説明

ベルトクランプ

【課題】ワイヤハーネスの外周部を傷付けることなく、ワイヤハーネスを安定した状態で固定できるベルトクランプを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネスを固定して保持するベルトクランプ1に、ワイヤハーネスの外周部に巻き付けられ、そのワイヤハーネスを結束固定する帯状のベルト部10と、ベルト部10の基端部に形成され、ベルト部10が先端から挿通できる挿通孔21が貫通しているバックル部20と、バックル部20の下面から突出し、ワークに形成された取付孔に差し込まれて係止されるアンカー部20とを設ける。また、ベルト部10は、合成樹脂により形成された帯状の第1ベルト11と、第1ベルト11の上面に着脱自在に嵌合されるゴムにより形成された帯状の第2ベルト12とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトクランプに関し、例えば、車両のボディ等にワイヤハーネスを配線するために使用するベルトクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られているワイヤハーネスを固定するベルトクランプの構造を図11〜図13に基づいて説明する。
図11は、従来技術のベルトクランプの斜視図である。また、図12は、従来技術のベルトクランプのベルト部をバックル部に挿入する際の状態を示した模式図である。また、図13は、従来技術のベルトクランプがワイヤハーネスを固定している状態を示した模式図である。
【0003】
図示するように、ベルトクランプ100は、バックル部110と、帯状になされたベルト部120と、アンカー部(係止脚)130とを備えている。なお、ベルトクランプ100は、合成樹脂により形成されている。
また、バックル部110には、ベルト部120をその先端側から挿通させることが可能な挿通孔112が形成されている。また、バックル部110の挿通孔112の下面壁には、ベルト部120の片面に沿って形成されている係合歯122(図13参照)に係合する係合爪113が形成されている。
また、バックル部110は、その上面がワイヤハーネスの受承面114となっている。
【0004】
また、ベルト部120は、バックル部110から一体に延びており、ワイヤハーネスWHの外周部に巻きつけるのに充分な長さと可撓性とを有している。
また、アンカー部130は、バックル部110の下面から一体に突出しており、車両のボディパネルなどに予め開けられている取付孔に差し込むことで、そこから抜けないように係止する形状となっている。
【0005】
そして、ワイヤハーネスWHを車両のボディに固定する場合には、先ず、ワイヤハーネスWHの固定部位をバックル部110の受承面114の上に載せ、ワイヤハーネスWHの外周部をベルト部120で巻き付け、バックル部110の挿通孔112にベルト部120の先端を挿通して締め付ける。また、このときに、ベルト部120に形成されている係合歯122に、バックル部110の内部に形成されている係合爪113を係合させる。これにより、図13に示すように、ワイヤハーネスWHが、ベルトクランプ100に締め付けられて固定された状態で保持される。
次に、車両のボディに形成された取付孔に、ワイヤハーネスWHを固定したベルトクランプ100のアンカー部130を差し込むことにより、車両のボディにワイヤハーネスWHが固定される。
なお、上述した図11〜図13に示す構造と同様の構造のベルトクランプが、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−2209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術のベルトクランプは、以下に示す技術的課題を有している。
具体的には、上述したベルトクランプ100は、ベルト部120に、クランプされた状態のワイヤハーネスWHの移動を防止するための構造(スベリ止め構造)が設けられていないため、ワーヤハーネスWHが軸線方向(図13に示すX方向)にずれたり、ワイヤハーネスWHが回転してねじれたりすることがあるという技術的課題を有している。
なお、ワイヤハーネスWHを締め付ける力には限度があるため、締め付ける力だけでワイヤハーネスWHのズレやねじれを防止することは困難である。
【0008】
また、上述したベルトクランプ100は、合成樹脂により形成されたベルト部120でワイヤハーネスWHの外周部を締め付けて固定しているため、ワーヤハーネスWHがずれたり回転したりすることにより、その外周部(電線皮膜)が傷付けられることがあるという技術的課題を有している。
