説明

ベンゾイソインドール系化合物およびその製造法

【課題】新規な骨格の機能材料とその有機エレクトロルミネッセンス素子への応用。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。一般式(1)


[式中、Rは、互いに独立に、水素原子、アルキル基、フェニル基などである。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な骨格を有する機能性有機色素の提供と、それを用いたエレクトロルミネッセンス素子用材料およびエレクトロルミネッセンス素子の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性有機色素を用いて、電子写真用色素、インクジェット用色素、光増感用色素、レーザー記録用色素などの情報記録材料、液晶表示用色素、エレクトロルミネッセンス用色素、エレクトロクロミック用色素、フォトクロミック用色素、フォトクロミック用色素などの情報表示用色素材料、有機太陽電池用色素、色素レーザー用色素、有機非線形材料用色素などのエネルギー変換用色素材料等の開発がさまざまな分野で行われている。その様な状況下、新規骨格の色素の開発は、さまざまな用途への展開が期待されるため、大きな期待を秘めている。
【0003】
その中でもとくに、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とがこれら両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合する際に発光するという有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、固体発光型の表示素子としての用途が有望視され、近年活発に研究開発が行われている。
【0004】
この研究は、イーストマン・コダック社のC.W.Tang氏らによりAppl.Phys.Lett.,第51巻,913頁,1987年発行に報告された有機薄膜を積層したEL素子に端を発しており、この報告では、金属キレート錯体を発光層、アミン系化合物を正孔注入層に使用することで、6〜10Vの直流電圧での輝度が数1000(cd/m2)、最大発光効率が1.5(lm/W)の緑色発光を得ている。現在、様々な研究機関で開発が進められている有機EL素子は、基本的にこのイーストマン・コダック社の構成を踏襲しているといえる。
【0005】
有機EL素子の中でも、特に赤色発光を示す有機EL素子は、その有用性から様々な材料を用いた素子の研究が進められてきたが、ホスト材料の中に微量のドーパントを共蒸着などの方法によって混入させて発光層を形成し、ドーパントからの発光を得るという方法が有効な方法として検討されている。そのような例として、C.H.Chenら著,Macromol.Symp.,第125号,34〜36頁および49〜58頁,1997年発行に記載されている方法では、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウムをホスト材料に、DCM、DCJ、DCJT、DCJTBといった4H−ピラン誘導体をドーパントに用いて橙色から赤色の発光が得られる有機EL素子を報告している。
【0006】
また、赤色顔料として知られる1,4-ジケトピロロ(3,4-c)ピロール構造を有する化合物を用いた有機EL素子については、例えば、特開平2−296891号公報、特開平5−320633号公報、特開2001−139940号公報、WO03/048268号パンフレット、特開2003−155286号公報が知られている。
【0007】
近年では、EL素子用材料の開発は、さまざまな研究機関をはじめ多くの企業も開発を進めている。それゆえ、数多くの発明が知られているが、近年では新規な骨格に関するものは数少なくなっている。今後の産業の発展のためにも、新規な骨格の創出は非常に大きな役割を担っているといえる。
【0008】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,第51巻,913頁,1987年
【非特許文献2】Macromol.Symp.,第125号,34〜36頁および49〜58頁,1997年
【特許文献1】特開平2−296891号公報
【特許文献2】特開平5−320633号公報
【特許文献3】特開2001−139940号公報
【特許文献4】WO03/048268号パンフレット
【特許文献5】特開2003−155286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主たる目的は、新規な骨格の機能材料およびその製造法を提供することにある。さらには、該機能材料の有機EL素子用材料および有機EL素子への応用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題点を考慮し解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
【0011】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される化合物に関する。
【0012】
一般式(1)
【化1】

