説明

プロファイル作成装置

【課題】プロファイルの作成に伴う消耗品の消費量を抑制する。
【解決手段】同一色の複数のパッチがすべての行及び列に存在するように複数色のパッチが配置された基本チャートを表す画像をプリンタに形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得する(S101〜S106)。そして、取得した測色値に基づいて苦手色を抽出する(S107)。その後、抽出した苦手色と、苦手色以外の色とで、同一色のパッチの個数が異なるプロファイル作成チャートを表す画像をプリンタに形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得する(S201〜S206)。そして、取得した測色値に基づいて、プリンタの画像形成特性が反映されたプロファイルを作成する(S207)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロファイルを作成するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数色の色材(インクやトナー等)を用いて画像を形成するプリンタのようなデバイスについて、形成される画像の色の再現性を調整するための処理(カラーマッチング)を行うことが知られている。こうしたカラーマッチングは、デバイスに依存しない色空間の色値を、デバイスに依存する色空間の色値に変換するためのプロファイル(ICCプロファイル)を用いて行われる。
【0003】
ところで、このようなカラーマッチングによって、デバイスにより形成される画像の色の再現性を適切に調整するためには、そのデバイスの画像形成特性が適切に反映されたプロファイルを用いる必要がある。このため、複数色のパッチが配置された基本チャートを表す画像を、デバイスに実際に形成させ、形成された各パッチを測色することで、そのデバイスの画像形成特性が反映されたプロファイルを作成する。つまり、デバイスのプロファイルは、基本チャートを表す画像の画像データ上での各パッチの色値と、基本チャートを表す画像を実際にそのデバイスに形成させて測色した各パッチの測色値との関係に基づいて作成される。
【0004】
しかしながら、デバイスによって形成される画像の色は、その形成位置(例えば用紙における位置)に応じて異なる(つまり、色むらが生じる)場合があり、パッチの色が色むらの影響によって適切に再現されないと、適切なプロファイルを作成することができない。
【0005】
そこで、同一色のパッチが用紙における異なる位置に複数配置された基本チャートを表す画像をデバイスに形成させ、複数のパッチの測色値を平均した平均測色値に基づいてプロファイルを作成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−72343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来の技術では、同一色のパッチの個数(配置位置)を多くするほど、色むらの影響を受けにくくすることができる。しかしながら、各色のパッチの個数を多くすると、特に同一のデバイスについてプロファイルの作成を複数回行うような場合には、パッチの形成に使用される色材等の消耗品の消費量が過大となってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、プロファイルの作成に伴う消耗品の消費量を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は上記目的を達成する構成を開示する。第1の構成は、プロファイル作成装置であって、同一色の複数のパッチがすべての行及び列に存在するように複数色のパッチが配置された基本チャートを表す画像を、画像形成手段に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得する基本チャート測色手段と、前記基本チャート測色手段により取得された測色値に基づいて苦手色を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された前記苦手色と、前記苦手色以外の色とで、同一色のパッチの個数が異なるプロファイル作成チャートを表す画像を、前記画像形成手段に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得するプロファイル作成チャート測色手段と、前記プロファイル作成チャート測色手段により取得された測色値に基づいて、前記画像形成手段の画像形成特性が反映されたプロファイルを作成するプロファイル作成手段と、を備える。
【0010】
この構成によれば、一度基本チャートを用いて苦手色を抽出すれば、以降は、苦手色と苦手色以外の色とで同一色のパッチの個数が異なるプロファイル作成チャートを用いて、プロファイルを作成することができる。このため、すべての色のパッチを一律の個数で配置したチャートを用いる場合と比較して、同等の精度のプロファイルを作成するために必要なパッチの個数を低減することが可能となる。したがって、プロファイルの作成に伴う色材等の消耗品の消費量を抑制することができる。
【0011】
第2の構成は、第1の構成のプロファイル作成装置であって、前記プロファイル作成チャートにおいて、前記苦手色のパッチは、同一色の複数のパッチがすべての行及び列に存在するように配置される。この構成によれば、苦手色の色が画像形成位置に応じて異なりやすい場合にも、すべての行及び列に存在するように配置された同一色の複数のパッチの測色値に基づき、プロファイルの作成に用いる苦手色の測色値を適切に求めることができる。
【0012】
第3の構成は、第1又は第2の構成のプロファイル作成装置であって、前記プロファイル作成チャートが複数のブロックに分割される場合、前記苦手色のパッチは、同一色のパッチが同一のブロック内に配置される。この構成によれば、同一色のパッチが異なるブロック内に配置される場合と比較して、測色値のばらつきを生じにくくすることができる。
【0013】
第4の構成は、第1〜第3の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記基本チャート測色手段は、前記画像形成手段に用いられる消耗品が交換されたタイミングで、前記基本チャートを表す画像を前記画像形成手段に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得するものであり、前記消耗品が交換されたタイミングとは異なるタイミングで前記プロファイルを作成する場合、前記プロファイル作成チャート測色手段は、前記基本チャート測色手段により前記消耗品が交換されたタイミングで取得された最新の測色値に基づいて抽出された前記苦手色に基づく前記プロファイル作成チャートを表す画像を、前記画像形成手段に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得する。この構成によれば、消耗品が交換されたタイミングで基本チャートを用いて苦手色を抽出すれば、次に消耗品が交換されるまでは、その苦手色に基づくプロファイル作成チャートを用いてプロファイルを作成することができる。このため、プロファイルの作成に伴う色材等の消耗品の消費量を抑制することができる。
【0014】
