プロジェクタ
【課題】光利用効率の向上を図りつつ、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置の寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタを提供する。
【解決手段】管球部30及び一対の封止部40,50を有する発光管20並びに発光管20からの光を被照明領域側に向けて反射する楕円面リフレクタ10を有する光源装置110と、光源装置からの照明光束を画像情報に応じて変調する液晶装置と、液晶装置によって変調された光を投写する投写光学系とを備えるプロジェクタ。管球部30の外面における中央領域A2には、増透過膜70が形成されていない部分に比べて可視域の光透過率を高くする特性を有する増透過膜70が形成されており、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には、増透過膜70が形成されていない。
【解決手段】管球部30及び一対の封止部40,50を有する発光管20並びに発光管20からの光を被照明領域側に向けて反射する楕円面リフレクタ10を有する光源装置110と、光源装置からの照明光束を画像情報に応じて変調する液晶装置と、液晶装置によって変調された光を投写する投写光学系とを備えるプロジェクタ。管球部30の外面における中央領域A2には、増透過膜70が形成されていない部分に比べて可視域の光透過率を高くする特性を有する増透過膜70が形成されており、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には、増透過膜70が形成されていない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタに用いる光源装置として、発光管における管球部の外面全面に反射防止膜が形成された光源装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。当該反射防止膜は、可視域の光の反射率が可視域以外の他の波長域の光の反射率よりも低い特性を有する。従来の光源装置によれば、管球部の外面全面に反射防止膜が形成されているため、管球部の外面(表面)を通過する際の可視光の反射損を抑制することができ、光利用効率を向上することが可能となる。その結果、従来の光源装置を用いたプロジェクタは、高輝度なプロジェクタとなる。
【0003】
【特許文献1】特開平4−368768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の光源装置においては、可視域の光の反射率を低く抑えることができるよう反射防止膜を設計しているが、可視域以外の他の波長域(紫外域や赤外域など)の光の反射率は比較的高いため、反射防止膜で反射された他の波長域の光の一部が熱に変換される結果、管球部の温度が全体的に高くなってしまう。また、光が反射防止膜を通過する際に一部の光が反射防止膜によって吸収されてしまい、反射防止膜で吸収された光が熱に変換される結果、管球部の温度が全体的に高くなってしまう。
【0005】
すなわち、従来の光源装置においては、管球部の外面全面に反射防止膜が形成されていることに起因して、管球部の温度が全体的に高くなってしまうという問題(第1の問題)がある。
【0006】
また、従来の光源装置においては、熱対流などにより、管球部における重力に対して上側の頂点部分の温度が特に高くなり易く、管球部を構成する基材の許容温度を超えてしまった場合には、管球部における上側の頂点部分において局所的な膨れが発生したり白化したりする場合がある。白化とは、管球部を構成する基材が白濁して失透する現象のことである。管球部に局所的な膨れが発生すると、強度低下によって発光管が破裂する場合がある。また、管球部が白化すると、白化した箇所において光の透過が妨げられてしまい、これに起因して熱が発生して発光管の温度がさらに上昇した結果、発光管が破裂する場合がある。
【0007】
すなわち、従来の光源装置においては、熱対流などにより、管球部における重力に対して上側の頂点部分の温度が特に高くなり易いことに起因して、管球部における上側の頂点部分において局所的な膨れが発生したり白化したりする場合があるという問題(第2の問題)がある。管球部における上側の頂点部分において局所的な膨れが発生したり白化したりすると、光源装置の寿命の低下につながる。
【0008】
また、従来の光源装置においては、管球部の外面を、一方の封止部側領域と、他方の封止部側領域と、一方の封止部側領域及び他方の封止部側領域の間に位置する中央領域との3つの領域に分けたとき、管球部の外面全面を反射防止膜でコーティングする際の、コーティング物質の付着角度(コーティング物質の飛散方向に平行な軸と管球部の外面に対する法線とのなす角度)は、封止部側領域(一方の封止部側領域又は他方の封止部側領域)と中央領域とでは異なるため、封止部側領域と中央領域との間で膜特性が異なってしまう場合があるという問題(第3の問題)がある。封止部側領域と中央領域との間で膜特性が異なってしまうと、光利用効率を望み通りに向上させることが困難となる。したがって、管球部の外面に反射防止膜を形成する際には、封止部側領域の膜特性と中央領域の膜特性とがなるべく同じになるように膜設計を行うのが好ましいが、そのように膜特性の問題を考慮すると、膜設計・膜形成作業が煩雑となってしまう。
【0009】
なお、上記した3つの問題のうち第1の問題を解決するための手段としては、発光管を冷却するための冷却ファンの回転数を上げて風量を増加したり、より大型の冷却ファンを使用したりするなど、発光管のクーリングを強化することが考えられるが、冷却ファンの回転数を上げて風量を増加する場合には騒音が増大してしまい、また、より大型の冷却ファンを使用する場合には装置が大型化するとともに製造コストが高くなってしまうため、発光管のクーリングを強化することは好ましくない。
【0010】
また、上記した3つの問題のうち第1の問題を解決するための手段としては、管球部の外面全面に形成された反射防止膜をすべて除去することが考えられる。この場合には、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となるが、管球部の外面を通過する際の可視光の透過率を高くすることができず、光利用効率を向上することができない。
【0011】
なお、上記した「発光管のクーリングを強化すること」及び「管球部の外面全面に形成された反射防止膜をすべて除去すること」によっては、第2の問題を解決することはできない。また、上記した「発光管のクーリングを強化すること」によっては、第3の問題を解決することはできない。
【0012】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するためのもので、光利用効率の向上を図りつつ、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置の寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のプロジェクタは、照明光軸に沿って配置された一対の電極を内蔵する管球部並びに前記管球部の両側に延びる一方の封止部及び他方の封止部を有する発光管と、前記一方の封止部側に配設され、前記発光管からの光を被照明領域側に向けて反射するリフレクタとを有する光源装置と、前記光源装置からの照明光束を画像情報に応じて変調する電気光学変調装置と、前記電気光学変調装置によって変調された光を投写する投写光学系とを備えるプロジェクタにおいて、前記管球部の外面を、前記一方の封止部側に位置する一方の封止部側領域と、前記他方の封止部側に位置する他方の封止部側領域と、前記一方の封止部側領域及び前記他方の封止部側領域の間に位置する中央領域との3つの領域に分けたとき、前記管球部の外面における前記中央領域には、増透過膜が形成されており、前記管球部の外面における前記一方の封止部側領域及び前記他方の封止部側領域には、前記増透過膜が形成されておらず、前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて少なくとも可視域の光透過率を高くする特性を有することを特徴とする。
【0014】
このため、本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における一方の封止部側領域及び他方の封止部側領域には増透過膜が形成されておらず、反射防止膜も形成されていないことから、従来の光源装置のように管球部の外面全面に反射防止膜が形成されている場合と比べて、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となる。
【0015】
また、本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における一方の封止部側領域及び他方の封止部側領域に増透過膜が形成されていないことによって、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、管球部の上側の頂点部分の温度が高くなってしまうのを抑制でき、管球部の上側の頂点部分において局所的な膨れが発生したり白化したりするのを抑制することが可能となる。その結果、光源装置の寿命の低下を抑制することが可能となる。
【0016】
また、本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における中央領域には増透過膜が形成されているが、管球部の外面における一方の封止部側領域及び他方の封止部側領域には増透過膜が形成されていないため、封止部側領域と中央領域との間で膜特性が異なってしまうという問題が生じることもなくなる結果、膜設計・膜形成作業が煩雑となることもなくなる。
【0017】
また、本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における中央領域には、増透過膜が形成されていない部分に比べて少なくとも可視域の光透過率を高くする特性を有する増透過膜が形成されているため、全体としての光利用効率の向上を図ることが可能となる。
【0018】
したがって、本発明のプロジェクタは、光利用効率の向上を図りつつ、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置の寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタとなる。
【0019】
本発明のプロジェクタにおいては、前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有することが好ましい。
【0020】
このように構成することにより、管球部の外面における中央領域から放射される可視光の光利用効率を向上することが可能となる。
【0021】
本発明のプロジェクタにおいては、前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて400nm〜1500nmの光透過率を高くする特性を有することが好ましい。
【0022】
このように構成することにより、管球部の外面における中央領域から放射される可視光の光利用効率を向上することが可能となるとともに、可視域に連続する赤外域の一部の波長域の光が管球部の外面(管球部における中央領域)で反射されて熱に変換されるのを抑制することが可能となる。その結果、光利用効率の向上を図りつつ、管球部の全体的な温度上昇を抑制することが可能となる。
【0023】
本発明のプロジェクタにおいては、前記増透過膜は、Ta2O5とSiO2との多層膜で構成されていることが好ましい。
【0024】
このように構成することにより、増透過膜の耐熱性を高めることが可能となり、極めて高温にさらされる発光管の管球部の表面においても長期間に渡って良好な増透過特性を維持することが可能となる。
【0025】
本発明のプロジェクタにおいては、前記発光管は、前記管球部の内面と外面とによるレンズ効果を生じる発光管であり、前記管球部の外面から放射される光のうち前記一方の封止部側領域を通る光線を前記照明光軸に向けて延長したときの見かけ上の発光点は、前記一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域内に存在しないことが好ましい。
【0026】
ところで、管球部の外面から放射される光は、すべて利用可能なわけではなく、一部に利用しにくい光も存在している。例えば、後述する図5に示すように、管球部の外面から放射される光のうち、管球部の頂部よりの位置を通る光H1は、楕円面リフレクタ10で反射することにより利用可能であるが、楕円面リフレクタ10側の封止部40近傍を通る光H2は、楕円面リフレクタ10で反射された後で管球部30によって遮られてしまうため利用することが難しい。
【0027】
このように、管球部から放射される光には、利用可能な光と利用しにくい光とが存在するが、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、このような利用しにくい光は、管球部の外面から放射される光の見かけ上の発光点が、一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域内に存在しない光であり、利用可能な光は、管球部の外面から放射される光の見かけ上の発光点が、一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域内に存在する光であることがわかった。
【0028】
なお、見かけ上の発光点とは、管球部の外面からリフレクタに向けて射出される光線を照明光軸に向けて延長した延長線と照明光軸との交点のことである。このように見かけ上の発光点が生じるのは、管球部の内面と外面とによるレンズ効果によって、一対の電極間に存在する本来の発光点から放射される光線が管球部の内面及び外面を通過するたびに少しずつ角度がずれるからである。
【0029】
本発明のプロジェクタによれば、一方の封止部側領域(リフレクタ側の封止部側領域)を通る光線の見かけ上の発光点は当該仮想領域内に存在しないため、利用しにくい光が通過する位置には増透過膜が形成されていないこととなる。これにより、膜形成時において、利用しにくい光が通過する位置にわざわざ増透過膜を形成しなくてもよくなるため、膜設計・膜形成作業が容易となるとともに、一方の封止部側領域に増透過膜が形成されていないことに起因する光利用効率の低下を極力抑制することが可能となる。
【0030】
なお、本発明のプロジェクタにおいては、前記管球部の外面から放射される光のうち前記中央領域を通る光線を前記照明光軸に向けて延長したときの見かけ上の発光点は、前記一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域内に存在することが好ましい。
【0031】
このように構成することにより、利用可能な光が通過する位置には増透過膜が形成されていることとなる。これにより、光利用効率の向上の面で優れたプロジェクタとなる。
【0032】
本発明のプロジェクタにおいては、前記中央領域における前記管球部の外面に対する法線と前記照明光軸に直交する面とがなす角度をωとしたとき、ω≦45度であることが好ましい。
【0033】
管球部の外面に増透過膜等をコーティングする際には、一方の封止部及び他方の封止部を結ぶ直線に対して略直交する方向から管球部に向けてコーティング物質を飛散させるのが通常であるが、本発明者の実験によれば、このような場合においてコーティング物質の付着角度(コーティング物質の飛散方向に平行な軸と管球部の外面に対する法線とのなす角度)が45度を超えると、膜特性が出にくいという問題がある。このような問題を解決するには、角度依存性の少ないコーティング物質を使用したり膜数を増やしたりする手段が考えられるが、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりしてしまうため好ましくない。
【0034】
これに対し、本発明のプロジェクタによれば、中央領域における管球部の外面に対する法線と照明光軸に直交する面とがなす角度ωが45度以下であるため、コーティング物質の付着角度に置き換えると、当該付着角度が45度以下となる管球部の中央領域にのみ増透過膜が形成されることとなり、上述した膜特性が出にくいという問題が生じることもない。また、角度依存性の少ないコーティング物質を使用したり膜数を増やしたりすることもないため、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりすることもない。その結果、本発明のプロジェクタは、膜特性に優れた発光管を備え、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりすることのないプロジェクタとなる。
【0035】
本発明のプロジェクタにおいては、前記中央領域から放射される光の強度は、前記管球部から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%以上であることが好ましい。
【0036】
このように構成することにより、比較的光の強度が大きな部分には増透過膜が形成されていることとなるため、光利用効率の向上の面で優れたプロジェクタとなる。
【0037】
なお、本発明のプロジェクタにおいては、前記一方の封止部側領域及び前記他方の封止部側領域から放射される光の強度はそれぞれ、前記管球部から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%未満であることが好ましい。
【0038】
このように構成することにより、比較的光の強度が小さな部分には増透過膜が形成されていないこととなる。これにより、膜形成時において、比較的光の強度が小さな部分にわざわざ増透過膜を形成しなくてもよくなるため、膜設計・膜形成作業が容易となるとともに、一方の封止部側領域及び他方の封止部側領域に増透過膜が形成されていないことに起因する光利用効率の低下を極力抑制することが可能となる。
【0039】
本発明のプロジェクタにおいては、前記他方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線と、前記光源装置の前記照明光軸とがなす角度をθ1としたとき、40度<θ1≦55度であることが好ましい。
【0040】
