説明

ベルト駆動伝達装置

【課題】駆動伝達力の低下を防ぐことが可能なベルト駆動伝達装置を提供する。
【解決手段】ベルト駆動伝達装置は、駆動プーリー2と従動プーリーとの間に巻かれた伝達ベルト3の張力を調整するテンション調整機構4は、駆動プーリー2の順回転時に伝達ベルト3の背面3bに当接することで伝達ベルト3にテンションを付与するテンションローラー6Aと、駆動プーリー2の逆回転時に伝達ベルト3の背面3bに当接することで該伝達ベルト3にテンションを付与するテンションローラー6Bと、テンションローラー6Aとテンションローラー6Aとを回転自在な状態で保持し、これらテンションローラー6A,6Bの回転軸に直交する方向に揺動することによって、伝達ベルト3の背面3bに対するテンションローラー6Aおよびテンションローラー6Bのそれぞれの当接状態と離間状態とを切り替え可能に配置されるローラーホルダー7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モーターの出力軸の回転を他の軸に伝えたり、他の軸に伝えられた回転を更に他の軸に伝える動力伝達手段として、従来からベルト駆動伝達装置が用いられてきた。ベルト駆動伝達装置は駆動プーリーと従動プーリーとこれらのプーリー間に巻回される無端帯状の伝達ベルトとを備えることによって構成されている。そして、所望の伝達効率を得るために伝達ベルトのテンション(張力)の調整が重要になっている。
【0003】
伝達ベルトの最も基本的なテンションの調整方法としては、例えば特許文献1に示すように、伝達ベルトの外側から当該伝達ベルトに対してテンションを付加するテンションローラーが設けられた構成が知られている。この場合、テンションローラーの位置を調整することによって伝達ベルトのテンションを最適な状態にするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−176644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、伝達ベルトを順回転させる場合と逆回転させる場合とで、伝達ベルトのテンションが最適となるテンションローラーの位置が異なるため、回転方向を逆向きにしたときにテンションローラーに対して外側向きに過度の力が加えられる場合がある。この場合、テンションローラーの付勢力が伝達ベルトのテンションに負けて、テンションローラーが外側に押し戻されてしまうため、伝達ベルトにゆるみが生じ、駆動伝達力が低下してしまう。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、駆動伝達力の低下を防ぐことが可能なベルト駆動伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のベルト駆動伝達装置は、駆動プーリーおよび従動プーリーと、前記駆動プーリーと前記従動プーリーとの間に巻き回された無端帯状の伝達ベルトと、前記伝達ベルトの張力を調整するテンション調整機構と、を備えたベルト駆動伝達装置であって、前記テンション調整機構は、前記駆動プーリーの順回転時に前記伝達ベルトの背面に当接することで該伝達ベルトにテンションを付与する第1テンションローラーと、前記駆動プーリーの逆回転時に前記伝達ベルトの背面に当接することで該伝達ベルトにテンションを付与する第2テンションローラーと、前記第1テンションローラーと前記第2テンションローラーとを回転自在な状態で保持し、これら第1および第2テンションローラーの回転軸に直交する方向に揺動することによって、前記伝達ベルトの背面に対する前記第1テンションローラーおよび前記第2テンションローラーのそれぞれの当接状態と離間状態とを切り替え可能に配置されるローラーホルダーと、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ローラーホルダーが揺動することによって、伝達ベルトの背面に対する第1テンションローラーおよび第2テンションローラーのそれぞれの当接状態と離間状態とを切り替え可能とされている。つまり、駆動プーリーの順回転時に伝達ベルトのゆるみ側となる背面に第1テンションローラーが当接することにより、駆動プーリーの順回転時における伝達ベルトのゆるみを防止することができる。一方、駆動プーリーの逆回転時に伝達ベルトのゆるみ側となる背面に第2テンションローラーが当接することにより、駆動プーリーの逆回転時における伝達ベルトのゆるみを防止することができる。したがって、駆動プーリーの順回転時および逆回転時において伝達ベルトにゆるみが生じるのを防ぐことができるので、駆動伝達力の低下を防ぐことができる。
