説明

ヘキサキス(アミノ)ジホスファゼニウム、テトラキス(アミノ)−ホスホニウムおよびポリアミノホスファゼニウム塩を含むホスファゼニウム塩混合物

本発明は、5〜99.5重量%の式(I)の化合物、95〜0.5重量%の式(II)の化合物、および最大10重量%の一般式(IIIa)の化合物の一種
【化1】


(式中、A〜A32は、同一であるか、または異なるものであって、それぞれ、互いに独立して、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキルまたはアルケニル、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、6〜12個の炭素原子を有するアリール、7〜12個の炭素原子を有するアラルキルであるか、またはA−A、A−A、A−A、等〜A31〜A32は、同一であるか、または異なるものであって、それぞれ、互いに独立して、直接あるいはOまたはN−A33を経由して互いに結合し、3〜7環構成員を有する環を形成し、A33は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、Xおよび/またはXおよび/またはXは、互いに独立して、式(IIIb)の基であるか、またはXおよび/またはXおよび/またはXは、同様に、それぞれ直鎖状または分岐鎖状の、1〜12個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、6〜12個の炭素原子を有するアリール、7〜12個の炭素原子を有するアラルキルであるか、または同等に結合した窒素原子上に位置する基、例えばAおよびA、AおよびA、AおよびA、等〜A31およびA32は、同一であるか、または異なるものであって、それぞれ、互いに独立して、直接あるいはOまたはN−A33を経由して互いに結合し、3〜7環構成員を有する環を形成し、A33は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、Bは、1価の有機または無機酸基または多価酸基の等価物である)
を含む混合物に関する。この混合物は、相間移動反応、求核置換反応またはハロゲン−フッ素交換反応用の触媒および助触媒としてすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノホスファゼニウム塩混合物、それらの製造方法、およびそれらの、相間移動反応、求核置換反応またはハロゲン−フッ素交換反応用の触媒としての使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アミノホスホニウム塩およびポリアミノホスファゼニウム塩は、例えばUS−A−5,824,827、EP−A−1070723、EP−A−1070724およびEP−A−1266904各明細書に記載されているように、ハロゲン交換反応(ハレックス反応)によるフッ素含有化合物の製造における触媒として使用される。
【0003】
US−A−5,824,827およびEP−A−1070723各明細書に記載されているアミノホスホニウム塩およびこれらを含む混合物(EP−A−1070724明細書)は、ハレックス反応で良い結果を与えるが、ポリアミノホスファゼニウム塩よりは活性が低い触媒である。しかし、今日まで知られているポリアミノホスファゼニウム化合物の合成は、非常に複雑であり、欠点を伴うので、それらの工業的使用はこれまで限られている。
【0004】
R. Schwesinger ら、 Liebigs Ann. 1996, 1055-1081によれば、純粋なヘキサキス(アミノ)ジホスファゼニウム塩の製造および単離は、例えば先ず五塩化リンを第2級アミンと反応させ、クロロトリスアミノホスホニウム塩を製造し、次いでこれをトリス(アミノ)ホスフォルイミン(phosphorimine)と反応させてヘキサキス(アミノ)ジホスファゼニウムクロライドを形成することにより行う。ホスフォルイミンは、クロロトリスアミノホスホニウム塩をアンモニアと反応させ、続いてメタノール中でカリウムメトキシドで処理することにより、前もって製造しなければならない。
【0005】
R. Schwesinger et al.により記載されている方法よりも簡単な変形は、ヘキサキス(ジメチルアミノ)ジホスファゼニウムテトラフルオロボレートの合成(Angew. Chem. 103 (1991), 1376およびAngew. Chem. 104 (1992), 864)に関し、五塩化リンを塩化アンモニウムと反応させ、続いて生成物をジメチルアミンおよびテトラフルオロホウ酸ナトリウムとニトロメタン(CHNO)またはオキシ塩化リン(POCl)中で反応させることを含んでなる。
