説明

ヘッダーアッシー、スクイブならびにエアバッグ用ガス発生装置およびシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置

【課題】高い生産性の下で、サイズの縮小化と品質の向上を可能ならしめたスクイブ、その構成部品であるヘッダーアッシーならびにかかるスクイブを搭載したエアバッグ用ガス発生装置およびシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置を提供する。
【解決手段】複数の電極ピンを互いに絶縁して保持するヘッダー上に、点火素子、ICチップ、点火用の第1のコンデンサおよびノイズ除去用の第2のコンデンサを載置するに際し、
本体基板の上面に、厚みが比較的薄い点火素子とICチップを載置する一方、本体基板の下面に、厚みが比較的厚い第1のコンデンサと第2のコンデンサを、設置姿勢維持用の接続端子と共に設置し、かような点火素子等を設置した本体基板を、中継基板を介して、ヘッダー上に載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ等の自動車の安全装置に使用されるガス発生器等に搭載されるスクイブに関するものである。
また、本発明は、上記したスクイブの構成部品であるヘッダーアッシーに関するものである。
さらに、本発明は、上記のスクイブを搭載したエアバッグ用ガス発生装置およびシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に装着されるエアバッグを膨張させるためのガス発生器用のスクイブとして、従来から種々の電気式スクイブが開発されている。
このスクイブは、通常、外部と電気的に接続するための金属ピンを有し、またこの金属ピンの他端には火薬に点火するための加熱素子をそなえている。
【0003】
従来使用されてきた点火具は、点火薬に点火するために、架橋ワイヤを使用していた。架橋ワイヤとしては、ニクロム線を用いており、架橋ワイヤの線径が細すぎると取り付けることができない。また、取り付けることができる線径の架橋ワイヤでは熱容量が大きいために、BUSシステムのような通信のエネルギーだけで点火薬を点火するためには、容量の大きなコンデンサに十分な電荷を蓄積する必要があった。
【0004】
また別の点火具として、プリント回路基板の製造技術を用い、プリント回路基板上に直接厚膜抵抗体を形成する方法が知られている。
例えば特許文献1には、プリント回路基板を用い、厚膜抵抗体を直接プリント回路基板上に形成し、回路基板上の別の部分に静電気保護の目的でバリスタを搭載したスクイブが示されている。
また、特許文献2には、同様に、プリント回路基板に抵抗性加熱素子を搭載し、コンデンサとバリスタをハンダでプリント回路基板に接続したものを、さらに電極ピンに接続して得られるスクイブが開示されている。
これらの技術により、点火に必要なエネルギーは架橋ワイヤを用いる場合よりも低く改善されたとはいえ、まだ十分とは言えなかった。
【特許文献1】特開2003-205823号公報
【特許文献2】特開2000-108838号公報
【0005】
一方、半導体ブリッジ(SCB:Semiconductor Bridge)は、スパッタや蒸着などの半導体技術を用いて製造されたブリッジを総称するものであるが、架橋ワイヤやプリント回路基板に比べ半導体ブリッジを用いた点火具は、線幅を細くした非常に微細な構造を作ることができ、厚みも数ミクロン程度の膜厚の薄膜ブリッジを利用するので、熱容量を小さくすることができ、高速応答性と低エネルギーでの点火性を持たせることが可能である。架橋ワイヤでは、1.2Aの通電で点火薬を点火温度まで加熱するのに800から1000マイクロ秒程度の時間を要するので、点火に必要なエネルギーは2.9 mJ程度必要であったが、半導体ブリッジでは、小容量のコンデンサからの放電により0.44 mJ以下で点火薬を点火することができる。また、SCBは、スパッタや蒸着などの半導体製造設備を使うので基板サイズを大幅に小さくできるだけでなく、発熱部の熱容量を小さく、かつ正確に制御することができるので、点火応答性が高くかつ低エネルギー着火のスクイブを安定して作ることができる。
【0006】
しかしながら、このような熱容量の小さい半導体ブリッジを用いると、外部からの静電気などのノイズに対して、スクイブが誤発火するおそれがある。
そこで、静電気に対して誤発火を防止する対策として、半導体ブリッジと並列してコンデンサを設置し、このコンデンサによって、放電された静電気を吸収する方法が特許文献3に知られている。