θ1の値が40度以下である場合には、管球部の外面における増透過膜が形成されていない部分の表面積が比較的小さくなってしまい、管球部の全体的な温度上昇を抑制するのが容易ではなくなる。一方、θ1の値が55度を超えるものとした場合には、管球部の外面における増透過膜が形成されていない部分の表面積が比較的大きくなってしまい、光利用効率の向上を図るのが容易ではなくなる。
以上の観点から、θ1の値は、40度<θ1≦55度であることが好ましい。
【0041】
本発明のプロジェクタにおいては、前記一方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線と、前記光源装置の前記照明光軸とがなす角度をθ2としたとき、40度<θ2≦55度であることが好ましい。
【0042】
θ2の値が40度以下である場合には、管球部の外面における増透過膜が形成されていない部分の表面積が比較的小さくなってしまい、管球部の全体的な温度上昇を抑制するのが容易ではなくなる。一方、θ2の値が55度を超えるものとした場合には、管球部の外面における増透過膜が形成されていない部分の表面積が比較的大きくなってしまい、光利用効率の向上を図るのが容易ではなくなる。
以上の観点から、θ2の値は、40度<θ2≦55度であることが好ましい。
【0043】
本発明のプロジェクタにおいては、前記光源装置は、前記管球部における前記被照明領域側の外面を覆うように前記発光管における他方の封止部側に配設され、前記発光管からの光を前記発光管に向けて反射する副鏡をさらに有することが好ましい。
【0044】
ところで、発光管の封止部に副鏡を配設することによって、光利用効率を向上することが可能となるとともにリフレクタを小型化することが可能となり、高輝度かつコンパクトなプロジェクタを実現することが可能となるが、管球部の略半分が副鏡によって覆われてしまうことから、発光管の封止部に副鏡が配設されたプロジェクタは、そのような副鏡が配設されていないプロジェクタ以上に、管球部の温度が高くなり易いという傾向がある。
本発明は、上述したように管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、このように発光管の封止部に副鏡が配設されたプロジェクタに対して特に効果が大きい。
【0045】
また、発光管の封止部に副鏡が配設されたプロジェクタにおいては、発光管から放射される光のうち副鏡で反射される光は、発光管から射出されてから副鏡で反射されて再度発光管を通過してリフレクタに入射するまでに、管球部の外面を複数回通過することとなる。
本発明は、上述したように管球部の外面を通過する際の可視光の透過率を高くすることが可能となることから、このように発光管の封止部に副鏡が配設されたプロジェクタに対して特に効果が大きい。
【0046】
また、発光管の封止部に副鏡が配設されたプロジェクタにおいては、管球部と副鏡との間に空間が形成されるため、管球部を効果的に冷却することが可能となり、発光管の長寿命化を図ることが可能となる。
【0047】
本発明のプロジェクタにおいては、前記一方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線は、前記管球部の外面における前記副鏡で覆われている部分と前記管球部の外面における前記副鏡で覆われていない部分との境界部を通ることが好ましい。
【0048】
このように構成することにより、光利用効率は若干低下するものの管球部の全体的な温度上昇をさらに抑制することが可能となる。
【0049】
本発明のプロジェクタにおいては、前記管球部の外面における重力に対して下側の頂点部分を含む領域には、前記増透過膜が形成されており、前記管球部の外面における重力に対して上側の頂点部分を含む領域には、前記増透過膜が形成されていないことが好ましい。
【0050】
本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における重力に対して上側の頂点部分を含む領域に増透過膜が形成されていないことによって、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、管球部における上側の頂点部分の温度が高くなってしまうのを抑制でき、管球部における上側の頂点部分において局所的な膨れが発生したり白化したりするのを抑制することが可能となる。その結果、光源装置の寿命の低下を抑制することが可能となる。
【0051】
また、本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における重力に対して下側の頂点部分を含む領域には増透過膜が形成されているため、全体としての光利用効率を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明のプロジェクタについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0053】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るプロジェクタ1000の光学系を示す図である。図2は、光源装置110を説明するために示す図である。図2(a)は光源装置110を模式的に示す図であり、図2(b)は管球部30の側面図であり、図2(c)は管球部30の斜視図である。図3〜図6は、管球部30の外面における各領域及び増透過膜70の形成位置を説明するために示す概念図である。図7は、管球部30から放射される光の配光特性を示す図である。図8は、増透過膜70の分光特性を示す図である。図8においては、増透過膜70の分光特性を示すとともに、増透過膜70を形成していない場合の分光特性も示している。
【0054】
なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれz軸方向(図1における照明光軸100ax方向)、x軸方向(図1における紙面に平行かつz軸に直交する方向)及びy軸方向(図1における紙面に垂直かつz軸に直交する方向)とする。
また、以下の説明においては、プロジェクタ1000をいわゆる据え置き状態に配置する場合を例示的に示しているため、重力方向は下側方向(例えば、図2(a)においてはy(−)方向。)となる。
【0055】
実施形態1に係るプロジェクタ1000は、図1に示すように、照明装置100と、照明装置100からの照明光束を赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して被照明領域に導光する色分離導光光学系200と、色分離導光光学系200で分離された3つの色光のそれぞれを画像情報に応じて変調する電気光学変調装置としての3つの液晶装置400R,400G,400Bと、3つの液晶装置400R,400G,400Bによって変調された色光を合成するクロスダイクロイックプリズム500と、クロスダイクロイックプリズム500によって合成された光をスクリーンSCR等の投写面に投写する投写光学系600とを備えたプロジェクタである。
【0056】
照明装置100は、被照明領域側に照明光束を射出する光源装置110と、光源装置110からの集束光を略平行光として射出する凹レンズ90と、凹レンズ90から射出される照明光束を複数の部分光束に分割するための複数の第1小レンズ122を有する第1レンズアレイ120と、第1レンズアレイ120の複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する第2レンズアレイ130と、第2レンズアレイ130からの各部分光束を偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光に変換して射出する偏光変換素子140と、偏光変換素子140から射出される各部分光束を被照明領域で重畳させるための重畳レンズ150とを有する。
【0057】
光源装置110は、図1及び図2(a)に示すように、リフレクタとしての楕円面リフレクタ10と、楕円面リフレクタ10の第1焦点近傍に発光中心を有する発光管20とを有する。光源装置110は、照明光軸100axを中心軸とする光束を射出する。
【0058】
発光管20は、図2に示すように、照明光軸100axに沿って配置された一対の電極42,52を内蔵する管球部30と、管球部30の両側に延びる一対の封止部40,50と、一対の封止部40,50内にそれぞれ封止された一対の金属箔44,54と、一対の金属箔44,54にそれぞれ電気的に接続された一対のリード線46,56とを有する。
【0059】
なお、発光管20の構成要素の条件等を例示的に示すと、管球部30及び封止部40,50は、例えば石英ガラス製であり、管球部30内には、水銀、希ガス及び少量のハロゲンが封入されている。電極42,52は、例えばタングステン電極であり、金属箔44,54は、例えばモリブデン箔である。リード線46,56は、例えばモリブデン又はタングステンから構成されている。
また、発光管20としては、高輝度発光する種々の発光管を採用でき、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を採用できる。
【0060】
管球部30の外面を、図3に示すように、一方の封止部側領域(封止部40側の所定領域)A1と、他方の封止部側領域(封止部50側の所定領域)A3と、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3の間に位置する中央領域A2との3つの領域に分けたとき、管球部30の外面における中央領域A2には、増透過膜70が形成されており、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には、増透過膜70が形成されていない(図2及び図4参照。)。
【0061】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、図4に示すように、θ1及びθ2の値が45度となるように、管球部30の外面を一方の封止部側領域A1と他方の封止部側領域A3と中央領域A2との3つの領域に分けている。そして、管球部30の外面における中央領域A2にのみ増透過膜70が形成されており、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には増透過膜70が形成されていない。
なお、θ1とは、「管球部30の上側における他方の封止部側領域A3及び中央領域A2の境界部b3と一対の電極42,52の略中間位置Pとを通る直線L3」と「光源装置110の照明光軸100ax」とのなす角度(「管球部30の下側における他方の封止部側領域A3及び中央領域A2の境界部b4と一対の電極42,52の略中間位置Pとを通る直線L4」と「光源装置110の照明光軸100ax」とのなす角度)のことである。
また、θ2とは、「管球部30の上側における一方の封止部側領域A1及び中央領域A2の境界部b1と一対の電極42,52の略中間位置Pとを通る直線L1」と「光源装置110の照明光軸100ax」とのなす角度(「管球部30の下側における一方の封止部側領域A1及び中央領域A2の境界部b2と一対の電極42,52の略中間位置Pとを通る直線L2」と「光源装置110の照明光軸100ax」とのなす角度)のことである。
【0062】
ここでは図示による説明を省略するが、一対の電極42,52の略中間位置Pを中心として、一方の封止部側領域A1に対応する立体角をΩ1とし、他方の封止部側領域A3に対応する立体角をΩ2としたとき、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、Ω1=Ω2=π[sr(steradian:ステラジアン)]となる。
【0063】
ところで、管球部30の外面から放射される光は、すべて利用可能なわけではなく、一部に利用しにくい光も存在している。例えば、図5に示すように、管球部30の外面から放射される光のうち、管球部30の頂部よりの位置を通る光H1は、楕円面リフレクタ10で反射することにより利用可能であるが、楕円面リフレクタ10側の封止部40近傍を通る光H2は、楕円面リフレクタ10で反射された後で管球部30によって遮られてしまうため利用することが難しい(図5(a)参照。)。
【0064】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、図5(b)に示すように、一方の封止部側領域A1(楕円面リフレクタ10側の封止部側領域)を通る光線H2の見かけ上の発光点c2が、一対の電極42,52を内部に含む円筒状の仮想領域R内に存在せず、中央領域A2を通る光線H1を照明光軸100axに向けて延長したときの見かけ上の発光点c1が、仮想領域R内に存在するように、管球部30の外面を一方の封止部側領域A1と他方の封止部側領域A3と中央領域A2との3つの領域に分けている。
【0065】
なお、見かけ上の発光点とは、管球部30の外面から楕円面リフレクタ10に向けて射出される光線を照明光軸100axに向けて延長した延長線と照明光軸100axとの交点のことである。このように見かけ上の発光点が生じるのは、管球部30の内面と外面とによるレンズ効果によって、一対の電極42,52間に存在する本来の発光点(一対の電極42,52の略中間位置P)から放射される光線が管球部30の内面及び外面を通過するたびに少しずつ角度がずれるからである(図5(b)参照。)。
【0066】
ところで、管球部30の外面に増透過膜等をコーティングする際には、図6に示すように、一方の封止部40及び他方の封止部50を結ぶ直線に対して略直交する方向(図6のα方向)から管球部30に向けてコーティング物質を飛散させるのが通常であるが、本発明者の実験によれば、このような場合においてコーティング物質の付着角度(コーティング物質の飛散方向(α方向)に平行な軸と管球部30の外面に対する法線Nとのなす角度ω)が45度を超えると、膜特性が出にくいという問題がある。このような問題を解決するには、角度依存性の少ないコーティング物質を使用したり膜数を増やしたりする手段が考えられるが、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりしてしまうため好ましくない。
【0067】
このため、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、中央領域A2における管球部30の外面に対する法線Nと照明光軸100axに直交する面とがなす角度をωとしたとき、ω≦45度となるように、管球部30の外面を一方の封止部側領域A1と他方の封止部側領域A3と中央領域A2との3つの領域に分けている。
【0068】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、中央領域A2から放射される光の強度(図7において、45度〜135度の範囲から放射される光の強度)が、管球部30から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%以上となり、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3から放射される光の強度がそれぞれ、管球部30から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%未満となるように、管球部30の外面を一方の封止部側領域A1と他方の封止部側領域A3と中央領域A2との3つの領域に分けている。
【0069】
増透過膜70は、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)との多層膜で構成されており、図8に示すように、400nm〜700nmの光の反射率が他の波長域の光の反射率に比べて低い特性を有する。すなわち、増透過膜70は、増透過膜70が形成されていない場合に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有する。
【0070】
管球部30の外面に増透過膜70を形成するための方法としては、蒸着法、ディッピング法、イオンプレーティング法、スパッタ法等の各種方法を用いることができる。例えば、増透過膜70を形成しない部分(一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3)をマスキングテープ等で覆い、発光管20を自公転させながら酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)とを交互に蒸着させることにより、管球部30の外面における中央領域A2にのみ増透過膜70を形成することができる。
【0071】
楕円面リフレクタ10は、図2(a)に示すように、発光管20の封止部(一方の封止部)40を挿通・固定するための開口部12と、発光管20から放射された光を第2焦点位置に向けて反射する反射凹面14とを有する。楕円面リフレクタ10は、楕円面リフレクタ10の開口部12に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって発光管20の封止部40に固着されている。
【0072】
反射凹面14を構成する基材の材料としては、例えば、結晶化ガラスやアルミナ(Al2O3)などを好適に用いることができる。反射凹面14の内面には、例えば、酸化チタン(TiO2)と酸化シリコン(SiO2)との誘電体多層膜からなる可視光反射層が形成されている。
【0073】
凹レンズ90は、図1に示すように、楕円面リフレクタ10の被照明領域側に配置されている。そして、楕円面リフレクタ10からの光を第1レンズアレイ120に向けて射出するように構成されている。
【0074】
第1レンズアレイ120は、凹レンズ90からの光を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有し、複数の第1小レンズ122が照明光軸100axと直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。図示による説明は省略するが、第1小レンズ122の外形形状は、液晶装置400R,400G,400Bの画像形成領域の外形形状に関して相似形である。
【0075】
第2レンズアレイ130は、重畳レンズ150とともに、第1レンズアレイ120の各第1小レンズ122の像を液晶装置400R,400G,400Bの画像形成領域近傍に結像させる機能を有する。第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120と略同様な構成を有し、複数の第2小レンズ132が照明光軸100axに直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。
