説明

プロトン感受性Gタンパク質共役型受容体およびそのDNA配列

本発明は、ある種のGタンパク質共役型受容体(GPCR)、特にOGR1、GPR4およびTDAG8(TDAG8はGPR65とも呼ばれる)ポリペプチド、およびそのようなGPCRポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの新規に認められた有用性、診断におけるそれらの使用、該GPCRに対するアゴニストまたはアンタゴニストである化合物を同定する方法、ならびにそのようなポリペプチドおよびポリヌクレオチドの生産に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン感受性Gタンパク質共役型受容体(以下、本明細書では、「プロトン感受性GPCR」と呼ぶ)ポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの新たに特定された使用、そのようなプロトン感受性GPCRのアゴニスト、アンタゴニストである化合物の診断および同定でのそれらの使用、ならびにそのようなポリペプチドおよびポリヌクレオチドの生産に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は、カルシウム代謝における役割の他、pHホメオスタシスを調節する主要な役割も果たしている。骨は、細胞が媒介するプロセスにより迅速に(化学平衡)およびゆっくりと動員され得る大きな緩衝能を持っている(Bushinsky DA, 2001, Eur J Nutr, 40: 238-244)。慢性アシドーシスでは、骨吸収が高まり、対照的にアルカローシスは骨形成を促進する傾向にある(Lemann J, et al., 1966, J Clin Invest, 45: 1608-1614; Arnett TR, et al., 1996, Bone, 18: 277-279; Bushinsky DA, 1996, Am J Physiol, 271:F216-222; Bushinsky DA, 1999, Am J Physiol, 277: F813-819)。栄養素が適量に満たず、腎機能が低下するために、高齢者は軽度の慢性アシドーシスを呈することが多く、骨吸収の増加に至り、骨粗鬆症の発症を助長する(Bushinsky DA, 2001, Eur J Nutr, 40: 238-244; Frassetto LA, et al., 1996, Am J Physiol, 271: F1114-22)。骨細胞において機能しているpH感受機構はまだ分かっていない。
【0003】
喘息では、多くの反応性窒素および酸素種の気道濃度が高い。これらの種の安定性および生物活性はpH依存的である。空気が消費された後の気道呼気凝結物(dearated exhaled airway vapor condensate)のpHは、対照被験体よりも急性喘息患者の方が2ログオーダー低く、コルチコステロイド療法によって正常に戻るが、このことは、気道pHが気道炎症の重要な決定因子であることを示唆している(Hunt JF, et al., 2000, Am J Resp, 161: 694-699)。気道が酸性であると好酸球壊死を加速することが示されており、これもまた、気道炎症の役割を示唆している(Hunt JF, et al., 2000, Am J Resp, 161: 694-699)。ここでもまた、気道における細胞pH感受機構は分かっていない。さらに、最近では、細胞外での好中球の活性化がそれらの活性化を誘発することが分かった(Trevani AS, et al., 1999, J Immunology, 162: 4849-4857)。好中球は感染性病原体に対する宿主の防衛に重要な役割を果たし、過度の炎症症状の病因に関与している(Ganz TM, et al., 1988, Ann Intern Med, 109:127)。好中球の自発的なアポトーシスの遅延における細胞外アシドーシスの効果について報告がされており、好中球機能の寿命を延長することもまた、気道炎症における酸性化の役割を示唆している(Trevani AS, et al., 1999, J. Immunol, 162:4849-4857)。気道炎症における酸性化の役割を支持する他の証拠としては、低pH(<6.5)におけるヒト気管支上皮外植片での絨毛収縮頻度の低下または消失(Luk KA, et al., 1983, Clin Sci, 64:449-451)、呼吸器粘液の粘度に対する低pHの影響(Holma BO, 1985, Sci Total Environ, 41:101-123)、およびモルモットモデルにおける咳に対する気道酸性化の影響(Ricciardo FLM, et al., 1999, Am J Resp Crit Care Med, 159:557-562)が挙げられる。
【0004】
アシドーシスは、腫瘍(Wike-Hooley et al., Radiother Oncol 1984, 2: 343-66)および虚血(Webster KA, Cardivasc. Toxicol. 2003, 3: 283-98)など、血管新生が重要な役割を果たすことが知られている種々の疾病の顕著な特徴である。しかしながら、内皮細胞に対するアシドーシスの影響はよく理解されていない。最近、細胞外pHが酸性であると、内皮細胞がアポトーシスから保護されることが示された(Terminella et al., Am. J. Physiol lung Cell Mol Physiol 2002, 283: L1291-302)。さらに、アシドーシスは、多量のVEGFまたはbFGFの産生および存在にもかかわらず、10%FCSにより刺激される内皮細胞の増殖、移動ならびに毛細血管形成を阻害した(D'Arcangelo et al., Circ. Res. 2000, 86: 312-8)。酸性細胞外pHの存在下では、三次元コラーゲンゲル中で培養した動脈輪からの微小血管の成長に著しい遅延が見られた。この遅延はVEGFおよびbFGFなどの外因性増殖因子の存在下で低下したが、このことは、このような場合には多量の血管新生性増殖因子が存在することから、in vivo血管新生応答が依然として生じ得ることを示す(Burbridge et al., Angiogenesis 1999, 3: 281-88)。
【0005】
むしろ腫瘍では、有害な酸性環境が、腫瘍の発達、腫瘍細胞の移動および浸潤の誘導(Martinez-Zaguilan et al, Clin Exp. Metastasis 1996, 14, 176-86)、マトリックス分解性メタロプロテアーゼ(MMP)の分泌(Kato et al, Cell Biol. Intn1996, 20.375-7)、ならびにin vitroおよびin vivo双方における、腫瘍細胞からの血管内皮細胞増殖因子(VEGF)(Shi et al., Oncogene 2001, 20:3751-6)およびIL8(Shi et al., Clin Cancer Res. 1999, %: 3711-21; Karashima et al Clin Cancer Res 2003, 9: 2786-97)などの血管新生因子の産生を惹起すること(Fukumura et al., Cancer Res. 2001, 61: 6020-4)が示されている。
【0006】
GPR4(本明細書で、pHセンサーと同定されている)はHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)で発現されることが示されており、GPR4に対するsiRNAは、HUVECの増殖および管形成を低下させることが示された(Xu Y et al., 2003, First annual Atherothrombosis Summit: Arterial Inflammation (Sept. 17-19), abstract 5)。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、ある種のGタンパク質共役型受容体、特に、OGR1、GPR4およびTDAG8(TDAG8はGPR65とも呼ばれる)がプロトン感受性受容体(プロトン感受性GPCR)として働くという本発明者らの驚くべき発見に基づくものである。よって、本発明は、プロトン感受性機能を有するある種のGPCRの新規な使用、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、組換え材料およびそれらの製造方法に関する。このようなポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、限定されるものではないが、プロトンホメオスタシスが変更されている疾病および医学的状態、例えば、高レベルのプロトン、すなわち水素イオンが関与する疾病および医学的状態、例えば骨粗鬆症、特になどの過剰な骨損失の疾病、特に老年性骨粗鬆症および腎不全による骨粗鬆症をはじめとするある種の疾病の処置方法に関して注目されている。プロトン感受性GPCRは、骨代謝の他、呼吸や心血管機能の調節、ならびに炎症および虚血のような、血液供給の悪化(detoriation)と関連した病態に関与する可能性がある。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、本発明により提供される遺伝子およびポリペプチドを用いてプロトン感受性GPCRのアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば、阻害剤)を同定し、その同定された化合物で、プロトンの不均衡に関連する症状を処置する方法に関する。なおさらなる態様では、本発明は、不適切なプロトン感受性GPCR活性またはレベルに関連する疾病を検出する診断アッセイに関する。
【0009】
発明の説明
第1の態様において、本発明は、pHホメオスタシスにおける、ある種のGPCRポリペプチドの新規な使用に関する。
【0010】
このようなポリペプチドは、
(a)ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされる単離されたポリペプチド;
(b)配列番号1のポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、またはより好ましくは99%の同一性を有するポリペプチド配列を含む単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(c)配列番号1のポリペプチド配列と少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは32%、より好ましくは35%、より好ましくは45%の同一性を有するポリペプチド配列を含む単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(d)配列番号3のポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、またはより好ましくは99%の同一性を有するポリペプチド配列を含む単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(d)配列番号3のポリペプチド配列と少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは32%、より好ましくは35%、より好ましくは45%の同一性を有するポリペプチド配列を含む単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(e)配列番号4のポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、またはより好ましくは99%の同一性を有するポリペプチド配列を含む単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(f)配列番号4のポリペプチド配列と少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは32%、より好ましくは35%、より好ましくは45%の同一性を有するポリペプチド配列を含む単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(g)配列番号1、配列番号3または配列番号4のポリペプチド配列を含む単離されたポリペプチド;
(h)配列番号1のポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、またはより好ましくは99%の同一性を有する単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(i)配列番号1のポリペプチド配列と少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは32%、より好ましくは35%、より好ましくは45%の同一性を有する単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(k)配列番号3のポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、またはより好ましくは99%の同一性を有する単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(l)配列番号3のポリペプチド配列と少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは32%、より好ましくは35%、より好ましくは45%の同一性を有する単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(m)配列番号4のポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、またはより好ましくは99%の同一性を有する単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(n)配列番号4のポリペプチド配列と少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは32%、より好ましくは35%、より好ましくは45%の同一性を有する単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(o)配列番号1、配列番号3または配列番号4のポリペプチド配列;
(p)配列番号1、配列番号3または配列番号4のポリペプチド配列と比べた場合に、0.20、好ましくは0.30、より好ましくは0.32、より好ましくは0.35、より好ましくは0.45の同一性指数を有するポリペプチド配列を有する、または含む単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(q)(a)〜(p)のポリペプチドの断片および変異体;および
(r)CCL39ハムスター繊維芽細胞においてpH依存性リン酸イノシトールもしくはcAMP形成を示すか、またはCHOK1 CRE−luc細胞もしくはCCL39 CRE−luc細胞においてcAMPルシフェラーゼリポーターアッセイでpH依存性シグナルを示す(a)〜(p)のポリペプチド
からなる群から選択される。
【0011】
本発明のポリペプチドはGタンパク質共役型受容体ファミリーのポリペプチドのメンバーである。本明細書で定義したようなプロトン感受性GPCRポリペプチドの生物学的特性(例えば、骨粗鬆症、呼吸器系疾患、例えば、喘息、急性/成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および心血管疾患の発症に関連)を、以下、「プロトン感受性GPCRの生物活性」または「プロトン感受性活性」と呼ぶ。好ましくは、本発明のポリペプチドは上記で定義したようなプロトン感受性GPCRの少なくとも1つの生物活性を示す。より好ましくは、本発明のポリペプチドはOGR1、GPR4またはTDAG8の少なくとも1つの生物活性を示す。例えば、ヒトOGR1ポリペプチドおよびヒトTDAG8ポリペプチドの主要な生物学的特性は、限定されるものではないが、骨粗鬆症をはじめとする過剰な骨損失を伴う疾病、歯肉炎および歯周炎などの歯肉疾患、パジェット病、悪性の高カルシウム血症、例えば、腫瘍誘発性高カルシウム血症および代謝性骨疾患を含む骨吸収性疾患に関連している。さらに、ヒトGPR4の主要な生物学的特性は例えば、癌疾患(例えば、固形癌の処置)、心臓の疾患(例えば、心筋梗塞などの心血管疾病)、四肢疾患(例えば、末梢動脈閉塞疾病)、眼疾病(例えば、糖尿病性網膜症または黄斑変性)、関節炎(例えば、慢性関節リウマチ)、創傷の治癒が重要な疾病、および皮膚の疾病を招く血管新生に関連づけられている疾病(化合物、すなわち、促進作用または/および拮抗作用を有する化合物を修飾することがこれら疾病に役立ち得る)に関連している。さらにまた、GPR4は、例えば炎症性疾患または閉塞性気道疾患に関連づけられている疾病に関連し、例えば、組織損傷、気管支過敏性、再構築または疾病の進行の低下をもたらすが、この炎症性疾患または閉塞性気道疾患には、内因性(非アレルギー性)喘息と外因性(アレルギー性)喘息の双方、軽度喘息、中度喘息、重度喘息、気管支喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息および細菌感染後に誘発される喘息を含むいずれの型または起源の喘息であれ、喘息が含まれる。
【0012】
本発明のポリペプチドはまた、対立遺伝子型およびスプライス変異体をはじめとする、上述のポリペプチドの変異体も含む。このようなポリペプチドは、挿入、欠失、および保存的または非保存的であり得る置換、またはその任意の組合せによって参照ポリペプチドとは異なっている。特に好ましい変異体は、いくつかの、例えば50〜30、30〜20、20〜10、 〜5、5〜3、3〜2、2〜1または1個のアミノ酸が挿入、置換、または欠失を任意の組み合わせでなされているものである。
【0013】
本発明のポリペプチドの好ましい断片としては、配列番号1、配列番号3、配列番号4のアミノ酸配列に由来する少なくとも30、50または100個の連続するアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、あるいは、配列番号1、配列番号3、配列番号4のアミノ酸配列から末端切断または欠失された、少なくとも30、50または100個の連続するアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドが挙げられる。好ましい断片は、本発明のGPCR、特に、OGR1、GPR4またはTDAG8の生物活性を遮断または増強する生物学的に活性な断片であり、同等の活性のもの、または活性の向上したもの、または望ましくない活性の低下したものを含む。また、動物、特にヒトにおいて抗原性または免疫原性のある断片も好ましい。
【0014】
本発明のポリペプチドの断片は、ペプチド合成により対応する全長ポリペプチドを作製するために使用でき、従って、これらの変異体は本発明の全長ポリペプチドを作製するための中間体として用いることができる。本発明のポリペプチドは「成熟」タンパク質、またはおそらくは前駆体もしくは融合タンパク質などの、より大きなタンパク質の一部の形態であってもよい。分泌配列またはリーダー配列、プロ配列、例えば多重ヒスチジン残基などの、精製の助けとなる配列、または組換え生産中の安定性のための付加的配列を含む付加的アミノ酸配列を含むことが有利である場合が多い。
【0015】
本発明のポリペプチドは、例えば、天然の供給源から、もしくは発現系(下記参照)を含む遺伝子操作宿主細胞からの単離、または例えば自動ペプチド合成装置を用いた化学合成、またはこのような方法の組合せなどによる、いずれの好適な方法で作製してもよい。このようなポリペプチドの作製方法は当技術分野で十分に理解されている。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、pHホメオスタシスにおけるプロトン感受性GPCRポリヌクレオチドの新規な使用に関する。このようなポリヌクレオチドは、
(a)ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)、好ましくは、ヒトOGR1、ヒトTDAG8およびヒトGPR4のポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド;
(b)配列番号1のポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、またはより好ましくは99%の同一性を有するプロトン感受性GPCRポリペプチド配列をコードする単離されたポリヌクレオチド;
(c)配列番号1のポリペプチド配列と少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは32%、より好ましくは35%、より好ましくは45%の同一性を有するプロトン感受性GPCRポリペプチド配列をコードする単離されたポリヌクレオチド;
(d)配列番号3のポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、またはより好ましくは99%の同一性を有するプロトン感受性GPCRポリペプチド配列をコードする単離されたポリヌクレオチド;
(d)配列番号3のポリペプチド配列と少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは32%、より好ましくは35%、より好ましくは45%の同一性を有するプロトン感受性GPCRポリペプチド配列をコードする単離されたポリヌクレオチド;