【0009】
また、前記ローラーホルダーの前記第1テンションローラー側を前記伝達ベルトに向けて付勢する付勢手段を備え、前記駆動プーリーが順回転から逆回転することによる前記第1テンションローラーの変位によって前記ローラーホルダーが揺動し、前記第2テンションローラーが前記伝達ベルトの前記背面に対して前記当接状態となる構成としてもよい。
【0010】
この構成によれば、付勢手段によってローラーホルダーの第1テンションローラー側が伝達ベルトに向けて常に付勢される構成となっているので、例えば、駆動プーリーが順回転する場合に、第1テンションローラーが伝達ベルトに当接して該伝達ベルトのゆるみが防止される。また、駆動プーリーが順回転から逆回転することによる前記第1テンションローラーの変位によってローラーホルダーが揺動し、第2テンションローラーが伝達ベルトの背面に対して当接状態となることにより、該伝達ベルトの逆回転時におけるゆるみが防止されるようになっている。これにより、簡単な構成で無端ベルトに対する第1および第2テンションローラーの当接状態あるいは離間状態の切り替えが可能になっている。
【0011】
また、前記ローラーホルダーは一対の腕部を有した二股形状とされており、一方の前記腕部の先端に前記第1テンションローラー、他方の腕部の先端に前記第2テンションローラーを備え、各腕部の基端側に設けられた回転軸を中心に揺動する構成とされている構成としてもよい。
【0012】
この構成によれば、回転軸を中心としてローラーホルダーが揺動することによって、伝達ベルトに対して第1テンションローラーあるいは第2テンションローラーを適宜当接させることができる。
【0013】
また、前記テンション調整機構は前記駆動プーリー側に設けられ、前記駆動プーリーの順回転時において、前記第1テンションローラーは前記駆動プーリーよりも該駆動プーリー駆動方向下流側となる前記伝達ベルトの前記背面に対向し、前記第2テンションローラーは前記駆動プーリーよりも該駆動プーリー駆動方向上流側となる前記伝達ベルトの前記背面に対向している構成としてもよい。
【0014】
この構成によれば、伝達ベルトにおいては、駆動プーリーの順回転時あるいは逆回転時にそれぞれ駆動プーリーの駆動プーリー駆動方向下流側となる部分にゆるみが生じることになるが、このような第1および第2テンションローラーの配置によって、順回転時および逆回転時のいずれの場合においても、伝達ベルトのゆるみを防止することが可能である。つまり、伝達ベルトの順回転時に駆動プーリーよりも駆動プーリー駆動方向下流側となる部分に第1テンションローラーが当接することによって伝達ベルトのゆるみが防止され、伝達ベルトの逆回転時に駆動プーリーよりも駆動方向下流側となる部分に第2テンションローラーが当接することによって伝達ベルトのゆるみが防止されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るベルト駆動伝達装置の動作原理を示す概略構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係るベルト駆動伝達装置の構成を示す平面図(順回転時)。
【図3】本発明の実施の形態に係るベルト駆動伝達装置の構成を示す平面図(逆回転時)。
【図4】本実施形態に係るテンション機構の構成を示す分解斜視図。
【図5】本実施形態に係るテンション調整機構の構成を示す側面図。
【図6】変形例を示す斜視図。
【図7】本発明のベルト駆動伝達装置を用いたインクジェットプリンターの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本実施形態を説明する。
図1は、本発明に係るベルト駆動伝達装置の動作原理を示す概略構成図である。
図1に示すように、ベルト駆動伝達装置1は、駆動プーリー2と、従動プーリー(不図示)と、これら駆動プーリー2と従動プーリーとの間に巻かれた無端帯状の伝達ベルト3と、この伝達ベルト3の張力を調整するテンション調整機構4とを備えている。
テンション調整機構4は、揺動することによって伝達ベルト3に対して当接あるいは離間可能な揺動部5と、不図示の付勢手段とを有している。
【0017】
揺動部5は、駆動プーリー2の順回転時に、伝達ベルト3の背面3bに当接することで伝達ベルト3にテンションを付与するテンションローラー(第1テンションローラー)6Aと、伝達ベルト3の背面3bに当接することで伝達ベルト3にテンションを付与するテンションローラー(第2テンションローラー)6Bと、これらテンションローラー6A,6Bを回転自在な状態で保持するローラーホルダー7と、を備える。
