説明

ベーパー乾燥装置

【課題】 乾燥用溶剤を高圧気体により破砕して液体微粒子を生成し、この液体微粒子と上記高圧気体との混合気を液体噴出口から噴射する二流体ノズルを用いて粒径を制御した乾燥用溶剤を被乾燥物に塗布することにより乾燥を行う。
【解決手段】 流路が開閉可能とされた溶剤導入管9を介して乾燥用溶剤を導入する溶剤導入手段1と、流路が開閉可能とされた気体導入管13を介して高圧気体を導入する気体導入手段2とに接続されると共に、移動機構を備えたアーム4により保持された二流体ノズル3により、上記溶剤導入管9から導入された乾燥用溶剤を、上記気体導入管13から導入された高圧気体により破砕して液体微粒子を生成し、この液体微粒子と上記高圧気体との混合気を液体噴出口14から噴射することにより、該混合気の噴射方向に設けられて水平面内で回転するターンテーブル5の上面に載置された被乾燥物27に該混合気を塗布することにより乾燥を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばウェハ等の半導体基板やガラス、その他の工業用の基板を乾燥する乾燥装置に関し、詳しくは、乾燥用溶剤を高圧気体により破砕して液体微粒子を生成し、この液体微粒子と上記高圧気体との混合気を液体噴出口から噴射する二流体ノズルを用いて粒径を制御した乾燥用溶剤を被乾燥物に塗布することにより乾燥を行うベーパー乾燥装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のベーパー乾燥装置は、処理槽内の乾燥用溶剤をヒーターによって加熱し、これによって生じる蒸気の雰囲気中に被乾燥物を配設すると共に、上記処理槽内に設けられたノズルに乾燥用溶剤を圧送して、該乾燥用溶剤をミスト化して吹きつけることにより、被乾燥物の乾燥を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−181198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来のベーパー乾燥装置においては、所定の大きさの処理槽の内部を乾燥用溶剤の蒸気で満たす必要があるため、乾燥用溶剤の使用量が多かった。また、乾燥用溶剤を蒸発させる為にヒーター等の熱源が必要であるため、乾燥用溶剤への引火の危険性があった。さらにまた、乾燥用溶剤をミスト化して吹きつける手段として設けられたノズルは、微細な噴射孔を多数有するノズル口に乾燥用溶剤を圧送することによって乾燥用溶剤をミスト化していたので、ミストの粒径が大きく、その粒径の微細な制御を行うことができなかった。
【0004】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、乾燥用溶剤を高圧気体により破砕して液体微粒子を生成し、この液体微粒子と上記高圧気体との混合気を液体噴出口から噴射する二流体ノズルを用いて粒径を制御した乾燥用溶剤を被乾燥物に塗布することにより乾燥を行うベーパー乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明によるベーパー乾燥装置は、流路が開閉可能とされた溶剤導入管を有し、該溶剤導入管を介して乾燥用溶剤を導入する溶剤導入手段と、流路が開閉可能とされた気体導入管を有し、該気体導入管を介して高圧気体を導入する気体導入手段と、上記溶剤導入手段及び気体導入手段に接続され、上記溶剤導入管から導入された乾燥用溶剤を、上記気体導入管から導入された高圧気体により破砕して液体微粒子を生成し、この液体微粒子と上記高圧気体との混合気を液体噴出口から噴射する二流体ノズルと、上記二流体ノズルを保持すると共に、該二流体ノズルの移動機構を備えたアームと、上記二流体ノズルからの混合気の噴射方向に設けられ、被乾燥物を上面に載置して水平面内で回転するターンテーブルと、上記二流体ノズル及びターンテーブルの周りを覆うチャンバーとを備えたものである。
【0006】
このような構成により、流路が開閉可能とされた溶剤導入管を介して乾燥用溶剤を導入する溶剤導入手段と、流路が開閉可能とされた気体導入管を介して高圧気体を導入する気体導入手段とに接続されると共に、移動機構を備えたアームにより保持された二流体ノズルにより、上記溶剤導入管から導入された乾燥用溶剤を、上記気体導入管から導入された高圧気体により破砕して液体微粒子を生成し、この液体微粒子と上記高圧気体との混合気を液体噴出口から噴射することにより、該混合気の噴射方向に設けられて水平面内で回転するターンテーブルの上面に載置された被乾燥物に該混合気を塗布する。
【0007】
