説明

プロテインキナーゼCθの触媒ドメインの立体構造、その方法および使用

本発明は、プロテインキナーゼC(PKC)θ、特に、PKCθの触媒ドメインの立体構造に関する。結晶学で製造するための、PKCθ触媒ドメインの発現方法、精製方法および結晶化方法を提供する。PKCθとインヒビターの複合体の原子座標もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、プロテインキナーゼC(PKC)θ、特に、プロテインキナーゼCθの触媒ドメインの立体構造に関する。本発明はまた、リガンドと結合したか、またはリガンドと結合していないヒトプロテインキナーゼCθ触媒ドメインの結晶形態に関する。さらに、本発明は、結晶学で製造するための組換えヒトPKCθ触媒ドメインの発現方法および精製方法、PKCθとインヒビターの複合体の結晶化方法、およびその構造決定方法を提供する。
【0002】
発明の背景
現在、10個のPKCイソ酵素が知られており、それらは、活性化の必要要件に基づき3個のファミリーに分けられる(Dekker et al., 1995; Newton, 2001)。古典的cPKCα、β1、β2およびγは、活性化にジアシルグリセロール(DAG)、ホスファチジルセリン(PS)およびカルシウムを必要とする。新規なnPKCδ、ε、ηおよびθは、DAGおよびPSを必要とするが、カルシウムに非感受性であり、一方、異型のaPKCι、λおよびζは、DAGもカルシウムもどちらも必要としない。PKCγおよびβ2を除くすべてのイソ型が、T細胞にて発現されている。T細胞活性化におけるPKCイソ型の役割が、最近レビューされた(Wilkinson et al., 1998; Meller et al., 1998)。前記データは、特に、PKCθがT細胞活性化/増殖に中心的役割を果たすことを示唆している。
【0003】
PKCθは、主に、造血性細胞および骨格筋中で見られる高タンパク質濃度の限局的な発現パターンを示す(Meller et al., 1998)。T細胞におけるPKCθの役割に関するインビトロおよびインビボの証拠がある。第一に、PKCθは、細胞−細胞相互作用後すぐにT細胞抗原提示細胞(APC)接触部位に選択的に移行される唯一のイソ型である(Monks et al., 1997および1998)。第二に、NFκB転写因子の活性化によるIL−2遺伝子の誘導には、完全に機能的なPKCθが必要である(Lin et al., 2000; Coudronniere et al., 2000; Dienz et al., 2000; Khoshnan et al., 2000)。最後に、PKCθKOマウスの表現型によれば、PKCθは、TCRを介する成熟T細胞の活性化に必要である(Sun et al., 2000)。いくつかの最近のレビュー文献には、T細胞におけるPKCθの役割が詳細に記載されている(Altmann et al., 2000; Arendt et al., 2002; Isakov et al., 2002)。
【0004】
キナーゼのPKCファミリーのすべてのメンバーは、共通して、保存されたキナーゼ中心のカルボキシル末端および調節部分を有する。調節部分には、いくつかのドメインが含まれる。C1ドメインは、ホスファチジルセリンおよびジアシルグリセロール/ホルボールエステルに結合する。C2ドメインは、アニオン性脂質に結合する。PSは、偽基質ドメインであり、それは、不活性構造中の活性部位に基質が近づくのを妨げる。上流のキナーゼであるPDK−1による活性ループ中のスレオニン538のリン酸化は、PKCθの活性構造を誘導するために必要である。この最初のリン酸化事象に続き、セリン676および695が自己リン酸化される。
【0005】
構造的情報は、現在までに、PKCδのC1ドメイン(残基231−280)およびPKCα(残基155−293)、PKCβ(残基157−289)、およびPKCδ(残基1−123)のC2ドメインについてのみ入手されている(Zhang et al. 1995; Pappa et al. 1998; Sutton et al. 1998 and Verdaguer et al. 1999, Williams & Mitchell 2002)。PKCファミリーのメンバーのキナーゼドメインの構造は、これまでに記載されていない。
【0006】
発明の概要
本発明は、PKCθ触媒ドメインの立体構造を提供し、故に、特異的にPKCθを阻害する、リガンドまたは低分子量分子の同定および設計を可能にする。
【0007】
本発明は、以下:
(i)リガンドまたは低分子量化合物と一緒にまたはなしでPKCθの触媒ドメインを含むPKCθの結晶、
(ii)PKCθ触媒ドメインを含むPKCθの発現方法、
(iii)PKCθ触媒ドメインを含むPKCθの精製方法、
(iv)PKCθ触媒ドメインを含む結晶を作製する方法、
(v)触媒ドメインを含む該PKC結晶およびその構造座標を用い、PKCθを阻害するリガンドまたは低分子量分子を同定および設計する方法、
に関する。
【0008】
PKCθの触媒ドメインの結晶から明らかとなった立体構造情報は、構造に基づく薬剤開発、PKCθおよび他のPKCファミリーメンバーのインヒビターのスクリーニング、同定および設計に用いられ得る。
【0009】
発明の詳しい説明
ヒトPKCθの全長配列を、配列番号:1に示す(Genbank受託番号HUMPKCTH L07032.1、Swissprot受託番号Q04759、Baier et al. 1993 Chang et al. 1993/1994を参照)。
【0010】
本発明は、結晶形態のPKCθ触媒ドメインを提供する。特に、複合体としてPKCθの触媒ドメインとPKCθに結合したリガンドを含む結晶を提供する。
【0011】
本発明の1つの態様にて、a=b=152.33±5Å、c=74.84±5Å、α=90.0度、β=90.0度、γ=120度の単位格子寸法を含むPKCθの触媒ドメインの結晶を、提供する。特定の結晶化条件に依存して、単位格子を特徴付けるパラメータは、限定された範囲内、例えば、a、b、cはそれぞれ5Åまでの範囲で変化し得る。
【0012】
本発明の用語「単位格子」とは、基本的な形状ブロックを意味する。結晶の全体容積は、かかるブロックの規則的な集合により構築される。それぞれの単位格子には、その繰り返しが結晶を構築するパターン単位の完全な表示が含まれる。
【0013】
本発明の他の態様にて、リガンドと複合したPKCθの触媒ドメインを含むPKCθの結晶を提供し、ここで、該結晶は、表1の原子構造座標により特徴付けられる立体構造を有する。
【0014】
本発明のさらなる態様にて、該PKCθの触媒ドメインは、配列番号:2の配列、そのフラグメントまたは相同体を含む。
【0015】
本発明の他の態様にて、該結晶は、配列番号:3から配列番号:20の変異体、そのフラグメントまたは相同体の群から選択されるPKCθの触媒ドメインの変異体を含む。
【0016】
本発明のさらに他の態様にて、該PKCθの触媒ドメインは、少なくともATP結合部位を含む。
【0017】
本発明により、少なくとも1個のリガンドまたは低分子量化合物と結合したPKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)を含む結晶をさらに提供する。
【0018】
本発明の用語「リガンド」とは、1個またはそれ以上のPKCθの特定部位、好ましくはPKCθの触媒ドメイン、最も好ましくは該触媒ドメインのATP結合部位に結合する分子または分子群を意味する。本発明のリガンドは、好ましくは低分子量分子である。
【0019】
本発明の用語「低分子量化合物」とは、好ましくは、一般に約1000より小さい分子量、より好ましくは約600より小さい分子量を有する有機化合物を意味する。最も好ましくは、該低分子量化合物またはリガンドは、PKCθ酵素活性を阻害する。
【0020】
PKCθインヒビターについて、用語「ペプチド」または「ペプチド誘導体」とは、「ペプチド模倣物」または「ペプチド類似体」を包含することを意図し、それらは、PKCθの結合部位の立体構造に相補的であるか、または本発明にて提供するようなPKCθ触媒ドメインの三次元結合部位に結合するように改善された物理的または化学的特性を有するように設計され得る。
【0021】
用語「変異」とは、1個またはそれ以上の選択されたアミノ酸の欠失、挿入、または好ましくは置換による、配列番号:1記載のPKCθの野生型配列内の相違を意味する。
【0022】
本発明によれば、用語「変異体」とはまた、ポリペプチドを意味し、そのアミノ酸配列は、1個またはそれ以上の選択されたアミノ酸の欠失、挿入、または好ましくは置換により配列番号:2記載の野生型配列とは異なり、該変異体は、配列番号:2と少なくとも50%相同性、より好ましくは配列番号:2と少なくとも80%相同性、最も好ましくは配列番号:2と少なくとも90%相同性である。例えば、本発明の触媒ドメインのPKCθ変異体は、好ましくは配列番号:3から配列番号:20の群に由来する変異体である。
【0023】
本発明のPKCθ触媒ドメインの「フラグメント」には、配列番号:2のPKCθ触媒ドメインの50%以上、より好ましくは配列番号:2のPKCθ触媒ドメインの少なくとも80%、最も好ましくは配列番号:2のPKCθ触媒ドメインの少なくとも90%が含まれる。
【0024】
本発明のPKCθ触媒ドメインの「N末端伸長」とは、全長PKCθ(配列番号:1)のN末端からPKCθの触媒ドメインのN末端までの1〜359アミノ酸の付加を含む。
【0025】
本発明の1つの態様にて、触媒ドメインのPKCθ変異体は、少なくとも1個のリガンドと一緒に、またはなしで結晶化可能であり得る。
【0026】
本発明の他の態様にて、触媒ドメインのPKCθフラグメントは、少なくとも1個のリガンドと一緒に、またはなしで結晶化可能であり得る。
【0027】
本発明のさらに他の態様にて、PKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)、PKCθの触媒ドメインの変異体(配列番号:3から配列番号:20)、フラグメントまたは相同体を、結晶化の前の任意の工程で少なくとも1個のリガンドと結合させる方法を提供する。
