ヘッド−テイル型共重合体の中空ナノ微粒子
【課題】ヘッド-テイル型共重合体PAMAMデンドロン−ポリ-L-リシンの水中で安定な中空ナノ微粒子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体のベシクルからなり、ポリ-L-リシン間が架橋されている水中で安定な中空ナノ微粒子により、上記課題を解決する。
【解決手段】ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体のベシクルからなり、ポリ-L-リシン間が架橋されている水中で安定な中空ナノ微粒子により、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で安定な中空ナノ微粒子に関し、より詳細にはポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体の水中で安定な中空ナノ微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロック共重合体が選択溶媒中での自己組織化により形成する多分子集合体は、高分子ミセルやロッド、ラメラ、ベシクルなど様々な形態をとることが報告されている(非特許文献1〜4)。
樹木状高分子であるポリアミドアミン(PAMAM)デンドロンとポリペプチドであるポリ-L-リシン(PLL)からなるヘッド-テイル型ブロック共重合体は、水/高濃度メタノール混合溶媒中で、自己組織化によりベシクルを形成することが知られている(非特許文献5〜7)。
【0003】
【非特許文献1】van Hest, J. C. M.; Delnoye, D. A. P.; Baars, M. W. P. L.; van Genderen, M. H. P.; Meijer, E. W. Science 1995, 268, 1592-1595
【非特許文献2】Vandermeulen, G. W. M.; Klok, H. A. Macromol. Biosci. 2004, 4, 383-398
【非特許文献3】Klok, H. A.; Lecommandoux, S. Adv. Mater. 2001, 13, 1217-1229
【非特許文献4】Kim, K. T. K.; Winnik, M. A.; Manners, I. Soft Matter 2006, 2, 957-965
【非特許文献5】高分子学会予稿集55巻1号1276頁 平成18年5月10日発行
【非特許文献6】第53回高分子研究発表会(神戸)予稿集138頁 平成19年7月20日発行
【非特許文献7】高分子学会予稿集56巻2号5058頁 平成19年9月4日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ヘッド-テイル型ブロック共重合体が高濃度メタノール/水混合溶媒中で形成するベシクルは、水中に移行すると崩壊してしまう。ベシクル構造を維持するために分散媒としてメタノール含有溶媒を必要とする限り、該ベシクルからなる中空ナノ微粒子を、例えば遺伝子ベクターやドラッグデリバリーシステム(DDS)として応用・発展させることはできない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ヘッド-テイル型共重合体PAMAMデンドロン−ポリ-L-リシンの水中で安定な中空ナノ微粒子及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体のベシクルからなり、ポリ-L-リシン間が架橋されている水中で安定な中空ナノ微粒子を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記ヘッド-テイル型ブロック共重合体を100/0〜50/50の水/水と混和性のアルコール混合溶媒に溶解させ;得られる溶液に、水/アルコール比が30/70〜0/100となるまでアルコールを滴下して、該ブロック共重合体を中空ナノ微粒子に自己組織化させ;得られた自己組織体を架橋処理することを含んでなる、水中で安定な中空ナノ微粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の中空ナノ微粒子によれば、ポリアミドアミンデンドロン及び/又はベシクル内部空間に物質を保持し、例えば運搬体/送達剤(ベクター、キャリア又はDDS製剤)として利用可能な水中で安定な中空ナノ微粒子が提供される。
本発明の中空ナノ微粒子の製造方法によれば、単分散の中空ナノ微粒子が容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<中空ナノ微粒子>
本発明の中空ナノ微粒子は、ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体のベシクルからなり、ポリ-L-リシン間が架橋されていることを特徴とする。この構成により、本発明の中空ナノ微粒子は水中で安定である。すなわち、水中でもベシクル構造を維持できる。本発明の中空ナノ微粒子はまた、凍結乾燥することができ、よって長期保存が可能である。
【0010】
本発明において、ポリアミドアミンデンドロンは、世代数が3.0〜4.0であることが好ましい。ポリアミドアミンデンドロンにおいて、好ましい繰り返し単位は、−CH2CH2CONHCH2CH2N<である。
末端基(又は表面基)は親水性基であり、例えばヒドロキシ基、アミノ基、(C1〜C4)アシル基、カルボキシル基、カルボキシル(C1〜C4)アルキル基、スルホ基、スルホ(C1〜C4)アルキル基であり、好ましくはヒドロキシ基である。
【0011】
繰り返し単位をX(好ましくは、X=−CH2CH2CONHCH2CH2N<)、末端基をYとすると3.0世代のポリアミドアミンデンドロンは式:
−CH2CH2−N(X(X(XY2)2)2
で表され、4.0世代のポリアミドアミンデンドロンは式:
−CH2CH2−N((X(X(X(XY2)2)2)2
で表される。
【0012】
1つの実施形態において、ポリアミドアミンデンドロンは3.5世代である。繰り返し単位が−CH2CH2CONHCH2CH2N<であり、末端基がカルボキシ基である3.5世代のポリアミドアミンデンドロンは、次式で表される。
【0013】
【化1】
【0014】
ポリ-L-リシン:
【化2】
(式中、nは重合度)
は、重合度が例えば60〜100、好ましくは60〜90、より好ましくは70〜90、より好ましくは70〜85である。ポリ-L-リシンはα-ヘリックス構造を形成し得る。
ポリ-L-リシン間は架橋されているが、水中で安定なベシクル構造を維持できる限り、ポリ-L-リシンの全ての側鎖アミノ基が架橋に関与している必要はない。
【0015】
架橋剤は、一級アミノ基と反応性であるが二級アミノ基と非反応性の架橋基を分子内に複数有するものである。
【0016】
そのような架橋基としては、例えば、エポキシ基、アルデヒド基、マレイミド基、活性エステル基、スルホ活性エステル基、ニトロフェニルアジド基、フェニルアジド基、フェニルグリオキサル基、ハライド基、イミドエステル基、ピリジルジチオ基、ビニルスルホン基、ヒドロキシフェニルアジド基、イソシアネート基が挙げられ、好ましくはエポキシ基、アルデヒド基である。架橋剤中の架橋基は一種であってもよいし、二種以上の組合せであってもよい。
【0017】
具体的には、以下の架橋剤が挙げられる。
分子内に複数個のエポキシ基を有する架橋剤としては、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エタンなどが挙げられる。
分子内に複数個のアルデヒド基を有する架橋剤としては、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フタリックジカルボキシアルデヒド(フタルアルデヒド)などが挙げられる。
【0018】
分子内にマレイミド基と活性エステル基を有する架橋剤としては、N-[α-マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル、N-[β-マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル、N-[ε-マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル、N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル、スクシニミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ-[6-アミドカプロエート]、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシニミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート、スクシニミジル-4-[p-メレイミドフェニル]ブチレート、スクシニミジル-6-[(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート]などが挙げられる。
【0019】
分子内に活性エステルとニトロフェニルアジド基を有する架橋剤としては、N-5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド、N-スクシニミジル-6-[4'-アジド-2'-ニトロフェニルアミノ]ヘキサノエートなどが挙げられる。
分子内にフェニルアジド基とフェニルグリオキサル基を有する架橋剤としては、p-アジドフェニルグリオキサルなどが挙げられる。
【0020】
分子内に複数個のマレイミド基を有する架橋剤としては、1,4-ビス-マレイミドブタン、ビス-マレイミドエタン、ビス-マレイミドヘキサン、1,4-ビス-マレイミジル-2,3-ジハイドロブタン、1,8-ビス-マレイミドトリエチレングリコール、1,11-ビス-マレイミドテトラエチレングリコール、ビス[2-(スクシンイミジルオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、トリス-[2-マレイミドエチル]アミンなどが挙げられる。
【0021】
