説明

プロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体用重合触媒及びそれを用いるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法

【課題】より高い融点を有する結晶性プロピレン成分とともに、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体成分を安定的に効率よく製造する触媒及びそれを用いるプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)成分(A−1)及び(A−2)からそれぞれ選択される少なくとも二種の周期律表4族の遷移金属化合物、及び(B)アルミニウムオキシ化合物(B−1)、上記遷移金属化合物(A)と反応してカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸(B−2)、固体酸微粒子(B−3)及びイオン交換性層状珪酸塩(B−4)からなる化合物群の中から選ばれる少なくとも一種、を含むことを特徴とするα−オレフィン重合触媒成分、およびそれを用いるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体用重合触媒及びそれを用いるプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法に関し、より詳しくは、より高い融点を有する結晶性プロピレン成分(以下、PPともいう)とともに、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体成分(以下、CPともいう)を効率的に製造できる、プロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体用重合触媒及びそれを用いるプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性ポリプロピレンは、機械的性質、耐薬品性等に優れることから、各種成形分野に広く用いられている。しかしながら、結晶性ポリプロピレンでは、剛性は高くなるが、耐衝撃性が不足する。
【0003】
これに対して、プロピレンの重合後に引き続いてエチレンとプロピレンを共重合させ、CPとして、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)を含むブロック共重合体を製造することは、既に知られている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
このような所謂重合ブレンドでは、ゴム状共重合体の分散が改良されるため、物性が向上することが知られている。さらに、メタロセン触媒を用いた場合には、用いる遷移金属化合物の設計を最適化することにより、より高い剛性と耐衝撃性を発揮させることができ、種々の特定構造を有する遷移金属化合物を用いたブロック共重合体の製造方法が開示されている。このような製造に用いるメタロセン錯体として、より高い融点を有する結晶性プロピレン成分を製造できるものとして、種々の特定構造を有する遷移金属化合物が知られている(例えば、特許文献5〜7参照。)。
【0004】
しかしながら、上記の遷移金属化合物からなる触媒を用いて、エチレンとプロピレンなどのα−オレフィンの共重合を行うと、エチレンの反応性が、プロピレンなどのα−オレフィンの反応性に比較して、相対的に低いことが問題となっている。つまり、所望のエチレン含量を有する共重合体を得るためには、共重合体中の含量から大きく異なるモノマー比のガスを供給して重合することが必要となり、製造上問題があり、更に極端な場合には、所望の含量を有する共重合体が製造できないこともある。
この問題に対して、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体を製造できるメタロセン錯体として、種々の特定構造を有する遷移金属化合物が知られている(例えば、特許文献8〜9参照。)。
【0005】
しかしながら、上記開示された発明などによっても、より高い融点を有する結晶性プロピレン成分(PP)と同時に、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体成分(CP)とを両立する、優れた触媒は、知られておらず、この目的のために用いる触媒や製造方法には、まだまだ改善の余地がある。これを満足するレベルにあるプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体を、安定的かつ効率的に製造する方法の開発が望まれている。
【0006】
一方、以上挙げた触媒及び製造方法では、いずれも用いるメタロセン錯体は、1種であった。この場合、重合特性を主に支配する配位場を決定するメタロセン錯体は、単一であるため、異なる反応メカニズムに起因する複数の重合特性をバランスよく向上させることは難しくなると考えられる。より具体的には、より高い融点を有する結晶性プロピレン成分を製造するためには、重合中に金属中心に配位するプロピレンの配位方向を精密に制御することが必要となる。一方、同一ガス組成の反応ガス中で、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体を製造するためには、エチレンとα−オレフィンの反応性比をある範囲のバランスに保つ必要がある。
この問題に対して、複数のメタロセン錯体を用いて触媒を形成する場合には、異なる反応メカニズムに起因する複数の重合特性をそれぞれ異なるメタロセン錯体に担わせることで、独立にその配位場を設計することが可能となり、所望の触媒特性をバランスよく設計し向上させることが可能である。このような観点で、既に2種以上のメタロセン錯体を用いる触媒や製造方法は、いくつか知られている。例えば、二種類の錯体を使用して分子量分布や立体規則性分布の広いプロピレン重合体の製造法についても、公知である(例えば、特許文献10〜12参照。)。
しかしながら、本発明で改善しようとするような、ブロック共重合体製造に関して、異なるモノマーに対する重合特性などを、二種類の錯体を使用して改良することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−337308号公報
【特許文献2】特開平6−287257号公報
【特許文献3】特開平11−228648号公報
【特許文献4】特開平11−240929号公報
【特許文献5】特表2003−533550号公報
【特許文献6】国際公開WO2002−2575号パンフレツト
【特許文献7】特開2005−126679号公報
【特許文献8】特開2007−308486号公報
【特許文献9】特開2008−101034号公報
【特許文献10】特表2001−508472号公報
【特許文献11】特開2001−64314号公報
【特許文献12】特開2003−119212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、より高い融点を有する結晶性プロピレン成分とともに、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体成分を安定的に効率よく製造する触媒及びそれを用いるプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため、触媒成分として用いる遷移金属化合物の構造やそれらを活性化する助触媒機能を有する化合物について、その基本骨格に起因する遷移金属化合物の有する対称性、触媒活性点でのポリマー形成のメカニズムや、遷移金属化合物の置換基の立体効果やそれによる生成ポリマーの配位モノマーへの影響などの観点からの経験則を考慮しながら、プロピレン重合においては、高い立体規則性重合を行い、かつ、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体を安定的に効率よく製造する触媒を求めて、多面的に考察し実験的な探索を行った。
その過程において、ある特定の立体的な構造を有する2種の遷移金属化合物を触媒成分として用い、かつ適切な助触媒成分とからなる触媒を形成した場合に、プロピレン重合においては、高い立体規則性重合を保ちつつ、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合において、同一ガス組成の反応ガス中で、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体を製造できるように、エチレンとα−オレフィンの反応性比をある範囲のバランスに保つことが、達成できる事実を認識することができ、より高い融点を有する結晶性プロピレン成分とともに、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体成分を安定的に効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、プロピレン重合を行う際に配位するプロピレンの配位方向を制御でき、その結果、生成する結晶性プロピレン成分における立体規則性及び位置規則性を高めることができる特定の構造を有する遷移金属化合物として、下記成分(A−1)を用いる。加えて、ヘテロ原子を含む電子的に特異な置換基によって、プロピレンなどのα−オレフィンと比較してエチレンの反応性が高められることができる特定の構造を有する遷移金属化合物として、下記成分(A−2)を用いる。
以上のように、特定の反応モノマーに対して、特異的に優れた重合特定を示す遷移金属触媒を複数選択して用いることで、上記課題を解決することができ、より高い融点を有する結晶性プロピレン成分とともに、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体成分を安定的に効率よく製造する触媒及びそれを用いるプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法を提供できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(A)下記成分(A−1)及び(A−2)からそれぞれ選択される少なくとも二種の周期律表4族の遷移金属化合物、及び(B)アルミニウムオキシ化合物(B−1)、上記遷移金属化合物(A)と反応してカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸(B−2)、固体酸微粒子(B−3)及びイオン交換性層状珪酸塩(B−4)からなる化合物群の中から選ばれる少なくとも一種、
を含むことを特徴とするα−オレフィン重合触媒成分が提供される。
(A−1):一般式(1)で表される遷移金属化合物
【0011】
【化1】

【0012】
[一般式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜18のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基又は炭素数1〜20の硫黄含有炭化水素基を示す。R及びRは、それぞれ独立して、それが結合する五員環に対して縮合環を形成する炭素数4〜6の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を示す。ただし、R及びRの少なくとも一方は、炭素数が5〜6であり、R又はR由来の7〜8員環から成る縮合環を形成する。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基又は炭素数1〜20の硫黄含有炭化水素基を示す。m及びnは、それぞれ独立して、0〜20の整数を示す。ただし、m及びnが同時に0となることはない。また、m又はnが2以上の場合、それぞれ、R同士またはR同士が連結して新たな環構造を形成していてもよい。Qは、二つのシクロペンタジエニル環を連結する架橋基を示し、X及びYは、助触媒と反応してオレフィン重合能を発現させるσ共有結合性補助配位子を示し、Mは、周期表4族の遷移金属を示す。]
(A−2):一般式(2)で表される遷移金属化合物
【0013】
【化2】

【0014】
[一般式(2)中、R10及びR11は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基、2−フリル基、置換された2−フリル基、2−チエニル基、置換された2−チエニル基、2−フルフリル基又は置換された2−フルフリル基を表す。ただし、R10及びR11のいずれか一方は、2−フリル基、置換された2−フリル基、2−チエニル基、置換された2−チエニル基、2−フルフリル基又は置換された2−フルフリル基である。R12及びR13は、炭素数6以上の炭化水素基、炭素数6以上のハロゲン化炭化水素基又は炭素数6以上のケイ素含有炭化水素基を表す。R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Q、X及びYは、一般式(1)と同様の置換基を表す。]
【0015】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、(C)有機アルミニウム化合物を含むことを特徴とするα−オレフィン重合触媒成分が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、成分(A−1)の遷移金属化合物は、一般式(3)で表されることを特徴とするα−オレフィン重合触媒成分が提供される。
【0016】
【化3】

【0017】
[一般式(3)中、R、R、R及びRは、一般式(1)と同様の置換基を表し、R12及びR13は、一般式(2)と同様の置換基を表し、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10ケイ素含有炭化水素基又は炭素数1〜10ハロゲン化炭化水素基を表す。Q、X、Y及びMは、一般式(1)と同様の置換基を表す。]
【0018】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、成分(A−2)の一般式(2)で表される遷移金属化合物は、R14及びR17が炭素数1〜10の炭化水素基であることを特徴とするα−オレフィン重合触媒成分が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、成分(B)は、イオン交換性層状珪酸塩(B−4)であることを特徴とするα−オレフィン重合触媒成分が提供される。
【0019】
一方、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明に係るα−オレフィン重合触媒成分を用いて、結晶性プロピレン重合体成分を製造する前段工程、及びエチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種のコモノマーとの共重合体成分を気相重合で製造する後段工程からなることを特徴とするプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
【0020】
本発明は、上記した如く、α−オレフィン重合触媒成分及びそれを用いるプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法に係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)第6の発明において、α−オレフィンは、プロピレンであることを特徴とするプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法。
(2)第6の発明において、エチレン−α−オレフィン共重合体成分中のエチレン含量は、10〜90重量%であることを特徴とするプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法。
(3)第6の発明において、結晶性プロピレン重合体成分の融点は、150〜165℃であることを特徴とするプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のα−オレフィン重合触媒成分及びそれを用いたプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法によれば、より高い融点を有する結晶性プロピレン成分とともに、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体成分を有するプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体を、安定的に効率よく製造できる。
【0022】