【0028】
本発明によれば、PKCθの結晶は、適当な条件下に維持すれば安定である。例えば、前記結晶は、その母液中4℃で少なくとも3−4週間安定である。液体窒素中の凍結保存が好ましい。
【0029】
本発明にて、PKCθおよび優先的にはPKCθの触媒ドメイン、そのフラグメントまたは相同体は、PKCθのインヒビターの存在下での組換えバキュロウイルスに感染した昆虫細胞培養におけるPKCθタンパク質の発現により有利に得られる。別法にて、前記PKCθドメインはまた、PKCθ全長タンパク質の発現およびその後のPKCθ触媒ドメインのタンパク質分解的切断、またはPKCθ触媒ドメインと偽基質の共発現によっても得られ得る。
【0030】
本発明の1つの態様にて、以下:
(i)全長PKCθ(配列番号:1)の精製工程
(ii)適当な宿主細胞における全長PKCθ(配列番号:1)またはPKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)の発現工程
(iii)所望のPKCθドメインの精製工程
を含む、PKCθの結晶を作製する方法を提供する。
【0031】
本発明の好ましい態様にて、結晶を作製する該方法は、PKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)、PKCθの触媒ドメインの変異体(配列番号:3から配列番号:20)、フラグメントまたは相同体を含む。
【0032】
本発明の好ましい態様にて、結晶を作製する方法は、PKCθインヒビターの存在下におけるPKCθの所望のドメインの発現を含む。
【0033】
本発明のさらなる好ましい態様は、PKCθの触媒ドメインが、セリン676部位またはセリン695部位、もしくは両方の部位にてリン酸化されている結晶を作製する方法を含む。
【0034】
本発明によれば、PKCθは、天然源、例えば培養されたヒト細胞からの分離によるか、または好ましくは組換え体異種発現により調製され得る。組換えPKCθの発現は、真核細胞系または原核細胞系にて実現可能である。例えば、組換えヒトPKCθは、適した組換えバキュロウイルス系を用いて、Sf9細胞などの昆虫細胞にてまたは細菌にて発現され得る。
【0035】
前記キナーゼは、融合タンパク質、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)もしくはヒスチジン−標識した融合タンパク質または標識していないタンパク質として発現され得る。所望であれば、融合パートナーを、結晶化前に除去して良い。結晶化のために使用される異種生成したPKCθは、生物活性を有する可能性がある。
【0036】
PKCθ変異体の製造方法は、一般に当技術分野で公知である。例えば、PKCθ変異体は、オリゴヌクレオチド特異的変異によりそのコード領域を予め改変されたPKCθDNAの発現により製造され得る。
【0037】
本発明にて、精製されたPKCθは、少なくとも90%相同であることが好ましい。タンパク質の相同性は、当技術分野でよく知られている検定方法、例えば、配列分析法、電気泳動法、分光法またはクロマトグラフ法により決定することができる。精製されたタンパク質は、酵素的に活性である可能性がある。PKCθ活性を決定するための適した検定を、適した基質、例えば、当技術分野で公知の天然基質または合成基質に対して行う。
【0038】
本発明の1つの態様にて、結晶化の前の任意の工程にてPKCθは、PKCθ触媒ドメイン部位に適当に結合し得る低分子量化合物またはリガンドと複合体を形成し得る。好ましくは、PKCθ活性を阻害する化合物である。キナーゼ阻害は、当技術分野で公知の検定を用いて測定可能である。適当なインヒビターには、PKCθ活性を阻害するために触媒ドメインに作用するATP競合性キナーゼインヒビターが含まれる。
【0039】
結晶化の様々な方法を特許請求の範囲に記載の発明にて用いることができ、蒸気拡散法、透析法または回分結晶法を含む。蒸気拡散法による結晶化にて、少容量(すなわち、数マイクロリットル)のタンパク質溶液を、沈殿剤を含む溶液と混合する。この混合量を、少量、すなわち約1mlの沈殿剤を含むウェルの上に浮遊させる。液滴とウェル間の蒸気拡散により、液滴中に結晶が形成するだろう。
【0040】
結晶化の透析法では、タンパク質を保持するが小分子(すなわち、緩衝液および沈殿剤)を内および外に拡散し得る半透性のサイズ排除膜を用いる。透析にて、タンパク質および沈殿剤を蒸発により濃縮するよりも、沈殿剤が、ゆっくりと膜を通って拡散し、タンパク質濃度を固定したままでタンパク質の溶解性を減少することを可能にする。
【0041】
回分法は、一般に、溶液が混濁するまでタンパク質水溶液へ沈殿剤をゆっくり添加することを伴い、この時点で、容器を密封し、結晶化が起こるまでの間そのままにしておくことができる。回分技術にて、沈殿剤および標的分子溶液を単にかき混ぜる。拡散によるよりむしろ、直接的に過飽和を達成させる。しばしば、回分技術を油状下で行う。油状物は蒸発を妨げ、そして極めて小さい液滴の使用を可能とする。これに関して、用語「マイクロバッチ」が用いられる。本技術の変法では、パラフィン油(完全な蒸発を防ぐもの)は用いられないが、ゆっくりとした蒸発を可能にするため、シリコン油またはシリコンとパラフィンの混合油が用いられる。
【0042】
特許請求の範囲に記載の本発明は、結晶化のあらゆる方法を包含し得る。当業者は、かかる方法の選択をすることができ、選択した方法が所望の結晶を生じるようにパラメータを変えることができる。
【0043】
PKCθの結晶化の1つの好ましい方法には、PKCθ溶液と結晶形成に必要なものより低濃度の沈殿剤を含む「リザバー緩衝液」の混合が含まれる。結晶形成のために、沈殿剤の濃度を、例えば沈殿剤の、例えば滴定による添加によるか、または沈殿剤の濃度を結晶化緩衝液とリザバー緩衝液間の拡散により平衡化することにより、増大させる必要がある。適当な条件下で、水または揮発性沈殿剤のかかる拡散は、沈殿剤の勾配、例えば、より高濃度の沈殿剤を有するリザバー緩衝液とより低濃度の沈殿剤を有する結晶化緩衝液間で起こる。拡散は、例えば一般的気相中への水の拡散を可能にする蒸気拡散技術により達成され得る。公知の技術としては、例えば「ハンギング・ドロップ(hanging drop)」または「シッティング・ドロップ(sitting drop)」法などの蒸気拡散法がある。蒸気拡散法にて、タンパク質を含む結晶化緩衝液の液滴を、多量のリザバー緩衝液上につり下げる(hanging above)か、または横に置く(sitting beside)。別法として、沈殿剤の平衡化は、リザバー緩衝液から結晶化緩衝液を分離し、そしてリザバー緩衝液へのタンパク質の希釈を妨げる半透性膜を介して達成され得る(透析法)。
【0044】
PKCθ触媒ドメイン結晶の形成は、以下のパラメータ:pH、塩および添加物の存在、沈殿剤、タンパク質濃度、および温度、により基本的に決定される様々な条件下で達成され得る。pHは、例えば約4.0から9.0の範囲であり得る。
【0045】
本発明はまた、PKCθ触媒ドメイン結晶構造の記憶されたモデルを有するコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。好適な態様にて、該モデルは、X線回析データのすべてまたは一部から構成される。原子座標を、表1に示す。
【0046】
本発明は、ヒトPKCθ触媒ドメインの構造座標を提供する。用語「構造座標」または「原子座標」とは、PKCθ触媒ドメインを含む結晶の原子(散乱中心)によりX線の単色光線で得られた回析パターンに関する数式(フーリエ変換)から算出される数値座標を意味する。回析データを用いて、結晶単位の繰り返しの電子密度マップを測定する。電子密度マップを用いて、結晶の単位格子内の個々の原子の位置を定める。
【0047】
本発明の結晶組成物の構造座標は、立体構造形状としての表示、またはそれらが規定する構造座標または立体構造のコンピュータを使った操作もしくはそれに基づく計算(computation)を含む他の使用のために、機械可読記憶媒体、例えばコンピュータ・ハードドライブ、ディスケット、DATテープなどに機械可読形式で保存され得る。例えば、PKCファミリーのタンパク質、またはかかるタンパク質の一部もしくは構造的に類似の相同体の立体構造を定義するデータは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に保存され得、そして一般に、該記憶媒体からのデータの読み取りが可能であり、かつかかるデータからの表示を創作するための指示がプログラムされたコンピュータを用いて、タンパク質構造の図式立体構造表示として表示され得る。
【0048】
本発明の1つの態様にて、コンピュータ読み取り可能なデータをコードするデータ記憶媒体を含むコンピュータ読み取り可能な媒体を提供し、該データには、PKCθの触媒ドメインを含む表1の原子座標が含まれる。
【0049】
本発明の他の態様にて、以下:
(i)PKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)、その変異体(配列番号:3から配列番号:20)、フラグメントまたは相同体を含むPKCθの結晶化工程、
(ii)該結晶に関する指数化した強度(indexed intensity)の形式でX線回析データを収集し、原子座標を作製する工程、
(iii)PKCθの触媒ドメイン、そのフラグメントまたは相同体の立体構造を決定するために、表1の原子座標を全部または一部利用する工程、
を含む、PKCθの触媒ドメインの立体構造を決定するための方法を提供する。
【0050】
本発明のさらなる他の態様にて、以下:
(i)複合体の結晶に関するX線回析データを得る工程、
(ii)表1の原子座標を全部または一部用いて、複合体の立体構造を決定する工程、
を含む、少なくとも1個のリガンドと結合したPKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)、その変異体(配列番号:3から配列番号:20)、フラグメントまたは相同体を含む複合体の立体構造を決定する方法を提供する。
