説明

ベルト駆動装置

【課題】構成を簡素化して、装置の小型化と製造原価の削減を行うことができるベルト駆動装置を提供する。
【解決手段】二つ以上のローラ10と、ローラ10に張力がかかった状態で掛け渡されたベルト20と、ローラ10を駆動させてベルト20の回転中に生じたベルト20の片寄りを矯正する矯正手段30と、ベルト20の張力を解除または復帰する作動手段40とを有し、矯正手段30と作動手段40は、一つの取付部材90に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトの片寄りを矯正する機構を備えたベルト駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトの片寄りを矯正する機構を備えたベルト駆動装置として特許文献1、2のような構成のものがある。特許文献1は、ベルト側端近傍に設けたベルトセンサの信号によって駆動される駆動モ−タで、アイドラロ−ルのベルトに対するテンションをベルトの幅方向に変化させて調整するものである。
【0003】
また、特許文献2は、ロ−ラが寄り方向と反対方向に移動するように揺動部材を揺動し、ベルトの張力を調整するカム部材と、このカム部材に揺動部材の先端部が常時衝合するように付勢するばねを具えたので、制御部材等による電気的な制御なく、ベルトの片寄りを矯正するものである。
【特許文献1】実開昭58−110609号公報
【特許文献2】実開昭64−48457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2に示されている構成は、複雑であるため、部品点数が多くなる。また部品点数が多くなることにより、製造原価が高くなる。また、部品点数が多くなるに伴い故障発生要因部が増えてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するために、本発明は、請求項1の発明においては、二つ以上のローラと、ローラに張力がかかった状態で掛け渡されたベルトと、ローラを駆動させてベルトの回転中に生じたベルトの片寄りを矯正する矯正手段と、ベルトの張力を解除または復帰する作動手段とを有し、矯正手段と作動手段は、一つの取付部材に設けられていることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2記載の発明においては、複数のローラの一つのローラを検出ローラとし、矯正手段は、検出ローラの一端に設けられた検出部と、該検出部により検出されたベルトの偏りに対応して検出ローラの軸線を変位させる可動部とを備え、作動手段は、ベルトの位置をシフトさせてベルトの張力を解除または復帰させる駆動部と、該駆動部を付勢する付勢部とを備えることを特徴とする。
【0007】
さらに、請求項3記載の発明においては、可動部は、外方に向かって径が徐々に大きくなるように形成された補助ローラと、該補助ローラを介して、制御ローラの支持軸に軸通された調整ローラとを有し、駆動部は、制御ローラの支持軸を支持する支持部材と、取付部材に設けられるとともに該支持部材に収容され制御ローラの支持軸の支持位置をシフトさせる移動部材とを備え、支持軸を支持する支持部材には、制御ローラの軸線のシフトによって生じる調整ローラの移動を受ける受部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1は、二つ以上のローラと、ローラに張力がかかった状態で掛け渡されたベルトと、ローラを駆動させてベルトの回転中に生じたベルトの片寄りを矯正する矯正手段と、ベルトの張力を解除または復帰する作動手段とを有し、矯正手段と作動手段を、一つの取付部材に設けることにより、構成を簡素化して、装置の小型化と製造原価の削減を行うことができる。
【0009】
請求項2は、ベルトの偏りを検出するローラを検出ローラとして特定するとともに、さらに、矯正手段と作動手段の構成を具体化し、請求項1の効果を得ることができる。
【0010】
