ベータアミロイドペプチドを認識するヒト化抗体
本発明は、患者の脳内のAβのアミロイド沈着に関連する疾患の処置のための改善された薬剤および方法を提供する。好ましい薬剤は抗体、例えばヒト化抗体を含む。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、前に出願した米国特許仮出願第60/474,654号(2003年5月30日出願)、名称「ベータアミロイドペプチドを認識するヒト化抗体」の利益を主張する。以上に引用された出願の内容全体は、引用することにより本明細書に編入される
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、老人性痴呆をもたらす進行性疾患である、全般的には、非特許文献1、特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4参照。広く云えば、該疾患は、老齢(年齢65以上)で発生する遅発型、老人期よりかなり以前、すなわち年齢35〜60歳で発生する早発型の二つの分類に入る。双方の型の疾患で、病理学的には同様であるが、しかし異常が早期に開始する場合の方がより重症で広範になりやすい。該疾患は、脳内の少なくとも二つの形式の病変、すなわち神経原繊維錯綜および老人斑を特徴とする。神経原繊維錯綜は、対になって互いの回りに巻きつく二本の繊維から成る微小管関連タウタンパク質の細胞内沈着である。老人斑(すなわちアミロイド斑)は、中心部に細胞外アミロイド沈着物を有する直径150μmまでの無定型神経網の領域であり、これは脳組織切片の顕微鏡分析により見える。脳内のアミロイド斑の蓄積もダウン症候群およびその他の認知障害に関連する。
【0003】
斑の主要な成分は、Aβまたはβ−アミロイドペプチドと称されるペプチドである。Aβペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)と称される大きい膜貫通糖タンパク質の39〜43アミノ酸の4kDa内部フラグメントである。さまざまなセクレターゼ酵素によるAPPのタンパク質分解処理の結果として、Aβは長さ40アミノ酸の短型と長さ42〜43アミノ酸の長型の双方で主として見いだされている。APPの疎水性膜貫通ドメインの部分は、Aβのカルボキシ末端で見いだされ、そして特に長型の場合に、斑内に凝集するAβの能力の原因に関係するであろう。脳内のアミロイド斑の蓄積は、神経細胞の死に導くこともある。この形式の神経劣化と関連する身体的症状がアルツハイマー病の特徴である。
【0004】
APPタンパク質内の数種の変異は、アルツハイマー病の存在と相関関係がある。例えば非特許文献5(バリン717 からイソロイシン)、非特許文献6(バリン717 からグリシン)、非特許文献7(バリン717 からフェニルアラニン)、非特許文献8(二重変異、リシン595 −メチオニン596 からアスパラギン595 −ロイシン596 へ変化)参照。かかる変異は、AβへのAPPの増加または改変プロセシング、特にはAβの長型(すなわちAβ1−42およびAβ1−43)の増加した量へのAPPのプロセシングによりアルツハイマー病を発生すると考えられる。他の遺伝子、例えばプレセニリン(presenilin)遺伝子、PS1およびPS2の変異は、APPのプロセシングに間接的に影響して長型APPの増加した量を生成すると考えられる(非特許文献9参照)。
【0005】
マウスモデルは、アルツハイマー病におけるアミロイド斑の重要性を決定するために使用されて成功した(上記の非特許文献4、非特許文献10)。 特に、PDAPPトランスジェニックマウス(ヒトAPPの変異型を発現しそして若年でアルツハイマー病を発生する)は、Aβの長型を注入されると、それらはアルツハイマー病の進行の低下およびAβペプチドへの抗体力価の増加の双方を示す(非特許文献11)。上記の観察結果は、Aβ、特にその長型が、アルツハイマー病の原因要素であることを示す。
【特許文献1】Hardy et al.,国際特許公開第92/13069号パンフレット
【非特許文献1】Selkoe,TINS 16:403(1993)
【非特許文献2】Selkoe,J.Neuropathol.Eur.Neurol.53:438(1994)
【非特許文献3】Duff et al.,Nature 373:476(1995)
【非特許文献4】Games et al.,Nature 373:523(1995)
【非特許文献5】Goate et al.,Nature 349:704(1991)
【非特許文献6】Chartier Harlan et al.,Nature 353:844(1991)
【非特許文献7】Murrell et al.,Science 254:97(1991)
【非特許文献8】Mullan et al.,Nature Genet.1:345(1992)
【非特許文献9】Hardy,TINS 20:154(1997)
【非特許文献10】Johnson−Wood et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:1550(1997)
【非特許文献11】Schenk et al.,Nature 400,173(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、アルツハイマー病の処置のための新規の治療法および試薬、特には生理学的(すなわち無毒性)投与で治療の利益を得ることができる治療法および薬剤への要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、新規の免疫グロブリン試薬、具体的にはアミロイド(amyloidogenic)疾患(例えばアルツハイマー病)の予防および処置のための治療用抗体試薬を特徴とする。本発明は、少なくとも部分的には、Aβペプチドに特異的に結合しそしてアミロイド障害に関連する斑負荷軽減に有効なモノクローナル抗体、12A11、の同定および特性化に基づく。本抗体の構造および機能分析は、予防および/または治療への使用のための種々のヒト化抗体の設計に導く。特には、本発明は、本抗体の種々の領域の抗体のヒト化を特徴とし、それにより、ヒト化免疫グロブリンまたは抗体連鎖、本来のヒト化免疫グロブリンまたは抗体、および機能的免疫グロブリンまたは抗体フラグメント、殊には特徴的な抗体の抗原結合フラグメントを提供する。
【0008】
特徴とするモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)を含んでなるポリペプチドも、該ポリペプチドをコードするために適するポリヌクレオチド試薬、ベクターおよび宿主細胞として開示される。
【0009】
アミロイド疾患または障害(例えばアルツハイマー病)を処置する方法が、かかる用途に使用するために製薬学的組成物およびキットとして開示される。
【0010】
さらに特徴とするのは、治療試薬として使用される場合に、改善された結合親和性および/または低下した免疫原性を有するヒト化抗体の設計において、適切な免疫学的機能のためおよび置換を受けやすい残基を同定するために重要な特徴的なモノクローナル抗体内の残基を同定する方法である。
【0011】
さらに特徴とするのは、改変されたエフェクター機能を有する抗体(例えばヒト化抗体)、およびそれらを用いる治療法への使用である。
発明の詳細な説明
本発明は、アルツハイマー病またはその他のアミロイド疾患の予防または処置のための新規の免疫学的試薬および方法を特徴とする。本発明は、少なくとも一部分は、ベータアミロイドタンパク質(Aβ)を結合(例えば可溶性および/または凝集Aβを結合)、ファゴサイトーシス(例えば凝集Aβのもの)の媒介、斑負荷の低下よび/または神経炎性ジストロフィーの低下(例えば患者内において)に有効なモノクローナル免疫グロブリン、12A11、の特性化に基づく。本発明は、さらに12A11免疫グロブリンの可変軽鎖および重鎖の一次および二次構造の決定および構造特性化ならびに活性および免疫原性に重要な残基の同定に基づく。
【0012】
免疫グロブリンは、本明細書中に記載の12A11モノクローナル免疫グロブリンの可変軽鎖および/または可変重鎖を含むものを特徴とする。好ましい免疫グロブリン、例えば治療用免疫グロブリンは、ヒト化可変軽鎖および/またはヒト化可変重鎖を含むものを特徴とする。好ましい可変軽鎖および/または可変重鎖は、12A11免疫グロブリン(例えばドナー免疫グロブリン)からの相補性決定領域(CDR)およびヒトアクセプターからまたは本質的にそれからの可変フレームワーク領域を含む。「ヒトアクセプター免疫グロブリンから本質的に」の語句は、大部分または重要なフレームワーク残基が、ヒトアクセプター配列由来であるが、しかし、ヒト化免疫グロブリンの活性を改善するために選択(例えばドナー免疫グロブリンの活性をさらに良く模倣するように活性を改変する)されたかまたはヒト化免疫グロブリンの免疫原性を低下するように選択された残基で一定の位置の残基の置換を許すことを意味する。
【0013】
一つの態様では、本発明は、12A11可変領域相補性決定領域(CDR)を含み(すなわち配列番号2として示される軽鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを含むか、または配列番号4として示される重鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを含み)、そしてヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖または重鎖配列からの可変フレームワーク領域を含み、場合により相応するネズミ残基に復帰突然変異したフレームワーク残基の少なくとも1個の残基を有し、ここで該復帰突然変異はAβ結合を指定(direct)する鎖の能力に本質的に影響を与えない、ヒト化免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖を特徴とする。
【0014】
一つの態様では、本発明は、12A11可変領域相補性決定領域(CDR)を含み(すなわち配列番号2として示される軽鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを含むか、または配列番号4として示される重鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを含む)、そして本質的にヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖または重鎖配列からの可変フレームワーク領域を含み、場合により相応するネズミ残基に復帰突然変異したフレームワーク残基の少なくとも1個の残基を有し、ここで該復帰突然変異はAβ結合を指定する鎖の能力に本質的に影響を与えない、ヒト化免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖を特徴とする。
【0015】
別の態様では、本発明は、12A11可変領域相補性決定領域(CDR)を含み(例えば、配列番号2として示される軽鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを含み、そして/または配列番号4として示される重鎖可変領域配列からの1、2または3個のCDRを含み)、そして本質的にヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖または重鎖配列からの可変フレームワーク領域を含み、場合によりマウス12A11軽鎖もしくは重鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換された少なくとも1個のフレームワーク残基を有し、ここで該フレームワーク残基は、(a)抗原を直接非共有結合的に結合している残基、(b)CDRに隣接する残基、(c)CDRと相互作用する残基(例えば相同の既知免疫グロブリン鎖の解明された(solved)構造上の軽鎖もしくは重鎖をモデルにして同定される)、および(d)VL−VH界面に関与する残基から成る群から選択される、ヒト化免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖を特徴とする。
【0016】
別の態様では、本発明は、12A11可変領域相補性決定領域(CDR)およびヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖または重鎖配列からの可変フレームワーク領域を含み、場合によりマウス12A11軽鎖もしくは重鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換された少なくとも1個のフレームワーク残基を有し、ここでフレームワーク残基は、可変領域の三次元モデルの分析により同定された軽鎖可変領域コンホメーションまたは機能に影響できる残基、例えば抗原と相互作用できる残基、抗原結合部位に近位の残基、CDRと相互作用できる残基、CDRに隣接する残基、CDR残基から6Å以内の残基、カノニカル残基、バーニアゾーン残基、鎖間充填残基、通常ではない残基、または構造モデルの表面上のグリコシル化部位残基である、ヒト化免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖を特徴とする。
【0017】
別の態様では、本発明は、上記の置換に加えて、少なくとも1個の稀な(rare)ヒトフレームワーク残基の置換を特徴とする。例えば、稀な残基は、その位置においてヒト可変鎖配列に共通であるアミノ酸残基で置換されることができる。あるいは、稀な残基は、相同生殖細胞系可変鎖配列からの相応するアミノ酸残基で置換されることができる。
【0018】
別の態様では、本発明は、上記のような軽鎖および重鎖、または該免疫グロブリンの抗原結合フラグメントを含むヒト化免疫グロブリンを特徴とする。例示的な態様では、ヒト化免疫グロブリンは、ベータアミロイドペプチド(Aβ)に対して少なくとも107 M−1、108 M−1または109 M−1の結合親和性をもって結合(例えば特異的結合)する。別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントは、イソタイプγ1を有する重鎖を含む。別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントは、可溶性ベータアミロイドペプチド(Aβ)および凝集Aβのいずれかまたは双方に結合(例えば特異的結合)する。別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントは、可溶性Aβ(例えば可溶性Aβ1−42)を捕捉(capture)する。別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントはベータアミロイドペプチド(Aβ)のファゴサイトーシスを媒介(例えばファゴサイトーシスを誘発)する。さらに別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントは対象(subject)内の血液脳関門を通過する。さらに別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントは、対象内のベータアミロイドペプチド(Aβ)負荷および神経炎ジストロフィーのいずれかまたは双方を低下する。
【0019】
別の態様では、本発明は12A11可変領域(例えば配列番号2または配列4として示される可変領域配列)を含むキメラ免疫グロブリンを特徴とする。さらに別の態様では、免疫グロブリン、またはその抗原結合フラグメントは、IgG1からの定常領域をさらに含む。
【0020】
本明細書内に記載の免疫グロブリンは、アミロイド疾患の予防または処置を目的とする治療法に使用するために特に適する。一つの態様では、本発明は、本明細書中に記載のヒト化免疫グロブリンの有効投与量を患者に投与することを含むアミロイド疾患(例えばアルツハイマー病)の予防または処置の方法を特徴とする。別の態様では、本発明は、本明細書中に記載のヒト化免疫グロブリンおよび製薬学的キャリヤを含む製薬学的組成物を特徴とする。免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは本明細書中有に記載の鎖を製造するための単離された核酸分子、ベクターおよび宿主細胞、ならびに上記の免疫グロブリン免疫グロブリンフラグメントもしくは免疫グロブリン鎖を製造するための方法も特徴とする。
【0021】
本発明は、さらに、それぞれヒト化12A11免疫グロブリンを製造する場合に置換されやすい12A11残基を同定する方法を特徴とする。例えば、置換されやすい可変フレームワーク領域残基を同定する方法は、解明された相同性免疫グロブリン構造上の12A11可変領域の三次元構造をモデルとし、そして置換されやすい残基を同定するように、12A11免疫グロブリン可変領域コンホメーションまたは機能に影響できる残基の該モデルを分析することを含む。本発明は、さらに12A11免疫グロブリン、12A11免疫グロブリン鎖、またはそれらのドメインの三次元イメージを作製する際に、配列番号2もしくは配列番号4、またはそれらのいずれかの部分として示される可変領域配列の使用を特徴とする。
【0022】
本発明は、さらに、エフェクター分子、例えばエフェクター細胞上の補体または受容体を結合できるような、改変されたエフェクター機能を有する免疫グロブリンをさらに特徴とする。特には、本発明の免疫グロブリンは、改変された定常領域、例えばFc領域を有し、ここでFc領域内の少なくとも1個のアミノ酸残基は、異なる残基または側鎖と置換されている。一つの態様では、変性された免疫グロブリンはIgGクラスであり、例えば非変性免疫グロブリンと比較して、免疫グロブリンが改変されたエフェクター機能を有するようにFc領域内の少なくとも1個のアミノ酸残基置換を含んでなる。特別の態様では、本発明の免疫グロブリンは、その免疫原性がさらに低いような改変されたエフェクター機能(例えば望ましくないエフェクター細胞活性、溶解、または補体結合を起こさない)を有するか、改善されたアミロイド除去性を有するか、および/または望ましい半減期を有する。
【0023】
発明を説明する前に、今後使用する一部の用語の定義を示すとその理解の助けとなるであろう。
【0024】
「免疫グロブリン」または「抗体」の用語(本明細書内では互換的に使用される)は、2個の重鎖および2個の軽鎖から成る基本的な四ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指し、該鎖は例えば鎖間ジスフィド結合により安定化されており、それは抗原を特異的に結合する能力を有する。「一本鎖免疫グロブリン」または「一本鎖抗体」の用語(本明細書内では互換的に使用される)は、重鎖および軽鎖から成る二ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指し、該鎖は例えば鎖間ジスフィド結合により安定化されており、それは抗原を特異的に結合する能力を有する。「ドメイン」の用語は、例えばβプリートシートおよび/または鎖内ジスルフィド結合により安定化されたペプチドループを含んでなる(例えば3〜4ペプチドループを含んでなる)重鎖または軽鎖ポリペプチドの球状領域を指す。ドメインは、さらに本明細書内では、「定常」ドメインの場合には種々のクラスメンバーのドメイン内の配列変動の相対的な欠如、または「可変」ドメインの場合には種々のクラスメンバーのドメイン内の著しい変動に基づいて、本明細書内では「定常」または「可変」と称される。抗体またはポリペプチド「ドメイン」は、抗体またはポリペプチド「領域」のように当該技術分野ではしばしば互換的に称される。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域または「CL」ドメインとして互換的に称される。抗体重鎖の「定常」ドメインは、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域または「CH」ドメインとして互換的に称される。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域または「VL」ドメインとして互換的に称される。抗体重鎖の「可変」ドメインは、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「VH」領域または「VH」ドメインとして互換的に称される。
【0025】
「領域」の用語は、抗体鎖または抗体鎖ドメインの部分または一部(例えば本明細書中に定義される重鎖もしくは軽鎖の部分または一部または定常もしくは可変ドメインの部分または一部)、ならびに上記の鎖またはドメインのさらに細分された部分または一部も指すことができる。例えば、軽鎖および重鎖または軽鎖または重鎖可変ドメインは、本明細書中に定義される「フレームワーク領域」または「FR」の間の内部に散在する「相補性決定領域」または「CDR」を含む。
【0026】
免疫グロブリンまたは抗体は、モノマーもしくはポリマー形態、例えば五量体で存在するIgM抗体および/または単量体、二量体もしくは多量体で存在するIgA抗体として存在できる。「フラグメント」の用語は、本来または完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含んでなる抗体または抗体鎖の部分または一部を指す。フラグメントは、本来または完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的処理を介して得ることができる。フラグメントは組換え手段によって得ることもできる。例示的なフラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2および/またはFvフラグメントを含む。「抗原結合フラグメント」の用語は、抗原を結合するかまたは本来の抗体(例えばそれらが誘導された本来の抗体)と抗原結合(すなわち特異性結合)に関して競合する免疫グロブリンまたは抗体のポリペプチドフラグメントを指す。
【0027】
「コンホメーション」の用語は、タンパク質またはポリペプチド(例えば抗体、抗体鎖、ドメインまたはその領域)の三次構造を指す。例えば、「軽(または重)鎖コンホメーション」の語句は、軽(または重)鎖可変領域の三次構造を指し、そして「抗体コンホメーション」または「抗体フラグメントコンホメーション」の語句は、抗体またはそのフラグメントの三次構造を指す。
【0028】
抗体の「特異性結合」とは、抗体が特定の抗原またはエピトープに容易に感知できる親和性を示しそして、一般的に、著しい交差反応性を示さないことを意味する。例示的な態様では、抗体は交差反応性を示さない(例えば非AβペプチドとまたはAβ上の遠隔エピトープと交差反応しない)。「容易に感知できる(appreciable)」または好ましい結合は、少なくとも106、107、108、109M−1、または1010M−1の親和性を有する結合を含む。107M−1より大きく、好ましくは108M−1より大きい親和性がさらに好ましい。本明細書中に示すそれらの中間の値も本発明の範囲内にあると意図しそして好ましい結合親和性は、例えば106〜1010M−1、好ましくは107〜1010M−1、さらに好ましくは108〜1010M−1の親和性の範囲と指示できる。「著しい交差反応性を示さない」抗体は、望ましくない物体(entity)(例えば望ましくないタンパク質様物体)に容易には感知できない結合をするものである。例えば、Aβに特異的に結合する抗体は、非Aβタンパク質またはペプチド(例えば斑中に含まれる非Aβタンパク質またはペプチド)と容易に感知できるほどには結合するが著しくは反応しない。特定のエピトープに特異的な抗体は、例えば同じタンパク質またはペプチド上の遠隔のエピトープと著しくは交差反応しない。特異性結合は、かかる結合を決定するための当該技術分野で認知されたいかなる手段によっても決定できる。好ましくは、特異性結合は、Scatchard分析および/または競合結合性アッセイによって決定される。
【0029】
結合性フラグメントは、組換えDNA技術により、または本来の免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的開裂により産生される。結合性フラグメントには、Fab、Fab’、F(ab’)2 、Fabc、Fv、一本鎖、および一本鎖抗体が含まれる。「二重特異性」または「二重官能性」免疫グロブリンまたは抗体の外は、免疫グロブリンまたは抗体はそれぞれ同一のその結合部位を有すると理解される。「二重特異性」または「二重官能性抗体」は、2個の異なる重/軽鎖対および2個の異なる結合部位を有する人工的ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体はハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結を含む種々の方法により産生できる。例えばSongsivilai & Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelny et al.,J.Immunol.148,1547−1553(1992)参照。
【0030】
「ヒト化免疫グロブリン」または「ヒト化抗体」の用語は、少なくとも1個のヒト化免疫グロブリンまたは抗体鎖(すなわち少なくとも1個のヒト化軽鎖または重鎖)を含む免疫グロブリンまたは抗体を指す。「ヒト化免疫グロブリン鎖」または「ヒト化抗体鎖」(すなわち「ヒト化免疫グロブリン軽鎖」または「ヒト化免疫グロブリン重鎖」)の用語は、本質的にヒト免疫グロブリンまたは抗体からの可変フレームワーク領域および本質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体からの相補性決定領域(CDR)(例えば少なくとも1個のCDR、好ましくは2個のCDR、さらに好ましくは3個のCDR)を含む領域を有し、さらに定常領域(例えば軽鎖の場合には少なくとも1個の定常領域またはその部分、そして重鎖の場合には好ましくは3個の定常領域)を含む免疫グロブリンまたは抗体鎖(すなわちそれぞれ軽鎖または重鎖)を指す。「ヒト化可変領域」(例えば「ヒト化軽鎖可変領域」および「ヒト化重鎖可変領域」)の用語は、本質的にヒト免疫グロブリンまたは抗体からの可変フレームワーク領域および本質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体からの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を指す。
【0031】
「本質的にヒト免疫グロブリンまたは抗体から」または「本質的にヒト」の語句は、比較の目的でヒト免疫グロブリンまた抗体アミノ配列に対して整列された場合に、領域が、ヒトフレームワークまたは定常領域配列に対して少なくとも80〜90%、90〜95%、または95〜99%同一性(すなわち局所配列同一性)を共有し、例えば保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系置換、復帰突然変異などを可能とすることを意味する。保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系置換、復帰突然変異などの導入は、例えばヒト化抗体または鎖の「最適化」と呼ばれる。「本質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体から」または「本質的非ヒト」の語句は、非ヒト生物体、例えば非ヒト動物のものに対して少なくとも80〜95%、好ましくは少なくとも90〜95%、さらに好ましくは、96%、97%、98%、または99%同一性の免疫グロブリンまたは抗体配列を有することを意味する。
【0032】
したがって、ヒト化免疫グロブリンもしくは抗体、またはヒト化免疫グロブリンもしくは抗体の鎖のすべての領域もしくは残基は、多分CDRを除いて、1個またはそれ以上の本来のヒト免疫グロブリン配列の相応する領域もしくは残基に本質的に同一性する。「相応する領域」または「相応する残基」の用語は、第一および第二の配列が比較の目的で最適に配列された場合に、最初のアミノ酸またはヌクレオチド配列上の領域または残基と同じ(すなわち等価の)位置を占める第二のアミノ酸またはヌクレオチド配列上の領域または残基を指す。
【0033】
「著しい同一性」の用語は、例えばデフォールトギャップウェイトを用いるプログラムGAPまたはBESTFITにより最適に整列された場合に、少なくとも50〜60%の配列同一性、好ましくは少なくとも60〜70%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも70〜80%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも80〜90%の配列同一性、もっとさらに好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、そしてもっとさらに好ましくは少なくとも95%以上の配列同一性またはそれ以上(例えば99%の配列同一性またはそれ以上)を共有する2個のポリペプチド配列を意味する。「本質的に同一性」の用語は、例えばデフォールトギャップウェイトを用いるプログラムGAPまたはBESTFITにより整列された場合に、少なくとも80〜90%の配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、そしてさらに好ましくは少なくとも95%の配列同一性またはそれ以上(例えば99%の配列同一性またはそれ以上)を共有する2個のポリペプチド配列を意味する。配列比較のために、典型的には一つの配列が参照(reference)配列として働き、それに試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピューターに入力し、必要ならば下位配列座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。次いで配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメーターに基づいて参照配列に対する試験配列の配列同一性百分率を算出する。
【0034】
比較のための配列の最適整列は、例えばSmith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needlman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性整列アルゴリズムにより、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性探索法により、それらのアルゴリズムの計算機化手段(GAP,BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIによる)により、または目視検査(一般的にはAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology参照)により実行できる。配列同一性百分率および配列類似性を決定するために適するアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、それはAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990)に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Informationを通して公開利用できる(National InstituteS of Health NCBIインターネットサーバーを介して公開利用できる)。典型的には、デフォールトプログラムパラメーターが配列比較を実行するために使用できるが、独自のパラメーターも使用できる。アミノ酸配列のためには、BLASTPプログラムはデフォールトとして3の語長(W)、10の期待(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)参照)。
【0035】
好ましくは、同一性しない残基位置は保存的(conservative)アミノ酸置換により異なる。保存的および非保存的としてアミノ酸置換を分類する目的で、アミノ酸は下記のように類別される:グループI(疎水性側鎖):leu、met、ala、val、leu、ile;グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸性側鎖):asp、glu;グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;グループV(鎖方向に影響する残基):gly、pro;およびグループVI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換は、同じ分類内のアミノ酸間の置換を含む。非保存的置換は、それらの分類の一つのメンバーから他のもののメンバーへの交換である。
【0036】
好ましくは、ヒト化免疫グロブリンまたは抗体は、相応する非ヒト化抗体のものよりも3、4、または5の係数以内の親和性で抗原を結合する。例えば、非ヒト化抗体が109M−1の結合親和性を有する場合、ヒト化抗体は少なくとも3x109M−1、4x109M−1または5x109M−1の結合親和性を有するであろう。免疫グロブリンまたは抗体鎖の結合性を記述する場合に、鎖は「直接抗原(例えばAβ)結合」へのその能力に基づいて記述できる。鎖が本来の免疫グロブリンまたは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)に対して特異性結合性または結合親和性を与える場合に、鎖は「直接抗原結合性」と称される。重鎖または軽鎖を含んでなる本来の免疫グロブリンまたは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)の結合親和性が、変異を欠失する等価の鎖を含んでなる抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)のものと比較して少なくとも一桁程度の大きさで影響(例えば低下)する場合に、該変異(例えば復帰突然変異)は、抗原結合性を指定する重鎖もしくは軽鎖の能力に本質的に影響すると称される。鎖を含んでなる本来の免疫グロブリンまたは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)の結合親和性を、変異を欠失する等価の鎖を含んでなる抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)のものと比較して、該変異が2、3、または4の係数のみ影響(例えば低下)する場合に、該変異は抗原結合を指定する鎖の能力に「本質的に影響(例えば低下)しない」と称される。
【0037】
「キメラ免疫グロブリン」または抗体の用語は、可変領域が第一の種から誘導され、そして定常領域が第二の種から誘導された免疫グロブリンまたは抗体を指す。キメラ免疫グロブリンまたは抗体は、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから、例えば遺伝子操作により構築できる。「ヒト化免疫グロブリン」または「ヒト化抗体」の用語は、以下に定義するように、キメラ免疫グロブリンまたは抗体を包含することを意図しない。ヒト化免疫グロブリンまたは抗体はその構造でキメラ(すなわち一種を越えるタンパク質からの領域を含んでなる)であるが、それらは本明細書中に定義するキメラ免疫グロブリンまたは抗体内に見いだされない追加の特徴(すなわちドナーCDR残基およびアクセプターフレームワーク残基を含んでなる可変領域)を含む。
【0038】
「抗原」は、抗体がそれに特異的に結合する物体(例えばタンパク質様のものまたはペプチド)である。
【0039】
「エピトープ」または「抗原決定基」の用語は、免疫グロブリンまたは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)がそれに特異的に結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続したアミノ酸またはタンパク質の三次折り畳みにより並置される非連続アミノ酸の双方から形成できる。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、変性溶剤に暴露されても典型的には保存されるが、三次折り畳みにより形成されるエピトープは変性溶剤による処理で典型的には失われる。エピトープは、典型的には、一つの立体コンホメーション内で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。エピトープの立体コンホメーションを決定する方法には、例えばX線結晶学法および二次元核磁気共鳴法が含まれる。例えばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed(1996)参照。
【0040】
同じエピトープを認識する抗体は、標的抗原に対する他の抗体の結合を遮断する一つの抗体の能力を示す単純な免疫アッセイ、すなわち競合結合性アッセイで同定できる。競合結合性は、供試免疫グロブリンが共通の抗原、例えばAβに対する参照抗体の特異性結合を阻害するアッセイで決定される。多くのタイプの競合結合性アッセイが既知であり、例えば下記である:固相直接または間接放射免疫アッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ型競合アッセイ(Stahli et al.,Methods in Enzymology 9:242(1983)参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al.,J.Immunol.137:3614(1986)参照);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチ型アッセイ(Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)参照);I−125標識を使用する固相直接標識RIA(Morel et al.,Mol.Immunol.25(1):7(1988)参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al.,Virology 176:546(1990));および直接標識RIA(Moldenhauer et al.,Scand.J.Immunol.32:77(1990))。典型的には、このようなアッセイは、固体表面に結合された精製抗原またはそれらのいずれかを有する細胞、非標識試験免疫グロブリンおよび標識した参照免疫グロブリンの使用を含む。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面または細胞に結合する標識の量を決定して測定される。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、それは、共通抗原への参照抗体の特異性結合を少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%またはそれ以上阻害する。
【0041】
エピトープは、免疫学的細胞、例えばB細胞および/またはT細胞によっても認識される。エピトープの細胞認識は、3Hチミジン取り込みにより、サイトカイン分泌により、抗体分泌により、または抗原依存性キリング(killing)(細胞毒性Tリンパ細胞アッセイ)により決定される抗原依存性増殖を測定するin vitroアッセイにより決定できる。
【0042】
例示的なエピトープまたは抗原決定基は、ヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)内で見いだすことができるが、しかし好ましくはAPPのAβペプチド内に見いだされる。APPの複数のアイソフォーム、例えばAPP695 APP751 およびAPP770 が存在する。APP内のアミノ酸は、APP770 アイソフォームの配列に従って番号を割当てられる(例えばGenebankアクセション番号P05067参照)。Aβ(本明細書中ではベータアミロイドペプチドおよびAベータとも呼ばれる)ペプチドは、APP(Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42およびAβ43)の39〜44個のアミノ酸の約4−kDa内部フラグメントである。例えばAβ40はAPPの残基672〜711から成りそしてAβ42はAPPの残基673〜713から成る。in vivoまたはin situにおける種々のセクレターゼ酵素によるAPPのタンパク質分解処理の結果、Aβは、アミノ酸の長さ40個の「短型」、およびアミノ酸の長さ42〜43個の範囲の「長型」の双方が見いだされた。本明細書中に記載する好ましいエピトープまたは抗原決定基は、AβペプチドのN−末端内に局在しそしてAβのアミノ酸1〜10内、好ましくはAβ42の残基1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7または3〜7からの残基を含む。追加の参照エピトープまたは抗原決定基は、Aβの残基2〜4、5、6、7もしくは8、Aβの残基3〜5、6、7、8もしくは9、またはAβ42の残基4〜7、8、9もしくは10を含む。抗原が特定の残基内のエピトープ、例えばAβ3〜7に結合すると称される場合、その意味は、特定の残基(すなわちこの例ではAβ3〜7)を含むポリペプチドに抗体が特異的に結合することである。かかる抗体は、Aβ3〜7内の各々の残基と必ずしも接触する必要はない。またAβ3〜7内のいずれかの単一アミノ酸置換または欠失は、必ずしも結合親和性に著しくは影響しない。
【0043】
「アミロイド疾患」の用語は、不溶性アミロイドフィブリルの形成または沈着と関連する(またはそれに起因する)あらゆる疾患を含む。例示的なアミロイド疾患は、全身性アミロイド症、アルツハイマー病、成人期発症糖尿病、パーキンソン病、ハンチントン病、前側頭部痴呆、およびプリオン関連伝染性海綿様脳症(ヒトにおけるクールーおよびクロイツフェルト−ヤコブ症およびそれぞれヒツジおよびウシにおけるヒツジ海綿脳症およびBSE)を含むが、それらに限定はされない。種々のアミロイド疾患が沈着フィブリルのポリペプチド成分の性質により定義または特性化されている。例えば、アルツハイマー病を有する対象または患者内で、β−アミロイドタンパク質(例えば野生型、改変体、または末端短縮β−アミロイドタンパク質)は、アミロイド沈着のポリペプチド成分として特性決定されている。従って、アルツハイマー病は、例えば対象または患者の脳内での「Aβの沈着により特性化される疾患」または「Aβの沈着と関連する疾患」の例である。「β−アミロイドタンパク質」、「β−アミロイドペプチド」、「β−アミロイド」、「Aβ」および「Aβペプチド」の用語は、本明細書中で互換的に使用される。
【0044】
「免疫原性薬剤」または「免疫原」は、場合によりアジュバントと一緒に、哺乳動物に投与する場合にそれ自体に対する免疫学的反応を誘発できる。
【0045】
本明細書中に使用される場合の「処置」の用語は、患者に対する治療薬剤の適用もしくは投与、疾患、疾患の症状もしくは疾患に対する素質を治癒、治療、軽減、解放、改変、救済、改良、改善もしくは影響させる目的で、疾患、疾患の症状もしくは疾患に対する素質を有する患者から単離された組織もしくは細胞系に対する治療薬剤の適用もしくは投与として定義される。
【0046】
「有効投与量」または「有効投与」の用語は、所望の効果を達成または少なくとも部分的に達成するために十分な量として定義される。「治療有効投与量」の用語は、疾患にすでに罹患している患者において、疾患およびその合併症を治癒または少なくとも部分的に阻止するために十分な量として定義される。この使用に有効な量は、感染の重症度および患者自身の免疫系の一般的な状態に依存する。
【0047】
「患者」の用語は、予防または治療処置のいずれかを受けるヒトおよびその他の哺乳動物対象を含む。
【0048】
「可溶性」または「分解した」Aβは、モノマー状で可溶性ならびにオリゴマー性で可溶性のAβポリペプチド(例えば可溶性Aβ二量体、三量体など)を含み、非凝集または分離したAβポリペプチドを指す。「不溶性」Aβは、例えば非共有結合により一緒に保持された凝集Aβポリペプチドを指す。Aβ(例えばAβ42)は、ペプチドのC−末端における疎水性残基(APPの膜貫通ドメインの部分)の存在により、少なくとも部分的に凝集すると考えられる。可溶性Aβは、in vivoで生物学的液体、例えば脳脊髄液および/または血清中に見いだすことができる。あるいは、可溶性Aβは、冷凍乾燥したペプチドを清潔なDMSO中に音波処理して溶解して調製できる。得られた溶液を遠心分離(例えば14,000xg、4℃、10分間)してすべての不溶性粒子体を除去する。
【0049】
「エフェクター機能」の用語は、抗体(例えばIgG抗体)のFc領域内に存在するエフェクター活性を指し、そして例えばエフェクター分子、例えば補体および/またはFc受容体を結合する抗体の能力を含み、それは抗体の数種の免疫機能、例えばエフェクター細胞活性、溶解、補体媒介活性、抗体除去、および抗体半減期を制御できる。
【0050】
「エフェクター分子」の用語は、補体タンパク質またはFc受容体を含みそれらに限定はされない抗体(例えばIgG抗体)のFc領域に結合できる分子を指す。
【0051】
「エフェクター細胞」の用語は、リンパ球、例えば抗原が存在する細胞およびT細胞を含みそれらに限定はされないエフェクター細胞の表面上に発現されるFc受容体を典型的には介して抗体(例えばIgG抗体)のFc部分に結合できる細胞を指す。
【0052】
「Fc領域」の用語は、IgG抗体のC−末端領域、特には該IgG抗体の重鎖のC−末端領域を指す。IgG重鎖のFc領域の境界は僅かに変動してもよいが、Fc領域は、IgG重鎖のアミノ酸残基Cys226付近からカルボキシル末端にわたるとして典型的には定義される。
【0053】
「Kabat番号付け」の用語は、別途記載しない限り、Kabat et
al.(「免疫学的に関係するタンパク質の配列」、第五版、Public Health Service,National Institute of
Health,Bethesda,Md(1991)、引用することにより本明細書中に明確に編入される)中のEU指数を用いる、例えばIgG重鎖鎖抗体内の残基の番号付けとして定義される。
【0054】
「Fc受容体」または「FcR」の用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。抗体(例えばIgG抗体)のFc領域に結合する典型的なFc受容体は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を含むが、それらに限定はされず、それらの受容体の対立遺伝子変異体および交互にスプライスされた形態を含む。Fc受容体は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994)およびde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)中に概説されている。
I.免疫学および治療用試薬
本発明の免疫学および治療用試薬は、本明細書中で定義される免疫原もしくは抗体、またはそれらの機能性もしくは抗原結合フラグメントを含んでなるかもしくはこれらから成る。基本抗体構造単位は、サブユニットの四量体を含んでなることが知られている。それぞれの四量体は、ポリペプチド鎖の2個の同一の対から成り、それぞれの対は一個の「軽」(約25kDa)および一個の「重」(約50〜70kDa)鎖を有する。それぞれの鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識に対応する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は主としてエフェクター機能に対応する定常領域をカノニカルする。
【0055】
軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかとして分類され、そして長さ約230残基である。重鎖は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、またはイプシロン(ε)として分類され、長さ約450〜600残基であり、そしてそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEとして抗体のイソタイプをカノニカルする。重鎖および軽鎖の双方共にドメインに折り畳まれる。「ドメイン」の用語は、タンパク質の球状領域、例えば免疫グロブリンまたは抗体を指す。免疫グロブリンまたは抗体ドメインは、例えばβプリートされたシートと鎖間ジスルフィド結合により安定化された3〜4個のペプチドループを含む。本来の軽鎖は、例えば2個のドメイン(VLおよびCL)を有し、そして本来の重鎖は、例えば4〜5個のドメイン(VH、CH1、CH2およびCH3)を有する。
【0056】
軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は約12個またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域により連結され、ここで重鎖は約10個またはそれ以上のアミノ酸の「D」領域も含む(一般的には、Fundamental Immunology,Paul,W.,ed.,2nd.ed.Raven Press,N.Y.(1989),Ch7)参照、すべての目的のために、引用することによりその全体を編入する)。
【0057】
それぞれの軽/重鎖対の可変領域は抗体結合性部位を形成する。従って、本来の抗体は、2個の結合性部位を有する。二重特異性(bifunctional)または二重特異性(bispecific)抗体を除き、2個の結合性部位は同一である。鎖は、3個の超可変領域、すなわちいわゆる相補性決定領域もしくはCDRにより連結された相対的に保存されるフレームワーク領域(FR)の同様の一般構造をすべて示す。天然に存在する鎖または組換え産生鎖は、細胞プロセシングの間に除去されて成熟鎖を産生するリーダー配列を伴って発現されることもできる。例えば関係する特定の鎖の分泌またはプロセシングを改変を促進するための天然には存在しないリーダー配列を有する成熟鎖が組換え的に産生されることもできる。
【0058】
それぞれの対の2個の成熟鎖のCDRは、フレームワーク領域により整列され、特定のエピトープへの結合を可能とする。N−末端からC−末端まで、軽鎖および重鎖の双方共にドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。「FR4」は、当該技術分野において、可変重鎖のD/J領域そして可変軽鎖のJ領域とも称される。各ドメインへのアミノ酸の割当は、Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health,Bethesda,MD,1987 and 1991)の定義に従う。別の構造定義は、Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901(1987);Nature 342:878(1987);およびJ.Mol.Biol.186:651(1989)(これ以後、集合的に「Chothia et al.」と称し、そしてすべての目的のために、引用することによりその全体を編入する)により提出された。
A.Aβ抗体
本発明の治療薬剤は、アミロイド斑のAβへまたはその他の成分へ特異的に結合する抗体を含む。好ましい抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかのかかる抗体は、可溶性形態には結合しないでAβの凝集した形態に特異的に結合する。あるものは凝集形態には結合しないで可溶性形態に特異的に結合する。あるものは凝集および可溶性の形態の双方に結合する。治療方法に使用される抗体は、好ましくは、本来の定常領域、または少なくともFc受容体と相互作用をするために十分な定常領域を有する。好ましい抗体は、斑内のAβのFc媒介ファゴサイトーシスの刺激に効力があるものである。ヒトイソタイプIgG1は、食細胞上(例えば脳定住マクロファージまたは小膠細胞上)のFcRI受容体に対してヒトイソタイプの最高の親和性を有するので好ましい。ヒトIgG1はネズミIgG2aと等価であり、従って後者はアルツハイマー病の動物(例えばマウス)モデル内でのin vivo効力を試験するために適する。二重特異性Fabフラグメントも使用でき、その中で抗体の一つの腕がAβに対して特異性を有し、そして他のものはFc受容体に対して特異性を有する。好ましい抗体は、約106、107、108、109、または1010M−1(それらの値の中間の親和性を含む)より大きい(または等しい)結合親和性でAβに結合する。
【0059】
モノクローナル抗体は、コンホメーション性または非コンホメーション性エピトープであり得るAβ内の特定のエピトープに結合する。抗体の予防および治療効力は、実施例中に記載のトランスジェニック動物モデル手順を用いて試験できる。好ましいモノクローナル抗体は、Aβの残基1〜10(本来のAβの第一のN末端残基を1と指定する)内のエピトープに、さらに好ましくはAβの残基3〜7内のエピトープに結合する。いくつかの方法では、異なるエピトープに対して結合特異性を有する多重(multi)モノクローナル抗体が使用され、例えば、Aβの残基3〜7内のエピトープに対して特異性の抗体は、Aβの残基3〜7以外のエピトープに対して特異性の抗体と共投与できる。かかる抗体は、連続してまたは同時に投与できる。Aβ以外のアミロイド成分に対する抗体も使用できる(例えば投与または共投与)。
【0060】
抗体のエピトープ特異性は、例えば、異なるメンバーがAβの異なるサブ配列を表すファージディスプレイライブラリーを形成することにより特定できる。次いで、試験する抗体に特異的に結合するメンバーに関して、ファージディスプレイライブラリーを選択する。配列のファミリーを単離する。典型的には、かかるファミリーは、共通のコア配列、および異なるメンバー内のフランキング配列の変動する長さを含む。抗体への特異的結合性を示す最短のコア配列は、抗体により結合されるエピトープをカノニカルする。抗体は、エピトープ特異性がすでに決定されている抗体を用いる競合アッセイでエピトープ特異性も試験できる。例えば、Aβへの結合性に関して12A11抗体と競合する抗体は、12A11と同一または類似のエピトープ、すなわち残基Aβ3〜7内に結合する。エピトープ特異性についての抗体のスクリーニングは、治療効力の有用な予測となる。例えば、Aβの残基1〜7内のエピトープに結合すると決定された抗体は、本発明の方法論に従ってアルツハイマー病を予防および処置するために有効である可能性がある。
【0061】
Aβの他の領域に結合しないでAβの好ましいセグメントに特異的に結合する抗体は、他の領域に結合するモノクローナル抗体または本来のAβへのポリクローナル血清と比較して多数の利点を有する。第一に、同一の投与重量に対して、好ましいセグメントに特異的に結合する抗体の投与量は、アミロイド斑の除去において有効な抗体のより高いモル基準投与量を含む。第二に、好ましいセグメントへ特異的に結合する抗体は、本来のAPPポリペプチドに対する除去反応を誘発せず、アミロイド沈着に対して除去反応を誘発でき、これにより予想される副作用が低減される。
1.非ヒト抗体の産生
本発明は、非ヒト抗体、例えば本発明の好ましいAβエピトープに対して特異性を有する抗体を特徴とする。かかる抗体は、本発明の種々の治療組成物を調合する際に使用でき、または、好ましくは、ヒト化またはキメラ抗体の産生のための相補性決定領域を提供する(詳細は以下に記載する)。非ヒト、例えばネズミ、モルモット、霊長類動物、ラビットまたはラットのモノクローナル抗体の産生は、例えば、Aβを用いて動物を免疫化して達成できる。AβまたはAβの免疫原フラグメントを含んでなるさらに長いポリペプチドまたはAβへの抗体への抗−イディオタイプ抗体も使用できる。Harlow & Lane、上記文献(すべての目的のために、引用することによりその全体を編入する)参照。このような免疫原は、本来の起源から、ペプチド合成によりまたは組換え発現により得ることができる。場合により、免疫原は、キャリヤタンパク質と融合またはその他の方法で複合して投与でき、これは以下に記載する通りである。場合により、免疫原は、アジュバントと一緒に投与できる。「アジュバント」の用語は、抗原と一緒に投与された場合に抗原に対する免疫反応を増強するが、しかし単独で投与された場合には抗原に対する免疫反応を起こさない化合物を指す。アジュバントは、リンパ球補充(recruitment)、Bおよび/またはT細胞の刺激およびマクロファージの刺激を含む種々の機構により免疫反応を増強できる。種々の型のアジュバントが以下に記載のように使用される。完全フロイントアジュバントとそれに続く不完全アジュバントが、実験室動物の免疫化に好ましい。
【0062】
ポリクローナル抗体を製造するためにラビットまたはモルモットが典型的に使用される。例えば受動的保護のためのポリクローナル抗体の例示の製造は、以下のように行うことができる。125体の非トランスジェニックマウスをCFA/IFAアジュバントを加えたAβ1−42の100μlを用いて免疫化し、4〜5カ月後に安楽死させる。免疫化したマウスから血液を採取する。IgGを血液成分から分離する。免疫原に特異性の抗体をアフィニティークロマトグラフィーにより部分的に精製してもよい。免疫原特異性抗体の平均して約0.5〜1mgがマウス1体あたりに得られ、全体で60〜120mgとなる。
【0063】
モノクローナル抗体を製造するためには典型的にはマウスが用いられる。マウス内にAβのフラグメントまたはより長い形態を注入し、ハイブリドーマを製造しそしてAβに特異的に結合する抗体についてハイブリドーマをスクリーニングして、フラグメントに対するモノクローナル抗体が製造できる。場合により、Aβの他の非重複フラグメントには結合しないで、Aβの特定の領域または所望のフラグメントに結合することについて抗体をスクリーニングする。後者のスクリーニングは、Aβペプチドの欠失変異体の集合に対する抗体の結合性を決定しそしてどの欠失変異体が抗体に結合したかを決定して達成できる。結合性は、例えばウエスタンブロットまたはELISAにより評価できる。抗体への特異的結合性を示す最小のフラグメントが抗体のエピトープをカノニカルする。あるいは、エピトープ特異性は、試験および参照抗体がAβへの結合について競合する競合アッセイにより決定できる。試験および参照抗体が競合する場合には、それらは、同じエピトープまたは一つの抗体の結合が他の結合を妨害するように十分近位のエピトープに結合する。かかる抗体に好ましいイソタイプは、マウスイソタイプIgG2aまたは他の種の等価イソタイプである。マウスイソタイプIgG2aは、ヒトイソタイプIgG1(例えばヒトIgG1)に等価である。
2.キメラおよびヒト化抗体
本発明はベータアミロイドペプチドに特異性のキメラおよび/またはヒト化抗体(すなわち、キメラ性および/またはヒト化免疫グロブリン)も特徴とする。キメラおよび/またはヒト化抗体は、キメラまたはヒト化抗体の構築のための出発物質を提供するマウスまたはその他の非ヒト抗体と同一または類似した結合特異性および親和性を有する。
a.キメラ抗体の製造