【0051】
本発明によれば、三次元PKCθモデルを、PKCθの触媒ドメイン、その変異体、フラグメントまたは相同体を含むPKCθの結晶から得ることができる。かかるモデルを、X線解析座標、特に表1の原子座標を用いて、本発明のPKCθ構造データの全部または一部から構築または精緻化することができる。
【0052】
PKCθの触媒結合部位の三次元モデルから得られる知識を、様々な方法に用いることができる。例えば、それを、化学物質、例えば、PKCθと結合し、好ましくはPKCθが介在するもしくは関連する工程もしくは事象をブロックするかまたは防止する、またはPKCθアゴニストとして作用する、ペプチド模倣物および合成有機分子などの小さな有機分子および生物有機分子を同定するために用いることができる。PKCθ触媒ドメインの立体構造を用いて、当業者により、PKCθのモデルが構築される。例えば、すべての原子を、適当なファン・デル・ワールス半径の球体として描き、そしてPKCθ触媒ドメインの詳細な表面図(surface map)を構築することができる。
【0053】
当業者により、PKCθの触媒結合部位の接近可能な表面を模倣する表面を有する化学物質が構築され得る。一例として、当業者は、化合物の立体構造データベースをスクリーンし、適当な官能基を類似の立体構造配列で配置する化合物を同定し得、その後、かかる化学物質周辺のコンビナトリアル・ケミストリー・ライブラリーを構築し、PKCθの触媒結合部位に高い親和性を有するものを同定することができる。
【0054】
本発明の1つの態様にて、以下:
(i)表1記載の原子座標に全部または一部由来する触媒ドメインの立体構造を用いる工程、
(ii)PKCθの触媒ドメインに結合するリガンドまたは低分子量化合物を選択する工程、
を含む、PKCθの触媒ドメインに結合するリガンドまたは低分子量化合物を同定する方法を提供する。
【0055】
本発明の他の態様にて、PKCθの触媒ドメインと結合するリガンドまたは低分子量化合物を同定する方法を提供し、ここでPKCθの触媒ドメインは、少なくとも該ドメインのATP結合部位を含む。
【0056】
本発明のさらに他の態様にて、PKCθの活性を阻害するリガンドを同定する方法を提供する。
【0057】
リガンドまたは低分子化合物を、化合物データベースまたはライブラリーをスクリーニングし、コンピュータ手段を用いてPKCθの触媒ドメインの結合部位へのフィッティング操作を行うことにより同定できる。全部または一部が表1に記載の構造座標である本発明に記載のようなPKCθの触媒ドメインの立体構造を、様々なドッキング・プログラムと一緒に用い得る。
【0058】
PKCθに対する化学物質の可能性のある阻害効果または結合効果を、コンピュータ・モデリング技術の使用により、その実際の合成の前に分析し試験することが可能である。与えられた化学物質の理論的構造が、それとPKCθ間の不十分な相互作用および結合を示す場合、その化学物質の合成および試験の必要性が除かれる。しかしながら、コンピュータ・モデリングが強い相互作用を示す場合、その後、前記分子を合成し、そしてPKCθと結合するその能力について試験して良い。故に、お金と時間をかけた無効な化合物の合成を、避けることができる。
【0059】
PKCθの阻害化合物または他の結合化合物を、化学物質またはフラグメントを、PKCθの個々の結合部位と結合するそれらの能力についてスクリーニングし、選択する一連の工程手段により、コンピュータを用いて検討し、設計することができる。故に、当業者は、PKCθと結合する能力について化学物質またはフラグメントをスクリーニングするいくつかの方法のうちの1つを用いることができる。この工程を、例えば、全部または一部を表1の構造座標に基づくコンピュータスクリーン上の結合部位の目視検査により開始することができる。その後、選択したフラグメントまたは化学物質を、PKCθの触媒結合部位内に、様々な配向で配置するか、または「ドッキング」する。ドッキングは、QuantaおよびSYBYLなどのソフトウェアを用い、続いてCHARMMおよびAMBERなどの標準的分子動力学的分野でのエネルギー最小化および分子動力学により達成され得る。特殊なコンピュータプログラムを、興味のあるフラグメントまたは化学物質を選択するために用いて良い。これらのプログラムには、例えば、オックスフォード大学、オックスフォード、イギリスから購入可能なGRID;Molecular Simulations、バーリントン、マサチューセッツ州から購入可能な5MCSSまたはCATALYST;Scripps Research Institute、ラ・ホヤ、カリフォルニア州から購入可能なAUTODOCK;、カリフォルニア大学、サンフランシスコ、カリフォルニア州から購入可能なDOCK、およびロンドン大学、イギリスから購入可能なXSITEが含まれる。
【0060】
本発明の表1などの座標一式を利用した分子置換を用いて、PKCθ触媒ドメインまたはその一部の結晶の構造を、例えば、1個またはそれ以上のリガンドまたは低分子量化合物と結合させ、複合体を形成させることができる。
【0061】
用語「分子置換」とは、未知の結晶の観察された回析パターンを最も良く説明するために、構造座標が未知である結晶の予備的構造モデルを、構造配列が既知である分子、例えば、未知の結晶の単位格子内のPKCθ触媒ドメイン座標の方向付けおよび位置決めにより作製することを含む、方法を意味する。その後、位相をこのモデルから計算することができ、観察された振幅と合わせ、座標が未知である構造の近似したフーリエ合成を得る。これは次に、最終的に正確な構造を得るために、いくつかの精緻の形態のいずれかに付し得る。本発明により供される構造座標を用いて、分子置換を、共複合体、未知のリガンド、変異体または相同体の結晶、またはPKCθの異なる結晶形態の構造座標を決定するために用いることができる。さらに、特許請求の範囲の結晶およびその座標を、PKCθと結合する化学物質の構造座標を決定するために用いることができる。
【0062】
本発明の「ホモロジーモデリング」とは、1個またはそれ以上の関連タンパク質、タンパク質ドメインおよび/またはPKCθの触媒ドメインなどの1個のサブドメインの構造座標を用いて、未知の構造のモデルを構築することに関する。ホモロジーモデリングを、立体構造を解くべきタンパク質またはペプチドの共通部分または相同性部分を、相同的構造要素の立体構造に合わせることにより行うことができる。ホモロジーモデリングには、アミノ酸または他の構成要素を、解決すべき関連構造で置換することにより一部または全ての立体構造を再構築することが含まれ得る。
【0063】
本発明の分子置換には、既知の構造を有する分子を用いる。データ運搬体上の機械読み取り可能な形状にて全部または一部を表1に供されるPKCθの触媒ドメインの立体構造を、未知の結晶試料の構造をモデル化する出発点として用いることができる。本技術は、単位格子において同じ構造、配向および位置を有する2個の分子が、同じように回析するという原則に基づく。分子置換とは、単位格子中の既知の構造を未知の構造と同じような位置および配向に配置することに関する。位置が決まれば、単位格子における既知の構造の原子を、仮定的回析実験の結果として得られるであろう構造因子の測定に用いる。これは、実験データと既知の構造の整合が成されるまで、6個の寸法(3個の角度および3個の空間寸法)にて既知の構造を回転することに関する。この近似構造を、様々な精緻化技術を用いて、より正確、かつより高度の分解構造を生じるために微調整することができる。例えば、実験データにより定義される構造について得られたモデルは、前記モデルが、6個の寸法にて約5%以下の位置合わせシフトを生じる限定されたさらなる回転を受け、剛体精緻化を受け得る。その後、精緻化モデルを、他の既知の精緻化法を用いてさらに精緻化することができる。本発明はまた、PKCθ触媒ドメインの相同体および変異体を可能にし、それらの結晶構造の解明を可能とする。本発明に記載のようなPKCθ触媒ドメインの立体構造に基づき、全部または一部に表1の原子座標を用いて、部位特異的変位の影響を予測することができる。より具体的には、本明細書に記載の構造情報は、アミノ酸修飾、特に置換、挿入または欠失変異をもたらすアミノ酸変異について望ましい部位の同定を可能とする。かかる変異は、例えば変化した触媒活性などの特定の性質、特に野生型PKCθ触媒ドメインとは異なる性質を有するように設計され得る。置換、欠失および挿入は、望ましい変異に達するために組合せ得る。かかる変異体を、例えば野生型PKCθ触媒ドメインから開始する当技術分野でよく知られている方法によるか、またはデノボ合成法により調製することができる。
【0064】
PKCθ触媒ドメインはまた、本明細書に開示のものとは異なる形態で結晶化され得る。例えば、配列番号:2および表1に全部または一部供される構造情報はまた、他の結晶形態の構造を解明するために有用である。さらに、それは、PKCθ触媒ドメイン変異体、PKCθ触媒ドメイン共複合体または十分に相同性のタンパク質の構造を解明することに役立ち得る。
【0065】
本明細書に記載のPKCθ触媒ドメインの構造情報は、PKCθ触媒ドメインと選択的に相互作用し、その結果PKCθの生物活性を特異的に調整することが可能なリガンドまたは低分子化合物の設計に有用である。さらに、この情報を、PKCθ変異体、例えば、変化した触媒活性を有する変異体を設計および調製するため、例えば分子置換を含む、PKCθ触媒ドメイン相同体、PKCθ触媒ドメイン変異体またはPKCθ触媒ドメイン共複合体などのタンパク質の立体構造をモデル化するため、および結晶構造を解明するために用いることができる。
【0066】
本発明は、PKCθ触媒ドメインに結合し得るリガンドまたは低分子量化合物を設計する方法を提供し、該方法には、以下:
(i)表1の原子座標を全部または一部用い、PKCθ触媒ドメインの立体構造を決定する工程、
(ii)PKCθ触媒ドメインの該立体構造を候補リガンドまたは低分子量化合物で探索し、どれがPKCθの触媒ドメインと結合するかを決定する工程、
