説明

ベンゾフルオレン誘導体の製造方法およびその中間体

【課題】 ベンゾフルオレン誘導体を温和な条件下で、効率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】 下記工程1〜3により、ベンゾフルオレン誘導体を製造する。[工程1] 遷移金属触媒及び塩基の存在下、ボロン酸誘導体とナフタレン誘導体とを反応させ、フェニルナフタレン誘導体を得る工程、[工程2] 該フェニルナフタレン誘導体とグリニヤール試薬とを反応させ、第三級アルコール誘導体を得る工程、[工程3] 酸触媒存在下、該第三級アルコール誘導体を環化させる工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾフルオレン誘導体の製造方法に関するものであり、より詳細にはベンゾフルオレン誘導体をより効率良く、かつ安全に製造し得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記一般式(1)又は(2)で表されるベンゾフルオレン誘導体は、医農薬中間体又は電子材料中間体として、その用途の拡大が広く期待されている。しかしながら、その効率的な製造方法は、これまで報告されていない。
【0003】
ベンゾフルオレン誘導体に関連する製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、カルボニル基を酸又は塩基で活性化して分子内閉環反応を行う無置換のベンゾフルオレン誘導体の合成が報告されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特表2006−512395号公報
【非特許文献1】J.Org.Chem.53,904−906(1988)
【非特許文献2】J.Org.Chem.56,1210−1217(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特表2006−512395号公報に記載された方法では、官能基の保護及び脱保護を多用するため、目的のベンゾフルオレン化合物を得るためには非常に多くのステップを要し、手順が煩雑である。また、カルボニル基の活性化による閉環反応により合成する方法では、概して反応収率が低く、また反応温度を上げすぎると分子間縮合によりポリマーが大量に生成してしまうため、繊細な反応条件を設定しなければならないという煩わしさがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ベンゾフルオレン誘導体を温和な条件下で効率良く製造し得る方法を見出したので、以下、詳細に説明する。
【0007】
本発明は、下記の工程1〜3を経てなることを特徴とする、下記一般式(1)又は(2)で表されるベンゾフルオレン誘導体の製造方法に関する。
【0008】
【化1】

(式中、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,Rは各々独立してアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
[工程1] 遷移金属触媒及び塩基の存在下、下記一般式(3)で表されるボロン酸誘導体と下記一般式(4)で表されるナフタレン誘導体
【0009】
【化2】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
とを反応させ、下記一般式(5)で表されるフェニルナフタレン誘導体
【0010】
【化3】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,R10は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
を得る工程、
[工程2] 該フェニルナフタレン誘導体とグリニヤール試薬とを反応させ、下記一般式(6)で表される第三級アルコール誘導体
【0011】
【化4】