また、上記二流体ノズルは、該二流体ノズル先端部の液体噴出口の内部に旋回導孔を有し、該二流体ノズルに導入された上記高圧気体に旋回流を与えて噴出させるものである。これにより、二流体ノズル先端部の液体噴出口内部に設けられた旋回導孔によって、上記二流体ノズルに導入された高圧気体に旋回流を与えて噴出させる。
【0008】
さらに、上記二流体ノズルの移動機構は、該二流体ノズルを、アームの基端とターンテーブルの回転軸線上との間で水平方向に移動させる前進後退機構である。これにより、前進後退機構によって、二流体ノズルを、アームの基端とターンテーブルの回転軸線上との間で水平方向に移動させる。
【0009】
さらにまた、上記二流体ノズルの移動機構は、該二流体ノズルを、アームの基端を中心として水平面内にて円弧を描いて移動させるスイング機構である。これにより、スイング機構によって、二流体ノズルを、アームの基端を中心として水平面内にて円弧を描いて移動させる。
【0010】
また、上記二流体ノズルの移動機構は、上記前進後退機構及びスイング機構の両方を備えるものである。これにより、前進後退機構及びスイング機構によって、二流体ノズルを、アームの基端とターンテーブルの回転軸線上との間で水平方向に移動させると共に、アームの基端を中心として水平面内にて円弧を描いて移動させる。
【0011】
さらに、上記二流体ノズルの移動機構の動作は、上記二流体ノズルの移動速度を、被乾燥物の周辺から中心に向かうに従って速くし、また被乾燥物の中心から周辺に向かうに従って遅くするものである。これにより、二流体ノズルは、被乾燥物の周辺から中心に向かうに従って速く移動し、また被乾燥物の中心から周辺に向かうに従って遅く移動する。
【0012】
さらにまた、上記二流体ノズルの移動機構は、該二流体ノズルを、被乾燥物の上方にて所定の範囲内で鉛直方向に移動させる上昇下降機構である。これにより、上昇下降機構によって、二流体ノズルを、被乾燥物の上方にて所定の範囲内で鉛直方向に移動させる。
【0013】
また、上記気体導入管には、高圧気体の流量を制御する気体流量制御装置が接続されている。これにより、気体流量制御装置によって高圧気体の流量を制御する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、溶剤導入手段と気体導入手段とに接続されると共に、移動機構を備えたアームにより保持された二流体ノズルにより、上記溶剤導入手段から導入された乾燥用溶剤を、上記気体導入手段から導入された高圧気体によって破砕して液体微粒子を生成し、この液体微粒子と上記高圧気体との混合気を液体噴出口から噴射することにより、該混合気の噴射方向に設けられて水平面内で回転するターンテーブルの上面に載置された被乾燥物に該混合気を塗布することができる。したがって、高圧気体による破砕によって液体微粒子化した乾燥用溶剤を被乾燥物に塗布することができ、乾燥用溶剤の使用量が微少量で済むため、乾燥用溶剤の使用効率を高めることができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明によれば、二流体ノズル先端部の液体噴出口内部に設けられた旋回導孔によって、上記二流体ノズルに導入された高圧気体に旋回流を与えて噴出させることができる。したがって、旋回する高圧気体により乾燥用溶剤の破砕が十分に行われることによって、更に小さな液体微粒子領域まで乾燥用溶剤を微粒子化することができる。
【0016】
さらに、請求項3に係る発明によれば、前進後退機構によって、二流体ノズルを、アームの基端とターンテーブルの回転軸線上との間で水平方向に移動させることができる。したがって、被乾燥物の周辺から中心にわたって乾燥用溶剤をもれなく塗布することができる。
【0017】
さらに、請求項4に係る発明によれば、スイング機構によって、二流体ノズルを、アームの基端を中心として水平面内にて円弧を描いて移動させることができる。したがって、被乾燥物の周辺から中心にわたって乾燥用溶剤をもれなく塗布することができる。
【0018】
さらに、請求項5に係る発明によれば、前進後退機構及びスイング機構によって、二流体ノズルを、アームの基端とターンテーブルの回転軸線上との間で水平方向に移動させると共に、アームの基端を中心として水平面内にて円弧を描いて移動させることができる。したがって、被乾燥物の全面にわたって乾燥用溶剤をもれなく塗布することができる。
【0019】
さらに、請求項6に係る発明によれば、二流体ノズルを、被乾燥物の周辺から中心に向かうに従って速く移動させ、また被乾燥物の中心から周辺に向かうに従って遅く移動させることができる。したがって、被乾燥物の全面にわたり、乾燥用溶剤の塗布濃度を均一にすることができ、乾燥状態のムラを無くすことができる。
