説明

ベータ及びYゼオライトを含有する水素化分解触媒及び留出油を製造するためのその使用法

ベータゼオライトと24.33〜24.38オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトを含有する触媒の使用によって、水素化分解法において中間留出油の選択性の増大及び/又は触媒活性の増大が得られる。該触媒は、24.25〜24.32オングストロームの単位格子サイズを有する追加のYゼオライトを含有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒組成物、及び炭化水素変換法、特に水素化分解におけるそれらの使用に関する。本発明は、更に詳しくは活性分解成分としてYゼオライト及びベータゼオライトを含む触媒組成物に関する。本発明は特に中間留出油を製造する水素化分解法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製業者は、原油由来の炭化水素原料を水素化分解することによって、ナフサ及びガソリンのような低沸点液体のほか、中間留分として知られるタービン燃料、ディーゼル燃料、及びその他の炭化水素液体などの所望生成物を製造することが多い。水素化分解は、水素化処理によって原料から硫黄及び窒素を除去するといったその他の有益な成果ももたらす。水素化分解に最もよく付される原料は、原油から蒸留によって回収される軽油(ガス油)及び重質軽油である。
【0003】
水素化分解は一般的に、適当な反応容器中で軽油又はその他の炭化水素原料を、適当な条件下、例えば高めた温度及び高めた圧力及び水素の存在下で、適切な水素化分解触媒と接触させることによって実施する。そうすることにより、精油業者が所望する炭化水素生成物分布を含有する総体的に平均沸点の低い生成物が得られる。水素化分解反応器内の運転条件も生成物の収率に多少の影響を及ぼすが、そのような収率を決定する主要因子は水素化分解触媒である。
【0004】
水素化分解触媒は、触媒の主な分解成分の性質に基づいて初期分類される。この分類は、水素化分解触媒をシリカ−アルミナのようなアモルファス分解成分に基づく触媒とベータ又はYゼオライトのようなゼオライト系分解成分に基づく触媒とに分類する。水素化分解触媒は、それらが意図する主生成物に基づいて分類されることもある。そのうちの二大生成物はナフサと“留出油(distillate)”である。留出油とは、水素化分解精製技術において、ナフサより高い沸点範囲を有する蒸留可能な石油由来留分を意味する用語である。留出油は、典型的には、精油所で灯油及びディーゼル燃料として回収される生成物を包含する。留出油の需要は多い。このため、精油業者は、留出油留分を選択的に製造する水素化分解触媒に焦点を当てている。
【0005】
留出油製造用水素化分解触媒の性能を評価するための3つの主要な触媒の性質は、活性、選択性、及び安定性である。活性は、留出油の場合、所望範囲、例えば371℃(700°F)未満で沸騰する所定パーセント(通常65%)の生成物を製造するために各種触媒が用いなければならない温度を、それ以外は一定の水素化分解条件下で同じ原料を使って比較することによって判定できる。所定の触媒が必要とする温度が低いほど、そのような触媒は高温を必要とする触媒に比べて活性が高い。水素化分解触媒の選択性は、前述の活性試験中に判定でき、所望の留出油生成物の範囲、例えば149℃(300°F)〜371℃(700°F)で沸騰する生成物の留分のパーセンテージとして測定される。安定性は、触媒が、所定の炭化水素原料を活性試験の条件下で処理する場合に長期間いかに良くその活性を維持するかの測定である。安定性は、一般的に、65%又はその他の所定変換率を維持するために1日あたり必要とされる温度の変化で測定される。
【0006】
留出油製造用の分解触媒は公知であり、商業環境でも使用されているが、留出油製造のために所定の活性で優れた選択性及び/又は所定の選択性で優れた活性を有する新規水素化分解触媒に対する需要は常にある。
【発明の概要】
【0007】
発明の簡単な要旨
24.33〜24.38オングストロームの単位格子サイズ又は寸法aを有するYゼオライト(以後YゼオライトII)を含有し、好ましくはシリカのアルミナに対する(SiOのAlに対する)総体的モル比30未満及びSF吸着能少なくとも28重量パーセント(以後wt%)を有するベータゼオライトも含有する水素化分解触媒は、留出油を製造する水素化分解法に使用するために現在市販されているその他の水素化分解触媒と比べて、所定の活性で実質的に改良された選択性又は所定の選択性で実質的に改良された活性を有することが見出された。該触媒は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデン、又はそれらの任意の組合せのような金属水素化成分も含有する。該触媒は乾燥ベースでベータゼオライトとYゼオライトIIと担体の総重量を基にして0.5〜5wt%のベータゼオライトを含有し、該触媒は乾燥ベースでYゼオライトIIのベータゼオライトに対する重量比0.5〜5を有する。YゼオライトIIはシリカのアルミナに対する総体的モル比5.0〜11.0を有する。一態様において、触媒は追加のYゼオライトを含有し、YゼオライトIIは追加のゼオライトより大きい単位格子サイズを有する。
【0008】
そのようなYゼオライト及びそのようなベータゼオライトを含有する水素化分解触媒は当該技術分野にとって新規であると考える。
そのような触媒は、高めた温度及び圧力並びに水素の存在を含む典型的な水素化分解条件下で、軽油及びその他の炭化水素原料を低い平均沸点及び低い平均分子量の生成物に変換するのに非常に効果的である。一態様において、生成物は留出油範囲(本明細書中では149℃(300°F)〜371℃(700°F)と定義される)で沸騰する成分を比較的高い割合で含有する。
【0009】
情報開示
ベータゼオライト及びYゼオライトは、水素化分解用触媒を含むいくつかの異なる触媒の成分として組み合わせて提案されている。例えば、US−A−5,275,720、US−A−5,279,726、及びUS−A−5,350,501には、ベータゼオライトとYゼオライトを含む触媒を用いる水素化分解法が記載されている。US−A−5,350,501には、いくつかの成分の中で特に、ゼオライトベータと、24.25〜24.35オングストロームの単位格子サイズと4.6mm水蒸気分圧及び25℃でゼオライトの8.0重量パーセント未満の水蒸気収着能を有するYゼオライトとを含む触媒を用いる水素化分解法が記載されている。US−A1−2004/0152587には、24.10〜24.40オングストロームの範囲の単位格子サイズ、12を超えるシリカのアルミナに対するバルク比、及び少なくとも850m/gの表面積を有するフォージャサイト構造のゼオライトを含む担体を含む水素化分解触媒が記載されている。該触媒は、ベータゼオライト、ZSM−5ゼオライト、又は異なる単位格子サイズのYゼオライトのような第二のゼオライトを含有していてもよい。二つの異なるYゼオライトも、US−A−4,661,239及びUS−A−4,925,546に記載されているように、水素化分解用触媒を含むいくつかの異なる触媒の成分として組み合わせて提案されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、いくつかの水素化分解触媒に関する留出油選択性vs相対触媒活性を示すグラフである。
【図2】図2は、いくつかの水素化分解触媒に関する重質留出油選択性の軽質留出油選択性に対する比vs相対触媒活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本明細書中に開示されている方法及び組成物は、有機化合物を含有する原料を特に酸触媒作用によって生成物に変換する、例えば有機化合物、特に炭化水素を水素化分解して低平均沸点及び低平均分子量の生成物に変換するのに使用できる。触媒及び/又は触媒担体であり得る組成物は、ベータゼオライト及びYゼオライトIIを含有する。該組成物は耐火性無機酸化物を含んでいてもよい。水素化分解用の触媒として使用される場合、該組成物は、ベータゼオライト、YゼオライトII、耐火性無機酸化物、及び水素化成分を含有する。
