説明

プロテインキナーゼの阻害剤として有用なピロロ(3,2−c)ピリジン

本発明は、プロテインキナーゼの阻害剤として有用な式Iの化合物に関する。また、本発明は、前記化合物を含む薬学的に許容可能な組成物および各種疾患、疾病、または障害の治療で組成物を使用する方法も提供する。これらの化合物および薬学的に許容可能なそれらの組成物は、各種疾患、障害、または疾病の治療または予防に有用であり、限定されることなく、自己免疫、炎症性、増殖性もしくは過剰増殖性疾患、免疫介在性疾患、または骨疾患が挙げられる。また、本発明は、本発明の化合物を調製する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物に関する。また、本発明は、本発明の化合物を含む薬学的に許容可能な組成物および各種障害の治療で組成物を使用する方法にも関する。また、本発明は、本発明の化合物を調製する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
新規治療剤の探索は、近年、疾患に関係する酵素およびその他の生体分子の構造が、より理解されたことに大きく助けられてきた。広範な研究の主題になってきた重要な1つの酵素群は、プロテインキナーゼである。
【0003】
プロテインキナーゼは、細胞内のさまざまな信号伝達過程の制御を担う構造的に関連する酵素の大きな族をなす。(Hardie、G.およびHanks、S.、非特許文献1を参照)。プロテインキナーゼは、それらの構造および触媒機能が保存しているため、共通する先祖遺伝子から進化してきたものと考えられている。ほとんどのキナーゼが、類似の250〜300個のアミノ酸の触媒ドメインを含む。キナーゼは、それらがリン酸化する基質によって、族に分類できる(例えば、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/スレオニン、脂質など)。これらのキナーゼ族のそれぞれに一般的に対応する配列モチーフが同定されている(例えば、Hanks、S.K.、Hunter、T.、非特許文献2;Knightonら、非特許文献3;Hilesら、非特許文献4;Kunzら、非特許文献5;Garcia−Bustosら、非特許文献6)。
【0004】
一般に、プロテインキナーゼは、ヌクレオシド三リン酸から信号伝達経路に関与するタンパク質受容体にホスホリルを輸送させることで、細胞内の信号伝達に関与している。これらのリン酸化過程は分子によるオン/オフスイッチの働きをし、標的タンパク質の生物学的機能を変調または調節する。これらのリン酸化過程は、細胞外および他のさまざまな刺激に応答して最終的に開始される。そのような刺激の例としては、環境および化学的なストレスによる刺激(例えば、浸透圧ショック、熱ショック、紫外線照射、バクテリアエンドトキシン、およびH)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子a(TNF−a))、ならびに成長因子(例えば、顆粒球マクロファージ−コロニー−刺激因子(GM−CSF)、および線維芽細胞成長因子(FGF))が挙げられる。細胞外刺激は、細胞の成長、移動、分化、ホルモン分泌、転写因子の活性化、筋収縮、ブドウ糖の代謝、タンパク質合成の制御、および細胞サイクルの調節に関係する1つまたは複数の細胞応答に影響する場合がある。
【0005】
多くの疾患が、上で述べたプロテインキナーゼが関与する過程が引き金になる異常な細胞応答に関係している。これらの疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝性疾患、神経系もしくは神経変性疾患、癌、循環器疾患、アレルギーおよび喘息、アルツハイマー病、ならびにホルモンが関連する疾患を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。したがって、治療薬として有効なプロテインキナーゼ阻害剤を発見するために、多大な医化学的努力がなされてきた。
【0006】
特に興味が持たれているキナーゼ族の1つは、Src族のキナーゼである。これらのキナーゼは、癌、免疫系の機能不全および骨再造形疾患に関係している。一般的な概説については、ThomasおよびBrugge、非特許文献7;LawrenceおよびNiu、非特許文献8および非特許文献9;Boschelliら、非特許文献10を参照。
【0007】
Src族のメンバーとしては、哺乳動物において以下の8つのキナーゼが挙げられる:Src、Fyn、Yes、Fgr、Lyn、Hck、LckおよびBlk。これらは、52〜62kDの分子量範囲の非受容体タンパク質キナーゼである。全ては、共通の構造組織で特徴付けられ、6個の異なる機能的ドメインから構成される:Src相同性ドメイン4(SH4)、固有ドメイン、SH3ドメイン、SH2ドメイン、触媒ドメイン(SH1)、およびC末端調節領域。Tatosyanら、非特許文献11。
【0008】
公開された研究に基づいて、Srcキナーゼは、種々のヒトの疾患に対する潜在的な治療標的と考えられている。Srcが欠失したマウスは、大理石骨病に罹るか、破骨細胞による骨吸収が抑制されるために、骨が構築される。このことは、異常に高い骨吸収から生じる骨粗鬆症が、Srcを阻害することにより治療できることを示唆している。Sorianoら、非特許文献12およびSorianoら、非特許文献13。
【0009】
関節炎による骨の破壊の抑制は、リウマチ様滑膜細胞および破骨細胞において、CSKの過剰発現により達成された。Takayanagiら、非特許文献14。CSK、またはC末端Srcキナーゼは、リン酸化を行い、これによってSrcの触媒活性を阻害する。このことは、Srcを阻害することで、関節リウマチに罹っている患者に特徴的である関節破壊を防止し得ることを暗示している。Boschelliら、非特許文献15。
【0010】
また、Srcは、B型肝炎ウイルスの複製において一定の役割を果たす。ウイルス様にコードされた転写因子HBxは、ウイルスの増殖に必要な工程において、Srcを活性化する。Kleinら、非特許文献16、およびKleinら、非特許文献17。
【0011】
多数の研究が、Srcの発現を、大腸癌、乳癌、肝臓癌および膵臓癌、ある種のB細胞白血病およびリンパ腫などの癌と結び付けている。Talamontiら、J. Clin. Invest.1993年、91巻、53頁;Lutzら、Biochem. Biophys. Res.1998年243巻、503頁;Rosenら、J. Biol. Chem.1986年、261巻、13754頁;Bolenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1987年、84巻、2251頁;Masakiら、Hepatology 1998年、27巻、1257頁;Biscardiら、Adv. Cancer Res. 1999年、76巻、61頁;Lynchら、Leukemia 1993年、7巻、1416頁。さらに、卵巣および大腸の腫瘍細胞で発現されたアンチセンスSrcは、腫瘍の成長を阻害することが明らかとなっている。Wienerら、Clin.Cancer Res.、1999年、5巻,2164頁;Staleyら、Cell Growth Diff.1997年、8巻、269頁。
【0012】
また、他のSrc族キナーゼも潜在的な治療標的である。Lckは、T細胞情報伝達において、一定の役割を果たす。Lck遺伝子を欠いたマウスは、胸腺細胞を発生する能力に乏しい。Lck欠損T細胞は、TCRチロシンリン酸化およびTCRを経由する引続く活性化において著しく損なわれていることが示されている。Strausら、Cell 1992年、70巻、585頁;Chanら、Ann. Rev. Immunol.1994年、12巻、555頁;Weissら、Cell 1994年、76巻、263頁;Hankeら、J. Biol. Chem.1996年、271巻、695頁;Van Oers atら、Immunity 1996年、5巻、429頁。T細胞情報伝達のポジティブなアクチベーターとしてのLckの機能は、Lck阻害剤が自己免疫および炎症性疾患などのT細胞が関与する障害を治療するため、ならびに固形臓器移植拒絶の予防に有用であり得ることを示唆している。Molinaら、Nature、1992年、357巻、161頁;Hankeら、Inflammation Res.1995年、44巻、357頁。Hck、FgrおよびLynは、骨髄性白血球におけるインテグリン情報伝達の重要な媒介物として、同定されている。Lowellら、J.Leukoc.Biol.、1999年、65巻、313頁。したがって、これらのキナーゼ媒介物を阻害することは、炎症を治療するのに有用であり得る。Boschelliら、Drugs of the Future 2000年、25巻(7号)、717頁。
【非特許文献1】The Protein Kinase Facts Book、IおよびII、Academic Press、サンディエゴ市、カリフォルニア州:1995年
【非特許文献2】FASEB J.1995年、9巻、576〜596頁
【非特許文献3】Science 1991年、253巻、407〜414頁
【非特許文献4】Cell 1992年、70巻、419〜429頁
【非特許文献5】Cell 1993年、73巻、585〜596頁
【非特許文献6】EMBO J.、1994年、13巻、2352〜2361頁
【非特許文献7】Annu. Rev. Cell Dev. Biol.1997年、13巻、513頁
【非特許文献8】Pharmacol.Ther.1998年、77巻、81頁;Tatosyanおよび
【非特許文献9】Mizenina、Biochemistry(Moscow)2000年、65巻、49〜58頁
【非特許文献10】Drugs of the Future 2000年、25巻(7号)、717頁
【非特許文献11】Biochemistry(Moscow)2000年、65巻、49〜58頁
【非特許文献12】Cell 1992年、69巻、551頁
【非特許文献13】Cell 1991年、64巻、693頁
【非特許文献14】J.Clin.Invest.1999年、104巻、137頁
【非特許文献15】Drugs of the Future 2000年、25巻(7号)、717頁
【非特許文献16】EMBO J.1999年、18巻、5019頁
【非特許文献17】Mol.Cell.Biol.1997年、17巻、6427頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、Src族プロテインキナーゼの阻害剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の化合物、およびそれらの薬学的に許容可能な組成物は、プロテインキナーゼの阻害剤として有用である。幾つかの実施形態では、これらの化合物はSrc族プロテインキナーゼの阻害剤として;幾つかの実施形態では、Lckプロテインキナーゼの阻害剤として有用である。これらの化合物は、本明細書中で定義されるように、式Iまたはそれらの薬学的に許容可能な塩を有する。
【0015】
これらの化合物および薬学的に許容可能なそれらの組成物は、各種疾患、障害、または疾病の治療または予防に有用であり、限定されることなく、自己免疫、炎症性、増殖性もしくは過剰増殖性疾患、免疫介在性疾患、または骨疾患が挙げられる。また、本発明で提供される化合物は、生物学的および病理学的現象におけるキナーゼの研究;そのようなキナーゼが関与する細胞内の信号伝達経路の研究;ならびに新規なキナーゼ阻害剤の比較評価においても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、式Iの化合物を提供する:
【0017】
【化5】