その理由は、必ずしも明らかではないが、本発明者らは、次の事項やメカニズムを考察している。
すなわち、本発明における一般式(1)で示される遷移金属化合物は、6〜8員環の縮環を有するシクロペンタジエニル骨格を基本骨格とするものからなり、それらが架橋されたC対称構造或いは擬C対称構造を有し、化学的かつ立体的及び電子環境的に特異な構造を有することを基本的な特徴としており、このことから、プロピレン重合を行う際には、配位するプロピレンの配位方向を制御でき、その結果、生成する結晶性プロピレン成分における立体規則性及び位置規則性を高めることができる。
一方、本発明における一般式(2)で示される遷移金属化合物は、二つのインデニル骨格を基本骨格として、インデニル骨格上の少なくとも一方には、ヘテロ原子を含む電子的に特異な置換基を有する構造を基本骨格とするものからなり、それらが架橋された構造を有し、化学的かつ立体的及び電子環境的に特異な構造を有することを基本的な特徴としている。ヘテロ原子を含む電子的に特異な置換基によって、プロピレンなどのα−オレフィンと比較して、エチレンの反応性が高められることができると、考えられる。
このことから、一般式(1)で示される遷移金属化合物と比較して、一般式(2)で示される遷移金属化合物では、α−オレフィンの反応性に比較してエチレンの反応性が高くでき、その結果として、同一ガス組成の反応ガス中で、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のα−オレフィン重合触媒成分を用いたプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、特定の構造を有するメタロセン触媒を用いた重合反応において、前段工程で結晶性プロピレン成分(PP)を製造し、後段工程でエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種のコモノマーとの共重合体成分(CP)を、気相重合により製造する方法である。
以下、使用する遷移金属化合物、触媒、重合工程、得られるプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体などの特徴について、詳細に説明する。
【0024】
1.成分(A)
本発明において、成分(A)は、下記成分(A−1)及び(A−2)からそれぞれ選択される少なくとも二種の周期律表4族の遷移金属化合物である。
1−1.成分(A−1)
本発明に係るメタロセン触媒における成分(A−1)は、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物である。
【0025】
【化4】

【0026】
[一般式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜18のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基又は炭素数1〜20の硫黄含有炭化水素基を示す。R及びRは、それぞれ独立して、それが結合する五員環に対して縮合環を形成する炭素数4〜6の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を示す。ただし、R及びRの少なくとも一方は、炭素数が5〜6であり、R又はR由来の7〜8員環から成る縮合環を形成する。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基又は炭素数1〜20の硫黄含有炭化水素基を示す。m及びnは、それぞれ独立して、0〜20の整数を示す。ただし、m及びnが同時に0となることはない。また、m又はnが2以上の場合、それぞれ、R同士またはR同士が連結して新たな環構造を形成していてもよい。Qは、二つのシクロペンタジエニル環を連結する架橋基を示し、X及びYは、助触媒と反応してオレフィン重合能を発現させるσ共有結合性補助配位子を示し、Mは、周期表4族の遷移金属を示す。]
【0027】
本発明に係る上記遷移金属化合物は、当然のことながら、縮環を有するシクロペンタジエニル骨格同士が、結合基Qを介して相対位置の観点において、M、X及びYを含む平面に関して対称性の異なる化合物(立体異性体)、すなわち異性体(a;通常、ラセミ異性体或いは擬ラセミ異性体と呼ばれる)及び異性体(b;通常、メソ異性体或いは擬メソ異性体と呼ばれる)を含むものである。
但し、高分子量のα−オレフィン重合体の製造を行うためには、ポリマー鎖の成長方向及びモノマーの配位方向を規制する作用の観点からして、上記の化合物(a)、つまり、M、X及びYを含む平面を挟んで対向する二個の配位子が当該平面に関して実体と鏡像の関係にない化合物を使用するのが好ましい。
【0028】
一般式(1)中において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜18のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基又は炭素数1〜20の硫黄含有炭化水素基を示す。
上記の炭素数1〜10の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基の他、フェニル基などを好ましく挙げることができる。
【0029】
また、上記の炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル等のトリアルキルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル等のアルキルシリルアルキル基などが好ましく挙げられる。
さらに、上記の炭素数1〜18のハロゲン化炭化水素基において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく挙げられる。そして、上記のハロゲン化炭化水素基は、ハロゲン原子が例えばフッ素原子の場合、フッ素原子が上記の炭化水素基の任意の位置に置換した化合物である。
具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,1,1−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリフルオロビニル、2−,3−,4−置換の各フルオロフェニル、2−,3−,4−置換の各クロロフェニル、2−,3−,4−置換の各ブロモフェニル、2,4−,2,5−,2,6−,3,5−置換の各ジフルオロフェニル、2,4−,2,5−,2,6−,3,5−置換の各ジクロロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2,4,6−トリクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニルなどが挙げられる。
【0030】
また、上記の炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ等のアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシ等のアリールオキシ基、フェニルメトキシ、ナフチルメトキシ等のアリールアルコキシ基、2−フリル基、2−(5−メチルフリル)基、2−(5−エチルフリル)基、2−(5−n−プロピルフリル)基、2−(5−n−ブチルフリル)基、2−(5−i−プロピルフリル)基、2−(5−i−ブチルフリル)基、2−(5−t−ブチルフリル)基、2−(5−シクロペンチルフリル)基、2−(5−シクロヘキシルフリル)基、2−(5−トリメチルシリルフリル)基、2−(5−フェニルフリル)基、2−(4,5−ジメチルフリル)基、2−ベンゾフリル基などの酸素含有複素環基などが挙げられる。
さらに、上記の炭素数1〜20の硫黄含有炭化水素基の具体例としては、2−チエニル基、2−(5−メチルチエニル)基などの硫黄含有複素環基などが挙げられる。
【0031】
これらの中では、R及びRとしては、炭素数1〜6の炭化水素基が好ましく、さらに、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基が特に好ましく、また、R及びRとしては、水素原子が特に好ましい。
【0032】
また、一般式(1)中において、R及びRは、それぞれ独立して、それが結合する五員環に対して縮合環を形成する炭素数4〜6の飽和または不飽和の2価の炭化水素基を示す。ただし、R及びRの少なくとも一方は、炭素数が5〜6であり、R又はR由来の7〜8員環から成る縮合環を形成する。
かかる結合部R及びRとして、好ましいものは、具体例としてはテトラメチレン、ペンタメチレン等の2価の飽和炭化水素基、1−ブテニレン、2−ブテニレン、1,3−ブタジエニレン、1−ペンテニレン、2−ペンテニレン、1,3−ペンタジエニレン、1,4−ペンタジエニレン等の2価の不飽和炭化水素基等が好ましく、これらのうち、特に好ましくは、1,3−ブタジエニレン(すなわち6員環を形成する場合)、或いは、1,3−ヘキサジエニレン(すなわち7員環を形成する場合)等の2価の不飽和炭化水素である。
【0033】
また、一般式(1)中において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基または炭素数1〜20の硫黄含有炭化水素基を示す。
【0034】
上記の炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル等のアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等のアリールアルキル基、trans−スチリル等のアリールアルケニル基、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アセナフチル、フェナントリル、アントリル等のアリール基が挙げられる。これらの中では、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等の炭素数6〜20のアリール基が好ましい。
【0035】
また、上記の炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。そして、上記のハロゲン化炭化水素基は、ハロゲン原子が例えばフッ素原子の場合、フッ素原子が上記の炭化水素基の任意の位置に置換した化合物である。具体的には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,1,1−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリフルオロビニル、1,1−ジフルオロベンジル、1,1,2,2−テトラフルオロフェニルエチル、o−、m−、p−フルオロフェニル、o−、m−、p−クロロフェニル、o−、m−、p−ブロモフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジフルオロフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ジクロロフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニル、2,4,6−トリクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、4−フルオロナフチル、4−クロロナフチル、2,4−ジフルオロナフチル、ヘプタフルオロ−1−ナフチル、ヘプタクロロ−1−ナフチル、o−、m−、p−トリフルオロメチルフェニル、o−、m−、p−トリクロロメチルフェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、2,4−、3,5−、2,6−、2,5−ビス(トリクロロメチル)フェニル、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル、4−トリフルオロメチルナフチル、4−トリクロロメチルナフチル、2,4−ビス(トリフルオロメチル)ナフチル基などが挙げられる。
【0036】
上記の炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基の具体例としては、2−、3−、4−トリメチルシリルフェニル、2−、3−、4−t−ブチルジメチルシリルフェニル、2−、3−、4−ジフェニルメチルシリルフェニル、2−、3−、4−ジメチルフェニルシリルフェニル、トリメチルシリルトリル、4−トリメチルシリル−1−ナフチル、6−トリメチルシリル−1−ナフチル、4−トリメチルシリル−2−ナフチル、6−トリメチルシリル−2−ナフチル、4−t−ブチルジメチルシリル−2−ナフチル、6−t−ブチルジメチルシリル−2−ナフチル、4−ジフェニルメチルシリル−2−ナフチル、6−ジフェニルメチルシリル−2−ナフチル、4−ジメチルフェニルシリル−2−ナフチル、6−ジメチルフェニルシリル−2−ナフチル、3−トリメチルシリルビフェニル、4’−トリメチルシリルビフェニル、4−メチル−6−トリメチルシリル−1−ナフチル、4−メチル−6−トリメチルシリル−2−ナフチル、6−トリメチルシリル−2−アントリル、7−トリメチルシリル−2−フェナントリル、7−トリメチルシリル−9,10−ジヒドロ−2−フェナントリルなどが挙げられる。
【0037】
上記の炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ等のアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシ等のアリロキシ基、フェニルメトキシ、ナフチルメトキシ等のアリールアルコキシ基、フリル基などの酸素含有複素環基などが挙げられる。
また、上記の炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基の具体例としては、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ等のアルキルアミノ基、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ等のアリールアミノ基、(メチル)(フェニル)アミノ等の(アルキル)(アリール)アミノ基、ピラゾリル、インドリル等の窒素含有複素環基などが挙げられる。
【0038】
一般式(1)中において、m及びnは、それぞれ独立して0〜20の整数を示す。ただし、m及びnが同時に0となることはない。m又はnが2以上の場合、それぞれ、R同士またはR同士が連結して新たな環構造を形成していてもよい。好ましくは、m=n=1である。
【0039】
一般式(1)中において、Qは、二つのシクロペンタジエニル環を連結する架橋基である。Qの種類としては、公知の架橋型メタロセン系遷移金属化合物における架橋基が利用できる。
Qの具体例としては、アルキレン基、アリールアルキレン基、アルキルシリレン基、(アルキル)(アリール)シリレン基、アリールシリレン基等が例示できる。これらの炭化水素基は、N、P、O、Siあるいはハロゲン等のヘテロ原子を含有していてもよい。また、上記のケイ素をゲルマニウムに置換した架橋基であってもよい。上述のシリレン基等上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上述した架橋基の中では、ジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、ジメチルシリレン基、ジメチルゲルミレン基、シラフルロオレニル基が特に好ましい。
【0040】
また、一般式(1)中において、X及びYは、助触媒と反応してオレフィン重合能を発現させるσ共有結合性補助配位子であり、具体的には、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を示す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
これらX及びYとしては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基が好ましく、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基がさらに好ましく、塩素原子、メチル基、i−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基が特に好ましい。
Mは、周期表第4の遷移金属を示し、好ましくはジルコニウム又はハフニウムである。
【0041】
ところで、本発明では、基本的には多数の遷移金属化合物の例示が必要であるが、明細書を簡潔簡明な記載とするために、遷移金属化合物の例示は、煩雑な記載を避けて主要な代表例にとどめている。
