説明

プロバイオティクス菌株及びこれに由来する抗菌性ペプチド

本発明は、プロバイオティクス特性を有するエンテロコッカス・ムンドティ(Enterococcus mundtii)の菌株に関する。E.ムンドティの菌株(ST4SA)は、広範囲の細菌に対して抗菌活性を示す抗菌性ペプチドを産生する。本発明はまた、前記抗菌性ペプチド(ペプチドST4SA)をコードする、単離されたヌクレオチド配列を提供する。本発明の別の態様は、本発明のペプチドを製造するための方法であって、エンテロコッカス・ムンドティST4SA株を、回収可能な量の前記ペプチドが産生されるまで、微好気条件下、10〜45℃の温度で、栄養培地中で培養すること、及び前記ペプチドを回収することを含む方法に関する。本発明の単離されたペプチドは、局所治療剤としての液剤又はゲル剤において抗菌剤として使用することができ、また、ポリマー中に封入して、抗菌剤として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、エンテロコッカス・ムンドティ(Enterococcus mundtii)の菌株から得られるペプチド、及びエンテロコッカス・ムンドティの菌株のプロバイオティクス組成物に関連する。より具体的には、本発明は、エンテロコッカス・ムンドティの菌株から得られるペプチド、このペプチドをコードする遺伝子、並びにこのペプチドを産生する菌株及びこのペプチド自体の様々な用途に関する。
【発明の背景】
【0002】
乳酸菌は、胃腸の正常な微生物叢のバランスを維持することにおいて重要な役割を果たす。食餌、ストレス、微生物感染及び腸疾患は微生物のバランスを乱し、このことは、多くの場合、腸管における生存可能な乳酸菌(特に、ラクトバチルス属細菌及びビフィドバクテリウム属細菌)の数の低下を引き起こす。その場合、病原性細菌のその後の抑制されない増殖により、下痢及び他の臨床的障害(例えば、癌、炎症性疾患及び潰瘍性大腸炎など)が引き起こされる。
【0003】
プロバイオティクス乳酸菌の重要な性質の1つが、上皮細胞又は腸粘膜への細胞の接着である。これには、上皮細胞表面の受容体分子と、細菌表面との間の強い相互作用が要求される。プロバイオティクス菌体の接着により、病原体の接着が妨げられ、また、免疫系が刺激される。後者は、粘膜と相互作用することによって達成され、そのような相互作用により、結果として、リンパ系細胞が感作される。プロバイオティクス菌体のもうひとつの重要な特徴が、低いpH及び高量の胆汁酸塩での生存である。
【0004】
ヒト及び動物の腸に関係するビフィドバクテリウム属細菌、ラクトバチルス属細菌及び腸球菌属細菌のある種の菌株は、様々なバクテリオシン(抗菌性ペプチド)を産生することが知られている。これらのペプチドの役割、及び腸管における病原性細菌の増殖を抑制することにおけるそれらの意味は不明である。しかしながら、グラム陰性細菌に対して活性であるバクテリオシンに関する近年の報告から結論されるように、これらのペプチド、及び腸内病原体とのそれらの相互作用が改めて注目され得る。後者のバクテリオシンの多くが、腸管に通常的に存在する乳酸菌によって、すなわち、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophillus)群、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ファーメンツム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ペントスス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・パラカセイ亜種パラカセイ(Lactobacillus paracasei subsp.paracasei)及びエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)によって産生される。
【0005】
本発明は、腸のストレス状態(例えば、低いpH、胆汁酸塩、塩、膵臓酵素)に耐え、広域抗菌性ペプチド(ペプチドST4SA)を産生するエンテロコッカス・ムンドティの菌株を記載する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、
下記アミノ酸配列:
MSQVVGGKYYGNGVSCNKKGCSVDWGKAIGIIGNNSAANLATGGAAGWKS(配列番号12)、
そのフラグメントであって、抗菌活性を有するフラグメント、
そのムテイン及び誘導体であって、抗菌活性を有するムテイン及び誘導体、
その共有結合架橋体であって、抗菌活性を有する共有結合架橋体、又は、
前記アミノ酸配列に対して約95%を超える相同性、好ましくは85%を超える相同性、最も好ましくは約75%を超える相同性を有する配列であって、抗菌活性を有する配列、
を有する、細菌エンテロコッカス・ムンドティ由来の単離されたペプチドが提供される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、細菌エンテロコッカス・ムンドティのペプチドST4SAをコードする、単離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0008】
単離されたヌクレオチド配列は、
下記ヌクレオチド配列:
ATGTCACAAGTAGTAGGTGGAAAATACTACGGTAATGGAGTCTCATGTAATAAAAAAGGGTGCAGTGTTGATTGGGGAAAAGCTATTGGCATTATTGGAAATAATTCTGCTGCGAATTTAGCTACTGGTGGAGCAGCTGGTTGGAAAAGT(配列番号11)、
その相補体、
そのフラグメントであって、その発現後に、抗菌活性を有するペプチドを産生することができるフラグメント、又は、
厳密なハイブリダイゼーション条件下でそれとハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含むことができる。
【0009】
厳密なハイブリダイゼーション条件は、50℃における、2×SSC、0.1%SDSでの洗浄に相当する。
【0010】
ヌクレオチド配列は、プラスミドの形態の発現ベクター又は移入ベクターなどのベクター中に含めることができる。ベクターは、抗生物質抵抗性などの選択属性をコードする核酸配列、又は他のマーカー遺伝子を含むことができる。従って、本発明は、微生物宿主細胞の形質転換に適した組換えプラスミドであって、本発明の抗菌性ペプチドをコードするヌクレオチド配列が挿入されたプラスミドベクターを含むプラスミドを包含する。
【0011】
細胞は真核生物細胞又は原核生物細胞、例えば、細菌細胞又は酵母細胞であり得る。ヌクレオチド配列を細胞のゲノムに一過性又は構成的に組み入れることができる。従って、本発明は、本発明の抗菌性ペプチドをコードするヌクレオチド配列が挿入されたプラスミドベクターを含む組換えプラスミドを含む、形質転換された微生物細胞を包含する。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、抗菌活性を有する細菌エンテロコッカス・ムンドティ由来の単離されたペプチドが提供される。
【0013】
上記で特定される単離されたペプチドを産生する細菌エンテロコッカス・ムンドティはATCCに受託番号PTA−7278で寄託されている。上記で特定される単離されたペプチドを産生する、この特定の細菌エンテロコッカス・ムンドティ株はST4SA株と呼ばれている。従って、本発明は、ATCCに受託番号PTA−7278で寄託されているエンテロコッカス・ムンドティST4SA株の実質的に純粋な培養物であって、資化可能な炭素源、窒素源及び無機物質を含有する栄養培地中で発酵すると、回収可能な量のペプチドST4SAを産生することができる培養物を包含する。
【0014】
本発明の別の態様は、本発明のペプチドを製造するための方法であって、エンテロコッカス・ムンドティST4SA株を、回収可能な量の上記ペプチドが産生されるまで、微好気条件下、10〜45℃の温度で、栄養培地中で培養するステップと、上記ペプチドを回収するステップと、を含む方法に関する。好ましくは、培養は、約37℃の温度で行われる。
【0015】
栄養培地は、コーンスティープリカー、チーズホエー粉末、MRSブロス、酵母抽出物及び廃糖蜜を含む群のいずれか1つ又は複数から選択することができる。好ましくは、栄養培地は、pH6〜6.5のMRSブロスである。
【0016】
本発明の単離されたペプチドは、例えば、中耳感染症などの耳感染症や、咽頭、眼又は皮膚の感染症のための局所治療剤としての液剤又はゲル剤において、抗菌剤として使用することができる。液剤はまた、食事への液体補助物として使用されるためのものであってもよい。本発明のペプチドはまた、例えば、副鼻腔感染症、副鼻腔炎、扁桃炎、咽頭感染症又は鼻炎を治療するためのスプレーにおいて、抗菌剤として使用することができる。本発明のペプチドはまた、凍結乾燥粉末の形態であってもよい。
【0017】
本発明の単離されたペプチドはまた、ポリマー中に封入して、抗菌剤として使用することができる。本発明は、別の態様において、ペプチドST4SAの抗菌有効量が組み入れられたポリマーを包含する。このポリマーは、その後、皮膚感染症などの感染症の局所治療用の製剤で使用することができ、或いは、インプラント又は医療デバイス、例えば、イヤーグロメット、カテーテル、オストミーチューブ、オストミーポーチ、ステント、縫合材、女性用衛生用品などの衛生用品、コンタクトレンズ、コンタクトレンズ洗浄液に組み入れるために、又は創傷被覆材に組み入れるために使用することができる。ポリマー中への抗菌性ペプチドの封入は、抗菌性ペプチドのゆっくりした放出及び微生物感染症の長期間の治療をもたらす。
【0018】
本発明の単離されたペプチドは、100000〜300000AU(任意単位)/mlポリマーの濃度で、好ましくは約200000AU/mlポリマーの濃度で含まれ得る。
【0019】
本発明のペプチドはさらに、軟膏剤、ローション剤又はクリーム剤に組み入れることによって抗菌剤として使用することができる。これらの軟膏剤、ローション剤又はクリーム剤は、感染症を治療するために使用することができる。本発明のペプチドはまた、コンタクトレンズ洗浄液などの液剤に組み入れることによって抗菌剤として使用することができ、又はコンタクトレンズそのものに組み入れることができる。従って、本発明は、本発明の別の態様として、本発明の抗菌性ペプチドを含有する抗菌性の軟膏、ローション又はクリームを提供する。
【0020】
本発明の別の形態において、本発明のペプチドは、無菌包装の製造において使用される包装材(例えば、プラスチック)に組み入れることによって抗菌剤として使用することができる。
【0021】
本発明のさらなる形態において、本発明のペプチドは、錠剤形態又はカプセル形態の細菌エンテロコッカス・ムンドティの広域プロバイオティクスの一部として使用することができ、或いは、食用形態、例えば、菓子(sweet)又はチューインガムなどの形態であってもよい。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、エンテロコッカス・ムンドティST4SA株の治療有効濃度を含む生物学的に純粋な培養物を含むプロバイオティクス組成物が提供される。この菌株を、プロバイオティクス組成物1ml当たり生細胞約10〜10個、好ましくは約10個(cfu)の濃度で含むことができる。
【0023】
本発明の1つの形態において、本発明のプロバイオティクス組成物は、動物又はヒトにおいて病原性細菌を減少させるために使用することができる。
【0024】
本発明の別の形態において、本発明のプロバイオティクス組成物は、動物又はヒトにおいて病原性ウイルスを減少させるために使用することができる。
【0025】
本発明のプロバイオティクス組成物は、粉末、液体、ゲル、錠剤の形態であり得るか、又は食品に組み入れることができる。液体形態のプロバイオティクス組成物は、食事への液体補助物として使用することができる。本発明の菌株を、液体補助物1ml当たり生細胞約10〜10個、好ましくは約10個(cfu)の濃度で含むことができる。
【0026】
本発明のプロバイオティクス組成物は、10〜10cfu/mlの最終濃度、好ましくは10〜10cfu/mlの最終濃度、最も好ましくは約3×10の最終濃度で動物又はヒトに投与することができる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、
動物又はヒトにおける細菌感染状態を治療する方法であって、動物又はヒトの感染領域を、
本発明のエンテロコッカス・ムンドティ株の薬学的有効量、及び
本発明の抗菌性ペプチドの薬学的有効量、
のいずれか1つ又は複数を含む群から選択される物質又は組成物に曝すステップを含む方法が提供される。
【0028】
従って、本発明はまた、動物又はヒトの細菌感染症を治療する方法において使用される医薬品の製造における、本発明のエンテロコッカス・ムンドティ株の治療有効量の使用を包含する。
【0029】
この方法は、細菌種を、100000〜300000AU/ml、好ましくは約200000AU/mlの濃度の本発明の抗菌性ペプチドに曝すステップを含むことができる。
【0030】
本発明はまた、動物又はヒトの細菌感染症を治療する方法において使用される医薬品の製造における、本発明の抗菌性ペプチドの治療有効量の使用を包含する。
【0031】
本発明はさらに、動物又はヒトの細菌感染症を治療する方法において使用される物質又は組成物であって、本発明のエンテロコッカス・ムンドティ株を含み、上記方法が、そのような物質又は組成物の治療有効量を動物又はヒトに投与するステップを含む、物質又は組成物を提供する。
【0032】
本発明はさらに、動物又はヒトの細菌感染症を治療する方法において使用される物質又は組成物であって、本発明の抗菌性ペプチドを含み、上記方法が、そのような物質又は組成物の治療有効量を動物又はヒトに投与するステップを含む、物質又は組成物を提供する。
【0033】
細菌感染症は、アシネトバクター・バウマニイ(Acinetobacter baumanii)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、クロストリジウム・チロブチリクム(Clostridium tyrobutyricum)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、リステリア・イノクア(Listeria innocua)、緑膿菌(Pseudomonas aruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、ストレプトコッカス・カプリヌス(Streptococcus caprinus)、ストレプトコッカス(エンテロコッカス)・フェカリス(Streptococcus(Enterococcus) faecalis)又は肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、のいずれか1つ又は複数によって引き起こされる感染症であり得る。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、細菌種の成長を阻害する方法であって、細菌種を本発明の抗菌性ペプチドの有効量に曝すことを含む方法が提供される。細菌種は、アシネトバクター・バウマニイ、バチルス・セレウス、クロストリジウム・チロブチリクム、エンテロバクター・クロアカエ、大腸菌、肺炎桿菌、リステリア・イノクア、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス・カルノサス、ストレプトコッカス・カプリヌス、糞便連鎖球菌及び肺炎連鎖球菌を含む群から選択され得る。
【0035】
この方法は、細菌種を、100000〜300000AU/ml、好ましくは約200000AU/mlの濃度の本発明の抗菌性ペプチドに曝すステップを含むことができる。
【0036】
本発明の1つの態様によれば、
細菌エンテロコッカス・ムンドティ由来の単離されたトランスポーターペプチドであって、
配列番号14のアミノ酸配列、
そのフラグメント、
そのムテイン及び誘導体、又は、
前記アミノ酸配列に対して約90%を超える相同性、好ましくは80%を超える相同性、最も好ましくは約70%を超える相同性を有する配列であって、抗菌活性を有する配列、
を有するペプチドが提供される。
【0037】
本発明の別の態様によれば、細菌エンテロコッカス・ムンドティのST4SAトランスポーターペプチドをコードする、単離されたヌクレオチド配列が提供される。単離されたヌクレオチド配列は、
配列番号13のヌクレオチド配列、
その相補体、
そのフラグメント、又は、
厳密なハイブリダイゼーション条件下でそれとハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含むことができる。
【0038】
本発明の1つの態様によれば、
細菌エンテロコッカス・ムンドティ由来の単離された免疫ペプチドであって、
配列番号16のアミノ酸配列、
そのフラグメント、
そのムテイン及び誘導体、又は、
前記アミノ酸配列に対して約90%を超える相同性、好ましくは80%を超える相同性、最も好ましくは約70%を超える相同性を有する配列であって、抗菌活性を有する配列、
を有するペプチドが提供される。
【0039】
本発明の別の態様によれば、細菌エンテロコッカス・ムンドティのST4SA免疫/接着ペプチドをコードする、単離されたヌクレオチド配列が提供される。単離されたヌクレオチド配列は、
配列番号15のヌクレオチド配列、
その相補体、
そのフラグメント、又は、
厳密なハイブリダイゼーション条件下でそれとハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含むことができる。
【0040】