【0013】
[式中、R1は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアシル基を表す。
2、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、互いに独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよいアルキルオキシ基、または−NR1213である。ただし、R12とR13は、互いに独立に、水素原子、または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。
4は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアシル基、または−S(O)nR14を表す。ただし、nは0から3であり、R14は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子、または−NR1617である。R16とR17は、互いに独立に、水素原子、または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。
11は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、置換基を有してもよいアルキルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、−S(O)mR18、−NR1920、または−N2+(カウンターアニオンとしてハロゲンイオン、BF4-、PF6-、HSO4-を有するか、または一般式(1)で表される化合物2分子に対し1つのSO42-を有する)である。ただし、mは0から3であり、R18は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、またはハロゲン原子である。さらに、R19とR20は、互いに独立に、水素原子、または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。]
【0014】
また、本発明は、下記一般式(2)で表される化合物に関する。
【0015】
一般式(2)
【化2】




【0016】
[式中、R1は水素原子、アルキル基、またはアシル基を表す。
2、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、互いに独立に、水素原子、アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルオキシ基、または−NR1213である。ただし、R12とR13は、互いに独立に、水素原子、またはアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。
4は、水素原子、アルキル基、アシル基、または−S(O)nR14を表す。ただし、nは0から3であり、R14は、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、または−NR1617である。R16とR17は、互いに独立に、水素原子、または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。
11は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、−S(O)mR18、−NR1920、または−N2+(カウンターアニオンとしてハロゲンイオンを有する)である。ただし、mは0から3であり、R18は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはハロゲン原子である。さらに、R19とR20は、互いに独立に、水素原子、またはアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。]
【0017】
また、本発明は、R1が、水素原子である上記化合物に関する。
【0018】
また、本発明は、R4が、−SO221である上記化合物に関する。
【0019】
[ただし、R21はハロゲン原子または−NR2223である。R22とR23は、互いに独立に水素原子、炭素数が1から12のアルキル基であり、その炭素原子は1、2または3つの窒素原子または酸素原子に置換されていてもいい。]
また、本発明は、R11が、−NR2425である上記化合物に関する。
[ただし、R24とR25は互いに独立に水素原子または炭素数が1から12のアルキル基である。]
【0020】
また、本発明は、R1が、水素原子であり、R4が、−SO221であり、R11が、−NR2425である上記化合物に関する。
【0021】
また、本発明は、R2、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10が、水素原子である上記化合物に関する。
【0022】
また、本発明は、ジケトピロロピロールとクロロスルホン酸とを反応させてなる上記化合物の製造法に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の新規な骨格の機能材料およびその製造法を提供することにより、該機能材料のさまざまな用途への展開が可能となった。その一例として、エレクトロルミネッセンス素子用材料への応用について開示することができた。また、この材料を用いて作成した有機EL素子はフラットパネルディスプレイや平面発光体として好適に使用することができ、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の化合物は、前記一般式(1)で表されるイソインドール誘導体からなることを特徴としている。一般式(1)中、R1は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアシル基を表す。R2、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、互いに独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよいアルキルオキシ基、−NR1213である。ただし、R12とR13は互いに独立に水素原子または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。R4は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアシル基または−S(O)nR14を表す。ただし、nは0から3であり、R14は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または−NR1617である。R16とR17は互いに独立に水素原子または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。R11は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、置換基を有してもよいアルキルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、−S(O)mR18、−NR1920、−N2+(カウンターアニオンとしてハロゲンイオン、BF4-、PF6-、HSO4-を有するか、または一般式(1)で表される化合物2分子に対し1つのSO42-を有する)である。ただし、mは0から3であり、R18は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子である。さらに、R19とR20は互いに独立に水素原子または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。
【0025】
アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられる。
【0026】
アシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等が挙げられる。
【0027】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、ハロゲンイオンとしては、前記ハロゲン原子を1価のアニオンとしたものが挙げられる。
【0028】
アルキルオキシ基としては、炭素数1〜30のアルキルオキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシキ、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、エトキシカルボニルメチル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ基、アミノカルボニルメチルオキシ基、N,N−ジブチルアミノカルボニルメチルオキシ基、N−メチルアミノカルボニルメチルオキシ基、N−エチルアミノカルボニルメチルオキシ基、N−オクチルアミノカルボニルメチルオキシ基、N−メチル−N−ベンジルアミノカルボニルメチルオキシ基、ベンジルオキシ基、シアノメチルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
アリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−、およびp−トリル基、キシリル基、o−、m−、およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられる。
【0030】
アリールオキシ基としては、炭素数6〜30のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−クロロフェニルオキシ基、2−メチルフェニルオキシ基、2−メトキシフェニルオキシ基、2−ブトキシフェニルオキシ基、3−クロロフェニルオキシ基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシ基、3−シアノフェニルオキシ基、3−ニトロフェニルオキシ基、4−フルオロフェニルオキシ基、4−シアノフェニルオキシ基、4−メトキシフェニルオキシ基、4−ジメチルアミノフェニルオキシ基、4−メチルスルファニルフェニルオキシ基、4−フェニルスルファニルフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0031】
さらに、アルキル基、アシル基、アルキルオキシ基、アリール基、およびアリールオキシ基の水素原子はさらに他の置換基で置換されていても良い。
【0032】
そのような置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基等のアシル基、メチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p−トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基等のジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基、フリル基、チエニル基等の複素環基等の他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、トリメチルアンモニウミル基、ジメチルスルホニウミル基、トリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
【0033】
さらに、R12とR13、R19とR20はそれぞれ一体となって相互に結合した環状構造であってもよい。
【0034】
以上述べた本発明の化合物の具体例を表1に示す
(ただし、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはノルマルプロピル基、i−Prは2−プロピル基、Buはブチル基、Hexはヘキシル基、Tolはパラトリル基、Acはアセチル基、Bzはベンゾイル基、Phはフェニル基を表す)。
【0035】
表1
【表1】

