説明

ベンチレータ式オートクレーブ

本発明は、殺菌すべき物品(18)を受け入れるための空間(5)を備えたチャンバ(1)と、蒸気および/または空気を前記チャンバ内で循環させるための少なくとも1つのファン構成(2)と、前記蒸気および/または空気を冷却および/または加熱するための少なくとも1つの第1の熱交換機構成(11)とを備えるベンチレータ式オートクレーブに関し、このベンチレータ式オートクレーブにおいては、前記ファン構成が、前記蒸気および/または空気を前記チャンバ(1)内で循環させるように配置および構成されており、前記チャンバ(1)が、前記チャンバ内(1)で循環される前記蒸気および/または空気が殺菌すべき前記物品(18)に到達する前に前記第1の熱交換機構成(11)の少なくとも一部を通過する流れ経路をたどるように構成されており、前記オートクレーブは、前記流れ経路内で前記第1の熱交換機構成(11)の上流側に設けられた少なくとも1つの第2の熱交換機構成(19)をさらに備えており、かつ前記第2の熱交換機構成(19)は、前記ファン構成によって循環されている蒸気および/または空気の前記流れが、前記第2の熱交換機構成(19)を通過するとき、ファン構成に対して見て接線速度成分を有するように、前記ファン構成(2)の周囲から距離を置いて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌すべき物品を受け入れるための空間を備えたチャンバと、蒸気および/または空気を前記チャンバ内で循環させるための少なくとも1つのファン構成と、前記蒸気および/または空気を冷却および/または加熱するための少なくとも1つの第1の熱交換機構成とを備えるベンチレータ式オートクレーブであって、前記ファン構成が、前記蒸気および/または空気を前記チャンバ内で循環させるように配置および構成され、前記チャンバが、前記チャンバ内で循環される前記蒸気および/または空気が殺菌すべき前記物品に到達する前に前記第1の熱交換機構成の少なくとも一部を通過する流れ経路をたどるように構成される、ベンチレータ式オートクレーブに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば注入可能な薬剤および静脈注射用の溶液の調製は、ヒトおよび動物を細菌およびウイルスなどの微生物にさらす危険を低減または解消するために高い殺菌レベルを必要とする。事前充填された容器の殺菌に幅広く使用されている装置は、いわゆるベンチレータ式または蒸気/空気のオートクレーブである。ベンチレータ式オートクレーブは、空気が殺菌前に除去される従来式の蒸気殺菌機とは異なり、空気がプロセス中に殺菌チャンバ内に保たれるオートクレーブである。空気を殺菌チャンバ内に維持する目的は、容器の変形を回避することを助ける支持圧力をもたらすためである。
【0003】
知られているベンチレータ式オートクレーブは、しばしば、殺菌チャンバと、蒸気/空気をチャンバ内で循環させるためのファンと、蒸気/空気を加熱/冷却するための熱交換機とを備える。ファンは、たとえば遠心ファンでよく、殺菌チャンバの上部に取り付けられることが多い。熱交換機は、一般的に、内部パネル後方の、内部パネルとオートクレーブ壁の間にダクトを創出するチャンバの側壁に沿って置かれる。これにより、ファンが蒸気/空気を熱交換機に向かうように方向付ける循環環境が創出される。蒸気/空気は、熱交換機を通過するとき、殺菌プロセスの段階に応じて、オートクレーブ内で物品に向かって方向付けられる前に加熱または冷却される。
【0004】
一般論として、殺菌プロセスは、次の方法で実施される。たとえば、液体、ゲル様またはペースト様の調剤製品または生物学的製品を含む事前充填されたプラスチック注射器、容器、およびバイアルの形態の殺菌すべき物品は、通常、オートクレーブ内に置かれる。次いで加熱液体が、任意選択で熱交換機に供給されてよく、それにより、オートクレーブ内の空気は、加熱されるようになり、殺菌すべき物品を予熱する。その後、殺菌すべき物品は、温度が約121℃に到達するまで蒸気にかけられる。この温度は、内容物を殺菌するのに十分な時間維持される。事前充填された容器が加熱されるにつれて、中に含有された流体または製剤が蒸発する。この蒸発は、病原体を死に至らすまたは殺菌する圧力および温度を生成する。殺菌後、事前充填された容器は、冷却ステップにかけられる。冷却ステップ中、冷却液が熱交換機に供給され、次に熱交換機は、オートクレーブ内の蒸気/空気を冷却する。
【0005】
知られているベンチレータ式オートクレーブは、良好に機能することが知られている。しかし、多くの工業プロセスにおけるものと同様に、殺菌プロセスがさらにすばやく実施され得れば経済的な利点が存在する。したがって、本発明の目的は、知られているオートクレーブよりすばやく殺菌プロセスを実施することを可能にし得る改良されたベンチレータ式オートクレーブを提案することである。