請求項3は、外方に向かって径が徐々に大きくなるように形成された補助ローラと、該補助ローラを介して、前記検出ローラの支持軸に軸通された調整ローラとにより構成し、駆動部を、検出ローラの支持軸を支持する支持部材と、取付部材に設けられるとともに該支持部材に収容され制御ローラの支持軸の支持位置をシフトさせる移動部材とにより構成するとともに、支持軸を支持する支持部材に、検出ローラの軸線の変位によって生じる調整ローラの移動を受ける受部を備えることにより、請求項2の構成を具体化して、請求項1の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のベルト駆動装置を適用した装置の概略図。
【図2】本発明のベルト駆動装置の詳細を示す図であり、図1の矢視Aの拡大図。
【図3】図2を矢視Bから見た図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に、本発明のベルト駆動装置を適用した装置の概略図を示す。図1に示すように、この装置は、画像形成部1、転写部2および定着部3とからなる。
【0013】
この構成のもと、図示しない給紙手段から用紙を繰り出し、転写部2により、画像形成部1で形成されたトナー像を用紙に転写して、この用紙を定着部3により定着するものである。画像形成部1は、像担持体1aとイレーサ1bと帯電手段1cと露光手段1dと現像装置1eとを備える。
【0014】
像担持体1aは、例えば、矢印で示す方向、すなわち反時計方向に回転し、アルミニウム等のドラム状基体表面に電子感光体を備えた構成よりなる。感光体としては、OPC(有機光導電体)感光体やアモルファスシリコン感光体等の周知のものを使用し得る。
【0015】
像担持体1aの周辺には、像担持体1a上の残留電荷を消去するためのイレーサ1b、像担持体1aの表面を特定極性に一様に帯電するための帯電手段1c、帯電された像担持体1aの表面に光情報を入射(像露光)して像担持体1aの表面に静電潜像を形成する露光手段1d、像担持体1aの表面に現像剤を供給することにより静電潜像を現像してトナー像を形成するための現像装置1e、像担持体1a上に形成された各トナー像を用紙に転写するための転写部2が配置されている。
【0016】
なお、この実施の形態において、本発明のベルト駆動装置をモノクロの電子写真方式を開示しているが、これに限定されることはなく、例えば、図示しない給紙手段から用紙を繰り出して、順次、用紙に各色のトナー像をベルトから中間転写部に転写してカラー画像を形成し、次いで、このカラー画像をコロナ転写装置と剥離装置とを備えた転写部により用紙に一括転写して、定着するものであってもよい。
【0017】
転写部2は、転写ローラ21と、本発明のベルト駆動装置に組み込まれたベルト20からなる。ベルト20は用紙を転写ローラ21から定着部3に搬送するものであり、複数のローラ10により張力がかかった状態で掛け渡されている。具体的には、図1に示すように、頂部ローラ11、従属ローラ12、制御ローラ50の二つ以上のローラにより掛け渡されている。
【0018】
頂部ローラ11は、ベルト20を回転させる駆動源(図示せず)が接続されている。さらに、頂部ローラ11と対向する位置には転写部2が配置されている。制御ローラ50は、制御ローラ50の一端には、後に述べる矯正手段30が設けられている。
【0019】
図3に示すように、矯正手段30は、ベルト20の片寄りを矯正するものであり、検出部31と、可動部32とを備え、制御ローラ50の支持軸51に軸通されている。また、矯正手段30側に位置する支持軸51の先端は、ベルト20が張っている時に、制御ローラ50の軸線が上下方向(所定の方向にベルト20をシフトさせる方向、矢印C)にぶれないように、後に述べる固定軸100が貫通するように凹部52が設けられている。
【0020】
検出部31は、外方(制御ローラ50の一端側方向、矢印E)に向かって径が徐々に大きくなるように形成された補助ローラ61である。以下の説明から検出部31を補助ローラ61とよぶ。この構成により、ベルト20が補助ローラ61側に片寄ったときに、そのベルト20が補助ローラ61の側周面に乗り上がって制御ローラ50と共に回るようになっている。
【0021】
可動部32は、補助ローラ61がベルト20との接触により回転した時に、その作用により補助ローラ61をベルト20の移動方向前に移動させるものであり、具体的には調整ローラ62である。部品点数を減らすために調整ローラ62は補助ローラ61とは一体的に形成されている。また、その周縁はねじ山63が形成されている。このねじ山63は、後に述べる駆動部70に設けられたねじ部74に噛み合って接するようになっている。