【0036】
【表1】

【0037】
【表1】

【0038】
【表1】

【0039】
【表1】

【0040】
【表1】

【0041】
【表1】

【0042】
【表1】

【0043】
【表1】

【0044】
【表1】

【0045】
【表1】

【0046】
【表1】

【0047】
【表1】

【0048】
1が水素原子である化合物は、互変異性体として下記一般式(3)に示す骨格もとりうることが出来る。
【0049】
一般式(3)
【化3】

【0050】
また、本発明の化合物は有機EL素子用材料および有機EL素子へ応用することができ、特に発光層用の材料としての使用に適している。
【0051】
有機EL素子は、陽極と陰極間に一層または多層の有機層を形成した素子から構成されるが、ここで、一層型有機EL素子とは、陽極と陰極との間に発光層のみからなる素子を指す。一方、多層型有機EL素子とは、発光層の他に、発光層への正孔や電子の注入を容易にしたり、発光層内での正孔と電子との再結合を円滑に行わせたりすることを目的として、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子注入層などを積層させたものを指す。したがって、多層型有機EL素子の代表的な素子構成としては、(1)陽極/正孔注入層/発光層/陰極、(2)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極、(3)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極、(4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極、(5)陽極/正孔注入層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(7)陽極/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(8)陽極/発光層/電子注入層/陰極等の多層構成で積層した素子構成が考えられる。
【0052】
ここで、正孔注入層には、発光層に対して優れた正孔注入効果を示し、かつ陽極界面との密着性と薄膜形成性に優れた正孔注入層を形成できる正孔注入材料が用いられる。また、このような材料を多層積層させ、正孔注入効果の高い材料と正孔輸送効果の高い材料とを多層積層させた場合、それぞれに用いる材料を正孔注入材料、正孔輸送材料と呼ぶことがある。そのような正孔注入材料あるいは正孔輸送材料の例としては、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾールチオン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、テトラヒドロイミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、アシルヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、芳香族三級アミン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリシラン誘導体等があげられるが、素子作成に必要な薄膜を形成し、陽極からの正孔を注入ができて、正孔を輸送できる材料であれば、特にこれらに限定されるものではない。
【0053】
上記材料の中でも特に好適に使用することのできる正孔注入材料あるいは正孔輸送材料としては、芳香族三級アミン誘導体およびフタロシアニン誘導体があげられる。芳香族三級アミン誘導体としては、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン、およびこれら芳香族三級アミン骨格を有するオリゴマーまたはポリマーがあげられ、これらは正孔注入材料、正孔輸送材料いずれにも好適に使用することができる。また、フタロシアニン(Pc)誘導体としては、例えば、H2Pc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体があげられ、これらは特に正孔注入材料に好適に使用することができる。
【0054】
一方、電子注入層には、発光層に対して優れた電子注入効果を示し、かつ陰極界面との密着性と薄膜形成性に優れた電子注入層を形成できる電子注入材料が用いられる。そのような電子注入材料の例としては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、シロール誘導体、カルシウムアセチルアセトナート、酢酸ナトリウムなどがあげられる。また、セシウム等の金属をバソフェナントロリンにドープした無機/有機複合材料(高分子学会予稿集,第50巻,4号,660頁,2001年発行に記載)や第50回応用物理学関連連合講演会講演予稿集、No.3、1402頁、2003年発行記載のBCP、TPP、T5MPyTZ等も電子注入材料の例としてあげられるが、素子作成に必要な薄膜を形成し、陰極からの電子を注入できて、電子を輸送できる材料であれば、特にこれらに限定されるものではない。
【0055】
上記電子注入材料の中でも特に効果的な電子注入材料としては、金属錯体化合物または含窒素五員環誘導体があげられる。本発明に使用可能な電子注入材料の内、好ましい金属錯体化合物としては、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)クロロアルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(o−クレゾラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2、4−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2、5−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム等のガリウム錯体化合物の他、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物があげられる。
【0056】
また、使用可能な電子注入材料の内、好ましい含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体があげられ、具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5 −フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4’−tert− ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等があげられる。
