説明

ベルトエレメントおよびベルト式無段変速機

【課題】摩耗の抑制あるいはプーリに対するベルトエレメントの姿勢の安定化の少なくともいずれかを図ることができるベルトエレメントおよびベルト式無段変速機を提供すること。
【解決手段】ベルト式無段変速機のプライマリプーリおよびセカンダリプーリ軸に形成されるとともにプーリ径方向における断面形状がベルトエレメント41に向かって突出する凸形状に形成された各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aとそれぞれ接触する各エレメント側当接面41a,41bが形成されたベルトエレメント41において、各エレメント側当接面41a,41bは、ベルトエレメント41の進行方向における断面形状がベルトエレメント41の内部に向かって凹む凹形状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトエレメントおよびベルト式無段変速機に関し、特にベルトエレメントによりプーリ間で力の伝達を行うベルトエレメントおよびベルト式無段変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、駆動源である内燃機関や電動機が発生する駆動力を車両の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達するために、駆動源の出力側に変速機が設けられている。変速機には、変速比を無段階(連続的)に制御する無段変速機と、変速比を段階的(不連続)に制御する有段変速機とがある。ここで、無段変速機には、2つのプーリとベルトとを用いたベルト式無段変速機がある。
【0003】
従来のベルト式無段変速機のベルトは、複数個のベルトエレメントを金属製のリングにより繋ぎ合わせて構成されている。ベルト式無段変速機では、ベルトエレメントのエレメント側当接面がプーリのプーリ側当接面と接触することで、ベルトを介して、プーリ間で力の伝達を行うものである。
【0004】
ここで、従来のベルト式無段変速機においては、例えば特許文献1に示すようなものがある。特許文献1に示すベルト式無段変速機は、プーリのプーリ側当接面のプーリ径方向における断面形状をベルトエレメントに向かって突出する凸形状とし、ベルトエレメントのエレメント側当接面のプーリ径方向における断面形状をエレメント側当接面と対向するプーリ側当接面に向かって突出する凸形状とするものである。従って、特許文献1に示すベルト式無段変速機では、エレメント側当接面およびプーリ側当接面のプーリ径方向における断面形状が互いに凸形状であるので、エレメント側当接面とプーリ側当接面との接触面が点接触となる。これにより、特許文献1に示すベルト式無段変速機は、ベルトの芯ずれ、すなわち2つのプーリ間におけるベルトのプーリの軸方向と直交する直交方向におけるずれを抑制するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2002−31215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示すようなベルト式無段変速機では、エレメント側当接面とプーリ側当接面との接触面が点接触となるので、エレメント側当接面とプーリ側当接面との接触面の面積が小さくなり面圧が増加し、摩耗が増加する虞がある。また、接触面が点接触であると、プーリに対してベルトエレメントが2点で支持されることとなる。従って、プーリに対するベルトエレメントの姿勢が不安定となる虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、摩耗の抑制あるいはプーリに対するベルトエレメントの姿勢の安定化の少なくともいずれかを図ることができるベルトエレメントおよびベルト式無段変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、プーリに形成されるとともにプーリ径方向における断面形状がベルトエレメントに向かって突出する凸形状に形成されたプーリ側当接面と接触するエレメント側当接面が形成されたベルトエレメントにおいて、エレメント側当接面は、ベルトエレメントの進行方向における断面形状がベルトエレメントの内部に向かって凹む凹形状に形成されている。
【0009】
ここで、プーリ径方向における断面形状がベルトエレメントに向かって突出する凸形状に形成されたプーリ側当接面は、進行方向における断面形状がベルトエレメントに向かって突出する凸形状に形成される。本発明によれば、エレメント側当接面の進行方向における断面形状がベルトエレメントの内部に向かって凹む凹形状に形成、すなわちプーリ側当接面の進行方向における断面形状に沿って形成されているので、エレメント側当接面とプーリ側当接面との進行方向における接触を面接触とすることができる。従って、エレメント側当接面とプーリ側当接面との進行方向と直交する直交方向における接触が点接触であっても、エレメント側当接面とプーリ側当接面との接触面の面積を大きくすることができる。従って、接触面の面圧を低下させることができ、摩耗を抑制することができる。また、エレメント側当接面とプーリ側当接面との進行方向における接触が面接触となるので、プーリに対してベルトエレメントが2点で支持される場合と比較して、ベルトエレメントの姿勢の安定化を図ることができる。これらにより、ベルトの耐久性や伝達効率の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明では、上記ベルトエレメントにおいて、エレメント側当接面は、進行方向と直交する直交方向における断面形状がエレメント側当接面と対向するプーリ側当接面に向かって突出する凸形状に形成されていることが好ましい。
【0011】
そうすることにより、エレメント側当接面とプーリ側当接面との進行方向と直交する直交方向における接触が点接触とすることができる。従って、プーリ間におけるベルトの芯ずれを抑制することができる。
