説明

ベルトモール

【課題】自動車用のドアの窓開口縁に沿って装着されるベルトモールの第1部材と第2部材との接合部の剥がれを抑制できるようにする。
【解決手段】窓開口縁の下縁部に沿って装着される第1部材18を押出成形により成形し、窓開口縁のコーナー部に沿って装着される第2部材19を射出成形により成形して、第1部材と第2部材を接合する。また、第2部材19の車外側側壁33の長手方向の一部に他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きくなるように肉薄に形成された伸長可能部38を設ける。気温が低下したときには、車外側側壁33の他の部分の収縮分を伸長可能部38の伸び分で吸収して、車外側側壁33の全体としての長手方向の収縮を抑制する。これにより、第1部材18と第2部材19との接合部37に掛かる負荷を低減して、接合部37の剥がれを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のドアの窓開口縁に沿って装着されるベルトモールに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
自動車用のドアにおいては、ドア本体の上側に窓枠を設け、この窓枠によって形成された窓開口を開閉する窓板を昇降移動可能に設けると共に、ドア本体の上縁(窓開口縁の下縁部)に沿ってベルトモールを装着することで、ドア本体と窓板との間を覆うようにしたものがある。
【0003】
このように窓開口縁に沿って装着されるベルトモールとしては、例えば、特許文献1(特開平7−257181号公報)に記載されているように、ドアサッシュ部(窓開口縁の側縁部)に沿って装着されるグラスランウェザーストリップとドアウエスト部(窓開口縁の下縁部)に沿って装着されるドアウエストウェザーストリップとを型成形コーナー部を介して接合すると共に、この型成形コーナー部の車内側側壁に、ドアウエストウェザーストリップ側に跨がる金属製の補強芯材を埋設するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−257181号公報(第3頁、第2図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のように、ドアウエストウェザーストリップと型成形コーナー部とを接合し、型成形コーナー部の車内側側壁に金属製の補強芯材を埋設したベルトモールでは、型成形コーナー部が、熱可塑性エラストマーやゴム等のように金属製の補強芯材よりも線膨張係数が大きい材料で形成されている場合、次のような不具合が発生する可能性がある。
【0006】
型成形コーナー部の車内側側壁には、金属製の補強芯材が埋設されて一体化されているため、気温が低下しても、車内側側壁が長手方向にほとんど収縮しないが、型成形コーナー部の車外側側壁には、補強芯材が埋設されていないため、気温が低下すると、車外側側壁が長手方向に収縮する。この型成形コーナー部の車外側側壁の収縮により、型成形コーナー部とドアウエストウェザーストリップとの接合部に掛かる負荷が大きくなって接合部が剥がれてしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、窓開口縁の下縁部に沿って装着される第1部材と、この第1部材に接合されて窓開口縁のコーナー部に沿って装着される第2部材との接合部の剥がれを抑制することができるベルトモールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、自動車用のドアに設けられた窓開口縁の下縁部に沿って装着される第1部材と、該第1部材に接合されて少なくとも窓開口縁のコーナー部に沿って装着される第2部材とを備え、第1部材と第2部材にそれぞれ互いに対向する車内側側壁及び車外側側壁と両側壁を連結する頂壁とが一体的に設けられたベルトモールであって、第1部材は、長手方向に断面形状が一定で、車内側側壁と車外側側壁と頂壁に金属製の芯材が埋設され、第2部材は、長手方向に断面形状が一定ではなく、車内側側壁には金属製の芯材が埋設されているが、車外側側壁には金属製の芯材が埋設されておらず、該車外側側壁の長手方向の一部に他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きい(つまり他の部分よりも引張方向の弾性係数が小さい)形状又は材料で形成された伸長可能部が設けられている構成としたものである。
【0009】
この構成では、第2部材の車外側側壁には、芯材が埋設されていないため、気温が低下すると、車外側側壁が長手方向に収縮しようとするが、この際、車外側側壁の他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きい伸長可能部が伸びることで、車外側側壁の他の部分の収縮分を伸長可能部の伸び分で吸収することができ、車外側側壁の全体としての長手方向の収縮を抑制することができる。これにより、第1部材と第2部材との接合部に掛かる負荷(車外側側壁の収縮による負荷)を低減することができ、接合部の剥がれを抑制することができる。