「キメラ抗体」の用語は、その軽鎖および重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子操作により、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから構築された抗体を指す。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変(V)セグメントは、ヒト定常(C)セグメント、例えばIgG1およびIgG4に結合するであろう。ヒトイソタイプIgG1が好ましい。従って、典型的なキメラ抗体は、マウス抗体からのVもしくは抗原結合ドメインおよびヒト抗体からのCもしくはエフェクタードメインから成るハイブリッドタンパク質である。
b.ヒト化抗体の製造
「ヒト化抗体」の用語は、本質的にヒト抗体鎖からの可変領域フレームワーク残基を含んでなる少なくとも一個の鎖(アクセプター免疫グロブリンまたは抗体を称する)および本質的にマウス抗体からの少なくとも1個の相補性決定領域(ドナー免疫グロブリンまたは抗体と称する)を含んでなる抗体を指す。Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第5,530,101号明細書、米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,693,762号明細書、Selick et al.,国際特許公開(WO)第90/07861号明細書およびWinter米国特許第5,225,539号明細書(すべての目的のために、引用することによりその全体を編入する)参照。もし存在する場合には、定常領域も実質的または完全にヒト免疫グロブリン由来である。
【0064】
ヒト可変ドメインフレームワーク内へのマウスCDRの置換は、CDRが由来したマウス可変フレームワークと同様または類似のコンホメーションをヒト可変ドメインフレームワークが取る場合に、それらの正しい空間的方向の保持もたらす可能性が最も高い。これは、CDRが誘導されたネズミ可変フレームワークドメインとヒト抗体のフレームワーク配列が高い程度の配列同一性を示す、ヒト抗体からのヒト可変ドメインを得ることにより達成される。重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域は同一または異なるヒト抗体配列から誘導できる。ヒト抗体配列は、本来的に存在するヒト抗体の配列であることができるかまたは数種のヒト抗体のコンセンサス配列であることができる。Kettleborough et al.,Protein Engineering 4:773(1991):Kolbinger et al.,Protein Engineering 6:971(1992)およびCarter et al.,国際特許公開(WO)第92/22653号明細書参照。
【0065】
ネズミドナー免疫グロブリンおよび適当なヒトアクセプター免疫グロブリンの相補性決定領域を同定すると、次の段階は、もし存在すれば、成分が置換されなければならない残基を決定して、得られたヒト化抗体の性質を最適化することである。一般に、ヒトアミノ酸残基のネズミとの置換は最小にしなればならないが、それというのもネズミ残基の導入は、ヒト内でのヒト−抗−マウス−抗体(HAMA)反応を励起する抗体の危険性を増加するからである。ヒト反応を決定するための当該技術分野で認知されている方法は、特定の患者においてもしくは臨床試験の間にHANA反応を監視して行うことができる。ヒト化抗体を投与された患者は、該治療の投薬の開始およびその間に免疫原性評価を受けることがきでる。HAMA反応は、例えば、表面プラスモン共鳴技術(BIACORE)および/または固相ELISA分析を含む当該技術分野の技術者には既知の方法を用いて患者からの血清資料中で、ヒト化治療試薬に対する抗体を検出して測定される。
【0066】
ヒト可変領域フレームワーク残基からの一部のアミノ酸は、CDRコンホメーションおよび/または抗原への結合性に対するそれらの可能な影響に基づく置換について選択される。ヒト可変フレームワーク領域を有するネズミCDR領域の本来的ではない並置は、正常ではないコンホメーション制約をもたらし、それは、一部のアミノ酸残基の置換により修正されない限り、結合親和性の欠失に導く。
【0067】
置換のためのアミノ酸残基の選択は、一部分はコンピューターモデリングにより決定される。コンピューターハードウエアおよびソフトウエアは、免疫グロブリン分子の三次元イメージを作製するために本明細書中に記載されている。一般に、分子モデルは免疫グロブリン鎖またはそのドメインに対する解明された(solved)構造から出発して作製される。モデル比較される鎖は、解明された三次元構造の鎖もしくはドメインとのアミノ酸配列類似性について比較され、そして最大の配列同一性を示した鎖もしくはドメインを分子モデルの構築のための出発点として選択する。少なくとも50%の配列同一性を共有する鎖またはドメインをモデリングのために選択し、そして好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%配列同一性またはそれ以上を共有するものをモデリングのために選択する。モデル比較される免疫グロブリン鎖もしくはドメイン内の実際のアミノ酸と、出発構造内のものとの間の相違を許容するように、解明された出発構造を変更する。次いで、変更した構造を複合(composite)免疫グロブリンに構築する。最後に、エネルギー最小化によりそしてすべての原子が相互に適当な距離内にありそして結合の長さおよび角度が化学的に許容できる限界内にあることを確認してモデルを改善する。
【0068】
置換のためのアミノ酸の選択は、特定の場所にあるアミノ酸の特性の検討、または特定のアミノ酸の置換または変異誘発の効果の実験的な観察により、一部分を決定することもできる。例えば、ネズミ可変領域フレームワーク残基と選択されたヒト可変領域フレームワーク残基との間でアミノ酸が異なる場合に、ヒトフレームワークアミノ酸は、そのアミノ酸が
(1)抗原を直接非共有結合的に結合するか、
(2)CDR領域に隣接しているか、
(3)その他の方法でCDR領域と相互作用するか(例えばコンピューターモデリングで決定してCDR領域から3〜6Å以内にある)、または
(4)VL−VH界面内に関与する
ことが合理的に期待される場合に、マウス抗体からの等価フレームワークアミノ酸により通常置換されるべきである。
【0069】
「抗原を直接非共有結合的に結合する」残基とは、確立された化学的力、例えば水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、などにより、抗原上のアミノ酸と直接相互作用する高い可能性を有するフレームワーク領域内の位置にあるアミノ酸を含む。
【0070】
CDRおよびフレームワーク領域はKabat et al.またはChothia et al.(上記文献)により定義されている。Kabat et al.(上記文献)により定義されるフレームワーク領域がChothia et al.(上記文献)により定義される構造ループ残基を構成する場合に、マウス抗体内に存在するアミノ酸をヒト化抗体内の置換のために選択してもよい。「CDR領域に隣接」する残基とは、ヒト化免疫グロブリン鎖の一次配列内のCDRの1個またはそれ以上に直接隣接する位置、例えばKabatにより定義されるCDRまたはChothisにより定義されるCDRに直接隣接する位置にあるアミノ酸残基を含む(例えばChothia and Lesk,JMB 196:901(1987)参照)。それらのアミノ酸は、CDR内のアミノ酸と相互作用する可能性が特に高く、そしてアクセプターから選択された場合には、ドナーCDRを変形しそして親和性を低下させる。さらに、隣接アミノ酸は、抗原と直悦相互作用する場合もあり(Amit et al.Science,233:747(1986)引用することにより本明細書に編入される)そしてドナーからのそれらのアミノ酸の選択は、当初の抗原内に親和性を提供するすべての抗原接触を維持するために望ましいであろう。
【0071】
「その他の方法でCDR領域と相互作用する」残基は、CDR領域に影響するために十分な空間配置にあると二次構造解析により決定されるものを含む。一つの態様では、「その他の方法でCDR領域と相互作用する」残基は、ドナー免疫グロブリンの三次元モデル(例えばコンピューター作製モデル)を解析して同定される。典型的には当初のドナー抗体の三次元モデルは、CDRの外部の一定のアミノ酸がCDRに近くそして水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などによりCDR内のアミノ酸と相互作用する高い可能性を有することを示す。それらのアミノ酸位置において、ドナー免疫グロブリンアミノ酸はアクセプター免疫グロブリンアミノ酸よりも選択されるであろう。この基準に従うアミノ酸は、一般的にCDR内の一部原子から約3Å単位内の側鎖原子を有しそして確立された化学的力、例えば上記に列記したものに従ってCDR原子と相互作用できる原子を含まなくてはならない。
【0072】
疎水性結合を形成できる原子の場合には、3Åはそれらの核の間で測定されるが、しかし結合を形成しない原子では、3Åはそのファンデルワールス面の間で測定される。従って、後者の場合、核は、相互作用できると考えられる原子に対して約6Å(3Åにファンデルワールス半径の和を加えた値)内になければならない。多くの場合に、核は4または5または6Å離れている。アミノ酸がCDRと相互作用できるかどうかを決定する場合に、重鎖CDR2の最後の8個のアミノ酸をCDRの部分として考慮しないのが好ましいが、それは構造の観点から、それらの8個のアミノ酸はフレームワークの一部として行動することが多いからである。
【0073】
CDR内のアミノ酸と相互作用できるアミノ酸は、さらの別の方法で同定してもよい。各フレームワークアミノ酸それぞれの溶剤接近可能な表面積は、二つの方法で算出される:(1)本来の抗体内、および(2)そのCDRが除去された抗体から成る仮想分子内。約10平方Åまたはそれ以上のそれらの数の間の著しい相違は、フレームワークアミノ酸の溶剤への接近がCDRにより少なくとも部分的に遮断され、そしてそのためにアミノ酸がCDRと接触することを示す。アミノ酸の溶剤接近可能表面積は、当該技術分野で既知のアルゴリズムを用いて抗体の三次元モデルに基づいて算出されてもよい(例えば、Connolly,J.Appl.Cryst.16:548(1983)およびLee and Richards,J.Mol.Biol.55:379(1971)参照、双方共に引用することにより本明細書に編入される)。フレームワークアミノ酸は、一方では自体がCDRと接触する他のフレームワークアミノ酸のコンホメーションに影響を及ぼして、場合によりCDRと間接的に相互作用もするであろう。
【0074】
フレームワーク内の幾つかの位置にあるアミノ酸は、多くの抗体内でCDR確認を決定する(例えばCDRと相互作用できること)のために重要なことが知られている(Chothia and Lest、上記文献、Chothia et al、上記文献、およびTramontano et al,J.Mol.Biol.215:175(1990)、すべて引用することにより本明細書に編入される)。これらの研究者は、数種の既知抗体の構造の分析によりCDRコンホメーションに重要な保存フレームワーク残基を同定した。分析した抗体は、CDRのコンホメーションに基づいて、限定された数の構造的または「カノニカル(canonical)」クラスに分類された。カノニカルクラスのメンバー内の保存フレームワーク残基は「カノニカル」残基と称される。カノニカル残基は、軽鎖の残基2、25、29、30、33、48、64、71、90、94および95、および重鎖の残基24、26、29、34、54、55、71および94を含む。別の残基(例えばCDR構造−決定残基)はMartin and Thorton(1996)J.Mol.Biol.263:800の方法論に従って同定できる。重要なことは、軽鎖の2、48、64および71および重鎖の26〜30、71および94の位置にあるアミノ酸(番号付けはKabatによる)は、多くの抗体内でCDRと相互作用できることが知られている。軽鎖内の35および重鎖内の93および103の位置にあるアミノ酸も、CDRと相互作用するらしい。CDRのコンホメーションに影響するらしい他の残基は、Foote and Winter(1992)J.Mol.Biol.224:487の方法論に従って同定できる。かかる残基は「バーニア」残基と称され、そしてCDRの直下に存在する(すなわち下に「プラットフォーム」を形成する)フレームワーク領域内の残基である。それらの番号付けしたすべての位置で、ヒト化免疫グロブリン内に存在するために、ドナーアミノ酸の選択の方が、(もし存在するならば)アクセプターアミノ酸の選択よりも好ましい。反対に、CDR領域と相互作用できる一部の残基、例えば軽鎖の最初の5個のアミノ酸は、ヒト化免疫グロブリンの親和性の損失を伴わないで、アクセプター免疫グロブリンから選択できることもある。
【0075】
「VL−VH界面内に関与する」残基または「充填残基」は、例えばNovotny and Habor,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:4592−66(1985)またはChothia et al.,(上記文献)により定義されたVLとVH間の界面にある残基を含む。一般に、異常な充填残基がヒトフレームワーク内のものと異なる場合には、それらはヒト化抗体内に保持されるべきである。
【0076】
一般に、上記の基準を満足する1個またはそれ以上のアミノ酸は、置換されることができる。いくつかの態様では、上記の基準を満足するすべてまたは大部分のアミノ酸が置換されている。時には、特定のアミノ酸が上記の基準に合致するかどうかについていくらかの不明瞭さがあり、そして別の改変体免疫グロブリンが産生され、その一つはその特定の置換を有し、他は有していない。このようにして産生された別の改変体免疫グロブリンは、本明細書内に記載のいずれのアッセイでも所望の活性について試験され、そして好ましい免疫グロブリンを選択できる。
【0077】
通常、ヒト化抗体内のCDR領域は本質的に同一性し、そしてさらに一般的には、ドナー抗体の相応するCDR領域に同一性する。しかし、ある態様では、抗体の抗原結合特異性を変更し、そして/または抗体の免疫原性を低下するために1個またはそれ以上のCDR領域を変更することが望ましいこともある。典型的には、CDRの1個またはそれ以上の残基は結合を変更して改変して、結合性のさらに好ましいオンレート(on−rate)、結合性のさらに好ましいオフレート(off−rate)、または双方を達成して、理想化された結合定数に到達する。この戦略を用いて、非常に高い結合親和性、例えば1010M−1またはそれ以上を有する抗体が達成できる。要約すると、ドナーCDR配列は、引き続いて1個またはそれ以上の残基が改変される塩基配列として好ましい。本明細書中に記載の親和性成熟技術は、CDR領域を改変し、次いで結合における所望の変化のために得られた結合性分子をスクリーニングするために使用できる。該方法は、ドナーCDR、典型的にはマウスCDRを改変して、可能なヒト抗マウス抗体HAMA)反応が最小化または回避されるようなさらに低い免疫原性とするために使用してもよい。従って、CDRが改変されると、結合親和性ならびに免疫原性における変化を、最良の複合した結合性および低い免疫原性にために抗体が最適化されるように監視されそして採点される(例えば米国特許第6,656,467号明細書および米国特許公開US20020164326A1号明細書参照)。
【0078】
別の解決法では、抗体のCDR領域を分析して、ヒト対応体を用いてドナーCDRのそれぞれを組織的に置換することにより、抗体結合性および/または免疫原性に対するそれぞれ個別のCDRの貢献を決定する。次いで、得られたヒト化抗体のパネルを、抗体親和性および各CDRの可能な免疫原性に関して採点する。この方法で、候補の結合性分子の2個の臨床的に重要な性質、すなわち抗原結合性および低い免疫原性が決定される。相応するネズミまたは抗体のCDRグラフト(ヒト化)形態に対する患者血清が入手できる場合には、系統的ヒトCDR交換を表す抗体の全パネルをスクリーニングして各ドナーCDRに対する抗−イディオタイプ反応を患者に決定できる(技術的詳細については、例えばIwashi et al.,Mol.Immunol.36:1079−91(1999)参照)。かかる解決法は、本態的ドナーCDR領域を非本態的ドナーCDRから同定することを可能とする。次いで、非本態的CDR領域をヒト対応CDRと交換してもよい。受容できないほどの機能の損失を伴わないでは本態的CDR領域が交換できない場合には、CDRの特異性決定残基(SDR)の同定を、例えば部位指定変異誘発により行う。この方法で、CDRはSDRのみを保持するように再操作しそしてCDR全体の残留アミノ酸位置でヒトおよび/または最小免疫原性であることができる。一部のドナーCDRのみをグラフトするかかる解決法は、短縮CDRグラフト法とも称される(上記技術の技術的な詳細に関しては、例えばTamura et al.,J.of Immunology 164(3):1432−41(2000);Gonzales et al.,Mol.Immunol.40:337−349(2003);Kashmiri et al.,Crit Rev.Oncol.Hematol.38:3−16(2001);およびDePascalis et al.,J.of Immunology 169(6):3076−84(2002)参照)。
【0079】
さらに、得られたヒト化免疫グロブリンの結合親和性に容易に感知できるほど影響することなく、CDR残基の1個またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を行うことが時に可能である。保存的置換とは、gly,ala;val,ile,leu;asp,glu;asn,gln;ser,thr;lys,arg;およびphr,tyrのような組み合わせを意図する。
【0080】
別の置換候補は、その位置におけるヒト免疫グロブリンにとって異常または「稀」であるアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。それらのアミノ酸は、マウスドナー抗体の等価位置からまたはさらに典型的なヒト免疫グロブリンの等価位置からのアミノ酸で置換できる。例えば、アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域内のアミノ酸がその位置にとっては稀でありそしてドナー免疫グロブリン内の相応するアミノ酸がヒト免疫グロブリン配列内のその位置にとって共通である場合;またはアクセプター免疫グロブリン内のアミノ酸がその位置にとっては稀でありそしてドナー免疫グロブリン内の相応するアミノ酸も他のヒト配列と比較して稀である場合に、置換は望ましいであろう。アクセプターヒトフレームワーク配列にとって残基が稀であるかどうかは、CDRコンホメーションへの貢献に基づく復帰突然変異のために残基を選択する場合にも考慮されなければならない。例えば、復帰突然変異が、アクセプターヒトフレームワーク配列にとって稀である残基の置換をもたらすならば、ヒト化抗体は活性の有無についてそれを試験されてもよい。復帰突然変異が活性に不必要な場合には、免疫原性関連性を低下するためにそれを除去してもよい。例えば、下記の残基における復帰突然変異は、アクセプターヒトフレームワーク配列内で稀である残基を導入してもよい。uk=v2(2.0%)、L3(0.4%)、T7(1.8%)、Q18(0.2%)、L83(1.2%)、I85(2.9%)、A100(0.3%)およびL106(1.1%);およびvh=T3(2.0%)、K5(1.8%)、I11(0.2%)、S23(1.5%)、F24(1.5%)、S41(2.3%)、K71(2.4%)、R75(1.4%)、I82(1.4%)、D83(2.2%)およびL109(0.8%)。これらの基準は、ヒトフレームワーク内の非典型的なアミノ酸が抗体構造を破壊しないように保証することを助ける。さらに、異常なヒトアクセプターアミノ酸を、たまたまヒト抗体に典型的なドナー抗体からのアミノ酸で置換することにより、ヒト化抗体はより低い免疫原性にできるであろう。
【0081】
本明細書中に使用される「稀」の用語は、配列の代表的な試料内の配列の約20%以下、好ましくは約10%以下、さらに好ましくは約5%以下、もっとさらに好ましくは約3%以下、もっとさらに好ましくは約2%以下、そしてもっとさらに好ましくは約1%以下でその位置に出現するアミノ酸を指し、そして本明細書中に使用される「共通(common)」の用語は、代表的試料内の配列の約25%以上、しかし通常は約50%以上で出現するアミノ酸を指す。例えば、ヒトアクセプター配列内のアミノ酸が「稀」かまたは「共通」であるかどうかを決定する場合に、ヒト可変領域配列のみを考慮することがしばしば好ましく、そしてマウスアミノ酸が「稀」または「共通」であるかどうかを決定する場合には、マウス可変領域配列のみを考慮することがしばしば好ましい。さらに、すべてのヒト軽鎖および重鎖可変領域配列は相互に特に相同でありそして一定の重要な位置で同じアミノ酸を有する、配列の「サブグループ」にそれぞれ分類される(Kabal et al.,上記文献)。ヒトアクセプター配列中のアミノ酸がヒト配列の間で「稀」または「共通」のいずれであるかを決定するために、アクセプター配列と同じサブグループ内のそれらのヒト配列のみを考慮することがしばしば好ましい。
【0082】
置換の別の候補は、Chothia et al(上記文献)で提案された別の定義によるCDR領域の部分として同定されるであろうアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。置換のための追加の候補は、AbMおよび/または接触定義によるCDR領域の部分として同定されるであろうアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。
【0083】
置換のための追加的な候補は、稀または異常なドナーフレームワーク残基に相応するアクセプターフレームワーク残基である。稀または異常なドナーフレームワーク残基は、その位置でネズミ抗体にとって稀または異常な(本明細書中で定義)ものである。ネズミ抗体にとって、サブグループはKabatに従って決定でき、そして、共通とは異なると同定された残基位置である。それらのドナー特異性の相違は、活性を増強するネズミ配列内の体細胞変異を示すであろう。結合に影響すると予測される異常な残基(例えば充填カノニカルおよび/またはバーニア残基)は保存され、一方結合にとって重要でないと予測される残基は置換できる。12A11 UK配列内の稀な残基はI85(3.6%)を含む。12A11vh配列内の稀な残基は、T3(1.0%)、I11(1.7%)、L12(1.7%)、S41(2.8%)、D83(1.8%)およびA85(1.8%)を含む。
【0084】
置換のための追加的な候補は、アクセプターフレームワーク領域内に存在する非生殖細胞系残基である。例えば、アクセプター抗体鎖(すなわちドナー抗体鎖と著しい配列同一性を共有するヒト抗体鎖)が、生殖細胞系抗体鎖(同様にドナー鎖と著しい配列同一性を共有する)と整列された場合に、アクセプター鎖フレームワークと生殖細胞系配列フレームワークとの間で合致しない残基は、生殖細胞系配列からの相応する残基で置換できる。
【0085】
以上に考察した特定のアミノ酸置換の他に、ヒト化免疫グロブリンのフレームワーク領域は通常本質的に同一性し、そしてさらに通常的には、それらが誘導されたヒト抗体のフレームワーク領域と同一性する。勿論、フレームワーク領域内の多数のアミノ酸は、抗体の特異性または親和性にほとんどまたは全く直接的に貢献しない。従って、フレームワーク残基の多数の個別の保存的置換は、得られるヒト化免疫グロブリンの特異性または親和性に容易に検知できるような変化はなく、許容できる。従って、一つの態様では、ヒト化免疫グロブリンの可変フレームワーク領域は、ヒト可変フレームワーク領域配列またはかかる配列の共通体と少なくとも85%の配列同一性を共有する。別の態様では、ヒト化免疫グロブリンの可変フレームワーク領域は、ヒト可変フレームワーク領域配列またはかかる配列の共通体と少なくとも90%、好ましくは95%、さらに好ましくは96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する。しかし、一般的にはかかる置換は望ましくない。
【0086】
例示的な態様では、本発明のヒト化抗体は、少なくとも107、108、109または1010M−1の抗原に対する特異性結合親和性を示す。別の態様では、本発明の抗体は、少なくとも1010、1011または1012M−1の結合親和性を有することができる。通常、抗原に対するヒト化抗体の結合親和性の上限は、ドナー免疫グロブリンのものの3、4または5の係数以内である。しばしば結合親和性の下限もドナー免疫グロブリンのものの3、4または5の係数以内である。あるいは、結合親和性は、置換を持たないヒト化抗体(例えばドナーCDRおよびアクセプターFRは有するがFR置換はない抗体)のものと比較できる。かかる場合には、最適化抗体(置換を伴う)の結合は、好ましくは、非置換抗体のものの少なくとも2〜3倍大きいかまたは3倍〜4倍大きい。比較を行うために、種々の抗体の活性が、例えばBIACORE(すなわち非標識試薬を使用する表面プラスモン共鳴)または同様の結合アッセイにより決定できる。
c.ヒト化12A11抗体の製造
本発明の好ましい態様は、特には本明細書内に記載の治療的および/または診断的方法論に使用するためのAβのN−末端へのヒト化抗体を特徴とする。ヒト化抗体の製造のためにに好ましい出発物質は、モノクローナル抗体12A11である。12A11はAβのN−末端に特異性でありそして(1)凝集したAβ1−42に対して高い結合活性を有し、(2)可溶性Aβを捕そくする能力を有し、そして(3)アミロイド斑のファゴサイトーシスを媒介する(例えばファゴサイトーシス誘発)ことが証明されている(実施例I参照)。12A11抗体のin vivo効力は実施例IIに記載される。12A11抗体重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNAのクローニングおよび配列決定は、実施例IIIに記載される。
【0087】
適切なヒトアクセプター抗体配列は、マウス可変領域のアミノ酸配列と既知のヒト抗体の配列とのコンピューター比較により同定できる。比較は、重鎖および軽鎖について分離して行われるが、しかし原理はそれぞれ同一である。具体的には、そのフレームワーク配列がネズミVLおよびVHフレームワーク領域との高度の配列同一性を示すヒト抗体からの可変ドメインは、それぞれのネズミフレームワーク配列に対して、例えばKabatデータベースまたはNCBI IgG BLASTを用いるIgGタンパク質配列データベース(National Institute of Health NCBIインターネットサーバーを介して公開されアクセスできる)を探索して同定される。一つの態様では、ネズミドナー配列、例えばドナーフレームワーク(FR)配列と50%以上の配列同一性を共有するアクセプター配列が選択される。好ましくは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%配列同一性またはそれ以上を共有するアクセプター抗体配列が選択される。
【0088】
12A11のコンピューター比較は、12A11軽鎖(マウスサブグループII)が、サブタイプカッパIIのヒト軽鎖と最大の配列同一性を示し、そして12A11重鎖(マウスサブグループIb)が、サブタイプIIのヒト重鎖に最大の配列同一性を示すことを明らかにし、それらはKabat et al.の上記文献により定義される。軽鎖および重鎖ヒトフレームワーク領域は、それらのサブタイプのヒト抗体から、またはかかるサブタイプのコンセンサス配列から誘導できる。最初のヒト化の努力において、軽鎖可変フレームワーク領域をヒトサブグループII抗体から誘導した。ヒトサブグループII抗体から誘導された重鎖可変フレームワーク領域を有するヒト化抗体の発現の高いレベルに到達するために設計された以前の実験に基づいて、かかる抗体の発現レベルが時には低いことが発見された。従って、Saldanha et al.,(1999)Mol.Immunol.36:709−719に記載の推定に基づいて、ヒトサブグループIII抗体からのフレームワーク領域をヒトサブグループIIの代わりに選択した。
【0089】
ヒトサブグループII抗体K64(ALMS4)(アクセッション番号BAC01733)を12A11の軽鎖可変領域内で著しい配列同一性を有するNCBI非重複データベースから同定した。ヒトサブグループIII抗体M72(アクセッション番号AAA69734)を12A11の重鎖可変領域内で著しい配列同一性を有するNCBI非重複データベースから同定した(Schroeder and Wang(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 872:6146−6150参照)。
【0090】
別の軽鎖アクセプター配列は、例えば以下を含む。
【0091】
【表1】
【0092】
別の重鎖アクセプター配列は、例えば以下を含む。
【0093】
【表2】
【0094】
例示の態様で、本発明のヒト化抗体は、以上に表示されたアクセプター配列からの12A11 CDRおよびFRを含む。本明細書中に記載したCDRコンホメーションおよび/または活性に重要なフレームワーク領域内の残基が、復帰突然変異のために選択される(ドナーとアクセプター配列との間で異なる場合)。
【0095】
次いで残基は置換のために以下のようにして選択される。12A11可変フレームワーク領域と等価のヒト可変フレームワーク領域との間でアミノ酸が異なる場合には、該アミノ酸が、
(1)抗原を直接非共有結合的に結合しているか、
(2)CDR領域に隣接しているか、Chothia et al.(上記文献)に提案されている別の定義でのCDR領域の部分であるか、またはCDR領域と別の方法で相互作用する(例えばCDR領域の約3Å以内にある)か、または
(3)VL−VH界面内に関与しているか
と合理的に期待される場合には、ヒトフレームワークアミノ酸が、等価のマウスアミノ酸により通常は置換されるべきである。
【0096】
12A11抗体重鎖および軽鎖可変領域の構造解析、および12A11抗体のヒト化は、実施例Vに記載されている。要約すると、軽鎖に対しては解明されたネズミ抗体構造1KTRそして重鎖に対しては1JRHおよび1ETZの三次元モデルが研究された。CDR確認のために重要な残基(例えばバーニア残基)の同定のために研究できる別の三次元モデルは、軽鎖に対しては
【0097】
【表3】
【0098】
そして重鎖に対しては
【0099】
【表4】
【0100】
を含む。
【0101】
本明細書中に記載の抗体に関する三次元構造情報は、例えば、Research Collaboratory for Structural Bioinfomatics’Proten Data Bank(PDB)から公開れて入手できる。PDBは、World Wide Webインターネットを介して自由にアクセスできそしてBerman et al.,(2000) Nucleic Acids Research,28:235に記載されている。解明された三次元構造の研究は、12A11内のCDR相互作用残基の同定を可能とする。あるいは、12A11VHおよびVL鎖の三次元モデルは、コンピューターモデリングソフトウエアを用いて作製できる。要約すると、三次元モデルは、重鎖および軽鎖に対する最も近い解明されたネズミ抗体構造に基づいて作製される。この目的で、1KTRは12A11軽鎖のモデルリングのための鋳型として使用でき、そして1ETZおよび1JRHは重鎖のモデルリングのための鋳型として使用できる。このモデルは、不利な原子接触を開放しそして静電的およびファンデルワールス相互作用を最適化するための一連のエネルギー最小化段階によりさらに改良できる。追加的な三次元解析および/またはモデルリングは、それらの解明されたネズミ構造とそれぞれの12A11鎖との間の類似性に基づいて、軽鎖に対しては2JEL(2.5Å)および/または1TET(2.3Å)そして重鎖(または上記のいずれかの他の抗体)に対しては1GGI(2.8Å)を用いて行うことができる。
【0102】
12A11の構造のコンピューターモデルは、さらに、ヒトフレームワーク構造内に置換された12A11相補性決定領域を含む抗体の三次元構造を予測するための出発点として役立つことができる。さらなるアミノ酸置換が導入される場合の構造を表す追加的なモデルが構築できる。
【0103】
一般的に、上記の基準を満足するアミノ酸の一個、大部分または全ての置換が望ましい。従って、本発明のヒト化抗体は、少なくとも1、2、3またはそれを越える選択された位置において、相応する12A11残基でのヒト軽鎖フレームワーク残基の置換を通常は含む。またヒト化抗体は、少なくとも1、2、3またはそれを越える選択された位置において、相応する12A11残基でのヒト重鎖フレームワーク残基の置換を通常は含む。
【0104】
しかし、場合によれば、特定のアミノ酸が上記の基準に適合するかどうかについていくらかの曖昧さがあり、そして代替の改変体の免疫グロブリンが作製され、その一種は特定の置換を有し、他のものは有してない。ネズミ残基を用いる置換が特定の位置でヒト免疫グロブリン内の稀な残基を導入する場合に、特定の置換があるかまたはない場合の活性について該抗体を試験することが望ましいであろう。活性(例えば結合親和性および/または結合特異性)が置換があってもなくてもほぼ同等の場合には、置換がない抗体が好ましいであろうが、それは、本明細書中に記載のように、HAMAプロセスの誘発が少ないことが期待されるからである。
【0105】
置換の別の候補は、その位置ではヒト免疫グロブリンにとって異常なアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。それらのアミノ酸は、より典型的なヒト免疫グロブリンの等価な位置からのアミノ酸で置換できる。あるいは、マウス12A11内の等価な位置からのアミノ酸は、かかるアミノ酸が等価位置でヒト免疫グロブリンで典型的である場合には、ヒトフレームワーク領域内に導入できる。
【0106】
置換の別の候補は、フレームワーク領域内に存在する非生殖細胞系残基である。既知の生殖細胞系配列を用いて12A11のコンピューター比較を行うと、重鎖または軽鎖に最高度の配列同一性を有する生殖細胞系配列が同定できる。フレームワーク領域と生殖細胞系配列との整列は、相応する生殖細胞系残基を用いる置換のためにどの残基を選択してよいかを明らかにする。選択された軽鎖アクセプターフレームワークとそれら生殖細胞系配列の一つとのとの間で合致しない残基が、相応する生殖細胞系配列残基を用いる置換のために選択できる。
【0107】
稀なマウス残基は、ドナーVLおよび/またはVH配列と、ドナーVLおよび/またはVH配列が属する(Kabatによる)サブグループの他のメンバーの配列とを比較し、そして共通とは異なる残基位置を同定することにより同定される。それらのドナー特異性の相違は、活性を増強する体細胞変異を示すであろう。結合部位に近い異常または稀な残基は、抗原と接触する可能性があり、マウス残基を保持することを望ましくする。しかし、異常なマウス残基が結合に重要でない場合には、相応するアクセプター残基の使用は、マウス残基がヒト化抗体内に免疫原性ネオエピトープを創成するらしいので好ましい。ドナー配列内の異常残基が相応するアクセプター配列内で実際に共通残基である場合には、好ましい残基は明らかにアクセプター残基である。
【0108】
表1Aは、12A11 VHおよびVL領域の配列解析の要約である。
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
アミノ酸置換を選択する際に使用できる生殖細胞系配列を記述する。
【0112】
本明細書中に記載の抗体に対する三次元構造情報は、例えば、Research Collaboratory for Structural Bioinformatics’Protein Data Bank(PDB)から公開されて利用できる。PDBはWorld Wide Webインアターネットを介して自由にアクセスでき、そしてBerman et al.(2000)Nucleic Acids Research,p235−242に記載されている。本明細書中に引用する生殖細胞系配列は、例えばNational Center for Biotechnology Information(NCBI)の配列データベースから、Igh、IgカッパおよびIgラムダ生殖細胞V遺伝子の集積中のから公開されて利用できる(National Institute of Health(NIH)におけるNational Library of Medicine(NLM)の部門として)。NCBI”Ig Germline Gene”データベースの相同性サーチは、IgG BLASTTMにより提供される。
【0113】
例示的な態様では、本発明のヒト化抗体は、(i)ネズミ12A11 VL
CDRおよびヒトアクセプターフレームワークを含んでなる可変ドメインを含んでなる軽鎖であって、該フレームワークは相応する12A11残基で置換された0、1、2、3、4、5、6、7、8、9個またはそれ以上の残基を有し、そして(ii)12A11 VH CDRおよびヒトアクセプターフレームワークを含んでなる重鎖であって、フレームワークは相応する12A11残基で置換された少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9個またはそれ以上の残基、そして場合により相応するヒト生殖細胞系残基により置換された少なくとも1個、好ましくは2または3個の残基を有する。
【0114】
別の例示的態様では、本発明のヒト化抗体は、(i)ネズミ12A11 VL CDRおよびヒトアクセプターフレームワークを含んでなる可変ドメインを含んでなる軽鎖であって、該フレームワークは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上の復帰突然変異された残基(すなわち、相当する12A11残基で置換され)を含み、ここで復帰突然変異はカノニカル、充填および/またはバーニア残基にあり、そして(ii)12A11 VH CDRおよびヒトアクセプターフレームワークを含んでなる重鎖であって、該フレームワークは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上の復帰突然変異された残基を有し、ここで復帰突然変異はカノニカル、充填および/またはバーニア残基にある、を含む。ある態様では、復帰突然変異は、充填および/もしくはカノニカル残基においてのみまたはまたは主として充填および/もしくはカノニカル残基おいて存在する(例えば、ドナーとアクセプター配列との間で相違するバーニア残基の1または2個のバーニア残基のみが復帰突然変異される)。
【0115】
別の態様では、ヒト化抗体は、可能な限り最小数の復帰突然変異を含み、ドナー抗体(またはそのキメラバージョン)のものに同等の結合親和性を保持する。かかるバージョンに到達するために、復帰突然変異の種々の組み合わせが排除できそして得られた抗体を効力(例えば結合親和性)に関して試験する。例えば、バーニア残基における復帰突然変異(例えば1、2、3、または4個の復帰突然変異)が排除できるか、またはバーニアと充填、バーニアとカノニカルもしくは充填とカノニカルの組み合わせにおける復帰突然変異が排除できる。
【0116】
別の態様では、本発明のヒト化抗体は、本明細書中に記載のような構造的特徴を有し、そして少なくとも1個(好ましくは2、3、4個または全て)の下記活性をさらに有する:(1)可溶性Aβを結合する、(2)凝集Aβ1−42を結合する(例えば、ELISAにより決定される)、(3)可溶性Aβを捕そくする。(4)斑(例えばADおよび/またはPDAPP斑の着色)内のAβを結合する、(5)キメラ12A11よりも2〜3倍低い親和性でAβを結合する(例えばネズミ可変領域配列およびヒト定常領域配列を有する12A11)、(6)Aβのファゴサイトーシスを媒介する(例えば本明細書中に記載のように、ex vivoファゴサイトーシスアッセイにおいて)、および(7)血液脳関門を通過する(例えば本明細書中に記載のように、例えばPDAPP動物モデルにおいて、短期脳局在化を証明する)。
【0117】
別の態様では、本発明のヒト化抗体は、本明細書中に記載のように、下記のin vivo効果の少なくとも1種を誘発するために十分な様式でまたは親和性をもってAβを結合する構造的特徴を有する:(1)Aβ斑負荷を低下、(2)斑形成を予防、(3)可溶性Aβのレベルを低下、(4)アミロイド障害と関連する神経炎性病状を低下、(5)アミロイド障害と関連する少なくとも1種の生理学的症状を低下または軽減、および/または(6)認知機能を改善する。
【0118】
他の態様では、本発明のヒト化抗体は、本明細書中に記載のような構造的特徴、およびAβの残基3〜7を含んでなるエピトープに特異的に結合する。
【0119】
さらに別の態様では、本発明のヒト化抗体は、Aβ内のN−末端エピトープに結合(例えば、Aβのアミノ酸3〜7内のエピトープに結合)するという本明細書中に記載のような構造的特徴を有し、そして(1)Aβペプチドレベル、(2)Aβ斑負荷、および(3)アミロイド障害と関連する神経炎負荷または神経炎ジストロフィーを低減できる。
【0120】
上記の活性は、本明細書内に記載されるかまたは当該技術分野における各種のアッセイ(例えば結合性アッセイ、ファゴサイトーシスアッセイなど)のいずれか1種を用いて決定できる。活性は、in vivo(例えば標識アッセイ成分および/またはイメージング技術を用いて)またはin vitro(例えば対象から導かれた試料または試験片を用いて)のいずれかで評価できる。活性は、直接または間接のいずれかで評価できる。ある好ましい態様では、神経学的終点(例えばアミロイド負荷、神経炎負荷など)を評価する。かかる終点は、非侵襲的検出方法を用いて生体において(例えばアルツハイマー病の動物モデルにおいてまたは例えば免疫治療を受けているヒト患者において)評価できる。あるいは、かかる終点は死後の対象で評価できる。死後の動物モデルおよび/またはヒト患者におけるかかる終点の評価は、類似する免疫治療の適用を使用するための種々の薬剤(例えばヒト化抗体)の有効性を評価するために有用である。別の好ましい態様では、行動または神経学的パラメーターは、上記の神経病理学的活性または終点の指標として評価できる。
3.可変領域の作製
ヒト化免疫グロブリンのCDRおよびフレームワーク成分を概念的に選択すると、かかる免疫グロブリンを製造するために多様な方法が利用できる。一般に、抗体の重鎖および/または軽鎖のネズミ相補性決定領域(CDR)の1個またはそれ以上を、例えばプライマーに基づくポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて1個またはそれ以上のヒトフレームワーク領域の範囲内に配置してヒト化できる。要約すると、重複しそしてヒトフレームワーク領域を用いてアニールできる配列も含む標的ネズミCDR領域にアニールできるプライマーを設計できる。従って、適当な条件下で、プライマーは、ネズミ抗体鋳型核酸からのネズミCDRを増幅できそしてヒトフレームワーク配列の一部分を増幅した鋳型に付加できる。同様に、プライマーは、それらのプライマーを用いるPCR反応が増幅されたヒトフレームワーク領域をもたらす標的ヒトフレームワーク領域にアニールできるように設計できる。次いでそれぞれの増幅産物が変性、複合、そして他の産物にアニールされると、増幅されたヒトフレームワーク配列を伴う重複したヒトフレームワーク配列を有するネズミCDR領域は、遺伝子的に連結できる。従って、一回またはそれ以上のかかる反応において、1個またはそれ以上のネズミCDR領域は介在性ヒトフレームワーク領域に遺伝子的に連結できる。
【0121】
ある態様では、プライマーは望ましい制限酵素認識配列を含んでなってもよく、得られたPCR増幅配列をさらに大きい遺伝子セグメント、例えば可変軽鎖または重鎖セグメント、重鎖、またはベクターへの遺伝子操作を容易とする。加えて、ネズミCDR領域またはヒトフレームワーク領域のいずれかを増幅するために使用されるプライマーは、異なるコドンがネズミCDRもしくはヒトフレームワーク領域内に導入されるように、望ましい非合致を有してもよい。典型的な非合致は、本明細書中に記載のように、ネズミCDRの構造配向、従ってその結合親和性を保存または改善するヒトフレームワーク領域内に改変を導入する。
【0122】
上記の解決法は、1、2またはすべてで3個のネズミCDRを介在性ヒトフレームワーク領域の範囲内に導入するために使用できることを理解すべきである。プライマーに基づくPCRを使用して異なる配列を増幅および連結する方法は、例えばSambrook,Fritsch and Maniatis,Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989):DNA Cloning Vol.1 and 2,(D.N.Glover Ed.1985);PCR Handbook Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,Beaucage,Ed.John Wiley & Sons(1999)(Editor);Current Protocols in Molecular Biology,eds Ausubel et al.,John Wiley & Sons(1992)参照。
【0123】
コードの縮重のために、多様な核酸配列が各免疫グロブリンアミノ酸配列をコードする。所望の核酸配列は、最初からの固相DNA合成によりまたは所望のポリペプチドの以前に作製された改変体のPCR変異誘発により産生できる。オリゴヌクレオチドに媒介される変異誘導は、標的ポリペプチドDNAの置換、欠失および挿入改変体の作製に好ましい方法である。Adelman et al.,DNA 2:183(1983)参照。要約すると、標的ポリペプチドDNAは、所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドを一本鎖DNA鋳型にハイブリダイズして改変される。ハイブリダイゼーションの後、オリゴヌクレオチドプラスミドを組込み、そして標的ポリペプチドDNA内の選択された改変をコードする鋳型の第二の相補鎖全体を合成するためにDNAポリメラーゼが使用される。
4.定常領域の選択
上記のようにして作製された抗体の可変セグメント(例えばキメラまたはヒト化抗体の重鎖および軽鎖可変領域)を免疫グロブリン定常領域(Fc領域)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分に典型的には連結するる。ヒト定常領域DNA配列は、各種のヒト細胞、しかし好ましくは不死化B細胞から周知の方法に従って単離できる(Kabat et al.、上記文献およびLiu et al.,国際特許公開(WO)第87/02671号明細書参照)(上記の各文献では、すべての目的のためにその全体を引用することにより編入される)。通常、抗体は軽鎖および重鎖定常領域の双方を含む。重鎖定常領域は、通常CH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4領域を含む。本明細書中に記載する抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含むあらゆる形式の定常領域、およびIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むあらゆるイソタイプを有する抗体を含む。抗体(例えばヒト化抗体)が細胞毒性活性を示すことを望む場合には、定常領域は通常、補体結合性定常ドメインでありそしてそのクラスは典型的にはIgG1である。ヒトイソタイプIgG1が好ましい。軽鎖定常領域はラムダまたはカッパであることができる。ヒト化抗体は、1種以上のクラスまたはイソタイプからの配列を含んでなってもよい。抗体は、2個の軽鎖と2個の重鎖を含む四量体として、分離した重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’F(ab’)2およびFvとして、または重鎖および軽鎖可変ドメインがスペーサーを介して連結している一本鎖抗体として発現されることができる。
5.組換え抗体の発現
キメラおよびヒト化抗体は典型的には組換え発現により産生される。場合により定常領域に連結される軽鎖および重鎖可変領域をコードする核酸は、発現ベクター内に挿入される。軽鎖および重鎖は、同一または異なる発現ベクター内にクローニングできる。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を保証する発現ベクター内の制御配列に作動可能に連結される。発現制御配列は、プロモーター(例えば本来的に関連するかまたは異種プロモーター)、シグナル配列、エンハンサー要素、および転写終止配列を含むが、それらに限定はされない。好ましくは、発現制御配列は、真核生物宿主細胞(例えばCOS細胞)を形質転換またはトランスフェクションできるベクター内の真核生物プロモーター系である。ベクターが適切な宿主細胞内に組み込まれると、宿主はヌクレオチド配列の高レベル発現、および交差反応した抗体の収集および精製に適する条件下に保たれる。
【0124】
それらの発現ベクターは、典型的には、エピソームとしてまたは宿主染色体DNAの一体化部分としてのいずれかで宿主生物体内で複製が可能である。共通して、所望のDNA配列を用いて形質転換されたそれら細胞の検出を許容とするために、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含む(例えばItakuraら、米国特許第4,704,362号明細書参照)。
【0125】
大腸菌(E.coli)は、本発明のポリヌクレオチド(例えばDNA配列)をクローニングするために特に有用な一つの原核生物宿主である。使用に適する他の微生物宿主は、バチルス属、例えば枯草(Bacillus subtilis、およびその他のサルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)のような他の腸内菌科、および種々シュードモナス属(Pseudomonas)の種を含む。これらの原核生物宿主内でも発現ベクターを作製でき、それは典型的には宿主細胞と適合できる発現制御配列(例えば複製の起点)を含む。さらに、各種の周知のプロモーターのいずれかの数が存在でき、例えばラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダからのプロモーター系である。プロモーターは、典型的には、場合によりオペレーター配列を用いて、発現を制御し、そして転写および翻訳を開始および完了するためにリボソーム結合部位配列などを有する。
【0126】
酵母などの他の微生物も発現に有用である。サッカロミセス属(Saccharomyces)が好ましい酵母宿主であるが、一方発現制御配列(例えばプロモーター、複製の起点、終止配列などを希望に応じて有する適切なベクターも有用である。典型的なプロモーターは、3−ホスホグリセリン酸キナーゼおよびその他の解糖酵素を含む。誘導可能な酵母プロモーターは、なかでも、アルコール脱水素酵素、イソチトクロームC、およびマルトースおよびガラクトース利用ができる酵素からのプロモーターを含む。
【0127】
微生物の他に、哺乳動物組織細胞培養物も本発明のポリペプチドを発現および産生するために使用してもよい(例えば免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド)。Winnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。異種タンパク質(例えば本来の免疫グロブリン)を分泌できる多数の適合する宿主細胞系が当該技術分野で開発されているので、真核生物細胞が実際には好ましく、そしてCHO細胞系、種々のCos細胞系、HeLa細胞、好ましくは骨髄種細胞系、または形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。好ましくは、細胞は非ヒト性である。それらの細胞の発現ベクターは、発現制御配列、例えば複製の起点、プロモーター、およびエンハンサー(Queen et al.,Immunol.Rev.89:49(1986)参照)、および必要なプロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列を含むことができる。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルスなどから誘導されるプロモーターである。Co.et al.,J.Immunol.148:1149(1992)参照。
【0128】
あるいは、抗体をコードする配列は、トランスジェニック動物のゲノム内への導入および引き続いてのトランスジェニック動物の乳内での発現のための導入遺伝子内に組み込むことができる(例えば、Deboerら、米国特許第5,741,957号明細書、Rosen米国特許第5,304,389号明細書、およびMaedeら米国特許第5,849,992号明細書参照)。適切な導入遺伝子には、カゼインまたはベータラクトグロブリンのような、乳腺特異的遺伝子からのプロモーターおよびエンハンサーと作動可能に連結している軽鎖および/または重鎖のコード配列を含む。
【0129】
あるいは、本発明の抗体(例えばヒト化抗体)は、トランスジェニック植物(タバコ、トウモロコシ、ダイズおよびアルファルファ)内で産生できる。改善された「plantibody」ベクター(Hendy et al(1999)J.Immunol.Methods 231:137−146)および形質転換できる作物種内での増加と組み合わせた精製戦略は、ヒトおよび動物の治療だけでなく、工業的用途(例えば触媒抗体)にも同様に組換え免疫グロブリンの実際的かつ効率的な産生手段をかかる方法に与える。さらに、植物産生抗体は、安全で効率的なことが立証されそして動物由来の物質の使用従って伝染性海綿様脳症(TSE)薬剤との汚染の危険が避けられる。さらに、植物と哺乳動物細胞産生抗体とのグリコシル化パターンの相違は、抗原結合性または特異性にほとんどもしくは全く影響しない。加えて、植物由来の分泌二量体IgA抗体の局所経口適用を受けた患者内で毒性またはHAMAの徴候は観察されなかった(Larrick et al.(1998)Res.Immunol.149:603−608参照)。
【0130】
トランスジェニック植物内で組換え抗体を発現するために各種の方法を使用してもよい。例えば、抗体重鎖おび軽鎖は、発現ベクター(例えばAgrobacterium tumefaciensベクター)内に独立してクローニングでき、次いで、組換え細菌を用いてin vitroで植物組織の形質転換するかまたは植物組織内に例えばバリスチックス(ballistics)を用いて物理的に導入されるベクターを用いて被覆された、例えば粒子を用いて形質転換できる。引き続いて、個別の鎖を発現する全植物を再構築し、次いでそれらの有性交配により最終的に完全に構築され機能性の抗体の産生をもたらす。同様のプロトコールは、タバコ植物中で機能性抗体を発現するために使用された(Hiatt et al.,(1989)Nature 342:76−87参照)。各種の態様で、シグナル配列は適切な植物環境(例えばアポプラズム(apoplasm)または塊茎、果物または種子を含むその他の特定の植物組織の水性環境)に鎖を導くことにより非集積抗体鎖の発現、結合および折り畳みを促進するために使用できる(Fiedler et al.(1995)Bio/Technology 13:1090−1093参照)。植物バイオリアクターは、抗体収率を上げそして経費を著しく低下させるためにも使用できる。
【0131】
関係するポリヌクレオチド配列(例えば重鎖および軽鎖のコード配列および発現制御配列)を含むベクターは、細胞宿主の型により変化する周知の方法により宿主細胞内に移行できる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは原核生物細胞に通常使用され、一方リン酸カルシウム処理、電気窄孔、リポフェクション、バイオリスティクスまたはウイルスに基づくトランスフェクションは、その他の細胞宿主に使用してもよい(一般的には、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press,2nd ed.1989)参照)(すべての目的のために引用することによりその全体を編入する)。哺乳動物細胞を形質転換するために使用されるその他の方法は、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、電気窄孔、および微量注入の使用が含まれる(一般的にはSambrook、上記文献、を参照)。トランスフェクション動物の作製のために、導入遺伝子を受精卵内に微量注入できるか、または胚幹細胞のゲノム内に組み込むことができ、そしてかかる細胞の核を除核卵細胞内に移行できる。
【0132】
重鎖および形質転換を別々の発現ベクター上にクローニングする場合、本来の免疫グロブリンの発現および構築を得るためにベクターを同時トランスフェクションする。発現されると、本発明の全抗体、それらの二量体、個別の軽鎖および重鎖、またはその他の免疫グロブリン形態は、硫酸アンモニウム沈降、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動などを含む当該技術分野の標準手順に従って精製できる(一般的には、Scopes,Protein Purification(Springer−Verlag,N.Y.,(1982)参照)。製薬学的使用に対して、少なくとも約90〜95%の均質性の本質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、そして98〜99%またはそれ以上の均質性が最も好ましい。
6.抗体フラグメント
さらに本発明の範囲内に意図しているのは抗体フラグメントである。一つの態様において、非ヒト、および/またはキメラ抗体のフラグメントが提供される。別の態様では、ヒト化抗体のフラグメントが提供される。典型的には、それらのフラグメントは少なくとも107、そしてさらに典型的には108〜109M−1の親和性で抗原への特異的結合性を示す。ヒト化抗体フラグメントは、分離した重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、およびFvを含む。フラグメントは、組換えDNA技術により、または本来の免疫グロブリンの酵素的または化学的分離により製造される。
7.エピトープマッピング
エピトープマッピングは、Aβのどの抗原性決定体またはエピトープが抗体により認識されるかを決定するために行うことができる。一つの態様では、エピトープマッピングは、置換(Replacement)NET(rNET)分析に従って行われる。rNETエピトープマップアッセイは、抗体の全般的結合活性へのエピトープ内の個別残基の貢献に関する情報を提供する。rNET分析は、合成した系統的単一置換ペプチド類似体を用いる。試験される抗体の結合性は、本来のペプチド(本来的抗原)に対しておよび19の代替「単一置換」ペプチドに対して決定しが、それぞれのペプチドは第一の位置で、その位置に対して19の非本来的アミノ酸の一個で置換されている。その位置における各種の非本来的残基での置換の効果を反映するプロフィールが作製される。抗原性ペプチドに沿った連続する位置でも同様にプロフィールが作製される。その際、一緒にしたプロフィール、すなわちエピトープマップ、(それぞれの位置において19種すべての非本来的残基での置換を反映する)は、第二の抗体に対して同様に作製されたマップと比較できる。本質的に類似または同一性するマップは、比較される抗体が同一または類似するエピトープ特異性を有することを示す。
