持つ放射線を有するレーザ放射ビームを生成するステップとを有する。当該方法は、更に、プレフォームを加熱するためにレーザ放射ビームをプレフォームに向けるステップを有する。ここで、プレフォームは、任意の「予備成形された」対象物又はワークピースであり、好ましくは吹込み成形ステップのために軟化させるために加熱されるべき中空且つ円筒状であることが理解されるべきである。斯様なプレフォームの例は、飲料容器が製造される基本的に円筒状中空PET要素であろう。また、「実効吸収係数」は、光の特定の波長で、プレフォーム材料の吸収スペクトルの吸収係数の関数として考えられる。
【0007】
レーザ放射線の用語「波長スペクトル」は、これら波長の「セット」が離散的波長であるか又は範囲の連続をカバーする波長範囲であるにせよ、これらの相対的強度を持ったレーザ放射ビームの放射線波長の「セット」を意味すると理解されるべきである。光子の波長がそのエネルギ又は周波数により等しく述べられるので、レーザ放射の用語「エネルギスペクトル」又は「周波数スペクトル」は「波長スペクトル」という用語と同等と考えられる。従って、後述されるように、波長スペクトルは、例えば、適当な波長又は波長範囲を持つレーザ放射源を選択し、強度の適切なレベルでこれらレーザ放射源からの放射線を混合し又は重畳することにより「編集(コンパイル)される」。
【0008】
実効吸収係数は、放射線の全ての関連する波長に対して計算される、入射放射線スペクトルに対する実際の(例えばプレフォームにおける)吸収に等しいと理解されるべきである。所与の放射線スペクトルに対する実効吸収係数αeffは、以下の式を使用して表される。

(1)
ここで、tは材料厚さ(この場合プレフォームの壁厚)であり、λはレーザ放射成分の波長であり、λαは(例えば、その材料に対する吸収スペクトルから得られた)その波長でのその材料に対する既知の吸収係数であり、wλはその波長に対する重み付け係数である。式(1)では、離散的波長での吸収が仮定され、実効吸収係数は和として表される。明らかに、吸収は波長連続にわたって等しくよく発生でき、この場合、実効吸収係数は対応する積分として表されるだろう。いずれにせよ、合せた全ての重み付け係数の総量は、一単位又は1.0を与えなければならない。
【0009】
使われるべき各波長に対する重み付け係数及び/又は波長の適切な選択により、式(1)は、逆に、すなわち、放射線スペクトルを「編集する」か又は「アセンブルする」ために用いられ、当該放射線スペクトルは、例えば吸収されるエネルギの特定の所望の分布によって定まる目標値を持つ実効吸収係数を導く。
【0010】
実効吸収係数の「解像度」は、利用可能なレーザ放射源の能力にある程度まで依存し、これらの能力が加熱される材料の吸収係数とどのくらいよく合うことができるかに依存する。明らかに、多くの異なって調整された個々のレーザ放射源を有するレーザ放射源を使用するとき、放射線は材料の適切な吸収に結果としてなる波長で生成できるので、所望の実効吸収係数αeffは高い程度の正確さで再現できる。しかしながら、限定された数の利用できる波長だけを持つシステムでさえ、重み付け係数により提供される自由度は、実効吸収係数αeffの所望の値に近い近似値を得るために有効である。
【0011】
本発明による方法の利点は、レーザ放射ビームに含まれプレフォームに付与されるエネルギが最適に蓄積される、すなわちプレフォームにより吸収されるということである。従来の加熱技術と比較して、本発明による方法では、エネルギは、プレフォーム材料の全体にわたってより均一に好ましくは基本的に均一に蓄積される。プレフォームに対する実効吸収係数がそのプレフォームの半径及び材料厚に基づいて選択されるので、実効吸収係数は正確にそのタイプのプレフォームに合う。ターゲット又は目標としてこの実効吸収係数を使用して、レーザ放射波長スペクトルを有するレーザ放射ビームを「編集する」ことは可能であり、プレフォームに当てるとき、レーザ放射ビームは実効吸収係数に従ってプレフォームを加熱するだろう。
【0012】
驚くべきことに、プレフォーム壁内の所望の温度プロフィールを達成するのに必要な実効吸収係数がそのプレフォーム材料に対する吸収スペクトルに記録される最も大きな吸収の値と必ずしも一致する必要はないことが観察された。
【0013】
従って、実効吸収係数(及び他のパラメータ)は、エネルギ吸収密度がプレフォームのボディの全体にわたって基本的に均一であるように好ましくは選ばれる。これは、従来のアプローチと比較してよりエネルギ効率の良い加熱プロセスを可能にし、過度の赤外線エネルギはプレフォームの方向に放射されるが、大部分は浪費される。また、本発明による方法を用いて、プレフォームの領域における局地的過熱が回避されるので、従来のアプローチにより必要とされる非効率で高コストの冷却が必要とされない。
【0014】
プレフォーム加熱システムのレーザ放射生成ユニットを制御するための本発明による駆動装置は、プレフォーム形状パラメータ、プレフォーム吸収スペクトル及びプレフォームに対する所望の温度プロフィールを得るための入力インターフェースと、所望の温度プロフィールに依存して、プレフォーム形状パラメータに基づいて実効吸収係数を選択するための選択装置と、実効吸収係数を満たすため吸収スペクトルの吸収係数に基づいてレーザ放射波長スペクトルを編集し、所望の相対的な実効吸収係数に基づいてレーザ放射ビームに対するレーザビーム幅を選択するためのレーザパラメータ編集モジュールとを有する。駆動装置は、更に、レーザ放射生成ユニットに、レーザビーム幅及び編集されたレーザ放射波長スペクトルに関連する制御信号を供給するための出力インターフェースを有する。
【0015】
従属請求項及びこれ以降の説明は、本発明の特徴及び特に有利な実施例を開示する。
【0016】