【0010】
この場合、請求項2のように、第2部材の車外側側壁に設けられた伸長可能部は、該車外側側壁の他の部分よりも肉薄に形成するようにしても良い。このようすれば、車外側側壁の他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きい形状の伸長可能部を容易に形成することができる。
【0011】
更に、請求項3のように、第2部材の車外側側壁に設けられた伸長可能部は、該車外側側壁の他の部分の厚さ寸法の4分の1以上4分の3以下の厚さ寸法で形成すると良い。伸長可能部の厚さ寸法が他の部分の厚さ寸法の4分の1よりも小さいと、車外側側壁の剛性を十分に確保できなくなったり、車外側側壁の表面に成形時の収縮によるヒケが発生したりする可能性がある。一方、伸長可能部の厚さ寸法が他の部分の厚さ寸法の4分の3よりも大きいと、引張荷重に対する弾性変形量を十分に大きくすることができず、接合部の剥がれ抑制効果が小さくなる可能性がある。従って、伸長可能部を、他の部分の厚さ寸法の4分の1以上4分の3以下の厚さ寸法で形成すれば、車外側側壁の剛性を確保すると共にヒケの発生を防止しながら、接合部の剥がれ抑制効果を高めることができる。
【0012】
また、請求項4のように、第1部材は、押出成形により成形し、第2部材は、少なくとも車外側側壁と頂壁を射出成形により成形すると良い。このようにすれば、長手方向に断面形状が一定の第1部材を押出成形により効率良く成形することができると共に、窓開口縁のコーナー部に沿って装着可能な形状(長手方向に断面形状が一定ではない形状)の第2部材を射出成形により容易に成形することができる。
【0013】
更に、請求項5のように、第1部材の車内側側壁に埋設された芯材と第2部材の車内側側壁に埋設された芯材とが連続しているようにしても良い。このようにすれば、第1部材と第2部材との接合部を強固に補強することができる。
【0014】
また、請求項6のように、第2部材の車外側側壁に設けられた伸長可能部は、該車外側側壁の長手方向において8mm以上30mm以下の長さ寸法で形成すると良い。伸長可能部の長さ寸法が8mmよりも小さいと、車外側側壁の他の部分の収縮分を伸長可能部の伸び分で十分に吸収することができず、接合部の剥がれ抑制効果が小さくなる可能性がある。一方、伸長可能部の長さ寸法が30mmよりも大きいと、車外側側壁の剛性を十分に確保できなくなる可能性がある。従って、伸長可能部を、車外側側壁の長手方向において8mm以上30mm以下の長さ寸法で形成すれば、車外側側壁の剛性を確保しながら、接合部の剥がれ抑制効果を高めることができる。
【0015】
更に、請求項7のように、第2部材の車外側側壁に設けられた伸長可能部は、第1部材と第2部材との接合部から伸長可能部の中心部までの距離が20mm以上100mm以下となる位置に配置すると良い。第1部材と第2部材との接合部から伸長可能部の中心部までの距離が20mmよりも小さいと、成形後のベルトモールを成形型から外すときに、伸長可能部が成形型に引っ掛かって接合部に負荷が掛かり、接合部が剥がれる可能性がある。一方、第1部材と第2部材との接合部から伸長可能部の中心部までの距離が100mmよりも大きいと、接合部に掛かる負荷を十分に低減することができず、接合部の剥がれ抑制効果が小さくなる可能性がある。従って、伸長可能部を、第1部材と第2部材との接合部から伸長可能部の中心部までの距離が20mm以上100mm以下となる位置に配置すれば、接合部の剥がれ抑制効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施例における自動車用ドアの概略構成を示す図である。
【図2】図2はベルトモールの正面図である。
【図3】図3はベルトモールの裏面図である。
【図4】図4は図2のA−A断面図である。
【図5】図5は図2のB−B断面図である。
【図6】図6は図2のC−C断面図である。
【図7】図7は図2のD−D断面図である。
【図8】図8は本実施例の効果を確認するための試験を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
図1に示すように、自動車のリアドア11には、窓枠12が一体的に設けられ、この窓枠12によって形成された窓開口を開閉する窓板13(窓ガラス)が昇降移動可能に設けられている。このリアドア11の窓開口縁のうちの下縁部からコーナー部(図2に示すアウタードアパネル14の上縁フランジ部15からコーナーフランジ部16)に沿ってベルトモール17が装着され、このベルトモール17によってアウタードアパネル14と窓板13との間を覆うようになっている。
【0018】
次に、図2乃至図7に基づいてベルトモール17の構成について説明する。