【0020】
さらに、請求項7に係る発明によれば、上昇下降機構によって、二流体ノズルを、被乾燥物の上方にて所定の範囲内で鉛直方向に移動させることができる。これにより、乾燥用溶剤は、二流体ノズルから噴出後、被乾燥物の上面に到達する間の飛翔時間の変化によって蒸発量を変化させることができる。したがって、乾燥用溶剤の粒径と塗布量を、被乾燥物に対して最適な条件に制御することができる。
【0021】
さらに、請求項8に係る発明によれば、気体流量制御装置によって、高圧気体の流量を制御することができる。これにより、二流体ノズルに導入される乾燥用溶剤と高圧気体の流量比を高精度に変えることによって、乾燥用溶剤の破砕量を精度よく変えることができる。したがって、乾燥用溶剤の粒径と塗布量を、被乾燥物に対して最適な条件に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるベーパー乾燥装置の実施形態を示す図である。このベーパー乾燥装置は、乾燥用溶剤を高圧気体により破砕して液体微粒子を生成し、この液体微粒子と上記高圧気体との混合気を液体噴出口から噴射する二流体ノズルを用いて粒径を制御した乾燥用溶剤を被乾燥物に塗布することにより乾燥を行うもので、溶剤導入手段1と、気体導入手段2と、二流体ノズル3と、アーム4と、ターンテーブル5と、チャンバー6とを備えて成る。
【0023】
上記溶剤導入手段1は、乾燥用溶剤を二流体ノズル3に導入するもので、乾燥用溶剤を供給する溶剤供給源7と、流路を開閉させる溶剤導入シャットオフバルブ8と、乾燥用溶剤の搬送流路となる溶剤導入管9とから成り、該溶剤導入管9が上記二流体ノズル3に接続されている。この実施形態の場合は、溶剤導入管9に内径が約0.5mm程度の細管を使用して、管内部を流れる乾燥用溶剤に所定の圧力損失を与えている。これにより、上記溶剤供給源7からの供給圧力を制御することのみによって、特別な装置を使うことなく乾燥用溶剤の流量を制御することができる。なお、上記溶剤導入管9は、耐薬品性が強い例えばフッ素樹脂製のチューブを使用している。また、上記乾燥用溶剤は、例えばIPA(イソプロピルアルコール)を使用している。或いは、他のアルコール類又はアセトン等の水との親和性を有する揮発性の液体としてもよい。
【0024】
上記気体導入手段2は、上記溶剤導入手段1と共に二流体ノズル3に接続されている。この気体導入手段2は、高圧気体を二流体ノズル3に導入するもので、高圧気体を供給する気体供給源10と、高圧気体の流量を制御する気体流量制御装置11と、流路を開閉させる気体導入シャットオフバルブ12と、高圧気体の搬送流路となる気体導入管13とから成り、該気体導入管13が上記二流体ノズル3に接続されている。なお、上記気体は、例えば窒素を使用している。或いは、アルゴンなどの不活性ガスとしてもよい。
【0025】
上記溶剤導入手段1及び気体導入手段2には、上記二流体ノズル3が接続されている。この二流体ノズル3は、上記溶剤導入管9から供給される乾燥用溶剤を、上記気体導入管13から導入される高圧気体により破砕して液体微粒子を生成し、この液体微粒子と上記高圧気体との混合気を図2に示す液体噴出口14から噴射するもので、筒状に形成された外子15と、その内部に嵌合された中子16とからなり、上記外子15の内部には空洞17(図4参照)が形成され、その先端部には乾燥用溶剤を高圧気体と共に噴射する上記液体噴出口14を有し、外周面の一部には上記気体導入管13と接続されて上記空洞17内に高圧気体を送る気体挿入口18が設けられている。
【0026】
また、上記中子16は、図5に示すように、適宜の長さで適宜の内径を有するパイプ部材から成り、上記外子15の液体噴出口14に対応する先端部にノズル孔19を有すると共に、その周りに、上記空洞17内の高圧気体による旋回流を発生させる旋回導孔20を有し、上記外子15の空洞17内に挿入されて固定され、そのパイプ部材の内部を通して上記ノズル孔19側へ乾燥用溶剤を送り込むようになっている。
【0027】
上記旋回導孔20は、図5に示すように、上記中子16を形成するパイプ部材の先端部に設けられたコマ状のノズルチップ21の外周面に、上記空洞17側からノズル孔19側へ高圧気体を導くように形成され、図7に示すように、外側四方から内側に向けてスパイラル状の溝に形成されている。したがって、図2及び図6に示すように、上記外子15の空洞17内に上記中子16を組み合わせた状態で、上記気体送入口18から上記空洞17内に高圧気体を供給すると、ノズルチップ21の外側四方から旋回導孔20を介して内側に向けて高圧気体が流れ、上記ノズル孔19側へ向かう旋回流が発生する。