分子内に複数個のスルホ活性エステル基を有する架橋剤としては、ビス[スルホスクシンイミジル]スベレート、ビス[2-(スルフォスクシニミドキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、ジスルホスクシニミジルタートレート、エチレングリコールビス[スルホスクシニミジルスクシネート]、トリス-スルホスクシニジルアミノトリアセテートなどが挙げられる。
【0022】
分子内に複数個のハライド基を有する架橋剤としては、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなどが挙げられる。
分子内に複数個のイミドエステル基を有する架橋剤としては、ジメチルアジピミデート、ジメチルピメリミデート、ジメチルスベリミデートなどが挙げられる。
分子内に複数個のピリジルジチオ基を有する架橋剤としては、1,4-ジ-[3'-(2'-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタンなどが挙げられる。
【0023】
分子内に複数個の活性エステル基を有する架橋剤としては、ジスクシニミジルグルタレート、ジスクシニミジルスベレート、ジスクシニミジルタートレート、エチレングリコールビス[スクシミジルスクシネート]などが挙げられる。
分子内に複数個のビニルスルホン基を有する架橋剤としては、1,6-ヘキサン-ビス-ビニルスルホンなどが挙げられる。
【0024】
分子内にピリジルジチオ基と活性エステル基を有する架橋剤としては、スクシニミジル-6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート、4-スクシニミジルオキシカルボニル-メチル-α-[2-ピリジルジチオ]トルエン、N-スクシニミジル-3-[2-ピリジルジチオ]プロピオネートなどが挙げられる。
【0025】
分子内にヒドロキシフェニルアジド基と活性エステル基を有する架橋剤としては、N-ヒドロキシスクシニミジル-4-アジドサリサイリック酸などが挙げられる。
分子内にマレイミド基とイソシアネート基を有する架橋剤としては、N-[p-マレイミドフェニル]イソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
分子内にマレイミド基とスルホ活性エステル基を有する架橋剤としては、N-[ε-マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシスルホスクシニミジル-4-アジドベンゾエート、N-[κ-マレイミドウンデカノイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、スルホスクシニミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート、スルホスクシニミジル-4-[p-マレイミドフェニル]ブチレートなどが挙げられる。
【0027】
分子内にピリジルジチオ基とスルホ活性エステル基を有する架橋剤としては、スルホスクシニミジル-6-[3'-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート、スルホスクシニミジル-6-[α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエートなどが挙げられる。
【0028】
分子内にヒドロキシフェニルアジド基とスルホ活性エステル基を有する架橋剤としては、スルホスクシニミジル[4-アジドサリサイルアミド]ヘキサノエートなどが挙げられる。
分子内にニトロフェニルアジド基とスルホ活性エステル基を有する架橋剤としては、スルホスクニミジル-6-[4'-アジド-2'-ニトロフェニルアミノ]ヘキサノエートなどが挙げられる。
【0029】
分子内にビニルスルホン基と活性エステル基を有する架橋剤としては、N-スクシニミジル-[4-ビニルスルホニル]ベンゾエートなどが挙げられる。
好ましい架橋剤は、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エタン、グルタルアルデヒドである。
【0030】
ポリ-L-リシン中に架橋に関与していない側鎖アミノ基(すなわち、架橋剤と未反応の側鎖アミノ基)が存在する場合、本発明の中空ナノ微粒子は、ベシクル膜中のイオン浸透圧が高いため、中性〜酸性条件下又は側鎖アミノ基の荷電条件下で、対イオンの存在によりベシクル膜が膨潤した状態となり(ポリ-L-リシン鎖の間隔が広がり)物質の出入りが可能となり、内部空間に物質を取り込み及び/又は予め内部空間に取り込まれた物質を放出することができる。このような本発明の中空ナノ微粒子は、ベシクル内部空間に、種々の物質、例えば、低分子量又は高分子量の薬物(例えば、制癌剤、インスリン)や核酸(DNA又はRNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド))を保持することができ、送達剤(例えば、キャリア又はDDS製剤)/運搬体(ベクター)として好適である。
【0031】
ポリ-L-リシン中に物質又は周囲環境に応答して荷電状態が変化し得る官能基を導入することにより、内部空間からの物質の放出を制御することも本発明の中空ナノ微粒子において可能である。例えば、フェニルボロン酸基(糖と結合して負に荷電)を導入することにより、糖(例えば血糖)に応答して内部空間の物質(例えばインスリン)を放出させる中空ナノ微粒子を提供することができる。ポリ-L-リシン中へのフェニルボロン酸基の導入は、公知の技術(例えば、特開2001−139596を参照)により行い得る。
【0032】
ポリ-L-リシン中に架橋に関与していない側鎖アミノ基が存在する場合、本発明の中空ナノ微粒子はまた、側鎖アミノ基のイオン化状態により粒径が変化し得る。酸性条件下(すなわち、側鎖アミノ基が−NH3+となる条件下)では粒径が大きくなり、逆にアルカリ性条件下では粒径が小さくなる。例えば、粒径は、約150nm〜約300nmの範囲で変化し得る。本発明の中空ナノ微粒子のこの性質は、センシングに利用し得る。
【0033】
好ましくは、ポリ-L-リシンの側鎖アミノ基の1〜60%、より好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜60%(蛍光試薬フルオレスカミンを用いた一級アミノ基定量による;測定方法の詳細については実施例を参照)がポリ-L-リシンの架橋に関与し、残りの側鎖アミノ基は架橋剤と未反応のままである(すなわち、−NH2又は−NH3+)。
【0034】
本発明の中空ナノ微粒子において、ポリアミドアミンデンドロンには種々の物質を担持させることができる。ポリアミドアミンデンドロンに担持させ得る物質としては、低分子治療薬、高分子治療薬(例えば、酵素、トキシン)、抗体、リガンド、金、白金、標識物質(例えば、蛍光物質、放射性物質)が挙げられる。物質は、ポリアミドアミンデンドロンの樹状構造(又は網目構造)に保持(間隙に収容)されていてもよいし、或いはポリアミドアミンデンドロン(例えば、末端基)に直接又はリンカーを介して共有結合されていてもよい。
【0035】
1つの好ましい実施形態において、ポリアミドアミンデンドロンは金又は白金のナノ微粒子を担持している。金をポリアミドアミンデンドロンに担持させるには、従来方法のように、還元剤の存在下で、塩化金酸(例えばテトラクロロ金酸)又は塩化白金酸(例えばヘキサクロロ白金酸)を添加してもよいし、還元剤の非存在下で塩化金酸又は塩化白金酸を添加してもよい。
【0036】
本発明においては、ポリアミドアミンデンドロンのアミノ基は、ポリ-L-リシンの存在やデンドロンの世代数とは無関係に(すなわち、PAMAMデンドリマーや、PAMAMデンドロン−脂質のような他のPAMAMデンドロン複合体のデンドロン部においても)、還元剤として働き得るので、上記のPAMAMデンドロン−ポリ-L-リシンに限らず任意のPAMAMデンドロン複合体(又はPAMAMデンドリマー)において、還元剤の非存在下で塩化金酸又は塩化白金酸と接触させることによりPAMAMデンドロンに金又は白金のナノ微粒子を担持させることができる。
【0037】
ここで、還元剤の非存在下でも金又は白金のナノ微粒子を担持させ得るPAMAMデンドリマー又はデンドロンは、例えば、繰り返し単位X=−CH2CH2CONHCH2CH2N<で、世代数2から8(好ましくは3から6)のものであり得、PAMAMデンドロンと複合体を形成し得る物質は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリペプチド、アミノ酸、ポリエステル(例えばポリラクチド)などの水溶性合成高分子(例えば、分子量100〜20000、好ましくは200〜15000、より好ましくは500〜10000)であり得る。
【0038】
PEG修飾PAMAMデンドロンは、例えば、次式(1)で表される。
【化3】
(式中、(−CH2CH2O−)mはPEGを示し、Rは水素、又は種々の官能基若しくはポリマーを示す。ここで、Rの官能基若しくはポリマーとしては、例えば、(例えばC1〜C8)アルコキシカルボニル基、サクシニル基、アルキルチオール基、ポリエステル(例えばポリラクチド)、核酸(DNA又はRNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド))、ポリペプチド(例えばポリ-L-リシン)が挙げられる。)
【0039】
PAMAMデンドロン−PEGのようなPAMAMデンドロン複合体は、公知の方法(例えば、Bioconjugate Chem. 2007, 18, 1163-1169や高分子学会予稿集56巻2号5088頁(平成19年9月4日発行)に記載の方法)に基づいて製造できる。
【0040】
還元剤を使用せずにポリアミドアミンデンドロンに金又は白金のナノ微粒子を担持させるには、例えば、本発明の中空ナノ微粒子(又は他のPAMAデンドリマー若しくはデンドロン)を含む溶媒に弱酸性条件下(pHが4から7、好ましくは5〜6)で塩化金酸を添加すればよい。塩化金酸の添加量は、例えば、PAMAM分子中の三級アミン数に対して0.05から1.0等量(好ましくは0.1から0.5等量)である。