【0006】
より高級な同族体ポリアミノホスファゼニウム塩は、多工程合成(R. Schwesingerら、Liebigs Ann. 1996, 1055-1081参照)で、例えば先ずイミノトリスアミノホスフォランを五塩化リンから第2級アミンとの反応により合成し、アンモニアを加え、続いてメタノール中でカリウムメトキシドで処理し、次いでこれを、前もって対応するアルキルアンモニウムクロライドから、PClとPClの混合物との反応により製造しておいた三塩化アルキルイミノリンと反応させることにより、製造する。
【0007】
これらの合成方法には一連の欠点がある。すなわちニトロメタンを溶剤として使用する場合、爆発性のニトロメタン/アミン混合物が合成中に形成されるので、安全性の理由から、アミノホスファゼニウム塩合成用の溶剤としてニトロメタンは除外される。ヘキサキス(ジメチルアミノ)ジホスファゼニウムテトラフルオロボレート合成用の溶剤としてオキシ塩化リン(POCl)を使用することには、これがジメチルアミンと反応し、好ましくない発癌性副生成物としてヘキサメチルホスフォルアミド(HMPT)を形成するという欠点がある。さらに、POClを溶剤として工業的規模で使用することは、その毒性(区分T+)のために大きく制限され、さらに職業衛生上の対策および工業的設備の設計における対策がさらに必要になる。
【0008】
アミノホスファゼニウム合成に不利を招く上記の制限および欠点を考えると、ポリアミノホスファゼニウム塩またはこれらの物質を含む混合物を製造するための簡単で安価な方法であって、毒性溶剤および出発材料を絶対に必要なものに限り、発癌性副生成物の形成を可能な限り回避し、純粋なポリアミノホスファゼニウム塩の活性に匹敵する触媒活性を有するハレックス反応用の触媒をもたらし、個々の成分の複雑な分離を不必要にする方法が強く求められている。
【発明の開示】
【0009】
この目的は、5〜99.5重量%、特に10〜95重量%、好ましくは20〜80重量%の式(I)の化合物、95〜0.5重量%、特に90〜5重量%、好ましくは80〜20重量%の式(II)の化合物、および10重量%以下、好ましくは最大8重量%、特に好ましくは5重量%以下の式(IIIa)の一種以上の化合物:
【化1】

(式中、A〜A32は、同一であるか、または異なるものであって、それぞれ、互いに独立して、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキルまたはアルケニル、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、6〜12個の炭素原子を有するアリール、7〜12個の炭素原子を有するアラルキルであるか、またはA−A、A−A、A−A、等〜A31−A32は、同一であるか、または異なるものであって、それぞれ、互いに独立して、直接あるいはOまたはN−A33を経由して互いに結合し、3〜7個の環原子を有する環を形成し、A33は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、Xおよび/またはXおよび/またはXは、互いに独立して、式(IIIb)の基であるか、またはXおよび/またはXおよび/またはXは、同様に、それぞれ1〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキルまたはアルケニル、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、6〜12個の炭素原子を有するアリール、7〜12個の炭素原子を有するアラルキルであるか、または同等に結合した窒素原子上に位置する基、例えばAおよびA、AおよびA、AおよびA、等〜A31およびA32は、同一であるか、または異なるものであって、それぞれ、互いに独立して、直接あるいはOまたはN−A33を経由して互いに結合し、3〜7個の環原子を有する環を形成し、A33は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、Bは、1価の有機または無機酸基または多価酸基の等価物である)
を含んでなるアミノホスファゼニウム混合物を製造する方法であって、
五ハロゲン化リンを先ずアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムと不活性溶剤中で、ハロゲン化水素を除去しながら反応させ、続いて式HNA、HNA、等〜HNA3132(式中、A〜A32は上記の基である)の一種以上のアミンと反応させ、得られた反応生成物を、水性苛性アルカリを使用してpH7〜15に合わせ、有機相および水相を分離し、有機相を蒸留により濃縮するか、または溶剤を完全に除去することにより、反応生成物を固体として単離する、方法により達成される。