【0012】
本明細書中に開示されている水素化分解法及び組成物は、特別のベータゼオライト及び特別のYゼオライトを含有する触媒の使用を中心に据えている。組成物は所望により追加のYゼオライトを含有していてもよい。ベータゼオライトは好ましくは、比較的低いシリカのアルミナに対するモル比及び比較的高いSF吸着能を有する。YゼオライトIIは、24.33〜24.38オングストロームの単位格子サイズを有する。追加のゼオライトが存在する場合、YゼオライトIIはYゼオライトIよりも大きい単位格子サイズを有する。そのようなベータゼオライトとそのようなYゼオライトを水素化分解触媒にこのように組み込むと、異なる性能が得られることが分かった。一つ又は二つのYゼオライトを含有する触媒と比べて、留出油範囲で沸騰する生成物の選択性は所定の活性で高いか、又は活性は留出油範囲で沸騰する生成物の所定の選択性で高い。
【0013】
ベータゼオライトは水素化分解触媒の成分として当該技術分野で周知である。ベータゼオライトはUS−A−3,308,069及び米国再発行特許第28341号に記載されている。前記特許は引用によってそれらの全文を本明細書に援用する。本明細書中に開示されている方法及び組成物に使用されるベータゼオライトは、シリカのアルミナに対するモル比が一態様において30未満、別の態様において25未満、さらに別の態様において9より大きく30未満、更なる態様において9より大きく25未満、別の態様において20より大きく30未満、又はなお別の態様において15より大きく25未満である。本明細書中で使用されているゼオライトのシリカのアルミナに対する(SiOのAlに対する)モル比は、別途記載のない限り、ゼオライト中に存在するアルミニウム及びケイ素(フレームワーク及び非フレームワーク)の合計量又は総量に基づいて決定されたモル比であり、本明細書中では時にシリカのアルミナに対する(SiOのAlに対する)総体的モル比と呼ばれることもある。
【0014】
ベータゼオライトは通常、テンプレート剤を含有する反応混合物から合成される。ベータゼオライトの合成にテンプレート剤を使用することは当該技術分野で周知である。例えば、US−A−3,308,069及び米国再発行特許第28341号はテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの使用を、US−A−5,139,759(引用によってその全文を本明細書に援用する)は対応するテトラエチルアンモニウムハライドから誘導されるテトラエチルアンモニウムイオンの使用を記載している。ベータゼオライトを製造する別の標準法は、H.Robson(編者)及びK.P.Lillerud(XRDパターン)による書籍名Verified Synthesis of Zeolitic Materials,第2改訂版,ISBN 0−444−50703−5,Elsevier,2001に記載されている。本明細書中に開示されている方法の成功にとって、特別のテンプレート剤の選択は重要でないと考えられる。一態様において、ベータゼオライトは、空気中500〜700℃(932〜1292°F)の温度で、ベータゼオライトからテンプレート剤を除去するのに足る時間焼成される。テンプレート剤を除去するための焼成は、ベータゼオライトを担体及び/又は水素化成分と合体させる前又は後に実施できる。テンプレート剤は700℃(1292°F)を超える焼成温度で除去できると考えられているが、非常に高い焼成温度はベータゼオライトのSF吸着能を著しく低下させかねない。この理由から、テンプレート剤を除去するための焼成温度が750℃(1382°F)を超えることは、本明細書中に開示された方法に使用するためのベータゼオライトを製造する場合には回避すべきである。本明細書中に開示された方法にとってベータゼオライトのSF吸着能は少なくとも28wt%であることが重要である。
【0015】
ベータのようなゼオライトの蒸熱(steaming)はゼオライトの実際の結晶構造に変化をもたらすことが知られているが、今日の分析技術力でゼオライトの重要な構造の詳細に関してこれらの変化を正確にモニタ及び/又は特徴付けることはまだ不可能である。代わりに、表面積のようなゼオライトの様々な物理的性質の測定が、起こった変化及び変化の程度の指標として用いられている。例えば、蒸熱後のゼオライトの六フッ化硫黄(SF)吸着能の低下は、ゼオライトの結晶化度の低下又はゼオライトの微孔(マイクロポア)のサイズもしくはアクセス性の低下によって起こると考えられる。しかしながら、それはゼオライトにおける望ましくない変化の間接的な相関に過ぎない。なぜならば、本明細書中に開示された方法及び組成物に使用される触媒のSF吸着能は比較的高いからである。本明細書中に開示された方法及び組成物の態様において、ベータゼオライトのSF吸着能は、蒸気処理の有無にかかわらず、少なくとも28wt%であるべきである。
【0016】
従って、本明細書中に開示された方法及び組成物のベータゼオライトは、SF吸着の観点から特徴付けることができる。これは、ゼオライトのような微孔性材料を特徴付けするための認められた技術である。該技術は、吸着物質が実質的に存在しないように前処理されたサンプルによって吸着されたSFの量を重量差を用いて測定するという点で、吸水量のようなその他の吸着能測定と類似している。この試験にSFが用いられるのは、そのサイズ及び形状ゆえに6オングストローム未満の直径を有する孔への進入が妨げられるからである。従って、これは、利用(進入)可能な孔口及び孔径収縮の一つの測定として使用することができる。ひいては、ゼオライトに及ぼす蒸熱の影響の測定にもなる。この測定法を単純化して説明すると、サンプルを好ましくは最初に真空下300℃(572°F)で1時間予備乾燥させ、次いで空中大気圧下650℃(1202°F)で2時間加熱し、最後に秤量する。次にこれをSFに1時間暴露する。この間サンプルは20℃(68°F)の温度に維持される。SFの蒸気圧は、液体SFが400トル(53.3kPa(7.7psi))で提供する蒸気圧に維持される。サンプルを再度秤量し、吸着されたSFの量を測定する。サンプルは、これらのステップの間、該ステップを容易にするために秤(はかり)に吊しておいてもよい。
【0017】
蒸熱及び加熱のような技術を伴うあらゆる大量生産手順において、個々の粒子は異なるレベルの処理を受ける可能性がある。例えば、ロータリーキルンに沿って移動するパイル(積み重ね)底部の粒子は、パイル上部を覆う粒子と同じ大気又は温度に曝されることはないであろう。このファクタは製造時だけでなく最終製品の分析及び試験時にも考慮されなくてはならない。従って、材料に対して行われるいかなる試験測定も、最終製品の全量を代表するコンポジットサンプルに対して実施し、個々の粒子又は非代表的サンプルに対して実施された測定によってミスリードされないようにすることが推奨される。例えば、吸着能の測定は、代表的なコンポジットサンプルに対して行う。
【0018】
本明細書中に開示された方法及び組成物は蒸熱処理を受けていないベータゼオライトを使用できるが、本明細書中に開示された方法及び組成物は蒸熱処理を受けたベータゼオライトも使用することができる。ただし、該蒸熱は文献中のベータゼオライトの蒸熱と比べて比較的穏やかなものである。適度な条件下及び適度な時間にわたってベータゼオライトを蒸熱すると、本明細書中に開示された方法及び組成物に使用できる触媒を得ることができる。
【0019】