還元剤を使用しない場合、金又は白金のナノ微粒子はポリアミドアミンデンドロンの内部に担持され得る。ポリアミドアミンデンドロンが金のナノ微粒子を担持している本発明の中空ナノ微粒子(又は他のPAMAデンドリマー若しくはデンドロン)は、例えば、センシングに利用でき、検出試薬として提供され得る。
【0041】
本発明の中空ナノ微粒子の粒径は、ナノメートルオーダーである。例えば、平均粒径は100〜300nmであり得る。1つの好ましい実施形態において、粒径分布は単分散(例えば、多分散指数0.04〜0.05)である。
【0042】
本発明の中空ナノ微粒子は、水性媒体、特に医薬的に許容され得る水性媒体(例えば、水、生理食塩水、緩衝化生理食塩水)に分散させた水性分散液として提供され得る。1つの好ましい実施形態において、水性分散液中の本発明の中空ナノ微粒子の粒径分布は単分散である。
【0043】
本発明の中空ナノ微粒子は、好適には、繰り返し単位が−CH2CH2CONHCH2CH2N<であり、末端基が親水性基である3.0〜4.0世代(好ましくは3.5世代)のポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシン(重合度は60〜100、より好ましくは60〜90、より好ましくは70〜90、より好ましくは70〜85である)のテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体の100/0〜50/50の水/メタノール混合溶媒の溶液に、該溶液の水/メタノールが30/70〜0/100(より好ましくは20/80〜0/100、より好ましくは20/80〜10/90)となるようにメタノールを滴下して形成される自己組織体を架橋処理して得られた中空ナノ微粒子である。
【0044】
<中空ナノ微粒子の製造方法>
本発明の中空ナノ微粒子の製造方法は、
ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体を、100/0〜50/50の水/水と混和性のアルコール混合溶媒に溶解させ、
得られる溶液に、水/アルコール比が30/70〜0/100となるまでアルコールを滴下して、該ブロック共重合体を中空ナノ微粒子に自己組織化させ、
得られた自己組織体を架橋処理することを含んでなることを特徴とする。
【0045】
ヘッド-テイル型ブロック共重合体は、公知の方法(例えば、Bioconjugate Chem., 17, 3(2006)に記載の方法)に基づいて製造できる。
【0046】
簡潔には、ヘッド部のポリアミドアミンデンドロンは、例えば、一方のアミノ基を保護したエチレンジアミンに、マイケル付加反応と続くエステルアミド交換反応とからなる1サイクルの反応を所望の世代数と同じ数のサイクル繰り返し、任意に(上記のような)末端基を付加することにより製造することができる。例えば、世代数3.5のポリアミドアミンデンドロンは、マイケル付加反応とエステルアミド交換反応とからなる反応サイクルを3.5サイクル繰り返す。ここで、「3.5サイクル」とは、3サイクルの反応後、マイケル付加反応を行い、エステルアミド交換反応を行わないことを意味する。
繰り返し単位が−CH2CH2CONHCH2CH2N<であるポリアミドアミンデンドロンを作製する場合、アクリル酸メチルを用いるマイケル付加反応とエチレンジアミンを用いるエステルアミド交換反応との反応サイクルを用いことができる。
【0047】
一方、テイル部(ポリ-L-リシン)は、例えば、ε-ベンジルオキシカルボニル-L-リシン無水物の重合反応により製造できる。
ヘッド部とテイル部は、別々に製造した後に結合してもよいし、予め製造したヘッド部に対してテイル部を、又は予め製造したテイル部に対してヘッド部を形成してもよい。
【0048】
このブロック共重合体は100/0〜50/50の水/水と混和性のアルコール混合溶媒に容易に溶解する。水と混和性のアルコールとしては、好ましくは低級アルコール、より好ましくはC1〜C4アルコール、最も好ましくはメタノールである。
【0049】
得られる溶液に、該溶液中の水/水と混和性のアルコール比30/70〜0/100(好ましくは20/80〜0/100、より好ましくは20/80〜10/90)までアルコールを滴下すると、ブロック共重合体が単分散の自己組織体(中空ナノ微粒子)を形成する。
【0050】
この時点(架橋処理前)の自己組織体は、水中又は高水/低アルコール混合溶媒中に移すとベシクル構造が崩壊し、ブロック共重合体は溶解する。
得られる自己組織体を架橋処理すると、自己組織体は、水中でもベシクル構造が維持されるようになる。
【0051】
架橋剤としては、上記のいずれも使用できるが、好ましくは1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エタン、グルタルアルデヒドである。架橋剤は、自己組織体の分散媒体と同じ水/水と混和性のアルコール混合溶媒に溶解させて添加する。
架橋剤の添加量は、ヘッド-テイル型共重合体のポリ-L-リシン中のアミノ基に対して例えば0.1〜50当量、好ましくは0.2〜25当量、より好ましくは0.25〜10等量である。
架橋剤の添加後、例えば2時間程度又はそれ以上静置すれば架橋が完了する。
【0052】
本発明の方法によれば、従来の分粒処理を要さずに、狭い単分散のナノ微粒子が得られる。しかし、適切な場合には、公知の方法(例えばフィルタリングや超音波処理)により更に分粒してもよい。
【実施例】
【0053】
実施例1:ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体から形成されるベシクルへの架橋構造導入による中空ナノ微粒子の調製
Haradaら(Bioconjugate Chem., 17, 3(2006))に記載される方法に従って、次式(2)で示されるヘッド-テイル型共重合体(ポリアミドアミンデンドロン世代数が3.5、ポリ-L-リシン数平均重合度が82) 4.0mgに蒸留水400μlを加えて溶解させた後、更にメタノール400μlを加えた。
【0054】
【化4】
【0055】
その後、攪拌しながら、メタノール1200μlを15分かけて滴下し、溶媒組成を体積分率にして水:メタノール=2:8にまで変化させ、該溶媒中で該ヘッド-テイル型共重合体のベシクルを形成させた。形成されたベシクルの形態を透過型電子顕微鏡観察(JEM-2000FEXII、日本電子株式会社製)、粒径を動的光散乱測定(ELS−8000、大塚電子株式会社製)により確認した。電子顕微鏡写真を図1、動的光散乱測定によって得られた粒径分布を図2に示す。Z−平均粒径が約190nmの単分散なベシクルが形成されていることが確認された。
【0056】
その後、この溶液に、1,2-ビス(2,2-エポキシプロポキシ)エタン30μl(2.05×10-4 mol:ポリ-L-リシンのアミノ基数に対して10等量)を滴下し撹拌した。2時間の架橋反応後の動的光散乱測定によって得られた粒径分布を図3に示す。単分散な粒径分布を維持していることが確認された。
【0057】
その後、蒸留水に対して透析を行うことにより溶媒を水へと置換した。この溶媒置換は、架橋反応を行っていないものについても同様に行った。溶媒置換後の粒径分布を図4に示す。架橋反応を行っていないものではナノ微粒子は検出されなかったが、架橋を施したものではZ−平均粒径が約250nmの単分散な中空ナノ微粒子が確認された。これは架橋によりベシクル構造が安定化され、水系溶媒中で安定に存在していることを意味する。また、この溶液1mLを凍結乾燥した後、水1mLにより再構成させたところ、水中での中空ナノ微粒子の再分散が確認され、本発明の中空ナノ微粒子は凍結乾燥が可能であることが確認された。
【0058】
ここで、第一級アミノ基と反応して蛍光を発する試薬であるフルオレスカミンを用いて未反応アミノ基数の定量実験を行った。励起波長390nm、蛍光波長479nmでの蛍光測定(FP-6500、日本分光株式会社製)により44%のアミノ基が未反応で存在し、56%のアミノ基に対して架橋反応が生じたことが確認された。また、架橋反応後の溶液について円二色性測定(J-820、日本分光株式会社製)からポリ-L-リシン部がα-ヘリックス構造を維持していることが確認された。
【0059】
実施例2:中空ナノ微粒子の平均粒径へのpHの影響
実施例1に示した手順で調製された中空ナノ微粒子溶液において、0.05M水酸化ナトリウム水溶液及び0.05M塩酸を用いてpHを変化させることにより、種々pH条件下での中空ナノカプセルのZ−平均粒径を動的光散乱測定により評価した。図5に中空ナノ微粒子の平均粒径のpH依存性を示す。pH8.5付近を境としてポリ-L-リシンの架橋反応に関与しなかったアミノ基がイオン化状態の変化によって粒径の変化が生じていることが確認された。低pH条件下(アミノ基がプロトン化している状態)ではベシクル膜内のイオン浸透圧が高いため膨潤して粒径が280nm程度となり、高pH条件下(脱プロトン化している状態)では収縮して粒径が180nm程度となり、pH変化によってベシクル膜の網目の密度が変化する。
【0060】
実施例3:中空ナノ微粒子への物質の包含と放出
実施例1で示した手順で調製された中空ナノ微粒子溶液を0.1M塩酸を用いてpH4.0とした。この溶液1mLに、同じくpH4.0のローズベンガル水溶液(0.03mg/mL)1mLを加えた。一晩静置した後、カラムに通し、中空ナノ微粒子のフラクションを回収し、紫外可視分光光度計(V-550、日本分光株式会社製)により、内部空間におけるローズベンガルの存在を確認した。550nmの吸光度が0.056であった。
【0061】
その後、0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.0とし、そのまま中空ナノ微粒子を2日間保存し、再度紫外可視分光光度を測定した。550nmの吸光度は0.055であり、中空ナノ微粒子の内部空間におけるローズベンガル量に変化はなかった。しかし、続いて0.1M塩酸を用いてpH4.0とすると、550nmの吸光度は0.019となり内部空間中のローズベンガル量の減少が確認された。これは、本発明の中空ナノ微粒子が低pH条件下では膨潤しており拡散によって物質を包含することができ、高pHへ変化させ収縮させることによって物質が安定に保持されることを意味する。さらに、pHを再び低下させると、中空ナノ微粒子から放出させることも可能であることが確認された。