【0076】
偏光変換素子140は、第1レンズアレイ120により分割された各部分光束の偏光方向を、偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光として射出する偏光変換素子である。
偏光変換素子140は、光源装置110からの照明光束に含まれる偏光成分のうち一方の直線偏光成分を透過し他方の直線偏光成分を照明光軸100axに垂直な方向に反射する偏光分離層と、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を照明光軸100axに平行な方向に反射する反射層と、偏光分離層を透過した一方の直線偏光成分を他方の直線偏光成分に変換する位相差板とを有する。
【0077】
重畳レンズ150は、第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130及び偏光変換素子140を経た複数の部分光束を集光して液晶装置400R,400G,400Bの画像形成領域近傍に重畳させるための光学素子である。重畳レンズ150の光軸と照明装置100の照明光軸100axとが略一致するように、重畳レンズ150が配置されている。なお、重畳レンズ150は、複数のレンズを組み合わせた複合レンズで構成されていてもよい。
【0078】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210,220と、反射ミラー230,240,250と、入射側レンズ260と、リレーレンズ270とを有する。色分離導光光学系200は、重畳レンズ150から射出される照明光束を、赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して、それぞれの色光を照明対象となる3つの液晶装置400R,400G,400Bに導く機能を有する。
【0079】
液晶装置400R,400G,400Bの光路前段には、集光レンズ300R,300G,300Bが配置されている。
【0080】
液晶装置400R,400G,400Bは、画像情報に応じて照明光束を変調するものであり、照明装置100の照明対象となる。
液晶装置400R,400G,400Bは、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶を密閉封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に従って、入射側偏光板から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0081】
また、ここでは図示を省略したが、集光レンズ300R,300G,300Bと各液晶装置400R,400G,400Bとの間には、それぞれ入射側偏光板が介在配置され、各液晶装置400R,400G,400Bとクロスダイクロイックプリズム500との間には、それぞれ射出側偏光板が介在配置されている。これら入射側偏光板、液晶装置400R,400G,400B及び射出側偏光板によって入射する各色光の光変調が行われる。
【0082】
クロスダイクロイックプリズム500は、射出側偏光板から射出された各色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0083】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって拡大投写され、スクリーンSCR上で大画面画像を形成する。
【0084】
以上のように構成された実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には増透過膜70が形成されておらず、反射防止膜も形成されていないことから、従来の光源装置のように管球部の外面全面に反射防止膜が形成されている場合と比べて、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となる。
【0085】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3に増透過膜70が形成されていないことによって、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、管球部30の上側の頂点部分32の温度が高くなってしまうのを抑制でき、管球部30の上側の頂点部分32において局所的な膨れが発生したり白化したりするのを抑制することが可能となる。その結果、光源装置110の寿命の低下を抑制することが可能となる。
【0086】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、管球部30の外面における中央領域A2には増透過膜70が形成されているが、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には増透過膜70が形成されていないため、封止部側領域と中央領域との間で膜特性が異なってしまうという問題が生じることもなくなる結果、膜設計・膜形成作業が煩雑となることもなくなる。
【0087】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、管球部30の外面における中央領域A2には、増透過膜70が形成されていない部分に比べて少なくとも可視域の光透過率を高くする特性を有する増透過膜70が形成されているため、全体としての光利用効率の向上を図ることが可能となる。
【0088】
したがって、実施形態1に係るプロジェクタ1000は、光利用効率の向上を図りつつ、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置110の寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタとなる。
【0089】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、増透過膜70は、増透過膜70が形成されていない部分に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有するため、管球部30の外面における中央領域A2から放射される可視光の光利用効率を向上することが可能となる。
【0090】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、増透過膜70は、Ta2O5とSiO2との多層膜で構成されているため、増透過膜70の耐熱性を高めることが可能となり、極めて高温にさらされる発光管20の管球部30の表面においても長期間に渡って良好な増透過特性を維持することが可能となる。
【0091】
上記したθ1及びθ2の値が40度以下である場合には、管球部30の外面における増透過膜70が形成されていない部分の表面積が比較的小さくなってしまい、管球部30の全体的な温度上昇を抑制するのが容易ではなくなる。一方、上記したθ1及びθ2の値が55度を超えるものとした場合には、管球部30の外面における増透過膜70が形成されていない部分の表面積が比較的大きくなってしまい、光利用効率の向上を図るのが容易ではなくなる。
以上の観点から、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、θ1及びθ2の値は、40度<θ1≦55度であり、40度<θ2≦55度である。
【0092】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、発光管20は、管球部30の内面と外面とによるレンズ効果を生じる発光管であり、一方の封止部側領域A1(楕円面リフレクタ10側の封止部側領域)を通る光線の見かけ上の発光点は仮想領域R内に存在しないため、利用しにくい光が通過する位置には増透過膜70が形成されていないこととなる。これにより、膜形成時において、利用しにくい光が通過する位置にわざわざ増透過膜を形成しなくてもよくなるため、膜設計・膜形成作業が容易となるとともに、一方の封止部側領域A1に増透過膜70が形成されていないことに起因する光利用効率の低下を極力抑制することが可能となる。
【0093】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、中央領域A2を通る光線の見かけ上の発光点は、仮想領域R内に存在するため、利用可能な光が通過する位置には増透過膜70が形成されていることとなる。これにより、光利用効率の向上の面で優れたプロジェクタとなる。
【0094】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、中央領域A2における管球部30の外面に対する法線Nと照明光軸100axに直交する面(xy面)とがなす角度ωが45度以下であるため、コーティング物質の付着角度に置き換えると、当該付着角度が45度以下となる管球部30の中央領域A2にのみ増透過膜70が形成されることとなり、膜特性が出にくいという問題が生じることもない。また、角度依存性の少ないコーティング物質を使用したり膜数を増やしたりすることもないため、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりすることもない。その結果、実施形態1に係るプロジェクタ1000は、膜特性に優れた発光管を備え、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりすることのないプロジェクタとなる。
【0095】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、中央領域A2から放射される光の強度は、管球部30から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%以上である。これにより、比較的光の強度が大きな部分には増透過膜70が形成されていることとなるため、光利用効率の向上の面で優れたプロジェクタとなる。
【0096】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3から放射される光の強度はそれぞれ、管球部30から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%未満である。これにより、比較的光の強度が小さな部分には増透過膜70が形成されていないこととなり、膜形成時において、比較的光の強度が小さな部分にわざわざ増透過膜を形成しなくてもよくなるため、膜設計・膜形成作業が容易となるとともに、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3に増透過膜70が形成されていないことに起因する光利用効率の低下を極力抑制することが可能となる。
【0097】
[実施形態2]
図9は、実施形態2に係るプロジェクタ1002における光源装置110Bを説明するために示す図である。図9(a)は光源装置110Bを模式的に示す図であり、図9(b)は管球部30の側面図であり、図9(c)は管球部30の斜視図である。なお、図9(c)においては、増透過膜72がどのように管球部30の外面に形成されているのかを詳細に説明するため、副鏡60については図示を省略している。
【0098】
なお、図9において、図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0099】
実施形態2に係るプロジェクタ1002(図示せず。)は、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ1000とよく似た構成を有するが、光源装置の構成及び増透過膜の形成位置が、実施形態1に係るプロジェクタ1000とは異なる。
【0100】
すなわち、実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、光源装置110Bは、図9に示すように、リフレクタとしての楕円面リフレクタ10Bと、楕円面リフレクタ10Bの第1焦点近傍に発光中心を有する発光管20と、反射手段としての副鏡60とを有する。光源装置110Bは、照明光軸100axを中心軸とする光束を射出する。
【0101】
楕円面リフレクタ10Bは、実施形態1で説明した楕円面リフレクタ10と同様の構成を有しており、図9(a)に示すように、発光管20の封止部(一方の封止部)40を挿通・固定するための開口部12Bと、発光管20から放射された光を第2焦点位置に向けて反射する反射凹面14Bとを有する。楕円面リフレクタ10Bは、楕円面リフレクタ10Bの開口部12に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって発光管20の封止部40に固着されている。
【0102】
反射凹面14Bを構成する基材の材料としては、例えば、結晶化ガラスやアルミナ(Al2O3)などを好適に用いることができる。反射凹面14Bの内面には、例えば、酸化チタン(TiO2)と酸化シリコン(SiO2)との誘電体多層膜からなる可視光反射層が形成されている。
【0103】
副鏡60は、管球部30の略半分を覆い、楕円面リフレクタ10Bの反射凹面14Bと対向して配置される反射手段であり、発光管20の封止部(他方の封止部)50に挿通・固定するための開口部62と、発光管20から被照明領域側に向けて放射された光を発光管20に向けて反射する反射凹面64とを有する。副鏡60によって反射された光は、発光管20を透過して楕円面リフレクタ10Bに入射する。副鏡60は、副鏡60の開口部62に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって発光管20の封止部50に固着されている。
【0104】
反射凹面64を構成する材料としては、例えば、透光性のアルミナを用いている。これにより、副鏡60における放熱性を高めることができる。なお、アルミナ以外でも、石英ガラス、サファイア、ルビーなどの材料を用いてもよい。
反射凹面64の内面には、例えば、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)との誘電体多層膜からなる反射層が形成されている。
【0105】
なお、発光管20については、実施形態1で説明したものと同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0106】
実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、中央領域A2のうち副鏡60で覆われている部分には、増透過膜72が形成されており、中央領域A2のうち副鏡60で覆われていない部分には、増透過膜72が形成されていない。また、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3についても、実施形態1の場合と同様に、増透過膜72が形成されていない。
【0107】
増透過膜72は、実施形態1で説明した増透過膜70の場合と同様に、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)との多層膜で構成されており、増透過膜72が形成されていない場合に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有する。
【0108】
管球部30の外面に増透過膜72を形成するための方法としては、実施形態1で説明した方法を用いることができる。
【0109】
このように、実施形態2に係るプロジェクタ1002は、実施形態1に係るプロジェクタ1000の場合とは、光源装置の構成及び増透過膜の形成位置が異なるが、実施形態1に係るプロジェクタ1000の場合と同様に、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には増透過膜72が形成されておらず、管球部30の外面における中央領域A2の一部には増透過膜72が形成されているため、光利用効率の向上を図りつつ、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置110Bの寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタとなる。
【0110】
実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、光源装置110Bは、管球部30における被照明領域側の外面を覆うように発光管20における他方の封止部50側に配設され、発光管20からの光を発光管20に向けて反射する副鏡60をさらに有する。これにより、発光管20から被照明領域側に放射され本来有効に利用されていなかった光をも有効に利用することが可能となる。このため、プロジェクタ1002の高輝度化を図ることが可能となる。
また、発光管20の被照明領域側端部まで覆うような大きさに楕円面リフレクタ10Bの大きさを設定することを必要とせず、楕円面リフレクタ10Bの小型化を図ることができ、結果としてコンパクトなプロジェクタを実現することが可能となる。さらに、楕円面リフレクタ10Bの小型化を図ることができることにより、光路後段に配置される光学要素の大きさを小さくすることができるため、さらにコンパクトなプロジェクタとなる。
【0111】
ところで、発光管20の封止部50に副鏡60を配設することによって、光利用効率を向上することが可能となるとともに楕円面リフレクタ10Bを小型化することが可能となり、高輝度かつコンパクトなプロジェクタを実現することが可能となるが、管球部30の略半分が副鏡60によって覆われてしまうことから、発光管20の封止部50に副鏡60が配設されたプロジェクタ1002は、そのような副鏡が配設されていないプロジェクタ以上に、管球部30の温度が高くなり易いという傾向がある。
本発明は、上述したように管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、このように発光管20の封止部50に副鏡60が配設されたプロジェクタに対して特に効果が大きい。
【0112】
