説明

ベンゾフルオランテン化合物及びそれを用いた有機薄膜太陽電池

【課題】有機エレクトロニクス材料、特に、有機薄膜太陽電池用材料好適な化合物を提供する。
【解決手段】下記式(A)で表されるベンゾフルオランテン化合物。


(式中、R〜R12はそれぞれ、水素、ハロゲン、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、R〜R12のうち隣り合うものは互いに結合して環を形成してもよく、この環は置換基を有していてもよい。
〜R12のうち少なくともひとつは、所定のアミノ基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾフルオランテン化合物及びそれを用いた有機薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池は、光信号を電気信号に変換するフォトダイオードや撮像素子、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池に代表されるように、光入力に対して電気出力を示す装置であり、電気入力に対して光出力を示すエレクトロルミネッセンス(EL)素子とは逆の応答を示す装置である。中でも太陽電池は、化石燃料の枯渇問題や地球温暖化問題を背景に、クリーンエネルギー源として近年大変注目されてきており、研究開発が盛んに行なわれるようになってきた。
従来、実用化されてきたのは、単結晶Si、多結晶Si、アモルファスSi等に代表されるシリコン系太陽電池であるが、高価であることや原料Siの不足問題等が表面化するにつれて、次世代太陽電池への要求が高まりつつある。このような背景の中で、有機太陽電池は、安価で毒性が低く、原材料不足の懸念もないことから、シリコン系太陽電池に次ぐ次世代の太陽電池として大変注目を集めている。
【0003】
有機太陽電池は、基本的には電子を輸送するn層と正孔を輸送するp層を有しており、各層を構成する材料によって大きく2種類に分類される。
n層として、チタニア等の無機半導体表面にルテニウム色素等の増感色素を単分子吸着させ、p層として電解質溶液を用いたものは、色素増感太陽電池(所謂グレッツエルセル)と呼ばれている。変換効率の高さから、1991年以降精力的に研究されてきたが、溶液を用いるため、長時間の使用に際して液漏れする等の欠点を有していた。
そこで、このような欠点を克服するため、最近、電解質溶液を固体化して全固体型の色素増感太陽電池を模索する研究がなされている。しかしながら、多孔質チタニアの細孔に有機物をしみ込ませる技術は難易度が高く、再現性よく高変換効率が発現できるセルは完成していないのが現状である。
一方、n層、p層ともに有機薄膜からなる有機薄膜太陽電池は、全固体型のため液漏れ等の欠点がなく、作製が容易であり、稀少金属であるルテニウム等を用いないこと等から最近注目を集め、精力的に研究がなされている。
【0004】
有機薄膜太陽電池は、最初メロシアニン色素等を用いた単層膜で研究が進められてきたが、p層/n層の多層膜にすることで変換効率が向上することが見出され、それ以降多層膜が主流になってきている。このとき用いられた材料はp層として銅フタロシアニン(CuPc)、n層としてペリレンイミド類(PTCBI)であった。
【0005】
その後、p層とn層の間にi層(p材料とn材料の混合層)を挿入して積層を増やすことにより、変換効率が向上することが見出された。しかしこのとき用いられた材料は、依然としてフタロシアニン類とペリレンイミド類であった。またその後、p/i/n層を何層も積層するというスタックセル構成によりさらに変換効率が向上することが見出されたが、このときの材料系はフタロシアニン類とC60であった。
【0006】
一方、高分子を用いた有機薄膜太陽電池では、p材料として導電性高分子を用い、n材料としてC60誘導体を用いてそれらを混合し、熱処理することによりミクロ層分離を誘起してヘテロ界面を増やし、変換効率を向上させるという、所謂バルクヘテロ構造の研究が主に行なわれてきた。ここで用いられてきた材料系はおもに、p材料としてP3HTと呼ばれる可溶性ポリチオフェン誘導体、n材料としてPCBMと呼ばれる可溶性C60誘導体であった。
【0007】
このように、有機薄膜太陽電池では、セル構成及びモルフォロジーの最適化により変換効率の向上がもたらされてきたが、そこで用いられる材料系は初期の頃からあまり進展がなく、依然としてフタロシアニン類、ペリレンイミド類、C60類が用いられてきた。従って、それらに代わる新たな材料系の開発が熱望されていた。
【0008】
一般に有機太陽電池の動作過程は、(1)光吸収及び励起子生成、(2)励起子拡散、(3)電荷分離、(4)キャリア移動、(5)起電力発生の素過程からなっている。有機物は概して太陽光スペクトルに合致する吸収特性を示すものが多くないため、高い変換効率は達成できないことが多かった。この点について、例えば、有機EL素子の開発が近年精力的に行なわれるようになり、その中から優れた正孔輸送材料及び正孔注入材であるアミン化合物が見出された。このようなアミン化合物は優れた正孔輸送特性を有するため、有機薄膜太陽電池用のp材料として使用できる可能性を有している。しかしながら、可視光領域に光吸収を示さないため、太陽光スペクトルに対する吸収特性が不十分であり、光電変換効率が十分ではないという欠点を有していた。
【0009】
ところで、一般に、有機化合物が可視光領域に吸収を持つようにするためには、π電子共役系を拡大して吸収極大波長を長波長化すればよいことが知られている。ただし、あまりに共役系を拡張して分子量が大きくなりすぎると、溶媒に対する溶解性が低下して精製が困難になったり、昇華温度が上昇して昇華精製できなくなる等の難点が顕在化してくる。そこで、ある程度分子量を抑えながら効率的に吸収波長を長波長化した化合物の例として、ポリアセン類が知られている。
例えば、特許文献1及び2にはポリアセン類を太陽電池材料に適用する技術が開示されている。しかしながら、一般にポリアセン類は、可視吸収領域を広げるために縮環数を増やすと、光や酸素に対して不安定になるため、精製や取り扱いが困難になり、高純度化も困難である等の欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−335760号公報
【特許文献2】特開2008−34764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、有機エレクトロニクス材料として有用な化合物を提供することである。特に、有機薄膜太陽電池に用いたときに高効率の光電変換特性を示す化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、以下のベンゾフルオランテン化合物等が提供される。
1.下記式(A)で表されるベンゾフルオランテン化合物。
【化1】

(式中、R〜R12はそれぞれ、水素、ハロゲン、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、R〜R12のうち隣り合うものは互いに結合して環を形成してもよく、この環は置換基を有していてもよい。
〜R12のうち少なくともひとつは、下記式(S)で表されるアミノ基である。)
【化2】