したがって、以下に列挙する遷移金属化合物以外の遷移金属化合物も、本願の特許請求の範囲において、記載される範囲内において全て包含される。例えば、以下の具体例において、ジルコニウムの代わりにチタニウム或いはハフニウム、ジクロライドの代わりに、他のX,Yである化合物も例示されているに等しいといえる。
一般に、オレフィン重合用触媒の技術分野では、触媒成分である遷移金属化合物の金属種によって、触媒作用が大きく影響を受けることが知られており、ある種の遷移金属触媒の金属種のみが異なる他の触媒が、同等の触媒作用を有することは、理論的に保証されていない。
しかし、メタロセン触媒成分として、4族のジルコニウム、チタン及びハフニウムを用いた場合には、ほぼ同等の触媒作用が示されることが実験によって確認されており、当業者にもよく知られた事項である(特開昭60−130604号公報、特開平4−100808号公報を参照。)。
したがって、本願明細書における上記の遷移金属化合物の例示は、合理的なものであり、単なる羅列ではないのは、明らかであるといえる。
【0042】
さらに、本発明に係るメタロセン触媒における成分(A−1)は、下記の一般式(3)で表される遷移金属化合物を含む。
【0043】
【化5】

【0044】
[一般式(3)中、R、R、R及びRは、一般式(1)と同様の置換基を表し、R12及びR13は、一般式(2)と同様の置換基を表し、すなわち、炭素数6以上の炭化水素基、炭素数6以上のハロゲン化炭化水素基又は炭素数6以上のケイ素含有炭化水素基を表す。R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10ケイ素含有炭化水素基又は炭素数1〜10ハロゲン化炭化水素基を表す。Q、X、Y及びMは、一般式(1)と同様の置換基を表す。]
【0045】
上記R12及びR13の炭素数6以上の炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、メシチル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、i−プロピルフェニル基、ジi−プロピルフェニル基、トリi−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、ジn−ブチルフェニル基、トリn−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジt−ブチルフェニル基、トリt−ブチルフェニル基、ビフェニリル基、p−テルフェニル基、m−テルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基のアリール基などが挙げられる。
【0046】
また、上記の炭素数6以上のハロゲン化炭化水素置換基において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。そして、上記のハロゲン化炭化水素置換基は、ハロゲン原子が例えばフッ素原子の場合、フッ素原子が上記の炭化水素基の任意の位置に置換した化合物である。
具体的には、フルオロジメチルフェニル基、(フルオロメチル)メチルフェニル基、エチルフルオロフェニル基、ジエチルフルオロフェニル基、トリエチルフルオロフェニル基、フルオロi−プロピルフェニル基、フルオロジi−プロピルフェニル基、(フルオロi−プロピル)i−プロピルフェニル基、フルオロトリi−プロピルフェニル基、n−ブチルフルオロフェニル基、ジn−ブチルフルオロフェニル基、(フルオロブチル)ブチルフェニル基、トリn−ブチルフルオロフェニル基、t−ブチルフルオロフェニル基、ジt−ブチルフルオロフェニル基、トリt−ブチルフルオロフェニル基、フルオロビフェニリル基、フルオロp−テルフェニル基、フルオロm−テルフェニル基、フルオロナフチル基、フルオロアントリル基、フルオロフェナントリル基などが挙げられる。
【0047】
さらに、上記の炭素数6以上のケイ素炭化水素置換基の具体例としては、トリメチルシリルフェニル、トリエチルシリルフェニル、イソプロピルジメチルシリルフェニル、t−ブチルジメチルシリルフェニル、フェニルジメチルシリルフェニルなどのシリル基置換アリール基などが挙げられる。
【0048】
以上の中でも、R12及びR13として、特に好ましい基としては、4−ビフェニリル基、4−(フルオロビフェニル)基、4−(クロロビフェニル)基、4−(メチルビフェニル)基、1−ナフチル基、1−(フルオロナフチル)基、1−(クロロナフチル)基、2−(フルオロナフチル)基、2−(クロロナフチル)基、4−tブチルフェニル基、4−tブチル−3メチルフェニル基、4−tブチル−3クロロフェニル基、4−tブチル−3,5ジメチルフェニル基、4−tブチル−3,5ジクロロフェニル基、4−(トリメチルシリル)−3クロロフェニル基、4−(トリメチルシリル)−3,5ジメチルフェニル基、4−(トリメチルシリル)−3,5ジクロロフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジiプロピルフェニル基、3,5−ジtブチルフェニル基、などが挙げられる。
【0049】
また、上記のR20、R21、R22、R23、R24、R25、R26及びR27の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチルなどのアルキル基、ビニル、プロペニル、などのアルケニル基などが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素基は、ハロゲン原子が上記の炭化水素基の任意の位置に置換した化合物である。ハロゲンは、フッ素、塩素又は臭素が好ましく、中でもフッ素又は塩素が好ましい。
ハロゲン化炭化水素の具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチルなどが挙げられる。
ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリルなどのトリアルキルシリル基、トリメチルシリルメチル、トリエチルシリルメチルなどのトリアルキルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル、ジメチルトリルシリルメチルなどのジ(アルキル)(アリール)シリルメチル基などが挙げられる。
これらの中で、R20〜R27は、水素原子が特に好ましい。
【0050】
上記メタロセン化合物の成分(A−1)の遷移金属化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。
I.架橋ビス−ヒドロアズレニル骨格を有する化合物の例示
(1)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(4)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(11)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(12)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(14)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム
(15)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(17)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(18)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(19)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(20)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
【0051】
(21)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(22)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(23)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(24)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(25)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(26)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(27)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(28)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3,5−ジクロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(29)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3,5−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(30)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3,5−ジエチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(31)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3−クロロ−5−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(32)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリメチ
ルシリル−3−クロロ−5−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(33)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3−クロロ−5−エチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(34)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(35)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(36)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(37)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(38)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(39)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−1−ナフチル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(40)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−フルオロ−1−ナフチル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
【0052】
(41)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−メチル−1−ナフチル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(42)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(43)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(44)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−クロロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(45)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−メチル−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(46)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−エチル−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(47)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(48)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−クロロ−6−メチル−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(49)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2’−クロロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(50)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2’−メチル−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(51)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2’,6’−ジメチル−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(52)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4’−クロロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(53)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4’−メチル−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(54)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−i−プロピル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム
(55)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−i−プロピル−4−(2−メチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(56)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−i−プロピル−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(57)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−i−プロピル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(58)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−i−プロピル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(59)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−i−プロピル−4−(1−ナフチル)−4H−アズレニル}]ハフニウム
(60)ジクロロ{1,1’−ジメチルゲルミレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム
【0053】
(61)ジクロロ{1,1’−エチレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム
(62)ジクロロ{1,1’−シラフルオレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ハフニウム