このローラーホルダー7は、テンションローラー6A,6Bの回転軸に直交する方向に揺動することによって、伝達ベルト3の背面3bに対するテンションローラー6A、6Bのそれぞれの当接状態と離間状態とを切り替え可能とするもので、伝達ベルト3の背面3b側にテンションローラー6Aが常に付勢された構成となっている。
【0018】
そして、ローラーホルダー7は、テンションローラー6A側がローラーホルダー7に向けて常に付勢されているので、伝達ベルト3の順回転時にテンションローラー6Aを伝達ベルト3の背面3bへと当接させた状態とする。これにより、伝達ベルト3の順回転時に伝達ベルト3のゆるみ側となる部分(駆動プーリー駆動方向下流側におけるゆるみ部分)にテンションローラー6Aが当接する状態となり、伝達ベルト3に適度なテンションを持たせることができる。
【0019】
このようなテンション調整機構4は、駆動プーリー2が順回転から逆回転することによるテンションローラー6Aの変位によってローラーホルダー7が揺動し、今度は、テンションローラー6Bが伝達ベルト3の背面3bに対して当接状態となる。これにより、駆動プーリー2の逆回転時に伝達ベルト3のゆるみ側となる部分にテンションローラー6Bが当接する状態となり、伝達ベルト3に適度なテンションを持たせることができる。
【0020】
以下に、本発明に係るベルト駆動伝達装置の具体的な実施形態としてその一例を述べる。
なお、以下に述べる実施形態は一例であってこれに限定されるものではない。
図2および図3は、本実施形態に係るベルト駆動伝達装置100の構成を示す平面図であって、図2が伝達ベルトの順回転時、図3が伝達ベルトの逆回転時の様子を示す図である。
図2および図3に示すように、ベルト駆動伝達装置100は、駆動プーリー101と、従動プーリー102と、これらの駆動プーリー101、従動プーリー102間に巻回される無端帯状の伝達ベルト103とを備えている。駆動プーリー101の近傍において伝達ベルト103の順搬送方向Mの下流位置には、テンション調整機構104が配置されている。駆動プーリー101及びテンション調整機構104は、固定部材HDによって固定されている。
【0021】
駆動プーリー101は、不図示のモーターなどの回転駆動機構に接続された回転軸106に取り付けられている歯付きプーリーである。駆動プーリー101は、固定部材HDに形成された固定孔HDa(図4)に固定されている。従動プーリー102は、回転可能に設けられた回転軸108に取り付けられた駆動プーリー101より大径の歯付きプーリーである。伝達ベルト103は、内周側の面に上記駆動プーリー101と従動プーリー102に噛み合う所定ピッチの歯が形成されたタイミングベルトと呼ばれている歯付きベルトである。
【0022】
テンション調整機構104は、伝達ベルト103の張力を調整する調整機構であって、揺動することによって伝達ベルト103に対して当接あるいは離間可能な揺動部105と、揺動部105を伝達ベルト103側へ付勢する付勢部107と、を有している。
【0023】
揺動部105は、歯が形成されていない伝達ベルト103の背面103bに当接してテンション(張力)を付与する2つのテンションローラー110A、110Bと、これらテンションローラー110A,110Bを自由回転可能な状態で揺動自在に保持するローラーホルダー111と、このローラーホルダー111を伝達ベルト103側に揺動付勢する付勢部の一例であるバネ部材112と、ローラーホルダー111に移動可能に固定され伝達ベルト103が外側に膨らむ方向へのローラーホルダー111の移動を規制するストッパー部113と、を有している。
【0024】
図4は、テンション調整機構の構成を示す斜視図である。図5は、テンション機構の構成を示す側面図である。
図4に示すように、テンション調整機構104の揺動部105は、平面視略V字状に形成されたローラーホルダー111の各腕部111a,111aのそれぞれの先端に、上記したテンションローラー(第1テンションローラー)110Aおよびテンションローラー(第2テンションローラー)110Bをそれぞれ回転自在に備えてなり、回転軸203を中心にして、各テンションローラー110A,110Bの回転軸110a,110bに直交する方向に揺動する構成とされている。
【0025】
ここで、ローラーホルダー111の各腕部111a,111aは、伝達ベルト103に向けて少し湾曲しているが、これらの形状は適宜変更可能であり、駆動プーリー101の順回転時あるいは逆回転時に各テンションローラー110A,110Bがそれぞれ伝達ベルト103に当接することができれば、湾曲していなくても良い。
【0026】