【0010】
本発明はさらに、それらの混合物自体を提供し、それらの混合物の、相間移動反応、求核置換反応またはハロゲン−フッ素交換反応用の触媒および助触媒としての使用を提供するものである。
【0011】
本発明の方法では、五ハロゲン化リン(PHal)を第一反応工程で先ずアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムと、PHalとアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムの比0.5:1〜5:1で、反応させる。この反応は、温度25℃〜200℃で、不活性溶剤中で、ハロゲン化水素を除去しながら行う。得られた反応混合物を、続いて第二反応工程で、式HNA、HNA、等〜HNA3132(式中、A〜A32は上記の基である)の一種以上のアミンと、使用する五ハロゲン化リンに対して6:1〜50:1の比で、−20〜200℃で反応させ、得られた反応生成物を、水性苛性アルカリを使用し、0〜80℃でpH7〜15に合わせ、有機相および水相を分離し、有機相を蒸留により濃縮する。得られた生成物は溶液として直接使用するか、または溶剤を完全に留別することにより、固体として単離する。所望により、反応生成物の組成は、個々の成分に関して、再結晶により変えることができる。
【0012】
五ハロゲン化リンとアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムとの反応で、様々な中間体の分散物が一次反応生成物として形成され、アミンは通常これに加える。逆の添加順序も可能である。
【0013】
五ハロゲン化リンとアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムの比を選択することにより、個々のホスファゼン構造の比を決定することができる。この比を低くすると、生成物混合物中に式IIIaの成分の比率が増加する。高い温度は、より高度に濃縮されたホスファゼニウム化合物の形成に好ましく、短い反応時間は、不完全反応、およびその後の工程における副生成物の形成につながる。
【0014】
第一反応工程で得られる中間体とアミンとの反応では、反応熱を、反応混合物を反応温度に加熱するために利用する。反応を完了させるために、反応混合物をそれぞれの最終温度で、ある一定時間さらに攪拌する。
【0015】
第二反応工程が完了した後、反応生成物を水性苛性アルカリで、0〜80℃で処理する。苛性アルカリは、処理中のpHが7〜15に維持されるような量で使用する。この水性苛性アルカリ処理の結果、反応生成物の加水分解可能な成分が放出され、過剰に使用するアミンが、反応中に形成されるアミンのヒドロハライドから放出される。回収されたアミンは反応に再使用することができる。
【0016】
所望の反応生成物、溶剤、過剰のアミンおよびアミンのヒドロハライドから放出されたアミンを含んでなる有機相から水相を分離する。続いて有機相を、例えば減圧蒸留により濃縮し、残留物を直接使用するか、または溶剤を完全に留別し、生成物を固体として単離する。
【0017】
第二の溶剤を使用して沈殿させ、沈殿物を濾過することにより、蒸留により溶剤を完全に除去して得られる生成物と比較して、異なった生成物組成を有する生成物が得られる。沈殿用の溶剤は、500〜5重量%の量で使用する。所望により、混合物中の個々の成分I、IIおよびIIIaの比は、反応生成物を他の溶剤から再結晶させることにより、変えることができる。
【0018】
Schwesinger et al.が、POClから得られるヘキサクロロジホスファゼニウム塩の、あまりかさの大きくないジメチルアミンだけとの反応を開示していることを考えると、この反応が、かさの大きなアミン、例えばピペリジンおよびピロリジン、の場合にも、高い選択性および優れた収率で可能である(例1〜3参照)ことは、当業者には驚くべきことであろう。
【0019】
文献中に記載されている合成を考えると、得られた混合物が限定された組成を有する、すなわちこれらの混合物が、圧倒的に式IおよびIIの2種類の化合物を含んでなることも注目すべきである。当業者は、この記載する製造から数多くの生成物が形成されると予想したであろう。
【0020】
同様に驚くべきことで、予期せぬことに、得られた混合物は、ハレックス反応における触媒または助触媒として直接使用でき、例えばUS−A−5,824,827明細書で使用されたアミノホスホニウム塩およびDE−A−10232811.0明細書で使用された純粋なポリアミノホスファゼニウム塩に匹敵し、多くの場合、それより高くさえある活性を示す。