【0012】
また、本発明では、上記ベルトエレメントにおいて、エレメント側当接面は、エレメント側当接面とプーリ側当接面との接触位置でのプーリ側当接面の進行方向における断面の外形線を構成する曲線の曲率に応じて、進行方向における断面の外形線が曲線で構成されている形態が好ましい。
【0013】
ここで、ベルトエレメントのプーリに対する接触位置は、変速比に応じて異なる。つまり、変速比によって、エレメント側当接面のプーリ側当接面に対する接触位置およびプーリ側当接面のエレメント側当接面に対する接触位置が変化する。本形態によれば、プーリ側当接面の進行方向における断面の外形線を構成する曲線の曲率に応じてエレメント側当接面の進行方向における断面の外形線が曲線で構成されているので、変速比が変化し、エレメント側当接面とプーリ側当接面との接触位置が異なっても、エレメント側当接面とプーリ側当接面との進行方向における接触を常に面接触とすることができる。従って、変速比に拘わらず、エレメント側当接面とプーリ側当接面との接触面の面積を大きくすることができる。従って、変速比に拘わらず、接触面の面圧を低下させることができ、摩耗を抑制することができる。また、変速比に拘わらず、エレメント側当接面とプーリ側当接面との接触が面接触となるので、プーリに対してベルトエレメントが2点で支持される場合と比較して、ベルトエレメントの姿勢の安定化を図ることができる。これらにより、ベルトの耐久性や伝達効率の向上を確実に図ることができる。
【0014】
また、本発明では、上記ベルトエレメントにおいて、エレメント側当接面の進行方向における断面の外形線を構成する曲線の中心がベルトエレメントの厚さ方向中心線に対して進行方向と反対方向にずれていることが好ましい。
【0015】
そうすることにより、エレメント側当接面の進行方向における断面形状は、厚さ方向中心線から進行方向側の部分におけるプーリ側当接面に向かう突出量が厚さ方向中心線から進行方向と反対側の部分におけるプーリ側当接面に向かう突出量よりも大きくなる。従って、プーリからベルトエレメントに力が伝達される際、すなわちベルトエレメントが進行方向に移動する際のプーリに対するベルトエレメントのスリップを抑制することができる。また、ベルトエレメントが進行方向に移動する際のベルトエレメントの姿勢の安定化を図ることができる。これらにより、ベルトの耐久性や、伝達効率の向上を図ることができる。
【0016】
また、本発明にかかるベルト式無段変速機では、入力側のプーリと、出力側のプーリと、上記ベルトエレメントを連結部材により複数個繋ぎ合わせて構成され、入力側のプーリと出力側のプーリとの間で力の伝達を行うベルトと、を備える。
【0017】
本発明によれば、エレメント側当接面とプーリ側当接面との進行方向における接触を面接触とすることができる。従って、エレメント側当接面とプーリ側当接面との接触面の面積を大きくすることができる。従って、接触面の面圧を低下させることができ、摩耗を抑制することができる。また、エレメント側当接面とプーリ側当接面との接触が面接触となるので、プーリに対してベルトエレメントが2点で支持される場合と比較して、ベルトエレメントの姿勢の安定化を図ることができる。これらにより、ベルトの耐久性や伝達効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるベルトエレメントおよびベルト式無段変速機は、摩耗の抑制を図ることができるという効果を奏する。また、本発明にかかるベルトエレメントおよびベルト式無段変速機は、ベルトエレメントの姿勢の安定化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記の実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。ここで、下記の実施の形態では、内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)が発生する出力トルクを伝達するベルト式無段変速機について説明するが、これに限定されるものではなく、ベルト式無段変速機が伝達する力は、モータなどの電動機が発生する出力トルクであっても良い。
【0020】
[実施の形態]
図1は、実施の形態にかかるベルト式無段変速機の構成例を示す図である。図2は、ベルトの構成例を示す図である。図3は、実施の形態にかかるベルトエレメントを示す図である。図4は、ベルトエレメントとプーリとの接触関係を示す図である。図5−1〜図5−3は、ベルトエレメントの進行方向断面を示す図である。図6−1〜図6−3は、他のベルトエレメントの進行方向断面を示す図である。なお、図1は、変速比が最大、すなわちγmaxの際におけるベルト式無段変速機を示す図である。
【0021】
実施の形態にかかるベルト式無段変速機1は、図1に示すように、駆動源が発生する駆動力として内燃機関100が発生する出力トルクが入力され、複数個のベルトエレメント41により構成されるベルト4を介して、入力された内燃機関100が発生する出力トルクを所定の変速比で車輪160,160に伝達するものである。
【0022】
内燃機関100が発生する出力トルクは、クランクシャフト101を介してトルクコンバータ110に伝達される。トルクコンバータ110は、発進機構であり、内燃機関100が発生する出力トルクを所定のトルク比で前後進切換機構120に伝達するものである。前後進切換機構120は、伝達された内燃機関100が発生する出力トルクの伝達方向を切り替えるものであり、従って、内燃機関100が発生する出力トルクの伝達方向を前後進切換機構120により切り替えることで、ベルト式無段変速機1が搭載された車両が前進あるいは後進をする。前後進切換機構120で伝達方向が決定された内燃機関100が発生する出力トルクは、ベルト式無段変速機1に伝達される。なお、トルクコンバータ110の制御、例えばロックアップのON/OFF制御および前後進切換機構120の制御、すなわち出力トルクの伝達方向の切替制御は、油圧制御回路6から供給される油圧が用いられる。これらの制御を行うための油圧制御回路6の油圧制御は、制御装置5により行われる。