(式中、R及びRはそれぞれ、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基又はC〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基である。)
2.下記式(B)で表される1に記載のベンゾフルオランテン化合物。
【化3】

(式中、R〜R14はそれぞれ、水素、ハロゲン、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基である。
〜R14のうち少なくともひとつは、前記式(S)で表されるアミノ基である。)
3.下記式(C)で表される1に記載のベンゾフルオランテン化合物。
【化4】

(式中、R〜R14はそれぞれ、水素、ハロゲン、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基である。
〜R14のうち少なくともひとつは、前記式(S)で表されるアミノ基である。)
4.前記R又はRが、C〜C40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基である1〜3のいずれかに記載のベンゾフルオランテン化合物。
5.前記R13が、C〜C40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基である3に記載のベンゾフルオランテン化合物。
6.上記1〜5のいずれかに記載のベンゾフルオランテン化合物からなる有機薄膜太陽電池材料。
7.上記6に記載の材料を含む有機薄膜太陽電池。
8.一対の電極の間に、少なくともp層を有し、前記p層が6に記載の材料を含有する7に記載の有機薄膜太陽電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明のベンゾフルオランテン化合物は、有機エレクトロニクス材料に用いることができる。特に、有機薄膜太陽電池材料として用いたときに高効率のエネルギー変換特性を示す有機薄膜太陽電池が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の化合物は、下記式(A)で表されるベンゾフルオランテン化合物である。
【化5】

【0015】
式(A)中、R〜R12はそれぞれ、水素、ハロゲン、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基である。
〜R12のうち隣り合うものは互いに結合してベンゼン環等の環を形成してもよい。この環は置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したR〜R12と同様な基や後述する式(S)で表されるアミノ基が挙げられる。
【0016】
本発明の化合物では、式(A)のR〜R12のうち少なくともひとつは、下記式(S)で表されるアミノ基である。
【化6】

式(S)において、R及びRはそれぞれ、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基又はC〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基である。
【0017】
式(A)で表されるベンゾフルオランテン化合物のうち、下記式(B)又は(C)で表される化合物(ジベンゾフルオランテン化合物)が好ましい。
【0018】
【化7】

【0019】
式中、R〜R14はそれぞれ、上記式(A)のR〜R12と同様な基である。R〜R14のうち少なくともひとつは、上記式(S)で表されるアミノ基である。
【0020】
式(A)〜(C)のR〜R14について、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよい。具体例としては、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、2−エチルヘキシル、3,7−ジメチルオクチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ノルボルニル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ベンジル、α,α−ジメチルベンジル、2−フェニルエチル、1−フェニルエチル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル等が好ましい。
【0021】
〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、オレイル、エイコサペンタエニル、ドコサヘキサエニル、スチリル、2,2−ジフェニルビニル、1,2,2−トリフェニルビニル、2−フェニル−2−プロペニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、ビニル、スチリル、2,2−ジフェニルビニル等が好ましい。
【0022】
〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、エテニル、プロピニル、2−フェニルエテニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、エテニル、2−フェニルエテニル等が好ましい。
【0023】
〜C40の置換もしくは無置換のアリール基の具体例としては、フェニル、2−トリル、4−トリル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−シアノフェニル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、ターフェニリル、3,5−ジフェニルフェニル、3,4−ジフェニルフェニル、ペンタフェニルフェニル、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル、フルオレニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アントリル、2−アントリル、9−フェナントリル、1−ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、コロニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フェニル、4−ビフェニリル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−フェナントリル等が好ましい。
【0024】
〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基について、含窒素アゾール系へテロ環の場合の結合位置は、炭素だけでなく窒素で結合することができる。それらの具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、ベンズピラゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フラン、チオフェン、ピリジン、カルバゾール等が好ましい。
【0025】
〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メトキシ、エトキシ、1−プロピルオキシ、2−プロピルオキシ、1−ブチルオキシ、2−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、1−アダマンチルオキシ、2−アダマンチルオキシ、ノルボルニルオキシ、トリフルオロメトキシ、ベンジロキシ、α,α−ジメチルベンジロキシ、2−フェニルエトキシ、1−フェニルエトキシ等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、メトキシ、エトキシ、ter−ブチルオキシ等が好ましい。
【0026】
〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、前記アリール基が酸素を介して結合した置換基が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フェノキシ、ナフトキシ、フェナントリルオキシ等が好ましい。
【0027】
上記式(S)で表されるアミノ基のR及びRにおいて、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基又はC〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基の例としては、上述した上記式(A)〜(C)のR〜R14と同様な基が挙げられる。
式(S)で表されるアミノ基の具体例としては、メチルフェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジp−トリルアミノ、ジm−トリルアミノ、フェニルm−トリルアミノ、フェニル−1−ナフチルアミノ、フェニル−2−ナフチルアミノ、フェニル(sec−ブチルフェニル)アミノ、フェニルt−ブチルアミノ、ビス(4−メトキシフェニル)アミノ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ、ビス(2−メトキシエチル)アミノ、ピペリジノ、モルホリノ等を挙げることができる。
これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ビス(4−メトキシフェニル)アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ピペリジノ等が好ましい。
【0028】
本発明の化合物としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
【化8】

【0029】
本発明の化合物の合成は、種々の経路が考えられるが、中でもフェナントレン誘導体を閉環する合成経路は、原料が入手し易いこと、反応条件が温和なこと、高収率で目的物を与えること等から好ましい。合成経路の一例を示す。
【化9】