実効吸収係数がプレフォームの半径に依存するので、実効吸収係数は、好ましくはツーステップ態様で導出される。第1のステップで、プレフォームに対する所望の相対的な実効吸収係数が、所望の温度プロフィール、プレフォームの半径及び材料の厚さに基づいて選択される。第2のステップで、実効吸収係数は、その後相対的な実効吸収係数から導出される。
【0017】
用語「相対的な実効吸収係数」(αeff・R)は、プレフォームの半径Rにより乗算される実効吸収係数αeffであると理解されるべきである。それは、熱エネルギがプレフォームにより吸収される態様の指標を与える値である。一組の相対的な実効吸収係数値は、プレフォーム材料とは独立して決定でき、プレフォームの厚さとプレフォームの半径との比率と、レーザ放射ビーム幅とプレフォームの半径との比率とにより与えられる範囲により境界づけられるポイント空間内のポイントの領域として視覚化される。これは、図を用いて、詳細に後半で説明されるだろう。
【0018】
従って、駆動装置の選択装置は、プレフォーム形状パラメータ及び所望の温度プロフィールに基づいて相対的な実効吸収係数を選択するための選択モジュールと、相対的な実効吸収係数から実効吸収係数を導出するための導出モジュールを好ましくは有する。
【0019】
相対的な実効吸収係数は、両極端、例えば極めて狭い若しくは極めて広いレーザビーム、又は半径と比較して極めて薄い若しくは極めて厚いプレフォーム壁をカバーする広範囲から選択できるにもかかわらず、一般に望ましい相対的な実効吸収係数は、より小さな現実的な範囲内にある。従って、本発明によると、プレフォームを加熱するための方法は、レーザ放射ビームが、プレフォームに向けられるとき、範囲1.0〜4.0、より好ましくは範囲2.0〜3.5、最も好ましくは範囲2.5〜3.0の所望の相対的な実効吸収係数に従ってプレフォームを加熱するように、実効吸収係数を満たすため(プレフォームの材料の吸収スペクトルの一つ以上の吸収係数に基づいて)編集される波長スペクトルを持つレーザ放射を有するレーザ放射ビームを生成するステップを有する。このとき、極めて厚くもなく極めて薄くもない壁を持つプレフォームの通常のタイプに対して、有効な相対的な実効吸収係数は、実行可能なレーザビーム幅を使用して得られるべき所望の温度プロフィールに対して選択できる。好ましくは、所望の温度プロフィールが、選択された相対的な実効吸収係数で達成できる場合、これは与えられる上位の範囲から選択される。なぜならば、その範囲からの斯様な値は、レーザビームを編集するための基礎として使われるとき、加熱の間、プレフォームの全体にわたって非常に好ましいエネルギ吸収密度に結果的になるという観察が示されたからである。実効吸収係数は、ちょうど単一の波長のレーザ放射に基づいて得られるが、しかしながら、所望の実効吸収係数を満たす適切なスペクトルを編集するために幾つかのレーザ波長を使用することは有益である。幾つかのレーザの使用は、例えばあるプレフォーム材料から他のプレフォームの材料へ変更する、又はあるプレフォームサイズから他のプレフォームサイズへ変更する等の変更要件に対して放射線スペクトルのよりフレキシブルな適合を可能にするからである。
【0020】
レーザ放射ビームの幅は、近点(レーザビームが狭いビームとして生成されるとき)から広いライン(例えば、レーザビームが扇形に広げられるとき)まで拡張できる。目的地(この場合、プレフォーム)に到着するレーザ放射の強度は、レーザビームの実効幅に依存する。通常、広いビームは、狭いビームより鋭さがなく規定された縁を持つ。通常、レーザ放射の発光は、ビームの中央で最も強く、ビームの外縁部に向かって落ちる。レーザビームの「有効な」幅は、多くのやり方で、例えば「半値全幅」(FWHM)、すなわちビームの発光がその最大の半分となる2つのポイント間のビームの幅を用いて、規定できる。
【0021】
発明の方法の開発の間、プレフォームに向けられるレーザビームの幅が加熱プロセスにも影響することが観察された。放射線の狭いポイントのようなビームは、プレフォームの「スポット」領域を加熱する一方で、放射線の広い扇形のビームは、プレフォームの「ストリップ」領域を加熱する。更にまた、レーザビーム幅は、また、プレフォーム壁内の温度プロフィールにも影響し、狭いビームで、プレフォーム壁の外部よりも内部でより高い温度を達成することが容易である一方で、広いレーザビームを使用してこのような温度勾配を得ることは非常に困難である。従って、本発明による方法では、レーザ放射ビームに対するビーム幅は、プレフォームの半径により割られるビーム幅が、0.5以下、より好ましくは0.1以下であるように好ましくは決定され、レーザ放射ビームを与えるためのレーザ放射を生成するステップが、決定されたビーム幅に従ってレーザ放射ビームを成形するステップを有する。上述のように、その範囲内の相対的なビーム幅の値を選択することは、相対的な実効吸収係数の好適な高い選択を可能にする。
【0022】
通常、関係する複雑な電子回路のため、レーザ放射源は、適当な速度でレーザ放射源のそばを通って輸送されるプレフォームに対して固定位置にあるだろう。通常、プレフォームは垂直に保たれ、オーブンを通って水平に移動するが、プレフォームが任意の適切なやり方で保持され輸送できるようなオーブンが構成できることは明らかである。プレフォームはレーザ放射源を通り越して一般に移動するので、これら放射源が明らかにプレフォームを完全に囲むことはできない。一様な加熱を確実にするために、従って、プレフォームは、縦軸の周りを好ましくは回転し、これにより長手軸の向きが、入射レーザ放射ビームの主軸に対して基本的に直角である。例えば、レーザ放射ビームは、通っているプレフォームに水平に向けられ、プレフォームは垂直軸の周りに回転されるので、レーザ放射ビームの主軸がプレフォーム表面に基本的に垂直にプレフォームに当たる。
【0023】