8.動物モデルにおける治療効力についての抗体の試験
7〜9月齢のPDAPPマウスの群それぞれに、ポリクローナル抗Aβまたは特異性抗Aβモノクローナル抗体をPBS中の0.5mgで注入する。全抗体調製物を低エンドトキシンレベルを有するまで精製する。モノクローナル抗体はフラグメントに対して、マウス内にAβのフラグメントまたはより長い形を注入し、ハイブリドーマを作製し、そしてAβの他の非重複フラグメントに結合しないでAβの所望のフラグメントに特異的に結合する抗体についてハイブリドーマをスクリーニングすることにより調製できる。
【0133】
必要に応じて4ヵ月間にわたってマウスに腹腔内に注入して、ELISAにより測定される循環抗体濃度がAβ42またはその他の免疫原に対してELISAにより定義される1/1000より高い力価を維持する。力価を監視しそして注入後6カ月の終わりにマウスを安楽死させる。組織化学的に、Aβレベルおよび毒性試験を死後に実施する。グループ当たりにマウス10匹を使用した。
9.除去活性についての抗体のスクリーニング
本発明は、アミロイド沈着もしくはその他の抗原を除去する活性が望まれる抗原、または除去活性が望まれる関連する生物学的物体(entity)につおてスクリーニングする方法も提供する。アミロイド沈着に対する活性をスクリーニングするために、アルツハイマー病を有する患者、または特徴的なアルツハイマー病の病理を有する動物モデルの脳からの組織試料を、Fc受容体、例えば小膠細胞を含む食細胞、および試験する抗体と、媒体内、in vitroで接触させる。食細胞は、一次培養物、または細胞系であることができ、そしてネズミ(例えばBV−2またはC8−B4細胞)またはヒト由来(例えばTHP−1細胞)であることができる。いくつかの方法では、顕微鏡監視を容易にするために顕微鏡スライド上で成分を組み合わせる。いくつかの方法では、微量定量皿のウエル内で複数の反応を平行して行わせる。かかる形式において、別々の小型顕微鏡スライドを別々のウエル内に取り付けることができ、または非顕微鏡検出形式、例えばAβのELISA検出を使用できる。in vitro反応混合物内のアミロイド沈着物の量について、反応が進行する前の基準値、および反応の間の1個またはそれ以上の試験値の一連の測定を行う。抗原は、例えばAβまたはその他のアミロイド斑の成分に対する蛍光標識抗体を用いて染色して検出できる。染色に使用する抗体は、除去活性について試験されている抗体と同一でも同一でなくてもよい。反応の間のアミロイド沈着の基準からの低下は、試験される抗体が除去活性を有することを示す。かかる抗体は、アルツハイマー病およびその他のアミロイド疾患を予防または処置するために有用である可能性がある。アルツハイマー病またはその他のアミロイド疾患を予防または処置するために特に有用な抗体は、集中および拡散したアミロイド斑の双方を除去できるものを含み、例えば本発明の12A11抗体、またはそのキメラもしくはヒト化バージョンである。
【0134】
同様の方法も、他の型の生物学的物体の除去における活性について抗体をスクリーニングするために使用できる。アッセイは、実際的にあらゆる種類の生物学的物体に対する除去活性を検出するために使用できる。典型的には、生物学的物体はヒトまたは動物の疾患になんらかの役割を有する。生物学的物体は組織試料または単離された形で提供され得る。組織試料として提供される場合には、それは、好ましくは、組織試料の成分に直接近接できるようにそして固定に付随する組織のコンホメーションの攪乱を回避するために固定されない。このアッセイで試験できる組織試料の例には、癌組織、前癌組織、いぼまたはほくろのような良性増殖を含む組織、病原性微生物に感染した組織、炎症性細胞に浸潤された組織、細胞間の病理学的間質を有する組織(例えば繊維性心膜炎)、異常抗原を有する組織、および瘢痕組織が含まれる。使用できる単離された生物学的物体には、Aβ、ウイルス抗原またはウイルス、プロテオグリカン、他の病原性微生物の抗原、腫瘍抗原および細胞接着分子が含まれる。かかる抗原は、他の手段のなかでも、天然供給源、組換え発現または化学合成から得ることができる。組織試料または単離された生物学的物体は、Fc受容体を有する食細胞、例えば単球もしくは小膠細胞、および試験される抗体と媒体内で接触される。抗体は、試験される生物学的物体または物体と関連する抗原に指定できる。後者の状況で、目的は、生物学的物体が抗原と食作用を行うかどうかを試験することである。通常、しかし必ずしも常ではないが、抗体および生物学的物体(時には関連する抗原と一緒に)を食細胞添加の前に互いに接触させる。次いで、存在する場合には、媒体内に残存する生物学的物体および/または関連抗原の濃度を監視する。媒体内の抗原または関連する生物学的物体の量または濃度の低下は、抗原が、食細胞と一緒に抗原および/または関連生物学的物体に対して除去反応を有することを示す。
10.改変されたエフェクター機能を有するキメラ/ヒト化抗体
定常領域(Fc領域)を含んでなる本発明の上記抗体に対して、分子のエフェクター機能を改変することが望ましいこともある。一般的に、抗体のエフェクター機能は各種のエフェクター分子、例えば補体タンパク質またはFc受容体への結合を媒介できる分子の定常またはFc領域内に存在する。Fc領域への補体の結合は、例えば細胞病原のオプソニン化および溶解ならびに炎症反応の活性化に重要である。例えばエフェクター細胞の表面上のFc受容体への抗体の結合は、多数の重要で多岐にわたる生物学的反応、例えば抗体被覆された病原体または粒子の抱き込みおよび分解、免疫複合体の除去、抗体被覆された標的細胞のキラー細胞による溶解(すなわち、抗体依存性で細胞媒介性の細胞毒性、すなわちADCC)、炎症媒介体の開放、抗体の胎盤内移動、および免疫グロブリン産生の制御を含み開始できる。
【0135】
従って、特定の治療もしくは診断用途に応じて、上記の免疫機能、または選択された免疫機能のみが望ましいであろう。抗体のFc領域を改変して、診断および治療に有利な効果を有する免疫系の各種反応を増強または抑圧することを含み、分子のエフェクター機能の各種の局面が達成される。
【0136】
Fc受容体のある種の型とのみ反応する本発明の抗体が製造でき、例えば、本発明の抗体は、抗体のFc領域内に位置するFc受容体結合部位の欠失または改変により、ある種のFc受容体にのみ結合するか、またはFc受容体を欠失するように変性できる。本発明の抗体のFc領域のその他の望ましい改変を以下に列挙する。典型的には、Kabat番号付けシステムは、エフェクター機能において所望の変化を達成するために、(例えばIgG抗体の)Fc領域内のどのアミノ酸残基が(例えばアミノ酸置換により)改変されたかを示すために用いられる。この番号付けシステムは、例えばマウス抗体内に観察される所望のエフェクター機能が、本発明のヒト、ヒト化、またはキメラ抗体中に系統的に操作できるように、種間の抗体を比較するめにも用いられる。
【0137】
例えば、抗体(例えばIgG抗体)がFc受容体(例えばヒト単球上のFc受容体、FcγRI)への緊密、中間的、または弱い結合を示すことを見いだされるものにグループ分類できることが観察された。それらの異なる親和性グループ内のアミノ酸配列の比較により、ヒンジ連結領域(Leu234−Ser239)内の単球結合部位が同定された。さらに、ヒトFcγRI受容体は、モノマーとしてヒトIgG1およびマウスIgG2aを結合するが、しかしマウスIgG2bの結合性は100倍も弱い。ヒンジ連結領域内のそれらタンパク質の配列の比較は、強い結合体内の配列234〜238、すなわちLeu−Leu−Gly−Gly−Pro(配列番号32)が、マウスガンマ2b、即ち弱い結合体内ではLeu−Glu−Gly−Gly−Pro(配列番号33)となることが示された。従って、低いFcγI受容体結合性が望まれる場合には、ヒト抗体ヒンジ配列における相当する変化をさせることができる。他の改変は同一または類似した結果を達成するために行うことができると理解される。例えば、FcγRI結合の親和性は、その側鎖に不適当な機能基を有する残基で指定の残基を置換して、または荷電官能基(例えばGluまたはAsp)もしくは例えば芳香族非極性基(例えばPhe、Tyr、またはTrp)を導入することにより改変できる。
【0138】
それらの変化は、異なる免疫グロブリン間の配列相同性を考えると、ネズミ、ヒトおよびラット系にも同等に適用できる。ヒトFcγRI受容体に結合するヒトIgG3に対して、Leu235からGluへの変化は受容体に対する変異体の相互作用を破壊することが示された。この受容体に対する結合部位は、適当な変異を行うことにより入れたり外したりできる。
【0139】
ヒンジ連結領域に隣接または近い部位上の変異(例えばalaによる残基234、236または237を置換)は、FcγRI受容体への親和性に少なくとも残基234、235、236または237内の改変が少なくとも影響することが示される。従って、本発明の抗体は、非改変抗体と比較してFcγRIへの改変された結合性親和性を有する改変されたFc領域を有することもできる。かかる抗体は、好都合にはアミノ酸残基234、235、236、または237での変異を有する。
【0140】
Fc受容体に対する親和性は、異なる様式で免疫反応を制御して同様の方法により改変できる。
【0141】
さらなる例として、補体のC1成分の結合に続くIgG抗体の溶解性を改変できる。
【0142】
補体系の第一の成分であるC1は、緊密に一緒に結合するC1q、C1rおよびC1sとして知られる3種のタンパク質を含んでなる。C1qは、抗体への3種のタンパク質複合体の結合に関与することが示された。
【0143】
従って、抗体のC1q結合活性は、重鎖のアミノ酸残基318、320、および322の少なくとも1個が異なる側鎖を有する残基に変化されている改変されたCH2ドメインを有する抗体を提供して改変できる。重鎖内の残基の番号付けは、EUインデックスのものである(Kabat et al.上記文献参照)。抗体に対する特異性C1q結合を改変、例えば低下または消滅させるためのその他の適当な改変には、残基318(Glu)、320(Lys)および322(Lys)のいずれか1個のAlaへの変化が含まれる。
【0144】
さらに、それらの残基で変異を行って、残基318が水素結合性側鎖を有しそして残基320および322の双方が正に荷電した側鎖を有する限り、C1q結合は保存されることが示された。
【0145】
C1q結合活性は、3個の特定の残基のいずれか1個の側鎖上で不適当な官能性を有する残基で置換して消滅できる。C1q結合を消滅させるためにイオン性残基をAlaとのみ置換することは必ずしも必要ではない。C1q結合を消滅させるために3個の残基のいずれか1個の代わりに、他のアルキル置換非イオン性残基、例えばGly、Ile、Leu、もしくはVal、または芳香族非極性残基、例えばPhe、Tyr、TrpおよびProを使用することも可能である。加えて、C1q結合活性を消滅させるために、318を除く残基320および322の代わりに、極性非イオン性残基、例えばSer、Thr、Cys、およびMetを使用することも可能である。
【0146】
イオン性または非イオン性極性残基上の側鎖が、Glu残基により形成される結合に同様の様式で水素結合を形成することが可能なことも指摘されている。従って、極性残基による318(Glu)残基の置換は、C1q結合活性を変性はするが消滅はできないであろう。
【0147】
残基297(Asn)のAlaによる置換は、溶解活性の消失をもたらすがしかしC1qへの親和性は僅かに低下(約1/3に低下)するだけであることも知られている。この改変は、補体活性化のために必要なグリコシル化部位および炭水化物の存在を破壊する。この部位におけるいかなる他の置換もグリコシル化部位を破壊するであろう。
【0148】
本発明は、抗体が変性されたヒンジ領域を有する、改変されたエフェクター機能を有する抗体も提供する。変性されたヒンジ領域は、CH1ドメインからのものとは異なる抗体クラスまたはサブクラスの抗体から誘導された完全なヒンジ領域を含んでなってもよい。例えば、クラスIgG抗体の定常領域(CH1)は、クラスIgG4抗体のヒンジ領域に付着できる。あるいは、新しいヒンジ領域は、本来のヒンジまたは反復内のそれぞれの単位が本来のヒンジ領域から誘導されている反復単位の一部を含んでなってもよい。一つの例では、天然のヒンジ領域は、1個またはそれ以上のシステイン残基を中性残基、例えばアラニンへの転換により、または適宜に位置された残基をシステイン残基に転換して改変される。かかる改変は、本明細書中に記載のような当該技術分野で認知されたタンパク質化学、好ましくは、遺伝子組換え技術を用いて遂行される。
【0149】
本発明の一つの態様では、抗体のヒンジ領域内のシステイン残基の数が、例えば1個のシステイン残基にまで減少される。この変性は、抗体、例えば二重特異性抗体分子およびFc部分がエフェクターまたはレポーター分子により置換された抗体分子の構築を容易にする利点があり、それというのもこれは単一ジスルフィド結合を形成するためにのみ必要だからである。この変性は、他のヒンジ領域へまたはエフェクターもしくはレポーター分子のいずれかへ、直接または間接的に、例えば化学的手段によるヒンジ領域への付着のための特異性標的も提供する。
【0150】
反対に、抗体のヒンジ領域内のシステイン残基の数も、正常に存在するシステイン残基の数よりも例えば少なくとも1個だけ増加させる。システイン残基の数の増加は、隣接するヒンジの間の相互作用を安定化するために使用できる。この変性の他の利益は、例えば放射能標識された改変抗体にエフェクターまたはレポーター分子を付着させるためのシステインチオール基の使用を容易にすることである。
【0151】
従って、本発明は、改変されたエフェクター機能を達成するために、抗体クラス、特にはIgGクラス間のヒンジ領域の交換、および/またはヒンジ領域内のシステイン残基の数の増加または減少を提供する(例えば、米国特許第5,677,425号参照、これは本明細書中に明らかに編入される)。改変された抗体エフェクター機能の決定は、本明細書中に記載または当該技術分野で認知されたその他の技術によるアッセイを用いて行われる。
【0152】
重要なのは、得られた抗体が、出発抗体と比較して生物学的活性におけるいずれかの変化を評価するための1種またはそれ以上のアッセイを受けることができることである。例えば、補体またはFc受容体を結合するめに改変されたFc領域を有する抗体の能力が、本発明中で開示するアッセイならびに当該技術分野で認知されているいずれかのアッセイを用いて評価できる。
【0153】
本発明の抗体の製造は、本明細書中に記載の技術または当該技術分野の熟練者に既知の技術を含むいずれか適切な技術により遂行される。例えば、適切なタンパク質配列、例えば関係する定常ドメイン、例えば抗体のFc領域、すなわちCH2、および/またはCH3ドメインの、またはその全ての形成性部分は、さらに適切な改変された残基を含めて合成でき、次いで抗体分子内の適切な位置に化学的に結合される。
【0154】
好ましくは、遺伝子組換え技術が、改変された抗体を産生するために使用される。好ましい技術には、例えば、IgG重鎖、例えばFcまたは定常領域(例えばCH2、および/またはCH3)の少なくとも一部分をコードするDNA配列が少なくとも1個またはそれ以上の残基で改変されるようにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用に適するプライマーを調製することを含む。次いで、セグメントを抗体の残存部分、例えば抗体の可変領域および細胞内の発現のための調節要素に操作できるように連結できる。
【0155】
本発明は、細胞系を形質転換するために使用されるベクター、形質転換ベクターを産生するために使用されるベクター、形質転換性ベクターを用いて形質転換される細胞、調製用ベクターを用いて形質転換される細胞系、およびそれらの作製方法も含む。
【0156】
好ましくは、改変されたFc領域(すなわち、改変されたエフェクター機能のもの)を有する抗体を産生するために形質転換された細胞系は、不死化哺乳動物細胞系(例えばCHO細胞)である。
【0157】
改変されたFc領域を有する抗体の産生に使用される細胞系は好ましくは哺乳動物細胞系であるが、いかなる他の適切な細胞系、例えば細菌細胞系または酵母細胞系を代わりに使用してもよい。
11.親和性変異
本発明の抗体(例えばヒト化抗体)は、いずれかの数の親和性変異技術を用いて改善された機能について変性できる。典型的には、与えられた標的分子に結合親和性を有する候補分子を同定し、次いで変異誘発技術を用いて改善または「成熟」させて、標的分子とさらに望ましい結合相互作用を有する1種またはそれ以上の関連候補をもたらす。典型的には、変性されるのは抗体の親和性(あるいは結合活性、すなわち標的抗原への抗体の複合的親和性)ではあるが、しかし分子の他の性質、例えば安定性、エフェクター機能、除去性、分泌性もしくは輸送機能も、親和性変異技術を用いて、親和性とは別個にまたは平行して変性してもよい。
【0158】
例示的な態様では、抗体(例えば本発明のヒト化抗体)の親和性が増加される。例えば、少なくとも107M−1、108M−1または109M−1の結合親和性を有する抗体は、それらの親和性が少なくとも109M−1、1010M−1または1011M−1であるように成熟できる。
【0159】
結合分子を成熟させる親和性の一つの解決法は、所望の変化または複数の変化をコードする結合分子、またはその部分をコードするアミノ酸を合成することである。オリゴヌクレオチド合成は当該技術分野では周知でありそしてあらゆる所望のコドン変化を有する1種またはそれ以上の核酸でも産生するように容易に自動化される。制限部位、サイレント変異、および好みのコドン使用をこの様式で導入してもよい。あるいは、一個またはそれ以上のコドンは、特定のアミノ酸のサブセット、例えばジスルフィド連結を形成できるシステインを排除するサブセットを表すように改変でき、そしてカノニカルされた領域、例えばCDR領域またはその部分に限定される。あるいは、領域は、部分的または完全に無作為なアミノ酸の組により表されてもよい(追加の詳細は、例えば米国特許第5,830,650号、米国特許第5,798,208号、米国特許第5,824,514号、米国特許第5,817,483号、米国特許第5,814,476号、米国特許第5,723,323号、米国特許第4,528,266号、米国特許第4,359,53号、米国特許第5,840,479号、および米国特許第5,869,644号の各明細書参照)。
【0160】
上記の解決法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて部分的にまたは完全に実行でき、その方法は当該技術分野では周知でありそして、例えば所望の改変を有するオリゴヌクレオチド、例えばプライマーもしくは一本鎖核酸を組込み、そしてその他の操作、例えば適切な発現またはクローニングベクター内への遺伝子操作のために適する大きい量の利点を有することが理解される。かかるPCRは、ヌクレオチドの組込み違いを可能とする条件下で実行してこれにより増幅れる核酸内に追加的な変化を導入できる。PCRを実行するために実験的な詳細および関連キット、試薬およびプライマー設計は、例えば米国特許第4,683,202号、米国特許第4,683,195号、米国特許第6,040,166号、および米国特許第6,096,551号の各明細書に見いだされる。プライマーに基づくPCRを用いる抗体フレームワーク領域内へのCDR領域の導入の方法は、例えば米国特許第5,858,725号明細書内に記載されている。抗体分子のさらに大きいセット、例えば抗体分子のさらに大きく多種のセットを用いて配列相同性を見いだせるプライマーの最小のセットを用いる抗体ライブラリー(および方法に従って作製されたライブラリー)のプライマーに基づくPCR増幅の方法は、例えば米国特許第5,780,225号、米国特許第6,303,313号、および米国特許第6,479,243号の各明細書に見いだされる。部位指定変異誘発を実行するためのPCRに基づかない方法も使用でき、そして一本鎖ウラシル含有鋳型および特定の大腸菌系統を通過する際にハイブリダイズおよび変異を導入できるプライマーを使用する「Kunkel」変異誘発法を含む(例えば米国特許第4,873,192号明細書参照)。
【0161】
抗体配列またはその一部分を変化させる別の方法は、非最適(すなわちエラー頻発型)条件下での核酸合成または核酸のPCR、かかる核酸の変性および復元(アニーリング)、エキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼ消化に続く連結もしくはPCRによる再構築(核酸シャッフリング)、または例えば米国特許第6,440,668号、米国特許第6,238,884号、米国特許第6,171,820号、米国特許第5,965,408号、米国特許第6,361,974号、米国特許第6,358,709号、米国特許第6,352,842号、米国特許第4,888,286号、米国特許第6,337,186号、米国特許第6,165,793号、米国特許第6,132,970号、米国特許第6,117,679号、米国特許第5,830,721号、および米国特許第5,605,793号の各明細書に記載の従来技術の一種またはそれ以上の組み合わせを含む。
【0162】
ある態様では、例えば、1個またはそれ以上のCDR領域(またはその一部分)、1個またはそれ以上のフレームワーク領域、および/または1個またはそれ以上の定常領域(例えばエフェクター機能を有する定常領域)中の候補抗体分子の一定の部分内に多様性を有する候補抗体分子のファミリーを含んでなる抗体ライブラリー(もしくは親和性成熟ライブラリー)が発現されそして当該技術分野で認知されている技術を用いて所望の性質についてスクリーニングできる(例えば米国特許第6,291,161号、米国特許第6,291,160号、米国特許第6,291,159号、および米国特許第6,291,158号の各明細書参照)。例えば、CDR3配列の多様性を有する抗体可変領域の発現ライブラリー、および変異誘発によりCDR3配列の多様性を導入し、そしてライブラリーを回収することによるCDR3配列の多様性を有するヒト抗体ライブラリーを作製する方法が構築できる(例えば米国特許第6,248,516号明細書参照)。
【0163】
最後に、親和性成熟抗体を発現するために、候補抗体分子をコードする核酸が、適切な発現形式、例えば全長抗体重鎖および軽鎖(例えばIgG)、抗体Fabフラグメント(例えばFab、F(ab’)2 )、または一本鎖抗体(scFv)内で、標準ベクターおよび細胞トランスフェクション/形質転換技術を用いて細胞内に導入できる(例えば、米国特許第6,331,415号、米国特許第6,103,889号、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,258,498号、および米国特許第4,946,778号の各明細書参照)。
B.免疫学的および治療的薬剤をコードする核酸
アミロイド沈着に対する免疫反応は、受動免疫化に使用される抗体およびそれらの成分鎖をコードする核酸の投与によっても導入できる。かかる核酸は、DNAまたはRNAであってもよい。免疫原をコードする核酸セグメントは、典型的には、意図する患者の標的細胞内のDNAセグメントの発現を許容する調節要素、例えばプロモーターまたはエンハンサーに連結される。免疫反応の誘導のために望ましい血液細胞内での発現のために、例示的なプロモーターおよびエンハンサー要素は、軽鎖もしくは重鎖免疫グロブリン遺伝子および/またはCMV主要中間体初期プロモーターおよびエンハンサーからのものを含む(Stinski、米国特許第5,168,062号、および米国特許第5,385,839号の各明細書)。連結された調節要素よびコード配列は、しばしばベクター内にクローニングされる。二本鎖抗体の投与のために、二本の鎖が同一または別のベクター内にクローニングできる。
【0164】
レトロウイルス系(例えばLawrie and Tumin,Cur.Opin.Genet.Develop.3:102−109(1993)参照);アデノウイルスベクター(例えばBett et al.,J.Virol.67:5911(1993)参照);アデノ随伴ウイルスベクター(例えばZhou et al.,J.Exp.Med.179:1867(1994)参照);牛痘ウイルスおよび鳥痘ウイルスを含むポックス科からのウイルスベクター、アルファウイルス属からのウイルスベクター、例えばシンドビスおよびセムリキ森林ウイルスから誘導されたもの(例えばDubensky et al.,J.Virol.70:508(1996)参照);ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Johnston et al.、米国特許第5,643,576号明細書参照)およびラブドウイルス、例えば水疱性口内炎ウイルス(Rose、米国特許第6,168,943号明細書参照)および乳頭腫ウイルス(Ohe et al.,Human Gene Therapy 6:325(1995);Woo et al.,国際特許出願(WO)第94/12629号明細書およびXiao & Brandsma,Nucleic Acids.Res.24:2630−2622(1966)))のような多数のウイルスベクター系が利用できる。
【0165】
免疫原をコードするDNA、またはそれを含むベクターは、リポソーム内にパッケージングできる。適切な脂質および関連する類似体は、Eppstein et al.、米国特許第5,208,036号明細書、Felinger et al.、米国特許第5,264,618号明細書、Rose、米国特許第5,279,833号明細書、およびEpand et al.、米国特許第5,283,185号明細書に記載されている。免疫原をコードするベクターおよびDNAは、粒子状キャリヤに吸着またはそれと会合されることもでき、その例には、ポリメチルメタクリレートポリマーおよびポリラクチドおよびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が含まれ、例えばMcGee et al.,J.Micro Encap.(1996)参照。
【0166】
遺伝子治療ベクターまたは裸のポリペプチド(例えばDNA)は、個別の患者への投与、典型的には全身投与(例えば静脈内、腹腔内、鼻、胃腸、皮内、筋肉内、皮下、または頭蓋内注入)または局所適用によりin vivoで送達できる(例えばAnderson et al.、米国特許第5,399,346号明細書参照)。「裸のポリヌクレオチド」の用語は、トランスフェクションを促進にする薬剤と一緒に送達されないポリヌクレオチドを指す。裸のポリヌクレオチドは、時にはプラスミドベクター内にクローニングされる。かかるベクターは、さらに促進剤、例えばブピバカインを含むことができる(Weiner et al.、米国特許第5,593,972号明細書参照)。DNAは、ジーンガン(gene gun)を用いて投与もできる。Xiao & Brandsmaの上記文献を参照のこと。免疫原をコードするDNAは、微細な金属ビーズの表面上に沈着される。マイクロプロジェクタイル(microprojectile)を衝撃波または膨脹するヘリウムガスで加速し、そして数層の細胞層の深さまで組織に透過させる。例えばAgricetus,Inc.Middletown WIにより製造されるAccelTM 遺伝子伝達装置が適する。あるいは、裸のDNAは、化学的または機械的刺激を用いて皮膚上にDNAを単に打点して血流内まで皮膚を通過できる(Howell et al.国際特許公開(WO)第95/05853号明細書参照)。
【0167】
さらなる変化において、免疫原をコードするベクターは、ex vivoの細胞、例えば個々の患者から外植された細胞(例えばリンパ球、骨髄吸引物、組織生検物)または汎用ドナー造血幹細胞に送達し、次いで、通常ベクターを組み込まれた細胞の選択の後に患者内への細胞の再移植できる。
II.予防および治療方法
本発明は、なかでも、例えば、アミロイド疾患の予防もしくは治療のために、患者内の有益な治療応答(例えばAβのファゴサイトーシスの誘導、斑負荷の低減、斑形成の阻害、神経炎性ジストロフィーの低減、認知機能の改善、および/または認知低下を復帰、処置または予防)を患者内で生成する条件下で、患者にAβ内の特定のエピトープに対する治療的免疫学的試薬(例えばヒト化免疫グロブリン)の投与によるアルツハイマー病およびその他のアミロイド疾患の処置を目的とする。本発明は、アミロイド疾患の処置または予防のための医薬の製造における開示された免疫学的試薬(例えばヒト化免疫グロブリン)の使用も目的とする。
【0168】
一つの局面では、本発明は、患者の脳内のAβのアミロイド沈着と関連する疾患を予防または処置する方法を提供する。かかる疾患は、アルツハイマー病、ダウン症候群および認知障害を含む。後者は、アミロイド疾患のその他の特性を伴いまたは伴わずに発生する可能性がある。本発明のいくつかの方法は、アミロイド沈着の一つの成分に特異的に結合する抗体の有効投与量を患者に投与することを含んでなる。かかる方法は、ヒト患者内のアルツハイマー病を予防または処置するために特に有用である。例示的な方法は、Aβに結合する抗体の有効投与量を投与することを含んでなる。好ましい方法は、Aβの残基1〜10内のエピトープに特異的に結合する抗体、例えばAβの残基1〜3内のエピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1〜4内のエピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1〜5内のエピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1〜6内のエピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1〜7内のエピトープに特異的に結合する抗体、またはAβの残基3〜7内のエピトープに特異的に結合する抗体の有効投与量を投与することを含んでなる。さらに別の局面では、本発明はAβの遊離N−末端残基を含んでなるエピトープに結合する抗体を投与することを特徴とする。さらに別の局面では、本発明は、Aβの残基1および/または残基7がアスパラギン酸であるAβの1〜10の残基内のエピトープに結合する抗体を投与することを特徴とする。さらに別の局面では、本発明は、全長アミロイド前駆体タンパク質(APP)に結合することなく、Aβペプチドに特異的に結合する抗体を投与することを特徴とする。さらに別の局面では、抗体のイソタイプがヒトIgG1である。
【0169】
さらに別の局面で、本発明は、患者内のアミロイド沈着物に結合しそしてアミロイド沈着物に対する反応の除去を誘導する抗体を投与することを特徴とする。例えば、かかる除去反応は、Fc受容体媒介ファゴサイトーシスにより行われることができる。
【0170】
本発明の治療剤は、典型的には望ましくない混在物から本質的に純粋である。これは、薬剤が典型的には少なくとも約50%w/w(重量/重量)純粋であり、ならびに妨害性タンパク質および混在物を本質的に含まないことを意味する。時には、該薬剤は少なくとも約80%w/w、そしてさらに好ましくは少なくとも90または約95%w/w純粋である。しかし、慣用のタンパク質精製技術を用いると、少なくとも99%w/w純粋な均質なペプチドを得ることができる。
【0171】
本方法は、無症候性患者および現在疾患の症状を呈している患者の双方に使用できる。かかる方法に使用される抗体は、ヒト、ヒト化、キメラもしくは非ヒト抗体、またはそれらのフラグメント(例えば抗原結合フラグメント)であることができ、そして本明細書中に記載のようにモノクローナルまたはポリクローナルであることができる。さらに別の局面では、本発明はAβペプチドを用いて免疫化されたヒトから調製された抗体を投与することを特徴とし、そのヒトは抗体を用いて処置される患者であることができる。
【0172】
別の局面では、本発明は製薬学的組成物として製薬学的キャリヤを伴う抗体を投与することを特徴とする。あるいは、該抗体は少なくとも1個の抗体鎖をコードするポリヌクレオチドを投与することにより患者に投与できる。該ポリヌクレオチドは、患者内で発現されて抗原鎖を産生する。場合により、該ポリヌクレオチドは、抗体の重鎖および軽鎖をコードする。ポリヌクレオチドは、患者内で発現されて重鎖および軽鎖を産生する。例示的な態様において、患者は患者の血液内に投与された抗体のレベルを監視される。
【0173】
従って、本発明は、神経病理学そして、一部の患者ではアルツハイマー病に伴う認知障害を予防または軽減するための治療方式への長年の要求を満足する。
A.処置を受け入れやすい患者
処置を受け入れやすい患者は、疾患の危険はあるがしかし症状を呈していない個体、ならびに現在症状を呈している患者を含む。アルツハイマー病の場合に、実際的にすべての人が、十分長く生存している場合にはアルツハイマー病に罹患する危険にさらされている。従って、本方法は、対象患者の危険のいかなる評価も必要なく、一般的な集団に予防的に適用できる。本方法は、アルツハイマー病の既知の遺伝的危険が知られている個体にとって特に有用である。かかる個体は、本疾患を経験した親族を有するもの、および遺伝子的または生化学的マーカーの分析により危険が決定されたものを含む。アルツハイマー病に対する危険の遺伝子マーカーは、APP遺伝子の変異、特にはそれぞれHardyおびSwedish変異と称される位置717ならびに位置670および671にける変異を含む(Hardyの上記文献参照)。危険の他のマーカーは、プレセニリン遺伝子、PS1およびPS2の変異、およびApoE4、ADの家族歴、高コレステロール症またはアテローム硬化症である。現在アルツハイマー病に罹患している個体は、特徴的な痴呆、ならびに上記の危険因子の存在から認識できる。加えて、ADを有する個体を同定するための多数の診断試験が利用できる。それにはCFSタウおよびAβ42レベルの測定が含まれる。上昇したタウおよび下降したAβ42レベルはADの存在を意味する。アルツハイマー病に罹患している個体は、実施例の部に考察するように、ADRDA基準によっても診断できる。
【0174】
無症候性患者において、処置はいかなる年齢(例えば10、20、30)でも開始できる。しかし通常は、患者が40、50、60または70に達するまで処置を開始する必要はない。処置は、典型的には、ある期間にわたる複数の投与を含む。処置は期間中の抗体レベルを評価して監視できる。反応が低下した場合には、追加投与を指示する。潜在的ダウン症候群患者の場合には、処置は、出産前の母親にまたは出産の直後の治療薬の投与により開始できる。
B.治療方式および投与量
予防的適用では、製薬学的組成物また医薬は、アルツハイマー病の疑いがあるかもしくはその危険がある患者に、疾患の生化学的、組織学的および/または行動的症状、その合併症および疾患の進展の間に現れる中間的な病理学的表現型を含む、疾患の危険の排除もしくは低下、重症度の軽減または発症の遅延のために十分な量で投与される。治療的適用においては、かかる疾患の疑いがあるかまたは既に罹患している患者に、疾患(生物化学的、組織学的および/または行動的)の合併症および疾患の進展の間の中間的な病理学的表現型を含み、疾患の症状を治癒、または少なくとも部分的に阻止するために十分な量で組成物または医薬が投与される。
【0175】
いくつかの方法では、薬剤の投与は、特徴的なアルツハイマー病の病理をまだ発生していない患者内の筋認識性(myocognitive)障害を低下または排除する。治療的または予防的処置を達成するために適当な量は、治療的または予防的有効量として定義される。予防的および治療的方式の双方で、薬剤は、通常、十分な免疫反応に到達するまで数回の投与量で投与される。「免疫反応」または「免疫学的反応」の用語は、レシピエント対象者内の抗原に対して向けられる体液性(抗体媒介)および/または細胞性(抗原特異性T細胞もしくはそれらの分泌生成物により媒介)反応の発生を含む。かかる反応は、能動的反応、すなわち免疫原の投与による誘導される反応、または受動的反応、すなわち免疫グロブリンもしくは抗体もしくは抗原刺激を受けたT細胞の投与により誘導されることができる。典型的には、免疫反応は監視されそして免疫反応が弱まりはじめたら反復投与を与える。
【0176】
上記の病状の処置のための本発明の組成物の有効投与量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与されるその他の医薬、および処置が予防的であるか治療的であるかを含む多数の異なる因子に依存して変化する。通常、患者はヒトであるがしかしトランスジェニック哺乳動物を含む非ヒトの哺乳動物も処置できる。処置投与量は、安全で有効性を最適化するために力価を測定されなければならない。
抗体を用いる受動的免疫化のために、投与量は、宿主体重に対して、約0.0001〜100mg/kg、そしてさらに通常には0.01〜5mg/kg(例えば0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)の範囲である。例えば、投与量は、1mg/kg(体重)もしくは10mg/kg(体重)または1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgであことができる。別の例では、投与量は、0.5mg/kg(体重)もしくは15mg/kg(体重)または0.5〜15mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgであことができる。上記の範囲内の中間の投与量も本発明の範囲内と考える。対象者には、かかる投与量を毎日、隔日に、毎週または経験的分析により決定されるいずれか他のスケジュールに従って投与できる。例示的な処置は、長期間、例えば、少なくとも6カ月間にわたる複数投与での投薬を含む。別の例示的な処置方式は、2週間毎に一回または毎月一回または3〜6カ月毎に一回の投薬を含む。例示的な投与スケジュールは、連続する毎日の1〜10mg/kgもしくは15mg/kg、隔日の30mg/kgまたは毎週の60mg/kgを含む。いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2種またはそれ以上のモノクローナル抗体を同時に投薬し、その場合に、それぞれの抗体投薬の投与量は、示された範囲内にある。
【0177】
抗体は、通常複数の機会に投与される。単回投与の間の間隔は、毎週、毎月または毎年であることができる。間隔は、患者内のAβへの抗体の血中レベルを測定して示されるようにして不規則であることもできる。いくつかの方法では、投与量は、1〜1000μg/ml、そしていくつかの方法では25〜300μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調節される。あるいは、抗体は持続放出製剤として投薬でき、その場合に、より低い頻度の投薬が要求される。投与量および頻度は、患者内の抗体の半減期に応じて変化する。一般に、ヒト化抗体が最長の半減期を示し、次いでキメラ抗体および非ヒト抗体である。
【0178】
投薬の投与量および頻度は、処置が予防的または治療的であるかに依存して変化できる。予防的適用では、本抗体またはそのカクテルを含む組成物は、まだ罹患状態ではない患者に患者の抵抗性を増強するために投薬される。かかる量は、「予防有効投与量」として定義される。この使用において、正確な量はここでも患者の健康状態および一般的な免疫性に依存するが、しかし一般的に投与あたりに0.1〜25mg、特には投与あたりに0.5〜2.5mgの範囲にある。比較的低い投与量は、長期間にわたって比較的低い頻度の間隔で投薬される。一部の患者は、その残りの生涯にわたって処置を受けつづける。
【0179】
治療的適用においては、疾患の進行が鈍化または停止するまで、そして好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い投与量(例えば投与あたりに抗体の約1〜200mg、さらに通常には5〜25mgの投与量が使用される)が時に要求される。その後、患者は予防的方式で投薬されることができる。
【0180】
抗体をコードする核酸の投与量は、患者あたりに約10ng〜1g、100ng〜100mg、1μg〜10mgまたは30〜300μgDNAの範囲である。感染性ウイルスベクターの投与量は、投与あたりに10〜100、またはそれ以上のビリオンに変化する。
【0181】
治療用薬剤は、予防的および/または治療的処置に対して、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻内または筋肉内手段により投与できる。免疫原性薬剤の投与の最も典型的な経路は、皮下であるがしかしその他の経路も同様に有効である。次に最も普通の経路は筋肉内注入である。この注入の形式は、最も典型的には、腕または足の筋肉内に行われる。いくつかの方法では、沈着物が蓄積した一定の組織内への薬剤の直接注入、例えば頭蓋内注入である。筋肉内注入または静脈内輸液が、抗体の投与のために好ましい。いくつかの方法で、特定の治療用抗体は頭蓋内に直接注入される。いくつかの方法では、抗体は持続性放出組成物としてまたは装置、例えばMedipadTM装置として投与される。
【0182】
本発明の薬剤は、場合により、アミロイド疾患の処置に少なくとも部分的に有効な他の薬剤と組み合わせて投与できる。ある態様では、本発明のヒト化抗体(例えばヒト化12A11)は、第二の免疫原性または免疫学的薬剤と組み合わせて投与される。例えば、本発明のヒト化12A11抗体は、Aβに対する他のヒト化抗体と組み合わせて投与できる。他の態様では、ヒト化12A11抗体は、Aβワクチンを投与されたかまたは投与されている患者に投与される。アミロイド沈着が脳内に起きるアルツハイマー病およびダウン症候群の場合に、本発明の薬剤は、血液脳関門を通過する本発明の薬剤の通過を増加させる他の薬剤と一緒に投与できる。本発明の薬剤は、標的細胞または組織への治療薬剤の接近を強める他の薬剤、例えばリポソームなどと組み合わせて投与できる。かかる薬剤の共投与は、所望の効果を達成するために必要な治療薬剤(例えば治療用抗体または抗体鎖)の投与量を減少できる。
C.製薬学的組成物
本発明の薬剤は、活性治療薬剤、および各種のその他の製薬学的に許容できる成分を含んでなる製薬学的組成物としてしばしば投与される。Remington’s Pharmaceutical Science(第15版、Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania(1980)参照。好ましい剤型は、意図する投与の様式および治療適用に依存する。該組成物は、所望の製剤に応じて、製薬学的に許容できる無毒性キャリヤまたは希釈剤を含むこともでき、それらは動物またはヒト投与のための製薬学的組成物を製剤するために通常使用されるベヒクルとして定義される。希釈剤は、組み合わせ剤の生物学的活性に影響しないように選択される。かかる希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、およびハンク液である。加えて、製薬学的組成物または製剤は、他のキャリヤ、アジュバント、または無毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤などを含んでもよい。
【0183】
製薬学的組成物は、またタンパク質、キトサンなどの多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えばラテックス官能性化Sepharose(TM)、アガロース、セルロース、など)、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集物(例えば油滴またはリポソーム)のような大きくてゆっくりと代謝される巨大分子を含むことができる。加えて、それらのキャリヤは免疫刺激性薬剤(すなわちアジュバント)として機能できる。
【0184】
非経口投与のために、本発明の薬剤は、滅菌液体、例えば水、油、生理的食塩水、グリセロール、またはエタノールであることができる製薬学的キャリヤを伴う、生理学的に受容できる希釈剤中の物質の溶液または懸濁液の注入可能な投与量として投薬できる。加えて、助剤、例えば湿潤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質なども組成物内に存在できる。製薬学的組成物のその他の成分は石油、動物、植物、または合成由来のもの、例えばラッカセイ油、ダイズ油および鉱油である。一般に、グリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、特に注入可能な液剤のために好ましい液体キャリヤである。抗体は、デポー注入または埋込み製剤の剤型で投与でき、それらは有効成分の持続性放出を許容するような様式で製剤できる。例示的な組成物は、50mM L−ヒスチジン、150mM NaClから成りHClを用いてpH6.0に調整された緩衝水溶液中で製剤された5mg/mLのモノクローナル抗体を含んでなる。
【0185】
典型的には、組成物は、注入可能な液体の溶液または懸濁液のいずれかとして製造されるが、液体ベヒクル中の溶液もしくは懸濁液に適する注入前の固体剤型も製造できる。製剤は、上記に考察したように、増強されたアジュバント効果のためにリポソームまたは微粒子、例えばポリラクチド、ポリグリコリド、またはコポリマー中に乳化またはカプセル化もできる。(Langer,Science 249:1527(1990)およびHanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97(1997)参照)。本発明の薬剤は、デポー注入または埋込み製剤の剤型で投与でき、それらは有効成分の持続性または脈動性放出を可能とするような様式で製剤できる。
【0186】
投与の他の様式に適する追加的な製剤は、経口、鼻内、および肺製剤、座薬、および経皮適用を含む。座薬のために、結合剤およびキャリヤは、例えばポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み、かかる座薬は0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲内の活性成分を含む混合物から形成できる。経口製剤は、賦形剤、例えば製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、および炭酸マグネシウムを含む。それらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、持続放出性製剤または散剤の剤型をとり、そして有効成分を10〜95%、好ましくは25%〜70%含む。
【0187】
局所適用は、経皮または皮内送達をもたらすことができる。局所投与は、薬剤とコレラトキシンまたはその解毒した誘導体もしくはそれらのサブユニットあるいはその他の同様な細菌トキシンと一緒の共投与により促進できる(Glenn et al.,Nature 391:851(1998)参照)。共投与は、混合物として、または化学的架橋もしくは融合タンパク質の発現により得られる連結分子として成分を使用することにより達成できる。
【0188】
あるいは、経皮送達は、皮膚貼付剤を用いてまたはトランスフェロソーム(transferosome)を用いて達成できる(Paul et al.,Eur.J.Immunol.25:3521(1995);Cevc et al.,Biochem.Biophys.Acta 1368:201−15(1998))。
D.処置の経過の監視
本発明は、アルツハイマー病に罹患またはその疑いがある患者内の処置の監視、すなわち患者に与えられた処置の経過の監視の方法を提供する。該方法は、症状がある患者への治療処置および無症候性患者への予防処置の双方を監視するために使用できる。特には、該方法は受動的免疫化を監視するために有用である(例えば、投与された抗体のレベルの測定)。
【0189】
いくつかの方法では、薬剤の投与量を投与する前に、例えば、患者内の抗体レベルまたはプロフィールの基準値を測定し、そして処置後のプロフィールまたはレベルの値と比較することを含む。レベルまたはプロフィールの値の有意の増加(すなわち、かかる測定の平均からの一標準偏差として表現される、同じ試料の反復測定における実験誤差の典型的限界より大きい)は、陽性の処置結果を示す(すなわち薬剤の投与が所望の反応を達成した)。免疫反応の値が有意には変化しないかまたは低下する場合には、陰性処置結果を示す。
【0190】
別の方法では、レベルまたはプロフィールの対照値(すなわち平均および標準偏差)は、対照集団に対比して決定される。典型的には、対照集団内の個体は、事前処置を受けていない。次いで、治療薬剤を投与された後の患者内のレベルまたはプロフィールの測定値を対照値と比較する。対照値と比較して有意の増加(例えば平均から一標準偏差以上)は、陽性または十分な治療結果を示す。有意の増加の欠如または減少は、陰性または不十分な処置結果を示す。薬剤の投与は、一般にレベルが対照値に対して増加する間は継続される。前のように、対照値に対する安定した達成は、処置の供与を中断または投与量および/または頻度を減少できることの指標である。
【0191】
別の方法では、レベルまたはプロフィールの対照値(例えば、平均および標準偏差)は、治療薬剤で処置を受けそしてそのレベルまたはプロフィールが処置に応答して安定している個体の対照集団から決定される。患者内のレベルまたはプロフィールの測定値を対照値と比較する。患者内の測定値が対照値から有意(例えば一標準偏差以上)には異ならない場合には、処置を中断できる。患者内のレベルが対照値より有意に低い場合には、薬剤の連続した投与が正当化される。患者内のレベルが対照値よりも持続して低い場合には、処置の変更を指示してもよい。
【0192】
別の方法では、現在は処置を受けていないがしかし以前に処置のコースを受けた患者は、処置の再開が必要かどうかを決定するために抗体レベルまたはプロフィールを監視される。患者内の測定レベルまたはプロフィールが以前の処置コースの後に患者内で以前に到達した値と比較できる。以前の測定に対する有意の低下(すなわち同一試料の反復測定での誤差の典型的範囲を超過)は、処置を再開できる指標である。あるいは、患者内で測定された値は、処置のコースを受けた後の患者の集団内で決定された対照値(平均プラス標準偏差)と比較できる。あるいは、患者内で測定された値は、疾患の症状が現れないままの予防処置患者の集団、または疾患特性値の改善を示す治療処置患者の集団内の対照値と比較できる。それらすべての場合に、対照値に対する有意の低下(すなわち一標準偏差を超過)は、処置を患者内で再開すべきとの指標である。
【0193】
分析のための組織試料は、典型的には患者からの血液、血漿、血清、粘液または脳脊髄液である。試料は、例えば、Aβペプチドに対する抗体のレベルまたはプロフィール、例えばヒト化抗体のレベルまたはプロフィールについて分析される。Aβに特異性の抗体を検出するELISA法は、実施例の部に記載される。いくつかの方法では、本明細書に記載のように、投与された抗体のレベルまたはプロフィールを除去アッセイ、例えばin vitroファゴサイトーシスアッセイを用いて決定する。かかる方法において、試験される患者からの組織試料をアミロイド沈着物(例えばPDAPPマウスからのもの)およびFc受容体を担持する食細胞と接触させる。次いで、その後のアミロイド沈着物の除去を監視する。除去反応の存在および範囲は、試験される患者の組織試料内のAβを除去するために効果的な抗体の存在およびレベルの指標を提供する。
【0194】
受動的免疫化の後の抗体プロフィールは、典型的には抗体濃度の即座のピークおよび引き続く指数関数的低下を示す。さらなる投与がないと、投与した抗体の半減期に依存して数日または数カ月の期間内に低下が治療前のレベルに近づく。
【0195】
いくつかの方法で、患者内のAβに対する抗体の基準測定が投与前に行われ、第二の測定はその直後に行ってピーク抗体レベルを決定し、そして一回またはそれ以上のさらなる測定が抗体レベルの低下を監視するために間隔をおいて行われる。抗体のレベルが基準またはピークと基準をの差の所定の割合(例えば50%、25%または10%)まで低下した場合に、抗体のさらなる投与量の投薬が投与される。いくつかの方法では、ピークもしくはその後の測定レベルから背景を差し引いた値を、他の患者内の有益な予防もしくは治療の処置方式を構成するを以前に決定された参照レベルと比較する。測定された抗体レベルが参照レベルより有意に低い(例えば、処置の利益を受けている患者の集団内の参照値の平均から一標準偏差引いた値よりも低い)場合には、抗体の追加投与量の投与が指示される。
【0196】
追加的な方法は、治療の過程において、アミロイド疾患(例えばアルツハイマー病)を診断または監視する研究者または医師により日常的に信頼されるいずれかの当該技術分野で認知された生理学的症状(例えば身体的または精神的症状)の監視も含む。例えば、認知障害を監視できる。後者はアルツハイマー病およびダウン症候群の症状であるがしかしそれらの疾患のいずれのその他の特徴がなくても起きることができる。例えば、認知障害は、処置の経過を通じて慣例に従ってミニ精神状態検査(Mini−Mental State Exam)で患者の得点を決定して監視できる。
E.キット
本発明は、上記の監視方法を実施するためのキットをさらに提供する。典型的には、かかるキットはAβへの抗体に特異的に結合する薬剤を含む。キットは、標識(label)を含むこともできる。Aβへの抗体の検出のために、標識は、典型的には標識付けした抗−イディオタイプ抗体の形態である。抗体の検出のために、薬剤を固相、例えば微量定量皿のウエルにあらかじめ結合して供給できる。キットは、典型的にはキットの使用説明書を提供する標識付けも含む。標識付けは、測定された標識のレベルをAβへの抗体のレベルと相関させる図表またはその他の相応する方式を含んでもよい。標識付けの用語は、キットの製造、輸送、販売もしくは使用の間のあらゆる時期でキットに貼付またはその他の方法で同伴するあらゆる記載もしくは記録された資料を指す。例えば、標識付けの用語は、広告パンフレットおよび小冊子、包装材料、指示、オーディオまたはビデオカセット、コンピューターディスク、ならびにキットに直接刻まれた記載を包含する。
【0197】
本発明は、診断用キット、例えば研究、検出および/または診断用のキット(例えばin vivoイメージングを実施するため)も提供する。かかるキットは、典型的には、好ましくは残基1〜10内のAβのエピトープに結合する抗体を含む。好ましくは、該抗体は標識付けされるか、または二次標識付け試薬がキット中に含まれる。好ましくは、キットは、意図する用途を実施するため、例えばin vivoイメージングアッセイを実施するための指示を標識付けされる。例示的抗体は、本明細書中に記載のものである。
F.in vivoイメージング
本発明は、患者内のアミロイド沈着をin vivoイメージングするための方法を提供する。かかる方法は、アルツハイマー病、またはその罹患性を診断もしくは診断を確認するために有用である。例えば、該方法は、痴呆の症状を示す患者に使用できる。患者が異常なアミロイド沈着を有する場合には、該患者はアルツハイマー病に罹患している可能性がある。該方法は、無症候性患者にも使用できる。アミロイドの異常な沈着の存在は、将来の症候性疾患への罹患性を示す。該方法は、以前にアルツハイマー病と診断された患者内の疾患の進行および/または処置への反応を監視するためにも有用である。
【0198】
薬剤、例えばAβに結合する抗体を患者に投与し、次いでその結合後に薬剤を検出することにより該方法は機能する。好ましい抗体は、全長のAPPポリペプチドには結合しないで、患者内のAβ沈着物に結合する。アミノ酸1〜10内のAβのエピトープに結合する抗体が特に好ましい。いくつかの方法では、抗体は、Aβのアミノ酸7〜10内のエピトープに結合する。かかる抗体は、典型的には本質的な除去反応を誘導することなく結合する。別の方法では、抗体は、Aβのアミノ酸1〜7内のエピトープに結合する。かかる抗体は、典型的にはAβに結合しそして除去反応を誘発する。しかし、除去反応は全長定常領域、例えばFabを欠失する抗体フラグメントを用いて回避できる。いくつかの方法では、同じ抗体が処置および診断試薬の双方として役立つ。一般的には、AβのC−末端から残基10へのエピトープに結合する抗体は、残基1〜10内のエピトープに結合する抗体と同様に強いシグナルは示さないが、推測すると、C−末端エピトープがアミロイド沈着物内では近接できないからであろう。従って、かかる抗体は好ましさが低い。
【0199】
診断試薬は、静脈内注入により患者の身体内へ、または頭蓋内注入によりまたは頭蓋を通して孔を開けて脳内に直接投与できる。試薬の投与量は、治療方法と同様の範囲内にあるべきである。典型的には、試薬は標識付けされるが、しかしいくつかの方法ではAβへの親和性を有する一次試薬は標識されないで、二次の標識付け試薬を一次試薬に結合するために使用する。標識の選択は検出の手段に依存する。例えば、蛍光標識は、光学的検出に適する。常磁性標識の使用は、外科的侵襲を伴なわない断層撮影検出に適する。放射性標識は、PETまたはSPECTを用いて検出もできる。
【0200】
診断は、標識した座の数、大きさ、および/または強度を相当する基準値と比較して実施される。基準値は、罹患していない個体の集団内の平均レベルを表すことができる。基準値は、同じ患者内で決定された以前のレベルを表すこともできる。例えば、基準値は、治療開始前に患者内で決定でき、そしてその後測定した値を基準値と比較する。基準に対する値の低下は、処置に対する陽性反応を示す。
【0201】
本発明は、以下の制限しない実施例により、さらに詳しく記述される。
【実施例】
【0202】
下記の配列識別記号は、免疫グロブリン鎖可変領域ヌクレオチドおよびアミノ酸配列に言及する実施例の部分すべてのわたって使用される。
【0203】
【表7】
【0204】
本明細書中に使用される場合、配列番号1〜4のいずれか1項に示すVLおよび/もしくはVH配列を含んでなる抗体または免疫グロブリン配列は、全長配列を含んでなることができるかまたは成熟配列(すなわち、シグナルまたはリーダーペプチドがない成熟ペプチド)を含んでなることができるかのいずれかである。
【0205】
以前の研究は、AD関連神経病理学(例えば斑負荷)を低下する種々のAβ抗体のin vivo効力が、ex vivo(生体外)(例えばPDAPPまたはAD脳切片内)で斑を結合および/またはex vivoファゴサイトーシスアッセイ(Bard et al.(2000)Nat.Med.6:916−919)において斑除去の引き金を引く抗体の能力により予測できることを示した。該相関は、小膠細胞および/またはマクロファージによるFc依存性ファゴサイトーシスがin vivoでの斑除去のプロセスに重要であるとの意見を支持する。しかし、抗体効力が、Fc相互作用とは独立した機構によりin vivoでも得られるとも報告された(Bacskai et al.,(2002)J.Neurosci.22:7873−7878)。研究は、アミロイド斑を認識できないAβの中間部分を指定する抗体は、可溶性Aβに結合しそして斑沈着を減少することを示した(DeMattos et al.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:8850−8855)。
【0206】
ネズミモノクローナル抗体12A11(イソタイプIgG1)の潜在的なin vivo効力を特性化するために、先ず種々のex vivoアッセイを行った。
【0207】