なお、ワイヤハーネスWHの外周部(電線皮膜)を傷付けないようにするため、ワイヤハーネスWHの外周部(電線皮膜)をテープで巻いて保護することが行われているが、その手間が面倒であり、作業時間の増加要因となっていた。
【0009】
また、上述したベルトクランプ100は、2経路(2本)のワイヤハーネスWHを固定する場合、2経路のワイヤハーネスWHを安定した状態で固定することができないという技術的課題を有している。
具体的には、上述したベルトクランプ100により2経路のワイヤハーネスWHを固定する場合、一般的には、図14に示すように、バックル部110の受承面114の上に、ワイヤハーネスWHを2段積みして、ベルト部120により、2段積みしたワイヤハーネスWHを固定する。
そして、図示する状態では、下段側で固定されたワイヤハーネスWHとベルト部120との接触面が小さくなるため、下段側のワイヤハーネスWHが不安定な状態になっていた。
なお、上段側のワイヤハーネスWHについても、不安定な状態の下段側のワイヤハーネスWHの上に積まれているため左右に揺れて安定しなかった。
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ワイヤハーネスの外周部を傷付けることなく、ワイヤハーネスを安定した状態で固定できるベルトクランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明は、ワイヤハーネスを固定して保持するベルトクランプに適用される。
そして、前記ベルトクランプは、前記ワイヤハーネスの外周部に巻き付けられ、該ワイヤハーネスを結束固定する帯状のベルト部と、前記ベルト部の基端部に形成され、該ベルト部が先端から挿通できる挿通孔が貫通しているバックル部と、前記バックル部の下面から突出し、ワークに形成された取付孔に差し込まれて係止されるアンカー部とを備え、前記ベルト部は、合成樹脂により形成された帯状の第1ベルトと、該第1ベルトの上面に着脱自在に嵌合されるゴムにより形成された帯状の第2ベルトとを有することを特徴としている。
【0012】
このように、本発明のベルトクランプは、ワイヤハーネスを結束固定するベルト部が、合成樹脂により形成された帯状の第1ベルトと、該第1ベルトの上面に着脱自在に嵌合されるゴムにより形成された帯状の第2ベルトとを有している。
そして、上記構成により、本発明によれば、第1ベルトの上面に第2ベルトを嵌合させた状態にして、ワイヤハーネスの外周部に、第2ベルトの上面(第1ベルトと嵌合している面の反対面)を当接させて巻き付け、バックル部の挿通孔にベルト部の先端を挿通して締め付けることによりワイヤハーネスを固定して保持することができる。
すなわち、本発明によれば、ワイヤハーネスを固定して保持する際に、ゴムにより形成された第2ベルトをワイヤハーネスに接触させて締め付けることができるため、ワイヤハーネスのクランプ位置でのずれや回転の発生を防止することができる。
【0013】
また、上記のように、ゴムにより形成された第2ベルトをワイヤハーネスに接触させて締め付けているため、ワイヤハーネスの外周部(電線皮膜)の傷付きが防止される。
したがって、本発明のベルトクランプを利用することにより、ワイヤハーネスの外周部の傷付き防止のために行われているテープ巻き作業が不要となり、作業の手間が軽減される。
【0014】
さらに、本発明のベルトクランプによれば、ベルト部が第1ベルトおよび第2ベルトにより構成されているため、2経路のワイヤハーネスを2段積みして固定する場合に、一方のワイヤハーネスを第2ベルトで巻き付けて固定し、他方のワイヤハーネスを第1ベルトで巻き付けて固定することができる。
すなわち、本発明のベルトクランプを用いることにより、2経路のワイヤハーネスを安定した状態で固定することができる。
また、本発明によれば、上記のように、2経路のワイヤハーネスを安定した状態で固定することができるため、ワイヤハーネスのズレや回転が原因で生じるワイヤハーネスの外周部の傷付きが防止される。
【0015】
また、前記第1ベルトは、前記上面に、長手方向に延設された溝部が形成され、前記第2ベルトは、前記第1ベルトに着脱自在に嵌合される一方面に、前記溝部に嵌合する形状の突起部が形成されていることが望ましい。
この構成により、第1ベルトに第2ベルトを簡単に嵌合させることができる。また、第1ベルトに嵌合している第2ベルトを第1ベルトから簡単に取り外すことができる。
【0016】