第5の構成は、第1〜第4の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記プロファイル作成チャートには、前記抽出手段により抽出された前記苦手色のパッチが配置される特殊チャートと、前記抽出手段により抽出された前記苦手色に関係なく共通の複数色のパッチが配置される一般チャートとが含まれ、前記プロファイル作成チャート測色手段は、前記特殊チャートを表す画像と、前記一般チャートを表す画像とを、前記画像形成手段に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得し、前記プロファイル作成手段は、前記苦手色については前記特殊チャートの測色値を用い、前記苦手色以外の色については前記一般チャートの測色値を用いて、前記プロファイルを作成する。この構成によれば、プロファイル作成チャートのうち、一般チャートには、苦手色に関係なく共通の複数色のパッチが配置され、苦手色に応じてパッチの配置順序等を変更する必要がないため、プロファイル作成チャートの作成に要する処理量を低減することができる。
【0015】
第6の構成は、第1〜第5の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記抽出手段は、前記基本チャート測色手段により取得された測色値のうち、同一色のパッチの測色値のばらつき度合いを示す指標値がしきい値以上の色を、前記苦手色として抽出し、単色の色材で表現されるパッチには、複数色の色材の混合で表現されるパッチよりも、高い前記しきい値を用いる。単色の色材で表現される色は、複数色の色材の混合によって表現される色と比較して、表現される色が変化しにくいため、苦手色として抽出されにくくすることで、抽出される苦手色の数を抑制することができる。
【0016】
第7の構成は、第1〜第6の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記画像形成手段は、主走査方向に沿って一列に設けられた複数の画像形成ユニットを備え、副走査方向に相対移動する画像形成媒体上に前記複数の画像形成ユニットを用いて画像を形成するものであり、前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、主走査方向に沿ったパッチの配置が、主走査方向に沿った前記画像形成ユニットの配置に対応づけられている。この構成によれば、単一のパッチが複数の画像形成ユニットの特性の影響を受けないようにすることが可能となる。
【0017】
第8の構成は、第1〜第6の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記画像形成手段は、感光体の表面でレーザ光を主走査方向に走査することにより形成される静電潜像に色材を付着させて画像を形成するレーザ方式のものであり、前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、主走査方向における両端に、パッチを配置しないスペースが設けられている。主走査方向の端部側は、主走査方向の中央部と比較して、レーザ光が感光体に到達するまでの距離が長くなり、画像形成結果に影響が出やすい。このため、主走査方向における両端にパッチを配置しないようにすることで、適切に形成されないパッチを生じにくくすることができる。
【0018】
第9の構成は、第1〜第6の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記画像形成手段は、複数色のインクに対応する複数のノズルを有する印刷ヘッドを主走査方向に往復走査しつつノズルからインクを吐出するインクジェット方式のものであり、前記印刷ヘッドは、ローラの回転がベルトを介して伝達されることにより往復走査するように構成され、前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、主走査方向に沿ったパッチの配置が、前記ローラの1回転分を単位とする前記印刷ヘッドの主走査方向における変位量に対応づけられている。この構成によれば、ローラの真円に対するずれにより、印刷ヘッドの変位量に生じる周期的なムラがパッチに与える影響を低減することができる。
【0019】
第10の構成は、第1〜第6の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記画像形成手段は、複数色のインクに対応する複数のノズルを有する印刷ヘッドを主走査方向に往復走査しつつノズルからインクを吐出するインクジェット方式のものであり、前記印刷ヘッドは、副走査方向に延びる溝部が主走査方向に複数並設された支持体上を搬送される印刷媒体に対してインクを吐出するように構成され、前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、主走査方向に沿ったパッチの配置が、主走査方向に沿った前記溝部の配置に対応づけられている。主走査方向に沿ったパッチの配置と溝部の配置との対応が不規則である場合、インクの吸収による印刷媒体のたわみ度合いが主走査方向においてばらつくことにより、パッチの形成に影響することが考えられる。この点、パッチの配置と溝部の配置とを対応させることで、主走査方向における印刷媒体のたわみ度合いのばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態のパーソナルコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、RGB値をそれぞれ9ステップで変動させた基本チャートの一例を示す図であり、(b)は、RGB値をそれぞれ17ステップで変動させた基本チャートの一例を示す図である。
【図3】(a)は、実施形態で用いられる基本チャートを示す図であり、(b)は、特殊チャートの一例を示す図である。
【図4】LEDプリンタにおける印刷実行部の模式図である。
【図5】レーザプリンタにおける印刷実行部の模式図である。
【図6】ライン型ヘッドインクジェットプリンタにおける印刷実行部の模式図である。
【図7】(a)は、シリアルヘッドインクジェットプリンタにおける印刷実行部の模式図であって印刷ヘッドの往復走査を示す図であり、(b)は、同模式図であって印刷ヘッドの駆動構造を示す図であり、(c)は、同模式図であってプラテンを示す図である。
【図8】(a)は、第1プロファイル作成処理のフローチャートであり、(b)は、第2プロファイル作成処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.全体構成]
図1は、実施形態のパーソナルコンピュータ1の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
パーソナルコンピュータ1は、汎用の情報処理装置であり、制御部11、操作部12、表示部13、記憶部14、USBインタフェース15及び通信部16を備えている。
制御部11は、パーソナルコンピュータ1の各部を統括制御するものであり、CPU111、ROM112及びRAM113を備えている。
【0023】
操作部12は、ユーザからの外部操作による指令を入力するための入力装置であり、本実施形態ではキーボードやポインティングデバイス(マウスやタッチパッド等)が用いられている。
【0024】
表示部13は、各種情報をユーザが視認可能な画像として表示するための出力装置であり、本実施形態では液晶ディスプレイが用いられている。