Aβ1−42に対するmAb12A11の結合活性(avidity) 凝集した合成Aβ1−42へのモノクローナル抗体12A11の結合性を、Schenk et al.(Nature 400:173(1999))に記載のようにしてELISAにより行った。比較の目的で、mAb 12B4および10D5もアッセイした。可溶性Aβ1−42とは、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で音波処理した合成Aβ1−42ペプチドを指す。20μg/mlでの抗体の系列的希釈物を50,000cpm〔 125I〕Aβ1−42(190μCi/μmol;Indogen試薬Pierceを用いて標識)を用いて、一晩室温でインキュベーションした。75mg/mlタンパク質A Sepharose(Amersham Pharmacia)および200μgのラビット抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch)を含むスラリー50μLを、希釈した抗体と一緒に1時間、室温でインキュベーションし、2回洗浄し、そしてWallacガンマカウンター(Perkin−Elmer)で計数した。すべての段階は、10mM Tris、0.5M NaCl、1mg/mlゼラチン、および0.5%Nonidet P−40,Ph8.0から成るRIA緩衝液中で行った。
【0208】
結合活性研究からの結果を下記の表2に示す。
【0209】
【表8】
【0210】
試験したすべての抗体は、凝集Aβ1−42に対して高い結合活性を示した。さらに、抗体12B4および12A11は、20μg/mlの抗体濃度で可溶性Aβ1−42を容易に感知できるほど捕捉した。表2に示すように、IgG1抗体12A11は、IgG2a抗体12B4またはIgG1抗体10D5よりもさらに効率的にAβ1−42を捕捉した。
【0211】
可溶性Aβを捕捉する種々の抗体(12A11を含む)の能力は、さらに以下のように評価した。種々の濃度の抗体(10μg/mlまで)を 125I−Aβ1−42(または 125I−Aβ1−40)の50,000CPMと一緒にインキュベーションした。放射能計数値の25%を結合するために十分な抗体の濃度は、捕捉放射免疫アッセイで決定した。10μg/mlでの計数値の25%を結合する能力がない抗体に対しては、10μg/mlで結合した計数値の百分率を測定した。12A11は10μg/mlでの放射能計数(すなわち 125I−Aβ)の20%を結合した。これは試験した他の2種のAβ3〜7抗体、すなわち12B4および10D5による結合量(10μg/mlでそれぞれ7%および2%を結合)より大きかった。従って、試験したN−末端(エピトープAβ3−7)抗体のなかで、12A11はAβを捕捉する最も顕著な能力を示した。
【0212】
Fc媒介斑除去の引き金を引くそれらの能力の尺度として、一次マウス小膠細胞およびPDAPPマウスからの脳組織の切片を用いるex vivoファゴサイトーシスアッセイでも抗体を比較した。Aβまたはアッセイのその他の成分に対して反応性を持たない無関係のIgG1およびIgG2a抗体をイソタイプが合致した陰性対照として使用した。要約すると、ネズミ一次小膠細胞をPDAPPマウス脳の非固定の低温保持装置切片と一緒に抗体の存在下で培養した。24時間のインキュベーションの後、培養物内に残存したAβの全レベルをELISAにより測定した。斑除去/Aβ分解の程度を定量するために、ELISA試験のための小膠細胞および脳切片(n=3)の培養物から8M尿素を用いてAβを抽出した。データをANOVAで分析し次いで事後Dunnett試験を行った。
【0213】
図1に示すように、12B4抗体はAβレベルを効率的に低下する(12B4について73%、P<0.001)が、12A11はいくらか低いが統計的に有意な低い効率を示す(12A11について48%、P<0.05)。10D5抗体はAβレベルを有意には低下させなかった。ex vivoファゴサイトーシスアッセイにおける12A11の性能は、小膠細胞ファゴサイトーシスに対する好ましいイソタイプであるIgG2aイソタイプに転換すると改善されるであろう。
実施例II
【0214】
マウス12A11抗体のin vivo効力
マウス抗体12A11はアルツハイマー病様の神経病理をin vivoで低下する。12A11のin vivo効力を決定するために、抗体(12A11、12B4、または10D5を含む)を、Bard et al.(2000)Nat.Med.6:916の記載のようにして、6カ月間の毎週の腹腔内注入により10mg/kgをマウスに投与した。研究の終わりに、皮質Aβの全レベルをELISAにより決定した。図2Aに示すように、それぞれの抗体は、PBS対照と比較してAβレベルを有意に低下(P<0.001)、すなわち12B4は69%低下を示し、10D5は52%低下を示し、そして12A11は31%低下を示した。
【0215】
次いで、斑除去と神経細胞保護との間の関連を決定するために、上記のマウスからの脳組織の切片内で神経炎性ジストロフィーのレベルを試験した。神経炎性ジストロフィーにより占められる前頭皮質の割合を試験する脳イメージ分析からのデータを図2Bに示す。それらのデータは、本明細書に記載のアッセイにより決定されるように、抗体10D5および12A11が神経炎性ジストロフィーの低下にそれほど有効ではないが、12B4は神経炎性ジストロフィーを有意に低下させる(12B4、P<0.05;ANOVA、続いて事後Dunnett試験)ことを示す。この場合にも、12A11の親和性は12A11をIgG2aイソタイプに変換して改善されるであろう(ネズミ効力)。12A11のヒト化バージョンに関して、IgG2aイソタイプが神経炎性ジストロフィーを軽減するために好ましい。
【0216】
抗体12A11の結合特性およびin vivo効力を証明する実験は、Bard,et al.PNAS100:2023(2003)(引用することにより本明細書中に編入される)中にも記載されている。
【0217】
要約すると、すべての抗体が凝集Aβへの有意の結合活性を有しそしてex
vivoアッセイで斑除去の引き金を引く。IgG2aイソタイプ(Fc受容体、殊にはFcγRIへの親和性)は、Aβの除去よび神経炎性ジストロフィーに対する保護の双方に関して重要な属性と思われる。抗体12A11(IgG1)は12B4(IgG2a)または10D5(IgG1)よりも高い効率で可溶性モノマー状Aβ1−42を捕捉するが、しかし神経炎性ジストロフィーの低下においてはそれほど効果的ではない。斑負荷の改善および神経炎性ジストロフィーの低下における高い効力は、最高にファゴサイトーシスを支持するイソタイプを有するように抗体を操作して達成されるであろう。特に効果的なのは、AβのN−末端内のエピトープに結合する抗体である。
実施例III
【0218】
マウス12A11可変領域のクローニングおよび配列決定
12A11VHのクローニングおよび配列分析 ハイブリドーマ細胞からの12A11のVHおよびVL領域を、ハイブリドーマ細胞からのmRNAおよび標準クローニング方法を用いるRT−PCRおよび5’RACEによりクローニングする。推測される12A11 VHドメインをコードする独立したcDNAクローンから誘導される核酸配列(コーディング、配列番号3)および推定されるアミノ酸配列(配列番号4)を、それぞれ表3および4に示す。
【0219】
【表9】
【0220】
【表10】
【0221】
12A11 VLのクローニングおよび配列分析 12A11の軽鎖可変VL領域をVH領域と同様の様式でクローニングした。推測される12A11 VLドメインをコードする2個の独立したcDNAクローンから誘導されるヌクレオチド配列(コーディング、配列番号1)および推定されるアミノ酸配列(配列番号2)を、それぞれ表5および表6に示す。
【0222】
【表11】
【0223】
【表12】
【0224】
12A11 VLおよびVH配列は、それらがC−領域へのイニシエーターメチオニンからの連続ORFを含み、そして免疫グロブリンV領域遺伝子の特徴である保存される残基を共有する限り、機能性V領域の基準に適合する。N−末端からC−末端へ、軽鎖および重鎖の双方共にドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。
実施例IV
【0225】
キメラ12A11抗体の発現
キメラ12A11の発現 可変重鎖および軽鎖領域は、それぞれのVDJまたはVJ接合部の下流のスプライスドナー配列をコードするように再操作され、そして重鎖にはpCMV−hγ1、そして軽鎖にはpCMV−hκ1の哺乳動物発現ベクター内にクローニングされた。それらのベクターは、挿入された可変領域カセットの下流側のエキソン性フラグメントとしてヒトγ1およびCκ定常領域をコードする。配列実証の後、重鎖および軽鎖発現ベクターはCOS細胞内に同時トランスフェクションされた。種々の重鎖クローンが、各種のキメラ軽鎖クローンと一緒に独立して同時トランスフェクションされて、その結果の再現性を確認させる。抗体は、タンパク質A Sepharoseを用いてCOS細胞条件調整媒体から免疫沈降された。抗体鎖は、SDS−PAGEゲルの免疫ブロット上で検出された。検出は、ヤギ−抗ヒトIgG(H+L)抗体を1:5000の希釈で使用し、室温、1時間で達成された。12A11 H+L鎖の著しい量が、条件調整媒体内で検出された。
【0226】
Aβへのキメラ12A11抗体の直接結合は、ELISAアッセイにより試験された。図4は、キメラ12A11がAβに高い結合活性で結合することが見いだされたことを証明し、これはキメラおよびヒト化3D6により証明されたものと同様であった。(3D6のクローニング、特性測定およびヒト化は、米国特許出願番号第10/010,942号明細書に記載され、その内容全体はここに引用することにより本明細書に編入される)。結合活性は、キメラおよびヒト化12B4により証明されるものとも同様であった(12B4のクローニング、特性測定およびヒト化は、米国特許出願番号第10/388,214号明細書に記載され、その内容全体はここに引用することにより本明細書に編入される)。
実施例V
【0227】
12A11ヒト化
A.12A11ヒト化抗体、バージョン1
相同性/分子モデル分析 ネズミ12A11抗体内の鍵となる構造フレームワーク残基を同定するために、12A11重鎖および軽鎖と相同性を有する解明されたネズミ抗体についての三次元モデルを研究した。12A11軽鎖と近い相同性を有する1KTRと称される抗体を選択し、そして、12A11重鎖へ近い相同性を有する1ETZおよび1JRHと称される二種の抗体を選択した。それらのマウス抗体は、12A11と強い配列保存を示す(Vkに対して112アミノ酸内で93%同一性、そしてVhに対してそれぞれ126アミノ酸に対して83%同一性および121アミノ酸に対して86%同一性)。1ETZの重鎖構造を1KTRのものに重ねた。加えて、Vkに対して、選択された抗体のCDRループは同じ正規Chothia構造分類に属し、12A11VLのCDRループも同様である。それらの抗体の結晶構造は抗体の機能、および、比較により、同様の12A11抗体の機能のために重要と予測される残基(例えばCDRコンホメーションなどのために重要なFR残基など)について検討された。
【0228】
ヒトアクセプター抗体配列の選択 適当なヒトアクセプター抗体配列は、マウス可変領域のアミノ酸配列を既知のヒト抗体の配列とのコンピューター比較により同定された。比較は、12A11重鎖と軽鎖について別々に行った。特に、そのフレームワーク配列がネズミVLおよびVHフレームワーク領域と高度の配列同一性を示すヒト抗体からの可変ドメインは、それぞれのネズミフラグメント配列を用いてNCB1 BLAST(National Institute of Health NCBIインターネット・サーバーを介して公開されてアクセスできる)を用いるNCBI Igデータベースの探索により同定された。
【0229】
下記の基準:(1)対象配列との相同性、(2)ドナー配列とのカノニカルCDR構造の共有、および/または(3)フレームワーク領域内にいずれの稀なアミノ酸残基も含まない、に基づいてアクセプター配列として2個の候補配列を選択した。VLについて選択されたアクセプター配列は、NCBI Ig非重複データベース内のBAC01733であった。VHについて選択されたアクセプター配列は、NCBI Ig非重複データベースでAAA69734であった。AAA69734は、(サブグループIIではなく)ヒトサブグループIII抗体であるが、しかしSaldanha et al.,(1999)Mol.Immunol.36:719の推定に少なくとも一部は基づいて、初期アクセプター抗体として選択された。ヒト化12A11抗体の最初のバージョンは、それらの選択されたアクセプター抗体配列を利用した。抗体はSchroeder and
Wang(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 872:6146中に記載されている。
【0230】
アミノ酸残基の置換 以上に記載のように、本発明のヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(アクセプター免疫グロブリン)から本質的に由来する可変フレームワーク領域、および12A11と称されるマウス免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)から本質的に由来する相補性決定領域を含んでなる。12A11の相補性決定領域および適当なヒトアクセプター免疫グロブリンを同定し、次の段階は、もし存在すれば、得られたヒト化抗体の性質を最適化するように置換するためのそれらの成分からの残基の決定であった。
再形成(reshaped)軽鎖V領域:
再形成された軽鎖V領域のアミノ酸整列を図5Aに示す。アクセプターフレームワーク(BAC01733)の選択は、ネズミV領域に相当するものと同様に同じヒトサブグループ由来であり、異常なフレームワーク残基を持たず、そしてCDRは、同じChothiaカノニカル構造グループに属する。ヒト化12A11のバージョン1内で復帰突然変異は行われなかった。
再形成重鎖V領域:
再形成された重鎖V領域のアミノ酸整列を図5Bに示す。アクセプターフレームワーク(AAA69734)の選択はヒトサブグループIIIからであり(前に記載の通り)、そして異常なフレームワーク残基を持たない。ネズミ配列へのAAA69734のアミノ酸整列と関連させるネズミVH鎖(1ETZおよび1JRH)の構造分析は、再形成重鎖のバージョン1(v1)内に9個の復帰突然変異:A24F、T28S、F29L、V37I、V48L、F67L、R71K、N73T、L78V(Kabatの番号付け)を指定する。復帰突然変異は、図5B内に示すアミノ酸整列内で星印で際立たせてある。
【0231】
9個の復帰突然変異の中で、3個はモデルにより指定されるがそれは該残基がカノニカル残基(A24F、F29LおよびR71K、黒地に白字)、すなわちCDR残基に近位であるために抗原結合に貢献すると考えられるフレームワーク残基だからである。残基の次に最も重要な分類中に1個の復帰突然変異があり、界面残基すなわちV37IはVH−VL充填相互作用に関与する(下線付)。N73T変異は、結合部位の端のバーニア残基であり(点線で囲む)、多分CDR1に隣接するS30と相互作用するであろう。残る4個の残基(T28S、V48L、F67L、L78V、Kabatの番号付け)は、復帰突然変異の標的となり、またバーニアの分類内に入る(CDRコンホメーションの間接的貢献、図5B中で点線で囲む)。
【0232】
ヒト化12A11のバージョン1内に組み込まれた変化の要約を表7に示す。
【0233】
【表13】
【0234】
表8および9は、各種の軽鎖および重鎖それぞれについて鍵となるKabatの番号付けを示す。
【0235】
【表14】
【0236】
【表15】
【0237】
【表16】
【0238】
【表17】
【0239】
【表18】
【0240】
【表19】
【0241】
【表20】
【0242】
【表21】
【0243】
ヒト化抗体は、好ましくは少なくとも107、108、109または1010M−1のAβに対する特異性結合親和性を示す。通常、Aβに対するヒト化抗体の結合親和性の上限は、12A11のもの(すなわち約109 M−1)の3、4または5の係数以内にある。しばしば結合親和性の下限も、12A11のものの3、4または5の係数以内である。
ヒト化12A11VHおよびVL、バージョン1の構築および発現
PCR媒介構築は、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてh12A11v1を生成するように使用される。ヒト化12A11VL(バージョン1)(配列番号34)および12A11VH(バージョン1)(配列番号35)のヌクレオチド配列は、それぞれ以下の表10および11に表示されている。
【0244】
【表22】
【0245】
【表23】
【0246】
ヒト化12A11VL(バージョン1)(配列番号7)および12A11VH(バージョン1)(配列番号10)のアミノ酸配列は、図5Aおよび5Bにそれぞれ示される。
B.ヒト化12A11抗体−バージョン2、2.1、および3
バーニア残基(例えばS28T、V48L、F67L、L78V)は、CDRコンホメーションに間接的に貢献し、そしてコンホメーション動揺に対して最低の重要性を持たないと主張されている。標的残基は、Stratageneのキットおよび変異誘発鋳型としてpCRSプラスミド中のh12A11VHv1を用いてバージョン2に相当するクローンを生成する部位指定変異誘発により変異させた。バージョン2の配列決定をして確認されたV領域挿入体を重鎖発現ベクターpCMV−Cガンマ1のBamHI/HindIII部位内にサブクローニングして組換えh12A11v2抗体を産生させた。バージョン2.1抗体は、位置T73Nでの変異に加えて上記のバーニア残基変異(すなわち復帰突然変異の排除)のそれぞれに使って同様に創成した。同様に、バージョン3抗体は、位置K71Rの変異に加えて、上記の変異T28S、L48V、L67F、V78Lをそれぞれ持っていた。
C.ヒト化12A11抗体、バージョン4〜6
カノニカルおよび充填残基は復帰突然変異を保持するが、しかし1個(バージョン4.1〜4.4)、2個(バージョン5.1〜5.6)または3個(バージョン6.1〜6.4)のバーニア残基の復帰突然変異を除いた追加のヒト化12A11バージョンを設計した。部位指定変異誘発およびクローン構築は、上記のCの部に記載のようにして実行した。組換え抗体をCOS細胞中に発現しそしてCOS細胞上清から精製した。追加のバージョンは、上記、例えば、少なくとも1個の充填および/またはカノニカル残基(例えば位置28、37、48、71および78におけるヒト残基または位置28、37、48、67、71、73および78におけるヒト残基)と組み合わせた1、2、3、4または5個のバーニア残基でのヒト残基の組み合わせを含んでいてもよい。
D.ヒト化12A11抗体、バージョン7および8
ヒト化12A11の第7バージョンは、残基28におけるT−>S復帰突然変異(バーニア)および残基37におけるV−>I復帰突然変異(充填)を除き、バージョン1に示したそれぞれの復帰突然変異を有するように創成した。ヒト化12A11の第8バージョンは、残基73におけるN−>T復帰突然変異(バーニア)を除き、バージョン1に示したそれぞれの復帰突然変異を有するように創成した。ヒト化12A11バージョン7および8重鎖のアミノ酸配列は、配列番号30および31にそれぞれ示した。
【0247】
バージョン1と比較して、バージョン7は7個の変異を有するのみである。T28S復帰突然変異は保存性であり、そして重鎖のバージョン7中では除かれている。充填残基V37Iの復帰突然変異もバージョン7では除かれている。バージョン1と比較して、バージョン7は8個の変異を有するのみである。バージョン8中では、N73T(バーニア)復帰突然変異が除かれている。
【0248】
追加のバージョンは、上記の組み合わせを含んでもよく、例えば、場合により少なくとも1個の充填残基(例えば位置37)および/または少なくとも1個のカノニカル残基での復帰突然変異の排除と組み合わせた、位置28、48、78および73から選択された1、2、3、4(または5)個の残基でのヒト残基(例えば復帰突然変異の排除)である。
実施例VI
【0249】
ヒト化12A11抗体の機能テクスティング(texting)
ヒト化12A11バージョン1を実施例V中に記載のようにしてクローニングした。
【0250】
ヒト化12A11をCOS細胞内での一過性発現により産生し、そして当該技術分野で認知されている方法論に従って精製した。ヒト化抗体の結合活性は、最初に定性ELISAアッセイ(データは記載されていない)により証明された。ヒト化12A11バージョン1を、さらにそのネズミおよびキメラの対応体と2種の性質:抗原結合性(定量Aβ ELISA)および相対親和性について比較した。h12A11v1の結合活性は、定量Aβ ELISAで証明しそして12A11のネズミおよびキメラ形態と同一性することを見いだした(図7参照)。
【0251】
h12A11v1抗体の親和性も競合Aβ ELISAによりネズミおよびキメラ12A11抗体と比較した。競合結合性アッセイのために、ビオチン共役型組換えマウス12A11Cγ2a(イソタイプスイッチ(switched)12A11)を使用した。凝集Aβ1−42に対するビオチン化m12A11Cγ2aの結合活性は、ストレバビジン(strepavidin)−HRPをレポーターとして使用するELISAアッセイにより確認した。HRP共役型ヤギ抗マウスHRPをレポーターとして使用する12A11(Cγ1、Cγ2a)の2種のイソ型によるAβ結合性の直接比較は、ビオチン共役型組換え12A11Cγ2aが原型のCγ1マウス抗体と同等であることを確認した。
【0252】
競合結合性研究は、図8に示すように、ビオチン共役型m12A11Cγ2aを固定濃度で使用しそして試験抗体のある濃度範囲で競合させた。図8は、h12A11v1をそのキメラおよびネズミ型と比較するh12A11v1競合アッセイの結果を示す。ヒト化12A11v1はそのネズミおよびキメラ対応体と2XIC50値内で競合した。このデータは、Biacore技術を使用する親和性決定と調和し(データは記載されない)、それはネズミCγ2aおよびh12A11v1に対してそれぞれ38nMおよび23nMのKD値を示した。要約すると、その知見は、h12A11v1が抗原結合性およびその原型ネズミ対応体の親和性を保持することを示唆する。
【0253】
COS細胞を、ヒト化12A11VHおよびh12A11VLv1の種々の組み合わせで一過性トランスフェクションした。条件調整した媒体をトランスフェクション後72時間で集めた。トランスフェクションしたCOD細胞からの条件調整媒体内の抗体濃度は、定量ヒトIgG ELISAにより決定された。定量Aβ(1−42)凝集物結合性アッセイは、抗原結合性に関して、h12A11v2、v2.1およびv3が、h12A11v1に対しておよびキメラ12A11に対して同等であることを確認した。その上、バージョン5.1〜5.6および6.1〜6.3は、この結合性アッセイで試験すると類似した結合活性を示す。バージョン6.4はアッセイでいくらか活性の損失を示したが、v2では活性が著しく回復した。
【0254】
ネズミ12A11およびh12A11v1に対する結合性もBIAcore技術を用いて比較した。ネズミ12A11およびh12A11v1は、低密度または高密度のいずれかで不動化されたAβペプチド(bio−DAEペプチド)に暴露すると、類似した結合性プロフィールを示す。ネズミ12A11対h12A11v1の速度論的分析も行った。それらの研究において、固相結合ビオチン化DAEペプチドへの可溶性抗体の結合性を測定するためにBIAcore技術を使用した。該ペプチドをストレトアタビジンバイオセンサーチップ上で不動化し、次いで各抗体の変化させた濃度を三系列に適用しそして時間の関数として結合性を測定した。データは、二価モデルに適用されるBIA評価ソフトウエアを用いて分析した。見かけの分解(kd )および会合(ka )速度定数を、グローバル分析を用いるセンサーグラム(sensorgram)の適切な領域から算出した。bio−DAE10と抗体の間の相互作用の親和性定数は、速度論的速度定数から算出した。それらの測定から、見かけの分解(kd )および会合(ka )速度定数を誘導しそして相互作用に対するKD 値を算出するために使用した。表12は、BIAcore分析により決定された12A11抗体のAβ結合性の速度論的分析の要約を含む。
【0255】
【表24】
【0256】
このデータは、ヒト化12A11v1が、非経口ネズミ12A11と比較すると、Aβペプチドに対して同様の親和性を有することを示す。
実施例VII
【0257】
ヒト対象の予防および処置
単一投与量第I相試験をヒト内の安全を決定するために行う。治療薬剤は、約0.01の推測される効力のレベルから出発して、3の係数で増加させて有効マウス投与量の約10倍のレベルに達するまで、異なる患者に増加する投与量を投与する。
【0258】
第II相試験を治療効力を決定するために行う。可能性があるADについてのアルツハイマー病および関連障害協会(ADRDA)基準を用いて定義された初期および中期のアルツハイマー病患者を選択する。適合する患者は、ミニ精神的状態試験(MMSE)において12〜26の範囲内の得点である。その他の選択基準は、患者が試験の期間を生存する可能性および妨害するであろう併用医薬の使用のような複雑化させる問題がないことである。患者機能の基準評価は、古典的精神心理測定基準、例えばMMSE、およびアルツハイマー病状態および機能を有する患者を評価するための包括的な尺度であるADASなどを用いて行う。それらの精神心理測定尺度は、アルツハイマー病の病状の進行の尺度を提供する。適切な質的生活尺度も処置を監視するために使用できる。疾患進行は、MRIによっても監視できる。患者の血液プロフィールも免疫原特異性抗体およびT細胞反応のアッセイを含んで監視できる。
【0259】
基準測定に続いて、患者は処置を受けはじめる。患者らは無作為化されそして盲検法により治療薬剤または偽薬のいずれかで処置される。患者は少なくとも6カ月毎に監視される。効力は、偽薬群に対する処置群の進行の有意な低下により決定される。
【0260】
第二の第II相試験は、時に加齢性記憶障害(AAMI)または軽度認知障害(MCI)と称される非アルツハイマー病性初期記憶喪失から、ADRA基準により定義されるアルツハイマー病の可能性までにわたる患者の転換を評価するために行われる。前アルツハイマー症状と関連する記憶喪失の初期徴候またはその他の困難、アルツハイマー病の家族歴、遺伝子的危険因子、年齢、性別、およびアルツハイマー病の高い危険を予測するために見いだされるその他の徴候について参照集団をスクリーニングして、アルツハイマー病への転換の高い危険を有する患者を非臨床的集団から選別する。さらに正常な集団を評価するために設計されたその他の尺度を一緒に用いて、MMSEおよびADASを含む適当な尺度に基づく基線得点を集める。これらの患者集団を薬剤を用いる投与代替群に対して偽薬比較の適当な群に分割する。それらの患者集団を約6カ月の間隔で追跡し、そして各患者の終点は、彼または彼女が観察の終わりにおいて、ADRDA基準により定義される推定アルツハイマー病に転換されるかどうかである。
【0261】
前記の発明は、理解を明確にする目的で詳細に記載されたが、ある種の変更は添付する請求の範囲の範囲内で実施できるであろうことは明らかである。本明細書中に引用したすべての刊行物および特許、ならびに図および配列表に現れる本文は、それぞれが個々に示された場合と同様の程度まで、すべての目的のために全体を引用して本明細書内に編入される。
【0262】
前記のことより、本発明は多数の使用を提供することが明らかであろう。例えば、本発明は、アミロイド生成性疾患の処置、予防または診断における、またはそれにおける使用のための医薬または診断用組成物の製造における、上記のAβに対するいずれかの抗体の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0263】
【図1】図1は、ex vivoファゴサイトーシスアッセイにおいてAβ斑を除去(clearing)する際に、12A11を含む種々の抗体の有効性を試験する実験からの結果を図示する。
【図2】図2Aは、低い全Aβレベルにおいて、12A11を含む種々の抗体の有効性を試験する実験からの結果を図示する。棒は中間値を表し、そして水平の長破線は対照レベルを示す。図2Bは、神経炎性ジストロフィーの低下における12A11を含む種々の抗体の有効性を分析する実験からの結果を図示する。棒は中間値を表し、そして水平の長破線は対照レベルを示す。個別の動物に対してデータを示しそして対照の平均(100%に設定)に対する神経炎性ジストロフィーの百分率として表現する。
【図3】図3Aは、ネズミ(murine)12A11VL鎖配列を含むDNA配列およびVL鎖に対する推定アミノ酸配列(それぞれ配列番号5および2)を示す。成熟VL鎖は黒太棒で示す。CDRは白色棒で示す。図3Bは、ネズミ12A11VH鎖配列を含むDNA配列およびVH鎖に対する推定アミノ酸配列(それぞれ配列番号6および3)を示す。成熟VH鎖は黒太棒で示す。CDRは白色棒で示す。DNA配列には、クローニング部位およびKozak配列(コード配列の上流側)およびスプライスおよびクローニング配列(下流側)が含まれる。
【図4】図4は、キメラ12A11、キメラおよびヒト化3D6、およびキメラおよびヒト化12B4のAβ 1−42に対する結合を測定する実験からのELISA結果を図示する。
【図5】図5Aは、ネズミ(またはキメラ)12A11(配列番号2)、ヒト化12A11(成熟ペプチド、配列番号7)、ジーンバンク(GeneBank)BAC01733(配列番号8)、および生殖細胞系A19(X63397、配列番号9)抗体の軽鎖のアミノ酸配列の整列を示す。CDR領域は四角で囲った。充填残基には下線を付けた。Kabat番号付けではなく、第一メチオニンから番号を付けた。図5Bは、ネズミ(またはキメラ)12A11(配列番号4)、ヒト化12A11(バージョン1)(成熟ペプチド、配列番号10)、ジーンバンクAAA69734(配列番号11)、および生殖細胞系ジーンバンク567123抗体(配列番号12)の重鎖のアミノ酸配列の整列を示す。充填残基は下線、カノニカル(canonical)残基は実線そしてバーニア残基は点で示す。Kabat番号付けではなく、第一メチオニンから番号を付けた。
【図6】図6A〜Bは、ヒト化12A11v1(配列番号10)、v2(配列番号13)、v2.1(配列番号14)、v3(配列番号15)、v4.1(配列番号16)、v4.2(配列番号17)、v4.3(配列番号18)、v4.4(配列番号19)、v5.1(配列番号20)、v5.2(配列番号21)、v5.3(配列番号22)、v5.4(配列番号23)、v5.5(配列番号24)、v5.6(配列番号25)、v6.1(配列番号26)、v6.2(配列番号27)、v6.3(配列番号28)、v6.4(配列番号29)、v7(配列番号30)およびv8(配列番号31)の重鎖のアミノ酸配列の整列を示す。図6Cは、ヒト化12A11v1〜v8内に発生した復帰突然変異を示す。
【図7】図7は、キメラ12A11、ヒト化12A11v1、ヒト化12A11v2、ヒト化12A11v2.1、およびヒト化12A11v3を比較した凝集Aβ(1−42)ELISAからの結果を示す。
【図8】図8は、ネズミ12A11、キメラ12A11およびh12A11v1を比較した競合Aβ1−42ELISA結合性アッセイの結果を示す。
【関連出願】
【0001】
本出願は、前に出願した米国特許仮出願第60/474,654号(2003年5月30日出願)、名称「ベータアミロイドペプチドを認識するヒト化抗体」の利益を主張する。以上に引用された出願の内容全体は、引用することにより本明細書に編入される
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、老人性痴呆をもたらす進行性疾患である、全般的には、非特許文献1、特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4参照。広く云えば、該疾患は、老齢(年齢65以上)で発生する遅発型、老人期よりかなり以前、すなわち年齢35〜60歳で発生する早発型の二つの分類に入る。双方の型の疾患で、病理学的には同様であるが、しかし異常が早期に開始する場合の方がより重症で広範になりやすい。該疾患は、脳内の少なくとも二つの形式の病変、すなわち神経原繊維錯綜および老人斑を特徴とする。神経原繊維錯綜は、対になって互いの回りに巻きつく二本の繊維から成る微小管関連タウタンパク質の細胞内沈着である。老人斑(すなわちアミロイド斑)は、中心部に細胞外アミロイド沈着物を有する直径150μmまでの無定型神経網の領域であり、これは脳組織切片の顕微鏡分析により見える。脳内のアミロイド斑の蓄積もダウン症候群およびその他の認知障害に関連する。
【0003】
斑の主要な成分は、Aβまたはβ−アミロイドペプチドと称されるペプチドである。Aβペプチドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)と称される大きい膜貫通糖タンパク質の39〜43アミノ酸の4kDa内部フラグメントである。さまざまなセクレターゼ酵素によるAPPのタンパク質分解処理の結果として、Aβは長さ40アミノ酸の短型と長さ42〜43アミノ酸の長型の双方で主として見いだされている。APPの疎水性膜貫通ドメインの部分は、Aβのカルボキシ末端で見いだされ、そして特に長型の場合に、斑内に凝集するAβの能力の原因に関係するであろう。脳内のアミロイド斑の蓄積は、神経細胞の死に導くこともある。この形式の神経劣化と関連する身体的症状がアルツハイマー病の特徴である。
【0004】
APPタンパク質内の数種の変異は、アルツハイマー病の存在と相関関係がある。例えば非特許文献5(バリン717 からイソロイシン)、非特許文献6(バリン717 からグリシン)、非特許文献7(バリン717 からフェニルアラニン)、非特許文献8(二重変異、リシン595 −メチオニン596 からアスパラギン595 −ロイシン596 へ変化)参照。かかる変異は、AβへのAPPの増加または改変プロセシング、特にはAβの長型(すなわちAβ1−42およびAβ1−43)の増加した量へのAPPのプロセシングによりアルツハイマー病を発生すると考えられる。他の遺伝子、例えばプレセニリン(presenilin)遺伝子、PS1およびPS2の変異は、APPのプロセシングに間接的に影響して長型APPの増加した量を生成すると考えられる(非特許文献9参照)。
【0005】
マウスモデルは、アルツハイマー病におけるアミロイド斑の重要性を決定するために使用されて成功した(上記の非特許文献4、非特許文献10)。 特に、PDAPPトランスジェニックマウス(ヒトAPPの変異型を発現しそして若年でアルツハイマー病を発生する)は、Aβの長型を注入されると、それらはアルツハイマー病の進行の低下およびAβペプチドへの抗体力価の増加の双方を示す(非特許文献11)。上記の観察結果は、Aβ、特にその長型が、アルツハイマー病の原因要素であることを示す。
【特許文献1】Hardy et al.,国際特許公開第92/13069号パンフレット
【非特許文献1】Selkoe,TINS 16:403(1993)
【非特許文献2】Selkoe,J.Neuropathol.Eur.Neurol.53:438(1994)
【非特許文献3】Duff et al.,Nature 373:476(1995)
【非特許文献4】Games et al.,Nature 373:523(1995)
【非特許文献5】Goate et al.,Nature 349:704(1991)
【非特許文献6】Chartier Harlan et al.,Nature 353:844(1991)
【非特許文献7】Murrell et al.,Science 254:97(1991)
【非特許文献8】Mullan et al.,Nature Genet.1:345(1992)
【非特許文献9】Hardy,TINS 20:154(1997)
【非特許文献10】Johnson−Wood et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:1550(1997)
【非特許文献11】Schenk et al.,Nature 400,173(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、アルツハイマー病の処置のための新規の治療法および試薬、特には生理学的(すなわち無毒性)投与で治療の利益を得ることができる治療法および薬剤への要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、新規の免疫グロブリン試薬、具体的にはアミロイド(amyloidogenic)疾患(例えばアルツハイマー病)の予防および処置のための治療用抗体試薬を特徴とする。本発明は、少なくとも部分的には、Aβペプチドに特異的に結合しそしてアミロイド障害に関連する斑負荷軽減に有効なモノクローナル抗体、12A11、の同定および特性化に基づく。本抗体の構造および機能分析は、予防および/または治療への使用のための種々のヒト化抗体の設計に導く。特には、本発明は、本抗体の種々の領域の抗体のヒト化を特徴とし、それにより、ヒト化免疫グロブリンまたは抗体連鎖、本来のヒト化免疫グロブリンまたは抗体、および機能的免疫グロブリンまたは抗体フラグメント、殊には特徴的な抗体の抗原結合フラグメントを提供する。
【0008】
特徴とするモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)を含んでなるポリペプチドも、該ポリペプチドをコードするために適するポリヌクレオチド試薬、ベクターおよび宿主細胞として開示される。
【0009】
アミロイド疾患または障害(例えばアルツハイマー病)を処置する方法が、かかる用途に使用するために製薬学的組成物およびキットとして開示される。
【0010】
さらに特徴とするのは、治療試薬として使用される場合に、改善された結合親和性および/または低下した免疫原性を有するヒト化抗体の設計において、適切な免疫学的機能のためおよび置換を受けやすい残基を同定するために重要な特徴的なモノクローナル抗体内の残基を同定する方法である。
【0011】
さらに特徴とするのは、改変されたエフェクター機能を有する抗体(例えばヒト化抗体)、およびそれらを用いる治療法への使用である。
発明の詳細な説明
本発明は、アルツハイマー病またはその他のアミロイド疾患の予防または処置のための新規の免疫学的試薬および方法を特徴とする。本発明は、少なくとも一部分は、ベータアミロイドタンパク質(Aβ)を結合(例えば可溶性および/または凝集Aβを結合)、ファゴサイトーシス(例えば凝集Aβのもの)の媒介、斑負荷の低下よび/または神経炎性ジストロフィーの低下(例えば患者内において)に有効なモノクローナル免疫グロブリン、12A11、の特性化に基づく。本発明は、さらに12A11免疫グロブリンの可変軽鎖および重鎖の一次および二次構造の決定および構造特性化ならびに活性および免疫原性に重要な残基の同定に基づく。
【0012】
免疫グロブリンは、本明細書中に記載の12A11モノクローナル免疫グロブリンの可変軽鎖および/または可変重鎖を含むものを特徴とする。好ましい免疫グロブリン、例えば治療用免疫グロブリンは、ヒト化可変軽鎖および/またはヒト化可変重鎖を含むものを特徴とする。好ましい可変軽鎖および/または可変重鎖は、12A11免疫グロブリン(例えばドナー免疫グロブリン)からの相補性決定領域(CDR)およびヒトアクセプターからまたは本質的にそれからの可変フレームワーク領域を含む。「ヒトアクセプター免疫グロブリンから本質的に」の語句は、大部分または重要なフレームワーク残基が、ヒトアクセプター配列由来であるが、しかし、ヒト化免疫グロブリンの活性を改善するために選択(例えばドナー免疫グロブリンの活性をさらに良く模倣するように活性を改変する)されたかまたはヒト化免疫グロブリンの免疫原性を低下するように選択された残基で一定の位置の残基の置換を許すことを意味する。
【0013】
一つの態様では、本発明は、12A11可変領域相補性決定領域(CDR)を含み(すなわち配列番号2として示される軽鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを含むか、または配列番号4として示される重鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを含み)、そしてヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖または重鎖配列からの可変フレームワーク領域を含み、場合により相応するネズミ残基に復帰突然変異したフレームワーク残基の少なくとも1個の残基を有し、ここで該復帰突然変異はAβ結合を指定(direct)する鎖の能力に本質的に影響を与えない、ヒト化免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖を特徴とする。
【0014】
一つの態様では、本発明は、12A11可変領域相補性決定領域(CDR)を含み(すなわち配列番号2として示される軽鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを含むか、または配列番号4として示される重鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを含む)、そして本質的にヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖または重鎖配列からの可変フレームワーク領域を含み、場合により相応するネズミ残基に復帰突然変異したフレームワーク残基の少なくとも1個の残基を有し、ここで該復帰突然変異はAβ結合を指定する鎖の能力に本質的に影響を与えない、ヒト化免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖を特徴とする。
【0015】
別の態様では、本発明は、12A11可変領域相補性決定領域(CDR)を含み(例えば、配列番号2として示される軽鎖可変領域配列からの1、2もしくは3個のCDRを含み、そして/または配列番号4として示される重鎖可変領域配列からの1、2または3個のCDRを含み)、そして本質的にヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖または重鎖配列からの可変フレームワーク領域を含み、場合によりマウス12A11軽鎖もしくは重鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換された少なくとも1個のフレームワーク残基を有し、ここで該フレームワーク残基は、(a)抗原を直接非共有結合的に結合している残基、(b)CDRに隣接する残基、(c)CDRと相互作用する残基(例えば相同の既知免疫グロブリン鎖の解明された(solved)構造上の軽鎖もしくは重鎖をモデルにして同定される)、および(d)VL−VH界面に関与する残基から成る群から選択される、ヒト化免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖を特徴とする。
【0016】
別の態様では、本発明は、12A11可変領域相補性決定領域(CDR)およびヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖または重鎖配列からの可変フレームワーク領域を含み、場合によりマウス12A11軽鎖もしくは重鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換された少なくとも1個のフレームワーク残基を有し、ここでフレームワーク残基は、可変領域の三次元モデルの分析により同定された軽鎖可変領域コンホメーションまたは機能に影響できる残基、例えば抗原と相互作用できる残基、抗原結合部位に近位の残基、CDRと相互作用できる残基、CDRに隣接する残基、CDR残基から6Å以内の残基、カノニカル残基、バーニアゾーン残基、鎖間充填残基、通常ではない残基、または構造モデルの表面上のグリコシル化部位残基である、ヒト化免疫グロブリン軽鎖もしくは重鎖を特徴とする。
【0017】
別の態様では、本発明は、上記の置換に加えて、少なくとも1個の稀な(rare)ヒトフレームワーク残基の置換を特徴とする。例えば、稀な残基は、その位置においてヒト可変鎖配列に共通であるアミノ酸残基で置換されることができる。あるいは、稀な残基は、相同生殖細胞系可変鎖配列からの相応するアミノ酸残基で置換されることができる。
【0018】
別の態様では、本発明は、上記のような軽鎖および重鎖、または該免疫グロブリンの抗原結合フラグメントを含むヒト化免疫グロブリンを特徴とする。例示的な態様では、ヒト化免疫グロブリンは、ベータアミロイドペプチド(Aβ)に対して少なくとも107 M−1、108 M−1または109 M−1の結合親和性をもって結合(例えば特異的結合)する。別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントは、イソタイプγ1を有する重鎖を含む。別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントは、可溶性ベータアミロイドペプチド(Aβ)および凝集Aβのいずれかまたは双方に結合(例えば特異的結合)する。別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントは、可溶性Aβ(例えば可溶性Aβ1−42)を捕捉(capture)する。別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントはベータアミロイドペプチド(Aβ)のファゴサイトーシスを媒介(例えばファゴサイトーシスを誘発)する。さらに別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントは対象(subject)内の血液脳関門を通過する。さらに別の態様では、免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメントは、対象内のベータアミロイドペプチド(Aβ)負荷および神経炎ジストロフィーのいずれかまたは双方を低下する。
【0019】
別の態様では、本発明は12A11可変領域(例えば配列番号2または配列4として示される可変領域配列)を含むキメラ免疫グロブリンを特徴とする。さらに別の態様では、免疫グロブリン、またはその抗原結合フラグメントは、IgG1からの定常領域をさらに含む。
【0020】
本明細書内に記載の免疫グロブリンは、アミロイド疾患の予防または処置を目的とする治療法に使用するために特に適する。一つの態様では、本発明は、本明細書中に記載のヒト化免疫グロブリンの有効投与量を患者に投与することを含むアミロイド疾患(例えばアルツハイマー病)の予防または処置の方法を特徴とする。別の態様では、本発明は、本明細書中に記載のヒト化免疫グロブリンおよび製薬学的キャリヤを含む製薬学的組成物を特徴とする。免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントまたは本明細書中有に記載の鎖を製造するための単離された核酸分子、ベクターおよび宿主細胞、ならびに上記の免疫グロブリン免疫グロブリンフラグメントもしくは免疫グロブリン鎖を製造するための方法も特徴とする。
【0021】
本発明は、さらに、それぞれヒト化12A11免疫グロブリンを製造する場合に置換されやすい12A11残基を同定する方法を特徴とする。例えば、置換されやすい可変フレームワーク領域残基を同定する方法は、解明された相同性免疫グロブリン構造上の12A11可変領域の三次元構造をモデルとし、そして置換されやすい残基を同定するように、12A11免疫グロブリン可変領域コンホメーションまたは機能に影響できる残基の該モデルを分析することを含む。本発明は、さらに12A11免疫グロブリン、12A11免疫グロブリン鎖、またはそれらのドメインの三次元イメージを作製する際に、配列番号2もしくは配列番号4、またはそれらのいずれかの部分として示される可変領域配列の使用を特徴とする。
【0022】
本発明は、さらに、エフェクター分子、例えばエフェクター細胞上の補体または受容体を結合できるような、改変されたエフェクター機能を有する免疫グロブリンをさらに特徴とする。特には、本発明の免疫グロブリンは、改変された定常領域、例えばFc領域を有し、ここでFc領域内の少なくとも1個のアミノ酸残基は、異なる残基または側鎖と置換されている。一つの態様では、変性された免疫グロブリンはIgGクラスであり、例えば非変性免疫グロブリンと比較して、免疫グロブリンが改変されたエフェクター機能を有するようにFc領域内の少なくとも1個のアミノ酸残基置換を含んでなる。特別の態様では、本発明の免疫グロブリンは、その免疫原性がさらに低いような改変されたエフェクター機能(例えば望ましくないエフェクター細胞活性、溶解、または補体結合を起こさない)を有するか、改善されたアミロイド除去性を有するか、および/または望ましい半減期を有する。
【0023】
発明を説明する前に、今後使用する一部の用語の定義を示すとその理解の助けとなるであろう。
【0024】
「免疫グロブリン」または「抗体」の用語(本明細書内では互換的に使用される)は、2個の重鎖および2個の軽鎖から成る基本的な四ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指し、該鎖は例えば鎖間ジスフィド結合により安定化されており、それは抗原を特異的に結合する能力を有する。「一本鎖免疫グロブリン」または「一本鎖抗体」の用語(本明細書内では互換的に使用される)は、重鎖および軽鎖から成る二ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指し、該鎖は例えば鎖間ジスフィド結合により安定化されており、それは抗原を特異的に結合する能力を有する。「ドメイン」の用語は、例えばβプリートシートおよび/または鎖内ジスルフィド結合により安定化されたペプチドループを含んでなる(例えば3〜4ペプチドループを含んでなる)重鎖または軽鎖ポリペプチドの球状領域を指す。ドメインは、さらに本明細書内では、「定常」ドメインの場合には種々のクラスメンバーのドメイン内の配列変動の相対的な欠如、または「可変」ドメインの場合には種々のクラスメンバーのドメイン内の著しい変動に基づいて、本明細書内では「定常」または「可変」と称される。抗体またはポリペプチド「ドメイン」は、抗体またはポリペプチド「領域」のように当該技術分野ではしばしば互換的に称される。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域または「CL」ドメインとして互換的に称される。抗体重鎖の「定常」ドメインは、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域または「CH」ドメインとして互換的に称される。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域または「VL」ドメインとして互換的に称される。抗体重鎖の「可変」ドメインは、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「VH」領域または「VH」ドメインとして互換的に称される。
【0025】
「領域」の用語は、抗体鎖または抗体鎖ドメインの部分または一部(例えば本明細書中に定義される重鎖もしくは軽鎖の部分または一部または定常もしくは可変ドメインの部分または一部)、ならびに上記の鎖またはドメインのさらに細分された部分または一部も指すことができる。例えば、軽鎖および重鎖または軽鎖または重鎖可変ドメインは、本明細書中に定義される「フレームワーク領域」または「FR」の間の内部に散在する「相補性決定領域」または「CDR」を含む。
【0026】
免疫グロブリンまたは抗体は、モノマーもしくはポリマー形態、例えば五量体で存在するIgM抗体および/または単量体、二量体もしくは多量体で存在するIgA抗体として存在できる。「フラグメント」の用語は、本来または完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含んでなる抗体または抗体鎖の部分または一部を指す。フラグメントは、本来または完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的処理を介して得ることができる。フラグメントは組換え手段によって得ることもできる。例示的なフラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2および/またはFvフラグメントを含む。「抗原結合フラグメント」の用語は、抗原を結合するかまたは本来の抗体(例えばそれらが誘導された本来の抗体)と抗原結合(すなわち特異性結合)に関して競合する免疫グロブリンまたは抗体のポリペプチドフラグメントを指す。
【0027】
「コンホメーション」の用語は、タンパク質またはポリペプチド(例えば抗体、抗体鎖、ドメインまたはその領域)の三次構造を指す。例えば、「軽(または重)鎖コンホメーション」の語句は、軽(または重)鎖可変領域の三次構造を指し、そして「抗体コンホメーション」または「抗体フラグメントコンホメーション」の語句は、抗体またはそのフラグメントの三次構造を指す。
【0028】
抗体の「特異性結合」とは、抗体が特定の抗原またはエピトープに容易に感知できる親和性を示しそして、一般的に、著しい交差反応性を示さないことを意味する。例示的な態様では、抗体は交差反応性を示さない(例えば非AβペプチドとまたはAβ上の遠隔エピトープと交差反応しない)。「容易に感知できる(appreciable)」または好ましい結合は、少なくとも106、107、108、109M−1、または1010M−1の親和性を有する結合を含む。107M−1より大きく、好ましくは108M−1より大きい親和性がさらに好ましい。本明細書中に示すそれらの中間の値も本発明の範囲内にあると意図しそして好ましい結合親和性は、例えば106〜1010M−1、好ましくは107〜1010M−1、さらに好ましくは108〜1010M−1の親和性の範囲と指示できる。「著しい交差反応性を示さない」抗体は、望ましくない物体(entity)(例えば望ましくないタンパク質様物体)に容易には感知できない結合をするものである。例えば、Aβに特異的に結合する抗体は、非Aβタンパク質またはペプチド(例えば斑中に含まれる非Aβタンパク質またはペプチド)と容易に感知できるほどには結合するが著しくは反応しない。特定のエピトープに特異的な抗体は、例えば同じタンパク質またはペプチド上の遠隔のエピトープと著しくは交差反応しない。特異性結合は、かかる結合を決定するための当該技術分野で認知されたいかなる手段によっても決定できる。好ましくは、特異性結合は、Scatchard分析および/または競合結合性アッセイによって決定される。
【0029】
結合性フラグメントは、組換えDNA技術により、または本来の免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的開裂により産生される。結合性フラグメントには、Fab、Fab’、F(ab’)2 、Fabc、Fv、一本鎖、および一本鎖抗体が含まれる。「二重特異性」または「二重官能性」免疫グロブリンまたは抗体の外は、免疫グロブリンまたは抗体はそれぞれ同一のその結合部位を有すると理解される。「二重特異性」または「二重官能性抗体」は、2個の異なる重/軽鎖対および2個の異なる結合部位を有する人工的ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体はハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結を含む種々の方法により産生できる。例えばSongsivilai & Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelny et al.,J.Immunol.148,1547−1553(1992)参照。
【0030】
「ヒト化免疫グロブリン」または「ヒト化抗体」の用語は、少なくとも1個のヒト化免疫グロブリンまたは抗体鎖(すなわち少なくとも1個のヒト化軽鎖または重鎖)を含む免疫グロブリンまたは抗体を指す。「ヒト化免疫グロブリン鎖」または「ヒト化抗体鎖」(すなわち「ヒト化免疫グロブリン軽鎖」または「ヒト化免疫グロブリン重鎖」)の用語は、本質的にヒト免疫グロブリンまたは抗体からの可変フレームワーク領域および本質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体からの相補性決定領域(CDR)(例えば少なくとも1個のCDR、好ましくは2個のCDR、さらに好ましくは3個のCDR)を含む領域を有し、さらに定常領域(例えば軽鎖の場合には少なくとも1個の定常領域またはその部分、そして重鎖の場合には好ましくは3個の定常領域)を含む免疫グロブリンまたは抗体鎖(すなわちそれぞれ軽鎖または重鎖)を指す。「ヒト化可変領域」(例えば「ヒト化軽鎖可変領域」および「ヒト化重鎖可変領域」)の用語は、本質的にヒト免疫グロブリンまたは抗体からの可変フレームワーク領域および本質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体からの相補性決定領域(CDR)を含む可変領域を指す。
【0031】
「本質的にヒト免疫グロブリンまたは抗体から」または「本質的にヒト」の語句は、比較の目的でヒト免疫グロブリンまた抗体アミノ配列に対して整列された場合に、領域が、ヒトフレームワークまたは定常領域配列に対して少なくとも80〜90%、90〜95%、または95〜99%同一性(すなわち局所配列同一性)を共有し、例えば保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系置換、復帰突然変異などを可能とすることを意味する。保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系置換、復帰突然変異などの導入は、例えばヒト化抗体または鎖の「最適化」と呼ばれる。「本質的に非ヒト免疫グロブリンまたは抗体から」または「本質的非ヒト」の語句は、非ヒト生物体、例えば非ヒト動物のものに対して少なくとも80〜95%、好ましくは少なくとも90〜95%、さらに好ましくは、96%、97%、98%、または99%同一性の免疫グロブリンまたは抗体配列を有することを意味する。
【0032】
したがって、ヒト化免疫グロブリンもしくは抗体、またはヒト化免疫グロブリンもしくは抗体の鎖のすべての領域もしくは残基は、多分CDRを除いて、1個またはそれ以上の本来のヒト免疫グロブリン配列の相応する領域もしくは残基に本質的に同一性する。「相応する領域」または「相応する残基」の用語は、第一および第二の配列が比較の目的で最適に配列された場合に、最初のアミノ酸またはヌクレオチド配列上の領域または残基と同じ(すなわち等価の)位置を占める第二のアミノ酸またはヌクレオチド配列上の領域または残基を指す。
【0033】