【0062】
実施例4a:中空ナノ微粒子のポリアミドアミンデンドロン部での金ナノ微粒子の担持
実施例1で示した手順で調製された中空ナノ微粒子溶液1.739mlにテトラクロロ金(III)酸四水和物0.18mg(4.37×10-7 mol)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)を、還元剤の非存在下で、激しく撹拌しつつ加え、その後静置し、紫外可視吸収スペクトルの経時変化を観測した。紫外可視吸収スペクトルの変化を図6に示す。時間変化にともに530nm付近の吸収が増大し、金ナノ微粒子の生成が確認された。また、金ナノ微粒子の生成は透過型電子顕微鏡観察により確認した(図7)。金ナノ微粒子が中空ナノ微粒子内で生成され担持されていることが確認された。よって、本発明の中空ナノ微粒子においては、還元剤を用いることなく、ポリアミドアミンデンドロンに金ナノ微粒子を担持できることが確認された。
【0063】
得られた溶液1.0mLに対して光量640W/m2の可視光を照射し、その間の溶液の温度変化を、熱伝対を用いて測定した。塩化金酸濃度を等しくした市販の金ナノ微粒子溶液(5nm Colloidal Gold、SIGMA製)についても同様の測定を行った。光照射時間と温度変化の関係を図8に示す。市販の金ナノ微粒子と同様に、中空ナノ微粒子に担持された金ナノ微粒子も発熱挙動を示すことが確認された。
【0064】
実施例4b:ポリアミドアミンデンドリマーを利用した還元剤非存在下での金ナノ微粒子の調製
第4世代のポリアミドアミンデンドリマー36.6mgを50mMリン酸緩衝液(pH=7.4)18.3mLに溶解させた。この溶液1mLに0.731mg/mLの塩化金酸溶液1mL加え、その後の紫外可視分光スペクトルの変化を観測した。紫外可視分光スペクトルの経時変化を図9に示す。時間変化に伴い、530nm付近の吸収が増大し、金ナノ微粒子の生成が確認された。
このことから、還元剤非存在下でのPAMAMデンドロンへの金ナノ微粒子の担持にはポリ-L-リシンは関与していないことが確認できた。
【0065】
実施例4c:先端(末端基)へポリエチレングリコールが導入された種々の世代数のポリアミドアミンデンドロンを利用した還元剤非存在下での金ナノ微粒子の調製
世代数2.0、3.0、4.0のポリアミドアミンデンドロンの先端に分子量2000のポリエチレングリコール鎖がそれぞれ4本、8本、16本導入されたポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン(PEG修飾PAMAMデンドロン)を用いた。例えば、世代数3.0のPEG修飾PAMAMデンドロンは次式(3)で表される。
【0066】
【化5】
(式中、(−CH2CH2O−)mは分子量2000のポリエチレングリコールを示し、Rはtert-ブトキシカルボニル基を示す。)
【0067】
上記のポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロンを50mMリン酸緩衝液(pH=7.4)に溶解して、それぞれ21.1mg/mL、18.1mg/mL、17.0mg/mLの溶液を調製した。種々pH(2、3、4、5、6、7及び8)の0.731mg/mLの塩化金酸水溶液を調製した。上記ポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン1mLと上記塩化金酸水溶液1mLを混合し、得られた混合溶液の紫外可視分光スペクトルの変化を観測した。
【0068】
世代数2.0のポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロンとpH5、6及び7の塩化金酸水溶液を混合して24時間後の紫外可視分光スペクトルを図10に示す。
世代数3.0のポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロンとpH5、6及び7の塩化金酸水溶液を混合して24時間後の紫外可視分光スペクトルを図11に示す。
世代数4.0のポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロンを用いpH2〜8の塩化金酸水溶液を混合して24時間後の紫外可視分光スペクトルを図12に示す。
【0069】
いずれの世代数のポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロンにおいても金ナノ微粒子の生成による吸収が確認された。
このことから、先端(末端基)にPEGのような水溶性高分子が結合したPAMAMデンドロンであっても、還元剤非存在下で、PAMAMデンドロンに金ナノ微粒子を担持させることが可能であることが確認できた。
【0070】
吸収スペクトルの極大波長はpHに依存して変化している。
また、世代数4.0のPEG修飾PAMAMデンドロンとpH6及び7の塩化金酸水溶液とを混合して調製されたものを透過型電子顕微鏡で観察したところ、pHに依存してサイズの明らかな違いが確認された(図13)。pH6(左図)では数nmの金ナノ微粒子であるのに対し、pH7(右図)では約40〜50nmの金ナノ微粒子となっている。
【0071】
このことから、デンドロン(デンドリマー)に担持される金ナノ微粒子の粒径は、塩化金酸水溶液のpHにより制御することが可能であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体から形成されるベシクルの透過型電子顕微鏡写真
【図2】ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体から形成されるベシクルの粒径分布
【図3】ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体から形成されるベシクルを1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エタンにより架橋した後の粒径分布
【図4】架橋したベシクルを蒸留水へ溶媒置換した後の粒径分布
【図5】中空ナノ微粒子の平均粒径のpH依存性
【図6】中空ナノ微粒子溶液へ塩化金酸を添加後の紫外可視吸収スペクトル変化
【図7】金ナノ微粒子担持中空ナノ微粒子の透過型電子顕微鏡写真
【図8】金ナノ微粒子の可視光照射時間と温度変化の関係
【0073】
【図9】ポリアミドアミンデンドリマーと塩化金酸の混合溶液の紫外可視吸収スペクトル変化
【図10】ポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン(世代数2.0)と塩化金酸の混合溶液の混合24時間後の紫外可視吸収スペクトル
【図11】ポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン(世代数3.0)と塩化金酸の混合溶液の混合24時間後の紫外可視吸収スペクトル
【図12】ポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン(世代数4.0)と塩化金酸の混合溶液の混合24時間後の紫外可視吸収スペクトル
【図13】ポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン(世代数4.0)と塩化金酸の混合により調製された金ナノ微粒子の透過型電子顕微鏡写真(左図:pH6、右図:pH7)
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で安定な中空ナノ微粒子に関し、より詳細にはポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体の水中で安定な中空ナノ微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロック共重合体が選択溶媒中での自己組織化により形成する多分子集合体は、高分子ミセルやロッド、ラメラ、ベシクルなど様々な形態をとることが報告されている(非特許文献1〜4)。
樹木状高分子であるポリアミドアミン(PAMAM)デンドロンとポリペプチドであるポリ-L-リシン(PLL)からなるヘッド-テイル型ブロック共重合体は、水/高濃度メタノール混合溶媒中で、自己組織化によりベシクルを形成することが知られている(非特許文献5〜7)。
【0003】
【非特許文献1】van Hest, J. C. M.; Delnoye, D. A. P.; Baars, M. W. P. L.; van Genderen, M. H. P.; Meijer, E. W. Science 1995, 268, 1592-1595
【非特許文献2】Vandermeulen, G. W. M.; Klok, H. A. Macromol. Biosci. 2004, 4, 383-398
【非特許文献3】Klok, H. A.; Lecommandoux, S. Adv. Mater. 2001, 13, 1217-1229
【非特許文献4】Kim, K. T. K.; Winnik, M. A.; Manners, I. Soft Matter 2006, 2, 957-965
【非特許文献5】高分子学会予稿集55巻1号1276頁 平成18年5月10日発行
【非特許文献6】第53回高分子研究発表会(神戸)予稿集138頁 平成19年7月20日発行
