説明

ヘッドスライダ及びヘッドサスペンション組立体の製造方法

【課題】ヘッドスライダの浮上面パターンの認識を精度良く行うことで、ヘッドスライダをサスペンションの所定の位置に高精度で取り付けることである。
【解決手段】ヘッドスライダにマーカーを設け、保護膜及びマーカーに光を照射し、マーカーの反射光が多重干渉によりマーカー以外の部分の反射光よりも強い又は弱いことを利用して、その反射光を測定することでマーカーの位置を正確に認識し、ヘッドスライダをサスペンションの所定の位置に精度良く取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドスライダ及びヘッドサスペンション組立体の製造方法に関する。さらに詳しくは、サスペンションの所定の位置にヘッドスライダを取り付けるヘッドサスペンション組立体の製造方法及びそのヘッドスライダの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、現在のハードディスク駆動装置では、高速で磁気ディスクが回転することで、空気をサスペンションで支持されたヘッドスライダと磁気ディスクの間に引き込んで、その加圧によりヘッドスライダを浮動させている。高密度化が進んだ場合には、浮上量は10nm以下となり、より安定したヘッドスライダの浮上が求められる。
【0003】
ヘッドスライダを支持するサスペンションは突起を有し、ヘッドスライダの浮力に対向する弾性力は、突起を介してスライダに加えられる。一方、ヘッドスライダの浮力および浮力中心はヘッドスライダに形成された浮上面パターンにより決まる。
【0004】
したがって、安定した浮上を得るためには、ヘッドスライダの浮上面パターンとサスペンションへの支持点の取付け後の位置関係が重要となる。現在では、ヘッドスライダの外形を画像認識して、サスペンションへの取り付け位置を合わせているのが一般的である。
【0005】
しかし、ヘッドスライダの加工精度により、ヘッドスライダの浮上面パターンと、ヘッドスライダの外形の位置関係には一定のバラツキが生じる。したがって、ヘッドスライダを、外形を基準としてサスペンションの支持点の所定の位置に取付けても、ヘッドスライダの浮上姿勢が安定しなくなり、浮上安定性が損なわれる。
【0006】
特開2005-149613には、ヘッドスライダ外形及び浮上面パターンを画像認識することで、ヘッドスライダの貼り付け位置を合わせる技術が提案されている。ヘッドスライダの浮上面パターンをサスペンションの所定の位置に精度良く取り付けることができる。
【特許文献1】特開2005-149613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ヘッドスライダの浮上面パターンの凹凸は最も段差の小さい部分で0.1〜0.2μm程度であり、この凹凸を用いて精度良く浮上面パターンを認識するのは困難であった。浮上面パターンを正確に認識できなければ、浮上面パターンをサスペンションの所定の位置に精度良く取付けることはできない。
【0008】
したがって、本発明の第一の目的は、安定した浮上が得られるヘッドサスペンション組立体の製造方法を提供することである。また、本発明の第二の目的は、ヘッドスライダをサスペンションの所定の位置に高精度で取り付けるヘッドサスペンション組立体の製造方法を提供することである。さらに、本発明の第三の目的は、ヘッドスライダの浮上面パターンの認識を精度良く行うためのヘッドスライダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のヘッドスライダは、媒体情報を再生又は記録するための素子部と、素子部を形成するための基板となる本体部と、本体部の回転する媒体表面に対向する浮上面に形成された保護膜及びマーカーと、を有し、マーカーは、本体部の浮上面の空気流入側に配置される前方空気軸受け面よりも低いことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のヘッドスライダは、保護膜及びマーカーが同一材料で構成され、マーカーの膜厚(d)、保護膜及びマーカーの屈折率(n1)、本体部の屈折率(n2)、n1>n2であって、波長(λ)の光を本体部の浮上面に垂直な方向に対して入射角(θ)で照射した場合に、式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
【0011】
【数1】

【0012】
また、本発明のヘッドスライダは、保護膜及びマーカーが同一材料で構成され、マーカーの膜厚(d)、保護膜及びマーカーの屈折率(n1)、本体部の屈折率(n2)、n1<n2であって、波長(λ)の光を本体部の浮上面に垂直な方向に対して入射角(θ)で照射した場合に、式(3)の関係を満たすことを特徴とする。
【0013】
【数3】