式中、
は、C1〜6ハロアルキル、Q、または−Z−Qであり;
は、H、ハロ、CN、NO、C1〜4ハロ脂肪族、C3〜6環式脂肪族、またはC1〜6脂肪族であり;
環Aは、O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和単環;またはO、N、およびSから独立に選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和二環であり;
は、H、C1〜6脂肪族、C3〜6環式脂肪族、または−(Y)−Vであり;式中、
nは、0または1であり;
Yは、0〜3個の−NR−、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、または−SO−で場合により置き換えられている非置換のC1〜6脂肪族であり;
は、C3〜6環式脂肪族、ハロ(C1〜4脂肪族)、3〜6員のヘテロシクリル、ハロ、NO、CN、OH、OR”、SH、SR”、NH、NHR”、N(R”)、COH、COR”、COH、COR”、CONH、CONHR”、CONR”、OCOR”、OCONH、OCONHR”、OCON(R”)、NHCOR”、NR”COR”、NHCOR”、NR”COR”、NHCOH、NR”COH、NHCONH、NHCONHR”、NHCON(R”)、SONH、SONHR”、SON(R”)、NHSOR”、またはNR”SOR”であり;
R”は、非置換のC1〜4脂肪族であり;
は、0〜3個の−NR−、−O−、−S−、−C(O)−、−C(=NR)−、−C(=NOR)−、−SO−、または−SO−で場合により置き換えられているC1〜6脂肪族であり;各Tは、場合により0〜2個のJで置換されており;
は、H;0〜2個のO、N、およびSで場合により置き換えられているC1〜6脂肪族;O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和単環;またはO、N、およびSから独立に選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和二環であり;各Rは、場合により0〜5個のJで置換されており;
は、Hまたはハロであり;
Zは、0〜3個の−NR−、−O−、−S−、−C(O)−、−C(S)−、−C(=NR)−、−C(=NOR)−、−SO−、または−SO−で場合により置き換えられているC1〜6脂肪族であり;各Zは、場合により0〜2個のJで置換されており;
Qは、H;C1〜6脂肪族;O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和単環;またはO、N、およびSから独立に選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和二環であり;各Qは、場合により0〜5個のJで置換されており;
各Jは、独立に、H、ハロ、C1〜6脂肪族、C3〜6環式脂肪族、NO、CN、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)であり;
は、Mまたは−Y−Mであり;
各Yは、独立に、0〜3個の−NR−、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、または−SO−で場合により置き換えられている非置換のC1〜6脂肪族であり;
各Mは、独立に、H、C1〜6脂肪族、C3〜8環式脂肪族、ハロ(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、3〜8員のヘテロシクリル、ハロ、NO、CN、OH、OR’、SH、SR’、NH、NHR’、N(R’)、COH、COR’、COH、COR’、CONH、CONHR’、CONR’、OCOR’、OCONH、OCONHR’、OCON(R’)、NHCOR’、NR’COR’、NHCOR’、NR’COR’、NHCOH、NR’COH、NHCONH、NHCONHR’、NHCON(R’)、SONH、SONHR’、SON(R’)、NHSOR’、NR’SOR’、POR’、POR’、PO(R’)、またはPO(OR’)であり;
は、Mまたは−Y−Mであり;
各Yは、独立に、0〜3個の−NR−、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、または−SO−で場合により置き換えられている非置換のC1〜6脂肪族であり;
各Mは、独立に、H、C1〜6脂肪族、C3〜8環式脂肪族、ハロ(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、3〜8員のヘテロシクリル、5〜6員のヘテロアリール、フェニル、ハロ、NO、CN、OH、OR’、SH、SR’、NH、NHR’、N(R’)、COH、COR’、COH、COR’、CONH、CONHR’、CONR’、OCOR’、OCONH、OCONHR’、OCON(R’)、NHCOR’、NR’COR’、NHCOR’、NR’COR’、NHCOH、NR’COH、NHCONH、NHCONHR’、NHCON(R’)、SONH、SONHR’、SON(R’)、NHSOR’、NR’SOR’、POR’、POR’、PO(R’)、またはPO(OR’)であり;
各MおよびMは、独立におよび場合により、0〜5個のJで置換されており、
Rは、Hまたは非置換のC1〜6脂肪族であり;
R’は、非置換のC1〜6脂肪族であるか;または、2個のR’基が、それらが結合している原子と一緒になって、O、N、およびSから独立に選択される0〜1個のヘテロ原子を有する非置換で3〜8員の非芳香族単環を形成しており;
各JおよびJは、独立に、H、ハロ、C1〜6脂肪族、C3〜6環式脂肪族、NO、CN、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、COH、−CO(C1〜4脂肪族)、CONH、CONH(C1〜4脂肪族)、CON(C1〜4脂肪族)、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)である。
【0018】
幾つかの実施形態において、環Aは、
【0019】
【化6】

ではなく、式中、Cyは任意の環式部分であり;
Qが、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する場合により置換されている5員の飽和環である場合、Jは−(CH−PO(OR)ではなく、式中、
qは、0または1であり、および
Rは、Hまたは非置換のC1〜6脂肪族であり;
およびRの両方がHの場合、環Aは
【0020】
【化7】