【非特許文献7】高分子学会予稿集56巻2号5058頁 平成19年9月4日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ヘッド-テイル型ブロック共重合体が高濃度メタノール/水混合溶媒中で形成するベシクルは、水中に移行すると崩壊してしまう。ベシクル構造を維持するために分散媒としてメタノール含有溶媒を必要とする限り、該ベシクルからなる中空ナノ微粒子を、例えば遺伝子ベクターやドラッグデリバリーシステム(DDS)として応用・発展させることはできない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ヘッド-テイル型共重合体PAMAMデンドロン−ポリ-L-リシンの水中で安定な中空ナノ微粒子及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体のベシクルからなり、ポリ-L-リシン間が架橋されている水中で安定な中空ナノ微粒子を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記ヘッド-テイル型ブロック共重合体を100/0〜50/50の水/水と混和性のアルコール混合溶媒に溶解させ;得られる溶液に、水/アルコール比が30/70〜0/100となるまでアルコールを滴下して、該ブロック共重合体を中空ナノ微粒子に自己組織化させ;得られた自己組織体を架橋処理することを含んでなる、水中で安定な中空ナノ微粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の中空ナノ微粒子によれば、ポリアミドアミンデンドロン及び/又はベシクル内部空間に物質を保持し、例えば運搬体/送達剤(ベクター、キャリア又はDDS製剤)として利用可能な水中で安定な中空ナノ微粒子が提供される。
本発明の中空ナノ微粒子の製造方法によれば、単分散の中空ナノ微粒子が容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<中空ナノ微粒子>
本発明の中空ナノ微粒子は、ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体のベシクルからなり、ポリ-L-リシン間が架橋されていることを特徴とする。この構成により、本発明の中空ナノ微粒子は水中で安定である。すなわち、水中でもベシクル構造を維持できる。本発明の中空ナノ微粒子はまた、凍結乾燥することができ、よって長期保存が可能である。
【0010】
本発明において、ポリアミドアミンデンドロンは、世代数が3.0〜4.0であることが好ましい。ポリアミドアミンデンドロンにおいて、好ましい繰り返し単位は、−CH2CH2CONHCH2CH2N<である。
末端基(又は表面基)は親水性基であり、例えばヒドロキシ基、アミノ基、(C1〜C4)アシル基、カルボキシル基、カルボキシル(C1〜C4)アルキル基、スルホ基、スルホ(C1〜C4)アルキル基であり、好ましくはヒドロキシ基である。
【0011】
繰り返し単位をX(好ましくは、X=−CH2CH2CONHCH2CH2N<)、末端基をYとすると3.0世代のポリアミドアミンデンドロンは式:
−CH2CH2−N(X(X(XY2)2)2
で表され、4.0世代のポリアミドアミンデンドロンは式:
−CH2CH2−N((X(X(X(XY2)2)2)2
で表される。
【0012】
1つの実施形態において、ポリアミドアミンデンドロンは3.5世代である。繰り返し単位が−CH2CH2CONHCH2CH2N<であり、末端基がカルボキシ基である3.5世代のポリアミドアミンデンドロンは、次式で表される。
【0013】
【化1】
【0014】
ポリ-L-リシン:
【化2】
(式中、nは重合度)
は、重合度が例えば60〜100、好ましくは60〜90、より好ましくは70〜90、より好ましくは70〜85である。ポリ-L-リシンはα-ヘリックス構造を形成し得る。
ポリ-L-リシン間は架橋されているが、水中で安定なベシクル構造を維持できる限り、ポリ-L-リシンの全ての側鎖アミノ基が架橋に関与している必要はない。
【0015】
架橋剤は、一級アミノ基と反応性であるが二級アミノ基と非反応性の架橋基を分子内に複数有するものである。
【0016】
そのような架橋基としては、例えば、エポキシ基、アルデヒド基、マレイミド基、活性エステル基、スルホ活性エステル基、ニトロフェニルアジド基、フェニルアジド基、フェニルグリオキサル基、ハライド基、イミドエステル基、ピリジルジチオ基、ビニルスルホン基、ヒドロキシフェニルアジド基、イソシアネート基が挙げられ、好ましくはエポキシ基、アルデヒド基である。架橋剤中の架橋基は一種であってもよいし、二種以上の組合せであってもよい。
【0017】
具体的には、以下の架橋剤が挙げられる。
分子内に複数個のエポキシ基を有する架橋剤としては、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エタンなどが挙げられる。
分子内に複数個のアルデヒド基を有する架橋剤としては、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フタリックジカルボキシアルデヒド(フタルアルデヒド)などが挙げられる。
【0018】
分子内にマレイミド基と活性エステル基を有する架橋剤としては、N-[α-マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル、N-[β-マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル、N-[ε-マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル、N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル、スクシニミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシ-[6-アミドカプロエート]、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシニミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート、スクシニミジル-4-[p-メレイミドフェニル]ブチレート、スクシニミジル-6-[(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート]などが挙げられる。
【0019】
分子内に活性エステルとニトロフェニルアジド基を有する架橋剤としては、N-5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド、N-スクシニミジル-6-[4'-アジド-2'-ニトロフェニルアミノ]ヘキサノエートなどが挙げられる。
分子内にフェニルアジド基とフェニルグリオキサル基を有する架橋剤としては、p-アジドフェニルグリオキサルなどが挙げられる。
【0020】
分子内に複数個のマレイミド基を有する架橋剤としては、1,4-ビス-マレイミドブタン、ビス-マレイミドエタン、ビス-マレイミドヘキサン、1,4-ビス-マレイミジル-2,3-ジハイドロブタン、1,8-ビス-マレイミドトリエチレングリコール、1,11-ビス-マレイミドテトラエチレングリコール、ビス[2-(スクシンイミジルオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、トリス-[2-マレイミドエチル]アミンなどが挙げられる。
【0021】
分子内に複数個のスルホ活性エステル基を有する架橋剤としては、ビス[スルホスクシンイミジル]スベレート、ビス[2-(スルフォスクシニミドキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、ジスルホスクシニミジルタートレート、エチレングリコールビス[スルホスクシニミジルスクシネート]、トリス-スルホスクシニジルアミノトリアセテートなどが挙げられる。
【0022】
分子内に複数個のハライド基を有する架橋剤としては、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなどが挙げられる。
分子内に複数個のイミドエステル基を有する架橋剤としては、ジメチルアジピミデート、ジメチルピメリミデート、ジメチルスベリミデートなどが挙げられる。
分子内に複数個のピリジルジチオ基を有する架橋剤としては、1,4-ジ-[3'-(2'-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタンなどが挙げられる。
【0023】
分子内に複数個の活性エステル基を有する架橋剤としては、ジスクシニミジルグルタレート、ジスクシニミジルスベレート、ジスクシニミジルタートレート、エチレングリコールビス[スクシミジルスクシネート]などが挙げられる。
分子内に複数個のビニルスルホン基を有する架橋剤としては、1,6-ヘキサン-ビス-ビニルスルホンなどが挙げられる。
【0024】
分子内にピリジルジチオ基と活性エステル基を有する架橋剤としては、スクシニミジル-6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート、4-スクシニミジルオキシカルボニル-メチル-α-[2-ピリジルジチオ]トルエン、N-スクシニミジル-3-[2-ピリジルジチオ]プロピオネートなどが挙げられる。
【0025】
分子内にヒドロキシフェニルアジド基と活性エステル基を有する架橋剤としては、N-ヒドロキシスクシニミジル-4-アジドサリサイリック酸などが挙げられる。
分子内にマレイミド基とイソシアネート基を有する架橋剤としては、N-[p-マレイミドフェニル]イソシアネートなどが挙げられる。
【0026】
分子内にマレイミド基とスルホ活性エステル基を有する架橋剤としては、N-[ε-マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N-[γ-マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシスルホスクシニミジル-4-アジドベンゾエート、N-[κ-マレイミドウンデカノイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、スルホスクシニミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート、スルホスクシニミジル-4-[p-マレイミドフェニル]ブチレートなどが挙げられる。
【0027】
分子内にピリジルジチオ基とスルホ活性エステル基を有する架橋剤としては、スルホスクシニミジル-6-[3'-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート、スルホスクシニミジル-6-[α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエートなどが挙げられる。