水素化分解触媒に使用するためのゼオライトを水熱処理することはどちらかと言えば切れ味の悪い手段である。いずれの所定のゼオライトにとっても蒸熱はゼオライトの酸性度を低下させる。蒸熱処理されたゼオライトを水素化分解触媒として使用すると、留出油の総体的収率は増大するが触媒の活性は低下するという結果が現れる。この収率と活性との間に見られる明白な相殺は、高活性を達成するにはベータゼオライトを蒸熱しないことであるが、生成物の収率低下という犠牲を払うことを意味している。この収率と活性との間に見られる明白な相殺は考慮する必要があり、ベータゼオライトの蒸熱によって得られるとみられる改良を制限するものとなっている。蒸熱処理されたベータゼオライトを本明細書中に開示された触媒に使用すると、Yゼオライトしか含有しない触媒より活性の改良は限定的なようであるが、そのような触媒より収率の改良はさらに増強されるようである。
【0020】
ベータゼオライトを蒸熱する場合、そのような蒸熱は異なる方式でうまく実施できる。商業的に実際使用されている方法は、利用できる装置の種類及び能力に大きく影響され、おそらくは決定付けられることが多い。蒸熱は、ベータゼオライトを固定塊として保持するか又はベータゼオライトを容器内に密閉するか又は回転キルン内に密閉しながらタンブルさせることによって実施することができる。重要なファクタは、すべてのベータゼオライト粒子を適当な時間、温度、及び蒸気濃度の条件下で一様に処理することである。例えば、ベータゼオライトは、ベータゼオライト塊の表面及び内部に接触する蒸気の量に著しい差が出ないように置くべきである。ベータゼオライトは、低い蒸気濃度を供給する装置に生蒸気を通過させる雰囲気中で蒸気処理できる。これは50mol%未満の正量の蒸気濃度でと言うことができる。蒸気濃度は1〜20mol%又は5〜10mol%の範囲でありうるが、小規模の実験室操作はより高濃度の方向である。蒸熱は、1又は2時間以下の正の時間、又は1〜2時間、600℃(1112°F)以下の温度、大気圧及び5mol%以下の正の蒸気含有量で実施できる。蒸熱は、2時間以下の正の時間、650℃(1202°F)以下の温度、大気圧及び10mol%以下の正の蒸気含有量で実施してもよい。蒸気含有量はベータゼオライトに接触する蒸気の重量に基づく。650℃(1202°F)を超える温度での蒸熱は、得られたベータゼオライトのSF吸着能が低くなりすぎるので、本明細書中に開示された方法には役立たないベータゼオライトになるようである。650℃(1202°F)未満の温度が使用できるので、蒸熱温度は600℃(1112°F)〜650℃(1202°F)、又は600℃(1112°F)未満であり得る。当該技術分野での教示によれば、蒸熱の時間と温度の間には通常相互作用があり、温度を上げると所要時間は少なくなる。それでもなお、蒸熱を実施する場合、良好な結果のためには、1/2〜2時間又は1〜1と1/2(1.5)時間の時間が使用できるようである。商業規模で蒸熱を実施する方法は、10mol%蒸気の雰囲気を維持する速度で蒸気が注入されるロータリーキルンが用いられることになろう。
【0021】
実験室規模の蒸熱法の例は、ゼオライトをクラムシェル型炉内の6.4cm(2と1/2インチ)の石英管に保持して実施する。炉の温度はコントローラによって徐々に上げていく。ゼオライトの温度が150℃(302°F)に達したら、フラスコに入れた脱イオン水から発生させた蒸気を石英管の底から導入し、上方に送る。所望の蒸気含有量を達成するために他のガスを管に導入してもよい。フラスコは必要に応じて補充される。この例の方法では、蒸気の導入からゼオライトが600℃(1112°F)に達するまでの時間は1時間である。設定された蒸熱時間の終了後、コントローラを20℃(68°F)に再設定することによって炉の温度を下げる。炉を400℃(752°F)に放冷し(約2時間)、石英管への蒸気の流入を止める。100℃(212°F)でサンプルを取り出し、空気パージしながら一晩110℃(230°F)に保持された実験室オーブンに入れておく。
【0022】
本明細書中に開示された方法及び組成物のベータゼオライトは、脱アルミニウム化を実行するための酸溶液処理をされない。これに関し、本質的にすべての生の(合成されたままの)ベータゼオライトは、合成に由来して残留するアルカリ金属(例えばナトリウム)の濃度を下げるために酸に暴露されることに注意する。ベータゼオライトの製造手順におけるこのステップは、本明細書中に記載の製造済みベータゼオライトの処理の一部とみなされない。一態様において、処理及び触媒製造手順中、ベータゼオライトは、形成中又は金属含浸中のペプチゼーションのような付随的製造活動の最中にのみ酸に暴露される。別の態様において、ベータゼオライトは、蒸熱手順後、孔からアルミニウム“残屑”を除去するような酸洗浄はされない。
【0023】
本明細書中に開示された方法及び組成物には、24.33〜24.38オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトも含まれる。このYゼオライトは、本明細書中では、このYゼオライトを異なる単位格子サイズを有する所望による追加のYゼオライト(後述)と区別するためにYゼオライトIIと呼ばれることもある。YゼオライトIIは、好ましくは24.34〜24.36オングストロームの単位格子サイズを有する。YゼオライトIIは、一態様においてシリカのアルミナに対する総体的モル比5.0〜12.0、別の態様において5.0〜11.0、さらに別の態様において5.0〜10.0を有しうる。本明細書中に開示された方法及び組成物はYゼオライトIIを必要とする。
【0024】
所望により、そしてYゼオライトIIに加えて、開示された方法及び組成物は追加のYゼオライトを含みうる。本明細書中ではこれをYゼオライトIと呼ぶこともある。YゼオライトIは、YゼオライトIIの単位格子サイズとは異なる単位格子サイズを有する。YゼオライトIの単位格子サイズは好ましくは、YゼオライトIIの単位格子サイズより少なくとも0.04オングストローム小さい。YゼオライトIの単位格子サイズは更に好ましくは24.25〜24.32オングストローム、なお更に好ましくは24.26〜24.30オングストロームである。YゼオライトIは、一態様においてシリカのアルミナに対する総体的モル比5.0〜12.0、別の態様において5.0〜11.0、さらに別の態様において5.0〜10.0を有しうる。
【0025】
製造工程中にYゼオライトIを添加するという選択肢は、水素化分解装置使用者の個別要件に適合する製品を製造するための柔軟性を触媒製造業者に与える。触媒中のYゼオライトIの存在は、YゼオライトII自体の製造法や触媒中に使用されるYゼオライトIIの量を変える必要なしに触媒の性質を変える。しかしながら、場合によっては、YゼオライトIの添加でYゼオライトIIの必要量が減少するので、十分な量のYゼオライトIIが入手できない場合にはもう一つの利点となる。水素化分解装置の使用者、特に留出油を製造する者は、水素化分解触媒の活性及び選択性に関する彼らの特別の、そして時に独自の要件を満足する手段として、YゼオライトIとYゼオライトIIの両方を含有する触媒を使用できる。
【0026】
本明細書中で使用している“Yゼオライト”という用語は、US−A−3,130,007に示された本質的X線粉末回折パターンを有するすべての結晶ゼオライト、又はUS−A−3,130,007のそれに類似するX線粉末回折パターンを有するが、d間隔が当業者には分かる通り、Yゼオライトを触媒的に活性で安定な形態に変換するために一般的に必要とされるカチオン交換、焼成などによって多少シフトしている改質Yゼオライトを包含するものとする。YゼオライトI及びYゼオライトIIは、US−A−3,130,007で教示されているYゼオライトと比べると改質されたYゼオライトである。本明細書中で使用している単位格子サイズとは、X線粉末回折によって決定される単位格子サイズのことである。
【0027】
本明細書中に開示された方法及び組成物に使用されるYゼオライトは、7.0オングストロームを超える有効孔径を有する孔の大きいゼオライトである。Yゼオライトの一部の孔は比較的大きいので、Yゼオライトはそれらの内部構造に分子を比較的自由に出入りさせる。Yゼオライトの孔は、ベンゼン分子及びそれより大きい分子が孔に入り、反応生成物が孔から出るのを可能にする。
