説明

ベリスペレンニスの抽出物を含む局所用色素除去製剤

本発明は、化粧品用及び医薬用のヒトの皮膚に色素除去効果を有する局所用製剤に関する。さらには、本発明は、分画化及び電解質交換を含む水性抽出によるベリスペレンニスLの抽出物を製造するための新規な方法及び本発明のプロセスにより製造された抽出物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、化粧及び医薬の用途のためのヒトの皮膚に対して色素除去効果を有する局所用製剤に関する。さらに、本発明は、分画化及び電解質交換を含む水性抽出によるベリスペレンニスLの抽出物を製造するための新規な方法及び本発明のプロセスにより製造された抽出物も提供する。
【0002】
ベリスペレンニスLは、ヒナギク(English daisy)又はローンデージー(lawn daisy)として一般には知られており、キク科ファミリーに属する。それは、異なる兆候のコンプレックス、例えば関節症、食欲不振及び不眠症を治療するためのホメオパシーにおいて広く使用されている。さらに、ベリスペレンニスLは、皮膚科の問題、例えば、ざ瘡(acne)、湿疹、悪性創傷治癒(badly healing wounds)及び組織の深い外傷(deeper traumata)の治療にも伝統的に使用される(例えば、H.A.Hoppe,Drogenkunde,Vol.1,Angiospermen,第8版、1975;Dr.F.Losch,Krauterbuch;G.Leibold,Moderne Naturheilpraxis,Bassemann Verlag,1993;M.Lange−Ernst,S.Ernst,Lexikon der Heilpflanzen,Honos Verlag;及びW.D.Storl,Heilkrauter und Zauberpflanzen,AT Verlag,第2版、2000を参照)。
【0003】
もっとも最近、ベリスペレンニスLは薬理調査の対象であり、そして特定成分、例えばトリテルペングリコシド類が広い薬理活性プロフィール、例えば抗真菌及び抗菌、抗癌、また虚血後の神経防御効果を呈することがわかった(例えば、DE 42 06 233;US 6,444,233;G.Bader et al.,Pharmazie 1990 Jul;45(8);P.Avato et al.;Planta Med 1997 Dec;63(6);及びC.Desevedavy et al.;Journal Nat Prod 1989 Jan−Feb;52(1)を参照)。
【0004】
今予想外に発見されたことは、ベリスペレンニスLの抽出物がメラニン形成に阻害効果を有することであり、即ち、ヒトの皮膚の色素除去に使用されるかもしれないことである。
【0005】
メラニンは皮膚の色素沈着に必須であり、メラノサイトに局在するメラノソームにおいて生産される。メラニンの合成は酸化プロセスを含み、酵素チロシナーゼによりチロシンがヒドロキシル化されてジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)になる。酸化反応の複雑なチェーンにより、DOPAは、そのあと最終的にメラニンに変換される。メラニンは、基底層のケラチノサイトに蓄積して、ケラチノサイトの連続的な分化を伴って、ケラチノサイトと共に皮膚の表面に到達する。ケラチノサイトを含む分化したメラニンは、角質細胞として角質層(stratum corneum)を形成する。酸化プロセスは、メラニンの発色の変化を導き、皮膚の種類及び他の外的因子に依存して、個々の皮膚の色素沈着においてはっきりしてくる。上記の色素沈着プロセスは、退色そして特には異常な外観の皮膚を生じるかもしれず、化粧品の観点からはしばしば不所望であると考えられている。さらに、当該プロセスは、極めて多様な外観を有する様々な病理的障害も受けやすいかもしれない。
【0006】
ここ数年、化粧品及び薬剤製品の色素除去に関して増大する要求が存在してきた。後天性の色素沈着過剰、例えば、メラズマ(melasma)(母斑(chloasma))、炎症後の黒皮症(postinflammatory melanoderma)、太陽による黒子(solar lentigo)、ソバカス(雀卵斑(ephelides))、老化による斑点(age spots)(老人性黒子(lentigo senile))、太陽への露出に際してしばしば薬剤、例えばバースコントロールピル又は他のホルモン薬、又は香水と共に、あるいは妊娠中に皮膚上に出現する色素沈着斑点の異常な色素沈着パターンが、炎症、ホルモンのアンバランス、及びいくつかの時間が生む障害を含む様々な因子により引き起こされる。紫外線照射はさらにこれらの皮膚のコンディションを悪化させ得る。