記憶部14は、記憶データの書換えが可能な不揮発性の記憶装置であり、本実施形態ではハードディスク装置が用いられている。そして、記憶部14には、オペレーティングシステム(OS)141や、後述するプロファイル作成処理をプリンタ2に実行させるためのプロファイル作成プログラム142などがインストールされている。
【0025】
USBインタフェース15は、USBケーブルを介したデータの送受信処理を行うためのインタフェースであり、パーソナルコンピュータ1は、USBケーブルを介して測色器17と通信可能な状態となっている。測色器17は、用紙に印刷された画像を測色し、デバイスに依存しない均等色空間(本実施形態ではCIELAB空間)の色値で表した測色値をパーソナルコンピュータ1へ送信する機能を有している。
【0026】
通信部16は、ネットワーク(例えばLAN:Local Area Network)を介したデータの送受信処理を行うためのインタフェースであり、パーソナルコンピュータ1は、ネットワークを介して複数種類のプリンタ2(図1では1台のプリンタ2を示す。)と通信可能な状態となっている。本実施形態のプリンタ2は、RGB値で表される画像データをパーソナルコンピュータ1から受信することにより、その画像データの表す画像を用紙等の印刷媒体に印刷する機能を有している。
【0027】
プリンタ2は、制御部21、操作部22、表示部23、記憶部24、印刷実行部25及び通信部26を備えている。制御部21は、プリンタ2の各部を統括制御するものであり、CPU211、ROM212及びRAM213を備えている。操作部22は、ユーザからの外部操作による指令を入力するための入力装置であり、各種操作ボタンを備えている。表示部23は、各種情報をユーザが視認可能な画像として表示するための出力装置であり、小型の液晶ディスプレイが用いられている。記憶部24は、記憶データの書換えが可能な不揮発性の記憶装置であり、本実施形態ではフラッシュメモリが用いられている。印刷実行部25は、複数色の色材(インクやトナー等)を用いて、画像データの表す画像を用紙等の印刷媒体上に形成(印刷)する。通信部26は、パーソナルコンピュータ1との間でデータ通信を行うためのインタフェースである。
【0028】
[2.処理の概要]
次に、パーソナルコンピュータ1で実行される処理の概要について説明する。本実施形態のパーソナルコンピュータ1は、プリンタ2(具体的には印刷実行部25)の画像形成特性が反映されたプロファイル(ICCプロファイル)を作成する。ここで、プロファイルの基本的な作成方法について説明する(次の(A1)〜(A3))。
【0029】
(A1)まず、複数色のパッチが配置された基本チャートを表す画像データ(RGB値で表される画像データ)を、パーソナルコンピュータ1からプリンタ2へ送信し、基本チャートを表す画像をプリンタ2に印刷させる。基本チャートは、例えば図2(a)に示すように、RGB値をそれぞれ9ステップ(例えば8ビット(0〜255)の場合、0,32,64,96,128,160,192,224,255)で変動させた9×9×9=729色のパッチが、27行×27列で配置されたものである。なお、9ステップは一例であり、例えば図2(b)に示すように17ステップとしてもよい。
【0030】
(A2)次に、プリンタ2により印刷された画像における各パッチを、測色器17で測色する。これにより、729色の各色についての測色値(本実施形態ではCIELAB値)が把握される。
【0031】
(A3)次に、各パッチのRGB値(画像データ上での色値)と測色値(CIELAB値)との関係に基づき、プリンタ2についてのプロファイルを作成する。
しかしながら、プリンタ2によって形成される画像の色は、機体特性などの要因により、例えば用紙における位置などに応じて色むらが生じる場合があり、パッチの色が色むらの影響によって適切に再現されないと、適切なプロファイルを作成することができない。例えば、プリンタ2において、画像における主走査方向の両端部が薄く印刷されるという特性があるとする。この場合、基本チャートにおいて主走査方向両端部の列に配置されるパッチの色が、主走査方向中央部の列に配置される場合と比較して、薄く印刷されてしまう。したがって、こうして印刷された各パッチの測色値に基づいて作成されたプロファイルを用いても、プリンタ2によって形成される画像の色の再現性が適切に調整されない。
【0032】
このため、本実施形態では、同一色のパッチが複数含まれ、同一色の複数のパッチがすべての行及び列に存在するように、各色のパッチが配置された基本チャートを用いる。具体的には、本実施形態で用いられる基本チャートは、図3(a)に示すように、用紙27枚分に相当する27個のブロックチャートからなる。各ブロックチャートは、RGB値をそれぞれ9ステップで変動させた9×9×9=729色のパッチが、27列×27行で配置されたものである。そして、本実施形態で用いられる基本チャートにおいては、729色の各色のパッチが、各ブロックチャートに1個ずつ(合計27個)含まれており、同一色の27個のパッチは、ブロックチャートにおけるすべての行及び列に1個ずつ存在するように配置されている。つまり、本実施形態で用いられる基本チャートは、前述した図2(a)に示す基本チャートの27個分に相当する。具体的には、本実施形態で用いられる基本チャートを構成する27個のブロックチャートは、図2(a)に示す基本チャートにおけるパッチの配置を、行方向及び列方向のそれぞれにおいて一定方向にパッチ1個分ずつ順にシフトしたもの(つまり、斜めにずらしたもの)である。
【0033】
このような基本チャートを用いることで、色むらに対するロバスト性が高まり、色むらの影響を最小限に抑えることが可能となる。ただし、プリンタ2の画像形成特性は、経時変化や消耗品の交換などによって徐々に変動するため、同一のプリンタ2についてプロファイルの作成(修正及び評価)を複数回行う必要がある。このため、本実施形態のようにパッチの個数が多い基本チャート(図3(a))を用いると、パッチの形成に使用される消耗品(色材、用紙等)の消費量や作業時間などが過大となってしまう。
【0034】
そこで、本実施形態では、基本チャートを表す画像をプリンタ2に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得し、取得した測色値に基づいて、プリンタ2(具体的には印刷実行部25)が苦手とする苦手色を抽出する。ここで、苦手色とは、色材を用いて形成される画像において色のばらつき度合いが大きくなりやすい色(色むらの生じやすい色)のことである。本実施形態では、各色のパッチのうち、同一色のパッチの測色値のばらつき度合いを示す指標値がしきい値以上のパッチの色を、苦手色として抽出する。なお、苦手色の抽出方法の詳細については後述する(下記(B1)〜(B3))。
【0035】
そして、抽出した苦手色と、苦手色以外の色とで、同一色のパッチの個数が異なるプロファイル作成チャートを作成する。そして、このプロファイル作成チャートを表す画像をプリンタ2に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得し、取得した測色値(具体的には、同一色のパッチの測色値を平均した平均測色値)に基づいてプロファイルを作成する。
【0036】