図2及び図3に示すように、ベルトモール17は、アウタードアパネル14の上縁フランジ部15(窓開口縁の下縁部)に沿って装着される第1部材18と、アウタードアパネル14の上縁フランジ部15の後端部からコーナーフランジ部16(窓開口縁のコーナー部)に沿って装着される第2部材19とが接合されて一体化されている。
【0019】
第1部材18の前端部には、エンドキャップ20(図3参照)が装着され、このエンドキャップ20に、第1部材18をアウタードアパネル14に固定するためのビス、タッピングスクリュウ等のねじ部材を締め込み可能な筒形状のボス部21が一体的に設けられている。一方、第2部材19の後端部には、第2部材19をアウタードアパネル14に固定するための装着用クリップ22がインサート成形により一体的に設けられている。
【0020】
図4に示すように、ベルトモール17の第1部材18は、ポリマー材料の押出成形により、互いに対向する車内側側壁23及び車外側側壁24と、両側壁を連結する頂壁25とが一体的に設けられている。この第1部材18は、長手方向(車両の前後方向)に断面形状が一定で、車内側側壁23と車外側側壁24と頂壁25には、金属製の芯材26が共押出成形により埋設されている。
【0021】
第1部材18の車内側側壁23の外側面には、車内側(窓板側)に向けて突出する車内側シールリップ27が一体的に形成され、車内側側壁23の上端(又は頂壁25)には、車内側(窓板側)に向けて突出するカバーリップ28が一体的に形成されている。尚、車内側シールリップ27の表面(少なくとも窓板13と接触する部分)に、ナイロンパイル等の植毛により低摩擦材層を形成するようにしても良い。
【0022】
また、第1部材18の車内側側壁23の内側面には、車外側側壁24に向けて突出する突出部29が一体的に形成され、車内側側壁23の下端には、アウタードアパネル14の上縁フランジ部15(図2参照)に係止可能な係止部30が一体的に形成されている。
【0023】
更に、第1部材18の車外側側壁24の内側面には、車内側側壁23に向けて突出する複数の保持リップ31が一体的に形成され、車外側側壁24の下端には、車内側側壁23に向けて突出する車外側シールリップ32が一体的に形成されている。
【0024】
一方、図5及び図6に示すように、ベルトモール17の第2部材19は、押出成形した第1部材18のうちの第2部材19を成形する部分の車外側側壁24と頂壁25と車内側側壁23の上側部を切除した後、ポリマー材料の射出成形により車外側側壁33と頂壁34と車内側側壁上側部35を成形することで、車外側側壁33と頂壁34と車内側側壁上側部35と車内側側壁23(押出成形された部分)とが一体的に形成されて第1部材18に接合されている。この第2部材19の車内側側壁23(押出成形された部分)には金属製の芯材26が埋設されているが、車外側側壁33と頂壁34と車内側側壁上側部35には金属製の芯材が埋設されていない。
【0025】
第2部材19の車内側側壁上側部35の上端(又は頂壁34)には、車内側(窓板側)に向けて突出するカバーリップ36が一体的に形成されている。また、第2部材19の車内側側壁23には、第1部材18の車内側側壁23と同じように、車内側シールリップ27と突出部29と係止部30が一体的に形成されている。
【0026】
また、図7に示すように、第2部材19の車内側側壁23に埋設された芯材26は、第1部材18の車内側側壁23に埋設された芯材26と連続しているため、第1部材18と第2部材19との接合部37(図2参照)を強固に補強することができるようになっている。更に、第2部材19の車外側側壁33には、第1部材18の車外側側壁24の内側面に接合される接合片部39が一体的に形成されているため、第1部材18と第2部材19との接合面積を大きくして、第1部材18と第2部材19との接合強度を高めることができるようになっている。
【0027】
図2及び図3に示すように、第2部材19は、長手方向(車両の前後方向)に断面形状が一定ではなく、アウタードアパネル14のコーナーフランジ部16(窓開口縁のコーナー部)に沿って装着できるように、車外側側壁33の後側部分が上方に湾曲すると共に、車内側側壁上側部35が後側に向かうほど上方に拡大する(上下方向の寸法が大きくなる)ように形成されている。
【0028】
ベルトモール17は、アウタードアパネル14の上縁フランジ部15からコーナーフランジ部16に第1部材18及び第2部材19を被せて装着したときに、車内側シールリップ27の先端側が窓板13の表面に接触することで、アウタードアパネル14と窓板13との間を車内側シールリップ27でシールして車外から異物(例えば、塵、埃、水滴等)が車内に入り込むのを防止すると共に、窓板13が昇降移動(開閉移動)したときに窓板13の表面に付着した異物を車内側シールリップ27で拭き取るようになっている。
【0029】