「著しい同一性」の用語は、例えばデフォールトギャップウェイトを用いるプログラムGAPまたはBESTFITにより最適に整列された場合に、少なくとも50〜60%の配列同一性、好ましくは少なくとも60〜70%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも70〜80%の配列同一性、さらに好ましくは少なくとも80〜90%の配列同一性、もっとさらに好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、そしてもっとさらに好ましくは少なくとも95%以上の配列同一性またはそれ以上(例えば99%の配列同一性またはそれ以上)を共有する2個のポリペプチド配列を意味する。「本質的に同一性」の用語は、例えばデフォールトギャップウェイトを用いるプログラムGAPまたはBESTFITにより整列された場合に、少なくとも80〜90%の配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、そしてさらに好ましくは少なくとも95%の配列同一性またはそれ以上(例えば99%の配列同一性またはそれ以上)を共有する2個のポリペプチド配列を意味する。配列比較のために、典型的には一つの配列が参照(reference)配列として働き、それに試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピューターに入力し、必要ならば下位配列座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。次いで配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメーターに基づいて参照配列に対する試験配列の配列同一性百分率を算出する。
【0034】
比較のための配列の最適整列は、例えばSmith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needlman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性整列アルゴリズムにより、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性探索法により、それらのアルゴリズムの計算機化手段(GAP,BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIによる)により、または目視検査(一般的にはAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology参照)により実行できる。配列同一性百分率および配列類似性を決定するために適するアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、それはAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990)に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Informationを通して公開利用できる(National InstituteS of Health NCBIインターネットサーバーを介して公開利用できる)。典型的には、デフォールトプログラムパラメーターが配列比較を実行するために使用できるが、独自のパラメーターも使用できる。アミノ酸配列のためには、BLASTPプログラムはデフォールトとして3の語長(W)、10の期待(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)参照)。
【0035】
好ましくは、同一性しない残基位置は保存的(conservative)アミノ酸置換により異なる。保存的および非保存的としてアミノ酸置換を分類する目的で、アミノ酸は下記のように類別される:グループI(疎水性側鎖):leu、met、ala、val、leu、ile;グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸性側鎖):asp、glu;グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;グループV(鎖方向に影響する残基):gly、pro;およびグループVI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換は、同じ分類内のアミノ酸間の置換を含む。非保存的置換は、それらの分類の一つのメンバーから他のもののメンバーへの交換である。
【0036】
好ましくは、ヒト化免疫グロブリンまたは抗体は、相応する非ヒト化抗体のものよりも3、4、または5の係数以内の親和性で抗原を結合する。例えば、非ヒト化抗体が109M−1の結合親和性を有する場合、ヒト化抗体は少なくとも3x109M−1、4x109M−1または5x109M−1の結合親和性を有するであろう。免疫グロブリンまたは抗体鎖の結合性を記述する場合に、鎖は「直接抗原(例えばAβ)結合」へのその能力に基づいて記述できる。鎖が本来の免疫グロブリンまたは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)に対して特異性結合性または結合親和性を与える場合に、鎖は「直接抗原結合性」と称される。重鎖または軽鎖を含んでなる本来の免疫グロブリンまたは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)の結合親和性が、変異を欠失する等価の鎖を含んでなる抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)のものと比較して少なくとも一桁程度の大きさで影響(例えば低下)する場合に、該変異(例えば復帰突然変異)は、抗原結合性を指定する重鎖もしくは軽鎖の能力に本質的に影響すると称される。鎖を含んでなる本来の免疫グロブリンまたは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)の結合親和性を、変異を欠失する等価の鎖を含んでなる抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)のものと比較して、該変異が2、3、または4の係数のみ影響(例えば低下)する場合に、該変異は抗原結合を指定する鎖の能力に「本質的に影響(例えば低下)しない」と称される。
【0037】
「キメラ免疫グロブリン」または抗体の用語は、可変領域が第一の種から誘導され、そして定常領域が第二の種から誘導された免疫グロブリンまたは抗体を指す。キメラ免疫グロブリンまたは抗体は、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから、例えば遺伝子操作により構築できる。「ヒト化免疫グロブリン」または「ヒト化抗体」の用語は、以下に定義するように、キメラ免疫グロブリンまたは抗体を包含することを意図しない。ヒト化免疫グロブリンまたは抗体はその構造でキメラ(すなわち一種を越えるタンパク質からの領域を含んでなる)であるが、それらは本明細書中に定義するキメラ免疫グロブリンまたは抗体内に見いだされない追加の特徴(すなわちドナーCDR残基およびアクセプターフレームワーク残基を含んでなる可変領域)を含む。
【0038】
「抗原」は、抗体がそれに特異的に結合する物体(例えばタンパク質様のものまたはペプチド)である。
【0039】
「エピトープ」または「抗原決定基」の用語は、免疫グロブリンまたは抗体(またはそれらの抗原結合フラグメント)がそれに特異的に結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続したアミノ酸またはタンパク質の三次折り畳みにより並置される非連続アミノ酸の双方から形成できる。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、変性溶剤に暴露されても典型的には保存されるが、三次折り畳みにより形成されるエピトープは変性溶剤による処理で典型的には失われる。エピトープは、典型的には、一つの立体コンホメーション内で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。エピトープの立体コンホメーションを決定する方法には、例えばX線結晶学法および二次元核磁気共鳴法が含まれる。例えばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed(1996)参照。
【0040】
同じエピトープを認識する抗体は、標的抗原に対する他の抗体の結合を遮断する一つの抗体の能力を示す単純な免疫アッセイ、すなわち競合結合性アッセイで同定できる。競合結合性は、供試免疫グロブリンが共通の抗原、例えばAβに対する参照抗体の特異性結合を阻害するアッセイで決定される。多くのタイプの競合結合性アッセイが既知であり、例えば下記である:固相直接または間接放射免疫アッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ型競合アッセイ(Stahli et al.,Methods in Enzymology 9:242(1983)参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al.,J.Immunol.137:3614(1986)参照);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチ型アッセイ(Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)参照);I−125標識を使用する固相直接標識RIA(Morel et al.,Mol.Immunol.25(1):7(1988)参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al.,Virology 176:546(1990));および直接標識RIA(Moldenhauer et al.,Scand.J.Immunol.32:77(1990))。典型的には、このようなアッセイは、固体表面に結合された精製抗原またはそれらのいずれかを有する細胞、非標識試験免疫グロブリンおよび標識した参照免疫グロブリンの使用を含む。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面または細胞に結合する標識の量を決定して測定される。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、それは、共通抗原への参照抗体の特異性結合を少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%またはそれ以上阻害する。
【0041】
エピトープは、免疫学的細胞、例えばB細胞および/またはT細胞によっても認識される。エピトープの細胞認識は、3Hチミジン取り込みにより、サイトカイン分泌により、抗体分泌により、または抗原依存性キリング(killing)(細胞毒性Tリンパ細胞アッセイ)により決定される抗原依存性増殖を測定するin vitroアッセイにより決定できる。
【0042】
例示的なエピトープまたは抗原決定基は、ヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)内で見いだすことができるが、しかし好ましくはAPPのAβペプチド内に見いだされる。APPの複数のアイソフォーム、例えばAPP695 APP751 およびAPP770 が存在する。APP内のアミノ酸は、APP770 アイソフォームの配列に従って番号を割当てられる(例えばGenebankアクセション番号P05067参照)。Aβ(本明細書中ではベータアミロイドペプチドおよびAベータとも呼ばれる)ペプチドは、APP(Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42およびAβ43)の39〜44個のアミノ酸の約4−kDa内部フラグメントである。例えばAβ40はAPPの残基672〜711から成りそしてAβ42はAPPの残基673〜713から成る。in vivoまたはin situにおける種々のセクレターゼ酵素によるAPPのタンパク質分解処理の結果、Aβは、アミノ酸の長さ40個の「短型」、およびアミノ酸の長さ42〜43個の範囲の「長型」の双方が見いだされた。本明細書中に記載する好ましいエピトープまたは抗原決定基は、AβペプチドのN−末端内に局在しそしてAβのアミノ酸1〜10内、好ましくはAβ42の残基1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7または3〜7からの残基を含む。追加の参照エピトープまたは抗原決定基は、Aβの残基2〜4、5、6、7もしくは8、Aβの残基3〜5、6、7、8もしくは9、またはAβ42の残基4〜7、8、9もしくは10を含む。抗原が特定の残基内のエピトープ、例えばAβ3〜7に結合すると称される場合、その意味は、特定の残基(すなわちこの例ではAβ3〜7)を含むポリペプチドに抗体が特異的に結合することである。かかる抗体は、Aβ3〜7内の各々の残基と必ずしも接触する必要はない。またAβ3〜7内のいずれかの単一アミノ酸置換または欠失は、必ずしも結合親和性に著しくは影響しない。
【0043】
「アミロイド疾患」の用語は、不溶性アミロイドフィブリルの形成または沈着と関連する(またはそれに起因する)あらゆる疾患を含む。例示的なアミロイド疾患は、全身性アミロイド症、アルツハイマー病、成人期発症糖尿病、パーキンソン病、ハンチントン病、前側頭部痴呆、およびプリオン関連伝染性海綿様脳症(ヒトにおけるクールーおよびクロイツフェルト−ヤコブ症およびそれぞれヒツジおよびウシにおけるヒツジ海綿脳症およびBSE)を含むが、それらに限定はされない。種々のアミロイド疾患が沈着フィブリルのポリペプチド成分の性質により定義または特性化されている。例えば、アルツハイマー病を有する対象または患者内で、β−アミロイドタンパク質(例えば野生型、改変体、または末端短縮β−アミロイドタンパク質)は、アミロイド沈着のポリペプチド成分として特性決定されている。従って、アルツハイマー病は、例えば対象または患者の脳内での「Aβの沈着により特性化される疾患」または「Aβの沈着と関連する疾患」の例である。「β−アミロイドタンパク質」、「β−アミロイドペプチド」、「β−アミロイド」、「Aβ」および「Aβペプチド」の用語は、本明細書中で互換的に使用される。
【0044】
「免疫原性薬剤」または「免疫原」は、場合によりアジュバントと一緒に、哺乳動物に投与する場合にそれ自体に対する免疫学的反応を誘発できる。
【0045】
本明細書中に使用される場合の「処置」の用語は、患者に対する治療薬剤の適用もしくは投与、疾患、疾患の症状もしくは疾患に対する素質を治癒、治療、軽減、解放、改変、救済、改良、改善もしくは影響させる目的で、疾患、疾患の症状もしくは疾患に対する素質を有する患者から単離された組織もしくは細胞系に対する治療薬剤の適用もしくは投与として定義される。
【0046】
「有効投与量」または「有効投与」の用語は、所望の効果を達成または少なくとも部分的に達成するために十分な量として定義される。「治療有効投与量」の用語は、疾患にすでに罹患している患者において、疾患およびその合併症を治癒または少なくとも部分的に阻止するために十分な量として定義される。この使用に有効な量は、感染の重症度および患者自身の免疫系の一般的な状態に依存する。
【0047】
「患者」の用語は、予防または治療処置のいずれかを受けるヒトおよびその他の哺乳動物対象を含む。
【0048】
「可溶性」または「分解した」Aβは、モノマー状で可溶性ならびにオリゴマー性で可溶性のAβポリペプチド(例えば可溶性Aβ二量体、三量体など)を含み、非凝集または分離したAβポリペプチドを指す。「不溶性」Aβは、例えば非共有結合により一緒に保持された凝集Aβポリペプチドを指す。Aβ(例えばAβ42)は、ペプチドのC−末端における疎水性残基(APPの膜貫通ドメインの部分)の存在により、少なくとも部分的に凝集すると考えられる。可溶性Aβは、in vivoで生物学的液体、例えば脳脊髄液および/または血清中に見いだすことができる。あるいは、可溶性Aβは、冷凍乾燥したペプチドを清潔なDMSO中に音波処理して溶解して調製できる。得られた溶液を遠心分離(例えば14,000xg、4℃、10分間)してすべての不溶性粒子体を除去する。
【0049】
「エフェクター機能」の用語は、抗体(例えばIgG抗体)のFc領域内に存在するエフェクター活性を指し、そして例えばエフェクター分子、例えば補体および/またはFc受容体を結合する抗体の能力を含み、それは抗体の数種の免疫機能、例えばエフェクター細胞活性、溶解、補体媒介活性、抗体除去、および抗体半減期を制御できる。
【0050】
「エフェクター分子」の用語は、補体タンパク質またはFc受容体を含みそれらに限定はされない抗体(例えばIgG抗体)のFc領域に結合できる分子を指す。
【0051】
「エフェクター細胞」の用語は、リンパ球、例えば抗原が存在する細胞およびT細胞を含みそれらに限定はされないエフェクター細胞の表面上に発現されるFc受容体を典型的には介して抗体(例えばIgG抗体)のFc部分に結合できる細胞を指す。
【0052】
「Fc領域」の用語は、IgG抗体のC−末端領域、特には該IgG抗体の重鎖のC−末端領域を指す。IgG重鎖のFc領域の境界は僅かに変動してもよいが、Fc領域は、IgG重鎖のアミノ酸残基Cys226付近からカルボキシル末端にわたるとして典型的には定義される。
【0053】
「Kabat番号付け」の用語は、別途記載しない限り、Kabat et
al.(「免疫学的に関係するタンパク質の配列」、第五版、Public Health Service,National Institute of
Health,Bethesda,Md(1991)、引用することにより本明細書中に明確に編入される)中のEU指数を用いる、例えばIgG重鎖鎖抗体内の残基の番号付けとして定義される。
【0054】
「Fc受容体」または「FcR」の用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。抗体(例えばIgG抗体)のFc領域に結合する典型的なFc受容体は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を含むが、それらに限定はされず、それらの受容体の対立遺伝子変異体および交互にスプライスされた形態を含む。Fc受容体は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994)およびde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)中に概説されている。
I.免疫学および治療用試薬
本発明の免疫学および治療用試薬は、本明細書中で定義される免疫原もしくは抗体、またはそれらの機能性もしくは抗原結合フラグメントを含んでなるかもしくはこれらから成る。基本抗体構造単位は、サブユニットの四量体を含んでなることが知られている。それぞれの四量体は、ポリペプチド鎖の2個の同一の対から成り、それぞれの対は一個の「軽」(約25kDa)および一個の「重」(約50〜70kDa)鎖を有する。それぞれの鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識に対応する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は主としてエフェクター機能に対応する定常領域をカノニカルする。
【0055】
軽鎖はカッパまたはラムダのいずれかとして分類され、そして長さ約230残基である。重鎖は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、またはイプシロン(ε)として分類され、長さ約450〜600残基であり、そしてそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEとして抗体のイソタイプをカノニカルする。重鎖および軽鎖の双方共にドメインに折り畳まれる。「ドメイン」の用語は、タンパク質の球状領域、例えば免疫グロブリンまたは抗体を指す。免疫グロブリンまたは抗体ドメインは、例えばβプリートされたシートと鎖間ジスルフィド結合により安定化された3〜4個のペプチドループを含む。本来の軽鎖は、例えば2個のドメイン(VLおよびCL)を有し、そして本来の重鎖は、例えば4〜5個のドメイン(VH、CH1、CH2およびCH3)を有する。
【0056】
軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は約12個またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域により連結され、ここで重鎖は約10個またはそれ以上のアミノ酸の「D」領域も含む(一般的には、Fundamental Immunology,Paul,W.,ed.,2nd.ed.Raven Press,N.Y.(1989),Ch7)参照、すべての目的のために、引用することによりその全体を編入する)。
【0057】
それぞれの軽/重鎖対の可変領域は抗体結合性部位を形成する。従って、本来の抗体は、2個の結合性部位を有する。二重特異性(bifunctional)または二重特異性(bispecific)抗体を除き、2個の結合性部位は同一である。鎖は、3個の超可変領域、すなわちいわゆる相補性決定領域もしくはCDRにより連結された相対的に保存されるフレームワーク領域(FR)の同様の一般構造をすべて示す。天然に存在する鎖または組換え産生鎖は、細胞プロセシングの間に除去されて成熟鎖を産生するリーダー配列を伴って発現されることもできる。例えば関係する特定の鎖の分泌またはプロセシングを改変を促進するための天然には存在しないリーダー配列を有する成熟鎖が組換え的に産生されることもできる。
【0058】
それぞれの対の2個の成熟鎖のCDRは、フレームワーク領域により整列され、特定のエピトープへの結合を可能とする。N−末端からC−末端まで、軽鎖および重鎖の双方共にドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。「FR4」は、当該技術分野において、可変重鎖のD/J領域そして可変軽鎖のJ領域とも称される。各ドメインへのアミノ酸の割当は、Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health,Bethesda,MD,1987 and 1991)の定義に従う。別の構造定義は、Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901(1987);Nature 342:878(1987);およびJ.Mol.Biol.186:651(1989)(これ以後、集合的に「Chothia et al.」と称し、そしてすべての目的のために、引用することによりその全体を編入する)により提出された。
A.Aβ抗体
本発明の治療薬剤は、アミロイド斑のAβへまたはその他の成分へ特異的に結合する抗体を含む。好ましい抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかのかかる抗体は、可溶性形態には結合しないでAβの凝集した形態に特異的に結合する。あるものは凝集形態には結合しないで可溶性形態に特異的に結合する。あるものは凝集および可溶性の形態の双方に結合する。治療方法に使用される抗体は、好ましくは、本来の定常領域、または少なくともFc受容体と相互作用をするために十分な定常領域を有する。好ましい抗体は、斑内のAβのFc媒介ファゴサイトーシスの刺激に効力があるものである。ヒトイソタイプIgG1は、食細胞上(例えば脳定住マクロファージまたは小膠細胞上)のFcRI受容体に対してヒトイソタイプの最高の親和性を有するので好ましい。ヒトIgG1はネズミIgG2aと等価であり、従って後者はアルツハイマー病の動物(例えばマウス)モデル内でのin vivo効力を試験するために適する。二重特異性Fabフラグメントも使用でき、その中で抗体の一つの腕がAβに対して特異性を有し、そして他のものはFc受容体に対して特異性を有する。好ましい抗体は、約106、107、108、109、または1010M−1(それらの値の中間の親和性を含む)より大きい(または等しい)結合親和性でAβに結合する。
【0059】
モノクローナル抗体は、コンホメーション性または非コンホメーション性エピトープであり得るAβ内の特定のエピトープに結合する。抗体の予防および治療効力は、実施例中に記載のトランスジェニック動物モデル手順を用いて試験できる。好ましいモノクローナル抗体は、Aβの残基1〜10(本来のAβの第一のN末端残基を1と指定する)内のエピトープに、さらに好ましくはAβの残基3〜7内のエピトープに結合する。いくつかの方法では、異なるエピトープに対して結合特異性を有する多重(multi)モノクローナル抗体が使用され、例えば、Aβの残基3〜7内のエピトープに対して特異性の抗体は、Aβの残基3〜7以外のエピトープに対して特異性の抗体と共投与できる。かかる抗体は、連続してまたは同時に投与できる。Aβ以外のアミロイド成分に対する抗体も使用できる(例えば投与または共投与)。
【0060】
抗体のエピトープ特異性は、例えば、異なるメンバーがAβの異なるサブ配列を表すファージディスプレイライブラリーを形成することにより特定できる。次いで、試験する抗体に特異的に結合するメンバーに関して、ファージディスプレイライブラリーを選択する。配列のファミリーを単離する。典型的には、かかるファミリーは、共通のコア配列、および異なるメンバー内のフランキング配列の変動する長さを含む。抗体への特異的結合性を示す最短のコア配列は、抗体により結合されるエピトープをカノニカルする。抗体は、エピトープ特異性がすでに決定されている抗体を用いる競合アッセイでエピトープ特異性も試験できる。例えば、Aβへの結合性に関して12A11抗体と競合する抗体は、12A11と同一または類似のエピトープ、すなわち残基Aβ3〜7内に結合する。エピトープ特異性についての抗体のスクリーニングは、治療効力の有用な予測となる。例えば、Aβの残基1〜7内のエピトープに結合すると決定された抗体は、本発明の方法論に従ってアルツハイマー病を予防および処置するために有効である可能性がある。
【0061】
Aβの他の領域に結合しないでAβの好ましいセグメントに特異的に結合する抗体は、他の領域に結合するモノクローナル抗体または本来のAβへのポリクローナル血清と比較して多数の利点を有する。第一に、同一の投与重量に対して、好ましいセグメントに特異的に結合する抗体の投与量は、アミロイド斑の除去において有効な抗体のより高いモル基準投与量を含む。第二に、好ましいセグメントへ特異的に結合する抗体は、本来のAPPポリペプチドに対する除去反応を誘発せず、アミロイド沈着に対して除去反応を誘発でき、これにより予想される副作用が低減される。
1.非ヒト抗体の産生
本発明は、非ヒト抗体、例えば本発明の好ましいAβエピトープに対して特異性を有する抗体を特徴とする。かかる抗体は、本発明の種々の治療組成物を調合する際に使用でき、または、好ましくは、ヒト化またはキメラ抗体の産生のための相補性決定領域を提供する(詳細は以下に記載する)。非ヒト、例えばネズミ、モルモット、霊長類動物、ラビットまたはラットのモノクローナル抗体の産生は、例えば、Aβを用いて動物を免疫化して達成できる。AβまたはAβの免疫原フラグメントを含んでなるさらに長いポリペプチドまたはAβへの抗体への抗−イディオタイプ抗体も使用できる。Harlow & Lane、上記文献(すべての目的のために、引用することによりその全体を編入する)参照。このような免疫原は、本来の起源から、ペプチド合成によりまたは組換え発現により得ることができる。場合により、免疫原は、キャリヤタンパク質と融合またはその他の方法で複合して投与でき、これは以下に記載する通りである。場合により、免疫原は、アジュバントと一緒に投与できる。「アジュバント」の用語は、抗原と一緒に投与された場合に抗原に対する免疫反応を増強するが、しかし単独で投与された場合には抗原に対する免疫反応を起こさない化合物を指す。アジュバントは、リンパ球補充(recruitment)、Bおよび/またはT細胞の刺激およびマクロファージの刺激を含む種々の機構により免疫反応を増強できる。種々の型のアジュバントが以下に記載のように使用される。完全フロイントアジュバントとそれに続く不完全アジュバントが、実験室動物の免疫化に好ましい。
【0062】
ポリクローナル抗体を製造するためにラビットまたはモルモットが典型的に使用される。例えば受動的保護のためのポリクローナル抗体の例示の製造は、以下のように行うことができる。125体の非トランスジェニックマウスをCFA/IFAアジュバントを加えたAβ1−42の100μlを用いて免疫化し、4〜5カ月後に安楽死させる。免疫化したマウスから血液を採取する。IgGを血液成分から分離する。免疫原に特異性の抗体をアフィニティークロマトグラフィーにより部分的に精製してもよい。免疫原特異性抗体の平均して約0.5〜1mgがマウス1体あたりに得られ、全体で60〜120mgとなる。
【0063】
モノクローナル抗体を製造するためには典型的にはマウスが用いられる。マウス内にAβのフラグメントまたはより長い形態を注入し、ハイブリドーマを製造しそしてAβに特異的に結合する抗体についてハイブリドーマをスクリーニングして、フラグメントに対するモノクローナル抗体が製造できる。場合により、Aβの他の非重複フラグメントには結合しないで、Aβの特定の領域または所望のフラグメントに結合することについて抗体をスクリーニングする。後者のスクリーニングは、Aβペプチドの欠失変異体の集合に対する抗体の結合性を決定しそしてどの欠失変異体が抗体に結合したかを決定して達成できる。結合性は、例えばウエスタンブロットまたはELISAにより評価できる。抗体への特異的結合性を示す最小のフラグメントが抗体のエピトープをカノニカルする。あるいは、エピトープ特異性は、試験および参照抗体がAβへの結合について競合する競合アッセイにより決定できる。試験および参照抗体が競合する場合には、それらは、同じエピトープまたは一つの抗体の結合が他の結合を妨害するように十分近位のエピトープに結合する。かかる抗体に好ましいイソタイプは、マウスイソタイプIgG2aまたは他の種の等価イソタイプである。マウスイソタイプIgG2aは、ヒトイソタイプIgG1(例えばヒトIgG1)に等価である。
2.キメラおよびヒト化抗体
本発明はベータアミロイドペプチドに特異性のキメラおよび/またはヒト化抗体(すなわち、キメラ性および/またはヒト化免疫グロブリン)も特徴とする。キメラおよび/またはヒト化抗体は、キメラまたはヒト化抗体の構築のための出発物質を提供するマウスまたはその他の非ヒト抗体と同一または類似した結合特異性および親和性を有する。
a.キメラ抗体の製造
「キメラ抗体」の用語は、その軽鎖および重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子操作により、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから構築された抗体を指す。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変(V)セグメントは、ヒト定常(C)セグメント、例えばIgG1およびIgG4に結合するであろう。ヒトイソタイプIgG1が好ましい。従って、典型的なキメラ抗体は、マウス抗体からのVもしくは抗原結合ドメインおよびヒト抗体からのCもしくはエフェクタードメインから成るハイブリッドタンパク質である。
b.ヒト化抗体の製造
「ヒト化抗体」の用語は、本質的にヒト抗体鎖からの可変領域フレームワーク残基を含んでなる少なくとも一個の鎖(アクセプター免疫グロブリンまたは抗体を称する)および本質的にマウス抗体からの少なくとも1個の相補性決定領域(ドナー免疫グロブリンまたは抗体と称する)を含んでなる抗体を指す。Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第5,530,101号明細書、米国特許第5,585,089号明細書、米国特許第5,693,761号明細書、米国特許第5,693,762号明細書、Selick et al.,国際特許公開(WO)第90/07861号明細書およびWinter米国特許第5,225,539号明細書(すべての目的のために、引用することによりその全体を編入する)参照。もし存在する場合には、定常領域も実質的または完全にヒト免疫グロブリン由来である。
【0064】
ヒト可変ドメインフレームワーク内へのマウスCDRの置換は、CDRが由来したマウス可変フレームワークと同様または類似のコンホメーションをヒト可変ドメインフレームワークが取る場合に、それらの正しい空間的方向の保持もたらす可能性が最も高い。これは、CDRが誘導されたネズミ可変フレームワークドメインとヒト抗体のフレームワーク配列が高い程度の配列同一性を示す、ヒト抗体からのヒト可変ドメインを得ることにより達成される。重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域は同一または異なるヒト抗体配列から誘導できる。ヒト抗体配列は、本来的に存在するヒト抗体の配列であることができるかまたは数種のヒト抗体のコンセンサス配列であることができる。Kettleborough et al.,Protein Engineering 4:773(1991):Kolbinger et al.,Protein Engineering 6:971(1992)およびCarter et al.,国際特許公開(WO)第92/22653号明細書参照。
【0065】
ネズミドナー免疫グロブリンおよび適当なヒトアクセプター免疫グロブリンの相補性決定領域を同定すると、次の段階は、もし存在すれば、成分が置換されなければならない残基を決定して、得られたヒト化抗体の性質を最適化することである。一般に、ヒトアミノ酸残基のネズミとの置換は最小にしなればならないが、それというのもネズミ残基の導入は、ヒト内でのヒト−抗−マウス−抗体(HAMA)反応を励起する抗体の危険性を増加するからである。ヒト反応を決定するための当該技術分野で認知されている方法は、特定の患者においてもしくは臨床試験の間にHANA反応を監視して行うことができる。ヒト化抗体を投与された患者は、該治療の投薬の開始およびその間に免疫原性評価を受けることがきでる。HAMA反応は、例えば、表面プラスモン共鳴技術(BIACORE)および/または固相ELISA分析を含む当該技術分野の技術者には既知の方法を用いて患者からの血清資料中で、ヒト化治療試薬に対する抗体を検出して測定される。
【0066】
ヒト可変領域フレームワーク残基からの一部のアミノ酸は、CDRコンホメーションおよび/または抗原への結合性に対するそれらの可能な影響に基づく置換について選択される。ヒト可変フレームワーク領域を有するネズミCDR領域の本来的ではない並置は、正常ではないコンホメーション制約をもたらし、それは、一部のアミノ酸残基の置換により修正されない限り、結合親和性の欠失に導く。
【0067】
置換のためのアミノ酸残基の選択は、一部分はコンピューターモデリングにより決定される。コンピューターハードウエアおよびソフトウエアは、免疫グロブリン分子の三次元イメージを作製するために本明細書中に記載されている。一般に、分子モデルは免疫グロブリン鎖またはそのドメインに対する解明された(solved)構造から出発して作製される。モデル比較される鎖は、解明された三次元構造の鎖もしくはドメインとのアミノ酸配列類似性について比較され、そして最大の配列同一性を示した鎖もしくはドメインを分子モデルの構築のための出発点として選択する。少なくとも50%の配列同一性を共有する鎖またはドメインをモデリングのために選択し、そして好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%配列同一性またはそれ以上を共有するものをモデリングのために選択する。モデル比較される免疫グロブリン鎖もしくはドメイン内の実際のアミノ酸と、出発構造内のものとの間の相違を許容するように、解明された出発構造を変更する。次いで、変更した構造を複合(composite)免疫グロブリンに構築する。最後に、エネルギー最小化によりそしてすべての原子が相互に適当な距離内にありそして結合の長さおよび角度が化学的に許容できる限界内にあることを確認してモデルを改善する。
【0068】
置換のためのアミノ酸の選択は、特定の場所にあるアミノ酸の特性の検討、または特定のアミノ酸の置換または変異誘発の効果の実験的な観察により、一部分を決定することもできる。例えば、ネズミ可変領域フレームワーク残基と選択されたヒト可変領域フレームワーク残基との間でアミノ酸が異なる場合に、ヒトフレームワークアミノ酸は、そのアミノ酸が
(1)抗原を直接非共有結合的に結合するか、
(2)CDR領域に隣接しているか、
(3)その他の方法でCDR領域と相互作用するか(例えばコンピューターモデリングで決定してCDR領域から3〜6Å以内にある)、または
(4)VL−VH界面内に関与する
ことが合理的に期待される場合に、マウス抗体からの等価フレームワークアミノ酸により通常置換されるべきである。
【0069】
「抗原を直接非共有結合的に結合する」残基とは、確立された化学的力、例えば水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用、などにより、抗原上のアミノ酸と直接相互作用する高い可能性を有するフレームワーク領域内の位置にあるアミノ酸を含む。
【0070】
CDRおよびフレームワーク領域はKabat et al.またはChothia et al.(上記文献)により定義されている。Kabat et al.(上記文献)により定義されるフレームワーク領域がChothia et al.(上記文献)により定義される構造ループ残基を構成する場合に、マウス抗体内に存在するアミノ酸をヒト化抗体内の置換のために選択してもよい。「CDR領域に隣接」する残基とは、ヒト化免疫グロブリン鎖の一次配列内のCDRの1個またはそれ以上に直接隣接する位置、例えばKabatにより定義されるCDRまたはChothisにより定義されるCDRに直接隣接する位置にあるアミノ酸残基を含む(例えばChothia and Lesk,JMB 196:901(1987)参照)。それらのアミノ酸は、CDR内のアミノ酸と相互作用する可能性が特に高く、そしてアクセプターから選択された場合には、ドナーCDRを変形しそして親和性を低下させる。さらに、隣接アミノ酸は、抗原と直悦相互作用する場合もあり(Amit et al.Science,233:747(1986)引用することにより本明細書に編入される)そしてドナーからのそれらのアミノ酸の選択は、当初の抗原内に親和性を提供するすべての抗原接触を維持するために望ましいであろう。
【0071】
「その他の方法でCDR領域と相互作用する」残基は、CDR領域に影響するために十分な空間配置にあると二次構造解析により決定されるものを含む。一つの態様では、「その他の方法でCDR領域と相互作用する」残基は、ドナー免疫グロブリンの三次元モデル(例えばコンピューター作製モデル)を解析して同定される。典型的には当初のドナー抗体の三次元モデルは、CDRの外部の一定のアミノ酸がCDRに近くそして水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などによりCDR内のアミノ酸と相互作用する高い可能性を有することを示す。それらのアミノ酸位置において、ドナー免疫グロブリンアミノ酸はアクセプター免疫グロブリンアミノ酸よりも選択されるであろう。この基準に従うアミノ酸は、一般的にCDR内の一部原子から約3Å単位内の側鎖原子を有しそして確立された化学的力、例えば上記に列記したものに従ってCDR原子と相互作用できる原子を含まなくてはならない。
【0072】
疎水性結合を形成できる原子の場合には、3Åはそれらの核の間で測定されるが、しかし結合を形成しない原子では、3Åはそのファンデルワールス面の間で測定される。従って、後者の場合、核は、相互作用できると考えられる原子に対して約6Å(3Åにファンデルワールス半径の和を加えた値)内になければならない。多くの場合に、核は4または5または6Å離れている。アミノ酸がCDRと相互作用できるかどうかを決定する場合に、重鎖CDR2の最後の8個のアミノ酸をCDRの部分として考慮しないのが好ましいが、それは構造の観点から、それらの8個のアミノ酸はフレームワークの一部として行動することが多いからである。
【0073】
CDR内のアミノ酸と相互作用できるアミノ酸は、さらの別の方法で同定してもよい。各フレームワークアミノ酸それぞれの溶剤接近可能な表面積は、二つの方法で算出される:(1)本来の抗体内、および(2)そのCDRが除去された抗体から成る仮想分子内。約10平方Åまたはそれ以上のそれらの数の間の著しい相違は、フレームワークアミノ酸の溶剤への接近がCDRにより少なくとも部分的に遮断され、そしてそのためにアミノ酸がCDRと接触することを示す。アミノ酸の溶剤接近可能表面積は、当該技術分野で既知のアルゴリズムを用いて抗体の三次元モデルに基づいて算出されてもよい(例えば、Connolly,J.Appl.Cryst.16:548(1983)およびLee and Richards,J.Mol.Biol.55:379(1971)参照、双方共に引用することにより本明細書に編入される)。フレームワークアミノ酸は、一方では自体がCDRと接触する他のフレームワークアミノ酸のコンホメーションに影響を及ぼして、場合によりCDRと間接的に相互作用もするであろう。
【0074】
フレームワーク内の幾つかの位置にあるアミノ酸は、多くの抗体内でCDR確認を決定する(例えばCDRと相互作用できること)のために重要なことが知られている(Chothia and Lest、上記文献、Chothia et al、上記文献、およびTramontano et al,J.Mol.Biol.215:175(1990)、すべて引用することにより本明細書に編入される)。これらの研究者は、数種の既知抗体の構造の分析によりCDRコンホメーションに重要な保存フレームワーク残基を同定した。分析した抗体は、CDRのコンホメーションに基づいて、限定された数の構造的または「カノニカル(canonical)」クラスに分類された。カノニカルクラスのメンバー内の保存フレームワーク残基は「カノニカル」残基と称される。カノニカル残基は、軽鎖の残基2、25、29、30、33、48、64、71、90、94および95、および重鎖の残基24、26、29、34、54、55、71および94を含む。別の残基(例えばCDR構造−決定残基)はMartin and Thorton(1996)J.Mol.Biol.263:800の方法論に従って同定できる。重要なことは、軽鎖の2、48、64および71および重鎖の26〜30、71および94の位置にあるアミノ酸(番号付けはKabatによる)は、多くの抗体内でCDRと相互作用できることが知られている。軽鎖内の35および重鎖内の93および103の位置にあるアミノ酸も、CDRと相互作用するらしい。CDRのコンホメーションに影響するらしい他の残基は、Foote and Winter(1992)J.Mol.Biol.224:487の方法論に従って同定できる。かかる残基は「バーニア」残基と称され、そしてCDRの直下に存在する(すなわち下に「プラットフォーム」を形成する)フレームワーク領域内の残基である。それらの番号付けしたすべての位置で、ヒト化免疫グロブリン内に存在するために、ドナーアミノ酸の選択の方が、(もし存在するならば)アクセプターアミノ酸の選択よりも好ましい。反対に、CDR領域と相互作用できる一部の残基、例えば軽鎖の最初の5個のアミノ酸は、ヒト化免疫グロブリンの親和性の損失を伴わないで、アクセプター免疫グロブリンから選択できることもある。
【0075】
「VL−VH界面内に関与する」残基または「充填残基」は、例えばNovotny and Habor,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:4592−66(1985)またはChothia et al.,(上記文献)により定義されたVLとVH間の界面にある残基を含む。一般に、異常な充填残基がヒトフレームワーク内のものと異なる場合には、それらはヒト化抗体内に保持されるべきである。
【0076】
一般に、上記の基準を満足する1個またはそれ以上のアミノ酸は、置換されることができる。いくつかの態様では、上記の基準を満足するすべてまたは大部分のアミノ酸が置換されている。時には、特定のアミノ酸が上記の基準に合致するかどうかについていくらかの不明瞭さがあり、そして別の改変体免疫グロブリンが産生され、その一つはその特定の置換を有し、他は有していない。このようにして産生された別の改変体免疫グロブリンは、本明細書内に記載のいずれのアッセイでも所望の活性について試験され、そして好ましい免疫グロブリンを選択できる。
【0077】
通常、ヒト化抗体内のCDR領域は本質的に同一性し、そしてさらに一般的には、ドナー抗体の相応するCDR領域に同一性する。しかし、ある態様では、抗体の抗原結合特異性を変更し、そして/または抗体の免疫原性を低下するために1個またはそれ以上のCDR領域を変更することが望ましいこともある。典型的には、CDRの1個またはそれ以上の残基は結合を変更して改変して、結合性のさらに好ましいオンレート(on−rate)、結合性のさらに好ましいオフレート(off−rate)、または双方を達成して、理想化された結合定数に到達する。この戦略を用いて、非常に高い結合親和性、例えば1010M−1またはそれ以上を有する抗体が達成できる。要約すると、ドナーCDR配列は、引き続いて1個またはそれ以上の残基が改変される塩基配列として好ましい。本明細書中に記載の親和性成熟技術は、CDR領域を改変し、次いで結合における所望の変化のために得られた結合性分子をスクリーニングするために使用できる。該方法は、ドナーCDR、典型的にはマウスCDRを改変して、可能なヒト抗マウス抗体HAMA)反応が最小化または回避されるようなさらに低い免疫原性とするために使用してもよい。従って、CDRが改変されると、結合親和性ならびに免疫原性における変化を、最良の複合した結合性および低い免疫原性にために抗体が最適化されるように監視されそして採点される(例えば米国特許第6,656,467号明細書および米国特許公開US20020164326A1号明細書参照)。
【0078】
別の解決法では、抗体のCDR領域を分析して、ヒト対応体を用いてドナーCDRのそれぞれを組織的に置換することにより、抗体結合性および/または免疫原性に対するそれぞれ個別のCDRの貢献を決定する。次いで、得られたヒト化抗体のパネルを、抗体親和性および各CDRの可能な免疫原性に関して採点する。この方法で、候補の結合性分子の2個の臨床的に重要な性質、すなわち抗原結合性および低い免疫原性が決定される。相応するネズミまたは抗体のCDRグラフト(ヒト化)形態に対する患者血清が入手できる場合には、系統的ヒトCDR交換を表す抗体の全パネルをスクリーニングして各ドナーCDRに対する抗−イディオタイプ反応を患者に決定できる(技術的詳細については、例えばIwashi et al.,Mol.Immunol.36:1079−91(1999)参照)。かかる解決法は、本態的ドナーCDR領域を非本態的ドナーCDRから同定することを可能とする。次いで、非本態的CDR領域をヒト対応CDRと交換してもよい。受容できないほどの機能の損失を伴わないでは本態的CDR領域が交換できない場合には、CDRの特異性決定残基(SDR)の同定を、例えば部位指定変異誘発により行う。この方法で、CDRはSDRのみを保持するように再操作しそしてCDR全体の残留アミノ酸位置でヒトおよび/または最小免疫原性であることができる。一部のドナーCDRのみをグラフトするかかる解決法は、短縮CDRグラフト法とも称される(上記技術の技術的な詳細に関しては、例えばTamura et al.,J.of Immunology 164(3):1432−41(2000);Gonzales et al.,Mol.Immunol.40:337−349(2003);Kashmiri et al.,Crit Rev.Oncol.Hematol.38:3−16(2001);およびDePascalis et al.,J.of Immunology 169(6):3076−84(2002)参照)。
【0079】
さらに、得られたヒト化免疫グロブリンの結合親和性に容易に感知できるほど影響することなく、CDR残基の1個またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を行うことが時に可能である。保存的置換とは、gly,ala;val,ile,leu;asp,glu;asn,gln;ser,thr;lys,arg;およびphr,tyrのような組み合わせを意図する。
【0080】
別の置換候補は、その位置におけるヒト免疫グロブリンにとって異常または「稀」であるアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。それらのアミノ酸は、マウスドナー抗体の等価位置からまたはさらに典型的なヒト免疫グロブリンの等価位置からのアミノ酸で置換できる。例えば、アクセプター免疫グロブリンのヒトフレームワーク領域内のアミノ酸がその位置にとっては稀でありそしてドナー免疫グロブリン内の相応するアミノ酸がヒト免疫グロブリン配列内のその位置にとって共通である場合;またはアクセプター免疫グロブリン内のアミノ酸がその位置にとっては稀でありそしてドナー免疫グロブリン内の相応するアミノ酸も他のヒト配列と比較して稀である場合に、置換は望ましいであろう。アクセプターヒトフレームワーク配列にとって残基が稀であるかどうかは、CDRコンホメーションへの貢献に基づく復帰突然変異のために残基を選択する場合にも考慮されなければならない。例えば、復帰突然変異が、アクセプターヒトフレームワーク配列にとって稀である残基の置換をもたらすならば、ヒト化抗体は活性の有無についてそれを試験されてもよい。復帰突然変異が活性に不必要な場合には、免疫原性関連性を低下するためにそれを除去してもよい。例えば、下記の残基における復帰突然変異は、アクセプターヒトフレームワーク配列内で稀である残基を導入してもよい。uk=v2(2.0%)、L3(0.4%)、T7(1.8%)、Q18(0.2%)、L83(1.2%)、I85(2.9%)、A100(0.3%)およびL106(1.1%);およびvh=T3(2.0%)、K5(1.8%)、I11(0.2%)、S23(1.5%)、F24(1.5%)、S41(2.3%)、K71(2.4%)、R75(1.4%)、I82(1.4%)、D83(2.2%)およびL109(0.8%)。これらの基準は、ヒトフレームワーク内の非典型的なアミノ酸が抗体構造を破壊しないように保証することを助ける。さらに、異常なヒトアクセプターアミノ酸を、たまたまヒト抗体に典型的なドナー抗体からのアミノ酸で置換することにより、ヒト化抗体はより低い免疫原性にできるであろう。
【0081】
本明細書中に使用される「稀」の用語は、配列の代表的な試料内の配列の約20%以下、好ましくは約10%以下、さらに好ましくは約5%以下、もっとさらに好ましくは約3%以下、もっとさらに好ましくは約2%以下、そしてもっとさらに好ましくは約1%以下でその位置に出現するアミノ酸を指し、そして本明細書中に使用される「共通(common)」の用語は、代表的試料内の配列の約25%以上、しかし通常は約50%以上で出現するアミノ酸を指す。例えば、ヒトアクセプター配列内のアミノ酸が「稀」かまたは「共通」であるかどうかを決定する場合に、ヒト可変領域配列のみを考慮することがしばしば好ましく、そしてマウスアミノ酸が「稀」または「共通」であるかどうかを決定する場合には、マウス可変領域配列のみを考慮することがしばしば好ましい。さらに、すべてのヒト軽鎖および重鎖可変領域配列は相互に特に相同でありそして一定の重要な位置で同じアミノ酸を有する、配列の「サブグループ」にそれぞれ分類される(Kabal et al.,上記文献)。ヒトアクセプター配列中のアミノ酸がヒト配列の間で「稀」または「共通」のいずれであるかを決定するために、アクセプター配列と同じサブグループ内のそれらのヒト配列のみを考慮することがしばしば好ましい。
【0082】
置換の別の候補は、Chothia et al(上記文献)で提案された別の定義によるCDR領域の部分として同定されるであろうアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。置換のための追加の候補は、AbMおよび/または接触定義によるCDR領域の部分として同定されるであろうアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。
【0083】
置換のための追加的な候補は、稀または異常なドナーフレームワーク残基に相応するアクセプターフレームワーク残基である。稀または異常なドナーフレームワーク残基は、その位置でネズミ抗体にとって稀または異常な(本明細書中で定義)ものである。ネズミ抗体にとって、サブグループはKabatに従って決定でき、そして、共通とは異なると同定された残基位置である。それらのドナー特異性の相違は、活性を増強するネズミ配列内の体細胞変異を示すであろう。結合に影響すると予測される異常な残基(例えば充填カノニカルおよび/またはバーニア残基)は保存され、一方結合にとって重要でないと予測される残基は置換できる。12A11 UK配列内の稀な残基はI85(3.6%)を含む。12A11vh配列内の稀な残基は、T3(1.0%)、I11(1.7%)、L12(1.7%)、S41(2.8%)、D83(1.8%)およびA85(1.8%)を含む。
【0084】
置換のための追加的な候補は、アクセプターフレームワーク領域内に存在する非生殖細胞系残基である。例えば、アクセプター抗体鎖(すなわちドナー抗体鎖と著しい配列同一性を共有するヒト抗体鎖)が、生殖細胞系抗体鎖(同様にドナー鎖と著しい配列同一性を共有する)と整列された場合に、アクセプター鎖フレームワークと生殖細胞系配列フレームワークとの間で合致しない残基は、生殖細胞系配列からの相応する残基で置換できる。
【0085】
以上に考察した特定のアミノ酸置換の他に、ヒト化免疫グロブリンのフレームワーク領域は通常本質的に同一性し、そしてさらに通常的には、それらが誘導されたヒト抗体のフレームワーク領域と同一性する。勿論、フレームワーク領域内の多数のアミノ酸は、抗体の特異性または親和性にほとんどまたは全く直接的に貢献しない。従って、フレームワーク残基の多数の個別の保存的置換は、得られるヒト化免疫グロブリンの特異性または親和性に容易に検知できるような変化はなく、許容できる。従って、一つの態様では、ヒト化免疫グロブリンの可変フレームワーク領域は、ヒト可変フレームワーク領域配列またはかかる配列の共通体と少なくとも85%の配列同一性を共有する。別の態様では、ヒト化免疫グロブリンの可変フレームワーク領域は、ヒト可変フレームワーク領域配列またはかかる配列の共通体と少なくとも90%、好ましくは95%、さらに好ましくは96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する。しかし、一般的にはかかる置換は望ましくない。
【0086】
例示的な態様では、本発明のヒト化抗体は、少なくとも107、108、109または1010M−1の抗原に対する特異性結合親和性を示す。別の態様では、本発明の抗体は、少なくとも1010、1011または1012M−1の結合親和性を有することができる。通常、抗原に対するヒト化抗体の結合親和性の上限は、ドナー免疫グロブリンのものの3、4または5の係数以内である。しばしば結合親和性の下限もドナー免疫グロブリンのものの3、4または5の係数以内である。あるいは、結合親和性は、置換を持たないヒト化抗体(例えばドナーCDRおよびアクセプターFRは有するがFR置換はない抗体)のものと比較できる。かかる場合には、最適化抗体(置換を伴う)の結合は、好ましくは、非置換抗体のものの少なくとも2〜3倍大きいかまたは3倍〜4倍大きい。比較を行うために、種々の抗体の活性が、例えばBIACORE(すなわち非標識試薬を使用する表面プラスモン共鳴)または同様の結合アッセイにより決定できる。
c.ヒト化12A11抗体の製造
本発明の好ましい態様は、特には本明細書内に記載の治療的および/または診断的方法論に使用するためのAβのN−末端へのヒト化抗体を特徴とする。ヒト化抗体の製造のためにに好ましい出発物質は、モノクローナル抗体12A11である。12A11はAβのN−末端に特異性でありそして(1)凝集したAβ1−42に対して高い結合活性を有し、(2)可溶性Aβを捕そくする能力を有し、そして(3)アミロイド斑のファゴサイトーシスを媒介する(例えばファゴサイトーシス誘発)ことが証明されている(実施例I参照)。12A11抗体のin vivo効力は実施例IIに記載される。12A11抗体重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNAのクローニングおよび配列決定は、実施例IIIに記載される。
【0087】
適切なヒトアクセプター抗体配列は、マウス可変領域のアミノ酸配列と既知のヒト抗体の配列とのコンピューター比較により同定できる。比較は、重鎖および軽鎖について分離して行われるが、しかし原理はそれぞれ同一である。具体的には、そのフレームワーク配列がネズミVLおよびVHフレームワーク領域との高度の配列同一性を示すヒト抗体からの可変ドメインは、それぞれのネズミフレームワーク配列に対して、例えばKabatデータベースまたはNCBI IgG BLASTを用いるIgGタンパク質配列データベース(National Institute of Health NCBIインターネットサーバーを介して公開されアクセスできる)を探索して同定される。一つの態様では、ネズミドナー配列、例えばドナーフレームワーク(FR)配列と50%以上の配列同一性を共有するアクセプター配列が選択される。好ましくは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%配列同一性またはそれ以上を共有するアクセプター抗体配列が選択される。
【0088】
12A11のコンピューター比較は、12A11軽鎖(マウスサブグループII)が、サブタイプカッパIIのヒト軽鎖と最大の配列同一性を示し、そして12A11重鎖(マウスサブグループIb)が、サブタイプIIのヒト重鎖に最大の配列同一性を示すことを明らかにし、それらはKabat et al.の上記文献により定義される。軽鎖および重鎖ヒトフレームワーク領域は、それらのサブタイプのヒト抗体から、またはかかるサブタイプのコンセンサス配列から誘導できる。最初のヒト化の努力において、軽鎖可変フレームワーク領域をヒトサブグループII抗体から誘導した。ヒトサブグループII抗体から誘導された重鎖可変フレームワーク領域を有するヒト化抗体の発現の高いレベルに到達するために設計された以前の実験に基づいて、かかる抗体の発現レベルが時には低いことが発見された。従って、Saldanha et al.,(1999)Mol.Immunol.36:709−719に記載の推定に基づいて、ヒトサブグループIII抗体からのフレームワーク領域をヒトサブグループIIの代わりに選択した。
【0089】
ヒトサブグループII抗体K64(ALMS4)(アクセッション番号BAC01733)を12A11の軽鎖可変領域内で著しい配列同一性を有するNCBI非重複データベースから同定した。ヒトサブグループIII抗体M72(アクセッション番号AAA69734)を12A11の重鎖可変領域内で著しい配列同一性を有するNCBI非重複データベースから同定した(Schroeder and Wang(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 872:6146−6150参照)。
【0090】
別の軽鎖アクセプター配列は、例えば以下を含む。
【0091】
【表1】
【0092】
別の重鎖アクセプター配列は、例えば以下を含む。
【0093】
【表2】
【0094】