【発明の概要】
【0006】
改良されたベンチレータ式オートクレーブは、請求項1において定義される。前記ベンチレータ式オートクレーブは、殺菌すべき物品を受け入れるための空間を備えたチャンバと、蒸気および/または空気を前記チャンバ内で循環させるための少なくとも1つのファン構成と、前記蒸気および/または空気を冷却および/または加熱するための少なくとも1つの第1の熱交換機構成とを備え、ここでは、前記ファン構成が、前記蒸気および/または空気を前記チャンバ内で循環させるように配置および構成され、前記チャンバが、前記チャンバ内で循環される前記蒸気および/または空気が殺菌すべき前記物品に到達する前に前記第1の熱交換機構成の少なくとも一部を通過する流れ経路をたどるように構成され、前記オートクレーブは、さらに、前記流れ経路内で前記第1の熱交換機構成の上流側に設けられた少なくとも1つの第2の熱交換機構成を備え、前記第2の熱交換機構成は、前記ファン構成によって循環されている蒸気および/または空気の前記流れが、前記第2の熱交換機構成を通過するとき、ファン構成に対して見て接線速度成分を有するように前記ファン構成の周囲から距離を置いて設けられる。
【0007】
ラジアルファンを出る蒸気および/または空気の流れは、通常、接線および動径両方の速度成分を有し、ファンの周囲近くでは、接線速度成分はかなりのものである。したがって、流れは、ファンの周りでらせん状パターンを有すると考えられる。接線速度成分は通常、蒸気/空気がファンから遠ざかるにつれて低減し、したがって、流れの速度も、蒸気/空気がファンから遠ざかるにつれて低減する。流れの速度がより低下する場合、蒸気/空気の流れの各々の分子は、より長い時間熱交換機と接触することになり、これは、より効果的な熱交換効果を実現しやすくする。
【0008】
しかし、驚くべきことに、熱交換機を通過する蒸気および/または空気が、熱交換機を通り抜ける間、接線および動径両方の速度成分を有するように熱交換機が位置決めされた場合、熱交換機の効果が増大されることが見出されている。この理由は、移動のらせん状パターンが、蒸気および/または空気の流れが本質的に動径方向である状況と比較して、蒸気および/または空気が熱交換機と接触状態である距離を増大させるためである。したがって、蒸気および/または空気は、熱交換機のより大きい領域と接触することになる。このため、たとえ蒸気および/または空気の速度が、流れが接線速度成分を有するとき、すなわちファンのより近くにあるときに速くなる場合であっても、熱交換効果が増大される。
【0009】
したがって、第2の熱交換機構成をベンチレータ式オートクレーブに設け、前記ファンによって循環されている蒸気および/または空気が、前記第2の熱交換機を通過するときに接線速度成分を有するように第2の熱交換機を位置決めすると、オートクレーブ内の蒸気および/または空気の冷却または加熱が改良される。より効果的な冷却または加熱プロセスを実現することにより、殺菌サイクルに必要とされる時間を短縮することができ、それにより、ベンチレータ式オートクレーブのユーザに対して経済的利点が与えられる。
【0010】
1つの例示的な実施形態によれば、前記少なくとも1つのファン構成は、前記チャンバの天井に設けられる。1つの例示的な実施形態によれば、前記オートクレーブは、前記チャンバの対向する側壁の少なくとも2つに隣接して設けられた2つの第1の熱交換機構成を備える。
【0011】
ファンは、好ましくは、オートクレーブチャンバの天井に設けられたラジアルの、すなわち言い換えれば遠心ファンである。そのようなファンは、このとき、チャンバから空気を引き出し、それを第1の熱交換機が設けられる。チャンバの側壁に向かって方向付けることができる。第2の熱交換機は、たとえばチャンバのそれぞれの側壁上の第1の熱交換機の上方またはチャンバの天井に設けられる。それにより、循環する流れ経路を、オートクレーブチャンバ内に創出することができ、この経路内では、空気および/または蒸気の流れは、最初第2の熱交換機を通過し、その後、殺菌すべき物品に到達する前に第1の熱交換機を通過する。
【0012】
第1の熱交換機のチャンバの側壁に沿った位置は、蒸気および/または空気の流れが、第1の熱交換機を通過するときに本質的に動径方向であるという効果を有する。
【0013】
1つの例示的な実施形態によれば、前記オートクレーブは、少なくとも1つの隔壁を備え、ここでは前記隔壁は、殺菌すべき物品を受け入れるための空間を、前記第1の熱交換機構成が設けられた空間から分離する。
【0014】