また、発光管20の封止部50に副鏡60が配設されたプロジェクタ1002においては、発光管20から放射される光のうち副鏡60で反射される光は、発光管20から射出されてから副鏡60で反射されて再度発光管20を通過して楕円面リフレクタ10Bに入射するまでに、管球部30の外面を複数回通過することとなる。
本発明は、上述したように管球部30の外面を通過する際の可視光の透過率を高くすることが可能となることから、このように発光管20の封止部50に副鏡60が配設されたプロジェクタに対して特に効果が大きい。
【0113】
また、発光管20の封止部50に副鏡60が配設されたプロジェクタ1002においては、管球部30と副鏡60との間に空間が形成されるため、管球部30を効果的に冷却することが可能となり、発光管20の長寿命化を図ることが可能となる。
【0114】
実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、ここでは図示による説明を省略するが、一方の封止部側領域A1及び中央領域A2の境界部と一対の電極42,52の略中間位置Pとを通る直線は、管球部30の外面における副鏡60で覆われている部分と管球部30の外面における副鏡60で覆われていない部分との境界部を通るため、光利用効率は若干低下するものの管球部30の全体的な温度上昇をさらに抑制することが可能となる。
【0115】
実施形態2に係るプロジェクタ1002は、光源装置の構成及び増透過膜の形成位置が異なる点以外の点では、実施形態1に係るプロジェクタ1000と同様の構成を有するため、実施形態1に係るプロジェクタ1000が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0116】
[実施形態3]
図10は、実施形態3に係るプロジェクタ1002における光源装置110Cを説明するために示す図である。図10(a)は光源装置110Cを模式的に示す図であり、図10(b)は管球部30の側面図であり、図10(c)は管球部30の斜視図である。
なお、図10において、図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0117】
実施形態3に係るプロジェクタ1004(図示せず。)は、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ1000とよく似た構成を有するが、増透過膜の形成位置が、実施形態1に係るプロジェクタ1000とは異なる。
【0118】
すなわち、実施形態3に係るプロジェクタ1004においては、中央領域A2のうち管球部30の外面における重力に対して下側の頂点部分34を含む領域には、増透過膜74が形成されており、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3並びに中央領域A2のうち管球部30の外面における重力に対して上側の頂点部分32を含む領域には、増透過膜74が形成されていない。
【0119】
増透過膜74は、実施形態1で説明した増透過膜70の場合と同様に、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)との多層膜で構成されており、増透過膜74が形成されていない場合に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有する。
【0120】
管球部30の外面に増透過膜74を形成するための方法としては、実施形態1で説明した方法を用いることができる。
【0121】
このように、実施形態3に係るプロジェクタ1004は、実施形態1に係るプロジェクタ1000の場合とは、増透過膜の形成位置が異なるが、実施形態1に係るプロジェクタ1000の場合と同様に、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には増透過膜74が形成されておらず、管球部30の外面における中央領域A2の一部には増透過膜74が形成されているため、光利用効率の向上を図りつつ、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置110Cの寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタとなる。
【0122】
また、実施形態3に係るプロジェクタ1004によれば、管球部30の外面における重力に対して上側の頂点部分32を含む領域に増透過膜74が形成されていないことによって、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、管球部における上側の頂点部分32の温度が高くなってしまうのを抑制でき、管球部における上側の頂点部分32において局所的な膨れが発生したり白化したりするのを抑制することが可能となる。その結果、光源装置110Cの寿命の低下を抑制することが可能となる。
【0123】
また、実施形態3に係るプロジェクタ1004によれば、管球部30の外面における重力に対して下側の頂点部分34を含む領域には増透過膜74が形成されているため、全体としての光利用効率を向上することが可能となる。
【0124】
実施形態3に係るプロジェクタ1004は、増透過膜の形成位置が異なる点以外の点では、実施形態1に係るプロジェクタ1000と同様の構成を有するため、実施形態1に係るプロジェクタ1000が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0125】
以上、本発明のプロジェクタを上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0126】
(1)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004においては、増透過膜として、図8に示すように、400nm〜700nmの光の反射率が他の波長域の光の反射率に比べて低い特性、すなわち、増透過膜70が形成されていない場合に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有する増透過膜70〜74を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図11は、変形例における増透過膜76の分光特性を示す図である。増透過膜76は、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)との多層膜で構成されており、図11に示すように、増透過膜76が形成されていない部分に比べて400nm〜1500nmの光透過率を高くする特性を有する。
増透過膜として、図11の変形例に示すように、増透過膜76が形成されていない部分に比べて400nm〜1500nmの光透過率を高くする特性を有する増透過膜76を用いてもよい。この場合、管球部30の外面における中央領域A2から放射される可視光の光利用効率を向上することが可能となるとともに、可視域に連続する赤外域の一部の波長域の光が管球部30の外面(管球部30における中央領域A2)で反射されて熱に変換されるのを抑制することが可能となる。その結果、光利用効率の向上を図りつつ、管球部30の全体的な温度上昇を抑制することが可能となるという効果がある。
【0127】
(2)上記実施形態3に係るプロジェクタ1004においては、中央領域A2のうち、増透過膜74が形成された部分の管球部30の表面積が、増透過膜74が形成されていない部分の管球部30の表面積以上の大きさとなるように、管球部30の外面に増透過膜74が形成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。中央領域A2のうち、増透過膜74が形成された部分の管球部30の表面積が、増透過膜74が形成されていない部分の管球部30の表面積と略同一となるように、管球部30の外面に増透過膜74が形成されていてもよい。つまり、照明光軸100ax及びx軸を含む仮想平面を境界面として、当該仮想平面よりも下側(y(−)側)の中央領域A2には増透過膜74が形成されており、当該仮想平面よりも上側(y(+)側)の中央領域A2には増透過膜74が形成されていない構成としてもよい。
【0128】
(3)上記実施形態1及び3に係るプロジェクタ1000,1004においては、光源装置として、発光管20に副鏡60が配設されていない光源装置110,110Cを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、実施形態2に係るプロジェクタ1002のように副鏡が配設された光源装置を用いてもよい。
【0129】
(4)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004においては、リフレクタとして、楕円面リフレクタを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、放物面リフレクタも好ましく用いることができる。
【0130】
(5)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004においては、光均一化光学系として、レンズアレイからなるレンズインテグレータ光学系を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ロッド部材からなるロッドインテグレータ光学系をも好ましく用いることができる。
【0131】
(6)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004は透過型のプロジェクタであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は反射型のプロジェクタにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶装置等のように光変調手段としての電気光学変調装置が光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、反射型の液晶装置等のように光変調手段としての電気光学変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。反射型のプロジェクタにこの発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクタと同様の効果を得ることができる。
【0132】
(7)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004においては、3つの液晶装置400R,400G,400Bを用いたプロジェクタを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶装置を用いたプロジェクタにも適用可能である。
【0133】
(8)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004においては、電気光学変調装置として液晶装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。電気光学変調装置としては、一般に、画像情報に応じて入射光を変調するものであればよく、マイクロミラー型光変調装置などを利用してもよい。マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)(TI社の商標)を用いることができる。
【0134】
(9)本発明は、プロジェクタをいわゆる据え置き状態で使用する場合にも、プロジェクタをいわゆる天吊り状態で使用する場合にも適用可能である。
【0135】
(10)本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクタに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクタに適用する場合にも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】実施形態1に係るプロジェクタ1000の光学系を示す図。
【図2】光源装置110を説明するために示す図。
【図3】管球部30の外面における各領域及び増透過膜70の形成位置を説明するために示す概念図。
【図4】管球部30の外面における各領域及び増透過膜70の形成位置を説明するために示す概念図。
【図5】管球部30の外面における各領域及び増透過膜70の形成位置を説明するために示す概念図。
【図6】管球部30の外面における各領域及び増透過膜70の形成位置を説明するために示す概念図。
【図7】管球部30から放射される光の配光特性を示す図。
【図8】増透過膜70の分光特性を示す図。
【図9】実施形態2に係るプロジェクタ1002における光源装置110Bを説明するために示す図。
【図10】実施形態3に係るプロジェクタ1004における光源装置110Cを説明するために示す図。
【図11】変形例における増透過膜76の分光特性を示す図。
【符号の説明】
【0137】
10,10B…楕円面リフレクタ、12,12B…開口部、14,14B…反射凹面、20…発光管、30…管球部、32…上側の頂点部分、34…下側の頂点部分、40,50…封止部、42,52…電極、44,54…金属箔、46,56…リード線、60…副鏡、62…開口部、64…反射凹面、70,72,74…増透過膜、90…凹レンズ、100…照明装置、100ax…照明光軸、110,110B,110C…光源装置、120…第1レンズアレイ、122…第1小レンズ、130…第2レンズアレイ、132…第2小レンズ、140…偏光変換素子、150…重畳レンズ、200…色分離導光光学系、210,220…ダイクロイックミラー、230,240,250…反射ミラー、260…入射側レンズ、270…リレーレンズ、300R,300G,300B…集光レンズ、400R,400G,400B…液晶装置、500…クロスダイクロイックプリズム、600…投写光学系、1000,1002…プロジェクタ、A1…一方の封止部側領域、A2…中央領域、A3…他方の封止部側領域、b1〜b4…境界部、c1…中央領域A2を通る光線H1の見かけ上の発光点、c2…一方の封止部側領域A1を通る光線H2の見かけ上の発光点、H1…中央領域A2を通る光線、H2…一方の封止部側領域A1を通る光線、L1〜L4…境界部b1〜b4と一対の電極の略中間位置Pとを通る直線、N…管球部の外面に対する法線、P…一対の電極の略中間位置、R…一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域、SCR…スクリーン、θ1…直線L3と照明光軸とのなす角度、θ2…直線L1と照明光軸とのなす角度、ω…コーティング物質の飛散方向に平行な軸と管球部の外面に対する法線とのなす角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタに用いる光源装置として、発光管における管球部の外面全面に反射防止膜が形成された光源装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。当該反射防止膜は、可視域の光の反射率が可視域以外の他の波長域の光の反射率よりも低い特性を有する。従来の光源装置によれば、管球部の外面全面に反射防止膜が形成されているため、管球部の外面(表面)を通過する際の可視光の反射損を抑制することができ、光利用効率を向上することが可能となる。その結果、従来の光源装置を用いたプロジェクタは、高輝度なプロジェクタとなる。
【0003】
【特許文献1】特開平4−368768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の光源装置においては、可視域の光の反射率を低く抑えることができるよう反射防止膜を設計しているが、可視域以外の他の波長域(紫外域や赤外域など)の光の反射率は比較的高いため、反射防止膜で反射された他の波長域の光の一部が熱に変換される結果、管球部の温度が全体的に高くなってしまう。また、光が反射防止膜を通過する際に一部の光が反射防止膜によって吸収されてしまい、反射防止膜で吸収された光が熱に変換される結果、管球部の温度が全体的に高くなってしまう。
【0005】
すなわち、従来の光源装置においては、管球部の外面全面に反射防止膜が形成されていることに起因して、管球部の温度が全体的に高くなってしまうという問題(第1の問題)がある。
【0006】
また、従来の光源装置においては、熱対流などにより、管球部における重力に対して上側の頂点部分の温度が特に高くなり易く、管球部を構成する基材の許容温度を超えてしまった場合には、管球部における上側の頂点部分において局所的な膨れが発生したり白化したりする場合がある。白化とは、管球部を構成する基材が白濁して失透する現象のことである。管球部に局所的な膨れが発生すると、強度低下によって発光管が破裂する場合がある。また、管球部が白化すると、白化した箇所において光の透過が妨げられてしまい、これに起因して熱が発生して発光管の温度がさらに上昇した結果、発光管が破裂する場合がある。
【0007】
すなわち、従来の光源装置においては、熱対流などにより、管球部における重力に対して上側の頂点部分の温度が特に高くなり易いことに起因して、管球部における上側の頂点部分において局所的な膨れが発生したり白化したりする場合があるという問題(第2の問題)がある。管球部における上側の頂点部分において局所的な膨れが発生したり白化したりすると、光源装置の寿命の低下につながる。
【0008】
また、従来の光源装置においては、管球部の外面を、一方の封止部側領域と、他方の封止部側領域と、一方の封止部側領域及び他方の封止部側領域の間に位置する中央領域との3つの領域に分けたとき、管球部の外面全面を反射防止膜でコーティングする際の、コーティング物質の付着角度(コーティング物質の飛散方向に平行な軸と管球部の外面に対する法線とのなす角度)は、封止部側領域(一方の封止部側領域又は他方の封止部側領域)と中央領域とでは異なるため、封止部側領域と中央領域との間で膜特性が異なってしまう場合があるという問題(第3の問題)がある。封止部側領域と中央領域との間で膜特性が異なってしまうと、光利用効率を望み通りに向上させることが困難となる。したがって、管球部の外面に反射防止膜を形成する際には、封止部側領域の膜特性と中央領域の膜特性とがなるべく同じになるように膜設計を行うのが好ましいが、そのように膜特性の問題を考慮すると、膜設計・膜形成作業が煩雑となってしまう。
【0009】