【0023】
ベルト式無段変速機1が所定の変速比で駆動することで、変速比に応じて変換された内燃機関100が発生する出力トルクは、ベルト式無段変速機1の後述するセカンダリプーリ3のセカンダリプーリ軸31を介して動力伝達機構130に伝達される。動力伝達機構130は、ベルト式無段変速機1と最終減速機140とを連結するものである。動力伝達機構130に伝達された内燃機関100が発生する出力トルクは、最終減速機140に伝達され、最終減速機140と車輪160,160とを連結するドライブシャフト150,150を介して、車輪160,160に伝達される。
【0024】
ベルト式無段変速機1は、図1に示すように、プライマリプーリ2と、セカンダリプーリ3と、ベルト4と、制御装置5と、油圧制御回路6とにより構成されている。なお、7は、内燃機関100の運転制御を行うECU(Engine Control Unit)である。ECU7は、内燃機関100が搭載された車両の各所に取り付けられたセンサから入力された各種入力信号と、図示しない記憶部に記憶されている各種マップとに基づいて内燃機関100の運転制御、例えば図示しない燃料噴射弁の噴射制御、スロットルバルブのスロットル開度制御、点火プラグの点火制御などを行うものである。ECU7の構成は、既に公知のものであるため説明を省略する。
【0025】
プライマリプーリ2は、入力側のプーリであり、前後進切換機構120を介して伝達された内燃機関100が発生する出力トルクをベルト4により、出力側のプーリであるセカンダリプーリ3に伝達するものである。プライマリプーリ2は、図1に示すように、プライマリプーリ軸21と、プライマリ固定シーブ22と、プライマリ可動シーブ23と、プライマリプーリ2にベルト挟圧力を発生させることでベルト式無段変速機1の変速比を変更するプライマリ油圧室24とにより構成されている。
【0026】
プライマリプーリ軸21は、軸受25,26により回転可能に支持されている。また、プライマリプーリ軸21は、内部に図示しない作動油通路を有している。作動油通路は、油圧制御回路6に接続されており、油圧制御回路6からプライマリ油圧室24に供給される作動油が流入する。
【0027】
プライマリ固定シーブ22は、プライマリ可動シーブ23と対向する位置に、プライマリプーリ軸21と一体回転するように設けられている。ここでは、プライマリ固定シーブ22は、プライマリプーリ軸21の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、実施の形態では、プライマリ固定シーブ22は、プライマリプーリ軸21の外周に一体的に設けられている。
【0028】
プライマリ固定シーブ22は、固定シーブ側当接面22aが形成されている。固定シーブ側当接面22aは、プーリ側当接面であり、プライマリ可動シーブ23と対向して形成されている。固定シーブ側当接面22aは、プーリ径方向における断面形状がベルト4の後述するベルトエレメント41に向かって突出する凸形状に形成されている(図4参照)。実施の形態では、固定シーブ側当接面22aのプーリ径方向における断面の外形線は、曲線で構成されている。
【0029】
プライマリ可動シーブ23は、プライマリプーリ軸21にプライマリプーリ軸21上を軸方向に摺動可能にスプライン嵌合されている。つまり、プライマリ可動シーブ23は、プライマリプーリ軸21に対して軸方向に移動自在に支持されている。
【0030】
プライマリ可動シーブ23は、可動シーブ側当接面23aが形成されている。可動シーブ側当接面23aは、プーリ側当接面であり、プライマリ固定シーブ22と対向して形成されている。可動シーブ側当接面23aは、プーリ径方向における断面形状がベルト4の後述するベルトエレメント41に向かって突出する凸形状に形成されている(図4参照)。実施の形態では、可動シーブ側当接面23aのプーリ径方向における断面の外形線は、曲線で構成されている。
【0031】
プライマリ固定シーブ22とプライマリ可動シーブ23との間、すなわち固定シーブ側当接面22aと可動シーブ側当接面23aとの間で、V字形状のプライマリ溝27が形成されている。プライマリ溝27には、ベルト4が巻き掛けられている。従って、ベルト4は、プライマリ固定シーブ22とプライマリ可動シーブ23との間に挟み込まれている。つまり、プライマリプーリ2の対向するプーリ側当接面の間にベルト4が挟み込まれ、プライマリプーリ2とベルト4のベルトエレメント41とが接触する。これにより、固定シーブ側当接面22aおよび可動シーブ側当接面23aがベルトエレメント41の後述する第1フランク面41aおよび第2フランク面41bとそれぞれ接触する。
【0032】
プライマリ油圧室24は、可動シーブ側当接面23aと反対側の背面23bと、プライマリプーリ軸21に固定されたリング形状のプライマリ隔壁28とに構成されている。プライマリ可動シーブ23の背面23bには、軸方向の一方向に突出、すなわちプライマリ固定シーブ22側と反対側に突出する円筒形状の突出部23cが形成されている。突出部23cとプライマリ隔壁28との間には、例えばシールリングなどの図示しないプライマリ油圧室用シール部材が設けられている。つまり、プライマリ油圧室24を構成するプライマリ可動シーブ23の背面23bとプライマリ隔壁28とは、シール部材によりシールされている。なお、軸受26およびプライマリ隔壁28は、ロックナットにより、プライマリプーリ軸21に対して固定されている。
【0033】