(63)ジクロロ{1,1’−シラフルオレンビス(2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3,5−ジクロロフェニル)−4H−アズレニル)}ハフニウム
(64)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−アズレニル)}ハフニウム
(65)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロアズレニル)}ハフニウム
(66)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−5,6,7,8−テトラヒドロアズレニル}]ハフニウム
【0054】
II.架橋インデニル−ヒドロアズレニル骨格を有する化合物の例示
(1)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(2)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(3)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(4)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(5)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(6)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(7)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(8)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(9)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(10)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(11)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(12)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(13)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(14)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(15)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−エチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(16)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−エチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(17)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(18)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(19)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(20)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
【0055】
(21)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(22)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(23)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(24)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(25)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(26)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−エチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(27)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(28)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−エチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(29)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−エチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(30)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−エチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(31)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ〔e〕インデニル)(2−エチル−4−(1−ナフチル)−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(32)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−1−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(33)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−エチル−1−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
【0056】
1−2.成分(A−2)
本発明に係るメタロセン触媒における成分(A−2)は、下記の一般式(2)で表される遷移金属化合物である。
【0057】
【化6】

【0058】
[一般式(2)中、R10及びR11は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基、2−フリル基、置換された2−フリル基、2−チエニル基、置換された2−チエニル基、2−フルフリル基又は置換された2−フルフリル基を表す。ただし、R10及びR11のいずれか一方は、2−フリル基、置換された2−フリル基、2−チエニル基、置換された2−チエニル基、2−フルフリル基又は置換された2−フルフリル基である。R12及びR13は、炭素数6以上の炭化水素基、炭素数6以上のハロゲン化炭化水素基又は炭素数6以上のケイ素含有炭化水素基を表す。R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Q、X及びYは、一般式(1)と同様の置換基を表す。]
【0059】
上記R10及びR11の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル等のアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、等のアリール基が挙げられる。これらの中では、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル等のアリール基が好ましい。
また、置換された2−フリル基の具体例としては、5−メチル−2−フリル基、5−エチル−2−フリル基、5−tブチル−2−フリル基、5−フェニル−2−フリル基、4,5−ジメチル−2−フリル基などが挙げられる。
以上の中でも、R10及びR11として、メチル、エチル、i−プロピル、5−メチル−2−フリル基が特に好ましい。
【0060】
また、上記R12及びR13の具体例としては、上記化合物(3)で挙げた例と同様のものが挙げられる。
【0061】
また、上記R14、R15、R16、R17、R18及びR19の炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチルなどのアルキル基、ビニル、プロペニル、などのアルケニル基などが挙げられる。
これらの中で、R14〜R19は、水素原子或いはメチル基が特に好ましい。
さらに、R14及びR17は、炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0062】
上記メタロセン化合物の成分(A−2)の遷移金属化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。
(1)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(2)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(3)ジクロロジフェニルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(4)ジクロロジメチルゲルミレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(5)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(6)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−トリメチルシリル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(7)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−フェニル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(8)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(4,5−ジメチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(9)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(10)ジクロロジフェニルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(11)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(12)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル)ジルコニウム
(13)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル)ジルコニウム
(14)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル)ジルコニウム
(15)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル)ジルコニウム
(16)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−フリル)−4−ナフチル−インデニル)ジルコニウム
(17)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−フリル)−4−フェナンスリル−インデニル)ジルコニウム
(18)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−ナフチル−インデニル)ジルコニウム
(19)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェナンスリル−インデニル)ジルコニウム
(20)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−4−ナフチル−インデニル)ジルコニウム
【0063】
(21)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−4−フェナンスリル−インデニル)ジルコニウム
(22)ジクロロジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル)(2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(23)ジクロロジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル)(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(24)ジクロロジフェニルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル)(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(25)ジクロロジメチルゲルミレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル)(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(26)ジクロロジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル)(2−(2−(5−t−ブチル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(27)ジクロロジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル)(2−(2−(5−トリメチルシリル)−フリル)−4−フェニル−インデニル)ジルコニウム
(28)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−フェニル−5−メチルインデニル)ジルコニウム
(29)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−5−メチルインデニル)ジルコニウム
(30)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−(2−メチルフェニル))−5−メチルインデニル)ジルコニウム
(31)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−(3−メチルフェニル))−5−メチルインデニル)ジルコニウム
(32)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−(4−メチルフェニル))−5−メチルインデニル)ジルコニウム
(33)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−(3,5ジメチルフェニル))−5−メチルインデニル)ジルコニウム
(34)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5−メチルインデニル)ジルコニウム
(35)ジクロロジメチルシリレンビス(2−(2−(5−メチル)−フリル)−4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデニル)ジルコニウム
【0064】
2.成分(B)
本発明において、成分(B)は、アルミニウムオキシ化合物(B−1)、上記遷移金属化合物(A)と反応してカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸(B−2)、固体酸微粒子(B−3)及びイオン交換性層状珪酸塩(B−4)からなる化合物群の中から選ばれる少なくとも一種である。
【0065】
2−1.成分(B−1)
以下、成分(B−1)のアルミニウムオキシ化合物について説明する。
アルミニウムオキシ化合物(B−1)は、メタロセン錯体を活性化できることは周知であり、そのような化合物としては、具体的には、次の各一般式(IV)〜(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0066】
【化7】