【0030】
式中、R〜R14はそれぞれ、上記式(A)〜(C)と同様な基である。Xは、ヨウ素、臭素、塩素等のハロゲンもしくはトリフルオロメタンスルホニルオキシ(トリフリルオキシ)基、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ(ノナフリルオキシ)基、トルエンスルホニルオキシ(トシルオキシ)基、メタンスルホニルオキシ(メシルオキシ)基等の擬ハロゲン基を表す。これらのうち原料の入手しやすさ等から塩素、臭素等のハロゲン類が好ましい。
【0031】
閉環反応に用いる触媒としては、種々の金属と配位子の組み合わせを用いることができる。金属種については、高収率を与えるという面でニッケルやパラジウムが好ましく、例えば、塩化ニッケル、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ニッケルテトラカルボニル、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、ニッケロセン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム等を挙げることができる。
また、配位子については、トリフェニルホスフィン、トリo−トリルホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(XantPhos)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)、トリt−ブチルホスフィン、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(JohnPhos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル(DavePhos)、2−(2−ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,6’−ジメトキシビフェニル(S−Phos)、2−(2−ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(X−Phos)等のホスフィン類が好ましい。
【0032】
反応に際しては、塩基を加えることが好ましいが、この際に用いることのできる塩基としては、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩、ナトリウムt−ブトキシド等のアルコキシド類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(Huenig’s base)、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の有機塩基類が挙げられるが、高収率を与えるという面でジアザビシクロウンデセン等の有機塩基類が好ましい。
【0033】
また、塩基の反応性を高めるために相間移動触媒を加えることも可能である。相間移動触媒としては、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
このような好ましい合成経路を選択する場合、原料が入手しやすいこと、少ない合成ステップ数で合成できること、温和な反応条件で高収率を与えること等から、本発明におけるアミノ基の置換位置は、反応式I〜IIIにおいては上記式(A)〜(C)のR又はRであることが好ましく、また、反応式IIIにおいてはR13であることが好ましい。
【0034】
本発明のベンゾフルオランテン化合物は、有機エレクトロニクス材料に用いることができる。特に、有機薄膜太陽電池材料として好適である。
本発明の化合物を、有機薄膜太陽電池の部材に使用する場合、部材は本発明の化合物単独から形成されていてもよいし、本発明の化合物と他の成分の混合物から形成されていてもよい。
本発明の有機薄膜太陽電池材料を用いた有機薄膜太陽電池は、高効率の変換特性を示す。
【0035】
本発明の有機薄膜太陽電池のセル構造は、一対の電極の間に本発明の化合物を含有する構造であれば特に限定されるものでない。具体的には、安定な絶縁性基板上に下記の構成を有する構造が挙げられる。
(1)下部電極/有機化合物層/上部電極
(2)下部電極/p層/n層/上部電極
(3)下部電極/p層/i層(又はp材料とn材料の混合層)/n層/上部電極
(4)下部電極/p材料とn材料の混合層/上部電極
及び上記(2)、(3)の構成のp層とn層を置換した構造が挙げられる。
【0036】
また、必要に応じて、電極と有機層の間にバッファー層を設けてもよい。例えば具体例として、上記構成(1)にバッファー層を設けた場合、下記構成を有する構造が挙げられる。
(5)下部電極/バッファー層/p層/n層/上部電極
(6)下部電極/p層/n層/バッファー層/上部電極
(7)下部電極/バッファー層/p層/n層/バッファー層/上部電極
【0037】
本発明の有機薄膜太陽電池用材料は、例えば、有機化合物層、p層、n層、i層、p材料とn材料の混合層、バッファー層に使用できる。特に、p層の材料として使用することが好ましい。
【0038】
本発明の有機薄膜太陽電池では、電池を構成するいずれかの部材に本発明の材料を含有していればよい。また、本発明の材料を含有する部材は、他の成分を併せて含んでいてもよい。本発明の材料を含まない部材や混合材料については、有機薄膜太陽電池で使用される公知の部材や材料を使用することができる。以下、各構成部材について簡単に説明する。
【0039】
1.下部電極、上部電極
下部電極、上部電極の材料は特に制限はなく、公知の導電性材料を使用できる。例えば、p層と接続する電極としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)や金(Au)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)等の金属が使用でき、n層と接続する電極としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、カルシウム(Ca)、白金(Pt)、リチウム(Li)等の金属や、Mg:Ag、Mg:InやAl:Li等の二成分金属系,さらには上記p層と接続する電極例示材料が使用できる。
【0040】
尚、高効率の光電変換特性を得るためには、例えば有機薄膜太陽電池が太陽電池の場合、太陽電池の少なくとも一方の面は太陽光スペクトルにおいて充分透明にすることが望ましい。透明電極は、公知の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように形成する。受光面の電極の光透過率は10%以上とすることが望ましい。一対の電極構成の好ましい構成では、電極部の一方が仕事関数の大きな金属を含み、他方は仕事関数の小さな金属を含む。
【0041】
2.有機化合物層
p層、p材料とn材料の混合層又はn層のいずれかである。本発明の材料を有機化合物層に使用するとき、具体的には、下部電極/本発明の材料の単独層/上部電極や、下部電極/本発明の材料と、後述するn層材料又はp層材料の混合層/上部電極等の構成が挙げられる。
【0042】
3.p層、n層、i層
本発明の材料をp層に用いるときは、n層は特に限定されないが、電子受容体としての機能を有する化合物が好ましい。例えば有機化合物であれば、C60、C70等のフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドン等、高分子系ではCN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV、−CN基又はCF基含有ポリマー、それらの−CF置換ポリマー、ポリ(フルオレン)誘導体等を挙げることができる。電子の移動度が高い材料が好ましい。さらに、好ましくは、電子親和力が小さい材料が好ましい。このように電子親和力の小さい材料をn層として組み合わせることで充分な開放端電圧を実現することができる。
【0043】
また、無機化合物であれば、n型特性の無機半導体化合物を挙げることができる。具体的には、n−Si、GaAs、CdS、PbS、CdSe、InP、Nb、WO、Fe等のドーピング半導体及び化合物半導体、また、二酸化チタン(TiO)、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti)等の酸化チタン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の導電性酸化物が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、酸化チタン、特に好ましくは、二酸化チタンを用いる。
【0044】
本発明の材料をn層に用いるときは、p層は特に限定されないが、正孔受容体としての機能を有する化合物が好ましい。例えば有機化合物であれば、N,N’−ビス(3−トリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(mTPD)、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)、4,4’,4’’−トリス(フェニル−3−トリルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等に代表されるアミン化合物、フタロシアニン(Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、チタニルフタロシアニン(TiOPc)等のフタロシアニン類、オクタエチルポルフィリン(OEP)、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)、亜鉛テトラフェニルポルフィリン(ZnTPP)等に代表されるポルフィリン類、高分子化合物であれば、ポリヘキシルチオフェン(P3HT)、メトキシエチルヘキシロキシフェニレンビニレン(MEHPPV)等の主鎖型共役高分子類、ポリビニルカルバゾール等に代表される側鎖型高分子類等が挙げられる。
【0045】
本発明の材料をi層に用いるときは、上記p層化合物もしくはn層化合物と混合してi層を形成してもよいが、本発明の材料を単独でi層として用いることもできる。その場合のp層もしくはn層は、上記例示化合物のいずれも用いることができる。
【0046】
4.バッファー層
一般に、有機薄膜太陽電池は総膜厚が薄いことが多く、そのため上部電極と下部電極が短絡し、セル作製の歩留まりが低下することが多い。このような場合には、バッファー層を積層することによってこれを防止することが好ましい。
【0047】
バッファー層に好ましい化合物としては、膜厚を厚くしても短絡電流が低下しないようにキャリア移動度が充分に高い化合物が好ましい。例えば、低分子化合物であれば下記に示すNTCDAに代表される芳香族環状酸無水物等が挙げられ、高分子化合物であればポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、ポリアニリン:カンファースルホン酸(PANI:CSA)等に代表される公知の導電性高分子等が挙げられる。
【化10】