テンションローラー110A,110Bは、駆動プーリー101や従動プーリー102よりもさらに小径のローラーである。これらテンションローラー110A,110Bは軸方向の長さが、伝達ベルト103の幅寸法よりも幾分長く形成されており、胴体部110cの軸方向両端に設けられた円板部110d、110dによって伝達ベルト103の脱落が防止された構成とされている。
【0027】
ローラーホルダー111は、各腕部111a,111aの端部(先端)に、テンションローラー110A,110Bの各回転軸110a、110bの一端側をそれぞれ保持するベース部111s,111sを有している。また、基部109には回転軸203を挿通させるための挿通孔114が形成されている。そして、ローラーホルダー111は、挿通孔114内に挿通される回転軸203と、介挿部材205a,205b,205cと、を介して固定部材HDに取り付けられており、このような構成によって、回転軸203を中心としてテンションローラー110A,110Bの回転軸に対して直交する方向へ揺動可能に支持されることとなる。
【0028】
付勢部107は、シャフト部材111cおよびバネ受部材111dを有している。シャフト部材111cのうち一方の端部111m(テンションローラー110A側の端部)は、ベース部111sに形成されたバネ受部111eに固定されている。具体的には、バネ受部111eに形成された長孔111pに挿入されている。シャフト部材111cの端部111mのうち長孔111pを貫通した部分には、介挿部材206eが嵌め込まれている。
【0029】
シャフト部材111cのうち他方の端部111n(テンションローラー110Aとは反対側の端部)は、円環状に形成されたバネ受部材111dの開口部に挿入された状態で固定部材HDのストッパー部113に当接されている。シャフト部材111cの端部111n側には、貫通孔111qが形成されている。
【0030】
貫通孔111qは、シャフト部材111cの端部111nがバネ受部材111dに挿入された状態において、当該バネ受部材111dに形成される切り欠き部111fに露出されている。バネ受部材111dには、シャフト部材111cの端部111nの他に、U字型部材111gが挿入されている。シャフト部材111cの端部111nは、このU字型部材111gのU字の先端部の間に挿入されるようになっている。また、シャフト部材111cの端部111nには、平坦面111jが形成されている。この平坦面111jには、円筒部材111iが載置されるようになっている。
【0031】
シャフト部材111c、バネ受部材111d及びU字型部材111gは、固定部材111hによって固定されるようになっている。固定部材111hは、バネ受部材111dの切り欠き部111f、円筒部材111i、貫通孔111qに挿入され、U字型部材111gのU字の底部に設けられたねじ孔111kにねじ固定され、バネ受部材111dの内周部に当接されるようになっている。
【0032】
バネ部材112は、上記のシャフト部材111cを内包するように設けられている。バネ部材112の一方の端部112m(テンションローラー110A側の端部)は、ベース部111sのバネ受部111eに当接されている。バネ部材112の他方の端部112n(テンションローラー110Aとは反対側の端部)は、バネ受部材111dに当接されている。このため、バネ部材112は、バネ受部材111dをストッパー部113側に押圧すると共に、テンションローラー110Aを伝達ベルト103側へ押圧するようになっている。
【0033】
ストッパー部113は、ローラーホルダー111が伝達ベルト103から離れる方向に移動するのを規制する。ストッパー部113は、固定部材HDの端部が垂直に折り曲げられた状態で形成されている。ストッパー部113には貫通孔113aが形成されている。シャフト部材111c、バネ受部材111d、U字型部材111gが固定された状態においては、シャフト部材111cの端部111nが貫通孔113aを貫通して突出した状態となっている。なお、シャフト部材111cの端部111nのうち突出部分には、リング状部材206dが嵌め込まれている。
【0034】
シャフト部材111c、バネ受部材111d及びU字型部材111gがストッパー部113に対して取り付ける際には、U字型部材111gとバネ受部材111dとの間に所定の隙間K(図5)を形成するようにして固定部材111hをねじ固定する。
【0035】
ここで、シャフト部材111cの貫通孔111qが当該シャフト部材111cの軸方向に長手に形成されており、伝達ベルト103の長さばらつき、バネ部材112のばね荷重ばらつき等によるローラーホルダー111の取り付け位置のばらつきを許容する。
【0036】