特定の「温度プロフィール」は、レーザビームの選ばれたスペクトル構成及び形状で得られる。例えば、「広い」ビームを使用して加熱されたとき、レーザビームスペクトルが上記で与えられた上位の範囲からの値(例えば約4.0の値)を持つ相対的な実効吸収係数を満たすために編集されたとき、特定のプレフォームが内側でより外側で高い温度を呈することが観察された。その同じプレフォームが、狭いビームを使用して加熱されるとき、レーザビームスペクトルが上記で特定された下位範囲からの値、例えば2.0近くの値を持つ相対的な実効吸収係数を作るために編集されるとき、より高い内部の温度を呈する。従って、本発明の特に好適な実施例において、所望の相対的な実効吸収係数は、加熱の間、プレフォームの内側領域と外側領域との間で達成されるべき特定の温度勾配に基づいて選択される。例えば、プレフォーム加熱システムのコントローラは、プレフォームの内部が外部より熱いように、プレフォームが最良に加熱されることを決定する。パフォーマンスターゲットとしてこれを使用し、プレフォーム形状を知ることで、コントローラは、レーザ放射ビームが適切な波長スペクトルで編集され、しかるべく調整されるように、対応する相対的な実効吸収係数及び適当なビーム幅を選択できる。
【0024】
編集されたレーザ放射が所望の温度プロフィール、例えば「外側より内側でわずかに熱い」を満たす温度勾配に結果的になる一方、温度の絶対値は照射期間により影響される。プレフォームを長い期間レーザ放射に曝すことは、プレフォームの全体にわたって高い温度に結果的になる一方、全体の温度勾配は所望の温度プロフィールを満たし続ける。
【0025】
本発明による方法を使用して、より高い温度がプレフォームの外部より内部で達するので、後続の吹込み成形ステップが実施でき、完成品、例えば飲料容器の品質が満足するほど高い。更にまた、結果的にしばしばプレフォームの非常に熱い外面となる従来技術とは対照的に、プレフォームボディの非常に一様な加熱も達成できる。
【0026】
しかしながら、例えばプレフォームの材料に依存して、プレフォームの壁の全内反射の発生は、プレフォームの内面又は内側領域の温度があまりに高い状況を導く。
【0027】
以下に、プレフォームの内部の温度が「微調整できる」多くのアプローチが説明される。本発明の好ましい実施例では、プレフォームの内側領域の温度は特定の屈折率を持つ屈折素子により調整され、屈折素子は前記プレフォームのキャビティ内に位置する。斯様な屈折素子は、単にロッド、又はプレフォームのキャビティに挿入されて、きちんとキャビティに合うような態様で成形される同様の対象物である。好ましくは、屈折素子の材料は、屈折素子の屈折率がプレフォームの屈折率に密接に整合するように、選択される。例えば、屈折素子は、プレフォームと同じ材料であるか、又はプレフォームの屈折率と非常に類似した材料であり得る。その時、プレフォームを通る任意の放射線は、プレフォームの内面で全内反射をもはや受けず、屈折素子を通って、向こう側のプレフォームのボディを通って出てくる。このようにして、望ましくない過度のエネルギがプレフォームの内側領域で蓄積されないことが確実にされる。屈折素子は、固体でもよいが、所望の屈折特性に依存する適切な油又は水のような液体で等しくよくあり得る。
【0028】
プレフォームキャビティ内に位置される屈折素子の使用は、レーザ放射エネルギを効果的に分配できる。しかしながら、プレフォーム材料、プレフォーム形状及びレーザ放射源の選択に依存して、レーザ放射の幾らか過度な部分を「処分する」ことが望ましい。従って、他の本発明の好ましい実施例では、プレフォームの内側領域の温度は、プレフォームのキャビティに置かれる熱アブソーバにより調整され、熱アブソーバはレーザ放射のエネルギの一部を吸収する。このようにして、過度のエネルギは、プレフォームの他の領域に単に向き直されるのではなく、部分的に又は完全に「除去できる」。アブソーバの材料は、例えば使用される全ての波長又は使用される幾らか若しくは大部分の波長のレーザ放射を吸収するために、その吸収特性に基づいて選択できる。熱アブソーバは、固体、液体又は任意の適切な状態であり得る。例えば、プレフォームはオーブンを通る経路上に上方へ面したプレフォームの開放端部で懸架でき、熱アブソーバは、キャビティに注入されて、プレフォームが吹込み成形により成形される前に、再び後で注入される単なる水であり得る。
【0029】
上述のように、通常、プレフォームは軸の周りに回転するので、レーザ放射の熱エネルギは、プレフォームのボディの全体にわたって効果的に分配される。本発明の他の好ましい実施例では、熱アブソーバはエネルギ吸収材料の半円筒を有し、半円筒はプレフォームに対して基本的に静止している。
【0030】
駆動装置は、異なるプレフォーム形状、レーザビーム幅及び結果として生じる温度プロフィールに対する相対的な実効吸収係数に関係している情報を格納するためのメモリを好ましくは備える。斯様なメモリは、適当に、ルックアップテーブル(LUT)又はグラフの形で情報を格納できる。例えば、相対的な実効吸収係数データは、様々なプレフォーム形状、レーザビーム幅及び温度勾配のために集められ、一まとまりのポイントとして格納できる。後の段階で、異なるプレフォーム形状を用いて、相対的な実効吸収係数は、前に集められたデータの適切なポイント間の補間により決定できる。当然、メモリに格納されるデータは、いつでも新しいデータポイントにより更新できるか又は増大できる。
【0031】
本発明によるプレフォーム加熱システム、特にプレフォームを加熱するための瓶吹き付け装置は、複数の波長のレーザ放射成分を有するレーザ放射ビームを生成するためのレーザ放射生成ユニットと、レーザ放射生成ユニットを制御するための上述の駆動装置と、プレフォームを加熱するためにレーザ放射ビームをプレフォームに向けるためのビームコントローラとを有する。
【0032】