本発明は、別の態様において、配列番号1〜配列番号10からなる群から選択されるプライマーを包含する。従って、本発明はまた、下記の群:
配列番号1及び配列番号2を含むプライマー対、
配列番号3及び配列番号4を含むプライマー対、
配列番号5及び配列番号6を含むプライマー対、
配列番号7及び配列番号8を含むプライマー対、並びに
配列番号9及び配列番号10を含むプライマー対、
から選択されるプライマー対を包含する。
【0041】
本発明はまた、エンテロコッカス・ムンドティの同定における、配列番号1及び配列番号2のプライマー対の使用を包含する。
【0042】
本発明をよりよく理解するために、また、本発明がどのように実施され得るかを示すために、添付の図面及び表(これらは一例にすぎない。)を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、SEM(走査電子顕微鏡観察)によって観察されたときのエンテロコッカス・ムンドティST4SA株の細胞形態の画像である。
【図2】図2は、属特異的プライマーを使用することによって得られるPCR産物(DNAフラグメント)を示すアガロースゲルの写真である。エンテロコッカス属に特異的な112kbの属特異的DNAバンドが得られた。
【図3】図3は、種特異的プライマーを使用することによって得られるPCR産物(DNAフラグメント)を示すアガロースゲルの写真である。エンテロコッカス・ムンドティに特異的な306bbの種特異的DNAバンドが得られた。
【図4】図4は、ゲルろ過(AKTA−purifier)によって分離されるペプチドST4SAのグラフ表示である。
【図5】図5は、ペプチドST4SAの位置を示すSDS−ポリアクリルアミドゲルの写真である。
【図6A】図6Aは、E.ムンドティ ST4SAのプラスミドプロフィルを示すアガロースゲルの写真である。
【図6B】図6Bは、ST4SA株の染色体(ゲノム)上の構造遺伝子の位置を示すサザンブロットである。
【図7】図7は、E.ムンドティのペプチドST4SAのアミノ酸配列の概略図である。
【図8】図8は、ペプチドST4SAの構造遺伝子のDNA配列(A)、トランスポーター遺伝子のDNA配列(B)及び免疫遺伝子のDNA配列(C)である。
【図9A】図9Aは、ペプチドST4の産生に対する成長培地成分の影響を示す図である。
【図9B】図9Bは、ペプチドST4の産生に対する成長培地成分の影響を示す図である。
【図10】図10は、MRSブロスにおけるペプチドST4SAの産生のグラフ表示である。
【図11】図11は、推定される接着遺伝子を含有し得るDNAフラグメントを示すアガロースゲルの写真である。
【図12】図12は、異なる温度でのペプチドST4SA(無菌蒸留水に懸濁された粗抽出物)の安定性を示すグラフである。
【図13】図13は、寒天平板におけるシュードモナス(Pseudomonas)種に対して記録される阻害域の写真である。
【図14】図14は、ペプチドST4SA(409600AU/ml)により処理された肺炎連鎖球菌の写真であり、細胞質の漏出が矢印によって示される。
【図15】図15は、肺炎連鎖球菌(病原体27)の成長阻害を示すグラフである。
【図16】図16は、肺炎連鎖球菌(病原体29)の成長阻害を示すグラフである。
【図17】図17は、肺炎桿菌(病原体30)の成長阻害を示すグラフである。
【図18】図18は、中耳単離菌(病原体40)の成長阻害を示すグラフである。
【図19】図19は、中耳単離菌(病原体BW)の成長阻害を示すグラフである。
【図20】図20は、中耳単離菌(病原体E)の成長阻害を示すグラフである。
【図22】図22は、中耳単離菌(病原体GW)の成長阻害を示すグラフである。
【図23】図23は、中耳単離菌(病原体HW)の成長阻害を示すグラフである。
【図24】図24は、リステリア・イノクアLMG13568の存在下でのST4SA株の成長及びペプチドST4SAの産生を示すグラフである。記号:黒色菱型=L.イノクア LMG13568の存在下でのST4SA株の成長;黒色正方形=L.イノクア LMG13568の成長阻害;黒色丸=pHにおける変化;黒色バー=ペプチドST4SAの産生。
【図25】図25は、プロバイオティクスST4SA株の評価のために開発された胃腸モデル(GIM)の概略図である。
【図26】図26は、バンコマイシンによる脂質II標的部位の阻止及びペプチドST4SAの作用様式(抗菌活性)に対するその影響を示す概略図である。%漏出は、DNA及びβ−ガラクトシダーゼ活性の増大したレベルによって記録されるときの細胞質漏出を示す。
【図27】図27は、アミノ酸9(システイン)及びアミノ酸14(システイン)を共有結合により連結した、ペプチドに導入されたジスルフィド架橋の概略図である。
【図28】図28は、ST4SAの疎水性プロットを示すグラフである。
【図29】図29は、ST4SAによるL.monocytogenes(モノサイトゲネス)攻撃の結果及びインビトロGITモデルにおける生存を示すグラフである。
【図30】図30は、MRSブロス及びCSL培地におけるE.ムンドティ ST4SAの成長曲線を示すグラフである。
【図31】図31は、(A)コントロール結腸、(B)ST4SA株投与結腸、(C)コントロール回腸、(D)ST4SA株投与回腸、(E)コントロール肝臓、(F)ST4SA株投与肝臓、(G)コントロール脾臓、(H)ST4SA株投与脾臓の溶血素及びエオシン染色切片を60Xの倍率で示す写真である。
【図32】図32は、ラットの各実験群の毎日の体重測定を表すグラフを示す。矢印はリステリア感染の時を示す。
【図33】図33は、ラットの餌摂取の毎日の測定を表すグラフを示す。
【図34】図34は、ラットの各実験群によって消費された水の毎日の測定を表すグラフを示す。
【図35】図35は、ST4株、423株及び水コントロールが投与されていたラットの各実験群の便水分含有量を表すグラフを示す。
【図36】図36は、ラットの各実験群から感染1日前及び感染2日後で集められた便サンプルにおけるリステリア数を示す。
【表の説明】
【0044】
表1は、ST4SA株の表現型特徴(糖発酵反応)を示す。
表2は、ST4SA株の示差的特徴を示す。
表3は、ペプチドST4SAに対する、酵素、温度、pH及び変性剤の影響を示す。
表4は、ペプチドST4SAの活性スペクトルを示す。
表5は、ペーパーディスクにおけるペプチドST4SAの活性を示す。
表6は、一般に使用される抗生物質とのペプチドST4SAの活性の比較を示す。
表7は、病原体へのペプチドST4SAの接着を示す。
表8は、病原体をペプチドST4SAで処理した後に記録された細胞外DNAを示す。
表9は、病原体をペプチドST4SAで処理した後に記録されたβ−ガラクトシダーゼ活性を示す。
表10は、(コンピューター化された)GIMの操作を示す。
表11は、GIMにおけるST4SA株の生存及びペプチドST4SAの産生を示す。リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)が標的生物(病原体)として使用された。値は3回の試験の平均値である。使用された栄養物は、それぞれ、NAN Pelargon(Nestle)及びMRS(De Man Rogosa培地、Biolab)であった。
表12は、ST4SA株の抗生物質抵抗性を示す。
表13は、異なる濃度のトリメトプリム−スルファメトキサゾール(TMP−SMX)及びメトロニダゾールの存在下におけるST4SA株の成長を示す。
表14は、アッセイされた毒性因子を示す。
表15は、平板計数によるCaco−2細胞系へのST4SA株の接着を示す(コントロール)。
表16は、ST4SA株及びL.モノサイトゲネスの競合的排除を示す。
表17は、ST4SA株、Lactovita又は非補充の水が投与されたラットについての体重値を示す。
表18は、(A)107日のLactovitaでの研究の期間中、及び(B)50日のST4SA株での研究の期間中における雄性Wistarラットの便サンプルにおけるβ−グルクロニダーゼ活性を示す。値は、2時間当たりの放出されたmMでのp−ニトロフェノールである。標準誤差値がかっこ内に示される。
表19は、MRSf(MRSろ液)培地中のペプチドST4SAの精製を示す。
表20は、ペプチドST4SAの産生のための成長培地として試験された純粋なCSL、廃糖蜜及びCWpについての結果を示す。
表21は、どの培地がペプチドST4SAの産生に対して最も著しい影響が有ったかを明らかにするための成分としてのCSL及びCWpに関する全要因設計(FFD)を示す。
表22は、ST4SA活性の最適化のためにMRS成分が補充されたCSLの結果を示す。
表23は、MRS成分及びCSLの高濃度及び低濃度を示す。
表24は、210−5FrFD設計を示す。
表25は、210−5FrFD設計についての分散分析表を示す。
表26は、CSL及びYEの濃度を決定するための3中心点による2FFDを示す。
表27は、発酵期間中の炭素取り込みを示す。
表28は、抗菌剤及び抗炎症性薬物に対するE.ムンドティ ST4の抵抗性試験の結果を示す。
表29は、Caco−2細胞へのST4SAの接着に対する抗菌剤及び抗炎症性医薬品の影響を示す。
【発明の詳細な説明】
【0045】
本発明は、腸のストレス条件(例えば、低いpH、胆汁酸塩、塩、膵臓酵素)に耐え、広域抗菌性ペプチド、すなわち、ペプチドST4SAを産生する細菌エンテロコッカス・ムンドティの菌株を記載する。ペプチドST4SAを産生するエンテロコッカス・ムンドティのこの菌株はATCC(American Type Culture Collection)に寄託されており、受託番号がPTA−7278である。活性が、非常に多数のグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌に対して観察されており、これらのほとんどが中耳感染症及び腸から単離される。阻害される細菌の例は下記の通りである。アシネトバクター・バウマニイ、バチルス・セレウス、クロストリジウム・チロブチリクム、エンテロバクター・クロアカエ、大腸菌、肺炎桿菌、リステリア・イノクア、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス・カルノサス、ストレプトコッカス・カプリヌス、糞便連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、並びに感染した中耳液サンプルから単離される未同定のグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌の多くの臨床菌株。これは、広い活性スペクトルであり、具体的には、そのような様々なヒト病原体に対する広い活性スペクトルである。
【0046】
グラム陰性細菌に対する活性を有する多くの広域抗菌性ペプチドが記載されている;例えば、ラクトバチルス・ペントススによって産生されるペントシン35d、ラクトバチルス・ペントススST151BRによって産生されるバクテリオシンST151BR、ラクトバチルス・パラカセイ・サブエスピー・パラカセイによって産生されるバクテリオシン、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus termophylus)によって産生されるサーモフィリン(thermophylin)、エンテロコッカス・フェカリスによって産生されるペプチドAS−48、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)KCA2386によって産生されるバクテリオシン、及びエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)によって産生されるエンテロシンCRL35。しかしながら、これらのペプチドの活性スペクトルは、上記で示されたペプチドST4SA感受性の種から理解され得るように、ペプチドST4SAについて記録される活性スペクトルよりもはるかに狭い。広い活性スペクトル、特に、病原性細菌に対する広い活性スペクトルは、ペプチドST4SAを、細菌感染症を抑制するために、特に、(このペプチドが非常に様々な中耳病原体に対して活性であるので)、中耳感染症を抑制するために理想的なものにし、同様にまた、二次的な創傷感染症に関与する病原体を抑制するために理想的なものにする(このペプチドはこれらの病原体の多くの成長を阻害する)。感染した中耳液から単離される病原体は、アシネトバクター・バウマニイ、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、スタフィロコッカス・カルノスス、肺炎連鎖球菌、並びに多くの未同定のグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌であった。
【0047】
<材料及び方法>
〔ST4SA株の単離及び種レベルへの同定〕
無菌の蒸留水に4時間浸けたダイズから得られるダイズ抽出物を連続希釈し、真菌の成長を防止するために50mg/lのナタマイシン(Delvocid(登録商標)、Gist−brocades,B.V.、Delft、オランダ)が補充されたMRS寒天(Biolab、Biolab Diagnostics、Midrand、SA)に置床した。平板を30℃及び37℃で2日間インキュベーションした。
【0048】
コロニーを、50〜300cfu(コロニー形成単位)の平板から無作為に選択した。そして、Delvocid(登録商標)(50mg/l)が補充されたMRS寒天の第2の層でコロニーを覆うことによって、抗菌活性についてスクリーニングした。平板を、嫌気フラスコ(Oxoid、New Hampshire、英国)中、ガス発生キット(Oxoid)の存在下、30℃及び37℃で48時間インキュベーションした。コロニーを、ラクトバチルス・カセイ、エンテロコッカス・フェカリス、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎桿菌、肺炎連鎖球菌及び黄色ブドウ球菌の1mlの活発に成長している細胞(約10cfu/ml)が補充された半固体(1.0%寒天、w/v)BHI培地(Merck、Darmstadt、ドイツ)の第3の層(約10ml)によりそれぞれ覆った。平板を37℃で24時間インキュベーションした。
【0049】
コロニーの1つが、試験パネルに含まれる多種類の病原体を阻害した(表4)。このコロニーをMRSブロス(Biolab)に再接種し、その後、純粋な培養物を得るために再び画線培養した。単離菌はST4SA株と呼ばれた。抗菌活性が、寒天スポット試験方法を使用することによって確認された。
【0050】
ST4SA株の細胞形態を走査電子顕微鏡観察(SEM)によって調べた(図1を参照のこと)。ST4SA株の初期指数期(OD600nm=0.2)培養物の10mlを遠心分離によって集め、無菌の蒸留水により5回洗浄した(3000×g、10分、4℃)。ペレットを500μlの無菌MilliQ水(Waters、Millipore)に再懸濁し、その後、顕微鏡観察に供した。
【0051】
さらなる同定を生理学的特徴(表2)及び生化学的特徴によって達成した。色素形成をトリプシン消化ダイズブロス(Merck)で調べた。運動性についての試験もまた行った。糖発酵反応(表1)を、API50CHL試験片及びAPI20Strep試験片(Biomerieux、Marcy−l’Etiole、フランス)を使用することによって記録し、腸球菌について列挙される反応と比較した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
さらなる同定を、エンテロコッカス属に特異的なプライマーにより得られるDNAバンドパターン(図2)、及びエンテロコッカス・ムンドティに特異的なプライマーにより得られるDNAバンドパターン(図3)によって行った。50bpのDNAフラグメント(Amersham Bioscience,UK Limited、英国)をマーカーとして使用した。306bpのフラグメント(図3に示される)を生じさせるために使用されたプライマーを、16SrDNAにおける好適に保存された領域から設計した。
配列番号1:フォワードプライマー:AACGAGCGCAACCC
配列番号2:リバースプライマー:GACGGGCGGTGTGTAC
【0055】
DNAフラグメントの配列決定により、GenBankにおける保存された16SrDNAフラグメントとの98%の相同性が明らかにされた。
【0056】
〔抗菌活性の発現〕
抗菌活性を無細胞上清1ml当たりの任意単位(AU)として表した。1AUは、成長阻害の明瞭な領域を示す最大希釈の逆数として定義され、下記のように計算される。
×100
式中、「a」は希釈倍数を表し、「b」は、直径が少なくとも2mmである阻害域をもたらす最終希釈を表す。活性は、100を乗じることによって1ml当たりで表される。ラクトバチルス・カセイLHSを指示菌として使用した。
【0057】
〔抗菌性物質の特徴づけ〕
ST4SA株をMRSブロス(Biolab)において30℃で24時間及び48時間培養した。細胞を集め(8000×g、4℃、15分)、無細胞上清を6MのNaOHによりpH6.0に調節した。それぞれの上清の1mlを、0.1mg/ml(最終濃度)でのカタラーゼ(Boehringer Mannheim)、並びに1mg/ml及び0.1mg/ml(最終濃度)でのプロテイナーゼK(Roche、Indianopolis、IN、米国)、プロナーゼ、パパイン、ペプシン及びトリプシン(Boehringer Mannheim GmbH、ドイツ)によりそれぞれ処理した。インキュベーション後、酵素を熱不活化し(100℃で3分)、前に記載したように抗菌活性について試験した。結果が表3に示される。
【0058】
ペプチドST4SAのアリコートを、30℃、60℃及び100℃の熱処理に、10分間、30分間及び90分間それぞれ曝し、また、121℃で20分間曝した(表3)。その後、サンプルを、前に記載したように抗菌活性について試験した。
【0059】
【表3】