なお、上記した3つの問題のうち第1の問題を解決するための手段としては、発光管を冷却するための冷却ファンの回転数を上げて風量を増加したり、より大型の冷却ファンを使用したりするなど、発光管のクーリングを強化することが考えられるが、冷却ファンの回転数を上げて風量を増加する場合には騒音が増大してしまい、また、より大型の冷却ファンを使用する場合には装置が大型化するとともに製造コストが高くなってしまうため、発光管のクーリングを強化することは好ましくない。
【0010】
また、上記した3つの問題のうち第1の問題を解決するための手段としては、管球部の外面全面に形成された反射防止膜をすべて除去することが考えられる。この場合には、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となるが、管球部の外面を通過する際の可視光の透過率を高くすることができず、光利用効率を向上することができない。
【0011】
なお、上記した「発光管のクーリングを強化すること」及び「管球部の外面全面に形成された反射防止膜をすべて除去すること」によっては、第2の問題を解決することはできない。また、上記した「発光管のクーリングを強化すること」によっては、第3の問題を解決することはできない。
【0012】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するためのもので、光利用効率の向上を図りつつ、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置の寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のプロジェクタは、照明光軸に沿って配置された一対の電極を内蔵する管球部並びに前記管球部の両側に延びる一方の封止部及び他方の封止部を有する発光管と、前記一方の封止部側に配設され、前記発光管からの光を被照明領域側に向けて反射するリフレクタとを有する光源装置と、前記光源装置からの照明光束を画像情報に応じて変調する電気光学変調装置と、前記電気光学変調装置によって変調された光を投写する投写光学系とを備えるプロジェクタにおいて、前記管球部の外面を、前記一方の封止部側に位置する一方の封止部側領域と、前記他方の封止部側に位置する他方の封止部側領域と、前記一方の封止部側領域及び前記他方の封止部側領域の間に位置する中央領域との3つの領域に分けたとき、前記管球部の外面における前記中央領域には、増透過膜が形成されており、前記管球部の外面における前記一方の封止部側領域及び前記他方の封止部側領域には、前記増透過膜が形成されておらず、前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて少なくとも可視域の光透過率を高くする特性を有することを特徴とする。
【0014】
このため、本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における一方の封止部側領域及び他方の封止部側領域には増透過膜が形成されておらず、反射防止膜も形成されていないことから、従来の光源装置のように管球部の外面全面に反射防止膜が形成されている場合と比べて、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となる。
【0015】
また、本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における一方の封止部側領域及び他方の封止部側領域に増透過膜が形成されていないことによって、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、管球部の上側の頂点部分の温度が高くなってしまうのを抑制でき、管球部の上側の頂点部分において局所的な膨れが発生したり白化したりするのを抑制することが可能となる。その結果、光源装置の寿命の低下を抑制することが可能となる。
【0016】
また、本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における中央領域には増透過膜が形成されているが、管球部の外面における一方の封止部側領域及び他方の封止部側領域には増透過膜が形成されていないため、封止部側領域と中央領域との間で膜特性が異なってしまうという問題が生じることもなくなる結果、膜設計・膜形成作業が煩雑となることもなくなる。
【0017】
また、本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における中央領域には、増透過膜が形成されていない部分に比べて少なくとも可視域の光透過率を高くする特性を有する増透過膜が形成されているため、全体としての光利用効率の向上を図ることが可能となる。
【0018】
したがって、本発明のプロジェクタは、光利用効率の向上を図りつつ、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置の寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタとなる。
【0019】
本発明のプロジェクタにおいては、前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有することが好ましい。
【0020】
このように構成することにより、管球部の外面における中央領域から放射される可視光の光利用効率を向上することが可能となる。
【0021】
本発明のプロジェクタにおいては、前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて400nm〜1500nmの光透過率を高くする特性を有することが好ましい。
【0022】
このように構成することにより、管球部の外面における中央領域から放射される可視光の光利用効率を向上することが可能となるとともに、可視域に連続する赤外域の一部の波長域の光が管球部の外面(管球部における中央領域)で反射されて熱に変換されるのを抑制することが可能となる。その結果、光利用効率の向上を図りつつ、管球部の全体的な温度上昇を抑制することが可能となる。
【0023】
本発明のプロジェクタにおいては、前記増透過膜は、Ta2O5とSiO2との多層膜で構成されていることが好ましい。
【0024】
このように構成することにより、増透過膜の耐熱性を高めることが可能となり、極めて高温にさらされる発光管の管球部の表面においても長期間に渡って良好な増透過特性を維持することが可能となる。
【0025】
本発明のプロジェクタにおいては、前記発光管は、前記管球部の内面と外面とによるレンズ効果を生じる発光管であり、前記管球部の外面から放射される光のうち前記一方の封止部側領域を通る光線を前記照明光軸に向けて延長したときの見かけ上の発光点は、前記一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域内に存在しないことが好ましい。
【0026】
ところで、管球部の外面から放射される光は、すべて利用可能なわけではなく、一部に利用しにくい光も存在している。例えば、後述する図5に示すように、管球部の外面から放射される光のうち、管球部の頂部よりの位置を通る光H1は、楕円面リフレクタ10で反射することにより利用可能であるが、楕円面リフレクタ10側の封止部40近傍を通る光H2は、楕円面リフレクタ10で反射された後で管球部30によって遮られてしまうため利用することが難しい。
【0027】
このように、管球部から放射される光には、利用可能な光と利用しにくい光とが存在するが、本発明者が鋭意研究を重ねた結果、このような利用しにくい光は、管球部の外面から放射される光の見かけ上の発光点が、一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域内に存在しない光であり、利用可能な光は、管球部の外面から放射される光の見かけ上の発光点が、一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域内に存在する光であることがわかった。
【0028】
なお、見かけ上の発光点とは、管球部の外面からリフレクタに向けて射出される光線を照明光軸に向けて延長した延長線と照明光軸との交点のことである。このように見かけ上の発光点が生じるのは、管球部の内面と外面とによるレンズ効果によって、一対の電極間に存在する本来の発光点から放射される光線が管球部の内面及び外面を通過するたびに少しずつ角度がずれるからである。
【0029】
本発明のプロジェクタによれば、一方の封止部側領域(リフレクタ側の封止部側領域)を通る光線の見かけ上の発光点は当該仮想領域内に存在しないため、利用しにくい光が通過する位置には増透過膜が形成されていないこととなる。これにより、膜形成時において、利用しにくい光が通過する位置にわざわざ増透過膜を形成しなくてもよくなるため、膜設計・膜形成作業が容易となるとともに、一方の封止部側領域に増透過膜が形成されていないことに起因する光利用効率の低下を極力抑制することが可能となる。
【0030】
なお、本発明のプロジェクタにおいては、前記管球部の外面から放射される光のうち前記中央領域を通る光線を前記照明光軸に向けて延長したときの見かけ上の発光点は、前記一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域内に存在することが好ましい。
【0031】
このように構成することにより、利用可能な光が通過する位置には増透過膜が形成されていることとなる。これにより、光利用効率の向上の面で優れたプロジェクタとなる。
【0032】
本発明のプロジェクタにおいては、前記中央領域における前記管球部の外面に対する法線と前記照明光軸に直交する面とがなす角度をωとしたとき、ω≦45度であることが好ましい。
【0033】
管球部の外面に増透過膜等をコーティングする際には、一方の封止部及び他方の封止部を結ぶ直線に対して略直交する方向から管球部に向けてコーティング物質を飛散させるのが通常であるが、本発明者の実験によれば、このような場合においてコーティング物質の付着角度(コーティング物質の飛散方向に平行な軸と管球部の外面に対する法線とのなす角度)が45度を超えると、膜特性が出にくいという問題がある。このような問題を解決するには、角度依存性の少ないコーティング物質を使用したり膜数を増やしたりする手段が考えられるが、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりしてしまうため好ましくない。
【0034】
これに対し、本発明のプロジェクタによれば、中央領域における管球部の外面に対する法線と照明光軸に直交する面とがなす角度ωが45度以下であるため、コーティング物質の付着角度に置き換えると、当該付着角度が45度以下となる管球部の中央領域にのみ増透過膜が形成されることとなり、上述した膜特性が出にくいという問題が生じることもない。また、角度依存性の少ないコーティング物質を使用したり膜数を増やしたりすることもないため、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりすることもない。その結果、本発明のプロジェクタは、膜特性に優れた発光管を備え、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりすることのないプロジェクタとなる。
【0035】
本発明のプロジェクタにおいては、前記中央領域から放射される光の強度は、前記管球部から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%以上であることが好ましい。
【0036】
このように構成することにより、比較的光の強度が大きな部分には増透過膜が形成されていることとなるため、光利用効率の向上の面で優れたプロジェクタとなる。
【0037】
なお、本発明のプロジェクタにおいては、前記一方の封止部側領域及び前記他方の封止部側領域から放射される光の強度はそれぞれ、前記管球部から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%未満であることが好ましい。
【0038】
このように構成することにより、比較的光の強度が小さな部分には増透過膜が形成されていないこととなる。これにより、膜形成時において、比較的光の強度が小さな部分にわざわざ増透過膜を形成しなくてもよくなるため、膜設計・膜形成作業が容易となるとともに、一方の封止部側領域及び他方の封止部側領域に増透過膜が形成されていないことに起因する光利用効率の低下を極力抑制することが可能となる。
【0039】
本発明のプロジェクタにおいては、前記他方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線と、前記光源装置の前記照明光軸とがなす角度をθ1としたとき、40度<θ1≦55度であることが好ましい。
【0040】
θ1の値が40度以下である場合には、管球部の外面における増透過膜が形成されていない部分の表面積が比較的小さくなってしまい、管球部の全体的な温度上昇を抑制するのが容易ではなくなる。一方、θ1の値が55度を超えるものとした場合には、管球部の外面における増透過膜が形成されていない部分の表面積が比較的大きくなってしまい、光利用効率の向上を図るのが容易ではなくなる。
以上の観点から、θ1の値は、40度<θ1≦55度であることが好ましい。
【0041】
本発明のプロジェクタにおいては、前記一方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線と、前記光源装置の前記照明光軸とがなす角度をθ2としたとき、40度<θ2≦55度であることが好ましい。
【0042】
θ2の値が40度以下である場合には、管球部の外面における増透過膜が形成されていない部分の表面積が比較的小さくなってしまい、管球部の全体的な温度上昇を抑制するのが容易ではなくなる。一方、θ2の値が55度を超えるものとした場合には、管球部の外面における増透過膜が形成されていない部分の表面積が比較的大きくなってしまい、光利用効率の向上を図るのが容易ではなくなる。
以上の観点から、θ2の値は、40度<θ2≦55度であることが好ましい。
【0043】
本発明のプロジェクタにおいては、前記光源装置は、前記管球部における前記被照明領域側の外面を覆うように前記発光管における他方の封止部側に配設され、前記発光管からの光を前記発光管に向けて反射する副鏡をさらに有することが好ましい。
【0044】
ところで、発光管の封止部に副鏡を配設することによって、光利用効率を向上することが可能となるとともにリフレクタを小型化することが可能となり、高輝度かつコンパクトなプロジェクタを実現することが可能となるが、管球部の略半分が副鏡によって覆われてしまうことから、発光管の封止部に副鏡が配設されたプロジェクタは、そのような副鏡が配設されていないプロジェクタ以上に、管球部の温度が高くなり易いという傾向がある。
本発明は、上述したように管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、このように発光管の封止部に副鏡が配設されたプロジェクタに対して特に効果が大きい。
【0045】
また、発光管の封止部に副鏡が配設されたプロジェクタにおいては、発光管から放射される光のうち副鏡で反射される光は、発光管から射出されてから副鏡で反射されて再度発光管を通過してリフレクタに入射するまでに、管球部の外面を複数回通過することとなる。
本発明は、上述したように管球部の外面を通過する際の可視光の透過率を高くすることが可能となることから、このように発光管の封止部に副鏡が配設されたプロジェクタに対して特に効果が大きい。
【0046】
また、発光管の封止部に副鏡が配設されたプロジェクタにおいては、管球部と副鏡との間に空間が形成されるため、管球部を効果的に冷却することが可能となり、発光管の長寿命化を図ることが可能となる。
【0047】
本発明のプロジェクタにおいては、前記一方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線は、前記管球部の外面における前記副鏡で覆われている部分と前記管球部の外面における前記副鏡で覆われていない部分との境界部を通ることが好ましい。
【0048】
このように構成することにより、光利用効率は若干低下するものの管球部の全体的な温度上昇をさらに抑制することが可能となる。
【0049】
本発明のプロジェクタにおいては、前記管球部の外面における重力に対して下側の頂点部分を含む領域には、前記増透過膜が形成されており、前記管球部の外面における重力に対して上側の頂点部分を含む領域には、前記増透過膜が形成されていないことが好ましい。
【0050】
本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における重力に対して上側の頂点部分を含む領域に増透過膜が形成されていないことによって、管球部の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、管球部における上側の頂点部分の温度が高くなってしまうのを抑制でき、管球部における上側の頂点部分において局所的な膨れが発生したり白化したりするのを抑制することが可能となる。その結果、光源装置の寿命の低下を抑制することが可能となる。
【0051】
また、本発明のプロジェクタによれば、管球部の外面における重力に対して下側の頂点部分を含む領域には増透過膜が形成されているため、全体としての光利用効率を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明のプロジェクタについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0053】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るプロジェクタ1000の光学系を示す図である。図2は、光源装置110を説明するために示す図である。図2(a)は光源装置110を模式的に示す図であり、図2(b)は管球部30の側面図であり、図2(c)は管球部30の斜視図である。図3〜図6は、管球部30の外面における各領域及び増透過膜70の形成位置を説明するために示す概念図である。図7は、管球部30から放射される光の配光特性を示す図である。図8は、増透過膜70の分光特性を示す図である。図8においては、増透過膜70の分光特性を示すとともに、増透過膜70を形成していない場合の分光特性も示している。