例示の態様で、本発明のヒト化抗体は、以上に表示されたアクセプター配列からの12A11 CDRおよびFRを含む。本明細書中に記載したCDRコンホメーションおよび/または活性に重要なフレームワーク領域内の残基が、復帰突然変異のために選択される(ドナーとアクセプター配列との間で異なる場合)。
【0095】
次いで残基は置換のために以下のようにして選択される。12A11可変フレームワーク領域と等価のヒト可変フレームワーク領域との間でアミノ酸が異なる場合には、該アミノ酸が、
(1)抗原を直接非共有結合的に結合しているか、
(2)CDR領域に隣接しているか、Chothia et al.(上記文献)に提案されている別の定義でのCDR領域の部分であるか、またはCDR領域と別の方法で相互作用する(例えばCDR領域の約3Å以内にある)か、または
(3)VL−VH界面内に関与しているか
と合理的に期待される場合には、ヒトフレームワークアミノ酸が、等価のマウスアミノ酸により通常は置換されるべきである。
【0096】
12A11抗体重鎖および軽鎖可変領域の構造解析、および12A11抗体のヒト化は、実施例Vに記載されている。要約すると、軽鎖に対しては解明されたネズミ抗体構造1KTRそして重鎖に対しては1JRHおよび1ETZの三次元モデルが研究された。CDR確認のために重要な残基(例えばバーニア残基)の同定のために研究できる別の三次元モデルは、軽鎖に対しては
【0097】
【表3】
【0098】
そして重鎖に対しては
【0099】
【表4】
【0100】
を含む。
【0101】
本明細書中に記載の抗体に関する三次元構造情報は、例えば、Research Collaboratory for Structural Bioinfomatics’Proten Data Bank(PDB)から公開れて入手できる。PDBは、World Wide Webインターネットを介して自由にアクセスできそしてBerman et al.,(2000) Nucleic Acids Research,28:235に記載されている。解明された三次元構造の研究は、12A11内のCDR相互作用残基の同定を可能とする。あるいは、12A11VHおよびVL鎖の三次元モデルは、コンピューターモデリングソフトウエアを用いて作製できる。要約すると、三次元モデルは、重鎖および軽鎖に対する最も近い解明されたネズミ抗体構造に基づいて作製される。この目的で、1KTRは12A11軽鎖のモデルリングのための鋳型として使用でき、そして1ETZおよび1JRHは重鎖のモデルリングのための鋳型として使用できる。このモデルは、不利な原子接触を開放しそして静電的およびファンデルワールス相互作用を最適化するための一連のエネルギー最小化段階によりさらに改良できる。追加的な三次元解析および/またはモデルリングは、それらの解明されたネズミ構造とそれぞれの12A11鎖との間の類似性に基づいて、軽鎖に対しては2JEL(2.5Å)および/または1TET(2.3Å)そして重鎖(または上記のいずれかの他の抗体)に対しては1GGI(2.8Å)を用いて行うことができる。
【0102】
12A11の構造のコンピューターモデルは、さらに、ヒトフレームワーク構造内に置換された12A11相補性決定領域を含む抗体の三次元構造を予測するための出発点として役立つことができる。さらなるアミノ酸置換が導入される場合の構造を表す追加的なモデルが構築できる。
【0103】
一般的に、上記の基準を満足するアミノ酸の一個、大部分または全ての置換が望ましい。従って、本発明のヒト化抗体は、少なくとも1、2、3またはそれを越える選択された位置において、相応する12A11残基でのヒト軽鎖フレームワーク残基の置換を通常は含む。またヒト化抗体は、少なくとも1、2、3またはそれを越える選択された位置において、相応する12A11残基でのヒト重鎖フレームワーク残基の置換を通常は含む。
【0104】
しかし、場合によれば、特定のアミノ酸が上記の基準に適合するかどうかについていくらかの曖昧さがあり、そして代替の改変体の免疫グロブリンが作製され、その一種は特定の置換を有し、他のものは有してない。ネズミ残基を用いる置換が特定の位置でヒト免疫グロブリン内の稀な残基を導入する場合に、特定の置換があるかまたはない場合の活性について該抗体を試験することが望ましいであろう。活性(例えば結合親和性および/または結合特異性)が置換があってもなくてもほぼ同等の場合には、置換がない抗体が好ましいであろうが、それは、本明細書中に記載のように、HAMAプロセスの誘発が少ないことが期待されるからである。
【0105】
置換の別の候補は、その位置ではヒト免疫グロブリンにとって異常なアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。それらのアミノ酸は、より典型的なヒト免疫グロブリンの等価な位置からのアミノ酸で置換できる。あるいは、マウス12A11内の等価な位置からのアミノ酸は、かかるアミノ酸が等価位置でヒト免疫グロブリンで典型的である場合には、ヒトフレームワーク領域内に導入できる。
【0106】
置換の別の候補は、フレームワーク領域内に存在する非生殖細胞系残基である。既知の生殖細胞系配列を用いて12A11のコンピューター比較を行うと、重鎖または軽鎖に最高度の配列同一性を有する生殖細胞系配列が同定できる。フレームワーク領域と生殖細胞系配列との整列は、相応する生殖細胞系残基を用いる置換のためにどの残基を選択してよいかを明らかにする。選択された軽鎖アクセプターフレームワークとそれら生殖細胞系配列の一つとのとの間で合致しない残基が、相応する生殖細胞系配列残基を用いる置換のために選択できる。
【0107】
稀なマウス残基は、ドナーVLおよび/またはVH配列と、ドナーVLおよび/またはVH配列が属する(Kabatによる)サブグループの他のメンバーの配列とを比較し、そして共通とは異なる残基位置を同定することにより同定される。それらのドナー特異性の相違は、活性を増強する体細胞変異を示すであろう。結合部位に近い異常または稀な残基は、抗原と接触する可能性があり、マウス残基を保持することを望ましくする。しかし、異常なマウス残基が結合に重要でない場合には、相応するアクセプター残基の使用は、マウス残基がヒト化抗体内に免疫原性ネオエピトープを創成するらしいので好ましい。ドナー配列内の異常残基が相応するアクセプター配列内で実際に共通残基である場合には、好ましい残基は明らかにアクセプター残基である。
【0108】
表1Aは、12A11 VHおよびVL領域の配列解析の要約である。
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
アミノ酸置換を選択する際に使用できる生殖細胞系配列を記述する。
【0112】
本明細書中に記載の抗体に対する三次元構造情報は、例えば、Research Collaboratory for Structural Bioinformatics’Protein Data Bank(PDB)から公開されて利用できる。PDBはWorld Wide Webインアターネットを介して自由にアクセスでき、そしてBerman et al.(2000)Nucleic Acids Research,p235−242に記載されている。本明細書中に引用する生殖細胞系配列は、例えばNational Center for Biotechnology Information(NCBI)の配列データベースから、Igh、IgカッパおよびIgラムダ生殖細胞V遺伝子の集積中のから公開されて利用できる(National Institute of Health(NIH)におけるNational Library of Medicine(NLM)の部門として)。NCBI”Ig Germline Gene”データベースの相同性サーチは、IgG BLASTTMにより提供される。
【0113】
例示的な態様では、本発明のヒト化抗体は、(i)ネズミ12A11 VL
CDRおよびヒトアクセプターフレームワークを含んでなる可変ドメインを含んでなる軽鎖であって、該フレームワークは相応する12A11残基で置換された0、1、2、3、4、5、6、7、8、9個またはそれ以上の残基を有し、そして(ii)12A11 VH CDRおよびヒトアクセプターフレームワークを含んでなる重鎖であって、フレームワークは相応する12A11残基で置換された少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9個またはそれ以上の残基、そして場合により相応するヒト生殖細胞系残基により置換された少なくとも1個、好ましくは2または3個の残基を有する。
【0114】
別の例示的態様では、本発明のヒト化抗体は、(i)ネズミ12A11 VL CDRおよびヒトアクセプターフレームワークを含んでなる可変ドメインを含んでなる軽鎖であって、該フレームワークは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上の復帰突然変異された残基(すなわち、相当する12A11残基で置換され)を含み、ここで復帰突然変異はカノニカル、充填および/またはバーニア残基にあり、そして(ii)12A11 VH CDRおよびヒトアクセプターフレームワークを含んでなる重鎖であって、該フレームワークは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上の復帰突然変異された残基を有し、ここで復帰突然変異はカノニカル、充填および/またはバーニア残基にある、を含む。ある態様では、復帰突然変異は、充填および/もしくはカノニカル残基においてのみまたはまたは主として充填および/もしくはカノニカル残基おいて存在する(例えば、ドナーとアクセプター配列との間で相違するバーニア残基の1または2個のバーニア残基のみが復帰突然変異される)。
【0115】
別の態様では、ヒト化抗体は、可能な限り最小数の復帰突然変異を含み、ドナー抗体(またはそのキメラバージョン)のものに同等の結合親和性を保持する。かかるバージョンに到達するために、復帰突然変異の種々の組み合わせが排除できそして得られた抗体を効力(例えば結合親和性)に関して試験する。例えば、バーニア残基における復帰突然変異(例えば1、2、3、または4個の復帰突然変異)が排除できるか、またはバーニアと充填、バーニアとカノニカルもしくは充填とカノニカルの組み合わせにおける復帰突然変異が排除できる。
【0116】
別の態様では、本発明のヒト化抗体は、本明細書中に記載のような構造的特徴を有し、そして少なくとも1個(好ましくは2、3、4個または全て)の下記活性をさらに有する:(1)可溶性Aβを結合する、(2)凝集Aβ1−42を結合する(例えば、ELISAにより決定される)、(3)可溶性Aβを捕そくする。(4)斑(例えばADおよび/またはPDAPP斑の着色)内のAβを結合する、(5)キメラ12A11よりも2〜3倍低い親和性でAβを結合する(例えばネズミ可変領域配列およびヒト定常領域配列を有する12A11)、(6)Aβのファゴサイトーシスを媒介する(例えば本明細書中に記載のように、ex vivoファゴサイトーシスアッセイにおいて)、および(7)血液脳関門を通過する(例えば本明細書中に記載のように、例えばPDAPP動物モデルにおいて、短期脳局在化を証明する)。
【0117】
別の態様では、本発明のヒト化抗体は、本明細書中に記載のように、下記のin vivo効果の少なくとも1種を誘発するために十分な様式でまたは親和性をもってAβを結合する構造的特徴を有する:(1)Aβ斑負荷を低下、(2)斑形成を予防、(3)可溶性Aβのレベルを低下、(4)アミロイド障害と関連する神経炎性病状を低下、(5)アミロイド障害と関連する少なくとも1種の生理学的症状を低下または軽減、および/または(6)認知機能を改善する。
【0118】
他の態様では、本発明のヒト化抗体は、本明細書中に記載のような構造的特徴、およびAβの残基3〜7を含んでなるエピトープに特異的に結合する。
【0119】
さらに別の態様では、本発明のヒト化抗体は、Aβ内のN−末端エピトープに結合(例えば、Aβのアミノ酸3〜7内のエピトープに結合)するという本明細書中に記載のような構造的特徴を有し、そして(1)Aβペプチドレベル、(2)Aβ斑負荷、および(3)アミロイド障害と関連する神経炎負荷または神経炎ジストロフィーを低減できる。
【0120】
上記の活性は、本明細書内に記載されるかまたは当該技術分野における各種のアッセイ(例えば結合性アッセイ、ファゴサイトーシスアッセイなど)のいずれか1種を用いて決定できる。活性は、in vivo(例えば標識アッセイ成分および/またはイメージング技術を用いて)またはin vitro(例えば対象から導かれた試料または試験片を用いて)のいずれかで評価できる。活性は、直接または間接のいずれかで評価できる。ある好ましい態様では、神経学的終点(例えばアミロイド負荷、神経炎負荷など)を評価する。かかる終点は、非侵襲的検出方法を用いて生体において(例えばアルツハイマー病の動物モデルにおいてまたは例えば免疫治療を受けているヒト患者において)評価できる。あるいは、かかる終点は死後の対象で評価できる。死後の動物モデルおよび/またはヒト患者におけるかかる終点の評価は、類似する免疫治療の適用を使用するための種々の薬剤(例えばヒト化抗体)の有効性を評価するために有用である。別の好ましい態様では、行動または神経学的パラメーターは、上記の神経病理学的活性または終点の指標として評価できる。
3.可変領域の作製
ヒト化免疫グロブリンのCDRおよびフレームワーク成分を概念的に選択すると、かかる免疫グロブリンを製造するために多様な方法が利用できる。一般に、抗体の重鎖および/または軽鎖のネズミ相補性決定領域(CDR)の1個またはそれ以上を、例えばプライマーに基づくポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて1個またはそれ以上のヒトフレームワーク領域の範囲内に配置してヒト化できる。要約すると、重複しそしてヒトフレームワーク領域を用いてアニールできる配列も含む標的ネズミCDR領域にアニールできるプライマーを設計できる。従って、適当な条件下で、プライマーは、ネズミ抗体鋳型核酸からのネズミCDRを増幅できそしてヒトフレームワーク配列の一部分を増幅した鋳型に付加できる。同様に、プライマーは、それらのプライマーを用いるPCR反応が増幅されたヒトフレームワーク領域をもたらす標的ヒトフレームワーク領域にアニールできるように設計できる。次いでそれぞれの増幅産物が変性、複合、そして他の産物にアニールされると、増幅されたヒトフレームワーク配列を伴う重複したヒトフレームワーク配列を有するネズミCDR領域は、遺伝子的に連結できる。従って、一回またはそれ以上のかかる反応において、1個またはそれ以上のネズミCDR領域は介在性ヒトフレームワーク領域に遺伝子的に連結できる。
【0121】
ある態様では、プライマーは望ましい制限酵素認識配列を含んでなってもよく、得られたPCR増幅配列をさらに大きい遺伝子セグメント、例えば可変軽鎖または重鎖セグメント、重鎖、またはベクターへの遺伝子操作を容易とする。加えて、ネズミCDR領域またはヒトフレームワーク領域のいずれかを増幅するために使用されるプライマーは、異なるコドンがネズミCDRもしくはヒトフレームワーク領域内に導入されるように、望ましい非合致を有してもよい。典型的な非合致は、本明細書中に記載のように、ネズミCDRの構造配向、従ってその結合親和性を保存または改善するヒトフレームワーク領域内に改変を導入する。
【0122】
上記の解決法は、1、2またはすべてで3個のネズミCDRを介在性ヒトフレームワーク領域の範囲内に導入するために使用できることを理解すべきである。プライマーに基づくPCRを使用して異なる配列を増幅および連結する方法は、例えばSambrook,Fritsch and Maniatis,Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989):DNA Cloning Vol.1 and 2,(D.N.Glover Ed.1985);PCR Handbook Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry,Beaucage,Ed.John Wiley & Sons(1999)(Editor);Current Protocols in Molecular Biology,eds Ausubel et al.,John Wiley & Sons(1992)参照。
【0123】
コードの縮重のために、多様な核酸配列が各免疫グロブリンアミノ酸配列をコードする。所望の核酸配列は、最初からの固相DNA合成によりまたは所望のポリペプチドの以前に作製された改変体のPCR変異誘発により産生できる。オリゴヌクレオチドに媒介される変異誘導は、標的ポリペプチドDNAの置換、欠失および挿入改変体の作製に好ましい方法である。Adelman et al.,DNA 2:183(1983)参照。要約すると、標的ポリペプチドDNAは、所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドを一本鎖DNA鋳型にハイブリダイズして改変される。ハイブリダイゼーションの後、オリゴヌクレオチドプラスミドを組込み、そして標的ポリペプチドDNA内の選択された改変をコードする鋳型の第二の相補鎖全体を合成するためにDNAポリメラーゼが使用される。
4.定常領域の選択
上記のようにして作製された抗体の可変セグメント(例えばキメラまたはヒト化抗体の重鎖および軽鎖可変領域)を免疫グロブリン定常領域(Fc領域)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分に典型的には連結するる。ヒト定常領域DNA配列は、各種のヒト細胞、しかし好ましくは不死化B細胞から周知の方法に従って単離できる(Kabat et al.、上記文献およびLiu et al.,国際特許公開(WO)第87/02671号明細書参照)(上記の各文献では、すべての目的のためにその全体を引用することにより編入される)。通常、抗体は軽鎖および重鎖定常領域の双方を含む。重鎖定常領域は、通常CH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4領域を含む。本明細書中に記載する抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含むあらゆる形式の定常領域、およびIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むあらゆるイソタイプを有する抗体を含む。抗体(例えばヒト化抗体)が細胞毒性活性を示すことを望む場合には、定常領域は通常、補体結合性定常ドメインでありそしてそのクラスは典型的にはIgG1である。ヒトイソタイプIgG1が好ましい。軽鎖定常領域はラムダまたはカッパであることができる。ヒト化抗体は、1種以上のクラスまたはイソタイプからの配列を含んでなってもよい。抗体は、2個の軽鎖と2個の重鎖を含む四量体として、分離した重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’F(ab’)2およびFvとして、または重鎖および軽鎖可変ドメインがスペーサーを介して連結している一本鎖抗体として発現されることができる。
5.組換え抗体の発現
キメラおよびヒト化抗体は典型的には組換え発現により産生される。場合により定常領域に連結される軽鎖および重鎖可変領域をコードする核酸は、発現ベクター内に挿入される。軽鎖および重鎖は、同一または異なる発現ベクター内にクローニングできる。免疫グロブリン鎖をコードするDNAセグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を保証する発現ベクター内の制御配列に作動可能に連結される。発現制御配列は、プロモーター(例えば本来的に関連するかまたは異種プロモーター)、シグナル配列、エンハンサー要素、および転写終止配列を含むが、それらに限定はされない。好ましくは、発現制御配列は、真核生物宿主細胞(例えばCOS細胞)を形質転換またはトランスフェクションできるベクター内の真核生物プロモーター系である。ベクターが適切な宿主細胞内に組み込まれると、宿主はヌクレオチド配列の高レベル発現、および交差反応した抗体の収集および精製に適する条件下に保たれる。
【0124】
それらの発現ベクターは、典型的には、エピソームとしてまたは宿主染色体DNAの一体化部分としてのいずれかで宿主生物体内で複製が可能である。共通して、所望のDNA配列を用いて形質転換されたそれら細胞の検出を許容とするために、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含む(例えばItakuraら、米国特許第4,704,362号明細書参照)。
【0125】
大腸菌(E.coli)は、本発明のポリヌクレオチド(例えばDNA配列)をクローニングするために特に有用な一つの原核生物宿主である。使用に適する他の微生物宿主は、バチルス属、例えば枯草(Bacillus subtilis、およびその他のサルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)のような他の腸内菌科、および種々シュードモナス属(Pseudomonas)の種を含む。これらの原核生物宿主内でも発現ベクターを作製でき、それは典型的には宿主細胞と適合できる発現制御配列(例えば複製の起点)を含む。さらに、各種の周知のプロモーターのいずれかの数が存在でき、例えばラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダからのプロモーター系である。プロモーターは、典型的には、場合によりオペレーター配列を用いて、発現を制御し、そして転写および翻訳を開始および完了するためにリボソーム結合部位配列などを有する。
【0126】
酵母などの他の微生物も発現に有用である。サッカロミセス属(Saccharomyces)が好ましい酵母宿主であるが、一方発現制御配列(例えばプロモーター、複製の起点、終止配列などを希望に応じて有する適切なベクターも有用である。典型的なプロモーターは、3−ホスホグリセリン酸キナーゼおよびその他の解糖酵素を含む。誘導可能な酵母プロモーターは、なかでも、アルコール脱水素酵素、イソチトクロームC、およびマルトースおよびガラクトース利用ができる酵素からのプロモーターを含む。
【0127】
微生物の他に、哺乳動物組織細胞培養物も本発明のポリペプチドを発現および産生するために使用してもよい(例えば免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド)。Winnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。異種タンパク質(例えば本来の免疫グロブリン)を分泌できる多数の適合する宿主細胞系が当該技術分野で開発されているので、真核生物細胞が実際には好ましく、そしてCHO細胞系、種々のCos細胞系、HeLa細胞、好ましくは骨髄種細胞系、または形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。好ましくは、細胞は非ヒト性である。それらの細胞の発現ベクターは、発現制御配列、例えば複製の起点、プロモーター、およびエンハンサー(Queen et al.,Immunol.Rev.89:49(1986)参照)、および必要なプロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列を含むことができる。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルスなどから誘導されるプロモーターである。Co.et al.,J.Immunol.148:1149(1992)参照。
【0128】
あるいは、抗体をコードする配列は、トランスジェニック動物のゲノム内への導入および引き続いてのトランスジェニック動物の乳内での発現のための導入遺伝子内に組み込むことができる(例えば、Deboerら、米国特許第5,741,957号明細書、Rosen米国特許第5,304,389号明細書、およびMaedeら米国特許第5,849,992号明細書参照)。適切な導入遺伝子には、カゼインまたはベータラクトグロブリンのような、乳腺特異的遺伝子からのプロモーターおよびエンハンサーと作動可能に連結している軽鎖および/または重鎖のコード配列を含む。
【0129】
あるいは、本発明の抗体(例えばヒト化抗体)は、トランスジェニック植物(タバコ、トウモロコシ、ダイズおよびアルファルファ)内で産生できる。改善された「plantibody」ベクター(Hendy et al(1999)J.Immunol.Methods 231:137−146)および形質転換できる作物種内での増加と組み合わせた精製戦略は、ヒトおよび動物の治療だけでなく、工業的用途(例えば触媒抗体)にも同様に組換え免疫グロブリンの実際的かつ効率的な産生手段をかかる方法に与える。さらに、植物産生抗体は、安全で効率的なことが立証されそして動物由来の物質の使用従って伝染性海綿様脳症(TSE)薬剤との汚染の危険が避けられる。さらに、植物と哺乳動物細胞産生抗体とのグリコシル化パターンの相違は、抗原結合性または特異性にほとんどもしくは全く影響しない。加えて、植物由来の分泌二量体IgA抗体の局所経口適用を受けた患者内で毒性またはHAMAの徴候は観察されなかった(Larrick et al.(1998)Res.Immunol.149:603−608参照)。
【0130】
トランスジェニック植物内で組換え抗体を発現するために各種の方法を使用してもよい。例えば、抗体重鎖おび軽鎖は、発現ベクター(例えばAgrobacterium tumefaciensベクター)内に独立してクローニングでき、次いで、組換え細菌を用いてin vitroで植物組織の形質転換するかまたは植物組織内に例えばバリスチックス(ballistics)を用いて物理的に導入されるベクターを用いて被覆された、例えば粒子を用いて形質転換できる。引き続いて、個別の鎖を発現する全植物を再構築し、次いでそれらの有性交配により最終的に完全に構築され機能性の抗体の産生をもたらす。同様のプロトコールは、タバコ植物中で機能性抗体を発現するために使用された(Hiatt et al.,(1989)Nature 342:76−87参照)。各種の態様で、シグナル配列は適切な植物環境(例えばアポプラズム(apoplasm)または塊茎、果物または種子を含むその他の特定の植物組織の水性環境)に鎖を導くことにより非集積抗体鎖の発現、結合および折り畳みを促進するために使用できる(Fiedler et al.(1995)Bio/Technology 13:1090−1093参照)。植物バイオリアクターは、抗体収率を上げそして経費を著しく低下させるためにも使用できる。
【0131】
関係するポリヌクレオチド配列(例えば重鎖および軽鎖のコード配列および発現制御配列)を含むベクターは、細胞宿主の型により変化する周知の方法により宿主細胞内に移行できる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは原核生物細胞に通常使用され、一方リン酸カルシウム処理、電気窄孔、リポフェクション、バイオリスティクスまたはウイルスに基づくトランスフェクションは、その他の細胞宿主に使用してもよい(一般的には、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press,2nd ed.1989)参照)(すべての目的のために引用することによりその全体を編入する)。哺乳動物細胞を形質転換するために使用されるその他の方法は、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、電気窄孔、および微量注入の使用が含まれる(一般的にはSambrook、上記文献、を参照)。トランスフェクション動物の作製のために、導入遺伝子を受精卵内に微量注入できるか、または胚幹細胞のゲノム内に組み込むことができ、そしてかかる細胞の核を除核卵細胞内に移行できる。
【0132】
重鎖および形質転換を別々の発現ベクター上にクローニングする場合、本来の免疫グロブリンの発現および構築を得るためにベクターを同時トランスフェクションする。発現されると、本発明の全抗体、それらの二量体、個別の軽鎖および重鎖、またはその他の免疫グロブリン形態は、硫酸アンモニウム沈降、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動などを含む当該技術分野の標準手順に従って精製できる(一般的には、Scopes,Protein Purification(Springer−Verlag,N.Y.,(1982)参照)。製薬学的使用に対して、少なくとも約90〜95%の均質性の本質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、そして98〜99%またはそれ以上の均質性が最も好ましい。
6.抗体フラグメント
さらに本発明の範囲内に意図しているのは抗体フラグメントである。一つの態様において、非ヒト、および/またはキメラ抗体のフラグメントが提供される。別の態様では、ヒト化抗体のフラグメントが提供される。典型的には、それらのフラグメントは少なくとも107、そしてさらに典型的には108〜109M−1の親和性で抗原への特異的結合性を示す。ヒト化抗体フラグメントは、分離した重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、およびFvを含む。フラグメントは、組換えDNA技術により、または本来の免疫グロブリンの酵素的または化学的分離により製造される。
7.エピトープマッピング
エピトープマッピングは、Aβのどの抗原性決定体またはエピトープが抗体により認識されるかを決定するために行うことができる。一つの態様では、エピトープマッピングは、置換(Replacement)NET(rNET)分析に従って行われる。rNETエピトープマップアッセイは、抗体の全般的結合活性へのエピトープ内の個別残基の貢献に関する情報を提供する。rNET分析は、合成した系統的単一置換ペプチド類似体を用いる。試験される抗体の結合性は、本来のペプチド(本来的抗原)に対しておよび19の代替「単一置換」ペプチドに対して決定しが、それぞれのペプチドは第一の位置で、その位置に対して19の非本来的アミノ酸の一個で置換されている。その位置における各種の非本来的残基での置換の効果を反映するプロフィールが作製される。抗原性ペプチドに沿った連続する位置でも同様にプロフィールが作製される。その際、一緒にしたプロフィール、すなわちエピトープマップ、(それぞれの位置において19種すべての非本来的残基での置換を反映する)は、第二の抗体に対して同様に作製されたマップと比較できる。本質的に類似または同一性するマップは、比較される抗体が同一または類似するエピトープ特異性を有することを示す。
8.動物モデルにおける治療効力についての抗体の試験
7〜9月齢のPDAPPマウスの群それぞれに、ポリクローナル抗Aβまたは特異性抗Aβモノクローナル抗体をPBS中の0.5mgで注入する。全抗体調製物を低エンドトキシンレベルを有するまで精製する。モノクローナル抗体はフラグメントに対して、マウス内にAβのフラグメントまたはより長い形を注入し、ハイブリドーマを作製し、そしてAβの他の非重複フラグメントに結合しないでAβの所望のフラグメントに特異的に結合する抗体についてハイブリドーマをスクリーニングすることにより調製できる。
【0133】
必要に応じて4ヵ月間にわたってマウスに腹腔内に注入して、ELISAにより測定される循環抗体濃度がAβ42またはその他の免疫原に対してELISAにより定義される1/1000より高い力価を維持する。力価を監視しそして注入後6カ月の終わりにマウスを安楽死させる。組織化学的に、Aβレベルおよび毒性試験を死後に実施する。グループ当たりにマウス10匹を使用した。
9.除去活性についての抗体のスクリーニング
本発明は、アミロイド沈着もしくはその他の抗原を除去する活性が望まれる抗原、または除去活性が望まれる関連する生物学的物体(entity)につおてスクリーニングする方法も提供する。アミロイド沈着に対する活性をスクリーニングするために、アルツハイマー病を有する患者、または特徴的なアルツハイマー病の病理を有する動物モデルの脳からの組織試料を、Fc受容体、例えば小膠細胞を含む食細胞、および試験する抗体と、媒体内、in vitroで接触させる。食細胞は、一次培養物、または細胞系であることができ、そしてネズミ(例えばBV−2またはC8−B4細胞)またはヒト由来(例えばTHP−1細胞)であることができる。いくつかの方法では、顕微鏡監視を容易にするために顕微鏡スライド上で成分を組み合わせる。いくつかの方法では、微量定量皿のウエル内で複数の反応を平行して行わせる。かかる形式において、別々の小型顕微鏡スライドを別々のウエル内に取り付けることができ、または非顕微鏡検出形式、例えばAβのELISA検出を使用できる。in vitro反応混合物内のアミロイド沈着物の量について、反応が進行する前の基準値、および反応の間の1個またはそれ以上の試験値の一連の測定を行う。抗原は、例えばAβまたはその他のアミロイド斑の成分に対する蛍光標識抗体を用いて染色して検出できる。染色に使用する抗体は、除去活性について試験されている抗体と同一でも同一でなくてもよい。反応の間のアミロイド沈着の基準からの低下は、試験される抗体が除去活性を有することを示す。かかる抗体は、アルツハイマー病およびその他のアミロイド疾患を予防または処置するために有用である可能性がある。アルツハイマー病またはその他のアミロイド疾患を予防または処置するために特に有用な抗体は、集中および拡散したアミロイド斑の双方を除去できるものを含み、例えば本発明の12A11抗体、またはそのキメラもしくはヒト化バージョンである。
【0134】
同様の方法も、他の型の生物学的物体の除去における活性について抗体をスクリーニングするために使用できる。アッセイは、実際的にあらゆる種類の生物学的物体に対する除去活性を検出するために使用できる。典型的には、生物学的物体はヒトまたは動物の疾患になんらかの役割を有する。生物学的物体は組織試料または単離された形で提供され得る。組織試料として提供される場合には、それは、好ましくは、組織試料の成分に直接近接できるようにそして固定に付随する組織のコンホメーションの攪乱を回避するために固定されない。このアッセイで試験できる組織試料の例には、癌組織、前癌組織、いぼまたはほくろのような良性増殖を含む組織、病原性微生物に感染した組織、炎症性細胞に浸潤された組織、細胞間の病理学的間質を有する組織(例えば繊維性心膜炎)、異常抗原を有する組織、および瘢痕組織が含まれる。使用できる単離された生物学的物体には、Aβ、ウイルス抗原またはウイルス、プロテオグリカン、他の病原性微生物の抗原、腫瘍抗原および細胞接着分子が含まれる。かかる抗原は、他の手段のなかでも、天然供給源、組換え発現または化学合成から得ることができる。組織試料または単離された生物学的物体は、Fc受容体を有する食細胞、例えば単球もしくは小膠細胞、および試験される抗体と媒体内で接触される。抗体は、試験される生物学的物体または物体と関連する抗原に指定できる。後者の状況で、目的は、生物学的物体が抗原と食作用を行うかどうかを試験することである。通常、しかし必ずしも常ではないが、抗体および生物学的物体(時には関連する抗原と一緒に)を食細胞添加の前に互いに接触させる。次いで、存在する場合には、媒体内に残存する生物学的物体および/または関連抗原の濃度を監視する。媒体内の抗原または関連する生物学的物体の量または濃度の低下は、抗原が、食細胞と一緒に抗原および/または関連生物学的物体に対して除去反応を有することを示す。
10.改変されたエフェクター機能を有するキメラ/ヒト化抗体
定常領域(Fc領域)を含んでなる本発明の上記抗体に対して、分子のエフェクター機能を改変することが望ましいこともある。一般的に、抗体のエフェクター機能は各種のエフェクター分子、例えば補体タンパク質またはFc受容体への結合を媒介できる分子の定常またはFc領域内に存在する。Fc領域への補体の結合は、例えば細胞病原のオプソニン化および溶解ならびに炎症反応の活性化に重要である。例えばエフェクター細胞の表面上のFc受容体への抗体の結合は、多数の重要で多岐にわたる生物学的反応、例えば抗体被覆された病原体または粒子の抱き込みおよび分解、免疫複合体の除去、抗体被覆された標的細胞のキラー細胞による溶解(すなわち、抗体依存性で細胞媒介性の細胞毒性、すなわちADCC)、炎症媒介体の開放、抗体の胎盤内移動、および免疫グロブリン産生の制御を含み開始できる。
【0135】
従って、特定の治療もしくは診断用途に応じて、上記の免疫機能、または選択された免疫機能のみが望ましいであろう。抗体のFc領域を改変して、診断および治療に有利な効果を有する免疫系の各種反応を増強または抑圧することを含み、分子のエフェクター機能の各種の局面が達成される。
【0136】
Fc受容体のある種の型とのみ反応する本発明の抗体が製造でき、例えば、本発明の抗体は、抗体のFc領域内に位置するFc受容体結合部位の欠失または改変により、ある種のFc受容体にのみ結合するか、またはFc受容体を欠失するように変性できる。本発明の抗体のFc領域のその他の望ましい改変を以下に列挙する。典型的には、Kabat番号付けシステムは、エフェクター機能において所望の変化を達成するために、(例えばIgG抗体の)Fc領域内のどのアミノ酸残基が(例えばアミノ酸置換により)改変されたかを示すために用いられる。この番号付けシステムは、例えばマウス抗体内に観察される所望のエフェクター機能が、本発明のヒト、ヒト化、またはキメラ抗体中に系統的に操作できるように、種間の抗体を比較するめにも用いられる。
【0137】
例えば、抗体(例えばIgG抗体)がFc受容体(例えばヒト単球上のFc受容体、FcγRI)への緊密、中間的、または弱い結合を示すことを見いだされるものにグループ分類できることが観察された。それらの異なる親和性グループ内のアミノ酸配列の比較により、ヒンジ連結領域(Leu234−Ser239)内の単球結合部位が同定された。さらに、ヒトFcγRI受容体は、モノマーとしてヒトIgG1およびマウスIgG2aを結合するが、しかしマウスIgG2bの結合性は100倍も弱い。ヒンジ連結領域内のそれらタンパク質の配列の比較は、強い結合体内の配列234〜238、すなわちLeu−Leu−Gly−Gly−Pro(配列番号32)が、マウスガンマ2b、即ち弱い結合体内ではLeu−Glu−Gly−Gly−Pro(配列番号33)となることが示された。従って、低いFcγI受容体結合性が望まれる場合には、ヒト抗体ヒンジ配列における相当する変化をさせることができる。他の改変は同一または類似した結果を達成するために行うことができると理解される。例えば、FcγRI結合の親和性は、その側鎖に不適当な機能基を有する残基で指定の残基を置換して、または荷電官能基(例えばGluまたはAsp)もしくは例えば芳香族非極性基(例えばPhe、Tyr、またはTrp)を導入することにより改変できる。
【0138】
それらの変化は、異なる免疫グロブリン間の配列相同性を考えると、ネズミ、ヒトおよびラット系にも同等に適用できる。ヒトFcγRI受容体に結合するヒトIgG3に対して、Leu235からGluへの変化は受容体に対する変異体の相互作用を破壊することが示された。この受容体に対する結合部位は、適当な変異を行うことにより入れたり外したりできる。
【0139】
ヒンジ連結領域に隣接または近い部位上の変異(例えばalaによる残基234、236または237を置換)は、FcγRI受容体への親和性に少なくとも残基234、235、236または237内の改変が少なくとも影響することが示される。従って、本発明の抗体は、非改変抗体と比較してFcγRIへの改変された結合性親和性を有する改変されたFc領域を有することもできる。かかる抗体は、好都合にはアミノ酸残基234、235、236、または237での変異を有する。
【0140】
Fc受容体に対する親和性は、異なる様式で免疫反応を制御して同様の方法により改変できる。
【0141】
さらなる例として、補体のC1成分の結合に続くIgG抗体の溶解性を改変できる。
【0142】
補体系の第一の成分であるC1は、緊密に一緒に結合するC1q、C1rおよびC1sとして知られる3種のタンパク質を含んでなる。C1qは、抗体への3種のタンパク質複合体の結合に関与することが示された。
【0143】
従って、抗体のC1q結合活性は、重鎖のアミノ酸残基318、320、および322の少なくとも1個が異なる側鎖を有する残基に変化されている改変されたCH2ドメインを有する抗体を提供して改変できる。重鎖内の残基の番号付けは、EUインデックスのものである(Kabat et al.上記文献参照)。抗体に対する特異性C1q結合を改変、例えば低下または消滅させるためのその他の適当な改変には、残基318(Glu)、320(Lys)および322(Lys)のいずれか1個のAlaへの変化が含まれる。
【0144】
さらに、それらの残基で変異を行って、残基318が水素結合性側鎖を有しそして残基320および322の双方が正に荷電した側鎖を有する限り、C1q結合は保存されることが示された。
【0145】
C1q結合活性は、3個の特定の残基のいずれか1個の側鎖上で不適当な官能性を有する残基で置換して消滅できる。C1q結合を消滅させるためにイオン性残基をAlaとのみ置換することは必ずしも必要ではない。C1q結合を消滅させるために3個の残基のいずれか1個の代わりに、他のアルキル置換非イオン性残基、例えばGly、Ile、Leu、もしくはVal、または芳香族非極性残基、例えばPhe、Tyr、TrpおよびProを使用することも可能である。加えて、C1q結合活性を消滅させるために、318を除く残基320および322の代わりに、極性非イオン性残基、例えばSer、Thr、Cys、およびMetを使用することも可能である。
【0146】
イオン性または非イオン性極性残基上の側鎖が、Glu残基により形成される結合に同様の様式で水素結合を形成することが可能なことも指摘されている。従って、極性残基による318(Glu)残基の置換は、C1q結合活性を変性はするが消滅はできないであろう。
【0147】
残基297(Asn)のAlaによる置換は、溶解活性の消失をもたらすがしかしC1qへの親和性は僅かに低下(約1/3に低下)するだけであることも知られている。この改変は、補体活性化のために必要なグリコシル化部位および炭水化物の存在を破壊する。この部位におけるいかなる他の置換もグリコシル化部位を破壊するであろう。
【0148】
本発明は、抗体が変性されたヒンジ領域を有する、改変されたエフェクター機能を有する抗体も提供する。変性されたヒンジ領域は、CH1ドメインからのものとは異なる抗体クラスまたはサブクラスの抗体から誘導された完全なヒンジ領域を含んでなってもよい。例えば、クラスIgG抗体の定常領域(CH1)は、クラスIgG4抗体のヒンジ領域に付着できる。あるいは、新しいヒンジ領域は、本来のヒンジまたは反復内のそれぞれの単位が本来のヒンジ領域から誘導されている反復単位の一部を含んでなってもよい。一つの例では、天然のヒンジ領域は、1個またはそれ以上のシステイン残基を中性残基、例えばアラニンへの転換により、または適宜に位置された残基をシステイン残基に転換して改変される。かかる改変は、本明細書中に記載のような当該技術分野で認知されたタンパク質化学、好ましくは、遺伝子組換え技術を用いて遂行される。
【0149】
本発明の一つの態様では、抗体のヒンジ領域内のシステイン残基の数が、例えば1個のシステイン残基にまで減少される。この変性は、抗体、例えば二重特異性抗体分子およびFc部分がエフェクターまたはレポーター分子により置換された抗体分子の構築を容易にする利点があり、それというのもこれは単一ジスルフィド結合を形成するためにのみ必要だからである。この変性は、他のヒンジ領域へまたはエフェクターもしくはレポーター分子のいずれかへ、直接または間接的に、例えば化学的手段によるヒンジ領域への付着のための特異性標的も提供する。
【0150】
反対に、抗体のヒンジ領域内のシステイン残基の数も、正常に存在するシステイン残基の数よりも例えば少なくとも1個だけ増加させる。システイン残基の数の増加は、隣接するヒンジの間の相互作用を安定化するために使用できる。この変性の他の利益は、例えば放射能標識された改変抗体にエフェクターまたはレポーター分子を付着させるためのシステインチオール基の使用を容易にすることである。
【0151】
従って、本発明は、改変されたエフェクター機能を達成するために、抗体クラス、特にはIgGクラス間のヒンジ領域の交換、および/またはヒンジ領域内のシステイン残基の数の増加または減少を提供する(例えば、米国特許第5,677,425号参照、これは本明細書中に明らかに編入される)。改変された抗体エフェクター機能の決定は、本明細書中に記載または当該技術分野で認知されたその他の技術によるアッセイを用いて行われる。
【0152】
重要なのは、得られた抗体が、出発抗体と比較して生物学的活性におけるいずれかの変化を評価するための1種またはそれ以上のアッセイを受けることができることである。例えば、補体またはFc受容体を結合するめに改変されたFc領域を有する抗体の能力が、本発明中で開示するアッセイならびに当該技術分野で認知されているいずれかのアッセイを用いて評価できる。
【0153】
本発明の抗体の製造は、本明細書中に記載の技術または当該技術分野の熟練者に既知の技術を含むいずれか適切な技術により遂行される。例えば、適切なタンパク質配列、例えば関係する定常ドメイン、例えば抗体のFc領域、すなわちCH2、および/またはCH3ドメインの、またはその全ての形成性部分は、さらに適切な改変された残基を含めて合成でき、次いで抗体分子内の適切な位置に化学的に結合される。
【0154】
好ましくは、遺伝子組換え技術が、改変された抗体を産生するために使用される。好ましい技術には、例えば、IgG重鎖、例えばFcまたは定常領域(例えばCH2、および/またはCH3)の少なくとも一部分をコードするDNA配列が少なくとも1個またはそれ以上の残基で改変されるようにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用に適するプライマーを調製することを含む。次いで、セグメントを抗体の残存部分、例えば抗体の可変領域および細胞内の発現のための調節要素に操作できるように連結できる。
【0155】
本発明は、細胞系を形質転換するために使用されるベクター、形質転換ベクターを産生するために使用されるベクター、形質転換性ベクターを用いて形質転換される細胞、調製用ベクターを用いて形質転換される細胞系、およびそれらの作製方法も含む。
【0156】
好ましくは、改変されたFc領域(すなわち、改変されたエフェクター機能のもの)を有する抗体を産生するために形質転換された細胞系は、不死化哺乳動物細胞系(例えばCHO細胞)である。
【0157】
改変されたFc領域を有する抗体の産生に使用される細胞系は好ましくは哺乳動物細胞系であるが、いかなる他の適切な細胞系、例えば細菌細胞系または酵母細胞系を代わりに使用してもよい。
11.親和性変異
本発明の抗体(例えばヒト化抗体)は、いずれかの数の親和性変異技術を用いて改善された機能について変性できる。典型的には、与えられた標的分子に結合親和性を有する候補分子を同定し、次いで変異誘発技術を用いて改善または「成熟」させて、標的分子とさらに望ましい結合相互作用を有する1種またはそれ以上の関連候補をもたらす。典型的には、変性されるのは抗体の親和性(あるいは結合活性、すなわち標的抗原への抗体の複合的親和性)ではあるが、しかし分子の他の性質、例えば安定性、エフェクター機能、除去性、分泌性もしくは輸送機能も、親和性変異技術を用いて、親和性とは別個にまたは平行して変性してもよい。
【0158】
例示的な態様では、抗体(例えば本発明のヒト化抗体)の親和性が増加される。例えば、少なくとも107M−1、108M−1または109M−1の結合親和性を有する抗体は、それらの親和性が少なくとも109M−1、1010M−1または1011M−1であるように成熟できる。
【0159】
結合分子を成熟させる親和性の一つの解決法は、所望の変化または複数の変化をコードする結合分子、またはその部分をコードするアミノ酸を合成することである。オリゴヌクレオチド合成は当該技術分野では周知でありそしてあらゆる所望のコドン変化を有する1種またはそれ以上の核酸でも産生するように容易に自動化される。制限部位、サイレント変異、および好みのコドン使用をこの様式で導入してもよい。あるいは、一個またはそれ以上のコドンは、特定のアミノ酸のサブセット、例えばジスルフィド連結を形成できるシステインを排除するサブセットを表すように改変でき、そしてカノニカルされた領域、例えばCDR領域またはその部分に限定される。あるいは、領域は、部分的または完全に無作為なアミノ酸の組により表されてもよい(追加の詳細は、例えば米国特許第5,830,650号、米国特許第5,798,208号、米国特許第5,824,514号、米国特許第5,817,483号、米国特許第5,814,476号、米国特許第5,723,323号、米国特許第4,528,266号、米国特許第4,359,53号、米国特許第5,840,479号、および米国特許第5,869,644号の各明細書参照)。
【0160】
上記の解決法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて部分的にまたは完全に実行でき、その方法は当該技術分野では周知でありそして、例えば所望の改変を有するオリゴヌクレオチド、例えばプライマーもしくは一本鎖核酸を組込み、そしてその他の操作、例えば適切な発現またはクローニングベクター内への遺伝子操作のために適する大きい量の利点を有することが理解される。かかるPCRは、ヌクレオチドの組込み違いを可能とする条件下で実行してこれにより増幅れる核酸内に追加的な変化を導入できる。PCRを実行するために実験的な詳細および関連キット、試薬およびプライマー設計は、例えば米国特許第4,683,202号、米国特許第4,683,195号、米国特許第6,040,166号、および米国特許第6,096,551号の各明細書に見いだされる。プライマーに基づくPCRを用いる抗体フレームワーク領域内へのCDR領域の導入の方法は、例えば米国特許第5,858,725号明細書内に記載されている。抗体分子のさらに大きいセット、例えば抗体分子のさらに大きく多種のセットを用いて配列相同性を見いだせるプライマーの最小のセットを用いる抗体ライブラリー(および方法に従って作製されたライブラリー)のプライマーに基づくPCR増幅の方法は、例えば米国特許第5,780,225号、米国特許第6,303,313号、および米国特許第6,479,243号の各明細書に見いだされる。部位指定変異誘発を実行するためのPCRに基づかない方法も使用でき、そして一本鎖ウラシル含有鋳型および特定の大腸菌系統を通過する際にハイブリダイズおよび変異を導入できるプライマーを使用する「Kunkel」変異誘発法を含む(例えば米国特許第4,873,192号明細書参照)。
【0161】
抗体配列またはその一部分を変化させる別の方法は、非最適(すなわちエラー頻発型)条件下での核酸合成または核酸のPCR、かかる核酸の変性および復元(アニーリング)、エキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼ消化に続く連結もしくはPCRによる再構築(核酸シャッフリング)、または例えば米国特許第6,440,668号、米国特許第6,238,884号、米国特許第6,171,820号、米国特許第5,965,408号、米国特許第6,361,974号、米国特許第6,358,709号、米国特許第6,352,842号、米国特許第4,888,286号、米国特許第6,337,186号、米国特許第6,165,793号、米国特許第6,132,970号、米国特許第6,117,679号、米国特許第5,830,721号、および米国特許第5,605,793号の各明細書に記載の従来技術の一種またはそれ以上の組み合わせを含む。
【0162】
ある態様では、例えば、1個またはそれ以上のCDR領域(またはその一部分)、1個またはそれ以上のフレームワーク領域、および/または1個またはそれ以上の定常領域(例えばエフェクター機能を有する定常領域)中の候補抗体分子の一定の部分内に多様性を有する候補抗体分子のファミリーを含んでなる抗体ライブラリー(もしくは親和性成熟ライブラリー)が発現されそして当該技術分野で認知されている技術を用いて所望の性質についてスクリーニングできる(例えば米国特許第6,291,161号、米国特許第6,291,160号、米国特許第6,291,159号、および米国特許第6,291,158号の各明細書参照)。例えば、CDR3配列の多様性を有する抗体可変領域の発現ライブラリー、および変異誘発によりCDR3配列の多様性を導入し、そしてライブラリーを回収することによるCDR3配列の多様性を有するヒト抗体ライブラリーを作製する方法が構築できる(例えば米国特許第6,248,516号明細書参照)。
【0163】
最後に、親和性成熟抗体を発現するために、候補抗体分子をコードする核酸が、適切な発現形式、例えば全長抗体重鎖および軽鎖(例えばIgG)、抗体Fabフラグメント(例えばFab、F(ab’)2 )、または一本鎖抗体(scFv)内で、標準ベクターおよび細胞トランスフェクション/形質転換技術を用いて細胞内に導入できる(例えば、米国特許第6,331,415号、米国特許第6,103,889号、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,258,498号、および米国特許第4,946,778号の各明細書参照)。
B.免疫学的および治療的薬剤をコードする核酸
アミロイド沈着に対する免疫反応は、受動免疫化に使用される抗体およびそれらの成分鎖をコードする核酸の投与によっても導入できる。かかる核酸は、DNAまたはRNAであってもよい。免疫原をコードする核酸セグメントは、典型的には、意図する患者の標的細胞内のDNAセグメントの発現を許容する調節要素、例えばプロモーターまたはエンハンサーに連結される。免疫反応の誘導のために望ましい血液細胞内での発現のために、例示的なプロモーターおよびエンハンサー要素は、軽鎖もしくは重鎖免疫グロブリン遺伝子および/またはCMV主要中間体初期プロモーターおよびエンハンサーからのものを含む(Stinski、米国特許第5,168,062号、および米国特許第5,385,839号の各明細書)。連結された調節要素よびコード配列は、しばしばベクター内にクローニングされる。二本鎖抗体の投与のために、二本の鎖が同一または別のベクター内にクローニングできる。
【0164】
レトロウイルス系(例えばLawrie and Tumin,Cur.Opin.Genet.Develop.3:102−109(1993)参照);アデノウイルスベクター(例えばBett et al.,J.Virol.67:5911(1993)参照);アデノ随伴ウイルスベクター(例えばZhou et al.,J.Exp.Med.179:1867(1994)参照);牛痘ウイルスおよび鳥痘ウイルスを含むポックス科からのウイルスベクター、アルファウイルス属からのウイルスベクター、例えばシンドビスおよびセムリキ森林ウイルスから誘導されたもの(例えばDubensky et al.,J.Virol.70:508(1996)参照);ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Johnston et al.、米国特許第5,643,576号明細書参照)およびラブドウイルス、例えば水疱性口内炎ウイルス(Rose、米国特許第6,168,943号明細書参照)および乳頭腫ウイルス(Ohe et al.,Human Gene Therapy 6:325(1995);Woo et al.,国際特許出願(WO)第94/12629号明細書およびXiao & Brandsma,Nucleic Acids.Res.24:2630−2622(1966)))のような多数のウイルスベクター系が利用できる。
【0165】
免疫原をコードするDNA、またはそれを含むベクターは、リポソーム内にパッケージングできる。適切な脂質および関連する類似体は、Eppstein et al.、米国特許第5,208,036号明細書、Felinger et al.、米国特許第5,264,618号明細書、Rose、米国特許第5,279,833号明細書、およびEpand et al.、米国特許第5,283,185号明細書に記載されている。免疫原をコードするベクターおよびDNAは、粒子状キャリヤに吸着またはそれと会合されることもでき、その例には、ポリメチルメタクリレートポリマーおよびポリラクチドおよびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が含まれ、例えばMcGee et al.,J.Micro Encap.(1996)参照。
【0166】
遺伝子治療ベクターまたは裸のポリペプチド(例えばDNA)は、個別の患者への投与、典型的には全身投与(例えば静脈内、腹腔内、鼻、胃腸、皮内、筋肉内、皮下、または頭蓋内注入)または局所適用によりin vivoで送達できる(例えばAnderson et al.、米国特許第5,399,346号明細書参照)。「裸のポリヌクレオチド」の用語は、トランスフェクションを促進にする薬剤と一緒に送達されないポリヌクレオチドを指す。裸のポリヌクレオチドは、時にはプラスミドベクター内にクローニングされる。かかるベクターは、さらに促進剤、例えばブピバカインを含むことができる(Weiner et al.、米国特許第5,593,972号明細書参照)。DNAは、ジーンガン(gene gun)を用いて投与もできる。Xiao & Brandsmaの上記文献を参照のこと。免疫原をコードするDNAは、微細な金属ビーズの表面上に沈着される。マイクロプロジェクタイル(microprojectile)を衝撃波または膨脹するヘリウムガスで加速し、そして数層の細胞層の深さまで組織に透過させる。例えばAgricetus,Inc.Middletown WIにより製造されるAccelTM 遺伝子伝達装置が適する。あるいは、裸のDNAは、化学的または機械的刺激を用いて皮膚上にDNAを単に打点して血流内まで皮膚を通過できる(Howell et al.国際特許公開(WO)第95/05853号明細書参照)。
【0167】
さらなる変化において、免疫原をコードするベクターは、ex vivoの細胞、例えば個々の患者から外植された細胞(例えばリンパ球、骨髄吸引物、組織生検物)または汎用ドナー造血幹細胞に送達し、次いで、通常ベクターを組み込まれた細胞の選択の後に患者内への細胞の再移植できる。
II.予防および治療方法
本発明は、なかでも、例えば、アミロイド疾患の予防もしくは治療のために、患者内の有益な治療応答(例えばAβのファゴサイトーシスの誘導、斑負荷の低減、斑形成の阻害、神経炎性ジストロフィーの低減、認知機能の改善、および/または認知低下を復帰、処置または予防)を患者内で生成する条件下で、患者にAβ内の特定のエピトープに対する治療的免疫学的試薬(例えばヒト化免疫グロブリン)の投与によるアルツハイマー病およびその他のアミロイド疾患の処置を目的とする。本発明は、アミロイド疾患の処置または予防のための医薬の製造における開示された免疫学的試薬(例えばヒト化免疫グロブリン)の使用も目的とする。
【0168】