(e)配列番号4のポリペプチド配列と少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、より好ましくは97%、より好ましくは98%、またはより好ましくは99%の同一性を有するプロトン感受性GPCRポリペプチド配列をコードする単離されたポリヌクレオチド;
(f)配列番号4のポリペプチド配列と少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは32%、より好ましくは35%、より好ましくは45%の同一性を有するプロトン感受性GPCRポリペプチド配列をコードする単離されたポリヌクレオチド;
(g)ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)のポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド;
(h)ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)のポリヌクレオチド配列;
(i)配列番号1、配列番号3または配列番号4のポリペプチド配列と比べた場合に、0.20、好ましくは0.30、より好ましくは0.32、より好ましくは0.35、より好ましくは0.45の同一性指数を有するポリペプチド配列をコードする単離されたポリヌクレオチド;
(q)(a)〜(i)のポリヌクレオチドの断片および変異体;および
(r)CCL39ハムスター繊維芽細胞においてpH依存性リン酸イノシトールもしくはcAMP形成を示すか、またはCHOK1 CRE−luc細胞もしくはCCL39 CRE−luc細胞においてcAMPルシフェラーゼリポーターアッセイでpH依存性シグナルを示すポリペプチドをコードする(a)〜(i)のポリヌクレオチド
からなる群から選択される。
【0017】
pHホメオスタシスの調節に用いるのに好ましいポリヌクレオチド断片としては、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)の配列に由来する少なくとも15、30、50または100個の連続するヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド、あるいは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシ OGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)の配列から末端切断または欠失された、少なくとも30、50または100個の連続するヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドが挙げられる。
【0018】
pHホメオスタシスの調節に用いるのに好ましいポリヌクレオチド変異体としては、スプライス変異体、対立遺伝子変異体、および多型(1以上の一塩基多型(SNP)を有するポリヌクレオチドを含む)が挙げられる。
【0019】
pHホメオスタシスの調節に用いられるポリヌクレオチドとしてはまた、配列番号1、配列番号3または配列番号4のアミノ酸配列を含み、いくつかの、例えば50〜30、30〜20、20〜10、10〜5、5〜3、3〜2、2〜1または1個のアミノ酸が挿入、置換、欠失または付加を任意の組合せでなされているポリペプチド変異体をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、本発明のDNA配列のRNA転写物である、pHホメオスタシスの調節に用いられるポリヌクレオチドを提供する。よって、
(a)配列番号1、配列番号3または配列番号4のポリペプチドをコードするDNA配列のRNA転写物を含むか;
(b)配列番号1、配列番号3または配列番号4のポリペプチドをコードするDNA配列のRNA転写物であるか;
(c)ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(NM_008152)のDNA配列のRNA転写物を含むか;または
(d)ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)のDNA配列のRNA転写物ならびにそれらと相補的なRNAポリヌクレオチドである
pHホメオスタシスの調節に用いられるRNAポリヌクレオチドが提供される。
【0021】
ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)のポリヌクレオチド配列は、配列番号1のポリペプチドをコードするcDNA配列である。この配列番号1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列はヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)の配列をコードするポリペプチドと同一であるか、または遺伝コードの冗長性(縮重)の結果として、それもまた配列番号1のポリペプチドをコードする、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)以外の配列であり得る。
【0022】
ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)のポリヌクレオチド配列は、配列番号3のポリペプチドをコードするcDNA配列である。この配列番号3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)の配列をコードするポリペプチドと同一であるか、または遺伝コードの冗長性(縮重)の結果として、それもまた配列番号3のポリペプチドをコードする、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)以外の配列であり得る。
【0023】
ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)のポリヌクレオチド配列は、配列番号4のポリペプチドをコードするcDNA配列である。この配列番号4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)の配列をコードするポリペプチドと同一であるか、または遺伝コードの冗長性(縮重)の結果として、それもまた配列番号4のポリペプチドをコードする、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)以外の配列であり得る。
【0024】
pHホメオスタシスの調節に用いられるポリヌクレオチドは、例えば脳、腎臓、肺および免疫系の細胞のmRNAに由来するcDNAライブラリーから、標準的なクローニングおよびスクリーニング技術を用いて得ることができる(OGR1の発現に関しては、例えば、Xu Y, et al., 2000, Nat Cell Biol, 2:261-267; Zhu K, et al., 2001, J Biol Chem, 276:41325-41335; Xu Y, et al., 1996, Genomics, 35:397-402を参照;GPR4の発現に関しては、An S, et al., 1995, FEBS Letts, 375:121-124を参照;TDAG8の発現に関しては、Kyaw H, et al., 1998, DNA Cell Biol, 17:493-500およびChoi JW, et al., 1996, Cell Immunol, 168:78-84を参照)(標準的なクローニング技術に関しては、例えば、Sambrook J, et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照)。本発明のポリヌクレオチドはまた、ゲノムDNAライブラリーなどの天然の供給源から得ることもできるし、あるいは、周知および市販の技術を用いて合成することもできる。
【0025】
本発明のポリヌクレオチドを、pHホメオスタシスの調節に用いるポリペプチドの組換え生産のために用いる場合、そのポリヌクレオチドはそれ自体、成熟型ポリペプチドのコード配列、あるいは、リーダー配列もしくは分泌配列、プレ−、もしくはプロ−もしくはプレプロ−タンパク質配列、または他の融合ペプチド部分をコードするものなどの他のコード配列を有するリーディングフレーム内の成熟型ポリペプチドのコード配列を含み得る。例えば、融合ポリペプチドの精製を助けるマーカー配列がコードされていてもよい。本発明のこの態様のある好ましい実施形態では、マーカー配列は、pQEベクター(Qiagen, Inc.)で提供され、また、Gentz R, et al., 1989, Proc Natl Acad Sci USA 86:821-824に記載されているヘキサヒスチジンペプチド、またはHAタグである。このポリヌクレオチドはまた、非コード5’および3’配列などの転写非翻訳配列、スプライシング・ポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位、およびmRNAを安定化させる配列を含み得る。
【0026】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、未知の種に由来するホモログを含め、あるライブラリーを、配列番号1、配列番号3もしくは配列番号4の配列、またはその断片、好ましくは、少なくとも15ヌクレオチドのものを有する標識プローブとのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でスクリーニングするステップ;および該ポリヌクレオチド配列を含む全長cDNAおよびゲノムクローンを単離するステップを含む方法により得ることができる。このようなハイブリダイゼーション技術は当業者に周知のものである。好ましいストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中、42℃で一晩インキュベーションした後、それらのフィルターを0.1×SSC中、約65℃で洗浄することを含む。従って、本発明はまた、あるライブラリーを、相補的な標識プローブとのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でスクリーニングすることにより得られた、すなわち、配列番号1、配列番号3もしくは配列番号4の配列、またはその断片、好ましくは、少なくとも15ヌクレオチドのものをコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズする、好ましくは少なくとも100からなるヌクレオチド配列を有する、pHホメオスタシスの調節に用いられる単離されたポリヌクレオチドも含む。
【0027】
当業者ならば、多くの場合、単離されたcDNA配列が、そのポリペプチドをコードする領域が5’末端に至るまで延びているわけではないという点で、不完全であることが分かるであろう。これは、本質的に「プロセッシビティ(processivity)」(重合反応中に酵素が鋳型に付着したままとなる一定の能力)が低く、第一鎖cDNA合成中にそのmRNA鋳型の完全なDNAコピーができない酵素である逆転写酵素の結果である。
【0028】
全長cDNA、または延長した短いcDNAを得るために利用でき、当業者に周知ないくつかの方法、例えば、迅速cDNA末端増幅法(Rapid Amplification of cDNA endsa, RACE) (例えば、Frohman MA, et al., 1988, Proc Nat Acad Sci USA, 85:8998-9002参照)がある。Marathon(商標)技術(Clontech Laboratories, Inc.)で例示される、この技術の最近の改良法では、例えば、より長いcDNAの探索が著しく簡単になっている。このMarathon(商標)技術(Clontech Laboratories, Inc.)技術では、選択組織から抽出したmRNAからcDNAを作製し、各末端に「アダプター」配列が連結してある。次に、遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーとアダプター特異的オリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用い、そのcDNAの「欠損した」5’末端を増幅するために核酸増幅(PCR)を行う。その後、「ネスティッド(nested)」プライマー、すなわち、増幅産物内でアニーリングするように設計されたプライマー(典型的には、アダプター配列にさらなる3’をアニーニングするアダプター特異的プライマーと、既知遺伝子配列にさらなる5’をアニーリングする遺伝子特異的プライマー)を用いてPCR反応を繰り返す。次に、この反応の産物を、DNAシーケンシングによって解析し、その産物を既存のcDNAに直接連結して完全な配列を得るか、または、5’プライマーのデザインに関する新たな配列情報を用いて、別に全長PCRを行うことにより全長cDNAを構築することができる。
【0029】
本発明の組換えポリペプチドは、発現系を含む遺伝子操作宿主細胞から、当技術分野で周知の方法によって作製することができる。よって、さらなる態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む発現系、そのような発現系で遺伝子操作されている宿主細胞、および組換え技術による本発明のポリペプチドの生産に関する。また本発明のDNA構築物に由来するRNAを用いてこのようなタンパク質を生産するには、無細胞翻訳系も使用できる。
【0030】
組換え生産のためには、本発明のポリヌクレオチドのための発現系またはその一部を組み込むべく、宿主細胞を遺伝子操作することができる。ポリペプチドは、Davis et al., 1986, Basic Methods in Molecular Biology and Sambrook J, et al. (同書)など、多くの標準的な実験マニュアルに記載されている方法により、宿主細胞に導入すればよい。
【0031】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入する好ましい方法としては、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)、感染が挙げられる。
【0032】
好適な宿主細胞の代表的な例として、連鎖球菌(Streptococci)、ブドウ球菌(Staphylococci)、大腸菌(E coli)、放線菌(Streptomyces)および枯草菌(Bacillus subtilis)などの細菌細胞;酵母細胞およびアスペルギルス細胞などの真菌細胞;ドロソフィラS2、スポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293およびBowes黒色腫などの動物細胞;ならびに植物細胞が挙げられる。
【0033】
非常に多様な発現系が使用でき、例えば、染色体、エピソームおよびウイルス由来の発現系、例えば、細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、酵母エピソーム由来、挿入要素由来、酵母染色体要素由来、バキュロウイルス、パポバウイルス(SV40など)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルス由来のベクター、ならびにコスミドとファージミドなど、プラスミドとバクテリオファージの遺伝要素に由来するものといったその組合せに由来するベクターがある。これらの発現系は発現を起こさせるだけでなく、発現を調節する制御領域を含んでいてもよい。一般に、ポリペプチドを生産するためのポリヌクレオチドを宿主内で維持、増殖、または発現させることができるいずれの系またはベクターを用いてもよい。適当なポリヌクレオチド配列を、例えば、Sambrook J, et al.(上記参照)で示されたものなど、様々な周知かつ慣例の技術のいずれによって発現系に挿入してもよい。小胞体の管腔、原形質周辺の空間または細胞外環境に翻訳されたタンパク質を分泌させるために、目的のポリペプチドに適当な分泌シグナルを組み込んでもよい。これらのシグナルはポリペプチドに内在していてもよいし、あるいは、異種シグナルであってもよい。
【0034】
本発明のポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿法、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーをはじめとする周知の方法により、組換え細胞培養物から回収および精製することができる。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィーを精製に用いる。ポリペプチドが細胞内合成、単離および/または精製の間に変性されている場合には、活性コンホメーションを再生するために、タンパク質の再折りたたみの周知の技術を用いればよい。
【0035】
本発明のポリヌクレオチドは、関連遺伝子の突然変異を検出することを通じて、診断試薬として使用してもよい。機能障害と関連する、cDNAまたはゲノム配列中での、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)のポリヌクレオチドによって特徴付けられる突然変異型の遺伝子の検出は、その遺伝子の発現不足、過剰発現、または空間的もしくは時間的発現の変更によって起こる疾病または疾病感受性の診断に加えることができる、または明確にすることができる診断手段を提供する。その遺伝子に突然変異を有する個体は、当技術分野で周知の様々な技術により、DNAレベルで検出され得る。
【0036】
診断用の核酸は、組織生検または剖検材料など、被験体の細胞から得ることができる。ゲノムDNAを直接検出に用いてもよいし、あるいは、分析前にPCR、好ましくはRT−PCR、またはその他の増幅技術を用いることでそれを酵素的に増幅させてもよい。また、同様にRNAまたはcDNAを用いてもよい。欠失や挿入は、正常な遺伝子型に比べた際の増幅産物の大きさの変化により検出することができる。点突然変異は、増幅したDNAと標識したOGR1ヌクレオチド配列をハイブリダイズさせることで同定することができる。完全一致配列は、RNアーゼ消化または融解温度の違いにより誤対合した二重らせんと判別することができる。
【0037】
また、DNA配列の違いは、変性剤を用いた、または用いないゲルにおけるDNA断片の電気泳動移動度の変化、または直接DNAシーケンシングによって検出することもできる(例えば、Myers RM, et al., 1985, Science, 230:1242-1246参照)。また、定の位置における配列変化は、RNアーゼおよびS1保護などのヌクレアーゼ保護アッセイ、または化学切断法によって解明することもできる(Cotton et al., 1985, Proc Natl Acad Sci USA, 85:4397-4401参照)。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドまたはその断片を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築し、例えば遺伝子突然変異の効率的スクリーニングを行うことができる。このようなアレイは好ましくは、高密度アレイまたはグリッドである。アレイ技術法は周知であり、全般的に当てはまり、遺伝子発現、遺伝連鎖、および遺伝変動をはじめとする分子遺伝学の様々な問題に取り組むために使用できる(例えば、Chee M, et al., 1996, Science, 274:610-613およびその中に引用されているその他の参照文献を参照)。
【0039】
また、異常に低い遺伝子または高いポリペプチドまたはmRNA発現レベルの検出は、本発明の疾病に対する被験体の感受性の診断または判定に使用できる。発現の低下または上昇は、例えば核酸増幅法(例えば、PCR、RT−PCR)、RNアーゼ保護、ノーザンブロット法およびその他のハイブリダイゼーション法など、アッセイポリペプチドの定量に関して当技術分野で周知のいずれかの方法を用いてRNAレベルで測定することができる。宿主由来のサンプルにおいて、本発明のポリペプチドなどをタンパク質レベルで測定するのに使用できるアッセイ技術は当業者に周知である。このようなアッセイ法としては、ラジオイムノアッセイ、競合結合実験、ウエスタンブロット解析およびELISAアッセイが挙げられる。
【0040】
よって、別の態様では、本発明は、
(a)本発明のポリヌクレオチド、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)のヌクレオチド配列、またはその断片もしくはRNA転写物;
(b)(a)のものに相補的なヌクレオチド配列;
(c)本発明のポリペプチド、好ましくは、配列番号1、配列番号3、配列番号4のポリペプチドまたはそのフラグメント;または
(d)本発明のポリペプチド、好ましくは、配列番号1、配列番号3、配列番号4のポリペプチドに対する抗体
を含む診断キットに関する。
【0041】
このようないずれのキットにおいても、(a)、(b)、(c)または(d)は実質的成分を含み得る。このようなキットは疾病、中でも特に本発明の疾病または疾病に対する感受性の診断において用いられる。
【0042】