【0060】
別個の実験において、ペプチドST4SAのサンプルを、2〜12の範囲のpH値に調節し、37℃で30分間インキュベーションし、pH7に中和し、その後、抗菌活性について試験した(表3)。
【0061】
〔ペプチドST4SAの単離及び精製〕
ST4SA株の24時間培養物をMRSブロス(Biolab)に接種した(2%、v/v、OD600nm=8.0)。インキュベーションを、撹拌することなく、37℃で20時間行った。細胞を集め(8000×g、10分、4℃)、ペプチドを80%飽和の硫酸アンモニウムにより無細胞上清から沈殿させた。沈殿物を1/10体積の25mM酢酸アンモニウム(pH6.5)に再懸濁し、1000Daカットオフの透析メンブレン(Spectrum Inc.、CA、米国)を使用することによって蒸留水に対して脱塩し、SepPak C18カラム(Water Millipore、MA、米国)にロードした。カラムを25mM酢酸アンモニウム(pH6.5)中20%(v/v)のイソプロパノールにより洗浄し、バクテリオシンを25mM酢酸アンモニウム(pH6.5)中40%のイソプロパノールにより溶出した。真空下で乾燥した後(Speed−Vac;Savant)、フラクションをプールし、50mMリン酸塩緩衝液(pH6.5)に溶解した。活性のあるフラクションを、AKTApurifier(Amersham)に連結されたSuperdex(商標)75カラム(Amersham Pharmacia Biotech)でのゲルろ過クロマトグラフィーによってさらに分離した(図4)。カラムからのペプチドの溶出を50mMリン酸塩緩衝液及び400mM NaCl(pH6.5)により行った。ペプチドを254nm及び280nmでそれぞれ検出した。活性のあるペプチドを含有するフラクションを集め、真空下で乾燥し、−20℃で保存した。活性試験を、寒天スポット方法を使用することによって行った。
【0062】
〔サイズ決定〕
ST4SA株をMRSブロス(Biolab)において30℃で20時間成長させた。細胞を遠心分離(8000×g、10分、4℃)によって集め、ペプチドST4SAを80%飽和の硫酸アンモニウムにより無細胞上清から沈殿させた。沈殿物を1/10体積の25mM酢酸アンモニウム(pH6.5)に再懸濁し、1000Daカットオフの透析メンブレン(Spectrum Inc.、CA、米国)を使用することによって蒸留水に対して脱塩し、トリシン−SDS−PAGEによって分離した(図5A)。2.35kDaから46kDaに及ぶサイズを有する低分子量マーカー(Amersham International、英国)を使用した。活性なバクテリオシンの位置を明らかにするために、ゲルを固定し、一方の半分を、脳心臓浸出物(BHI)寒天(Biolab)に埋め込まれたL.casei LHS(10cfu/ml)により覆った(図5B)。
【0063】
〔ペプチドST4SAに対する細胞毒性試験〕
ペプチドST4SAが細胞毒性的性質を有するかどうかを明らかにするために、コンフルエントな単層のサル腎臓Vero細胞(1組3ウェル)を組織培養プレートで48時間成長させ、その後、様々な濃度の抗菌性ペプチドに曝した。48時間のインキュベーションの後、細胞の生存能を、細胞をテトラゾリウム塩MTT[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−ガンマ−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド](Sigma)で処理することによって試験した。コハク酸デヒドロゲナーゼによるMTTの切断の後で形成する青色生成物(ホルマザン)の生成を記録した。
【0064】
50%細胞毒性レベル(CC50)を、細胞の生存能を50%低下させるために要求されるペプチド濃度(μg/ml)として定義した。CC50の結果(細胞毒性レベル)によれば、細胞毒性が何ら記録されなかった。すなわち、本発明のペプチドはゼロ(0)のCC50を有する。
【0065】
〔プラスミド単離〕
総DNAを単離した。プラスミドDNAを単離し、その後、DNAをCsCl密度勾配遠心分離によってさらに精製した。DNAをアガロースゲルで分離した(図6)。EcoRI及びHindIIIにより消化されたラムダDNA(Promega、Madison、米国)を分子量マーカーとして使用した。
【0066】
〔プラスミドのキュアリング〕
キュアリング実験を行った。Ent.ムンドティ ST4SAの細胞をノボビオシン(1μgml−1〜25μgml−1)の存在下において37℃で72時間インキュベーションした。最高濃度のノボビオシンにおいて成長した培養物を無菌の生理的食塩水により連続希釈し、MRS寒天平板に置床した。37℃での一晩のインキュベーションの後、コロニーをレプリカ置床し、元となった平板をエンテロコッカス・フェカリスLMG13566の細胞により覆った。37℃でさらに16時間インキュベーションした後、コロニーを抗菌活性の喪失について調べた。
【0067】
〔接合伝達実験〕
フィルターかけ合わせ実験を行った。Ent.ムンドティ ST4SA及びEnt.フェカリス FA2−2の一晩成長させた培養物(0.25ml)を4.5mlのMRSに加え、混合し、0.45μmの細孔サイズの無菌メンブレンフィルター(HAWP、Millipore)でろ過した。メンブレンをMRS寒天平板に置き、37℃で一晩インキュベーションした。細胞をフィルターから1mlのMRSに洗い出し、連続希釈し、25μgml−1のフシジン酸、25μgml−1のリファンピシン及び2000AUml−1の粗ペプチドST4SAを含有するMRS寒天平板に置床した。実験を、Ent.フェカリス OGX1を受容菌として用いて繰り返した。この場合、選択を、1mgml−1のストレプトマイシン及び2000AUml−1の粗ペプチドST4SAを含有する平板で行った。コロニーを無作為に選択し、前に記載したように、ペプチドST4SAの産生について調べ、また、プラスミド含有量についてスクリーニングした。pST4SAを含有した、Ent.フェカリス OGX1の接合細胞のコロニーを培養し、無細胞上清を、前に記載したように活性試験に供した。
【0068】
〔ペプチドST4SAをコードする遺伝子エレメントの検出及びDNA配列決定〕
総DNAを単離した。構造遺伝子、トランスポーター遺伝子及び免疫遺伝子(これらは下記に示される)をPCRによって増幅するために使用されたDNAプライマーを、他の抗菌性ペプチドについて発表された部分配列に基づいて設計した。配列決定をABIPrism(商標)377DNA Sequencer(PE Applied Biosystem、Foster City、米国)においてABIPrism(商標)BigDye(商標)Terminator Cycle Sequencing Ready Reactionキットにより行った。データベース検索を、National Center for Biotechnology Information(NCBI)(Bethesda、MD20894、米国)のBLASTNプログラム及びBLASTXプログラムを使用することによって行った。
【0069】
構造遺伝子プライマー:
配列番号3:SG−a:TGAGAGAAGGTTTAAGTTTTGAAGAA(フォワード)
配列番号4:SG−b:TCCACTGAAATCCATGAATGA(リバース)
【0070】
ABCトランスポータープライマー:
配列番号5:ABC1−a:TGATGGATTTCAGTGGAAGT(フォワード)
配列番号6:ASC1−b:ATCTCTTCTCCGTTTAATCG(リバース)
配列番号7:ABC2−a:GTCATTGTTGTGGGGATTAT(フォワード)
配列番号8:ABC2−b:TCTAGATACGTATCAAGTCC(リバース)
【0071】
免疫プライマー:
配列番号9:Immun−a:TTCCTGATGAACAAGAACTC(フォワード)
配列番号10:Immun−b:GTCCCCACAACCAATAACTA(リバース)
【0072】
〔種々の成長培地及び種々の初期成長pH値におけるペプチドST4SAの産生〕
ST4SA株の18時間培養物を、MRSブロス、BHIブロス及びM17ブロス(Merck、Darmstadt、ドイツ)にそれぞれ接種した(2%、v/v)。インキュベーションを、撹拌することなく、28時間、30℃及び37℃でそれぞれ行った。サンプルを1時間毎に採取し、細菌の成長(600nmでのOD)、培養物pHにおける変化、及びL.casei LHSに対する抗菌活性(AU/ml)について調べた。寒天スポット試験方法を、前に記載したように使用した。
【0073】
別個の実験において、ペプチドST4SAの産生に対する初期培地pHの影響を明らかにした。多数の300mlのMRSブロスを、6MのHCl又は6MのNaOHにより、pH4.5、pH5.0、pH5.5、pH6.0及びpH6.5にそれぞれ調節し、その後、オートクレーブ処理した(図9A)。それぞれのフラスコにST4SA株の18時間培養物を2%(v/v)接種し、フラスコを、撹拌することなく、30℃で20時間インキュベーションした。培養物pHにおける変化及びペプチドST4SAの産生(これはAU/mlとして表される)を、本明細書中、前で記載したように1時間毎に測定した。すべての実験を3連(triplicate)で行った。
【0074】
〔ペプチドST4SAの産生に対する培地組成の影響〕
ST4SA株を10mlのMRSブロスにおいて30℃で18時間成長させ、細胞を遠心分離(8000×g、10分、4℃)によって集め、ペレットを10mlの無菌のペプトン水に再懸濁した。この細胞懸濁物の4mlを使用して、下記培地の200mlに接種した。(a)MRSブロス(De Man、Rogosa及びSharpe)で、有機栄養分を含まず、トリプトン(20.0g/l)、肉抽出物(20.0g/l)、酵母抽出物(20.0g/l)、トリプトン(12.5g/l)+肉抽出物(7.5g/l)、トリプトン(12.5g/l)+酵母抽出物(7.5g/l)、肉抽出物(10.0g/l)+酵母抽出物(10.0g/l)、又はトリプトン(10.0g/l)、肉抽出物(5.0g/l)及び酵母抽出物(5.0g/l)の組合せがそれぞれ補充されたもの;(b)MRSブロス(Biolab)、すなわち、20.0g/lのグルコースを含むもの;(c)MRSブロス(De Man、Rogosa及びSharpe)で、グルコースを含まず、20.0g/lのフルクトース、スクロース、ラクトース、マンノース及びマルトースがそれぞれ補充されたもの;(d)MRSブロスで、0.1〜40.0g/lのフルクトースを唯一の炭素源として含むもの;(e)MRSブロス(De Man、Rogosa及びSharpe)で、2.0〜50.0g/lのKHPO又は2.0〜50.0g/lのKHPOを含むもの;及び(f)MRSブロス(De Man、Rogosa及びSharpe)で、0〜50.0g/lのグリセロールが補充されたもの。別個の実験において、シアノコバラミン(Sigma、St.Louis、Mo)、L−アスコルビン酸(BDH Chemicals Ltd、Poole、英国)、チアミン(Sigma)、DL−6,8−チオクト酸(Sigma)及びビタミンK(Fluka Chemie AG、CH−9471 Buchs、スイス)の各ビタミンをフィルター滅菌し、MRSブロスに1.0mg/ml(最終濃度)で加えた。すべての試験のためのインキュベーションは30℃で20時間であった。ペプチドST4SAの活性レベルを、前に記載したように測定した。すべての実験を3連(triplicate)で行った。
【0075】
ST4SA株は、図1に示されるような形態、非運動性、色素形成の非存在、並びに属特異的プライマーによるPCR(図2)及び種特異的プライマーによるPCR(図3)に基づいて、エンテロコッカス属の菌株として同定された。種レベルへのさらなる同定を、表1に示されるような糖発酵パターン、及び上記の表2に示されるような生理学特徴によって行った。
【0076】
ペプチドST4SAは、表3において認められ得るように、タンパク質分解酵素(プロテイナーゼK、ペプシン、プロナーゼ、パパイン及びトリプシン)、TritonX−114による処理によって、また、121℃で20分の後で不活性化された。ペプチドは、100℃での90分間の処理の後で、また、Tween20、Tween80、尿素、EDTA及びTritonX−100により処理されたとき、活性を有したままであった(表3)。活性が、2.0から12.0に及ぶpH値でのインキュベーションの後で全く失われなかった(表3)。
【0077】
ペプチドST4SAは、表4に示されるように、非常に多数のグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌を阻害した。
【0078】
【表4】