【0021】
高温における化学反応および長い反応時間により得られる反応生成物は、通常、多くの副生成物を含んでなり、複雑な精製をさらに行わない限り、触媒として使用できない。当業者には公知のように、触媒毒は、非常に少ない量でも作用する。触媒としての混合物の活性が場合により増加する結果、ハレックス反応における反応温度を下げることができ、従って、より高い選択性および収率を達成することができる。
【0022】
五ハロゲン化リンとアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムの反応は、25℃〜200℃、好ましくは50〜150℃で、反応中に形成されるハロゲン化水素を除去しながら行う。使用するハロゲン化物は、好ましくは五塩化リン、五臭化リン、塩化アンモニウムおよび臭化アンモニウムである。五ハロゲン化リンを、先行する反応工程で、対応する三ハロゲン化リンおよびハロゲンから製造することも同様に可能である。多くの場合、五ハロゲン化リンはアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムと、0.5:1〜5:1、特に1:1〜4:1、好ましくは1.5:1〜3:1の比で反応させる。
【0023】
不活性溶剤としては、オキシ塩化リン(POCl)、脂肪族、環状脂肪族または芳香族炭化水素または一または多塩素化された脂肪族、環状脂肪族、または芳香族炭化水素を使用する。非常に適当な溶剤は、例えばオキシ塩化リン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、工業用異性体キシレン混合物、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、特にPOCl、トルエン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンである。溶剤の混合物も使用できる。第二反応工程、すなわち五ハロゲン化リンとアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムの反応の生成物と、アミンの反応、に適当な溶剤は、これらの条件下では不安定なオキシ塩化リンを除いて、上記の溶剤である。
【0024】
反応中に形成されるヒドロハライド(hydrohalide)は、装置から逃がすことにより、連続的に除去するが、装置を通して不活性ガスを流すか、僅かな真空を作用させることにより、ヒドロハライドを排出するとよい。
【0025】
五ハロゲン化リンとアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムの反応が完了した後、反応生成物をアミンと、使用する五ハロゲン化リンに対して6:1〜50:1、特に7:1〜30:1、好ましくは8:1〜25:1の比で反応させる。
【0026】
特に、例えば下記のアミン、すなわちジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジペンチルアミン、ビス(3−メチルブチル)アミン、ジヘキシルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジアリルアミン、ビス(シクロプロピルメチル)アミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(4−メチルシクロヘキサンキシル)アミン、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)アミン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、モルホリンを効果的に使用することができる。
【0027】
アミンの添加および反応の続行は−20〜200℃、特に0〜180℃、好ましくは20〜160℃で行う。反応の続行は、反応を還流条件下で行い、所望の温度範囲に沸点を有する溶剤を選択すれば、特に簡単である。反応は一般的に大気圧で行うが、反応は超大気圧下で行うこともできるので、沸点が上記の温度範囲未満にある溶剤を使用することもできる。
【0028】
反応が完了した後、反応生成物を、すでに述べたように、水性苛性アルカリで、0〜80℃、特に10〜70℃、好ましくは25〜50℃で処理し、pHを7〜15、特に8〜14.5、好ましくは9〜4に合わせる。適当な水性苛性アルカリは、例えば濃度5〜50重量%、特に15〜30重量%、好ましくは20〜25重量%の、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液である。対応するNaOHまたはKOH水溶液を使用するのが特に簡単である。