【0007】
色素除去(スキンライトニング;スキンブライトニング又はホワイトニング)化粧品及び医薬の用途は、文化により顕著に異なる。西洋の国々においては上記の異常な(過剰)色素沈着の素子又は治療のためにたいてい使用されているが、アジアやアフリカにおいては、スキンライトニング製品は皮膚を白くしたり、明るくしたり(lighter)、そして鮮やかに(brighter)するためにも使用される。
【0008】
本発明のコンテクストにおいて、用語「色素除去(depigmenting)」、ホワイトニング、ライトニング、ブライトニング及びブリーチングは、色素沈着過剰及び不所望な暗い顔貌をも阻止するか又は減じるために使用される薬剤を記載する場合、同義語として使用される。
【0009】
色素除去のための開発された慣用の組成物は、コウジ酸、グラブリジン、アルブチン、エラグ酸、アゼライン酸、アスコルビン酸及びそれらの誘導体、胎盤抽出物、ルシノール及びヒドロキノン、及び様々なバリエーションの植物、例えばワイルドベリー、クワの実、クマコケモモ、カンゾウ、レモン、マトリカリアカミルレ、クミン種子、ウオロ(wolo)、オランダカラシ、又は上記の何れかの混合物を含む植物抽出物を含む。
【0010】
色素沈着過剰を治療するための化学的及び機械的アプローチに関する全体像は、S.Briganti et al.,Pigment Cell Res 16:101−110;2003に提供される。
【0011】
色素除去活性を呈するいくつかの物質は、それらが誘導するそれらの毒性(例えば、水銀塩)、皮膚の炎症のため(メルカプトアミン、酸化剤、例えば過酸化水素)、又はアスコルビン酸の不安定性のため又はその誘導体の低下した活性のため、化粧品用又は医薬用途には使用することができない。他の化合物、例えば、フェノール誘導体、コルチコステロイド類、ポイフェノール類、様々な野菜抽出物が多くの色素除去製品内の成分として使用され、今、市場にある。しかしながら、これらの化合物は、ヒドロキノンのような副作用を示すか、又は作用が極めて遅い。
【0012】
ヒドロキノンは発癌性であると考えられており、即ち、欧州においてのその化粧品での使用を禁止する法的措置が実行された。
即ち、高度に活性化されたメラノサイトに対して効力で、迅速で且つ選択性のブリーチング/ホワイトニング/ライトニング/ブライトニング効果を呈しながら、如何なる短期間又は長期間の副作用にも関係すべきでない理想的な色素除去剤に関しての増大する要求が存在する。さらに、所望の色素除去剤は安定で且つ他の化粧品成分又は薬剤成分と適合性であるべきである。
【0013】
本発明おいて使用される、用語「色素沈着過剰」は、皮膚の局所的又は全身性のメラニン含有量の増加を意味し、後天的であるか又は遺伝であってよい。
本発明に従い治療してよい色素沈着過剰は、色素沈着した母斑(nevus)、母斑流出(nevus spill)、雀卵斑(ephelides)、黒子、複合した母斑、有毛性母斑、母斑システマチカス(systematicus)、神経繊維腫症(レックリングハウゼン氏病)、ポイツイエガー症候群、アルブライト病、青色母斑、蒙古斑、母斑タルディ(nevus tardi)、肝斑(chloasma)、特に妊娠性肝斑、又は口周囲の母斑(chloasma virginum peribuccale)、リネアフスカ(linea fusca)、リール黒皮症、メラノダーミティストキシカ(melanodermitis toxica)、細網多形皮膚萎縮症(poikiloderma reticulata)、アンギオデイティスピグメントサトプルプリカ(angiodermitis pigmentosa et purpurica)、損傷後色素沈着過剰(post lesional hyperpigmentation)、ファイト−フォトデルマトーゼス(phyto-photodermatoses)、香水皮膚炎(berloque dermatitis)、オーデコロン(香水)−色素沈着、苔癬状のでこぼこ(lichen rubber)又は乾癬後のとびひ、インコンチネンティアピグメンティ(incontinentia pigmenti)、砒素による黒色症、特発性血色素症、青銅色糖尿病、肝臓の硬変症、アジソン病、グレーブス病、黒色癌、ペラグラ、スプルー、結核、又は悪性貧血症を含む。