この構成により、チャンバの壁および隔壁は、チャンバの壁に沿ってダクトを提供する。蒸気および/または空気が前記ファンから移動され、前記物品に到達する前に前記第1の1つの熱交換機または複数の熱交換機を通過する流れ経路は、このとき、殺菌すべき物品を受け入れるための空間から物理的に分離される。チャンバの隔壁と床の間には、蒸気および/または空気が、ダクトを出て、チャンバの底部近くで殺菌すべき物品を受け入れるための空間に入ることができるように、開口部が設けられる。蒸気および/または空気は、その後、殺菌すべき物品をほぼ垂直な方向に通過することができ、その後、再度ファン内に引き込まれ第1および第2の熱交換機に向かって循環される。
【0015】
第1の熱交換機がチャンバの側壁の2つに沿って設けられた実施形態では、両側に沿って隔壁も設けられる。これにより、ダクトが、チャンバの側壁の両方に沿って設けられる。
【0016】
1つの例示的な実施形態によれば、前記第2の熱交換機構成は、前記チャンバの天井に設けられる。
【0017】
第2の熱交換機は、流れ経路内の第1の熱交換機の上流側に、流れが第2の熱交換機を通過するときに接線成分を有するように、十分ファンに近づけて設けられなければならない。1つの代替策は、このとき、第2の熱交換機をチャンバの天井に設けることである。
【0018】
第2の熱交換機は、代替的な方法で設けられてよい。1つの例示的な実施形態によれば、第2の熱交換機は、加熱液体または冷却液体を含むことができるいくつかの水平に設けられた管を備える。別の例示的な実施形態によれば、第2の熱交換機は、加熱液体または冷却液体を含むことができるいくつかの水平に置かれたプレートを備える。
【0019】
1つの例示的な実施形態によれば、前記第2の熱交換機構成は、前記ファン構成を囲むように設けられる。この構成により、ファンを出るすべての蒸気および/または空気は、第2の熱交換機を通り抜け、殺菌プロセスの段階に応じて冷却または加熱される必要がある。蒸気および/または空気は、第2の熱交換機を通過したとき、第1の熱交換機に向かって流れ経路をたどることになる。
【0020】
他の例示的な実施形態によれば、第2の熱交換機は、前記ファン構成の一部分だけを囲むように設けられてよい。たとえば、第2の熱交換機は、前記ファン構成のたとえば60〜80%を囲むように設けられてよい。さらに、第2の熱交換機構成は、相互に離され、前記ファンの周りに円周方向に設けられたたとえば2つまたは3つの別個の熱交換機として設けられてよい。第2の熱交換機の各々の1つは、このとき、前記ファンを囲む円の概ね90〜110°に及ぶことができる。
【0021】
第2の熱交換機が、複数の水平に置かれた管またはプレートを備える実施形態のいずれか1つでは、最も上部の管またはプレートは、チャンバの天井に接触した状態になり得る。最も低い管またはプレートは、ファンの最も低い部分と概ね同じ高さに設けられる。
【0022】
1つの例示的な実施形態によれば、前記第2の熱交換機構成は、前記ファン構成の周囲から0〜25cmの距離、より好ましくは、前記ファン構成の周囲から2〜12cmの距離、最も好ましくは前記ファン構成の周囲から3〜7cmの距離を置いて設けられる。
【0023】
1つの例示的な実施形態によれば、前記第2の熱交換機構成は、前記ファン構成の直径の0〜50%、より好ましくは前記ファン構成の直径の4〜25%、最も好ましくは前記ファン構成の直径の6〜14%に相当する前記ファン構成の周囲からの距離を置いて設けられる。
【0024】
蒸気および/または空気は、ファンによって循環させられるとき、接線および動径両方の速度成分でファンを出る、すなわち蒸気および/または空気は、ファンの周りのらせん状パターンとして見られる。ものとして移動する。この接線速度成分は、蒸気および/または空気が移動する距離に伴って低減し、ある一定の距離の後、蒸気および/または空気は、本質的にファンに関連する動径速度成分のみで移動する。低減比は、さらに、蒸気および/または空気がファンを出るときのその速度に依存する。
【0025】
上記で述べたように、驚くべきことに、空気および/または蒸気の流れが、熱交換機を通過するときに接線速度成分を有するように第2の熱交換機を設けることにより、たとえ蒸気および/または空気の流れの速度が、ファンから遠く離れた位置と比較して速くなる場合であっても、蒸気および/または空気のより効果的な冷却または加熱が実現されることが見出された。上記で与えられた範囲は、蒸気および/または空気がファンを出るファンの周囲と第2の熱交換機の間の有益な距離であることが判明しており、すなわちこれらの距離により、蒸気および/または空気は、第2の熱交換機を通過するときに接線速度成分を有することになる。
【0026】
第2の熱交換機が前記ファンを囲む実施形態では、上記で述べた距離は、ファンの周囲とファンに最も近い熱交換機の側部との間の距離を意味するものである。
【0027】