プライマリ油圧室24には、プライマリプーリ軸21の図示しない作動油通路に流入した作動油が供給される。つまり、油圧制御回路6は、プライマリ油圧室24に作動油を供給し、プライマリ油圧室24の油圧により、プライマリ可動シーブ23を軸方向に摺動させ、プライマリ可動シーブ23をプライマリ固定シーブ22に対して接近あるいは離隔させるものである。プライマリ油圧室24は、プライマリ油圧室24に供給される作動油により、プライマリ可動シーブ23を軸方向に押圧する可動シーブ押圧力をプライマリ可動シーブ23に作用させることで、プライマリ溝27に巻き掛けられるベルト4に対するベルト挟圧力を発生させる。つまり、プライマリプーリ2は、プライマリ油圧室24の油圧によりベルト4に対してベルト挟圧力を発生させ、発生したベルト挟圧力により、プライマリ可動シーブ23のプライマリ固定シーブ22に対する軸方向位置を変更するものである。これにより、プライマリ油圧室24は、ベルト式無段変速機1の変速比を変更させる機能を有するものである。
【0034】
セカンダリプーリ3は、出力側のプーリであり、ベルト4を介してプライマリプーリ2から伝達された内燃機関100が発生する出力トルクを動力伝達機構130、最終減速機140、ドライブシャフト150,150を介して車輪160,160に伝達するものである。セカンダリプーリ3は、図1に示すように、セカンダリプーリ軸31と、セカンダリ固定シーブ32と、セカンダリ可動シーブ33と、セカンダリプーリ3にベルト挟圧力を発生させることで、ベルト4の張力を調整するセカンダリ油圧室34とにより構成されている。
【0035】
セカンダリプーリ軸31は、プーリ軸受35,36により回転可能に支持されている。また、セカンダリプーリ軸31は、内部に図示しない作動油通路を有している。作動油通路は、油圧制御回路6に接続されており、油圧制御回路6からセカンダリ油圧室34に供給される作動油が流入する。
【0036】
セカンダリ固定シーブ32は、セカンダリ可動シーブ33と対向する位置に、セカンダリプーリ軸31と一体回転するように設けられている。ここでは、セカンダリ固定シーブ32は、セカンダリプーリ軸31の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、実施の形態では、セカンダリ固定シーブ32は、セカンダリプーリ軸31の外周に一体的に設けられている。
【0037】
セカンダリ固定シーブ32は、固定シーブ側当接面32aが形成されている。固定シーブ側当接面32aは、プーリ側当接面であり、セカンダリ可動シーブ33と対向して形成されている。固定シーブ側当接面32aは、プーリ径方向における断面形状がベルト4の後述するベルトエレメント41に向かって突出する凸形状に形成されている(図4参照)。実施の形態では、固定シーブ側当接面32aのプーリ径方向における断面の外形線は、曲線で構成されている。
【0038】
セカンダリ可動シーブ33は、セカンダリプーリ軸31にセカンダリプーリ軸31上を軸方向に摺動可能にスプライン嵌合されている。つまり、セカンダリ可動シーブ33は、セカンダリプーリ軸31に対して軸方向に移動自在に支持されている。
【0039】
セカンダリ可動シーブ33は、可動シーブ側当接面33aが形成されている。可動シーブ側当接面33aは、プーリ側当接面であり、セカンダリ固定シーブ32と対向して形成されている。可動シーブ側当接面33aは、プーリ径方向における断面形状がベルト4の後述するベルトエレメント41に向かって突出する凸形状に形成されている(図4参照)。実施の形態では、可動シーブ側当接面33aのプーリ径方向における断面の外形線は、曲線で構成されている。
【0040】
セカンダリ固定シーブ32とセカンダリ可動シーブ33との間、すなわち固定シーブ側当接面32aと可動シーブ側当接面33aとの間で、V字形状のセカンダリ溝37が形成されている。セカンダリ溝37には、ベルト4が巻き掛けられている。従って、ベルト4は、セカンダリ固定シーブ32とセカンダリ可動シーブ33との間に挟み込まれている。つまり、セカンダリプーリ3の対向するプーリ側当接面の間にベルト4が挟み込まれ、セカンダリプーリ3とベルト4のベルトエレメント41とが接触する。これにより、固定シーブ側当接面32aおよび可動シーブ側当接面33aがベルトエレメント41の第2フランク面41bおよび第1フランク面41aとそれぞれ接触する。
【0041】
セカンダリ油圧室34は、可動シーブ側当接面33aと反対側の背面33bと、セカンダリプーリ軸31に固定されたリング形状のセカンダリ隔壁38とに構成されている。セカンダリ可動シーブ33の背面33bには、軸方向の一方向に突出、すなわちセカンダリ固定シーブ32側と反対側に突出する円筒形状の突出部33cが形成されている。突出部33cとセカンダリ隔壁38との間には、例えばシールリングなどの図示しないセカンダリ油圧室用シール部材が設けられている。つまり、セカンダリ油圧室34を構成するセカンダリ可動シーブ33の背面33bとセカンダリ隔壁38とは、シール部材によりシールされている。なお、軸受35およびセカンダリ隔壁38は、図示しないロックナットにより、セカンダリプーリ軸31に対して固定されている。また、軸受36およびパーキングギヤ39は、ロックナットにより、セカンダリプーリ軸31に対して固定されている。
【0042】
セカンダリ油圧室34には、セカンダリプーリ軸31の図示しない作動油通路に流入した作動油が供給される。つまり、油圧制御回路6は、セカンダリ油圧室34に作動油を供給し、セカンダリ油圧室34の油圧により、セカンダリ可動シーブ33を軸方向に摺動させ、セカンダリ可動シーブ33をセカンダリ固定シーブ32に対して接近あるいは離隔させるものである。セカンダリ油圧室34は、セカンダリ油圧室34に供給される作動油により、セカンダリ可動シーブ33を軸方向に押圧する可動シーブ押圧力をセカンダリ可動シーブ33に作用させることで、セカンダリ溝37に巻き掛けられるベルト4に対するベルト挟圧力を発生させる。つまり、セカンダリプーリ3は、セカンダリ油圧室34の油圧によりベルト4に対してベルト挟圧力を発生させ、発生したベルト挟圧力により、セカンダリ可動シーブ33のセカンダリ固定シーブ32に対する軸方向位置を変更するものである。これにより、セカンダリ油圧室34は、ベルト4のプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対する接触半径を一定に維持し、ベルト4の張力を調整する機能を有するものである。なお、セカンダリプーリ3には、ベルト4に対してベルト挟圧力を発生する手段として、セカンダリ油圧室34のみならずトルクカムを備えていても良い。