【0028】
分子内にヒドロキシフェニルアジド基とスルホ活性エステル基を有する架橋剤としては、スルホスクシニミジル[4-アジドサリサイルアミド]ヘキサノエートなどが挙げられる。
分子内にニトロフェニルアジド基とスルホ活性エステル基を有する架橋剤としては、スルホスクニミジル-6-[4'-アジド-2'-ニトロフェニルアミノ]ヘキサノエートなどが挙げられる。
【0029】
分子内にビニルスルホン基と活性エステル基を有する架橋剤としては、N-スクシニミジル-[4-ビニルスルホニル]ベンゾエートなどが挙げられる。
好ましい架橋剤は、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エタン、グルタルアルデヒドである。
【0030】
ポリ-L-リシン中に架橋に関与していない側鎖アミノ基(すなわち、架橋剤と未反応の側鎖アミノ基)が存在する場合、本発明の中空ナノ微粒子は、ベシクル膜中のイオン浸透圧が高いため、中性〜酸性条件下又は側鎖アミノ基の荷電条件下で、対イオンの存在によりベシクル膜が膨潤した状態となり(ポリ-L-リシン鎖の間隔が広がり)物質の出入りが可能となり、内部空間に物質を取り込み及び/又は予め内部空間に取り込まれた物質を放出することができる。このような本発明の中空ナノ微粒子は、ベシクル内部空間に、種々の物質、例えば、低分子量又は高分子量の薬物(例えば、制癌剤、インスリン)や核酸(DNA又はRNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド))を保持することができ、送達剤(例えば、キャリア又はDDS製剤)/運搬体(ベクター)として好適である。
【0031】
ポリ-L-リシン中に物質又は周囲環境に応答して荷電状態が変化し得る官能基を導入することにより、内部空間からの物質の放出を制御することも本発明の中空ナノ微粒子において可能である。例えば、フェニルボロン酸基(糖と結合して負に荷電)を導入することにより、糖(例えば血糖)に応答して内部空間の物質(例えばインスリン)を放出させる中空ナノ微粒子を提供することができる。ポリ-L-リシン中へのフェニルボロン酸基の導入は、公知の技術(例えば、特開2001−139596を参照)により行い得る。
【0032】
ポリ-L-リシン中に架橋に関与していない側鎖アミノ基が存在する場合、本発明の中空ナノ微粒子はまた、側鎖アミノ基のイオン化状態により粒径が変化し得る。酸性条件下(すなわち、側鎖アミノ基が−NH3+となる条件下)では粒径が大きくなり、逆にアルカリ性条件下では粒径が小さくなる。例えば、粒径は、約150nm〜約300nmの範囲で変化し得る。本発明の中空ナノ微粒子のこの性質は、センシングに利用し得る。
【0033】
好ましくは、ポリ-L-リシンの側鎖アミノ基の1〜60%、より好ましくは5〜60%、より好ましくは10〜60%(蛍光試薬フルオレスカミンを用いた一級アミノ基定量による;測定方法の詳細については実施例を参照)がポリ-L-リシンの架橋に関与し、残りの側鎖アミノ基は架橋剤と未反応のままである(すなわち、−NH2又は−NH3+)。
【0034】
本発明の中空ナノ微粒子において、ポリアミドアミンデンドロンには種々の物質を担持させることができる。ポリアミドアミンデンドロンに担持させ得る物質としては、低分子治療薬、高分子治療薬(例えば、酵素、トキシン)、抗体、リガンド、金、白金、標識物質(例えば、蛍光物質、放射性物質)が挙げられる。物質は、ポリアミドアミンデンドロンの樹状構造(又は網目構造)に保持(間隙に収容)されていてもよいし、或いはポリアミドアミンデンドロン(例えば、末端基)に直接又はリンカーを介して共有結合されていてもよい。
【0035】
1つの好ましい実施形態において、ポリアミドアミンデンドロンは金又は白金のナノ微粒子を担持している。金をポリアミドアミンデンドロンに担持させるには、従来方法のように、還元剤の存在下で、塩化金酸(例えばテトラクロロ金酸)又は塩化白金酸(例えばヘキサクロロ白金酸)を添加してもよいし、還元剤の非存在下で塩化金酸又は塩化白金酸を添加してもよい。
【0036】
本発明においては、ポリアミドアミンデンドロンのアミノ基は、ポリ-L-リシンの存在やデンドロンの世代数とは無関係に(すなわち、PAMAMデンドリマーや、PAMAMデンドロン−脂質のような他のPAMAMデンドロン複合体のデンドロン部においても)、還元剤として働き得るので、上記のPAMAMデンドロン−ポリ-L-リシンに限らず任意のPAMAMデンドロン複合体(又はPAMAMデンドリマー)において、還元剤の非存在下で塩化金酸又は塩化白金酸と接触させることによりPAMAMデンドロンに金又は白金のナノ微粒子を担持させることができる。
【0037】
ここで、還元剤の非存在下でも金又は白金のナノ微粒子を担持させ得るPAMAMデンドリマー又はデンドロンは、例えば、繰り返し単位X=−CH2CH2CONHCH2CH2N<で、世代数2から8(好ましくは3から6)のものであり得、PAMAMデンドロンと複合体を形成し得る物質は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリペプチド、アミノ酸、ポリエステル(例えばポリラクチド)などの水溶性合成高分子(例えば、分子量100〜20000、好ましくは200〜15000、より好ましくは500〜10000)であり得る。
【0038】
PEG修飾PAMAMデンドロンは、例えば、次式(1)で表される。
【化3】
(式中、(−CH2CH2O−)mはPEGを示し、Rは水素、又は種々の官能基若しくはポリマーを示す。ここで、Rの官能基若しくはポリマーとしては、例えば、(例えばC1〜C8)アルコキシカルボニル基、サクシニル基、アルキルチオール基、ポリエステル(例えばポリラクチド)、核酸(DNA又はRNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド))、ポリペプチド(例えばポリ-L-リシン)が挙げられる。)
【0039】
PAMAMデンドロン−PEGのようなPAMAMデンドロン複合体は、公知の方法(例えば、Bioconjugate Chem. 2007, 18, 1163-1169や高分子学会予稿集56巻2号5088頁(平成19年9月4日発行)に記載の方法)に基づいて製造できる。
【0040】
還元剤を使用せずにポリアミドアミンデンドロンに金又は白金のナノ微粒子を担持させるには、例えば、本発明の中空ナノ微粒子(又は他のPAMAデンドリマー若しくはデンドロン)を含む溶媒に弱酸性条件下(pHが4から7、好ましくは5〜6)で塩化金酸を添加すればよい。塩化金酸の添加量は、例えば、PAMAM分子中の三級アミン数に対して0.05から1.0等量(好ましくは0.1から0.5等量)である。
還元剤を使用しない場合、金又は白金のナノ微粒子はポリアミドアミンデンドロンの内部に担持され得る。ポリアミドアミンデンドロンが金のナノ微粒子を担持している本発明の中空ナノ微粒子(又は他のPAMAデンドリマー若しくはデンドロン)は、例えば、センシングに利用でき、検出試薬として提供され得る。
【0041】
本発明の中空ナノ微粒子の粒径は、ナノメートルオーダーである。例えば、平均粒径は100〜300nmであり得る。1つの好ましい実施形態において、粒径分布は単分散(例えば、多分散指数0.04〜0.05)である。
【0042】
本発明の中空ナノ微粒子は、水性媒体、特に医薬的に許容され得る水性媒体(例えば、水、生理食塩水、緩衝化生理食塩水)に分散させた水性分散液として提供され得る。1つの好ましい実施形態において、水性分散液中の本発明の中空ナノ微粒子の粒径分布は単分散である。
【0043】
本発明の中空ナノ微粒子は、好適には、繰り返し単位が−CH2CH2CONHCH2CH2N<であり、末端基が親水性基である3.0〜4.0世代(好ましくは3.5世代)のポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシン(重合度は60〜100、より好ましくは60〜90、より好ましくは70〜90、より好ましくは70〜85である)のテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体の100/0〜50/50の水/メタノール混合溶媒の溶液に、該溶液の水/メタノールが30/70〜0/100(より好ましくは20/80〜0/100、より好ましくは20/80〜10/90)となるようにメタノールを滴下して形成される自己組織体を架橋処理して得られた中空ナノ微粒子である。
【0044】
<中空ナノ微粒子の製造方法>
本発明の中空ナノ微粒子の製造方法は、
ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体を、100/0〜50/50の水/水と混和性のアルコール混合溶媒に溶解させ、
得られる溶液に、水/アルコール比が30/70〜0/100となるまでアルコールを滴下して、該ブロック共重合体を中空ナノ微粒子に自己組織化させ、
得られた自己組織体を架橋処理することを含んでなることを特徴とする。
【0045】
ヘッド-テイル型ブロック共重合体は、公知の方法(例えば、Bioconjugate Chem., 17, 3(2006)に記載の方法)に基づいて製造できる。
【0046】
簡潔には、ヘッド部のポリアミドアミンデンドロンは、例えば、一方のアミノ基を保護したエチレンジアミンに、マイケル付加反応と続くエステルアミド交換反応とからなる1サイクルの反応を所望の世代数と同じ数のサイクル繰り返し、任意に(上記のような)末端基を付加することにより製造することができる。例えば、世代数3.5のポリアミドアミンデンドロンは、マイケル付加反応とエステルアミド交換反応とからなる反応サイクルを3.5サイクル繰り返す。ここで、「3.5サイクル」とは、3サイクルの反応後、マイケル付加反応を行い、エステルアミド交換反応を行わないことを意味する。
繰り返し単位が−CH2CH2CONHCH2CH2N<であるポリアミドアミンデンドロンを作製する場合、アクリル酸メチルを用いるマイケル付加反応とエチレンジアミンを用いるエステルアミド交換反応との反応サイクルを用いことができる。