【0007】
また、BUSシステムと呼ばれる通信による点火を可能にするために、ICを内蔵したスクイブとして特許文献4に開示の点火装置が知られている。
この点火装置は、ヘッダーの上に、集積化された回路装置を含む第2の半導体小板を設置し、さらにその上に、点火素子を点火させるためのエネルギーを蓄積したコンデンサを含む第1の半導体小板と点火素子を含む第3の半導体小板とを順次に積層した構造になっている。
また、外部からの静電気などのノイズを除去するために、ヘッダーの外部側において、
電極ピン間にフィルターコンデンサーを取り付けている。
【特許文献3】米国特許第4944224号明細書
【特許文献4】特表2000-513799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上掲特許文献4に記載の点火装置によれば、スクイブの小型化が有利に達成されたが、依然として次に述べるような問題を残していた。
その第1は、ノイズ除去用のフィルターコンデンサがヘッダーアッシーによって密閉されたカップ体の外に搭載されている点である。すなわち、第3の半導体小板(IC)とフィルターコンデンサの搭載位置が離れているため、ノイズ除去の効果が劣るので、信頼性に問題が生じる可能性が大きい。
また、その第2は、点火のためのエネルギー蓄積用コンデンサとして、半導体コンデンサを使用しているために、このコンデンサが蓄積できる電気エネルギーが小さいので、このエネルギーで点火するためには高い点火感度のSCBを使う必要があるが、その場合、点火感度が非常に高いがゆえにノイズによる誤爆の危険性が高まる。
【0009】
その他、特許文献4のように、第1〜第3の半導体小板を積層する構造にした場合、ヘッダー基板の表面に凹凸が生じるため、点火薬を有するカップ体との組み付け時に点火薬密度にムラが生じるなどの問題が懸念される。さらに、特許文献4に記載の方法は、ASIC基板をヘッダーの搭載面上に配置する構造で、ASIC基板の下には電極が無いため電極ピンを配置することができず、電極ピンの設置場所はヘッダーの周辺部に限られ、設計上の自由度が失われる。
【0010】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、高い生産性の下で、サイズの縮小化と品質の向上を可能ならしめたスクイブを、その構成部品であるヘッダーアッシー、さらにはかかるスクイブを搭載したエアバッグ用ガス発生装置およびシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置と共に提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
さて、発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる知見を得た。
(1) ヘッダアッシー上には、点火素子や、点火用のコンデンサ、ICの内部電源を安定化させるバイパスコンデンサ、さらにはこれらの内蔵コンデンサーおよび外部と通信するためにヘッダーに電気的に接続するための回路を有するICを配置する必要があるが、全てをヘッダーアッシーで密封されたカップ体の中に配置するためには、厚みが比較的薄い点火素子およびICと厚みが比較的厚い点火用コンデンサおよびバイパスコンデンサとを、基板の上下面にそれぞれ分けて配置するようにすれば全体の厚みをほぼ等しくして、スクイブの小型化が達成できる。
(2) また、基板の一方の面に配置する点火用コンデンサとバイパスコンデンサとでは、通常、点火用コンデンサの方が大きく、従って基板からの突出高さもバイパスコンデンサよりも高くなり、全体のバランスが悪くなるが、この点については、これらのコンデンサを取り付ける基板側に、外部と接続するための接続端子を点火用コンデンサの突出高さと同じ高さで設置することにより解決できる。
(3) 上記のような配置形態とした場合、主にコンデンサの厚みに起因した表面凹凸が問題となるが、この点に関しては、外径がヘッダーの外周径に等しく、かつ頭部が少なくとも点火素子の高さレベルに達し、しかもこの点火素子の素子面を除く領域を樹脂で覆うことにより、点火薬との接触面を平坦化することができる。
(4) 特許文献4に記載の方法の問題点である設計上の自由度が失われる点に関しては、中継基板を介することにより、電極ピンを所望の位置に設置しながら、本体基板と電極ピンを電気的に接続することが可能となる。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.複数の電極ピンを有し、点火薬の入ったカップ体の開口部を塞ぐヘッダーアッシーであって、
