説明

プロテクタ

【課題】例えば車両衝突時に固定先の移動を許容することが可能なプロテクタを提供する。
【解決手段】プロテクタ2は、電線1に対する収容空間8を有し、この収容空間8は、電線1の余長部22を収容する余長収容空間21を含む。また、プロテクタ2は、電線1に押されて破断する破断部18を有する。プロテクタ2の余長収容空間21に収容された電線1の余長部22は、例えば車両衝突時に引き出される。これにより、余長部22の分だけ固定先3の移動が可能になる。固定先3の移動が可能であれば、固定先3へのダメージを緩和することも可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線又は電線束を貫通収容するプロテクタであって、固定先の所定位置に組み付け固定されるプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、ワイヤハーネスが配索されている。ワイヤハーネスは、電線や電線束を含んで構成されており、バッテリーからの電力を機器等に供給したり、機器間を電気的に接続したりすることができるようになっている。このようなワイヤハーネスには、プロテクタが設けられている。プロテクタは、車両における固定先の所定位置に組み付け固定されて、ワイヤハーネスの配索経路を規制したり、ワイヤハーネスを保護したりすることができるようになっている。
【0003】
従来のプロテクタは、電線又は電線束を貫通収容し、そして、電線又は電線束を動かない状態にした上で、上記所定位置に組み付け固定されるようになっている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−256415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のプロテクタにあっては、これに貫通収容した部分の電線又は電線束を動かない状態にしていることから、また、電線又は電線束に余長を持たせてないことから、例えば車両衝突時にプロテクタの固定先が移動しようとしても、電線又は電線束が移動を阻止する方向に突っ張ってしまい、結果、車両衝突時の力が上記固定先に掛かって固定先がダメージを受けてしまうという問題点を有している。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、例えば車両衝突時に固定先の移動が可能なプロテクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のプロテクタは、収容空間と該収容空間に連続する開口部とを有して電線又は電線束を貫通収容するプロテクタであって、固定先の所定位置に組み付け固定されるプロテクタにおいて、前記収容空間は、前記電線又は前記電線束の余長部を収容する余長収容空間を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の本発明のプロテクタは、請求項1に記載のプロテクタにおいて、前記余長部の引き出しを可能とする前記開口部の近傍に、前記電線又は前記電線束に押されて破断又は変形する破断部又は変形部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された本発明によれば、電線又は電線束の余長部を収容可能な余長収容空間を有するプロテクタであり、このプロテクタの余長収容空間に収容された余長部を引き出せるようにすることで、例えば車両衝突時においては固定先の移動を可能にすることができるという効果を奏する。これにより、固定先へのダメージを緩和することができるという効果も奏する。
【0010】
請求項2に記載された本発明によれば、外力を受けて破断又は変形する破断部又は変形部を有することから、破断又は変形の分だけ更に長く固定先の移動を可能にすることができるという効果、或いは、破断又は変形の分だけ余長部を短くすることができるという効果を奏する(余長部を短くするという場合は、電線材料の削減効果、重量削減効果につながる)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のプロテクタに係る図であり、固定先の移動前後のプロテクタ及び電線の状態に係る斜視図である。
【図2】本発明のプロテクタを固定先に組み付け固定した状態を示す斜視図である。
【図3】固定先が移動した時のプロテクタ及び電線の状態に係る斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
プロテクタは、電線又は電線束に対する収容空間を有し、この収容空間は、電線又は電線束の余長部を収容する余長収容空間を含む。また、プロテクタは、電線又は電線束に押されて破断又は変形する破断部又は変形部を有する。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明のプロテクタに係る図であり、固定先の移動前後のプロテクタ及び電線の状態に係る斜視図である。また、図2は本発明のプロテクタを固定先に組み付け固定した状態を示す斜視図、図3は固定先が移動した時のプロテクタ及び電線の状態に係る斜視図である。
