説明

ヘッドアップディスプレイ装置

【課題】ミラーに起因したハウジングの衝撃吸収機能の低下を防止することができるヘッドアップディスプレイ装置の提供。
【解決手段】車両のウインドシールドガラス下方に設置されるヘッドアップディスプレイ装置において、可視光線を発生させる表示器と、表示器が発生した可視光線を反射して該可視光線の照射方向を変更させるミラーと、表示器及びミラーを収容し、ミラーを支持する支持部を備えるハウジングと、を含み、支持部は、ミラーに力が加えられたときにミラーの支持を解放することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドシールド下方に設置されるヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヘッドアップディスプレイ装置のハウジングのカバーにフロントウインドシールド側から所定の外力が加わったときに、ハウジングのカバーとケースとの間の係合部が破断するように構成されたヘッドアップディスプレイ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このヘッドアップディスプレイ装置では、ハウジングのカバーとケースとの間の係合部が破断すると、ハウジングの高さが低くなり、車体の歩行者傷害軽減構造の衝撃吸収機能を確保することが可能となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−64708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヘッドアップディスプレイ装置のハウジング内には、表示光を生成する表示光生成器と共に、表示光を反射させるためのミラーが収容されることがある。しかしながら、このミラーは、ハウジング内を上下方向に延在するようにハウジング内に設けられるので、ハウジングのカバーとケースとの間の係合部が破断しても、ハウジングのカバーがこのミラーに引っかかり、所期の衝撃吸収機能を得られない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、ミラーに起因したハウジングの衝撃吸収機能の低下を防止することができるヘッドアップディスプレイ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、車両のウインドシールドガラス下方に設置されるヘッドアップディスプレイ装置において、
可視光線を発生させる表示器と、
前記表示器が発生した可視光線を反射して該可視光線の照射方向を変更させるミラーと、
前記表示器及び前記ミラーを収容し、前記ミラーを支持する支持部を備えるハウジングと、を含み、
前記ミラーに力が加えられたときに前記ミラーが前記支持部から離脱するように構成されたことを特徴とする、ヘッドアップディスプレイ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ミラーに起因したハウジングの衝撃吸収機能の低下を防止することができるヘッドアップディスプレイ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例によるヘッドアップディスプレイ装置10の要部構成を車両側面視の断面で模式的に示す図である。
【図2】本実施例によるミラー20の支持構造の特徴を概念的に示す図である。
【図3】本実施例によるミラー20の支持構造の一例を示す斜視図である。
【図4】軸受け52を示す断面図である。
【図5】被衝突体が車両の衝突したときの本実施例によるヘッドアップディスプレイ装置10の挙動を時系列で模式的に示す図である。
【図6】本実施例によるミラー20の支持構造のその他の一例を示す斜視図である。
【図7】図6に示すミラー20の被支持軸53の特徴を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0010】
図1は、本発明の一実施例によるヘッドアップディスプレイ装置10の要部構成を車両側面視の断面で模式的に示す図である。
【0011】
ヘッドアップディスプレイ装置10は、図1に示すように、車室内のインストルメントパネル内に設けられ、ウインドシールドガラス2の下端付近の下方に設けられる。ヘッドアップディスプレイ装置10は、図1に示すように、表示器12と、ハウジング14と、ミラー20とを含む。
【0012】
表示器12は、運転者に情報を伝達するための可視光線(表示光)を発生させる。表示器12により運転者に伝達する情報(映像情報)は任意であってよい。例えば、表示器12は、車両前方風景を撮影する赤外線カメラ(図示せず)から受信した映像信号に含まれる情報(即ち前方環境情報)を含む表示光を出射する。表示器12から出射された表示光は、ミラー20にて反射され、ウインドシールドガラス2に到達する。尚、ウインドシールドガラス2における表示光が到達する領域には、ホログラムが封入されてもよい。表示光は、図1に示すように、ウインドシールドガラス2によって観測者(主に運転者)方向に回折され、運転者の前方に表示像(虚像)が表示される。
【0013】
ハウジング14は、カバー14aとケース14bを含み、ウインドシールドガラス2から下方に向かう力F(図1参照)がハウジング14に加えられたときに、カバー14aとケース14bとの間の係合部が破断するように構成される。即ち、ハウジング14は、ウインドシールドガラス2から下方に向かう力Fが加えられたときに、カバー14aとケース14bとの間の係合部が破断することでハウジング14の高さが低くなり、車体の歩行者傷害軽減構造の衝撃吸収機能を確保するように構成される。この種のハウジング構造は、任意の構造であってよく、例えば特許文献1に開示されるようなハウジング構造が採用されてもよい。
【0014】
ミラー20は、上述の如く表示器12から出射された表示光をウインドシールドガラス2に向けて反射させる機能を備える。ミラー20は、好ましくは、表示器12の小型化が可能となるように、凹面鏡により構成される。
【0015】
図2は、本実施例によるミラー20の支持構造の特徴を概念的に示す図である。ミラー20は、ハウジング14に支持される。この際、ミラー20とハウジング14との間の接続は、ウインドシールドガラス2から下方に向かう力Fがミラー20に加えられたときに解除されるように構成される。即ち、図2(B)に示すように、ウインドシールドガラス2から下方に向かう力Fが加えられたときにミラー20がハウジング14から離脱(脱落)するように構成される。
【0016】