ではない。
【0021】
これらの化合物、および薬学的に許容可能なそれらの組成物は、高カルシウム血症、骨粗鬆症、変形性関節症、癌、骨転移の症状処置、パジェット病、移植拒絶などの自己免疫疾患、アレルギー、関節リウマチ、および白血病が挙げられる各種の障害の重篤性を治療または低減するのに有用である。
【0022】
本発明の化合物は上に一般的に記載したものを含み、本明細書中で開示する種別、亜種別、および種類によってさらに説明される。本明細書中で使用される場合、他に示さない限り、以下の定義が適用される。本発明の目的のため、化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics、第75版に記載されているCAS版の元素周期表に従う。加えて、有機化学の一般原則は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito:1999年、および「March’s Advanced Organic Chemistry」、第5版:Smith,M.B.およびMarch,J.編集、John Wiley & Sons、New York:2001年に記載されており、その全内容が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0023】
本明細書中で記載される場合、原子の数の特定の範囲は、その中の任意の整数を含む。例えば、1〜4個の原子を有する基は、1個、2個、3個、または4個の原子を含んでよい。
【0024】
本明細書中で記載される場合、本発明の化合物は、上で一般的に説明されるように、または本発明の特定の種別、亜種別、および種類によって例示されるように、1個または複数の置換基で場合により置換されていてもよい。語句「場合により置換されている」は、語句「置換されているかまたは非置換の」と相互交換的に使用されることが分かるであろう。一般に、用語「置換されている」は、この語句の前に用語「場合により」が有る無しに関わらず、ある構造中の水素基が、特定の置換基の基で置き換えられていることについて言及している。他に示されない限り、場合により置換されている基は、その基の置換可能な各位置に置換基を有することができ、および任意のある構造中の1箇所より多い位置が、特定の基から選択される1個より多い置換基で置換されていてもよい場合、全ての位置の置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。本発明が想定する置換基の組合せは、好ましくは、安定または化学的に実現可能な化合物を形成する結果となるようなものである。
【0025】
用語「安定な」は、本明細書中で使用される場合、それらを製造、検出、回収、精製するため、および本明細書中で開示する1つまたは複数の目的のために使用する条件に曝されても実質的に変化しない化合物について言及する。幾つかの実施形態において、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物とは、水分または他の化学的に反応性を示す条件がない状態で、40℃以下の温度に少なくとも1週間置いた場合に、実質的に変化しないものである。
【0026】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書中で使用される場合、完全に飽和しているか、または分子の残りの部分とただ1箇所で結合する不飽和の単位を1個もしくは複数含み、直鎖状(即ち、分岐していない)または分枝状の、置換または非置換の炭化水素鎖を意味する。他に示されない限り、脂肪族基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。幾つかの実施形態において、脂肪族基は1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施形態においては、脂肪族基は1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態においては、脂肪族基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含み、およびさらに別の実施形態において、脂肪族基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。適切な脂肪族基として、限定されることなく、直線状または分枝状、置換または非置換のアルキル、アルケニル、またはアルキニル基が挙げられる。特定の例として、限定されることなく、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、sec−ブチル、ビニル、n−ブテニル、エチニル、およびtert−ブチルが挙げられる。
【0027】
用語「環式脂肪族」(または「炭素環」または「カルボシクリル」または「環式アルキル」)は、完全に飽和しているかまたは分子の残りの部分とただ1箇所で結合する芳香族ではない不飽和の単位を1個もしくは複数含む単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C12炭化水素について言及しており、但し、前記二環系中の任意の個々の環は、3〜7員を有する。適切な環式脂肪族基として、限定されることなく、環式アルキルおよび環式アルケニル基が挙げられる。特定の例として、限定されることなく、シクロヘキシル、シクロプロペニル、およびシクロブチルが挙げられる。
【0028】
用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、または「複素環式」は、本明細書中で使用される場合、非芳香族式、単環式、二環式、または三環式の環構造を意味し、1個または複数の環員は独立に選択されるヘテロ原子である。幾つかの実施形態では、「複素環」、「ヘテロシクリル」、または「複素環式」基は3〜14個の環員を有し、1個または複数の環員が酸素、硫黄、窒素、またはリンから独立に選択されるヘテロ原子であり、および構造中の各環は3〜7個の環員を有する。
【0029】
適切な複素環としては、限定されることなく、3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンズイミダゾール−2−オン、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアン、および1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オンが挙げられる。
【0030】
環式基、(例えば、環式脂肪族および複素環)、は、線状に縮合、橋架け、またはスピロ環式でもよい。
【0031】
用語「ヘテロ原子」は、1個もしくは複数の酸素、硫黄、窒素、リン、または珪素を意味する(窒素、硫黄、リン、もしくは珪素の任意の酸化された形態;任意の塩基性窒素の四級化された形態または;複素環の置換可能な窒素、例えば、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルの場合)、NH(ピロリジニルの場合)もしくはNR(N置換したピロリジニルの場合)を含む)。
【0032】
用語「不飽和」は、本明細書中で使用される場合、成分が1個または複数の不飽和の単位を有することを意味する。
【0033】
用語「アルコキシ」、または「チオアルキル」は、本明細書中で使用される場合、既に定義された通り、酸素(「アルコキシ」)または硫黄(「チオアルキル」)を介して結合しているアルキル基について言及する。
【0034】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロ脂肪族」、および「ハロアルコキシ」は、場合によって、1個または複数のハロゲン原子で置換された、アルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」、「ハロ」および「ハル」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0035】
単独または「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」におけるようなより大きな部分の一部として使用される用語「アリール」は、合計で5〜14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式の環構造について言及しており、但し、構造中の少なくとも1個の環は芳香族であり、および構造中の各環は3〜7個の環員を含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」と相互交換的に使用できる。用語「アリール」は、以下で定義されるようなヘテロアリール環構造にも言及する。
【0036】
単独または「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」におけるようなより大きな部分の一部として使用される用語「ヘテロアリール」は、合計で5〜14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式の環構造について言及しており、但し、構造中の少なくとも1個の環は芳香族であり、構造中の少なくとも1個の環は1個または複数のヘテロ原子を含んでおり、および構造中の各環は3〜7個の環員を含む。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または用語「ヘテロ芳香族」と相互交換的に使用できる。適切なヘテロアリール環としては、限定されることなく、2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(例えば、3−ピリダジニル)、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(例えば、5−テトラゾリル)、トリアゾリル(例えば、2−トリアゾリルおよび5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例えば、2−インドリル)、ピラゾリル(例えば、2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、プリニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、キノリニル(例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)、ならびにイソキノリニル(例えば、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、または4−イソキノリニル)が挙げられる。
【0037】
用語「保護基」および「保護性基」は、本明細書中で使用される場合、相互交換的であり、複数の反応部位を有する化合物中の1個または複数の所望の官能基を一時的にブロックするのに使用される試薬について言及している。特定の実施形態において、保護基は、以下の特徴の1つもしくは複数の、または好ましくは、全てを有する:a)良好な収率で官能基に選択的に付加して保護された基質を与え、b)1個または複数の他の反応部位で起こる反応に対して安定であり、c)再生され脱保護されていた官能基を攻撃しない試薬により、良好な収率で選択的に除去可能である。当業者によって理解されるであろう通り、幾つかの場合、試薬は化合物中の他の反応性基を攻撃しない。他の場合、試薬は化合物中の他の反応性基と反応する場合もある。保護基の例は、Greene、T.W.、Wuts,P.G、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、John Wiley & Sons、New York:1999年(およびその本の他の版)に詳述されており、その全内容が参照により本明細書中に組み込まれる。用語「窒素保護基」は、本明細書中で使用される場合、多官能性化合物中の1個または複数の所望の窒素反応部位を一時的にブロックするのに使用される試薬について言及している。好ましい窒素保護基も上で例示した特徴を有し、および特定の例証的な窒素保護基もGreene、T.W.、Wuts,P.G、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第3版、John Wiley & Sons、New York:1999年の第7章に詳述されており、その全内容が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0038】
幾つかの実施形態において、アルキルまたは脂肪族鎖は、場合によりもう1つの原子または基で置き換えられていてもよい。これは、アルキルまたは脂肪族鎖のメチレン単位が場合により前記他の原子または基で置き換えられていることを意味する。そのような原子または基の例としては、限定されることなく、−NR−、−O−、−C(O)−、−C(=N−CN)−、−C(=NR)−、−C(=NOR)−、−S−、−SO−、または−SO−が挙げられる。これらの原子または基を合わせて、より大きい基を形成することもできる。そのような基の例としては、限定されることなく、−OC(O)−、−C(O)CO−、−CO−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)−、−NRCO−、−NRC(O)O−、−SONR−、−NRSO−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、および−NRSONR−が挙げられ、但し、Rは本明細書中で定義される通りである。
【0039】
他に特定しない限り、場合により成される置き換えは、化学的に安定な化合物を形成する。場合により成される置き換えは、鎖中および鎖の一方の末端の両方で起きることができる;即ち、結合点においておよび/またはさらに末端においての両方である。結果として化学的に安定な化合物であるならば、場合により成される2つの置き換えは、鎖中で互いに隣接できる。
【0040】
場合により成される置き換えが、鎖中の全ての炭素原子を完全に置き換えることもできる。例えば、C脂肪族を、場合により、−NR−、−C(O)−、および−NR−で置き換えることができ、−NRC(O)NR−(尿素)を形成する。
【0041】
他に特定しない限り、置き換えが末端で起きている場合、置き換えの原子は末端上のHに結合している。例えば、−CHCHCHが−O−によって場合により置き換えられている場合、結果として生じる化合物は、−OCHCH、−CHOCH、または−CHCHOHであり得る。
【0042】
他に述べない限り、本明細書中で表される構造は、全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何、配座、および構造の回転型)も含むよう意図されている。例えば、各非対称中心に対するRおよびS立体配置、(Z)および(E)二重結合異性体、および(Z)および(E)配座異性体が、本発明に含まれる。当業者によって理解されるであろう通り、置換基は、任意の回転可能な結合の回りを自由に回転できる。例えば、
【0043】
【化8】

のように描かれる置換基は、
【0044】
【化9】

も表す。
【0045】
したがって、単一の立体化学的異性体のほかに、本化合物のエナンチオマー、ジアステレオマー、幾何、配座、または回転の混合物も本発明の範囲内である。
【0046】
他に述べない限り、本発明の化合物の全ての互変異性型が、本発明の範囲内である。
【0047】
加えて、他に述べない限り、本明細書中で表される構造は、1種または複数種の同位体的に濃縮された原子が存在していることにおいてのみ異なる化合物も含むよう意図されている。例えば、水素が重水素もしくは三重水素で置き換えられているか、または炭素が13C−もしくは14C−濃縮炭素で置き換えられている以外は本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、生物学的アッセイでの分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0048】
本発明のある種の化合物は、治療のために遊離型で、または適切な場合には薬学的に許容可能な塩として存在できることも分かるであろう。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容可能な塩」は、妥当な医学的判断の範囲内で、毒性、刺激、アレルギー反応などがなく、ヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適し、合理的な効果/リスク比に見合う化合物の塩について言及している。
【0050】
薬学的に許容可能な塩は、技術分野でよく知られている。例えば、S.M.Bergeらは、薬学的に許容可能な塩を、J.Pharmaceutical Sciences、1977年、66巻、1〜19頁に詳細に記載し、参照により本明細書中に組み込まれる。本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩として、適切な無機および有機酸ならびに塩基から誘導されるものが挙げられる。これらの塩は、化合物の最終的な単離および精製の際に、その場で調製できる。酸付加塩は、1)精製され塩基を含まない型の化合物を適切な有機または無機酸と反応させおよび2)生成される塩を単離することにより調製できる。
【0051】
薬学的に許容可能な無毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸のような無機酸または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、サクシン酸もしくはマロン酸のような有機酸とでまたはイオン交換法のような技術分野で使用されている他の方法を使用して形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容可能な塩類として、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタン硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタン硫酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パルモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、サクシン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基から誘導される塩として、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウムおよびN(C1〜4アルキル)塩が挙げられる。本発明は、本明細書で開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定している。水溶性または油溶性または分散性生成物を、そのような四級化で得てもよい。
【0052】
塩基付加塩は、1)精製され酸型の化合物を適切な有機または無機塩基と反応させおよび2)生成される塩を単離することにより調製できる。塩基付加塩として、アルカリまたはアルカリ土類金属塩が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩として、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらに薬学的に許容可能な塩として、適切な場合、ハライド、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩のような対イオンを使用して形成される、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンカチオンが挙げられる。本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容可能な酸または塩基付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において、それら自身は薬学的に許容可能でないにも関わらず、他の酸および塩基を使用する場合もある。
【0053】
以下の略語を使用する:
Pd(PPh テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
dba ジベンジリデンアセトン
BINAP 2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル
TsCl パラ−トルエンスルホニルクロリド
N,N−DMF N,N−ジメチルホルムアミド
EtOAc 酢酸エチル
PE 石油エーテル
DMSO ジメチルスルホキシド
TCA トリクロロ酢酸
ATP アデノシン三リン酸
Ac アセチル
Ph フェニル
Me メチル
NaOtBu ナトリウムtert−ブトキシド
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルフォン酸
BSA ウシ血清アルブミン
DTT ジチオスレイトール
NMR 核磁気共鳴
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー−質量分析
Rt 保持時間
本発明の幾つかの態様において、RはHである。
【0054】
他の態様において、RはQである。
【0055】
本発明の一態様において、Qは、O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和、または完全不飽和単環である。幾つかの実施形態において、Qは、O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環である。他の実施形態において、Qは、0個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環である。幾つかの実施形態において、Qはシクロヘキシルまたはシクロペンチルである。
【0056】
本発明の別の態様において、Jは3〜8員のヘテロシクリルである。幾つかの実施形態において、Jは1〜2個の窒素原子を含む6員のヘテロシクリルである。
【0057】
本発明の一態様において、環Aは完全不飽和(即ち、芳香族)である。もう一態様において、環Aは部分不飽和または飽和である。幾つかの実施形態において、環Aは単環である。他の実施形態において、環Aは二環である。幾つかの実施形態において、環Aは5員環である。他の実施形態において、環Aが6員環である。
【0058】
本発明の幾つかの態様において、−T−Rはメタまたはパラ置換されている。他の態様において、Tは−C(O)NR−または−NRC(O)−である。
【0059】
幾つかの実施形態において、RはHである。
【0060】
本発明の一態様によれば、RはO、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和単環;またはO、N、およびSから独立に選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和二環である。幾つかの実施形態において、Rは完全不飽和(即ち、芳香族)である。他の実施形態において、Rは部分不飽和または飽和である。
【0061】
本発明のもう一態様によれば、Rは、H、ハロ、C1〜6脂肪族、C3〜6環式脂肪族、NO、CN、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、CONH、CONH(C1〜4脂肪族)、CON(C1〜4脂肪族)、COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)である。
【0062】
1つの実施形態は、以下の化合物を与える。
【0063】
【化10】