本発明のポリペプチドは、例えば、脳、腎臓、肺および免疫系細胞で発現される(Xu Y, et al., 2000, Nat Cell Biol, 2:261-267; Zhu K, et al., 2001, J Biol Chem, 276:41325-41335; Xu Y, et al., 1996, Genomics, 35:397-402)。
【0043】
本発明のさらなる態様は、抗体に関する。本発明のポリペプチドもしくはそれらの断片、またはそれを発現する細胞は、本発明のポリペプチドに免疫特異性のある抗体を生産するための免疫原として使用できる。「免疫特異性のある」とは、それらの抗体が、先行技術における他の関連ポリペプチドに対するそれらの親和性よりも本発明のポリペプチドに対して実質的に大きな親和性を有することを意味する。本発明のポリペプチドに対して作製される抗体は、通常のプロトコールを用いて、動物、好ましくは非ヒト動物に、ポリペプチドもしくはエピトープ含有断片、または細胞を投与することにより得ることができる。モノクローナル抗体の作製に関しては、連続細胞株培養によって産生される抗体が得られるいずれの技術を用いてもよい。例としては、ハイブリドーマ技術(Kohler G and Milstein C, 1975, Nature, 256:495-497)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor D, et al., 1983, Immunology Today, 4:72)およびEBV−ハイブリドーマ法(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, 77-96, Alan R. Liss, Inc.)が挙げられる。
【0044】
また、米国特許第4,946,778号に記載されているものなど、単鎖抗体の生産のための方法を、本発明のポリペプチドに対する単鎖抗体を生産するために適合することもできる。また、トランスジェニックマウス、またはその他の生物(その他の哺乳類を含む)用いてヒト化抗体を発現させてもよい。
【0045】
上記の抗体を用い、ポリペプチドを発現するクローンを単離もしくは同定すること、またはアフィニティークロマトグラフィーによりポリペプチドを精製することができる。また、本発明のポリペプチドに対する抗体を用いて、中でも本発明の疾病を処置することもできる。
【0046】
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドはまた、ワクチンとしても使用できる。よって、さらなる態様において、本発明は、哺乳類において免疫応答を誘導する方法に関し、その方法は、抗体を生産し、かつ/または例えば、サイトカイン産生T細胞または細胞傷害性T細胞をはじめとするT細胞免疫応答を生じて疾病(この疾病はその個体にすでに確立されたものであっても、そうでなくともよい)その動物を保護するのに十分な本発明のポリペプチドを哺乳類に接種することを含む。また、哺乳類における免疫応答は、免疫応答などを誘導し、抗体を生産して、本発明の疾病から動物を保護するために、本発明のポリペプチドを、そのポリヌクレオチドの発現を指示し、かつ、そのポリペプチドをコードしているベクターを介してin vivo送達することを含む方法により誘導することもできる。ベクターを投与する1つの方法として、それを粒子上のコーティングとしてまたは他の方法で目的細胞内への該ベクターを挿入(accelerating)することにより投与するものがある。このような核酸ベクターはDNA、RNA、修飾した核酸、またはDNA/RNAハイブリッドを含んでもよい。ワクチンの使用に関しては、ポリペプチドまたは核酸ベクターは通常、ワクチン製剤(組成物)として提供される。この製剤は、好適な担体をさらに含んでもよい。ポリペプチドは胃で分解され得るので、非経口投与(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または皮内注射)が好ましい。非経口投与に好適な製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、およびその製剤をレシピエントの血液と等張にする溶質を含んでもよい水性および非水性の無菌注射液;ならびに沈殿防止剤または増粘剤を含んでもよい水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。
【0047】
これらの製剤は、単位用量容器または複数用量容器、例えば、密閉アンプルおよびバイアルで提供してもよく、使用直前に無菌液体担体を加えるだけでよい凍結乾燥状態で保存してもよい。このワクチン製剤はまた、水中油系およびその他当技術分野で公知の系など、製剤の免疫原性を高めるためのアジュバント系を含んでもよい。用量はワクチンの比活性によって異なり、慣例の実験により容易に決定することができる。
【0048】
本発明のポリペプチドは、1以上の病態の予防および処置に適切な1以上の生物機能を有する。このような病態は本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたは活性が異常な、すなわち、正常な範囲内にはない疾病である。このような疾病としては、例えば、ニューモシスティス・カリニ(pneumocystis carinii)、クルーズ・トリパノソーマ(trypsanoma cruzi)、ブルース・トリパノソーマ(trypsanoma brucei)、クリチジア・フシクラータ(crithidia fusiculata)などの生物の感染、ならびに住血吸虫症およびマラリアなどの寄生虫疾患、腫瘍(腫瘍浸潤および腫瘍転移)、ならびに異染性白質萎縮症、筋ジストロフィー、筋萎縮症(amytrophy)および同様の疾病などの他の疾病が挙げられる。さらに、本発明のポリペプチドは、過剰な骨損失を伴う疾病(骨粗鬆症を含む)、歯肉疾患(歯肉炎および歯周炎など)、パジェット病、悪性の高カルシウム血症(例えば、腫瘍誘発性高カルシウム血症および代謝性骨疾患)に関連づけることができる。さらに、本発明のポリペプチドは、過剰な軟骨または基質の分解の疾病(変形性関節症および慢性関節リウマチを含む)、ならびに高レベルのタンパク質分解酵素および基質分解の発現を含むある種の新生物性疾患に関連づけることもできる。さらに、本発明のポリペプチドは、アテローム性動脈硬化症(アテロームの斑破裂および不安定化を含む)をはじめとする冠動脈疾患、自己免疫疾患、呼吸器系疾患および免疫介在疾患(移植拒絶症を含む)にも関連づけることができる。さらに、本発明のポリペプチドは、様々な起源(例えば、若年性、更年期性、閉経後、外傷後、老齢またはコルチコステロイドを原因とするもの、または不活動性)の骨粗鬆症にも関連づけることができる。
【0049】
さらに、本発明のポリペプチドは、炎症性または閉塞性気道疾患にも関連づけることができ、組織損傷、気管支過敏性、再構築または疾病の進行の低下をもたらす。本発明が適用できる炎症性または閉塞性気道疾患としては、内因性(非アレルギー性)喘息と外因性(アレルギー性)喘息の双方、軽度喘息、中度喘息、重度喘息、気管支喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息および細菌感染後に誘発される喘息を含むいずれの型または起源の喘息であれ喘息が含まれる。また、喘息を有する被験体には、喘鳴症状を示し、「喘鳴幼児(wheezy infants)」として診断される、または診断可能な、例えば、4歳または5歳未満の被験体も含まれるが、この「喘鳴幼児」は医学的関心が大きい確立された患者のカテゴリーであり、現在では、初発または初期段階の喘息患者とされる場合が多い(便宜上、この特定の喘息症状を「喘鳴幼児症候群」と呼ぶ)。さらに、本発明のポリペプチドは、喘息の予防的処置にも関連づけることができ、これは症候性発作、例えば、急性喘息発作もしくは気管支収縮発作の頻度もしくは重篤度の軽減、肺機能の改善または気道過敏性の改善により証明される。それはさらに、他の対症療法、すなわち、症候性発作が起こった際にそれを制限または阻止することを意図する療法、例えば、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド)または気管支拡張薬の必要が少なくなることで証明される。喘息予防の利益は特に、「モーニング・ディッピング(morning dipping)」傾向がある被験体に顕著である。「モーニング・ディッピング」は、かなりの割合の喘息患者に共通で、例えば、午前4時〜6時の間、すなわち、事前に投じた対症喘息療法から通常相当な時間が経った時の喘息発作を特徴とする認知された喘息症候群である。さらに、本発明のポリペプチドは、急性肺損傷(ALI)、急性/成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺(pulmonary)、気道または肺(lung)疾患(COPD、COADまたはCOLD)(慢性気管支炎またはそれに関連する呼吸困難、気腫を含む)、ならびに他の薬物療法、特に他の吸入薬物療法の気道過敏性の結果の憎悪など、他の炎症性または閉塞性気道疾患および症状にも関連づけることができる。本発明のポリペプチドはまた、例えば、急性、アラキジン酸性、カタル性、クループ性(croupus)、慢性、または結核胸性気管支炎をはじめとする、いずれの種類または起源の気管支炎にも関する。本発明の本ポリペプチドが関連するさらなる炎症性または閉塞性気道疾患としては、例えば、アルミニウム症、炭粉症、石綿症、石粉症、ダチョウ塵肺症、鉄症、珪肺症、煙草症、および綿肺症をはじめとする、いずれの型または起源の塵肺(慢性であれ急性であれ、塵埃の吸入を繰り返すことで起こり、しばしば気道閉塞を伴う炎症性の、一般には職業性の肺疾患)が上げられる。特に、好酸球の活性化の阻害に関してそれらの抗炎症性活性に注目されていることから、本発明のポリペプチドは、例えば、好酸球増加症、特に、気道および/または肺に作用する場合には過好酸球増加症、ならびに例えば、レフレル症候群の結果、または同時に発症する好酸球関連気道疾患、好酸球増加性肺炎、寄生虫(特に、後生動物)感染症(熱帯性好酸球増加症を含む)、気管支肺アスペルギルス症、結節性多発性動脈炎(チャーグ−ストラウス症候群)、好酸球増加性肉芽腫、および薬物反応によって起こる気道に影響を及ぼす好酸球関連疾患などを含む、気道の好酸球関連疾患(例えば、肺組織の病的な好酸球浸潤を含む)にも関連する。
【0050】
有益な作用は、一般に当技術分野で公知であり、本明細書に示されているようにin vitroおよびin vivo薬理試験において評価される。上記に挙げられている特性は、有利には哺乳類、例えば、ラット、マウス、イヌ、ウサギ、サルまたは単離器官および組織、ならびに天然の、または例えば組換え技術によって作製された哺乳類酵素調製物を用い、in vitroおよびin vivo試験で証明することができる。例えば実施例10など、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって得ることができる本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニストは、溶液、例えば好ましくは水溶液または水性懸濁液の形でin vitroで、また、例えば懸濁液として、もしくは水溶液で、または固形のカプセルもしくは錠剤製剤として、腸内または非経口、有利には経口にてin vivoで適用することができる。喘息または類似の疾病の場合、アゴニストおよびアンタゴニストの送達は、肺へ直接行ってよい。in vitro用量は約10−5モル〜10−9モル濃度の範囲であってよい。in vivo用量は、投与経路に応じて、約0.1〜100mg/kgの範囲であってよい。
【0051】
スクリーニング方法:本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよびポリペプチドに対する抗体はまた、細胞におけるmRNAおよびポリペプチドの産生に対する、加えた化合物の作用を検出するスクリーニング方法を構成するために使用することもできる。例えば、当技術分野で公知の標準的な方法により、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を用いて、分泌された、または細胞と会合しているポリペプチドのレベルを測定するためにELISAアッセイを構成することができる。これは、適宜操作された細胞または組織からのポリペプチドの産生を阻害または増強し得る薬剤(それぞれアンタゴニストまたはアゴニストとも呼ばれる)を発見するために使用できる。
【0052】
本発明のポリペプチドは、当技術分野で公知の標準的な受容体結合技術によって、膜結合型または可溶性受容体(存在する場合)を同定するために使用できる。これらには、限定されるものではないが、リガンド結合アッセイおよび架橋アッセイが含まれ、そこでは、このポリペプチドは放射性同位元素(例えば、125I)で標識されるか、化学修飾されるか(例えば、ビオチン化)、または検出もしくは精製に好適なペプチド配列と融合されるか、推定される受容体の供給源(細胞、細胞膜、細胞上清、組織抽出物、体液)とともにインキュベートされる。他の方法としては、表面プラズモン共鳴および分光法などの生物物理技術が挙げられる。これらのスクリーニング方法はまた、もし、あればその受容体に対するポリペプチドの結合と競合するポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニスト(存在する場合)を同定するためにも使用できる。このようなアッセイを行うための標準的な方法は当技術分野で十分理解されている。
【0053】
本発明のポリペプチドのアンタゴニストの例としては、そのポリペプチドの抗体、または場合によってはそのリガンド、基質、受容体、酵素などに密接に関連するオリゴヌクレオチドもしくはタンパク質、場合によっては、ポリペプチド、例えば、そのリガンド、基質、受容体、酵素などの断片;あるいは、本発明のポリペプチドと結合するが、応答は惹起せず、従って、そのポリペプチドの活性が妨げられる小分子が挙げられる。
【0054】
スクリーニング方法には、トランスジェニック技術も含まれ得る。トランスジェニック動物を構築する技術は十分に確立されている。例えば、OGR1、GPR4またはTDAG8遺伝子を、受精卵母細胞への雄性前核へのマイクロインジェクション、移植前または移植後の胚へのレトロウイルス導入、またはエレクトロポレーションなどにより遺伝的に修飾された胚幹細胞の、宿主胚盤胞への注入によって導入することができる。特に有用なトランスジェニック動物は、動物のある遺伝子がその動物のゲノム内のヒト相同物で置換されている、いわゆる「ノックイン」動物である。ノックイントランスジェニック動物は、その化合物がヒト標的に特異的である場合の標的のバリデーションにため、創薬のプロセスに有用である。もう1つの有用なトランスジェニック動物が、本発明のポリペプチドの動物オーソログであって、細胞内に内在するDNA配列によってコードされているものの発現が部分的または完全に無効にされている、いわゆる「ノックアウト」動物である。遺伝子のノックアウトは特定の細胞または組織に向けることができるか、またはこの技術の制限の帰結としてある特定の細胞または組織にだけ起こり得るか、またはその動物の全て、もしくは実質的に全て細胞で起こり得る。また、トランスジェニック動物技術から、導入された遺伝子が発現されて本発明のポリペプチドが大量に得られる、動物全体発現−クローニング系も得られる。
【0055】
上記の方法で用いられるスクリーニングキットは本発明のさらなる態様をなす。このようなスクリーニングキットは、
(a)本発明のポリペプチド;
(b)本発明のポリペプチドを発現する組換え;
(c)本発明のポリペプチドを発現する細胞膜;または
(d)本発明のポリペプチドに対する抗体;このポリペプチドは好ましくは、配列番号1、配列番号3または配列番号4のものである
を含む。このようはキットのいずれにおいても、(a)、(b)、(c)または(d)は実質的成分を含み得ることが分かるであろう。
【0056】
用語集
以上で頻繁に用いた用語の理解を助けるために、以下の定義を示す。
【0057】
本明細書において「抗体」とは、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、およびヒト化抗体、ならびにFabもしくはその他の免疫グロブリン発現 ライブラリーの産物を含むFab断片を含む。
【0058】
「単離された」とは、人の手でその天然の状態から変更されていること、すなわち、それがもし天然に存在するとすれば、その元の環境から変化されているか、または取り出されている、あるいはその双方であることを意味する。本明細書でこの用語を用いる際、例えば、生きている生物体に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離された」ものではないが、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドでも、その天然状態で一緒に存在している材料から分離されたものは「単離されている」。さらに、形質転換、遺伝子操作、他のいずれかの組換え手法によって生物体に導入されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その生物体(この生物は生きていても死んでいてもよい)になお存在するとしても「単離されている」。
【0059】
「ポリヌクレオチド」とは一般に、いずれものポリリボヌクレオチド(RNA)またはポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)をさし、これは非修飾型であっても修飾型のRNAまたはDNAであってもよい。「ポリヌクレオチド」とは、限定されるものではないが、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖と二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖または、より典型的には二本鎖、または一本鎖と二本鎖領域の混合物であってもよいDNAとRNAを含むハイブリッド分子を含む。さらに、「ポリヌクレオチド」とは、RNAもしくはDNA、またはRNAとDNAの双方を含む三重らせん領域もさす。「ポリヌクレオチド」とはまた、1以上の修飾塩基を含有するDNAまたはRNA、および安定性またはその他の理由で修飾された骨格を有するDNAまたはRNAも含む。
【0060】
「修飾された」塩基としては、例えば、トリチル化塩基、およびイノシンなどの特殊な塩基が挙げられる。様々な修飾がDNAやRNAに対して行えることから、「ポリヌクレオチド」は通常自然界に見られるようなポリヌクレオチドの、化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態、ならびにウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、しばしばオリゴヌクレオチドと呼ばれる比較的短いポリヌクレオチドも包含する。
【0061】
「ポリペプチド」とは、ペプチド結合または修飾型ペプチド結合、すなわち、ペプチドイソステアによって互いに連結された2以上のアミノ酸を含むポリペプチドをさす。「ポリペプチド」とは、一般にペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる単鎖と、一般にタンパク質と呼ばれる長鎖の双方をさす。ポリペプチドは遺伝子にコードされている20種のアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。「ポリペプチド」は、翻訳後プロセッシングなどの天然のプロセス、または当技術分野で周知の化学修飾技術のいずれかによって修飾されたアミノ酸配列を含む。このような修飾は基本的なテキスト、より詳しい単行本、ならびに大ボリュームの研究論文に十分記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシル末端をはじめ、ポリペプチドのどこにあってもよい。同じタイプの修飾であっても、あるペプチドのいくつかの部位において同じ程度または異なる程度で存在し得ることが分かるであろう。また、あるポリペプチドが多くのタイプの修飾を含んでもよい。ポリペプチドはユビキチン化の結果として分枝することがあり、それらは環状であっても、分枝していても、分枝していなくてもよい。環状ポリペプチド、分枝ポリペプチド、および分枝環状ポリペプチドは翻訳後の天然プロセスから生じ得るし、または合成法によって作製してもよい。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、ビオチン化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトール(phosphotidylinositol)の共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカーの形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化(racernization)、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化のようなトランスファーRNAにより媒介されるタンパク質に対するアミノ酸の付加、およびユビキチン化が挙げられる(例えば、Proteins - Structure and Molecular Properties, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993; Wold, F., Post- translational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, 1-12, in Post-translational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, 1983; Seifter et al, “Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors”, Meth Enzymol, 182, 626-646, 1990, and Rattan et al., “Protein Synthesis: Post-translational Modifications and Aging”, Ann NY Acad Sci, 663, 48-62, 1992参照)。