【0014】
本発明のヘッドサスペンション組立体の製造方法は、媒体情報を再生又は記録するための素子部と、素子部を形成するための基板となる本体部と、本体部の回転する媒体表面に対向する浮上面に形成された保護膜及びマーカーとを有するヘッドスライダを、サスペンションに取り付けるヘッドサスペンション組立体の製造方法であって、保護膜及びマーカーに光を照射したときに、保護膜での反射光と前記マーカーでの反射光の強度が異なり、保護膜及びマーカーの反射光を測定することで得られる反射光の強度さを用いてマーカーの位置情報を取得し、ヘッドスライダをサスペンションの所定の位置に取り付けることを特徴とする。
【0015】
また、保護膜と前記マーカーが同一材料で形成され、保護膜の膜厚と前記マーカーの膜厚が異なる構造であって、マーカーの膜厚(d)、保護膜及びマーカーの屈折率(n1)、本体部の屈折率(n2)、n1>n2であって、本体部の浮上面に垂直な方向に対して入射角(θ)で、式(1)の関係を満たす波長(λ)の光を照射し、光の反射光を本体部の浮上面に垂直な方向に対して-θの角度で測定することで得られるマーカーの位置情報を用いて、ヘッドスライダをサスペンションの所定の位置に取り付けることを特徴とする。
【0016】
さらに好ましくは、光の本体部の浮上面に垂直な方向に対する入射角が0°であって、式(2)の関係を満たす波長(λ)の光を照射することを特徴とする。
【0017】
【数2】

【0018】
また、本発明のヘッドサスペンション組立体の製造方法は、媒体情報を再生又は記録するための素子部と、素子部を形成するための基板となる本体部と、本体部の回転する媒体表面に対向する浮上面に形成された第1の膜厚の保護膜と、浮上面に第1の膜厚と異なる膜厚の保護膜で形成されたマーカーとを有するヘッドスライダを、サスペンションに取り付けるヘッドサスペンション組立体の製造方法であって、マーカーの膜厚(d)、保護膜及びマーカーの屈折率(n1)、本体部の屈折率(n2)、n1>n2であって、本体部の浮上面に垂直な方向に対して入射角(θ)で、式(3)の関係を満たす波長(λ)の光を照射し、光の反射光を本体部の浮上面に垂直な方向に対して-θの角度で測定することで得られるマーカーの位置情報を用いて、ヘッドスライダをサスペンションの所定の位置に取り付けることを特徴とする。
【0019】
さらに好ましくは、光の本体部の浮上面に垂直な方向に対する入射角が0°であって、式(4)の関係を満たす波長(λ)の光を照射することを特徴とする。
【0020】
【数4】