一般的合成方法。
【0064】
本発明の化合物は、下の一般的なスキーム、および続きの調製実施例で表されるような方法により、一般的に調製できる。
【0065】
スキーム1
【0066】
【化11】

試薬および条件:(i)RNH、熱、(ii)NIS、(iii)
【0067】
【化12】

、Pd(0)、KCO
【0068】
上のスキーム1は、RおよびRが本明細書中で記載されるような本発明の化合物Iを調製するために使用される一般的な合成経路を示す。式Iの化合物は、中間体1より調製できる(C. Thibaultら、Org. Lett.2003年、5巻、5023〜5026頁中に記載されるように調製)。誘導体2の形成は、中間体1を対応するアミンで処理して達成される。その反応は、各種の置換されたアミンR−NH2に相応する。NISを使用して2をヨウ素化することで3の形成に至り、それを当該技術でよく知られている鈴木カップリング法を使用してボロン酸誘導体と反応させることができ、式Iの化合物を得る。その反応は、各種のアリールボロン酸誘導体
【0069】
【化13】

に相応する。
【0070】
スキーム2
【0071】
【化14】

試薬および条件:(i)マロン酸、ピペリジン、(ii)2等量NaH、次いでTsCl、(iii)ClCOEt、NaN、(iv)
【0072】
【化15】

、Pd(0)、KCO、(v)NaOH、(vi)POCl、(vii)NaH、次いでRX、(viii)NH
【0073】
上のスキーム2は、RおよびRが本明細書中で記載されるような本発明の化合物Iを調製するために使用される一般的な合成経路を示す。式Iの化合物は、中間体5より調製できる(D. Montiら、Gazz. Chim. Ital.1990年、120巻、771頁中に記載されるように調製)。誘導体6の形成は、中間体5をピペリジン存在下マロン酸で処理して達成される。次いで、化合物6を対応するアシルアジドに転化し、および加熱してクルチウス転位反応させる。引き続いて、トシル化された誘導体として窒素を臭素化および保護して、化合物7を得る。化合物7は、当該技術でよく知られている鈴木カップリング法を使用してボロン酸誘導体と反応させることができる。その反応は、各種のアリールボロン酸誘導体に相応する。工程(vi)により、化合物8を脱保護およびPOClと反応し、塩化物誘導体9を得る。誘導体9は各種のRX誘導体(但し、Xはハロゲン)と反応させることができ、化合物10を生成する。最終的に、化合物10をアンモニアで処理して、式Iの化合物を形成する。
【0074】
スキーム3
【0075】
【化16】

試薬および条件:(i)MnO/THF(ii)NBS、CHCl、(iii)p−TsCl、KCO、DMF(iv)
【0076】
【化17】

、水性KCO、Pd(PPh、(v)水性NaOH、MeOH(vi)NaH、次いでRX、DMF(vii)PhC=NH、NaOtBu、Pd(dba)、BINAP(viii)NHOH、HCl。
【0077】
上のスキーム3は、Rおよび
【0078】
【化18】