また、前記第1ベルトは、前記上面に、長手方向に延びる凸状の第1係止部が形成され、前記第2ベルトは、前記一方面と反対側の他方面に、長手方向に延びる凸状の第2係止部が形成されていることが望ましい。
上記の構成により、コルゲートチューブで外装したワイヤハーネスをクランプする場合、コルゲートチューブの溝部に第2ベルトの第2係止部を係止させることができるため、コルゲートチューブで外装したワイヤハーネスを安定した状態で固定することができる。
また、コルゲートチューブで外装した2経路のワイヤハーネスをクランプする場合に、上段のコルゲートチューブの溝部に第1ベルトの第1係止部を係止させ、下段のコルゲートチューブの溝部に第2ベルトの第2係止部を係止させることにより、当該2経路のワイヤハーネスを安定した状態で保持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ワイヤハーネスの外周部を傷付けることなく、ワイヤハーネスを安定した状態で固定できるベルトクランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態のベルトクランプの上面図である。
【図2】本発明の実施形態のベルトクランプの斜視図である。
【図3】図1に示すベルトクランプのA−A断面図である。
【図4】本発明の実施形態のベルトクランプの第1ベルトと第2ベルトの嵌合部分を説明するために示した模式図である。
【図5】本発明の実施形態のベルトクランプにより、1経路のワイヤハーネスを固定した状態を示した模式図である。
【図6】本発明の実施形態のベルトクランプにより、2経路のワイヤハーネスを2段積みして固定した状態を示した模式図である。
【図7】本発明の実施形態のベルトクランプにより、コルゲートチューブが外装されたワイヤハーネスを固定した状態を示した模式図であり、1経路のワイヤハーネスを固定した状態を示している。
【図8】図7のB−B断面図である。
【図9】本発明の実施形態のベルトクランプにより、コルゲートチューブが外装されているワイヤハーネスを固定した状態を示した模式図であり、2経路のワイヤハーネスを固定した状態を示している。
【図10】図9のC−C断面図である。
【図11】従来技術のベルトクランプの斜視図である。
【図12】従来技術のベルトクランプのベルト部をバックル部に挿入する際の状態を示した模式図である。
【図13】従来技術のベルトクランプによりワイヤハーネスが固定保持されている状態を示した模式図である。
【図14】従来技術のベルトクランプにより2経路のワイヤハーネスが固定保持されている状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態のベルトクランプについて図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態のベルトクランプの上面図であり、合成樹脂により形成された第1ベルトの上面に、ゴムにより形成された第2ベルトが嵌合している状態を示している。
また、図2は、本発明の実施形態のベルトクランプの斜視図であり、合成樹脂により形成された第1ベルトと、ゴムにより形成された第2ベルトとが嵌合されていない状態を示している。
また、図3は、図1に示したベルトクランプのA―A断面図である。また、図4は、本実施形態のベルトクランプの合成樹脂により形成された第1ベルトと、ゴムにより形成された第2ベルトの嵌合部分を説明するために示した模式図である。
【0020】
図1および図2に示すように、本実施形態のベルトクランプ1は、ワイヤハーネスWHの外周部に巻き付けられ、当該ワイヤハーネスWHを結束固定する帯状のベルト部10と、ベルト部10の基端部に形成されたバックル部20と、バックル部20の下面20bから突出し、車両のボディ等のワークに形成された取付孔(図示せず)に差し込まれて係止されるアンカー部30とを備えている。
【0021】
また、ベルト部10は、バックル部20から一体に延設されている合成樹脂(例えば、PP(ポリプロピレン))により形成された帯状の第1ベルト11と、第1ベルト11の上面に着脱自在に嵌合されるゴム(例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム))により形成された帯状の第2ベルト12とを有している。
また、ベルト部10は、基端部(バックル部20側の端部)において、第1ベルト11の端部と、第2ベルト12の端部とが連結している。また、第1ベルト11の下面には、当該下面に沿って、上述した図13と同様の構造の係合歯(図示せず)の列が形成されている。