任意の適切なレーザ放射源が、レーザ放射の必要なビームを生成するために用いられる。好ましくは、レーザ放射ビームは、様々な強度で幾つか異なる波長又は波長範囲を含むべきであるので、様々な波長スペクトルが、加熱されるプレフォームのタイプに合うために編集できる。適切なレーザ放射生成ユニットは、例えば、コンパクトで、プレフォームを照射するのに適している(全く大きい赤外線ハロゲン灯と比較して)比較的小さな領域上に配置される複数の半導体レーザを有し得る。更にまた、半導体レーザは、比較的経済的である。特に適切なタイプの半導体レーザは、面発光レーザ(VCSEL)である。当業者にはわかるであろうが、VCSELは、活性媒体及び反射層の適切な選択により特定の波長の放射線を供給するために調整できる。従って、本発明によるプレフォーム加熱システムのレーザ放射生成ユニットは、複数のVCSEL、例えば各々が光スペクトルの異なる領域の波長の範囲、特にスペクトルの赤外範囲をカバーしている一組のVCSELを好ましくは有する。斯様な一揃いのVCSELで、特定のプレフォームと整合する波長を持つ波長スペクトルを「混合する」又は「編集する」ことが特に簡単であるので、プレフォームは最適に加熱できる。斯様なレーザ放射源に対して編集される波長スペクトルは、適当に、離散的波長又は波長の連続を有する。
【0033】
プレフォームの特定のタイプに対して、基本的な加熱が、代わりの熱源で実施されながら、加熱プロセスの「微調整」のために狭い範囲の波長の放射線を生成することで十分でもよい。従って、本発明の他の好ましい実施例では、プレフォーム加熱システムは、上述のレーザ放射生成ユニットに加えて、多くのハロゲン灯のような赤外光源を有する。
【0034】
本発明の他の態様では、コンピュータプログラムがプレフォーム加熱システムを制御しているコンピュータ上で実行されるとき、請求項1に記載のプレフォームを加熱する方法のステップを請求項12に記載のプレフォーム加熱システムに実施させるためのプログラムコード手段を有する、プレフォームを加熱するためのコンピュータプログラムが提示される。
【0035】
請求項12のプレフォーム加熱システム、請求項1のプレフォームを加熱する方法及び請求項15のコンピュータプログラムは、特に、従属請求項に規定されるような同様の及び/又は同一の好ましい実施例を持つと理解されるべきである。
【0036】
本発明の好ましい実施例は、それぞれ独立請求項を持つ従属請求項の任意の組合せでもよいことは、理解されるべきである。
【0037】
本発明の他の目的及び特徴は、添付の図面に関連して考慮される以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、図面は、単に説明のためだけであり、本発明の限定の規定として意図されているわけではないことは、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、模式的横断面図とプレフォームを通る模式的長手方向断面図とを示す。
【図2】図2は、従来技術で加熱されるプレフォームの外側領域での望ましくなく過熱の発現を示す。
【図3】図3は、プレフォームを製造する際に使用される例示的な材料の模式的吸収スペクトルを示す。
【図4】図4は、プレフォームを通る横断面図に対するレーザ放射ビームの発光分布を示し、本発明による方法を使用して加熱されるとき、プレフォームを通るレーザ放射により採られる経路を示す。
【図5】図5は、本発明による方法で使用される相対的な実効吸収係数の一組の特性曲線を示す。
【図6a】図6aは、プレフォームを通る2つの例示的な放射線により採られる経路及びプレフォームを通る横断面図を示す。
【図6b】図6bは、本発明によるプレフォーム加熱方法でレーザ放射を屈折させるための屈折素子及びプレフォームを通る横断面図を示す。
【図6c】図6cは、本発明によるプレフォーム加熱方法でプレフォーム内でレーザ放射を吸収するための第1の熱アブソーバ及びプレフォームを通る横断面図を示す。
【図6d】図6dは、本発明によるプレフォーム加熱方法でプレフォーム内でレーザ放射を吸収するための第2の熱アブソーバ及びプレフォームを通る横断面図を示す。
【図7】図7は、本発明の実施例による駆動装置を含む瓶吹き付け装置を示す。
【図8a】図8aは、本発明による方法を使用する第1の加熱プロフィール及びプレフォーム断面に対する光線追跡シミュレーションを示す。
【図8b】図8bは、本発明による方法を使用する第2の加熱プロフィール及びプレフォーム断面に対する光線追跡シミュレーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
これらの図において、類似の参照数字は全体を通して類似の対象物を指す。これら図内の対象物は、一定の比率で必ずしも描かれているわけではない。
【0040】
図1は、横断面図と、プレフォーム1のボディ3を通る長手方向断面図とを示す。飲料容器又は瓶としての使用を意図される斯様なプレフォーム1は、プレフォーム1のボディ3とは対照的に、通常加熱を受けずに、よって加熱されたプレフォームボディ3の後続の吹込み成形により大きくは影響を受けないままである、既にねじ切りされているネック2を特徴とする。プレフォーム1のキャビティ4は、通常ボトル吹込成形装置と称されるオーブン又は炉を通る経路の間、例えばプレフォームが配置されるロッド又はピンによりプレフォーム1を固定させるために使用できる。加熱されながら、プレフォームはその縦軸5の周りに回転される。オーブンで加熱されるとき、プレフォーム1のボディ3は熱くなって、結果として軟化するので、後続の処置ステップで、特定の圧力下でプレフォーム1のキャビティ4に圧入される空気はプレフォームボディ3を拡大させる。プレフォーム1外部の適切な成形手段は、例えば容器を容易に保持するための溝又はくぼみを与えるための飲料容器形成に役立つ。赤外線がオーブンの壁に沿って並んでいる複数のハロゲンライト球により放射される従来技術のハロゲンオーブンでは、プレフォームは、外側から内側への熱伝導により基本的に加熱される。熱伝導がかなり遅いので、内側領域が後続の吹込み成形ステップのために十分に暖かくなる頃には、プレフォームの外側領域Hが過熱状態になることが、しばしば問題である。この望ましくない過度の加熱は、図2のプレフォーム1の壁の領域Hにより示される。