(iii)PKCθの触媒ドメインに結合するリガンドまたは低分子量化合物を選択する工程、
(iv)結合する前記リガンドまたは低分子量化合物を改変し、溶解性、親和性、特異性または有効性などの物理的特性を最大にする工程、
が含まれる。
【0067】
触媒結合部位で相互作用するPKCθインヒビターを設計するための方法が好ましい。本発明はまた、かかる方法により同定される化学物質またはリガンドに関する。本発明を、PKCファミリーメンバーの触媒ドメインの立体構造を決定するために、表1の原子座標を全部または一部用いて他のPKCファミリーメンバーと結合するリガンドまたは低分子量化合物を設計するために用いることもできる。
【0068】
本発明により可能となった一つの試みは、PKCθと結合するか、または連結する化学物質を設計し、そして異なる方法で化学物質の物理特性を変えるために、PKCθ触媒ドメインの構造座標を使用することである。故に、例えば、溶解性、親和性、特異性、有効性、オン/オフ割合、または他の結合特性などの特性をすべて、変化および/または最大化することができる。前記触媒ドメインを含むPKCθ結晶を、候補化学物質とPKCθ間の相互作用に関して最適な部位を決定するために、異なる物質のライブラリーで探索することにより所望の化学物質を設計できる。例えば、溶質で飽和された結晶から収集した高解像度X線回析データは、それぞれの型の溶質分子が接着する場所の決定を可能にする。その後、それらの部位に硬く結合する小さな分子を、設計および合成し、所望の活性について試験することができる。本発明はまた、小分子データベースのコンピュータ・スクリーニング、またはPKCθ触媒ドメインと全部または一部で結合し得る化学物質の設計を意図する。それらはまた、PKCθの少なくとも一部と相同性であるかまたは連結可能な変異体、共複合体、または他の分子の結晶形態の結晶構造を解明するために使用され得る。本目的のために用い得る1つの方法は、分子置換である。例えば、PKCθ触媒ドメインの他の結晶形態、PKCθ触媒ドメイン変異体またはペプチド、またはPKCθとの共複合体、または興味のあるPKCθと結合する化学物質の任意の他の未知結晶などの未知構造であり得る未知の結晶構造を、表1記載の構造座標の全部または一部を用いて決定することができる。この方法は、本明細書に記載の発明無しにかかる情報を決定しようとするよりはるかに迅速、かつ効率的に未知の結晶に関する正確な構造形態を提供する。
【0069】
本発明の1つの好適な態様にて、候補リガンドをコンピュータ内でスクリーニングする。得られた情報を上記のように用い、PKCθの最大に有効性のインヒビターまたはアゴニストを得ることができる。
【0070】
本発明の他の好適な態様にて、PKCθの活性を阻害するリガンドを設計する方法を提供する。
【0071】
PKCθを阻害またはアゴナイズする化学物質の設計は、一般に、少なくとも2個の因子の検討を伴う。第一に、化学物質は、好ましくはPKCθの触媒部位でPKCθと物理的または構造的に連結可能でなければならない。前記連結は、たとえば、共有結合または非共有結合、またはファン・デル・ワールス力、疎水的相互作用または静電相互作用などの物理的、構造的、または化学的な連結であり得る。第二に、化学物質は、優先的にPKCθの触媒部位でPKCθと連結可能な立体構造をとることができなければならない。化学物質の全てではないが、一部分は、PKCθとの連結に必ず関与し、それらに関与しない部分は、分子の全体的な立体構造に未だ影響し得る。言い換えると、これは、前記化学物質の望ましさに対しかなりの影響を有し得る。かかる立体構造要件には、結合部位の全部または一部に対する化学物質の全体的な立体構造および配向性が含まれる。
【0072】
化合物を上記の方法で設計または選択すると、その化合物がPKCθと結合し得る有効性を、計算または実験による評価を用いて望ましい特性を最大にするために試験および修飾することができる。様々なパラメータは、所望の結果に依存して最大化され得る。これらには、特異性、親和性、オン/オフ割合、疎水性、溶解性、および、当業者により容易に特定可能な他の特徴が含まれるが、それに限定されない。
【0073】
本発明はまた、PKCθを調節する化合物の同定に関する。PKCθ活性を阻害する化合物が、好ましい。特に、該化合物は、Tリンパ球および/またはPKCが介在する疾患、例えば、臓器または組織の同種移植または異種移植の急性または慢性拒絶、アテローム性動脈硬化症、血管形成などの血管外傷に起因する血管閉塞、再狭窄、高血圧、心不全、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病または筋萎縮性側索硬化症などのCNS疾患、癌、AIDSまたは敗血症または成人呼吸窮迫症候群などの感染症、虚血/再潅流損傷、例えば、心筋梗塞、卒中、腸虚血、腎不全または出血性ショックまたは外傷性ショックの予防または処置に有用である。さらに、該化合物は、T細胞が介在する急性または慢性の炎症性疾患または障害、または自己免疫性疾患、例えば、リウマチ性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型またはII型糖尿病、およびそれらに関連する疾患、喘息または炎症性肺損傷などの呼吸器系疾患、炎症性肝臓損傷、炎症性糸球体障害、免疫学的な疾患または病気を介する皮膚症状、炎症性および過増殖性皮膚疾患(乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、刺激性接触性皮膚炎、およびさらなる湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎など)、炎症性眼疾患、例えば、シェーグレン症候群、角結膜炎、またはブドウ膜炎、炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎の予防または処置に有用であり得る。そのようなPKC調節化合物の例は、WO 0238561中に見つけることができる。
【0074】
上記の使用に関して、必要な投与量は、投与方法、処置される特定の状態および所望の効果に依存するだろう。一般に、体重1kgあたり約0.1〜約100mgの日用量で、十分な結果が全身的に得られることが示される。大きな哺乳動物(例えば、ヒト)における示された日用量は、約0.5mg〜約2000mgの範囲で、例えば、1日に4回までの分割投与か、または遅延形態で都合良く投与される。前記化合物は、慣用の経路、特に経腸的に、例えば、錠剤またはカプセル剤の形態で経口的に、または例えば注射剤または懸濁剤の形態で非経腸的に、例えばローション、ジェル、軟膏またはクリームの形態または経鼻形態または坐剤形態で局所的に投与され得る。遊離形態または薬学的に許容される塩形態で該化合物と、少なくとも1個の薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物を、薬学的に許容される担体または希釈剤と混合することによる慣用の方法で製造することができる。経口投与のための単位投与形態には、例えば、約0.1mg〜約500mgの活性物質が含まれる。局所的投与とは、例えば、皮膚に対して行う。局所投与のさらなる形態は、眼に対して行う。式Iの化合物を、遊離形態または薬学的に許容される塩形態で投与することができる。かかる塩は、慣用の方法で製造され得、遊離化合物と同程度の活性を示す。
【0075】
本発明は、分子設計技術、特に関連する医薬品設計手段の使用により、不可逆的または可逆的にPKCθ活性を調節できる、PKCθインヒビターを含む、新規または修飾された化学物質および化合物を製造することができる。修飾された物質または化合物とは、これらの物質または化合物が、それらが由来する「オリジナル」または親化合物よりも、例えば、細胞取り込み、溶解性、(酵素的)分解に対する安定性、結合親和性または特異性などのインビボ投与のための適性を含む治療的使用に関する特性に関して優れていることを意味する。例えば、本明細書に記載の情報に基づき、特に、共有結合、または好ましくは非共有結合でPKCθと結合するPKCθインヒビターを設計することが可能である。かかるインヒビターは、PKCθの活性部位に結合するか、または接近し、競合的または非競合的な方法で作用し得るか、またはアロステリックに作用し得る。
【0076】
PKCθモジュレータの設計にて、以下:(i)候補化合物が、物理的および構造的にPKCθ触媒ドメインと結合する可能性があるかどうか、および/または(ii)前記化合物が、PKCθ触媒ドメインと結合し得るような立体構造であると仮定しうるかどうか、の局面を考慮する必要がある。有利には、コンピュータ・モデリング技術を、不成功の候補化合物の合成または試験における労力を最小化するための、全体としてか、またはそのフラグメントとしてモジュレータのこれらの能力を測定する方法に用いる。特定のコンピュータ・ソフトウェアが、当技術分野でよく知られている。
【0077】
他の設計方法では、PKCθ触媒ドメイン結晶を様々な異なる化学物質で探索し、候補PKCθインヒビターと標的酵素間の相互作用に関する最適部位を決定することである。さらに他の本発明により生じる他の可能性は、PKCθ触媒ドメインと全部または一部で結合することができる化学物質または化合物に関して、小分子データベースをコンピュータでスクリーニングすることである。結合部位に適合する性質を、例えば、形状の相補性または予測される相互作用エネルギーにより判断して良い。その後、修正の立体配置の知識を、選択的インヒビターなどの新しいPKCθリガンドまたは低分子量化合物の設計に利用することができる。
【0078】
PKCファミリーメンバーと結合し得る化学物質は、タンパク質のその天然に存在するリガンドとの相互作用を阻害し得、そしてかかる相互作用を介した生物学的機能を阻害し得る。PKCθの場合、かかる生物学的機能には、免疫応答中のT細胞の活性化が含まれる。かかる化学物質は、医薬品候補の可能性がある。
【0079】