【0057】
さらに、正孔阻止層には、発光層を経由した正孔が電子注入層に達するのを防ぎ、薄膜形成性に優れた層を形成できる正孔阻止材料が用いられる。そのような正孔阻止材料の例としては、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物や、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(4−フェニルフェノラート)ガリウム等のガリウム錯体化合物、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等の含窒素縮合芳香族化合物があげられる。
【0058】
また、本発明の化合物を有機EL素子用材料として発光層に使用する場合、他のホスト材料やドーパントを含有していても構わない。この場合、ドーパントの濃度はホスト材料に対して0.001〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、0.01〜10重量%の範囲で含有されることがより好ましく、0.1〜5重量%の範囲で含有されることがさらに好ましい。
【0059】
本発明の化合物を発光層に用いた有機EL素子における発光層中には、本発明の化合物の他に、必要に応じて、他の発光材料やドーピング材料のみならず、先に述べた正孔注入材料や電子注入材料を二種類以上組み合わせて使用することもできる。また、正孔注入層、発光層、電子注入層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良い。
【0060】
さらに、有機EL素子の陽極に使用される材料は、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等の金属およびそれらの合金、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の導電性金属酸化物、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性ポリマー等があげられる。特に有機EL素子の陽極に使用される導電性材料としては、できるだけ抵抗値の低いものが好ましく、ITOガラス、NESAガラスが好適に使用される。
【0061】
また、有機EL素子の陰極に使用される材料は、電子を効率よく有機EL素子に注入できる材料であれば特に限定されないが、一般に、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびこれらの合金があげられる。ここで、合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例としてあげられるが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの低仕事関数金属を含む合金が好ましい。また、フッ化リチウムのような無機塩を上記低仕事関数金属の替わりに使用することも可能である。また、これら陰極の作成方法としては、抵抗加熱、電子線ピーム照射、スパッタリング、イオンプレーティング、コーティングなどの業界公知の方法で作成することができる。以上述べた陽極および陰極は、必要に応じて二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0062】
有機EL素子からの発光を効率よく取り出すためには、発光を取り出す面の基板の材質が充分透明であることが望ましく、具体的には素子からの発光の発光波長領域における透過率が50%以上、好ましくは90%以上であることが望ましい。これら基板は、機械的、熱的強度を有し、透明であれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラスの他、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン等の透明性ポリマーが推奨される。
【0063】
また、有機EL素子の各層の形成方法としては、真空蒸着、電子線ピーム照射、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法、もしくはスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれかの方法を適用することができる。各層の膜厚は特に限定されるものではないが、膜厚が厚すぎると一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要となり効率が悪くなり、逆に膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生し、電界を印加しても充分な発光輝度が得にくくなる。したがって、各層の膜厚は、1nmから1μmの範囲が適しているが、10nmから0.2μmの範囲がより好ましい。
【0064】
また、有機EL素子の温度、湿度、雰囲気等に対する安定性向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、樹脂等により素子全体を被覆や封止を施したりしても良い。特に素子全体を被覆や封止する際には、光によって硬化する光硬化性樹脂が好適に使用される。
【0065】
以上述べたように、本発明の化合物を有機EL素子用材料として用いた有機EL素子は、低い駆動電圧で高い色純度と輝度を示す赤色発光を得ることが可能である。故に、本有機EL素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや平面発光体として、さらには、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が考えられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記のみに限定されるものではない。%は、特に断らない限り、重量%を示す。
【0067】
実施例1
化合物(1)の合成
氷冷下、下に示す化合物(I)50gに四塩化炭素1000mLを加えた。クロロスルホン酸200gを2時間かけて滴下した後、55℃で1時間攪拌する。そこに、塩化チオニル75gを滴下し、さらに2時間攪拌した。室温まで冷却した後、氷500gにあけ、有機層を分離した。再沈殿により、化合物(1)を40g得た。今後の反応において、特に問題のない限り、室温まで冷却した反応混合物の四塩化炭素溶液を次の反応に用いることができる。
【0068】
化合物(I)
【化4】