1つの例示的な実施形態によれば、前記オートクレーブは、隔壁を備え、この場合、前記隔壁は、殺菌すべき物品を受け入れるための空間を、前記第1の熱交換機構成が設けられた空間から分離し、前記隔壁には、蒸気および/または空気の部分的なまたは全面的な流れが貫通して逸らされ得る長穴が設けられる。
【0028】
この構成により、チャンバの壁および隔壁は、チャンバの壁に沿ってダクトを提供する。蒸気および/または空気が、前記物品に到達する前に前記ファンから前記第1の熱交換機まで移動される流れ経路は、このとき、殺菌すべき物品を受け入れるための空間から物理的に分離される。特定の実施形態では、隔壁とチャンバの床の間には、蒸気および/または空気が、ダクトを出て、チャンバの底部近くで殺菌すべき物品のための空間に入ることができるように、開口部も設けられる。蒸気および/または空気は、その後、殺菌すべき物品をほぼ垂直な方向に通過することができ、その後、再度ファン内に引き込まれ第1および第2の熱交換機に向かって循環される。
【0029】
しかし、特定の殺菌プロセスでは、殺菌すべき製品に向けて蒸気および/または空気の水平な流れを利用することも有益であり得る。この場合、蒸気および/または空気の流れの部分的なまたは全部の量が、隔壁内に設けられた長穴を通って分流される。第1の熱交換機を設けたために、その驚くべき冷却および加熱効果により、蒸気および/または空気が、第1の熱交換機構成のいずれかを完全に通過する前に第1の熱交換機を備えたダクトから分流されても、殺菌すべき物品上に十分な冷却または加熱効果が実現されることになる。
【0030】
1つの例示的な実施形態では、隔壁とチャンバの底部の間の開口部が閉じられる。ように実現される。これにより、ほぼ水平な流れが望まれる場合のこうした用途に関して、蒸気および/または空気の全部の流れが、隔壁内の長穴を通って、第1の熱交換機が設けられたダクトを出ることを保証することができる。
【0031】
1つの例示的な実施形態によれば、前記長穴は、隔壁に沿ってさまざまな高さで設けられ、ここでは蒸気および/または空気の流れの一部は、前記チャンバ内でさまざまな高さで分流される。
【0032】
殺菌すべき物品は、しばしば、さまざまな高さで物品を保持することができるキャリアに置かれ、すなわちキャリアは、殺菌すべき物品のための空間の容積をできる限り多く使用する。長穴を1つの隔壁または複数の隔壁に沿ってさまざまな高さで設けることにより、蒸気および/または空気の一部またはすべては、1つのダクトまたは複数のダクトを出て、殺菌すべき物品をさまざまな高さで通過することができる。したがって、たとえ物品がチャンバ内でさまざまな高さで置かれた場合であっても、物品内の各々の製品は、蒸気および/または空気の水平な流れにさらされることになる。第1の熱交換機を設けたために、その驚くべき冷却および加熱効果により、蒸気および/または空気が、流れ経路内で見たときのダクトの最初の方で第1の熱交換機を備えたダクトから分流されても、殺菌すべき物品上に十分な冷却または加熱効果が実現されることになる。
【0033】
1つの例示的な実施形態によれば、前記隔壁は、互いに対して移動可能である2つの隔壁要素を備え、ここでは前記隔壁要素の各々の1つは、長穴を備え、蒸気および/または空気の流れの一部または全部を前記流れ経路から殺菌すべき物品のための前記空間内に分流させることを可能にするために、2つの隔壁要素を互いに位置合わせすることができる。
【0034】
この構成は、蒸気および/または空気の流れの一部または全部を前記流れ経路から分流させることが可能かどうかを決定する可能性を与える。蒸気および/または空気の水平な流れで物品を通過することが望まれる状況では、隔壁の2つの隔壁要素の各々の長穴は、互いに位置合わせされ、それによって、第1の熱交換機が設けられたダクトから物品を受け入れるための空間への貫通孔を多数提供することができる。水平な流れが望まれない状況では、2つの隔壁要素の各々の長穴は、他の隔壁要素の表面に面するように位置決めされる。これにより、長穴は、貫通流がそれらを通ることができないようにブロックされることになる。この場合、蒸気および/または空気の流れは、隔壁とチャンバの底部との間に設けられた開口部を通って、第1の熱交換機が中に設けられたダクトを出ることができる。
【0035】
1つの例示的な実施形態によれば、2つの隔壁要素の長穴間の位置合わせを調整することにより、ダクトから分流されている流体の量を増減することが可能である。
【0036】
1つの例示的な実施形態によれば、隔壁要素は、それらの長穴が位置合わせされたとき、隔壁要素の1つは、隔壁とオートクレーブのチャンバの底部との間に設けられた開口部をブロックするように構成される。これにより、ほぼ水平な流れが望まれる場合のこうした用途に関して、蒸気および/または空気の全部の流れが、隔壁内の長穴を通って、第1の熱交換機が中に設けられたダクトを出ることを保証することができる。
【0037】