【0014】
さらに、本発明による薬学組成物は、色素沈着過剰(白斑(leucodermia))の治療のために使用することにより白色斑点を安定させるかもしれない。好ましい指標は、即ち、色素欠如性斑点(naevus achromicus)、白毛症、アルビノ(albinoidism)、尋常性白斑(vitiligo)、後天性サットン白斑(leucoderma acquisitum Sutton)、外傷後の低色素沈着、例えば、乾癬性白斑(leucoderma psoriatricum)、リューコデルマシフィリチカム(leucoderma syphilliticum)、らい病(vitiligo gravior)、熱帯白斑性皮膚病(pinta)、クワシオルコル(kwashiorkor)、毒性色素除去(例えば、ヒドロキノン又はフルシンによる)、色素異常症パラシティカ(dyschromia parasitica)、癜風(pityriasis versicolor alba)、ストレプトデルマアルバシンプレックス(streptoderma alba simplex)、原田病(Vogt-Koyanagi syndrome)、早発性白髪(canities praecox)、シモンズ−シーハン症候群及びウエルナー症候群でもある。
【0015】
特に好ましいのは白斑の治療であり、副作用を呈する現在使われているヒドロキノン含有組成物よりも良好な代替物を提供する。
本発明による化粧品組成物は、後天性の色素沈着過剰、例えばメラズマ(肝斑);炎症後の黒色症;太陽による黒子;ソバカス(雀卵斑(ephelides));老化による斑点(age spots)(老人性黒子(lentigo senile));太陽への露出に際してしばしば薬剤、例えばバースコントロールピル又は他のホルモン薬、香水と共にしばしば太陽への露出に際して、あるいは妊娠中に出現する皮膚上に出現する色素沈着斑点の異常な色素沈着パターン、化学剥離(peels)及び皮膚剥離による退色、レーザー前と後の再出現(resurfacing)、又はレーザー脱毛前と後の;着色された角化症又は外傷後の色素沈着過剰(瘢痕)の場合のヒトの皮膚を色素除去に使用してよい。さらに、それらは、上記の色素沈着過剰及び低色素沈着(hypopigmentation)の外観又は形態をライトニング/ブライトニングするために使用してもよい。
【0016】
既に述べたとおり、本発明は、ベリスペレンニスLの抽出物がメラニン形成に対して阻害効果を呈するとの予測されなかった発見に基づく。退色効果は極めて著しく、極めて迅速に開始する。本発明によれば、煎じ出し(decoction)、消化、濾過、ソクスレステーション(soxlethtation)、浸漬又は当業者に知られているその他のあらゆる適切な公知の方法により得られたベリスペレンニスLのあらゆる抽出物を使用してよい。適切な抽出媒体及び溶剤は、水、水性バッファー、グリコール類又はグリコール水混合物、アルコール又はアルコール−水混合物、グリセリン又はグリセリン−水混合物である。さらに、グリコール、例えばプロピレングリコール、ブチレングリコール又はそれらの水混合物であって好ましくは水含有率が5から60%のものによる抽出により得られた抽出物も、本発明により使用してよい。好ましい態様において、ソレンセンによるクエン酸ナトリウムバッファー(0.1Mクエン酸ナトリウム及び0.1N HClを含み、1.2から5.0のpH、好ましくは2.0から5.0のpH、もっとも好ましくはpH3.0を有するバッファー)を用いる。さらに好ましい態様において、ソレンセンによるリン酸バッファー(0.06Mリン酸カリウム及び0.006Mリン酸二ナトリウム、pH5から8、好ましくはpH5)を使用する。
【0017】
抽出物は、新鮮であるか又は乾燥された植物材料から得てよく、ベリスペレンニスLの植物全体又は花の先端を使用してよい。花の先端の使用が好ましい。
薬剤と抽出媒質の比率は1:10から1:200の間である。好ましい比率は1:20である。
【0018】
本発明のさらなる側面は、ベリスペレンニスLの水性抽出物を製造するプロセス及び当該プロセスにより得られた抽出物を提供することである。以下の実施例は、例示の目的のためのみであって、発明の範囲を限定するべきではない。
【0019】
【表1】