【0079】
ペプチドST4SAを、図4に示されるゲルろ過によって精製した。ペプチドST4SAは、図4及び図5から認められるように、3400Daの範囲である。このペプチドは、本明細書中、前で記載したように、Vero細胞に対して試験されたとき、細胞毒性を有しなかった。
【0080】
ST4SA株は、図6Aに示されるように、2つのプラスミドを有する。この菌株からこれらのプラスミドをキュアリング処理すると、抗菌活性の喪失が生じなかった。構造遺伝子をコードするDNAフラグメントを用いた、染色体及びプラスミドDNAのプローブ探査では、染色体(ゲノム)との明瞭なハイブリダイゼーションが示された(図6B)。このことは、ペプチドST4SAをコードする構造遺伝子がゲノムに存在することを証明した。さらに、E.フェカリスへのこれらのプラスミドの接合(示されず)では、この菌株はペプチドST4SAの産生菌に変換されなかった。このことから、ペプチドST4SA産生をコードする遺伝子がST4SA株のゲノムに存在することが確認された。
【0081】
ペプチドST4SAの配列が図7及び配列表に示され、本発明の目的のために配列番号12として表示される。トランスポーターペプチド及び免疫ペプチドの配列が本発明の目的のために配列番号14及び配列番号16としてそれぞれ表示される。
【0082】
構造遺伝子、トランスポーター遺伝子及び免疫遺伝子のDNA配列が図8及び配列表に示され、本明細書の目的のために、配列番号11、配列番号13及び配列番号15としてそれぞれ表示される。
【0083】
種々の成長培地におけるペプチドST4SAの産生が図9A及び図9Bに示される。ペプチドST4SAの産生に対する初期成長pHの影響が図9Aに示される。これらの結果から、ペプチドST4SAは、6.0及び6.5の初期pHでのMRSブロスにおいて最適に産生され、10〜20g/lのKHPO、15.0〜20.0g/lのフルクトースの存在によって、又はビタミンC、ビタミンB及びDL−6,8−チオクト酸の存在によって刺激されることが明白である。
【0084】
ペプチドST4SAの産生が図10に示される。最大の産生が14時間の成長の後で記録された。
【0085】
接着/免疫遺伝子を含有するDNAフラグメントが図11に示され、本明細書の目的のために配列番号15として表示される。
【0086】
エンテロコッカス・ムンドティST4SAは、多くの病原体に対する活性を有する広域抗菌性ペプチド(ペプチドST4SA)を産生する。リーダーペプチド及びプロペプチド(これらはまとめてプレペプチドとして知られている)をコードする構造遺伝子がST4SA株のゲノムに存在する(図6Bを参照のこと)。1つのそのような遺伝子構造のみが検出された。このことは、1つのペプチドのみが抗菌活性の広いスペクトルに関わっていることを示唆する。様々な努力が、ST4SA株を、その50kbプラスミド及び100kbプラスミドからキュアリングするために行われ(図1)、しかし、それらは失敗した。このことは、プラスミドが、免疫性をペプチドST4SAに与えることにおいて大きな役割を果たし得ること、又は主要な代謝反応において重要な遺伝子を有することを示唆する。
【0087】
ST4SAがエンテロコッカス・ムンドティの菌株であるというさらなる証拠が、下記のプライマーを使用する、16SrDNAにおける保存領域から設計されるプライマーによる種特異的PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によって得られた。
配列番号16:フォワードプライマー:AACGAGCGCAACCC
配列番号17:リバースプライマー:GACGGGCGGTGTGTAC
【0088】
306塩基対のフラグメントが増幅された(図3に示される)。このDNAフラグメントの配列決定により、GenBankにおける保存された16SrDNAフラグメントとの98%の相同性がもたらされた。
【0089】
構造遺伝子(これはプロペプチドST4SAをコードする)、トランスポーター遺伝子及び免疫遺伝子が配列決定され、それらのそれぞれのアミノ酸配列がDNA配列から翻訳されている(図8)。
【0090】
ペプチドST4SAの安定性が、無菌の蒸留水に懸濁されたとき、−20℃から60℃に及ぶ温度で42日間にわたって試験された(図12)。このペプチドは、−20℃では42日間にわたって、また、4℃では3週間にわたって安定したままであった。安定性が37℃で1週間の後で低下した。しかしながら、粉末形態のペプチドST4SAは、室温(25℃)では6ヶ月間にわたって安定したままであった。ペプチドST4SAは粉末形態で製造され、そのようなものとして販売される。無菌の蒸留水に溶解されると、ペプチドST4SAは4℃で3週間保つことができる(図12を参照のこと)。
【0091】
ペーパーディスクにおけるペプチドST4SAの活性が表5に示される。抗生物質との活性の比較が表6に示される。活性が、感染した中耳液から単離されるPsudomonas種に対して試験された。阻害域の画像が図13に示される。
【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【0094】
ペプチドST4SAが標的細胞に結合することが、ペプチドの浸透を確かなものにするために重要である。ペプチドST4SAが病原体に接着する能力を調べた。結果が、病原体に結合する百分率として表された(表7)。これらの結果から結論すると、少なくとも75%のペプチドST4SAが、試験された病原体に結合する。ペプチドST4SAが標的細胞に接着することにより、細胞膜への浸透及び細胞膜の破壊が引き起こされる(図14)。
【0095】
【表7】

【0096】
細胞膜損傷及び細胞構成成分の漏出のさらなる証拠が、細胞外DNA及び細胞外β−ガラクトシダーゼ活性について試験することによって得られた。これらの結果が表8及び表9にそれぞれ示される。これらの結果は、DNA及びβ−ガラクトシダーゼが、ペプチドST4SAによる損傷を受けた細胞から漏れたことを示している。β−ガラクトシダーゼの漏出は、すべての種がこの酵素の高い細胞内レベルを有するとは限らないという事実のために、すべての病原体について記録されなかった。
【0097】
【表8】

【0098】
【表9】

【0099】
ペプチドST4SAによる処理の後での種々の病原体の細胞溶解が図15〜23に示される。オーバーナイトの病原体の0.2%(v/v)接種物をBHIブロスに接種した。ペプチドST4SAを中期指数期でそれぞれの病原体に加えた。本明細書中に示される結果(図15〜23)から、ペプチドST4SAがほとんどの病原体に対して殺菌的様式で作用したことが明らかである。
【0100】
ペプチドST4SAの産生をリステリア・イノクアの存在下で調べた(図24)。これらの結果に基づいて、L.イノクアは、ペプチドST4SAを産生するようにST4SA株を刺激し、しかし、その期間中、L.イノクアは阻害された。
【0101】
〔プロバイオティクス菌としてのエンテロコッカス・ムンドティST4SA〕
エンテロコッカス・ムンドティST4SAの生存を、コンピューター化された胃腸モデル(GIM、これは図25に示される)において評価した。
【0102】
GIMにおける第1の容器が胃を模擬し、第2の容器が十二指腸を模擬し、容器番号3が空腸及び回腸を模擬し、容器4が結腸を模擬する。栄養分の流れが専用のソフトウエアによって調節された。GIMの異なる区画におけるpHが無菌の1N HCl又は1N NaOHの蠕動的添加によって調節された。それぞれの区画には、制御装置及びコンピューターにつながれる非常に高感度のpHプローブが取り付けられた。GIMを通過する栄養分の流速が乳児の腸管に従って調節された。短い消化管を模擬する条件が、より大きい変動、従って、プロバイオティクス菌に対する増大したストレスを可能にするために選ばれた。4つの乳児用調製粉乳(Lactogen2、NAN Pelargon、ALL110及びAlfare)を評価した。プロバイオティクス細菌(ST4SA)による投薬は処方に従った。すなわち、1ml当たり生細胞10個(cfu)。プロバイオティクス菌体を唾液に懸濁した。NaHCO、パンクレアチン及び雄牛の胆汁を含有する膵液−胆汁溶液を、蒸留水に溶解した。GIMで使用した条件は、表10及び表11に要約する通りであった。
【0103】
【表10】

【0104】
【表11】

【0105】
病原体に対するST4SA株の生存を、GIMにリステリア・モノサイトゲネスを感染させることによって試験した。GIMにおけるST4SA株の生存、及び抗菌性ペプチドST4SAをGIMにおいて産生するその能力をモニターした(結果が表12に示される)。
【0106】
【表12】

【0107】
表12に示される結果から結論され得るように、ST4SA株が腸管のすべての区域で生存した。抗菌性ペプチドの産生は、腸管のすべての区域において、1ml当たり25600AU(任意単位)を超えていた。NAN Palargonでの成長は、MRSの場合ほど最適でなく、わずかに低かった。しかしながら、両方の実験では、細胞数が、1対数単位を超えて低下しなかった(表13を参照のこと)。
【0108】
【表13】

【0109】
様々な抗生物質に対するST4SA株の抵抗性が標準的な手順(抗生物質ディスク、Oxoid)に従って試験されている。これらの結果から結論されるとき、ST4SA株は、スルホンアミド系、クロキサシリン、メトロニダゾール、メチシリン、ネオマイシン、ナイスタチン、オキサシリン及びストレプトマイシンに対して抵抗性である(表13)。
【0110】
HIV/AIDSの小児が、下痢を防止するためにトリメトプリム−スルファメトキサゾール(TMP−SMX)及び/又はメトロニダゾールにより処理される。NAN Palargonには、異なる濃度の後者の抗生物質が補充され、ST4SAに対する影響が最適な培養温度(37℃)での18時間の後で測定された。
【0111】
表4に示される結果から結論され得るように、TMP−SMX及びメトロニダゾールはST4SA株の細胞数を4対数単位で低下させた。しかしながら、増大した濃度は、生存性に対する劇的な影響を有しなかった。
【0112】
〔ST4SAにおける毒性因子の発生〕
ST4SA株をプロバイオティクス菌として開発するためには、これに伴う何らかの毒性因子が存在するかを知ることが重要である。プライマーが、下記の毒性因子をコードする遺伝子について設計されている。バンコマイシン抵抗性(VanA/VanB);ゼラチナーゼ(Gel)の産生;凝集物質(AS);腸球菌由来のコラーゲンのアドヘシン(Ace);腸球菌表面タンパク質(Esp);溶血素/バクテリオシン(Cyl)及び非細胞溶解素β溶血素の遺伝子。ST4SA株のDNAが後者のプライマーにより増幅されたことにより、この菌株は、バンコマイシン抵抗性、ゼラチナーゼ活性、凝集物質及びコラーゲン接着をコードする遺伝子を有しないことが示された。これらの結果に基づけば、ST4SA株は病原性でなく、また、アルルギー反応を、摂取されたときに引き起こさないはずである。
【0113】
ペプチドST4SAは、多くのグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌に対して作用する抗菌活性の広いスペクトルを有するので、ペプチドST4SAの作用様式は、乳酸菌についてこれまでに記載の他の抗菌性ペプチドとは異なるようである。加えて、感受性細胞の細胞壁における認識部位が、本出願人が承知している他のペプチドによって使用される通常的な脂質IIアンカー部位(図26)とは異なり得る。
【0114】
この仮説を検証するために、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)DSM20017(これはペプチドST4SAに対して感受性である)の脂質II標的部位をバンコマイシンにより阻止した(概略図を参照のこと、図26)。バンコマイシンは脂質II分子のアミノ酸側鎖に接着し、このことにより、理論的には、ペプチドST4SAが同じ部位に結合することが妨げられると考えられる(すなわち、脂質IIが受容体として作用するならば)。しかしながら、バンコマイシン及びペプチドST4SAの組合せによる標的細胞(L.サケイ DSM20017)の処理は成長阻害をもたらした(細胞質の漏出;図26を参照のこと)。このことは、脂質II以外の標的部位が、ペプチドST4SAについての受容体として作用していることを示唆する。ペプチドST4SAが感受性細胞表面の2つ以上のアンカー部位に結合するという事実により、ペプチドST4SAがなぜ、(グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌に対して阻害性の)抗菌活性のそのような広いスペクトルを有するかが説明され得る。本出願人は、バンコマイシンによるL.サケイ DSM20017の処理が脂質IIの標的部位へのナイシンの結合を妨げた図26に示されるように、ナイシン(抗生物質)が脂質IIに結合することを承知している。
【0115】
ペプチドST4SAは、ペプチドST4SAが細胞壁表面の受容体部位との反応を形成した後で、リン脂質が多い細胞膜とのインターカレーションが可能である2つの疎水性領域を有する(図27)。これら2つの疎水性領域の間の領域、より具体的には、アミノ酸29(セリン)と、アミノ酸30(アラニン)との間(図27)は、構造体の残り部分よりも柔軟であり、ペプチドのC末端側半分を曲げ、リン脂質が多い細胞膜の中に自身を取り込むことを可能にするヒンジ領域として作用し得る。この仮説を検証するために、ペプチドST4SAのこれら2つの区域(図27)を、構造遺伝子のDNA配列から推定されるアミノ酸配列に基づいて合成した(これらは本明細書中下記ではフラグメント1及びフラグメント2として示される)。
【0116】
下記に示されるように、フラグメント1は、ヒンジ領域(すなわち、29位におけるセリンと、30位におけるアラニンとの間)の直前までの最初の29アミノ酸(リシンからセリンまで)からなっていた。ジスルフィド架橋が導入され(連結線、下記に示される)、このジスルフィド架橋により、アミノ酸9(システイン)及びアミノ酸14(システイン)(これらもまた、全長のペプチド配列において下記に示される)が共有結合により連結されていた。
【化1】