が本明細書中で記載されるような本発明の化合物Iを調製するために使用される一般的な合成経路を示す。式Iの化合物は、中間体11より調製できる。誘導体12の形成は、中間体11をMnOで酸化後、NBSを使用して臭素化することで達成される。次いで、化合物12を対応するトシレート誘導体13に転化する。化合物13は、当該技術でよく知られている鈴木カップリング法を使用してボロン酸誘導体と反応させることができる。その反応は、各種のアリールボロン酸誘導体に相応する。引き続いて化合物13を脱保護し、誘導体9を得る。スキーム2中で記載されるように、誘導体9は各種のRX誘導体(但し、Xはハロ)と反応させることができ、化合物10を生成する。最終的に、化合物10をアンモニアで処理して、式Iの化合物を形成する。
【0079】
本発明は、プロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物および組成物を提供する。幾つかの実施形態において、プロテインキナーゼはSrc族キナーゼである。幾つかの実施形態において、Lckである。
【0080】
プロテインキナーゼの阻害剤として、本発明の化合物および組成物は、疾患、疾病、または障害の重篤性を治療または低減するのに特に有用であり、そこでは、プロテインキナーゼが疾患、疾病、または障害に関係している。一態様において、本発明は、疾患、疾病、または障害の重篤性を治療または低減するための方法を提供し、そこでは、プロテインキナーゼが疾患状態に関係している。もう一態様において、本発明は、疾患、疾病、または障害の重篤性を治療または低減するための方法を提供し、そこでは、酵素活性の阻害が疾患の治療に関係している。もう一態様において、本発明は、プロテインキナーゼに結合することで酵素活性を阻害する化合物により、疾患、疾病、または障害の重篤性を治療または低減するための方法を提供する。もう一態様は、プロテインキナーゼの阻害剤によりキナーゼの酵素活性を阻害することにより、キナーゼ性の疾患、疾病、または障害の重篤性を治療または低減するための方法を提供する。
【0081】
幾つかの実施形態において、前記プロテインキナーゼの阻害剤はSrc族キナーゼの阻害剤である。幾つかの実施形態において、前記プロテインキナーゼの阻害剤はLckキナーゼの阻害剤である。
【0082】
プロテインキナーゼの阻害剤として、本発明の化合物および組成物は、生物学的試料としても有用である。本発明の一態様は生物学的試料中においてプロテインキナーゼ活性を阻害することに関し、その方法は前記生物学的試料を式Iの化合物または前記化合物を含む組成物と接触されることを含む。用語「生物学的試料」は、本明細書中で使用される場合、生体内(in vivo)ではなく生体外(in vitroまたはex vivo)などの試料を意味し、細胞培養物もしくはそれの抽出物;哺乳動物もしくはその抽出物から得た生検材料;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液、または他の体液もしくはそれらの抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
生物学的試料中におけるプロテインキナーゼ活性の阻害は、当業者に既知の種々の目的に有用である。そのような目的の例として、輸血、臓器移植、および生物学的試料の保管が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明のもう一態様は、生物学的および病理学的現象におけるプロテインキナーゼの研究;そのようなプロテインキナーゼが関与する細胞内の信号伝達経路の研究;ならびに新規なプロテインキナーゼの阻害剤の比較評に関する。そのような使用の例として、酵素アッセイおよび細胞をベースとするアッセイなどの生物学的アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
プロテインキナーゼの阻害剤としての化合物の活性は、生体外、生体内または細胞系内でアッセイできる。生体外アッセイとして、活性化されたキナーゼのキナーゼ活性またはATPase活性のいずれかの阻害を決定するアッセイが挙げられる。別の生体外アッセイではプロテインキナーゼに結合する阻害剤の能力を定量し、結合前に阻害剤を放射線標識し、阻害剤/キナーゼ複合体を単離し、および結合した放射線標識の量を決定するか、または、既知の放射線リガンドに結合したキナーゼと共に新規の阻害剤をインキュベートする競合的実験を実施することで測定できる。
【0086】
本発明のもう一態様は、疾患、障害、および疾病の治療に有用な化合物を提供し、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性および過剰増殖性疾患、免疫介在性疾患、骨疾患、代謝性疾患、循環器疾患、ホルモンが関連する疾患、アレルギー、喘息、ならびにアルツハイマー病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
例えば、本発明は呼吸器疾患の治療に有用な化合物を提供し、気管支、アレルギー性、内因性、外因性および塵埃喘息、特に、慢性または習慣的な喘息(例えば、遅発性喘息、気道化敏症)などの喘息ならびに気管支炎が挙げられる可逆性閉塞性気道疾患が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる疾患として、急性鼻炎、アレルギー性、アトピー性鼻炎ならびに胎脂性鼻炎、肥厚性鼻炎、化膿性鼻炎、乾燥性鼻炎および薬剤性鼻炎が挙げられる慢性鼻炎;クループ性、線維素性および偽膜性鼻炎が挙げられる膜性鼻炎ならびに腺病性鼻炎、神経性(枯草熱)および血管神経性鼻炎が挙げられる季節性鼻炎、サルコイドーシス、農夫肺および関連する疾患、肺線維症ならびに突発性間質性肺炎が挙げられる鼻粘膜の炎症で特徴付けられる疾病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明のもう一態様は、骨および関節の疾患の治療に有用な化合物を提供し、関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎およびライター病が挙げられる)、ベーチェット病、シェーグレン症候群、および全身性硬化症(systernic sclerosis)(におけるパンヌス形成)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本発明のもう一態様は、他の組織および全身性疾患の疾患および障害の治療に有用な化合物を提供し、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、後天性免疫不全症侯群(AIDS)、紅斑性狼瘡、全身性狼瘡、エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型糖尿病、ネフローゼ症候群、好酸球増加性筋膜炎、高IgE症候群、らい腫らい、セザリー症候群および特発性血小板減少性紫斑病、血管形成後再狭窄、腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫)、アテローム性動脈硬化症、ならびに全身性紅斑性狼瘡が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
本発明のもう一態様は同種移植拒絶に有用な化合物を提供し、例えば、腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚および角膜の移植の後の急性および慢性同種移植拒絶;ならびに慢性移植片対宿主病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
本発明のもう一態様は、自己免疫疾患、炎症性疾患、癌などの増殖性もしくは過剰増殖性疾患、免疫介在性疾患、骨疾患、代謝性疾患、神経系もしくは神経変性疾患、循環器疾患、アレルギー、喘息、アルツハイマー病、またはホルモン関連疾患から選択される疾患の重篤性を治療または低減する方法を提供し、化合物、または化合物を含む薬学的に許容可能な組成物を、それを必要とする被検体に投与することを含む。
【0092】
用語「癌」として以下の癌が挙げられるが、これらに限定されない:乳;卵巣;頸部;前立腺;精巣、尿生殖器管;食道;咽喉、神経膠芽細胞腫;神経芽細胞腫;胃;皮膚、角化棘細胞腫;肺、類表皮腫、大細胞癌、小細胞癌、肺腺;骨;結腸、腺腫;膵臓、腺癌;甲状腺、濾胞状癌、未分化細胞癌、乳頭状癌;精上皮腫;黒色腫;肉腫;膀胱癌;肝臓癌および胆管;腎臓癌;骨髄性障害;リンパ障害、ホジキン病、毛様細胞;口腔前庭および咽頭(口腔)、口唇、舌、口、咽喉;小腸;結腸直腸、大腸、直腸;脳および中枢神経系;ならびに白血病。
【0093】
ある種の実施形態において、化合物または薬学的に許容可能な組成物の「有効量」とは、前記疾患を治療するために有効な量である。その化合物および組成物は、本発明の方法によれば、前記疾患の重篤性を治療または低減するのに有効な任意の量および投与法を使って投与できる。
【0094】
幾つかの実施形態において、前記疾患は、増殖性障害、神経変性障害、自己免疫障害、および炎症性障害、および免疫介在性障害から選択される。幾つかの実施形態において、前記疾患は、高カルシウム血症、再狭窄、骨粗鬆症、変形性関節症、骨転移の症状処置、関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、狼瘡、移植片対宿主病、T細胞介在性過敏性疾患、橋本甲状腺炎、ギラン−バレー症候群、慢性閉塞性肺障害、接触性皮膚炎、癌、パジェット病、喘息、虚血性または再潅流傷害、アレルギー性疾患、アトピー性皮膚炎、およびアレルギー性鼻炎から選択される。Src活性により影響される疾患として、特に、高カルシウム血症、骨粗鬆症、変形性関節症、癌、骨転移の症状処置、およびパジェット病が挙げられる。他の実施形態において、前記疾患は、高カルシウム血症、骨粗鬆症、変形性関節症、または骨転移の症状処置から選択される。
【0095】
さらに他の実施形態において、前記疾患はプロテインキナーゼ介在性疾病である。幾つかの実施形態において、前記疾患はSrc介在性またはLck介在性疾患である。
【0096】
用語「プロテインキナーゼ介在性疾病」は、本明細書で使用される場合、プロテインキナーゼが一定の役割を演じている任意の疾患または他の有害な疾病を意味する。そのような疾病として、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性および過剰増殖性疾患、免疫介在性疾患、骨疾患、代謝性疾患、神経系および神経変性疾患、循環器疾患、ホルモン関連疾患、アレルギー、喘息、ならびにアルツハイマー病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
用語「Src介在性またはLck介在性疾患」、本明細書で使用される場合、SrcまたはLckが一定の役割を演じていることが知られている任意の疾患または他の有害な疾病を意味する。したがって、これらの化合物は、1種類以上のSrc族キナーゼの活性により影響される疾患または疾病を治療するのに有用である。そのような疾患または疾病として、高カルシウム血症、再狭窄、骨粗鬆症、変形性関節症、骨転移の症状処置、関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、狼瘡、移植片対宿主病、T細胞介在性過敏性疾患、橋本甲状腺炎、ギラン−バレー症候群、慢性閉塞性肺障害、接触性皮膚炎、癌、パジェット病、喘息、虚血性または再潅流傷害、アレルギー性疾患、アトピー性皮膚炎、およびアレルギー性鼻炎が挙げられる。Src活性により影響される疾患として、特に、高カルシウム血症、骨粗鬆症、変形性関節症、癌、骨転移の症状処置、およびパジェット病が挙げられる。Lck活性により影響される疾患として、特に、自己免疫疾患、アレルギー、関節リウマチ、および白血病が挙げられる。
【0098】
本発明のもう一態様において、薬学的に許容可能な組成物が提供され、これらの組成物は、本明細書中に記載される通りの任意の化合物を含み、場合によって薬学的に許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルを含む。ある実施形態において、これらの組成物は、1種類または複数の追加の治療剤を場合によりさらに含む。
【0099】
本明細書中で記載される場合、本発明の薬学的に許容可能な組成物は、薬学的に許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルを追加的に含み、本明細書中で使用される場合、所望される特定の剤形に適するような、任意および全ての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散補助剤または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、濃化剤または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤などが挙げられる。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1980年)において、薬学的に受容許容な組成物を処方するのに使用される種々の担体およびその調製についての既知の技術が開示されている。任意の望ましくない生物学的効果を生じる、またはそうでない場合、薬学的に許容可能な組成物の任意の他の成分と有害な様式で相互作用するなど、従来の担体媒体が本発明の化合物と適合しない場合を除いて、組成物の使用は本発明の範囲内であると考えられる。
【0100】
薬学的に許容可能な担体として作用し得る物質の幾つかの例として、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミンなどの塩または電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、羊毛脂、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;コーンスターチおよびバレイショスターチなどのスターチ;ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末状トラガント;麦芽;ゼラチン;滑石;ココアバターおよび坐剤蝋などの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油などの油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油および大豆油;プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチルなどのエステル;寒天;マグネシウムヒドロキシドおよびアルミニウムヒドロキシドなどの緩衝剤;アルギン酸;ピロゲンを含まない水;等張性塩水;リンガー溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびに他の非毒性の適合可能なラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤が挙げられ、ならびに着色剤、遊離剤、被覆剤、甘味剤、風味剤および香料、防腐剤および酸化防止剤も、調剤者の判断に従って組成物中に存在し得る。
【0101】
プロテインキナーゼ阻害剤またはそれの薬学的塩を、動物またはヒトに投与するための薬学的組成物中に調剤できる。これらの薬学的組成物はプロテインキナーゼ介在性疾病の治療または予防に有効なプロテイン阻害剤および薬学的に許容可能な担体の一定量を含み、本発明のもう1つの実施形態である。幾つかの実施形態において、前記プロテインキナーゼ介在性疾病は、Src介在またはLck介在性疾病である。
【0102】
治療に必要な化合物の正確な量は被検体によって変化し、種、年齢、被検体の全般的な状態、感染の重篤性、具体的な薬剤、それの投与モードなどに依存する。本発明の化合物は、好ましくは、投与の容易性および用量の一定性のため、用量単位形態に調剤される。「用量単位形態」という表現は、本明細書中で使用される場合、治療される患者に適切な薬物の物理的に独立した単位を意味する。しかし、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で、担当する医師が決定すると理解されるであろう。任意の特定の患者または生体に対する特定の有効用量のレベルは各種の要因に依存し、処置される障害および障害の重篤性;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全般的健康度、性別および食事;投与回数、投与経路、および使用される特定の化合物の排出速度;治療期間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、ならびに医学分野でよく知られている要因などが挙げられる。用語「患者」は、本明細書中で使用される場合、動物を意味し、好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒトである。
【0103】
本発明の薬学的に許容可能な組成物は、ヒトおよび他の動物に対して、経口、経直腸、非経口、嚢内、膣内、腹腔内、局所的(散剤、軟膏、または滴剤による)、経口または鼻腔スプレーとして口腔などで投与でき、治療される感染の重篤性に依存する。ある実施形態において、所望の治療効果を得るため、本発明の化合物を、被検体の体重1kg当たり1日当たり約0.01mg〜約50mg、および好ましくは、約1mgまたは約25mgの用量レベルを、1日に1回または複数回、経口または非経口で投与できる。
【0104】
経口投与のための液剤として、薬学的に許容可能な乳濁液、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性化合物に加え、液剤は技術分野で一般に使用されている不活性希釈剤を含んでいてもよく、例えば、水または他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ、および大豆油、)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの可溶化剤および乳化剤などである。不活性希釈剤に加え、経口組成物は、湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味料、風味剤、ならびに香料などのアジュバントも含んでよい。
【0105】