上記の方法により選択または設計された構造の化合物を、それらのPKCファミリータンパク質に結合する能力、PKCファミリータンパク質とそのための天然または非天然リガンドの結合を阻害する能力、および/またはPKCファミリーメンバーを介する生物学的機能を阻害する能力について試験することができる。
【0080】
以下の実施例は、本発明の態様の説明として用いられるが、それを限定するものとして解釈されるべきでない。本明細書に記載の方法により同定される化合物もまた、本発明に包含される。
【0081】
実施例
他に特に記載がない場合、分子生物学における標準的な手順(Ausubel et al. 1997)を用いる。市販のキットを用いる場合、製造業者の推奨に従う。すべてのプライマーを、Microsynth GmbH、バルガッハ、スイスから得る。PCR産物を、PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製する。制限酵素により消化した後、フラグメントを泳動し、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen)を用いてアガロースゲルから抽出する。ライゲーションを、T4ライゲース(BRL)を用いて16℃で一晩行い、そしてライゲーション混合物の一部で、CaClコンピテント細胞についての標準的プロトコルに従い大腸菌DH5α株(Gibco)を形質転換する。
【0082】
実施例1:大腸菌における発現を目的としたPKCθ変異体の作製
構成的に活性な変異体(T538E)を含むいくつかの変異体を、大腸菌中で発現される組換えタンパク質の溶解性を増大するために作製した。これらの実験に用いる最初のプラスミドは、PKCθの触媒ドメインと一緒にいくつかの隣接アミノ酸、プロリン360からセリン706に至る伸長鎖、およびそれに続くC末端の6−ヒスチジン・タグをコードする。触媒ドメインおよび6−ヒスチジン・タグを、このプラスミドから制限エンドヌクレアーゼNde1およびHind3で切り取り、そしてプラスミドpET26b(Novagen)の対応部位にクローニングし、結果として構築物C#345を得る。この構築物は、大腸菌中で、PKCθの内部リボソーム結合部位から発現開始される。故に、このプラスミドに、M385の前のシャイン・ダルガーノ・コンセンサスを破壊するため、および、同時に変異I381Eを導入するために、プライマーRS463およびRS464で第一の変異誘発をしておく[C#368]。シャイン・ダルガーノ・コンセンサス配列とは、原核生物(大腸菌)に特異的なリボソーム認識配列である。変異I381Eを、タンパク質の溶解性を増大するために導入する。変異誘発を、50ngのテンプレートDNAと250ngのプライマー(HPLC精製)を用いてQuikChange(登録商標)部位特異的変異誘発キット(Stratagene)で行う。すべての一連の変異誘発を、同じ手順に従い、テンプレートとしてプラスミド・C#368を用いて行う。すべての構築物は、変異I381EおよびC末端6−Hisタグを有する。
【0083】
全体として、17個の構築物を作製し、そして大腸菌中で発現させる。これらのプラスミドから、3個の変異体(I381E/M418E、I381E/L552EおよびI381E/V611K)、および構成的に活性な変異体(I381E/T538E)を、バキュロウイルス/昆虫細胞系でさらに発現させるために選択する。
【0084】
触媒ドメインの共発現におけるPKCθの制御ドメイン(E135−P168)の影響を、検討する。このドメインを発現する構築物を、全長PKCθテンプレートおよびプライマーRS409とRS410を用いてPCR増幅により作製する。その後、前記産物を、制限エンドヌクレアーゼBamH1およびNot1で消化し、そしてGSTタグと融合した標的遺伝子を担持するようにpGEX−6P(Pharmacia)の対応部位にクローニングする(C#343)。
【0085】
以下に、構築物をまとめる:
【表1】

【0086】
大腸菌変異体の多くは、バクテリア発現で可溶性タンパク質を得る可能性を増大するかもしれない変異の、触媒ドメインおよび残基のコンピュータ内での分析に基づいている。可溶性の発現の有意な増大は、観察されていない。
【0087】
実施例2:バキュロウイルス系における発現を目的としたPKCθ変異体の作製
4つの選択された2重変異体(I381E/M418E、I381E/T538E、I381E/L552EおよびI381E/V611K)をコードするバクテリア構築物を、バキュロウイルス/昆虫細胞系にて発現するために修飾する。それらのコーディング配列を、ATG開始コドンの直前に「Kozak」配列を付加するプライマーRS497、およびRS68でPCRにより増幅する。その後、得られた産物を、制限エンドヌクレアーゼXho1およびNot1で消化し、そしてpBacPAK8の対応部位中ポリヘドリン(polyhedrin)プロモータ下にクローニングする(Clontech)。同様にして、制御ドメイン(C#343)を、GSTのATG開始コドンの前に「Kozak」配列を付加するプライマーRS501、およびRS417でPCRにより増幅する。得られた産物を、制限エンドヌクレアーゼXho1およびNot1で消化し、pBacPAK8の対応部位にクローニングする。
【0088】
さらに、野生型PKCθの触媒ドメインを、C末端で6−Hisタグを取り除くプライマーRS421およびプライマーRS497で、バキュロウイルス/昆虫細胞にてタグなしで発現するために修飾する。すべてのプラスミドを、ABI PRISM(登録商標)377 DNAシークエンサーおよびABI PRISM(登録商標)BigDye(商標)ターミネーター法シークエンシングキット(Perkin Elmer Applied Biosystems)を用いてシークエンスすることができる。
【0089】
構築物の概要を以下に示す:
【表2】

【0090】
バキュロウイルス感染した昆虫細胞にて、触媒ドメインの適当なN末端を、前記ドメインの前のリンカー領域を体系的に短縮し、そして昆虫細胞にて発現する触媒ドメインの溶解性および安定性に関する、既知のThr538残基およびSer676残基およびSer695残基のリン酸化により得られる効果を測定することにより同定する。これを達成するために、Thr残基およびSer残基を、異なる組合せでリン酸塩が部分的に似ているであろうGluで置換する。精製を容易にするために、構築物のほとんどを、C末端6Hisタグと一緒に製造する。Hisタグを導入する多くの場合にて、それらは一般に不規則であるため構造中で可視化できない。I381Eなどの変異を、キナーゼドメインの表面の疎水性を減少するために導入することができる。I381Eは、N末端ドメインに位置し、溶媒が到達可能である。この残基は、分子の立体構造に支障をきたすものであってはならない。
【0091】
実施例3:触媒ドメインをコードする、バキュロウイルス感染した昆虫細胞用のプラスミド
触媒ドメインの前の異なる位置から始まる野生型PKCドメインをコードするプラスミドを、PCRフラグメント挿入変異誘発により製造する。PCR増幅のためのテンプレートDNAとは、全長のPKCθの野生型コーディング配列のコーディング配列を意味する。PKCθドメインの新規の望ましいN末端をカバーするオリゴヌクレオチド、およびキナーゼのC末端部分をカバーする相補的オリゴヌクレオチドを、それらの5’末端で33または42ヌクレオチド伸長する。PKCθドメイン間のpXI338の連結部位を含む部分を、最終的な組換えプラスミドに挿入する。PKCθキナーゼの異なる変異体はすべて、Stratagene QuikChange(商標)部位特異的変異誘発キットを用いた典型的な変異導入によるか、またはテンプレートとしてpXI342cプラスミドを用いて、PCRフラグメント挿入変異導入することによるどちらかで得ることができる。プラスミド中すべての挿入物を、DNA配列決定により正確性について調べる。
【0092】
プラスミの概要を以下に示す:
【表3】

【表4】

【0093】
実施例4:バキュロウイルス細胞および昆虫細胞におけるPKCθの発現
バキュロウイルスおよび昆虫細胞培養物の調製方法は、当技術分野で公知である(O’Reilly et al.,1994)。大部分の組換えバキュロウイルスを、CLONTECHのBacPAK6トランスフェクション系、および前に記載のPKCθ構築物を有する伝達ベクターを用いたSf9細胞のトランスフェクションにより作製する。PKCθ−FLa、PKCθ−M2aおよびPKCθ−M1aの発現用の組換えバキュロウイルスの作製を、バクミド(bacmid)により行う。すべてのバキュロウイルス株をプラーク−クローン化し、そして25cm−TCフラスコ中10mlのTC100培地(Invitrogen)+10%FCS(Invitrogen)にて27℃で培養し付着したSf9細胞を、2回目の増殖中に増殖させる。3回目の増殖中に、浮遊Sf9細胞を、500ml三角フラスコ中100mlのTC100培地+10%FCS+0.1%プルロニックF−68(Invitrogen)と一緒に90rpmで振とうしながら27℃で培養し、プラーク分析により、結果として、0.3−2.0×10pfu/mlの範囲の濃度で組換えバキュロウイルス懸濁液が生じる。
【0094】
PKCθ発現における様々な影響を試験するために振とうフラスコ培養を行う。浮遊Sf21細胞を、500ml三角フラスコ中100mlのSF900II培地(Invitrogen)+1%FCS中、90rpmで3日間27℃にて、約3×10細胞/mlの細胞密度に達するまで最初の前培養で増殖させる。2回目の前培養にて、500ml三角フラスコ中90mlのExCell400(JRH)+1%FCS、+0.1%プルロニックF−68培地を、10mlの最初の前培養物と合わせ、そして細胞を同じ条件下で3日間培養する。200ml三角フラスコ中、最終容量50mlの培養物とExCell400+1%FCS、+0.1%プルロニックF−68培地を合わせた本培養物を、5mlの2回目の前培養物と合わせ、90rpmで振とうしながら、27℃で約3日間増殖させる。1.5×10細胞/mlの細胞密度に達した時、MOI=1である3番目の増殖物の組換えバキュロウイルス懸濁液と、典型的には5mlの10×濃度のインヒビター溶液を添加する。その後、培養物をさらに、同じ条件下で感染後3日間インキュベートする。集菌時に、SDS−PAGE分析のための1ml試料および細胞の生重量測定のための30ml試料を採取し、室温で10分間300gにて遠心する。1ml試料からの細胞ペレットを、1mlの1×SDS−PAGE緩衝液中に取り、そして細胞収率(0.2mgの生重量細胞)について標準化した一定量のかかる全溶解物を、SDS−PAGE分析のためにゲルに適用する。