従って、本実施例によれば、ウインドシールドガラス2から下方に向かう力Fがミラー20に加えられたときに、図2(B)に示すように、ミラー20がハウジング14から離脱するので、ハウジング14のカバー14aとケース14bとの間の係合部が破断してハウジング14の高さが低くなることができる。即ち、ハウジング14のカバー14aとケース14bとの間の係合部が破断したときにカバー14aがミラー20に引っかかることがなく、ハウジング14の高さが低くなることで車体の歩行者傷害軽減構造の衝撃吸収機能を確保することが可能となる。
【0017】
図3は、本実施例によるミラー20の支持構造の一例を示す斜視図である。図4は、図3のY部の側面視である。
【0018】
図3に示す例では、ミラー20は、車両左右方向の端部にて被支持軸22a,22bを介して支持部材50にてハウジング14に支持される。被支持軸22a,22bは、ミラー20の車両左右方向の端部に一体的に形成されてもよい。支持部材50は、左右対称であってよい。支持部材50は、図3に示すように、ミラー20の被支持軸22a,22bを保持する軸受け52を有する。軸受け52は、図4に示すように、車両後方側(図の右方向)に開口する開口部52aを有する。開口部52aは、図示のように必ずしも車両後方側に水平方向に開口する必要はなく、ミラー20に負荷されるウインドシールドガラス2から下方に向かう力Fの方向に依存して、車両後方側に斜め下方向に開口してもよいし、鉛直下方に開口してもよい。軸受け52は、例えば弾性を有し(例えば金属板を曲げることで構成され)、ウインドシールドガラス2から下方に向かう力Fがミラー20に加えられたときに、開口部52aが弾性変形して更に開き、被支持軸22a,22bを離脱させるように構成される。これにより、ウインドシールドガラス2から下方に向かう力Fがミラー20に加えられたときに、ミラー20を支持部材50から離脱させ、ひいてはハウジング14から離脱させることができる。
【0019】
尚、図3に示す例では、ミラー20の被支持軸22bにはギア24が形成される。ギア24には、モータ30の出力ギア32が噛合される。モータ30は、例えばステップモータであり、制御装置(図示せず)により制御される。モータ30は、その回転によりミラー20の角度を調整して、ユーザによって異なりうる表示像(虚像)の適切な位置を調整する機能を有する。尚、この調整は、例えばインストルメントパネル等に設定された調整ボタンをユーザが操作することで実現されてもよい。
【0020】
図5は、被衝突体100が車両の衝突したときの本実施例によるヘッドアップディスプレイ装置10の挙動を時系列で模式的に示す図である。尚、図5(B)及び図5(C)では、点線で囲まれた丸内の部位の拡大図も併せて示されている。
【0021】
ここで、被衝突体100は、例えば歩行者(頭部)が想定されうる。被衝突体100に車両が衝突してしまい、被衝突体100がウインドシールドガラス2の下端部付近に衝突し始める状態が図5(A)に示されている。その後、被衝突体100がウインドシールドガラス2の下方のインストルメントパネルに到達し、更に下方に向けて移動すると、図5(B)に示すように、ウインドシールドガラス2から下方に向かう力Fがハウジング14及びそれに伴いミラー20の上縁に負荷され始める。その後、更に、被衝突体100が下方に向けて移動すると、図5(C)に示すように、カバー14aとケース14bとの間の係合部が破断すると共に、ミラー20がハウジング14から離脱し、これにより、カバー14aがミラー20に引っかかることがなく、ハウジング14の高さが低くなることができる。この結果、被衝突体100に車両が衝突した場合における被衝突体100に対する衝撃吸収機能を確保することができる。
【0022】
図6は、本実施例によるミラー20の支持構造のその他の一例を示す斜視図である。図7は、図6に示すミラー20の被支持軸53の特徴を示す斜視図である。
【0023】
図6に示す例では、ミラー20は、車両左右方向の端部にて被支持軸53を介して支持部材54にてハウジング14に支持される。被支持軸53は、ミラー20の車両左右方向の端部に一体的に形成されてもよい。支持部材54は、左右対称であってよい。支持部材54は、図6に示すように、ミラー20の被支持軸53を全周で保持する軸受けとして機能する。ミラー20に設けられる被支持軸53は、図7に示すように、ウインドシールドガラス2から下方に向かう力Fがミラー20に加えられたときに破断するように構成された脆弱部53bを有する。これにより、ウインドシールドガラス2から下方に向かう力Fがミラー20に加えられたときに、ミラー20をハウジング14から離脱させることができる。
【0024】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0025】
2 ウインドシールドガラス
10 ヘッドアップディスプレイ装置
12 表示器
14 ハウジング
14a カバー
14b ケース
20 ミラー
22a、22b 被支持軸
24 ギア
30 モータ
32 出力ギア
50 支持部材
52 軸受け
52a 開口部
53 被支持軸
53b 脆弱部
54 支持部材
100 被衝突体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウインドシールドガラス下方に設置されるヘッドアップディスプレイ装置において、
可視光線を発生させる表示器と、
前記表示器が発生した可視光線を反射して該可視光線の照射方向を変更させるミラーと、
前記表示器及び前記ミラーを収容し、前記ミラーを支持する支持部を備えるハウジングと、を含み、
前記ミラーに力が加えられたときに前記ミラーが前記支持部から離脱するように構成されたことを特徴とする、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記力は、ウインドシールドガラスから下方に向かう方向の力である、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記支持部は、開口部を有する断面形状の軸受けを含む、請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記ミラーは、前記支持部に保持される被支持部が結合され、
前記被支持部は、前記ミラーに力が加えられたときに破断するように構成される、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、カバーとケースを含み、ウインドシールドガラスから下方に向かう力が加えられたときに、カバーとケースとの間の係合部が破断するように構成される、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−35736(P2012−35736A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177284(P2010−177284)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】