【0028】
上記二流体ノズル3は、図1に示すように、上記アーム4によって保持されている。このアーム4は、上記二流体ノズル3を保持すると共に、上記二流体ノズル3の前進後退機構、スイング機構及び上昇下降機構を構成する部材となるもので、アーム支持軸22によって支えられている。上記アーム4は、該アーム4の基端とターンテーブル5の回転軸線上との間で水平方向に伸縮するようになっている。具体的には、上記アーム4は、アーム部材4a,4b,4cからなり、アーム部材4aにアーム部材4bが収納され、アーム部材4bにアーム部材4cが収納される入子構造になっており、伸縮用モーター23に接続されることにより、例えばラック及びピニオン等の機構によって、矢印A又はBの向きに伸縮することができる。ここで、上記アーム4と伸縮用モーター23とで、上記二流体ノズル3の前進後退機構を構成している。これにより、上記二流体ノズル3は、上記アーム4の基端と上記ターンテーブル5の回転軸線上との間で水平方向に移動することができる。
【0029】
また、上記アーム支持軸22の下端には、スイング用モーター24が設けられている。このスイング用モーター24は、上記支持軸22を介して、上記アーム4を、図8及び図9に示すように、該アーム4の基端を中心として水平面内にて矢印C又はDの向きに円弧を描いて回動させるものである。ここで、上記アーム4と、伸縮用モーター23と、支持軸22と、スイング用モーター24とで、上記二流体ノズル3のスイング機構を構成している。これにより、上記二流体ノズル3は、アームの基端を中心として水平面内にて円弧を描いて移動することができる。
【0030】
さらにまた、上記スイング用モーター24は、支持台25上に設置されている。この支持台25は、例えばモーターと、ラック及びピニオンなどの組み合わせからなる昇降装置26に接続されており、上記支持軸22を介して、上記アーム4を、図1に示すように、矢印E又はFの向きに鉛直方向に移動させることができる。ここで、上記アーム4と、伸縮用モーター23と、支持軸22と、スイング用モーター24と、支持台25と、昇降装置26とで、上記二流体ノズル3の上昇下降機構を構成している。これにより、上記二流体ノズル3は、被乾燥物27の上方にて所定の範囲内で鉛直方向に移動することができる。
【0031】
また、上記伸縮用モーター23、スイング用モーター24及び昇降装置26は、制御装置28に接続されている。この制御装置28は、上記伸縮用モーター23、スイング用モーター24及び昇降装置26を介して、上記二流体ノズル3の前進後退機構、スイング機構及び上昇下降機構を制御するものである。そして、この制御装置28により、被乾燥物27の大きさ、形状及び厚さと、上記ターンテーブル5の回転速度とを基に、上記二流体ノズル3の被乾燥物27からの高さと移動範囲とを決定し、その移動範囲内において、図10に示すように、被乾燥物27の周辺から中心に向かうに従って速く移動し、また被乾燥物27の中心から周辺に向かうに従って遅く移動するように移動速度を制御することができる。ここで図10は、上記二流体ノズル3の水平面内における移動速度の特性を表すグラフで、横軸に被乾燥物27の水平面内における二流体ノズル3の位置をとり、縦軸に上記二流体ノズル3の水平面内における移動速度をとり、上記二流体ノズル3が、被乾燥物27の周辺から中心に向かうに従って双曲線の特性に従い速度を上げていき、被乾燥物27の中心から周辺に向かうに従って双曲線の特性に従い速度を落としていくことを示している。これにより、乾燥用溶剤の塗布濃度を被乾燥物27の全面にわたって均一にすることができる。
【0032】
上記二流体ノズル3からの混合気の噴射方向の所定位置には、ターンテーブル5が設置されている。このターンテーブル5は、被乾燥物27を上面に載置すると共に、図9に示すように、水平面内で矢印G,H方向に回転するもので、該ターンテーブル5の中心に設けられた回転軸29の下端に回転用モーター30が接続されている。これにより、上記ターンテーブル5は水平面内にて回転することができる。
【0033】
上記ターンテーブル5は、上面方向を除く周囲を排気兼ドレイン31によって囲まれている。この排気兼ドレイン31は、上記二流体ノズル3から噴射された上記混合気の廃気と廃液を排出するもので、被乾燥物27の周囲を囲うすり鉢状部材からなり、底面の最深部には排出口32を有しており、該排出口32から伸びる排出管は、排気経路33と排液経路34に分岐され、上記排気経路33を、吸引ポンプ35によって約50mmH2O程度の圧力で吸引することにより、廃気と廃液を分離して排出できるようになっている。