1つの例示的な実施形態によれば、前記オートクレーブは、少なくとも2つのファン構成を備え、また、第2の熱交換機構成が、前記ファン構成の各々に対して設けられる。
【0038】
チャンバ内に設けられた多数の殺菌ゾーンを有する大型のオートクレーブが存在する。この場合、各々の殺菌ゾーンは、それ専用のファン構成ならびに第1および第2の熱交換機構成を有することができる。
【0039】
次に本発明を、例示的な目的で、実施形態を用い同封した図を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】前記オートクレーブ内の蒸気および/または空気の流れ経路を示す、ベンチレータ式オートクレーブの実施形態の概略図である。
【図2】ファン構成、第2の熱交換機構成、および隔壁の上部セクションの実施形態の斜視図である。
【図3】隔壁の一部分を外した、ベンチレータ式オートクレーブのチャンバの実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1および3は、チャンバ1を備えた蒸気/空気オートクレーブを示している。オートクレーブ31には、オートクレーブの上部にある、蒸気をチャンバ1に供給するための管7と、オートクレーブの上部にある、空気をチャンバ1に供給するための管8と、チャンバ1の底部にある排水部9とが設けられている。特定の実施形態では、蒸気および空気は、1つの共通の管を通して供給されてよく、したがって管7および8の両方は必要でない。オートクレーブはまた、オートクレーブの上部に設けられた安全弁6も備える。ステンレス鋼ファン2が、チャンバの天井24内に取り付けられている。ファンは、図2に最適に見られる1つの入口27および複数の出口開口部28を備えた遠心のもの、または言い換えればラジアルタイプのものである。ファンは、オートクレーブの上部に装着された機械シールを介して電気モータ3によって駆動される。ファンの直径は、この実施形態では通常概ね50cmである。ファン2の目的は、蒸気および/または空気からなるガス状混合物をチャンバ内で循環させることである。
【0042】
ライナまたは隔壁4が、オートクレーブチャンバ1内に取り付けられている。隔壁4は、チャンバ1内に、殺菌すべき物品18のための空間5を形成する。隔壁は、空間12の形態のダクトが、チャンバ1の外側の側壁10の各々と隔壁4の間に創出されるように設けられる。隔壁4は、チャンバの床30近くにそれぞれの開口部29を残している。第1のステンレス鋼の熱交換機11が、ダクト12の各々に設けられる。第1の熱交換機11の各々は、冷却流体でも加熱流体もよい流体の供給および排出のためのそれぞれの管13、14に連結された相互連結された管を備える。以下でより詳細に説明するこの設計は、ガス状混合物が、上部から、側部を下り、熱交換機を超えてチャンバ壁と接触し、負荷を通って上り、ファン入口に戻る循環パターンでルーティングされることを保証する。この循環パターンは、温度分布の均一性および一様性を確保する。
【0043】
隔壁4は、この実施形態では、互いに隣接して設けられ、互いに対して移動可能である2つの別個の隔壁要素21、22から構成される。隔壁要素の各々には、複数の長穴23が設けられる。互いに対して移動可能な隔壁要素21、22を設けることにより、長穴は、ダクト12から空間5への流体の水平な流れを有することが望ましいか望ましくないかに応じて開閉される。さらに、互いに対して移動可能な隔壁要素21、22を設けることにより、隔壁要素とオートクレーブの床との間の開口部29も閉じられる。開示された実施形態では、隔壁要素21、22は、隔壁要素21、22の一つが、隔壁要素21、22の長穴23が互いに位置合わせされたときに開口部29をブロックするように構成される。
【0044】
隔壁の上部セクション15もチャンバの天井24からある距離を置いて設けられ、これは、少なくとも1つの格子または網17を備える。ファンは、隔壁の上部セクション15後方のチャンバ天井24内に装着され、空間5内の流体は、ファン2によって網17を通って空間5から引き出される。
【0045】
第2の熱交換機19が、ファン2に隣接してそれを囲んで設けられる。これは、図2により詳細に開示されている。開示した実施形態では、第2の熱交換機19は、複数の、らせん巻きされ相互連結された水平に設けられた管20を備える。加熱液体または冷却液体は、チャンバ内で循環されているガス状混合物を冷却または加熱するために、外部供給源(図示せず)から管25、26を通ってらせん巻きされた管20内で循環される。第2の熱交換機は、ファン2を囲むように設けられる。チャンバ1からラジアルファン2の入口27内に引き込まれ、その後開口部28を通ってファンを出たガス状混合物は、第2の熱交換機19を通過しなければならない。第2の熱交換機の、らせん巻きされ相互連結された水平に設けられた管は、ガス状混合物が第2の熱交換機を通り抜けることができるように互いからある距離を置いて設けられている。ファンの周囲に最も近い第2の熱交換機の部分は、開示した実施形態では、ファンの周囲から概ね5cmのところに設けられる。ファンから排出されているガス状混合物は、このとき、第2の熱交換機を通過するときに接線および動径両方の速度成分を有することになり、その有益性を、以下でより詳細に説明する。