また、第1ベルト11の長手方向の長さ寸法と、第2ベルトの長手方向の長さ寸法とは、略同じ長さ寸法になされている。また、第1ベルト11および第2ベルト12は、いずれも、ワイヤハーネスWHの外周部に巻きつけるのに充分な長さと可撓性とを有している。
なお、ベルト部10は、例えば、合成樹脂およびゴムを用いた2色成形により成形されている。
【0022】
また、図3および図4に示すように、合成樹脂により形成された第1ベルト11は、その上面に、長手方向に延びる凹状の溝部11bが形成されている。
また、第1ベルト11は、上面の左右の両端部に、それぞれ、長手方向に延びる凸状の第1係止部11aが形成されている。
また、ゴムにより形成された第2ベルト12は、第1ベルト11と相対向する下面に、第1ベルト11の溝部11bに着脱自在に嵌合可能になされた凸状の突起部12bが形成されている。
また、第2ベルト12は、前記下面と反対側の上面に、長手方向に延びる凸状の第2係止部12aが形成されている。
【0023】
そして、第2ベルト12は、第1ベルト11の上面に形成された溝部11bに、第2ベルト12の下面に形成された12bを挿入して嵌合することにより、第1ベルト11の上面に固定されるようになされている。
また、第1ベルト11の上面に固定された第2ベルト12を上方側に引っ張ることにより、第1ベルト11の上面から第2ベルト12を取り外すことができるようになされている。
なお、第1ベルトの第1係止部11aおよび第2ベルト12の第2係止部12aの機能については、後段で説明する。
【0024】
また、図1および図2に示すように、バックル部20には、ベルト部10が先端から挿通できる形状の挿通孔21が貫通していると共に、その挿通孔21の下面壁には、ベルト部10に形成された前記係止歯(図示せず)と係合するロック部(係合爪)22が設けられている。また、バックル部20は、その上面に、ワイヤハーネスWHを支持する支持面20aが形成されている。
【0025】
また、アンカー部30は、バックル部20の下面から一体に突出しており、車両のボディパネルなどのワークに開けられている取付孔に差し込むことで、そこから抜けないように係止する形状となっている。
なお、本実施形態のベルトクランプ1は、ベルト部10の構造に特徴があり、バックル部20およびアンカー部30の構造は従来技術のものと同様であるため、以下では、バックル部20およびアンカー部30の説明は簡略化する。
【0026】
次に、本実施形態のベルトクランプ1によるワイヤハーネスWHを固定する手順について説明する。
先ず、本実施形態のベルトクランプ1により、1経路(1本)のワイヤハーネスWHを固定する手順について、上述した図1〜図4、および図5を用いて説明する。
図5は、本発明の実施形態のベルトクランプにより、1経路(1本)のワイヤハーネスを固定した状態を示した模式図である。
【0027】
具体的には、ベルト部10の第1ベルト11の上面に第2ベルト12を嵌合させた状態にする(ベルトクランプ1を図1に示す状態にする)。なお、ベルトクランプ1は、第1ベルト11の上面に第2ベルト12を嵌合させた状態で利用されるケースが多いため、通常は、図1に示す状態になされている。
【0028】
次に、ベルトクランプ1のバックル部20の支持面20aに、ワイヤハーネスWHを載置し、ワイヤハーネスWHの外周部に、第2ベルト12の上面(第1ベルトと嵌合している面の反対面)を当接させて巻き付け、バックル部20の挿通孔21にベルト部10(第1ベルト11および第2ベルト12)の先端を挿通して締め付ける。また、ベルト部10(第1ベルト11の下面)に形成されている前記係合歯に、バックル部20の内部に形成されているロック部22を係合させる。
これにより、図5に示すように、ワイヤハーネスWHが、ベルトクランプ1に締め付けられて固定された状態で保持される。
つぎに、車両のボディ等のワークに形成された取付孔(図示せず)に、ワイヤハーネスWHを固定保持したベルトクランプ1のアンカー部30を差し込み係止することより、前記ワークにワイヤハーネスWHが固定される。
【0029】
このように、本実施形態のベルトクランプ1を用いて1経路のワイヤハーネスWHを固定・保持する場合、ワイヤハーネスWHの外周部が、ゴムにより形成された第2ベルト12により締め付けられる(図5参照)。
すなわち、本実施形態のベルトクランプ1は、ゴムにより形成された第2ベルト12をワイヤハーネスWHの外周部に巻き付けて締め付けるため、ワイヤハーネスWHのクランプ位置でのずれや回転が防止される。
【0030】