本実施形態では、プロファイル作成チャートとして、苦手色のパッチを配置した特殊チャートと、苦手色を含むすべての色(729色)のパッチを配置した一般チャートとを作成する。つまり、プロファイル作成チャートを表す画像として、特殊チャートを表す画像と、一般チャートを表す画像とを、プリンタ2に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得する。そして、苦手色については特殊チャートの測色値を用い、苦手色以外の色については一般チャートの測色値を用いて、プロファイルを作成する。
【0037】
特殊チャートは、測色値に基づいて抽出した苦手色のパッチを配置して作成される。具体的には、図3(b)に示すように、特殊チャートには、同一色(苦手色)のパッチが複数含まれ、同一色の複数のパッチがすべての行及び列に存在するように、各色のパッチが配置される。本実施形態では、用紙1枚分に相当する27列×27行のブロックチャートに27色のパッチが配置され、苦手色の色数が27色を超える場合には、特殊チャートは、複数枚の用紙に相当する複数個のブロックチャートに分割される。そして、同一色のパッチは、同一のブロックチャートにおいて斜め方向に(行方向及び列方向のそれぞれにおいて一定方向にパッチ1個分ずつ順にシフトした位置に)配列される。
【0038】
一般チャートは、用紙3枚分に相当する3個のブロックチャートからなる。各ブロックチャートは、RGB値をそれぞれ9ステップで変動させた9×9×9=729色のパッチが、27列×27行で配置されたものである。つまり、一般チャートは、本実施形態で用いられる基本チャート(図3(a))を構成する27個のブロックチャートのうち、3個のブロックチャートを抽出したものである。なお、これら3個のブロックチャートとしては、同一色の3個のパッチが行及び列のそれぞれにおいて均等な配置になるもの(配置に片寄りのないもの)が選択される。したがって、一般チャートは、苦手色に関係なく、複数色のパッチの配置順序等を共通にすることができる。
【0039】
[3.苦手色の抽出]
次に、苦手色の抽出方法について説明する。苦手色の抽出方法としては、例えば次の(B1)〜(B3)が挙げられる。なお、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0040】
(B1)同一色の27個のパッチについて測色値を平均した平均測色値を求め、各パッチの測色値について、平均測色値との色差である測色色差を算出する。そして、同一色の27個のパッチについて測色色差を平均した平均測色色差を算出し、平均測色色差が所定の平均色差判定値以上である場合に、その色を苦手色として抽出する。つまり、同一色のパッチの測色値のばらつき度合いを示す指標値として平均測色色差を算出し、平均測色色差がしきい値(平均色差判定値)以上の色を、苦手色として抽出する。このようにすれば、平均的にばらつき度合いの大きい色を、苦手色として抽出することができる。
【0041】
(B2)同一色の27個のパッチについて、上記(B1)と同様に測色色差を算出し、測色色差が所定の測色色差判定値以上であるパッチの数が一定数以上である場合に、その色を苦手色として抽出する。つまり、同一色のパッチの測色値のばらつき度合いを示す指標値として、測色色差が測色色差判定値以上であるパッチの数を算出し、そのパッチの数がしきい値(一定数)以上の色を、苦手色として抽出する。このようにすれば、平均測色色差ではしきい値を超えないものの、ばらつき度合いの大きいパッチの数が多い色を、苦手色として抽出することができる。
【0042】
(B3)同一色の27個のパッチについて、上記(B1)と同様に測色色差を算出し、測色色差が所定の異常色差判定値以上であるパッチが1つでも存在する場合に、その色を苦手色として抽出する。つまり、同一色のパッチの測色値のばらつき度合いを示す指標値として、測色色差が異常色差判定値以上であるパッチの数を算出し、そのパッチの数がしきい値(1つ)以上の色を、苦手色として抽出する。このようにすれば、ばらつきの非常に大きいパッチを含む色を、苦手色として抽出することができる。
【0043】
[4.プリンタの機種特性に応じたパッチの配置]
次に、プロファイルを作成する対象のプリンタ2の機種特性に応じたパッチの配置方法について説明する。プリンタ2の機種特性に応じたパッチの配置方法としては、例えば次の(C1)〜(C4)が挙げられる。
【0044】
(C1)LEDプリンタ
LEDプリンタとは、露光手段としてLEDを用いた電子写真方式のプリンタである。なお、電子写真方式のプリンタでは、一様に帯電された感光ドラムの表面が露光手段により露光されることで静電潜像が形成され、その静電潜像にトナーが付着することによってトナー画像が形成される。こうして形成されたトナー画像は、中間転写ベルトを有する構成の場合、感光ドラムから中間転写ベルトにいったん転写され、その後に中間転写ベルトから用紙へ転写されて、定着器により用紙に熱定着される。一方、中間転写ベルトを有しない構成の場合、感光ドラムに形成されたトナー像は、搬送ベルト上を搬送される用紙に直接転写され、定着器により用紙に熱定着される。
【0045】
プリンタ2がLEDプリンタである場合、印刷実行部25は、図4に示すように、配線基板31において主走査方向に沿って一列に設けられた複数のLEDアレイ32を備え、各LEDアレイ32から照射されたLED光が、ロッドレンズアレイ33を介して感光ドラム(図示せず)の表面に照射される。
【0046】
このため、基本チャート、一般チャート及び特殊チャートのそれぞれにおける主走査方向(横方向)に沿ったパッチの配置は、LEDアレイ32の配列ピッチdxを単位とした配置に設定される。例えば、1つのLEDアレイ32につき1列のパッチが対応づけられた配置とすれば、複数のLEDアレイ32の異なる特性が同一のパッチに影響を与えてしまうことが防止される。
【0047】
一方、基本チャート、一般チャート及び特殊チャートのそれぞれにおける副走査方向(縦方向)に沿ったパッチの配置は、感光ドラムの回転周期や、中間転写ベルト又は搬送ベルトを駆動する駆動ローラの回転周期を単位とした配置に設定される。例えば、所定数の行のパッチが1回転分の回転周期に対応づけられた配置とすれば、回転周期に応じて発生する色むらの影響を低減することができる。さらに、感光ドラムの径の膨らみ具合や凹み具合、中間転写ベルトや搬送ベルトのたわみなどを考慮した配置にしてもよい。なお、副走査方向に沿ったパッチの配置は、主走査方向に沿ったパッチの配置と一致するように(パッチが正方形に形成されるように)設定してもよい。
【0048】
(C2)レーザプリンタ
レーザプリンタとは、露光手段としてレーザ照射装置を用いた電子写真方式のプリンタである。
【0049】
プリンタ2がレーザプリンタである場合、印刷実行部25では、図5に示すように、ポリゴンミラー41によって反射されたレーザ光が、fθレンズ42を介して感光ドラム43の表面に照射される。レーザ光は、ポリゴンミラー41の回転によって感光ドラムの表面で主走査方向に走査される。このような構造では、主走査方向の端部側は、主走査方向の中央部と比較して、レーザ光がポリゴンミラー41から感光ドラムに到達するまでの距離が長くなり、画像形成結果に影響が出やすい。
【0050】
このため、基本チャート、一般チャート及び特殊チャートのそれぞれにおける主走査方向に沿ったパッチの配置は、主走査方向における両端に、パッチを配置しないスペースが設けられた配置に設定される。例えば、レーザプリンタ以外に用いられるパッチの配置において、主走査方向における両端の所定数の列のパッチが配置される領域を、パッチを配置しないスペースとする。このようにすることで、適切に形成されないパッチを生じにくくすることができる。なお、副走査方向に沿ったパッチの配置は、LEDプリンタの場合(上記(C1))と同様に設定することができる。