【0014】
以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができるものとする。
【0015】
図1において、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスは、電線1と、この電線1の端末に設けられる電気接続用のコネクタ(図示省略)とを含んで構成されている。電線1は、プロテクタ2に貫通収容されている。尚、電線1に替えて電線束を用いてもよいものとする。また、ハーネスと読み替えてもよいものとする。
【0016】
プロテクタ2は、電線1を貫通収容した状態で車両における固定先3の所定位置に組み付け固定されている。この組み付け固定に関しては、図示しないボルトが用いられるようになっている(一例であるものとする)。
【0017】
プロテクタ2は、電線1の配索経路を規制することのできる形状に形成されている。また、プロテクタ2は、電線1を外部から保護することのできる形状にも形成されている。プロテクタ2は、本発明に係る特徴を有しており、以下の説明から分かるようになるが、例えば車両衝突時において固定先3の移動を可能にすることができるようになっている。
【0018】
ここで、矢印Aで指す方向は、車両衝突時における固定先3の移動方向であるものとする。矢印Aは図の下方を指す矢印であるが、実際には車両の前方から後方へ向けて指す矢印であるものとする。矢印Aを後方へ向けての矢印であるものとすると、矢印Bは前方へ向けての矢印であるものとする。
【0019】
図1及び図2において、プロテクタ2は、電線1を収容する略溝状のプロテクタ本体4と、このプロテクタ本体4に係合するプロテクタカバー5とを備えて構成されている。プロテクタ本体4及びプロテクタカバー5は、共に絶縁性を有する樹脂材料にて樹脂成型されている。プロテクタ本体4及びプロテクタカバー5は、本実施例において別体構成であるが、ヒンジを形成して一体にすることも可能であるものとする。
【0020】
プロテクタ2は、プロテクタ本体4の後述する前面位置の開口をプロテクタカバー5により覆うようにして形成されている。このようなプロテクタ2は、電線1を貫通収容することから、電線1を導出する(引き出す)第一開口部6と、第二開口部7とを有するように形成されている。また、プロテクタ2は、電線1を貫通収容することから、第一開口部6及び第二開口部7に連続する収容空間8を有するように形成されている。さらに、プロテクタ2は、固定先3の所定位置に対し組み付け固定されることから、組み付け固定部9、10を有するように形成されている。
【0021】
プロテクタ本体4は、この前面位置(図中上側)が開口するとともに、第一開口部6及び第二開口部7の位置も開口する略溝状となる形状に形成されている。プロテクタ本体4は、略溝状となる形状であることから、後面側(図中下側)となる底壁11と、この底壁11の側縁部に立設する側壁12、13とを有している。また、プロテクタ本体4は、第一開口部6の位置に電線支持部14を有するとともに、側壁12、13の端縁位置に組み付け固定部9、10を有している。底壁11と側壁12、13との間には、収容空間8が形成されている。
【0022】
第一開口部6は、電線1の軸に直交する矢印Cの第一交差方向に沿って幅広く開口するように形成されている。また、第一開口部6は、第一交差方向Cに直交する第二交差方向Dに沿う開口間隔が電線1の直径に合わせて一定となるように形成されている。
【0023】
第一開口部6には、電線支持部14が形成されている。電線支持部14は、電線1の引き出し(導出)をする際にガイドとなるような形状に形成されている。
【0024】
第二開口部7は、第一開口部6の反対側となる位置に開口する開口部であって、電線1の直径に合わせたサイズに開口形成されている。第二開口部7は、電線1を一本だけ導出することができる分の開口サイズに形成されている。
【0025】
側壁12、13は、湾曲するように形成されている。側壁12、13の間隔は、第一開口部6から第二開口部7に向けて狭くなるように設定されている。このような側壁12、13に設けられる組み付け固定部9、10は、固定先3の所定位置に対する固定面15と、図示しないボルトを挿通するボルト挿通孔16とを有している。
【0026】
プロテクタカバー5は、略板状の部材であって、プロテクタ本体4における前面位置(図中上側)の開口全体を覆うことができる形状に形成されている。プロテクタカバー5とプロテクタ本体4は、例えば係止突起及び係止枠部等の公知のロック構造にて係合するようになっている。プロテクタカバー5は、カバー本体17と、破断部18と、これらの境界部分となるスリット19とを有している。
【0027】