一つの局面では、本発明は、患者の脳内のAβのアミロイド沈着と関連する疾患を予防または処置する方法を提供する。かかる疾患は、アルツハイマー病、ダウン症候群および認知障害を含む。後者は、アミロイド疾患のその他の特性を伴いまたは伴わずに発生する可能性がある。本発明のいくつかの方法は、アミロイド沈着の一つの成分に特異的に結合する抗体の有効投与量を患者に投与することを含んでなる。かかる方法は、ヒト患者内のアルツハイマー病を予防または処置するために特に有用である。例示的な方法は、Aβに結合する抗体の有効投与量を投与することを含んでなる。好ましい方法は、Aβの残基1〜10内のエピトープに特異的に結合する抗体、例えばAβの残基1〜3内のエピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1〜4内のエピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1〜5内のエピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1〜6内のエピトープに特異的に結合する抗体、Aβの残基1〜7内のエピトープに特異的に結合する抗体、またはAβの残基3〜7内のエピトープに特異的に結合する抗体の有効投与量を投与することを含んでなる。さらに別の局面では、本発明はAβの遊離N−末端残基を含んでなるエピトープに結合する抗体を投与することを特徴とする。さらに別の局面では、本発明は、Aβの残基1および/または残基7がアスパラギン酸であるAβの1〜10の残基内のエピトープに結合する抗体を投与することを特徴とする。さらに別の局面では、本発明は、全長アミロイド前駆体タンパク質(APP)に結合することなく、Aβペプチドに特異的に結合する抗体を投与することを特徴とする。さらに別の局面では、抗体のイソタイプがヒトIgG1である。
【0169】
さらに別の局面で、本発明は、患者内のアミロイド沈着物に結合しそしてアミロイド沈着物に対する反応の除去を誘導する抗体を投与することを特徴とする。例えば、かかる除去反応は、Fc受容体媒介ファゴサイトーシスにより行われることができる。
【0170】
本発明の治療剤は、典型的には望ましくない混在物から本質的に純粋である。これは、薬剤が典型的には少なくとも約50%w/w(重量/重量)純粋であり、ならびに妨害性タンパク質および混在物を本質的に含まないことを意味する。時には、該薬剤は少なくとも約80%w/w、そしてさらに好ましくは少なくとも90または約95%w/w純粋である。しかし、慣用のタンパク質精製技術を用いると、少なくとも99%w/w純粋な均質なペプチドを得ることができる。
【0171】
本方法は、無症候性患者および現在疾患の症状を呈している患者の双方に使用できる。かかる方法に使用される抗体は、ヒト、ヒト化、キメラもしくは非ヒト抗体、またはそれらのフラグメント(例えば抗原結合フラグメント)であることができ、そして本明細書中に記載のようにモノクローナルまたはポリクローナルであることができる。さらに別の局面では、本発明はAβペプチドを用いて免疫化されたヒトから調製された抗体を投与することを特徴とし、そのヒトは抗体を用いて処置される患者であることができる。
【0172】
別の局面では、本発明は製薬学的組成物として製薬学的キャリヤを伴う抗体を投与することを特徴とする。あるいは、該抗体は少なくとも1個の抗体鎖をコードするポリヌクレオチドを投与することにより患者に投与できる。該ポリヌクレオチドは、患者内で発現されて抗原鎖を産生する。場合により、該ポリヌクレオチドは、抗体の重鎖および軽鎖をコードする。ポリヌクレオチドは、患者内で発現されて重鎖および軽鎖を産生する。例示的な態様において、患者は患者の血液内に投与された抗体のレベルを監視される。
【0173】
従って、本発明は、神経病理学そして、一部の患者ではアルツハイマー病に伴う認知障害を予防または軽減するための治療方式への長年の要求を満足する。
A.処置を受け入れやすい患者
処置を受け入れやすい患者は、疾患の危険はあるがしかし症状を呈していない個体、ならびに現在症状を呈している患者を含む。アルツハイマー病の場合に、実際的にすべての人が、十分長く生存している場合にはアルツハイマー病に罹患する危険にさらされている。従って、本方法は、対象患者の危険のいかなる評価も必要なく、一般的な集団に予防的に適用できる。本方法は、アルツハイマー病の既知の遺伝的危険が知られている個体にとって特に有用である。かかる個体は、本疾患を経験した親族を有するもの、および遺伝子的または生化学的マーカーの分析により危険が決定されたものを含む。アルツハイマー病に対する危険の遺伝子マーカーは、APP遺伝子の変異、特にはそれぞれHardyおびSwedish変異と称される位置717ならびに位置670および671にける変異を含む(Hardyの上記文献参照)。危険の他のマーカーは、プレセニリン遺伝子、PS1およびPS2の変異、およびApoE4、ADの家族歴、高コレステロール症またはアテローム硬化症である。現在アルツハイマー病に罹患している個体は、特徴的な痴呆、ならびに上記の危険因子の存在から認識できる。加えて、ADを有する個体を同定するための多数の診断試験が利用できる。それにはCFSタウおよびAβ42レベルの測定が含まれる。上昇したタウおよび下降したAβ42レベルはADの存在を意味する。アルツハイマー病に罹患している個体は、実施例の部に考察するように、ADRDA基準によっても診断できる。
【0174】
無症候性患者において、処置はいかなる年齢(例えば10、20、30)でも開始できる。しかし通常は、患者が40、50、60または70に達するまで処置を開始する必要はない。処置は、典型的には、ある期間にわたる複数の投与を含む。処置は期間中の抗体レベルを評価して監視できる。反応が低下した場合には、追加投与を指示する。潜在的ダウン症候群患者の場合には、処置は、出産前の母親にまたは出産の直後の治療薬の投与により開始できる。
B.治療方式および投与量
予防的適用では、製薬学的組成物また医薬は、アルツハイマー病の疑いがあるかもしくはその危険がある患者に、疾患の生化学的、組織学的および/または行動的症状、その合併症および疾患の進展の間に現れる中間的な病理学的表現型を含む、疾患の危険の排除もしくは低下、重症度の軽減または発症の遅延のために十分な量で投与される。治療的適用においては、かかる疾患の疑いがあるかまたは既に罹患している患者に、疾患(生物化学的、組織学的および/または行動的)の合併症および疾患の進展の間の中間的な病理学的表現型を含み、疾患の症状を治癒、または少なくとも部分的に阻止するために十分な量で組成物または医薬が投与される。
【0175】
いくつかの方法では、薬剤の投与は、特徴的なアルツハイマー病の病理をまだ発生していない患者内の筋認識性(myocognitive)障害を低下または排除する。治療的または予防的処置を達成するために適当な量は、治療的または予防的有効量として定義される。予防的および治療的方式の双方で、薬剤は、通常、十分な免疫反応に到達するまで数回の投与量で投与される。「免疫反応」または「免疫学的反応」の用語は、レシピエント対象者内の抗原に対して向けられる体液性(抗体媒介)および/または細胞性(抗原特異性T細胞もしくはそれらの分泌生成物により媒介)反応の発生を含む。かかる反応は、能動的反応、すなわち免疫原の投与による誘導される反応、または受動的反応、すなわち免疫グロブリンもしくは抗体もしくは抗原刺激を受けたT細胞の投与により誘導されることができる。典型的には、免疫反応は監視されそして免疫反応が弱まりはじめたら反復投与を与える。
【0176】
上記の病状の処置のための本発明の組成物の有効投与量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与されるその他の医薬、および処置が予防的であるか治療的であるかを含む多数の異なる因子に依存して変化する。通常、患者はヒトであるがしかしトランスジェニック哺乳動物を含む非ヒトの哺乳動物も処置できる。処置投与量は、安全で有効性を最適化するために力価を測定されなければならない。
抗体を用いる受動的免疫化のために、投与量は、宿主体重に対して、約0.0001〜100mg/kg、そしてさらに通常には0.01〜5mg/kg(例えば0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)の範囲である。例えば、投与量は、1mg/kg(体重)もしくは10mg/kg(体重)または1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgであことができる。別の例では、投与量は、0.5mg/kg(体重)もしくは15mg/kg(体重)または0.5〜15mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgであことができる。上記の範囲内の中間の投与量も本発明の範囲内と考える。対象者には、かかる投与量を毎日、隔日に、毎週または経験的分析により決定されるいずれか他のスケジュールに従って投与できる。例示的な処置は、長期間、例えば、少なくとも6カ月間にわたる複数投与での投薬を含む。別の例示的な処置方式は、2週間毎に一回または毎月一回または3〜6カ月毎に一回の投薬を含む。例示的な投与スケジュールは、連続する毎日の1〜10mg/kgもしくは15mg/kg、隔日の30mg/kgまたは毎週の60mg/kgを含む。いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2種またはそれ以上のモノクローナル抗体を同時に投薬し、その場合に、それぞれの抗体投薬の投与量は、示された範囲内にある。
【0177】
抗体は、通常複数の機会に投与される。単回投与の間の間隔は、毎週、毎月または毎年であることができる。間隔は、患者内のAβへの抗体の血中レベルを測定して示されるようにして不規則であることもできる。いくつかの方法では、投与量は、1〜1000μg/ml、そしていくつかの方法では25〜300μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調節される。あるいは、抗体は持続放出製剤として投薬でき、その場合に、より低い頻度の投薬が要求される。投与量および頻度は、患者内の抗体の半減期に応じて変化する。一般に、ヒト化抗体が最長の半減期を示し、次いでキメラ抗体および非ヒト抗体である。
【0178】
投薬の投与量および頻度は、処置が予防的または治療的であるかに依存して変化できる。予防的適用では、本抗体またはそのカクテルを含む組成物は、まだ罹患状態ではない患者に患者の抵抗性を増強するために投薬される。かかる量は、「予防有効投与量」として定義される。この使用において、正確な量はここでも患者の健康状態および一般的な免疫性に依存するが、しかし一般的に投与あたりに0.1〜25mg、特には投与あたりに0.5〜2.5mgの範囲にある。比較的低い投与量は、長期間にわたって比較的低い頻度の間隔で投薬される。一部の患者は、その残りの生涯にわたって処置を受けつづける。
【0179】
治療的適用においては、疾患の進行が鈍化または停止するまで、そして好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い投与量(例えば投与あたりに抗体の約1〜200mg、さらに通常には5〜25mgの投与量が使用される)が時に要求される。その後、患者は予防的方式で投薬されることができる。
【0180】
抗体をコードする核酸の投与量は、患者あたりに約10ng〜1g、100ng〜100mg、1μg〜10mgまたは30〜300μgDNAの範囲である。感染性ウイルスベクターの投与量は、投与あたりに10〜100、またはそれ以上のビリオンに変化する。
【0181】
治療用薬剤は、予防的および/または治療的処置に対して、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻内または筋肉内手段により投与できる。免疫原性薬剤の投与の最も典型的な経路は、皮下であるがしかしその他の経路も同様に有効である。次に最も普通の経路は筋肉内注入である。この注入の形式は、最も典型的には、腕または足の筋肉内に行われる。いくつかの方法では、沈着物が蓄積した一定の組織内への薬剤の直接注入、例えば頭蓋内注入である。筋肉内注入または静脈内輸液が、抗体の投与のために好ましい。いくつかの方法で、特定の治療用抗体は頭蓋内に直接注入される。いくつかの方法では、抗体は持続性放出組成物としてまたは装置、例えばMedipadTM装置として投与される。
【0182】
本発明の薬剤は、場合により、アミロイド疾患の処置に少なくとも部分的に有効な他の薬剤と組み合わせて投与できる。ある態様では、本発明のヒト化抗体(例えばヒト化12A11)は、第二の免疫原性または免疫学的薬剤と組み合わせて投与される。例えば、本発明のヒト化12A11抗体は、Aβに対する他のヒト化抗体と組み合わせて投与できる。他の態様では、ヒト化12A11抗体は、Aβワクチンを投与されたかまたは投与されている患者に投与される。アミロイド沈着が脳内に起きるアルツハイマー病およびダウン症候群の場合に、本発明の薬剤は、血液脳関門を通過する本発明の薬剤の通過を増加させる他の薬剤と一緒に投与できる。本発明の薬剤は、標的細胞または組織への治療薬剤の接近を強める他の薬剤、例えばリポソームなどと組み合わせて投与できる。かかる薬剤の共投与は、所望の効果を達成するために必要な治療薬剤(例えば治療用抗体または抗体鎖)の投与量を減少できる。
C.製薬学的組成物
本発明の薬剤は、活性治療薬剤、および各種のその他の製薬学的に許容できる成分を含んでなる製薬学的組成物としてしばしば投与される。Remington’s Pharmaceutical Science(第15版、Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania(1980)参照。好ましい剤型は、意図する投与の様式および治療適用に依存する。該組成物は、所望の製剤に応じて、製薬学的に許容できる無毒性キャリヤまたは希釈剤を含むこともでき、それらは動物またはヒト投与のための製薬学的組成物を製剤するために通常使用されるベヒクルとして定義される。希釈剤は、組み合わせ剤の生物学的活性に影響しないように選択される。かかる希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、およびハンク液である。加えて、製薬学的組成物または製剤は、他のキャリヤ、アジュバント、または無毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤などを含んでもよい。
【0183】
製薬学的組成物は、またタンパク質、キトサンなどの多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えばラテックス官能性化Sepharose(TM)、アガロース、セルロース、など)、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集物(例えば油滴またはリポソーム)のような大きくてゆっくりと代謝される巨大分子を含むことができる。加えて、それらのキャリヤは免疫刺激性薬剤(すなわちアジュバント)として機能できる。
【0184】
非経口投与のために、本発明の薬剤は、滅菌液体、例えば水、油、生理的食塩水、グリセロール、またはエタノールであることができる製薬学的キャリヤを伴う、生理学的に受容できる希釈剤中の物質の溶液または懸濁液の注入可能な投与量として投薬できる。加えて、助剤、例えば湿潤または乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質なども組成物内に存在できる。製薬学的組成物のその他の成分は石油、動物、植物、または合成由来のもの、例えばラッカセイ油、ダイズ油および鉱油である。一般に、グリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、特に注入可能な液剤のために好ましい液体キャリヤである。抗体は、デポー注入または埋込み製剤の剤型で投与でき、それらは有効成分の持続性放出を許容するような様式で製剤できる。例示的な組成物は、50mM L−ヒスチジン、150mM NaClから成りHClを用いてpH6.0に調整された緩衝水溶液中で製剤された5mg/mLのモノクローナル抗体を含んでなる。
【0185】
典型的には、組成物は、注入可能な液体の溶液または懸濁液のいずれかとして製造されるが、液体ベヒクル中の溶液もしくは懸濁液に適する注入前の固体剤型も製造できる。製剤は、上記に考察したように、増強されたアジュバント効果のためにリポソームまたは微粒子、例えばポリラクチド、ポリグリコリド、またはコポリマー中に乳化またはカプセル化もできる。(Langer,Science 249:1527(1990)およびHanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97(1997)参照)。本発明の薬剤は、デポー注入または埋込み製剤の剤型で投与でき、それらは有効成分の持続性または脈動性放出を可能とするような様式で製剤できる。
【0186】
投与の他の様式に適する追加的な製剤は、経口、鼻内、および肺製剤、座薬、および経皮適用を含む。座薬のために、結合剤およびキャリヤは、例えばポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み、かかる座薬は0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲内の活性成分を含む混合物から形成できる。経口製剤は、賦形剤、例えば製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、および炭酸マグネシウムを含む。それらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、持続放出性製剤または散剤の剤型をとり、そして有効成分を10〜95%、好ましくは25%〜70%含む。
【0187】
局所適用は、経皮または皮内送達をもたらすことができる。局所投与は、薬剤とコレラトキシンまたはその解毒した誘導体もしくはそれらのサブユニットあるいはその他の同様な細菌トキシンと一緒の共投与により促進できる(Glenn et al.,Nature 391:851(1998)参照)。共投与は、混合物として、または化学的架橋もしくは融合タンパク質の発現により得られる連結分子として成分を使用することにより達成できる。
【0188】
あるいは、経皮送達は、皮膚貼付剤を用いてまたはトランスフェロソーム(transferosome)を用いて達成できる(Paul et al.,Eur.J.Immunol.25:3521(1995);Cevc et al.,Biochem.Biophys.Acta 1368:201−15(1998))。
D.処置の経過の監視
本発明は、アルツハイマー病に罹患またはその疑いがある患者内の処置の監視、すなわち患者に与えられた処置の経過の監視の方法を提供する。該方法は、症状がある患者への治療処置および無症候性患者への予防処置の双方を監視するために使用できる。特には、該方法は受動的免疫化を監視するために有用である(例えば、投与された抗体のレベルの測定)。
【0189】
いくつかの方法では、薬剤の投与量を投与する前に、例えば、患者内の抗体レベルまたはプロフィールの基準値を測定し、そして処置後のプロフィールまたはレベルの値と比較することを含む。レベルまたはプロフィールの値の有意の増加(すなわち、かかる測定の平均からの一標準偏差として表現される、同じ試料の反復測定における実験誤差の典型的限界より大きい)は、陽性の処置結果を示す(すなわち薬剤の投与が所望の反応を達成した)。免疫反応の値が有意には変化しないかまたは低下する場合には、陰性処置結果を示す。
【0190】
別の方法では、レベルまたはプロフィールの対照値(すなわち平均および標準偏差)は、対照集団に対比して決定される。典型的には、対照集団内の個体は、事前処置を受けていない。次いで、治療薬剤を投与された後の患者内のレベルまたはプロフィールの測定値を対照値と比較する。対照値と比較して有意の増加(例えば平均から一標準偏差以上)は、陽性または十分な治療結果を示す。有意の増加の欠如または減少は、陰性または不十分な処置結果を示す。薬剤の投与は、一般にレベルが対照値に対して増加する間は継続される。前のように、対照値に対する安定した達成は、処置の供与を中断または投与量および/または頻度を減少できることの指標である。
【0191】
別の方法では、レベルまたはプロフィールの対照値(例えば、平均および標準偏差)は、治療薬剤で処置を受けそしてそのレベルまたはプロフィールが処置に応答して安定している個体の対照集団から決定される。患者内のレベルまたはプロフィールの測定値を対照値と比較する。患者内の測定値が対照値から有意(例えば一標準偏差以上)には異ならない場合には、処置を中断できる。患者内のレベルが対照値より有意に低い場合には、薬剤の連続した投与が正当化される。患者内のレベルが対照値よりも持続して低い場合には、処置の変更を指示してもよい。
【0192】
別の方法では、現在は処置を受けていないがしかし以前に処置のコースを受けた患者は、処置の再開が必要かどうかを決定するために抗体レベルまたはプロフィールを監視される。患者内の測定レベルまたはプロフィールが以前の処置コースの後に患者内で以前に到達した値と比較できる。以前の測定に対する有意の低下(すなわち同一試料の反復測定での誤差の典型的範囲を超過)は、処置を再開できる指標である。あるいは、患者内で測定された値は、処置のコースを受けた後の患者の集団内で決定された対照値(平均プラス標準偏差)と比較できる。あるいは、患者内で測定された値は、疾患の症状が現れないままの予防処置患者の集団、または疾患特性値の改善を示す治療処置患者の集団内の対照値と比較できる。それらすべての場合に、対照値に対する有意の低下(すなわち一標準偏差を超過)は、処置を患者内で再開すべきとの指標である。
【0193】
分析のための組織試料は、典型的には患者からの血液、血漿、血清、粘液または脳脊髄液である。試料は、例えば、Aβペプチドに対する抗体のレベルまたはプロフィール、例えばヒト化抗体のレベルまたはプロフィールについて分析される。Aβに特異性の抗体を検出するELISA法は、実施例の部に記載される。いくつかの方法では、本明細書に記載のように、投与された抗体のレベルまたはプロフィールを除去アッセイ、例えばin vitroファゴサイトーシスアッセイを用いて決定する。かかる方法において、試験される患者からの組織試料をアミロイド沈着物(例えばPDAPPマウスからのもの)およびFc受容体を担持する食細胞と接触させる。次いで、その後のアミロイド沈着物の除去を監視する。除去反応の存在および範囲は、試験される患者の組織試料内のAβを除去するために効果的な抗体の存在およびレベルの指標を提供する。
【0194】
受動的免疫化の後の抗体プロフィールは、典型的には抗体濃度の即座のピークおよび引き続く指数関数的低下を示す。さらなる投与がないと、投与した抗体の半減期に依存して数日または数カ月の期間内に低下が治療前のレベルに近づく。
【0195】
いくつかの方法で、患者内のAβに対する抗体の基準測定が投与前に行われ、第二の測定はその直後に行ってピーク抗体レベルを決定し、そして一回またはそれ以上のさらなる測定が抗体レベルの低下を監視するために間隔をおいて行われる。抗体のレベルが基準またはピークと基準をの差の所定の割合(例えば50%、25%または10%)まで低下した場合に、抗体のさらなる投与量の投薬が投与される。いくつかの方法では、ピークもしくはその後の測定レベルから背景を差し引いた値を、他の患者内の有益な予防もしくは治療の処置方式を構成するを以前に決定された参照レベルと比較する。測定された抗体レベルが参照レベルより有意に低い(例えば、処置の利益を受けている患者の集団内の参照値の平均から一標準偏差引いた値よりも低い)場合には、抗体の追加投与量の投与が指示される。
【0196】
追加的な方法は、治療の過程において、アミロイド疾患(例えばアルツハイマー病)を診断または監視する研究者または医師により日常的に信頼されるいずれかの当該技術分野で認知された生理学的症状(例えば身体的または精神的症状)の監視も含む。例えば、認知障害を監視できる。後者はアルツハイマー病およびダウン症候群の症状であるがしかしそれらの疾患のいずれのその他の特徴がなくても起きることができる。例えば、認知障害は、処置の経過を通じて慣例に従ってミニ精神状態検査(Mini−Mental State Exam)で患者の得点を決定して監視できる。
E.キット
本発明は、上記の監視方法を実施するためのキットをさらに提供する。典型的には、かかるキットはAβへの抗体に特異的に結合する薬剤を含む。キットは、標識(label)を含むこともできる。Aβへの抗体の検出のために、標識は、典型的には標識付けした抗−イディオタイプ抗体の形態である。抗体の検出のために、薬剤を固相、例えば微量定量皿のウエルにあらかじめ結合して供給できる。キットは、典型的にはキットの使用説明書を提供する標識付けも含む。標識付けは、測定された標識のレベルをAβへの抗体のレベルと相関させる図表またはその他の相応する方式を含んでもよい。標識付けの用語は、キットの製造、輸送、販売もしくは使用の間のあらゆる時期でキットに貼付またはその他の方法で同伴するあらゆる記載もしくは記録された資料を指す。例えば、標識付けの用語は、広告パンフレットおよび小冊子、包装材料、指示、オーディオまたはビデオカセット、コンピューターディスク、ならびにキットに直接刻まれた記載を包含する。
【0197】
本発明は、診断用キット、例えば研究、検出および/または診断用のキット(例えばin vivoイメージングを実施するため)も提供する。かかるキットは、典型的には、好ましくは残基1〜10内のAβのエピトープに結合する抗体を含む。好ましくは、該抗体は標識付けされるか、または二次標識付け試薬がキット中に含まれる。好ましくは、キットは、意図する用途を実施するため、例えばin vivoイメージングアッセイを実施するための指示を標識付けされる。例示的抗体は、本明細書中に記載のものである。
F.in vivoイメージング
本発明は、患者内のアミロイド沈着をin vivoイメージングするための方法を提供する。かかる方法は、アルツハイマー病、またはその罹患性を診断もしくは診断を確認するために有用である。例えば、該方法は、痴呆の症状を示す患者に使用できる。患者が異常なアミロイド沈着を有する場合には、該患者はアルツハイマー病に罹患している可能性がある。該方法は、無症候性患者にも使用できる。アミロイドの異常な沈着の存在は、将来の症候性疾患への罹患性を示す。該方法は、以前にアルツハイマー病と診断された患者内の疾患の進行および/または処置への反応を監視するためにも有用である。
【0198】
薬剤、例えばAβに結合する抗体を患者に投与し、次いでその結合後に薬剤を検出することにより該方法は機能する。好ましい抗体は、全長のAPPポリペプチドには結合しないで、患者内のAβ沈着物に結合する。アミノ酸1〜10内のAβのエピトープに結合する抗体が特に好ましい。いくつかの方法では、抗体は、Aβのアミノ酸7〜10内のエピトープに結合する。かかる抗体は、典型的には本質的な除去反応を誘導することなく結合する。別の方法では、抗体は、Aβのアミノ酸1〜7内のエピトープに結合する。かかる抗体は、典型的にはAβに結合しそして除去反応を誘発する。しかし、除去反応は全長定常領域、例えばFabを欠失する抗体フラグメントを用いて回避できる。いくつかの方法では、同じ抗体が処置および診断試薬の双方として役立つ。一般的には、AβのC−末端から残基10へのエピトープに結合する抗体は、残基1〜10内のエピトープに結合する抗体と同様に強いシグナルは示さないが、推測すると、C−末端エピトープがアミロイド沈着物内では近接できないからであろう。従って、かかる抗体は好ましさが低い。
【0199】
診断試薬は、静脈内注入により患者の身体内へ、または頭蓋内注入によりまたは頭蓋を通して孔を開けて脳内に直接投与できる。試薬の投与量は、治療方法と同様の範囲内にあるべきである。典型的には、試薬は標識付けされるが、しかしいくつかの方法ではAβへの親和性を有する一次試薬は標識されないで、二次の標識付け試薬を一次試薬に結合するために使用する。標識の選択は検出の手段に依存する。例えば、蛍光標識は、光学的検出に適する。常磁性標識の使用は、外科的侵襲を伴なわない断層撮影検出に適する。放射性標識は、PETまたはSPECTを用いて検出もできる。
【0200】
診断は、標識した座の数、大きさ、および/または強度を相当する基準値と比較して実施される。基準値は、罹患していない個体の集団内の平均レベルを表すことができる。基準値は、同じ患者内で決定された以前のレベルを表すこともできる。例えば、基準値は、治療開始前に患者内で決定でき、そしてその後測定した値を基準値と比較する。基準に対する値の低下は、処置に対する陽性反応を示す。
【0201】
本発明は、以下の制限しない実施例により、さらに詳しく記述される。
【実施例】
【0202】
下記の配列識別記号は、免疫グロブリン鎖可変領域ヌクレオチドおよびアミノ酸配列に言及する実施例の部分すべてのわたって使用される。
【0203】
【表7】
【0204】
本明細書中に使用される場合、配列番号1〜4のいずれか1項に示すVLおよび/もしくはVH配列を含んでなる抗体または免疫グロブリン配列は、全長配列を含んでなることができるかまたは成熟配列(すなわち、シグナルまたはリーダーペプチドがない成熟ペプチド)を含んでなることができるかのいずれかである。
【0205】
以前の研究は、AD関連神経病理学(例えば斑負荷)を低下する種々のAβ抗体のin vivo効力が、ex vivo(生体外)(例えばPDAPPまたはAD脳切片内)で斑を結合および/またはex vivoファゴサイトーシスアッセイ(Bard et al.(2000)Nat.Med.6:916−919)において斑除去の引き金を引く抗体の能力により予測できることを示した。該相関は、小膠細胞および/またはマクロファージによるFc依存性ファゴサイトーシスがin vivoでの斑除去のプロセスに重要であるとの意見を支持する。しかし、抗体効力が、Fc相互作用とは独立した機構によりin vivoでも得られるとも報告された(Bacskai et al.,(2002)J.Neurosci.22:7873−7878)。研究は、アミロイド斑を認識できないAβの中間部分を指定する抗体は、可溶性Aβに結合しそして斑沈着を減少することを示した(DeMattos et al.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:8850−8855)。
【0206】
ネズミモノクローナル抗体12A11(イソタイプIgG1)の潜在的なin vivo効力を特性化するために、先ず種々のex vivoアッセイを行った。
【0207】
Aβ1−42に対するmAb12A11の結合活性(avidity) 凝集した合成Aβ1−42へのモノクローナル抗体12A11の結合性を、Schenk et al.(Nature 400:173(1999))に記載のようにしてELISAにより行った。比較の目的で、mAb 12B4および10D5もアッセイした。可溶性Aβ1−42とは、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で音波処理した合成Aβ1−42ペプチドを指す。20μg/mlでの抗体の系列的希釈物を50,000cpm〔 125I〕Aβ1−42(190μCi/μmol;Indogen試薬Pierceを用いて標識)を用いて、一晩室温でインキュベーションした。75mg/mlタンパク質A Sepharose(Amersham Pharmacia)および200μgのラビット抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch)を含むスラリー50μLを、希釈した抗体と一緒に1時間、室温でインキュベーションし、2回洗浄し、そしてWallacガンマカウンター(Perkin−Elmer)で計数した。すべての段階は、10mM Tris、0.5M NaCl、1mg/mlゼラチン、および0.5%Nonidet P−40,Ph8.0から成るRIA緩衝液中で行った。
【0208】
結合活性研究からの結果を下記の表2に示す。
【0209】
【表8】
【0210】
試験したすべての抗体は、凝集Aβ1−42に対して高い結合活性を示した。さらに、抗体12B4および12A11は、20μg/mlの抗体濃度で可溶性Aβ1−42を容易に感知できるほど捕捉した。表2に示すように、IgG1抗体12A11は、IgG2a抗体12B4またはIgG1抗体10D5よりもさらに効率的にAβ1−42を捕捉した。
【0211】
可溶性Aβを捕捉する種々の抗体(12A11を含む)の能力は、さらに以下のように評価した。種々の濃度の抗体(10μg/mlまで)を 125I−Aβ1−42(または 125I−Aβ1−40)の50,000CPMと一緒にインキュベーションした。放射能計数値の25%を結合するために十分な抗体の濃度は、捕捉放射免疫アッセイで決定した。10μg/mlでの計数値の25%を結合する能力がない抗体に対しては、10μg/mlで結合した計数値の百分率を測定した。12A11は10μg/mlでの放射能計数(すなわち 125I−Aβ)の20%を結合した。これは試験した他の2種のAβ3〜7抗体、すなわち12B4および10D5による結合量(10μg/mlでそれぞれ7%および2%を結合)より大きかった。従って、試験したN−末端(エピトープAβ3−7)抗体のなかで、12A11はAβを捕捉する最も顕著な能力を示した。
【0212】
Fc媒介斑除去の引き金を引くそれらの能力の尺度として、一次マウス小膠細胞およびPDAPPマウスからの脳組織の切片を用いるex vivoファゴサイトーシスアッセイでも抗体を比較した。Aβまたはアッセイのその他の成分に対して反応性を持たない無関係のIgG1およびIgG2a抗体をイソタイプが合致した陰性対照として使用した。要約すると、ネズミ一次小膠細胞をPDAPPマウス脳の非固定の低温保持装置切片と一緒に抗体の存在下で培養した。24時間のインキュベーションの後、培養物内に残存したAβの全レベルをELISAにより測定した。斑除去/Aβ分解の程度を定量するために、ELISA試験のための小膠細胞および脳切片(n=3)の培養物から8M尿素を用いてAβを抽出した。データをANOVAで分析し次いで事後Dunnett試験を行った。
【0213】
図1に示すように、12B4抗体はAβレベルを効率的に低下する(12B4について73%、P<0.001)が、12A11はいくらか低いが統計的に有意な低い効率を示す(12A11について48%、P<0.05)。10D5抗体はAβレベルを有意には低下させなかった。ex vivoファゴサイトーシスアッセイにおける12A11の性能は、小膠細胞ファゴサイトーシスに対する好ましいイソタイプであるIgG2aイソタイプに転換すると改善されるであろう。
実施例II
【0214】
マウス12A11抗体のin vivo効力
マウス抗体12A11はアルツハイマー病様の神経病理をin vivoで低下する。12A11のin vivo効力を決定するために、抗体(12A11、12B4、または10D5を含む)を、Bard et al.(2000)Nat.Med.6:916の記載のようにして、6カ月間の毎週の腹腔内注入により10mg/kgをマウスに投与した。研究の終わりに、皮質Aβの全レベルをELISAにより決定した。図2Aに示すように、それぞれの抗体は、PBS対照と比較してAβレベルを有意に低下(P<0.001)、すなわち12B4は69%低下を示し、10D5は52%低下を示し、そして12A11は31%低下を示した。
【0215】
次いで、斑除去と神経細胞保護との間の関連を決定するために、上記のマウスからの脳組織の切片内で神経炎性ジストロフィーのレベルを試験した。神経炎性ジストロフィーにより占められる前頭皮質の割合を試験する脳イメージ分析からのデータを図2Bに示す。それらのデータは、本明細書に記載のアッセイにより決定されるように、抗体10D5および12A11が神経炎性ジストロフィーの低下にそれほど有効ではないが、12B4は神経炎性ジストロフィーを有意に低下させる(12B4、P<0.05;ANOVA、続いて事後Dunnett試験)ことを示す。この場合にも、12A11の親和性は12A11をIgG2aイソタイプに変換して改善されるであろう(ネズミ効力)。12A11のヒト化バージョンに関して、IgG2aイソタイプが神経炎性ジストロフィーを軽減するために好ましい。
【0216】
抗体12A11の結合特性およびin vivo効力を証明する実験は、Bard,et al.PNAS100:2023(2003)(引用することにより本明細書中に編入される)中にも記載されている。
【0217】
要約すると、すべての抗体が凝集Aβへの有意の結合活性を有しそしてex
vivoアッセイで斑除去の引き金を引く。IgG2aイソタイプ(Fc受容体、殊にはFcγRIへの親和性)は、Aβの除去よび神経炎性ジストロフィーに対する保護の双方に関して重要な属性と思われる。抗体12A11(IgG1)は12B4(IgG2a)または10D5(IgG1)よりも高い効率で可溶性モノマー状Aβ1−42を捕捉するが、しかし神経炎性ジストロフィーの低下においてはそれほど効果的ではない。斑負荷の改善および神経炎性ジストロフィーの低下における高い効力は、最高にファゴサイトーシスを支持するイソタイプを有するように抗体を操作して達成されるであろう。特に効果的なのは、AβのN−末端内のエピトープに結合する抗体である。
実施例III
【0218】
マウス12A11可変領域のクローニングおよび配列決定
12A11VHのクローニングおよび配列分析 ハイブリドーマ細胞からの12A11のVHおよびVL領域を、ハイブリドーマ細胞からのmRNAおよび標準クローニング方法を用いるRT−PCRおよび5’RACEによりクローニングする。推測される12A11 VHドメインをコードする独立したcDNAクローンから誘導される核酸配列(コーディング、配列番号3)および推定されるアミノ酸配列(配列番号4)を、それぞれ表3および4に示す。
【0219】
【表9】
【0220】
【表10】
【0221】
12A11 VLのクローニングおよび配列分析 12A11の軽鎖可変VL領域をVH領域と同様の様式でクローニングした。推測される12A11 VLドメインをコードする2個の独立したcDNAクローンから誘導されるヌクレオチド配列(コーディング、配列番号1)および推定されるアミノ酸配列(配列番号2)を、それぞれ表5および表6に示す。
【0222】
【表11】
【0223】
【表12】
【0224】
12A11 VLおよびVH配列は、それらがC−領域へのイニシエーターメチオニンからの連続ORFを含み、そして免疫グロブリンV領域遺伝子の特徴である保存される残基を共有する限り、機能性V領域の基準に適合する。N−末端からC−末端へ、軽鎖および重鎖の双方共にドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。
実施例IV
【0225】
キメラ12A11抗体の発現
キメラ12A11の発現 可変重鎖および軽鎖領域は、それぞれのVDJまたはVJ接合部の下流のスプライスドナー配列をコードするように再操作され、そして重鎖にはpCMV−hγ1、そして軽鎖にはpCMV−hκ1の哺乳動物発現ベクター内にクローニングされた。それらのベクターは、挿入された可変領域カセットの下流側のエキソン性フラグメントとしてヒトγ1およびCκ定常領域をコードする。配列実証の後、重鎖および軽鎖発現ベクターはCOS細胞内に同時トランスフェクションされた。種々の重鎖クローンが、各種のキメラ軽鎖クローンと一緒に独立して同時トランスフェクションされて、その結果の再現性を確認させる。抗体は、タンパク質A Sepharoseを用いてCOS細胞条件調整媒体から免疫沈降された。抗体鎖は、SDS−PAGEゲルの免疫ブロット上で検出された。検出は、ヤギ−抗ヒトIgG(H+L)抗体を1:5000の希釈で使用し、室温、1時間で達成された。12A11 H+L鎖の著しい量が、条件調整媒体内で検出された。
【0226】
Aβへのキメラ12A11抗体の直接結合は、ELISAアッセイにより試験された。図4は、キメラ12A11がAβに高い結合活性で結合することが見いだされたことを証明し、これはキメラおよびヒト化3D6により証明されたものと同様であった。(3D6のクローニング、特性測定およびヒト化は、米国特許出願番号第10/010,942号明細書に記載され、その内容全体はここに引用することにより本明細書に編入される)。結合活性は、キメラおよびヒト化12B4により証明されるものとも同様であった(12B4のクローニング、特性測定およびヒト化は、米国特許出願番号第10/388,214号明細書に記載され、その内容全体はここに引用することにより本明細書に編入される)。
実施例V
【0227】
12A11ヒト化
A.12A11ヒト化抗体、バージョン1
相同性/分子モデル分析 ネズミ12A11抗体内の鍵となる構造フレームワーク残基を同定するために、12A11重鎖および軽鎖と相同性を有する解明されたネズミ抗体についての三次元モデルを研究した。12A11軽鎖と近い相同性を有する1KTRと称される抗体を選択し、そして、12A11重鎖へ近い相同性を有する1ETZおよび1JRHと称される二種の抗体を選択した。それらのマウス抗体は、12A11と強い配列保存を示す(Vkに対して112アミノ酸内で93%同一性、そしてVhに対してそれぞれ126アミノ酸に対して83%同一性および121アミノ酸に対して86%同一性)。1ETZの重鎖構造を1KTRのものに重ねた。加えて、Vkに対して、選択された抗体のCDRループは同じ正規Chothia構造分類に属し、12A11VLのCDRループも同様である。それらの抗体の結晶構造は抗体の機能、および、比較により、同様の12A11抗体の機能のために重要と予測される残基(例えばCDRコンホメーションなどのために重要なFR残基など)について検討された。
【0228】
ヒトアクセプター抗体配列の選択 適当なヒトアクセプター抗体配列は、マウス可変領域のアミノ酸配列を既知のヒト抗体の配列とのコンピューター比較により同定された。比較は、12A11重鎖と軽鎖について別々に行った。特に、そのフレームワーク配列がネズミVLおよびVHフレームワーク領域と高度の配列同一性を示すヒト抗体からの可変ドメインは、それぞれのネズミフラグメント配列を用いてNCB1 BLAST(National Institute of Health NCBIインターネット・サーバーを介して公開されてアクセスできる)を用いるNCBI Igデータベースの探索により同定された。
【0229】
下記の基準:(1)対象配列との相同性、(2)ドナー配列とのカノニカルCDR構造の共有、および/または(3)フレームワーク領域内にいずれの稀なアミノ酸残基も含まない、に基づいてアクセプター配列として2個の候補配列を選択した。VLについて選択されたアクセプター配列は、NCBI Ig非重複データベース内のBAC01733であった。VHについて選択されたアクセプター配列は、NCBI Ig非重複データベースでAAA69734であった。AAA69734は、(サブグループIIではなく)ヒトサブグループIII抗体であるが、しかしSaldanha et al.,(1999)Mol.Immunol.36:719の推定に少なくとも一部は基づいて、初期アクセプター抗体として選択された。ヒト化12A11抗体の最初のバージョンは、それらの選択されたアクセプター抗体配列を利用した。抗体はSchroeder and
Wang(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 872:6146中に記載されている。
【0230】
アミノ酸残基の置換 以上に記載のように、本発明のヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(アクセプター免疫グロブリン)から本質的に由来する可変フレームワーク領域、および12A11と称されるマウス免疫グロブリン(ドナー免疫グロブリン)から本質的に由来する相補性決定領域を含んでなる。12A11の相補性決定領域および適当なヒトアクセプター免疫グロブリンを同定し、次の段階は、もし存在すれば、得られたヒト化抗体の性質を最適化するように置換するためのそれらの成分からの残基の決定であった。
再形成(reshaped)軽鎖V領域:
再形成された軽鎖V領域のアミノ酸整列を図5Aに示す。アクセプターフレームワーク(BAC01733)の選択は、ネズミV領域に相当するものと同様に同じヒトサブグループ由来であり、異常なフレームワーク残基を持たず、そしてCDRは、同じChothiaカノニカル構造グループに属する。ヒト化12A11のバージョン1内で復帰突然変異は行われなかった。
再形成重鎖V領域:
再形成された重鎖V領域のアミノ酸整列を図5Bに示す。アクセプターフレームワーク(AAA69734)の選択はヒトサブグループIIIからであり(前に記載の通り)、そして異常なフレームワーク残基を持たない。ネズミ配列へのAAA69734のアミノ酸整列と関連させるネズミVH鎖(1ETZおよび1JRH)の構造分析は、再形成重鎖のバージョン1(v1)内に9個の復帰突然変異:A24F、T28S、F29L、V37I、V48L、F67L、R71K、N73T、L78V(Kabatの番号付け)を指定する。復帰突然変異は、図5B内に示すアミノ酸整列内で星印で際立たせてある。
【0231】
9個の復帰突然変異の中で、3個はモデルにより指定されるがそれは該残基がカノニカル残基(A24F、F29LおよびR71K、黒地に白字)、すなわちCDR残基に近位であるために抗原結合に貢献すると考えられるフレームワーク残基だからである。残基の次に最も重要な分類中に1個の復帰突然変異があり、界面残基すなわちV37IはVH−VL充填相互作用に関与する(下線付)。N73T変異は、結合部位の端のバーニア残基であり(点線で囲む)、多分CDR1に隣接するS30と相互作用するであろう。残る4個の残基(T28S、V48L、F67L、L78V、Kabatの番号付け)は、復帰突然変異の標的となり、またバーニアの分類内に入る(CDRコンホメーションの間接的貢献、図5B中で点線で囲む)。
【0232】
ヒト化12A11のバージョン1内に組み込まれた変化の要約を表7に示す。
【0233】
【表13】
【0234】
表8および9は、各種の軽鎖および重鎖それぞれについて鍵となるKabatの番号付けを示す。
【0235】
【表14】
【0236】
【表15】
【0237】
【表16】
【0238】
【表17】
【0239】
【表18】
【0240】
【表19】
【0241】
【表20】
【0242】
【表21】
【0243】
ヒト化抗体は、好ましくは少なくとも107、108、109または1010M−1のAβに対する特異性結合親和性を示す。通常、Aβに対するヒト化抗体の結合親和性の上限は、12A11のもの(すなわち約109 M−1)の3、4または5の係数以内にある。しばしば結合親和性の下限も、12A11のものの3、4または5の係数以内である。
ヒト化12A11VHおよびVL、バージョン1の構築および発現
PCR媒介構築は、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてh12A11v1を生成するように使用される。ヒト化12A11VL(バージョン1)(配列番号34)および12A11VH(バージョン1)(配列番号35)のヌクレオチド配列は、それぞれ以下の表10および11に表示されている。
【0244】
【表22】
【0245】
【表23】
【0246】
ヒト化12A11VL(バージョン1)(配列番号7)および12A11VH(バージョン1)(配列番号10)のアミノ酸配列は、図5Aおよび5Bにそれぞれ示される。
B.ヒト化12A11抗体−バージョン2、2.1、および3
バーニア残基(例えばS28T、V48L、F67L、L78V)は、CDRコンホメーションに間接的に貢献し、そしてコンホメーション動揺に対して最低の重要性を持たないと主張されている。標的残基は、Stratageneのキットおよび変異誘発鋳型としてpCRSプラスミド中のh12A11VHv1を用いてバージョン2に相当するクローンを生成する部位指定変異誘発により変異させた。バージョン2の配列決定をして確認されたV領域挿入体を重鎖発現ベクターpCMV−Cガンマ1のBamHI/HindIII部位内にサブクローニングして組換えh12A11v2抗体を産生させた。バージョン2.1抗体は、位置T73Nでの変異に加えて上記のバーニア残基変異(すなわち復帰突然変異の排除)のそれぞれに使って同様に創成した。同様に、バージョン3抗体は、位置K71Rの変異に加えて、上記の変異T28S、L48V、L67F、V78Lをそれぞれ持っていた。
C.ヒト化12A11抗体、バージョン4〜6
カノニカルおよび充填残基は復帰突然変異を保持するが、しかし1個(バージョン4.1〜4.4)、2個(バージョン5.1〜5.6)または3個(バージョン6.1〜6.4)のバーニア残基の復帰突然変異を除いた追加のヒト化12A11バージョンを設計した。部位指定変異誘発およびクローン構築は、上記のCの部に記載のようにして実行した。組換え抗体をCOS細胞中に発現しそしてCOS細胞上清から精製した。追加のバージョンは、上記、例えば、少なくとも1個の充填および/またはカノニカル残基(例えば位置28、37、48、71および78におけるヒト残基または位置28、37、48、67、71、73および78におけるヒト残基)と組み合わせた1、2、3、4または5個のバーニア残基でのヒト残基の組み合わせを含んでいてもよい。
D.ヒト化12A11抗体、バージョン7および8
ヒト化12A11の第7バージョンは、残基28におけるT−>S復帰突然変異(バーニア)および残基37におけるV−>I復帰突然変異(充填)を除き、バージョン1に示したそれぞれの復帰突然変異を有するように創成した。ヒト化12A11の第8バージョンは、残基73におけるN−>T復帰突然変異(バーニア)を除き、バージョン1に示したそれぞれの復帰突然変異を有するように創成した。ヒト化12A11バージョン7および8重鎖のアミノ酸配列は、配列番号30および31にそれぞれ示した。
【0247】
バージョン1と比較して、バージョン7は7個の変異を有するのみである。T28S復帰突然変異は保存性であり、そして重鎖のバージョン7中では除かれている。充填残基V37Iの復帰突然変異もバージョン7では除かれている。バージョン1と比較して、バージョン7は8個の変異を有するのみである。バージョン8中では、N73T(バーニア)復帰突然変異が除かれている。
【0248】
追加のバージョンは、上記の組み合わせを含んでもよく、例えば、場合により少なくとも1個の充填残基(例えば位置37)および/または少なくとも1個のカノニカル残基での復帰突然変異の排除と組み合わせた、位置28、48、78および73から選択された1、2、3、4(または5)個の残基でのヒト残基(例えば復帰突然変異の排除)である。
実施例VI
【0249】
ヒト化12A11抗体の機能テクスティング(texting)
ヒト化12A11バージョン1を実施例V中に記載のようにしてクローニングした。
【0250】
ヒト化12A11をCOS細胞内での一過性発現により産生し、そして当該技術分野で認知されている方法論に従って精製した。ヒト化抗体の結合活性は、最初に定性ELISAアッセイ(データは記載されていない)により証明された。ヒト化12A11バージョン1を、さらにそのネズミおよびキメラの対応体と2種の性質:抗原結合性(定量Aβ ELISA)および相対親和性について比較した。h12A11v1の結合活性は、定量Aβ ELISAで証明しそして12A11のネズミおよびキメラ形態と同一性することを見いだした(図7参照)。
【0251】
h12A11v1抗体の親和性も競合Aβ ELISAによりネズミおよびキメラ12A11抗体と比較した。競合結合性アッセイのために、ビオチン共役型組換えマウス12A11Cγ2a(イソタイプスイッチ(switched)12A11)を使用した。凝集Aβ1−42に対するビオチン化m12A11Cγ2aの結合活性は、ストレバビジン(strepavidin)−HRPをレポーターとして使用するELISAアッセイにより確認した。HRP共役型ヤギ抗マウスHRPをレポーターとして使用する12A11(Cγ1、Cγ2a)の2種のイソ型によるAβ結合性の直接比較は、ビオチン共役型組換え12A11Cγ2aが原型のCγ1マウス抗体と同等であることを確認した。
【0252】
競合結合性研究は、図8に示すように、ビオチン共役型m12A11Cγ2aを固定濃度で使用しそして試験抗体のある濃度範囲で競合させた。図8は、h12A11v1をそのキメラおよびネズミ型と比較するh12A11v1競合アッセイの結果を示す。ヒト化12A11v1はそのネズミおよびキメラ対応体と2XIC50値内で競合した。このデータは、Biacore技術を使用する親和性決定と調和し(データは記載されない)、それはネズミCγ2aおよびh12A11v1に対してそれぞれ38nMおよび23nMのKD値を示した。要約すると、その知見は、h12A11v1が抗原結合性およびその原型ネズミ対応体の親和性を保持することを示唆する。
【0253】
COS細胞を、ヒト化12A11VHおよびh12A11VLv1の種々の組み合わせで一過性トランスフェクションした。条件調整した媒体をトランスフェクション後72時間で集めた。トランスフェクションしたCOD細胞からの条件調整媒体内の抗体濃度は、定量ヒトIgG ELISAにより決定された。定量Aβ(1−42)凝集物結合性アッセイは、抗原結合性に関して、h12A11v2、v2.1およびv3が、h12A11v1に対しておよびキメラ12A11に対して同等であることを確認した。その上、バージョン5.1〜5.6および6.1〜6.3は、この結合性アッセイで試験すると類似した結合活性を示す。バージョン6.4はアッセイでいくらか活性の損失を示したが、v2では活性が著しく回復した。
【0254】
ネズミ12A11およびh12A11v1に対する結合性もBIAcore技術を用いて比較した。ネズミ12A11およびh12A11v1は、低密度または高密度のいずれかで不動化されたAβペプチド(bio−DAEペプチド)に暴露すると、類似した結合性プロフィールを示す。ネズミ12A11対h12A11v1の速度論的分析も行った。それらの研究において、固相結合ビオチン化DAEペプチドへの可溶性抗体の結合性を測定するためにBIAcore技術を使用した。該ペプチドをストレトアタビジンバイオセンサーチップ上で不動化し、次いで各抗体の変化させた濃度を三系列に適用しそして時間の関数として結合性を測定した。データは、二価モデルに適用されるBIA評価ソフトウエアを用いて分析した。見かけの分解(kd )および会合(ka )速度定数を、グローバル分析を用いるセンサーグラム(sensorgram)の適切な領域から算出した。bio−DAE10と抗体の間の相互作用の親和性定数は、速度論的速度定数から算出した。それらの測定から、見かけの分解(kd )および会合(ka )速度定数を誘導しそして相互作用に対するKD 値を算出するために使用した。表12は、BIAcore分析により決定された12A11抗体のAβ結合性の速度論的分析の要約を含む。
【0255】
【表24】
【0256】
このデータは、ヒト化12A11v1が、非経口ネズミ12A11と比較すると、Aβペプチドに対して同様の親和性を有することを示す。
実施例VII
【0257】
ヒト対象の予防および処置
単一投与量第I相試験をヒト内の安全を決定するために行う。治療薬剤は、約0.01の推測される効力のレベルから出発して、3の係数で増加させて有効マウス投与量の約10倍のレベルに達するまで、異なる患者に増加する投与量を投与する。
【0258】
第II相試験を治療効力を決定するために行う。可能性があるADについてのアルツハイマー病および関連障害協会(ADRDA)基準を用いて定義された初期および中期のアルツハイマー病患者を選択する。適合する患者は、ミニ精神的状態試験(MMSE)において12〜26の範囲内の得点である。その他の選択基準は、患者が試験の期間を生存する可能性および妨害するであろう併用医薬の使用のような複雑化させる問題がないことである。患者機能の基準評価は、古典的精神心理測定基準、例えばMMSE、およびアルツハイマー病状態および機能を有する患者を評価するための包括的な尺度であるADASなどを用いて行う。それらの精神心理測定尺度は、アルツハイマー病の病状の進行の尺度を提供する。適切な質的生活尺度も処置を監視するために使用できる。疾患進行は、MRIによっても監視できる。患者の血液プロフィールも免疫原特異性抗体およびT細胞反応のアッセイを含んで監視できる。
【0259】
基準測定に続いて、患者は処置を受けはじめる。患者らは無作為化されそして盲検法により治療薬剤または偽薬のいずれかで処置される。患者は少なくとも6カ月毎に監視される。効力は、偽薬群に対する処置群の進行の有意な低下により決定される。
【0260】
第二の第II相試験は、時に加齢性記憶障害(AAMI)または軽度認知障害(MCI)と称される非アルツハイマー病性初期記憶喪失から、ADRA基準により定義されるアルツハイマー病の可能性までにわたる患者の転換を評価するために行われる。前アルツハイマー症状と関連する記憶喪失の初期徴候またはその他の困難、アルツハイマー病の家族歴、遺伝子的危険因子、年齢、性別、およびアルツハイマー病の高い危険を予測するために見いだされるその他の徴候について参照集団をスクリーニングして、アルツハイマー病への転換の高い危険を有する患者を非臨床的集団から選別する。さらに正常な集団を評価するために設計されたその他の尺度を一緒に用いて、MMSEおよびADASを含む適当な尺度に基づく基線得点を集める。これらの患者集団を薬剤を用いる投与代替群に対して偽薬比較の適当な群に分割する。それらの患者集団を約6カ月の間隔で追跡し、そして各患者の終点は、彼または彼女が観察の終わりにおいて、ADRDA基準により定義される推定アルツハイマー病に転換されるかどうかである。
【0261】
前記の発明は、理解を明確にする目的で詳細に記載されたが、ある種の変更は添付する請求の範囲の範囲内で実施できるであろうことは明らかである。本明細書中に引用したすべての刊行物および特許、ならびに図および配列表に現れる本文は、それぞれが個々に示された場合と同様の程度まで、すべての目的のために全体を引用して本明細書内に編入される。
【0262】
前記のことより、本発明は多数の使用を提供することが明らかであろう。例えば、本発明は、アミロイド生成性疾患の処置、予防または診断における、またはそれにおける使用のための医薬または診断用組成物の製造における、上記のAβに対するいずれかの抗体の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0263】
【図1】図1は、ex vivoファゴサイトーシスアッセイにおいてAβ斑を除去(clearing)する際に、12A11を含む種々の抗体の有効性を試験する実験からの結果を図示する。
【図2】図2Aは、低い全Aβレベルにおいて、12A11を含む種々の抗体の有効性を試験する実験からの結果を図示する。棒は中間値を表し、そして水平の長破線は対照レベルを示す。図2Bは、神経炎性ジストロフィーの低下における12A11を含む種々の抗体の有効性を分析する実験からの結果を図示する。棒は中間値を表し、そして水平の長破線は対照レベルを示す。個別の動物に対してデータを示しそして対照の平均(100%に設定)に対する神経炎性ジストロフィーの百分率として表現する。
【図3】図3Aは、ネズミ(murine)12A11VL鎖配列を含むDNA配列およびVL鎖に対する推定アミノ酸配列(それぞれ配列番号5および2)を示す。成熟VL鎖は黒太棒で示す。CDRは白色棒で示す。図3Bは、ネズミ12A11VH鎖配列を含むDNA配列およびVH鎖に対する推定アミノ酸配列(それぞれ配列番号6および3)を示す。成熟VH鎖は黒太棒で示す。CDRは白色棒で示す。DNA配列には、クローニング部位およびKozak配列(コード配列の上流側)およびスプライスおよびクローニング配列(下流側)が含まれる。