【0051】
(C3)ライン型ヘッドインクジェットプリンタ
ライン型ヘッドインクジェットプリンタとは、用紙における主走査方向全域をカバーする幅の印刷ヘッドからインクを吐出するインクジェットプリンタである。なお、インクジェットプリンタでは、用紙が副走査方向に搬送されつつ、複数色のインクに対応する複数のノズルを有する印刷ヘッドからインクが吐出されて、用紙上に画像が形成される。
【0052】
プリンタ2がライン型ヘッドインクジェットプリンタである場合、印刷実行部25は、図6に示すように、主走査方向に沿って一列に設けられた複数のヘッドユニット51を備える。
【0053】
このため、基本チャート、一般チャート及び特殊チャートのそれぞれにおける主走査方向に沿ったパッチの配置は、ヘッドユニット51の配列ピッチdxを単位とした配置に設定される。例えば、1つのヘッドユニット51につき1列のパッチが対応づけられた配置とすれば、複数のヘッドユニット51の異なる特性が同一のパッチに影響を与えてしまうことが防止される。
【0054】
一方、基本チャート、一般チャート及び特殊チャートのそれぞれにおける副走査方向に沿ったパッチの配置は、副走査方向へ用紙を搬送する搬送ローラの回転周期(搬送ローラの1回転分の副走査方向における用紙の変位量)を単位とした配置に設定される。例えば、所定数の行のパッチが1回転分の回転周期に対応づけられた配置とすれば、回転周期に応じて発生する色むらの影響を低減することができる。なお、副走査方向に沿ったパッチの配置は、主走査方向に沿ったパッチの配置と一致するように(パッチが正方形に形成されるように)設定してもよい。
【0055】
(C4)シリアルヘッドインクジェットプリンタ
シリアルヘッドインクジェットプリンタとは、印刷ヘッドを主走査方向に往復走査しつつノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタである。
【0056】
プリンタ2がシリアルヘッドインクジェットプリンタである場合、印刷実行部25は、図7(a)に示すように、主走査方向に往復走査しつつ複数色のインクを用紙Pへ吐出可能な印刷ヘッド61を備える。印刷ヘッド61における用紙Pとの対向面には、4色のインクを吐出するためのノズルが、副走査方向に沿った列状に配置されており、全体として4本のノズル列が形成されている。そして、印刷ヘッド61は、図7(b)に示すように、駆動ローラ62の回転が伝達ベルト63を介して伝達されることにより往復走査するように構成されている。また、図7(c)に示すように、用紙Pは、副走査方向に延びる複数本のリブ64によって複数の溝部65が主走査方向に複数並設された支持体(プラテン)上を搬送され、印刷ヘッド61は、支持体上を搬送される用紙Pに対してインクを吐出する。
【0057】
このため、基本チャート、一般チャート及び特殊チャートのそれぞれにおける主走査方向に沿ったパッチの配置は、駆動ローラ62の回転周期(駆動ローラ62の1回転分の主走査方向における印刷ヘッド61の変位量)を単位とした配置に設定される。例えば、所定数の列のパッチが1回転分の回転周期に対応づけられた配置とすれば、回転周期に応じて発生する色むらの影響を低減することができる。また、主走査方向に沿ったパッチの配置は、主走査方向における溝部65の配置ピッチを単位とした配置に設定してもよい。例えば、1つの溝部65につき所定数の列のパッチが対応づけられた配置とすれば、主走査方向における用紙Pのたわみ度合いのばらつきを抑えることができる。
【0058】
一方、基本チャート、一般チャート及び特殊チャートのそれぞれにおける副走査方向に沿ったパッチの配置は、印刷ヘッド61に形成されたノズル列の長さ(副走査方向における幅)を単位とした配置に設定される。例えば、所定数の行のパッチがノズル列の長さに対応づけられた配置とすれば、ノズル列の長さを周期に発生する色むらの影響を低減することができる。なお、副走査方向に沿ったパッチの配置は、ライン型ヘッドインクジェットプリンタの場合(上記(C3))と同様に設定してもよい。
【0059】
また、シリアルヘッドインクジェットプリンタでは、印刷ヘッド61の往走査でインクを吐出する場合と、復走査でインクを吐出する場合とでは、用紙P上でのインクの重なり順序が異なり、発色の相違が生じ得る。このため、少なくとも同一色のパッチについては、印刷ヘッド61の同一方向の走査で形成するようにしてもよい。
【0060】
[5.具体的処理手順]
次に、前述した処理を実現するためにパーソナルコンピュータ1の制御部11(具体的にはCPU111)が実行する具体的処理手順について説明する。本実施形態では、制御部11は、2種類のプロファイル作成処理(第1プロファイル作成処理及び第2プロファイル作成処理)を実行する。
【0061】
第1プロファイル作成処理の処理手順の概要は、次の(D1)〜(D6)のとおりである。
(D1)基本チャートを表す画像の画像データを作成する。
【0062】
(D2)基本チャートを表す画像をプリンタ2に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得する。
(D3)取得した測色値に基づいて苦手色を抽出する。
【0063】
(D4)プロファイル作成チャート(一般チャート及び特殊チャート)を表す画像の画像データを作成する。
(D5)プロファイル作成チャートを表す画像をプリンタ2に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得する。
【0064】
(D6)取得した測色値に基づいてプロファイルを作成する。
一方、第2プロファイル作成処理の処理手順は、上記(D4)〜(D6)のとおりであり、第1プロファイル作成処理のうち、上記(D1)〜(D3)の処理を省略したものである。つまり、第2プロファイル作成処理では、最後に行われた第1プロファイル作成処理で取得された基本チャートの各パッチの測色値(消耗品が交換されたタイミングで取得された最新の測色値)に基づく苦手色をそのまま利用することで、苦手色を抽出するための処理を省略する。
【0065】
そして、本実施形態では、プリンタ2の印刷実行部25で用いられる色材等の消耗品が交換されたタイミング(具体的には、消耗品を交換したことの通知をプリンタ2から受信したタイミング)で、第1プロファイル作成処理を実行する。一方、それ以外のタイミングでプロファイルを作成する場合には、第2プロファイル作成処理を実行する。なお、色材等の消耗品が交換されたタイミング以外においても、例外的にユーザからの要求に応じて第1プロファイル作成処理を行うようにしてもよい。
【0066】
図8(a)は、制御部11が実行する第1プロファイル作成処理のフローチャートである。
制御部11は、まずS101で、プロファイルを作成する対象のプリンタ2の機種特性が既知であるか否かを判定する。ここでいう機種特性とは、上記(A)〜(D)で説明したように、プリンタ2の種類(LEDプリンタ、レーザプリンタ、ライン型ヘッドインクジェットプリンタ、シリアルヘッドインクジェットプリンタ)や、パッチの配置を設定するために必要な情報(例えばLEDアレイ32の配列ピッチdx等)のことである。
【0067】