【0028】
本明細書中に開示された方法及び組成物にYゼオライトI、YゼオライトII、又はその両方として使用されうるYゼオライトの一群は、時に超安定性又は超疎水性Yゼオライトと呼ばれることもあるゼオライトを含む。この群のYゼオライトの組成及び性質は、本質的に4つのステップ手順によって準備される。第一に、典型的には24.65オングストロームの単位格子サイズを有するアルカリ金属形(通常ナトリウム)のYゼオライトをアンモニウムイオンでカチオン交換する。アンモニウム交換ステップは、典型的には出発のナトリウムYゼオライトのナトリウム含有量を、NaOでの計算で通常8wt%超、通常10〜13wt%の値から、NaOでの計算で0.6〜5wt%の範囲の値に削減する。イオン交換の実施法は当該技術分野で周知である。
【0029】
第二に、第一のステップからのYゼオライトを水蒸気の存在下で焼成する。例えば、Yゼオライトを、3つの態様において、少なくとも1.4kPa(絶対)(以後kPa(a))(0.2psi(絶対)(以後psi(a)))、少なくとも6.9kPa(a)(1.0psi(a))、又は少なくとも69kPa(a)(10psi(a))の水蒸気の存在下で焼成する。2つのその他の態様では、Yゼオライトは、本質的に蒸気から成る又は蒸気から成る雰囲気中で焼成される。Yゼオライトを焼成するのは、24.40〜24.64オングストロームの範囲の単位格子サイズを得るためである。
【0030】
第三に、第二のステップからのYゼオライトをもう一度アンモニウム交換する。2回目のアンモニウム交換でナトリウム含有量はNaOでの計算で0.5wt%未満、通常0.3wt%未満にさらに削減される。
【0031】
第四に、第三のステップからのYゼオライトをさらに処理して、YゼオライトIの場合24.25〜24.32オングストローム又は好ましくは24.26〜24.30オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトを得る。YゼオライトIIの場合、処理によって24.33〜24.38オングストローム又は好ましくは24.34〜24.36オングストロームの単位格子サイズを有するYゼオライトが得られる。第四のステップから得られたゼオライトYは、一態様においてシリカのアルミナに対する総体的モル比5.0〜12.0、別の態様において5.0〜11.0、さらに別の態様において5.0〜10.0を有する。第四のステップの処理は、所望の単位格子サイズ及びシリカのアルミナに対する総体的モル比を得るために、一般にゼオライト、及び、超安定Yゼオライトを脱アルミニウム化するための任意の周知技術を含むことができる。第四の処理ステップでは、単位格子サイズ及び/又はフレームワークのシリカのアルミナに対するモル比を、シリカのアルミナに対する総体的モル比を変えて又は変えずに変更することができる。一般的に、ゼオライトの脱アルミニウム化は、酸、例えばHCl、揮発性ハロゲン化物、例えばSiCl、又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート剤を用いた処理などの化学的方法によって達成される。別の通常技術は、純蒸気中又は空気/蒸気混合物中のいずれかでのゼオライトの水熱処理である。好ましくは、所望の単位格子サイズ及びシリカのアルミナに対する総体的モル比を得るために、十分な水蒸気の存在下(例えば本質的に蒸気から成る、最も好ましくは蒸気から成る雰囲気中)での焼成のような処理である。
【0032】
本明細書中に開示された方法及び組成物に使用されるYゼオライトの上記製造手順は、第四の処理ステップを加えたことによってUS−A−3,929,672に教示されたYゼオライトの手順とは異なる。US−A−3,929,672(引用によってその全文を本明細書に援用する)は、超安定Yゼオライトの脱アルミニウム化法を開示している。US−A−3,929,672は、ナトリウムYゼオライトをアンモニウムイオンで部分交換した後、制御された温度及び蒸気分圧下で蒸気焼成し、その後さらに別のアンモニア交換をし、次いで所望により乾燥雰囲気下で焼成ステップを行う製造手順を教示している。交換及び蒸気焼成ステップは、所望の脱アルミニウム化度及び単位格子サイズ低下度を達成するために繰り返すことができる。US−A−3,929,672のゼオライトは、米国イリノイ州Des PlainesのUOP LLCから市販されているY−84又はLZY−84の商品名で知られている。Y−84又はLZY−84ゼオライトは、今述べた最初の3つのステップによって製造できるが、所望により乾燥雰囲気下での更なる焼成ステップ、例えば水及び蒸気を含まない空気中482℃(900°F)以上での焼成を含めることもできる。
【0033】
本明細書中に開示された方法及び組成物に使用されるYゼオライトの上記製造手順は、US−A−5,350,501に教示されたYゼオライトの手順と類似している。しかしながら、上記第四の処理ステップにおける特別の条件は、YゼオライトII及び所望によるYゼオライトIのための臨界範囲の単位格子サイズが得られるように選ばれる。US−A−5,350,501(引用によってその全文を本明細書に援用する)は、第三の処理ステップから得られたゼオライトを十分な水蒸気の存在下(本質的に蒸気から成る又は蒸気から成る雰囲気中)で焼成し、24.40未満、最も好ましくは24.35オングストローム以下の単位格子サイズと比較的低い水蒸気収着能を得ることを含む第四のステップを開示している。US−A−5,350,501の第四の手順によって製造されたYゼオライトはUS−A−5,350,501に定義のようにUHP−Yゼオライト、すなわち超疎水性Yゼオライトである。US−A−5,350,501は、“UHP−Y”ゼオライトを、いくつかの性質の中でも特に、単位格子サイズ又は寸法が24.45オングストローム未満、25℃及びp/p値0.01での水蒸気収着能が10.00重量%未満のゼオライトアルミノシリケートと定義している。US−A−5,350,501における最も好適なUHP−YゼオライトはLZ−10である。
【0034】
本明細書中に開示された方法及び組成物にYゼオライトI、YゼオライトII、又はその両方として使用できる別の群のYゼオライトは、シリカのアルミナに対する総体的モル比が5未満のYゼオライトを脱アルミニウム化することによって製造でき、US−A−4,503,023、US−A−4,597,956及びUS−A−4,735,928に詳述されている(前記特許は引用によってその全文を本明細書に援用する)。US−A−4,503,023は、Yゼオライトの別の脱アルミニウム化手順を開示している。該手順は、Yゼオライトをフルオロシリケート塩の水溶液と、ケイ素置換なしにアルミニウムが抽出されないように制御された割合、温度、及びpH条件を用いて接触させることを含む。US−A−4,503,023は、フルオロシリケート塩をアルミニウム抽出剤としてだけでなく、抽出されたアルミニウムの代わりにYゼオライト構造に挿入される外来ケイ素源としても使用することを記載している。該塩は、一般式:
(A)2/bSiF
を有する。式中、Aは、価数“b”を有するH以外の金属又は非金属カチオンである。“A”で表されるカチオンは、アルキルアンモニウム、NH、Mg++、Li、Na、K、Ba++、Cd++、Cu++、H、Ca++、Cs、Fe++、Co++、Pb++、Mn++、Rb、Ag、Sr++、Ti、及びZn++である。
【0035】