【0020】
本発明によれば、抽出時間及び温度は、抽出媒質に依存して変更してよく、特に、1時間から10日の間の抽出時間が好ましく、温度は好ましくは25℃から100℃の間であってよい。
【0021】
本発明の特に好ましい態様は、水抽出により(即ち、煎じ出し)、100℃の温度において、1時間乾燥した花から得られた抽出物であって、薬剤:媒質の比率は1:20である。粗抽出物を40℃又はそれ未満に冷やし、そして遠心分離することにより不溶性成分を分離し、そして滅菌濾過される(孔サイズ:0.2μm)。次に、逆浸透を実施することにより、ベリスペレンニスLに特異的な電解質により触媒される沈降形成を阻止する。次に、バッファー、好ましくはソレンセンに従うクエン酸バッファー(39.9%の0.1Mクエン酸二ナトリウム及び60.1%の0.1N HCl,pH3.0)及び保存剤、好ましくは0.2%のソルビン酸カリウムを、電解質を含まない抽出物に加える。高分子量成分により引き起こされる抽出物の潜在的退色を阻止するため、後者を限外濾過により分離する(分子量カットオフ:100kDa)。
【0022】
ベリスペレンニスLの抽出物の色素除去効果の正確な生化学的根拠は知られていない。概説されたとおり、色素除去効果は極めて著しく、そして開始が迅速である。有力なチロシナーゼ阻害剤であるために上記副作用も呈し得る現在使用されている色素除去剤又はホワイトニング剤のほとんどとは対照的に、ベリスペレンニスLの抽出物はチロシナーゼの弱い阻害を示すのみである。
【0023】
チロシナーゼ阻害はメラノサイトのメラノソーム内で起こる。よって、当該阻害剤は皮膚のバリアを通過し、メラノソームに到達して、細胞膜を通過する必要がある。分子に依存して、これは細胞障害作用のような副作用を有するかもしれない。抽出物の色素除去活性は、例えば、UV誘導性炎症媒介因子、例えば遊離のラジカルがメラノサイトをメラニンの増強された合成の刺激となり得るように、少なくとも一部は抗酸化作用によるのかもしれない。ヒトの皮膚の色素除去にも使用されるアスコルビン酸とは反対に、ベリスペレンニスLの抽出物の抗酸化能力は安定であり、そして何ら特定の製剤技術又は誘導を必要としない。
【0024】
本発明のベリスペレンニスL抽出物は異なる抗酸化能力を有し、メラノサイトにおいて酸化プロセスを有効に阻害し、即ち結果として新たなメラニンの合成を低下させるのかもしれない。これらのプロセスが角質層(stratum corneum)内の増強された色素除去に必須であるため、本発明による抽出物は皮膚の別の層において有効である。即ち、ライトニング効果は、細胞内機構に影響して変調させるためであって、外部のUVフィルター効果によるのではない。しかしながら、ベリスペレンニスLの極めて択一しており迅速に観察可能な色素除去効果は、単にその抗酸化作用に帰し得るのではなく、しかし、メラニンの生合成に関与する他の生化学的段階の変調によるらしい。即ち、その効果は、そのエンドセリンに対する影響によるのかもしれない。エンドセリンアンタゴニスト類はメラニン合成の4倍加速された阻害を引き起こすことが知られており、それらはメラノソームがチロシナーゼ又は酸化プロセスを阻害することを要求しない。表皮のより深い層への浸透はエンドセリンを阻害するのに十分である(Matsuda et al.,Cosm Toil(10)65−77(1996)を参照)。
【0025】
上記抽出物は当業者に知られている化粧品及び薬剤の製剤に普通に含まれてよく(例えば、Bauer et al.,Pharmazeutische Technologie,第5版、Govi−Verlag Frankfurt,1997;Rudolf Voigt,Pharmazeutische Technologie,第9版、Deutscher Apotheker Verlag Stuttgart,2000を参照)、例えば、O/W及びW/Oクリーム、O/W及びW/Oエマルジョン、ゲル、複合エマルジョン(W/O/W及びO/W/O)、化粧品分散剤(cosmetic dispersions)(水性分散剤及び脂性分散剤)、スティック、テンサイド(tenside)を含む製剤又は単一の溶液(油性又は水性)である。
【0026】
本発明によれば、ベリスペレンニスLの製剤は、色素除去作用、抗炎症作用又は抗酸化酸化を有する他の植物抽出物又は化学化合物と共に製剤化してもよい。
本発明に従い使用するための組成物は、約1%から約10%のベリスペレンニスL抽出物を含んでよく、約2%から5%の含有量が好ましい。約2%、3%、4%又は5%の含有量が特に好ましい。
【0027】
以下の製剤例は例示の目的のために含まれるのであり、発明の範囲を限定するためのものではない。
【0028】
【表2】