【0095】
3−(8−ジメチルアミノメチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリド−[1,2−a]インドール−10−イル)−4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)−ピロール−2,5−ジオンなどのPKCθのインヒビターを、小粒子に砕くための超音波洗浄機中にて、60℃でDMSO溶液または83.5%H2O+16.5%PEG400+165mM HClの溶液中に4mg/lで新たに溶解する。結果得られる溶液を、培養培地中300μMに希釈し、ろ過滅菌する。
【0096】
製造用のPKCθ発現を、1l−振とうフラスコ培養、5l−ST−バイオリアクターまたは10l−Wave−バイオリアクターのどれかで行う。3タイプの製造培養すべてについての前培養物は、上記のように50ml培養物である。5l−三角フラスコ中1l−振とうフラスコ培養を、900mlのExCell400+1%FCS、+0.1%プルロニックF−68培地と100mlの3日経過した前培養物を合わせて開始し、そして培養を、28℃で90rpmにて約3日間続ける。NBS Celligenバイオリアクター中、5l−ST−バイオリアクター培養を、5lのExCell400+1%FCS、+0.1%プルロニックF−68培地と300mlの3日経過した前培養物を合わせて開始し、そしてバイオリアクター培養を、1vvmで空気−酸素ガス混合物を通気させながら、90rpmで振とうし、28℃で約3日間続ける。1.5×10細胞/mlの密度で、MOI=1である3回目の増殖の組換えバキュロウイルス懸濁液と、適切な場合は、10×濃度のインヒビター溶液を添加し、上記に記載の条件下で72時間培養を続ける。PKCθ発現細胞を、室温で20分間400gにて2回遠心し、まず1l−遠心ボトルに集め、その後、50mlプラスチック・チューブ中プロテアーゼ・インヒビター混合物(Complete, Roche)入りのPBS緩衝液20ml、pH6.2中ペレット化した採取した細胞を、凍結し、抽出前に−80℃で保存する。
【0097】
標準的な培養条件下で、培養物へのインヒビターの添加なしに、PKCθ−M1cなどの触媒ドメインのみをカバーするPKCθ変異体の大部分は、組換えバキュロウイルス感染した昆虫培養物中では少しも発現しない。構造研究に都合の良いこれらの構築物についてのPKCθ発現の欠陥を克服する、2つの方法が発見されている。第一の方法は、良好なPKCθ発現に最も有効である。それは、優先的には30μMの終濃度で、組換えバキュロウイルスによる感染時に昆虫細胞培養物に添加される、特異的PKCθインヒビターの添加を伴う。第二の方法では、PKCθ発現が良好でない場合、触媒ドメインのみを含むPKCθ変異体を、偽基質ドメイン(PS、本明細書中PKCθ−M4aとして記載)と共発現させる。
【0098】
PKCθ−FLaなどの、触媒ドメインと制御ドメイン(偽基質ドメインを有する)を含む全長PKCθ変異体もまた、インヒビターの存在下で中程度に発現するが、3−(8−ジメチルアミノメチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリド−[1,2−a]インドール−10−イル)−4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)−ピロール−2,5−ジオンなどのインヒビターの存在下で強力に発現する。
【0099】
インヒビターの存在下でのPKCθの発現方法は、異なるPKCθ構築物に有効であり、そして重要な培養条件(インヒビター型および濃度、発現時間、宿主株、培養培地、MOI、培養方法、培養スケール)の幅広い範囲に有効である。
【0100】
前記方法は、望ましくは1−10L−培養物の製造スケールに拡大することができる。例えば、1L−振とうフラスコ培養、5L−ST−バイオリアクター培養または10L−Wave−バイオリアクター培養を含むL−スケールでの24個の独立した培養物を、インヒビターの存在下でPKCθ−M1cおよび様々な他のPKC変異体の製造に用いる。これらの場合すべてにおいて、PKCθ発現は強力である。
【0101】
発現したPKCθ−M1cのゲル−デンシトメトリー定量(PKCθ−M1a参照タンパク質に関するウエスタンブロットのバンド強度に基づく)では、50−120mg/LのPKCθ−M1cが、これらの培養で製造されることを示す。発現したPKCθ−M1cの大部分は、可溶性である。
【0102】
かかるPKCθ−M1c−発現培養物由来の細胞抽出物のSDS−PAGE分析により、発現したPKCθタンパク質物質の大部分が期待される分子量を有し、PKCθのC末端のエピトープに対する抗PKCθ抗体のウエスタンブロットにて強い反応を示すことが示される。大部分の発現したPKCθ−M1cタンパク質は、約42kDaの質量を有し、クマシー染色したゲルの強いバンドとウエスタンブロット処理した抗PKCθ抗体の強いバンドの共移動を示す。
【0103】
実施例5:構築物M1cの精製
タンパク質の感受性により、すべての精製工程は、氷上または4℃でなければならない。
10gの湿細胞ペレットを、4錠のプロテアーゼインヒビター・カクテル・コンプリートミニ、EDTAなし(Roche)および100μlのホスファターゼ・インヒビター・カクテル1ならびに2(Sigma)を含む、約100mlの溶解緩衝液(500mM NaCl、50mM Tris HCl、5mM Tris−(カルボキシエチル)ホスフィン=TCEP、1mM NaF、10μlのNa3VO4 pH8.0)に再懸濁する。懸濁物を、ハンドホモジナイザー10×で処理し、そして不溶性部分を、4℃で30000gにて60分遠心する。上清を、5μmフィルターに通す。
【0104】
上清を、Ni−NTA−Superflowカラム(Parmacia;1cm直径、3ml容量、流速1−3ml/分、溶解緩衝液で平衡化)にロードし、吸着がゼロに近づくまで溶解緩衝液+10mM イミダゾールで洗浄し(約15カラム容量)、そして溶解緩衝液中10〜500mM イミダゾールの勾配で溶出する。インヒビター含有画分(着色したもの)を、集める。
【0105】
1M MgCl2の原液と1mlの水に溶解したATP粉末をすぐに加え、終濃度10mMとする。混合物を4〜8℃で少なくとも18時間、ゆっくり振とうしながらインキュベートする。
【0106】
リン酸化混合物を、予め冷やしておいたUltrafree Cell MW cutoff 30000中1−2mlに濃縮し、Superdex75(16/60)(Pharmacia)にロードし、SPX緩衝液(200mM NaCl、50mM イミダゾール、1mM NaF、5mM TCEP、pH=8.0)中にて平衡化する。着色した画分を、Ultrafree cell中、10−15mg/mlの最終タンパク質濃度(HPLCにより決定)に濃縮する。
【0107】
質量スペクトル分析により、前記タンパク質調製物が、リン酸化後の結晶化のために十分に純粋であることが示される。546残基+Hisタグ、および2つのリン酸化部位に関して予期される質量である41858ダルトンは、測定値と一致する。この構築物について測定した等電点(pI)は、約6.5である。
【0108】
実施例6:PKCθ−触媒ドメインとインヒビターの複合体
3−(8−ジメチルアミノメチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリド−[1,2−a]インドール−10−イル)−4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)−ピロール−2,5−ジオンなどのインヒビターを用いて、結果生じるタンパク質−インヒビター複合体が、精製工程のモニタリングを容易にする。野生型PKCθ(PKCθ360−706/M1a)の最初の精製は、3段階のクロマトグラフィーで行う。一般に、それぞれの工程後の収率は、以下:親和性クロマトグラフィー後(Ni−NTA)〜38mg/L、サイズ除外クロマトグラフィー(SPX75)後〜16mg/L、そして陰イオン交換クロマトグラフィー(Resource−Q)後〜2mg/Lである。最終的に精製されたタンパク質のMS分析により、未だ、モノ−、ジ−およびトリ−リン酸化PKCθの異種混合物であることが示される。
【0109】
バキュロウイルス系で発現した全PKCθ−M1aの分析により、タンパク質の80%以上が、非リン酸化またはモノリン酸化タンパク質であることが示される。このことは、最も溶解性のタンパク質がジ−またはトリ−リン酸化され、一方、非リン酸化およびモノリン酸化タンパク質は不安定で、保存すると沈殿することを示唆し、故に精製中の物質の多くの損失を説明する。これらの観察結果は、タンパク質ホスファターゼ1による精製PKCθの脱リン酸化実験により確認される。
【0110】
リン酸化タンパク質のレベルが低いことを解決するため、活性化ループ(Thr538)に位置する第一のリン酸化部位をGluに変異させ、その結果、既に報告されているような構成的に活性な酵素を生じる(Newton 2001)。C末端ドメイン(Ser676およびSer695)に位置する2個の自己リン酸化部位は、変化しないままにしておくことができる。インヒビター存在下におけるこの変異体(PKCθ360−706/I381E/T538;M1c)の発現および精製により、結果として、非−、モノ−およびジ−リン酸化されたタンパク質の混合物が生じる。しかしながら、陰イオン交換クロマトグラフィー後に回収される完全にリン酸化されたタンパク質の全体としての収量は、低いままである。それらは、野生型(M1a)で得られるものの2倍未満である。この方法で得られる低量のタンパク質(1−2mg)は、正確な結晶化試験を行うには不十分である。野生型の、非リン酸化タンパク質沈殿物に注目すべきである。前記沈殿は、温度依存性であり、室温で数時間以内または4℃で数日以内に生じる。他のリン酸化部位のさらなる変異は、均一なタンパク質のより高い収量をもたらさない。3個のリン酸化部位変異体(PKCθ360−706/T538、S676E、S695E/M1g)の精製もまた、低量の安定なタンパク質を産し、結晶化に適当ではない。