この群の好適なメンバーはLZ−210として知られている。これは米国イリノイ州Des PlainesのUOP LLCから市販されているゼオライト系アルミノシリケートモレキュラーシーブである。LZ−210ゼオライト及びこの群のその他のゼオライトは、Yゼオライト出発材料から都合よく製造される。LZ−210ゼオライトのシリカのアルミナに対する総体的モル比は、一態様において5.0〜12.0、別の態様において5.0〜11.0、さらに別の態様において5.0〜10.0である。単位格子サイズは、YゼオライトIの場合、好ましくは24.25〜24.32オングストローム又はさらに好ましくは24.26〜24.30オングストロームでありうる。YゼオライトIIの場合、単位格子サイズは24.33〜24.38オングストローム又は好ましくは24.34〜24.36オングストロームでありうる。本明細書中に開示された方法及び組成物に使用されるLZ−210クラスのゼオライトは、酸化物のモル比の点から次式:
(0.85−1.1)M2/nO:Al:xSiO
のように表される組成を有する。式中、“M”は価数“n”を有するカチオンであり、“x”は5.0〜12.0の値を有する。
【0036】
一般に、LZ−210ゼオライトは、Y型ゼオライトをフルオロシリケート塩の水溶液、好ましくはヘキサフルオロケイ酸アンモニウムの溶液を用いて脱アルミニウム化することによって製造できる。脱アルミニウム化は、Yゼオライト(通常アンモニウム交換されたYゼオライトであるが、必ずしもそうでなくてもよい)を酢酸アンモニウムの水溶液のような水性反応媒体に入れ、フルオロケイ酸アンモニウムの水溶液を徐々に加えることによって達成できる。反応を進行させると、シリカのアルミナに対する総体的モル比が増加したゼオライトが製造される。増加の規模は、少なくとも一部はゼオライトと接触するフルオロシリケート溶液の量及び許容される反応時間に依存する。通常、10〜24時間の反応時間で十分に平衡が達成される。得られた固体生成物(水性反応媒体から従来のろ過技術によって分離できる)はLZ−210ゼオライトの形態である。場合により、この生成物を当該技術分野で周知の方法によって蒸気焼成してもよい。例えば、該生成物を少なくとも1.4kPa(a)(0.2psi(a))の分圧の水蒸気に1/4〜3時間、482℃(900°F)〜816℃(1500°F)の温度で接触させると、より大きな結晶安定性が得られる。場合により、該蒸気焼成生成物を当該技術分野で周知の方法によってアンモニウム交換してもよい。例えば、該生成物を水とスラリー化し、その後アンモニウム塩をスラリーに添加する。得られた混合物は、典型的には、数時間加熱され、ろ過され、水洗される。LZ−210ゼオライトの蒸熱及びアンモニウム交換法は、US−A−4,503,023号、US−A−4,735,928及びUS−A−5,275,720に記載されている。
【0037】
上記製造手順によって製造され、本明細書中に開示された方法及び組成物に使用される所望によるYゼオライトIは、ゼオライトYの本質的X線粉末回折パターン及び好ましくは24.25〜24.32オングストローム、さらに好ましくは24.26〜24.30オングストロームの単位格子サイズ又は寸法aを有する。上記製造手順によって製造され、本明細書中に開示された方法及び組成物に使用されるYゼオライトIIは、ゼオライトYの本質的X線粉末回折パターン及び24.33〜24.38オングストローム、好ましくは24.34〜24.36オングストロームの単位格子サイズ又は寸法aを有する。YゼオライトI、YゼオライトII、又はその両方は、一態様においてシリカのアルミナに対する総体的モル比5.0〜12.0、別の態様において5.0〜11.0、さらに別の態様において5.0〜10.0を有する。YゼオライトI及び/又はYゼオライトIIは、少なくとも500m/g、800m/g未満、しばしば700m/g未満、典型的には500〜650m/gの表面積(BET)を有しうる。
【0038】
Yゼオライトの安定性及び/又は酸性度を増大させる別の方法は、Yゼオライトを多価の金属カチオン、例えば希土類含有カチオン、マグネシウムカチオン又はカルシウムカチオン、あるいはアンモニウムイオンと多価金属カチオンとの組合せで交換し、それによってナトリウム含有量を第一又は第二のアンモニウム交換ステップ後の上記値ほど低くなるまで低下させることによる。イオン交換の実施法は当該技術分野で周知である。
【0039】
本明細書中に開示された方法に使用される触媒は、主に既存の商業用水素化分解装置における代替触媒としての使用を意図している。従って、そのサイズ及び形状は従来の商業用触媒のそれと類似しているのが好ましい。好ましくは、0.8〜3.2mm(1/32〜1/8in)の直径を有する円筒形の押出物の形態に製造する。しかしながら、触媒は球形又はペレット形のような任意のその他の所望の形態に製造することもできる。押出物は円筒形以外の形態、例えばよく知られている三葉形(trilobal)又は拡散距離もしくは圧力降下の低減に関して利益を有するその他の形状であってもよい。
【0040】
商業用水素化分解触媒はいくつかの非ゼオライト系材料を含有している。これは、粒子強度、コスト、多孔度、及び性能といったいくつかの理由による。従って、その他の触媒成分は、たとえ活性分解成分としてでなくても触媒全体に積極的な貢献をする。これらのその他の成分を本明細書中では担体と呼ぶ。シリカ−アルミナのような一部の伝統的担体成分は通常、触媒の分解能に何らかの貢献をする。本明細書中に開示された方法及び組成物の態様において、触媒は比較的少量のベータゼオライトを含有する。触媒は、ベータゼオライト、YゼオライトI(存在する場合)、YゼオライトII、及び担体の、いずれも乾燥ベースでの総重量を基にして、0.5〜5wt%、好ましくは0.7〜2.6wt%のベータゼオライトを含有する。本明細書中で使用している乾燥ベースでの重量とは、500℃(932°F)の乾燥空気中で6時間加熱後の重量とみなされる。触媒は、YゼオライトIのベータゼオライトに対する乾燥ベースでの重量比0.5〜5、好ましくは0.5〜2.0を有する。所望によるYゼオライトIが存在する場合、触媒は、YゼオライトIのYゼオライトIIに対する乾燥ベースでの重量比1.5〜8、好ましくは2〜6.5を有する。所望によるYゼオライトIが存在する場合、触媒は、ベータゼオライト、YゼオライトI、YゼオライトII、及び担体の、いずれも乾燥ベースでの総重量を基にして、5wt%超〜最大15wt%のYゼオライトI及びYゼオライトIIを含有する。
【0041】
ゼオライト系材料以外の触媒粒子の残りは主にアルミナ及び/又はシリカ−アルミナのような従来の水素化分解材料によって占められうる。シリカ−アルミナの存在は、触媒の所望の性能特性を達成するのに役立つ。一態様において、触媒は少なくとも25wt%のアルミナ及び少なくとも25wt%のシリカ−アルミナ(いずれもゼオライトと担体の総重量を基にして)(全て乾燥ベース)を含有する。別の態様では、触媒のシリカ−アルミナ含有量は40wt%超、触媒のアルミナ含有量は20wt%超(いずれもゼオライトと担体の総重量を基にして)(全て乾燥ベース)である。しかしながら、アルミナはバインダとして機能するだけで、活性分解成分ではないと考えられている。触媒担体は、乾燥ベースでの担体重量を基にして、50wt%超のシリカ−アルミナ又は50wt%超のアルミナを含有しうる。態様ではほぼ等量のシリカ−アルミナ及びアルミナが使用される。シリカ−アルミナ及びアルミナの他に担体として使用できるその他の無機耐火性材料は、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、ボリア、及びジルコニア−アルミナなどである。前述のこれらの担体材料は単独で使用しても任意の組合せで使用してもよい。
【0042】
ベータゼオライト、Yゼオライト、及びその他の担体材料の他に、主題の触媒は金属性の水素化成分を含有する。水素化成分は、好ましくは、触媒粒子中に均一に分布した一つ又は複数の卑金属として提供される。水素化成分は、周期表の第6、9、及び10族の一つ又は複数の元素成分である。白金及びパラジウムのような貴金属も適用できるが、最良の結果は二つの卑金属の組合せで得られている。具体的には、ニッケル又はコバルトのいずれかを、それぞれタングステン又はモリブデンと組み合わせる。金属水素化成分の好適な組成はニッケルとモリブデンの両方又はニッケルとタングステンの両方である。ニッケル又はコバルトの量は好ましくは完成触媒の2〜8wt%である。タングステン又はモリブデンの量は好ましくは完成触媒の8〜22wt%である。卑金属水素化成分の合計量は完成触媒の10〜30wt%である。