【0029】
フェーズA及びBは別々に70℃に加熱する。フェーズAをフェーズBに加え、そして次に2分間ホモジェナイズする。ホモジェネートを次に撹拌しながら30℃まで冷やす。フェーズCを次にホモジェネートに加えて、撹拌することにより均一なエマルジョンを得る。pHは、フェーズDによりpH4.0から5.0に調節する。次に、フェーズEを上記エマルジョンに加える。
【0030】
【表3】

【0031】
キサンタンガムをフェーズB内に拡散させる。フェーズA及びBを別々に75℃に加熱する。フェーズAを次に撹拌しながらフェーズBに加え、次にホモジェナイズする。結果のホモジェネートを30℃に冷却し、そしてフェーズC及びDを加える。pHをフェーズEの添加により約4.5−5.0に調節する。
【0032】
【表4】

【0033】
ヒドロキシエチルセルロースを水中に分散させ、次にAbil B 88183を加える。フェーズBを用意してフェーズAに加える。NaOH(10%)を用いてpHを約8.5に調節することにより透明なゲルを得る。次に、pHをクエン酸を用いてpH約4.0から5.0に調節する。次にフェーズDを撹拌しながら加える。最後に、フェーズEを加えて、混合することにより均一なゲルを得る。
【0034】
本発明による抽出物は、ヒトケラチノサイト(HeCaT)又はマウスメラノーマ細胞(B16V)においてインビトロ研究において何ら細胞障害作用を示さなかった。以下の表1及び2に示されるとおり、本発明による抽出物は何ら細胞障害性作用を有さず、細胞の代謝活性も全く刺激しなかった。試験された細胞の代謝活性をMTT−試験により試験し、吸収を570nmにおいて測定した。
MTT−試験の原理
黄色のテトラゾリウム塩MMTをミトコンドリアデヒドロゲナーゼ(琥珀酸塩)による環状分割を通して暗青色のフォルマザンに還元する。この色の変化の強度はELISAリーダーにより測定することができ、得られた値(OD=570nmにおける光学密度)は細胞生存性に関する測定値として使用することができる。デヒドロゲナーゼが局在するミトコンドリアにおいては、細胞の酸化代謝プロセスが起こる。このプロセスは酸化性リン酸化により酸化エネルギーをエネルギー豊富なATPに変換することを目的とする。これはデヒドロゲナーゼの関与を必要とするように、増加したデヒドロゲナーゼ活性、結果の増強された代謝及び増加した細胞エネルギーポテンシャルの間の直接の関係が存在する。
マウスメラノーマ細胞(B16V)中の細胞障害性試験
マウスメラノーマ細胞を、10%FCS,L−グルタミン及びゲンタマイシンを付加されたRPMI 1640培地中で生育させた。トリプシン処理後に、5x10の細胞をマイクロタイタープレートのウエルに移した。保存剤を含むベリスペレンニス抽出物は透析しなければならなかった(MWカットオフ:500Da)。サンプル希釈物を、10% FCSと共に培地と適当なウエルに満たした。対照として、培地プラスFCSでサンプルなしのウエルを用いた。プレートを、37℃において5%のCOにて72時間インキュベートした。10μlmのMTT溶液(5mg/ml)を100μl/ウエルになるまで加えた。プレートを、37℃において5%のCOにて2時間インキュベートした。上清を除去し、そしてフォルマザン再融解溶液(99.4% DMSO,0.6ml酢酸、10.0gラウリル硫酸)を各ウエルに加えた。マイクロプレートリーダー(MRX,Dynex)にて570nmにおける吸収を読むことにより、細胞障害活性又は代謝増強活性を測定することができる。
【0035】
【表5】