よって、固定部材111hによって円筒部材111iとU字型部材111g、及びシャフト部材111cが一体となり、シャフト部材111cは、U字型部材111gとバネ受部材111dとの間に隙間が形成される範囲(所定量)で、軸方向に可動に設けられることになる。
【0037】
すなわち、この隙間Kの軸方向の寸法がローラーホルダー111の揺動範囲となる。ローラーホルダー111は、テンションローラー110A,110Bを自由回転可能な状態で保持することができるようになっているとともに、ストッパー部113によって隙間K(図3)の軸方向の寸法以上の移動が規制された構成となっている。
なお、隙間Kや貫通孔111qの図示寸法等は模式的なもので、実際とは異なっている。
【0038】
このように構成されたベルト駆動伝達装置100においては、付勢部107によって揺動部105に対して伝達ベルト103側に常に押圧力が加えられるようになっている。具体的には、テンション調整機構104の付勢部107のバネ部材112によって、ローラーホルダー111のテンションローラー110A側に対して伝達ベルト103に向けて常に押圧力が加えられている。この押圧力によって伝達ベルト103にテンションが加えられることになる。
【0039】
このように構成されたベルト駆動伝達装置100においては、例えば駆動プーリー101を順回転させて伝達ベルト103を順搬送方向M(図1参照)に搬送させると、駆動プーリー101を通過した伝達ベルト103側にゆるみが生じることがあるが、本実施形態のテンション調整機構104においては、バネ部材112(付勢部107)によってローラーホルダー111のテンションローラー110A側に対して伝達ベルト103に向けて常に押圧力が加えられているので、テンションローラー110Aが伝達ベルト103の背面103bに当接した状態となる。この状態により、伝達ベルト103に適度なテンションが加えられることになる。
【0040】
一方、駆動プーリー101を逆回転させ、伝達ベルト103を逆搬送方向N(図2参照)に搬送させる場合もある。この場合においても、駆動プーリー101を通過した伝達ベルト103側にゆるみが生じることがある。つまり、順回転時にテンションローラー110Aが当接していた部分は伝達ベルト103の逆回転によって張り側(テンションがかかった状態)となり、テンションローラー110Aに対して外向きに過度の力が加えられる場合がある。
【0041】
駆動プーリー101の順回転時に伝達ベルト103のゆるみ側に当接していたテンションローラー110Aは、駆動プーリー101の逆回転による伝達ベルト103のテンションによって、バネ部材112の付勢力に抗して押し戻される。この際、ローラーホルダー111が回転軸を中心に回転して、テンションローラー110Bが伝達ベルト103の背面103bに対して当接状態となる。このような逆回転時にかかる伝達ベルト103のテンションによってローラーホルダー111が揺動して、テンションローラー110Aに代えてテンションローラー110Bが、駆動プーリー101の駆動プーリー駆動方向下流側となる伝達ベルト103のゆるみ側に当接することにより、逆回転時においても伝達ベルト103に適度なテンションが加えられる。
【0042】
このように、伝達ベルト103を順回転させる場合と逆回転させる場合とでは、伝達ベルト103のテンションが最適となるテンションローラー110A,110Bの位置が異なっており、付勢部107の付勢力と伝達ベルト103の回転時におけるテンションとの関わりによって、伝達ベルト103に対するテンションローラー110A,110Bの当接状態あるいは離間状態を切り替えることが可能である。
よって、駆動プーリー101の順回転時および逆回転時のいずれの場合においても、伝達ベルト103にゆるみが生じるのを防ぐことができるので、駆動伝達力の低下を防ぐことができる。
【0043】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
先の実施形態では伝達ベルト103の外側にテンション調整機構104を配置したが、例えば、図6に示すように、テンションローラー110A,110Bを伝達ベルト103の外側に配置させた状態で、ローラーホルダー111の回転軸203が伝達ベルト103の内側となるように設置してもよい。この場合においても、回転軸203を中心にローラーホルダー111が回転軸203を中心軸として揺動することによって、テンションローラー110A,110Bがそれぞれ伝達ベルト103の背面103bに当接状態あるいは離間状態となる構成となっている。これにより、駆動プーリー101の順回転時および逆回転時のいずれの場合にも伝達ベルト103のゆるみを防止することができる。