【0067】
上記各一般式中において、Rは、水素原子又は炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。また、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
【0068】
上記一般式のうち、一番目(IV)及び二番目(V)の式で表される化合物は、アルミノキサンとも称される化合物であって、これらの中では、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
【0069】
一般式の三番目(VI)で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式:RB(OH)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。一般式中、Rは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。
また、成分(B−1)は、微粒子状担体に担持して使用することも可能である。微粒子状担体については後述する。
【0070】
2−2.成分(B−2)
前記成分(A)と反応して、成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸(B−2)について説明する。
(B−2)の化合物は、成分(A)と反応して、成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸であり、このようなイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物が挙げられる。
また、上記のようなルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などが例示される。或いは、塩化アルミニウム、塩化マグネシウムなどの金属ハロゲン化合物が例示される。
なお、上記のルイス酸のある種のものは、成分(A)と反応して、成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物として把握することもできる。
上述した非配位性のホウ素化合物を用いたメタロセン触媒は、特開平3−234709号公報、特開平5−247128号公報などに例示されている。
また、成分(B−2)は、微粒子状担体に担持して使用することも可能である。微粒子状担体については後述する。
【0071】
2−3.成分(B−3)
成分(B−3)は、固体酸微粒子である。
固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどが挙げられる。例えば、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、ZnOなどの酸化物、SiO−MgO、SiO−Al、SiO−TiO、SiO−Cr、SiO−Al−MgOなどの複合酸化物などが挙げられる。
【0072】
ここで、前述した(B−1)および(B−2)における微粒子状担体について説明する。
本発明において、微粒子状担体は、その元素組成、化合物組成について、特に限定されない。例えば、無機または有機の化合物から成る微粒子状担体が例示できる。
無機担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ塩化マグネシウム、活性炭、無機珪酸塩等が挙げられる。あるいは、これらの混合物であってもよい。
また、有機担体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜14のα−オレフィンの重合体、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族不飽和炭化水素の重合体などから成る多孔質ポリマーの微粒子担体が挙げられる。あるいはこれらの混合物であってもよい。
これらの微粒子担体は、通常1μm〜5mm、好ましくは5μm〜1mm、更に好ましくは10μm〜200μmの平均粒径を有する。
【0073】
2−4.成分(B−4)
成分(B−4)は、イオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、且つ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。
珪酸塩は、各種公知のものが使用できる。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が代表例として挙げられる。
【0074】
(i)2:1型鉱物類:
モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族;バーミキュライトなどのバーミキュライト族;雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族;パイロフィライト、タルクなどのパイロフィライト−タルク族;マグネシウム緑泥石などの緑泥石族。
(ii)2:1リボン型鉱物類:
セピオライト、パリゴルスカイトなど。
【0075】
本発明で成分(B−4)として使用する珪酸塩は、上記の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることがさらに好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。
本発明で使用する珪酸塩は、天然品又は工業原料として入手したものは、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。これらの処理を互いに組み合わせて用いてもよい。本発明において、これらの処理条件には特に制限はなく、公知の条件が使用できる。
また、これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水及び層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。
【0076】
[化学処理]
本発明で使用する珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
【0077】
<酸処理>
酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg、等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。
また、処理に用いる塩類および酸は、2種以上であってもよい。塩類および酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩から成る群より選ばれた少なくとも一種の化合物を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は、一般的には水溶液で用いられる。
【0078】
<塩類処理>
本発明においては、塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な1族金属の陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが好ましい。
このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン原子、無機酸および有機酸から成る群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物であり、更に好ましくは、2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンとCl、Br、I、F、PO、SO、NO、CO、C、ClO、OOCCH、CHCOCHCOCH、OCl、O(NO、O(ClO、O(SO)、OH、OCl、OCl、OOCH、OOCCHCH、CおよびCから成る群から選ばれる少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物である。
【0079】
具体的には、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、Li(CHCOO)、LiCO、Li(C)、LiCHO、LiC、LiClO、LiPO、CaCl、CaSO、CaC、Ca(NO、Ca(C、MgCl、MgBr、MgSO、Mg(PO、Mg(ClO、MgC、Mg(NO、Mg(OOCCH、MgC等。
Ti(OOCCH、Ti(CO、Ti(NO、Ti(SO、TiF、TiCl、Zr(OOCCH、Zr(CO、Zr(NO、Zr(SO、ZrF、ZrCl、ZrOCl、ZrO(NO、ZrO(ClO、ZrO(SO)、HF(OOCCH、HF(CO、HF(NO、HF(SO、HFOCl、HFF、HFCl、V(CHCOCHCOCH、VOSO、VOCl、VCl、VCl、VBr等。
Cr(CHCOCHCOCH、Cr(OOCCHOH、Cr(NO、Cr(ClO、CrPO、Cr(SO、CrOCl、CrF、CrCl、CrBr、CrI、Mn(OOCCH、Mn(CHCOCHCOCH、MnCO、Mn(NO、MnO、Mn(ClO、MnF、MnCl、Fe(OOCCH、Fe(CHCOCHCOCH、FeCO、Fe(NO、Fe(ClO、FePO、FeSO、Fe(SO、FeF、FeCl、FeC等。
Co(OOCCH、Co(CHCOCHCOCH、CoCO、Co(NO、CoC、Co(ClO、Co(PO、CoSO、CoF、CoCl、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等。
Zn(OOCCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、AlF、AlCl、AlBr、AlI、Al(SO、Al(C、Al(CHCOCHCOCH、Al(NO、AlPO、GeCl、GeBr、GeI等が挙げられる。
【0080】
<アルカリ処理>
アルカリ処理で用いられる処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)などが例示される。
【0081】
<有機物処理>
また、有機物処理に用いられる有機物は、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウム、等が挙げられる。
さらに、有機物処理剤を構成する陰イオンとしては、塩類処理剤を構成する陰イオンとして例示した陰イオン以外にも、例えば、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
これら成分(B−4)のイオン交換性層状珪酸塩には、通常吸着水および層間水が含まれる。本発明においては、これらの吸着水および層間水を除去して、成分(B)として使用するのが好ましい。
イオン交換性層状珪酸塩の吸着水および層間水の加熱処理方法は、特に制限されないが、層間水が残存しないように、また、構造破壊を生じないよう条件を選ぶことが必要である。加熱時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、除去した後の成分(B−4)の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下、であることが好ましい。
【0083】
以上のように、本発明において、成分(B)として、特に好ましいものは、塩類処理および/または酸処理を行って得られた、水分含有率が3重量%以下の、イオン交換性層状珪酸塩である。
また、イオン交換性層状珪酸塩は、触媒形成または触媒として使用する前に、後述する成分(C)の有機アルミニウム化合物で処理を行うことが可能で、好ましい。イオン交換性層状珪酸塩1gに対する成分(C)の使用量に制限は無いが、通常20mmol以下、好ましくは0.5mmol以上、10mmol以下で行う。処理温度や時間の制限は無く、処理温度は、通常0℃以上、70℃以下、処理時間は10分以上、3時間以下で行う。処理後に洗浄することも可能で、好ましい。溶媒は、後述する予備重合やスラリー重合で使用する溶媒と同様の炭化水素溶媒を使用する。
【0084】
また、成分(B)は、平均粒径が5μm以上の球状粒子を用いるのが好ましい。粒子の形状が球状であれば、天然物あるいは市販品をそのまま使用してもよいし、造粒、分粒、分別等により粒子の形状および粒径を制御したものを用いてもよい。
【0085】
ここで用いられる造粒法は、例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられるが、市販品を利用することもできる。
また、造粒の際に有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダ−を用いてもよい。
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の生成を抑制するためには0.2MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上の圧縮破壊強度を有することが望ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状改良効果が有効に発揮される。
【0086】
上述の成分(B)の中で、特に好ましいものは、成分(B−4)のイオン交換性層状珪酸塩である。
また、本発明のα−オレフィン重合用触媒において、アルミニウムオキシ化合物(B−1)、成分(A)の遷移金属化合物と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸(B−2)、固体酸微粒子(B−3)、あるいは、イオン交換性層状珪酸塩微粒子(B−4)は、それぞれ単独に、成分(B)として使用される他、これらの4成分を適宜組み合わせて、使用することができる。
【0087】
3.成分(C)
本発明において、好ましくは用いられる成分(C)は、有機アルミニウム化合物である。
成分(C)として、用いられる有機アルミニウム化合物は、次の一般式:
AlR3−q
で示される化合物が適当である。
本発明では、この一般式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができることは、言うまでもない。この式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。qは1〜3の整数である。Rとしては、アルキル基が好ましく、また、Zは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
【0088】
したがって、好ましい有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、q=3のトリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0089】
4.触媒の形成・予備重合について
本発明による触媒は、上記の各成分を(予備)重合槽内で、同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって、形成させることができる。各成分の接触は、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で行うのが普通である。接触温度は、特に限定されないが、−20℃〜150℃の間で行うのが好ましい。接触順序としては、合目的的な任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば次の通りである。
成分(C)を使用する場合は、成分(A)と成分(B)を接触させる前に、成分(A)と、あるいは成分(B)と、または成分(A)及び成分(B)の両方に成分(C)を接触させること、または、成分(A)と成分(B)を接触させるのと同時に成分(C)を接触させること、または、成分(A)と成分(B)を接触させた後に成分(C)を接触させることが可能であるが、好ましくは、成分(C)を使用しない方法、あるいは成分(A)と成分(B)を接触させる前に成分(C)といずれかに接触させる方法である。
また、各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
【0090】
本発明で使用する成分(A)、(B)および(C)の使用量は任意である。例えば、成分(B)に対する成分(A)の使用量は、成分(B)1gに対し、好ましくは0.1μmol〜1000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。