【0036】
ヒトケラチノサイト(HaCaT)における細胞障害性試験
正常なヒトケラチノサイト(HaCaT)を、5%のFCSを含むダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)中で生育させた。定常期におけるトリプシン処理の前に、細胞をEDTA溶液で前処理した。細胞懸濁液を調製して、マイクロタイタープレート中で、3x10細胞/ウエルにて接種した。次に、MTT−試験を上で記載されたのと似たようにして実施して、570nmにおいて吸収を読んだ。
【0037】
【表6】

【0038】
同じ試験を本発明による抽出物でも実施して、周囲温度にて5カ月間保存した。
【0039】
【表7】

【0040】
上の表3から導かれ得るとおり、本発明による抽出物は安定であり、そして細胞代謝に対するその刺激作用を保持しており、しかし細胞障害性作用は示さない。
上で記載されたエンドセリンの仮定された抗酸化作用及び阻害の結果としてか又は他の道の付加的作用により、強いメラニン阻害効果がインビトロ並びにインビボにおいて証明できた。
メラニンのインビトロ阻害
マウスメラノーマ細胞を、10%FCS,L−グルタミン及びゲンタマイシンを付加されたRPMI 1640培地中で生育させた。トリプシン処理後に、3.5x10細胞/mlを、8mlの内地を含むT25フラスコに満たした。48時間インキュベーション(37℃,10% CO)後に、培地を除去し、そして3mlのリン酸バッファー(PBS)により注意深く洗浄した。保存剤を含むベリスペレンニス抽出物は透析しなければならなかった(MWカットオフ:500Da)。サンプルを8mlの培地に希釈して、T25フラスコに移した。培地のみを含みサンプルを含まないフラスコを対照とした。フラスコを72時間インキュベートし(37℃,10% CO)、そして適用(application)を繰り返し、フラスコをさらに48時間インキュベートした。インキュベーションの完了後に、培地を除去し、そして細胞を3mlのPBSにより洗浄した。細胞をトリプシン処理し、そして細胞の計数を各フラスコに関して測定した(均一な細胞懸濁液)。次に、細胞沈殿物を4mlのPBSにより洗浄して、1100rpmにて10分間遠心分離し、そして2mlの5%トリクロロ酢酸を各沈殿物に加え、よく混合した。遠心分離工程を繰り返し、そして上清を捨てた。メラニンを1.3mlの1N NaOHに懸濁して、吸収を475nmにおいて読んだ。
【0041】
【表8】