【0117】
このジスルフィド架橋は、ペプチドの構造を安定化するために役立った。フラグメント1は、囲まれた領域(21位〜26位の6アミノ酸、すなわち、AIGIIG)によって示される最初の疎水性領域を含有した。分子のこの部分は標的(感受性)生物の細胞壁における受容体を認識する。
【0118】
フラグメント2は、ヒンジ領域の下流側にある第2の疎水性ループにおける最後の13個のC末端アミノ酸と、(セリンと、アラニンとの間の)ヒンジ領域の直前の先行する11アミノ酸と、を含んでいた。
【化2】

【0119】
感受性細胞をペプチドST4SAのこれらの2つのフラグメントで処理することにより、分子の両方のフラグメント(区域)が抗菌活性のために必要とされることが示された。従って、N末端が細胞表面の受容体に固定されると、細胞膜の破壊がやっと可能となるようである。
【0120】
〔ポリエチレン(PE)に対するペプチドST4SAの結合〕
ポリエチレン(PE)に対するペプチドST4SAの結合を試験した。PEフィルムを5×5cmの切片に切断し、60%イソプロパノール及びペプチドST4SAの溶液(活性レベル:102400AU/ml)に1時間浸した。PE切片を風乾し(60℃で20分間)、標準的な寒天拡散方法を使用することによって抗菌活性についてアッセイした。平板にL.サケイ DSM20017を播種した後、平板を30℃で24時間インキュベーションし、成長阻害域について調べた。
【0121】
ペプチドST4SAは60秒以内にPEに吸着して、高い抗菌活性(PE切片を取り囲む大きい阻害域)を有するフィルムをもたらした。結合の強さを、ペプチド被覆のPEフィルムをSDS緩衝液に浸し、その後、ペプチドST4SAをフィルムから30mAの電流により2時間(室温、すなわち、約25℃)電気溶出することによって求めた。サンプルを一定の時間間隔で採取し、抗菌活性について試験した。タンパク質濃度を、Bradford法を使用することによって求めた。電気溶出されたフィルムを、寒天拡散方法を前のように使用することによって抗菌活性について試験した。
【0122】
ペプチドST4SAはPEフィルムに強く接着した。ペプチドST4SAはPEフィルムに対して不可逆的であるようである。PEの表面からのペプチドST4SAの遊離は30mAの電流により1時間後にやっと可能であった。赤身の肉をモデルとして用いる課題研究において、表面(PE)に結合したペプチドST4SAは、病原性細菌(リステリア属、バチルス属及びスタフィロコッカス属)の成長を妨げた。このことは、ペプチドST4SAは、微生物感染症を防止又は軽減するための創傷被覆材において使用可能であり、また、他の医療用途又は防腐用途における使用、例えば、インプラント、イヤーグロメット、カテーテル、オストミーチューブ、オストミーポーチ、ステント、縫合材、衛生用品(例えば、女性衛生用品など)、コンタクトレンズ、コンタクトレンズ洗浄液などにおける使用もまた見出されることを示唆する。抗菌性ペプチドをポリマー中に封入することにより、抗菌性ペプチドのゆっくりした放出及び微生物感染症の長期間の治療がもたらされる。さらには、PEに対するペプチドST4SAの強い接着性は、そのことが徐放性の抗菌剤として作用することを示す。
【0123】
ペプチドST4SAは微生物細胞上の2つ以上の受容体に結合し、広域抗菌薬から予想される典型である。ペプチドST4SAの第1の区域(ヒンジ領域の前方の区域)が受容体に結合する。第2の部分(ヒンジ領域の下流側の部分)はより大きい疎水性領域を有し、細胞膜の中にインターカレーションし、透過性を乱し、これにより、(DNA及び酵素の漏出によって可視化される)細胞死を引き起こす。ペプチドST4SAは、安定した徐放性様式でPEに結合し、従って、創傷被覆材に組み入れるために適する。
【0124】
〔プロバイオティクスへのエンテロコッカス・ムンドティST4SAの開発〕
エンテロコッカス・ムンドティST4SAの生存を、示されるようなコンピューター化された胃腸モデルにおいて評価した。この段階はプロバイオティクス菌としてのST4SA株のさらなるインビトロ評価及びインビボ評価を含んでいた。粘膜及び上皮細胞に対する接着を、ヒト細胞株を用いてインビトロで調べた。インビボ研究をラットにおいて行った。
【0125】
この研究で使用されたヒト腸細胞株はヒト結腸腺癌に由来し、Caco−2細胞株、HT−29及びHT29−MTX(粘液分泌細胞)を含んでいた。これらの細胞株は、標準的な培養条件下で成長すると、形態学的及び機能的な分化を発現し、分極化、機能的な刷子縁及び先端の腸ヒドロラーゼをはじめとする成熟した腸細胞の特徴を示す。
【0126】
宿主細胞へのST4SA株の接着性が、細胞表面の炭水化物、EfaAタンパク質、Ace(腸球菌由来のコラーゲンのアドヘシン)タンパク質及び凝集物質(AS)(これらは病原性に関係づけられる)によって影響される。ASは、ASがコードされる性フェロモンプラスミドの非常に効率的な伝達を可能にする細胞集塊の形成を媒介するアドヘシンである。
【0127】
本研究では、ST4SA株を、毒性形質、胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)の活性、及びヒト腸細胞様細胞株Caco−2に対する接着能力、すなわち、Caco−2細胞株に接着しながらでの競合的排除、また、インビトロ胃腸(GIT)モデルにおける競合的排除についてスクリーニングした。加えて、ST4SAの細胞表面の疎水性を求めた。
【0128】
〔毒性因子〕
毒性因子の存在、すなわち、バンコマイシン抵抗性(VanA/VanB/VanC1/VanC2/VanC3)の存在、ゼラチナーゼ(Gel)の産生、凝集物質(AS)、腸球菌由来のコラーゲンのアドヘシン(Ace)、腸球菌表面タンパク質(Esp)、溶血素/バクテリオシン(Cyl)及び非細胞溶解素β溶血素の遺伝子を、インビトロ検査及び/又はPCRスクリーニングによって調べた。DNAを標準的な方法に従ってE.ムンドティST4から抽出した。後者の遺伝子を増幅するために設計されたプライマーは記載の通りであった。結果が表14に示される。
【0129】
【表14】

【0130】
〔凝集物質(AS)の産生〕
ASの産生を性フェロモンの存在下での集塊形成アッセイで調べた。性フェロモンを、フェロモン産生菌(エンテロコッカス・フェカリスJH2−2)をMRSブロスにおいて37℃で18時間成長させることによって得た。フェロモン産生菌(E.フェカリス OG1X)の上清をマイクロタイタープレートでの集塊形成アッセイにおいて使用した。200マイクロリットルをST4SA株とともに接種し(0.5%、v/v)、2時間後、4時間後、8時間後及び24時間後に細胞の集塊形成について顕微鏡で調べた。細胞の集塊形成が全く認められなかった。
【0131】
〔ゼラチナーゼの産生〕
ゼラチナーゼの産生を、30g/lのゼラチンを含有するMRS寒天で調べた。37℃で18時間後においてコロニーを取り囲む透明域を、陽性の反応であると見なした。ゼラチナーゼの産生が全く検出されなかった。
【0132】
〔β−溶血素の産生〕
β−溶血素の産生が、血液寒天平板においてコロニーを取り囲む透明域の形成によって示された。血液寒天平板を、Columbia血液寒天基剤を5%のヒツジ血液とともに使用して調製した。β−溶血素の産生が全く認められなかった。
【0133】
本出願人が、ST4SA株は、バンコマイシン抵抗性、ゼラチナーゼ産生、心内膜炎抗原の産生、細胞凝集物の形成、コラーゲンに対する接着性、及び/又は表面タンパク質の産生をコードする遺伝子を有しないことを示していることは明白である。β−溶血素活性及び非細胞溶解素β溶血素IIIをコードする遺伝子が検出された。しかしながら、後者の2つの遺伝子は発現されない(溶血活性が血液寒天平板において認められなかった−下記参照)。
【0134】
〔胆汁酸塩加水分解(BSH)活性の測定〕
ST4SA株を一晩培養した培養物を10μl、0.5%(w/v)のタウロデオキシコール酸(TCDA)のナトリウム塩及び0.37g/LのCaClが補充されたMRS寒天平板にスポットすることによってBSH活性について試験した。平板を嫌気ジャーにおいて37℃で72時間インキュベーションした。沈殿域の形成を、BSH陽性であると見なした。
【0135】
胆汁酸塩加水分解(BSH)活性がST4SA株について認められなかった。BSH活性は、十二指腸における抱合型胆汁酸塩の毒性に対する乳酸菌の抵抗性に寄与し得る。しかしながら、胆汁酸塩ヒドロラーゼ活性及び胆汁酸塩に対する抵抗性は無関係であると一般に受け入れられている。
【0136】
〔細胞表面疎水性の測定〕
E.ムンドティ ST4SAを一晩培養した培養物を1/4強度のリンゲル溶液(QSRS)により2回洗浄し、OD580nmを測定した。等体積の懸濁物及びn−ヘキサデカンを一緒に加え、2分間混合した。相を室温で30分間分離させ、その後、1mlの水相を取り出し、OD580nmを測定した。2回(duplicate)の評価のOD580nmを平均化し、疎水性を計算するために使用した。
%疎水性=[(OD580nm測定値1−OD580nm測定値2)/OD580nm測定値1]×100。
【0137】
図28に示される結果から、ST4SA株は疎水性の徴候を示さなかったことが明白である。従って、この細胞はGITにおいて表面に永続的に付着しない。この細胞は腸内を(プランクトン細胞のように)自由に移動し、従って、このことは、良好なプロバイオティクス菌としてのその有用性を高める。
【0138】
〔Caco−2細胞株へのE.ムンドティ ST4SA及びリステリア・モノサイトゲネスの接着〕
Caco−2細胞(Highveld Biological Sciences)を、コンフルエンスを得るために5×10細胞/ウェルの濃度で播種した。接着性を、100μlの細菌懸濁物(1×10cfu/mlのST4SA株及び1×10cfu/mlのL.モノサイトゲネス)をウェルに加えることによって調べた。37℃で2時間インキュベーションした後、細胞株をPBSにより2回洗浄した。細菌細胞をTriton−X100により溶解し、MRS寒天及びBHI寒天にそれぞれ置床した。接着を初期生菌数及び細胞溶解物から計算した。
【0139】
ST4SA株及びリステリア・モノサイトゲネスの競合的排除を、100μlの各菌株を細胞単層に接種することによって求めた。2時間のインキュベーション期間の後、細胞を溶解し、エンテロコッカス特異的培地及びリステリア特異的培地にそれぞれ置床した。
【0140】
Caco−2細胞単層物を12ウェル組織培養プレートでのガラス製カバースリップにおいて調製した。ST4SA細胞の懸濁物をウェルに加えた。2時間の接着期間の後、細胞株をPBSにより2回洗浄し、10%ホルマリンにより固定処理し、グラム染色した。接着性細胞を顕微鏡で調べた。結果が表15及び表16に示される。
【0141】
【表15】

【0142】
【表16】

【0143】
表15及び表16に示される結果から、E.ムンドティ ST4SA細胞がCaco−2細胞へのリステリアの接着を妨げたこと、及びこの細胞がヒト細胞株における認識部位についてリステリアに対して首尾良く競合したことが明らかである。従って、ST4SA株はリステリアに打ち勝つことができる。
【0144】
〔ST4SAにより攻撃されたL.モノサイトゲネス及びインビトロ胃腸(GIT)モデルにおける生存〕
インビトロ胃腸モデルにおけるL.モノサイトゲネスに対するST4SAの抗菌活性を求めた。ST4SAを本明細書中、前に記載したような胃容器に接種した。L.モノサイトゲネス(1×10個)をGITの十二指腸容器に接種した。サンプルをそれぞれの容器から採取し、エンテロコッカス特異的培地及びリステリア特異的培地にそれぞれ置床した。コントロールとして、L.モノサイトゲネスのみをGITモデルに接種した。
【0145】
インビトロGITモデルにおけるST4SAによるL.モノサイトゲネス攻撃では、ST4が、L.モノサイトゲネスに対する抗菌活性を有したことが明らかにされた(次頁のグラフを参照のこと)。成長が十二指腸容器において8×10個から2×10個に低下し、L.モノサイトゲネスは、図29に示すように、コントロールと比較したとき、回腸容器において1×10cfu/mlほど低かった。
【0146】
〔経口投与されたE.ムンドティ ST4SAの安全性、細菌転位、生存及び免疫調節能のインビボ評価:Lactovitaに対する比較〕
<材料及び方法>
〔動物〕
体重が318g〜335gの間にある10匹の雄性のWistarラットを、制御された大気(温度、20℃±3℃)において、12時間の明暗サイクルとともにプラスチックケージに5匹ずつの群で収容した。動物には、標準餌、並びにプロバイオティクス菌補充又は非補充のいずれかのオートクレーブ処理された逆浸透水が自由に与えられた。
【0147】
〔細菌菌株及びプロバイオティクス菌〕
ST4SA株をMRSブロスにおいて30℃で18時間培養した。光学濃度を600nmにおいて1.8に調節した。細胞を遠心分離によって集め、20mMリン酸塩緩衝液(pH7.5)で洗浄した。洗浄された細胞を100mMスクロースに再懸濁し、液体窒素で凍結し、一晩凍結乾燥した。cfu/ml値を、所与量の細胞を1mlのリン酸塩緩衝液に懸濁し、希釈物をMRS固体培地に展開置床することによって求めた。ST4SA株を約2×10cfu/mlの濃度で飲料水に加えた。
【0148】
Lactovitaの商品名で市販されているプロバイオティクス菌を含有する3個のカプセルを開け、飲料水のそれぞれのビンに加えた。これにより、約3×10cfu/mlが投与されることがもたらされた。
【0149】
〔実験設計〕
2つの別個の研究を行った。それぞれの研究では、10匹のラットが、それぞれ5匹の2つの群に無作為に分けられた。一方の群はコントロールとして作用し、非補充の水が与えられた。第2の群には、Lactovitaカプセル又は凍結乾燥ST4SA株のいずれかが補充された水が与えられた。それぞれのラットは、研究期間を通して合計で9.89×1011cfuのST4株又は3.1×10cfuのLactovitaのいずれかが与えられた。ラットを毎日、波打った被毛、背中を丸めた姿勢、不安定な動き、震え又は身震い、咳又は呼吸困難、四肢の色を含めて、何らかの異常な活動、行動及び全体的な健康状態についてモニターした。活動を、3点スケール法を使用してモニターした。1=緩慢、ゆっくり動く;2=中程度;3=活発な動き又は探索。生体重量及び消費された水の体積を毎日測定した。ST4SA株での研究を50日にわたって行い、Lactovitaでの研究を108日にわたって行った。結果が表17に示される。
【0150】
【表17】