【0062】
ポリペプチド配列の「断片」とは、参照配列よりも短いが、配列番号1、配列番号3または配列番号4の参照ポリペプチドと本質的に同じ生物機能または活性を保持するポリペプチド配列をさす。ポリヌクレオチド配列の「断片」とは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)の参照配列よりも短いポリヌクレオチド配列をさす。
【0063】
「変異体」とは、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるが、その本質的な特性を保持しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドをさす。ポリヌクレオチドの典型的な変異体は、参照ポリヌクレオチドとヌクレオチド配列が異なる。変異体のヌクレオチド配列の変化は参照ポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドのアミノ酸配列を変化させるものであってもなくてもよい。ヌクレオチドの変化は、以下で述べるように、参照ポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドのアミノ酸の置換、付加、欠失、融合、および末端切断をもたらすことがある。ポリペプチドの典型的な変異体は、参照ポリペプチドとアミノ酸配列が異なる。通常、改変は参照ポリペプチドと変異体の配列が全体として緊密に類似し、多くの領域で同一であるように制限されている。変異体と参照ポリペプチドは、1以上の置換、挿入、欠失のいずれかの組合せによってアミノ酸配列が異なってよい。置換または挿入アミノ酸残基は遺伝コードによってコードされているものであってもなくてもよい。典型的な保存的置換としては、Gly、Ala;Val、lle、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln、Ser、Thr;Lys、Arg;およびPheとTyrが挙げられる。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は対立遺伝子などの天然に存在するものであってもよいし、あるいは、天然に存在することが知られてない変異体であってもよい。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの非天然変異体は、突然変異誘発法または直接合成によって作成できる。また、変異体としては、1以上の翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、リン酸化、メチル化、ADPリボシル化などを有するポリペプチドも含まれる。具体例として、N末端アミノ酸のメチル化、セリンおよびトレオニンのリン酸化、ならびにC末端グリシンの修飾が挙げられる。
【0064】
「対立遺伝子」とは、ゲノム内のある遺伝子座に存在する、ある遺伝子の2以上の選択形態のうちの1つをさす。
【0065】
「多型」とは、ある集団内のゲノムの、ある位置におけるヌクレオチド配列(および適切であれば、コードされるポリペプチド配列)のバリエーションをさす。
【0066】
「一塩基多型」(SNP)とは、ある集団内のゲノムの、ある1つのヌクレオチド位置におけるヌクレオチド変動性の存在をさす。SNPは2つの遺伝子内にでもゲノムの遺伝子間領域内にでも存在し得る。SNPは対立遺伝子特異的増幅(ASA)を用いてアッセイすることができる。この方法には、少なくとも3つのプライマーが必要である。アッセイする多型に対する逆相補物においては共通プライマーを用いる。この共通プライマーはその多型塩基に由来の50〜1500bpの間であり得る。他の2つ(またはそれ以上)のプライマーは、その最後の3’塩基が、その多型をなしている2つ(またはそれ以上)の対立遺伝子の1つと一致するように揺らぎがあること以外は、互いに同一である。次に、それぞれ共通プライマーと対立遺伝子特異的プライマーのうちの1つを用いて、サンプルDNAに対して2通り(またはそれ以上)のPCR反応を行う。
【0067】
本明細書において「スプライス変異体」とは、最初に同じゲノムDNA配列から転写されたが、選択的RNAスプライシングを受けた、RNA分子から生じたcDNA分子をさす。選択的RNAスプライシングは、一次RNA転写物が、通常にはイントロンの除去のためにスプライシングを受け、各々が異なるアミノ酸配列をコードし得る1を超えるmRNA分子の産生をもたらす場合に起こる。スプライス変異体とはまた、上記のcDNA分子によってコードされるタンパク質もさす。
【0068】
「同一性」とは、配列比較によって決定される、2以上のポリペプチド配列または2以上のポリヌクレオチド配列の間の関係をさす。一般に、同一性とは、比較する配列の長さにわたっての、2つのポリヌクレオチド配列または2つのポリペプチド配列の、それぞれ、ヌクレオチドとヌクレオチド、またはアミノ酸とアミノ酸の正確な一致をさす。
【0069】
「同一性%」−正確に一致しない配列については、「同一性%」を判定することができる。一般に、比較する2つの配列をアラインして、その配列間の最大相関を求める。これには、アライメントの程度を高めるために一方または両方の配列に「ギャップ」を挿入することを含んでもよい。同一性%は、比較する各配列の全長にわたって決定してもよいし(いわゆる、グローバルアライメントで、長さが同じか、非常によく似ている配列に特に適している)、あるいは、より短い所定の長さにわたって決定してもよい(いわゆる、ローカルアライメントで、長さの異なる配列に適している)。
【0070】
「バランスのとれていないpH領域/バランスのとれていないプロトンホメオスタシス」−正常な動脈のpHの範囲(7.36〜7.44)は、その正常な集団のほぼ2標準偏差を包含し、この範囲の外側はいずれも異常とみなされる。臨床上、「安全な」pH範囲は約7.30〜7.52であり、この範囲内では、pHはそれ自体で通常、生命を脅かすことはない。この範囲の外側のpHは、酵素活性が変化し、心筋の刺激性が高まるために生命を脅かす可能性があり、pHを正常に戻すために直接的ステップをとらなければならない(情報源:http://www.mtsinai.org/pulmonary/books/physiology/chap7_1.htm)。よって、「バランスのとれていないpH領域/バランスのとれていないプロトンホメオスタシス」とは、本特許出願の文脈では、7.36〜7.44の外の局所pHまたは全身pHであることを意味する。
【0071】
「類似性」とは、2つのポリペプチド配列の間の関係のさらに、より厳密な指標である。一般に、「類似性」とは、(同一性に関して)比較する各配列からの残基対間の正確な一致だけでなく、正確に一致しない場合に、進化に基づき、ある残基が別のものの置換である可能性があるかどうかも考慮して、1残基対1残基に基づく2つのポリペプチド鎖のアミノ酸間の比較を意味する。この可能性には「スコア」が付随し、次にそれから2つの配列の「類似性%」を求めることができる。
【0072】
2以上の配列の同一性および類似性を比較するための方法は当技術分野で周知である。よって、例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package version 9.1 (Devereux J et al, Nucleic Asids Res, 12, 387-395, 1984, available from Genetics Computer Group, Madison, Wisconsin, USA)において入手可能なプログラム、例えば、BESTFITおよびGAPのプログラムを用いて、2つのポリヌクレオチド配列間の同一性%および2つのポリペプチド配列間の類似性%を求めることができる。BESTFITは、Smith and Watermanの「ローカルホモロジー」アルゴリズム(J Mol Biol, 147,195-197, 1981, Advances in Applied Mathematics, 2, 482-489, 1981)を用い、2つの配列間の最も良い1つの類似性領域を見つけ出す。BESTFITは、長さが類似でない2つのポリヌクレオチド配列または2つのポリペプチド配列を比較するのにより適しており、このプログラムでは、短い方の配列が長い方の配列の一部に相当するかどうかを推定する。比較の際、GAPは2つの配列をアラインし、Neddleman and Wunschのアルゴリズム(J Mol Biol, 48, 443-453, 1970)に従って「最大類似性」を見つけ出す。GAPはほぼ同じ長さの配列を比較するのにより適しており、アライメントはその全長にわたって予測される。好ましくは、各プログラムに用いるパラメーター「ギャップ・ウェイト(Gap Weight)」と「レングス・ウェイト(Length Weight)」はそれぞれ、ポリヌクレオチド配列に対しては50と3であり、ポリペプチド配列に対しては12と4である。同一性および類似性%は、比較する2つの配列が最適にアラインされた場合に求めるのが好ましい。
【0073】
配列間の同一性および/または類似性を求めるその他のプログラムもまた当技術分野で公知であり、例えば、BLAST系のプログラム(Altschul S F et al, J Mol Biol, 215, 403-410, 1990, Altschul S F et al, Nucleic Acids Res., 25:389-3402, 1997, the National Center for Biotechnology Information (NCBI), Bethesda, Maryland, USAから入手可能、www.ncbi.nlm.nih.govでNCBIのホームページにアクセスできる)およびFASTA(Pearson W R, Methods in Enzymology, 183, 63-99, 1990; Pearson W R and Lipman D J, Proc Nat Acad Sci USA, 85, 2444-2448,1988, the Wisconsin Sequence Analysis Packageの一部として入手できる)がある。
【0074】
ヌクレオチド配列が、比較前にまずアミノ酸へ翻訳される場合を含め、ポリペプチド配列の比較には、BLOSUM62アミノ酸置換マトリックス(Henikoff S and Henikoff J G, Proc. Nat. Acad Sci. USA, 89, 10915-10919, 1992)を用いるのが好ましい。
【0075】
参照ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に対して問題のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の同一性%を求めるためには、BESTFITプログラムを用いるのが好ましく、その問題の配列と参照配列を最適にアラインし、プログラムのパラメーターは上記したようなデフォルト値に設定する。
【0076】
「同一性指数」は、候補配列(ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)と参照配列の比較に用い得る配列の関係性の指標である。よって、例えば、参照ポリヌクレオチド配列と比較した場合に同一性指数0.95を有する候補ポリヌクレオチド配列は、候補ポリヌクレオチド配列が参照配列のヌクレオチド100個につき平均して最大5個の差異を含み得る他は、参照配列と同一である。このような差異は、少なくとも1つのヌクレオチド欠失、置換(トランジションおよびトランスバージョンを含む)、または挿入からなる群から選択される。これらの差異は参照ポリヌクレオチド配列のまたは5’または3’末端の位置、またはこれらの末端間のいずれかの位置にあってもよく、参照配列のヌクレオチドの間に個々に散在していても、または参照配列内の1以上の連続する群にあってもよい。言い換えれば、参照ポリヌクレオチド配列と比較した場合に同一性指数0.95を有するポリヌクレオチド配列を得るということは、以上に記載したように、参照配列のヌクレオチド100個につき平均して最大5〜25個が欠失、置換または挿入されているか、またはそのいずれかの組合せである可能性がある。
【0077】
同様に、ポリペプチドに関しては、例えば、参照ポリペプチド配列と比較した場合に同一性指数0.95を有する候補ポリペプチド配列は、そのポリペプチド配列が参照配列のアミノ酸100個につき平均して最大5個の差異を含み得る他は、参照配列と同一である。このような差異は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的および非保存的置換を含む)、または挿入からなる群から選択される。これらの差異は参照ポリペプチド配列のアミノ末端またはカルボキシ末端の位置、またはこれらの末端間のいずれかの位置にあってもよく、参照配列のアミノ酸の間に個々に散在していても、または参照配列内の1以上の連続する群にあってもよい。言い換えれば、参照ポリペプチド配列と比較した場合に同一性指数0.95を有するポリペプチド配列を得るということは、以上に記載したように、参照配列のアミノ酸100個につき平均して最大5個が欠失、置換または挿入されているか、またはそのいずれかの組合せである可能性がある。
【0078】
ヌクレオチドまたはアミノ酸差異の数と同一性指数との間の関係は以下の方程式:
≦x−(x・I)
[式中、
はヌクレオチドまたはアミノ酸差異の数であり、
は、それぞれ、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)において列挙したようなヌクレオチ、または配列番号1、配列番号3、もしくは配列番号4のアミノ酸の総数であり、
Iは同一性指数であり、
・は乗算演算子の記号であり、xとIの積が整数でない場合は、xから差し引く前に切り捨てて最も近い整数とする]
で表すことができる。
【0079】
「ホモログ」は、参照配列に対して高い程度の配列関連を有するポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を示すために当技術分野で用いる一般用語である。このような関係性は、以上で定義したように、その2つの配列間の同一性および/または類似性の程度を求めることで定量することができる。「オーソログ」および「パラログ」という用語もこの一般用語内に入る。「オーソログ」とは、別種のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能的等価物であるポリヌクレオチドまたはポリペプチドをさす。「パラログ」とは、機能的に類似の、同種内のポリヌクレオチドまたはポリペプチドをさす。
【0080】
「融合タンパク質」とは、2つの無関連の融合遺伝子またはその断片によってコードされるタンパク質をさす。
【0081】
限定されるものではないが、特許および特許出願をはじめ、本明細書に引用されている全ての刊行物および参照文献は、個々の刊行物または参照文献の各々が完全に示され、引用することにより本明細書の一部とされることが具体的かつ個々に示されているかのように、引用することによりそのまま本明細書の一部とされる。本願が優先権を主張する特許出願もまた、刊行物および参照文献に関して上記したように、引用することによりそのまま本明細書の一部される。
【実施例】
【0082】
実施例1:OGR1のクローニングおよび安定細胞株の作成:
CCL39ハムスター繊維芽細胞、HEK 293ヒト胎児腎細胞、およびMG63ヒト骨肉腫細胞(全てATCC = American type culture collection, Manassas, USAからの細胞株)を、重炭酸緩衝DMEMとハムのF12培地(10%ウシ胎児血清および抗生物質を添加)の1:1混合物中、CO雰囲気下、pH7.4で増殖させる。ヒト小柱骨由来前骨芽細胞の一次培養物を確立し、先に詳細に記載したように培養する(Sottile V, et al., 2002, Bone, 30:699-704)。ヒトOGR1の発現ベクターを、ヒトゲノムDNA(U48405,NM_003485)由来のこの受容体のcDNAをpcDNA3.1(+)/myc−His(Invitrogen, Basel, Switzerland)にクローニングすることによって調製する。部位特異的突然変異誘発を、Stratagene (Basel, Switzerland)製のQuick Changeキットを用いて行う。安定トランスフェクションのためには、ベクターをPvuIで線状化する。安定トランスフェクションおよび一時的トランスフェクションは、Effectene試薬(Qiagen, Basel, Switzerland)を用いて行う。受容体を発現する安定細胞調製物を、抗生物質G418(400μg/ml)で選択した後に単離する。導入遺伝子の発現および膜局在を、FITC標識抗myc抗体(Zymed/Stehelin & Cie, Basel, Switzerland)を用いて免疫細胞化学を行うことにより確認する。
【0083】
実施例2:OGR1はIP形成を活性化するプロトン感受性Gタンパク質共役型受容体である
リン酸イノシトール(IP)形成アッセイ:バッファーおよびpH:IP形成実験用の塩 溶液を、広いpH範囲をカバーするように、HEPES単独(20mM)またはHEPES/EPPS/MES(各8mM)のいずれかで緩衝させる。HEPESは4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸であり、EPPSはN’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸であり、MESは2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸である。全ての溶液のpHを、注意深く較正したpHメーター(Metrohm, Herisau, Switzerland)を用い、室温で示された値に調整する。この報告の全てのデータは室温でのpHに対して示されている。本発明者らの較正実験によれば、37℃でのpHを得るためには、pH6.8〜7.8の範囲のHEPESバッファーに関しては0.15pH単位を差し引かなければならない。IP形成アッセイ。24ウェルプレートで増殖させた密集細胞培養を、血清フリーDMEM培地中で24時間、ミオ[H]イノシトール(100MBq/ml;ART/Anawa Trading, Wangen-Duebendorf, Switzerland)で標識する。次に、細胞を、130mMのNaCl、0.9mMのNaHPO、5.4mMのKCl、0.8mMのMgSO、1.8mMのCaCl、25mMのグルコースを含有する緩衝塩溶液中、37℃でインキュベートする。イノシトールモノホスファターゼ活性を遮断するためにリチウム(20mM)を加え、IPを蓄積させる(Berridge MJ, et al., 1982, Biochem J, 206:587-595; Berridge MJ and Irvine RF, 1989, Nature, 341:197-205)。示されている場合には、ウシトロンビンまたはSPC(ともにSigma, Buchs, Switzerland製)を、リチウム添加の1分前に加える。特に断りのない限り、インキュベーションを20分間続ける。次に、細胞を氷冷した蟻酸で抽出し、従前に記載されているように(Seuwen K, et al., 1988, EMBO J, 7:161-168)厳密にバッチカラムクロマトグラフィーを用い、遊離イノシトールから全IPを分離する。
【0084】
結果:OGR1の一時的発現または安定発現の後、トランスフェクト細胞においては強力かつ明らかなリガンド依存性のホスホイノシチドターンオーバーの活性化が見られる。この作用はカルシウム、マグネシウム、リン酸塩、または硫酸塩のいずれかを欠いたアッセイバッファーでも持続することから、OGR1はこれらの構成要素のいずれもによって活性化されるということは除外される。しかしながら、バッファーpHの変動はリン酸イノシトール(IP)形成に強く影響する。OGR1を安定発現するCCL39ハムスター繊維芽細胞を種々のpHのHepes緩衝塩溶液中でインキュベートし、イノシトールモノホスファターゼ阻害剤リチウムの不在下または存在下、37℃でIPの蓄積を測定する(Berridge MJ, et al., 1982, Biochem J, 206:587-595; Berridge MJ and Irvine RF, 1989, Nature 341:197-205)。pH7.6の、リチウムの存在下でのIP形成はバックグラウンドに近く、しかしながら、それより低いpHはIPの顕著な蓄積をもたらし、これは30分にわたって直線的であり、pH6.8で最大である。本発明者らの標準的なアッセイバッファーのpHは7.4であり、これは、従前の実験でなぜ顕著な基本活性が認められたのかを説明している。プロトンによるOGR1の活性化は、より広い範囲の細胞外pHにわたる、標準的な濃度応答曲線としてプロットすることができる。CCL39ハムスター繊維芽細胞で発現された受容体の最大の半分の活性化はpH7.48+/−0.04(平均値+/−標準誤差;N=12)で見られる。活性化は極めて共働作用的であり、Hill係数は>2である。酸性条件下では(pH<6.5)、IP形成はやはり低下し、このことはCCL39細胞におけるホスホイノシチドシグナル伝達系が全般的にpH依存性であることを反映している。OGR1を活性化することが報告されている生物活性脂質であるSPCは、本発明者らの手では受容体を刺激せず、IP形成のpH依存的刺激に影響を及ぼさない。この分子は、他の細胞系では活性であるが、フォルスコリン刺激性のアデニリルシクラーゼを阻害し、このことはそれがOGR1とは異なる未同定の受容体に作用することを示唆している。