【0034】
上記二流体ノズル3及びターンテーブル5の周りには、チャンバー6が設けられている。このチャンバー6は、上記二流体ノズル3及びターンテーブル5の周りを覆うもので、上記二流体ノズル3及びターンテーブル5、並びにその周辺の構成部品を覆い、内部を密閉状態に保つことによって外部からの不純物の侵入と、外部への乾燥用溶剤及び気体の漏れとを防いでいる。
【0035】
次に、このように構成されたベーパー乾燥装置の動作について、図1を参照して説明する。まず、上記二流体ノズル3は、図2において、中子16の後端部にて上記溶剤導入管9と接続されており、上記気体挿入口18にて上記気体導入管13と接続されている。
【0036】
この状態で、上記溶剤導入シャットオフバルブ8を開き、上記溶剤供給源7から所定の圧力で乾燥用溶剤を上記中子16のパイプ部材の内部に送ると共に、上記気体導入シャットオフバルブ12を開き、上記気体供給源10から、上記気体流量制御装置11によって所定の流量に制御した高圧気体を、上記外子15内の空洞17へ送り込む。
【0037】
ここで、上記気体送入口18から供給された高圧気体は、外子15内の空洞17から液体噴出口14側に送られるときに、上記ノズルチップ21の外側四方から上記旋回導孔20を介して内側に向けて流れ、上記ノズル孔19側へ向かう高速な旋回流となって噴射される。
【0038】
この状態で、上記中子16のノズル孔19から送り出される乾燥用溶剤に対して、上記ノズル孔19の周りで発生した高速な旋回流が噴射されて、上記乾燥用溶剤を破砕して微粒化し、先端部の上記液体噴出口14から噴射する。このとき、上記液体噴出口14から噴射される混合気は、粒径約数μm〜100μm程度の霧状になると共に適当な広がり角度でスパイラル状に噴射される。
【0039】
一方、上記二流体ノズル3は、前進後退機構、スイング機構及び上昇下降機構を備えた上記アーム4によって保持されており、上記制御装置28によって、被乾燥物27の大きさ、形状及び厚さと、上記ターンテーブル5の回転速度を基に、上記二流体ノズル3の被乾燥物27からの高さと移動範囲を決定し、その移動範囲内において、図10に示すように、被乾燥物27の周辺から中心に向かうに従って速く移動し、また被乾燥物27の中心から周辺に向かうに従って遅く移動するように移動速度が制御される。
【0040】
このように、位置と速度を制御されて上記二流体ノズル3から噴射された混合気は、回転する上記ターンテーブル5上に載置された被乾燥物27に対して、塗布濃度が被乾燥物27の全面にわたり均一になるように塗布される。
【0041】
また、上記二流体ノズル3から噴射された混合気の廃気と廃液は、重力及び上記吸引ポンプ35によって上記排出口32内に吸引される。該排出口32から伸びる排出管は、途中で上記排気経路33と排液経路34に分岐されており、廃液は重力に従って落下することによって排液経路34から排出され、廃気は上記吸引ポンプ35によって排気経路33より排出される。
【0042】
図11は、本発明の他の実施形態を示す説明図である。この実施形態は、図1に示す実施形態における上記溶剤導入手段1について、上記溶剤導入管9を分岐し、リンス用の純水導入手段36を追加している。この純水導入手段36は、純水を二流体ノズル3に導入するもので、純水を、純水供給源37から、純水導入シャットオフバルブ38を有する純水導入管39を介して、二流体ノズル3に導入するようになっている。これにより、上記溶剤導入シャットオフバルブ8を閉めて上記純水導入シャットオフバルブ38を開けることにより、リンス工程(洗浄工程)を行うことができる。該リンス工程は、他の装置でリンス工程を行った後に本ベーパー乾燥装置に搬入された被乾燥物27に対して、搬入途中で付着した不純物を洗浄する目的で乾燥工程の前に行う場合などに有効である。
【0043】
なお、以上の説明においては、上記溶剤導入管9に内径が約0.5mm程度の細管を使用して、管内部を流れる乾燥用溶剤に所定の圧力損失を与えることにより、乾燥用溶剤の流量を制御しているが、本発明はこれに限られず、例えば流量制御が可能な各種のバルブ等を用いて行ってもよい。また、上記溶剤導入管9及び気体導入管13及び純水導入管39の流路開閉装置としてシャットオフバルブを用いたが、例えばニードルバルブなどの流路の開閉が可能な他のバルブ等を用いてもよい。さらに、上記二流体ノズル3の前進後退機構として、伸縮可能な入子構造を用いたが、例えばリンク機構を利用したパンタグラフ方式を用いてもよい。さらにまた、上記気体導入手段2に設けた高圧気体の流量を制御する気体流量制御装置11は設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明によるベーパー乾燥装置の実施形態を示す説明図である。