【0047】
一方、テイル部(ポリ-L-リシン)は、例えば、ε-ベンジルオキシカルボニル-L-リシン無水物の重合反応により製造できる。
ヘッド部とテイル部は、別々に製造した後に結合してもよいし、予め製造したヘッド部に対してテイル部を、又は予め製造したテイル部に対してヘッド部を形成してもよい。
【0048】
このブロック共重合体は100/0〜50/50の水/水と混和性のアルコール混合溶媒に容易に溶解する。水と混和性のアルコールとしては、好ましくは低級アルコール、より好ましくはC1〜C4アルコール、最も好ましくはメタノールである。
【0049】
得られる溶液に、該溶液中の水/水と混和性のアルコール比30/70〜0/100(好ましくは20/80〜0/100、より好ましくは20/80〜10/90)までアルコールを滴下すると、ブロック共重合体が単分散の自己組織体(中空ナノ微粒子)を形成する。
【0050】
この時点(架橋処理前)の自己組織体は、水中又は高水/低アルコール混合溶媒中に移すとベシクル構造が崩壊し、ブロック共重合体は溶解する。
得られる自己組織体を架橋処理すると、自己組織体は、水中でもベシクル構造が維持されるようになる。
【0051】
架橋剤としては、上記のいずれも使用できるが、好ましくは1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エタン、グルタルアルデヒドである。架橋剤は、自己組織体の分散媒体と同じ水/水と混和性のアルコール混合溶媒に溶解させて添加する。
架橋剤の添加量は、ヘッド-テイル型共重合体のポリ-L-リシン中のアミノ基に対して例えば0.1〜50当量、好ましくは0.2〜25当量、より好ましくは0.25〜10等量である。
架橋剤の添加後、例えば2時間程度又はそれ以上静置すれば架橋が完了する。
【0052】
本発明の方法によれば、従来の分粒処理を要さずに、狭い単分散のナノ微粒子が得られる。しかし、適切な場合には、公知の方法(例えばフィルタリングや超音波処理)により更に分粒してもよい。
【実施例】
【0053】
実施例1:ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体から形成されるベシクルへの架橋構造導入による中空ナノ微粒子の調製
Haradaら(Bioconjugate Chem., 17, 3(2006))に記載される方法に従って、次式(2)で示されるヘッド-テイル型共重合体(ポリアミドアミンデンドロン世代数が3.5、ポリ-L-リシン数平均重合度が82) 4.0mgに蒸留水400μlを加えて溶解させた後、更にメタノール400μlを加えた。
【0054】
【化4】
【0055】
その後、攪拌しながら、メタノール1200μlを15分かけて滴下し、溶媒組成を体積分率にして水:メタノール=2:8にまで変化させ、該溶媒中で該ヘッド-テイル型共重合体のベシクルを形成させた。形成されたベシクルの形態を透過型電子顕微鏡観察(JEM-2000FEXII、日本電子株式会社製)、粒径を動的光散乱測定(ELS−8000、大塚電子株式会社製)により確認した。電子顕微鏡写真を図1、動的光散乱測定によって得られた粒径分布を図2に示す。Z−平均粒径が約190nmの単分散なベシクルが形成されていることが確認された。
【0056】
その後、この溶液に、1,2-ビス(2,2-エポキシプロポキシ)エタン30μl(2.05×10-4 mol:ポリ-L-リシンのアミノ基数に対して10等量)を滴下し撹拌した。2時間の架橋反応後の動的光散乱測定によって得られた粒径分布を図3に示す。単分散な粒径分布を維持していることが確認された。
【0057】
その後、蒸留水に対して透析を行うことにより溶媒を水へと置換した。この溶媒置換は、架橋反応を行っていないものについても同様に行った。溶媒置換後の粒径分布を図4に示す。架橋反応を行っていないものではナノ微粒子は検出されなかったが、架橋を施したものではZ−平均粒径が約250nmの単分散な中空ナノ微粒子が確認された。これは架橋によりベシクル構造が安定化され、水系溶媒中で安定に存在していることを意味する。また、この溶液1mLを凍結乾燥した後、水1mLにより再構成させたところ、水中での中空ナノ微粒子の再分散が確認され、本発明の中空ナノ微粒子は凍結乾燥が可能であることが確認された。
【0058】
ここで、第一級アミノ基と反応して蛍光を発する試薬であるフルオレスカミンを用いて未反応アミノ基数の定量実験を行った。励起波長390nm、蛍光波長479nmでの蛍光測定(FP-6500、日本分光株式会社製)により44%のアミノ基が未反応で存在し、56%のアミノ基に対して架橋反応が生じたことが確認された。また、架橋反応後の溶液について円二色性測定(J-820、日本分光株式会社製)からポリ-L-リシン部がα-ヘリックス構造を維持していることが確認された。
【0059】
実施例2:中空ナノ微粒子の平均粒径へのpHの影響
実施例1に示した手順で調製された中空ナノ微粒子溶液において、0.05M水酸化ナトリウム水溶液及び0.05M塩酸を用いてpHを変化させることにより、種々pH条件下での中空ナノカプセルのZ−平均粒径を動的光散乱測定により評価した。図5に中空ナノ微粒子の平均粒径のpH依存性を示す。pH8.5付近を境としてポリ-L-リシンの架橋反応に関与しなかったアミノ基がイオン化状態の変化によって粒径の変化が生じていることが確認された。低pH条件下(アミノ基がプロトン化している状態)ではベシクル膜内のイオン浸透圧が高いため膨潤して粒径が280nm程度となり、高pH条件下(脱プロトン化している状態)では収縮して粒径が180nm程度となり、pH変化によってベシクル膜の網目の密度が変化する。
【0060】
実施例3:中空ナノ微粒子への物質の包含と放出
実施例1で示した手順で調製された中空ナノ微粒子溶液を0.1M塩酸を用いてpH4.0とした。この溶液1mLに、同じくpH4.0のローズベンガル水溶液(0.03mg/mL)1mLを加えた。一晩静置した後、カラムに通し、中空ナノ微粒子のフラクションを回収し、紫外可視分光光度計(V-550、日本分光株式会社製)により、内部空間におけるローズベンガルの存在を確認した。550nmの吸光度が0.056であった。
【0061】
その後、0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH9.0とし、そのまま中空ナノ微粒子を2日間保存し、再度紫外可視分光光度を測定した。550nmの吸光度は0.055であり、中空ナノ微粒子の内部空間におけるローズベンガル量に変化はなかった。しかし、続いて0.1M塩酸を用いてpH4.0とすると、550nmの吸光度は0.019となり内部空間中のローズベンガル量の減少が確認された。これは、本発明の中空ナノ微粒子が低pH条件下では膨潤しており拡散によって物質を包含することができ、高pHへ変化させ収縮させることによって物質が安定に保持されることを意味する。さらに、pHを再び低下させると、中空ナノ微粒子から放出させることも可能であることが確認された。
【0062】
実施例4a:中空ナノ微粒子のポリアミドアミンデンドロン部での金ナノ微粒子の担持
実施例1で示した手順で調製された中空ナノ微粒子溶液1.739mlにテトラクロロ金(III)酸四水和物0.18mg(4.37×10-7 mol)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)を、還元剤の非存在下で、激しく撹拌しつつ加え、その後静置し、紫外可視吸収スペクトルの経時変化を観測した。紫外可視吸収スペクトルの変化を図6に示す。時間変化にともに530nm付近の吸収が増大し、金ナノ微粒子の生成が確認された。また、金ナノ微粒子の生成は透過型電子顕微鏡観察により確認した(図7)。金ナノ微粒子が中空ナノ微粒子内で生成され担持されていることが確認された。よって、本発明の中空ナノ微粒子においては、還元剤を用いることなく、ポリアミドアミンデンドロンに金ナノ微粒子を担持できることが確認された。
【0063】
得られた溶液1.0mLに対して光量640W/m2の可視光を照射し、その間の溶液の温度変化を、熱伝対を用いて測定した。塩化金酸濃度を等しくした市販の金ナノ微粒子溶液(5nm Colloidal Gold、SIGMA製)についても同様の測定を行った。光照射時間と温度変化の関係を図8に示す。市販の金ナノ微粒子と同様に、中空ナノ微粒子に担持された金ナノ微粒子も発熱挙動を示すことが確認された。
【0064】
実施例4b:ポリアミドアミンデンドリマーを利用した還元剤非存在下での金ナノ微粒子の調製
第4世代のポリアミドアミンデンドリマー36.6mgを50mMリン酸緩衝液(pH=7.4)18.3mLに溶解させた。この溶液1mLに0.731mg/mLの塩化金酸溶液1mL加え、その後の紫外可視分光スペクトルの変化を観測した。紫外可視分光スペクトルの経時変化を図9に示す。時間変化に伴い、530nm付近の吸収が増大し、金ナノ微粒子の生成が確認された。
このことから、還元剤非存在下でのPAMAMデンドロンへの金ナノ微粒子の担持にはポリ-L-リシンは関与していないことが確認できた。
【0065】
実施例4c:先端(末端基)へポリエチレングリコールが導入された種々の世代数のポリアミドアミンデンドロンを利用した還元剤非存在下での金ナノ微粒子の調製
世代数2.0、3.0、4.0のポリアミドアミンデンドロンの先端に分子量2000のポリエチレングリコール鎖がそれぞれ4本、8本、16本導入されたポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン(PEG修飾PAMAMデンドロン)を用いた。例えば、世代数3.0のPEG修飾PAMAMデンドロンは次式(3)で表される。
【0066】
【化5】
(式中、(−CH2CH2O−)mは分子量2000のポリエチレングリコールを示し、Rはtert-ブトキシカルボニル基を示す。)
【0067】