【0085】
重要なことでは、非トランスフェクト細胞または他の受容体を発現する細胞はpH依存性のホスホイノシチドターンオーバーの刺激を示さない。同様に、他の受容体アゴニストに対する応答は、CCL39細胞において内在性の受容体を活性化するトロンビンに関してここで証明されるように(Paris S and Pouyssegur J, 1986, EMBO J, 5:55-60) 、pH7〜8の範囲で正の調節を受けない。百日咳毒素(PTX)はpH7にてリチウムの存在下で測定した場合、IP形成を阻害しないが、このことは、OGR1がGqを介してホスホイノシチドターンオーバーを活性化することを強く示唆している。これらの細胞においてOGR1によって誘発されるシグナルに付加的なものとしてのトロンビンの応答は、初期の研究(Paris S and Pouyssegur J, 1986, EMBO J, 5:55-60)から予測されるように、pH7およびpH7.6の双方においてPTXにより部分的に阻害される。
【0086】
中性およびわずかに酸性のpHにおけるOGR1の活性化は、それらの同種リガンドによる他のGPCRの活性化に比べて極めて強い。一時的にトランスフェクトされたHEK細胞(pH7.38+/−0.04(平均値+/−標準誤差;N=4)で最大の半分の活性化)でも、安定的にトランスフェクトされたHEK細胞でも、強いpH依存性のIP形成の活性化が見られる。pHにより活性化されるチャネルのいくつかは強い温度感受性である(Smith GD, et al., 2002, Nature, 418:186-190)。しかしながら、pH7.6およびpH7.0で測定されたOGR1のIP形成速度は、35〜42℃の温度では影響は最小限でしかない。
【0087】
実施例3:OGR1の受容体モデル
受容体モデル:OGR1と他のロドプシン様GPCRの間には高い類似性が示されていることから、公開されているロドプシン構造(Palczewski K, et al., 2000, Science 289:739-745)を鋳型としてホモロジーモデルを構築する。SCWRLプログラム(Bower MJ, et al., 1997, J Mol Biol, 267:1268-1282)を用い、OGR1一次配列をウシロドプシン(bRHO)に対してアラインし、示されているアミノ酸位に関して、bRHOに存在する側鎖をOGR1の対応する側鎖に置換する。距離依存性誘電関数ε=1rを有するAMBER電場のparm96.datパラメーター(Cornell WD, et al., 1995, J Am Chem Soc, 117:5179-5197)、エネルギーの精密化のための本発明者ら所有のWit!Pソフトウエアのミニマックスモジュール、およびAMBER6パッケージのsander_classicモジュールを用い、得られた構造を分子力学および動力学を適用して精密化する。全てのコンピューター処理の間、鋳型のCα原子を調和電位で固定することにより、またはそれらの位置を0.5A内に拘束する(位置エネルギーの最小化)によりその動きを拘束する。細胞外ループと全てのアミノ酸側鎖は、その電場の電位内で自由に動けるままとする。残基CYS94とCYS172の間にジスルフィド結合を導入する。細胞内ループは含まれていない。
【0088】
結果:ヒスチジンはpH依存性のOGR1の活性化に重要な役割を果たし得る。実際、受容体の3Dモデルを調べると、数個のヒスチジンが細胞外表面にクラスターをなす可能性がり、ヘリックスI、IVおよびVIIの上部、細胞外ループ1および2内に位置することを示す。全て、マウス、ラット、およびウシ配列(それぞれ、受託番号XM_138218、XM_234483およびU88367参照)で保存されている。特に、このモデルは非プロトン化状態でH20とH269の間の直接的水素結合相互作用を推定し、従って、ヘリックスIとヘリックスVIIは連結されている。第二の相互作用がH17とH84の間にある可能性があり、受容体N末端と細胞外ループ1を連結している。しかしながら、細胞外ループの柔軟性を考えると、この相互作用は、H20とH269の間の相互作用よりも形成の可能性が低いと思われ、本発明者らのモデルでは、ぴったり収まるには最初の拘束条件が必要である。この受容体の他の位置にはさらなるヒスチジンが見られるが、それらの、他の残基との共通の相互作用または強力な静電気的相互作用はあまり鮮明ではないようであった。本発明者らは重要な可能性のある全てのヒスチジンを個々にフェニルアラニンに変異させ、一時的トランスフェクション実験でpH依存性の受容体の活性化を測定することを意図した。全ての受容体構築物を、末端mycタグを用いた免疫細胞化学により組換えタンパク質の発現に関してスクリーニングし、細胞膜上で同様のレベルで発現されることが分かった。ヒスチジン89、159、175の突然変異は、受容体の機能に主要な作用を持たないままである。しかしながら、本発明者らの予測と一致して、ヒスチジン17、20、84、269は各々、pH変化に対する正常な感受性に必要なものである。さらに、H169は重要であることが分かった。これらのアミノ酸の突然変異の結果、pH6.8でIP形成を刺激することができないが、酸性度のより高いpHに曝されると活性を回復し得る受容体が生じる。プロトン濃度応答曲線は右方向、すなわち、リガンドを要求する感受性側へのシフトが見られる。pH依存性の基礎活性の上昇が観察できた場合はない。本発明者らのモデルに基づいては、細胞外ループ2におけるH169位置は示されたものの、その幾何学はこの段階では十分推定できなかったのでプロトン感受性におけるH169の関与の直接的な説明は困難である。H245の突然変異は許容されず、全面的なものではないにしても、重大な機能の欠損を招く。本発明者らのモデルによれば、このアミノ酸は脂質環境に面したヘリックスVIに位置し、全体的な構造の完全性のために必要であると思われる。ヒスチジンが最小数で、7〜7.8のpH範囲をでなお機能を有する受容体を作製するため、本発明者らはH89、159、175F構築物を作製し、試験した。コードされているタンパク質は実際に、一時的にトランスフェクトされたHEK細胞において野生型受容体と同様になお機能する(右下)。
【0089】
ヒスチジン対はZn2+およびCu2+原子を配位させることができ、このことがGPCR構造−機能の研究に用いられている(Elling CE, et al., 1995, Nature, 374:74-77)。本発明者らのモデルに基づき、本発明者らは、Zn2+とCu2+は、H20−H269対およびおそらくはH17−H84対の非プロトン化状態を安定化させることによってプロトン依存性の受容体活性化を阻害するのではないかと考えている。実際、両イオンはマイクロモル濃度で、pH6.9において刺激された、OGR1依存性のIP形成を強く阻害する。対照CCL39細胞では、Cu2+はトロンビンにより刺激されるIP形成に対してなお作用を示さず、Zn2+イオンはこの応答の部分的阻害をもたらした。
【0090】
実施例4:OGR1のRT−PCR発現プロファイリング
RT−PCR発現プロファイリング:酸フェノール法を用い、細胞培養物から全RNAを調製する。RNAをDNアーゼで処理し、スーパースクリプトII (Life Technologies/Invitrogen, Basel, Switzerland)を用いて逆転写する。OGR1とグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GDPH)に関する反応を並行して、Expand High Fidelity Taq (Roche, Basel, Switzerland)により、次の温度周期プロトコール:94℃にて30秒の変性、65℃(OGR1)または55℃(GPDH)にて45秒のアニーリング、72℃にて50秒の伸長;OGR1は36サイクル、GPDHは30サイクルを用いて設定する。GPDHはmRNA量の内部標準として測定する。OGR1では、PCR反応産物をクローンニングし、シーケンシングにより確認する。次のプライマーを用いた:OGR1フォワード:5’−CTGAGCCCATGAGGAGTGTG−3’、リバース:5’−GGタグACGCCAGCAGCAGG−3’;GPDHフォワード:5’−TTAGCACCCCTGGCCAAGG−3’、リバース:5’−CTTACTCCTTGGAGGCCATG−3’。
【0091】
RT−PCRによる発現プロファイリングから、MG63ヒト骨肉腫細胞におけるOGR1のmRNAの存在が明らかになり、実際に本発明者らは、これらの細胞が中性または酸性pHに対してIP形成を伴い強く応答したことを見出している。このシグナルは、MG63細胞において内在受容体を活性化するブラジキニンにより誘発されたものに大きさが匹敵する(Brechter AB, et al., 2002, Regul Pept, 103:39-51)。最大の半分の活性はpH7.46+/−0.01(平均値+/−標準誤差;N=5)で見られる。IP形成はPTX前処理に感受性がなく、マイクロモル濃度の銅イオンによって阻害され、これは繊維芽細胞におけるOGR1の異所発現に関する上記の結果を再現するものである。同様の結果が、小柱骨から単離したヒト一次骨芽細胞前駆体でも得られる。一次細胞における最大の半分の活性化は、pH7.41+/−0.02(平均値+/−標準誤差;N=3)で見られる。
【0092】
実施例5:OGR1の発現研究
組換え受容体をFITC標識抗myc抗体(No. 132511, Zymed/Stehelin & Cie, Basel, Switzerland)を用いて検出する。原形質膜マーカーであるアネキシンVを検出するため、アレキサ標識抗体(No. A13202, Juro Supply, Luzern, Switzerland)を用いる。核を色素H33258(Sigma, Buchs, Switzerland)で染色する。
【0093】
骨組織に対する実験を、6ヶ月齢の雌ウィスターマウスから採取したパラフィン包埋器官の4μm切片に対して行う。キシロール中で切片のパラフィン除去を行い、ペプシン消化(10分、Sigma, Buchs, Switzerland)を用いて抗原を露出させる。3%過酸化水素とともに5分、その後、10%ヤギ血清で1時間、内在するペルオキシダーゼを遮断する。免疫組織化学検出は、ヒトおよびラットOGR1で同一なペプチドエピトープCFVSETTHRDLARLRG(配列番号2)に対してLifespan Biosciences Inc. (Seattle, USA)が開発したウサギポリクローナル抗体(1:100、3時間インキュベーション)を用いて行う。ABCペルオキシダーゼ染色キット(Santa Cruz Biotechnology/LabForce, Nunningen, Switzerland)を用いて明らかにする。ラット骨切片に対する免疫組織化学(前段に記載の通り)により、骨芽細胞および骨細胞にOGR1が局在された。
【0094】
実施例6:OGR−1ノックアウトマウス
OGR−1ノックアウトマウスの作成:
相同組換えのためのターゲッティングベクターの作成:マウスOGR−1転写物mCT51440は、マウスゲノムCeleraデータベースで、mCG51257と呼ばれるマウス第12染色体上の遺伝子座と一致することが確認された。相同組換えおよびOGR−1遺伝子のノックアウトのためのターゲッティングベクターの作成のために用いるゲノムDNAを増幅するために、Celera配列情報に従ってプライマーを設計する。2つのフランキングゲノム領域の増幅のためのプライマーの配列および条件は以下の通りである。
【0095】
領域1に関して:フォワードプライマー:TS145:CTATCTGCATGTGGAGCCCCおよびリバースプライマー:TS140:CTGGCAGGATAGTCACCAT。PCRは、T3 PCRバイオメトラ・サーモサイクラーにて、KODホットスタートDNAポリメラーゼ(Novagen/Juro, Luzerne, Switzerland)を用いて行う。要するに、200ngの129SvゲノムDNAを、200μMのdNTPミックス、600nMのフォワードプライマー、600nMのリバースプライマー、5μlの10×PCRバッファー(1mM MgSO)および1μlのKODホットスタートDNAポリメラーゼとともに全量50μlで調製する。ゲノムDNAの増幅のための設定は、94℃にて3分、次いで94℃30秒、58℃30秒、68℃5分を35サイクル、その後、68℃にて5分の最終伸長とした。最後に、反応物を4℃まで冷却する。このPCR産物4μlを、Zero blunt Topo PCRクローニングキット(Life Technologies/Invitrogen, Basel, Switzerland)を製造業者の使用説明書に従って用いてサブクローニングし、その結果pTOPO−領域1を得、これをシーケンシングにより確認する。
【0096】
領域2に関して:フォワードプライマー:TS143:GCTTGCATGGTGGCTGTCTCおよびリバースプライマー:TS142:TACAACACCACCTGCACAGA。PCRは、Perkin Elmer PE9600 PCRサーモサイクラーにて、Pfu DNAポリメラーゼ(Promega, Wallisellen, Switzerland)を用いて行う。要するに、200ngの129SvゲノムDNAを、200μMのdNTP、1μMのフォワードプライマーおよび1μMのリバースプライマー、1×Pfu DNAポリメラーゼバッファー(2mMのMgSOを含有)、5%ジメチルスルホキシド(DMSO)および1.25μのPfu DNAポリメラーゼとともに全量50μlで調製する。ゲノムDNAのタッチダウン増幅のための設定は、94℃にて3分、次いで94℃30秒、68℃(−1℃/サイクル)30秒、68℃5分を10サイクル、次いで94℃30秒、55℃30秒、68℃5分を25サイクル、そして68℃にて10分の最終工程とする。最後に、反応物を4℃まで冷却する。このPCR反応物1μlを、上記と同じ条件下で、PfuポリメラーゼとともにフォワードプライマーTS167:CCATCGATGCTTGCCTCTAAACTAGTCTおよびリバースプライマーTS168:ATAGTTTAGCGGCCGCCTCTACTGTCCTTGTGGCTTを用いネスティッド(nested)PCRにより増幅する。このPCR産物4μlを、Zero blunt Topo PCRクローニングキット(Life Technologies/Invitrogen, Basel, Switzerland)を製造業者の使用説明書に従って用いてサブクローニングし、シーケンシングにより確認する。相同組換え用のターゲッティングベクターの作成のため、ゲノム断片1を、鋳型としての領域1と、フォワードプライマー:TS170:CCCAAGCTTAGAGCAGGTGACTGTGCATAおよびリバースプライマー:TS171:CCGCTCGAGCTTTGGGCCAGAAGGAGCCTを用いて増幅する。KODホットスタートポリメラーゼを用い、領域1の増幅に関して記載した通りのPCRミックス中、10ngのpTopo−領域1を鋳型として用いる。PCRはT3 PCRバイオメトラ・サーモサイクラーで行い、設定は、94℃にて2分、次いで94℃15秒、58℃30秒、74℃1分30秒を31サイクル、その後、74℃にて1分の最終伸長とする。増幅したPCR断片を、PCR精製キット(Qiagen, Basle, Switzerland)を製造業者の使用説明書に従って用いて精製し、制限酵素HindIIIとXhoIで消化し、HindIII/XhoIで消化したベクターpRAY−2(受託番号U63120)に連結し、シーケンシングにより確認する。
【0097】
第二のゲノム断片は、鋳型として1μlのpTopo−領域2と、フォワードプライマーTS167ならびにリバースプライマーTS168を用いて増幅する。PCRミックスは領域1の増幅に関して記載した通りであり、設定は、94℃にて2分、次いで94℃15秒、55℃30秒、68℃1分30秒を35サイクル、その後、68℃にて5分の最終伸長工程とする。増幅したPCR断片を、Zero blunt Topo PCRクローニングキットを用いてサブクローニングし、シーケンシングにより確認する。制限酵素ClaIとNotIを用いて消化した後、そのPCR断片を、断片1を含有するベクターpRAY−2をClaI/NotIで消化したものに連結する。得られたOGR−1ターゲッティングベクターをシーケンシングにより確認する。
【0098】
ES細胞の培養とトランスフェクション:最終的なOGR−1ターゲッティングベクターを、制限酵素ScaIを用いて線状化し、17μgを、250V、500μFにて、1.5×10e7 129S3マウス胚幹細胞(ES細胞)にエレクトポレーションする。これらの細胞を、不活化した一次胚繊維芽細胞を含む6cmディッシュ中で培養する。エレクトロポレーション24時間後に、G418(200μg/ml, Gibco/Invitrogen, Basel, Switzerland)を含有する選択培地を加える。エレクトロポレーション10日後に、耐性ES細胞コロニーを単離し、ターゲッティング構築物のOGR−1遺伝子座への相同組換え事象を確認するため、ネスティッドPCRにより分析する(PCRによるジェノタイピング)。
【0099】
PCRによるジェノタイピング:ES細胞を50μlの溶解バッファー(0.05%SDS、50μg/mlのプロテイナーゼK、10mMのTris/HCL、pH7.4)中で抽出し、診断的PCRを、Tgradient PCRバイオメトラ・サーモサイクラーにて、 200μMのdNTPミックス、600nMのフォワードプライマー、600nMのリバースプライマー、1×Taq PCRマスターミックス(Qiagen, Basel, Switzerland)を含む全量25μl中、1μlの粗ES細胞抽出物を用いて行う。PCRに用いるプライマーは、最初の増幅では、フォワード:TS207:TGATATTGCTGAAGAGCTTGGCGGCおよびリバース:TS203:CCAGGGTAGCTTTGCAACATGC、ならびにネスティッド反応では、フォワード:TS208:AGCGCATCGCCTTCTATCGCCおよびリバース:TS204:ATGGGCTTTGCCATGAGGCAGである。PCR条件は、95℃にて3分;95℃30秒、62℃45秒、72℃2分の35サイクルである。ネスティッド反応では、最初の反応物1μlを、95℃にて3分;95℃30秒、62℃45秒、72℃2分の25サイクルで増幅する。最後に、ネスティッドPCR反応物10μlを1%アガロースゲル上で分析する。
【0100】
ES細胞のサザンジェノタイピング:サザンハイブリダイゼーションに好適なプローブを作製するため、OGR−1ゲノム領域を、100ngのpTopo−領域1を鋳型として用いるPCRにより増幅する。増幅のために用いるプライマーはフォワード:TS146:CAAGGGCAGGGGAGTCAAGGおよびリバース:TS159:TAATTATTCTACTTTATTACである。PCRミックスは、Pfu DNAポリメラーゼ用いた上記の通りであった。PCRの設定は、94℃にて2分、次いで94℃15秒、55℃(−1℃/サイクル)15秒、72℃30秒を10サイクル、その後、94℃15秒、45℃15秒、72℃30秒を25サイクルとする。最後に、この反応物を4℃まで冷却する。増幅したPCR断片を、PCR精製キットを用い、上記のように精製する。
【0101】
129S3 ES細胞由来のゲノムDNAを、12μgのゲノムDNAと制限酵素SspI/RsrIIまたはSspI/XhoIを用いて一晩消化する。消化したDNAを0.9%アガロースゲル上で分離し、Hybond N+メンブラン(Amersham, Dubendorf, Switzerland)にブロットする。Amersham rediprime IIキットを製造業者の記載の通りに用い、32P−dCTPによるDNAプローブのランダムプライム標識を行う。メンブランをPerfectHyb Plusハイブリダイゼーションバッファー (Sigma, Buchs, Switzerland)中、65℃で一晩ハイブリダイズさせ、0.5×SSC、0.1%SDSで洗浄し、コダックX−O−Matフィルムに露光することにより画像化する。
【0102】
ターゲッティング構築物の独特の組み込みを確認するため、同じ条件下で、pRAY2ベクターのNheI/BamHI断片に相当するneoプローブを用いる。
【0103】
核型分析:染色体伸展を行う前日にES細胞を分割する。染色体伸展では、ES細胞を37℃、10%CO下で4.5時間、10μg/mlのコルヒチン(KaryoMax, Gibco/Invitrogen, Basel, Switzerland)で処理した後、予め温めておいた(37℃)0.56%KCl中、室温で10分間インキュベートする。固定は、氷冷メタノール/酢酸(3:1)を用いて行う。染色体の伸展を顕微鏡で解析する。