【0069】
実施例2
化合物(2)の合成
化合物(1)5.21gを、THF50mLと蒸留水200mLの混合溶媒中、80℃で5時間攪拌した。反応液を室温に冷却した後、ろ過することにより化合物(2)を4.33g得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0070】
実施例3
化合物(3)の合成
オートクレーブ中、化合物(2)10.4gと希硫酸200mLとを150℃で3時間加熱した。反応液を、氷500g中にあけ、ろ過することにより化合物(3)を9.78g得た。同定は、1H−NMR、MALDI−TOFMSおよび単結晶X線構造解析で行った。単結晶X線構造解析から得られたORTEP図を図1に示す。
【0071】
実施例4
化合物(35)の合成
化合物(3)11.2gをジメチルスルホキシド40mL中に溶解させ、トリエチルアミンを17.1mL加え、攪拌した。ビス(2−ブロモエチル)エーテル6.7mLをジメチルスルホキシド30mLに溶解させたものを、室温にて15分かけて滴下した。室温で72時間攪拌した後、酢酸エチルで抽出し、化合物(35)を10.5g得た。同定は、1H−NMR、13C−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0072】
実施例5
化合物(49)の合成
化合物(3)28.2gとリン酸トリメチル14.8gとを混合し、150℃で45分攪拌した。反応液を室温まで冷却した。そこに、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム20gを蒸留水100mLに溶解させたもの)を加え、室温で激しく攪拌した。徐々に発熱がはじまるので、反応液の温度が、50℃を超えないように冷却する。3時間攪拌した後、反応混合物をクロロホルムで抽出し、カラムクロマトグラフィーにより化合物(49)を12.9g得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0073】
実施例6
化合物(7)の合成
化合物(3)11.5gに氷250gを加え、濃塩酸50mLを徐々に加えた。反応液の温度が5℃以下になるように保ちながら、亜硝酸ナトリウム3.3gの水溶液20mLを30分かけて滴下した。氷冷下で3時間攪拌した後、析出分を低温ですばやくろ過することにより化合物(7)を得た。これ以降、化合物(7)を用いる合成反応は、このサンプルを低温化で速やかに次の反応に用いた。
【0074】
実施例7
化合物(8)の合成
化合物(3)48gから、実施例6に従って準備した化合物(7)をトルエン30mLに溶解させ、シアン化銅(I)15.4gを加え氷冷下で1時間攪拌した。徐々に昇温し、室温でさらに5時間攪拌した。反応混合物をメタノールにて再沈殿することにより、化合物(8)を30g得た。同定は、1H−NMR、13C−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0075】
実施例8
化合物(9)の合成
化合物(3)5.2gから、実施例6に従って準備した化合物(7)を氷冷下でトルエンに溶解させ、テトラフルオロホウ酸(純度約42%)4.1gを徐々に加えた。氷冷下で2時間攪拌した後、ガスの発生がなくなるまで加熱攪拌した。反応混合物を、酢酸エチルで抽出することにより、化合物(9)を2.1g得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0076】
実施例9
化合物(11)の合成
臭化銅(I)7.8gをHBr48%水溶液30mL中で攪拌する。そこに、化合物(3)15.9gから、実施例(6)に従って準備した化合物(7)を加え氷冷下で1時間攪拌した。徐々に昇温し、室温で2時間反応させたのち、50℃で2時間反応させた。反応混合物を、酢酸エチルで抽出することにより、化合物(11)を8.3g得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0077】
実施例10
化合物(12)の合成
化合物(3)6.0gから、実施例6に従って準備した化合物(7)の水溶液に、ヨウ化カリウム3.58gを加え12時間室温で攪拌する。反応混合物を、酢酸エチルで抽出することにより、化合物(12)を5.8g得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0078】
実施例11
化合物(51)の合成
化合物(3)3.8gから、実施例6に従って準備した化合物(7)の水溶液を、40℃で24時間攪拌した。析出分をろ過することにより、化合物(51)を2.9g得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0079】
実施例12
化合物(14)の合成
化合物(3)2.2gから、実施例6に従って準備した化合物(7)に、1−ヘキサノール10mLを加え、室温で4時間、40℃で6時間攪拌した。反応混合物を、酢酸エチルで抽出することにより、化合物(14)を1.1g得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0080】
実施例13
化合物(15)の合成
化合物(3)2.6gから、実施例6に従って準備した化合物(7)の水溶液に、次亜リン酸溶液を30mL加え、氷冷下で10時間攪拌した。析出物をろ過することにより、化合物(15)を1.9g得た。同定は、1H−NMR、13C−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0081】