【0046】
次にシステムを、図1を用いて参照して説明する。殺菌プロセスを開始する前、起動プロセスが行われる。起動プロセスでは、殺菌すべき物品18が、空間5内に置かれる。扉(図示せず)がその後閉じられる。ファンエンジン3が起動され、ファン2が回転し始め、したがって空気をチャンバ1内で循環させる。空気は次いで、空間5から網17を通ってファン2の入口27内に引き込まれる。ファン2が回転するとき、空気は、ファンの開口部28から排出され、隔壁4および隔壁の上部セクション15により、排出された空気は、オートクレーブの各側のダクト12内に移動する。排出された空気は、ダクト12内に入る前、ファン2の近傍にそれを囲んで設けられた第2の熱交換機19を通過する。ダクト12を通る途中、空気は、それぞれの第1の熱交換機11も通過する。図1では、隔壁要素21、22の長穴23が、位置合わせされ、空気は、長穴を通ってダクト12を出ることができる。代替的に、長穴23は閉じられてよく、空気はこのとき、隔壁とチャンバの床30の間に設けられた開口部29に移動し、これらの開口部を通って空間5に再度入る。
【0047】
潜在的には、この起動プロセス中、第1および第2の熱交換機11、19のいずれかまたは両方に、加熱された流体が供給されてよく、それにより、熱交換機を通過する空気は加熱されるようになる。これにより、空気は、次いで、殺菌すべき物品をたとえば概ね50〜60°の温度まで予熱することができ、これは、プロセスが終了した後の物品上に残される水分を回避するという点において有益であることが判明している。
【0048】
起動プロセスの後、殺菌プロセスの第1の段階が始動される。この段階では、蒸気が、管7を通ってチャンバ1内に導入される。蒸気は、チャンバ1内に循環されている空気と混合されるようになる。ファン2は、依然として回転している。蒸気の目的は、殺菌すべき物品18を、殺菌温度、すなわち概ね121°まで加熱することである。無菌の空気も、殺菌すべき物品とチャンバ1内の圧力間の平衡を創出するために、管8を通ってチャンバ内に導入される。
【0049】
殺菌プロセスの第2の段階では、すなわち実際の殺菌段階では、ファン2は、より低速で作用するように調整されてよく、チャンバ1内の温度および圧力は、一定の値に維持され、すなわち温度は、物品18が殺菌される間、殺菌温度に保たれる。
【0050】
物品が殺菌されたとき、殺菌プロセスの第3の段階が開始する。この段階では、冷却流体、たとえば冷水が、両方の第1および第2の熱交換機11、19にそれぞれの管を通して供給されている。製品の温度が概ね100°に到達したとき、ファン2は、その速度が殺菌段階中に低下した場合、ガス状混合物をチャンバ1内で循環させるためにより高速で再度回転させられる。上記で説明した第1のプロセス段階におけるものと同様に、ガス状混合物は、チャンバ5から網17を通ってファン2の入口27内に引き込まれる。ファン2が回転するとき、ガス状混合物は、ファンの開口部28から排出され、ファン2の近傍に設けられた第2の熱交換機19を通過する。上記で述べたように、ガス状混合物がファンの開口部28から排出される速度により、ガス状混合物は、第2の熱交換機を通過するとき、ファンに対して見て接線および動径両方の速度成分を有することになる。したがって、ファンの近傍のガス状混合物の流れは、上面図で見て、らせん状パターン内にある。このため、ガス状混合物が第2の熱交換機と接触する距離は、動径成分のみを有する流れと比較して増大する。ガス状混合物が第2の熱交換機と接触する距離が長いほど、有益であり、その理由は、こうした距離が、ガス状混合物のより効果的な冷却をもたらすためである。
【0051】
ガス状混合物が第2の熱交換機を通過したとき、かつ隔壁4および隔壁の上部セクション15により、排出された混合物は、チャンバの各側のダクト12内に移動する。ダクト12を通る途中、ガス状混合物は、各ダクト内で第1の熱交換機11も通過する。上記で説明したように、接線速度成分は、ガス状混合物がファンから遠ざかるにつれて低減し、これにより、ガス状混合物は、第1の熱交換機を通るとき、ほぼ動径成分のみで移動する。図1では、隔壁要素21、22の長穴23は、位置合わせされ、ガス状混合物は、長穴を通ってダクト12を出ることができる。あるいは、長穴23は、閉じられてよく、ガス状混合物は、このとき、隔壁とチャンバの床30の間に設けられた開口部29に移動し、これらの開口部を通って空間5に再度入る。ガス状混合物は、空間5に入ると、物品18と接触し、これを冷却する。