【0048】
また、バッファー層には、励起子が電極まで拡散して失活してしまうのを防止する役割を持たせることも可能である。このように励起子阻止層としてバッファー層を挿入することは、高効率化のために有効である。励起子阻止層は陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。この場合、励起子阻止層として好ましい材料としては、例えば有機EL用途で公知な正孔障壁層用材料又は電子障壁層用材料等が挙げられる。正孔障壁層として好ましい材料は、イオン化ポテンシャルが充分に大きい化合物であり、電子障壁層として好ましい材料は、電子親和力が充分に小さい化合物である。具体的には有機EL用途で公知な材料であるバソクプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)等が陰極側の正孔障壁層材料として挙げられる。
【0049】
【化11】

さらに、バッファー層には、上記n層材料として例示した無機半導体化合物を用いてもよい。また、p型無機半導体化合物としてはCdTe、p−Si、SiC、GaAs、WO等を用いることができる。
【0050】
5.基板
基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものが好ましい。例えば、ガラス基板及び透明性樹脂フィルムがある。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0051】
本発明の有機薄膜太陽電池の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディップコート、キャスティング、ロールコート、フローコーティング、インクジェット等の湿式成膜法を適用することができる。
【0052】
各層の膜厚は特に限定されないが、適切な膜厚に設定する。一般に有機薄膜の励起子拡散長は短いことが知られているため、膜厚が厚すぎると励起子がヘテロ界面に到達する前に失活してしまうため光電変換効率が低くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生してしまうため、充分なダイオード特性が得られないため、変換効率が低下する。通常の膜厚は1nmから10μmの範囲が適しているが、5nmから0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0053】
乾式成膜法の場合、公知の抵抗加熱法が好ましく、混合層の形成には、例えば、複数の蒸発源からの同時蒸着による成膜方法が好ましい。さらに好ましくは、成膜時に基板温度を制御する。
【0054】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、適切な溶媒に溶解又は分散させて発光性有機溶液を調製し、薄膜を形成するが、任意の溶媒を使用できる。例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒等が挙げられる。なかでも、炭化水素系溶媒又はエーテル系溶媒が好ましい。また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。尚、使用可能な溶媒は、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明においては、有機薄膜太陽電池のいずれの有機薄膜層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。使用の可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。
また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
[ベンゾフルオランテン化合物]
実施例1
下記の反応により化合物Aを合成した。
【化12】

【0057】
(1)中間体A1の合成
窒素雰囲気下、9−ブロモフェナントレン(7.0g,27mmol)、2,5−ジクロロフェニルボロン酸(6.2g,32mmol,1.2eq.)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.62g,0.54mmol,2%Pd)を1,2−ジメトキシエタン(100ml)に溶かし、2M炭酸ナトリウム水溶液(10.3g,97mmol,3eq./50ml)を加えて、11時間還流した。反応混合物をトルエン(100ml)で希釈し、有機層を分取、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して淡黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+5%ジクロロメタン、続いてヘキサン+10%ジクロロメタン)で精製して白色固体(7.2g,83%)を得た。
【0058】
この固体の核磁気共鳴測定(H−NMR)の結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.39(1H,dd,J=9Hz,2Hz),7.44(1H,d,J=2Hz),7.47−7.55(3H,m),7.60−7.71(4H,m),7.88(1H,d,J=8Hz),8.72(1H,d,J=8Hz),8.76(1H,d,J=8Hz)
【0059】
(2)中間体A2の合成
窒素雰囲気下、ジフェニルアミン(4.1g,24mmol,1.1eq.)、中間体A1(7.2g,22mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.20g,0.22nnol,2%Pd)、ナトリウムt−ブトキシド(3.0g,31mmol,1.4eq.)を無水トルエン(50ml)に懸濁し、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.11ml,0.36mmol,0.8eq.to Pd)を加えて、100℃で10時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルパッドを通してろ別し、トルエン(200ml)で洗浄した。ろ液を濃縮して得られた褐色オイルをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン、ヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して黄色アモルファス固体(6.4g,64%)を得た。
【0060】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.00(2H,t,J=7Hz),7.10−7.16(5H,m),7.22−7.27(5H,m),7.39(1H,d,J=8Hz),7.55−7.67(6H,m),7.87(1H,d,J=8Hz),8.69(1H,d,J=8Hz),8.73(1H,d,J=8Hz)
【0061】
(3)化合物Aの合成
窒素雰囲気下、中間体A2(6.4g,14mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.32g,0.35mmol,5%Pd)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(3.0g,20mmol,1.4eq.)を無水DMF(35ml)に溶かし、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.21ml,0.69mmol,1eq.to Pd)を加えて、140℃で10時間撹拌した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、水(100ml)、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン、ヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して黄色固体(4.8g,82%)を得た。これをトルエン(20ml)+エタノール(30ml)から再結晶して黄色板状晶(4.7g)を得た。
【0062】
この固体の電解離脱質量分析(FDMS)、及び液体クロマトグラフィ(HPLC)による純度の測定結果を以下に示す。
・FDMS:計算値C3221N=419,実測値m/z=419(M,100)
・HPLC:99.6%(検出波長254nm:面積%)
【0063】
得られた固体(4.1g)を280℃、2.5×10−4Paで昇華精製することにより黄色アモルファス固体(3.6g)を得た。
・HPLC:99.8%(検出波長254nm:面積%)
物性は以下のとおりである。
融点(mp):157℃(DSC)
吸収極大波長(CHCl):425nm
【0064】
実施例2
下記の反応により化合物Bを合成した。
【化13】