カバー本体17は、固定先3に押さえつけられる部分として形成されている。また、破断部18は、電線1に押されて破断する部分として形成されている。破断部18は、本実施例において、固定先3側に開く略蓋状となる形状に形成されている。破断部18は、第一開口部6の近傍に配置形成されている。スリット19の形成部分は、残った肉厚部分がヒンジとして機能するようになっている。破断部18の端部には、鍔部20が形成されている(鍔部20の形成は任意であるものとする)。
【0028】
尚、破断部18に替えて次のような部分を形成してもよいものとする。すなわち、電線1に押されて変形する変形部を形成してもよいものとする。
【0029】
破断部18は、固定先3の移動方向(矢印Aの方向)に対し略逆方向(矢印Bの方向)に電線1の後述する余長部22を引き出すことができるように、また、上記の破断を行うことができるように形成されている。
【0030】
収容空間8は、余長収容空間21を有している。この余長収容空間21は、電線1の余長部22を収容する空間として形成されている。余長部22は、電線1の余長であって、固定先3の移動量を考慮して長さが設定されている。収容空間8は、余長収容空間21の分だけ大きくなるように形成されている。収容空間8は、電線1を単に収容する空間ではなく、余長部22に配慮した余長収容空間21を有する空間に形成されている。
【0031】
上記構成及び構造において、図2に示す如く、電線1に余長部22を形成しつつプロテクタ本体4の収容空間8に電線1を貫通収容し、その上でプロテクタ本体4における前面位置(図中上側)の開口をプロテクタカバー5にて覆うと、電線1とプロテクタ2の組み付けが完了する。又は、プロテクタ本体4の収容空間8に電線1を貫通収容するとともに、プロテクタ本体4の上記開口をプロテクタカバー5にて覆い、その上で電線1を押し込むようにして余長部22を形成しつつ、この余長部22を余長収容空間21に収容すると、電線1とプロテクタ2の組み付けが完了する。
【0032】
プロテクタ2は、電線1を貫通収容した状態で車両における固定先3の所定位置に組み付け固定される。電線1は、余長収容空間21に余長部22を収容した状態で第一開口部6における電線支持部14の位置から引き出される。
【0033】
図1及び図3において、電線1は余長部22を有することから、また、プロテクタ2は余長収容空間21を有することから、例えば車両衝突時に固定先3が矢印A方向に移動しようとした場合を考えると、この移動は電線1に押されて破断する破断部18と、余長部22の引き出しにより許容される。電線1は、余長部22の引き出しにより固定先3の移動を阻止することはなく、また、突っ張ってしまうこともないことから、車両衝突時の力は固定先3に掛からず、結果、固定先3はダメージを受けることがない。
【0034】
本実施例をまとめると、本発明に係るプロテクタ2は、電線1に対する収容空間8を有し、この収容空間8は、電線1の余長部22を収容する余長収容空間21を含む。また、プロテクタ2は、電線1に押されて破断する破断部18を有する。プロテクタ2の余長収容空間21に収容された電線1の余長部22は、例えば車両衝突時において引き出される。固定先3は、余長部22の長さ分だけ移動が可能になる。固定先3の移動が可能であれば、固定先3へのダメージを緩和することが可能になる。
【0035】
この他、本発明によれば、外力を受けて破断する破断部18を有することから、破断部18の分だけ更に固定先3の移動が可能になる。従って、固定先3へのダメージが更に緩和される。
【0036】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1…電線
2…プロテクタ
3…固定先
4…プロテクタ本体
5…プロテクタカバー
6…第一開口部(開口部)
7…第二開口部(開口部)
8…収容空間
9、10…組み付け固定部
11…底壁
12、13…側壁
14…電線支持部
15…固定面
16…ボルト挿通孔
17…カバー本体
18…破断部
19…スリット
20…鍔部
21…余長収容空間
22…余長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間と該収容空間に連続する開口部とを有して電線又は電線束を貫通収容するプロテクタであって、固定先の所定位置に組み付け固定されるプロテクタにおいて、
前記収容空間は、前記電線又は前記電線束の余長部を収容する余長収容空間を含む
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテクタにおいて、
前記余長部の引き出しを可能とする前記開口部の近傍に、前記電線又は前記電線束に押されて破断又は変形する破断部又は変形部を形成する
ことを特徴とするプロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−228129(P2012−228129A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95820(P2011−95820)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】