【0052】
隔壁要素21、22の長穴23により、第1および第2の熱交換機によって冷却されたガス状混合物が、空間5に入るべきところを決定することが可能である。隔壁要素21、22が、長穴23が閉じられるように互いに関連して位置決めされる場合、ガス状混合物のすべては、ダクト12を出て、隔壁4とチャンバ1の底部30の間に設けられた開口部29を通って空間5に入る。したがって、殺菌すべき物品18のための空間4内の流れは、ほぼ垂直である。しかし、隔壁要素21、22が、長穴23が開き、開口部29が閉じるように(図1に示されているように)互いに関連して位置決めされれば、ガス状混合物の流れは、ダクト12を出て、長穴を通って空間5に入る。したがって、冷却されたガス状混合物は、次いで、オートクレーブの高さに沿ってさまざまな高さで空間5に入り、殺菌すべき物品18のための空間5内のガス状混合物の流れは、物品18を通過するときにほぼ水平になる。
【0053】
オートクレーブを、例示した実施形態に関連して説明してきた。しかし、いくつかの改変および適合が、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲内で可能である。
【0054】
たとえば、オートクレーブは、殺菌すべき物品を含むための1つのゾーン、1つのファン、1つの第2の熱交換機、およびオートクレーブのそれぞれの側壁に沿って各々が配置された第1の熱交換機の1つの組を備えるものとして説明してきた。しかし、大型のオートクレーブは、空間5内にいくつかの殺菌ゾーンを含むことができる。たとえば、これは、1つから5つの殺菌ゾーンを備えるオートクレーブで可能になる。この場合、各々の殺菌ゾーンには、それ専用のファン、熱交換機などが設けられてよい。
【0055】
可能性のある別の改変は、チャンバの側壁に沿って、ただし流れ経路内の第1の熱交換機の前方に、第2の熱交換機を提供することである。この場合、蒸気および/または空気の流れは、第2の熱交換機を通過するとき、依然として接線速度成分を有することができる。
【0056】
さらに、第2の熱交換機は、ファンの周りで円周方向にらせん形状で延びる水平に配置された管を備えるものとして説明してきた。しかし、たとえばファンの周りに設けられた、水平に設けられた相互連結されたプレートを備えた熱交換機を使用することも考えられる。
【0057】
さらに、図に示す長穴23は、オートクレーブの側壁の高さ延長部に関連して概ね45°の角度で延びるものとして例示してきた。この実施形態の利点は、殺菌すべき物品18用の同じ種類のキャリアが必ずしも使用されるのではないことである。長穴が水平の延長部を有していた場合、長穴の1つまたはいくつかの列が、殺菌すべき物品のためのキャリアによってブロックされるようになる状況が起こり得る。しかし、長穴は、水平、垂直、またはオートクレーブの高さ延長部に関連してさまざまな角度で延びることも当然ながら考えられる。
【0058】
さらに、上記で説明した実施形態では、開口部29は、ガス状混合物が長穴23を通過することを可能にするように隔壁要素21、22が配置されたときは閉じられている。しかし、隔壁要素が長穴を通る流れを可能にするように配置されたとき、開口部29が閉じられないように隔壁要素21、22を配置することも考えられる。そのような実施形態では、ガス状混合物の流れの一部は、長穴23を通ってダクト12を出ることができ、ガス状混合物の残りの流れは、開口部29を通って出ることができる。
【0059】
さらに、たとえば長穴付きまたは長穴無しの1つの固定された隔壁要素を有するなど、隔壁の設計に関する他の代替策も考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌すべき物品(18)を受け入れるための空間(5)を備えたチャンバ(1)と、蒸気および/または空気を前記チャンバ内で循環させるための少なくとも1つのファン構成(2)と、前記蒸気および/または空気を冷却および/または加熱するための少なくとも1つの第1の熱交換機構成(11)とを備えるベンチレータ式オートクレーブであって、前記ファン構成が、前記蒸気および/または空気を前記チャンバ(1)内で循環させるように配置および構成されており、前記チャンバ(1)が、前記チャンバ(1)内で循環される前記蒸気および/または空気が殺菌すべき前記物品(18)に到達する前に前記第1の熱交換機構成(11)の少なくとも一部を通過する流れ経路をたどるように構成されているもので、