【0151】
〔β−グルクロニダーゼ活性〕
ラットを指定のサンプリング点で個別ケージに一晩入れ、24時間の便サンプルを、細菌数及びβ−グルクロニダーゼ活性を求めるために集めた。便サンプルを100mg便/ml緩衝液の濃度で20mMリン酸塩緩衝液においてホモジネートした。サンプルをアッセイまで−20℃で保存した。便サンプルを遠心分離によってペレット化し、1mlのGUS抽出緩衝液(50mM NaHPO、5mM DTT、1mM EDTA、0.1%TritonX−100)に再懸濁し、混合し、22℃で10分間インキュベーションした。サンプルを−20℃で一晩凍結し、β−グルクロニダーゼ活性を測定する前に解凍した。β−グルクロニダーゼ活性を、100μlの処理された便懸濁物を900μlの反応緩衝液(1mMのp−ニトロフェニルグルクロニドを含有する抽出緩衝液)と37℃で2時間インキュベーションすることによってアッセイした。反応を、2.5mlの1M Tris(pH10.4)を加えることによって停止させた。吸光度を415nmで測定した。標準曲線を、0.1mM、0.2mM、0.5mM、1mM及び10mMのp−ニトロフェノールを使用して構築した。
【0152】
〔細菌転位、毒性学的研究及び組織学〕
指定された期間にわたって試験菌株を与えた後、動物をペントバルビトンナトリウムの過剰用量によって安楽死させた。血液サンプルを右心室の心臓穿刺によって得た。それぞれのラットの内臓器官の全体的解剖学を調べ、記録した。肝臓組織、脾臓組織、回腸組織、盲腸組織及び結腸組織のサンプルを切除した。組織サンプルをカセットに集め、4%ホルムアルデヒド(PBS)溶液に入れ、その後、組織学的分析及びFISH研究のためにパラフィンワックスに包埋した。回腸及び結腸の切片を液体窒素で凍結した。血液サンプルをBHI固体培地に展開置床し、37℃で一晩インキュベーションした。
【0153】
〔免疫調節〕
総RNAを、Trizol試薬を使用して回腸及び結腸の凍結サンプルから抽出した。RNAの濃度を、DNase処理が完了した後、260nmでの吸光度を、Nanodrop分光光度計を使用して測定することによって求めた。それぞれのRNAサンプルを42ng/μlの濃度に希釈した。合計で5μgのそれぞれのサンプルを、スロットブロット装置を使用して3連(triplicate)でナイロンメンブレンに移した。その後、メンブレンを、ラットのゲノムDNAから増幅され、DIGにより標識された、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンγ(IFN)又はβ−アクチンのいずれかのDNAプローブによりプローブ探査した。メンブレンをX線フィルムに一晩感光させ、現像した。
【0154】
<結果>
〔全体的な健康状態及び体重増加〕
研究期間を通して、顕著な行動変化又は活動変化がラットにおいて認められず、また、差を、実験群と、コントロール群との間で何ら認めることができなかった。処理に関連づけられる疾患又は死亡は生じなかった。
【0155】
〔β−グルクロニダーゼ活性〕
β−グルクロニダーゼを含めて、様々な細菌酵素が、変異原、発癌物質及び腫瘍促進因子を、GITにおいて見出される前駆体から生じさせることに関与することが知られており、それらの存在が、細菌菌株の毒性を示す場合があり、従って、可能性のあるプロバイオティクス菌の安全性の目安として使用することができる。ST4SA株及びLactovita懸濁物はともに、β−グルクロニダーゼ活性をインビトロで示さなかった(データは示さず)。しかしながら、Lactovita懸濁物が与えられたラットは、コントロールのラットと比較したとき、β−グルクロニダーゼ活性における増大を便サンプルにおいて示した(表18A)。コントロール動物はまた、56日目での活性と比較したとき、活性における低下を研究の107日目に示し、実験動物は、56日目と比較したとき、わずかに増大した値を107日目に示した。ST4補助物が与えられたラットは、コントロール群と比較したとき、より大きいβ−グルクロニダーゼ活性を示した(表18B)。しかしながら、この活性は、研究の0日目での値と比較したとき、研究終了時においてより低いままであった。コントロール群もまた、0日目と比較したとき、研究終了時においてより低い活性を示した。
【0156】
【表18】


【0157】
〔細菌転位、毒性学的研究及び組織学〕
菌血症が動物群のいずれにおいても検出されなかった。内臓器官の肉眼検査では、ST4SA株が与えられたラットが、コントロールのラットと比較したとき、著しくより顕著なMLNを有したことが示された。MLNは、コントロールのラットにおいて特定することが極めて困難であった。実験群と比較したとき、コントロール群における脾臓はより狭小であり、筋肉量及び腹部脂肪がともにコントロール群ではより少なかった。Lactovitaが与えられた動物では、コントロール群と比較したとき、MLNがそれほど顕著ではなく、また、脾臓がより小さかった。
【0158】
リンパ球が脾臓に入り、血中の抗原に対する免疫応答を促進させる。肥大した脾臓は免疫系の増大した活性を示し得る。このことはまた、顕著なMLNとも相関する。MLNはまた、免疫機能に関与しており、炎症又は感染の結果として大きくなる場合がある。この増大は、リンパ球がその機能を予想される通りに発揮していることの目安である。従って、ST4SA株は免疫刺激剤として作用し得る。Lactovita補助物を受けているラットは、コントロールのラットと比較したとき、より小さい脾臓及びそれほど顕著でないMLNを示した。このことは、Lactovitaが免疫反応を誘導しないことを示している。しかしながら、コントロールラットのMLN及び脾臓が大きくなり、疾患の症状が、何らかの免疫刺激剤の非存在下では全く認められなかった。
【0159】
〔免疫調節〕
ノーザンハイブリダイゼーション研究では、何らかのサイトカイン(TNF又はIFN)の発現が実験ST4SA群又はコントロール群のいずれにおいても示されなかった。RNAがβ−アクチンのDNAプローブによりプローブ探査されたとき、陽性シグナルが検出され、相対的に同じ強度であった。このことはRNAの存在を示している。
【0160】
サイトカインは、細胞成長、炎症、免疫性、分化及び修復を媒介する分泌タンパク質である。サイトカインは多くの場合、その要求される作用を生じさせるために、フェムトモル濃度を必要とするだけである。多くの場合、サイトカインは細胞表面の受容体との組合せで作用して、RNA合成及びタンパク質合成のパターンにおける変化を生じさせる。サイトカインは通常、そのような低い濃度で存在するので、これらのタンパク質の影響下にあるさらなる遺伝子の発現を明らかにすることがより有益であり得る。
【0161】
本明細書中に示される結果は、試験されたプロバイオティク菌のいずれもが、雄性のWistarラットの全体的な健康状態に対する負の影響を何ら有していないことを示している。
【0162】
まとめると、ST4SA株は、バンコマイシン抵抗性をコードする遺伝子を有していない。β−溶血素活性及び非細胞溶解素β溶血素IIIをコードする遺伝子が検出されたが、しかし、遺伝子はサイレント(非発現)のままであった。ST4SA株は胆汁酸塩加水分解(BSH)活性を有していない。このことは、この菌株がGITの下部区画(回腸及び結腸)においてより良好に機能することを示している。上記で示したように、データは、E.ムンドティ ST4SA株がGITの中を自由に動き、Caco−2細胞へのリステリアの接着を妨げ、同時にまた、ヒト細胞上の受容体に結合しないようにリステリアと首尾よく競合することを示している。ST4SA株は抗菌作用を胃腸モデル(GIM)研究においてL.モノサイトゲネスに対して有した。ST4SA株は、ラット研究により示されるように、非毒性である。処理に関連づけられる疾患又は死亡は生じなかった。ST4SA株はまた、そのようなものとしてLactovitaよりも良好に機能した。これは、ラットにLactovitaが与えられた場合、ラットはβ−グルクロニダーゼ活性における増大を示したからである。従って、ST4SA株はラットにおいて免疫応答を刺激する。Lactovita補充物が与えられたラットは、コントロールのラットと比較したとき、より小さい脾臓及びそれほど顕著でないMLNを示した。このことは、Lactovitaが免疫反応を誘導しないことを示唆する。
【0163】
上記で示したように、ペプチドST4SAは様々な細菌の成長を阻害する。ペプチドST4SAの最大産生(51200AU/ml)がMRSブロス(Biolab)における20時間の成長の後で記録され、これが発酵期間中を通して維持された。
【0164】
ST4SA株を18時間培養した培養物がMRSブロス(Biolab)及びろ過されたMRSブロスにそれぞれ接種された(2%(v/v)、OD600nm=2.0)。MRSブロス(Biolab)を、細孔サイズが6000Da〜8000Daのニトセルロースメンブレンを備えるMinitan(商標)システム(Millipore、BioSciences International)でろ過した。8000Daよりも小さいタンパク質を含有するMRSろ液(MRSf)を、その後、オートクレーブ処理し、前で記載したように接種した。MRSブロス及びMRSfにおけるインキュベーションは、撹拌を伴うことなく、30℃及び37℃で29時間であった。ペプチドST4SAの活性を2時間毎に求めた。
【0165】
〔ペプチドST4SAの精製〕
1リットルのMRSfにエンテロコッカス・ムンドティST4SAを接種し(OD600nm=1.8)、これを30℃で24時間インキュベーションした。細胞を遠心分離(8000×g、4℃、15分)によって集め、無細胞上清を80℃で10分間インキュベーションした。硫酸アンモニウムを4℃で無細胞上清に静かに加えて60%の飽和レベルにした。4時間ゆっくり撹拌した後、沈殿物を遠心分離(20000×g、1時間、4℃)によって集めた。ペレットを1/10体積の25mM酢酸アンモニウム(pH6.5)に再懸濁し、1.0kDaカットオフのSpectra/Por透析メンブレン(Spectrum Inc.、CA、米国)を使用して無菌のMilliQ水に対して脱塩した。さらなる分離を、本明細書中、前で記載したように、AKTApurifier(Amersham)による1mlのResource Sカラム(Amersham Biosciences)におけるカチオン交換クロマトグラフィーによって行った。
【0166】
それぞれの精製段階の後で得られたペプチドST4SAの活性レベルが表19に示される。
【0167】
【表19】

【0168】
AKTApurifierから集められた活性なフラクションはST4SAピークに対応し、42アミノ酸のペプチド(ペプチドST4SAの予想サイズ)をもたらした。
【0169】
〔ペプチドST4SAの等電点フォーカシング〕
ペプチドST4SAの等電点フォーカシングを、Rotofor(登録商標)エレクトロフォーカシングセル(Bio−Rad、Hercules、California、米国)を使用することによって行った。MRSfで培養されたST4SA株から得られ、前で記載したように調製された1リットルの無細胞上清を凍結乾燥し、製造者の説明書に従ってアンホライト(pH範囲:3〜10、Bio−Rad)とともに50mlの無菌の蒸留水に再懸濁した。12Wの定電流を8℃で5時間加えた。分離後、集められたフラクションのそれぞれからの小体積を3NのNaOH又は3NのHClによりpH7.0に調節し、ラクトバチルス・カセイLHSに対する抗菌活性について試験した。陽性と試験されたフラクションをプールし、50mlの総体積に脱イオン水で再懸濁し、エレクトロフォーカシングに再び供し、フラクションを集め、抗菌活性について試験した。サンプルを−20℃で保存した。
【0170】
培養培地の費用削減は培地最適化の重要な部分となる。培地費用は、工業用培地を炭素源及び/又は窒素源として使用することによって下げることができる。コーンスティープリカー(CSL)、チーズホエー粉末(CWp)及び廃糖蜜が通常、成長培地の一部として使用される。CSLは、トウモロコシの製粉時に形成される副産物である。CSLは主として窒素源であり、しかし、糖(主にスクロース)、ビタミン及びミネラルもまた含有する。チーズホエー(乳業における副産物)は乳酸(LA)製造のための最も一般的な発酵培地であり、ラクトース、タンパク質及び塩を主に含有する。廃糖蜜は、主としてスクロースを含有する副産物であり、微量の他のミネラルを含む。
【0171】
〔培養及び培地〕
ST4SA株をMRSブロス(Biolab)で培養して、CSL、CWp及び廃糖蜜にそれぞれ接種した(2%v/v)。
【0172】
〔発酵〕
発酵を、10mlの培地を含有する試験管で行った。pHを殺菌(121℃、15分間)の前にNaOHにより調節した。NaOHの濃度は培地の緩衝能に依存した。24時間の培養物を接種(2%v/v)のために使用した。回分発酵を試験管において30℃で16時間行った(pH6.5〜7.0)。pHは制御されなかった。光学濃度(OD)を600nmで測定した。
【0173】
10g.l−1、20g.l−1及び50g.l−1での廃糖蜜及びCSLを、ペプチドST4SA産生のための可能な培地として評価した(表20)。廃糖蜜におけるpHが発酵期間中に低下した(従って、このことは細胞成長を示す)が、ペプチドST4SA活性が上清において記録されなかった。他方で、CSLは、20g.l−1の最小濃度で、3200AU.ml−1にまで達する活性を有する上清をもたらした。これらの結果から結論され得るように、窒素源(CSL)が、ペプチドST4SAの産生を持続させるためには要求される。
【0174】
【表20】

【0175】
追跡実験において、CWpを工業用培地のリストに加え、10gTS.l−1、20gTS.l−1及び50gTS.l−1で発酵させた(表20)。1600AU.ml−1にまで達するペプチドST4SA活性がCWpにおいて記録された(表20)。
【0176】
成分としてのCSL及びCWpに関する全要因設計(FFD)を使用して、どの培地がペプチドST4SAの産生に対する最も著しい影響を有したかを明らかにした(表21)。FFDはまた、何らかの相互作用が栄養物の間に存在したかどうかに関する目安を与える。
【0177】
【表21】