該複数の電極ピンを互いに絶縁して保持するヘッダーと、
その上に配置した中継基板と、
該中継基板の上に配置した、点火素子、ICチップおよび点火薬の点火に十分な電荷を蓄積できる容量を有する第1のコンデンサを搭載し、かつ外部と接続するための第4の電極を設置した本体基板とからなり、
該本体基板に搭載された該点火素子と該第1のコンデンサは、該ICチップに電気的に接続され、
該中継基板は、中継電極と該電極ピンに対応する部分にスルーホール電極を有し、該スルーホール電極は該電極ピンおよび中継電極にそれぞれ電気的に接続され、該中継電極は該本体基板に設置された該第4の電極と電気的に接続され、かつ 該第4の電極はICチップに電気的に接続されていることを特徴とするヘッダーアッシー。
【0013】
2.上記1において、前記ヘッダーが保持する電極ピンは、前記点火薬側のヘッダー面より突出していることを特徴とするヘッダーアッシー。
【0014】
3.上記1または2において、前記本体基板に、外部回路へのノイズを除去するための第2のコンデンサが搭載され、該第2のコンデンサは前記ICチップと電気的に接続されていることを特徴とするヘッダーアッシー。
【0015】
4.上記1ないし3のいずれかにおいて、前記本体基板は、前記第4の電極に接続された接続端子を有し、
該本体基板は、その上面に、該点火素子と該ICチップを有し、これらを電気的に接続するための第1の電極および第1の配線を有すると共に、その上面から下面に導通して該ICチップと該第1のコンデンサ、該第2のコンデンサおよび該接続端子とを電気的に接続するための第2の配線、第3の配線および第4の配線を有し、かつ該本体基板の下面には、該第2の配線、該第3の配線および該第4の配線を通じて、該第1のコンデンサ、該第2のコンデンサおよび該接続端子と電気的に接続するための第2の電極、第3の電極および第4の電極を有し、
該接続端子は、該本体基板からの突出高さを該第1のコンデンサの突出高さと等しくすると共に、
該接続端子を、該中継基板に設けた中継電極を介して該ヘッダーの該電極ピンと電気的に接続したことを特徴とするヘッダーアッシー。
【0016】
5.上記1ないし4のいずれかにおいて、前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサがそれぞれ、セラミックコンデンサであることを特徴とするヘッダーアッシー。
【0017】
6.上記1ないし5のいずれかにおいて、前記点火素子が、SCBとその基板からなるSCBチップであることを特徴とするヘッダーアッシー。
【0018】
7.上記1〜6のいずれかにおいて、前記ヘッダー上に、外径が該ヘッダーの外周径に等しく、かつ円筒頭部が少なくとも該点火素子の高さレベルに達する円筒状のカラーを配置し、該カラーの内側で、該点火素子の素子面を除く領域に樹脂を充填して、点火薬との接触面を平坦化したことを特徴とするヘッダーアッシー。
【0019】
8.内部に点火薬を有するカップ体の開口部に、上記1〜7のいずれかに記載のヘッダーアッシーを、圧入・固定したことを特徴とするスクイブ。
【0020】
9.上記8に記載のスクイブを有するエアバッグ用ガス発生装置。
【0021】
10.上記8に記載のスクイブを有するシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の効果を列挙すると次のとおりである。
(1) 本発明によれば、厚みが比較的薄い点火素子およびICと厚みが比較的厚い点火用コンデンサおよびバイパスコンデンサとを、本体基板の上下面にそれぞれ分けて配置することにより、これら全てをヘッダーアッシーで密封されたカップ体の中に配置しながら、全体の厚みを薄くできるので、スクイブの小型化が達成できる。
(2) 点火用コンデンサとバイパスコンデンサを取り付ける本体基板側に、外部と接続するための接続端子を点火用コンデンサの突出高さと同じ高さで設置することにより、中継基板を介してヘッダー上に設置するときの設置姿勢が改善される。
(3) バイパスコンデンサを、ICの直下に設置することにより、ノイズ低減効果を大幅に向上する。
(4) 外径がヘッダーの外周径に等しく、かつ頭部が少なくとも点火素子の高さレベルに達し、しかもこの点火素子の素子面を除く領域を樹脂で覆うことにより、点火薬との接触面が平坦化されるので、加熱素子を搭載したヘッダーをカップ体内に挿入した場合に、カップ体内の点火薬を均一に圧縮することができ、スクイブの作動安定性が格段に向上する。