【0054】
なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれz軸方向(図1における照明光軸100ax方向)、x軸方向(図1における紙面に平行かつz軸に直交する方向)及びy軸方向(図1における紙面に垂直かつz軸に直交する方向)とする。
また、以下の説明においては、プロジェクタ1000をいわゆる据え置き状態に配置する場合を例示的に示しているため、重力方向は下側方向(例えば、図2(a)においてはy(−)方向。)となる。
【0055】
実施形態1に係るプロジェクタ1000は、図1に示すように、照明装置100と、照明装置100からの照明光束を赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して被照明領域に導光する色分離導光光学系200と、色分離導光光学系200で分離された3つの色光のそれぞれを画像情報に応じて変調する電気光学変調装置としての3つの液晶装置400R,400G,400Bと、3つの液晶装置400R,400G,400Bによって変調された色光を合成するクロスダイクロイックプリズム500と、クロスダイクロイックプリズム500によって合成された光をスクリーンSCR等の投写面に投写する投写光学系600とを備えたプロジェクタである。
【0056】
照明装置100は、被照明領域側に照明光束を射出する光源装置110と、光源装置110からの集束光を略平行光として射出する凹レンズ90と、凹レンズ90から射出される照明光束を複数の部分光束に分割するための複数の第1小レンズ122を有する第1レンズアレイ120と、第1レンズアレイ120の複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する第2レンズアレイ130と、第2レンズアレイ130からの各部分光束を偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光に変換して射出する偏光変換素子140と、偏光変換素子140から射出される各部分光束を被照明領域で重畳させるための重畳レンズ150とを有する。
【0057】
光源装置110は、図1及び図2(a)に示すように、リフレクタとしての楕円面リフレクタ10と、楕円面リフレクタ10の第1焦点近傍に発光中心を有する発光管20とを有する。光源装置110は、照明光軸100axを中心軸とする光束を射出する。
【0058】
発光管20は、図2に示すように、照明光軸100axに沿って配置された一対の電極42,52を内蔵する管球部30と、管球部30の両側に延びる一対の封止部40,50と、一対の封止部40,50内にそれぞれ封止された一対の金属箔44,54と、一対の金属箔44,54にそれぞれ電気的に接続された一対のリード線46,56とを有する。
【0059】
なお、発光管20の構成要素の条件等を例示的に示すと、管球部30及び封止部40,50は、例えば石英ガラス製であり、管球部30内には、水銀、希ガス及び少量のハロゲンが封入されている。電極42,52は、例えばタングステン電極であり、金属箔44,54は、例えばモリブデン箔である。リード線46,56は、例えばモリブデン又はタングステンから構成されている。
また、発光管20としては、高輝度発光する種々の発光管を採用でき、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を採用できる。
【0060】
管球部30の外面を、図3に示すように、一方の封止部側領域(封止部40側の所定領域)A1と、他方の封止部側領域(封止部50側の所定領域)A3と、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3の間に位置する中央領域A2との3つの領域に分けたとき、管球部30の外面における中央領域A2には、増透過膜70が形成されており、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には、増透過膜70が形成されていない(図2及び図4参照。)。
【0061】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、図4に示すように、θ1及びθ2の値が45度となるように、管球部30の外面を一方の封止部側領域A1と他方の封止部側領域A3と中央領域A2との3つの領域に分けている。そして、管球部30の外面における中央領域A2にのみ増透過膜70が形成されており、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には増透過膜70が形成されていない。
なお、θ1とは、「管球部30の上側における他方の封止部側領域A3及び中央領域A2の境界部b3と一対の電極42,52の略中間位置Pとを通る直線L3」と「光源装置110の照明光軸100ax」とのなす角度(「管球部30の下側における他方の封止部側領域A3及び中央領域A2の境界部b4と一対の電極42,52の略中間位置Pとを通る直線L4」と「光源装置110の照明光軸100ax」とのなす角度)のことである。
また、θ2とは、「管球部30の上側における一方の封止部側領域A1及び中央領域A2の境界部b1と一対の電極42,52の略中間位置Pとを通る直線L1」と「光源装置110の照明光軸100ax」とのなす角度(「管球部30の下側における一方の封止部側領域A1及び中央領域A2の境界部b2と一対の電極42,52の略中間位置Pとを通る直線L2」と「光源装置110の照明光軸100ax」とのなす角度)のことである。
【0062】
ここでは図示による説明を省略するが、一対の電極42,52の略中間位置Pを中心として、一方の封止部側領域A1に対応する立体角をΩ1とし、他方の封止部側領域A3に対応する立体角をΩ2としたとき、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、Ω1=Ω2=π[sr(steradian:ステラジアン)]となる。
【0063】
ところで、管球部30の外面から放射される光は、すべて利用可能なわけではなく、一部に利用しにくい光も存在している。例えば、図5に示すように、管球部30の外面から放射される光のうち、管球部30の頂部よりの位置を通る光H1は、楕円面リフレクタ10で反射することにより利用可能であるが、楕円面リフレクタ10側の封止部40近傍を通る光H2は、楕円面リフレクタ10で反射された後で管球部30によって遮られてしまうため利用することが難しい(図5(a)参照。)。
【0064】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、図5(b)に示すように、一方の封止部側領域A1(楕円面リフレクタ10側の封止部側領域)を通る光線H2の見かけ上の発光点c2が、一対の電極42,52を内部に含む円筒状の仮想領域R内に存在せず、中央領域A2を通る光線H1を照明光軸100axに向けて延長したときの見かけ上の発光点c1が、仮想領域R内に存在するように、管球部30の外面を一方の封止部側領域A1と他方の封止部側領域A3と中央領域A2との3つの領域に分けている。
【0065】
なお、見かけ上の発光点とは、管球部30の外面から楕円面リフレクタ10に向けて射出される光線を照明光軸100axに向けて延長した延長線と照明光軸100axとの交点のことである。このように見かけ上の発光点が生じるのは、管球部30の内面と外面とによるレンズ効果によって、一対の電極42,52間に存在する本来の発光点(一対の電極42,52の略中間位置P)から放射される光線が管球部30の内面及び外面を通過するたびに少しずつ角度がずれるからである(図5(b)参照。)。
【0066】
ところで、管球部30の外面に増透過膜等をコーティングする際には、図6に示すように、一方の封止部40及び他方の封止部50を結ぶ直線に対して略直交する方向(図6のα方向)から管球部30に向けてコーティング物質を飛散させるのが通常であるが、本発明者の実験によれば、このような場合においてコーティング物質の付着角度(コーティング物質の飛散方向(α方向)に平行な軸と管球部30の外面に対する法線Nとのなす角度ω)が45度を超えると、膜特性が出にくいという問題がある。このような問題を解決するには、角度依存性の少ないコーティング物質を使用したり膜数を増やしたりする手段が考えられるが、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりしてしまうため好ましくない。
【0067】
このため、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、中央領域A2における管球部30の外面に対する法線Nと照明光軸100axに直交する面とがなす角度をωとしたとき、ω≦45度となるように、管球部30の外面を一方の封止部側領域A1と他方の封止部側領域A3と中央領域A2との3つの領域に分けている。
【0068】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、中央領域A2から放射される光の強度(図7において、45度〜135度の範囲から放射される光の強度)が、管球部30から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%以上となり、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3から放射される光の強度がそれぞれ、管球部30から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%未満となるように、管球部30の外面を一方の封止部側領域A1と他方の封止部側領域A3と中央領域A2との3つの領域に分けている。
【0069】
増透過膜70は、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)との多層膜で構成されており、図8に示すように、400nm〜700nmの光の反射率が他の波長域の光の反射率に比べて低い特性を有する。すなわち、増透過膜70は、増透過膜70が形成されていない場合に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有する。
【0070】
管球部30の外面に増透過膜70を形成するための方法としては、蒸着法、ディッピング法、イオンプレーティング法、スパッタ法等の各種方法を用いることができる。例えば、増透過膜70を形成しない部分(一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3)をマスキングテープ等で覆い、発光管20を自公転させながら酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)とを交互に蒸着させることにより、管球部30の外面における中央領域A2にのみ増透過膜70を形成することができる。
【0071】
楕円面リフレクタ10は、図2(a)に示すように、発光管20の封止部(一方の封止部)40を挿通・固定するための開口部12と、発光管20から放射された光を第2焦点位置に向けて反射する反射凹面14とを有する。楕円面リフレクタ10は、楕円面リフレクタ10の開口部12に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって発光管20の封止部40に固着されている。
【0072】
反射凹面14を構成する基材の材料としては、例えば、結晶化ガラスやアルミナ(Al2O3)などを好適に用いることができる。反射凹面14の内面には、例えば、酸化チタン(TiO2)と酸化シリコン(SiO2)との誘電体多層膜からなる可視光反射層が形成されている。
【0073】
凹レンズ90は、図1に示すように、楕円面リフレクタ10の被照明領域側に配置されている。そして、楕円面リフレクタ10からの光を第1レンズアレイ120に向けて射出するように構成されている。
【0074】
第1レンズアレイ120は、凹レンズ90からの光を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有し、複数の第1小レンズ122が照明光軸100axと直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。図示による説明は省略するが、第1小レンズ122の外形形状は、液晶装置400R,400G,400Bの画像形成領域の外形形状に関して相似形である。
【0075】
第2レンズアレイ130は、重畳レンズ150とともに、第1レンズアレイ120の各第1小レンズ122の像を液晶装置400R,400G,400Bの画像形成領域近傍に結像させる機能を有する。第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120と略同様な構成を有し、複数の第2小レンズ132が照明光軸100axに直交する面内に複数行・複数列のマトリクス状に配列された構成を有する。
【0076】
偏光変換素子140は、第1レンズアレイ120により分割された各部分光束の偏光方向を、偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光として射出する偏光変換素子である。
偏光変換素子140は、光源装置110からの照明光束に含まれる偏光成分のうち一方の直線偏光成分を透過し他方の直線偏光成分を照明光軸100axに垂直な方向に反射する偏光分離層と、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を照明光軸100axに平行な方向に反射する反射層と、偏光分離層を透過した一方の直線偏光成分を他方の直線偏光成分に変換する位相差板とを有する。
【0077】
重畳レンズ150は、第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130及び偏光変換素子140を経た複数の部分光束を集光して液晶装置400R,400G,400Bの画像形成領域近傍に重畳させるための光学素子である。重畳レンズ150の光軸と照明装置100の照明光軸100axとが略一致するように、重畳レンズ150が配置されている。なお、重畳レンズ150は、複数のレンズを組み合わせた複合レンズで構成されていてもよい。
【0078】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210,220と、反射ミラー230,240,250と、入射側レンズ260と、リレーレンズ270とを有する。色分離導光光学系200は、重畳レンズ150から射出される照明光束を、赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して、それぞれの色光を照明対象となる3つの液晶装置400R,400G,400Bに導く機能を有する。
【0079】
液晶装置400R,400G,400Bの光路前段には、集光レンズ300R,300G,300Bが配置されている。
【0080】
液晶装置400R,400G,400Bは、画像情報に応じて照明光束を変調するものであり、照明装置100の照明対象となる。
液晶装置400R,400G,400Bは、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶を密閉封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像情報に従って、入射側偏光板から射出された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。
【0081】
また、ここでは図示を省略したが、集光レンズ300R,300G,300Bと各液晶装置400R,400G,400Bとの間には、それぞれ入射側偏光板が介在配置され、各液晶装置400R,400G,400Bとクロスダイクロイックプリズム500との間には、それぞれ射出側偏光板が介在配置されている。これら入射側偏光板、液晶装置400R,400G,400B及び射出側偏光板によって入射する各色光の光変調が行われる。
【0082】
クロスダイクロイックプリズム500は、射出側偏光板から射出された各色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成する光学素子である。このクロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。
【0083】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600によって拡大投写され、スクリーンSCR上で大画面画像を形成する。
【0084】
以上のように構成された実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には増透過膜70が形成されておらず、反射防止膜も形成されていないことから、従来の光源装置のように管球部の外面全面に反射防止膜が形成されている場合と比べて、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となる。
【0085】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3に増透過膜70が形成されていないことによって、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、管球部30の上側の頂点部分32の温度が高くなってしまうのを抑制でき、管球部30の上側の頂点部分32において局所的な膨れが発生したり白化したりするのを抑制することが可能となる。その結果、光源装置110の寿命の低下を抑制することが可能となる。
【0086】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、管球部30の外面における中央領域A2には増透過膜70が形成されているが、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には増透過膜70が形成されていないため、封止部側領域と中央領域との間で膜特性が異なってしまうという問題が生じることもなくなる結果、膜設計・膜形成作業が煩雑となることもなくなる。