【0043】
主題の方法の触媒は業界標準技術を用いて製造できる。これは、大きく一般化すると、ベータゼオライト及びYゼオライトを他の無機酸化物成分及び水又は弱酸のような液体と混合して押出し可能なドウを作製し、その後マルチホール・ダイプレートを通して押し出すと要約することができる。押出物を回収し、好ましくは高温で焼成して押出物を硬化する。押し出された粒子を次にサイズのふるいにかけ、水素化成分を浸漬含浸又はよく知られたインシピエント・ウェットネス(incipient wetness)技術によって添加する。触媒が水素化成分に二つの金属を含有する場合、これらは順次又は同時に添加できる。触媒粒子は金属添加ステップの間に焼成してよく、金属添加後にも再度焼成してよい。
【0044】
別の態様では、多孔性の無機耐火性酸化物、ベータゼオライト、Yゼオライト、及び金属(一つ又は複数)を含有する化合物(一つ又は複数)を混合し、次いで混合した材料を混練し、その後混練材料を押し出し、最後に押し出された材料を焼成するのが好都合又は好適であろう。混練は、ヘプタモリブデン酸アンモニウム又はメタタングステン酸アンモニウムのような金属源、及び硝酸ニッケル又は硝酸コバルトのような別の金属の別の供給源と共に行われる。どちらの供給源の化合物も一般的に水溶液の形態又は塩として混合材料に導入される。その他の金属も溶解された水溶液の形態で又は塩として同様に導入できる。同様に、非金属元素、例えばリンも、使用される場合、リン酸のような可溶性成分を水溶液に配合することによって導入できる。
【0045】
さらに他の製造法はUS−A−5,279,726及びUS−A−5,350,501に記載されている。前記特許は引用によってその全文を本明細書に援用する。
上記手順によって製造された触媒は、酸化物形の水素化用金属を含有する。酸化物形は一般的に水素化分解のために硫化物形に変換される。これは硫化のためのいずれかの周知技術によって達成できる。例えば、触媒を水素化分解用反応器に装填する前の現場外(ex situ)予備硫化、触媒を水素化分解用反応器に装填後使用前に高めた温度での予備硫化、及び現場(in situ)硫化、すなわち酸化物形の触媒を、硫黄化合物を含有する炭化水素原料の水素化分解のために水素化分解条件下、例えば高めた温度及び圧力並びに水素の存在下で使用することによる現場硫化などである。
【0046】
本明細書中に開示された水素化分解法は、現在水素化分解法で商業的に使用されている一般的範囲内の条件で運転されることになる。多くの場合、運転条件は精油所又は処理装置に特異的である。すなわち、それらは大部分、既存の水素化分解装置の構造及び制限(これは通常相当な出費なしに変更することはできない)、原料の組成及び所望生成物によって決定付けられる。触媒床の入口温度は232℃(450°F)〜454℃(850°F)であるべきで、入口圧力は5171kPa(g)(750psi(g))〜24132kPa(g)(3500psi(g))、典型的には6895kPa(g)(1000psi(g))〜24132kPa(g)(3500psi(g))であるべきである。原料ストリームを十分な水素と混合して、原料の単位体積あたりの体積水素循環量を0℃(32°F)及び101.3kPa(a)(14.7psi(a))での測定で168〜1684標準ltr/ltr(15.6℃(60°F)及び101.3kPa(a)(14.7psi(a))での測定で1000〜10000標準ft/バレル(SCFB))とし、触媒固定床入りの一つ又は複数の反応器に送り込む。水素は主にリサイクルガスストリーム(酸性ガス除去のために精製設備を通過してもよいが、必要ではない)由来のものである。原料と混合された水素豊富ガス及び一態様において何らかのリサイクル炭化水素は、通常少なくとも75molパーセントの水素を含有する。留出油を製造するための水素化分解の場合、LHSVの点からの供給量は通常0.3〜3.0hr−1の広い範囲内である。本明細書中で使用しているLHSVは液空間速度を意味し、1時間あたりの液体の体積流量を触媒の体積で割ったものと定義される。ここで液体の体積と触媒の体積は同一の体積単位である。
【0047】
本明細書中に開示された方法に供給される典型的な原料は、原油から分別蒸留によって回収された多くの異なる炭化水素及び共沸化合物の混合物である。該混合物は、通常、留出油を製造するために149℃(300°F)〜371℃(700°F)の沸点範囲の上限より高い温度で沸騰する成分を有する。多くの場合、340℃(644°F)より上からスタートして一態様では482℃(900°F)未満、別の態様では540℃(1004°F)未満、第三の態様では565℃(1049°F)未満で終わる沸点範囲を有する。そのような石油由来の原料は、精油所で製造されるストリーム、例えば常圧軽油(atmospheric gas oil)、コーカー軽油(coker gas oil)、直留軽油(straight run gas oil)、脱アスファルト軽油(deasphaltedgas oil)、減圧軽油(vacuum gas oil)、及びFCCサイクル油(FCC cycle oil)のブレンドであり得る。典型的な軽油は166℃(330°F)〜566℃(1050°F)の範囲で沸騰する成分を含む。あるいは、本明細書中に開示された方法に供給される原料は、重質減圧軽油のような単一留分であってもよい。典型的な重質軽油留分は、371℃(700°F)〜566℃(1050°F)で沸騰する炭化水素成分を相当割合(通常少なくとも80重量パーセント)有する。シェール油又は石炭から回収されたような合成炭化水素混合物も主題の方法で処理できる。原料は、硫黄、窒素又はアスファルテンのようなその他の混入物の全量を除去するために、主題の方法に送り込まれる前に水素化処理を受けるか又は溶媒抽出によって処理されうる。
【0048】
主題の方法は、原料の大部分をより揮発性の炭化水素、例えば留出油沸点範囲の炭化水素に変換することが期待される。典型的な変換率は原料の組成に大きく依存して50〜100体積パーセント(以後vol%)の間で変動する。変換率は本明細書中に開示されたある態様では60〜90vol%、別の態様では70〜90vol%、さらに別の態様では80〜90vol%、そしてなお別の態様では65〜75vol%である。プロセス流出液は実際、メタンから、いずれかの所望生成物の沸点範囲より高温で沸騰する本質的に未変化の原料炭化水素まで広範囲の様々な炭化水素を含有する。プロセス流出液は、典型的には触媒入り反応器から出て、通常は当業者に公知の相分離又は蒸留などの方法によって分離され、いずれか所望の最終沸点を有する生成物となる。いずれかの所望生成物の最終沸点より高温で沸騰する炭化水素は、プロセスの中でそれらの沸点が多少低下したとしても未変換生成物と呼ばれる。ほとんどの未変換炭化水素は反応ゾーンにリサイクルされ、わずかな割合、例えば5wt%はドラッグストリーム(drag stream)として除去される。留出油を製造する場合、少なくとも30wt%、好ましくは少なくとも50wt%の流出液は371℃(700°F)未満で沸騰する。
【0049】