【0065】
(1)中間体B1の合成
窒素雰囲気下、9−ブロモフェナントレン(5.0g,19mmol)、2,4−ジクロロフェニルボロン酸(4.5g,24mmol,1.2eq.)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.45g,0.39mmol,2%Pd)を1,2−ジメトキシエタン(70ml)に溶かし、2M炭酸ナトリウム水溶液(7.6g,72mmol,3eq./36ml)を加えて、11時間還流した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、有機層を分取、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+5%ジクロロメタン、続いてヘキサン+10%ジクロロメタン)で精製して白色固体(5.2g,85%)を得た。
【0066】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.34(1H,d,J=8Hz),7.37(1H,d,J=9Hz,2Hz),7.48(1H,t,J=7Hz),7.52(1H,d,J=8Hz),7.58(1H,d,J=2Hz),7.59−7.70(4H,m),7.87(1H,d,J=8Hz),8.72(1H,d,J=8Hz),8.75(1H,d,J=8Hz)
【0067】
(2)中間体B2の合成
窒素雰囲気下、ジフェニルアミン(3.0g,18mmol,1.1eq.)、中間体B1(5.2g,16mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.15g,0.16nnol,2%Pd)、ナトリウムt−ブトキシド(2.2g,23mmol,1.4eq.)を無水トルエン(35ml)に懸濁し、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.08ml,0.26mmol,0.8eq.to Pd)を加えて、100℃で10時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルパッドを通してろ別し、トルエン(200ml)で洗浄した。ろ液を濃縮して得られた褐色オイルをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン)で精製して黄色アモルファス固体(4.5g,62%)を得た。
【0068】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.06(1H,dd,J=8Hz,2Hz),7.10(2H,t,J=7Hz),7.21−7.27(6H,m),7.33(4H,t,J=8Hz),7.56−7.68(6H,m),7.89(1H,d,J=7Hz),8.72(1H,d,J=8Hz),8.76(1H,d,J=8Hz)
【0069】
(3)化合物Bの合成
窒素雰囲気下、中間体B2(4.5g,9.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.23g,0.25mmol,5%Pd)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(2.1g,14mmol,1.4eq.)を無水DMF(25ml)に溶かし、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.15ml,0.49mmol,1eq.to Pd)を加えて、140℃で10時間撹拌した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、水(100ml)、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+10%ジクロロメタン、ヘキサン+17%ジクロロメタン)で精製して黄色固体(1.1g,27%)を得た。これをトルエン(20ml)+エタノール(20ml)から再結晶して黄色板状晶(0.74g)を得た。
【0070】
・FDMS:計算値C3221N=419,実測値m/z=419(M,100)
・HPLC:99.9%(検出波長254nm:面積%)
【0071】
得られた固体(0.73g)を260℃/1.2×10−4Paで昇華精製することにより黄色固体(0.68g)を得た。
HPLC:99.4%(検出波長254nm:面積%)
mp:211℃(DSC)
吸収極大波長(CHCl):415nm
【0072】
実施例3
下記の反応により化合物Cを合成した。
【化14】

【0073】
(1)中間体C1の合成
窒素雰囲気下、7−ブロモベンズ[a]アントラセン(5.2g,17mmol)、2,4−ジクロロフェニルボロン酸(3.7g,19mmol,1.2eq.)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.37g,0.32mmol,2%Pd)を1,2−ジメトキシエタン(60ml)に懸濁し、2M炭酸ナトリウム水溶液(6.0g,57mmol,3eq./30ml)を加えて、11時間還流した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、有機層を分取、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン、続いてヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して淡黄色固体(5.9g,93%)を得た。
【0074】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.28(1H,d,J=9Hz),7.32(1H,d,J=8Hz),7.45−7.48(3H,m),7.53−7.58(2H,m),7.61(1H,t,J=7Hz),7.68−7.72(2H,m),7.81(1H,d,J=8Hz),8.17(1H,d,J=8Hz),8.88(1H,d,J=8Hz),9.29(1H,s)
【0075】
(2)中間体C2の合成
窒素雰囲気下、ジフェニルアミン(3.2g,19mmol,1.2eq.)、中間体C1(5.9g,16mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.15g,0.16nnol,2%Pd)、ナトリウムt−ブトキシド(2.2g,23mmol,1.4eq.)を無水トルエン(45ml)に懸濁し、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.08ml,0.26mmol,0.8eq.to Pd)を加えて、100℃で10時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルパッドを通してろ別し、トルエン(200ml)で洗浄した。ろ液を濃縮して得られた赤色オイルをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン、続いてヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して赤色アモルファス固体(8.0g,98%)を得た。
【0076】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.07−7.49(13H,m),7.56−7.67(6H,m),7.82(1H,d,J=7Hz),8.17(1H,d,J=8Hz),8.88(1H,d,J=8Hz),9.27(1H,s)
【0077】
(3)化合物Cの合成
窒素雰囲気下、中間体C2(8.0g,9.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.58g,0.64mmol,8%Pd)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(3.6g,24mmol,1.5eq.)を無水DMF(35ml)に溶かし、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.58ml,1.9mmol,1.5eq.to Pd)を加えて、140℃で10時間撹拌した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、水(100ml)、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して橙色個体を得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+33%ジクロロメタン、ヘキサン+66%ジクロロメタン)で精製して橙色固体(6.0g,収率80%)を得た。このものはH−NMRの結果から化合物C(60%)と異性体C(40%)の混合物であることがわかった。これをトルエン(100ml)から2回再結晶して橙色固体(2.4g,収率32%)として化合物Cを得た。
【0078】
・FDMS:計算値C3623N=469,実測値m/z=469(M,100)
・HPLC:99.6%(検出波長254nm:面積%)
【0079】
得られた固体(1.66g)を300℃、5.9×10−4Paで昇華精製することにより橙色固体(1.58g)を得た。
・HPLC:99.4%(検出波長254nm:面積%)
・mp:264℃(DSC)
・吸収極大波長(CHCl):480nm.
【0080】
実施例4
下記の反応により化合物Dを合成した。
【化15】