【0044】
先の実施形態では、各テンションローラー110A,110Bがベース部111s、111sの、固定部材HDとは反対側の表面111t(図1および図2)に対してそれぞれの回転軸が垂直になるように支持されているが、固定部材HD側の裏面111uに対してそれぞれの回転軸が垂直になるように支持させた構成としてもよい。
この構成によれば、回転軸203が伝達ベルト103の内側に配置されることで、テンション調整機構104の更なる小型化が可能となる。
【0045】
なお、ローラーホルダー111のテンションローラー110A側を伝達ベルト103に向けて常に付勢することができれば、付勢部107の構成は上記実施形態に限ったものではない。また、ローラーホルダー111のテンションローラー110B側を伝達ベルト103に向けて常に付勢するように配置されていてもよい。
【0046】
[プリンター]
上記のように構成されたベルト駆動伝達装置100は、例えば以下のようなインクジェットプリンターに用いることができる。図7は、本発明の実施形態におけるプリンター11を示す概略構成図である。
プリンター11は、ロール状に巻かれたロール紙(ロール体)RPから延出される長尺の用紙(記録媒体)Pに対して、インク(流体)を記録ヘッド31から噴射して画像や文字等を印字する構成となっている。プリンター11は、ロール紙RPから延出された用紙Pを搬送する搬送部(搬送装置)20と、用紙Pに対し印字を行う記録部30と、印字を経た用紙Pを所定サイズに切断する切断部40と、切断後の用紙Psの裏面に印字を行う裏面印字部50と、上記各構成部位の動作を統括的に制御する制御装置CONTと、を有している。
【0047】
プリンター11は、ロール紙RPを収容するケース12と、搬送部20、記録部30、切断部40、裏面印字部50等を収容する本体ケース13と、を備えている。そして、本体ケース13の前側(+Y側)には、印字が施されて切断された用紙Psが排出される排紙トレイ17が設けられている。また、用紙Pの切断によって生ずる切断片Pkを受けて溜める容器(以降、「切屑容器」と称する)15が、本体ケース13の右側面において、表面から少し凹むように面が形成された凹部14内に配設されている。切屑容器15は、本実施形態では本体ケース13から搬送方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)に引き抜くことができるようになっており、その直交方向の端面が凹部14において露出するとともに、その端面において切屑容器15を引く抜くための取手16が設けられている。
【0048】
以下、プリンター11に設けられた各構成部位について、プリンター11に備えられた搬送部20として機能する複数のローラー対によって搬送される用紙Pの搬送順に従って説明する。搬送部20は、給紙ローラー対21、搬送ローラー対22,23,24,25、排紙ローラー対26を有する。まず、ロール紙RPから巻き解かれた用紙Pは、給紙ローラー対21によって、記録部30に給紙されるようになっている。記録部30は、インクを噴射する記録ヘッド31と、用紙Pを支持する支持装置(記録媒体支持装置)32と、を有する。
【0049】
記録部30では、ロール紙RPから給送された用紙Pを搬送して、用紙Pの上面(表面)に画像等を印字する。まず搬送ローラー対22によって記録ヘッド31と支持装置32との間に用紙Pを送り出す。送り出された用紙Pの上面(表面)は記録ヘッド31に対して所定の距離を保って搬送され、このとき、用紙Pの上面に記録ヘッド31からインクが噴射されて印字が行われる。その後、用紙Pは、搬送ローラー対23によって切断部40に搬送される。
【0050】
切断部40は、回転刃などによって構成されるカッター41を機能部品として有し、用紙Pを、印字された画像等に対応する領域毎に切断する。このとき、切断部40では、印字された領域について搬送方向の端部に存在する不要な領域を取り除くように切断が行われるようになっている。このため、図示するように、用紙Pは、切断によって切断片Pkが発生し、発生した切断片Pkは重力方向に落下するようになっている。従って、この落下する切断片Pkを受けて溜めるために、切屑容器15が切断部40よりも下側に配設されている。
【0051】
切断後の用紙Psは、次に裏面に文字を印刷する裏面印字部50に搬送される。裏面印字部50は、インクリボンを用紙Psの下面(裏面)に押し付けてインクドットを形成する所謂インパクトドット方式の印字ユニット51と、用紙Psを印字の際に上側から支持する支持台52と、を有している。裏面印字部50では、搬送される用紙Psを、まず搬送ローラー対24によって印字ユニット51と支持台52との間に用紙Psを送り出す。