【0043】
ここで、プライマリプーリ2の固定シーブ側当接面22a、可動シーブ側当接面23aおよびセカンダリプーリ3の固定シーブ側当接面32a、可動シーブ側当接面33a(以下、単に「各プーリ側当接面22a,23a,32a,33a」と称する。)は、図5−1〜図5−3に示すように、プーリ径方向における断面形状がベルトエレメント41に向かって突出する凸形状に形成される。従って、各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aのプーリ径方向における断面の外形線は、曲線で構成されている(同図の二点差線)。なお、各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aの進行方向における断面の外形線を構成する曲線の曲率は、図5−1〜図5−3に示すように、プーリ径方向において変化する。実施の形態では、プーリ径方向外側から内側に向かうに伴い各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aの進行方向における断面の外形線を構成する曲線の曲率が大きくなる。つまり、各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aの進行方向における断面の外形線を構成する曲線の曲率は、ベルトエレメント41の後述する第1フランク面41aおよび第2フランク面41bと、各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aとの接触位置で異なる。
【0044】
ベルト4は、プライマリプーリ2とセカンダリプーリ3との間で力、例えば内燃機関100が発生する出力トルクの伝達を行うものである。ベルト4は、上述のように、プライマリプーリ2とセカンダリプーリ3とに巻き掛けられる無端ベルトである。ベルト4は、図2に示すように、複数個のベルトエレメント41と、一対のリング42、43とにより構成されている。
【0045】
各ベルトエレメント41は、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3と接触することで、プライマリプーリ2とセカンダリプーリ3との間で力の伝達を行うものである。各ベルトエレメント41は、図3に示すように、金属製であり、各ベルトエレメント41のプーリに対する進行方向(図2、図5−1〜図5−3参照)と直交する直交方向、実施の形態では幅方向における両側面に第1フランク面41aおよび第2フランク面41bがそれぞれ形成されている。なお、41cは、隣り合うベルトエレメント41の図示しない凹部に挿入されるピンである。
【0046】
第1フランク面41aは、エレメント側当接面であり、ベルト4がプライマリプーリ2とセカンダリプーリ3とに巻き掛けられた際に、プライマリプーリ2の固定シーブ側当接面22aおよびセカンダリプーリ3の可動シーブ側当接面33aと接触するものである。また、第1フランク面41aは、幅方向における断面形状が第1フランク面41aと対向する固定シーブ側当接面22aおよび可動シーブ側当接面33aに向かって突出する凸形状に形成されている。実施の形態では、第1フランク面41aの幅方向における断面の外形線は、曲線で構成されている。
【0047】
第2フランク面41bは、エレメント側当接面であり、ベルト4がプライマリプーリ2とセカンダリプーリ3とに巻き掛けられた際に、プライマリプーリ2の可動シーブ側当接面23aおよびセカンダリプーリ3の固定シーブ側当接面32aと接触するものである。また、第2フランク面41bは、幅方向における断面形状が第2フランク面41bと対向する可動シーブ側当接面23aおよび固定シーブ側当接面32aに向かって突出する凸形状に形成されている。実施の形態では、第2フランク面41bの幅方向における断面の外形線は、曲線で構成されている。
【0048】
ここで、第1フランク面41aおよび第2フランク面41b(以下、単に「各エレメント側当接面41a,41b」と称する。)は、図5−1〜図5−3に示すように、進行方向における断面形状がベルトエレメント41の内部に向かって凹む凹形状に形成されている。実施の形態では、各エレメント側当接面41a,41bの進行方向における断面の外形線は、曲線で構成されている。また、各エレメント側当接面41a,41bの進行方向における断面形状は、進行方向における断面の外形線を構成する曲線の中心がベルトエレメント41の厚さ方向中心線D上となるように形成されている。
【0049】