(5) 中継基板を介することにより、電極ピンを所望の位置に設置しながら、狭い空間の中で本体基板と電極ピンを電気的に接続することが可能となる。
(6) 中継基板の電極ピンとの接続部にスルーホール電極を用いることで、電極ピンとスルーホール電極との接続の状態を直接目視で確認することができるので、接続の信頼性を確保することができる。
(7) 電極ピンが突出して、スルーホール電極に嵌合するので、中継基板の位置決めが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本体基板の上面に、点火素子とICチップを搭載し、その下面に第1のコンデンサと第2のコンデンサを配置した、本発明の請求項4に相当する発明について説明する。
図1に、本体基板に対する、点火素子、ICチップ、第1のコンデンサ、第2のコンデンサおよび接続端子の設置要領を図解する。
図中、番号1が本体基板、2が点火素子、3がICチップ、4が点火用の第1のコンデンサ、5がノイズ除去用の第2のコンデンサ、そして6が電極ピンと接続するための外部接続用の接続端子である。また、4aは第1のコンデンサ4の電極、5aは第2のコンデンサの電極、6aは接続端子6の電極である。
同図に示したとおり、厚みが比較的薄い点火素子2とICチップ3は本体基板1の上面に、一方厚みが比較的厚い第1のコンデンサ4と第2のコンデンサ5は本体基板1の下面にそれぞれ配置する。この場合、第2のコンデンサ5は第1のコンデンサ4よりも大きさが通常は小さいので、このままでは本体基板1を水平に設置することができない。そこで、接続端子6を、第1のコンデンサ4の本体基板1からの突出高さと同じ高さで第1のコンデンサ4の反対側に設置することにより、水平な設置姿勢を確保しながら、中継基板と本体基板を電気的に接続することができるのである。
【0024】
図2(a),(b)に、本体基板1に設けた電極および配線回路を示す。同図(a)は、上から見た平面図、同図(b)は、上から下面側電極および配線回路を透過して見た図である。
図2(a)中、番号7は点火素子2と電気的に接続するための第1の電極、8は点火素子2とICチップ3とを接続する第1の配線、9は本体基板1の上面から下面に導通してICチップ3と第1のコンデンサ4とを電気的に接続するための第2の配線、10は同じく本体基板1の上面から下面に導通してICチップ3と第2のコンデンサ5とを電気的に接続するための第3の配線、11は同じく本体基板1の上面から下面に導通してICチップ3と接続端子6とを電気的に接続するための第4の配線である。
また、図2(b)において、番号12は本体基板1の下面において第1のコンデンサ4と電気的に接続するための第2の電極、13は同じく第2のコンデンサ5とを電気的に接続するための第3の電極、14は同じく接続端子6とを電気的に接続するための第4の電極である。
【0025】
上記したように、本体基板1は、点火用の第1のコンデンサ4と接続するための第2の電極12と回路9、および点火素子2と接続するための第1の電極7と回路8、さらに外部端子と接続するための第4の電極14と回路11をそなえており、IC3は、かような回路を介して点火素子2を作動させるわけである。
【0026】
ここに、本発明に用いる第1のコンデンサおよび第2のコンデンサとしては、セラミックコンデンサを用いることが好ましい。
というのは、セラミックコンデンサは、サイズが小さいにもかかわらず大きな静電容量を持たせることができるだけでなく、ノイズに対しての内部インピーダンスが小さいので、効率的にノイズを除去することができるからである。
【0027】
かようなセラミックコンデンサとして、第1のコンデンサ部の容量は0.5〜10μF程度、一方第2のコンデンサ部の容量は0.1〜10μF程度とすることが好ましい。
【0028】
また、各電極および各配線の素材としては、例えばCu,Ag等が有利に適合する。
【0029】
さらに、点火素子としては、SCBとその基板からなるSCBチップがとりわけ有利に適合する。
このSCBチップの基板の材質としては、プリント回路基板として使用されるものであればいずれでも良いが、とくにガラス基板、セラミック基板、LTCC(Low temperature Co-fired Multilayer Ceramic Substrates)およびシリコン基板等が好ましい。というのは、発熱抵抗体に通電することにより発熱抵抗体は発熱する。この熱を受けて火薬は、点火する温度である約300℃に達して発火する。それゆえ、基板材質としてはこのときの基板温度まで安定な材質であることが好ましいからである。