(式中、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,Rは各々独立してアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、R11,R12は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
を得る工程、
[工程3] 酸触媒存在下、該第三級アルコール誘導体を環化させる工程
以下、本発明について具体的に説明する。
【0012】
上記一般式(1)又は(2)において、R,Rは各々独立してアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソプロピル基、アミル基等である。アリール基としては、炭素数6〜20の置換若しくは無置換のアリール基であり、具体的には、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フェニルピリジル基等が挙げられる。
【0013】
工程1は、遷移金属触媒及び塩基の存在下、一般式(3)で表されるボロン酸誘導体と一般式(4)で表されるナフタレン誘導体とを反応させ、一般式(5)で表されるフェニルナフタレン誘導体を合成するものである。
【0014】
【化5】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
【0015】
【化6】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,R10は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
上記一般式(3)、(4)又は(5)におけるR,R,R,R10のアルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソプロピル基、アミル基等である。アリール基としては、炭素数6〜20の置換若しくは無置換のアリール基であり、具体的には、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フェニルピリジル基等が挙げられる。
【0016】
ボロン酸誘導体とナフタレン誘導体のモル比は1:2〜2:1であり、目的とするフェニルナフタレン誘導体を高選択的に合成するために、好ましくは1:1.4〜1:0.7である。
【0017】
遷移金属触媒としては、ニッケル触媒又はパラジウム触媒が挙げられる。パラジウム触媒として特に限定されるものではないが、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウム(II)トリフルオロアセテート等の2価パラジウム化合物、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等の0価パラジウム化合物が挙げられる。また、ポリマー固定型パラジウム触媒、パラジウム炭素等の固定化パラジウム触媒も例示できる。これらに、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(メシチル)ホスフィン等の単座アリールホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の単座アルキルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のニ座ホスフィンを共存させ反応させてもよい。また、上記パラジウム化合物とホスフィンを事前に調製したものを共存させ反応させてもよい。
【0018】
ニッケル触媒としては、例えば、ニッケル塩と前記ホスフィンからなる化合物が挙げられる。ニッケル塩とは、ニッケル元素を有効成分とする化合物を示し、例えば、0価〜2価のニッケル塩を示す。具体的には、フッ化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ヨウ化ニッケル(II)等のハロゲン化ニッケル、ニッケル(0)粉末、硫酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、過塩素酸ニッケル(II)等の無機塩、蟻酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、安息香酸ニッケル(II)、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機酸ニッケル塩が挙げられる。
【0019】
遷移金属触媒の使用量は特に限定されるものではないが、ナフタレン誘導体1モルに対し、遷移金属換算で通常0.000001〜20モル%の範囲である。触媒が上記範囲内であれば、高い選択率でフェニルナフタレン誘導体を合成できるが、高価な触媒の使用量を低減させる意味から、より好ましい触媒使用量は、ナフタレン誘導体1モルに対し、遷移金属換算で0.0001〜5モル%の範囲である。
【0020】
本発明において使用される塩基としては、無機塩基及び/又は有機塩基から選択すればよく、特に限定されるものではないが、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸カリウム、燐酸ナトリウム等、ナトリウム−メトキシド、ナトリウム−エトキシド、カリウム−メトキシド、カリウム−エトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のようなアルカリ金属アルコキシド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジンであり、さらに好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸カリウム、燐酸ナトリウムである。
【0021】
使用される塩基の量は、ナフタレン誘導体に対して0.5倍モル以上使用するのが好ましい。塩基の量が0.5倍モル未満では、フェニルナフタレン誘導体の収率が低くなる場合がある。塩基を大過剰に加えてもフェニルナフタレン誘導体の収率に変化はないが、反応終了後の後処理操作が煩雑になることから、より好ましい塩基の量は、1〜5倍モルの範囲である。
【0022】
工程1は、通常、不活性溶媒存在下で行う。使用される溶媒としては、本反応を著しく阻害しない溶媒であればよく、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒や、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサンなどのエーテル系有機溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等を挙げることができる。これらのうちより好ましくは、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラハイドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶媒である。
【0023】
工程1は、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことも、また加圧下で行うこともできる。反応は20〜300℃の範囲で行われるが、より好ましくは30〜150℃の範囲である。
【0024】
工程1にかかる反応時間は、上記ボロン酸誘導体、ナフタレン誘導体、遷移金属触媒、塩基の量及び反応温度等によって決定されるが、数分〜72時間の範囲から選択すればよい。
【0025】
工程1では、上記一般式(4)のナフタレン誘導体に置換しているトリフルオロメタンスルホニルオキシ基とハロゲン原子のうち、いずれかの置換基を選択的に反応させることが重要であり、遷移金属触媒、反応温度、塩基、溶媒等を最適化することにより可能である。例えば、一般式(4)で表されるナフタレン誘導体において、Xが臭素原子又は塩素原子の場合、テトラハイドロフラン又はジメトキシエタンを溶媒とし、炭酸ナトリウム水溶液及びトリフェニルホスフィンパラジウム触媒共存下、反応を行うと、ほぼ定量的にトリフルオロメタンスルホニルオキシ基の部分のみがボロン酸誘導体と反応する。その結果、Xが臭素原子又は塩素原子である上記一般式(5)で表されるフェニルナフタレン誘導体が得られる。Rがアルコキシ基の場合、該フェニルナフタレン誘導体は油状物になりやすく、高純度化が難しいことから、Rはアルキル基が好ましい。得られたフェニルナフタレン誘導体は、単離してもよいし、そのまま次工程に用いてもよい。
【0026】
工程2では、工程1で得られたフェニルナフタレン誘導体を、公知の方法によりグリニヤール試薬と反応させることで(例えば、Handbook of Grignard reagents, Marcel Dekker Inc.参照)、下記一般式(6)で表される第三級アルコール誘導体が得られる。得られた第三級アルコール誘導体は、単離してもよいし、そのまま次工程に用いてもよい。
【0027】
【化7】