各エレメント側当接面41a,41bは、各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aに対する接触位置が各エレメント側当接面41a,41bの幅方向における断面形状が凸形状および各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aのプーリ径方向における断面形状が凸形状に形成されているので、図4に示すように、ベルト4のプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対する接触半径に応じて変化する。つまり、接触位置は、ベルト式無段変速機1の変速比に応じて異なる。つまり、変速比によって、各エレメント側当接面41a,41bの各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aに対する接触位置および各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aの各エレメント側当接面41a,41bに対する接触位置がそれぞれ変化する。そこで、各エレメント側当接面41a,41bは、各接触位置での各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aのプーリ径方向おける断面の外形線を構成する曲線の曲率に応じて、進行方向における断面の外形線を曲線で構成する。実施の形態では、各エレメント側当接面41a,41bは、各接触位置での進行方向における断面の外形線をそれぞれの接触位置での各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aのプーリ径方向おける断面の外形線を構成する曲線と同一曲線で構成する。
【0050】
例えば、図4に示すように、各エレメント側当接面41a,41bが各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aのうちプーリ径方向外側で接触する場合、各エレメント側当接面41a,41bは、各エレメント側当接面41a,41bの下部で接触することとなる。上記接触位置での各エレメント側当接面41a,41bの進行方向における断面の外形線を構成する曲線は、図5−1に示すように、ベルトエレメント41の厚さ方向中心線D上の中心OAがあり、曲率RAのその接触位置での各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aプーリ径方向おける断面の外形線を構成する曲線(同図二点差線)と同一となる。
【0051】
また、図4に示すように、各エレメント側当接面41a,41bが各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aのうちプーリ径方向中央部で接触する場合、各エレメント側当接面41a,41bは、各エレメント側当接面41a,41bの中央部で接触することとなる。上記接触位置での各エレメント側当接面41a,41bの進行方向における断面の外形線を構成する曲線は、図5−2に示すように、ベルトエレメント41の厚さ方向中心線D上の中心OBがあり、曲率RBのその接触位置での各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aプーリ径方向おける断面の外形線を構成する曲線(同図二点差線)と同一となる。
【0052】
また図4に示すように、各エレメント側当接面41a,41bが各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aのうちプーリ径方向外側で接触する場合、各エレメント側当接面41a,41bは、各エレメント側当接面41a,41bの上部で接触することとなる。上記接触位置での各エレメント側当接面41a,41bの進行方向における断面の外形線を構成する曲線は、図5−3に示すように、ベルトエレメント41の厚さ方向中心線D上の中心OCがあり、曲率RCのその接触位置での各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aプーリ径方向おける断面の外形線を構成する曲線(同図二点差線)と同一となる。
【0053】
従って、各エレメント側当接面41a,41bは、進行方向における断面形状が各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aのプーリ径方向おける断面形状に沿って形成される。これにより、各エレメント側当接面41a,41bと各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aとの接触が面接触となる。また、各エレメント側当接面41a,41bは、各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aの進行方向における断面の外形線を構成する曲線の曲率に応じて各エレメント側当接面41a,41bの進行方向における断面の外形線が曲線で構成され、各エレメント側当接面41a,41bと各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aとの接触位置に拘わらず、進行方向における断面形状が各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aの進行方向おける断面形状に沿って形成される。従って、ベルト式無段変速機1の変速比が変化し、各エレメント側当接面41a,41bと各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aとの接触位置が異なっても、各エレメント側当接面41a,41bと各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aとの進行方向における接触を常に面接触とすることができる。
【0054】
制御装置5は、ベルト式無段変速機1の駆動を制御、特に変速比を制御するものである。制御装置5は、油圧制御回路6と接続されており、油圧制御回路6の油圧制御を行うことで、プライマリ油圧室24の油圧およびセカンダリ油圧室34の油圧を調整する。従って、制御装置5は、プライマリプーリ2におけるベルト挟圧力およびセカンダリプーリ3におけるベルト挟圧力を調整し、プライマリプーリ2の回転数である入力軸回転数と、セカンダリプーリ3の回転数である出力軸回転数との比である変速比を制御するものである。ここで、制御装置5は、図示しない入力軸回転数センサにより検出された入力軸回転数と、図示しない出力軸回転数センサにより検出された出力軸回転数との比から検出された実際の変速比に基づいて、内燃機関100の運転状態に応じて決定された目標変速比に対するフィードバック制御が行われる。また、制御装置5は、ECU7と接続されており、ECU7から内燃機関100に供給される燃料の燃料供給量や、内燃機関100に空気を導入する図示しない吸気経路の圧力、内燃機関100の機関回転数、上記スロットル開度などが入力される。なお、制御装置5の構成は、既に公知であるトランスミッションコントロールコンピュータの構成と同様のものであるため説明を省略する。