【図2】上記ベーパー乾燥装置に用いる二流体ノズルの具体的な構造の一例を示す平面図である。
【図3】上記二流体ノズルの先端部を示す図2の左側面図である。
【図4】上記二流体ノズルの外子を示す中央縦断面図である。
【図5】上記二流体ノズルの中子を示す平面図である。
【図6】上記二流体ノズルの内部構造を示す中央縦断面図である。
【図7】上記中子の先端部のノズルチップに形成された旋回導孔を示す図5の左側面図である。
【図8】上記二流体ノズルの移動機構の概要を示す斜視図である。
【図9】上記二流体ノズルの移動機構の動作及びターンテーブルの回転状態を示す平面図である。
【図10】上記二流体ノズルの位置と速度の関係を表すグラフである。
【図11】図1に示す実施形態によるベーパー乾燥装置の他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1…溶剤導入手段
2…気体導入手段
3…二流体ノズル
4…アーム
5…ターンテーブル
6…チャンバー
9…溶剤導入管
11…気体流量制御装置
13…気体導入管
14…液体噴出口
20…旋回導孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路が開閉可能とされた溶剤導入管を有し、該溶剤導入管を介して乾燥用溶剤を導入する溶剤導入手段と、
流路が開閉可能とされた気体導入管を有し、該気体導入管を介して高圧気体を導入する気体導入手段と、
上記溶剤導入手段及び気体導入手段に接続され、上記溶剤導入管から導入された乾燥用溶剤を、上記気体導入管から導入された高圧気体により破砕して液体微粒子を生成し、この液体微粒子と上記高圧気体との混合気を液体噴出口から噴射する二流体ノズルと、
上記二流体ノズルを保持すると共に、該二流体ノズルの移動機構を備えたアームと、
上記二流体ノズルからの混合気の噴射方向に設けられ、被乾燥物を上面に載置して水平面内で回転するターンテーブルと、
上記二流体ノズル及びターンテーブルの周りを覆うチャンバーと、
を備えたことを特徴とするベーパー乾燥装置。
【請求項2】
上記二流体ノズルは、該二流体ノズル先端部の液体噴出口の内部に旋回導孔を有し、該二流体ノズルに導入された上記高圧気体に旋回流を与えて噴出させることを特徴とする請求項1記載のベーパー乾燥装置。
【請求項3】
上記二流体ノズルの移動機構は、該二流体ノズルを、アームの基端とターンテーブルの回転軸線上との間で水平方向に移動させる前進後退機構であることを特徴とする請求項1又は2記載のベーパー乾燥装置。
【請求項4】
上記二流体ノズルの移動機構は、該二流体ノズルを、アームの基端を中心として水平面内にて円弧を描いて移動させるスイング機構であることを特徴とする請求項1又は2記載のベーパー乾燥装置。
【請求項5】
上記二流体ノズルの移動機構は、上記前進後退機構及びスイング機構の両方を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のベーパー乾燥装置。
【請求項6】
上記二流体ノズルの移動機構の動作は、上記二流体ノズルの移動速度を、被乾燥物の周辺から中心に向かうに従って速くし、また被乾燥物の中心から周辺に向かうに従って遅くすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のベーパー乾燥装置。
【請求項7】
上記二流体ノズルの移動機構は、該二流体ノズルを、被乾燥物の上方にて所定の範囲内で鉛直方向に移動させる上昇下降機構であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のベーパー乾燥装置。
【請求項8】
上記気体導入管には、高圧気体の流量を制御する気体流量制御装置が接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のベーパー乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−182131(P2008−182131A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15782(P2007−15782)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(391061510)株式会社藤森技術研究所 (20)
【Fターム(参考)】