【0111】
PKCθ360−706/M1cの自己リン酸化工程およびβ−MEまたはDTTのTCEP(より強力な還元剤)への交換を含む最適な精製プロトコルは、安定性の増大に貢献する。可溶性タンパク質の収量は、故に、湿細胞ペレット1gあたり1.5mgまで50倍増大され得る。十分なタンパク質が利用可能な時点で、大規模なスクリーニングを行うことができる。針状結晶は適度な回析を達性するが、六方晶形の結晶がよりよい回析を示す。すべての結晶は、それらをシンクロトンで測定する前に、低温室中4℃で予め凍結されているべきである。
【0112】
実施例7:構築物M1cの結晶化
2つの結晶化条件としては、以下を用い得る:
a.)細い針状結晶:
結晶化設定:蒸気拡散、ハンギング・ドロップまたはシッティング・ドロップ、ドロップ=1mlリザバーおよび1mlタンパク質溶液。リザバー緩衝液:70mM Tris−HCl pH=8.5、210mM LiSO4、23% PEG4000。タンパク質溶液:SPX緩衝液中10mg/ml。一般的に、結晶は4℃で2−3日以内に出現する。
b.)六方晶形:
結晶化設定:蒸気拡散、ハンギング・ドロップまたはシッティング・ドロップ、ドロップ=1ml リザバーおよび1mlタンパク質溶液。リザバー緩衝液:100mM カコジル酸ナトリウム pH=6.5、24% MPD、4% PEG8000。タンパク質溶液:SPX緩衝液中10mg/ml。一般的に、結晶は4℃で2−3日以内に出現する。2,5−ヘキサンジオールおよびスルホベタイン−195などの小さい有機分子を、添加剤として用いることができる。
【0113】
4℃で成長した六方晶形を、液体窒素に直接浸して4℃で凍結させ、その後、データ収集のためにシンクロトンに移す。結晶が、凍結前に室温まで温められる場合、それらは急速に劣化する。画像を、それぞれ1.0°の振幅、かつ結晶から装置までの距離が190mmで収集する。回析強度を、Swiss Light SourceのX06SAビームライン(波長=0.918396Å)でMAR CCD検出器にて統合する。生回析データを、HKL2000ソフトウェア・パッケージ(HKL Research Inc., Charlottesville, VA, USA)を用いて処理する。負の構造因子振幅および非常に弱い強度を、CCP4プログラム一式(Collaborative Computational Project, Number 4, 1994)のTRUNCATE(French and Wilson, 1978)により実行されるようなベイズ統計学を用いて推定する。
【0114】
実施例8:PKCθの結晶構造
前記構造を、検索モデルとして、酵母(PDB受入コード1FOT)由来のCAMP依存性タンパク質キナーゼのキナーゼドメインのアポ構造の座標の短縮変異体(残基82−341)を用いた分子置換により決定する。分子置換を、9.5から4.0間のデータを用いてAMoRe(Navaza 1994)で行う。溶液には、非対照単位(相関係数25.4%、R因子47.8%)で2分子が発見される。精製およびモデル構築に関して、それぞれ、CNXバージョン2000プログラム(Accelrys, San Diego, USA, / Bruenger, 1998)およびOバージョン7.0プログラム(Jones et al. 1991)を用いる。相互検証を、精製中に用いる。CNXで使用するためのトポロジーおよびパラメータを、XPLO2Dプログラムを用いて同定される座標から作成する(Kleywegt and Jones, 1997)。最終的な精緻化モデルの質は、CNXバージョン2000プログラムおよびPROCHECKプログラムで評価する(Laskowski et al. 1993)。
【0115】
X線データを、結晶と検出器の距離が190mmおよび暴露時間40秒で、VilligenのSwiss Light Sourceにて0.918396Åの波長で集めた。
【表5】

【0116】
結晶化した構築物には、残基360から706およびC末端の6個のヒスチジン残基のタグが含まれる。この構築物には、2個の変異体が存在する(I381EおよびT538E)。最初の変異体は、溶解性を増大し、そして2番目の変異体は、構成的に活性な酵素を有するためにホスホスレオニン残基に類似している。
【0117】
分子の折りたたみは、古典的bilobalキナーゼ折りたたみである。N末端ドメイン(残基375−463)は、主に、5個のβ−シート鎖と1個のα−ヘリックスからなる。C−末端ドメイン(残基464−657)は、主に、α−ヘリックス要素からなる。C−末端テイル(残基658−712)は、分子の周りを覆っている。インヒビターは、ATP結合部位の2個のドメイン間に置かれている。インヒビターとタンパク質間には多くの接触がある。
【0118】
結晶の非対照単位中、2個のタンパク質分子がある。N末端残基360から374は、両分子にて不規則である。分子Aにて、C−末端テイルは、チロシン664の側鎖とインヒビター間の直接的な結合を作ることにより、インヒビター結合部位を通る。分子Bにて、C末端テイルとインヒビターが結合し得る結合領域は、隣接する分子と結合する結晶により妨げられる。故に、残基B658−B673を置換する。この領域では、電子密度が明確でなく、この部分が不規則であることを示している。C末端残基A701−A712およびB712−B712も、同様に不規則である。分子B中C末端His−タグは、結晶結合により安定であるため、部分的に可視である。合計648残基が、706のうちから発見されている。
【0119】
精緻統計値とは、構造が適当なR因子(19.7%)で精緻化され、その形状が与えられる解像度として期待できる範囲にあることを示す。X線データは、Cys540が両方のサブユニットで修飾されていることを明らかにする。測定された電子密度には、1個の非水素原子の伸長のための空間がある。さらに、1個のMPD分子が、2個の隣接分子間の接点で同定され得る。ファン・デル・ワールスを有するMPD分子は、以下: A:F597、B:M467およびB:I470で接する。MPD分子のキラリティーを、2.32Å解像度での電子密度に基づいて決定することができない。
【表6】

【0120】
結晶化の最適条件の発見は、数時間以内に凝集するというタンパク質の高い傾向のために困難である。一旦、タンパク質がリン酸化されると、結晶化するために十分な時間がある。主な問題は、リン酸化されていないタンパク質の難溶性である。しかしながら、リン酸化は、改善された安定性に対する1つの局面にすぎない。タンパク質は、温度の変化にも感受性である。タンパク質は4℃で安定であるが、液体窒素での凍結前に室温に移された結晶は、急速に劣化する(約1時間以内)。
【0121】
C−末端テイルは、結晶中に見られ得る2個の異なる立体構造を有し、このループが、環境に容易に順応して、少なくとも一部フレキシブルであることを示す。Cys540の修飾(非対照単位中両分子に見られる)は、望まれないジスルフィド結合の形成を阻害する役割を果たし得る。タンパク質の調製において、還元剤の選択は二量体形成の防止に重要である。結晶化の前には、質量分析により示されるようにタンパク質の修飾はない。これは、それが結晶化の間に起こることを意味する。これは、結晶化スクリーンのリザバー溶液中カコジル酸塩緩衝液の存在により生じることが多い。キナーゼドメインは、ペプチド結合なしで酵母のPKA中に見られるものと同じ開いた立体構造をとる。
【0122】
閉じた、リガンドと結合した立体構造をとるためには、前記ドメインを、互いに向かって約15度回転させなければならない。リガンドと結合していない、リン酸化PKB構造(PDB:1GZK; Yang et al. 2002)は、抑制的PKCθ構造よりもさらに開いている。
【0123】
インヒビターは、分子モデリングにより示唆されるようにゆるく結合している。インヒビター、3−(8−ジメチルアミノメチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−ピリド−[1,2−a]インドール−10−イル)−4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)−ピロール−2,5−ジオンの結合したエナンチオマーのキラリティーは、Rである。インヒビターのスクシンイミド基とタンパク質間の3個の主な水素結合を、確認することができる。インヒビター:N15からWat28を通るAsp508:Oまでの水を介した水素結合がある。これは、モデリングのみでの予測が不可能である特徴である。この部位の極性基は、化合物の溶解性に重要である。さらに、C−末端テイルは、ATP結合部位に近接近となる。ファン・デル・ワールス結合は、フェニルアラニン664とインヒビターのメチル化インドールフラグメントの間に形成される。
【0124】
前記活性化ループは、1つはホスホセリン残基と予想されるような、溶媒の方向に向いているGlu538で活性化された立体構造中にある。これは、基質結合溝が開き、基質に到達可能であることを意味する。
【0125】
グリシンに富んだループの電子密度は、よく定義されている。分子Aにて、2個のリシン残基K388およびK393が、ホスホセリンpS676に対して達するこのループに位置する。水素結合は、3.5−3.6Åの範囲である。分子Bにて、ホスホセリン残基pS676は、変換されており、溶媒の方向に向いている。
【0126】