【0178】
糖の利用を、下記の方法を使用することによって明らかにした。
【0179】
〔全糖についてのフェノール硫酸アッセイ〕
フェノール(5%(v/v)溶液の500μl)及び濃硫酸(2.5ml)を試験管における500μlの希釈サンプルに加えた。溶液を十分に撹拌混合し、吸光度の読み取りを490nmで行った(室温)。糖濃度(gグルコース.l−1)を、標準曲線グラフを使用して計算した。
【0180】
〔モノマー糖のDionex測定〕
CarboPac PA100カラムを備えるDionex DX500分析装置を使用して、サンプルをモノマー糖について分析した。使用された溶出液は、1ml.min−1の流速において、250mM NaOH、HO及び1M NaOAcであった。Dionexはオートサンプラーを備え、注入体積は10μlであった。
【0181】
全糖濃度を5gTS.l−1及び10gTS.l−1(これらは「−1」及び「1」によってそれぞれ表される)の間で変化させた。結果(2連(duplicate)で行われた実験)は、CSL及びCWpの濃度はペプチドST4SAの産生に対する影響を何ら有しなかったことを示唆した(表21)。5gTS.l−1及び10gTS.l−1でのCSLは、CSL及びCWpの組合せで記録されたペプチドST4SA活性と類似するペプチドST4SA活性をもたらし(表21)、50g.l−1のCSLにより記録されたよりも4倍高いペプチドST4SA活性をもたらした(表20)。これらの結果から明白であるように、CSLはペプチドST4SAの産生に対する最も著しい影響を有していた。
【0182】
〔CSLの最適化〕
12800AUml−1にまで達するペプチドST4SA活性が、10gTS.l−1の濃度で、純粋なCSLにおいて記録された。しかしながら、MRSにおいて記録されたペプチドST4SA活性(51200AU.ml−1)と比較したとき、これは低かった。予備実験において、MRS成分(グルコースを除く)を10gTS.l−1及び40gTS.l−1のCSL及びCWpにそれぞれ加えた(表22)。活性における2倍の増大が、純粋なCSLと比較したとき、補充物を有する10gTS.l−1のCSLについて認められた。対照的に、補充物を有する40gTS.l−1でのCSLは低い活性をもたらした。高濃度のCSLは成長を阻害し(pHにおける小さい低下)、その後に、ペプチドST4SAの産生もまた阻害した。これはCSLにおける阻害性成分のためであり得る。同じ実験をCWpに関して行った(表22)。CWp濃度を(10gTS.l−1から40gTS.l−1に)増大させた場合、ペプチドST4SAの産生に対する影響は何ら記録されなかった。
【0183】
【表22】

【0184】
10gTS.l−1において、CSLは、CWpと比較したとき、2倍の活性でペプチドST4SAを産生した(25600AU.ml−1)。従って、CSLをさらなる実験のための培地として選んだ。
【0185】
MRS成分のすべてが、ペプチドST4SAの産生を改善することにおいて役割を果たしたわけではないので、スクリーニング実験を行って、有意な成分を特定した。このスクリーニング実験は210−5の一部実施要因設計(FrFD)により行われた。この設計は、通常の1024回の実験の代わりに、ほんの32回の実験で10の要因を試験することを可能にした(表23及び表24)。何らかの相互作用が成分の間で存在したかを明らかにすることもまた可能であった。結果をANOVAにより分析した(表25)。
【0186】
【表23】

【0187】
〔コード化された値に関する線形モデル〕
活性=−1431.2B+956.2C+3831.2D−2781.3E−2243.8G−2006.2K+7668.8[式2]
=0.73
【0188】
ペプチドST4SAの産生が、線形モデルを使用して表された。この線形モデルは活性を正確に予測することができない(R=0.73)が、それでも、成分の影響(正又は負)を評価するために使用することができる。牛肉抽出物(B)、リン酸カリウム(E)、クエン酸三アンモニウム(G)及び酢酸ナトリウム(K)は、応答変数における低下を引き起こす、線形モデル(式2)における負の係数を有した。このことは、ペプチドST4SAの産生に対するそれらの負の影響を反映した。このことは、酵母抽出物(YE)(C)及びCSL(D)のみがペプチドST4SAの産生を増大させたことを意味した。
【0189】
【表24】

【0190】
【表25】

【0191】
CSL及びYEの濃度を2FFDにより設定した(表26)。ペプチドST4SAの活性を求めるために使用された臨界希釈法は正確な結果を与えなかった。このことは、CSL及びYEの濃度を活性に関連づけるモデルを近似することを不可能にした。実験結果を使用して、成分濃度を決定した。表26から、CSL及びYEの低濃度又は高濃度を使用すると、明瞭な影響がなかったことが理解され得る。平均値を、7.5gTS.l−1のCSL及び6.5g.l−1のYEの組成に関して、最良であるとして選択した。
【0192】
【表26】

【0193】
最適な培地による成長曲線が図30に示される。CSL系培地及びMRSは類似した成長速度論をもたらした。
【0194】
〔バッチ間の変動〕
CSLは老廃物であるので、CSLの組成が日毎に変化し得る。組成における差は、結果に著しい影響を及ぼす可能性がある。このことを、同じ実験をCSLの第2のバッチで行うことによって調べた。今回のANOVA分析では、YE、CSL、Tween80、MnSO及び酢酸ナトリウムが、バクテリオシンの産生に対する最も著しい影響を有する成分として特定された(P<0.1)。継続した最適化により、MnSOは重要でなく、一方、酢酸ナトリウムは活性における低下を引き起こしたことが示された。
【0195】
最終的な培地は下記の3つの成分からなっていた。YE(C)、CSL(D)及びTween80(F)。酵母抽出物が、またしても、有意な成分の1つであったことを見出すことは驚くべきことではなかった。Tween80は乳化特性を有する。最終濃度は、2FFD設計で設定されるとき、YEが7.5g.l−1であり、CSLが10g.l−1であり、Tween80が2g.l−1であった。
【0196】
〔成長制限〕
CSL培地の糖含有量を発酵の前後で測定した。発酵開始時において、CSLは7.5gTS.l−1の濃度にされた。存在する主なモノマー糖はグルコース及びフルクトースであり、総濃度が3.883g.l−1であった。従って、全糖の約51.8%のみが発酵可能な形態であり、すべての糖が発酵期間中に代謝されるわけではなかった。発酵終了時(一定のOD)において、pHが4.6であり、残っている残存糖が8.8%であった。成長制限は、低いpHのためであって、窒素、ミネラル、ビタミン又は任意の他の栄養分の不足のためではなかった。表27は発酵期間中の炭素の取り込みを示す。
【0197】
【表27】

【0198】
従って、YEが補充されたCSLは、市販のMRSブロスで得られる高いペプチドST4SAレベルに匹敵し得ることが明白である。好都合なことに、このことは、培養培地に関連する費用を著しく削減するという可能性を有する。CSLをペプチドST4SAの工業的製造のための成長培地として選択した。
【0199】
〔プロバイオティクスへのエンテロコッカス・ムンドティST4SAの開発〕
プロバイオティクス菌株を選択するための1つの重要な基準が、上皮細胞への接着である。プロバイオティクス細菌はまた、接着部位について病原性細菌と競合し得る。Caco−2細胞(これはヒト結腸腺癌に由来する)をインビトロモデルとして使用して、上皮細胞に対するE.ムンドティ ST4SAの接着能及び競合的排除能を調べた。
【0200】
結果が、接種物に対して比較される接着百分率として表される。E.ムンドティ ST4SA及びL.モノサイトゲネス ScottAは接着することができ、ともに、Caco−2細胞に対する5%の接着を示した。E.ムンドティ ST4SAの接着は、インキュベーション時間がほんの1時間であったとき、1%に低下した。食物は小腸に2時間留まり、従って、E.ムンドティ ST4が上皮細胞に接着するための十分な時間を可能にする。しかしながら、E.ムンドティ ST4SAは、この菌株が、病原体とのインキュベーションの前に、又は病原体とのインキュベーションの期間中に、又は病原体とのインキュベーションの後で加えられたかどうかにかかわらず、L.モノサイトゲネス ScottAの接着に対する影響を有しなかった。排除及び追い出し試験において、L.モノサイトゲネス ScottAは5%の接着を示した。競合試験では、パーセント接着がコントロールの場合と同じに留まったので、接着についての競合が何ら示されなかった。このことは、E.ムンドティ ST4SA及びL.モノサイトゲネス ScottAが上皮細胞上の異なる受容体に結合するかもしれないことによって説明することができる。従って、E.ムンドティ ST4SA及びL.モノサイトゲネス ScottAは、類似する受容体について競合しない。
【0201】
〔抗生物質及び抗炎症性薬物に対するE.ムンドティ ST4の抵抗性〕
E.ムンドティ ST4SAは、2つの抗生物質(Cefasyn及びUtin)及び炎症性医薬品(Rheugesic、Coxflam及びPynmed)に対する抵抗性を示した。結果が表28に示される。E.ムンドティ ST4SAに対する最大の成長阻害を有する抗生物質が、Promoxil、Cipadur、Roxibidd及びDoximalである。
【0202】
Promoxil、Doximal、Cefasyn及びUtinは、コントロールと比較したとき、Caco−2細胞へのST4SA細胞の接着に対する影響を有しなかった。接着が、表29において同様に認められ得るように、Cipadur、Roxibudd及びIbugesticシロップの存在下では10%低下し、より高濃度のCefasynにより14%低下した。
【0203】
【表28】

【0204】
【表29】

【0205】
〔経口投与されたE.ムンドティ ST4SA細胞の安全性、毒性、細菌転位及び生存、免疫調節能及び効力のインビボ評価−Lactovitaとの比較〕
〔動物〕
体重が150g〜180gの間にある36匹の雄性のWistarラットを、制御された大気(温度、20℃±3℃)において、12時間の明暗サイクルとともにプラスチックケージに6匹ずつの群で収容した。動物には、標準餌が自由に与えられた。
【0206】
<細菌菌株及びプロバイオティクス菌>
E.ムンドティ ST4SA株をMRSブロスにおいて30℃で18時間培養した。光学濃度を600nmにおいて1.8に調節した。細胞を遠心分離によって集め、20mMリン酸塩緩衝液(pH7.5)で洗浄した。洗浄された細胞を100mMスクロースに再懸濁し、−80℃で凍結し、一晩凍結乾燥した。cfu/ml値を、所与量の細胞を1mlのリン酸塩緩衝液に懸濁し、希釈物をMRS固体培地に展開置床することによって求めた。凍結乾燥された細胞を無菌スキムミルク(10%)に再懸濁し、2×10cfuのST4SA株を胃内胃管栄養法により投与した。
【0207】
Lactovitaカプセルの中味を取り出してバイアルに入れ、無菌スキムミルク(10%)に再懸濁し、2×10cfuを胃内胃管栄養法により投与した。
【0208】
リステリア・モノサイトゲネスScottAをBHIブロスにおいて37℃で18時間培養した。細胞を遠心分離によって集め、20mMリン酸塩緩衝液(pH7.5)で洗浄した。洗浄された細胞を100mMスクロースに再懸濁し、−80℃で凍結し、一晩凍結乾燥した。cfu/バイアルの数字を、上記で記載したように求めた。凍結乾燥された細胞を無菌スキムミルク(10%)に再懸濁し、10cfuを胃内胃管栄養法により投与した。
【0209】
〔実験設計〕
7日間連続して、2つ動物群がST4株を胃内胃管栄養法により受け、2つの群がLactovitaを受け、残る2つのコントロール群が水を受けた。8日目に、両方のコントロール群はリステリア・モノサイトゲネスに胃内胃管栄養法により感染させられ、ST4SA株群からの1つの群及びLactovita群からの1つの群もそれぞれまた、L.モノサイトゲネスに感染させられた。このとき、動物はまた、E.ムンドティ ST4SA株、Lactovita又は水を受けた。プロバイオティクス又は水が9日目及び10日目に再び投与された。コントロール群が症状を示し始めたとき、E.ムンドティ ST4SA株がコントロール群の一方に胃内胃管栄養法により投与された。その後、この群を症状の緩和についてモニターした。
【0210】
動物をリステリア症の症状について毎日2回モニターした。動物を(E.ムンドティ ST4SA株をそのときに受けているコントロール群を除いて)11日目に屠殺した。血液を右心室からサンプリングした。総血球数が病理学者の研究室によって求められ、血液のサンプルをBHI固体培地及びリステリア選択的寒天基剤に接種し、cfu/mlを求めた。血漿を集め、エンドトキシンレベル、並びにサイトカイン(IL−6及びIFN−α)レベルを求めた。肝臓、脾臓、及び胃腸管の様々な区画を切除し、ホルムアルデヒドで固定し、その後、パラフィン包埋した。
【0211】
様々な区画を組織化学的分析のために溶血素及びエオシンにより染色した。溶血素及びエオシンによる分析では、ST4SA株の経口投与は、肝臓、脾臓又はGITに対する構造的損傷を何らもたらさないことが示された(図31を参照のこと)。違いが、ST4SA株が投与されていた動物と、非補充の水のみを受けている動物との間において何ら認められなかった。
【0212】
本明細書中に記載のように、ダイズ抽出物から単離されたエンテロコッカス・ムンドティST4SA株は、多くの病原性生物(例えば、ヒトの中耳感染症及びヒトの腸から単離された病原性生物など)に対して活性である有用な抗菌性ペプチド(ペプチドST4SA)を産生することが本出願人によって見出されている。好都合なことに、ペプチドST4SAは細胞毒性を有しない。エンテロコッカス・ムンドティST4SA株は、本出願人によって、糖発酵反応、多くの生化学的試験、2つのプラスミド(pST4SA1及びpST4SA2)の存在、並びに腸上皮細胞及び粘膜への接着をコードする特異な遺伝子(AdhST4SA)によりE.ムンドティの他の菌株とは区別されている。ペプチドST4SAが精製及び配列決定されており、ペプチドST4SAは2つの大きな疎水性領域を含有する。本出願人は、ペプチドST4SAをコードする核酸配列、並びに免疫性をそれ自身のペプチドの産生細胞に与えるように働く、細胞膜を横断するペプチドST4SAの輸送をコードする核酸配列を単離し、配列決定している。この菌株からのそのプラスミドのキュアリング処理は抗菌活性の喪失を引き起こさなかったので、後者の遺伝子のすべてがゲノムに存在する。さらには、エンテロコッカス・フェカリスの菌株へのプラスミドの形質転換は受容菌をペプチドST4SAの産生菌に変換しなかった。このことは、そのような遺伝子がプラスミドに存在しないというさらなる証拠である。ペプチドをタンパク質分解酵素で処理した後の抗菌活性の喪失により、この活性がペプチド構造に起因し、分子に連結される脂質又は炭水化物に起因しないことが確認された。驚くべきことに、このペプチドは、pH2.0〜pH12.0の間での緩衝液における30分のインキュベーションの後、及び100℃で90分の後で、活性を有したままであった。より一層驚くべきことに、EDTA、SDS、Tween20、Tween80及びTritonX−100による処理は、抗菌活性の喪失をもたらさなかった。ST4SA株は、低いpH条件(pH2.5)をも生存し、6.5%のNaClの存在下、pH4.0からpH9.6まで調節された培地で成長し、また、1.0%(w/v)胆汁酸塩及び膵液に対して抵抗性である。ST4SA株の成長が、(ゆっくりではあるが)10℃で、また、45℃でも生じ、最適な成長が37℃においてである。L(+)−乳酸のみがグルコースから産生される。これらの菌株特徴、ペプチドST4SAの迅速及び安定した産生(菌株が環境ストレスに曝されるときでさえも)、ペプチドが細胞非毒性であるという事実、並びにペプチドがGRAS(一般に安全であると見なされる)状態の生物によって産生されるという事実は、この菌株を有用なプロバイオティクスにする。
【0213】
本発明のペプチドはまた、(例えば、中耳感染症のための)局所治療剤としての液剤における抗菌剤として使用することができる。この液剤は、点耳剤アプリケーターを使用して耳に適用することができる。液剤はまた、食事への液体補助物として使用される液体形態のエンテロコッカス・ムンドティのプロバイオティクスに含まれる。本発明のペプチドはさらに、(例えば、副鼻腔感染症又は副鼻腔炎を治療するための)鼻腔スプレーにおいて、液体形態又は吸引形態のいずれかで、抗菌剤として使用することができる。本発明のペプチドはまた、ポリマー中に封入された抗菌剤として使用される。このポリマーは、その後、感染症(例えば、皮膚感染症など)の局所治療用の製剤において使用され、或いは、インプラント(例えば、イヤーグロメットなど)に組み入れるために、又は創傷被覆材に組み入れるために使用することができる。ポリマーへの抗菌性ペプチドのカプセル化は抗菌性ペプチドのゆっくりした放出及び微生物感染症の長期間の治療をもたらす。本発明のペプチドはまた、軟膏剤、ローション剤又はクリーム剤に組み入れられ、感染症を治療するために使用されることによって抗菌剤としての使用が見出される。本発明のペプチドはまた、液剤(例えば、コンタクトレンズ洗浄液など)に組み入れることによって抗菌剤として使用することができ、又はコンタクトレンズ自体に組み入れることができる。本発明のペプチドはまた、無菌性包装の製造において使用される包装材(例えば、プラスチックなど)に組み入れることによって抗菌剤として使用することができる。本発明のさらなる形態において、本発明のペプチドは、錠剤形態又はカプセル形態でエンテロコッカス・ムンドティの広域プロバイオティクスの一部として使用することができ、或いは、食用形態(例えば、菓子又はチューインガムなど)で使用することができる。
【0214】
【表30−1】