【0104】
胚盤胞の注入および交配:標的化ES細胞をC57Bl/6宿主胚盤胞に注入し、偽妊娠 C57Bl/6×Balb/c N1養母に移植する。キメラ後代を外皮の色素沈着により確認する。雄のキメラを129S3野生型雌と交配する。この後代をジェノタイピングPCRにより生殖細胞系伝達に関して試験する。
【0105】
実施例7:OGR1のアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニングアッセイ
方法:細胞質カルシウムの過渡電流を、カルシウムインジケーターFluo−3および蛍光画像プレートリーダー(Molecular Devices/BucherBiotech, Basel, Switzerland)を用いて記録する。OGR1でトランスフェクトされたCCL39細胞に、5mMプロベニシドを含有する完全培地中、37℃で1時間、その色素のアセトキシメチルエステル(2μg/ml)を加えて多剤耐性輸送体を阻害する。その後、細胞を洗浄し、室温で45分間、130mMのNaCl、0.9mMのNaHPO、5.4mMのKCl、0.8mMのMgSO、1.8mMのCaCl、25mMのグルコース、5mMのHEPES、pH7.6を含有する緩衝塩溶液中で維持する。受容体アンタゴニストを同定するため、試験化合物を、このインキュベーションの最後の15分間に加える。リーダーに移行した後、ベースラインを記録し(Fb)、次に、酸性化をもたらす、適量のより強力なバッファー(20mMのHEPES,pH6)を添加することで細胞を刺激する。あるいは、アゴニスト分子を同定するために、この段階で試験化合物を加える。蛍光の読み取り値Fを、F’=(F−Fb)/Fbで計算してノーマライズする。
【0106】
結果:細胞外pHのpH7.6からより高い酸性値へのシフトは細胞内カルシウム濃度の急速で一時的な上昇をもたらすが、このことは、細胞内の貯蔵庫からの陽イオンの放出を示す。その応答の大きさはpH依存的で、酸度が高まる。最大の半分の活性化はpH7.20+/−0.04(平均値+/−標準誤差;N=3)で見られる。受容体アンタゴニストはこの蛍光シグナルを遮断する。
【0107】
実施例8:GPR4のクローニングおよび安定細胞株の作成:
ヒトGPR4はゲノムDNAから、プライマーGPR4FとGPR4R(それぞれ、5’ CACC ATG GGC AAC CAC ACG TGG GAG GGC TGC 3’と5’ TCA TTG TGC TGG CGG CAG CAT CTT CAG CTG CA 3’)を用いて増幅する。このPCR反応混合物は、0.2mMのdNTP、1×PCRバッファー(1.5mMのMgCl、0.5単位のTaq DNAポリメラーゼ、40pmolの各プライマーおよび滅菌水を含有する)を全量50μlで含む。この反応のための鋳型はヒトゲノムDNA(Promega, Southampton, UK)である。PCRは、バイオメトラT3サーモサイクラーを用い、次のサイクル条件:95℃にて2分の変性の後、95℃15秒の変性、60℃15分のアニーリング、および72℃1分の伸長を、35サイクルを用いて行う。72℃で最終伸長を7分行う。この1.1kbのPCR産物を精製し、pcDNA3.1 D/V5−His−TOPO(Invitrogen, Paisley, UK)へクローニングする。
【0108】
リガンドに応答したcAMPの変化を検出するため、cAMP依存性ルシフェラーゼリポーターを安定発現するCHOK1 CRE−luc細胞かCCL39 CRE−luc細胞のいずれかで、GPR4を発現する安定細胞株を作成する。安定細胞株は、上記細胞株において、リポフェクタミン2000(Invitrogen, Paisley, UK)を製造業者のプロトコールに従って用い、GPR4 cDNA発現構築物をトランスフェクトすることにより作成する。トランスフェクトされた細胞を400μg/mlまたは1mg/mlのG418の存在下で選択する。3週間の抗生物質選択の後、個々のクローンを拾い上げ、さらなる分析のために拡張する。
【0109】
実施例9:GPR4はcAMP形成を活性化するプロトン感受性Gタンパク質共役型受容体である
cAMP形成アッセイ:24ウェルプレートで増殖させた密集細胞培養物を、血清フリーDMEM培地中で4時間、[H]アデニン(100MBq/ml; Amersham, Dubendorf, Switzerland)で標識する。次に、IPアッセイに関して上記したように(実施例2)、緩衝塩溶液中、37℃で細胞をインキュベートする。示されている場合には、ホスホジエステラーゼ阻害剤であるイソブチルメチルキサンチン(IBMX,1mM)を加えてcAMPを蓄積させる。インキュベーション時間は15分である。次に、細胞を氷冷トリクロロ酢酸で抽出し、バッチカラムクロマトグラフィーを用い、遊離アデニンおよびATPからcAMPを分離する(Salmon Y, 1979, Adv. Cycl. Nucleot Res, 10: 35-55)。
【0110】
結果:上記のような発現研究およびcAMP形成アッセイは、この受容体が実際にOGR1と極めて類似した範囲のpHシフトに応答することを示す。GPR4のリガンドであることが報告されているSPC(Zhu K, et al., 2001, J Biol Chem, 276:41325-41335)は、pH依存的な刺激を調節せず、それ自体ではcAMPの形成を活性化しない。一次的にトランスフェクトされたHEK293細胞におけるGPR4によるcAMP形成の最大の半分の活性化はpH7.55+/−0.02(平均値+/−標準誤差;N=6)で見られる。
【0111】
実施例10:GPR4のアゴニストまたはアンタゴニストに関するスクリーニングアッセイ
実施例8に記載のように、GPR4とcAMPルシフェラーゼリポーターを同時発現する細胞を、アッセイを行う前日に、白色の96ウェルプレートに、ウェル当たり10〜20,000細胞でプレーティングし、5%COの存在下、37℃で一晩インキュベートする。細胞を、適宜試験化合物(いずれの自家製または市販の化合物ライブラリーを用いてもよい)を含有し、適当なpHの200μlのHBSバッファー(130mMのNaCl、0.9mMのNaHPO、0.8mMのMgSO、1.8mMのCaCl、5.4mMのKCl、25mMのグルコース、20mMのHEPES)で一度洗浄する。プレートを、COを含まないインキュベーター中、37℃で4〜5時間インキュベートする。4〜5時間後、細胞からバッファーを吸引し、細胞を200μlのHBS pH7.4で一度洗浄する。100μlのHBS pH7.4および100μlのSteady Gloルシフェラーゼ試薬(Promega, Southampton, UK)を加えることで細胞を溶解し、回転プラットフォーム上に激しく回転させながら25〜30分間置く。発光は照度計を用いて測定する。酸性pHバッファー(pH6.8またはpH7.0)では、高い発光luminescenceシグナルが生じる。アンタゴニストはこのアッセイにおいて、例えば酸性pHバッファー(pH6.8またはpH7.0)中で、化合物を含まない対照に比べて発光シグナルが低下することを特徴とする。
【0112】
実施例11:GPR4のRT−PCR発現プロファイリング:
RNAの抽出および第一鎖cDNAの合成:RNeasy抽出キット(Qiagen, Crawley, UK)を製造業者のプロトコールに従って用い、細胞からRNAを調製する。用いた細胞は一次ヒト気管支上皮細胞(HBEC)、分化HBEC、一次ヒト肺繊維芽細胞、一次ヒト気管支平滑筋細胞(BSMC)、ヒト末梢血T細胞およびヒト末梢血好中球である。一次ヒト細胞はBiowhittakerから購入するか、またはその旨示されている場合には、標準的な手順に従ってヒト末梢血から単離されるかのいずれかである。第一鎖cDNAは、第一鎖cDNA合成キット(Roche, Lewes, UK)で提供されている試薬およびプロトコールを用い、細胞から単離した全RNAから調製する。
【0113】
RT−PCR:上記の組織および種々の細胞種から、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によって誘導したcDNAにおいてGPR4受容体をプロファイリングする。RT−PCRプロファイリングに用いた組織のcDNAはClontech (Basingstoke, UK)から購入される。各反応混合物は0.2mMのdNTPs、1×PCRバッファー(1.5mMのMgCl、0.5単位のTaq DNAポリメラーゼ、50pmolの各プライマーおよび脱イオン水を含有する)を全量25μlで含む。用いた鋳型cDNAは、ClontechパネルIおよびIIの組織サンプルに由来する市販のcDNA(2.5μl)のものか、または前節に記載したような細胞種から調製したcDNA(1μl)からのもののいずれかである。用いたGPR4 RT−PCRプライマーは次の通りである:5’ TGG GCG TCT ACC TGA TGA A 3’および5’ GGG TTT GGC TGT GCT GTT 3’。サイクルは、バイオメトラ・トリオPCR装置を用い、0.2mlの試験管にて行う。サイクル条件は次の通りである:94℃1分45秒の変性を1サイクルした後、94℃15秒の変性、60℃15秒のアニーリング、72℃30秒の伸長の35サイクル。反応物を1.5%アガロースゲル上で分析し、臭化エチジウムで染色する。対照RT−PCR反応は、ハウスキーピング遺伝子GAPDHに特異的なプライマーを用いて行う。
【0114】
定量的RT−PCR:全RNAサンプル中のメッセンジャーRNAレベルをTaqMan定量的RT−PCRにより測定する。プライマーおよびプローブは、Applied Biosystems (Warrington, UK)から購入するすでに至適化された試薬として得る。定量的RT−PCR反応は最終量25μlで3回行い、各反応につき1×TaqManユニバーサルPCRマスターミックス標的cDNA調製物が含まれる。実験はABI PRISM 7700シーケンスデテクター(Applied Biosystems, Warrington, UK)を用いて行い、ABI PRISM7700 Sequence Detection Systemソフトウエアを用いて解析する。増殖条件は次の通りである:50℃2分および95℃10分、次いで95℃15秒および60℃1分の40サイクル。データは、12のヒト組織のcDNAプールを用いて作製した標準曲線からの推定によって定量し、ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対しノーマライズする。
【表1】

【0115】
実施例12:GPR4の免疫局在研究
組換え受容体をFITC標識抗myc抗体(No. 132511, Zymed/Stehelin & Cie, Basel, Switzerland)を用いて検出する。原形質膜マーカーアネキシンVを検出するため、アレキサ標識抗体(No. A13202, Juro Supply, Luzern, Switzerland) を用いる。核を色素H33258(Sigma, Buchs, Switzerland)で染色する。
【0116】
ヒト組織に対する実験は、ポリジンスライドにマウントした肺組織の3μmパラフィン切片で行う。パラフィン切片をまずキシレンおよび70%までの工業用メタノール変性アルコールで処理し、内在するペルオキシダーゼを、メタノール中0.05%の過酸化水素で遮断する。切片を、Dako pH6抗原回復溶液中、マイクロ波照射後に染色する。望ましくないバックグラウンド染色は、Dako血清フリータンパク質ブロッカーで5分間処理し低減させる。免疫組織化学検出は、ヒトGPR4を識別するペプチドエピトープRSDVAKALHNLLRFLASDK(配列番号5)に対してLifespan Biosciences Inc. (Seattle, USA)が作製したウサギポリクローナル抗体(1:500、4℃で一晩)を用いるか、あるいはまた、ヒトおよびマウスGPR4を識別するペプチドエピトープDELFRDRYNHTFCFEKFPME(配列番号6)に対して作製されたウサギポリクローナル抗体を用いて行う。染色は、まず、30分間、Dakoビオチン化ブタ抗ウサギ免疫グロブリンの(1:200)Dako希釈液で処理することで明らかにする。洗浄工程の後、切片をDakoストレプトアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体(SABCpx)で処理する。反応部位をジアミノベンジジン(DAB)で可視化する。核はColeのヘマトキシリンで対比染色する。
【表2】

【0117】
上記のデータは、GPR4タンパク質の発現が喘息患者の呼吸器上皮でアップレギュレーションされることを示し、疾病との関連がある可能性が示唆される。GPR4タンパク質は正常な被験体の肺組織では存在しないか、または弱くしか発現しない。正常な肺組織の肺胞マクロファージ、好中球および気管支平滑筋におけるGPR4タンパク質の発現は、mRNAレベルでの結果(表1)を確かなものとする。
【0118】
実施例13:GPR4の機能アッセイ(好中球走化性アッセイ):
アッセイは、従前に公開されている方法(Frevert CW, et al., J Immunology Methods, 1998, 213:41)に従い、96ウェルプレート形式で行う。細胞バッファーは全て、Invitrogen (Paisley, UK)から入手する。カルセイン−AM色素はMolecular Probes (Invitrogen, Paisley, UK)から入手する。従前に記載されているように(Haslett C, et al., 1985, Am J Path, 119:101)、好中球を単離する。要するに、クエン酸塩添加全血を4%デキストラン−T500と混合し、氷上で30分間放置して赤血球を除去する。顆粒球(PMN)をフィコール−パーク密度勾配遠心分離により末梢血単核細胞から分離する。PMNペレットの赤血球混入は低張ショック溶解により除去する。単離された顆粒球(好中球)を蛍光色素カルセイン−AM(5μg)で標識する。標識した好中球を、次に、DMSO中に希釈した試験化合物(0.001〜1000nM)と混合し、室温で10分間インキュベートする。アゴニスト(pH6.8またはpH7.0に緩衝)を、96ウェル走化性チャンバーの底に入れる。このプレートにポリカーボネートフィルター(5μm)をかけ、細胞およびアンタゴニストを用いる場合には、このフィルターの上に乗せる。5%COの加湿インキュベーターにて、37℃で90分間細胞を移動させる。このインキュベーション器官の終了時に、移動した細胞を、マルチウェル蛍光プレートリーダー(Fluoroskan II, Labsystems)を用い、485nm励起および538nm発光で定量した。陽性対照細胞(アンタゴニストを添加しない細胞)は、細胞の最大走化応答を示す。一方、アゴニストを含まない陰性対照(無刺激)、すなわち、pH>=7.4は下のチャンバーに加える。陽性対照と陰性対照の違いは、その細胞の走化活性を表す。このアッセイでは、アンタゴニストは、化合物を含まない対照に比べて、酸性のpHに対する走化応答の低下を特徴とする。
【0119】
実施例14:GPR4の機能アッセイ(形状変化アッセイ):
アゴニスト(pH用量反応)曲線を次のように求める:1.2mlクラスターチューブで、顆粒球アリコート(4〜5×10細胞80μl)と10μlのアッセイバッファー(1×PBS、pH7.4、+0.1%BSA)を混合する。サンプルを穏やかに振盪し、37℃で5分間インキュベートする(水浴中)。その後、10μlアッセイバッファーを加えるゼロ対照以外の全ての試験管にアゴニストを加える。サンプルを穏やかに振盪し、水浴中、37℃でさらにインキュベートする。次に、250μlの氷冷、至適化した0.25%CellFix(商標)溶液(Becton Dickinson, Oxford, UK)を各試験管に加えて反応を終わらせ、分析まで細胞の形状変化を維持する。試験管を穏やかに振盪し、FACSCaliburフローサイトメーターでデータを採取する前の10分間、氷上でインキュベートする。まず、FSC/SSCプロットを取った後、その最初のプロットから、ゲートを設けた顆粒球を用い、FSC/FL−2プロットを取った。その後はより高い自己蛍光が得られるので、FL−2プロット上で好酸球から好中球を識別する。
【0120】
アンタゴニスト(化合物を含まない)アッセイでは、顆粒球アリコート(4〜5×10 細胞80μl)を1.2mlクラスターチューブ中、一定濃度のDMSO(最大10%)を含有する10μlの10倍濃縮化合物(最終0.1〜1000μM)と混合し、サンプルを穏やかに振盪し、37℃で5分間インキュベートする(水浴中)。10μlアッセイバッファーを加えるゼロ化合物/ゼロアゴニスト対照以外の全ての試験管にアゴニスト(pH6.8または7.0に緩衝)を加える。サンプルをラック内で穏やかに振盪し、37℃の水浴中でさらに5分間インキュベートする。次に、250μlの氷冷、至適化した0.25%CellFix(商標)溶液を各試験管に加え、そのラックを穏やかに振盪し、フローサイトメーターでデータを採取する前の10分間、氷上でインキュベートする。その後はより高い自己蛍光が得られるので、FL−2プロット上で好酸球から好中球を識別する。このアッセイでは、アンタゴニストは、化合物を含まない(すなわち、pH6.8またはpH7.0のバッファーのみ)対照に比べて、形状変化に低下が見られることを特徴とする。
【0121】
実施例15:GPR4に関する遺伝子発現プロフィリングスクリーニング
血管新生の可能性のある治療標的を、内皮細胞の認知されているマーカー遺伝子と相関した発現を示す遺伝子を選択することにより同定する。このマーカー遺伝子セットとしては、限定されるものではないが、CDH5、VWF、KDR、TIE、TEK、PTPRB、ANGPT2(the Human GVenomeOrganisation/Gene Nomenclature Committee (HUGO/HGNC)によって承認された遺伝子記号)を含む。
【0122】
遺伝子発現データは、Affymetrix (3380 Central Expressway, Santa Clara, CA 95051, USA; http://www.affymetrix.com/index.affx)オリゴヌクレオチドアレイ技術を用いたDNAマイクロアレイ分析によって得る。
【0123】
データをソフトウエアツールGeneSpring (Sikicon Genetics, 2601 Spring Street, Redwood City, CA 94063, USA; http://www.silicongenetics.com/cgi/SiG.cgi/index.smfに送る。
【0124】
これらの各マーカー遺伝子について、関連性の統計学的評価としてのPearson相関法を用いることにより、相関発現を示す他の遺伝子を同定する。相関係数0.7〜1であれば、強い相関を示すとみなされる。
【0125】
分析によれば、可能性のある薬物標的としてみなされる遺伝子のうち、相関係数>0.7を有する12のGPCRが明らかとなった。
【表3】

【0126】
実施例16:GPR4に関する内皮細胞増殖アッセイ
一次ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)および一次ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)をPromoCell, Heidelberg, Germanyから購入する。
HDMECは、SupplementPack/内皮細胞増殖培地MVと5%ウシ胎児血清(FCS)を添加した内皮細胞基本培地MVで増殖させ、HUVECはSupplementPack/内皮細胞増殖培地と12.5%FCSを添加した内皮細胞基本培地で増殖させる。
内皮細胞基本培地は最小培地または飢餓培地として用いられる。
【0127】
マウス一次細胞を、Reynolds LE et al, Nat Med. 2002 Jan;8(1):27-34が記載しているように、マウス肺から単離する。要するに、マウス肺を刻み、コラゲナーゼ消化し(Gibco)し、濾過器を通し、得られた細胞懸濁液を、0.1%ゼラチン(Sigma)、10mg/mlのフィブロネクチン(Sigma)および30μg/mlのVitrogen(Collaborative Biomedical Research)の混合物をコーティングしたフラスコにプレーティングする。内皮細胞を、抗ラットIgG結合磁性ビーズ(Dynal, Wiltshire, UK)を用いて1回の陰性細胞選別(Fcγ−RII/III抗体; Pharmingen)と2回の陽性細胞選別(ICAM−2; Pharmingen)により精製したところ、>97%の純度の集団が得られた。
【0128】
増殖は、VEGF165(10ng/ml)およびbFGF(0.5ng/ml)などの種々の増殖因子で刺激した内皮細胞における細胞外pHの関数として測定する。さらに、本方法でのGPR4の特異的な役割を解明するため、GPR4に対するsiRNAでトランスフェクトした内皮細胞で、または、GPR4を標的とする化合物の存在下で同様の実験を行う。内皮細胞の増殖を血管新生のin vitro読み取り値として用いる。内皮細胞の増殖の阻害は血管新生の低下の一端を表す。
【0129】