そして、送り出された用紙Psは、その下面(裏面)に印字ユニット51によってドットが記録されることによって所定の文字が印字され、搬送ローラー対25によって搬送方向に送られる。
【0052】
その後、用紙Psは、例えば、乾燥部(不図示)に搬送され、機能部品としてのヒーターユニット(不図示)などによって乾燥が施されるなどの処理を経て、最後に排紙ローラー対26によって排紙トレイ17に排出されるようになっている。
【0053】
以上の構成において、上記実施形態に記載のベルト駆動伝達装置100は、例えば記録部30の搬送方向の上流側の搬送ローラー対22と、下流側の搬送ローラー対23との間に設けられ、駆動力を伝達する構成となっている。このような構成によれば、駆動伝達力の低下を防ぐことができるベルト駆動伝達装置100が用いられているため、搬送精度の高いプリンターを得ることができる。
【0054】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。
【0055】
なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。
【0056】
ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,100…ベルト駆動伝達装置、2,101…駆動プーリー、3,103…伝達ベルト、3b,103b…背面、4,104…テンション調整機構、6A,110A…テンションローラー(第1テンションローラー)、6B,110B…テンションローラー(第2テンションローラー)、7,111…ローラーホルダー、102…従動プーリー、203…回転軸、109…湾曲部、111a…腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリーおよび従動プーリーと、
前記駆動プーリーと前記従動プーリーとの間に巻き回された無端帯状の伝達ベルトと、
前記伝達ベルトの張力を調整するテンション調整機構と、を備えたベルト駆動伝達装置であって、
前記テンション調整機構は、
前記駆動プーリーの順回転時に前記伝達ベルトの背面に当接することで該伝達ベルトにテンションを付与する第1テンションローラーと、
前記駆動プーリーの逆回転時に前記伝達ベルトの背面に当接することで該伝達ベルトにテンションを付与する第2テンションローラーと、
前記第1テンションローラーと前記第2テンションローラーとを回転自在な状態で保持し、これら第1および第2テンションローラーの回転軸に直交する方向に揺動することによって、前記伝達ベルトの背面に対する前記第1テンションローラーおよび前記第2テンションローラーのそれぞれの当接状態と離間状態とを切り替え可能に配置されるローラーホルダーと、を備える
ことを特徴とするベルト駆動伝達装置。
【請求項2】
前記ローラーホルダーの前記第1テンションローラー側を前記伝達ベルトに向けて付勢する付勢手段を備え、
前記駆動プーリーが順回転から逆回転することによる前記第1テンションローラーの変位によって前記ローラーホルダーが揺動し、前記第2テンションローラーが前記伝達ベルトの前記背面に対して前記当接状態となること
を特徴とする請求項1に記載のベルト駆動伝達装置。
【請求項3】
前記ローラーホルダーは一対の腕部を有した二股形状とされており、
一方の前記腕部の先端に前記第1テンションローラー、他方の腕部の先端に前記第2テンションローラーを備え、回転軸を中心に揺動する構成とされている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のベルト駆動伝達装置。
【請求項4】
前記テンション調整機構は前記駆動プーリー側に設けられ、前記駆動プーリーの順回転時において、前記第1テンションローラーは前記駆動プーリーよりも該駆動プーリー駆動方向下流側となる前記伝達ベルトの前記背面に対向し、前記第2テンションローラーは前記駆動プーリーよりも該駆動プーリー駆動方向上流側となる前記伝達ベルトの前記背面に対向している
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のベルト駆動伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−141029(P2012−141029A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149(P2011−149)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】