また、成分(B)に対する成分(C)の使用量は、成分(B)1gに対し、好ましくはAlの量が0.01〜1000mmol、特に好ましくは0.05〜500mmolの範囲である。したがって、成分(A)に対する成分(C)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは0.01〜5×10、特に好ましくは0.1〜100の範囲内が好ましい。
【0091】
本発明の触媒は、これにオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付される。使用するオレフィンは、特に限定はないが、プロピレン、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等を例示することができる。オレフィンのフィード方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(B)に対し、好ましくは重量比で0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。また、予備重合時に成分(C)を添加、又は追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
さらに、上記の各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体を共存させる等の方法も可能である。
また、成分(A)、(B)及び(C)の接触は、窒素などの不活性ガス中において、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。接触は、−20℃から溶媒の沸点の間の温度で行い、特に室温から溶媒の沸点の間での温度で行うのが好ましい。
【0092】
5.重合反応
本発明に係るプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法は、結晶性プロピレン重合体成分(PP)を製造する前段工程、引き続き、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種のコモノマーとの共重合体成分(CP)を製造する後段工程から構成される。
また、前段工程は、バルク重合法、気相重合法どちらの重合法も採用可能である。後段工程は、製造するエチレン−α−オレフィン共重合体成分がゴム成分であり、溶媒中に溶出しないことが望ましいため、気相重合法を採用する。
また、重合形式は、それぞれ前段工程、後段工程とも回分法、または連続法どちらの方式も採用できる。本発明においては、前段と後段からなる2段重合が行われるが、場合によっては、それぞれの段階を更に分割することができる。特に、後段工程を2段以上に分割して、多種類のゴム成分を作る方法も物性改良法の一つである。
【0093】
5−1.プロピレン重合体成分(PP)の製造
前段の重合工程では、結晶性プロピレン重合体成分(PP)を製造する。すなわち、プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)またはプロピレンとα−オレフィンの共重合体(プロピレン−α−オレフィン共重合体)を、一段もしくは多段に、全重合量(プロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の全体)の20〜99重量%、好ましくは30〜90重量%に相当するように形成させる工程である。ここでα−オレフィンとしては、エチレンを含みプロピレン以外の炭素数4〜20のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−ペンテン−1、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。これらの中では、エチレンが最も好ましい。α−オレフィンを使用する場合の使用量は、全モノマー(プロピレンとα−オレフィンの合計)に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0094】
前段の重合工程における重合温度は、30〜120℃、好ましくは50〜90℃程度である。重合圧力は、0.1〜6MPa、好ましくは0.1〜4MPaである。また、重合体の流動性が適当なものとなるように、分子量(MFR)調整剤を使用することが好ましく、調整剤としては、水素が好ましい。MFR(試験条件:230℃、2.16Kg荷重)は、最終重合体の用途によるが、好ましい範囲としては0.1〜3000g/10分、好ましくは0.5〜2000g/10分、さらに好ましくは0.5〜1000g/10分である。
また、前段の重合工程で得られた結晶性プロピレン重合体成分(PP)の融点は、150〜165℃であり、好ましくは155〜162℃である。
【0095】
5−2.エチレン−α−オレフィン共重合体成分(CP)の製造
本発明の後段の重合工程は、この工程で製造するエチレン−α−オレフィン共重合体成分がゴム成分であり、溶媒中に溶出しないことが望ましいことから、気相重合で行なう必要がある。気相重合プロセスとしては、公知の気相重合プロセスを用いることができるが、機械的に攪拌される縦型あるいは横型の気相重合プロセスが好ましい。
本発明の後段工程においては、得られたエチレン−α−オレフィン共重合体成分中におけるエチレン含有量(重量%)は、10〜90重量%であり、好ましくは30〜70重量%(実施例1、2では、42〜62重量%)である。
ここでα−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィンであり、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−ペンテン−1、1−オクテン−1、1−デセン等が挙げられる。これらの中では、プロピレンが最も好ましい。この共重合体は、第三成分として、例えばプロピレンやジエン系モノマー等をさらに含有することができる。その場合、これらの第三成分の含有量は、20重量%以下が好ましい。
【0096】
また、後段工程では、全重合量(プロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の全体)の1〜80重量%、好ましくは10〜70重量%に相当する量を形成させる。
後段の重合工程における重合温度は、30〜120℃、好ましくは50〜80℃程度である。重合圧力は、0.1〜5MPa、好ましくは0.5〜4MPaである。重合圧力があまり高くなると、超臨界状態となってしまうことが知られているが、本発明における気相重合は、このような超臨界状態を含まない。
【0097】
重合時には、得られる重合体の流動性が適当なものとなるように、分子量調整剤を使用することが好ましく、分子量調整剤としては、水素が好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体の重量平均分子量の範囲は、1万〜500万、好ましくは5万〜300万、さらに好ましくは10万〜100万、最も好ましくは40万〜80万である。最終重合体の用途によるが、成型時のゲルの発生を抑え、線膨張率を低くするためには、エチレン−α−オレフィン共重合体の重量平均分子量を、前段で重合した重合体の重量平均分子量に、なるべく近づけることが有効である。
また、重合体の性状を考慮すると、べとつきの原因とされるゴムの低分子量成分の生成が極力少ない方が望ましい。具体的には、ゴム中の分子量5000以下の成分がゴム全体に対して0.8重量%以下であることが好ましい。そのためには、ゴムの平均分子量を低くしないような重合条件をとることや、重合終了後に速やかに残モノマーを放出するか触媒を失活させるなどして、後段の重合工程と異なる条件下での重合反応が起きることを避けることが必要である。なお、ここでゴム中の低分子量成分量は、後述するCFC分析装置による測定における、40℃以下の溶出成分中の分子量5000以下の成分量のことをいう。
【実施例】
【0098】
次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0099】
実施例で評価したポリマー物性の測定方法などを以下に示す。
(1)MFRの測定:
ポリマー6gに熱安定剤(BHT)のアセトン溶液(0.6重量%)6gを添加した。次いで、上記のポリマーを乾燥した後、メルトインデクサー(230℃)に充填し、2.16Kg荷重の条件下に5分間放置した。その後、ポリマーの押し出し量を測定し、10分間当たりの量に換算し、MFRの値とした(単位はg/10分)。
【0100】
(2)融点(Tm)の測定:
DSC(セイコー・インスツルメンツ社製・DSC6200型)を使用し、10℃/分で20〜200℃までの昇降温を1回行った後、10℃/分で2回目の昇温時の測定値により求めた。
【0101】
(3)クロス分別(以下、CFCと称する。)
本発明の触媒を用いて得られるプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体中の共重合体成分(ゴム状成分であり、以下、「CP」と称す。)の含有量、CP中のα−オレフィン重合割合は、以下の方法により求めた。
なお、以下の例は、CP中のα−オレフィンとして、プロピレンを用いた場合(つまりエチレン−プロピレン共重合体と仮定した場合)のものであるが、1−ブテンなどのα−オレフィンでも、以下の例に準じた方法を用いて求めるものとする。
【0102】
(3−1)使用する分析装置:
(i)クロス分別装置:
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析:
FT−IR・パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して、代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは、光路長1mm・光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC):
CFCの後段に、GPCカラム(昭和電工社製AD806MS)を3本直列に接続して使用する。
【0103】
(3−2)CFCの測定条件:
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度:4mg/mL
(iii)注入量:0.4mL
(iv)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(v)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は、40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(vi)溶出時溶媒流速:1mL/分
【0104】
(3−3)FT−IRの測定条件:
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(i)検出器:MCT
(ii)分解能:8cm−1
(iii)測定間隔:0.2分(12秒)
(iv)一測定当たりの積算回数:15回
【0105】
(3−4)測定結果の後処理と解析:
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は、各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は、森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には、以下の数値を用いる。
(i)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時:
K=0.000138、α=0.70
(ii)プロピレン系ブロック共重合体のサンプル測定時:
K=0.000103、α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、GPC−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレン及び13C−NMR測定などによりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレン共重合体(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン重合割合(モル%)に換算して求める。
【0106】
(3−5)CP含有量
本発明におけるブロック共重合体のCP含有量は、下記式(I)で定義され、以下のような手順で求められる。
CP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100・・・(I)
【0107】
式(I)において、W40、W100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40、A100は、W40、W100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40、B100は、各フラクションに含まれるCPのエチレン含有量(単位:重量%)である。A40、A100、B40、B100の求め方は、後述する。
【0108】
式(I)の意味は、以下の通りである。すなわち、式(I)右辺の第一項は、フラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるCPの量を算出する項である。フラクション1がCPのみを含み、PPを含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のCP含有量に寄与するが、フラクション1には、CP由来の成分の他に少量のPP由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこで、W40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、CP成分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるCPのエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はCP由来、1/4はPP由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)からCPの寄与を算出することを意味する。
右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、CPの寄与を算出して加え合わせたものがCP含有量となる。
【0109】
フラクション1〜3の平均エチレン含有量A40、A100、A140は、2945cm−1の吸光度のクロマトグラムにおける各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量(2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比から得られる)の積の総和によって得られる。
【0110】
フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は重量%である)。フラクション2については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明では、B100=100と定義する。B40、B100は、各フラクションに含まれるCPのエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由は、フラクションに混在するPPとCPを完全に分離・分取する手段がないからである。
種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40は、フラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。また、B100は、エチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、及びこれらのフラクションに含まれるCPの量がフラクション1に含まれるCPの量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。
そこで、B100=100として、解析を行うこととしている。従って、下記式(II)に従い、CP含有量を求めることができる。
CP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100・・・(II)
【0111】
つまり、式(II)右辺の第一項であるW40×A40/B40は、結晶性を持たないCP含有量(重量%)を示し、第二項であるW100×A100/100は、結晶性を持つCP含有量(重量%)を示す。
【0112】