C−末端テイル中のターン・モチーフは、両方の分子中でリン酸化されている(Ser676)。このリン酸化部位は、活性に不可欠であることが報告されている(Newton, 2001)。分子Bにて、残基658から673は、全く定義されていない。それらは、隣接する分子と接する結晶により置換され、不規則である。残基674から687は、分子Aに関して置換され、より高い移動性を示す十分に高いB−因子を有する。リン酸化されていないPKBにて、対応する配列の部分は、構築物中に見あたらないか、または不規則のどちらかである。A. Newton(2001)に記載のように、疎水性モチーフは、活性ループのリン酸化が推測される上流キナーゼ(PDK−1)の認識配列として非リン酸化状態で役割を果たす。一旦、疎水性モチーフがリン酸化されると、それは遮蔽され、もはやPDK−1と結合できなくなる。高度に可変性の疎水性モチーフの後ろのC−末端残基は、キナーゼの細胞内分布に重要である(Newton, 2001)。リン酸化部位(Ser695)の前の2個のフェニルアラニン残基(691、694)は、N末端ドメインに対する構造的アンカーとしての役割を果たす。
【0127】
前記テイルトレーシングの大部分は実質的に異なるが、その顕著な特徴は、疎水性モチーフは構造的に保存され、そしてN末端片の同じ位置に固定されることである。このモチーフは、PKCファミリー中だけでなく、PKAおよびPKBファミリーでも高度に保存されている。PKA構造(1ATPおよび1FOT)にて、疎水性モチーフは、PKCθに見られるものと全く同じ方法で結合する。PKCθのリン酸化部位は、疎水性モチーフの第二のフェニルアラニン残基のアミノ酸鎖末端であるため、PKAには存在しない。PKB構造にて、Yangらによる報告(2002)では、リン酸化されていない疎水性モチーフは、構築物中に存在することが主張されているが、構築物中で不規則である。リン酸化されていない疎水性モチーフは、構造のN末端突出部(lobe)と相互作用する可能性を保持していると仮定することができる。それにもかかわらず、電子密度は、構造のこの部分に見出されず、この部分がフレキシブルであることを示す。PKCにて、本発明者らは、そのリン酸化型において、N末端突出部に結合する疎水性モチーフを発見した。このことは、リン酸化されていない形態がN末端突出部と結合するという仮定がありそうもないことを示している。リン酸化形態が結合し、リン酸化されていないものがフレキシブルである可能性がある。これはまた、リン酸化されていないタンパク質が、凝集するそのような高い傾向を有する理由を、よく説明する。PKAにて、疎水性モチーフは、PKCθにおけるのと全く同じ方法で結合する。疎水性モチーフの後ろのリン酸化部位は、PKAでは見られないが、C末端の陰性荷電がそれを補い得る。
【0128】
両分子にて、溶媒に到達可能なCys540は、メチル化されるか、または酸化されることが分かっている。メチル化は、結晶化スクリーニングにおいてリザバー溶液に由来するカコジル酸塩緩衝液により起こり得る。結晶化準備前の質量分析では、いかなる修飾も検出されなかった。
【0129】
【表7】

【0130】
参考文献:
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【0131】
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【0132】
表1:PKCθ結晶についての原子座標
【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【配列表】


















































【特許請求の範囲】
【請求項1】
a=152.33±5Å、b=152.33±5Å、c=78.84±5Å;α=90.0度、β=90.0度、γ=120.0度の単位格子寸法を有する、PKCθの触媒ドメインを含むPKCθの結晶。
【請求項2】
PKCθの触媒ドメインを含むPKCθの結晶であって、該触媒ドメインが、表1の原子構造座標を含む立体構造をとる結晶。
【請求項3】
PKCθの触媒ドメインが、配列番号:2の配列、そのフラグメントまたは相同体を含む、請求項1または2記載の結晶。
【請求項4】
PKCθの触媒ドメインの変異体の結晶であって、該変異体が、配列番号:3から配列番号:20の変異体、そのフラグメントまたは相同体の群から選択される結晶。
【請求項5】
PKCθの触媒ドメインが、少なくともATP結合部位を含む、請求項3または4記載の結晶。
【請求項6】
少なくとも1個のリガンドまたは低分子量化合物と結合した、請求項1−5のいずれか一項記載の結晶。
【請求項7】
コンピュータ読み取り可能なデータをコードするデータ記憶媒体を含むコンピュータ読み取り可能な媒体であって、該データが、PKCθの触媒ドメインを含む表1の原子座標を含む媒体。
【請求項8】
PKCθの結晶を作製する方法であって、以下:
(i)配列番号:1の全長PKCθの精製工程、
(ii)全長PKCθ(配列番号:1)またはPKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)の適当な宿主細胞における発現工程、
(iii)所望のPKCθドメインの精製工程、
を含む方法。
【請求項9】
工程(ii)の発現が、PKCθインヒビターの存在下に起こる、請求項8記載のPKCθの結晶を作製する方法。
【請求項10】
PKCθの触媒ドメインが、セリン676部位またはセリン695部位、もしくは両方の部位にてリン酸化される、請求項8または9記載の結晶を作製する方法。
【請求項11】
PKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)、PKCθの触媒ドメインの変異体(配列番号:3から配列番号:20)、フラグメント、相同体、またはPKCθのN末端伸長した触媒ドメインを用いる、請求項8−10記載の結晶を作製する方法。
【請求項12】
PKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)、PKCθの触媒ドメインの変異体(配列番号:3から配列番号:20)、フラグメント、相同体、またはPKCθのN末端伸長した触媒ドメインが、結晶化の前の任意の工程にて少なくとも1個のリガンドまたは低分子量化合物と結合する、請求項8−10記載の方法。
【請求項13】
PKCθの触媒ドメインの立体構造を決定する方法であって、以下:
(i)PKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)、PKCθの触媒ドメインの変異体(配列番号:3から配列番号:20)、フラグメント、相同体、またはPKCθのN末端伸長した触媒ドメインの使用を含むPKCθの結晶化工程、
(ii)表1の原子座標を全部または一部利用し、PKCθの触媒ドメインの立体構造を決定する工程、
を含む方法。
【請求項14】
PKCθの触媒ドメイン(配列番号:2)、PKCθの触媒ドメインの変異体(配列番号:3から20)、フラグメント、相同体、またはPKCθのN末端伸長した触媒ドメインを含む複合体の立体構造が少なくとも1個のリガンドと結合するかを決定する方法であって、以下:
(i)複合体の結晶に関するX線回析データを得る工程、
(ii)表1の原子座標を全部または一部利用し、複合体の立体構造を決定する工程、
を含む方法。
【請求項15】
PKCθの触媒ドメインに結合する、リガンドまたは低分子量化合物を同定する方法であって、以下:
(i)一連の表1の原子座標に全部または一部由来するPKCθの触媒ドメインの立体構造を用いる工程、
(ii)PKCθの触媒ドメインに結合するリガンドまたは低分子量化合物を選択する工程、
を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載のPKCθの触媒ドメインに結合するリガンドまたは低分子量化合物を同定する方法であって、PKCθの触媒ドメインが、少なくとも該ドメインのATP結合部位を含む方法。
【請求項17】
PKCθの活性を阻害するリガンドの選択に用いるための、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
PKCθの触媒ドメインに結合し得るリガンドまたは低分子量化合物を設計する方法であって、以下:
(i)表1の原子座標を全部または一部用いて、PKCθの触媒ドメインの立体構造を決定する工程、
(ii)該PKCθの触媒ドメインを候補リガンドまたは低分子量化合物で探索し、どれがPKCθの触媒ドメインに結合するかを決定する工程、
(iii)PKCθの触媒ドメインに結合する前記リガンドまたは低分子量化合物を選択する工程、
(iv)結合する前記リガンドまたは低分子量化合物を改変し、溶解性、親和性、特異性または有効性などの物理的特性を最大化する工程、
を含む方法。
【請求項19】
候補リガンドまたは低分子量化合物をコンピュータ内でスクリーニングする、請求項18記載のリガンドを設計する方法。
【請求項20】
PKCファミリーメンバーの触媒ドメインの立体構造を決定するために、表1の原子座標を全部または一部用いてPKCファミリーメンバーに結合し得るリガンドまたは低分子量化合物を設計する方法。
【請求項21】
PKCθの活性を阻害するリガンドの設計に用いるための、請求項18−20記載の方法。
【請求項22】
Tリンパ球および/またはPKCファミリーメンバーが関与する疾患または状態の予防または処置に使用するための、請求項15−21記載の方法により同定または設計されるリガンドを含む医薬組成物。


【公表番号】特表2006−521791(P2006−521791A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501968(P2006−501968)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001969
【国際公開番号】WO2004/076654
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】