注射製剤、例えば、無菌で注射可能な水性または油性懸濁液は、既知の技術により、適切な分散剤、湿潤剤および懸濁剤を使用して調剤できる。無菌注射製剤は、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、無毒で非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射溶液、懸濁液または乳濁液でもよい。許容されるビヒクルおよび溶媒のなかで使用可能なものは、U.S.P.に記載の水、リンゲル液、および等張食塩水である。加えて、無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。この目的のために、任意の低刺激性の不揮発性油を使用でき、合成モノまたはジグリセリドが挙げられる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に使用される。
【0106】
注射製剤は、例えば、細菌捕捉濾過器を通して濾過する、または使用前に滅菌水もしくは他の無菌注射媒体に溶解もしくは分散させることができる無菌固形組成物の形で滅菌剤を組み入れることで無菌化することができる。
【0107】
本発明の化合物の効果を延長させるため、しばしば、皮下または筋肉注射からの化合物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶性の低い結晶性または非晶性材料の液体懸濁液を使用することで達成できる。なお、化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、言い換えれば、結晶の大きさおよび結晶の形態に依存する場合がある。代わりに、非経口投与の化合物剤の遅延吸収は、化合物を油性ビヒクルに溶解または懸濁させることで達成される。注射可能なデポー剤は、化合物のマイクロカプセルマトリックスをポリラクチド−ポリグリコライドなどの生分解性高分子中で形成することで作製される。高分子に対する化合物の比および使用する特定の高分子の性質に依存して、化合物の放出速度を制御できる。他の生分解性高分子の例として、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射可能剤は、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに化合物を取り込むことでも調製できる。
【0108】
直腸または膣投与のための組成物は、好ましくは、坐薬で、本発明の化合物と、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは環境温度では固体であるが体温では液体であり、よって、直腸または膣の空洞内では融けて、活性化合物を放出する坐薬用ワックスなどの適切な非刺激性の賦形剤または担体と混合することで調製できる。
【0109】
経口投与のための固体剤形として、カプセル、錠剤、ピル、散剤、および顆粒が挙げられる。そのような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1種類の不活性で薬学的に許容可能な賦形剤または担体と混合され、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムおよび/またはa)スターチ、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、およびアカシアなどのバインダー、c)グリセロールなどの湿潤剤、d)寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカスターチ、アルギン酸、ある種のシリケート、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶液保持剤、f)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよび一ステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、硫酸ラウリルナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤などである。カプセル、錠剤およびピルの場合、剤形は緩衝剤を含むこともできる。
【0110】
同様の型の固体組成物は、乳糖またはミルクシュガーならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用した軟および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤としても使用できる。錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、および顆粒の固体剤形は、腸溶被覆および製薬剤技術でよく知られている他の被覆などの被覆および被殻で調製できる。それらは場合により乳白剤を含んでもよく、および腸管のある部分のみ、または選択的にそこで活性成分を、場合により徐放する組成物でもよい。使用可能な組成物を植え込む例として、高分子物質およびワックスが挙げられる。同様の型の固体組成物は、乳糖またはミルクシュガーならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用した軟および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤としても使用できる。
【0111】
活性化合物は、上記のような1種類または複数の賦形剤と共にマイクロカプセル化された形態でもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、および顆粒の固体剤形は、腸溶被覆、放出制御被覆および製薬剤技術でよく知られている他の被覆などの被覆および被殻で調製できる。そのような固体剤形において、活性化合物を、ショ糖、乳糖またはスターチなどの少なくとも1種類の不活性希釈剤と混合することもできる。そのような剤形は、通常行われるように、不活性希釈剤以外の追加の物質も含んでもよく、例えば、錠剤化潤滑剤およびステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースなどの他の錠剤化補助剤である。カプセル、錠剤およびピルの場合、剤形は緩衝剤を含むこともできる。それらは場合により乳白剤を含んでもよく、および腸管のある部分のみ、または選択的にそこで活性成分を、場合により徐放する組成物でもよい。使用可能な組成物を植え込む例として、高分子物質およびワックスが挙げられる。
【0112】
本発明の化合物を局所または経皮投与するための剤形として、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、粉末、溶液、スプレー、吸入薬または貼布が挙げられる。活性成分を、薬学的に許容可能な担体および任意の必要な防腐剤または緩衝剤と、無菌条件下で必要な場合に混合する。眼科用製剤、点耳剤、および点眼剤も、本発明の範囲内にあると想定する。加えて、本発明は、身体に化合物を制御送達する利点を加える経皮貼布の使用を想定している。そのような剤形は、適切な媒体中に化合物を溶解または調合して作製できる。皮膚を通過する化合物の流量を増加するために、吸収促進剤も使用できる。流速を制御する膜を設けるまたは化合物を高分子マトリクスもしくはゲルに分散させることで、流速を制御できる。
【0113】
本発明の化合物は、薬学的に許容可能な誘導体としても存在できる。
【0114】
「薬学的に許容可能な誘導体」とは、必要とする患者に投与すると、本明細書で他に記載されるような化合物、またはそれの代謝産物もしくは残渣を、直接的または間接的に提供できる付加体または誘導体である。薬学的に許容可能な誘導体の例として、エステルおよびその様なエステルの塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
本発明の化合物に加えて、本発明の化合物の薬学的に許容可能な誘導体またはプロドラッグも、上に示される障害を処置または予防するための組成物中で使用できる。
【0116】
「薬学的に許容可能な誘導体またはプロドラッグ」とは、受容者に投与すると、本発明の化合物またはそれの阻害的に活性な代謝産物もしくは残渣を、直接的または間接的に提供できる、本発明の化合物の任意の薬学的に許容可能なエステル、エステル塩または他の誘導体を意味する。特に好ましい誘導体またはプロドラッグは、本発明の化合物が(例えば、経口投与化合物を血液中により容易に吸収可能にすることによって)患者に投与される場合に本発明の化合物の生物学的利用能を増加するものであるか、または親種に対して生物学的区画(例えば、脳もしくはリンパ系)への親化合物の送達を増強させるものである。
【0117】
本発明の化合物の薬学的に許容可能なプロドラッグとして、エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩およびスルホン酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
これらの薬学的組成物中で使用できる薬学的に許容可能な担体として、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミンなどの塩または電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリルレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、鼻、頬、膣または移植レザバによって投与できる。用語「非経口」として、本明細書中で使用される場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内および頭蓋内の注射または注入技術が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、組成物は、経口、腹腔内または静脈内投与される。
【0120】
本発明の組成物の無菌性注射可能形態は、水性または油性の懸濁液でよい。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当該分野で公知の技術によって調剤できる。無菌性注射可能な調製物は、非毒性で非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌性注射可能な溶液または懸濁液でもよく、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液である。使用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌性の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来使用される。この目的のために、任意の低刺激性の不揮発性油を使用でき、合成モノまたはジグリセリドが挙げられる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸が、オリーブ油またはヒマシ油、特に、それらのポリオキシエチル化形態などの天然の薬学的に許容可能な油と同様に注射可能物の調製に有用である。これらの油溶液または油懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または長鎖アルコール分散剤も含んでよく、カルボキシメチルセルロースまたは薬学的に許容可能な剤形の調剤において一般的に使用される同様の分散剤などであり、乳濁液および懸濁液が挙げられる。Tween、Spanおよび薬学的に許容可能な固体、液体、もしくは他の剤形の製造において一般的に使用される他の乳化剤または生物学的利用能の増加剤などの他の一般的に使用される界面活性剤も、調剤の目的のために使用できる。
【0121】
本発明の薬学的組成物は任意の経口的に許容可能な剤形で経口投与でき、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液が挙げられるが、これらに限定されない。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体として、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられるが、これらに限定されない。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤も、典型的に添加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤として、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液が経口使用のために必要とされる場合、その活性成分は、乳化剤および懸濁剤と混合される。所望により、特定の甘味剤、風味剤または着色剤も添加できる。
【0122】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、直腸投与のために坐剤形態で投与できる。これらは、室温で固体であるが直腸温度で液体であり、したがって、直腸で融解して薬物を放出する適切な非刺激性の賦形剤を薬剤と混合することにより調製できる。そのような材料として、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
本発明の薬学的組成物は局所投与されてもよく、特に、治療の標的が局所適用により容易に接近可能な領域または器官を含む場合であり、眼、皮膚、または腸管下部の疾患が挙げられる。適切な局所調剤は、これらの領域または器官の各々のために容易に調製される。
【0124】
腸管下部のための局所適用は、直腸坐剤調剤(上を参照)または適切な浣腸調剤の状態で有効となり得る。局所的経皮貼布も使用できる。
【0125】
局所適用のために、薬学的組成物は、1種類もしくは複数の担体中に懸濁または溶解された活性成分を含む適切な軟膏中で調剤できる。本発明の化合物の局所投与のための担体として、鉱物油、流動パラフィン、白色鉱油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、薬学的組成物は、1種類もしくは複数の薬学的に許容可能な担体中に懸濁または溶解された活性成分を含む適切なローションまたはクリームの状態で調剤できる。適切な担体として、鉱物油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
眼への使用のために、薬学的組成物は、等張性のpH調整無菌性生理食塩水中の微粉化懸濁液として、または好ましくは、等張性のpH調整無菌性生理食塩水中の溶液として調剤でき、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤を含むかまたは含まない。あるいは、眼への使用のために、薬学的組成物は、ペトロラタムなどの軟膏中で調剤できる。
【0127】
本発明の薬学的組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入によっても投与できる。そのような組成物は、製薬剤分野でよく知られている技術によって調製され、およびベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、生物学的利用能を増加するための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製できる。
【0128】
単一の剤形を生成するために担体材料と混合される場合もあるプロテインキナーゼ阻害剤の量は、治療されるホスト、特定の投与モードによって変化するであろう。好ましくは、これらの組成物を受ける患者に体重1kg当たり1日当たり0.01mg〜100mgの阻害剤の用量を投与できるように、組成物を調剤しなければならない。
【0129】
任意の特定の患者に対する特定の用量および治療投与計画は各種の要因に依存するであろうことも理解されるべきであり、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的健康度、性別、食事、投与回数、排出速度、薬剤の組合せ、ならびに治療する医師の判断および処置される特定の疾患の重篤性が挙げられる。阻害剤の量は、組成物中の特定の化合物にも依存するであろう。
【0130】
もう1つの実施形態によれば、本発明はプロテインキナーゼ介在性疾病(幾つかの実施形態において、SrcもしくはLck介在性疾病)を治療または予防する方法を提供し、患者に上記薬学的組成物の1種類を投与する工程を含む。用語「患者」は、本明細書中で使用される場合、動物を意味し、好ましくは、ヒトである。
【0131】
幾つかの実施形態において、前記方法は、(Lck疾患性)高カルシウム血症、骨粗鬆症、変形性関節症、骨転移の症状処置、または上記の任意の特定の疾患から選択される疾病を治療または予防するために使用される。
【0132】
本発明のもう一態様は患者のプロテインキナーゼの活性を阻害することに関し、その方法は式Iの化合物、または前記化合物を含む組成物を患者に投与することを含む。
【0133】
治療または予防される特定のプロテインキナーゼ介在性疾病によっては、その疾病を治療または予防するために通常投与される追加の薬剤を、本発明の阻害剤と共に投与できる。例えば、増殖性疾患を治療するために、化学療法薬または他の抗増殖薬を本発明のプロテインキナーゼ阻害剤と共に混合できる。
【0134】
これらの追加剤は、プロテインキナーゼ阻害剤を含む化合物または組成物とは別に、複数剤による投与計画の一部として投与できる。あるいは、これらの薬剤を単一の組成物中でプロテインキナーゼ阻害剤と共に混合して、単一の剤形の一部とできる。
【0135】
本発明の化合物は、当業者に既知の方法により一般に調製できる。これらの化合物は既知の方法により分析でき、LCMS(液体クロマトグラフィー質量分析)およびNMR(核磁気共鳴)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物を、これらの実施例によって試験することもできる。下に示す特定の条件は実施例に過ぎず、本発明の化合物を作製、分析、または試験するために使用できる条件の範囲を制限することを意図しないと理解されるべきである。代わりに、本発明は、本発明の化合物を作製、分析、または試験するための当業者に既知の条件も含む。
【実施例】
【0136】
本明細書中で使用される場合、用語「Rt(分)」は、化合物に伴うHPLCの保持時間を分で表している。他に示されない限り、報告される保持時間を得るために利用されるHPLC法は、以下の通りである:
カラム:ACE C8カラム、4.6×150mm
勾配:0〜100%アセトニトリル+メタノール 60:40(20mM リン酸トリス)
流速:1.5mL/分
検出:225nm。
【0137】
質量分析の試料は、エレクトロスプレーイオン化による単一MSモードで操作されるMicroMass Quattro Micro質量分析計で分析される。試料は、クロマトグラフィーを使用して質量分析計中に導入される。
【0138】
H−NMRスペクトルは、Bruker DPX 400装置を使用し、400MHzで記録される。式Iの以下の化合物は、以下の通り調製および分析された。
【0139】
中間体1
【0140】
【化19】