(式中、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,Rは各々独立してアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、R11,R12は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
上記一般式(6)において、アルキル基としては、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソプロピル基、アミル基等である。アリール基としては、炭素数6〜20の置換若しくは無置換のアリール基であり、具体的には、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フェニルピリジル基等が挙げられる。
【0028】
工程3は、酸触媒存在下、有機溶媒中で実施される。酸触媒としては、ブレンステッド酸又はルイス酸触媒であって、反応を阻害しないものであれば特に制限されない。好ましくはルイス酸である。ルイス酸の具体例としては、塩化鉄(III)臭化鉄(III)等の鉄化合物、塩化亜鉛、臭化亜鉛等の亜鉛化合物、塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物、塩化チタン、臭化チタン、チタニウムエトキシド等のチタン化合物、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のアルミニウム化合物、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素・エーテル錯体、三フッ化ホウ素・酢酸錯体、三臭化ホウ素等のホウ素化合物、塩化スカンジウム、塩化ランタン等のランタノイド金属塩等が挙げられる。なかでもホウ素化合物が好ましい。
【0029】
酸触媒の使用量は、上記一般式(6)で表される第三級アルコール誘導体の1モルに対して、通常、0.1〜20倍モルである。
【0030】
工程3で使用される有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、通常、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒が好ましい。
【0031】
工程3は、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことも、また加圧下で行うこともできる。反応は−10〜300℃の範囲で行われるが、より好ましくは0〜100℃の範囲である。
【0032】
反応に要する時間は、使用する上記第三級アルコール誘導体及び酸触媒の量、反応温度等によって決まるため、必ずしも限定されないが、例えば5〜25時間である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の製造方法によれば、目的のベンゾフルオレン誘導体を効率良く製造することができる。得られたベンゾフルオレン誘導体は、クロマトグラフィー及び/又は再結晶等の簡易な操作により、高純度のものが回収できる。また、必要に応じて、さらに数段階の工程を経て、最終目的の化合物へと変換される。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に記述する。しかし、これらによって本発明が制限されるものではない。
【0035】
<合成例:2−ブロモ−6−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフタレンの合成>
6−ブロモ−2−ナフトール 35.9g(161モル)、トルエン300mL、ピリジン64g(5倍モル量)を窒素置換した1Lセパラブルフラスコに加え、0℃に冷却した。同温度を保持しながら、トリフルオロメタンスルホン酸無水物 50g(177ミリモル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、室温でさらに4時間攪拌した後、水を200mL滴下し、反応を終了した。反応液を分液した後、得られた有機層は、水、5%塩酸で洗浄し、さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた有機層を濃縮することで、2−ブロモ−6−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフタレンを52g(収率=90%)得た。
【0036】
H−NMR(CDCl) δ(ppm)=7.40(dd,J=2.4Hz,8.8Hz 2H)、7.67〜7.86(m 4H)、8.06(s 1H)
実施例1
<工程1>
2−ブロモ−6−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフタレン 50.9g(143ミリモル)、2−エトキシカルボニルフェニルボロン酸 33.3g(172ミリモル)、ジメトキシエタン800mL、20%炭酸ナトリウム水溶液(2−ブロモ−6−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフタレンに対し4.5倍モル)を2Lセパラブルフラスコに加えた後、窒素雰囲気下、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.65g(1モル%)を添加して、還流条件下、4時間攪拌した。室温まで冷却後、反応液を分液ロートに移し、有機層を分液した。有機層は、純水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後に得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)で精製し、化合物1を淡黄色油状物として43.1g(収率=84.8%)得た。
【0037】
H−NMR(CDCl) δ(ppm)=0.90(t,J=7.2Hz 3H)、4.06(q,J=7.2Hz 2H)、7.42〜8.03(m 10H)
FDMS:354(M+)
【0038】
【化8】