【0042】
同じ試験を本発明の抽出物にも実施して、周囲温度にて5カ月間保存した。
【0043】
【表9】

【0044】
色素除去効果のインビボにおける評価
試験デザイン
健康な皮膚をもつ5人のボランティア(フィリピン、アジア型、年齢19−39)がこの研究に含まれた。試験部位として前腕の内側を用いてトライアルを実施した。測定は、20℃+/−1℃の温度及び50%+/−10%の相対湿度にて実施した。実験手続の前に、ボランティアを30分間周囲のコンディションに慣れさせた。最初の測定後(クロマメーター)、試験生成物及び偽生成物(試験生成物と同一であるがベリスペレンニスL抽出物を含まない)を適用した。一つのフィールドを未処理のままとして、対照エリアとした。適用用量は約2mg/cmであった(Braun Melsungen AG,ドイツ、Omnifixの1mlのシリンジを用いて適用)。処置の間、14日目と28日目に最後の毎日適用後約4時間測定値を評価した。4週間目に、生成物を1日2回在宅にて適用した。被験者は試験の3日前から試験後まで試験エリアに対して如何なる他の局所調製物も使用しないように指示された。浄化のため、水と合成洗剤(Eubos(登録商標)flussig blau)のみ許可された。
測定
皮膚の色をミノルタクロマメーターCR300(ミノルタ、日本)を用いてCommission Inteernational de l’eclairage(CIE)システムに従い、色の表示(registration)がヒトの目の非直線色感度に適合することによって測定した。色は、赤−緑(a*)、黄−青(b*)及びL*軸(明るさ)による3次元座標システムにて表現する。皮膚の表面をキセノンフラッシュライトにより明るくし、そして送られた光(remitted light)を表示して(registered)、そしてフォトレシーバーにより分析した。白色化した皮膚においては、L*軸の正の変化が観察される。各値は3つの記録の平均である。各測定のシリーズの前に、装置を標準の白いタイルに対して較正した。測定は、Standardisation Group of the European Society of Contact Dermatitis(Fullerton et al.,Contact Dermatitis,1996,35,1−10)のガイドラインに従う。
バイオメトリー
有効性チェック及び質的保証の後に、測定データを集中的にコンピュータ処理した。評価は、エクセル−R.K.Fitch,独国、のためのソフトウエアWinSTAT(登録商標)Add−inを用いて実施した。
結果
2%ベリスペレンニス抽出物を含む、発明による試験製剤は、2週及び4週の処置後に、透明ホワイトニング/ライトニング効果(メラニン含有量の約40%の減少)を未処理エリア及び偽薬処理エリアとの比較において示した(図2参照)。この色素除去又はホワイトニングの効果は、従来技術の色素除去剤又はホワイトニング剤により達成できた結果よりもはるかに優れている。何れの被験者にも不適合性は観察されなかった。
繰り返しのヒトパッチ試験による皮膚科の容認のインビボ評価
試験デザイン
発明による製剤のあらゆる起こり得る炎症作用を測定するため、繰り返しのヒトパッチ試験(J.E.Washlberg:”Patch Testing”in R.J.G.Rycroft,T.Menne’,P.J.Frosch and Benezra(eds.)Textbook of Contact Dermatitis,Springer−Verlag,Berline(1992),p.241−265,p.241−265)を10%(w/w)ベリスペレンニスL抽出物を含む試験製剤を用いて実施し、製剤の皮膚炎症ポテンシャルの評価を可能にした。試験は、敏感肌を有する18歳から65歳までの50人のボランティアにより実施された。試験生成物を希釈せずに四角の試験チェンバー(Haye’s Test Chambers;HAL Allergie GmbH,ヂュッセルドルフ、ドイツ)にて試験被験者の背中に3週間適用した(毎週:閉塞(occlusion)下にて24時間の期間を3回)。2週後に、生成物で満たされた試験チェンバーを、同じ処置をされたエリア及び未処理エリアに適用することにより、可能な感作に関して試験した。処置部位を、炎症の存在に関して、訓練された評価者により、5点のビジュアルスコアリングスケールを用いて、パッチ適用後24時間(パッチ除去後30分)、48時間、72時間及び96時間目に評価した。
スコアリングスケール:
紅斑:0:紅斑なし;1:わずかな紅斑;2:顕著な紅斑;3:著しい紅斑;4:強い紅斑
亀裂:0:亀裂なし;1:最少の亀裂;2:顕著に認知できる亀裂紅斑;3:著しい亀裂;4:潰瘍
スケーリング(scaling):0:スケーリングなし;1:最少のスケーリング;2:中位のスケーリング;3:顕著なスケーリング;4:閉じたスケールのかさぶた
結果
紅斑、亀裂形成及びスケーリングのデータを概説する試験結果を以下の表6に掲載する。試験生成物に対して半農及び炎症を示した被験者はいなかった。試験結果に基づくと、発明による組成物が皮膚の炎症を引き起こさず、そして感作の気配が観察し得なかったことが証明できた。
【0045】
【表10】