ベルトモール17(第1部材18と第2部材19)を成形するポリマー材料は、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられる。尚、ベルトモール17を成形するポリマー材料は、オレフィン系熱可塑性エラストマーに限定されず、弾性変形可能なポリマー材料であれば良く、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーや軟質塩化ビニル等の熱可塑性合成樹脂、或は、ゴム等を用いるようにしても良い。
【0030】
第1部材18の車内側シールリップ27、カバーリップ28、突出部29、保持リップ31、車外側シールリップ32は、第1部材18の本体部(車内側側壁23、車外側側壁24、頂壁25等)よりも軟らかくて弾性変形可能なポリマー材料で成形されている。また、第2部材19の車内側シールリップ27、突出部29は、第2部材19の本体部(車外側側壁33、頂壁34、車内側側壁上側部35、車内側側壁23等)よりも軟らかくて弾性変形可能なポリマー材料で成形されている。
【0031】
また、本実施例では、図6及び図7に示すように、第2部材19の車外側側壁33の長手方向の一部に他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きくなるように肉薄の形状に形成された伸長可能部38が設けられている。図7に示すように、伸長可能部38は、車外側側壁33の長手方向で伸長可能部38の中心部に向かって徐々に肉薄になるように形成されている。
【0032】
第2部材19の車内側側壁23には、金属製の芯材26が埋設されて一体化されているため、気温が低下しても、車内側側壁23が長手方向にほとんど収縮しない。一方、第2部材19の車外側側壁33には、芯材が埋設されていないため、気温が低下すると、車外側側壁33が長手方向に収縮しようとするが、この際、車外側側壁33の他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きい伸長可能部38が伸びることで、車外側側壁33の他の部分の収縮分を伸長可能部38の伸び分で吸収することができ、車外側側壁33の全体としての長手方向の収縮を抑制することができる。これにより、第1部材18と第2部材19との接合部37に掛かる負荷(車外側側壁33の収縮による負荷)を低減することができ、接合部37の剥がれを抑制することができる。
【0033】
また、気温が上昇すると、車外側側壁33が長手方向に伸びようとするが、この際、伸長可能部38が収縮することで、車外側側壁の他の部分の伸び分を伸長可能部38の収縮分で吸収することができ、車外側側壁33の全体としての長手方向の伸びを抑制することができる。
【0034】
本実施例では、図7に示すように、伸長可能部38は、最も薄い部分(例えば中心部付近)で車外側側壁33の他の部分の厚さ寸法aの4分の1以上4分の3以下の厚さ寸法bとなるように形成されている。例えば、車外側側壁33の他の部分の厚さ寸法aが2.0mmの場合、伸長可能部38の最も薄い部分の厚さ寸法bが0.5mm以上1.5mm以下となるように形成されている。伸長可能部38の厚さ寸法bが他の部分の厚さ寸法aの4分の1よりも小さい(例えば0.5mmよりも小さい)と、車外側側壁33の剛性を十分に確保できなくなったり、車外側側壁33の表面に成形時の収縮によるヒケが発生したりする可能性がある。一方、伸長可能部38の厚さ寸法bが他の部分の厚さ寸法aの4分の3よりも大きい(例えば1.5mmよりも大きい)と、引張荷重に対する弾性変形量を十分に大きくすることができず、接合部37の剥がれ抑制効果が小さくなる可能性がある。従って、伸長可能部38を、他の部分の厚さ寸法aの4分の1以上4分の3以下の厚さ寸法aで形成すれば、車外側側壁33の剛性を確保すると共にヒケの発生を防止しながら、接合部37の剥がれ抑制効果を高めることができる。
【0035】
また、伸長可能部38は、車外側側壁33の長手方向において8mm以上30mm以下の長さ寸法cとなるように形成されている。伸長可能部38の長さ寸法cが8mmよりも小さいと、車外側側壁33の他の部分の収縮分を伸長可能部38の伸び分で十分に吸収することができず、接合部37の剥がれ抑制効果が小さくなる可能性がある。一方、伸長可能部38の長さ寸法cが30mmよりも大きいと、車外側側壁33の剛性を十分に確保できなくなる可能性がある。従って、伸長可能部38を、車外側側壁33の長手方向において8mm以上30mm以下の長さ寸法cで形成すれば、車外側側壁33の剛性を確保しながら、接合部37の剥がれ抑制効果を高めることができる。
【0036】