<工程2>
化合物1 29.3g(82.5ミリモル)、脱水テトラハイドロフラン230mLを窒素置換した1Lセパラブルフラスコに入れ、50℃まで昇温した。この反応器にメチルマグネシウムブロマイド溶液(1.4モル/L トルエン/テトラハイドロフラン=3/1溶液)177mLを窒素気流下で1時間かけて滴下し、さらに3時間50℃で攪拌した。室温まで冷却後、反応液に注意深く純水を滴下し、反応を終了した。酢酸エチル300mLを添加し、10%塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。化合物2を黄色油状物として26.7g(クルード品収率=95%)得た。クルード品のH−NMR(CDCl)を測定し、原料である化合物1のエチルエステル基プロトンピークの完全消失を確認した。
【0039】
【化9】

<工程3>
化合物2のクルード品 26.7g(78.2ミリモル)、クロロホルム570mLを窒素置換した1L3つ口フラスコに入れ、この溶液に窒素気流下で三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体14.5g(102ミリモル)を10分間かけて滴下した。滴下終了後、50℃まで昇温し、さらに2時間攪拌した。室温まで冷却後、純水にて分液・洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後に得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)で精製後、さらにヘキサン/トルエンで再結晶することにより、化合物3を黄色粉末として11.8g(収率=46%)得た。得られた黄色粉末のHPLC分析を行ったところ、純度は99.8%であった。同定はH−NMR及びFDMSにより行った。
【0040】
H−NMR(CDCl) δ(ppm)=1.72(s 6H)、7.36〜8.11(m 9H)
FDMS:354(M+)
【0041】
【化10】

実施例2
<工程1>
2−ブロモ−6−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフタレン 48.3g(136ミリモル)、2−アセトキシフェニルボロン酸 22.3g(136ミリモル)、ジメトキシエタン700mL、20%炭酸ナトリウム水溶液(2−ブロモ−6−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフタレンに対し4.5倍モル)を1Lセパラブルフラスコに加えた後、窒素雰囲気下、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.59g(1モル%)を添加して、還流条件下、一晩攪拌した。室温まで冷却後、反応液を分液ロートに移し、有機層を分液した。有機層は、純水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後に得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)で精製し、化合物4を白色粉末として35.1g(収率=79%)得た。同定は、H−NMR及びFDMSにより行った。
【0042】
H−NMR(CDCl) δ(ppm)=2.02(s 3H)、7.45〜7.64(m 6H)、7.71〜7.83(m 3H)、8.04(s 1H)
FDMS:325(M+)
【0043】
【化11】

<工程2>
窒素置換した500mL4つ口フラスコに、メチルマグネシウムブロマイド溶液(1.4モル/L トルエン/テトラハイドロフラン=3/1溶液)96.0mL(134ミリモル)を入れ、0℃に冷却した。この溶液に窒素気流下、化合物4 29.0gをトルエン180mLに溶かした溶液を一時間かけて滴下した。滴下終了後、0℃から室温になるまで放置し、そのまま一晩攪拌した。反応液に注意深く純水を滴下し、反応を終了した。10%塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。化合物5を黄色油状物として29.3g(クルード品収率=96%)得た。クルード品のH−NMR(CDCl)を測定し、原料である化合物4のアセチル基プロトンピークの完全消失を確認した。
【0044】
<合成例:1−クロロ−4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフタレンの合成>
1−クロロ−4−ナフトール 35.9g(0.201モル)、トルエン400mL、ピリジン160g(5倍モル量)を窒素置換した1Lセパラブルフラスコに加え、0℃に冷却した。同温度を保持しながら、トリフルオロメタンスルホン酸無水物62.4g(0.221モル)を50分かけて滴下した。滴下終了後、室温でさらに3時間攪拌した後、水を200mL滴下し、反応を終了した。反応液を分液した後、得られた有機層は、水、5%塩酸で洗浄し、さらに、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後に得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)で精製し、1−クロロ−4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフタレンを淡黄色油状物として53.5g(収率=86%)得た。同定は、H−NMRにより行った。
【0045】
H−NMR(CDCl) δ(ppm)=7.39(d,J=8.2Hz 1H)、7.58(d,J=8.4Hz 1H)、7.69〜7.75(m 2H)、8.07〜8.12(m 1H)、8.29〜8.34(m 1H)
実施例3
<工程1>
1−クロロ−4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフタレン 2.07g(6.66ミリモル)、2−エトキシカルボニルフェニルボロン酸 1.55g(7.99ミリモル)、ジメトキシエタン35mL、20%炭酸ナトリウム水溶液(1−クロロ−4−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−ナフタレンに対し4.5倍モル)を窒素置換した100mL4つ口フラスコに加えた後、窒素雰囲気下、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム77mg(1モル%)を添加して、60℃で一晩攪拌した。室温まで冷却後、反応液を分液ロートに移し、酢酸エチルを50mL加え、有機層を分液した。有機層は、純水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後に得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、化合物5を透明油状物として1.86g(収率=90%)得た。同定はH−NMR及びFDMSにより行った。
【0046】
H−NMR(CDCl) δ(ppm)=0.60(t,J=7.4Hz 3H)、3.80(q,J=6.4Hz 2H)、7.19〜7.62(m 8H)、8.06(d,J=7.2Hz 1H)、8.33(d,J=8.4Hz 1H)
FDMS:310(M+)
【0047】
【化12】