【0046】
【表11】

【0047】
本発明による組成物のさらなる利点は、ベリスペレンニスLの抗菌活性及び抗真菌活性のために、0.2%ソルビン酸カリウムほどの添加が、抗微生物対抗試験において十分であることが証明された。
【0048】
便利に使用される色素除去剤、例えば、アルブチン、コウジ酸(kojic acid)及びヒドロキノンは、主に、チロシナーゼの阻害によりそれらの効果を呈する。安定化の問題とは別に、その長期間の使用は皮膚科の問題を導くかもしれない。即ち、本発明は、色素除去剤及びメラニン合成を阻害して、皮膚科学上はよく寛容しながらも、皮膚の迅速なライトニングを導く、上記色素除去剤を含む組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0049】

【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの皮膚の色素除去のためのベリスペレンニスLの抽出物の使用。
【請求項2】
後天性又は遺伝性色素沈着過剰を治療するか又は予防するための薬学組成物の製造のためのベリスペレンニスLの抽出物の使用。
【請求項3】
化粧品組成物の適用を含むヒト皮膚の色素除去の方法であって、当該組成物が色素除去有効量のベリスペレンニスL抽出物を含む方法。
【請求項4】
組成物がクリーム、軟膏、エマルジョン(ミルク)トニック(ローション)、スティック、分散剤、テンサイドを含む製剤、溶液又はゲルである、請求項2又は3記載の使用又は方法。
【請求項5】
組成物が少なくとも一つの追加の色素除去剤、抗炎症剤又は抗酸化剤を含む、請求項1乃至4の何れか1項記載の使用又は方法。
【請求項6】
組成物が1%(w/w)から10%(w/w)、より好ましくは2%(w/w)から5%(w/w)、そしてもっとも好ましくは3%(w/w)のベリスペレンニスL抽出物を含む、請求項1乃至5の何れか1項記載の使用又は方法。
【請求項7】
着色された斑点、老人性黒子(lentigo senile)、ソバカス、雀卵斑(ephelides)、炎症後の色素沈着過剰、着色された角化症、メラズマ及び母斑(chloasma)から選択される色素沈着過剰及び白斑(vitilligo)、限局性皮膚白皮症(piebaldism)及び瘢痕形成(cicatrisation)による白斑(leucoderma)から選択される色素沈着過剰の予防、治療又は改善のための、請求項2乃至3又は5乃至6の何れか1項記載の使用又は方法。
【請求項8】
ベリスペレンニスLの抽出物の製造のためのプロセスであって、水、水性バッファー、アルコール、アルコールと水の混合物、グリコール及びグリコールと水の混合物からなる群から選択される抽出媒質、好ましくはダルベッコのリン酸バッファーpH7.2(8000mgの塩化ナトリウム、2000mgの塩化カリウム、1150mgのリン酸水素二ナトリウム、200mgのリン酸二カリウム/リットル)又は約5.0から8.0の間のpH、好ましくはpH5.0を有するソレンセンによるリン酸バッファー(0.06Mリン酸カリウム及び0.006Mリン酸二ナトリウム)又は1.2から5.0のpH、好ましくは2.0から5.0のpH、もっとも好ましくはpH3.0を有するソレンセンによるクエン酸ナトリウムバッファー(0.1Mクエン酸ナトリウム及び0.1N HClを含む)による、浸漬、濾過、煎じ出し(decoction)、ソクスレス(soxleth)抽出又は消化を含むプロセス。
【請求項9】
ダルベッコのリン酸バッファーpH7.2、ソレンセンによるリン酸バッファーpH5.0及びソレンセンによるクエン酸バッファーpH3からなる群から選択されるバッファーを用いて上昇した温度にて、好ましくは100℃にての煎じ出しを含む、請求項8のプロセス。

【公表番号】特表2007−523830(P2007−523830A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512675(P2005−512675)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014851
【国際公開番号】WO2005/063191
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(501383820)ヒェーミシェス・ラボラトーリウム・ドクター・クルト・リヒター・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】