【0030】
次に、上記したような点火素子、ICチップ、第1のコンデンサ、第2のコンデンサおよび接続端子をそなえる本体基板を載置する中継基板について説明する。
図3に示すように、この中継基板15は、スルーホール電極28と、上面に中継電極16とNCランド27をそなえており、スルーホール電極28は電極ピンが勘合する程度の径を有している。この中継電極16上に接続端子6を、NCランド27上に第1のコンデンサを載置し、電極ピンとスルーホール電極を電気的に接続することにより、この中継電極16を介してヘッダーの電極ピン18と本体基板1に配置されたICチップ3とを電気的に接続させるのである。NCランド27は第1のコンデンサを固定するために用いられ、中継電極16に固定される接続端子6とNCランド27に固定される第1のコンデンサ4によって、本体基板を強固に中継基板を介してヘッダーに固定することができる。
かような中継基板の材質としては、一般に回路基板として使用されるガラエポ基板やセラミック基板およびLTCC等が有利に適合する。
【0031】
次に、上記した中継基板を介して点火素子、ICチップ、第1のコンデンサ、第2のコンデンサおよび接続端子をそなえる本体基板を載置したヘッダアッシーについて説明する。
図4に、本発明に従う好適なヘッダアッシーを例示する。
図中、番号17はヘッダー、18は電極ピン、そして19はかかる電極ピン18を互いに絶縁するための封止ガラスである。
そして、このヘッダー17の上に中継基板15を載置し、さらにこの中継基板15の上に点火素子等をそなえる本体基板1を載置することにより、ヘッダアッシー20を構成している。
【0032】
図5(a)に、ヘッダアッシー20の全体図を示す。
また、図5(b)は、ヘッダアッシー20を組み立て後、点火素子2と第1の電極7とをワイヤボンディン21で接続した状態を示した図である。
【0033】
ところで、図5に示したところから明らかなように、ヘッダー17の上に中継基板15を介して点火素子等をそなえる本体基板1を載置した場合、この載置領域は、第1のコンデンサ4(同じく接続端子6)、本体基板1および点火素子2(同じくICチップ3)の厚みの分だけ、ヘッダー17(正確には中継基板15)から突出する。
このように、ヘッダー17の上面に段差が生じていると、かかるヘッダー17をカップ体内に挿入して点火薬と圧接させた場合、突出した点火素子2の上方の点火薬は密に圧縮される反面、本体基板1の周りの領域は密度が疎になるため、スクイブを作動させたときに、点火感度や点火時間のばらつきが大きく、スクイブの作動安定性が阻害されるおそれがある。
【0034】
かような弊害を解消するためには、ヘッダー上を、外径がヘッダーの外周径に等しく、かつ頭部が少なくとも点火素子の高さレベルに達する樹脂で覆うことが好ましい。
このような樹脂被覆を形成するには、例えば図6に示すように、ヘッダー17の外周に、その頭部が少なくとも点火素子2の高さレベルとほぼ等しい円筒状のカラー22を設け、その内側に樹脂23を充填してやればよい。
【0035】
このようして樹脂23を充填することにより、円筒状カラー22の内部エリアは平坦化され、その結果、カップ体内の点火薬の圧縮密度を均一化することができる。
なお、その際、充填した樹脂23が点火素子2の素子面を覆うと、点火薬を点火させることができなくなるので、樹脂23の充填に際しては、点火素子2の素子面を除く領域に充填することが重要である。
【0036】
なお、樹脂23を充填する場合、点火素子2と同じ高さレベルとすることが最適であるのは前述したとおりであるが、点火素子2の高さレベルとその周りに充填する樹脂23の高さレベルを等しくしようとすると、充填した樹脂23が点火素子2の素子面まで覆ってしまうおそれがある。
そこで、発明者らは、点火素子2の素子面と樹脂23の上面との高さレベル差とスクイブの作動安定性との関係について調査した結果、この高さレベル差が好ましくは0.5mm以内、さらに好ましくは0.3mm以内であれば、スクイブの作動安定性にほとんど差異は生じないことを確認した。
【0037】
次に、上記したようなヘッダアッシーを、内部に点火薬を有するカップ体の開口部に圧入・固定して完成させたスクイブの全体を、図7に断面で示す。
図7中、番号24が点火薬、25がカップ体、26が保護用樹脂カップである。図示したとおり、円筒状のカラー22の内側に樹脂23を充填することにより、ヘッダー17の上面は平坦になっているので、かようなヘッダアッシーをカップ体内に圧入したとしても、点火薬密度にムラが生じることはなく、従ってスクイブを作動させたときに、点火感度や点火時間のばらつきが生じることはない。