【0022】
作動手段40は、ベルト20の張力を解除または復帰するものであり、駆動部70と付勢部80とからなる。駆動部70は、ベルト20の張力を解除または復帰を、ベルト20の位置をシフトさせて行うものであり、支持部材71と移動部材72とを備える。
【0023】
支持部材71は、検出ローラの支持軸を支持するものであり、薄板状の部材からなる。さらに、支持部材71は、後に述べる移動部材72を構成する一部が収容されるように屈曲して収容部45が形成されている。
【0024】
また、収容部45と対向する位置には、支持軸51の凹部52に貫通させる固定軸100の貫通孔110が設けられている。固定軸100の一端はねじ等により固定されている。さらに、固定軸100の他端側は、スプリング等の弾性体46が伸張した状態で挿入され、固定軸100の他端を調整ねじで嵌め合わせるようになっている。
【0025】
これにより、補助ローラ61は、調整ローラ62の移動方向とは逆の方向、つまりベルト20の移動方向側に常時付勢されるようになっている。なお、凹部52が設けられた支持軸と反対側の支持軸(図示せず)は所定の位置で回転可能に支持されている。
【0026】
この構成により、調整ねじと固定軸100の凹部52との間に作用する弾性体46の付勢によって、先ほど述べた制御ローラ50の支持軸51での上下方向(所定の方向にベルト20をシフトさせる方向矢印C)と固定軸100方向(矢印D)にぶれないようにすることができる。
【0027】
さらに、調整ねじと固定軸100の凹部52との間に作用する弾性体46の付勢力を調整して、強制手段側にある制御ローラ50の支持軸51を、凹部52が設けられた支持軸と反対側の支持軸(図示せず)を支点として、軸線方向に水平に移動させることにより、既に所定位置に支持されている頂部ローラ11、従属ローラ12の各軸線と、平行となるように微調整することができる。
【0028】
移動部材72は、制御ローラ50の支持軸51の支持位置をシフトさせて、ベルト20の張力の解除および復帰を行うものである。収容部45に収納された一対のピニオンギア47と後に述べる取付部材90に設けられたラック92とからなる。各ピニオンギア47は、互いに噛み合った状態で、収容部45に軸支されている。また、収容部45には、収容部45自体が所定の方向にシフトされるようにガイド溝48が設けられている。
【0029】
取付部材90は、図1に示す装置のフレーム(図示せず)に取り付けられるものである。取付部材90は、移動部材72と同様に薄板状の部材からなり、U字状の形状をなしている。競り上がり部分は、各ピニオン47が噛み合うラック92が形成されている。
【0030】
取付部材90のU字状に形勢された空間には一対のピニオンギア47が収容される。また、ピニオンギア47が収容された収容部45の下部は、両端が折り曲げられ支持受部49が形成されている。さらに、ピニオンギア47が収容された収容部45の上部は、上方に折り曲げられるとともに、その一部が上方に延びている。この延びた部分には、先に述べたガイド溝48が設けられている。
【0031】
さらに、また、ガイド溝48が設けられた反対側の面には、後に述べる付勢部80を取り付ける取付部が設けられている。ガイド溝48の長さは、収容部45を上限に引き出した時に、その上部が当接する長さを持っている。取付部材90のU字状の底側には、ガイド溝48の移動を規制するストッパ94が設けられている。
【0032】
これにより、取付部材90に対する収容部45の抜け止めが構成され、ボルトナットのような固定するための付属部品を必要としないで、矯正手段30と作動手段40とを一つの取付部材90に設けることができる。
【0033】
付勢部80は、ベルト20の張力を解除した時に、制御ローラ50の自重により、装置のフレームにぶつからないようにするものであり、取付部4に取り付けられている。このため、付勢部80の付勢力は常に矢印方向E(制御ローラ50側)に作用するようになっている。
【0034】
以上の構成のもと、本発明のベルト駆動装置の動作を説明する。先ず、作動手段40の動作について説明する。ベルト20の張力を解除する時には、図示しない操作レバーを操作して、収容部45を下方にシフトさせる。
【0035】