【0029】
反応生成物を苛性アルカリで処理した後、水相を有機相から分離する。式I、IIおよびIIIaの化合物の混合物が有機相中に存在する。溶剤、過剰のアミン、およびアミンのヒドロハライドから放出されるアミンを包含する揮発性成分を部分的または完全に除去することにより、混合物の溶液または固体形態にある混合物が得られる。一種以上の成分I、II、IIIaの溶解度が低い第二の溶剤を加えることにより、生成物混合物の一部を沈殿させ、出発混合物と比較して異なった生成物組成を有する生成物を得ることができる。所望により、生成物をさらに再結晶させることにより、混合物の個々の成分の相対的な比率をさらに変えることができる。
【0030】
陰イオンB=ClまたはBrを、他の1価有機または無機酸基または多価酸基の等価物で置き換えることもできる。この場合、Bは、F、I、ClO、BF、PF、NO、HSO、1/2SO2−、HPO、1/2HPO2−、1/3PO3−、R−COO−(ここでRは1〜9個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、ベンジル基またはナフチル基である)、R−SO(ここでRは1〜18個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、トリル基またはナフチル基である)、HCO、1/2CO2−、1/2C(COO、CN、R(ここでRは上に定義した通りである)である。ハレックス触媒として使用するには、Bは特に、F、Cl、Br、I、BF、PFまたは1/2SO2−、好ましくはF、Cl、Brである。
【0031】
本発明はさらに、式I、IIおよびIIIaの化合物を含んでなる上記の混合物の、相間移動反応、求核置換反応またはハレックス反応、特に相間移動反応およびハレックス反応、好ましくはハレックス反応用の触媒または助触媒としての使用を提供するものである。
【0032】
例1
4リットルのフランジフラスコ中に、アルゴン下でクロロベンゼン750mlを入れ、PCl208.3g(1.0mol)およびNHCl36.0g(0.67mol)を順に導入する。反応混合物を徐々に105℃に加熱し、ガスの放出が検出されなくなるまで105℃に維持する。反応中に放出される塩化水素をガス排出ラインを通して連続的に除去し、水に吸収させる。続いて、混合物を20℃に冷却し、内部温度が50℃を超えないような速度でピペリジン1920g(22.5mol)を冷却しながら導入する。添加が完了した後、混合物を還流するまで加熱し、22時間還流させる。反応完了後、混合物を40℃に冷却し、濃度20%の水酸化ナトリウム水溶液700gを加える。有機相を分離し、回転蒸発装置上で蒸発乾固させる。留出物からピペリジンを再蒸留し、再使用する。単離された固体を乾燥させ、31P−NMR分光法により検査する。これにより、この混合物は1,1,1,3,3,3−ヘキサキス(ピペリジノ)ジホスファゼニウムクロライド(PPipCl)およびテトラキス(ピペリジノ)ホスホニウムクロライド(PPipCl)を1:8の比で含んでなる。
【0033】
例2
2リットルのフランジフラスコ中に、アルゴン下でトルエン250mlを入れ、PCl104.5g(0.5mol)およびNHCl9.5g(0.18mol)を導入する。ガスの放出が停止する。反応中に放出される塩化水素をガス排出ラインを通して連続的に除去する。続いて、混合物を20℃に冷却し、内部温度が40℃を超えないような速度でピロリジン355.5g(5mol)を冷却しながら導入する。添加が完了した後、混合物を還流するまで加熱し、22時間還流させる。反応完了後、混合物を40℃に冷却し、濃度20%の水酸化ナトリウム水溶液350gを加える。有機相を分離し、回転蒸発装置上で蒸発乾固させる。得られた固体をトルエンとTHFの5:1混合物から再結晶させる。これにより、1,1,1,3,3,3−ヘキサキス(ピロリジノ)ジホスファゼニウムクロライド(PPyrCl)およびテトラキス(ピロリジノ)ホスホニウムクロライド(PPyrCl)の1.7:1混合物81gが得られる。
【0034】
例3
4リットルのフランジフラスコ中に、アルゴン下でPOCl1000mlを入れ、PCl208.3g(1mol)およびNHCl7.65g(0.33mol)を順に導入する。反応混合物を徐々に還流まで加熱し、ガスの放出が終わるまで攪拌する。反応中に放出される塩化水素をガス排出ラインを通して連続的に除去する。続いて、使用したPOClをできるだけ完全に留別し、クロロベンゼン2000mlで置き換える。反応混合物を20℃に冷却し、冷却しながらピペリジン1277g(15mol)と混合し、40℃で4.5日間攪拌する。反応が完了した後、過剰のピペリジンを留別し、濃縮された反応混合物を、濃度22.5%の水酸化ナトリウム水溶液900gを使用して加水分解する。相を分離し、有機相を蒸留により濃縮する。テトラヒドロフラン500mlを加えることにより生じた沈殿物を吸引濾別し、減圧下で乾燥させる。これにより、1,1,1,3,3,3−ヘキサキス(ピペリジノ)ジホスファゼニウムクロライド(PPipCl)およびテトラキス(ピペリジノ)ホスホニウムクロライド(PPipCl)の1:1混合物270gが得られる。