<工程2>
化合物5 0.46g(1.48ミリモル)、脱水テトラハイドロフラン5mLを窒素置換した20mLシュレンクフラスコに入れ、この反応器にメチルマグネシウムブロマイド溶液(1.4モル/L トルエン/テトラハイドロフラン=3/1溶液)3.2mLを窒素気流下、室温で10分かけて滴下し、さらに一晩室温で攪拌した。反応液に注意深く純水を滴下し、反応を終了した。酢酸エチル10mLを添加し、純水、10%塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を濃縮することで化合物6のクルード品を白色固体として0.35g(収率=80%)得た。同定はH−NMRにより行った。
【0048】
H−NMR(CDCl) δ(ppm)=1.29(s 3H)、1.42(s 3H)、7.06(d,J=7.8Hz 1H)、7.25〜7.61(m 7H)、7.74(d,J=7.6Hz 1H)、8.32(d,J=8.4Hz 1H)
【0049】
【化13】

<工程3>
化合物6のクルード品 0.35g(1.18ミリモル)、クロロホルム5mLを窒素置換した50mL3つ口フラスコに入れ、この溶液に窒素気流下、室温で三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体0.22g(1.55ミリモル)を5分かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間攪拌した。純水にて分液・洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後に得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン)で精製後、さらにヘキサン/トルエンで再結晶することにより化合物7を白色粉末として0.23g(収率=70%)得た。得られた白色粉末のHPLC分析を行ったところ、純度は99.9%であった。同定はH−NMR及びFDMSにより行った。
【0050】
H−NMR(CDCl) δ(ppm)=1.53(s 6H)、7.32〜7.71(m 6H)、8.29〜8.42(m 2H)、8.77(d,J=8.2Hz 1H)
FDMS:278(M+)
【0051】
【化14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程1〜3を経てなることを特徴とする、下記一般式(1)又は(2)で表されるベンゾフルオレン誘導体の製造方法。
【化1】

(式中、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,Rは各々独立してアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
[工程1] 遷移金属触媒及び塩基の存在下、下記一般式(3)で表されるボロン酸誘導体と下記一般式(4)で表されるナフタレン誘導体
【化2】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
とを反応させ、下記一般式(5)で表されるフェニルナフタレン誘導体
【化3】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,R10は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
を得る工程、
[工程2] 該フェニルナフタレン誘導体とグリニヤール試薬とを反応させ、下記一般式(6)で表される第三級アルコール誘導体
【化4】

(式中、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,Rは各々独立してアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、R11,R12は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
を得る工程、
[工程3] 酸触媒存在下、該第三級アルコール誘導体を環化させる工程
【請求項2】
遷移金属触媒が、パラジウム触媒であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(5)において、Xが臭素原子、塩素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
酸触媒がルイス酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
酸触媒がトリフルオロボラン又はその誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
一般式(5)で表されるフェニルナフタレン誘導体。
【化5】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,R10は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)
【請求項7】
一般式(1)又は(2)で表されるベンゾフルオレン誘導体。
【化6】

(式中、Xはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、R,Rは各々独立してアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、R,Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。)

【公開番号】特開2008−143857(P2008−143857A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334414(P2006−334414)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】