【0081】
(1)中間体D1の合成
窒素雰囲気下、7−ブロモベンズ[a]アントラセン(5.2g,17mmol)、2,5−ジクロロフェニルボロン酸(3.7g,19mmol,1.2eq.)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.37g,0.32mmol,2%Pd)を1,2−ジメトキシエタン(60ml)に懸濁し、2M炭酸ナトリウム水溶液(6.0g,57mmol,3eq./30ml)を加えて、11時間還流した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、有機層を分取、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して黄色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+10%ジクロロメタン、続いてヘキサン+17%ジクロロメタン)で精製して黄色固体(4.0g,63%)を得た。
【0082】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.28(1H,d,J=9Hz),7.41(1H,d,J=3Hz),7.46−7.49(3H,m),7.54−7.63(4H,m),7.69(1H,dt,J=7Hz,2Hz),7.81(1H,dd,J=7Hz,2Hz),8.17(1H,d,J=8Hz),8.87(1H,d,J=8Hz),9.29(1H,s)
【0083】
(2)中間体D2の合成
窒素雰囲気下、ジフェニルアミン(2.2g,13mmol,1.2eq.)、中間体D1(4.0g16mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.10g,0.11mmol,2%Pd)、ナトリウムt−ブトキシド(1.5g,16mmol,1.4eq.)を無水トルエン(30ml)に懸濁し、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.05ml,0.16mmol,0.8eq.to Pd)を加えて、100℃で10時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルパッドを通してろ別し、トルエン(200ml)で洗浄した。ろ液を濃縮して得られた橙色オイルをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン)で精製して黄色固体(4.9g,88%)を得た。
【0084】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:6.98(2H,t,J=7Hz),7.13(1H,d,J=3Hz),7.16−7.26(9H,m),7.43−7.67(8H,m),7.82(1H,d,J=8Hz),8.14(1H,d,J=8Hz),8.85(1H,d,J=8Hz),9.23(1H,s)
【0085】
(3)化合物Dの合成
窒素雰囲気下、中間体C2(4.9g,9.7mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.36g,0.39mmol,8%Pd)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(2.2g,14mmol,1.5eq.)を無水DMF(20ml)に溶かし、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.36ml,1.2mmol,1.5eq.to Pd)を加えて、140℃で10時間撹拌した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、水(100ml)、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して暗黄色個体を得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+33%ジクロロメタン、ヘキサン+66%ジクロロメタン)で精製して橙色固体(3.1g,収率68%)を得た。このものはH−NMRの結果から化合物D(90%)と異性体D(10%)の混合物であることがわかった。これをトルエン(60ml)から再結晶して橙色固体(2.2g,収率46%)として化合物Dを得た。
【0086】
・FDMS:計算値C3623N=469,実測値m/z=469(M,100)
・HPLC:98.6%(検出波長254nm:面積%)
【0087】
得られた固体(2.13g)を320℃、6.2×10−4Paで昇華精製することにより橙色固体(2.00g)を得た。
・HPLC:98.5%(検出波長254nm:面積%)
・mp:258℃(DSC)
・吸収極大波長(CHCl):480nm.
【0088】
実施例5
下記の反応により化合物Eを合成した。
【化16】

【0089】
(1)中間体E1の合成
1,2−ベンズアントラキノン(6.4g,25mmol)を酢酸(100ml)に溶かし、臭素(15g,94mmol,3.8eq.)を加えて110℃で6時間撹拌した。反応混合物を水(100ml)で希釈し、固体をろ別、水、メタノールで洗浄して黄色固体(7.6g,90%crude)を得た。これをトルエン(100ml)から再結晶して黄色針状晶(5.7g,収率68%)を得た。
【0090】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.59(1H,dd,J=9Hz,7Hz),7.77−7.85(2H,m),7.97(1H,dd,J=7Hz,1Hz),8.27(1H,dd,J=7Hz,2Hz),8.31(1H,dd,J=8Hz,2Hz),8.49(1H,d,J=9Hz),8.71(1H,dd,J=9Hz,1Hz),9.72(1H,d,J=9Hz)
【0091】
(2)中間体E2の合成
中間体E1(5.7g,17mmol)を酢酸(400ml)に懸濁し、57%ヨウ化水素酸(50ml,0.38mol,22eq.)、ホスフィン酸(25ml)を加えて33時間還流した。反応混合物を水(200ml)で希釈し、固体をろ別、水、メタノールで洗浄して淡黄色固体(4.5g,収率86%)を得た。
【0092】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.48−7.64(3H,m),7.77−7.89(2H,m),8.04−8.13(3H,m),8.38(1H,s),8.79(1H,d,J=8Hz),9.13(1H,s)
【0093】
(3)中間体E3の合成
窒素雰囲気下、中間体E2(3.5g,11mmol)、2,4−ジクロロフェニルボロン酸(2.6g,14mmol,1.2eq.)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.25g,0.22mmol,2%Pd)を1,2−ジメトキシエタン(90ml)に懸濁し、2M炭酸ナトリウム水溶液(4.5g,42mmol,3eq./25ml)を加えて、11時間還流した。反応混合物をトルエン(100ml)で希釈し、有機層を分取、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して濃褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン)で精製して白色固体(2.2g,収率55%)を得た。
【0094】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.26(1H,d,J=9Hz),7.34(1H,d,J=8Hz),7.39(1H,dd,J=8Hz,2Hz),7.46(1H,d,J=7Hz),7.53−7.58(2H,m),7.59(1H,d,J=2Hz),7.71−7.74(2H,m),8.02−8.04(1H,m),8.13−8.15(1H,m),8.34(1H,s),8.92(1H,d,J=8Hz),9.22(1H,s)
【0095】
(4)中間体E4の合成
窒素雰囲気下、ジフェニルアミン(1.2g,7.1mmol,1.2eq.)、中間体E3(2.3g,6.0mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.08g,0.09mmol,3%Pd)、ナトリウムt−ブトキシド(0.8g,8.3mmol,1.4eq.)を無水トルエン(20ml)に懸濁し、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.04ml,0.13mmol,0.8eq. to Pd)を加えて、100℃で10時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルパッドを通してろ別し、トルエン(200ml)で洗浄した。ろ液を濃縮して得られた黄色オイルをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン)で精製して黄色固体(1.6g,収率53%)を得た。
【0096】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.05−7.08(2H,m),7.19−7.24(4H,m),7.28−7.36(4H,m),7.45(1H,d,J=9Hz),7.53−7.58(4H,m),7.71−7.79(4H,m),8.03−8.05(1H,m),8.11−8.15(1H,m),8.36(1H,s),8.90(1H,d,J=8Hz),9.22(1H,s)
【0097】
(5)化合物Eの合成
窒素雰囲気下、中間体E4(1.6g,3.2mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.14g,0.15mmol,10%Pd)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(0.7g,4.6mmol,1.5eq.)を無水DMF(15ml)に溶かし、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.14ml,0.46mmol,1.5eq. to Pd)を加えて、140℃で10時間撹拌した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、水(100ml)、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して黄色固体(1.4g,収率90%)を得た。これをトルエン(20ml)+エタノール(30ml)から再結晶して黄色針状晶(1.0g)を得た。
【0098】
・FDMS:計算値C3623N=469,実測値m/z=469(M,100)
・HPLC:99.8%(検出波長254nm:面積%)
【0099】
得られた固体(1.0g)を300℃/6.2 x 10−4Paで昇華精製することにより黄色固体(0.86g)を得た。
・HPLC:99.7%(検出波長254nm:面積%)
・mp:226℃(DSC)
・吸収極大波長(CHCl):455nm
【0100】
実施例6
下記の反応により化合物Fを合成した。
【化17】