この動作により、制御ローラ50は、凹部52が設けられた支持軸と反対側の支持軸(図示せず)を支点として、下方に傾きベルト20の張力は解除される。この時、付勢部80の付勢力の作用が上方に働くため、制御ローラ50の自重により急激に落下して装置のフレームにぶつかることはない。
【0036】
一方、ベルト20の張力を復帰させる場合は、図示しない操作レバーを解除の操作と逆に操作して、ガイド溝48に沿って収容部45を上方にシフトさせて、制御ローラ50を所定の位置に戻すことによって、その復帰がなされる。
【0037】
次に、矯正手段30の動作について説明する。図示しない駆動源を作動して頂部ローラ11を駆動させ、ベルト20を介して、従属ローラ12、制御ローラ50を回転させて、ベルト20を所定の方向に移動させる。
【0038】
何かの原因でベルト20の偏りが発生すると、それに伴い、ベルト20の一側端が補助ローラ61に少しずつ乗り上がった状態で、ベルト20は移動する。ここで、補助ローラ61は、外方(制御ローラ50の一端側方向)に向かって径が徐々に大きくなっている。
【0039】
これにより、補助ローラ61には、ベルト20の一側端の乗り上げ量が増えるにつれて、それに応じたトルクが発生する。このトルクにより、矢印E方向に調整ローラ62が受部73のねじ部93上を転がり、補助ローラ61を支持部材71に案内支持させつつ弾性体46の引張力に抗してベルト20の移動方向前に移動させる。
【0040】
また、逆に、ベルト20の一側端の乗り上げ量が減ってくると、それに応じたトルクが減少する。これより、矢印E逆方向に調整ローラ62が受部73のネジ部上を転がり、補助ローラ61を支持部材71に案内支持させつつベルト20の移動方向(矢印と逆方向)後に移動させる。
【0041】
以上のように、弾性体46の引張力と補助ローラ61のトルクが釣り合う位置で安定する位置となるまで、補助ローラ61の往復運動を繰り返して、ベルト20の片寄りを矯正する。
【符号の説明】
【0042】
10 ローラ
20 ベルト
30 矯正手段
40 作動手段
50 制御ローラ
60 可動部
70 駆動部
80 付勢部
90 取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ以上のローラと、ローラに張力がかかった状態で掛け渡されたベルトと、ローラを駆動させてベルトの回転中に生じたベルトの片寄りを矯正する矯正手段と、ベルトの張力を解除または復帰する作動手段とを有し、
前記矯正手段と前記作動手段は、一つの取付部材に設けられていることを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
前記複数のローラの一つのローラを制御ローラとし、
前記矯正手段は、前記制御ローラの一端に設けられた検出部と、該検出部により検出されたベルトの偏りに対応して前記制御ローラの軸線を変位させる可動部とを備え、
前記作動手段は、前記ベルトの位置をシフトさせてベルトの張力を解除または復帰させる駆動部と、該駆動部を付勢する付勢部とを備えることを特徴とする請求項1記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記可動部は、外方に向かって径が徐々に大きくなるように形成された補助ローラと、該補助ローラを介して、前記制御ローラの支持軸に軸通された調整ローラとを有し、
前記駆動部は、前記制御ローラの支持軸を支持する支持部材と、前記取付部材に設けられるとともに該支持部材に収容され前記制御ローラの支持軸の支持位置をシフトさせる移動部材とを備え、
前記支持軸を支持する前記支持部材には、前記制御ローラの軸線のシフトによって生じる前記調整ローラの移動を受ける受部を備えることを特徴とする請求項1または2記載のベルト駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−91907(P2012−91907A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240304(P2010−240304)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000165136)桂川電機株式会社 (66)
【Fターム(参考)】