【0035】
例4
1,1,1,3,3,3−ヘキサキス(ピペリジノ)ジホスファゼニウムクロライド(PPipCl)およびテトラキス(ピペリジノ)ホスホニウムクロライド(PPipCl)の1:1混合物を使用する塩素−フッ素交換反応による、2−クロロ−6−フルオロベンズアルデヒドから2,6−ジフルオロベンズアルデヒドの製造
1,1,1,3,3,3−ヘキサキス(ピペリジノ)ジホスファゼニウムクロライドおよびテトラキス(ピペリジノ)ホスホニウムクロライドの1:1混合物4.63g(触媒9.5mmolに相当)、フッ化カリウム92.1g(1.57mol)およびクロロベンゼン39.5gを、順に、2−クロロ−6−フルオロベンズアルデヒド277.5g(1.75mol)に加える。減圧下で蒸留することにより、反応混合物を共沸的に乾燥させる。次いで、混合物を190℃に合わせ、この温度に24時間維持する。反応混合物のガスクロマトグラフィー分析により、2−クロロ−6−フルオロベンズアルデヒド24.6%および2,6−ジフルオロベンズアルデヒド75.2%が検出される。
【0036】
比較例4a
触媒としてテトラキス(ピペリジノ)ホスホニウムクロライド(PPipCl)または1,1,1,3,3,3−ヘキサキス(ピペリジノ)ジホスファゼニウムクロライド(PPipCl)を使用する塩素−フッ素交換反応による、2−クロロ−6−フルオロベンズアルデヒドから2,6−ジフルオロベンズアルデヒドの製造
触媒9.5mmol、フッ化カリウム92.1g(1.57mol)およびクロロベンゼン39.5gを、順に、2−クロロ−6−フルオロベンズアルデヒド277.5g(1.75mol)に加える。減圧下で蒸留することにより、反応混合物を共沸的に乾燥させる。次いで、混合物を190℃に合わせ、この温度に24時間維持する。反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析する。下記の転化率が得られた。
【0037】
【表1】

【0038】
比較例5
相間移動反応触媒としてテトラキス(ピペリジノ)ホスホニウムクロライド(PPipCl)、1,1,1,3,3,3−ヘキサキス(ピロリジノ)ジホスファゼニウムクロライド(PPyrCl)またはPPipClとPPipClの1:1混合物を使用する塩素−フッ素交換反応による、3,5−ジクロロ−2,4,6−トリフルオロピリジンから2,3,4,5,6−ペンタフルオロピリジンの製造
【化2】

【0039】
触媒11mmol、フッ化カリウム28.3g(0.66mol)およびクロロベンゼン50gを、順に、溶融スルホラン135gに加える。減圧下で蒸留することにより、反応混合物を共沸的に乾燥させる。次いで、3,5−ジクロロ−2,4,6−トリフルオロピリジン44.4gを加え、混合物を、密閉した、攪拌しているオートクレーブ中で190℃に加熱し、この反応温度に24時間維持する。反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析する。下記の転化率が得られた。
【0040】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】例1の31P−NMRの結果を示す図。
【図2】例2の31P−NMRの結果を示す図。
【図3】例3の31P−NMRの結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物5〜99.5重量%、式(II)の化合物95〜0.5重量%、および式(IIIa)の一種以上の化合物10重量%以下
【化1】