【0055】
次に、実施の形態にかかるベルト式無段変速機1の動作について説明する。内燃機関100がECU7により運転制御されると、内燃機関100が発生した出力トルクにより、ベルト式無段変速機1が駆動する。また、ベルト式無段変速機1は、内燃機関100の運転状態に応じて制御装置5により変速比が変更される。具体的には、図1に示すように、プライマリプーリ2には、トルクコンバータ110および前後進切換機構を介して、内燃機関100が発生する出力トルクが伝達される。
【0056】
プライマリプーリ2は、プライマリ油圧室24の油圧によりベルト4に対してベルト挟圧力を発生している。従って、プライマリ溝27に巻き掛けられたベルト4とプライマリプーリ2との間、すなわちベルトエレメント41の第1フランク面41aおよび第2フランク面41bと固定シーブ側当接面22aおよび可動シーブ側当接面23aとの接触面に面圧が発生する。これにより、プライマリプーリ2とプライマリプーリ2と接触する各ベルトエレメント41との間で摩擦力が発生し、プライマリプーリ2に伝達された内燃機関100が発生する出力トルクにより、各ベルトエレメント41が進行方向に移動し、ベルト4がセカンダリプーリ3に向かって移動する。
【0057】
このとき、上述のように、第1フランク面41aおよび第2フランク面41bと固定シーブ側当接面22aおよび可動シーブ側当接面23aとの進行方向における接触が面接触となるので、第1フランク面41aおよび第2フランク面41bと固定シーブ側当接面22aおよび可動シーブ側当接面23aとの進行方向と直交する直交方向(幅方向、プーリ径方向)における接触が点接触であっても、各ベルトエレメント41とプライマリプーリ2との接触面の面積を大きくすることができる。従って、接触面の面圧を低下させることができ、プライマリプーリ2およびベルト4の摩耗を抑制することができる。また、第1フランク面41aおよび第2フランク面41bと固定シーブ側当接面22aおよび可動シーブ側当接面23aとの進行方向における接触が面接触となるので、プライマリプーリ2に対してベルトエレメント41が2点で支持される場合と比較して、プライマリプーリ2に対するベルトエレメント41の姿勢の安定化を図ることができる。
【0058】
また、セカンダリプーリ3は、セカンダリ油圧室34の油圧によりベルト4に対してベルト挟圧力を発生している。従って、セカンダリ溝37に巻き掛けられたベルト4とセカンダリプーリ3との間、すなわちベルトエレメント41の第1フランク面41aおよび第2フランク面41bと固定シーブ側当接面32aおよび可動シーブ側当接面33aとの接触面に面圧が発生する。これにより、セカンダリプーリ3とセカンダリプーリ3と接触する各ベルトエレメント41との間で摩擦力が発生し、プライマリプーリ2を介して各ベルトエレメント41に伝達された内燃機関100が発生する出力トルクがセカンダリプーリ3に伝達される。ここでも、各ベルトエレメント41が進行方向に移動し、ベルト4がプライマリプーリ2向かって移動する。
【0059】
このとき、上述のように、第1フランク面41aおよび第2フランク面41bと固定シーブ側当接面32aおよび可動シーブ側当接面33aとの進行方向における接触が面接触となるので、第1フランク面41aおよび第2フランク面41bと固定シーブ側当接面32aおよび可動シーブ側当接面33aとの進行方向と直交する直交方向(幅方向、プーリ径方向)における接触が点接触であっても、各ベルトエレメント41とセカンダリプーリ3との接触面の面積を大きくすることができる。従って、接触面の面圧を低下させることができ、セカンダリプーリ3およびベルト4の摩耗を抑制することができる。また、第1フランク面41aおよび第2フランク面41bと固定シーブ側当接面32aおよび可動シーブ側当接面33aとの進行方向における接触が面接触となるので、セカンダリプーリ3に対してベルトエレメント41が2点で支持される場合と比較して、セカンダリプーリ3に対するベルトエレメント41の姿勢の安定化を図ることができる。
【0060】
以上のように、実施の形態にかかるベルト式無段変速機1は、プライマリプーリ2、セカンダリプーリ3およびベルト4の摩耗を抑制することができ、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対するベルトエレメント41の姿勢の安定化を図ることができる。特に、変速比に拘わらず、セカンダリプーリ3およびベルト4の摩耗を抑制することができ、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対するベルトエレメント41の姿勢の安定化を図ることができる。従って、ベルト4の耐久性やベルト式無段変速機1の伝達効率の向上を図ることができる。
【0061】
なお、上記実施の形態では、各エレメント側当接面41a,41bの進行方向における断面の外形線を構成する曲線の中心をベルトエレメントの厚さ方向中心線D上としたが本発明はこれに限定されるものではない。図6−1〜図6−3は、他のベルトエレメントの進行方向断面を示す図である。例えば、図6−1〜図6−3に示すように、ベルトエレメント41´の第1フランク面41dおよび第2フランク面41eの進行方向における断面の外形線を構成する曲線の中心をベルトエレメント41´の厚さ方向中心線Dに対して進行方向と反対方向にずらしても良い。