3−ブロモ−4−クロロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン
THF(60mL)中のアミン(2.18g、14.2mmol)の溶液にMnO(7g、80.5mmol)を加え、混合物を加熱して還流させた。5時間後、MnO(3g、34.5mmol)をさらに加え、一晩攪拌し続けた。反応物をセライトに通して濾過し、濃縮して白色固体(1.95g、91%)を得た。
【0141】
インドール(1.48g、9.72mmol)をCH2Cl2(50mL)中に溶解し、0℃まで窒素下で冷却した。N−ブロモコハク酸イミド(1.82g、10.2mmol)を加え、30分後に氷浴を取除き、さらに30分攪拌し続けた。所望の臭化物(1.53g、68%)を濾別し、高真空で乾燥した。MS(ES+)m/e=231。
1H NMR(DMSO)7.48(1H,d),7.80(1H,s),8.00(1H,d)。
【0142】
中間体2
【0143】
【化20】

3−ブロモ−4−クロロ−1−トシル−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン
p−TsCl(1.33g、6.95mmol)をN,N−DMF(35mL)中の炭酸カリウム(3.66g、26.5mmol)およびインドール(1.53g、6.62mmol)に室温で加えた。3時間後、p−TsCl(1.33g、6.95mmol)をさらに加えた。さらに30分攪拌後、反応物を真空下で濃縮し、次いで、水およびEtOAc(少量のTHFおよびMeOHを含む)を加えた。EtOAcで再抽出し、次いで、有機物を塩水で洗浄した。有機物を濃縮すると生成物(2.00g、78%)が白色固体として沈殿し、フリット上に回収した。MS(ES+)m/e=387。1H NMR(DMSO)2.37(3H,s),7.47(2H,d),8.03(2H,d),8.04(1H,d),8.30(1H,d),8.40(1H,s)。
【0144】
中間体3
【0145】
【化21】

4−クロロ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン
トルエン(25mL)およびエタノール(5mL)中の臭化物(554mg、1.44mmol)、Pd(PPh)4(164mg、0.14mmol)、2MのKCO(2.14mL、4.28mmol)、4−フェノキシフェニルボロン酸(399mg、1.86mmol)の混合物を、140℃で1時間マイクロ波加熱した。次いで、反応混合物をEtOAc中に抽出し、乾燥(MgSO)し、濾過および濃縮した。次いで、残渣をシリカプラグに通し(1/1のPE/EtOAcで溶出)、次いで濃縮した。この材料にMeOH(10mL)および2MのNaOH(6mL)を加え、反応フラスコを70℃の油浴に浸けた。40分後、CHClおよび飽和水性NaHCOを加えた。水層を再抽出し、次いで、有機物を合わせて乾燥(MgSO)し、濾過および濃縮した。カラムクロマトグラフィー(EtOAcで溶出)で精製し、標記の化合物(96mg、21%)を得た。MS(ES+)m/e=321。
【0146】
中間体4
【0147】
【化22】

4−クロロ−1−シクロペンチル−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン
NaH(鉱油中の60%分散物;140mg、3.50mmol)を、無水DMF(1.5mL)中のインドール(56mg、0.18mmol)に室温で加えた。10分後、臭化シクロペンチル(264mg、0.18mmol)を加え、次いで、反応混合物を一晩攪拌した。次いで、水、次いでEtOAcを注意深く加え、抽出した。有機層を塩水で洗浄し、次いで乾燥(MgSO4)、濾過および濃縮した。カラムクロマトグラフィー(EtOAc/PE、1/1で溶出)で精製し、標記の化合物(45mg、76%)を得た。MS(ES+)m/e=389。
【0148】
(実施例1)
【0149】
【化23】

1−シクロペンチル−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−4−アミン(I−1)
無水トルエン(5mL)中のBINAP(12.5mg、0.02mmol)、tert−ブトキシドナトリウム(36mg、0.38mmol)、ベンゾフェノンイミン(49mg、0.27mmol)および出発物質である塩化物(52mg、0.13mmol)の混合物に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(6mg、0.007mmol)を窒素下で加え、混合物を110℃まで90分で加熱した。反応混合物を冷却し、次いでEtOAcを用いてセライトを通過させ、次いで濃縮した。残渣をメタノール(8mL)に溶解し、次いで水(2mL)中のヒドロキシルアミン塩酸塩(183mg、2.63mmol)、その後、重炭酸ナトリウム(221mg、2.63mmol)を加え、混合物を3時間攪拌した。有機物を真空下で除去し、次いで、EtOAcおよび塩水を加えた。水層をEtOAcで再抽出し、有機物を合わせて乾燥(MgSO4)し、濾過および濃縮した。分取HPLCによる精製で、白色固体として芳香族アミン(15mg、27%)を得た。MS(ES+)m/e=370。1H NMR(CDCl3)1.72−2.09(6H,m),2.20−2.32(2H,m),4.78(1H,五重線),5.42(2H,br s),6.81(1H,d),7.07−7.12(5H,m),7.17(1H,t),7.41(2H,t),7.44(2H,d),7.72(1H,d). HPLC rt(分): 12.1。
【0150】
(実施例2)
化合物を、ヒトSrcキナーゼの阻害剤として分光学的アッセイを使用して検討した。
【0151】
Src阻害アッセイ:分光学的アッセイ
25mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMgCl、250μMのNADH、3mMのホスホエノールピルビン酸塩、60μg/mLのピルビン酸キナーゼ、21μg/mLの乳酸脱水素酵素、113μMのATPおよび28nMのSrcより成るアッセイ緩衝溶液を調製した。96穴プレート中において、60μLの本溶液に2μLの試験化合物DMSO原液を加え、混合物を10分間30℃で放置して平衡化した。25mMのHEPES(pH7.5)中で調製された10mg/mLのポリGlu,Tyr(4:1)を5μL加えて、酵素反応を開始した。SrcおよびATPのアッセイ終濃度は、それぞれ25nMおよび100μMであった。初速度のデータは、10分にわたり30℃において、Molecular Devices Spectramaxプレート読取機(サニーベール市、カリフォルニア州)を使用し、340nM(NADHの化学量論的消費に対応)における吸光度の変化速度より決定した。各Kiを決定するために、0〜7.5μMの試験化合物濃度範囲にわたる8個のデータ点を2回ずつ得た。Kiの値は、Prismソフトウェアパッケージ(Prism 4.0a、Graphpad Software、サンディエゴ市、カリフォルニア州)を使用し、非線形回帰分析によって、初速度のデータより計算した。
【0152】
化合物I−1は、Ki<1μMでSrcを阻害することが見出された。
【0153】
(実施例3)
化合物を、ヒトLckキナーゼの阻害剤として分光学的アッセイを使用して検討した。
【0154】
Lck阻害アッセイ:分光学的アッセイ
25mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMgCl、250μMのNADH、3mMのホスホエノールピルビン酸塩、43μg/mLのピルビン酸キナーゼ、14μg/mLの乳酸脱水素酵素、560μMのATPおよび67nMのLckより成るアッセイ緩衝溶液を調製した。96穴プレート中において、60μLの本溶液に2μLの試験化合物DMSO原液を加え、混合物を10分間30℃で放置して平衡化した。25mMのHEPES(pH7.5)中で調製された15mg/mLのポリGlu,Tyr(4:1)を5μL加えて、酵素反応を開始した。LckおよびATPのアッセイ終濃度は、それぞれ60nMおよび500μMである。初速度のデータは、10分にわたり30℃において、Molecular Devices Spectramaxプレート読取機(サニーベール市、カリフォルニア州)を使用し、340nM(NADHの化学量論的消費に対応)における吸光度の変化速度より決定した。各Kiを決定するために、0〜7.5μMの試験化合物の化合物濃度範囲にわたる8個のデータ点を2回ずつ得る。Kiの値は、Prismソフトウェアパッケージ(Prism 4.0a、Graphpad Software、サンディエゴ市、カリフォルニア州)を使用し、非線形回帰分析によって、初速度のデータより計算する。
【0155】
化合物I−1は、Ki<1μMでLckを阻害することが見出された。
【0156】
本出願人は、本発明の多くの実施形態について記載したが、本出願人の基本的な実施例は、本発明の化合物、手法、および方法を利用または包含する他の実施形態を提供するために変更できることは明らかである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきだと理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