【0041】
図3は、プレフォームの製造に通常使われるPET材料に対する吸収スペクトルを示す。グラフは、波長λ(ナノメートル)に対する吸収係数α(mm当たり)を示す。特定の波長、例えば約1700nm及び1900nmで発生しているグラフのピークは高い吸収に対応するので、これらの波長の放射線は特によく吸収され、これらの波長での放射線のエネルギは、プレフォームのボディ内で熱エネルギに変換される。他の波長、例えば400nmと1000nmとの間の領域での放射線は、吸収されることなくプレフォームを事実上通過する。特定の波長での吸収係数は、例えば以下の関係

(2)
を使用して、実験的に決定でき、ここで、αλは波長λでの吸収であり、Iは入射放射線強度であり(材料の反射率が無視できない場合、入射強度はしかるべく修正されなければならない)、Iλは透過強度であり、tはテスト材料の厚みである。斯様なデータは、材料の特性であり、製造業者により通常提供されるか又は容易に測定できる。
【0042】
図4は、プレフォーム1の縦軸(図示せず)に対して直角な長軸40に沿ってプレフォーム1に向けられるレーザ放射ビームLの発光分布を例示する。ここで、プレフォーム1は、半径R及び壁厚tを持つ横断面図で示され、プレフォーム1の中心がx軸及びy軸が交差する所に配置されている。z軸は、x軸及びy軸により与えられる平面に対して垂直であり、長手軸に対応し、オーブンを通過しながら当該長手軸の周りをプレフォーム1が回転する。レーザ放射Lは、強度がその最大の1/eに落ちる実効レーザビーム幅Bを持つexp(−(y+z)/B)と比例する正規化分布、すなわちガウス分布Ilaser(y、z)を呈示する。エネルギ吸収密度の放射状(半径方向)依存だけが本発明のために関連するので、Ilaserのz依存は以下の考察で無視されるだろう。
【0043】
経路t、t及びtは、式
r=R−t+γ・t (3)
により与えられる半径r内のプレフォーム壁の層を通る経路上の例示的なレーザ放射光線である。ここで、0≦γ≦1である。材料厚Δtを通る経路上で、レーザ放射の強度は因子e−αΔtだけ低減され、x方向に追加の依存性を導く。経路t、tに沿って吸収されるレーザ放射のためにプレフォーム1の環状領域41の総エネルギ吸収P(i)を決定するために、吸収密度にわたる積分が計算されなければならず、以下の式

(3.1)
により与えられる。
【0044】
同様に、環状領域41の経路tに対して、総エネルギ吸収P(ii)は、式

(3.2)
により与えられる。
【0045】
|y|=0からR―tまで式(3.1)を積分し、|y|=R―tからR―t+γ・tまで式(3.2)を積分して、レーザ放射Lの面内のガウス分布exp(―y/B)で重み付けされて、内側半径R―t及び厚みγ・tを持つ円筒体の面内のエネルギ吸収に対して以下の式を得る。

(3.3)
【0046】
最後に、吸収はプレフォーム壁内の深度の関数であるので、dPsum/dγが計算されなければならない。Psumはr=R―tからr=R―t+γ・tまでの吸収密度の積分P(r)に比例するので、dPsum/dγ=2πr・t・P(r)なので、以下の式が成り立つ。

(3.4)
【0047】
内側のエネルギ吸収密度と外部のエネルギ吸収密度との間の比率が1より大きい限り、すなわち

(4)
を満たす限り、プレフォームの内側又は内側領域は、望み通り、プレフォームの外側又は外側領域より比較的大きな程度まで加熱されるだろう。
【0048】
特徴的な相対変数が、1つの共通のパラメータに関して特定の記述的パラメータを表すことにより得られ、ここで、プレフォーム壁厚t、レーザビーム幅B及び吸収係数αeffは、以下に無次元の組合せを与えるために、プレフォーム外側半径Rと組み合わされる。
t/R 相対的なプレフォーム厚
B/R 相対的なレーザビーム幅、及び
αeff・R 相対的な実効吸収係数
様々な異なるプレフォーム形状及びレーザビーム幅に対して、従って、相対的な実効吸収係数の値は、

(5)
が真であって、計算でき、図5に示されるように、一連の特性曲線を与えるためにプロットできる。この図は、条件(5)が満たされるように得られた相対的な実効吸収係数αnull・Rの一組のグラフを示し、以下が適用される(所与のプレフォームの半径Rに対して)。

(6)
【0049】
αnullの「null」という用語は、プレフォームの内側の領域と外側の領域との間にエネルギ吸収レベルの差が基本的にないことを意味する。
【0050】
上記計算の有効性を検証するために、プレフォームの外側の領域と内側の領域との間の温度勾配が、プレフォーム特徴の幾何学的なパラメータt/Rの種々異なる値に対して、また相対的なレーザビーム幅B/Rの種々異なる値に対して測定された。高温測定により得られたこれらの実験的な測定は、上記式を使用して得られた予測値に合致したエネルギ吸収密度P(r=R)及びP(r=R―t)の直接的な指標を与えた。
【0051】
図5の特性曲線に基づいて、式(4)により与えられる状態が特定のプレフォームに対して満たされる現実的な範囲を決定することは、各曲線が相対的な実効吸収係数αnull・Rを表わすので可能である。特性αnull・R曲線より「下」から選択され、式(1)、式(2)及びその材料に対する吸収スペクトルを使用して対応するレーザ放射ビームを編集するためのパフォーマンス目標として使用される実効吸収係数αeffは、結果的にプレフォームの内側領域のより強い加熱となる。他方では、αnull・R曲線より「上」から選択され実効吸収係数αeffのレーザ放射ビーム編集を基にすると、結果的に外側領域のより強い加熱となる。