【図4】図4は、キメラ12A11、キメラおよびヒト化3D6、およびキメラおよびヒト化12B4のAβ 1−42に対する結合を測定する実験からのELISA結果を図示する。
【図5】図5Aは、ネズミ(またはキメラ)12A11(配列番号2)、ヒト化12A11(成熟ペプチド、配列番号7)、ジーンバンク(GeneBank)BAC01733(配列番号8)、および生殖細胞系A19(X63397、配列番号9)抗体の軽鎖のアミノ酸配列の整列を示す。CDR領域は四角で囲った。充填残基には下線を付けた。Kabat番号付けではなく、第一メチオニンから番号を付けた。図5Bは、ネズミ(またはキメラ)12A11(配列番号4)、ヒト化12A11(バージョン1)(成熟ペプチド、配列番号10)、ジーンバンクAAA69734(配列番号11)、および生殖細胞系ジーンバンク567123抗体(配列番号12)の重鎖のアミノ酸配列の整列を示す。充填残基は下線、カノニカル(canonical)残基は実線そしてバーニア残基は点で示す。Kabat番号付けではなく、第一メチオニンから番号を付けた。
【図6】図6A〜Bは、ヒト化12A11v1(配列番号10)、v2(配列番号13)、v2.1(配列番号14)、v3(配列番号15)、v4.1(配列番号16)、v4.2(配列番号17)、v4.3(配列番号18)、v4.4(配列番号19)、v5.1(配列番号20)、v5.2(配列番号21)、v5.3(配列番号22)、v5.4(配列番号23)、v5.5(配列番号24)、v5.6(配列番号25)、v6.1(配列番号26)、v6.2(配列番号27)、v6.3(配列番号28)、v6.4(配列番号29)、v7(配列番号30)およびv8(配列番号31)の重鎖のアミノ酸配列の整列を示す。図6Cは、ヒト化12A11v1〜v8内に発生した復帰突然変異を示す。
【図7】図7は、キメラ12A11、ヒト化12A11v1、ヒト化12A11v2、ヒト化12A11v2.1、およびヒト化12A11v3を比較した凝集Aβ(1−42)ELISAからの結果を示す。
【図8】図8は、ネズミ12A11、キメラ12A11およびh12A11v1を比較した競合Aβ1−42ELISA結合性アッセイの結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号2として示される12A11免疫グロブリン軽鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖配列からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン軽鎖。
【請求項2】
少なくとも1個のフレームワーク残基がマウス12A11軽鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換され、ここで、該フレームワーク残基が
(a)抗原を直接非共有結合する残基、
(b)CDRに隣接する残基、
(c)CDRと相互作用する残基、および
(d)VL−VH−界面に関与する残基
から成る群から選択される、(i)配列番号2として示される12A11免疫グロブリン軽鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖配列からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン軽鎖。
【請求項3】
(i)配列番号4として示される12A11免疫グロブリン重鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン重鎖配列からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン重鎖。
【請求項4】
少なくとも1個のフレームワーク残基がマウス12A11重鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換されて、ここで、該フレームワーク残基が
(a)抗原を直接非共有結合する残基、
(b)CDRに隣接する残基、
(c)CDRと相互作用する残基、および
(d)VL−VH−界面に関与する残基
から成る群から選択される、(i)配列番号4として示される12A11免疫グロブリン重鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン重鎖からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン重鎖。
【請求項5】
CDRと相互作用する残基が、12A11軽鎖と少なくとも70%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項2の軽鎖。
【請求項6】
CDRと相互作用する残基が、12A11軽鎖と少なくとも80%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項2の軽鎖。
【請求項7】
CDRと相互作用する残基が、12A11軽鎖と少なくとも90%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項2の軽鎖。
【請求項8】
CDRと相互作用する残基が、12A11重鎖と少なくとも70%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項4の重鎖。
【請求項9】
CDRと相互作用する残基が、12A11重鎖と少なくとも80%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項4の重鎖。
【請求項10】
CDRと相互作用する残基が、12A11重鎖と少なくとも90%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項4の重鎖。
【請求項11】
少なくとも1個のフレームワーク残基がマウス12A11軽鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換されており、ここで、該フレームワーク残基が、12A11免疫グロブリン軽鎖可変領域の三次元モデルの分析により同定される、軽鎖可変領域コンホメーションまたは機能に影響できる残基である、(i)配列番号2として示される12A11免疫グロブリン軽鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖配列からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン軽鎖。
【請求項12】
少なくとも1個のフレームワーク残基がマウス12A11重鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換されており、ここで、該フレームワーク残基が、12A11免疫グロブリン重鎖可変領域の三次元モデルの分析により同定される、重鎖可変領域コンホメーションまたは機能に影響できる残基である、(i)配列番号4として示される12A11免疫グロブリン重鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン重鎖からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン重鎖。
【請求項13】
フレームワーク残基が、抗原と相互作用できる残基、抗原結合部位に近位の残基、CDRと相互作用できる残基、CDRに隣接する残基、CDR残基から6Å以内の残基、カノニカル(canonical)残基、バーニアゾーン残基、鎖間充填残基、稀な残基、構造モデルの表面上のグリコシル化部位残基から成る群から選択される、請求項11の軽鎖。
【請求項14】
フレームワーク残基が、抗原と相互作用できる残基、抗原結合部位に近位の残基、CDRと相互作用できる残基、CDRに隣接する残基、CDR残基から6Å以内の残基、カノニカル(canonical)残基、バーニアゾーン残基、鎖間充填残基、稀な残基、構造モデルの表面上のグリコシル化部位残基から成る群から選択される、請求項12の重鎖。
【請求項15】
フレームワーク残基が、Kabatによる番号付けに従って軽鎖の位置2、4、36、38、40、44、46、47、48、49、64、66、68、69、71、87および98から成る群から選択される少なくとも1個の位置で置換されている、請求項11の軽鎖。
【請求項16】
フレームワーク残基が、Kabatによる番号付けに従って重鎖の位置2、24、26、27、28、29、37、39、45、47、48、67、71、73、78、91、93、94および103から成る群から選択される少なくとも1個の位置で置換されている、請求項12の重鎖。
【請求項17】
フレームワーク残基が、Kabatによる番号付けに従って重鎖の位置24、28、29、37、48、67、71、73および78から成る群から選択される位置で置換されている、請求項12の重鎖。
【請求項18】
フレームワーク残基が、12A11軽鎖と少なくとも70%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項11または13の軽鎖。
【請求項19】
フレームワーク残基が、12A11軽鎖と少なくとも80%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項11または13の軽鎖。
【請求項20】
フレームワーク残基が、12A11軽鎖と少なくとも90%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項11または13の軽鎖。
【請求項21】
フレームワーク残基が、12A11重鎖と少なくとも70%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項12または14の重鎖。
【請求項22】
フレームワーク残基が、12A11重鎖と少なくとも80%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項12または14の重鎖。
【請求項23】
フレームワーク残基が、12A11重鎖と少なくとも90%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項12または14の重鎖。
【請求項24】
請求項1、2、5〜7、11、13、15および18〜20のいずれか一つの軽鎖、および請求項3、4、8〜10、12、14、16〜17および21〜23のいずれか一つの重鎖を含んでなるヒト化免疫グロブリン、または該免疫グロブリンの抗原結合フラグメント。
【請求項25】
ベータアミロイドペプチド(Aβ)に少なくとも10−7Mの結合親和性で特異的に結合する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項26】
ベータアミロイドペプチド(Aβ)に少なくとも10−8Mの結合親和性で特異的に結合する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項27】
ベータアミロイドペプチド(Aβ)に少なくとも10−9Mの結合親和性で特異的に結合する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項28】
重鎖イソタイプがγ1である、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項29】
可溶性ベータアミロイドペプチド(Aβ)に結合する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項30】
凝集性ベータアミロイドペプチド(Aβ)に結合する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項31】
ベータアミロイドペプチド(Aβ)のファゴサイトーシスを媒介する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項32】
対象内の血液脳関門を通過する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項33】
対象内のベータアミロイドペプチド(Aβ)斑負荷を低下させる、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項34】
(a)ヒト化軽鎖が、配列番号2で示されるマウス12A11免疫グロブリン軽鎖可変ドメインの相応する相補性決定領域からのアミノ酸配列を有する三つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)およびヒト軽鎖可変領域フレームワーク配列からの可変領域フレームワークを含んでなり、ただしカノニカル残基、バーニア残基、充填残基および稀な残基から成る群から選択される少なくとも1個のフレームワーク残基が、マウス12A11免疫グロブリン軽鎖可変領域フレームワークの等価位置内に存在する同一のアミノ酸残基により占められており、そして
(b)ヒト化重鎖が、配列番号4と称されるマウス12A11免疫グロブリン重鎖可変ドメインの相応する相補性決定領域からのアミノ酸配列を有する三つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)およびヒト重鎖可変領域フレームワーク配列からの可変領域フレームワークを含んでなり、ただしカノニカル残基、バーニア残基、充填残基および稀な残基から成る第二の群から選択される少なくとも1個のフレームワーク残基が、マウス12A11免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの等価位置内に存在する同一のアミノ酸残基により占められており、
ここでヒト化免疫グロブリンがベータアミロイドペプチド(「Aβ」)に少なくとも10−7Mの結合親和性で特異的に結合し、ここで12A11免疫グロブリンが配列番号2で示される可変ドメインを有する軽鎖および配列番号4で示される可変ドメインを有する重鎖を有する、
ヒト化重鎖およびヒト化軽鎖を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン。
【請求項35】
ヒト軽鎖可変領域フレームワークがカッパ軽鎖可変領域由来である、請求項34のヒト化免疫グロブリン。
【請求項36】
ヒト重鎖可変領域フレームワークがIgG1重鎖可変領域由来である、請求項34のヒト化免疫グロブリン。
【請求項37】
軽鎖可変領域フレームワークが、12A11免疫グロブリンの軽鎖配列と少なくとも70%の配列同一性を有するヒト免疫グロブリン軽鎖由来である、請求項34のヒト化免疫グロブリン。
【請求項38】
重鎖可変領域フレームワークが、12A11免疫グロブリンの重鎖配列と少なくとも70%の配列同一性を有するヒト免疫グロブリン重鎖由来である、請求項34のヒト化免疫グロブリン。
【請求項39】
ヒト化軽鎖がマウス12A11重鎖の相応する相補性決定領域に同一性する相補性決定領域を含んでなりそしてヒト化重鎖がマウス12A11重鎖の相応する相補性決定領域に一致する相補性決定領域を含んでなる、請求項34のヒト化免疫グロブリン。
【請求項40】
配列番号2として示される12A11可変軽鎖配列の相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含んでなるヒト化抗体。
【請求項41】
配列番号4として示される12A11可変重鎖配列の相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含んでなるヒト化抗体。
【請求項42】
マウス12A11抗体からのCDRに相応する相補性決定領域(CDR)を含んでなる可変領域を含んでなる、ベータアミロイドペプチド(Aβ)に特異的に結合するヒト化抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項43】
配列番号6として示される可変軽鎖アミノ酸配列を有しそして配列番号8、配列番号9および配列番号10から成る群から選択される可変重鎖アミノ酸配列を有する、ヒト化免疫グロブリン。
【請求項44】
配列番号2または配列番号4中に本質的に示される可変領域配列、およびヒト免疫グロブリンからの定常領域配列を含んでなる、キメラ免疫グロブリン。
【請求項45】
請求項24〜43のいずれか1項のヒト化免疫グロブリンの有効投与量を患者に投与することを含んでなる、患者内のアミロイド疾患を予防または処置する方法。
【請求項46】
請求項24〜43のいずれか1項のヒト化免疫グロブリンの有効投与量を患者に投与することを含んでなる、患者内のアルツハイマー病を予防または処置する方法。
【請求項47】
ヒト化免疫グロブリンの有効投与量が少なくとも約1mg/kg(体重)である、請求項46の方法。
【請求項48】
ヒト化免疫グロブリンの有効投与量が少なくとも約10mg/kg(体重)である、請求項46の方法。
【請求項49】
請求項24〜43のいずれか1項の免疫グロブリンおよび製薬学的キャリヤを含んでなる、製薬学的組成物。
【請求項50】
配列番号2のアミノ酸43〜58、配列番号2のアミノ酸74〜80および配列番号2のアミノ酸113〜121から成る群から選択される、配列番号2のフラグメントを含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項51】
配列番号2のアミノ酸43〜58、配列番号2のアミノ酸74〜80および配列番号2のアミノ酸113〜121を含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項52】
配列番号4のアミノ酸50〜56、配列番号4のアミノ酸71〜86および配列番号4のアミノ酸119〜128から成る群から選択される、配列番号4のフラグメントを含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項53】
配列番号4のアミノ酸50〜56、配列番号4のアミノ酸71〜86および配列番号4のアミノ酸119〜128を含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項54】
配列番号2のアミノ酸1〜131を含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項55】
配列番号4のアミノ酸1〜139を含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項56】
配列番号2のアミノ酸1〜131に少なくとも85%同一性を有する、単離されたポリペプチド。
【請求項57】
配列番号4のアミノ酸1〜139に少なくとも85%同一性を有する、単離されたポリペプチド。
【請求項58】
ポリペプチドが少なくとも86%同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項59】
ポリペプチドが少なくとも87%同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項60】
ポリペプチドが少なくとも88%同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項61】
ポリペプチドが少なくとも89%同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項62】
ポリペプチドが少なくとも90%同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項63】
ポリペプチドが少なくとも90%またはそれ以上の同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項64】
改変体が少なくとも107 M−1の結合親和性でベータアミロイドペプチド(Aβ)に特異的に結合する能力を保持する、該改変体が少なくとも1個の保存的アミノ酸置換を含んでなる、配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの改変体。
【請求項65】
改変体が少なくとも107 M−1の結合親和性でベータアミロイドペプチド(Aβ)への特異的結合を指定する能力を保持する、該改変体が少なくとも1個の保存的アミノ酸置換を含んでなる、配列番号4のアミノ酸配列を含んでなる、ポリペプチドの改変体。
【請求項66】
請求項1、2、5〜7、11、13、15および18〜20のいずれか1項の軽鎖をコードする単離された核酸分子。
【請求項67】
請求項3、4、8〜10、12、14、16〜17および21〜23のいずれか1項の重鎖をコードする単離された核酸分子。
【請求項68】
請求項46〜65のいずれか一項のポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項69】
請求項21〜44のいずれか1項の免疫グロブリンをコードする単離された核酸分子。
【請求項70】
配列番号1または3の核酸配列を含んでなる,単離された核酸分子。
【請求項71】
請求項66〜70のいずれかの核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項72】
請求項66〜70のいずれかの核酸分子を含んでなる宿主細胞。
【請求項73】
前記請求項のいずれかの核酸分子によりコードされるポリペプチドを発現するトランスジェニック動物。
【請求項74】
ポリペプチドが動物の乳内に発現される、請求項73のトランスジェニック動物。
【請求項75】
抗体またはフラグメントが産生されるような条件下で請求項72の宿主細胞を培養しそして宿主細胞または培養物から該抗体を単離することを含んでなる、抗体、またはそのフラグメントを産生する方法。
【請求項76】
配列番号2のアミノ酸43〜58、配列番号2のアミノ酸74〜80および配列番号2のアミノ酸113−121から成る群から選択される配列番号2のフラグメントを含んでなる抗体または抗体フラグメントを産生する方法であって、該抗体または抗体フラグメントをコードする核酸分子を含んでなる宿主細胞を抗体または抗体フラグメントが産生されるような条件下で培養し、そして宿主細胞または培養物から該抗体または抗体フラグメントを単離することを含んでなる、上記方法。
【請求項77】
配列番号4のアミノ酸50〜56、配列番号4のアミノ酸71〜86および配列番号4のアミノ酸119−128から成る群から選択される配列番号4のフラグメントを含んでなる抗体または抗体フラグメントを産生する方法であって、該抗体または抗体フラグメントをコードする核酸分子を含んでなる宿主細胞を抗体または抗体フラグメントが産生されるような条件下で培養し、そして宿主細胞または培養物から該抗体または抗体フラグメントを単離することを含んでなる、上記方法。
【請求項78】
解明された免疫グロブリン構造に基づく12A11可変領域の三次元構造をモデルとし、そして置換されやすい残基が同定されるように、12A11免疫グロブリン可変領域コンホメーションまたは機能に影響できる残基について該モデルを分析することを含んでなる、ヒト化12A11免疫グロブリン可変フレームワーク領域内で置換されやすい残基を同定する方法。
【請求項79】
12A11免疫グロブリン、12A11免疫グロブリン鎖、またはそのドメインの三次元イメージの作成における、配列番号2もしくは配列番号4、またはそれらのいずれかの部分として示される可変領域配列の使用。
【請求項80】
Aβに特異的に結合する薬剤を患者に投与し、そしてAβに結合した抗体を検出することを含んでなる、患者の脳内のアミロイド沈着をイメージする方法。
【請求項81】
薬剤が、配列番号2に示される軽鎖可変配列および配列番号4に示される重鎖可変領域配列、または該抗体の抗原結合フラグメントを含んでなる抗体である、請求項80の方法。
【請求項82】
抗原結合フラグメントがFabフラグメントである。請求項80の方法。
【請求項83】
使用説明書を含む、請求項80〜82のいずれか1項の方法によるイメージングのためのキット。
【請求項84】
配列番号2のアミノ酸配列のCDRを含んでなる免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸分子、および配列番号4のアミノ酸配列のCDRを含んでなる免疫グロブリン重鎖をコードする核酸分子を、該免疫グロブリン鎖が発現される条件下で、該患者内に有益な治療反応が発生するように、アミロイド疾患を有する患者に投与することを含んでなる、該アミロイド疾患を処置する方法。
【請求項85】
配列番号7のアミノ酸配列のCDRを含んでなる免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸分子、および配列番号10のアミノ酸配列のCDRを含んでなる免疫グロブリン重鎖をコードする核酸分子または配列番号13〜31のいずれか一つのアミノ酸配列を、該免疫グロブリンが発現される条件下で、該患者内に有益な治療反応が発生するように、アミロイド疾患を有する患者に投与することを含んでなる、該アミロイド疾患を処置する方法。
【請求項86】
上記請求項のいずれかのヒト化免疫グロブリンの有効投与量を患者に投与することを含んでなる、患者の脳内のAβのアミロイド沈着と関連する疾患を予防または処置する方法。
【請求項87】
疾患が認知障害であることを特徴とする、請求項86の方法。
【請求項88】
疾患がアルツハイマー病である、請求項86の方法。
【請求項89】
疾患がダウン症候群である、請求項86の方法。
【請求項90】
疾患が温和な認知障害である、請求項86の方法。
【請求項91】
抗体がヒトイソタイプIgG1である、請求項86の方法。
【請求項92】
疾患がヒトである、前記請求項のいずれかの方法。
【請求項93】
投与の後に抗体が患者内のアミロイド沈着に結合しそしてアミロイド沈着に対する除去反応を誘導する、請求項86〜92のいずれか一つの方法。
【請求項94】
除去反応がFc受容体媒介ファゴサイトーシス反応である、請求項93の方法。
【請求項95】
除去反応を監視することをさらに含んでなる、請求項93または94の方法。
【請求項96】
投与後に抗体が患者の可溶性Aβに結合する、請求項86〜92のいずれか1項の方法。
【請求項97】
投与後に抗体が患者内の血清、血液または脳脊髄液中の可溶性Aβに結合する、請求項86〜92のいずれか1項の方法。
【請求項98】
患者が無症候性である、請求項86〜97のいずれか1項の方法。
【請求項99】
患者が年齢50歳未満である、請求項86〜98のいずれか1項の方法。
【請求項100】
患者がアルツハイマー病への罹患性を示す遺伝性危険因子を有する、請求項86〜99のいずれか1項の方法。
【請求項101】
抗体の投与量が患者の体重kgあたりに少なくとも1mgである、請求項86〜100のいずれか1項の方法。
【請求項102】
抗体の投与量が患者の体重kgあたりに少なくとも10mgである、請求項86〜100のいずれか1項の方法。
【請求項103】
抗体が製薬学的組成物としてキャリヤと一緒に投与される、請求項86〜102のいずれか1項の方法。
【請求項104】
抗体が腹腔内、経口、鼻内、皮下、筋肉内、局所または静脈内に投与される、請求項77〜103のいずれか1項の方法。
【請求項105】
上記請求項のいずれか1項のヒト化免疫グロブリンの有効投与量を対象に投与することを含んでなる、それを必要とする対象内の斑負荷を低下する方法。
【請求項106】
投与後に、抗体が患者内のアミロイド沈着に結合しそしてアミロイド沈着に対する反応除去を誘導する、請求項105の方法。
【請求項107】
除去反応がFc受容体媒介ファゴサイトーシス反応である、請求項106の方法。
【請求項108】
除去反応を監視することをさらに含んでなる、請求項106または107の方法。
【請求項109】
投与後に、抗体が患者内の可溶性Aβに結合する、請求項105の方法。
【請求項110】
投与後に、抗体が患者の血清、血液または脳骨髄液内の可溶性Aβに結合する、請求項105の方法。
【請求項111】
改変されたエフェクター機能を有するFc領域を含んでなる、上記請求項のいずれか1項のヒト化免疫グロブリン。
【請求項112】
抗体がIgG1イソタイプである、ベータアミロイドペプチド(Aβ)のアミノ酸3〜7内のエピトープに結合するヒト化12A11抗体の有効投与量を対象に投与することを含んでなる、それを必要とする対象内の神経炎性負荷を低下する方法。
【請求項113】
対象がアミロイド疾患を有する、請求項112の方法。
【請求項114】
アミロイド疾患がアルツハイマー病である、請求項113の方法。
【請求項115】
抗体がAβのアミノ酸3〜7内のエピトープに結合しそしてIgG1イソタイプである、患者内のベータアミロイドペプチド(Aβ)負荷および神経炎性ジストロフィーを低下できるヒト化12A11抗体の有効投与量を対象に投与することを含んでなる、患者内のアミロイド疾患を処置する方法。
【請求項116】
アミロイド疾患がアルツハイマー病である、請求項115の方法。
【請求項117】
抗体がAβのアミノ酸3〜7内のエピトープに結合しそしてIgG1イソタイプである、ベータアミロイドペプチド(Aβ)負荷および神経炎性ジストロフィーを低下できるヒト化12A11抗体の有効投与量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物内のベータアミロイドペプチド(Aβ)負荷および神経炎性ジストロフィーを低下する方法。
【請求項118】
哺乳動物がヒトである、請求項117の方法。
【請求項119】
哺乳動物がアミロイド疾患を有する、請求項117または118の方法。
【請求項120】
アミロイド疾患がアルツハイマー病である、請求項119の方法。
【請求項121】
抗体が対象内の神経炎性負荷を低下できる、ベータアミロイドペプチド(Aβ)のアミノ酸3〜7内のエピトープに結合するIgG1イソタイプのヒト化12A11抗体を含んでなる治療用組成物。
【請求項122】
抗体がAβのアミノ酸3〜7内のエピトープに結合しそしてIgG1イソタイプである、可溶性ベータアミロイドペプチド(Aβ)に結合しそして患者内の神経炎性ジストロフィーを軽減するヒト化12A11抗体の有効投与量を患者に投与することを含んでなる、患者内のアミロイド疾患を処置する方法。
【請求項123】
アミロイド疾患がアルツハイマー病である、請求項122の方法。
【請求項124】
抗体がAβのアミノ酸3〜7内のエピトープに結合しそして患者内の神経炎性負荷を低下できる、可溶性ベータアミロイドペプチド(Aβ)に結合するIgG1イソタイプのヒト化12A11抗体を含んでなる治療用組成物。
【請求項1】
(i)配列番号2として示される12A11免疫グロブリン軽鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖配列からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン軽鎖。
【請求項2】
少なくとも1個のフレームワーク残基がマウス12A11軽鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換され、ここで、該フレームワーク残基が
(a)抗原を直接非共有結合する残基、
(b)CDRに隣接する残基、
(c)CDRと相互作用する残基、および
(d)VL−VH−界面に関与する残基
から成る群から選択される、(i)配列番号2として示される12A11免疫グロブリン軽鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖配列からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン軽鎖。
【請求項3】
(i)配列番号4として示される12A11免疫グロブリン重鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン重鎖配列からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン重鎖。
【請求項4】
少なくとも1個のフレームワーク残基がマウス12A11重鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換されて、ここで、該フレームワーク残基が
(a)抗原を直接非共有結合する残基、
(b)CDRに隣接する残基、
(c)CDRと相互作用する残基、および
(d)VL−VH−界面に関与する残基
から成る群から選択される、(i)配列番号4として示される12A11免疫グロブリン重鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン重鎖からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン重鎖。
【請求項5】
CDRと相互作用する残基が、12A11軽鎖と少なくとも70%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項2の軽鎖。
【請求項6】
CDRと相互作用する残基が、12A11軽鎖と少なくとも80%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項2の軽鎖。
【請求項7】
CDRと相互作用する残基が、12A11軽鎖と少なくとも90%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項2の軽鎖。
【請求項8】
CDRと相互作用する残基が、12A11重鎖と少なくとも70%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項4の重鎖。
【請求項9】
CDRと相互作用する残基が、12A11重鎖と少なくとも80%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項4の重鎖。
【請求項10】
CDRと相互作用する残基が、12A11重鎖と少なくとも90%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項4の重鎖。
【請求項11】
少なくとも1個のフレームワーク残基がマウス12A11軽鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換されており、ここで、該フレームワーク残基が、12A11免疫グロブリン軽鎖可変領域の三次元モデルの分析により同定される、軽鎖可変領域コンホメーションまたは機能に影響できる残基である、(i)配列番号2として示される12A11免疫グロブリン軽鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン軽鎖配列からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン軽鎖。
【請求項12】
少なくとも1個のフレームワーク残基がマウス12A11重鎖可変領域配列からの相応するアミノ酸残基で置換されており、ここで、該フレームワーク残基が、12A11免疫グロブリン重鎖可変領域の三次元モデルの分析により同定される、重鎖可変領域コンホメーションまたは機能に影響できる残基である、(i)配列番号4として示される12A11免疫グロブリン重鎖可変領域配列からの可変領域相補性決定領域(CDR)、および(ii)ヒトアクセプター免疫グロブリン重鎖からの可変フレームワーク領域を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン重鎖。
【請求項13】
フレームワーク残基が、抗原と相互作用できる残基、抗原結合部位に近位の残基、CDRと相互作用できる残基、CDRに隣接する残基、CDR残基から6Å以内の残基、カノニカル(canonical)残基、バーニアゾーン残基、鎖間充填残基、稀な残基、構造モデルの表面上のグリコシル化部位残基から成る群から選択される、請求項11の軽鎖。
【請求項14】
フレームワーク残基が、抗原と相互作用できる残基、抗原結合部位に近位の残基、CDRと相互作用できる残基、CDRに隣接する残基、CDR残基から6Å以内の残基、カノニカル(canonical)残基、バーニアゾーン残基、鎖間充填残基、稀な残基、構造モデルの表面上のグリコシル化部位残基から成る群から選択される、請求項12の重鎖。
【請求項15】
フレームワーク残基が、Kabatによる番号付けに従って軽鎖の位置2、4、36、38、40、44、46、47、48、49、64、66、68、69、71、87および98から成る群から選択される少なくとも1個の位置で置換されている、請求項11の軽鎖。
【請求項16】
フレームワーク残基が、Kabatによる番号付けに従って重鎖の位置2、24、26、27、28、29、37、39、45、47、48、67、71、73、78、91、93、94および103から成る群から選択される少なくとも1個の位置で置換されている、請求項12の重鎖。
【請求項17】
フレームワーク残基が、Kabatによる番号付けに従って重鎖の位置24、28、29、37、48、67、71、73および78から成る群から選択される位置で置換されている、請求項12の重鎖。
【請求項18】
フレームワーク残基が、12A11軽鎖と少なくとも70%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項11または13の軽鎖。
【請求項19】
フレームワーク残基が、12A11軽鎖と少なくとも80%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項11または13の軽鎖。
【請求項20】
フレームワーク残基が、12A11軽鎖と少なくとも90%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン軽鎖の解明された構造に基づく12A11軽鎖をモデルとして同定される、請求項11または13の軽鎖。
【請求項21】
フレームワーク残基が、12A11重鎖と少なくとも70%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項12または14の重鎖。
【請求項22】
フレームワーク残基が、12A11重鎖と少なくとも80%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項12または14の重鎖。
【請求項23】
フレームワーク残基が、12A11重鎖と少なくとも90%の配列同一性を共有するネズミ免疫グロブリン重鎖の解明された構造に基づく12A11重鎖をモデルとして同定される、請求項12または14の重鎖。
【請求項24】
請求項1、2、5〜7、11、13、15および18〜20のいずれか一つの軽鎖、および請求項3、4、8〜10、12、14、16〜17および21〜23のいずれか一つの重鎖を含んでなるヒト化免疫グロブリン、または該免疫グロブリンの抗原結合フラグメント。
【請求項25】
ベータアミロイドペプチド(Aβ)に少なくとも10−7Mの結合親和性で特異的に結合する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項26】
ベータアミロイドペプチド(Aβ)に少なくとも10−8Mの結合親和性で特異的に結合する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項27】
ベータアミロイドペプチド(Aβ)に少なくとも10−9Mの結合親和性で特異的に結合する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項28】
重鎖イソタイプがγ1である、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項29】
可溶性ベータアミロイドペプチド(Aβ)に結合する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項30】
凝集性ベータアミロイドペプチド(Aβ)に結合する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項31】
ベータアミロイドペプチド(Aβ)のファゴサイトーシスを媒介する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項32】
対象内の血液脳関門を通過する、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項33】
対象内のベータアミロイドペプチド(Aβ)斑負荷を低下させる、請求項24の免疫グロブリンまたは抗原結合フラグメント。
【請求項34】
(a)ヒト化軽鎖が、配列番号2で示されるマウス12A11免疫グロブリン軽鎖可変ドメインの相応する相補性決定領域からのアミノ酸配列を有する三つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)およびヒト軽鎖可変領域フレームワーク配列からの可変領域フレームワークを含んでなり、ただしカノニカル残基、バーニア残基、充填残基および稀な残基から成る群から選択される少なくとも1個のフレームワーク残基が、マウス12A11免疫グロブリン軽鎖可変領域フレームワークの等価位置内に存在する同一のアミノ酸残基により占められており、そして
(b)ヒト化重鎖が、配列番号4と称されるマウス12A11免疫グロブリン重鎖可変ドメインの相応する相補性決定領域からのアミノ酸配列を有する三つの相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)およびヒト重鎖可変領域フレームワーク配列からの可変領域フレームワークを含んでなり、ただしカノニカル残基、バーニア残基、充填残基および稀な残基から成る第二の群から選択される少なくとも1個のフレームワーク残基が、マウス12A11免疫グロブリン重鎖可変領域フレームワークの等価位置内に存在する同一のアミノ酸残基により占められており、
ここでヒト化免疫グロブリンがベータアミロイドペプチド(「Aβ」)に少なくとも10−7Mの結合親和性で特異的に結合し、ここで12A11免疫グロブリンが配列番号2で示される可変ドメインを有する軽鎖および配列番号4で示される可変ドメインを有する重鎖を有する、
ヒト化重鎖およびヒト化軽鎖を含んでなる、ヒト化免疫グロブリン。
【請求項35】
ヒト軽鎖可変領域フレームワークがカッパ軽鎖可変領域由来である、請求項34のヒト化免疫グロブリン。
【請求項36】
ヒト重鎖可変領域フレームワークがIgG1重鎖可変領域由来である、請求項34のヒト化免疫グロブリン。
【請求項37】
軽鎖可変領域フレームワークが、12A11免疫グロブリンの軽鎖配列と少なくとも70%の配列同一性を有するヒト免疫グロブリン軽鎖由来である、請求項34のヒト化免疫グロブリン。
【請求項38】
重鎖可変領域フレームワークが、12A11免疫グロブリンの重鎖配列と少なくとも70%の配列同一性を有するヒト免疫グロブリン重鎖由来である、請求項34のヒト化免疫グロブリン。
【請求項39】
ヒト化軽鎖がマウス12A11重鎖の相応する相補性決定領域に同一性する相補性決定領域を含んでなりそしてヒト化重鎖がマウス12A11重鎖の相応する相補性決定領域に一致する相補性決定領域を含んでなる、請求項34のヒト化免疫グロブリン。
【請求項40】
配列番号2として示される12A11可変軽鎖配列の相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含んでなるヒト化抗体。
【請求項41】
配列番号4として示される12A11可変重鎖配列の相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を含んでなるヒト化抗体。
【請求項42】
マウス12A11抗体からのCDRに相応する相補性決定領域(CDR)を含んでなる可変領域を含んでなる、ベータアミロイドペプチド(Aβ)に特異的に結合するヒト化抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【請求項43】
配列番号6として示される可変軽鎖アミノ酸配列を有しそして配列番号8、配列番号9および配列番号10から成る群から選択される可変重鎖アミノ酸配列を有する、ヒト化免疫グロブリン。
【請求項44】
配列番号2または配列番号4中に本質的に示される可変領域配列、およびヒト免疫グロブリンからの定常領域配列を含んでなる、キメラ免疫グロブリン。
【請求項45】
請求項24〜43のいずれか1項のヒト化免疫グロブリンの有効投与量を患者に投与することを含んでなる、患者内のアミロイド疾患を予防または処置する方法。
【請求項46】
請求項24〜43のいずれか1項のヒト化免疫グロブリンの有効投与量を患者に投与することを含んでなる、患者内のアルツハイマー病を予防または処置する方法。
【請求項47】
ヒト化免疫グロブリンの有効投与量が少なくとも約1mg/kg(体重)である、請求項46の方法。
【請求項48】
ヒト化免疫グロブリンの有効投与量が少なくとも約10mg/kg(体重)である、請求項46の方法。
【請求項49】
請求項24〜43のいずれか1項の免疫グロブリンおよび製薬学的キャリヤを含んでなる、製薬学的組成物。
【請求項50】
配列番号2のアミノ酸43〜58、配列番号2のアミノ酸74〜80および配列番号2のアミノ酸113〜121から成る群から選択される、配列番号2のフラグメントを含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項51】
配列番号2のアミノ酸43〜58、配列番号2のアミノ酸74〜80および配列番号2のアミノ酸113〜121を含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項52】
配列番号4のアミノ酸50〜56、配列番号4のアミノ酸71〜86および配列番号4のアミノ酸119〜128から成る群から選択される、配列番号4のフラグメントを含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項53】
配列番号4のアミノ酸50〜56、配列番号4のアミノ酸71〜86および配列番号4のアミノ酸119〜128を含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項54】
配列番号2のアミノ酸1〜131を含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項55】
配列番号4のアミノ酸1〜139を含んでなる、単離されたポリペプチド。
【請求項56】
配列番号2のアミノ酸1〜131に少なくとも85%同一性を有する、単離されたポリペプチド。
【請求項57】
配列番号4のアミノ酸1〜139に少なくとも85%同一性を有する、単離されたポリペプチド。
【請求項58】
ポリペプチドが少なくとも86%同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項59】
ポリペプチドが少なくとも87%同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項60】
ポリペプチドが少なくとも88%同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項61】
ポリペプチドが少なくとも89%同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項62】
ポリペプチドが少なくとも90%同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項63】
ポリペプチドが少なくとも90%またはそれ以上の同一性を有する、請求項56または57の単離されたポリペプチド。
【請求項64】
改変体が少なくとも107 M−1の結合親和性でベータアミロイドペプチド(Aβ)に特異的に結合する能力を保持する、該改変体が少なくとも1個の保存的アミノ酸置換を含んでなる、配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの改変体。
【請求項65】
改変体が少なくとも107 M−1の結合親和性でベータアミロイドペプチド(Aβ)への特異的結合を指定する能力を保持する、該改変体が少なくとも1個の保存的アミノ酸置換を含んでなる、配列番号4のアミノ酸配列を含んでなる、ポリペプチドの改変体。
【請求項66】
請求項1、2、5〜7、11、13、15および18〜20のいずれか1項の軽鎖をコードする単離された核酸分子。
【請求項67】
請求項3、4、8〜10、12、14、16〜17および21〜23のいずれか1項の重鎖をコードする単離された核酸分子。
【請求項68】
請求項46〜65のいずれか一項のポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
【請求項69】
請求項21〜44のいずれか1項の免疫グロブリンをコードする単離された核酸分子。
【請求項70】
配列番号1または3の核酸配列を含んでなる,単離された核酸分子。
【請求項71】
請求項66〜70のいずれかの核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項72】
請求項66〜70のいずれかの核酸分子を含んでなる宿主細胞。
【請求項73】
前記請求項のいずれかの核酸分子によりコードされるポリペプチドを発現するトランスジェニック動物。
【請求項74】
ポリペプチドが動物の乳内に発現される、請求項73のトランスジェニック動物。
【請求項75】
抗体またはフラグメントが産生されるような条件下で請求項72の宿主細胞を培養しそして宿主細胞または培養物から該抗体を単離することを含んでなる、抗体、またはそのフラグメントを産生する方法。
【請求項76】
配列番号2のアミノ酸43〜58、配列番号2のアミノ酸74〜80および配列番号2のアミノ酸113−121から成る群から選択される配列番号2のフラグメントを含んでなる抗体または抗体フラグメントを産生する方法であって、該抗体または抗体フラグメントをコードする核酸分子を含んでなる宿主細胞を抗体または抗体フラグメントが産生されるような条件下で培養し、そして宿主細胞または培養物から該抗体または抗体フラグメントを単離することを含んでなる、上記方法。
【請求項77】
配列番号4のアミノ酸50〜56、配列番号4のアミノ酸71〜86および配列番号4のアミノ酸119−128から成る群から選択される配列番号4のフラグメントを含んでなる抗体または抗体フラグメントを産生する方法であって、該抗体または抗体フラグメントをコードする核酸分子を含んでなる宿主細胞を抗体または抗体フラグメントが産生されるような条件下で培養し、そして宿主細胞または培養物から該抗体または抗体フラグメントを単離することを含んでなる、上記方法。
【請求項78】
解明された免疫グロブリン構造に基づく12A11可変領域の三次元構造をモデルとし、そして置換されやすい残基が同定されるように、12A11免疫グロブリン可変領域コンホメーションまたは機能に影響できる残基について該モデルを分析することを含んでなる、ヒト化12A11免疫グロブリン可変フレームワーク領域内で置換されやすい残基を同定する方法。
【請求項79】
12A11免疫グロブリン、12A11免疫グロブリン鎖、またはそのドメインの三次元イメージの作成における、配列番号2もしくは配列番号4、またはそれらのいずれかの部分として示される可変領域配列の使用。
【請求項80】
Aβに特異的に結合する薬剤を患者に投与し、そしてAβに結合した抗体を検出することを含んでなる、患者の脳内のアミロイド沈着をイメージする方法。
【請求項81】
薬剤が、配列番号2に示される軽鎖可変配列および配列番号4に示される重鎖可変領域配列、または該抗体の抗原結合フラグメントを含んでなる抗体である、請求項80の方法。
【請求項82】
抗原結合フラグメントがFabフラグメントである。請求項80の方法。
【請求項83】
使用説明書を含む、請求項80〜82のいずれか1項の方法によるイメージングのためのキット。
【請求項84】
配列番号2のアミノ酸配列のCDRを含んでなる免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸分子、および配列番号4のアミノ酸配列のCDRを含んでなる免疫グロブリン重鎖をコードする核酸分子を、該免疫グロブリン鎖が発現される条件下で、該患者内に有益な治療反応が発生するように、アミロイド疾患を有する患者に投与することを含んでなる、該アミロイド疾患を処置する方法。
【請求項85】
配列番号7のアミノ酸配列のCDRを含んでなる免疫グロブリン軽鎖をコードする核酸分子、および配列番号10のアミノ酸配列のCDRを含んでなる免疫グロブリン重鎖をコードする核酸分子または配列番号13〜31のいずれか一つのアミノ酸配列を、該免疫グロブリンが発現される条件下で、該患者内に有益な治療反応が発生するように、アミロイド疾患を有する患者に投与することを含んでなる、該アミロイド疾患を処置する方法。
【請求項86】
上記請求項のいずれかのヒト化免疫グロブリンの有効投与量を患者に投与することを含んでなる、患者の脳内のAβのアミロイド沈着と関連する疾患を予防または処置する方法。
【請求項87】
疾患が認知障害であることを特徴とする、請求項86の方法。
【請求項88】
疾患がアルツハイマー病である、請求項86の方法。
【請求項89】
疾患がダウン症候群である、請求項86の方法。
【請求項90】
疾患が温和な認知障害である、請求項86の方法。
【請求項91】
抗体がヒトイソタイプIgG1である、請求項86の方法。
【請求項92】
疾患がヒトである、前記請求項のいずれかの方法。
【請求項93】
投与の後に抗体が患者内のアミロイド沈着に結合しそしてアミロイド沈着に対する除去反応を誘導する、請求項86〜92のいずれか一つの方法。
【請求項94】
除去反応がFc受容体媒介ファゴサイトーシス反応である、請求項93の方法。
【請求項95】
除去反応を監視することをさらに含んでなる、請求項93または94の方法。
【請求項96】
投与後に抗体が患者の可溶性Aβに結合する、請求項86〜92のいずれか1項の方法。
【請求項97】
投与後に抗体が患者内の血清、血液または脳脊髄液中の可溶性Aβに結合する、請求項86〜92のいずれか1項の方法。
【請求項98】
患者が無症候性である、請求項86〜97のいずれか1項の方法。
【請求項99】
患者が年齢50歳未満である、請求項86〜98のいずれか1項の方法。
【請求項100】
患者がアルツハイマー病への罹患性を示す遺伝性危険因子を有する、請求項86〜99のいずれか1項の方法。
【請求項101】
抗体の投与量が患者の体重kgあたりに少なくとも1mgである、請求項86〜100のいずれか1項の方法。
【請求項102】
抗体の投与量が患者の体重kgあたりに少なくとも10mgである、請求項86〜100のいずれか1項の方法。
【請求項103】
抗体が製薬学的組成物としてキャリヤと一緒に投与される、請求項86〜102のいずれか1項の方法。
【請求項104】
抗体が腹腔内、経口、鼻内、皮下、筋肉内、局所または静脈内に投与される、請求項77〜103のいずれか1項の方法。
【請求項105】
上記請求項のいずれか1項のヒト化免疫グロブリンの有効投与量を対象に投与することを含んでなる、それを必要とする対象内の斑負荷を低下する方法。
【請求項106】
投与後に、抗体が患者内のアミロイド沈着に結合しそしてアミロイド沈着に対する反応除去を誘導する、請求項105の方法。
【請求項107】
除去反応がFc受容体媒介ファゴサイトーシス反応である、請求項106の方法。
【請求項108】
除去反応を監視することをさらに含んでなる、請求項106または107の方法。
【請求項109】
投与後に、抗体が患者内の可溶性Aβに結合する、請求項105の方法。
【請求項110】
投与後に、抗体が患者の血清、血液または脳骨髄液内の可溶性Aβに結合する、請求項105の方法。
【請求項111】
改変されたエフェクター機能を有するFc領域を含んでなる、上記請求項のいずれか1項のヒト化免疫グロブリン。
【請求項112】
抗体がIgG1イソタイプである、ベータアミロイドペプチド(Aβ)のアミノ酸3〜7内のエピトープに結合するヒト化12A11抗体の有効投与量を対象に投与することを含んでなる、それを必要とする対象内の神経炎性負荷を低下する方法。
【請求項113】
対象がアミロイド疾患を有する、請求項112の方法。
【請求項114】
アミロイド疾患がアルツハイマー病である、請求項113の方法。
【請求項115】
抗体がAβのアミノ酸3〜7内のエピトープに結合しそしてIgG1イソタイプである、患者内のベータアミロイドペプチド(Aβ)負荷および神経炎性ジストロフィーを低下できるヒト化12A11抗体の有効投与量を対象に投与することを含んでなる、患者内のアミロイド疾患を処置する方法。
【請求項116】
アミロイド疾患がアルツハイマー病である、請求項115の方法。
【請求項117】
抗体がAβのアミノ酸3〜7内のエピトープに結合しそしてIgG1イソタイプである、ベータアミロイドペプチド(Aβ)負荷および神経炎性ジストロフィーを低下できるヒト化12A11抗体の有効投与量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物内のベータアミロイドペプチド(Aβ)負荷および神経炎性ジストロフィーを低下する方法。
【請求項118】
哺乳動物がヒトである、請求項117の方法。
【請求項119】
哺乳動物がアミロイド疾患を有する、請求項117または118の方法。
【請求項120】
アミロイド疾患がアルツハイマー病である、請求項119の方法。
【請求項121】
抗体が対象内の神経炎性負荷を低下できる、ベータアミロイドペプチド(Aβ)のアミノ酸3〜7内のエピトープに結合するIgG1イソタイプのヒト化12A11抗体を含んでなる治療用組成物。
【請求項122】
抗体がAβのアミノ酸3〜7内のエピトープに結合しそしてIgG1イソタイプである、可溶性ベータアミロイドペプチド(Aβ)に結合しそして患者内の神経炎性ジストロフィーを軽減するヒト化12A11抗体の有効投与量を患者に投与することを含んでなる、患者内のアミロイド疾患を処置する方法。
【請求項123】
アミロイド疾患がアルツハイマー病である、請求項122の方法。
【請求項124】
抗体がAβのアミノ酸3〜7内のエピトープに結合しそして患者内の神経炎性負荷を低下できる、可溶性ベータアミロイドペプチド(Aβ)に結合するIgG1イソタイプのヒト化12A11抗体を含んでなる治療用組成物。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2007−536895(P2007−536895A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515134(P2006−515134)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/017514
【国際公開番号】WO2004/108895
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(501457567)ニユーララブ・リミテツド (5)
【出願人】(598014180)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/017514
【国際公開番号】WO2004/108895
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(501457567)ニユーララブ・リミテツド (5)
【出願人】(598014180)
【Fターム(参考)】
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