本明細書中に開示されている方法及び組成物は、当該技術分野で一段及び二段プロセスフローと呼ばれているものに使用できる。事前の水素化処理はあってもなくてもよい。これらの用語は、J.Scherzer及びA.J.Gruiaによる書籍名Hydrocracking Science and Technology(水素化分解の科学技術),ISBN 0−8247−9760−4,Marcel Dekker Inc.,ニューヨーク,1996に定義及び説明の通りに使用されている。二段プロセスでは主題の触媒は第一又は第二段階のいずれかで使用できる。該触媒に先立って別の反応器で水素化処理触媒が使用されても、又は該触媒を水素化処理触媒又は異なる水素化分解触媒と同じ反応器中に装填してもよい。上流の水素化処理触媒は、原料の前処理ステップとして使用することも、又はリサイクルされた未変換材料を水素化処理するために使用することもできる。水素化処理触媒は、多核芳香族(PNA)化合物を水素化処理してその後の水素化分解触媒床でのそれらの変換を促進するという特定の目的のために使用できる。主題の触媒は、第二の異なる触媒、例えばYゼオライトに基づいた触媒又は主にアモルファス分解成分を有する触媒と組み合わせて使用することもできる。
【0050】
本明細書中に開示された方法の一部の態様において、触媒は、原料と共に使用されるか、又は触媒を通過する原料が生原料又は生原料に似た原料という構成の中で使用される。原油の硫黄含有量、従ってこの方法に供給される原料の硫黄含有量は、その供給源によって大きく変動する。本明細書中で使用している生原料とは、水素化処理されていない原料、又はまだ有機硫黄化合物を含有しているために硫黄濃度が1000wt−ppmを超える原料、又はまだ有機窒素化合物を含有しているために窒素濃度が100wt−ppm(0.01wt%)を超える原料を意味するものとする。
【0051】
本明細書中に開示された方法の他の態様において、触媒は水素化処理された原料と共に使用される。炭化水素処理分野の技術者であれば、生原料を水素化処理して本明細書中に開示された方法に装填するための水素化処理原料を製造する方法は知っており、実施できる。水素化処理原料の硫黄濃度は500〜1000wt−ppmでありうるが、水素化処理原料の硫黄濃度は本明細書中に開示された方法の一態様においては500wt−ppm未満、別の態様においては5〜500wt−ppmである。水素化処理原料の窒素濃度は一態様においては100wt−ppm未満、別の態様においては1〜100wt−ppmである。
【0052】
本明細書中で周期表の元素の族に関するすべての言及は、書籍名CRC Handbook of Chemistry and Physics,ISBN 0−8493−0480−6,CRC Press,米国フロリダ州ボカラートン,第80版,1999−2000の表紙裏にある元素の周期表に関するIUPACの“New Notation(新表記法)”に準拠する。本明細書中で表面積に関するすべての言及は、窒素分圧p/pが0.03における一点表面積(single-point surface areas)による。これは、ASTM D4365−95のStandard Test Method for Determining Micropore Volume and Zeolite Area of Catalyst(触媒の微孔容積及びゼオライト面積決定のための標準的試験法)及びBrunauerらによるJ.Am.Chem.Soc.,60(2),309−319(1938)の文献に記載されているような窒素吸着技術を用いるBET(Brunauer−Emmett−Teller)法によって決定される。本明細書中で沸点に関するすべての言及は、ASTM D2887のStandard Test Method for Boiling Range Distribution of Petroleum Fractions by Gas Chromatography(ガスクロマトグラフィーによる石油留分の沸点範囲分布の標準的試験法)によって測定された沸点に準拠する。ASTM法はASTM International,100 Barr Harbor Drive,P.O.Box C700,West Conshohocken,Pennsylvania,U.S.A.から入手できる。
【0053】
以下の実施例は例示的目的のために提供されるものであって、特許請求の範囲に定義されている方法及び組成物を制限するためのものではない。
【実施例】
【0054】
実施例1
サンプル1
UOP LLC(米国イリノイ州Des Plaines)販売の、文献でY−84と呼ばれている、ナトリウム含有量がNaOでの計算で0.2wt%未満のアンモニウム交換Yゼオライトを蒸熱することによって改質Yゼオライトを製造した。得られた改質Yゼオライトは本明細書中ではサンプル1と呼ばれ、シリカのアルミナに対する(SiOのAlに対する)総体的モル比5.0〜5.5、単位格子サイズ24.28オングストローム、及び表面積540〜640m/gを有していた。サンプル1は、YゼオライトIの例であるが、これを表ではY1とする。
【0055】
サンプルAW1
サンプル1のサンプルを酸洗浄した。得られた酸洗浄改質Yゼオライトは本明細書中ではサンプルAW1と呼ばれ、シリカのアルミナに対する(SiOのAlに対する)総体的モル比11.0、単位格子サイズ24.28オングストローム、及び表面積570〜750m/gを有していた。サンプルAW1は、YゼオライトIの例であるが、これを表ではAW Y1とする。
【0056】
サンプル2
改質Yゼオライトを、サンプル1について記載したのと蒸熱条件が異なる以外は同様の様式で製造した。得られた改質Yゼオライトは本明細書中ではサンプル2と呼ばれ、シリカのアルミナに対する(SiOのAlに対する)総体的モル比5.0〜5.5、単位格子サイズ24.35オングストローム、及び表面積630〜730m/gを有していた。サンプル2は、YゼオライトIIの例であるが、これを表ではY2とする。
【0057】
実施例2
8種類の触媒(A〜H)を、サンプル1(存在する場合)、サンプルAW1(存在する場合)、サンプル2(存在する場合)、シリカのアルミナに対する(SiOのAlに対する)総体的モル比23.8及びSF吸着能29wt%を有するベータゼオライト(存在する場合)、アモルファスシリカ−アルミナ、及びHNOでペプタイズされたCatapal(登録商標)C ベーマイトアルミナをマラー混合機で混合することによって製造した。シリカのアルミナに対する(SiOのAlに対する)総体的モル比23.8及びSF吸着能29wt%を有するベータゼオライトは、その合成中に使用されたテンプレートを含有したままか、又は前述のテンプレートを除去するために穏やかな条件でその後焼成された、のいずれかであった。表では、テンプレートを含有するベータゼオライトをベータ1とし、焼成されたベータゼオライトをベータ2とする。アモルファスシリカ−アルミナは、CCICシリカ−アルミナ(名目組成75wt%シリカ及び25wt%アルミナを有する)又はSiral 40シリカ−アルミナ(名目組成40wt%シリカ及び60wt%アルミナを有する)のいずれかであった。CCICシリカ−アルミナは、Catalysts & Chemicals Industries Co.Ltd.(CCIC)から入手でき、Catapal CアルミナとSiral 40シリカ−アルミナは、Sasol Germany GmbHから入手できる。各最終触媒中のこれらの成分の乾燥ベースでの量は表に載せてある。得られた混合物を押し出して、直径1.6mm(1/16in)、長さ3.2mm(1/8in)〜12.7mm(1/2in)の円筒形粒子にした。湿った押出物を104℃(220°F)で最低4時間乾燥させた後、550℃(1022°F)超で最低90分間焼成した。触媒A〜F及びHの場合、次に、最終触媒中に4wt%のニッケル(Niとして計算)を提供するために十分な硝酸ニッケルと、最終触媒中に14wt%のタングステン(Wとして計算)を提供するために十分なメタタングステン酸アンモニウムをインシピエント・ウェットネスにより焼成押出物に加えた。一方、触媒G及びHの場合、対応量はニッケル5wt%及びタングステン17.5wt%であった。次に、押出物をさらさらになるまで乾燥させた後、500℃(932°F)で最低90分間焼成することによって酸化した。触媒Iは、平均で5.5wt%のニッケルと17.5wt%のタングステンを含有する標準水素化分解触媒である。ニッケル及びタングステン含有量における違いは、これらの実施例に記載の水素化分解活性及び選択性に著しい影響を及ぼしていないと考えられる。