【0052】
例えば、10mmの半径を持つプレフォーム及びプレフォーム特性の幾何学的なパラメータt/R=0.5を考える、すなわち、プレフォームの半径がプレフォームの壁厚の2倍を考える。この形状は、x軸上のポイント0.5から発する点線の垂直線に対応する。0.5の相対的なレーザビーム幅B/R、すなわちレーザビームがプレフォームの半分の幅だけである場合は、約2.4の値で点線と交差する特性αnull・R曲線曲線51と関連する。10mmのプレフォームの半径では、これは、波長及び強度が式(1)を満たすように選ばれるターゲットとして使用できる約0.24の実効吸収係数αeffを与える。(選択されたレーザ波長λ、λ、...、λに対する)αλの代わりに置き換えるための吸収係数に対する実数値は、プレフォーム材料の吸収スペクトルから推定される。1.0の総量を持つ重み付け係数w、w、...、wは、式(1)の全体の合計(又は適当な積分)がαeffの選ばれた値を生じるように選ばれる。
【0053】
特性αnull・R曲線51上の交点から選択される実効吸収係数αeffのこの値で、プレフォームの一様な加熱が、確実にできる。他方では、外面よりプレフォームの内面を大幅に加熱することが望ましい場合、相対的な実効吸収係数αeff・Rは、特性αnull・R曲線51より下で選択されなければならず、例えば2.0の値であり、我々の例では0.2の実効吸収係数αeffを与える。レーザ放射ビームを編集するターゲットとして実効吸収係数のこの値を用いて、所望の温度プロフィールが得られる。同様に、外側領域が内側領域よりかなり加熱される加熱プロフィールが、特性αnull・R曲線51より上から相対的な実効吸収係数αeff・Rを選ぶことにより得られ、この係数は例えば3.0の値であり、所望の波長を決定し、適当な強度を選択するためのターゲットとして式(1)で使われる0.3の実効吸収係数αeffを与える。ほとんどの実際的な場合、プレフォーム形状はほとんど極端ではないので、すなわち、プレフォームの壁厚は半径に対してほとんど非常に薄くも厚くもないので、また、レーザビーム幅があまり広くもなく、あまりポイント形状でも通常ないので、好ましい相対的な実効吸収係数αeff・R及び実行可能な相対的なビーム幅B/Rが点線により囲まれる長方形50内から選択できる。
【0054】
既に言及されたように、本発明による方法は、外側のプレフォーム領域と比較して内側プレフォーム領域で、好ましくは高い温度が到達できる。以下に、内側プレフォーム領域での加熱のレベルを制限する又は低下させる手段と判断される場合に実行できる多くの手法が説明される。
【0055】
図6aは、中空プレフォーム1及びレーザ放射の2つの例示的な入射光線L、Lを示す。第1の光線Lは、屈折光線L11としてプレフォーム1を出る前に、プレフォーム1の壁に入り、内側プレフォーム/空気界面で全内反射(TIR)する。第2の光線Lは、屈折光線L21としてプレフォーム1を出る前、壁、キャビティ4及び再び壁を通過する間に、プレフォーム1の壁に入って屈折する。図が示すように、材料内部の実効経路長は比較的長くなるが、TIRを受ける光線に対して空間的に集められ、結果的に領域H内の増大された吸収になる。従って、この領域Hは、幾分あまりに熱くなる。プレフォームの内面又は内側領域の温度が本発明による加熱プロセスの間、あまり高くならないことを確実にするために、プレフォームが「内部でより熱くなる」べきことを所望の温度プロフィールが特定している場合であっても、適切な要素が、過熱を防止するためにプレフォームのキャビティに挿入できる。以下の図では、明確にするため、明白なギャップが追加要素とプレフォームとの間に示されているが、実際には、当該要素はキャビティに密接に又は正確に合うように設計できる。
【0056】
図6bは、屈折素子60がキャビティに挿入されたプレフォーム1を通る断面図を示す。ここで、プレフォーム1の屈折率に近いか同一である好ましい屈折率のための屈折素子60が選択される。例えば、屈折素子60は、プレフォーム1と同じ材料であり、プレフォーム1のキャビティに基本的に正確に合うように形成される。このようにして、プレフォームに入る光線Lは、図6aの場合のようにTIRを受けず屈折素子60を(途中でそのエネルギの幾らかが失われながら)通り、その後更に離れた距離でプレフォーム壁に再入射し、その後屈折光線L12としてプレフォームを出る。
【0057】
プレフォームの内側領域での「過度の」吸収を抑制するための他のアプローチでは、レーザ放射光線を再方向付けする代わりに、光線の過度のエネルギが、プレフォーム1のキャビティ内に配置される適切な熱アブソーバにより吸収される。図6cは、斯様な熱アブソーバ61を含むプレフォーム1を示す。放射線光線L、Lは、熱アブソーバ61に到達する前にプレフォーム1の壁を通り、ここで、エネルギが吸収されるので、これらの光線はアブソーバ61により事実上「終わる」。図6dは、キャビティの約半分を占めるだけである屈折素子62を具備するプレフォーム1を示す。これは、オーブンを通過する間、アブソーバ62ではなくプレフォームだけが例えば示される方向RDに特に回転すれば、より節約になるだろう。プレフォーム1の壁を通過してキャビティ4に入る放射線光線Lは、熱アブソーバ62の平坦な表面に当たって終わる。熱アブソーバ61、62は、任意の適切な材料であり、水でもよい。例えば、プレフォームが上方へ向かうネック端部又は開口部で懸架される場合、キャビティ4はプレフォームがオーブンに入る前に、単に水で満たされ得る。
【0058】