【発明の効果】
【0021】
本発明のヘッドスライダによれば、ヘッドスライダの浮上面パターンの認識を精度良く行うことができる。また、本発明のヘッドスライダ及びヘッドサスペンション組立体の製造方法よれば、ヘッドスライダをサスペンションの所定の位置に高精度で取り付けることができる。さらに本発明のヘッドスライダを用いたヘッドサスペンション組立体及び本発明のヘッドサスペンション組立体の製造方法により製造したヘッドサスペンション組立体によれば、安定した浮上を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付した図面に基づき本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施形態に係る記録ディスク駆動装置すなわちハードディスク駆動装置1の内部構造を概略的に示す。このハードディスク駆動装置1は、例えば平たい直方体の内部空間を区画する箱形の筐体本体2を備える。収容空間には、記録媒体としての1枚以上の磁気ディスク3が収容される。磁気ディスク3はスピンドルモータ4の回転軸に装着される。スピンドルモータ4は例えば7200rpmや10000rpmといった高速度で磁気ディスク3を回転させることができる。筐体本体2には、筐体本体2との間で収容空間を密閉する蓋体すなわちカバー(図示されず)が結合される。
【0024】
収容空間には、垂直方向に延びる支軸5回りで揺動するキャリッジ6がさらに収容される。このキャリッジ6は、支軸5から水平方向に延びる剛体のアクチュエータアーム7と、このアクチュエータアーム7の先端に取り付けられるヘッドサスペンション組立体8とを備える。このヘッドサスペンション組立体8では、アクチュエータアーム7の先端から前方に向かってサスペンション9が延びる。サスペンション9の前端にはヘッドスライダ10が支持される。ヘッドスライダ10には、例えば、磁気ディスク3に情報を書き込む際に使用される薄膜磁気ヘッドといった書き込み素子(図示されず)と、磁気ディスク3から情報を読み取る際に使用されるトンネル接合磁気抵抗効果素子(TMR)といった読み取り素子(図示されず)とが搭載される。
【0025】
ヘッドスライダ10には、磁気ディスク3の表面に向かってサスペンション9から押し付け力が作用する。磁気ディスク3の回転に基づき磁気ディスク3の表面で生成される気流の働きでヘッドスライダ10には浮力が作用する。サスペンション9の押し付け力と浮力とのバランスで磁気ディスク3の回転中に比較的に高い剛性でヘッドスライダ10は浮上し続けることができる。
【0026】
こうしたヘッドスライダ10の浮上中に、キャリッジ6が支軸5回りで揺動すると、ヘッドスライダ10は半径方向に磁気ディスク3の表面を横切ることができる。こうした移動に基づきヘッドスライダ10は磁気ディスク3上の所望の記録トラックに位置決めされる。このとき、キャリッジ6の揺動は例えばボイスコイルモータ(VCM)といった駆動源11の働きを通じて実現されればよい。複数枚の磁気ディスク13が筐体本体2内に組み込まれる場合には、隣接する磁気ディスク3同士の間で2本のアクチュエータアーム7すなわち2つのヘッドサスペンション組立体8が配置される。
【0027】
[ヘッドスライダの構造]
図2に本発明の第1実施例のヘッドスライダ10の側面図を示す。図2(a)は、ヘッドスライダ10を浮上面側から見た側面図を示す。図2(b)は、図2(a)を図下方から見た側面図を示す。ヘッドスライダ10は、主としてアルチック(Al23-TiC)からなる本体部21と絶縁層(例えばAl23)からなる素子形成部22とで構成される。動作時にヘッドスライダ10が磁気ディスクと対向する面(以下、浮上面という。)側に流入端側パット23及び流出端側パット24からなる浮上面パターンが形成されている。流入端側から取り込まれる空気流が流入端側パット23に当たり浮力を生じる。
【0028】
流出端側パット24は、素子部25を備えており、本実施例では、ヘッドスライダ10の幅方向の中央に設けられているが、幅方向端部に設けるようにしても良い。また、浮上面パターンはヘッドスライダ10が媒体に近づけられる力(負圧力)が生じるように構成される場合もあり、必要に応じて様々な形状にすることができる。また、本体部21、流入端側パット23、流出端側パット24上にはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)からなる保護膜26が浮上面全面に形成されている。ここで、位置認識に用いられるマーカー27はマーカー27以外の部分の保護膜26よりも厚い膜厚で、反射光がマーカー27以外の部分とは異なる条件で多重干渉するような材料、膜厚で形成されている。本実施例では、マーカー27を3つ形成しているが、マーカー数が多ければ位置認識精度が向上するが1つであっても良い。