共重合体成分中のエチレン含量は、式(II)で求めた共重合体成分の含有量を用いて、下記の式(III)で求められる。
共重合体成分中のエチレン含量(重量%)=(W40×A40+W100×A100+W140×A140)/[共重合体成分含有量(重量%)]・・・(III)
【0113】
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は、次の通りである。本発明に係るCFC分析において、40℃とは、結晶性を持たないポリマー(例えば、CPの大部分、若しくはプロピレン重合体成分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分及びアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。また、100℃とは、40℃では不溶であるが、100℃では可溶となる成分(例えばCP中、エチレン及び/又はプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、及び結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。また、140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、PP中特に結晶性の高い成分、及びCP中の極端に分子量が高くかつ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140には、CP成分は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり実質的には無視できることから、CP含有量やエチレン含量の計算からは排除する。
【0114】
(3−6)エチレン含有割合
CP中のエチレン含有量は、次式によって求める。
CP中のエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100)/[CP]
但し、式中、[CP]は、先に求めたCP含有量(重量%)である。
【0115】
[実施例1]
(1)成分(A)
(i)遷移金属化合物[A−1]:
特開2000−95791号記載の方法で、ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ハフニウムを合成した。
【0116】
(ii)遷移金属化合物[A−2]:
特開2004−238493号記載の方法で、ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン[2−メチル−4−フェニルインデニル][2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニルインデニル]}ジルコニウムを合成した。
【0117】
(2)触媒調製
撹拌翼と還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、純水1,698gを投入し、98%硫酸501gを滴下した。そこへ、さらに市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:19.5μm)を300g添加後撹拌した。その後90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、洗浄した。回収したケーキに硫酸リチウム1水和物324gの水900mL水溶液を加え90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、pH>4まで洗浄した。回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、275gの化学処理体を得た。
内容積1Lのフラスコに上記で得た化学処理モンモリロナイト10gを秤量し、ヘプタン65mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液34mL(25mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mLに調製した。
【0118】
(3)プロピレンによる予備重合
上記で調製し、トリイソブチルアルミニウム処理したモンモリロナイトのヘプタンスラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液0.85mLを加えて10分間、室温で撹拌した。また、(1)で合成したジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ハフニウム(150μmol)とジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−フェニルインデニル][2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニルインデニル]}ジルコニウム(150μmol)の混合物のヘプタン(60ml)溶液を、上記の1Lフラスコに加えて室温で60分間撹拌した。
次に、上記モンモリロナイトのヘプタンスラリーに、さらにヘプタン170mLを追加して内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを240mmol/hr(10g/hr)の一定速度で120分間にて供給した。プロピレン供給終了後、60℃に昇温して2時間そのまま維持し、その後残存ガスをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液8.5mL(6.0mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、減圧乾燥して固体触媒を回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.11であった。
【0119】
(4)ブロック重合
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液2.76mL(2.02mmol)を加え、水素300mL、続いて液体プロピレン750gを導入し、65℃に昇温し、その温度を維持した。上記(3)で調製した触媒をノルマルヘプタンにスラリー化し、触媒として50mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を65℃に維持し、触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行い、アルゴンにて槽内を5回置換した。
その後、プロピレンを0.88MPa、続いてエチレンを1.6MPa導入し、内温を80℃に昇温した。その後、予め調製しておいたプロピレンとエチレンの混合ガスを導入し、内圧が2.5MPaで重合中にモノマー組成比が変化しないように調整しながら、20分間重合反応を制御した。その結果、粒子性状の良いプロピレン系ブロック共重合体が得られた。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)が17.9重量%、MFRが61(g/10分)、ゴム(CP)中のエチレン含有量は、37.7重量%であった。また、別途採取したプロピレンホモポリマーのTmは156℃、MFRは148(g/10分)であった。
【0120】
[実施例2]
(1)成分(A)
(i)遷移金属化合物[A−1]:
ジクロロ{1,1’−シラフルオレニルビス[2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3,5−ジクロロフェニル)−4H−アズレニル]}ハフニウムは、特開2005−126679号公報に従って合成した。
【0121】
(ii)遷移金属化合物[A−2]:
特開2004−2259号記載の方法で、ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニルインデニル]}ジルコニウムを合成した。
【0122】
(2)プロピレンによる予備重合
上記錯体を用いる以外は、実施例1(3)と同様の操作で、予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)が2.0である予備重合触媒を調製した。
【0123】
(3)ブロック重合
上記(2)で調製した予備重合触媒を用いる以外は、上記実施例1(4)と同様に操作した。
その結果、粒子性状の良いプロピレン/エチレン−ブテンブロック共重合体が得られた。上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)23重量%、MFRが27(g/10分)、ゴム(CP)中のエチレン含有量は、46重量%であった。また、別途採取したプロピレンホモポリマーのTmは159℃、MFRは42(g/10分)であった。
【0124】
[実施例3]
(1)成分(A)
(i)遷移金属化合物[A−1]:
ジクロロ{1,1’−シラフルオレニルビス[2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3,5−ジクロロフェニル)−4H−アズレニル]}ハフニウムは、特開2005−126679号公報に従って合成した。
【0125】
(ii)遷移金属化合物[A−2]:
ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデニル]}ジルコニウムの合成:
3,5−ジメチルフェニルボロン酸 20g(0.13mol)をDME250mlに溶解させ、炭酸セシウム60gの水140ml溶液(0.18mol)、4−ブロモ−5−メチルインデン20g(90mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム5g(4.3mmol)を順に加えた。加熱還流下で44時間反応させた後、反応液を水500ml中に加え、ジイソプロピルエ−テルにより抽出した。有機層を1N−塩酸、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄したあと、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去して粗生成物を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(関東化学社製シリカゲル60、ヘキサン)で精製することにより、4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデン20.4g(収率96%)を無色液体として得た。
【0126】
得られた4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデン20.4g(87mmol)をジメチルスルホキシド200mlに溶解させ、水6ml(0.33mol)を加えた。N−ブロモスクシンイミド20g(0.11mol)を除々に添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を水500ml中に注ぎ、トルエンで抽出を行い、有機層を塩酸と水で洗浄した。有機層にp−トルエンスルホン酸・一水和物2.5g(13mmol)を加えた。加熱還流下で2時間反応させた後、溶液を炭酸ナトリウム水溶液と飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去して粗生成物を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(関東化学社製シリカゲル60、ヘキサン)で精製することにより、2−ブロモ−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデン26.8g(収率98%)を淡黄色液体として得た。
【0127】
次に、2−メチルフラン10g(0.12mol)をDME200mlに溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液75ml(1.63M,1.1mol)を−70℃で滴下し、3時間攪拌した。再び−70℃に冷却したあと、トリイソプロピルボレート31ml(0.13mol)のDME60ml溶液を滴下し、室温に戻しながら一晩攪拌した。反応液に水50mlを加え、その後、炭酸ナトリウム26g(0.25mol)の水150ml溶液、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム5g(4.3mmol)、2−ブロモ−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデン26.8g(0.86mol)、を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。反応液を水400ml中に加え、ジイソプロピルエ−テルにより抽出した。有機層を1N−塩酸、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄したあと、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去して粗生成物を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(関東化学社製シリカゲル60、ヘキサン/ジクロロメタン)で精製することにより、目的の2−(2−(5−メチルフリル))−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデン24.7g(収率92%)を無色結晶として得た。
【0128】
得られた2−(2−(5−メチルフリル))−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデン10.2g(32mmol)をTHF150mlに溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液20ml(1.63M,33mmol)を−70℃で滴下した。6時間攪拌した後、N−メチルイミダゾ−ル0.13ml(1.6mmol)を加え、−70℃でジクロロジメチルシラン2.1g(16mmol)のTHF20ml溶液を滴下し、徐々に昇温させながら一晩攪拌した。反応液に水10mlを加え、有機層を1N−塩酸、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄したあと、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去して粗生成物を得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(関東化学社製シリカゲル60、ヘキサン/ジクロロメタン)で精製することにより、ジメチルビス(2−(2−(5−メチルフリル))−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデニル)シラン8.1g(収率73%)を得た。
【0129】
得られたジメチルビス(2−(2−(5−メチルフリル))−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデニル)シラン8.1g(12mmol)をジエチルエ−テル300mlに溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液15ml(1.63M,25mmol)を−76℃で滴下した。昇温しながら3時間攪拌し、減圧下溶媒を留去した。トルエン300ml、ジエチルエ−テル15mlを順に加え、−75℃に冷却し、四塩化ジルコニウム2.8g(12mmol)を添加した。その後、昇温しながら一夜攪拌した。得られた反応溶液を減圧下で溶媒を留去した。
これをn−ヘキサン/ジクロロメタンで抽出し、再結晶することにより、ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデニル]}ジルコニウムのラセミ体2.9g(収率29%)をオレンジ色結晶として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.06(s,6H,Si−CH),2.27(s,6H,Furyl−CH),2.29(s,6H,Ph−CH),2.35(s,6H,Ph−CH),2.39(s,6H,Ind−5−CH),6.03(d,2H,Furyl−H),6.22(d,2H,Furyl−H),6.56(s,2H,Ind−H),6.64(d,2H,Ind−H),6.74(d,2H,Ind−H),6.75(s,2H,Ph−H),6.95(s,2H,Ph−H),7.36(s,2H,Ph−H).