実施例14
化合物(16)の合成
1−ヘキサノール10mLのかわりに、15%メチルメルカプタンナトリウム水溶液15mL用いること以外は実施例12と同様にして、化合物(16)を1.8g得た。同定は、1H−NMR、13C−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0082】
実施例15
化合物(17)の合成
化合物(16)4.6gを氷酢酸30mL中に加え、30%過酸化水素水6mLを氷冷下で滴下する。滴下終了後、速やかに室温まで昇温し、10時間攪拌した。反応混合物を、酢酸エチルで抽出することにより、化合物(17)を1.1g得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0083】
実施例16
化合物(46)の合成
化合物(16)4.4gをジクロロメタン200mL中に溶解し、−78℃に冷却する。そこに、MCPBA2.4gのジクロロメタン20mL溶液を20分かけて滴下し、1時間攪拌した。室温に昇温後、5時間攪拌し、酢酸エチルで抽出することにより、化合物(46)を3.6g得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0084】
実施例17
化合物(74)の合成
メチルメルカプタンナトリウム水溶液の代わりに、トルエンチオールを用いたこと以外は、実施例14と同様にして、化合物(74)を得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0085】
実施例18
化合物(20)の合成
実施例15と同様にして、化合物(20)を得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0086】
実施例19
化合物(21)の合成
実施例16と同様にして、化合物(21)を得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0087】
実施例20
化合物(22)の合成
シアン化銅のかわりに、亜硝酸ナトリウムを用いたこと以外は実施例7と同様にして化合物(22)を得た。同定は、11H−NMR、13C−NMR、FT−IRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0088】
実施例21
化合物(42)の合成
化合物(1)5.2gをTHF30mLに溶解させ、氷冷下で攪拌する。水素化ホウ素ナトリウム4.0gを少量ずつ加え、氷冷下で3時間攪拌した。室温に昇温後、さらに3時間攪拌した。反応混合液を、酢酸エチルで抽出することにより、化合物(42)を1.3g得た。同定は、1H−NMR、13C−NMR、FT−IRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0089】
実施例22
化合物(132)の合成
化合物(I)1.3gから、実施例1に従って準備した化合物(1)のTHF溶液に、アジ化ナトリウム0.25gの水溶液10mLを氷冷下で10分かけて滴下した。室温に昇温した後、18時間激しく攪拌し、析出物をろ過することにより、化合物(29)を1.0g得た。同定は、1H−NMR、FT−IRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0090】
実施例23
化合物(57)の合成
化合物(I)2.8gから、実施例1に従って準備した化合物(1)のTHF溶液に、ヒドラジン一水和物1.73gの水溶液5mLを氷冷下で滴下し、4時間激しく攪拌した。酢酸エチルで抽出し、再沈殿することにより、化合物(57)を2.0g得た。同定は、1H−NMR、FT−IRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0091】
実施例24
化合物(36)の合成
化合物(I)5.8gから、実施例1に従って準備した化合物(1)の四塩化炭素溶液に、ジエチルアミン3.0gのTHF8mL溶液を氷冷下で30分かけて滴下する。40℃に昇温した後、さらに1時間攪拌し、再沈殿することにより、化合物(36)を2.0g得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0092】
実施例25
化合物(56)の合成
ジエチルアミンのかわりに、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンを用いたこと以外は、実施例24と同様にして化合物(56)を得た。同定は、1H−NMR、13C−NMR、FT−IRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0093】
実施例26
化合物(50)の合成
ジエチルアミンのかわりに、メタノールを用いたこと以外は、実施例24と同様にして化合物(50)を得た。同定は、1H−NMR、13C−NMR、FT−IRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0094】
実施例27〜実施例62
ジエチルアミンのかわりに、表2に示すアミンを用いたこと以外は、実施例24と同様にして化合物(94)〜化合物(129)を得た。同定は、1H−NMRおよびMALDI−TOFMSで行った。ただし、表中Meはメチル基、Etはエチル基、Prはノルマルプロピル基、i-Prは2−プロピル基、Buはブチル基を表す)。
【0095】
表2
【表2】