【0062】
例えば、図6−1〜図6−3に示す各接触位置での各エレメント側当接面41d,41eの進行方向における断面の外形線を構成する曲線は、ベルトエレメント41の厚さ方向中心線Dの進行方向と反対方向に中心OA,OB,OCがあり、曲率RA,RB,RCの各接触位置での各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aのプーリ径方向おける断面の外形線を構成する曲線と同一としても良い。
【0063】
この場合は、各エレメント側当接面41d,41eの進行方向における断面形状は、厚さ方向中心線Dから進行方向側の部分における各プーリ側当接面22a,23a,32a,33aに向かう突出量が厚さ方向中心線Dから進行方向と反対側の部分における突出量よりも大きくなる。従って、プライマリプーリ2からベルトエレメント41に力が伝達される際、すなわちベルトエレメント41が進行方向に移動する際に、各ベルトエレメント41がプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に引っ掛かりやすくなるので、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3に対するベルトエレメント41のスリップを抑制することができる。また、ベルトエレメント41が進行方向に移動する際のベルトエレメント41の姿勢の安定化を図ることができる。これらにより、ベルト4の耐久性や、ベルト式無段変速機1の伝達効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施の形態にかかるベルト式無段変速機の構成例を示す図である。
【図2】ベルトの構成例を示す図である。
【図3】実施の形態にかかるベルトエレメントを示す図である。
【図4】ベルトエレメントとプーリとの接触関係を示す図である。
【図5−1】ベルトエレメントの進行方向断面(図4のA−A断面)を示す図である。
【図5−2】ベルトエレメントの進行方向断面(図4のB−B断面)を示す図である。
【図5−3】ベルトエレメントの進行方向断面(図4のC−C断面)を示す図である。
【図6−1】他のベルトエレメントの進行方向断面を示す図である。
【図6−2】他のベルトエレメントの進行方向断面を示す図である。
【図6−3】他のベルトエレメントの進行方向断面を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ベルト式無段変速機
2 プライマリプーリ
21 プライマリプーリ軸
22 プライマリ固定シーブ
22a 固定シーブ側当接面(プーリ側当接面)
23 プライマリ可動シーブ
23a 可動シーブ側当接面(プーリ側当接面)
23b 背面
23c 突出部
24 プライマリ油圧室
25,26 軸受
27 プライマリ溝
28 プライマリ隔壁
3 セカンダリプーリ
31 セカンダリプーリ軸
32 セカンダリ固定シーブ
32a 固定シーブ側当接面(プーリ側当接面)
33 セカンダリ可動シーブ
33a 可動シーブ側当接面(プーリ側当接面)
33b 背面
33c 突出部
34 セカンダリ油圧室
35,36 軸受
37 セカンダリ溝
38 セカンダリ隔壁
39 パーキングギヤ
4 ベルト
41 ベルトエレメント
41a,41d 第1フランク面(エレメント側当接面)
41b,41e 第2フランク面(エレメント側当接面)
41c ピン
42,43 リング(連結部材)
5 制御装置
6 油圧制御回路
7 ECU
100 内燃機関
101 クランクシャフト
110 トルクコンバータ
120 前後進切換機構
130 動力伝達機構
140 最終減速機
150 ドライブシャフト
160 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリに形成されるとともにプーリ径方向における断面形状がベルトエレメントに向かって突出する凸形状に形成されたプーリ側当接面と接触するエレメント側当接面が形成されたベルトエレメントにおいて、
前記エレメント側当接面は、前記ベルトエレメントの進行方向における断面形状が当該ベルトエレメントの内部に向かって凹む凹形状に形成されていることを特徴とするベルトエレメント。
【請求項2】
前記エレメント側当接面は、前記進行方向と直交する直交方向における断面形状が当該エレメント側当接面と対向する前記プーリ側当接面に向かって突出する凸形状に形成されている請求項1に記載のベルトエレメント。
【請求項3】
前記エレメント側当接面は、当該エレメント側当接面と前記プーリ側当接面との接触位置での当該プーリ側当接面の前記進行方向における断面の外形線を構成する曲線の曲率に応じて、前記進行方向における断面の外形線が曲線で構成されている請求項1または2に記載のベルトエレメント。
【請求項4】
前記エレメント側当接面の前記進行方向における断面の外形線を構成する曲線の中心が前記ベルトエレメントの厚さ方向中心線に対して当該進行方向と反対方向にずれている請求項1〜3のいずれか1つに記載のベルトエレメント。
【請求項5】
入力側のプーリと、
出力側のプーリと、
前記請求項1〜4のいずれか1つに記載のベルトエレメントを連結部材により複数個繋ぎ合わせて構成され、前記入力側のプーリと前記出力側のプーリとの間で力の伝達を行うベルトと、
を備えることを特徴とするベルト式無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【公開番号】特開2009−68653(P2009−68653A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240028(P2007−240028)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】