【0087】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000によれば、管球部30の外面における中央領域A2には、増透過膜70が形成されていない部分に比べて少なくとも可視域の光透過率を高くする特性を有する増透過膜70が形成されているため、全体としての光利用効率の向上を図ることが可能となる。
【0088】
したがって、実施形態1に係るプロジェクタ1000は、光利用効率の向上を図りつつ、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置110の寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタとなる。
【0089】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、増透過膜70は、増透過膜70が形成されていない部分に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有するため、管球部30の外面における中央領域A2から放射される可視光の光利用効率を向上することが可能となる。
【0090】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、増透過膜70は、Ta2O5とSiO2との多層膜で構成されているため、増透過膜70の耐熱性を高めることが可能となり、極めて高温にさらされる発光管20の管球部30の表面においても長期間に渡って良好な増透過特性を維持することが可能となる。
【0091】
上記したθ1及びθ2の値が40度以下である場合には、管球部30の外面における増透過膜70が形成されていない部分の表面積が比較的小さくなってしまい、管球部30の全体的な温度上昇を抑制するのが容易ではなくなる。一方、上記したθ1及びθ2の値が55度を超えるものとした場合には、管球部30の外面における増透過膜70が形成されていない部分の表面積が比較的大きくなってしまい、光利用効率の向上を図るのが容易ではなくなる。
以上の観点から、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、θ1及びθ2の値は、40度<θ1≦55度であり、40度<θ2≦55度である。
【0092】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、発光管20は、管球部30の内面と外面とによるレンズ効果を生じる発光管であり、一方の封止部側領域A1(楕円面リフレクタ10側の封止部側領域)を通る光線の見かけ上の発光点は仮想領域R内に存在しないため、利用しにくい光が通過する位置には増透過膜70が形成されていないこととなる。これにより、膜形成時において、利用しにくい光が通過する位置にわざわざ増透過膜を形成しなくてもよくなるため、膜設計・膜形成作業が容易となるとともに、一方の封止部側領域A1に増透過膜70が形成されていないことに起因する光利用効率の低下を極力抑制することが可能となる。
【0093】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、中央領域A2を通る光線の見かけ上の発光点は、仮想領域R内に存在するため、利用可能な光が通過する位置には増透過膜70が形成されていることとなる。これにより、光利用効率の向上の面で優れたプロジェクタとなる。
【0094】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、中央領域A2における管球部30の外面に対する法線Nと照明光軸100axに直交する面(xy面)とがなす角度ωが45度以下であるため、コーティング物質の付着角度に置き換えると、当該付着角度が45度以下となる管球部30の中央領域A2にのみ増透過膜70が形成されることとなり、膜特性が出にくいという問題が生じることもない。また、角度依存性の少ないコーティング物質を使用したり膜数を増やしたりすることもないため、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりすることもない。その結果、実施形態1に係るプロジェクタ1000は、膜特性に優れた発光管を備え、製造コストが高くなったり膜形成作業が煩雑になったりすることのないプロジェクタとなる。
【0095】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、中央領域A2から放射される光の強度は、管球部30から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%以上である。これにより、比較的光の強度が大きな部分には増透過膜70が形成されていることとなるため、光利用効率の向上の面で優れたプロジェクタとなる。
【0096】
また、実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3から放射される光の強度はそれぞれ、管球部30から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%未満である。これにより、比較的光の強度が小さな部分には増透過膜70が形成されていないこととなり、膜形成時において、比較的光の強度が小さな部分にわざわざ増透過膜を形成しなくてもよくなるため、膜設計・膜形成作業が容易となるとともに、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3に増透過膜70が形成されていないことに起因する光利用効率の低下を極力抑制することが可能となる。
【0097】
[実施形態2]
図9は、実施形態2に係るプロジェクタ1002における光源装置110Bを説明するために示す図である。図9(a)は光源装置110Bを模式的に示す図であり、図9(b)は管球部30の側面図であり、図9(c)は管球部30の斜視図である。なお、図9(c)においては、増透過膜72がどのように管球部30の外面に形成されているのかを詳細に説明するため、副鏡60については図示を省略している。
【0098】
なお、図9において、図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0099】
実施形態2に係るプロジェクタ1002(図示せず。)は、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ1000とよく似た構成を有するが、光源装置の構成及び増透過膜の形成位置が、実施形態1に係るプロジェクタ1000とは異なる。
【0100】
すなわち、実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、光源装置110Bは、図9に示すように、リフレクタとしての楕円面リフレクタ10Bと、楕円面リフレクタ10Bの第1焦点近傍に発光中心を有する発光管20と、反射手段としての副鏡60とを有する。光源装置110Bは、照明光軸100axを中心軸とする光束を射出する。
【0101】
楕円面リフレクタ10Bは、実施形態1で説明した楕円面リフレクタ10と同様の構成を有しており、図9(a)に示すように、発光管20の封止部(一方の封止部)40を挿通・固定するための開口部12Bと、発光管20から放射された光を第2焦点位置に向けて反射する反射凹面14Bとを有する。楕円面リフレクタ10Bは、楕円面リフレクタ10Bの開口部12に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって発光管20の封止部40に固着されている。
【0102】
反射凹面14Bを構成する基材の材料としては、例えば、結晶化ガラスやアルミナ(Al2O3)などを好適に用いることができる。反射凹面14Bの内面には、例えば、酸化チタン(TiO2)と酸化シリコン(SiO2)との誘電体多層膜からなる可視光反射層が形成されている。
【0103】
副鏡60は、管球部30の略半分を覆い、楕円面リフレクタ10Bの反射凹面14Bと対向して配置される反射手段であり、発光管20の封止部(他方の封止部)50に挿通・固定するための開口部62と、発光管20から被照明領域側に向けて放射された光を発光管20に向けて反射する反射凹面64とを有する。副鏡60によって反射された光は、発光管20を透過して楕円面リフレクタ10Bに入射する。副鏡60は、副鏡60の開口部62に充填されたセメントなどの無機系接着剤によって発光管20の封止部50に固着されている。
【0104】
反射凹面64を構成する材料としては、例えば、透光性のアルミナを用いている。これにより、副鏡60における放熱性を高めることができる。なお、アルミナ以外でも、石英ガラス、サファイア、ルビーなどの材料を用いてもよい。
反射凹面64の内面には、例えば、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)との誘電体多層膜からなる反射層が形成されている。
【0105】
なお、発光管20については、実施形態1で説明したものと同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0106】
実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、中央領域A2のうち副鏡60で覆われている部分には、増透過膜72が形成されており、中央領域A2のうち副鏡60で覆われていない部分には、増透過膜72が形成されていない。また、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3についても、実施形態1の場合と同様に、増透過膜72が形成されていない。
【0107】
増透過膜72は、実施形態1で説明した増透過膜70の場合と同様に、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)との多層膜で構成されており、増透過膜72が形成されていない場合に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有する。
【0108】
管球部30の外面に増透過膜72を形成するための方法としては、実施形態1で説明した方法を用いることができる。
【0109】
このように、実施形態2に係るプロジェクタ1002は、実施形態1に係るプロジェクタ1000の場合とは、光源装置の構成及び増透過膜の形成位置が異なるが、実施形態1に係るプロジェクタ1000の場合と同様に、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には増透過膜72が形成されておらず、管球部30の外面における中央領域A2の一部には増透過膜72が形成されているため、光利用効率の向上を図りつつ、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置110Bの寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタとなる。
【0110】
実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、光源装置110Bは、管球部30における被照明領域側の外面を覆うように発光管20における他方の封止部50側に配設され、発光管20からの光を発光管20に向けて反射する副鏡60をさらに有する。これにより、発光管20から被照明領域側に放射され本来有効に利用されていなかった光をも有効に利用することが可能となる。このため、プロジェクタ1002の高輝度化を図ることが可能となる。
また、発光管20の被照明領域側端部まで覆うような大きさに楕円面リフレクタ10Bの大きさを設定することを必要とせず、楕円面リフレクタ10Bの小型化を図ることができ、結果としてコンパクトなプロジェクタを実現することが可能となる。さらに、楕円面リフレクタ10Bの小型化を図ることができることにより、光路後段に配置される光学要素の大きさを小さくすることができるため、さらにコンパクトなプロジェクタとなる。
【0111】
ところで、発光管20の封止部50に副鏡60を配設することによって、光利用効率を向上することが可能となるとともに楕円面リフレクタ10Bを小型化することが可能となり、高輝度かつコンパクトなプロジェクタを実現することが可能となるが、管球部30の略半分が副鏡60によって覆われてしまうことから、発光管20の封止部50に副鏡60が配設されたプロジェクタ1002は、そのような副鏡が配設されていないプロジェクタ以上に、管球部30の温度が高くなり易いという傾向がある。
本発明は、上述したように管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、このように発光管20の封止部50に副鏡60が配設されたプロジェクタに対して特に効果が大きい。
【0112】
また、発光管20の封止部50に副鏡60が配設されたプロジェクタ1002においては、発光管20から放射される光のうち副鏡60で反射される光は、発光管20から射出されてから副鏡60で反射されて再度発光管20を通過して楕円面リフレクタ10Bに入射するまでに、管球部30の外面を複数回通過することとなる。
本発明は、上述したように管球部30の外面を通過する際の可視光の透過率を高くすることが可能となることから、このように発光管20の封止部50に副鏡60が配設されたプロジェクタに対して特に効果が大きい。
【0113】
また、発光管20の封止部50に副鏡60が配設されたプロジェクタ1002においては、管球部30と副鏡60との間に空間が形成されるため、管球部30を効果的に冷却することが可能となり、発光管20の長寿命化を図ることが可能となる。
【0114】
実施形態2に係るプロジェクタ1002においては、ここでは図示による説明を省略するが、一方の封止部側領域A1及び中央領域A2の境界部と一対の電極42,52の略中間位置Pとを通る直線は、管球部30の外面における副鏡60で覆われている部分と管球部30の外面における副鏡60で覆われていない部分との境界部を通るため、光利用効率は若干低下するものの管球部30の全体的な温度上昇をさらに抑制することが可能となる。
【0115】
実施形態2に係るプロジェクタ1002は、光源装置の構成及び増透過膜の形成位置が異なる点以外の点では、実施形態1に係るプロジェクタ1000と同様の構成を有するため、実施形態1に係るプロジェクタ1000が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0116】
[実施形態3]
図10は、実施形態3に係るプロジェクタ1002における光源装置110Cを説明するために示す図である。図10(a)は光源装置110Cを模式的に示す図であり、図10(b)は管球部30の側面図であり、図10(c)は管球部30の斜視図である。
なお、図10において、図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0117】
実施形態3に係るプロジェクタ1004(図示せず。)は、基本的には実施形態1に係るプロジェクタ1000とよく似た構成を有するが、増透過膜の形成位置が、実施形態1に係るプロジェクタ1000とは異なる。
【0118】
すなわち、実施形態3に係るプロジェクタ1004においては、中央領域A2のうち管球部30の外面における重力に対して下側の頂点部分34を含む領域には、増透過膜74が形成されており、一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3並びに中央領域A2のうち管球部30の外面における重力に対して上側の頂点部分32を含む領域には、増透過膜74が形成されていない。
【0119】
増透過膜74は、実施形態1で説明した増透過膜70の場合と同様に、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)との多層膜で構成されており、増透過膜74が形成されていない場合に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有する。
【0120】
管球部30の外面に増透過膜74を形成するための方法としては、実施形態1で説明した方法を用いることができる。
【0121】
このように、実施形態3に係るプロジェクタ1004は、実施形態1に係るプロジェクタ1000の場合とは、増透過膜の形成位置が異なるが、実施形態1に係るプロジェクタ1000の場合と同様に、管球部30の外面における一方の封止部側領域A1及び他方の封止部側領域A3には増透過膜74が形成されておらず、管球部30の外面における中央領域A2の一部には増透過膜74が形成されているため、光利用効率の向上を図りつつ、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能で、かつ、光源装置110Cの寿命の低下を抑制することが可能で、さらには、膜設計・膜形成作業が煩雑となることのないプロジェクタとなる。
【0122】
また、実施形態3に係るプロジェクタ1004によれば、管球部30の外面における重力に対して上側の頂点部分32を含む領域に増透過膜74が形成されていないことによって、管球部30の温度が全体的に高くなってしまうのを抑制することが可能となることから、管球部における上側の頂点部分32の温度が高くなってしまうのを抑制でき、管球部における上側の頂点部分32において局所的な膨れが発生したり白化したりするのを抑制することが可能となる。その結果、光源装置110Cの寿命の低下を抑制することが可能となる。
【0123】
また、実施形態3に係るプロジェクタ1004によれば、管球部30の外面における重力に対して下側の頂点部分34を含む領域には増透過膜74が形成されているため、全体としての光利用効率を向上することが可能となる。
【0124】
実施形態3に係るプロジェクタ1004は、増透過膜の形成位置が異なる点以外の点では、実施形態1に係るプロジェクタ1000と同様の構成を有するため、実施形態1に係るプロジェクタ1000が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0125】
以上、本発明のプロジェクタを上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0126】