【0038】
次に、本体基板の上面に、点火素子とICチップだけでなく、第1のコンデンサと第2のコンデンサも併せて配置した、本発明の請求項1に相当する発明について説明する。
図8に、ヘッダー17上に中継基板15を介して、点火素子2、ICチップ3、第1のコンデンサ4および第2のコンデンサ5を搭載した本体基板1を設置したヘッダアッシーを、分解図で示す。
また、図9には中継基板15の配線を記載した平面図を、さらに図10には、本体基板1の配線を記載した平面図を示す。
【0039】
上記したような構造にすることにより、まず、まず中継基板15を接続するときに電極ピン18とスルーホール電極28との接続をはんだや導電ペーストで行うときに、接続の状態を直接目視で確認することができるので、接続の信頼性を格段に向上させることができる。また、電極ピン18が突出して、スルーホール電極28に嵌合するので、中継基板15の位置決めが極めて容易になる。さらに、本体基板1には第4の電極14が基板の側面に形成されている。通常本体基板1は1枚の大きな親基板に形成され、切り分けられる。第4の電極14は本体基板1を親基板から切り離す前にスルーホール電極として形成されたものの上をカットすることにより、本体基板1の側面にむき出しの半円形の電極として形成することが出来る。本体基板1を中継基板15に搭載するときには、第4の電極14と中継電極16が重なるように載置し、接続する。第4の電極14が側面に形成されていることにより、中継基板15と本体基板1をはんだや導電ペーストで接続するときに、側面がむき出しなので直接目視による確認が可能であり、接続の信頼性を格段に向上させることができる。また、図10において、点線で表される各部品は、配線の上に載置されていることを示している。ただし、点火素子2は第1のコンデンサ4の上に搭載され、はんだや導電ペーストにより、コンデンサ上に印刷された配線を介して第1の電極7に接続される
【0040】
本発明に使用する点火薬としては、その組成中にジルコニウムを含むものが好適である。その他、水素化チタンやボロン、トリシネート等を含むものも有利に適合する。また、その他に特開2002−362992号公報に開示のものが使用でき、特に限定されるものではない。そしてかかる点火薬に接触させて発熱抵抗体である薄膜抵抗を配置する。
【0041】
また、本発明では、点火素子の上面に、予め点火薬組成物を塗布しておくこともできる。すなわち、薄膜抵抗の上面にスラリー状の点火薬をディスペンスし、乾燥させる。この点火薬組成物は粉末状の点火薬を単に充填した場合に比べると点火薬と薄膜抵抗の接触が安定であるため、確実な点火と点火時間の短縮に有効に寄与する。
【0042】
次に、本発明の点火装置を用いたエアバッグ用ガス発生装置について説明する。
図11に、エアバッグ用ガス発生装置の概念図を示す。同図に示したとおり、エアバッグ用ガス発生装置31は、その内部にスクイブ32、エンハンサー剤33、ガス発生剤34、フィルター35を有し、外部はガス発生剤34の燃焼圧力に耐え得る外郭容器36からなる。外郭容器36には、発生したガスをエアバッグ側に放出するための孔37が開けられている。
スクイブ32が作動すると、スクイブ32から発生する熱エネルギーでエンハンサー剤33が燃焼し火炎および熱粒子を発生する。この火炎および熱粒子によりガス発生剤34が燃焼し、エアバッグを膨らませるためのガスが発生する。このガスは、エアバッグの外郭容器36に開いた孔37から外部に放出されるが、このときフィルター35を通過させることで燃焼したガス発生剤の残渣が捕集されると同時にガス自身が冷却される。
【0043】
さらに、本発明の点火装置を用いたシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置について説明する。
図12に、シートベルトプリテンショナー用ガス発生装置(マイクロガスジェネレータ)の概念図を示す。同図に示したとおり、マイクロガスジェネレータ41は、その内部にスクイブ42とガス発生剤43を有し、スクイブ42はホルダーと呼ばれる基台44に固定されている。さらにガス発生剤43を格納するカップ体45も、ホルダーに例えばカシメによつて固定された構造になっている。スクイブ42が作動すると、スクイブ42からの火炎および熱粒子により、カップ体45内のガス発生剤43が燃焼してガスが発生する。
【0044】
次に、本発明のスクイブを作動させる中央制御ユニットによる制御要領について説明する。