【0101】
(1)中間体F1の合成
窒素雰囲気下、中間体E2(3.5g,11mmol)、2,5−ジクロロフェニルボロン酸(2.6g,14mmol,1.2eq.)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.25g,0.22mmol,2%Pd)を1,2−ジメトキシエタン(90ml)に懸濁し、2M炭酸ナトリウム水溶液(4.5g,42mmol,3eq./25ml)を加えて、11時間還流した。反応混合物をトルエン(100ml)で希釈し、有機層を分取、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して濃褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン)で精製して淡黄色固体(2.5g,収率61%)を得た。
【0102】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.27(1H,d,J=9Hz),7.39(1H,dd,J=9Hz,2Hz),7.42(1H,d,J=2Hz),7.47(1H,d,J=8Hz),7.49(1H,d,J=9Hz),7.54−7.57(2H,m),7.71(1H,d,J=8Hz),7.73(1H,d,J=9Hz),8.02−8.04(1H,m),8.12−8.15(1H,m),8.34(1H,s),8.92(1H,d,J=8Hz),9.21(1H,s)
【0103】
(2)中間体F2の合成
窒素雰囲気下、ジフェニルアミン(1.4g,8.3mmol,1.2eq.)、中間体F1(2.5g,6.7mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.09g,0.10mmol,3%Pd)、ナトリウムt−ブトキシド(0.9g,9.4mmol,1.4eq.)を無水トルエン(20ml)に懸濁し、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.05ml,0.16mmol,0.8eq.to Pd)を加えて、100℃で11時間撹拌した。反応混合物をシリカゲルパッドを通してろ別し、トルエン(200ml)で洗浄した。ろ液を濃縮して得られた黄色オイルをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン)で精製して黄色固体(2.9g,収率86%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.01−7.75(17H,m),8.02−8.24(3H,m),8.34(1H,s),8.48−8.57(1H,m),8.86(1H,d,J=8Hz),9.19(1H,s)
【0104】
(3)化合物Fの合成
窒素雰囲気下、中間体F2(2.9g,5.7mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(026g,0.28mmol,10%Pd)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(1.3g,8.6mmol,1.5eq.)を無水DMF(25ml)に溶かし、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.26ml,0.85mmol,1.5eq. to Pd)を加えて、140℃で10時間撹拌した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、水(100ml)、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して黄褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+33%ジクロロメタン)で精製して黄色固体(1.8g,収率67%)を得た。これをトルエン(20ml)+エタノール(30ml)から再結晶して黄色板状晶(0.88g)を得た。
【0105】
・FDMS:計算値C3623N=469,実測値m/z=469(M,100)
・HPLC:99.6%(検出波長254nm:面積%)
【0106】
得られた固体(0.87g)を280℃/8.3×10−4Paで昇華精製することにより黄色固体(0.79g)を得た。
・HPLC:99.4%(検出波長254nm:面積%)
・mp:249℃(DSC)
・吸収極大波長(CHCl):419nm
【0107】
実施例7
下記の反応により化合物Gを合成した。
【化18】