【0215】
【表30−2】

【0216】
【表30−3】

【受託番号】
【0217】
PTA−7278

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号12、
そのフラグメントであって、抗菌活性を有するフラグメント、
そのムテイン及び誘導体であって、抗菌活性を有するムテイン及び誘導体、
その共有結合架橋体であって、抗菌活性を有する共有結合架橋体、及び、
前記アミノ酸配列に対して約75%を超える相同性を有する配列であって、抗菌活性を有する配列、
を含む群から選択される、単離されたペプチド。
【請求項2】
前記単離されたペプチドに対して約85%を超える相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項3】
前記単離されたペプチドに対して約95%を超える相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項4】
配列番号11、
その相補体、
そのフラグメントであって、その発現後に、抗菌活性を有するペプチドを産生することができるフラグメント、又は、
厳密なハイブリダイゼーション条件下でそれとハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含む、単離されたヌクレオチド配列。
【請求項5】
微生物宿主細胞の形質転換に適した組換えプラスミドであって、請求項1に記載の抗菌性ペプチドをコードするヌクレオチド配列が挿入されたプラスミドベクターを含むプラスミド。
【請求項6】
請求項1に記載の抗菌性ペプチドをコードするヌクレオチド配列が挿入されたプラスミドベクターを含む組換えプラスミドを含む、形質転換された微生物細胞。
【請求項7】
ATCCに寄託され、受託番号がPTA−7278であるエンテロコッカス・ムンドティ(Enterococcus mundtii)ST4SA株の実質的に純粋な培養物であって、資化可能な炭素源、窒素源及び無機物質を含有する栄養培地中で発酵すると、回収可能な量のペプチドST4SAを産生することができる培養物。
【請求項8】
請求項1に記載のペプチドを製造するための方法であって、エンテロコッカス・ムンドティ(Enterococcus mundtii)ST4SA株を、回収可能な量の前記ペプチドが産生されるまで、微好気条件下、10〜45℃の温度で、栄養培地中で培養するステップと、前記ペプチドを回収するステップと、を含む方法。
【請求項9】
培養が約37℃の温度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
栄養培地が、コーンスティープリカー、チーズホエー粉末、MRSブロス、酵母抽出物及び廃糖蜜を含む群のいずれか1つ又は複数から選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
栄養培地が、10〜20g/lのKHPO及び/又は15.0〜20.0g/lのフルクトースを含有するMRSブロスである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
動物又はヒトの細菌感染症を治療する方法であって、動物又はヒトの感染領域を、
請求項7に記載のエンテロコッカス・ムンドティ株培養物、及び/又は
請求項1に記載の抗菌性ペプチド、
の治療有効量を含む物質又は組成物に曝すステップを含む方法。
【請求項13】
前記菌株培養物が、約10〜10cfu(コロニー形成単位)/mlの濃度で含まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記菌株培養物が、約10cfu(コロニー形成単位)/mlの濃度で含まれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチドが、約100000〜300000AU/mlの濃度で含まれる、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチドが、200000AU/mlの濃度で含まれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
動物又はヒトの細菌感染症を治療する方法において使用される医薬品の製造における、請求項7に記載のエンテロコッカス・ムンドティ株培養物の治療有効量の使用。
【請求項18】
前記菌株培養物が、10〜10cfu/mlの濃度で投与される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記菌株培養物が、10cfu/mlの濃度で投与される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
動物又はヒトの細菌感染症を治療する方法において使用される医薬品の製造における、請求項1に記載の抗菌性ペプチドの治療有効量の使用。
【請求項21】
前記ペプチドが、100000〜300000AU/mlの濃度で投与される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記ペプチドが、200000AU/mlの濃度で投与される、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
動物又はヒトの細菌感染症を治療する方法において使用される物質又は組成物であって、請求項7に記載のエンテロコッカス・ムンドティ株培養物を含み、前記方法が、当該物質又は組成物の治療有効量を動物又はヒトに投与するステップを含む、物質又は組成物。
【請求項24】
前記菌株培養物が、10〜10cfu/mlの濃度で投与される、請求項23に記載の物質又は組成物。
【請求項25】
前記菌株培養物が、10cfu/mlの濃度で投与される、請求項24に記載の物質又は組成物。
【請求項26】
動物又はヒトの細菌感染症を治療する方法において使用される物質又は組成物であって、請求項1に記載の抗菌性ペプチドを含み、前記方法が、当該物質又は組成物の治療有効量を動物又はヒトに投与するステップを含む、物質又は組成物。
【請求項27】
前記単離されたペプチドが、100000〜300000AU/mlの濃度で投与される、請求項26に記載の物質又は組成物。
【請求項28】
前記単離されたペプチドが、200000AU/mlの濃度で投与される、請求項27に記載の物質又は組成物。
【請求項29】
液剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、液体スプレー、凍結乾燥粉末、凍結乾燥スプレー、口腔洗浄剤又は含嗽剤の形態である、請求項23〜28のいずれか一項に記載の物質又は組成物。
【請求項30】
細菌感染症が、アシネトバクター・バウマニイ(Acinetobacter baumanii)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、クロストリジウム・チロブチリクム(Clostridium tyrobutyricum)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、リステリア・イノクア(Listeria innocua)、緑膿菌(Pseudomonas aruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、ストレプトコッカス・カプリヌス(Streptococcus caprinus)、ストレプトコッカス(エンテロコッカス)・フェカリス(Streptococcus(Enterococcus) faecalis)又は肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、のいずれか1つ又は複数によって引き起こされる感染症である、請求項23〜29のいずれか一項に記載の物質又は組成物。
【請求項31】
細菌種の成長を阻害する方法であって、細菌種を、請求項1に記載の抗菌性ペプチドの有効量に曝すステップを含む方法。
【請求項32】
前記細菌種が、100000〜300000AU/mlの濃度の前記抗菌性ペプチドに曝される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細菌種が、200000AU/mlの濃度の前記抗菌性ペプチドに曝される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記細菌種が、アシネトバクター・バウマニイ(Acinetobacter baumanii)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、クロストリジウム・チロブチリクム(Clostridium tyrobutyricum)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、リステリア・イノクア(Listeria innocua)、緑膿菌(Pseudomonas aruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、ストレプトコッカス・カプリヌス(Streptococcus caprinus)、ストレプトコッカス(エンテロコッカス)・フェカリス(Streptococcus(Enterococcus) faecalis)及び肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、を含む群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
液剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、液体スプレー、凍結乾燥スプレー、口腔洗浄剤又は含嗽剤の形態の抗菌剤の製造における、請求項1に記載の単離されたペプチドの使用。
【請求項36】
副鼻腔感染症、副鼻腔炎、鼻炎、扁桃炎又は咽頭感染症を治療するための抗菌スプレーの製造における、請求項1に記載の単離されたペプチドの使用。
【請求項37】
請求項1に記載の単離されたペプチドの抗菌有効量が組み入れられたポリマー。
【請求項38】
請求項1に記載の単離されたペプチドが、100000〜300000AU/mlの濃度で含まれる、請求項37に記載のポリマー。
【請求項39】
請求項1に記載の単離されたペプチドが、200000AU/mlの濃度で含まれる、請求項38に記載のポリマー。
【請求項40】
包装材、インプラント、医療デバイス、イヤーグロメット、カテーテル、オストミーチューブ、オストミーポーチ、ステント、縫合材、衛生用品、コンタクトレンズ、コンタクトレンズ洗浄液及び創傷被覆材に組み入れられる、請求項37〜39のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項41】
請求項7に記載のエンテロコッカス・ムンドティST4SA株の生物学的に純粋な培養物の治療有効濃度を含むプロバイオティクス組成物。
【請求項42】
前記菌株が、プロバイオティクス組成物1ml当たり生細胞約10〜10個(cfu)の濃度で含まれる、請求項41に記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項43】
前記菌株が、プロバイオティクス組成物1ml当たり生細胞約2×10個(cfu)の濃度で含まれる、請求項42に記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項44】
液体、錠剤、カプセル、菓子、チューインガム又は他の食品の形態である、請求項41〜43のいずれか一項に記載のプロバイオティクス組成物。
【請求項45】
動物又はヒトにおける病原性細菌又は病原性ウイルスのレベルを低減させる方法であって、請求項41〜44のいずれか一項に記載のプロバイオティクス組成物の治療有効量を動物又はヒトに投与するステップを含む方法。
【請求項46】
前記プロバイオティクス組成物が、10〜10cfu/mlの最終濃度で動物又はヒトに投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記プロバイオティクス組成物が、10〜10cfu/mlの最終濃度で動物又はヒトに投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記プロバイオティクス組成物が、約3×10の最終濃度で動物又はヒトに投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
動物又はヒトにおける病原性細菌又は病原性ウイルスのレベルを低減させる方法において使用されるプロバイオティクスの製造における、請求項7に記載のエンテロコッカス・ムンドティ株の生物学的に純粋な培養物の使用。
【請求項50】
前記菌株培養物が、10〜10cfu/mlの濃度で投与される、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
前記菌株培養物が、10cfu/mlの濃度で投与される、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
配列番号1〜配列番号10からなる群から選択されるプライマー。
【請求項53】
配列番号1及び配列番号2を含むプライマー対。
【請求項54】
エンテロコッカス・ムンドティ(Enterococcus mundtii)の同定における、配列番号1及び配列番号2のプライマー対の使用。
【請求項55】
配列番号3及び配列番号4を含むプライマー対。
【請求項56】
配列番号5及び配列番号6を含むプライマー対。
【請求項57】
配列番号7及び配列番号8を含むプライマー対。
【請求項58】
配列番号9及び配列番号10を含むプライマー対。
【請求項59】
細菌エンテロコッカス・ムンドティ(Enterococcus mundtii)由来の単離されたトランスポーターペプチドであって、
配列番号14、
そのフラグメント、
そのムテイン及び誘導体、又は、
前記アミノ酸配列に対して約90%を超える相同性、好ましくは80%を超える相同性、最も好ましくは約70%を超える相同性を有する配列であって、抗菌活性を有する配列、
を含むペプチド。
【請求項60】
細菌エンテロコッカス・ムンドティ(Enterococcus mundtii)のST4SAトランスポーターペプチドをコードする、単離されたヌクレオチド配列であって、
配列番号13、
その相補体、
そのフラグメント、又は、
厳密なハイブリダイゼーション条件下でそれとハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含む配列。
【請求項61】
細菌エンテロコッカス・ムンドティ(Enterococcus mundtii)由来の単離された免疫ペプチドであって、
配列番号16、
そのフラグメント、
そのムテイン及び誘導体、又は、
前記アミノ酸配列に対して約90%を超える相同性、好ましくは80%を超える相同性、最も好ましくは約70%を超える相同性を有する配列であって、抗菌活性を有する配列、
を含むペプチド。
【請求項62】
細菌エンテロコッカス・ムンドティ(Enterococcus mundtii)のST4SA免疫ペプチドをコードする、単離されたヌクレオチド配列であって、
配列番号15、
その相補体、
そのフラグメント、又は
厳密なハイブリダイゼーション条件下でそれとハイブリダイズするヌクレオチド配列、
を含む配列。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2009−538614(P2009−538614A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512739(P2009−512739)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051982
【国際公開番号】WO2007/138538
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508353787)シプラ メドプロ リサーチ アンド デヴェロップメント (プロプライエタリー) リミテッド (1)
【Fターム(参考)】