【0096】
【表2】

【0097】
実施例63
化合物(13)の合成
化合物(119)0.5gをDMF10mLに溶解させた。そこに、細かくすりつぶしたNaOHを1.2g加えた。室温で30分攪拌した後、ヨウ化メチル5gを3回に分けて滴下した。3時間反応させた後、クロロホルムを用いて抽出し、再沈殿により、化合物(13)を0.32g得た。同定は、1H−NMR、13C−NMR、FT−IRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0098】
実施例64
化合物(130)の合成
化合物(56)を用いたこと以外、実施例63と同様にして化合物(130)を得た。同定は、1H−NMR、13C−NMR、FT−IRおよびMALDI−TOFMSで行った。
【0099】
実施例65
化合物(131)の合成
化合物(53)5.2gをピリジン150mLに溶解させ氷冷する。30分後、ベンゾイルクロライド2.8gを15分かけて滴下する。滴下終了後、室温まで昇温し、さらに5時間攪拌した。クロロホルムを用いて抽出し、再沈殿により、化合物(131)を2.8g得た。同定は、1H−NMR、13C−NMR、FT−IRおよびMALDI−TOFMSで行った。
これらの合成法を応用することにより合成した、化合物(1)から化合物(131)のMALDI-TOFMS測定における計算値(m/z)と実測値を表3に示す。
【0100】
表3
【表3】