このS101で、プリンタ2の機種特性が既知であると判定した場合には、S102へ移行し、機種特性に応じてパッチが配置された基本チャートを表す画像の画像データを作成した後、S104へ移行する。一方、S101で、プリンタ2の機種特性が既知でないと判定した場合には、S103へ移行し、機種特性によらない所定のデフォルト設定でパッチが配置された基本チャートを表す画像の画像データを作成した後、S104へ移行する。なお、S102及びS103で作成される基本チャートは、前述したように、729色のパッチが27列×27行で配置されたブロックチャートを27個分(用紙27枚分)備えるものである(図3(a))。
【0068】
そして、制御部11は、S104で、プロファイルを作成する対象のプリンタ2が内部センサを備えているか否かを判定する。ここで、内部センサとは、LEDプリンタ又はレーザプリンタにおいて、中間転写ベルト上又は用紙を搬送していない状態の搬送ベルト上に形成した画像を測色可能なセンサのことである。つまり、プリンタ2が内部センサを備えている場合には、測色器17を用いることなく、パッチの測色が可能となる。
【0069】
このS104で、プリンタ2が内部センサを備えていると判定した場合には、S105へ移行する。そして、プリンタ2に対し、基本チャートを表す画像の画像データを送信し、プリンタ2内部での(中間転写ベルト上又は搬送ベルト上への)基本チャートの形成及び内部センサによる測色を指示する。その後、プリンタ2から測色値を取得して、S107へ移行する。
【0070】
一方、制御部11は、S104で、プリンタ2が内部センサを備えていないと判定した場合には、S106へ移行する。そして、プリンタ2に対し、基本チャートを表す画像の画像データを送信し、基本チャートの用紙への印刷を指示する。さらに、ユーザに対し、測色器17を用いた印刷画像の測色を促す。その後、測色値を測色器17から取得して、S107へ移行する。なお、ユーザに対して測色を促すための処理としては、例えば、表示部13にメッセージ等を表示する処理が挙げられる。
【0071】
そして、制御部11は、S107で、測色値に基づいて、苦手色を抽出する。なお、苦手色の抽出方法は前述したとおりである。
続いて、制御部11は、S108で、第2プロファイル作成処理を実行する。
【0072】
図8(b)は、制御部11が実行する第2プロファイル作成処理のフローチャートである。
制御部11は、まずS201で、前述したS101と同様に、プロファイルを作成する対象のプリンタ2の機種特性が既知であるか否かを判定する。
【0073】
このS201で、プリンタ2の機種特性が既知であると判定した場合には、S202へ移行し、機種特性に応じてパッチが配置された一般チャート及び特殊チャートを表す画像の画像データを作成した後、S204へ移行する。一方、S201で、プリンタ2の機種特性が既知でないと判定した場合には、S203へ移行し、機種特性によらない所定のデフォルト設定でパッチが配置された一般チャート及び特殊チャートを表す画像の画像データを作成した後、S204へ移行する。なお、S202及びS203で作成される一般チャートは、前述したように、基本チャート(図3(a))を構成する27個のブロックチャートのうち、3個のブロックチャートを抽出したものである。また、S202及びS203で作成される特殊チャートは、前述したように、苦手色のパッチから構成され、同一色の複数のパッチがすべての行及び列に存在するように、各色のパッチが配置されたものである(図3(b))。
【0074】
そして、制御部11は、前述したS104と同様に、S204で、プロファイルを作成する対象のプリンタ2が内部センサを備えているか否かを判定する。
このS204で、プリンタ2が内部センサを備えていると判定した場合には、S205へ移行する。そして、プリンタ2に対し、一般チャート及び特殊チャートを表す画像の画像データを送信し、プリンタ2内部での(中間転写ベルト上又は搬送ベルト上への)一般チャート及び特殊チャートの形成及び内部センサによる測色を指示する。その後、プリンタ2から測色値を取得して、S207へ移行する。
【0075】
一方、制御部11は、S204で、プリンタ2が内部センサを備えていないと判定した場合には、S206へ移行する。そして、プリンタ2に対し、一般チャート及び特殊チャートを表す画像の画像データを送信し、一般チャート及び特殊チャートの用紙への印刷を指示する。さらに、ユーザに対し、測色器17を用いた印刷画像の測色を促す。その後、測色値を測色器17から取得して、S207へ移行する。
【0076】
そして、制御部11は、S207で、各パッチの画像データ上での色値と、測色値との関係に基づき、プリンタ2についてのプロファイルを作成する。具体的には、一般チャートにおける各パッチの測色値について、同一色のパッチ(3個)の測色値を平均した平均測色値を求める。また、特殊チャートにおける各パッチの測色値についても、同一色のパッチ(27個)の測色値を平均した平均測色値を求める。そして、苦手色については、特殊チャートから求めた平均測色値を用い、苦手色以外の色については、一般チャートから求めた平均測色値を用いて、プロファイルを作成する。
【0077】
[6.効果]
以上説明したように、本実施形態では、消耗品が交換されたタイミングで基本チャートを用いて苦手色を抽出し、次に消耗品が交換されるまでは、苦手色と苦手色以外の色とで同一色のパッチの個数が異なる(苦手色は27個、苦手色以外は3個の)プロファイル作成チャートを用いて、プロファイルを作成する。このため、すべての色のパッチを一律の個数(27個)で配置した基本チャートを用いる場合と同等の精度でプロファイルの作成を可能としつつ、必要なパッチの個数を低減することができる。したがって、プロファイルの作成に伴う消耗品(色材、用紙等)の消費量や作業時間などを大幅に抑制することができる。
【0078】
特に、特殊チャートにおいて、苦手色のパッチは、同一色の複数のパッチがすべての行及び列に存在するように配置されるため、プロファイルの作成に用いる苦手色の測色値を適切に求めることができる。しかも、特殊チャートが複数枚の用紙に相当する複数個のブロックチャートに分割される場合にも、同一色のパッチは同一のブロックチャートに配置されるため、同一色のパッチが異なるブロックチャートに配置される場合と比較して、測色値のばらつきを生じにくくすることができる。
【0079】
また、プロファイル作成チャートのうち、一般チャートを構成するパッチは、抽出される苦手色に関係なく共通であり、苦手色に応じてパッチの配置順序等を変更する必要がない。しかも、一般チャートは、基本チャートの一部を流用したものである。したがって、苦手色と苦手色以外の色とを混在させたプロファイル作成チャートを作成する場合と比較して、プロファイル作成チャートの作成に要する処理量を低減することができる。
【0080】
また、プリンタ2がLEDプリンタ又はライン型ヘッドインクジェットプリンタである場合に、主走査方向に沿ったパッチの配置を、1つのLEDアレイ32又はヘッドユニット51につき、1列のパッチが対応づけられた配置とすることができる。このようにすることで、単一のパッチが複数のLEDアレイ32又はヘッドユニット51の特性の影響を受けないようにすることができる。
【0081】
また、プリンタ2がレーザプリンタである場合に、主走査方向における両端に、パッチを配置しないスペースを設けることができる。このようにすることで、適切に形成されないパッチを生じにくくすることができる。
【0082】