【0029】
例えば、ヘッドスライダ10の浮上面の全面に所定の膜厚で保護膜26を形成し、マーカー27部のみ保護膜26が露出するようにレジストパターンを形成し、マーカー27部のみさらに保護膜と同一材料又は異なる材料を積層することでマーカー27は形成される。
【0030】
図3に本発明の第2実施例のヘッドスライダ10の側面図を示す。図3(a)は、ヘッドスライダ10を浮上面側から見た側面図を示す。図3(b)は、図3(a)を図下方から見た側面図を示す。なお、同一構成の部分については第1実施例と同符号で示す。ヘッドスライダ10が本体部21及び素子形成部22から形成されている点や浮上面側に流入端側パット23及び流出端側パット24からなる浮上面パターンが形成されている点は第1実施例と同じである。但し、位置認識に用いられるマーカー28はマーカー28以外の部分の保護膜26よりも薄い膜厚で、反射光がマーカー28以外の部分とは異なる条件で多重干渉するような材料、膜厚で形成されている点が第1実施例とは異なる。
【0031】
例えば、ヘッドスライダ10の浮上面の全面に所定の膜厚で保護膜26を形成し、マーカー28部のみ保護膜26が露出するようにレジストパターンを形成し、マーカー28部の保護膜26をエッチングして、マーカー28部の保護膜の膜厚を薄くしてマーカー28は形成される。さらに、異なる材料を積層して形成される場合もある。
【0032】
図4に本発明の第3の実施例のヘッドスライダの側面図を示す。図4(a)は、ヘッドスライダ10を浮上面側から見た側面図を示す。図4(b)は、図4(a)を図下方から見た側面図を示す。なお、同一構成の部分については第1実施例と同符号で示す。ヘッドスライダ10が本体部21及び素子形成部22から形成されている点や浮上面側に流入端側パット23及び流出端側パット24からなる浮上面パターンが形成されている点は第1実施例及び第2実施例と同じである。但し、位置認識に用いられるマーカー29はマーカー29以外の部分の保護膜26と同じ膜厚で、反射光がマーカー29以外の部分とは異なる条件で多重干渉するような材料で形成されている点が第1実施例とは異なる。
【0033】
例えば、ヘッドスライダ10の浮上面の全面に所定の膜厚で保護膜26を形成し、マーカー29部のみ保護膜26が露出するようにレジストパターンを形成し、マーカー29部の保護膜26をエッチングして、マーカー29部の保護膜の膜厚を薄くし、さらに、異なる材料を積層してマーカー29は形成される。
【0034】
以上のように、第1実施例から第3実施例では、マーカーは単一材料又は二つの材料で構成される場合について説明したが、マーカー部での反射光が多重干渉により、マーカー部以外の部分の反射光よりも強く又は弱くなるように設計されれば、マーカー部は三つ以上の異なる材料で構成されてもよい。
【0035】
図5にヘッドスライダ10のマーカー27,28表面での反射光とマーカー27,28と本体部21の界面での反射光が多重干渉により強め合う条件を説明する説明図を示す。マーカー27,28の膜厚(d)は、保護膜4の屈折率(n1)、本体部の屈折率(n2)とすると、波長(λ)の光を浮上面に垂直な方向に対して入射角(θ)で照射した場合に、n1>n2の場合は式(1)の関係を満たすと多重干渉を起し、n1<n2の場合は式(2)の関係を満たすと多重干渉を起し強め合うこととなる。例えば、空気の屈折率は1、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)の屈折率は2.42、アルチック(Al23-TiC)の屈折率は1.8、アルミナ(Al23)の屈折率は1.76である。
【0036】
式(1)を説明するため、空気から保護膜に入射角θ1で入射した2光線A、Eを考える。光線Aは空気と保護膜との境界面Bで屈折角θ2で屈折した後、保護膜と本体部の境界面Cで反射し、空気と保護膜の境界面Dに達した後再び空気中へ屈折する。一方、光線Eは空気と保護膜の境界面Dで反射し、光線Aと干渉する。ABCDF、EDFの2光線の経路差は、BCに直交するDからの足をB1、BCの延長線とDから鉛直に下ろした線との交点をB2とすると、式(5)の関係から、光線Aと光線Eの光路差2n1dcosθ2は式(6)で示す関係となる。
【0037】
【数5】