(式中、A〜A32は、同一であるか、または異なるものであって、それぞれ、互いに独立して、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキルまたはアルケニル、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、6〜12個の炭素原子を有するアリール、7〜12個の炭素原子を有するアラルキルであるか、またはA−A、A−A、A−A、等〜A31−A32は、同一であるか、または異なるものであって、それぞれ、互いに独立して、直接あるいはOまたはN−A33を経由して互いに結合し、3〜7個の環原子を有する環を形成し、A33は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、Xおよび/またはXおよび/またはXは、互いに独立して、式(IIIb)の基であるか、またはXおよび/またはXおよび/またはXは、同様に、それぞれ1〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキルまたはアルケニル、4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、6〜12個の炭素原子を有するアリール、7〜12個の炭素原子を有するアラルキルであるか、または同等に結合した窒素原子上に位置する基、例えばAおよびA、AおよびA、AおよびA、等〜A31およびA32は、同一であるか、または異なるものであって、それぞれ、互いに独立して、直接あるいはOまたはN−A33を経由して互いに結合し、3〜7環構成員を有する環を形成し、A33は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、Bは、1価の有機または無機酸基または多価酸基の等価物である)
を含んでなる混合物。
【請求項2】
式Iの化合物10〜95重量%、式IIの化合物90〜5重量%、および式IIIaの化合物8重量%以下を含んでなる、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
式Iの化合物20〜80重量%、式IIの化合物80〜20重量%、および式IIIaの化合物5重量%以下を含んでなる、請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の混合物の製造方法であって、五ハロゲン化リンを先ずアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムと、0.5:1〜5:1の比で、25℃〜200℃で、不活性溶剤中で、ハロゲン化水素を除去しながら反応させ、続いて式HNA、HNA、等〜HNA3132(式中、A〜A32は上記の基である)の一種以上のアミンと、使用する五ハロゲン化リンに対して6:1〜50:1の比で、−20〜200℃で反応させ、得られた反応生成物を、水性苛性アルカリを使用して0〜80℃でpH7〜15に合わせ、有機相および水相を分離し、有機相を蒸留により濃縮する、方法。
【請求項5】
前記第一反応工程用の溶剤として、オキシ塩化リン、脂肪族、環状脂肪族または芳香族炭化水素または一または多塩素化された脂肪族、環状脂肪族、または芳香族炭化水素を使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第二反応工程用の溶剤として、脂肪族、環状脂肪族または芳香族炭化水素または一または多塩素化された脂肪族、環状脂肪族、または芳香族炭化水素を使用する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
五ハロゲン化リンおよびアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムが、1:1〜4:1の比で使用される、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
五ハロゲン化リンとアンモニアまたはハロゲン化アンモニウムの反応生成物をアミンと、7:1〜30:1の比で反応させる、請求項4〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の混合物の、相間移動反応、求核置換反応またはハロゲン−フッ素交換反応用の触媒および助触媒としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−518273(P2006−518273A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501803(P2006−501803)
【出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001253
【国際公開番号】WO2004/074296
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(598109501)クラリアント・プロドゥクテ(ドイチュラント)ゲーエムベーハー (45)
【氏名又は名称原語表記】Clariant Produkte (Deutschland)GmbH
【Fターム(参考)】