また、上記のように、ゴムにより形成された第2ベルト12をワイヤハーネスWHに接触させて締め付けることにより、ワイヤハーネスWHの外周部(電線皮膜)の傷付きが防止される。
したがって、本実施形態のベルトクランプ1を利用することにより、傷付き防止のために行われている「ワイヤハーネスの外周部をテープ巻きする作業」が不要となり、ワイヤハーネスWHの配線作業を軽減することができる。
【0031】
次に、本実施形態のベルトクランプ1により、2経路のワイヤハーネスWHを上下に積み重ねて固定する手順について、上述した図1〜図4、および図6を用いて説明する。
図6は、本発明の実施形態のベルトクランプにより、2経路のワイヤハーネスを2段積みして固定した状態を示した模式図である。
【0032】
具体的には、先ず、図1に示す状態のベルトクランプ1に対して、第1ベルト11の上面に固定された第2ベルト12を上方側に引っ張り、第2ベルト12を第1ベルトの上面から取り外して図2に示す状態にする。
次に、ベルトクランプ1のバックル部20の支持面20aに、下段側に固定するワイヤハーネスWH1を載置し、ワイヤハーネスWH1の外周部を第2ベルト12で巻き付ける。
次に、下段のワイヤハーネスWH1の外周部に巻き付けられた第2ベルト12の上に、上段に固定するワイヤハーネスWH2を載置し、そのワイヤハーネスWH2の外周部を第1ベルト11で巻き付ける。
【0033】
そして、第1ベルト11の先端部と、第2ベルト12の先端部とを嵌合させて、バックル部20の挿通孔21にベルト部10(第1ベルト11および第2ベルト12)の先端を挿通して締め付ける。また、ベルト部10(第1ベルト11の下面)に形成されている前記係合歯に、バックル部110の内部に形成されているロック部22を係合させる。
これにより、図6に示すように、2経路のワイヤハーネスWH1、WH2が、ベルトクランプ1により締め付けられて固定された状態で保持される。
つぎに、車両のボディ等のワークに形成された取付孔(図示せず)に、ワイヤハーネスWH1、WH2を結束保持したベルトクランプ1のアンカー部30を差し込み係止することより、前記ワークに2経路のワイヤハーネスWH1、WH2が固定される。
【0034】
そして、本実施形態によれば、下段側のワイヤハーネスWH1の外周部に、ゴムにより形成された第2ベルト12が巻き付けられているため、下段側のワイヤハーネスWH1が安定した状態で固定保持される。
また、上段側のワイヤハーネスWH2は、その下端部がゴムにより形成された第2ベルト12に載置され、その外周部に、第1ベルト11が巻き付けられているため、安定した状態出固定することができる。
また、本実施形態によれば、上述した通り、2経路のワイヤハーネスWH1、WH2を安定した状態で固定することができるため、各ワイヤハーネスWH1、WH2のズレや回転が原因で生じるワイヤハーネスWH1、WH2の外周部が傷付きを防止することができる。
【0035】
また、本実施形態のベルトクランプ1は、ベルト部10に設けられた第1係止部11aおよび第2係止部12aにより、コルゲートチューブ80が外装されているワイヤハーネスWHを固定保持する場合においても、そのワイヤハーネスWHのクランプ位置でのずれや回転の発生を防止することができる。
以下、本実施形態のベルトクランプ1の第1係止部11aおよび第2係止部12aの機能について図7〜図10を用いて説明する。
【0036】
図7は、本発明の実施形態のベルトクランプにより、コルゲートチューブが外装されているワイヤハーネスを固定した状態を示した模式図であり、1経路(1本)のワイヤハーネスを固定した状態を示している。また、図8は、図7のB−B断面図である。
また、図9は、本発明の実施形態のベルトクランプにより、コルゲートチューブが外装されているワイヤハーネスを固定した状態を示した模式図であり、2経路(2本)のワイヤハーネスを固定した状態を示している。また、図10は、図9のC−C断面図である。
【0037】
具体的には、図7および図8に示すように、ベルトクランプ1により、コルゲートチューブ80を外装した1経路(1本)のワイヤハーネスWHを固定する場合、コルゲートチューブ80がベルト部10の第2ベルト12により巻き付けられた状態で固定される。
そして、図8に示すように、第2ベルト12の上面に形成された第2係止部12aを、コルゲートチューブ80の外周部に形成された溝部に嵌合させることにより、コルゲートチューブ80を外装したワイヤハーネスWH(1経路のワイヤハーネスWH)のクランプ位置でのずれや回転の発生を防止することができる。
【0038】