前記流れ経路内で前記第1の熱交換機構成(11)の上流側に設けられた少なくとも1つの第2の熱交換機構成(19)をさらに備え、前記第2の熱交換機構成(19)が、前記ファン構成によって循環されている蒸気および/または空気の前記流れが、前記第2の熱交換機構成(19)を通過するとき、前記ファン構成に対して見て接線速度成分を有するように、前記ファン構成(2)の周囲から距離を置いて設けられることを特徴とする、ベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのファン構成(2)が前記チャンバ(1)の天井(24)に設けられている、請求項1に記載のベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項3】
前記チャンバ(1)の対向する側壁(10)の少なくとも2つに隣接して設けられた2つの第1の熱交換機構成(11)を備えている、請求項1または2に記載のベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項4】
少なくとも1つの隔壁(4)を備え、前記隔壁が、殺菌すべき物品(18)を受け入れるためのチャンバ(5)を、前記第1の熱交換機構成(11)が設けられた空間(12)から分離している、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項5】
前記第2の熱交換機構成(19)が前記チャンバ(1)の前記天井(24)に設けられている、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項6】
前記第2の熱交換機構成(19)が、前記ファン構成(2)を囲むように設けられている、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項7】
前記第2の熱交換機構成(19)が、前記ファン構成(2)の周囲から0〜25cmの距離、より好ましくは前記ファン構成(2)の周囲から2〜12cmの距離、最も好ましくは前記ファン構成(2)の周囲から3〜7cmの距離を置いて設けられている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項8】
前記第2の熱交換機構成(19)が、前記ファン構成(2)の直径の0〜50%、より好ましくは前記ファン構成(2)の直径の4〜25%、最も好ましくは前記ファン構成(2)の直径の6〜14%に相当する前記ファン構成(2)の周囲からの距離を置いて設けられている、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項9】
隔壁(4)を備え、前記隔壁が、殺菌すべき物品(18)を受け入れるための前記空間(5)を、前記第1の熱交換機構成(11)が設けられた前記空間(12)から分離しており、前記隔壁(4)には、蒸気および/または空気の流れの一部または全部を分流させることができる長穴(23)が設けられる、請求項1ないし8のいずれか一項に記載のベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項10】
前記長穴(23)が前記隔壁(4)に沿ってさまざまな高さで設けられており、蒸気および/または空気の流れの一部を前記チャンバ(1)内でさまざまな高さで分流させることができる、請求項9に記載のベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項11】
前記隔壁(4)が、互いに対して移動可能である2つの隔壁要素(21、22)を備え、前記隔壁要素(21、22)の各々が長穴(23)を備え、蒸気および/または空気の流れの一部または全部を前記流れ経路から殺菌すべき物品のための前記空間(5)内に分流させることを可能にするために、前記2つの隔壁要素(21、22)を互いに位置合わせすることが可能である、請求項9または10に記載のベンチレータ式オートクレーブ。
【請求項12】
少なくとも2つのファン構成(2)を備え、第2の熱交換機構成(19)が、前記ファン構成(2)の各々に対して設けられている、請求項1ないし11のいずれか一項に記載のベンチレータ式オートクレーブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−525911(P2012−525911A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509755(P2012−509755)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050500
【国際公開番号】WO2010/128907
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(509050373)ゲティンゲ ステラリゼイション アクチボラゲット (4)
【Fターム(参考)】