図7は、本発明による駆動装置7を用いたプレフォーム加熱システム10のブロック図を示す。駆動装置7は、プレフォーム形状パラメータ、例えばプレフォームの半径R及び壁厚tを入力するための入力インターフェース70を有する。システムコントローラは、例えば、キーボードを通じて手動でこれらのパラメータを入力できるか、又は前に格納された情報のデータベース71から、これらのパラメータを取り出せる。(材料のタイプが既知である場合)プレフォーム材料の吸収スペクトルを記述するデータ、及び加熱されるべきプレフォームに対する所望の温度プロフィールTのような他のパラメータも、手動で入力できるか又はデータベース71から取り出せる。パラメータは、適切なデジタル入力として供給できる。選択モジュール72は、プレフォームパラメータ及び所望の温度プロフィールに基づいて、相対的な実効吸収係数αeff・Rを選択するか又は決定する。また、可能である相対的な実効吸収係数を記述する情報は、データベース71又はメモリ71から取り出せる。導出モジュール73は、相対的な実効吸収係数αeff・Rから実効吸収係数αeffを導出し、レーザパラメータコンパイラモジュール74は、多くのレーザ波長λ、λ、...、λを持つ波長スペクトルを編集する。各レーザ放射成分の強度は、プレフォーム材料の吸収スペクトルの対応する吸収係数に基づいて、式(1)により実効吸収係数αeffを満たすためにレーザパラメータコンパイラモジュール74により選ばれる重み付け係数w、w、...、wにより定められる。レーザパラメータコンパイラモジュール74は、また、所望の又は達成可能な相対的な実効吸収係数αeff・Rに基づいて、レーザビーム幅Bを決定する。駆動ユニット7とレーザ放射生成ユニット9との間の出力インターフェース75として作用するレーザ制御ユニット75は、選ばれたレーザ放射波長λ、λ、...、λ、重み付け係数w、w、...、w及びビーム幅Bを、レーザ放射生成器9及びビーム成形器76に対する適切な制御信号に変換する。レーザ放射生成器9、この場合一揃いのVCSELは、所望の波長λ、λ、...、λで所望の強度を持つレーザ放射を生成するために駆動され、ビーム成形器76は、所望のビーム幅Bでレーザ放射ビームLを与えるためにVCSELにより放射出力を成形し、これらがプレフォーム加熱システム10のオーブンを通って方向Dに移送されるのでレーザ放射ビームLを一連のプレフォーム1に向けさせる。簡明のために、レーザ放射Lは矢印により表されるが、当業者は、レーザ放射が一揃いのVCSELと同じ程度の高さで、またレーザビーム幅Bにより決定されるのと同程度の幅での「スライス」又は「楔」としてビーム成形器76から放射できることをわかるだろう。選択モジュール72、導出モジュール73及びレーザパラメータコンパイラモジュール74のようなモジュールは、別個のユニットとして示されていて、合せてレーザ放射生成ユニット9のための構成配置を有するが、これらのモジュールがソフトウェアモジュール又はハードウェアモジュールとして容易に実現でき、要望により組み合わせられることは当業者には明らかであろう。
【0059】
図8aは、本発明による方法を使用する第1の加熱プロフィール及びプレフォーム断面に対する光線追跡シミュレーションを示す。暗い領域は低いエネルギ吸収の領域を表す一方で、光領域は高い吸収の領域を表す。シミュレーションは、プレフォームのボディの全体にわたって基本的に均質又は均一なエネルギ吸収密度を与えるために所望の温度プロフィールに従って選択されるレーザビームを使用してプレフォームを加熱する効果を示す。画像で分かるように、エネルギ蓄積は、プレフォームの全体にわたってかなり均一に分散されているだろう。
【0060】
図8bは、この場合、プレフォームの内側領域に高いエネルギ吸収密度とプレフォームの外側領域に低いエネルギ吸収密度とを与える加熱プロフィールによって、第2の加熱プロフィール及びプレフォーム断面に対する光線追跡シミュレーションを示す。画像は、エネルギ蓄積がプレフォームの内側領域で著しく高くなることを示す。このようにして、プレフォームを加熱することは、結果的に後続の吹込み成形ステージでの改良になる。
【0061】
本発明が多くの好ましい実施例の形式で開示されてきたけれども、付加的な変更又はバリエーションが本発明の範囲から逸脱することなく、説明されている実施例になされ得ることは理解されるべきである。例えば、図に示されるプレフォーム加熱システムは、「基本的な」熱照射を供給するための多くのハロゲン灯を含むこともでき、このときレーザ放射源は、例えばより強くプレフォームの内側領域を加熱するために、所望の温度プロフィールを達成するため、放射線スペクトルの選択された部分を強調する(すなわち、レーザ波長λ、λ、...、λで重み付け係数wを増大させる)ために特に使用できる。
【0062】
明確にするため、この明細書全体にわたって「a」又は「an」の使用は複数を除外せず、「を有する」ことは、他のステップ又は要素を除外しないことは理解されるべきである。特に明記しない限り、「ユニット」又は「モジュール」は、複数のユニット又はモジュールを含むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径、材料厚及び材料吸収スペクトルにより特徴づけられるプレフォームを加熱する方法であって、所望の温度プロフィールに依存して、前記プレフォームの半径及び材料厚に基づいて前記プレフォームに対する所望の実効吸収係数を選択するステップと、前記実効吸収係数を満たすため吸収スペクトルの吸収係数に基づいて編集される波長スペクトルを持つ放射線を有するレーザ放射ビームを生成するステップと、前記プレフォームを加熱するためにレーザ放射ビームを前記プレフォームに向けるステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記実効吸収係数は、所望の相対的な実効吸収係数から導出され、前記プレフォームに対する前記所望の相対的な実効吸収係数は、所望の温度プロフィール、前記プレフォームの半径及び前記プレフォームの材料厚に基づいて選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレフォームの材料の半径、材料厚及び吸収スペクトルにより特徴づけられる前記プレフォームを加熱するための請求項1又は2に記載の方法であって、レーザ放射ビームが、前記プレフォームに向けられるとき、範囲1.0〜4.0、より好ましくは範囲2.0〜3.5、最も好ましくは範囲2.5〜3.0の所望の相対的な実効吸収係数に従って前記プレフォームを加熱するように、実効吸収係数を満たすため吸収スペクトルに基づいて編集される波長スペクトルを持つレーザ放射を有するレーザ放射ビームを生成するステップを有する、方法。