【0130】
(2)プロピレンによる予備重合
上記錯体を用いる以外は、実施例1(3)と同様の操作で、予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)が0.43である予備重合触媒を調製した。
【0131】
(3)ブロック重合
上記(2)で調製した予備重合触媒を用いる以外は、上記実施例1(4)と同様に操作した。
その結果、粒子性状の良いプロピレン/エチレン−ブテンブロック共重合体が得られた。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)30.1重量%、MFRが15.9(g/10分)、ゴム(CP)中のエチレン含有量は、45重量%であった。また、別途採取したプロピレンホモポリマーのTmは158℃、MFRは212(g/10分)であった。
【0132】
[実施例4]
(1)成分(A)
(i)遷移金属化合物[A−1]:
ジクロロ{1,1’−シラフルオレニルビス[2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3,5−ジクロロフェニル)−4H−アズレニル]}ハフニウムは、特開2005−126679号公報に従って合成した。
【0133】
(ii)遷移金属化合物[A−2]:
ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデニル]}ジルコニウムの合成:
4−メトキシフェニルボロン酸10g(66mmol)とDME100mlの混合液に炭酸セシウム28.6g(88mmol)の水溶液100mlと5−メチル−4−ブロモインデン9.2g(44mmol)、テトラキス(トリフェニルフォスフィノ)パラジウム2gを加えて加熱還流した。19.5時間後、反応溶液を1N希塩酸−氷水に流し込み、攪拌後エ−テルを加えて有機層を分取した。有機層をセライトろ過して飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて減圧下溶媒を留去した。
得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ−(関東化学社製シリカゲル、ヘキサン)で精製し、目的物の4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデン8gを得た(収率78%)
【0134】
得られた4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデン4g(16.9mmol)をDMSO50mlと蒸留水1mlに溶解させて氷浴冷却下N−ブロモスクシイミド3.9gを加えて室温で2時間攪拌した。氷浴上で水を加えてクエンチし、トルエンを加えて有機層を分取した。続けてトルエン有機層にp−トルエンスルホン酸を触媒量加えて1時間加熱還流した。反応溶液に水を加えて有機層を分取し、飽和食塩水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥させて減圧下溶媒を留去し、2−ブロモ−4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデンの粗生成物を得た。
【0135】
2−メチルフラン1.9g(23mmol)の無水DME溶液を−70℃に冷却しn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.66M,14mL)を滴下した。そのまま−30℃程度の低温で3時間攪拌し、続けてトリイソプロピルボレート5.9ml(25.5mmol)を加え室温で昼夜攪拌した。攪拌後蒸留水5mlを加えて加水分解し、炭酸ナトリウム4.8g(45mmol)の水溶液30ml、上記合成した2−ブロモ−4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデン粗生成物、さらにテトラキス(トリフェニルフォスフィノ)パラジウム0.6gを加えて加熱還流2.5時間行った。反応溶液に水を加えて有機層を分取し、有機層をセライトろ過して飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて減圧下溶媒を留去した。
得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ−(関東化学社製シリカゲル、ヘキサン)で精製して目的物の2−(2−(5−メチルフリル))−4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデン4.2g(収率75%)を得た。
【0136】
得られた2−(2−(5−メチルフリル))−4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデン7.3gを無水THF100mlに溶解し、−72℃でn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.66M,13.9mL)を滴下した。滴下後室温まで昇温して3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾ−ル0.2mlを加え、−72℃でジクロロジメチルシラン1.4ml(11.5mmol)を滴下した。滴下後室温まで昇温し、昼夜攪拌した。反応終了後、蒸留水を加え、その後水層を取り除いた。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。
得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ−(関東化学社製シリカゲル、ヘキサン)で精製して目的物のジメチルビス(2−(2−(5−メチルフリル)−4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデニル)シラン7.1g(収率89%)を得た。
【0137】
得られた配位子3.5gを無水エ−テル200mlに溶解し、−72℃に冷却してn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.65M,6.2mL)を滴下した。室温まで昇温して2時間攪拌後、溶媒を減圧下留去し、無水エ−テル10mlと無水トルエン200mlを加えて再度−70℃まで冷却してテトラクロロジルコニウム1.2g(5.1mmol)加えた。すぐに室温まで昇温して2時間攪拌した。反応終了後、一度溶媒を留去してトルエン抽出し、続けてヘキサン洗浄、エ−テル洗浄、トルエン洗浄、エ−テル洗浄をして目的物のジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデニル]}ジルコニウムのラセミ体錯体を得た(1.6g、単離収率37%)。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ1.08(s,6H,SiMe2),2.25(s,6H,furyl−Me),2.40(s,6H,5−Me),3.83(s,6H,MeO−),6.03(s,2H,furyl),6.20(s,2H,furyl),6.54(s,2H,Cp),6.64(d,J=8.8Hz,2H,ind),6.75(d,J=8.8Hz,2H,ind),6.8−7.7(m,8H,Ph).
【0138】
(2)プロピレンによる予備重合
上記錯体を用いる以外は、実施例1(3)と同様の操作で、予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)が1.47である予備重合触媒を調製した。
【0139】
(3)ブロック重合
上記(2)で調製した予備重合触媒を用いる以外は、上記実施例1(4)と同様に操作した。
その結果、粒子性状の良いプロピレン/エチレン−ブテンブロック共重合体が得られた。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)が23.7重量%、MFRが6.8(g/10分)、ゴム(CP)中のエチレン含有量は、49.8重量%であった。また、別途採取したプロピレンホモポリマーのTmは161℃、MFRは16.9(g/10分)であった。
【0140】
[比較例1]
(1)成分(A)のメタロセン錯体:遷移金属化合物[A−1]のみを用いる触媒
(i)遷移金属化合物[A−1]:
ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ハフニウムを用いた。
【0141】
(2)ブロック重合
上記遷移金属化合物のみを用いて、実施例1(3)と同様にして、触媒調製し、実施例1(4)と同様にして、重合を行った。
その結果、粒子性状の良いプロピレン/エチレン−プロピレンブロック共重合体が得られた。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)が59重量%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は26重量%であった。また、別途採取したプロピレンホモポリマーのTmは、157℃であった。
【0142】
[比較例2]
(1)成分(A)のメタロセン錯体:遷移金属化合物[A−1]のみを用いる触媒
(i)遷移金属化合物[A−1]:
ジクロロ{1,1’−シラフルオレニルビス[2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3,5−ジクロロフェニル)−4H−アズレニル]}ハフニウムを用いた。
【0143】
(2)ブロック重合
上記遷移金属化合物のみを用いて、実施例1(3)と同様にして、触媒調製し、実施例1(4)と同様にして、重合を行った。
その結果、粒子性状の良いプロピレン/エチレン−プロピレンブロック共重合体が得られた。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)が17重量%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は23重量%であった。また、別途採取したプロピレンホモポリマーのTmは、161℃であった。
【0144】
上記の実施例1〜4と比較例1〜2の重合結果を表1に示す。
【0145】
【表1】

錯体A:ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ハフニウム
錯体B:ジクロロ{1,1’−シラフルオレニルビス[2−エチル−4−(4−トリメチルシリル−3,5−ジクロロフェニル)−4H−アズレニル]}ハフニウム
錯体C:ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン[2−メチル−4−フェニルインデニル][2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニルインデニル]}ジルコニウム
錯体D:ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニルインデニル]}ジルコニウム
錯体E:ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチルインデニル]}ジルコニウム
錯体F:ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メトキシフェニル)−5−メチルインデニル]}ジルコニウム
【0146】
[実施例と比較例の結果の対比による考察]
表1に示すように、本発明の少なくとも二種の遷移金属化合物を含む触媒を用いたプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法では、従来の触媒を用いる製造方法よりも、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体(CP)が得られ、結晶性プロピレン成分(PP)の融点とともに、バランスの取れたブロック共重合体を製造できることが明らかである。
したがって、本発明における構成の要件の合理性と有意性、及び本発明の従来技術に対する優越性が明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明に係るプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法では、より高い融点を有する結晶性プロピレン成分とともに、より高いエチレン含量のエチレン−α−オレフィン共重合体成分を有するプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体を安定的に製造できる方法を提供し、産業上、利用可能性が高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記成分(A−1)及び(A−2)からそれぞれ選択される少なくとも二種の周期律表4族の遷移金属化合物、及び
(B)アルミニウムオキシ化合物(B−1)、上記遷移金属化合物(A)と反応してカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸(B−2)、固体酸微粒子(B−3)及びイオン交換性層状珪酸塩(B−4)からなる化合物群の中から選ばれる少なくとも一種、
を含むことを特徴とするα−オレフィン重合触媒成分。
(A−1):一般式(1)で表される遷移金属化合物
【化1】

[一般式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜18のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基又は炭素数1〜20の硫黄含有炭化水素基を示す。R及びRは、それぞれ独立して、それが結合する五員環に対して縮合環を形成する炭素数4〜6の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を示す。ただし、R及びRの少なくとも一方は、炭素数が5〜6であり、R又はR由来の7〜8員環から成る縮合環を形成する。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基又は炭素数1〜20の硫黄含有炭化水素基を示す。m及びnは、それぞれ独立して、0〜20の整数を示す。ただし、m及びnが同時に0となることはない。また、m又はnが2以上の場合、それぞれ、R同士またはR同士が連結して新たな環構造を形成していてもよい。Qは、二つのシクロペンタジエニル環を連結する架橋基を示し、X及びYは、助触媒と反応してオレフィン重合能を発現させるσ共有結合性補助配位子を示し、Mは、周期表4族の遷移金属を示す。]
(A−2):一般式(2)で表される遷移金属化合物
【化2】

[一般式(2)中、R10及びR11は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基、2−フリル基、置換された2−フリル基、2−チエニル基、置換された2−チエニル基、2−フルフリル基又は置換された2−フルフリル基を表す。ただし、R10及びR11のいずれか一方は、2−フリル基、置換された2−フリル基、2−チエニル基、置換された2−チエニル基、2−フルフリル基又は置換された2−フルフリル基である。R12及びR13は、炭素数6以上の炭化水素基、炭素数6以上のハロゲン化炭化水素基又は炭素数6以上のケイ素含有炭化水素基を表す。R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Q、X及びYは、一般式(1)と同様の置換基を表す。]
【請求項2】
さらに、(C)有機アルミニウム化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のα−オレフィン重合触媒成分。
【請求項3】
成分(A−1)の遷移金属化合物は、一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のα−オレフィン重合触媒成分。
【化3】

[一般式(3)中、R、R、R及びRは、一般式(1)と同様の置換基を表し、R12及びR13は、一般式(2)と同様の置換基を表し、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10ケイ素含有炭化水素基又は炭素数1〜10ハロゲン化炭化水素基を表す。Q、X、Y及びMは、一般式(1)と同様の置換基を表す。]
【請求項4】
成分(A−2)の一般式(2)で表される遷移金属化合物は、R14及びR17が炭素数1〜10の炭化水素基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のα−オレフィン重合触媒成分。
【請求項5】
成分(B)は、イオン交換性層状珪酸塩(B−4)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のα−オレフィン重合触媒成分。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のα−オレフィン重合触媒成分を用いて、結晶性プロピレン重合体成分を製造する前段工程、及びエチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも一種のコモノマーとの共重合体成分を気相重合で製造する後段工程からなることを特徴とするプロピレン/エチレン−α−オレフィン系ブロック共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−150497(P2010−150497A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98905(P2009−98905)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】