図13は、中央制御ユニット110と、4つのエアバッグモジュール111a,111b,111c,111dとを接続したLAN化されたエアバッグシステムの例を示したものである。2つのエアバッグモジュール111bと111cは各々、例えばフロントエアバッグを膨張させるガス発生器を有することができ、他の2つのエアバッグモジュール111aと111dは各々、例えばサイドエアバッグを膨張させるガス発生器を有することができる。
【0045】
これらモジュールの各々に含まれるガス発生器内に点火装置が収納されていて、各点火装置は2つの電極ピン114,115を有し、電極ピン114が中央制御ユニット110に連絡された第1の電気供給導電体112に接続され、電極ピン115が中央制御ユニット110に連絡された第2の電気供給導電体113に接続されている。
【0046】
通常の動作状態、すなわち自動車が1以上のエアバッグモジュール111a,111b,111c,111dを活性化することを求める特定の衝撃に巻き込まれていない時には、中央制御ユニット110は定期的に該電気供給導電体112,113に低い強度の電流を与え、この電流は電極ピン114と115を介して4つのエアバッグモジュール111a,111b,111c,111dの各々に含まれる点火装置の電気エネルギー蓄積手段(コンデンサー)に送られる。
【0047】
衝撃が生じて、例えばエアバッグ111cを活性化することが望ましい場合には、中央制御ユニット110は第1の電気供給導電体112にエアバッグモジュール111cの点火装置のための点火コマンドを構成する特有の電気パルスの列を送る。この特有の電気パルスの列は電極ピン114と115を介して各点火装置に送られるが、エアバッグモジュール111cの点火装置に含まれるICのみがそのコマンドに反応して第1のコンデンサから電気エネルギーを点火素子に供給し、上述したように点火薬を点火する。
【0048】
もし、衝撃に続いて幾つかのエアバッグモジュール、例えばエアバッグモジュール111a,111bを活性化することが望ましい場合には、中央制御ユニット110は、第1の電気供給導電体112にエアバッグモジュール111aと111bの各々に含まれる点火装置のための特有の電気パルスの列を与える。2つの点火装置の各々の動作は上述したとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本体基板に対する、点火素子、ICチップ、第1のコンデンサ、第2のコンデンサおよび接続端子の設置要領を示した図である。
【図2】(a),(b)に、本体基板に設けた電極および配線回路を示すもので、(a)は上から見た平面図、(b)は上から下面側電極および配線回路を透過して見た図である。
【図3】中継基板の平面図である。
【図4】本発明に従うヘッダアッシーの分解図である。
【図5】本発明に従うヘッダアッシーの全体図である。
【図6】ヘッダーの外周に円筒状のカラーを設け、その内側に樹脂を充填した状態を示した図である。
【図7】本発明に従うスクイブの全体図である。
【図8】ヘッダー上に、中継基板を介して、点火素子、ICチップ、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを搭載した本体基板を設置したヘッダアッシーの分解図である。
【図9】中継基板の平面図である。
【図10】本体基板上に、点火素子、ICチップ、第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを併せて配置した場合における、本体基板の平面図である。
【図11】エアバッグ用ガス発生装置の概念図である。
【図12】シートベルトプリテンショナー用ガス発生装置の概念図である。
【図13】中央制御ユニットの説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 本体基板
2 点火素子
3 ICチップ
4 第1のコンデンサ
5 第2のコンデンサ
6 接続端子
4a 第1のコンデンサの電極
5a 第2のコンデンサの電極
6a 接続端子の電極
7 第1の電極
8 第1の配線
9 第2の配線
10 第3の配線
11 第4の配線
12 第2の電極
13 第3の電極
14 第4の電極
15 中継基板
16 中継電極
17 ヘッダー
18 電極ピン
19 封止ガラス
20 ヘッダアッシー
21 ワイヤボンディン
22 円筒状カラー
23 樹脂
24 点火薬
25 カップ体
26 保護用樹脂カップ
27 NCランド
28 スルーホール電極
31 エアバッグ用ガス発生装置