更に、伸長可能部38は、第1部材18と第2部材19との接合部37から伸長可能部38の中心部までの距離dが20mm以上100mm以下となる位置に配置されている。接合部37から伸長可能部38の中心部までの距離dが20mmよりも小さいと、成形後のベルトモール17(射出成形後の第2部材19)を射出成形型から外すときに、伸長可能部38が射出成形型に引っ掛かって接合部37に負荷が掛かり、接合部37が剥がれる可能性がある。一方、接合部37から伸長可能部38の中心部までの距離dが100mmよりも大きいと、接合部37に掛かる負荷を十分に低減することができず、接合部37の剥がれ抑制効果が小さくなる可能性がある。従って、伸長可能部38を、接合部37から伸長可能部38の中心部までの距離dが20mm以上100mm以下となる位置に配置すれば、接合部37の剥がれ抑制効果を高めることができる。
【0037】
以上説明した本実施例では、第2部材19の車外側側壁33の長手方向の一部に他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きい形状に形成された伸長可能部38を設けるようにしたので、気温が低下したときに、車外側側壁33の他の部分の収縮分を伸長可能部38の伸び分で吸収して、車外側側壁33の全体としての長手方向の収縮を抑制することができ、その結果、第1部材18と第2部材19との接合部37に掛かる負荷(車外側側壁33の収縮による負荷)を低減することができ、接合部37の剥がれを抑制することができる。
【0038】
また、本実施例では、伸長可能部38を、車外側側壁33の他の部分よりも肉薄に形成するようにしたので、車外側側壁33の他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きい形状の伸長可能部38を容易に形成することができる。
【0039】
また、本実施例では、第1部材18を押出成形により成形するようにしたので、長手方向に断面形状が一定の第1部材18を押出成形により効率良く成形することができると共に、第2部材19の車外側側壁33と頂壁34と車内側側壁上側部35を射出成形により成形するようにしたので、窓開口縁のコーナー部に沿って装着可能な形状(長手方向に断面形状が一定ではない形状)の第2部材19を射出成形により容易に成形することができる。
【0040】
本発明者らは、本実施例のベルトモールの効果を確認するために、本実施例のベルトモールのサンプル1と、比較例のベルトモールのサンプル2とを用いて試験を行ったので、その試験方法及び試験結果を図8及び下記の表1を用いて説明する。
【0041】
[試験方法]
(1) まず、各サンプル1,2を準備する。
サンプル1は、第2部材19の車外側側壁部33に伸長可能部38が形成されたベルトモール(本実施例のベルトモール)である。一方、サンプル2は、第2部材19の車外側側壁部33に伸長可能部38が形成されていないベルトモール(比較例のベルトモール)である。
【0042】
(2) 各サンプル1,2を自動車用ドアに取り付けて2箇所に目印を付ける。
サンプル1は、第2部材19の車外側側壁部33の外表面のうちの伸長可能部38の前後2箇所に目印F,Rを付ける。更に、自動車用ドアのうちのサンプル1の各目印F,Rに対応する位置に目印F0 ,R0 を付けて基準位置とする。
【0043】
一方、サンプル2は、第2部材19の車外側側壁部33の外表面のうちのサンプル1と同じ位置(伸長可能部に相当する部分の前後2箇所)に目印F,Rを付ける。更に、自動車用ドアのうちのサンプル2の各目印F,Rに対応する位置に目印F0 ,R0 を付けて基準位置とする。
【0044】
(3) 各サンプル1,2を自動車用ドアに取り付けた状態で、80℃で3時間→24℃で1時間→−40℃で3時間→24℃で1時間→38℃で16時間を1サイクルとして、5サイクル繰り返す環境下に置く。
【0045】
そして、1サイクル目の−40℃で3時間が終了した時点で、各サンプル1,2毎に、それぞれ前後2箇所の目印F,Rの基準位置F0 ,R0 に対する移動距離を測定する。
その後、5サイクルが終了した後、各サンプル1,2毎に、それぞれ接合部37に剥がれがあるか否かを観察する。
[試験結果]
【0046】
【表1】

【0047】
図8及び表1に示す試験結果によれば、1サイクル目の−40℃で3時間が終了した時点で、各サンプル1,2は、共に各目印F,Rが基準位置F0 ,R0 に対して後側に移動していた。
【0048】
この場合、比較例のベルトモールのサンプル2は、−40℃の環境下で第2部材19の車外側側壁部33が収縮して、前側の目印Fと後側の目印Rが両方とも後側に1.0mm移動した。
【0049】
これに対して、本実施例のベルトモールのサンプル1は、後側の目印Rが後側に1.0mm移動したが、前側の目印Fは後側に0.5mm移動しただけであり、伸長可能部38が0.5mm伸びていることが確認された。
【0050】
また、5サイクルが終了した後、比較例のベルトモールのサンプル2は、接合部37の剥がれが発生していたが、本実施例のベルトモールのサンプル1は、接合部37の剥がれが発生しておらず、伸長可能部38による接合部37の剥がれ抑制効果を確認することができた。
【0051】