また、プリンタ2がシリアルヘッドインクジェットプリンタである場合に、主走査方向に沿ったパッチの配置を、駆動ローラ62の回転周期を単位とした配置に設定することができる。このようにすることで、ローラの真円に対するずれなどにより、印刷ヘッドの変位量に生じる周期的なムラがパッチに与える影響を低減することができる。
【0083】
一方、主走査方向に沿ったパッチの配置を、溝部65の配置ピッチを単位とした配置に設定することもできる。主走査方向に沿ったパッチの配置と溝部65の配置との対応が不規則である場合、インクの吸収による用紙Pのたわみ度合いが主走査方向においてばらつくことにより、パッチの形成に影響することが考えられる。この点、パッチの配置と溝部65の配置とを対応させることで、主走査方向における用紙Pのたわみ度合いのばらつきを抑えることができる。
【0084】
なお、本実施形態では、S101〜S106が基本チャート測色手段の処理に相当し、S107が抽出手段の処理に相当し、S201〜S206がプロファイル作成チャート測色手段の処理に相当し、S207がプロファイル作成手段の処理に相当する。また、プリンタ2(具体的には印刷実行部25)が画像形成手段に相当し、LEDアレイ32及びヘッドユニット51が画像形成ユニットに相当し、感光ドラム、中間転写ベルト、搬送ベルト又は用紙が画像形成媒体に相当する。
【0085】
[7.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0086】
(1)上記実施形態では、同一色のパッチの測色値のばらつき度合いを示す指標値がしきい値以上のパッチの色を、苦手色として抽出する例を示したが(上記(B1)〜(B3))、パッチの色に応じてこのしきい値を設定してもよい。
【0087】
例えば、色域の外枠となる色など、プロファイルの作成に影響の大きい色については、しきい値を低く(つまり、苦手色として抽出されやすく)設定してもよい。このように設定すれば、プロファイルを精度よく作成することができる。逆に、単色の色材で形成される色や淡い色など、色むらが生じにくい色については、しきい値を高く(つまり、苦手色として抽出されにくく)設定してもよい。このようにすれば、抽出される苦手色の数を抑制することができる。
【0088】
また、抽出される苦手色の数が多くなりすぎる場合には、しきい値を全体的に高く設定し、抽出される苦手色の数が少なくなりすぎる場合には、しきい値を全体的に低く設定してもよい。
【0089】
また、上記(B3)では、測色色差が所定の異常色差判定値以上であるパッチが1つでも存在する場合に、その色を苦手色として抽出する例を示したが、このようなパッチは除外して処理を行うようにしてもよい。
【0090】
また、黒色のパッチについては、無条件で苦手色として抽出してもよい。黒色の測色値は、プロファイルの作成に与える影響が大きいからである。なお、白色も黒色同様、プロファイルの作成に与える影響が大きい色であるが、白色は用紙の色で表現され、色材による色むらは生じないため、苦手色として抽出しない。
【0091】
また、同一色の27個のパッチについて、各パッチの測色値が、XYZ表色系においてマクアダムの楕円(標準偏差楕円)の内部に存在するか否かを判定し、内部に存在しないパッチの数が一定数以上の色を苦手色として抽出してもよい。
【0092】
(2)上記実施形態では、特殊チャートにおいて、同一色のパッチが同一のブロックチャートにおいて斜め方向に配列される例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、同一色のパッチが、同一のブロックチャートにおけるすべての行及び列に存在するという条件で、ランダムに配置してもよい。また、LEDプリンタやレーザプリンタでは、濃い色(例えば4色のトナーを重ね合わせた色)の画像が副走査方向(縦方向)に連続すると、トナーの供給が遅れて色が薄くなる現象が発生し得るため、濃い色のパッチが縦方向に連続して配置されないように、パッチの配置を制限してもよい。
【0093】
(3)上記実施形態では、プロファイル作成チャートを、一般チャート及び特殊チャートに分けて作成する例を示したが、これに代えて、苦手色と苦手色以外の色とを混在させたプロファイル作成チャートを作成してもよい。
【0094】
(4)上記実施形態では、プロファイルを作成する対象のプリンタ2の機種特性に応じて、基本チャート、一般チャート及び特殊チャートのそれぞれにおけるパッチの配置を変更するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、基本チャート、一般チャート及び特殊チャートのうち一部のチャートについてパッチの配置を変更するようにしてもよい。
【0095】
(5)上記実施形態では、プロファイル作成処理(第1プロファイル作成処理及び第2プロファイル作成処理)がパーソナルコンピュータ1側で実行される例を示したが、これに限定されるものではなく、プリンタ2側で(つまりプリンタ単体で)プロファイル作成処理を実行してもよい。
【0096】
(6)本明細書には、前述した第1〜第10の構成以外にも、例えば次の構成が開示されている。
第11の構成は、第1〜第6の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記画像形成手段は、複数色のインクに対応する複数のノズルを有する印刷ヘッドを主走査方向に往復走査しつつノズルからインクを吐出するインクジェット方式のものであり、前記印刷ヘッドには、前記複数のノズルが副走査方向に沿って列状に配置され、前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、副走査方向に沿ったパッチの配置が、前記ノズルの列の長さに対応づけられている。
【0097】
第12の構成は、第1〜第6の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記画像形成手段は、複数色のインクに対応する複数のノズルを有する印刷ヘッドを主走査方向に往復走査しつつノズルからインクを吐出するインクジェット方式のものであり、前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、同一色のパッチが、前記印刷ヘッドの同一方向の走査で形成される。
【0098】
第13の構成は、第1〜第6の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記画像形成手段は、ローラの回転により副走査方向に相対移動する画像形成媒体上に画像を形成するものであり、前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、副走査方向に沿ったパッチの配置が、前記ローラの1回転分を単位とする前記画像形成媒体の副走査方向における変位量に対応づけられている。
【0099】
第14の構成は、第1〜第13の構成のいずれか1つのプロファイル作成装置であって、前記プロファイル作成手段は、前記プロファイル作成チャートに同一色のパッチが複数存在する場合には、測色値の平均値を用いて前記プロファイルを作成する。
【符号の説明】
【0100】