32 スクイブ
33 エンハンサー剤
34 ガス発生剤
35 フィルター
36 外郭容器
37 孔
41 シートベルトプリテンショナー用ガス発生装置(マイクロガスジェネレータ)
42 スクイブ
43 ガス発生剤
44 基台(ホルダー)
45 カップ体
110 中央制御ユニット
111a〜111d エアバッグモジュール
114,115 電極ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極ピンを有し、点火薬の入ったカップ体の開口部を塞ぐヘッダーアッシーであって、
該複数の電極ピンを互いに絶縁して保持するヘッダーと、
その上に配置した中継基板と、
該中継基板の上に配置した、点火素子、ICチップおよび点火薬の点火に十分な電荷を蓄積できる容量を有する第1のコンデンサを搭載し、かつ外部と接続するための第4の電極を設置した本体基板とからなり、
該本体基板に搭載された該点火素子と該第1のコンデンサは、該ICチップに電気的に接続され、
該中継基板は、中継電極と該電極ピンに対応する部分にスルーホール電極を有し、該スルーホール電極は該電極ピンおよび中継電極にそれぞれ電気的に接続され、該中継電極は該本体基板に設置された該第4の電極と電気的に接続され、かつ 該第4の電極はICチップに電気的に接続されていることを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項2】
請求項1において、前記ヘッダーが保持する電極ピンは、前記点火薬側のヘッダー面より突出していることを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項3】
請求項1または2において、前記本体基板に、外部回路へのノイズを除去するための第2のコンデンサが搭載され、該第2のコンデンサは前記ICチップと電気的に接続されていることを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記本体基板は、前記第4の電極に接続された接続端子を有し、
該本体基板は、その上面に、該点火素子と該ICチップを有し、これらを電気的に接続するための第1の電極および第1の配線を有すると共に、その上面から下面に導通して該ICチップと該第1のコンデンサ、該第2のコンデンサおよび該接続端子とを電気的に接続するための第2の配線、第3の配線および第4の配線を有し、かつ該本体基板の下面には、該第2の配線、該第3の配線および該第4の配線を通じて、該第1のコンデンサ、該第2のコンデンサおよび該接続端子と電気的に接続するための第2の電極、第3の電極および第4の電極を有し、
該接続端子は、該本体基板からの突出高さを該第1のコンデンサの突出高さと等しくすると共に、
該接続端子を、該中継基板に設けた中継電極を介して該ヘッダーの該電極ピンと電気的に接続したことを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサがそれぞれ、セラミックコンデンサであることを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記点火素子が、SCBとその基板からなるSCBチップであることを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、前記ヘッダー上に、外径が該ヘッダーの外周径に等しく、かつ円筒頭部が少なくとも該点火素子の高さレベルに達する円筒状のカラーを配置し、該カラーの内側で、該点火素子の素子面を除く領域に樹脂を充填して、点火薬との接触面を平坦化したことを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項8】
内部に点火薬を有するカップ体の開口部に、請求項1〜7のいずれかに記載のヘッダーアッシーを、圧入・固定したことを特徴とするスクイブ。
【請求項9】
請求項8に記載のスクイブを有するエアバッグ用ガス発生装置。
【請求項10】
請求項8に記載のスクイブを有するシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−138948(P2008−138948A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326259(P2006−326259)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(596163770)菱電商事株式会社 (5)
【Fターム(参考)】