BrdUの組み込みに基づく内皮細胞増殖アッセイを用いる(Biotrak Cell Proliferation Elisa System Elisa System V.2, Amersham, England)。密集前のHUVECを、1.5%ゼラチンをコーティングした96ウェルプレートに5×10細胞/ウェルの密度で接種した後、増殖培地にて37℃でインキュベートする。24時間後、増殖因子とともにインキュベートされるウェル中の培地を、1.5%FCSを含有する基本培地に置き換え、残りのウェルの培地を増殖培地に置き換える。さらに24時間後、培地を、前と同じ量のFCS(5%または1.5%)を含有し、供試化合物および特定の増殖因子を含む、含まない新鮮培地に置き換える。増殖因子の効果に対する基準対照として、増殖因子を含まないウェルも含めた。インキュベーション24時間後、BrdU標識溶液を加え、細胞をさらに24時間インキュベートした後、固定、遮断、およびペルオキシダーゼ標識抗BrdU抗体の添加を行う。結合抗体を、分光光度測定により450nmで定量される有色反応産物を生じる3,3’5,5’−テトラメチルベンジジン基質を用いて検出する。各サンプルにつき3回行う。
【0130】
siRNAでトランスフェクトされた細胞はトランスフェクション24時間後に用いる。
【0131】
実施例17:GPR4に関する内皮細胞アポトーシスアッセイ
一次ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)および一次ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)はPromoCell, Heidelberg, Germanyから購入する。
HDMECは、SupplementPack/内皮細胞増殖培地MVと5%ウシ胎児血清(FCS)を添加した内皮細胞基本培地MVで増殖させ、HUVECは、SupplementPack/内皮細胞増殖培地と12.5%FCSを添加した内皮細胞基本培地で増殖させる。
内皮細胞基本培地は最小培地または飢餓培地として用いられる。
【0132】
マウス一次細胞を、Reynolds LE et al, Nat Med. 2002 Jan;8(1):27-34が記載しているように、マウス肺から単離する。要するに、マウス肺を刻み、コラゲナーゼ消化し(Gibco)し、濾過器を通し、得られた細胞懸濁液を、0.1%ゼラチン(Sigma)、10mg/mlのフィブロネクチン(Sigma)および30μg/mlのVitrogen(Collaborative Biomedical Research)の混合物をコーティングしたフラスコにプレーティングする。内皮細胞を、抗ラットIgG結合磁性ビーズ(Dynal, Wiltshire, UK)を用いて1回の陰性細胞選別(Fcγ−RII/III抗体; Pharmingen)と2回の陽性細胞選別(ICAM−2; Pharmingen)により精製したところ、>97%の純度の集団が得られた。
【0133】
アポトーシスは内皮細胞において細胞外pHの関数として測定する。さらに、本方法でのGPR4の特異的な役割を解明するため、GPR4に対するsiRNAでトランスフェクトした内皮細胞で、または、GPR4を標的とする化合物の存在下で同様の実験を行う。アポトーシス誘導の対照としては血清飢餓を用い、細胞をアポトーシスから救う対照としてはVEGF165(10ng/ml)を用いる。内皮細胞におけるアポトーシスの誘導は、血管新生の阻害の一端を示す。
【0134】
アポトーシスは、Cell Death Detection ELISAPLUSシステム(Roche Diagnostics,)を製造業者のプロトコールに従って用いて測定する。要するに、血清飢餓、pHシフト、増殖因子、化合物またはGPR4−siRNAによる処置の後、細胞(HUVECまたはHDMVEC)を、100μl/ウェルの溶解バッファーで37℃にて30分間穏やかに溶解させて細胞質内容物だけを放出させ、200gで10分間遠心分離する。20μlの上清をELISAプレートに移し、抗体を含有する80μlの免疫試薬を加え、タイタープレートシェーカーで振盪しながら(300rpm)2時間インキュベートする。この細胞を、キットに提供されているインキュベーションバッファーで3回洗浄する。100μlのABTSカラー試薬を加え、10分後、Spectromax 190マイクロプレート分光光度計、およびブランクとしてABTS溶液を用いて405nmにてODを測定する。各サンプルにつき3回行う。
【0135】
実施例18:GPR4に関する内皮細胞移動アッセイ
一次ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)および一次ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)はPromoCell, Heidelberg, Germanyから購入する。
HDMECは、SupplementPack/内皮細胞増殖培地MVと5%ウシ胎児血清(FCS)を添加した内皮細胞基本培地MVで増殖させ、HUVECは、SupplementPack/内皮細胞増殖培地と12.5%FCSを添加した内皮細胞基本培地で増殖させる。
内皮細胞基本培地は最小培地または飢餓培地として用いられる。
【0136】
MS1は、ポリオーマウイルスミドルT抗原による形質導入が確立されたマウス膵島内皮細胞株であり、ATCCから購入する。MS1細胞は、4mMのL−グルタミン、1.5g/Lの重炭酸ナトリウムおよび4.5g/Lのグルコースならびに5%FCSを含むダルベッコの改変イーグル培地で増殖させる。
【0137】
bEnd3は、SV40ラージT抗原による形質導入が確立されたマウス脳内皮細胞株であり、ATCCから購入する。bEnd3細胞は、4mMのL−グルタミン、1.5g/Lの重炭酸ナトリウムおよび4.5g/Lのグルコースならびに10%FCSを含むダルベッコの改変イーグル培地で増殖させる。
【0138】
マウス一次細胞を、Reynolds LE et al, Nat Med. 2002 Jan;8(1):27-34が記載しているように、マウス肺から単離する。要するに、マウス肺を刻み、コラゲナーゼ消化し(Gibco)し、濾過器を通し、得られた細胞懸濁液を、0.1%ゼラチン(Sigma)、10mg/mlのフィブロネクチン(Sigma)および30μg/mlのVitrogen(Collaborative Biomedical Research)の混合物をコーティングしたフラスコにプレーティングする。内皮細胞を、抗ラットIgG結合磁性ビーズ(Dynal, Wiltshire, UK)を用いて1回の陰性細胞選別(Fcγ−RII/III抗体; Pharmingen)と2回の陽性細胞選別(ICAM−2; Pharmingen)により精製したところ、>97%の純度の集団が得られた。
【0139】
VEGF(10ng/ml)またはS1P(100nM)などの特異的増殖因子に対する内皮細胞の移動を、細胞外pHの関数として測定する。さらに、本方法でのGPR4の特異的な役割を解明するため、GPR4に対するsiRNAでトランスフェクトした内皮細胞で、または、GPR4を標的とする化合物の存在下で同様の実験を行う。内皮細胞の移動を、血管新生に対するin vitro読み取り値として用いる。内皮細胞の移動の阻害は、血管新生の阻害の一端を示す。
【0140】
移動アッセイは、BD Falcon HTS FluoroBlok Multiwell Insert Systemsを用いて行う。このシステムは24ウェル・マルチウェル・インサート・プレートからなり、8μm孔径多孔質蛍光遮断PETメンブランを通した細胞の移動を研究するために用いられる。この遮光メンブランは、膜を通って移動し、インサートの下側に付着した細胞のみの検出を可能とする。
【0141】
このインサートの下側を37℃で2時間、1.5%ゼラチンでコーティングし、PBSで一度洗浄する。この24トランスウェルインサートを、600μlの基本培地+0.1%BSAを含み、試験する種々の増殖因子および/または阻害剤を添加した24ウェルプレートに入れる。
【0142】
内皮細胞(継代培養3〜5)を完全増殖培地で70〜80%の密集度まで増殖させる。これらの細胞をトリプシン処理によって採集し、阻害剤を添加した、または添加しない100μl基本培地+0.1%BSA中、30,000細胞をインサート内(上のチャンバー)に加える。下のチャンバーにだけ化学誘因物質(増殖因子)を加え、勾配を形成することにより細胞が孔を通って移動するように刺激し、種々の阻害剤は確実に同じ濃度となるように両チャンバーに加える。
【0143】
これらのプレートを37℃で2〜5時間インキュベートする。メンブランの下側にある移動細胞を室温にて10分間、4%FAで固定し、PBSですすぎ、核をHoechst色素33342で15分間後染色する。染色された細胞をCellomics ArrayScan(商標)IIサイトメーターで自動計数する。各サンプルにつき3回行う。
【0144】
Cellomics ArrayScan(商標)IIサイトメーター(Cellomics, Inc., Pittsburgh, PA)は、1ウェル当たり16視野(幅350μm)をスキャンし、各視野の細胞を計数する自動蛍光画像顕微鏡である。データをマイクロソフト・エクセルで解析し、平均移動細胞数±標準誤差として表す。
【0145】
siRNAでトランスフェクトされた細胞はトランスフェクション24時間後に用いる。
【0146】
実施例19:GPR4に関する内皮細胞−平滑筋細胞共培養アッセイ(芽の形成)
一次ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)および一次ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)はPromoCell, Heidelberg, Germanyから購入する。
HDMECは、SupplementPack/内皮細胞増殖培地MVと5%ウシ胎児血清(FCS)を添加した内皮細胞基本培地MVで増殖させ、HUVECは、SupplementPack/内皮細胞増殖培地と12.5%FCSを添加した内皮細胞基本培地で増殖させる。
内皮細胞基本培地は最小培地または飢餓培地として用いられる。
【0147】
ヒト肺動脈平滑筋(HPASM)細胞は、PromoCell, Heidelberg, Germanyから購入し、SupplementPack/平滑筋細胞増殖培地2と10%FCSを添加した平滑筋 細胞基本培地2で増殖させる。培地および添加物は全て、PromoCell, Heidelberg, Germanyから購入する。
【0148】
VEGF(10ng/ml)、bFGF、PDGFまたはS1P(100nM)などの特定の増殖因子の存在下における、平滑筋細胞層における内皮細胞の芽の形成を、細胞外pHの関数として測定する。さらに、本方法でのGPR4の特異的な役割を解明するため、GPR4に対するsiRNAでトランスフェクトした内皮細胞で、または、GPR4を標的とする化合物の存在下で同様の実験を行う。内皮細胞の芽の形成を、血管新生に対するin vitro読み取り値として用いる。内皮細胞の芽の形成の阻害は、血管新生の低下の一端を示す。
【0149】
48ウェル組織培養プレートを、37℃で5時間、PBS中10%のウシI型コラーゲンでコーティングする。500μの平滑筋細胞増殖培地II中、HPASM細胞(2×10細胞/ウェル)をこのコラーゲン層に接種し、37℃、5%CO下で24時間付着させる。増殖培地を除去し、内皮細胞増殖培地中のHDMECまたはHUVEC(5×10細胞/ウェル)を密集HPASM細胞単層の上部に接種する。この細胞を24時間インキュベートした後、培地を、種々の増殖因子および/または化合物を含有する最小培地(基本培地+1.5%FCS)に置き換える。これらのプレートを37℃で6日間インキュベートする。培地、増殖因子、および化合物は2〜3日おきに更新する。6日目に培地を除去し、細胞を室温で5分間、4%PFAで固定する。内皮細胞の芽は、抗ヒトCD31抗体(Becton Dickinson)、次いでビオチン化ヤギ抗マウス抗体およびストレプトアビジン−HRP(ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ)(両者ともSouthern Biotechnology)を用いたCD31染色によって可視化する。その後、ジアミノベンジジン(DAB)呈色反応およびDiff−Quickによる対比染色を行う。
【0150】
細胞を、倒立位相差顕微鏡を用いて1.25倍で画像化し、得られた画像をDefiniens Cellengerソフトウエア(Definiens AG, Munich, Germany)を用いて解析し、核の量、芽の長さと面積、および分岐を計算する。
【0151】
経時的な呈色の検出を伴う共存培養実験では、DiI−Ac−LDL(20μg/m)を共存培養培地に加え、37℃、5%CO下で4時間インキュベートする。DiI−Ac−LDL染色は、3日おきに更新する。DiI−LDLは、内皮細胞によって特異的に取り込まれるが、平滑筋細胞には取り込まれないことから、細胞を固定する必要なく内皮細胞の芽の検出を可能とする蛍光色素である。
【0152】
siRNAでトランスフェクトされた細胞はトランスフェクション24時間後に用いる。
【0153】
実施例20:in vivo血管新生モデル:GPR4の増殖因子を含有する寒天チャンバー
増殖因子を満たした寒天チャンバー周囲における強く血管が新生された組織の形成を、GPR4k.o(ノックアウト)マウスとwt(野生型)マウス、ならびにGPR4に作用する化合物で処理したwtマウスにおいて測定する。このアッセイはin vivo血管新生のためのモデルであり、抗血管新生薬の特性決定のために用いられる。
【0154】
規則的に間隔をおいた0.8mmの孔80個を有し、無菌条件下で、増殖因子を含む、または含まない0.8%寒天および20U/mlのヘパリンを満たしたテフロンチャンバーをマウス側腹部に皮下移植する。皮下移植では、尾の基部の皮膚を小さく切開し、移植トロカールを挿入する。このチャンバーを無菌条件下、その小切開部から動物の背に移植する。皮膚の切開部は創傷クリップによって封じる。4日後、VEGF(3μg/ml)およびbFGF(0.3μg/ml)およびS1P(5mM/ml)などの増殖因子を寒天に加えた場合には、チャンバーの周囲に血管組織が形成する。移植後4日目に、動物を、COを用いて屠殺する。次に、動物からチャンバーを取り出し、各チンバー周囲に形成された血管化した繊維状組織を注意深く摘出し、重さ、ヘモグロビンおよびTie2タンパク質含量などの種々のパラメーターを用いて分析する。あるいは、組織を急速冷凍し、組織学的研究のために処理する。ヘモグロビンの量は血液量と出血の組合せを反映する。これに対し、Tie2は内皮細胞においてのみ特異的に発現することから、Tie2タンパク質レベルはある組織の血管化の尺度として使用できる。
【0155】
インプラントの周囲で増殖している繊維状組織の湿重は摘出直後に測定する。次に、全組織を、2mlのRIPAバッファーを添加した後、24000rpm(Ultra Turrax T25)で1分間ホモジナイズする。このホモジネートを7000rpmで1時間遠心分離し、上清を、0.45μmGHPシリンジを用いて濾過し、脂肪夾雑物を除く。この上清においてヘモグロビンおよびTie−2タンパク質の量を測定する。ヘモグロビン含量は、Drabkin試薬キット(Sigma ヘモグロビン#525)を用い、540nmでの分光光度分析により測定する。濾液のアリコート(100μl)を0.9mlのDrabkin溶液に加え、混合物を室温で少なくとも15分間インキュベートする。この混合物の540nmの吸光度はヘモグロビン濃度に比例する。次に、ヘモグロビンを、ドナーマウスから種々の容量の全血サンプルを用いて事前に得た検量曲線を用いて血液量の測定値(μl)に変換する。Tie2タンパク質レベルをELISAにより測定し、Nunc Maxsisorb96ウェルプレートを4℃で一晩、0.1ml/ウェルの抗Tie−2 AB33捕捉抗体(2mg/ml,UBI,#05−584)でコーティングする。ウェルを3回洗浄し、室温、振盪下(300rpm)で2時間、3%Top−Block(Juro #TB232010)とともにインキュベートすることで遮断する。ウェルを再び洗浄し、タンパク質溶解液(全量0.2ml中、0.1〜0.5mg)を加え、室温で2時間インキュベートする。洗浄後、PBS−T+0.1%Top−Block中、Tie2検出抗体(R&D #AF762,0.5μg/ml)と抗ヤギ−リン酸アルカリ(alkaline phosphates)コンジュゲート(1:6000希釈,SIGMA#A−8062)の複合体を室温で1時間適用する。洗浄後、Tie−2抗体複合体を、リン酸p−ニトロフェニル(SIGMA#N−2270,錠剤)とともにインキュベートすることにより検出し、405nmで吸光度を読み取る。ヒトIgG1の定常領域と融合したTie−2の組換えヒト細胞外ドメイン(sTie−2Fc)をRIPAバッファーに溶解したものを、0.1ng〜300ng/wellの濃度範囲で標準として用いる。
【0156】
実施例21:GPR4に関する4T1マウス乳癌の正所性転移モデル
正所性同系乳癌およびその転移物の増殖を、GPR4k.oマウスとwtマウス、ならびにGPR4に作用する化合物で処理したwtマウスで測定する。血管新生は腫瘍増殖と転移形成にとって重要なものである。
【0157】
腫瘍細胞を、Michigami T et al in Breast Cancer Res Treat. 2002 Oct;75(3):249-58が記載しているように接種する。4T1マウス乳癌細胞(1×10/0.1ml PBS)を、同系雌Balb/cマウス(6〜8週齢)の右乳房脂肪体に正所接種する。細胞接種後7〜10日で腫瘍が形成し始める。広範囲の経時的実験では、組織検査により、肺および骨への転移は細胞接種後それぞれ2週間および3週間までで始まることが明らかとなった。3週間後に実験を終了し、腫瘍を秤量する。組織を急速冷凍し、組織学的研究のために処理するか、ELISAおよびウエスタンブロット分析のためにRIPAバッファーに溶解する。
【0158】
実施例22:GPR4に関するB16−BL6マウス黒色腫の正所性転移モデル
正所性同系黒色腫およびその転移物の増殖を、GPR4k.oマウスとwtマウス、ならびにGPR4に作用する化合物で処理したwtマウスで測定する。血管新生は腫瘍増殖と転移形成にとって重要なものである。
【0159】
B16−BL6マウス黒色腫細胞を過剰密集となるまで増殖させ、1μlのHBSS中5×10細胞を、同系雌C57/BL6マウス(6〜8週齢)の耳の皮膚に正所皮内(i.d.)接種する。注入は定位顕微鏡下で行い、耳の末梢の2本の血管の間に細胞を注入する。細胞接種後7〜10日で腫瘍が形成し始める。10日目前後に100%の動物に頭蓋リンパ結節の転移が起こり、一方、30%の動物が3週間後に肺転移を有していた。3週間後に実験を終了する。原発腫瘍の大きさは画像により定量し、リンパ結節転移物は秤量する。組織を急速冷凍し、組織学的研究のために処理するか、ELISAおよびウエスタンブロット分析のためにRIPAバッファーに溶解する。
【0160】
実施例24:GPR4に関するマウス抗原誘導型関節炎モデル
抗原誘導型の関節炎モデルを、GPR4k.oマウスとwtマウス、ならびにGPR4に作用する化合物で処理したwtマウスで実施する。血管新生は慢性関節リウマチにおいて重要な役割を果たす。
【0161】
このアッセイは、従前にGrosios K et al, Inflamm Res. 2004 Apr;53(4):133-42により記載されているように行う。−21日目と−14日目に雌マウスの背の2カ所に、フロイントのア完全ジュバントと1:1でホモジナイズしたメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA -Fluka Chemie AG)(1mg/mlのmBSAを含有する0.1ml)を皮内に感作させる。0日目に右膝には5%グルコース溶液中10mg/mlのmBSA 10μlを施し(抗原注射膝)、一方、左膝には5%グルコース溶液単独を10μl施す(ビヒクル注射膝)。次に、関節内注射直後と、2、4、7、9、11および14日目にも、2左膝と右膝の直径をカリパスを用いて測定する。投与処置は毎日行う。右膝の腫脹を左膝の腫脹の割合として算出し、R/L膝の腫脹を時間に対してプロットし、対照群と処置群の曲線下面積(Area Under the Curve)(AUC)のグラフを得る。エクセル・スプレッドシートを用い、対照群AUC(0%阻害)に対して、個々の処置群のAUCの阻害率%を算出する。14日目にマウスをCO吸入により殺し、右膝と左膝を取り出し、組織学的分析のために処理する。
【0162】
Histodurplastic包理法(Leica AG, Germany)を用い、膝を非脱灰組織学のために処理する。RM2165回転ミクロトーム(Leica AG, Germany)で、対照膝および関節炎膝の双方からの切片(5μm)を切断する。標準的なプロトコールに従ったギムザ染色後、これらのスライドに各動物からの左膝/右膝対として番号を付け、盲険方式で読み取る。
【0163】
実施例25:GPR4に関する未熟児網膜症モデル(ROP)
低酸素症誘発性網膜症モデルを、GPR4k.oマウスとwtマウス、ならびにGPR4に作用する化合物で処理したwtマウスで実施する。このモデルでは、低酸素症は、網膜において血管新生を誘導する主要な駆動力となる。
【0164】
このアッセイは、Reynolds LE et al, Nat Med. 2002 Jan;8(1):27-34およびWilkinson-Berka JL et al in Invest Ophthalmol Vis Sci. 2003 Mar;44(3):974-9が記載しているように行う。
【0165】