【0101】
【表3】

注1:生成物が不安定なため、N,N-ジメチルアニリンとカップリングさせ、下記化合物(II)として単離し、測定を行った。
【0102】
化合物(II)
【化5】

【0103】
本発明の化合物を有機EL素子用材料として用いた有機EL素子の応用例
応用例1〜16
洗浄したITO電極付きガラス板上に、NPDを真空蒸着して膜厚40nmの正孔輸送層を得た。次いで、表3に示す化合物とAlq3とを5:95(重量比)の組成比で共蒸着して膜厚40nmの発光層を得た。次いでトリスAlq3を蒸着して膜厚40nmの電子注入層を得た。さらにその上に、LiFを0.2nm蒸着した後、Alを蒸着して膜厚200nmの電極を形成して有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行い、7Vで駆動した時の素子の発光輝度および最大輝度を表4に示す。
【0104】
表4
【表4】

【0105】
これらの応用例から、本発明の化合物はEL素子用材料としても有効に機能することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は化合物(3)の単結晶X線構造解析から得られたORTEP図である。
【図2】図2は化合物(56)の単結晶X線構造解析から得られたORTEP図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
【化1】






[式中、R1は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアシル基を表す。
2、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、互いに独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよいアルキルオキシ基、または−NR1213である。ただし、R12とR13は、互いに独立に、水素原子、または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。
4は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアシル基、または−S(O)nR14を表す。ただし、nは0から3であり、R14は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子、または−NR1617である。R16とR17は、互いに独立に、水素原子、または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。
11は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、置換基を有してもよいアルキルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、−S(O)mR18、−NR1920、または−N2+(カウンターアニオンとしてハロゲンイオン、BF4-、PF6-、HSO4-を有するか、または一般式(1)で表される化合物2分子に対し1つのSO42-を有する)である。ただし、mは0から3であり、R18は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、またはハロゲン原子である。さらに、R19とR20は、互いに独立に、水素原子、または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表される化合物。
一般式(2)
【化2】






[式中、R1は水素原子、アルキル基、またはアシル基を表す。
2、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、互いに独立に、水素原子、アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルオキシ基、または−NR1213である。ただし、R12とR13は、互いに独立に、水素原子、またはアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。
4は、水素原子、アルキル基、アシル基、または−S(O)nR14を表す。ただし、nは0から3であり、R14は、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、または−NR1617である。R16とR17は、互いに独立に、水素原子、または置換基を有してもよいアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。
11は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、−S(O)mR18、−NR1920、または−N2+(カウンターアニオンとしてハロゲンイオンを有する)である。ただし、mは0から3であり、R18は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはハロゲン原子である。さらに、R19とR20は、互いに独立に、水素原子、またはアルキル基であり、互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項3】
1が、水素原子である請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
4が、−SO221である請求項1または2記載の化合物。
[ただし、R21はハロゲン原子または−NR2223である。R22とR23は、互いに独立に水素原子、炭素数が1から12のアルキル基であり、その炭素原子は1、2または3つの窒素原子または酸素原子に置換されていてもいい。]
【請求項5】
11が、−NR2425である請求項1または2記載の化合物。
[ただし、R24とR25は互いに独立に水素原子または炭素数が1から12のアルキル基である。]
【請求項6】
1が、水素原子であり、R4が、−SO221であり、R11が、−NR2425である請求項1または2記載の化合物。
【請求項7】
2、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10が、水素原子である請求項1または2記載の化合物。
【請求項8】
ジケトピロロピロールとクロロスルホン酸とを反応させてなる請求項1〜7いずれか記載の化合物の製造法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−277221(P2007−277221A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20348(P2007−20348)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】