(1)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004においては、増透過膜として、図8に示すように、400nm〜700nmの光の反射率が他の波長域の光の反射率に比べて低い特性、すなわち、増透過膜70が形成されていない場合に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有する増透過膜70〜74を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図11は、変形例における増透過膜76の分光特性を示す図である。増透過膜76は、酸化タンタル(Ta2O5)と酸化シリコン(SiO2)との多層膜で構成されており、図11に示すように、増透過膜76が形成されていない部分に比べて400nm〜1500nmの光透過率を高くする特性を有する。
増透過膜として、図11の変形例に示すように、増透過膜76が形成されていない部分に比べて400nm〜1500nmの光透過率を高くする特性を有する増透過膜76を用いてもよい。この場合、管球部30の外面における中央領域A2から放射される可視光の光利用効率を向上することが可能となるとともに、可視域に連続する赤外域の一部の波長域の光が管球部30の外面(管球部30における中央領域A2)で反射されて熱に変換されるのを抑制することが可能となる。その結果、光利用効率の向上を図りつつ、管球部30の全体的な温度上昇を抑制することが可能となるという効果がある。
【0127】
(2)上記実施形態3に係るプロジェクタ1004においては、中央領域A2のうち、増透過膜74が形成された部分の管球部30の表面積が、増透過膜74が形成されていない部分の管球部30の表面積以上の大きさとなるように、管球部30の外面に増透過膜74が形成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。中央領域A2のうち、増透過膜74が形成された部分の管球部30の表面積が、増透過膜74が形成されていない部分の管球部30の表面積と略同一となるように、管球部30の外面に増透過膜74が形成されていてもよい。つまり、照明光軸100ax及びx軸を含む仮想平面を境界面として、当該仮想平面よりも下側(y(−)側)の中央領域A2には増透過膜74が形成されており、当該仮想平面よりも上側(y(+)側)の中央領域A2には増透過膜74が形成されていない構成としてもよい。
【0128】
(3)上記実施形態1及び3に係るプロジェクタ1000,1004においては、光源装置として、発光管20に副鏡60が配設されていない光源装置110,110Cを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、実施形態2に係るプロジェクタ1002のように副鏡が配設された光源装置を用いてもよい。
【0129】
(4)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004においては、リフレクタとして、楕円面リフレクタを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、放物面リフレクタも好ましく用いることができる。
【0130】
(5)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004においては、光均一化光学系として、レンズアレイからなるレンズインテグレータ光学系を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ロッド部材からなるロッドインテグレータ光学系をも好ましく用いることができる。
【0131】
(6)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004は透過型のプロジェクタであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は反射型のプロジェクタにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶装置等のように光変調手段としての電気光学変調装置が光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、反射型の液晶装置等のように光変調手段としての電気光学変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。反射型のプロジェクタにこの発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクタと同様の効果を得ることができる。
【0132】
(7)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004においては、3つの液晶装置400R,400G,400Bを用いたプロジェクタを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶装置を用いたプロジェクタにも適用可能である。
【0133】
(8)上記各実施形態に係るプロジェクタ1000〜1004においては、電気光学変調装置として液晶装置を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。電気光学変調装置としては、一般に、画像情報に応じて入射光を変調するものであればよく、マイクロミラー型光変調装置などを利用してもよい。マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)(TI社の商標)を用いることができる。
【0134】
(9)本発明は、プロジェクタをいわゆる据え置き状態で使用する場合にも、プロジェクタをいわゆる天吊り状態で使用する場合にも適用可能である。
【0135】
(10)本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクタに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクタに適用する場合にも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】実施形態1に係るプロジェクタ1000の光学系を示す図。
【図2】光源装置110を説明するために示す図。
【図3】管球部30の外面における各領域及び増透過膜70の形成位置を説明するために示す概念図。
【図4】管球部30の外面における各領域及び増透過膜70の形成位置を説明するために示す概念図。
【図5】管球部30の外面における各領域及び増透過膜70の形成位置を説明するために示す概念図。
【図6】管球部30の外面における各領域及び増透過膜70の形成位置を説明するために示す概念図。
【図7】管球部30から放射される光の配光特性を示す図。
【図8】増透過膜70の分光特性を示す図。
【図9】実施形態2に係るプロジェクタ1002における光源装置110Bを説明するために示す図。
【図10】実施形態3に係るプロジェクタ1004における光源装置110Cを説明するために示す図。
【図11】変形例における増透過膜76の分光特性を示す図。
【符号の説明】
【0137】
10,10B…楕円面リフレクタ、12,12B…開口部、14,14B…反射凹面、20…発光管、30…管球部、32…上側の頂点部分、34…下側の頂点部分、40,50…封止部、42,52…電極、44,54…金属箔、46,56…リード線、60…副鏡、62…開口部、64…反射凹面、70,72,74…増透過膜、90…凹レンズ、100…照明装置、100ax…照明光軸、110,110B,110C…光源装置、120…第1レンズアレイ、122…第1小レンズ、130…第2レンズアレイ、132…第2小レンズ、140…偏光変換素子、150…重畳レンズ、200…色分離導光光学系、210,220…ダイクロイックミラー、230,240,250…反射ミラー、260…入射側レンズ、270…リレーレンズ、300R,300G,300B…集光レンズ、400R,400G,400B…液晶装置、500…クロスダイクロイックプリズム、600…投写光学系、1000,1002…プロジェクタ、A1…一方の封止部側領域、A2…中央領域、A3…他方の封止部側領域、b1〜b4…境界部、c1…中央領域A2を通る光線H1の見かけ上の発光点、c2…一方の封止部側領域A1を通る光線H2の見かけ上の発光点、H1…中央領域A2を通る光線、H2…一方の封止部側領域A1を通る光線、L1〜L4…境界部b1〜b4と一対の電極の略中間位置Pとを通る直線、N…管球部の外面に対する法線、P…一対の電極の略中間位置、R…一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域、SCR…スクリーン、θ1…直線L3と照明光軸とのなす角度、θ2…直線L1と照明光軸とのなす角度、ω…コーティング物質の飛散方向に平行な軸と管球部の外面に対する法線とのなす角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光軸に沿って配置された一対の電極を内蔵する管球部並びに前記管球部の両側に延びる一方の封止部及び他方の封止部を有する発光管と、前記一方の封止部側に配設され、前記発光管からの光を被照明領域側に向けて反射するリフレクタとを有する光源装置と、
前記光源装置からの照明光束を画像情報に応じて変調する電気光学変調装置と、
前記電気光学変調装置によって変調された光を投写する投写光学系とを備えるプロジェクタにおいて、
前記管球部の外面を、前記一方の封止部側に位置する一方の封止部側領域と、前記他方の封止部側に位置する他方の封止部側領域と、前記一方の封止部側領域及び前記他方の封止部側領域の間に位置する中央領域との3つの領域に分けたとき、
前記管球部の外面における前記中央領域には、増透過膜が形成されており、
前記管球部の外面における前記一方の封止部側領域及び前記他方の封止部側領域には、前記増透過膜が形成されておらず、
前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて少なくとも可視域の光透過率を高くする特性を有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて400nm〜1500nmの光透過率を高くする特性を有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記増透過膜は、Ta2O5とSiO2との多層膜で構成されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記発光管は、前記管球部の内面と外面とによるレンズ効果を生じる発光管であり、
前記管球部の外面から放射される光のうち前記一方の封止部側領域を通る光線を前記照明光軸に向けて延長したときの見かけ上の発光点は、前記一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域内に存在しないことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記中央領域における前記管球部の外面に対する法線と前記照明光軸に直交する面とがなす角度をωとしたとき、
ω≦45度であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記中央領域から放射される光の強度は、前記管球部から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%以上であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記他方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線と、前記光源装置の前記照明光軸とがなす角度をθ1としたとき、
40度<θ1≦55度であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記一方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線と、前記光源装置の前記照明光軸とがなす角度をθ2としたとき、
40度<θ2≦55度であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記光源装置は、
前記管球部における前記被照明領域側の外面を覆うように前記発光管における他方の封止部側に配設され、前記発光管からの光を前記発光管に向けて反射する副鏡をさらに有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項11】
請求項10に記載のプロジェクタにおいて、
前記一方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線は、前記管球部の外面における前記副鏡で覆われている部分と前記管球部の外面における前記副鏡で覆われていない部分との境界部を通ることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記管球部の外面における重力に対して下側の頂点部分を含む領域には、前記増透過膜が形成されており、
前記管球部の外面における重力に対して上側の頂点部分を含む領域には、前記増透過膜が形成されていないことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項1】
照明光軸に沿って配置された一対の電極を内蔵する管球部並びに前記管球部の両側に延びる一方の封止部及び他方の封止部を有する発光管と、前記一方の封止部側に配設され、前記発光管からの光を被照明領域側に向けて反射するリフレクタとを有する光源装置と、
前記光源装置からの照明光束を画像情報に応じて変調する電気光学変調装置と、
前記電気光学変調装置によって変調された光を投写する投写光学系とを備えるプロジェクタにおいて、
前記管球部の外面を、前記一方の封止部側に位置する一方の封止部側領域と、前記他方の封止部側に位置する他方の封止部側領域と、前記一方の封止部側領域及び前記他方の封止部側領域の間に位置する中央領域との3つの領域に分けたとき、
前記管球部の外面における前記中央領域には、増透過膜が形成されており、
前記管球部の外面における前記一方の封止部側領域及び前記他方の封止部側領域には、前記増透過膜が形成されておらず、
前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて少なくとも可視域の光透過率を高くする特性を有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて400nm〜700nmの光透過率を高くする特性を有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記増透過膜は、前記増透過膜が形成されていない部分に比べて400nm〜1500nmの光透過率を高くする特性を有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記増透過膜は、Ta2O5とSiO2との多層膜で構成されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記発光管は、前記管球部の内面と外面とによるレンズ効果を生じる発光管であり、
前記管球部の外面から放射される光のうち前記一方の封止部側領域を通る光線を前記照明光軸に向けて延長したときの見かけ上の発光点は、前記一対の電極を内部に含む円筒状の仮想領域内に存在しないことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記中央領域における前記管球部の外面に対する法線と前記照明光軸に直交する面とがなす角度をωとしたとき、
ω≦45度であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記中央領域から放射される光の強度は、前記管球部から放射される光のうち最も強度の大きな光の強度に対して20%以上であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記他方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線と、前記光源装置の前記照明光軸とがなす角度をθ1としたとき、
40度<θ1≦55度であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記一方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線と、前記光源装置の前記照明光軸とがなす角度をθ2としたとき、
40度<θ2≦55度であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記光源装置は、
前記管球部における前記被照明領域側の外面を覆うように前記発光管における他方の封止部側に配設され、前記発光管からの光を前記発光管に向けて反射する副鏡をさらに有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項11】
請求項10に記載のプロジェクタにおいて、
前記一方の封止部側領域及び前記中央領域の境界部と前記一対の電極の略中間位置とを通る直線は、前記管球部の外面における前記副鏡で覆われている部分と前記管球部の外面における前記副鏡で覆われていない部分との境界部を通ることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のプロジェクタにおいて、
前記管球部の外面における重力に対して下側の頂点部分を含む領域には、前記増透過膜が形成されており、
前記管球部の外面における重力に対して上側の頂点部分を含む領域には、前記増透過膜が形成されていないことを特徴とするプロジェクタ。
【図1】
【図3】
【図7】
【図8】
【図11】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図3】
【図7】
【図8】
【図11】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−108701(P2008−108701A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202617(P2007−202617)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]