1…パーソナルコンピュータ、2…プリンタ、11,21…制御部、12,22…操作部、13,23…表示部、14,24…記憶部、15…USBインタフェース、16,26…通信部、25…印刷実行部、111,211…CPU、112,212…ROM、113,213…RAM、141…OS、142…プロファイル作成プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一色の複数のパッチがすべての行及び列に存在するように複数色のパッチが配置された基本チャートを表す画像を、画像形成手段に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得する基本チャート測色手段と、
前記基本チャート測色手段により取得された測色値に基づいて苦手色を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された前記苦手色と、前記苦手色以外の色とで、同一色のパッチの個数が異なるプロファイル作成チャートを表す画像を、前記画像形成手段に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得するプロファイル作成チャート測色手段と、
前記プロファイル作成チャート測色手段により取得された測色値に基づいて、前記画像形成手段の画像形成特性が反映されたプロファイルを作成するプロファイル作成手段と、
を備えることを特徴とするプロファイル作成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプロファイル作成装置であって、
前記プロファイル作成チャートにおいて、前記苦手色のパッチは、同一色の複数のパッチがすべての行及び列に存在するように配置されること
を特徴とするプロファイル作成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプロファイル作成装置であって、
前記プロファイル作成チャートが複数のブロックに分割される場合、前記苦手色のパッチは、同一色のパッチが同一のブロック内に配置されること
を特徴とするプロファイル作成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のプロファイル作成装置であって、
前記基本チャート測色手段は、前記画像形成手段に用いられる消耗品が交換されたタイミングで、前記基本チャートを表す画像を前記画像形成手段に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得するものであり、
前記消耗品が交換されたタイミングとは異なるタイミングで前記プロファイルを作成する場合、前記プロファイル作成チャート測色手段は、前記基本チャート測色手段により前記消耗品が交換されたタイミングで取得された最新の測色値に基づいて抽出された前記苦手色に基づく前記プロファイル作成チャートを表す画像を、前記画像形成手段に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得すること
を特徴とするプロファイル作成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のプロファイル作成装置であって、
前記プロファイル作成チャートには、前記抽出手段により抽出された前記苦手色のパッチが配置される特殊チャートと、前記抽出手段により抽出された前記苦手色に関係なく共通の複数色のパッチが配置される一般チャートとが含まれ、
前記プロファイル作成チャート測色手段は、前記特殊チャートを表す画像と、前記一般チャートを表す画像とを、前記画像形成手段に形成させ、形成された画像における各パッチの測色値を取得し、
前記プロファイル作成手段は、前記苦手色については前記特殊チャートの測色値を用い、前記苦手色以外の色については前記一般チャートの測色値を用いて、前記プロファイルを作成すること
を特徴とするプロファイル作成装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のプロファイル作成装置であって、
前記抽出手段は、前記基本チャート測色手段により取得された測色値のうち、同一色のパッチの測色値のばらつき度合いを示す指標値がしきい値以上の色を、前記苦手色として抽出し、
単色の色材で表現されるパッチには、複数色の色材の混合で表現されるパッチよりも、高い前記しきい値を用いること
を特徴とするプロファイル作成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のプロファイル作成装置であって、
前記画像形成手段は、主走査方向に沿って一列に設けられた複数の画像形成ユニットを備え、副走査方向に相対移動する画像形成媒体上に前記複数の画像形成ユニットを用いて画像を形成するものであり、
前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、主走査方向に沿ったパッチの配置が、主走査方向に沿った前記画像形成ユニットの配置に対応づけられていること
を特徴とするプロファイル作成装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のプロファイル作成装置であって、
前記画像形成手段は、感光体の表面でレーザ光を主走査方向に走査することにより形成される静電潜像に色材を付着させて画像を形成するレーザ方式のものであり、
前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、主走査方向における両端に、パッチを配置しないスペースが設けられていること
を特徴とするプロファイル作成装置。
【請求項9】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のプロファイル作成装置であって、
前記画像形成手段は、複数色のインクに対応する複数のノズルを有する印刷ヘッドを主走査方向に往復走査しつつノズルからインクを吐出するインクジェット方式のものであり、
前記印刷ヘッドは、ローラの回転がベルトを介して伝達されることにより往復走査するように構成され、
前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、主走査方向に沿ったパッチの配置が、前記ローラの1回転分を単位とする前記印刷ヘッドの主走査方向における変位量に対応づけられていること
を特徴とするプロファイル作成装置。
【請求項10】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のプロファイル作成装置であって、
前記画像形成手段は、複数色のインクに対応する複数のノズルを有する印刷ヘッドを主走査方向に往復走査しつつノズルからインクを吐出するインクジェット方式のものであり、
前記印刷ヘッドは、副走査方向に延びる溝部が主走査方向に複数並設された支持体上を搬送される印刷媒体に対してインクを吐出するように構成され、
前記基本チャート及び前記プロファイル作成チャートのうち少なくとも一方は、主走査方向に沿ったパッチの配置が、主走査方向に沿った前記溝部の配置に対応づけられていること
を特徴とするプロファイル作成装置。

【図1】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−178714(P2012−178714A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40541(P2011−40541)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】