【0108】
(1)中間体G1の合成
窒素雰囲気下、中間体E2(4.9g,16mmol)、2−ブロモフェニルボロン酸(3.5g,17mmol,1.1eq.)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.37g,0.32mmol,2%Pd)を1,2−ジメトキシエタン(120ml)に懸濁し、2M炭酸ナトリウム水溶液(5.5g,52mmol,3eq./26ml)を加えて、11時間還流した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、有機層を分取、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒留去して褐色オイルを得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+17%ジクロロメタン)で精製して白色固体(2.0g,33%)を得た。
【0109】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.28(1H,d,J=9Hz),7.31−7.35(1H,m),7.41−7.57(5H,m),7.71(1H,d,J=9Hz),7.72(1H,d,J=8Hz),7.76(1H,d,J=7Hz),8.02−8.04(1H,m),8.13−78.15(1H,m),8.34(1H,s),8.92(1H,d,J=8Hz),9.23(1H,s)
【0110】
(2)中間体G2の合成
窒素雰囲気下、中間体G1(2.0g,5.2mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.37g,0.53mmol,10%Pd)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(1.1g,7.2mmol,1.4eq.)を無水DMF(20ml)に溶かし、140℃で10時間撹拌した。反応混合物をトルエン(200ml)で希釈し、パラジウム黒をろ別した。ろ液を水(100ml)、飽和食塩水(50ml)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去して淡緑色固体を得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+33%ジクロロメタン、続いてヘキサン+ジクロロメタン、最後にジクロロメタンのみ)で精製して淡黄色固体(1.3g,83%)を得た。
【0111】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.42−7.46(2H,m),7.57−7.61(2H,m),7.78(1H,t,J=7Hz),7.93(1H,dd,J=7Hz,2Hz),7.97(1H,d,J=7Hz),8.03(1H,dd,J=7Hz,2Hz),8.07−8.09(1H,m),8.12−8.15(1H,m),8.29(1H,s),8.56(1H,s),8.56(1H,d,J=8Hz),9.11(1H,s)
【0112】
(3)中間体G3の合成
窒素雰囲気下、中間体G2(1.3g,4.3mmol)を無水DMF(50ml)に懸濁し、これにN−ブロモスクシンイミド(0.84g,4.7mmol,1.1eq.)の無水DMF溶液(5ml)を加えて50℃で10時間撹拌した。反応混合物を水(100ml)で希釈し、固体をろ別、水(50ml)、メタノール(20ml)で洗浄して淡橙色固体(1.5g,92%)を得た。
【0113】
H−NMR(400MHz,CDCl,TMS)δ:7.41−7.47(2H,m),7.61(1H,t,J=7Hz),7.68(1H,t,J=7Hz),7.77(1H,t,J=8Hz),7.89(1H,d,J=6Hz),7.94(1H,d,J=7Hz),8.09(1H,d,J=8Hz),8.50(1H,d,J=8Hz),8.58(1H,d,J=8Hz),8.90(1H,s),9.08(1H,s)
【0114】
(4)化合物Gの合成
窒素雰囲気下、ジフェニルアミン(0.8g,4.7mmol,1.2eq.)、中間体G3(1.5g,3.9mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.05g,0.055mmol,3%Pd)、ナトリウムt−ブトキシド(0.5g,5.2mmol,1.3eq.)を無水トルエン(50ml)に懸濁し、トリt−ブチルホスフィン/トルエン溶液(66wt%,0.03ml,0.098mmol,0.9eq.to Pd)を加えて、100℃で11時間撹拌した。反応混合物をメタノール(100ml)で希釈し、固体をろ別して暗緑色固体(1.46g,86%crude)を得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル/ヘキサン+50%ジクロロメタン、続いてヘキサン+67%ジクロロメタン)で精製して黄色固体(1.4g,77%)を得た。これをトルエン(100ml)から再結晶して黄色板状晶(1.1g)を得た。
【0115】
・FDMS:計算値C3623N=469,実測値m/z=469(M,100)
・HPLC:99.4%(検出波長254nm:面積%)
【0116】
得られた固体(1.12g)を300℃、6.1×10−4Paで昇華精製することにより黄色固体(1.09g)を得た。
・HPLC:99.4%(検出波長254nm:面積%)
・吸収極大波長(CHCl):441nm
【0117】
本発明の化合物は、従来のポリアセン化合物に比べ、精製や取り扱いが容易であり、98%以上の高純度で合成できることが明らかとなった。
【0118】
[有機薄膜太陽電池の作製]
実施例8−14
25mm×75mm×0.7mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間実施した。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず下部電極である透明電極ラインが形成されている側の面上に、前記透明電極を覆うようにして、表1に示す化合物A〜Gのいずれかを、抵抗加熱蒸着により、1Å/sで膜厚30nmに成膜し、p層とした。続けて、p層上に膜厚60nmのC60を抵抗加熱蒸着により1Å/sで成膜した。さらに、バッファー層として10nmのバソクプロイン(BCP)を1Å/sで成膜した。最後に対向電極として金属Alを膜厚80nm蒸着させ、有機太陽電池を形成した。面積は0.5cmであった。このように作製された有機太陽電池をAM1.5条件下(光強度100mW/cm)でI−V特性を測定した。その結果、開放端電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(FF)、変換効率(η)を表1に示す。
【0119】
【化19】

【0120】
実施例15
実施例8のC60をC70へ変更した以外は実施例8と同様に有機太陽電池を作製し評価した。結果を表1に示す。
【0121】
実施例16
25mm×75mm×0.7mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間実施した。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず下部電極である透明電極ラインが形成されている側の面上に、前記透明電極を覆うようにして膜厚5nmの化合物Dを抵抗加熱蒸着により、1Å/sで成膜しp層とした。続けて、この化合物D膜上に化合物Dを0.2Å/s、C60を0.2Å/sで共蒸着し15nmのi層(混合比p:n=1:1)を形成した。この上に、膜厚45nmのC60を抵抗加熱蒸着により1Å/sで成膜しn層とした後、バッファー層として10nmのバソクプロイン(BCP)を抵抗加熱蒸着により1Å/sで成膜した。最後に、連続して対向電極として金属Alを膜厚80nm蒸着させ、有機太陽電池を形成した。面積は0.5cmであった。
この有機太陽電池の評価結果を表1に示す。
【0122】
比較例1
化合物AをmTPDへ変更した以外は実施例8と同様に有機太陽電池を作製し評価した。結果を表1に示す。
【0123】
【化20】

【0124】
【表1】

【0125】
一般に、太陽電池の光電変換効率(η)は次式によって表わされる。
【数1】

ここで、Vocは開放端電圧、Jscは短絡電流密度、FFは曲線因子、Pinは入射光エネルギーである。従って同じPinに対して、Voc、Jsc及びFFがいずれも大きな化合物ほど優れた変換効率を示す。
【0126】
表1からわかるように、本発明化合物は従来のアミン化合物(比較例化合物)に比べ変換効率が向上しており、優れた太陽電池特性を示すことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の化合物は、有機エレクトロニクス材料、例えば、有機エレクトロルミネセンス材料、有機半導体材料、有機電界効果トランジスタ材料、有機太陽電池材料等に用いることができる。特に、有機薄膜太陽電池材料として好適である。
本発明の有機薄膜太陽電池は、時計、携帯電話及びモバイルパソコン等に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表されるベンゾフルオランテン化合物。
【化21】

(式中、R〜R12はそれぞれ、水素、ハロゲン、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基であり、R〜R12のうち隣り合うものは互いに結合して環を形成してもよく、この環は置換基を有していてもよい。
〜R12のうち少なくともひとつは、下記式(S)で表されるアミノ基である。)
【化22】

(式中、R及びRはそれぞれ、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基又はC〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基である。)
【請求項2】
下記式(B)で表される請求項1に記載のベンゾフルオランテン化合物。
【化23】

(式中、R〜R14はそれぞれ、水素、ハロゲン、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基である。
〜R14のうち少なくともひとつは、前記式(S)で表されるアミノ基である。)
【請求項3】
下記式(C)で表される請求項1に記載のベンゾフルオランテン化合物。
【化24】

(式中、R〜R14はそれぞれ、水素、ハロゲン、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルコキシ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基である。
〜R14のうち少なくともひとつは、前記式(S)で表されるアミノ基である。)
【請求項4】
前記R又はRが、C〜C40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基である請求項1〜3のいずれかに記載のベンゾフルオランテン化合物。
【請求項5】
前記R13が、C〜C40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基である請求項3に記載のベンゾフルオランテン化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のベンゾフルオランテン化合物からなる有機薄膜太陽電池材料。
【請求項7】
請求項6に記載の材料を含む有機薄膜太陽電池。
【請求項8】
一対の電極の間に、少なくともp層を有し、
前記p層が請求項6に記載の材料を含有する請求項7に記載の有機薄膜太陽電池。

【公開番号】特開2010−238924(P2010−238924A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85472(P2009−85472)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】