また、図9および図10に示すように、ベルトクランプ1により、コルゲートチューブ80a、80bを外装した2経路のワイヤハーネスWH1、WH2を固定する場合、第2ベルト12によりワイヤハーネスWH1を外装したコルゲートチューブ80aが固定される。また、第1ベルト11によりワイヤハーネスWH2を外装したコルゲートチューブ80bが固定される。
【0039】
そして、図10に示すように、上段側のコルゲートチューブ80bの外周部に形成された溝部(上方側の溝部)に、第1ベルト11の上面の第1係止部11aを嵌合させると共に、当該コルゲートチューブ80bの外周部に形成された溝部(下方側の溝部)に、第2ベルト12の下面の突起部12bを嵌合させることにより、コルゲートチューブ80bのクランプ位置からの移動が制限される。
また、下段側のコルゲートチューブ80aの外周部に形成された溝部に、第2ベルト12の上面の第2係止部12aを嵌合させることにより、コルゲートチューブ80aのクランプ位置からの移動が制限される。
すなわち、本実施形態のベルトクランプ1は、コルゲートチューブ80aを外装した2経路のワイヤハーネスWH1、WH2を固定する場合においても、ワイヤハーネスWH1、WH2のクランプ位置でのずれや回転の発生を防止することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、ベルト部10は、基端部(バックル部20側の端部)において、第1ベルト11の端部と、第2ベルト12の端部とが連結しているが、特にこれに限定されるものではない。第1ベルト11の上面から、第2ベルト12が完全に取り外せるようになされていてもかまわない。
また、上述した実施形態では、コルゲートチューブ80を外装したワイヤハーネスWHを固定保持するために、ベルト部10に第1係止部11aおよび第2係止部12aを設けているが、特にこれに限定されるものではない。上述したベルトクランプ1を、第1係止部11aおよび第2係止部12aを設けない形状に変形してもかまわない。この場合においても、コルゲートチューブ80を外装していないワイヤハーネスWHに関しては、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0041】
WH、WH1、WH2 ワイヤハーネス
1 ベルトクランプ
10 ベルト部
11 第1ベルト(ベルト部)
11a 第1係止部(第1ベルト(ベルト部))
11b 溝部(第1ベルト(ベルト部))
12 第2ベルト(ベルト部)
12a 第2係止部(第2ベルト(ベルト部))
12b 突起部(第2ベルト(ベルト部))
20 バックル部
20a 支持面(バックル部)
20b 下面(バックル部)
21 挿通孔(バックル部)
22 ロック部(バックル部)
30 アンカー部
80、80a、80b コルゲートチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを固定して保持するベルトクランプにおいて、
前記ワイヤハーネスの外周部に巻き付けられ、該ワイヤハーネスを結束固定する帯状のベルト部と、
前記ベルト部の基端部に形成され、該ベルト部が先端から挿通できる挿通孔が貫通しているバックル部と、
前記バックル部の下面から突出し、ワークに形成された取付孔に差し込まれて係止されるアンカー部とを備え、
前記ベルト部は、合成樹脂により形成された帯状の第1ベルトと、該第1ベルトの上面に着脱自在に嵌合されるゴムにより形成された帯状の第2ベルトとを有することを特徴とするベルトクランプ。
【請求項2】
前記第1ベルトは、前記上面に、長手方向に延設された溝部が形成され、
前記第2ベルトは、前記第1ベルトに着脱自在に嵌合される一方面に、前記溝部に嵌合する形状の突起部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベルトクランプ。
【請求項3】
前記第1ベルトは、前記上面に、長手方向に延びる凸状の第1係止部が形成され、
前記第2ベルトは、前記一方面と反対側の他方面に、長手方向に延びる凸状の第2係止部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のベルトクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−265922(P2010−265922A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115580(P2009−115580)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】