【0038】
【数6】

【0039】
ここで、境界面Dでの反射光は、n1>1の関係から位相がπずれる。一方、境界面Cでの反射光は、n1>n2の場合には位相はずれないが、n1<n2の場合には位相がπずれる。したがって、式4と反射光の位相とから、n1>n2の場合は式(1)の関係を満たすと多重干渉を起し、n1<n2の場合は式(2)の関係を満たすと多重干渉を起こして強め合うこととなる。この光の干渉を利用することで、マーカー27,28の位置を明確に認識することができる。この場合、反射光は−θの角度で測定する。
【0040】
特に、入射角0°となる場合には、n1>n2の場合は式(3)の関係を満たすと多重干渉を起し、n1<n2の場合は式(4)の関係を満たすと多重干渉を起こして強め合うこととなる。かかる場合には、入射光の光源部と反射光の測定部は同一部に設けることができ、入射光の光源部と反射光の測定部の位置合わせを行う必要がなく容易にマーカー位置を明確に認識することができる。
【0041】
以上のように、主に、マーカー部において、反射光が多重干渉により強め合う条件について説明した。しかし、逆に、マーカー部において、反射光が多重干渉により弱めあう条件となるようにして、マーカー部の認識することもできる。
【0042】
[ヘッドサスペンション組立体の製造方法]
次に、実施例1又は実施例2のヘッドスライダ10をサスペンション9に取り付けてヘッドサスペンション組立体8を製造する方法について説明する。
【0043】
図6は本発明に係るヘッドサスペンション組立体8の製造方法のフローチャートである。図7は、サスペンション9の先端側にヘッドスライダ10を取り付ける方法を説明する説明図である。サスペンション9は、ロードビーム31とロードビーム31に一端が固定されたフレキシャ32で構成される。また、フレキシャ32は、ロードビーム31上のディンプル33に接している。ロードビーム31上のディンプル33は、プレス加工により形成される。したがって、図面A方向からみると窪みが形成されている。このディンプル33の反対面に形成される窪みの位置を確認し、ディンプル33の位置を認識することができる(S11)。
【0044】
一方、ヘッドスライダ10の浮上面に、例えば式(1)の条件を満たすように波長(λ)の光をB方向から入射角(θ)で照射する(S12)。このときのヘッドスライダ10の保護膜の屈折率n1と本体部の屈折率n2の関係は、n1>n2である。反射光を−θの角度でC方向から計測することで、マーカーで多重干渉により強められた光を利用して、ヘッドスライダ10のマーカー位置を浮上面側から正確に認識し(S13)、突起位置に対して所定の位置に浮上面パターンが配置されるように、ヘッドスライダ10をフレキシャ32上に配置する(S14)。この状態でヘッドスライダ10をフレキシャ32に固定する(S15)。ヘッドスライダ10の固定には、接着剤や半田を用いることができる。
【0045】
スライダ加工時の切断や研磨などの機械的な加工誤差に比べて、形成するマーカーの浮上面パターンに対する位置誤差は極めて小さく、ヘッドスライダの外形に対して浮上面パターンがずれていても、浮上面パターンと突起位置が精度良く所定の位置関係になるように位置決めすることができる。したがって、荷重重心と浮力重心を所定の位置関係に配置することができ、動作時に安定した浮上を得ることができる。なお、ヘッドスライダ10の保護膜の屈折率n1と本体部の屈折率n2の関係が、n1<n2である場合には式(3)の関係を満たすように波長(λ)の光を入射角(θ)で照射することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造の概略図を示す。
【図2】本発明の第1実施例のヘッドスライダの側面図を示す。
【図3】本発明の第2実施例のヘッドスライダの側面図を示す。
【図4】本発明の第3実施例のヘッドスライダの側面図を示す。
【図5】ヘッドスライダのマーカー表面での反射光とマーカーと本体部の界面での反射光が多重干渉により強め合うことを説明する説明図を示す。
【図6】本発明に係るヘッドサスペンション組立体の製造方法のフローチャートを示す。
【図7】サスペンションの先端側にヘッドスライダを取り付ける方法を説明する説明図を示す。
【符号の説明】
【0047】
1ハードディスク駆動装置
2筐体本体
3磁気ディスク
4スピンドルモータ
5支軸
6キャリッジ
7アクチュエータアーム
8ヘッドサスペンション組立体
9サスペンション
10ヘッドスライダ
11駆動源
21本体部
22素子形成部
23流入端側パット
24流出端側パット
25素子部
26保護膜
27マーカー
28マーカー
29マーカー
31ロードビーム
32フレキシャ
33ディンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体情報を再生又は記録するための素子部と、前記素子部を形成するための基板となる本体部と、前記本体部の回転する媒体表面に対向する浮上面に形成された保護膜及びマーカーとを有するヘッドスライダを、サスペンションに取り付けるヘッドサスペンション組立体の製造方法であって、
前記保護膜及びマーカーに光を照射したときに、前記保護膜での反射光と前記マーカーでの反射光の強度が異なり、
前記保護膜及びマーカーの反射光を測定することで得られる反射光の強度さを用いてマーカーの位置情報を取得し、前記ヘッドスライダを前記サスペンションの所定の位置に取り付けることを特徴とするヘッドサスペンション組立体の製造方法。
【請求項2】
前記保護膜と前記マーカーが同一材料で形成され、前記保護膜の膜厚と前記マーカーの膜厚が異なる構造であって、
前記マーカーの膜厚(d)、前記保護膜及び前記マーカーの屈折率(n1)、前記本体部の屈折率(n2)、n1>n2であって、本体部の浮上面に垂直な方向に対して入射角(θ)で、
【数1】