【0058】
実施例3
上記9種類の各触媒の予備硫化を、10vol%のHSと残りはHから成るガスストリームを触媒床に当初149℃(300°F)の温度で通し、徐々に413℃(775°F)に上げてその温度に6時間維持することによって行った。
【0059】
9種類の触媒を、第一段階をシミュレートした試験で、水素化分解の活性及び選択性(すなわち生成物収率)について比較した。具体的には、9種類の触媒を、15.6℃(60°F)における比重0.877(API比重30.05°)、初期沸点107℃(224°F)、5wt%の沸点195℃(382°F)、最終沸点550℃(1021°F)、及び50wt%の沸点24℃(795°F)を有し、13wt%は288℃(550°F)未満及び26wt%は371℃(700°F)未満で沸騰する水素化処理された軽質アラビア減圧軽油(VGO)原料の水素化分解について別個に試験した。
【0060】
各触媒を、原料を実験室サイズの反応器に、LHSV 1.5hr−1、全圧13786kPa(g)(2000psi(g))、0℃(32°F)及び101.3kPa(a)(14.7psi(a))での測定で原料の単位体積あたり体積水素供給量1684標準ltr/ltr(15.6℃(60°F)及び101.3kPa(a)(14.7psi(a))での測定で10000SCFB)で通すことによって第一段階をシミュレートした運転について試験した。十分なジ−tert−ブチルジスルフィドを原料に加えて2.1wt%の硫黄分にすることによって商業用の第一段階の水素化分解反応器中に存在するような硫化水素含有雰囲気をシミュレートした。さらに、十分なシクロヘキシルアミンも原料に加えて780wt−ppmの窒素分にすることによって商業用の第一段階の水素化分解反応器中に存在するようなアンモニア含有雰囲気をシミュレートした。
【0061】
留出油を製造するための水素化分解試験の場合、371℃(700°F)未満で沸騰する材料への65wt%正味変換率を維持するために温度条件を100時間にわたって必要に応じて調整した。正味変換率は、371℃(700°F)未満で沸騰する流出液(原料のパーセンテージとして表わされている)から371℃(700°F)未満で沸騰する原料のパーセンテージを引いたものである。100時間の終了時、65wt%正味変換率を維持するために要した温度を記録し、各触媒の相対活性及び選択性を計算した。これらのデータは表にまとめた。各触媒の選択性の値は、全留出油(すなわち149℃(300°F)〜371℃(700°F))、軽質留出油(すなわち149℃(300°F)〜288℃(550°F))、及び重質留出油(すなわち288℃(550°F)〜371℃(700°F))であった。各触媒の相対活性の値は、触媒が65wt%正味変換率を維持するために要した温度と、全9種類の触媒について同一の参照温度との間の差として入力されている。相対活性の値が低いほど触媒の活性は高い。
【0062】
【表1】

【0063】
図1は、VGOの全留出油留分への65wt%正味変換率を達成するために要した参照温度超過分の反応器の温度で表された相対触媒活性に対してプロットされた触媒A〜Iの149℃(300°F)〜371℃(700°F)留分の留出油の選択性のチャートである。触媒A〜F(正方形)は、所定の相対活性で触媒G〜I(菱形)より高い全留出油の選択性を示す。
【0064】
図2は、重質留出油留分の選択性の軽質留出油留分の選択性に対する重量比vs相対活性のチャートである。触媒A〜F(正方形)は、触媒G〜I(菱形)に比べて、軽質留出油に対して著しく高い重質留出油の選択性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化成分と、シリカのアルミナに対する総体的モル比30未満及びSF吸着能少なくとも28wt%を有するベータゼオライトと、単位格子サイズ24.33〜24.38オングストロームを有するYゼオライト(YゼオライトII)と、担体とを含む触媒を含む組成物であって、前記YゼオライトIIはシリカのアルミナに対する総体的モル比5.0〜11.0を有し、前記触媒は乾燥ベースでベータゼオライトとYゼオライトIIと担体の総重量を基にして0.5〜5wt%のベータゼオライトを含有し、前記触媒は乾燥ベースでYゼオライトIIのベータゼオライトに対する重量比0.5〜5を有する組成物。
【請求項2】
YゼオライトIIが800m/g未満の表面積を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水素化成分が、モリブデン、タングステン、ニッケル、コバルト、並びにそれらの酸化物及び硫化物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
YゼオライトIIの単位格子サイズが第一の単位格子サイズであり、触媒が、24.25〜24.32オングストロームの、第一の単位格子サイズより少なくとも0.04オングストローム小さい第二の単位格子サイズを有する追加のYゼオライト(YゼオライトI)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
YゼオライトIIが、
a)ナトリウムYゼオライトを部分アンモニウム交換するステップと;
b)ステップ(a)から得られたゼオライトを水蒸気の存在下で焼成するステップと;
c)ステップ(b)から得られたゼオライトをアンモニウム交換するステップと;そして
d)ステップ(c)から得られたゼオライトを水蒸気の存在下で焼成するステップと
を含む方法によって製造される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
YゼオライトIIが、
a)ナトリウムYゼオライトを部分アンモニウム交換するステップと;
b)ステップ(a)から得られたゼオライトを水蒸気の存在下で焼成するステップと;
c)ステップ(b)から得られたゼオライトを水溶液の形態のフルオロシリケート塩と接触させるステップと;そして
d)ステップ(c)から得られたゼオライトを水蒸気の存在下で焼成するステップと
を含む方法によって製造される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
YゼオライトIIが、
a)ナトリウムYゼオライトを水溶液の形態のフルオロシリケート塩と接触させるステップと;そして
b)ステップ(a)から得られたゼオライトを水蒸気の存在下で焼成するステップと;
を含む方法によって製造される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
YゼオライトIIが24.34〜24.36オングストロームの単位格子サイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
YゼオライトIIのベータゼオライトに対する重量比が乾燥ベースで0.5〜2.0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
炭化水素原料の水素化分解法であって、原料を水素の存在下232℃〜454℃の温度及び5171kPa(g)〜24132kPa(g)の圧力で、請求項1〜9のいずれか一項に記載の触媒組成物と接触させることを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−543693(P2009−543693A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520888(P2009−520888)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/073043
【国際公開番号】WO2008/011289
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】