尚、上記実施例では、伸長可能部38を肉薄に形成することで車外側側壁33の他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きい形状の伸長可能部38を形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、伸長可能部を中空状に形成することで車外側側壁の他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きい形状の伸長可能部を形成するようにしても良い。或は、車外側側壁の他の部分よりも引張方向の弾性係数が小さい材料で伸長可能部を形成するようにしても良く、発泡させた弾性変形可能なポリマー材料で伸長可能部を形成することで車外側側壁の他の部分よりも引張方向の弾性係数が小さい材料の伸長可能部を形成しても良い。
【0052】
また、上記実施例では、第2部材19の一部(車外側側壁33と頂壁34と車内側側壁上側部35)を射出成形するようにしたが、これに限定されず、例えば、第2部材の全体を射出成形するようにしても良く、この場合、第1部材の車内側側壁に埋設された芯材とは別体の芯材を第2部材の車内側側壁に埋設するようにしても良い。
【0053】
また、上記実施例では、自動車のリアドアの窓開口縁に装着するベルトモールに本発明を適用したが、これに限定されず、自動車の他のドア(例えばフロントドア等)の窓開口縁に装着するベルトモールに本発明を適用しても良い。
【0054】
その他、本発明は、ベルトモールの構成や各部の形状を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。
【符号の説明】
【0055】
11…リアドア、12…窓枠、13…窓板、14…アウタードアパネル、15…上縁フランジ部(窓開口縁の下縁部)、16…コーナーフランジ部(窓開口縁のコーナー部)、17…ベルトモール、18…第1部材、19…第2部材、23…車内側側壁、24…車外側側壁、25…頂壁、26…芯材、33…車外側側壁、34…頂壁、35…車内側側壁上側部、37…接合部、38…伸長可能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のドアに設けられた窓開口縁の下縁部に沿って装着される第1部材と、該第1部材に接合されて少なくとも前記窓開口縁のコーナー部に沿って装着される第2部材とを備え、前記第1部材と前記第2部材にそれぞれ互いに対向する車内側側壁及び車外側側壁と両側壁を連結する頂壁とが一体的に設けられたベルトモールであって、
前記第1部材は、長手方向に断面形状が一定で、前記車内側側壁と前記車外側側壁と前記頂壁に金属製の芯材が埋設され、
前記第2部材は、長手方向に断面形状が一定ではなく、前記車内側側壁には金属製の芯材が埋設されているが、前記車外側側壁には金属製の芯材が埋設されておらず、該車外側側壁の長手方向の一部に他の部分よりも引張荷重に対する弾性変形量が大きい形状又は材料で形成された伸長可能部が設けられていることを特徴とするベルトモール。
【請求項2】
前記第2部材の車外側側壁に設けられた伸長可能部は、該車外側側壁の他の部分よりも肉薄に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベルトモール。
【請求項3】
前記第2部材の車外側側壁に設けられた伸長可能部は、該車外側側壁の他の部分の厚さ寸法の4分の1以上4分の3以下の厚さ寸法で形成されていることを特徴とする請求項2に記載のベルトモール。
【請求項4】
前記第1部材は、押出成形により成形され、
前記第2部材は、少なくとも前記車外側側壁と前記頂壁が射出成形により成形されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のベルトモール。
【請求項5】
前記第1部材の車内側側壁に埋設された芯材と前記第2部材の車内側側壁に埋設された芯材とが連続していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のベルトモール。
【請求項6】
前記第2部材の車外側側壁に設けられた伸長可能部は、該車外側側壁の長手方向において8mm以上30mm以下の長さ寸法で形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のベルトモール。
【請求項7】
前記第2部材の車外側側壁に設けられた伸長可能部は、前記第1部材と前記第2部材との接合部から前記伸長可能部の中心部までの距離が20mm以上100mm以下となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のベルトモール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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