ROPは、C57BL/6マウスにおいて、7日齢の子供を母親と一緒に、75%±5%Oおよび2%CO(医学級のOおよび工業級の空気を用いる)を含む密閉チャンバー内に入れることで誘導する。チャンバー内のガスレベルを1日2回ガスアナライザー(モデルML205; AD Instruments, Pty., Ltd., Castle Hill, New South Wales, Australia)とチャートレコーダー(MacLab/2Eシステムのチャート3.5版; AD Instruments, Pty., Ltd.)でモニタリングする。約2.5L/分の空気流速が代謝的に産生されるCOを十分なレベルに維持し、O圧力を低下する助けとなる。マウスはこのチャンバー内に5日間留め(高酸素期、出生P7〜P12)、その後、さらに5日間室内空気中に置いた(低酸素症誘導性血管新生、P12〜P17)。血管を強調するためマウスにデキストラン−FITCを潅流し、網膜を解剖し、全標本として、または組織学により分析する。
【0166】
実施例26:TDAG8のクローニングおよび安定細胞株の作成:
ヒトTDAG8を、次のプライマー:フォワード,5’−GACTTCTCTGTTTACTTTCTA−3’;リバース,5’−GTTCTACTCAAGGACCTCTA−3’を用いてゲノムDNAから増幅する。PCR反応混合物は、水0.2mMのdNTP、1.5mMのMgClを含有する1×PCRバッファー、0.5単位のTaq/Tgo DNAポリメラーゼミックス(Roche)、各40pmolのプライマーおよび無菌水の全量20μlを含む。この反応のための鋳型はヒトゲノムDNA(Promega, Wallisellen, Switzerland)である。PCRは、バイオメトラT3サーモサイクラーを用い、次のサイクル条件:95℃2分の変性、その後、95℃30秒の変性、60℃45秒のアニーリング、および72℃1分の伸長を38サイクルを用いて行う。72℃での最終の伸長は7分間行う。
【0167】
このPCR産物をtopo PCR4ベクター(Invitrogen, Basel, Switzerland)にクローニングし、配列決定する。次に、コード配列の5’末端にEcoRI制限部位とkozak配列を導入し、3’末端は停止コドンの直前にXhoI制限部位を導入するために、この構築物から、次のプライマー:
フォワード:5’−TCCGGAATTCGCCACCATGAACAGCACATGTATT−3’
リバース:5’−GATCCGCTCGAGCTCAAGGACCTCTAATTC−3’を用いてcDNAを再増幅する。その後、このcDNAを、mycタグとの融合タンパク質として、発現ベクターpcDNA3.1/myc−Hisにサブクローニングする。
【0168】
TDAG8を発現する安定細胞株を、リガンドに応答してcAMPの変化を検出するためのcAMP依存性ルシフェラーゼリポーターを安定発現するCCL39細胞かCCL39 CRE−luc細胞のいずれかにおいて作成する。Effectene(Qiagen, Basel, Switzerland)を製造業者のプロトコールに従って用いてTDAG8 cDNA発現構築物をトランスフェクトすることにより、上記の細胞株において安定細胞株を作成する。トランスフェクトされた細胞は、400μg/mlのG418の存在下で選択する。3週間の抗生物質選択の後、個々のクローンを拾い、さらなる分析のために拡張する。
【0169】
実施例27:TDAG8はcAMP形成を活性化するプロトン感受性Gタンパク質共役型受容体である
cAMP形成アッセイ:24ウェルプレートで増殖させた密集細胞培養物を、血清フリーDMEM培地中で4時間、[H]アデニン(100MBq/ml; Amersham, Dubendorf, Switzerland)で標識する。次に、細胞を、IPアッセイ(実施例2)に関して上記したように緩衝塩溶液中、37℃でインキュベートする。示されている場合には、ホスホジエステラーゼ阻害剤であるイソブチルメチルキサンチン(IBMX,1mM)を加えてcAMPを蓄積させる。インキュベーション時間は15分とする。次に、細胞を氷冷トリクロロ酢酸で抽出し、バッチカラムクロマトグラフィーを用い、遊離アデニンおよびATPからcAMPを分離する(Salmon Y, 1979, Adv. Cycl. Nucleot Res, 10: 35-55)。
【0170】
結果:上記のような発現研究およびcAMP形成アッセイは、この受容体が実際にOGR1と極めて類似した範囲のpHシフトに応答することを示す。TDAG8のリガンドであることが報告されているプシコシン(Im DS, et al., 2001, J Cell Biol, 153:429-434)は、それ自体ではcAMPの形成を活性化しない。受容体を安定発現するCCL39細胞におけるTDAG8によるcAMP形成の最大の半分の活性化はpH7.15+/−0.02(平均値+/−標準誤差;N=6)で見られる。
【0171】
実施例28:TDAG8のアゴニストまたはアンタゴニストに関するスクリーニングアッセイ
実施例8に記載のように、TDAG8とcAMPルシフェラーゼリポーターを同時発現する細胞を、白色の96ウェルプレートに1ウェル当たり10〜20,000細胞でプレーティングする。アッセイを行う前日、培地を血清フリーDMEMに交換し、細胞を、5%COの存在下、37℃で一晩インキュベートする。細胞を、適当なpHの100μlのHBSバッファー(130mMのNaCl、0.9mMのNaHPO、0.8mMのMgSO、1.8mMのCaCl、5.4mMのKCl、25mMのグルコース、20mMのHEPES)で一度洗浄する。次に、試験化合物(例えば、いずれの自家製または市販の化合物ライブラリーからのものでもよい)を含有するこの適当なHBS100μlを細胞に加える。プレートを、COを含まないインキュベーター中、37℃で4〜5時間インキュベートする。4〜5時間後、細胞からバッファーを吸引し、細胞を100μlのPBSで一度洗浄する。15μlの溶解バッファー(5mMのトリスリン酸、4mMのDTT、0.4mMのEDTA、2%のグリセロール、0.2%のトリトンX−100)を加え、1分間振盪し、室温で20分間インキュベートすることで細胞を溶解する。50μlの基質バッファー(E1483, Promega, Wallisellen, Switzerland)の自動添加時の光シグナルの測定を、同時基質分注・シグナル測定を備えたLabsystems Luminoskan RS (BioConcept, Allschwill)で行う。このアッセイにおけるアゴニストは発光の増強をもたらし、一方、アンタゴニストは発光の低下をもたらす。例えば、アンタゴニストはこのアッセイにおいて、例えば酸性pHバッファー(pH6.8またはpH7.0)中、またはヒトTDAG8の最大の半分の活性化において、化合物を含まない対照に比べて発光シグナルが低下することを特徴とする。この受容体を安定発現するCCL39 CRE−luc細胞のヒトTDAG8によるルシフェラーゼ誘導の最大の半分の活性化はpH7.28+/−0.02(平均値+/−標準誤差;N=7)で見られる。
【0172】
実施例29:破骨細胞および破骨細胞前駆体細胞におけるTDAG8の発現
ヒト一次末梢血単核細胞(PBMNC;単球、リンパ球およびその他の血液細胞種からなる)を、10%ウシ胎児血清を添加したMEMalpha培地で培養する。破骨細胞の分化を誘導するため、いくつかの培養物にM−CSF(25ng/ml,R&D Systems, Abingdon, UK)、RANKリガンド(50ng/ml,Insight Biotechnology, Wembley, UK)、TGFβ1(5ng/ml,R&D Systems, Abingdon, UK)、デキサメタゾン(1μM,Sigma, Buchs, Switzerland)を含有するサイトカインカクテルを添加する。処理後17日で成熟破骨細胞が見られる。
【0173】
サイトカインカクテルで処理した、またはそれを含まない培養物から、RNAeasy(Qiagen, Basel, Switzerland)を用いてRNAを調製する。RNAをDNアーゼで処理し、スーパースクリプトII(Life technologies/Invitrogen, Basel, Switzerland)を用いて逆転写させる。TDAG8とグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GDPH)に関する並行PCR反応を、Expand High Fidelity Taq (Roche)により、次の温度周期プロトコール:94℃にて30秒の変性、56℃(TDAG8)または55℃(GPDH)にて45秒のアニーリング、72℃にて50秒の伸長;TDAG8は36サイクル、GPDHは30サイクルを用いて設定する。GPDHはmRNA量の内部標準として測定する。TDAG8では、PCR反応産物をクローンニングし、シーケンシングにより確認する。次のプライマーを用いた:TDAG8フォワード:5’−AACTACTTGTCAGCATCACA−3’、リバース:5’−GTTCTACTCAAGGACCTCTA−3’;GPDHフォワード:5’−TTAGCACCCCTGGCCAAGG−3’、リバース:5’−CTTACTCCTTGGAGGCCATG−3’。
【0174】
結果:PBMNCおよび十分分化した破骨細胞の双方でTDAG8の強い発現が見られる。
【0175】
実施例30:破骨細胞分化と活性アッセイ(TDAG8の機能アッセイ)
ヒト一次末梢血単核細胞(PBMNC)を、10%ウシ胎児血清を添加したMEMalpha培地で培養する。破骨細胞の分化を誘導するため、培養物にM−CSF(25ng/ml,R&D Systems, Abingdon, UK)、RANKリガンド(50ng/ml,Insight Biotechnology, Wembley, UK)、TGFβ1(5ng/ml,R&D Systems, Abingdon, UK)、デキサメタゾン(1μM,Sigma, Buchs, Switzerland)を含有するサイトカインカクテルを添加する。破骨細胞の分化に対するpHの影響を検討するため、分化中、細胞を種々のpHの培地で維持し、酒石酸耐性酸性ホスファターゼに対して染色を行った後、顕微鏡下で成熟破骨細胞を計数する。
【0176】
破骨細胞の活性に対するpHの影響を検討するため、PBMNCをウシ骨のスライス上に接種し、標準的な条件下、上記のようなサイトカインカクテルの存在下で14日目まで培養する。次に、培養物を種々のpHの培地に移し、さらに3日後、破骨細胞活性を、吸収された骨の面積と遊離したコラーゲン断片の濃度を測定することにより評価する。さらに、ヒトTDAG8アンタゴニスト(例えば、実施例17のスクリーニングアッセイによって得られたもの)は、pH6.8または7.0のような中性環境で見られた拮抗作用を逆転し得る。
【0177】
実施例31:配列対のアラインメント:
配列はGCGプログラム「Gap」(Devereux J, et al., 1984, Nucl Acids Res, 12:387-395.)を用いてアラインする。用いたタンパク質配列は、Refseqデータベース受託番号として
OGR1 NP_003476
GPR4 NP_005273
TDAG8 NP_003599
である。
ヒトOGR−1のヒトGPR4とのアライメント:類似性%:50.838。同一性%:45.251。
ヒトOGR−1のヒトTDAG8とのアライメント:類似性%:45.706。同一性%:34.663。
ヒトGPR4のヒトTDAG8とのアライメント:類似性%:46.061。同一性%:36.970。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態のための薬剤の開発における、単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチドの使用。
【請求項2】
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態のための薬剤の開発における、単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチドの使用であって、該ポリペプチドが
(a)ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによりコードされる単離されたポリペプチド;
(b)配列番号1のポリペプチド配列の少なくとも20%の同一性を有するポリペプチド配列を含む単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(c)配列番号3のポリペプチド配列の少なくとも20%の同一性を有するポリペプチド配列を含む単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(d)配列番号4のポリペプチド配列と少なくとも20%の同一性を有するポリペプチド配列を含む単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(e)配列番号1、配列番号3または配列番号4のポリペプチド配列を含む単離されたポリペプチド;
(f)配列番号1のポリペプチド配列と少なくとも20%の同一性を有する、単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(g)配列番号3のポリペプチド配列と少なくとも20%の同一性を有する、単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(h)配列番号4のポリペプチド配列と少なくとも20%の同一性を有する、単離されたプロトン感受性GPCRポリペプチド;
(i)配列番号1、配列番号3、または配列番号4のポリペプチド配列;および
(l)CCL39ハムスター繊維芽細胞においてpH依存性リン酸イノシトール形成を示すか、またはCHOK1 CRE−luc細胞もしくはCCL39 CRE−luc細胞においてcAMPルシフェラーゼリポーターアッセイでpH依存性シグナルを示す(a)〜(i)のポリペプチド
からなる群から選択される、使用。
【請求項3】
該ポリペプチドが配列番号1、配列番号3または配列番号4のポリペプチド配列を含む、請求項1または2に記載の単離されたポリペプチドの使用。
【請求項4】
該ポリペプチドが配列番号1、配列番号3または配列番号4のポリペプチド配列からなる、請求項1または2に記載の単離されたポリペプチドの使用。
【請求項5】
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態の予防および処置のための薬剤の開発における、単離されたポリヌクレオチドの使用であって、該ポリヌクレオチドが
(a)ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)のポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド;
(b)配列番号1のポリペプチド配列と少なくとも20%の同一性を有するプロトン感受性GPCRポリペプチド配列をコードする単離されたポリヌクレオチド;
(c)配列番号3のポリペプチド配列と少なくとも20%の同一性を有するプロトン感受性GPRCポリペプチド配列をコードする単離されたポリヌクレオチド;
(d)配列番号4のポリペプチド配列と少なくとも20%の同一性を有するプロトン感受性GPRCポリペプチド配列をコードする単離されたポリヌクレオチド;
(f)ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくはヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)のポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド;
(g)ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ラットOGR1(受託番号:XM_234483)、マウスOGR1(受託番号:NM_175493)、ウシOGR1(受託番号:NM_174329)、好ましくは、ヒトOGR1(受託番号:NM_003485.1)、ヒトGPR4(受託番号:NM_005282)、マウスGPR4(受託番号:NM_175668)、ヒトTDAG8(受託番号:NM_003608)およびマウスTDAG8(受託番号:NM_008152)のポリヌクレオチド配列;および
(h)CCL39ハムスター繊維芽細胞においてpH依存性リン酸イノシトール形成を示すか、またはCHOK1 CRE−luc細胞もしくはCCL39 CRE−luc細胞においてcAMPルシフェラーゼリポーターアッセイでpH依存性シグナルを示す(a)〜(g)のポリヌクレオチド
からなる群から選択される、使用。
【請求項6】
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態の予防および/または処置のための薬剤の製造を目的とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチドと特異的に結合する抗体の使用;
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態の予防および/または処置のための、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチドと特異的に結合する抗体を含む医薬組成物;または
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態の予防および/または処置方法であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチドと特異的に結合する、有効量の抗体をそのような予防および/または処置を必要とする被験体に投与することを含む方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチドのプロトン感受活性と拮抗する化合物を同定するためのスクリーニング方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチドのプロトン感受活性を促進する化合物を同定するためのスクリーニング方法。
【請求項9】
請求項1〜4のポリペプチドの機能または発現レベルを刺激または阻害する化合物を同定するためのスクリーニング方法であって、
(a)候補化合物と直接的または間接的に結合している標識の手段により、候補化合物と、該ポリペプチド(または該ポリペプチドを発現する細胞または膜)またはその融合タンパク質との結合を定量的または定性的に測定または検出すること;
(b)標識競合物の存在下で、候補化合物と、該ポリペプチド(または該ポリペプチドを発現する細胞または膜)またはその融合タンパク質との結合の競合を測定すること;
(c)該候補化合物が該ポリペプチドの活性化または阻害によって生じるシグナルをもたらすかどうかを、該ポリペプチドを発現する細胞または細胞膜に適当な検出系を用いて試験すること;または
(d)細胞における該ポリペプチドをコードするmRNA、または該ポリペプチドの産生に対する候補化合物の作用を、例えばELISAアッセイを用いて検出すること
からなる群から選択される方法を含む、方法。
【請求項10】
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態を予防および/または処置する方法であって、そのような予防および/または処置を必要とする被験体に、請求項7の方法から得ることができる有効量のアンタゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項11】
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態を予防および/または処置する方法であって、そのような予防および/または処置を必要とする被験体に、請求項8の方法から得ることができる有効量のアゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項12】
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態を予防および/または処置するための、請求項7の方法から得ることができるアンタゴニストを含む医薬組成物。
【請求項13】
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態を予防および/または処置するための、請求項8の方法から得ることができるアゴニストを含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチドに対する抗体を含む診断キット。
【請求項15】
プロトンホメオスタシスのバランスがとれていない疾病および医学的状態の予防および/または処置のための医薬製剤を含む診断キットであって、該医薬製剤が請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチドに対する抗体を含む診断キット。



【公表番号】特表2007−526744(P2007−526744A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515999(P2006−515999)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006625
【国際公開番号】WO2004/112823
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】