の関係を満たす波長(λ)の光を照射し、前記光の反射光を本体部の浮上面に垂直な方向に対して-θの角度で測定することで得られる前記マーカーの位置情報を用いて、前記ヘッドスライダを前記サスペンションの所定の位置に取り付けることを特徴とする請求項1に記載のヘッドサスペンション組立体の製造方法。
【請求項3】
前記光の本体部の浮上面に垂直な方向に対する入射角が0°であって、
【数2】

の関係を満たす波長(λ)の光を照射することを特徴とする請求項2に記載のヘッドサスペンション組立体の製造方法。
【請求項4】
前記保護膜と前記マーカーが同一材料で形成され、前記保護膜の膜厚と前記マーカーの膜厚が異なる構造であって、
前記マーカーの膜厚(d)、前記保護膜及び前記マーカーの屈折率(n1)、前記本体部の屈折率(n2)、n1<n2であって、本体部の浮上面に垂直な方向に対して入射角(θ)で、
【数3】

の関係を満たす波長(λ)の光を照射し、前記光の反射光を本体部の浮上面に垂直な方向に対して-θの角度で測定することで得られる前記マーカーの位置情報を用いて、前記ヘッドスライダを前記サスペンションの所定の位置に取り付けることを特徴とする請求項1に記載のヘッドサスペンション組立体の製造方法。
【請求項5】
前記光の本体部の浮上面に垂直な方向に対する入射角が0°であって、
【数4】

の関係を満たす波長(λ)の光を照射することを特徴とする請求項4に記載のヘッドサスペンション組立体の製造方法。
【請求項6】
媒体情報を再生又は記録するための素子部と、
前記素子部を形成するための基板となる本体部と、
前記本体部の回転する媒体表面に対向する浮上面に形成された保護膜及びマーカーと、を有し、
前記マーカーは、前記本体部の浮上面の空気流入側に配置される前方空気軸受け面よりも低いことを特徴とするヘッドスライダ。
【請求項7】
前記保護膜及び前記マーカーが同一材料で構成され、前記マーカーの膜厚(d)、前記保護膜及び前記マーカーの屈折率(n1)、前記本体部の屈折率(n2)、n1>n2であって、波長(λ)の光を本体部の浮上面に垂直な方向に対して入射角(θ)で照射した場合に、
【数1】

の関係を満たすことを特徴とする請求項6に記載のヘッドスライダ。
【請求項8】
前記保護膜及び前記マーカーが同一材料で構成され、前記マーカーの膜厚(d)、前記保護膜及び前記マーカーの屈折率(n1)、前記本体部の屈折率(n2)、n1<n2であって、波長(λ)の光を本体部の浮上面に垂直な方向に対して入射角(θ)で照射した場合に、
【数3】

の関係を満たすことを特徴とする請求項6に記載のヘッドスライダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−187616(P2009−187616A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25355(P2008−25355)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】