【請求項4】
レーザ放射ビームに対するビーム幅は、前記プレフォームの半径により割られるビーム幅が、0.5以下、より好ましくは0.1以下であるように決定され、レーザ放射ビームを与えるためのレーザ放射を生成するステップが、決定されたビーム幅に従ってレーザ放射ビームを成形するステップを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記所望の相対的な実効吸収係数は、加熱の間、前記プレフォームの内側領域と外側領域との間で達成されるべき特定の温度勾配に基づいて選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記プレフォームの内側領域の温度は特定の屈折率を持つ屈折素子により調整され、前記屈折素子は前記プレフォームのキャビティ内に位置する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記プレフォームの内側領域の温度は前記プレフォームのキャビティに置かれる熱アブソーバにより調整され、前記熱アブソーバはレーザ放射のエネルギの一部を吸収する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記熱アブソーバはエネルギ吸収材料の半円筒を有し、前記半円筒は前記プレフォームに対して基本的に静止している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
プレフォーム加熱システムのレーザ放射生成ユニットを制御するための駆動装置であって、プレフォーム形状パラメータ、プレフォーム吸収スペクトル及びプレフォームに対する所望の温度プロフィールを得るための入力インターフェースと、前記所望の温度プロフィールに依存して、前記プレフォーム形状パラメータに基づいて実効吸収係数を選択するための選択装置と、前記実効吸収係数を満たすため吸収スペクトルの吸収係数に基づいてレーザ放射波長スペクトルを編集し、所望の相対的な実効吸収係数に基づいてレーザ放射ビームに対するレーザビーム幅を選択するためのレーザパラメータ編集モジュールと、前記レーザ放射生成ユニットに、前記レーザビーム幅及び編集されたレーザ放射波長スペクトルに関連する制御信号を供給するための出力インターフェースとを有する、駆動装置。
【請求項10】
前記選択装置がプレフォーム形状パラメータ及び前記所望の温度プロフィールに基づいて相対的な実効吸収係数を選択するための選択モジュールと、前記相対的な実効吸収係数から前記実効吸収係数を導出するための導出モジュールとを有する、請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
プレフォーム材料の半径、材料厚及び吸収スペクトルにより特徴づけられるプレフォームを加熱するためのプレフォーム加熱システムのレーザ放射生成ユニットを制御するための請求項9又は10に記載の駆動装置であって、前記駆動装置は、範囲1.0〜4.0、より好ましくは範囲2.0〜3.5、最も好ましくは範囲2.5〜3.0の所望の相対的な実効吸収係数に従って前記プレフォームを加熱するためのレーザ放射ビームを生成するための前記レーザ放射生成ユニットを設定するための設定装置を有し、レーザ放射ビームは前記相対的な実効吸収係数から導出される実効吸収係数を満たすために前記吸収スペクトルに基づいて編集される波長スペクトルを有する、駆動装置。
【請求項12】
複数のレーザ放射波長を有するレーザ放射波長スペクトルを編集し、所望のレーザビーム幅を選択するための請求項9又は請求項11に記載の駆動装置と、レーザ放射波長スペクトルに従ってレーザ放射を生成するためのレーザ放射生成ユニットと、所望のビーム幅に従ってレーザ放射を成形し、前記プレフォームを加熱するために成形されたレーザ放射ビームを前記プレフォームに向けるためのビーム成形ユニットとを有する、プレフォームを加熱するためのプレフォーム加熱システム。
【請求項13】
前記レーザ放射生成ユニットが複数の面発光レーザを有する、請求項12に記載のプレフォーム加熱システム。
【請求項14】
追加の赤外線光源を有する、請求項12に記載のプレフォーム加熱システム。
【請求項15】
コンピュータプログラムがプレフォーム加熱システムを制御しているコンピュータ上で実行されるとき、請求項1に記載のプレフォームを加熱する方法のステップを請求項12に記載のプレフォーム加熱システムに実施させるためのプログラムコード手段を有する、プレフォームを加熱するためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2013−504457(P2013−504457A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528488(P2012−528488)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054037
【国際公開番号】WO2011/033418
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】