上記のポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロンを50mMリン酸緩衝液(pH=7.4)に溶解して、それぞれ21.1mg/mL、18.1mg/mL、17.0mg/mLの溶液を調製した。種々pH(2、3、4、5、6、7及び8)の0.731mg/mLの塩化金酸水溶液を調製した。上記ポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン1mLと上記塩化金酸水溶液1mLを混合し、得られた混合溶液の紫外可視分光スペクトルの変化を観測した。
【0068】
世代数2.0のポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロンとpH5、6及び7の塩化金酸水溶液を混合して24時間後の紫外可視分光スペクトルを図10に示す。
世代数3.0のポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロンとpH5、6及び7の塩化金酸水溶液を混合して24時間後の紫外可視分光スペクトルを図11に示す。
世代数4.0のポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロンを用いpH2〜8の塩化金酸水溶液を混合して24時間後の紫外可視分光スペクトルを図12に示す。
【0069】
いずれの世代数のポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロンにおいても金ナノ微粒子の生成による吸収が確認された。
このことから、先端(末端基)にPEGのような水溶性高分子が結合したPAMAMデンドロンであっても、還元剤非存在下で、PAMAMデンドロンに金ナノ微粒子を担持させることが可能であることが確認できた。
【0070】
吸収スペクトルの極大波長はpHに依存して変化している。
また、世代数4.0のPEG修飾PAMAMデンドロンとpH6及び7の塩化金酸水溶液とを混合して調製されたものを透過型電子顕微鏡で観察したところ、pHに依存してサイズの明らかな違いが確認された(図13)。pH6(左図)では数nmの金ナノ微粒子であるのに対し、pH7(右図)では約40〜50nmの金ナノ微粒子となっている。
【0071】
このことから、デンドロン(デンドリマー)に担持される金ナノ微粒子の粒径は、塩化金酸水溶液のpHにより制御することが可能であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体から形成されるベシクルの透過型電子顕微鏡写真
【図2】ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体から形成されるベシクルの粒径分布
【図3】ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体から形成されるベシクルを1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エタンにより架橋した後の粒径分布
【図4】架橋したベシクルを蒸留水へ溶媒置換した後の粒径分布
【図5】中空ナノ微粒子の平均粒径のpH依存性
【図6】中空ナノ微粒子溶液へ塩化金酸を添加後の紫外可視吸収スペクトル変化
【図7】金ナノ微粒子担持中空ナノ微粒子の透過型電子顕微鏡写真
【図8】金ナノ微粒子の可視光照射時間と温度変化の関係
【0073】
【図9】ポリアミドアミンデンドリマーと塩化金酸の混合溶液の紫外可視吸収スペクトル変化
【図10】ポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン(世代数2.0)と塩化金酸の混合溶液の混合24時間後の紫外可視吸収スペクトル
【図11】ポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン(世代数3.0)と塩化金酸の混合溶液の混合24時間後の紫外可視吸収スペクトル
【図12】ポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン(世代数4.0)と塩化金酸の混合溶液の混合24時間後の紫外可視吸収スペクトル
【図13】ポリエチレングリコール修飾ポリアミドアミンデンドロン(世代数4.0)と塩化金酸の混合により調製された金ナノ微粒子の透過型電子顕微鏡写真(左図:pH6、右図:pH7)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体のベシクルからなり、ポリ-L-リシン間が架橋されている水中で安定な中空ナノ微粒子。
【請求項2】
ポリ-L-リシンがα-ヘリックス構造を有する、請求項1に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項3】
ポリ-L-リシンの側鎖アミノ基の1〜60%がポリ-L-リシン間の架橋に関与している、請求項1又は2に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項4】
ポリアミドアミンデンドロンの繰り返し単位が−CH2CH2CONHCH2CH2N<であり、世代数が3.0〜4.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項5】
ポリアミドアミンデンドロンが3.5世代である請求項4に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項6】
内部空間に薬物を含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項7】
内部空間に核酸を含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項8】
ポリアミドアミンデンドロンが金又は白金のナノ微粒子を担持している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の中空ナノ微粒子を含んでなる水性分散液。
【請求項10】
ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体を、100/0〜50/50の水/水と混和性のアルコール混合溶媒に溶解させ、
得られる溶液に、水/アルコール比が30/70〜0/100となるまでアルコールを滴下して、該ブロック共重合体を中空ナノ微粒子に自己組織化させ、
得られた自己組織体を架橋処理することを含んでなる、水中で安定な中空ナノ微粒子の製造方法。
【請求項11】
水と混和性のアルコールがメタノールである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項1】
ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体のベシクルからなり、ポリ-L-リシン間が架橋されている水中で安定な中空ナノ微粒子。
【請求項2】
ポリ-L-リシンがα-ヘリックス構造を有する、請求項1に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項3】
ポリ-L-リシンの側鎖アミノ基の1〜60%がポリ-L-リシン間の架橋に関与している、請求項1又は2に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項4】
ポリアミドアミンデンドロンの繰り返し単位が−CH2CH2CONHCH2CH2N<であり、世代数が3.0〜4.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項5】
ポリアミドアミンデンドロンが3.5世代である請求項4に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項6】
内部空間に薬物を含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項7】
内部空間に核酸を含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項8】
ポリアミドアミンデンドロンが金又は白金のナノ微粒子を担持している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の中空ナノ微粒子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の中空ナノ微粒子を含んでなる水性分散液。
【請求項10】
ポリアミドアミンデンドロンのヘッド部とポリ-L-リシンのテイル部とを有するヘッド-テイル型ブロック共重合体を、100/0〜50/50の水/水と混和性のアルコール混合溶媒に溶解させ、
得られる溶液に、水/アルコール比が30/70〜0/100となるまでアルコールを滴下して、該ブロック共重合体を中空ナノ微粒子に自己組織化させ、
得られた自己組織体を架橋処理することを含んでなる、水中で安定な中空ナノ微粒子の製造方法。
【請求項11】
水と混和性のアルコールがメタノールである、請求項10に記載の製造方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4】
【図5】
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−269998(P2009−269998A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121543(P2008−121543)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月12日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第88春季年会(2008年)講演予稿集」に発表
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月12日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第88春季年会(2008年)講演予稿集」に発表
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】
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