[式中、
は、C1〜6ハロアルキル、Q、または−Z−Qであり;
は、H、ハロ、CN、NO、C1〜4ハロ脂肪族、C3〜6環式脂肪族、またはC1〜6脂肪族であり;
環Aは、O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和単環;またはO、N、およびSから独立に選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和二環であり;
は、H、C1〜6脂肪族、C3〜6環式脂肪族、または−(Y)−Vであり;式中、
nは、0または1であり;
Yは、0〜3個の−NR−、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、または−SO−で場合により置き換えられている非置換のC1〜6脂肪族であり;
は、C3〜6環式脂肪族、ハロ(C1〜4脂肪族)、3〜6員のヘテロシクリル、ハロ、NO、CN、OH、OR”、SH、SR”、NH、NHR”、N(R”)、COH、COR”、COH、COR”、CONH、CONHR”、CONR”、OCOR”、OCONH、OCONHR”、OCON(R”)、NHCOR”、NR”COR”、NHCOR”、NR”COR”、NHCOH、NR”COH、NHCONH、NHCONHR”、NHCON(R”)、SONH、SONHR”、SON(R”)、NHSOR”、またはNR”SOR”であり;
R”は、非置換のC1〜4脂肪族であり;
は、0〜3個の−NR−、−O−、−S−、−C(O)−、−C(=NR)−、−C(=NOR)−、−SO−、または−SO−で場合により置き換えられているC1〜6脂肪族であり;各Tは、0〜2個のJで場合により置換されており;
は、H;0〜2個のO、N、およびSで場合により置き換えられているC1〜6脂肪族;O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和単環;またはO、N、およびSから独立に選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和二環であり;各Rは、場合により0〜5個のJで置換されており;
は、Hまたはハロであり;
Zは、0〜3個の−NR−、−O−、−S−、−C(O)−、−C(S)−、−C(=NR)−、−C(=NOR)−、−SO−、または−SO−で場合により置き換えられているC1〜6脂肪族であり;各Zは、0〜2個のJで場合により置換されており;
Qは、H;C1〜6脂肪族;O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和単環;またはO、N、およびSから独立に選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和二環であり;各Qは、場合により0〜5個のJで置換されており;
各Jは、独立に、H、ハロ、C1〜6脂肪族、C3〜6環式脂肪族、NO、CN、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)であり;
は、Mまたは−Y−Mであり;
各Yは、独立に、0〜3個の−NR−、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、または−SO−で場合により置き換えられている非置換のC1〜6脂肪族であり;
各Mは、独立に、H、C1〜6脂肪族、C3〜8環式脂肪族、ハロ(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、3〜8員のヘテロシクリル、ハロ、NO、CN、OH、OR’、SH、SR’、NH、NHR’、N(R’)、COH、COR’、COH、COR’、CONH、CONHR’、CONR’、OCOR’、OCONH、OCONHR’、OCON(R’)、NHCOR’、NR’COR’、NHCOR’、NR’COR’、NHCOH、NR’COH、NHCONH、NHCONHR’、NHCON(R’)、SONH、SONHR’、SON(R’)、NHSOR’、NR’SOR’、POR’、POR’、PO(R’)、またはPO(OR’)であり;
は、Mまたは−Y−Mであり;
各Yは、独立に、0〜3個の−NR−、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、または−SO−で場合により置き換えられている非置換のC1〜6脂肪族であり;
各Mは、独立に、H、C1〜6脂肪族、C3〜8環式脂肪族、ハロ(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、3〜8員のヘテロシクリル、5〜6員のヘテロアリール、フェニル、ハロ、NO、CN、OH、OR’、SH、SR’、NH、NHR’、N(R’)、COH、COR’、COH、COR’、CONH、CONHR’、CONR’、OCOR’、OCONH、OCONHR’、OCON(R’)、NHCOR’、NR’COR’、NHCOR’、NR’COR’、NHCOH、NR’COH、NHCONH、NHCONHR’、NHCON(R’)、SONH、SONHR’、SON(R’)、NHSOR’、NR’SOR’、POR’、POR’、PO(R’)、またはPO(OR’)であり;
各MおよびMは、独立におよび場合により、0〜5個のJで置換されており、
Rは、Hまたは非置換のC1〜6脂肪族であり;
R’は、非置換のC1〜6脂肪族であるか;または、2個のR’基が、それらが結合している原子と一緒になって、O、N、およびSから独立に選択される0〜1個のヘテロ原子を有する非置換で3〜8員の非芳香族単環を形成しており;
各JおよびJは、独立に、H、ハロ、C1〜6脂肪族、C3〜6環式脂肪族、NO、CN、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、COH、−CO(C1〜4脂肪族)、CONH、CONH(C1〜4脂肪族)、CON(C1〜4脂肪族)、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)であり;
但し、環Aは、
【化2】

ではなく、式中、Cyは任意の環式部分であり;
Qが、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、場合により置換されている5員の飽和環である場合、Jは−(CH−PO(OR)ではなく、式中、
qは、0または1であり、および
Rは、Hまたは非置換のC1〜6脂肪族であり;
およびRの両方がHの場合、環Aは
【化3】

ではない。
【請求項2】
がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がQである、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Qが、O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和、または完全不飽和単環である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Qが、O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Qが、0個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和単環である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Qがシクロヘキシルまたはシクロペンチルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が3〜8員のヘテロシクリルである、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
が、1〜2個の窒素原子を含む6員のヘテロシクリルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
環Aが完全不飽和(即ち、芳香族)である、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
環Aが部分不飽和または飽和である、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
環Aが単環である、請求項10または請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
環Aが5員環である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
環Aが6員環である、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
−T−Rがメタまたはパラ置換されている、請求項13または14に記載の化合物。
【請求項16】
環Aが二環である、請求項10から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
Tが−C(O)NR−または−NRC(O)−である、請求項10から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
RがHである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
が、O、N、およびSから独立に選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和単環;またはO、N、およびSから独立に選択される0〜5個のヘテロ原子を有する8〜12員の飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和二環である、請求項12または請求項16に記載の化合物。
【請求項20】
が完全不飽和(即ち、芳香族)である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
が部分不飽和または飽和である、請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
が、H、ハロ、C1〜6脂肪族、C3〜6環式脂肪族、NO、CN、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、CONH、CONH(C1〜4脂肪族)、CON(C1〜4脂肪族)、COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)である、請求項12から21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
以下から選択される化合物。
【化4】

【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルとを含む組成物。
【請求項25】
生物試料中のプロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、前記生物試料を
a)請求項24に記載の組成物;または
b)請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物
と接触させる工程を含む方法。
【請求項26】
前記プロテインキナーゼがLckである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
患者の自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝性疾患、神経系もしくは神経変性疾患、癌、循環器疾患、アレルギー、喘息、アルツハイマー病、またはホルモン関連疾患を治療する方法であって、
a)請求項24に記載の組成物;または
b)請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物
を該患者に投与する工程を含む方法。
【請求項28】
前記疾患が、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性もしくは過剰増殖性疾患、または免疫介在性疾患である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記患者に、化学療法薬もしくは抗増殖薬、アルツハイマー病治療薬、パーキンソン病治療薬、多発性硬化症(MS)治療薬、喘息治療薬、抗炎症薬、免疫調節もしくは免疫抑制薬、神経栄養因子、循環器疾患治療薬、破壊的骨障害治療薬、肝疾患治療薬、抗ウイルス薬、血液障害治療薬、糖尿病治療薬、または免疫不全障害治療薬から選択される追加治療薬を投与する工程を含み、
a)前記追加治療薬は、治療される疾患に適切であり;
b)前記追加治療薬は、前記組成物と共に単回剤形として投与されるか、または前記組成物とは別に多回剤形の一部として投与される、請求項27または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
喘息、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、萎縮性鼻炎、慢性鼻炎、膜性鼻炎、季節性鼻炎、サルコイドーシス、農夫肺、肺線維症、特発性間質性肺炎、関節リウマチ、血清反応陰性脊椎関節症(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎およびライター病が挙げられる)、ベーチェット病、シェーグレン症候群、全身性硬化症、乾癬、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎および他の湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性天疱瘡、表皮水疱症、じんま疹、皮膚脈管炎、血管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、ブドウ膜炎、脱毛症、限局性春季カタル、セリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、膵臓炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、食品関連アレルギー、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、後天性免疫不全症侯群(AIDS)、紅斑性狼瘡、全身性狼瘡、エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型糖尿病、ネフローゼ症候群、好酸球増加性筋膜炎、高IgE症候群、らい腫らい、セザリー症候群および特発性血小板減少性紫斑病、血管形成後再狭窄、腫瘍、アテローム性動脈硬化症、全身性紅斑性狼瘡、同種移植拒絶(以下に限定されないが、例えば、腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚および角膜の移植の後の急性および慢性同種移植拒絶が含まれる);または慢性移植片対宿主病を治療する方法であって、
a)請求項24に記載の組成物;または
b)請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物
を、それを必要とする患者に投与する工程を含む方法。
【請求項31】
自己免疫疾患、アレルギー、関節リウマチ、または白血病を治療する方法であって、
a)請求項24に記載の組成物;または
b)請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物
を患者に投与する工程を含む方法。
【請求項32】
高カルシウム血症、再狭窄、骨粗鬆症、変形性関節症、骨転移の症状処置、関節リウマチ、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、狼瘡、移植片対宿主病、T細胞介在性過敏性疾患、橋本甲状腺炎、ギラン−バレー症候群、慢性閉塞性肺障害、接触性皮膚炎、癌、パジェット病、喘息、虚血性もしくは再潅流傷害、アレルギー性疾患、アトピー性皮膚炎、またはアレルギー性鼻炎を治療する方法。
【請求項33】
埋め込み型デバイスをコーティングするための組成物であって、請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物と、該埋め込み型デバイスをコーティングするために適切な担体とを含む組成物。
【請求項34】
請求項33に記載の組成物でコーティングされた埋め込み型デバイス。

【公表番号】特表2009−528991(P2009−528991A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555308(P2008−555308)
【出願日】平成19年2月12日(2007.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/003767
【国際公開番号】WO2007/095223
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】