説明

ベーンポンプ

【課題】異物の侵入による潤滑油の漏れを防止することができるベーンポンプを提供する。
【解決手段】駆動軸1がポンプボディ10に設けられた軸受20に回転自在に支持されたベーンポンプ100であって、駆動軸1が突出するポンプボディ10の開口部に設けられ、駆動軸1外周と軸受20内周との間の潤滑油の漏れを防止するためのオイルシール22と、ポンプボディ10に取り付けられ、ポンプボディ10から突出する駆動軸1の突出部1aを覆うダストカバー24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧機器の油圧供給源として用いられるベーンポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のベーンポンプとして、駆動軸がポンプボディに設けられた軸受に回転自在に支持され、ポンプボディの端部には、駆動軸外周と軸受内周との間の潤滑油の漏れを防止するためのオイルシールが設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−146788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オイルシールは、外部に露出して設けられるため、泥水、砂、ダスト等の異物が駆動軸とオイルシールとの間に侵入する場合がある。そのような場合には、異物によってオイルシールに傷がつき、オイルシールの傷は潤滑油の漏れの原因となる。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、異物の侵入による潤滑油の漏れを防止することができるベーンポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、駆動軸がポンプボディに設けられた軸受に回転自在に支持されたベーンポンプであって、前記駆動軸が突出する前記ポンプボディの開口部に設けられ、前記駆動軸外周と前記軸受内周との間の潤滑油の漏れを防止するためのオイルシールと、前記ポンプボディに取り付けられ、前記ポンプボディから突出する前記駆動軸の突出部を覆うダストカバーと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポンプボディから突出する駆動軸の突出部を覆うダストカバーを備えるため、オイルシールは、ダストカバーによって覆われ外部に露出しない。したがって、異物の侵入によってオイルシールに傷がつくことが防止され、潤滑油の漏れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0008】
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係るベーンポンプ100の全体構成について説明する。図1はベーンポンプ100における駆動軸に平行な断面を示す断面図である。
【0009】
ベーンポンプ100は、車両に搭載される油圧機器、例えば、パワーステアリング装置や変速機等の油圧供給源として用いられるものである。
【0010】
ベーンポンプ100は、駆動軸1の端部に動力源としてのエンジン(図示せず)の動力が伝達され、駆動軸1に連結されたロータ2が回転するものである。
【0011】
ベーンポンプ100は、ロータ2に対して径方向に往復動可能に設けられる複数のベーン3と、ロータ2を収容すると共にロータ2の回転に伴って内周のカム面4aにベーン3の先端部が摺動するカムリング4とを備える。
【0012】
ロータ2には、外周面に開口部を有するスリットが所定間隔をおいて放射状に形成され、ベーン3は、そのスリットに摺動自在に挿入される。
【0013】
カムリング4は、内周のカム面4aが楕円形状をした環状の部材であり、カムリング4の内部には、隣り合うベーン3によって仕切られた複数のポンプ室7が画成される。カムリング4は、ポンプ室7の容積を拡張する吸込領域と、ポンプ室7の容積を収縮する吐出領域とを有する。本実施の形態では、カムリング4は、2つの吸込領域と2つの吐出領域とを有する。
【0014】
ロータ2及びカムリング4の一側面(図1では左側)にはポンプカバー5が当接して配置され、他側面(図1では右側)にはサイドプレート6が当接して配置される。このように、ポンプカバー5とサイドプレート6は、ロータ2及びカムリング4の両側面を挟んだ状態で配置され、ポンプ室7を密閉する。
【0015】
ポンプカバー5におけるロータ2が摺動する面には、カムリング4の吸込領域に向けて開口し、ポンプ室7に作動油(作動流体)を導く円弧状の2つの吸込ポート8が形成される。
【0016】
サイドプレート6におけるロータ2が摺動する面には、カムリング4の吐出領域に向けて開口し、ポンプ室7が吐出する作動油が導かれる円弧状の2つの吐出ポート9が形成される。
【0017】
各ポンプ室7は、ロータ2の回転に伴って、カムリング4の吸込領域にて吸込ポート8を通じて作動油を吸込み、カムリング4の吐出領域にて吐出ポート9を通じて作動油を吐出する。このように、各ポンプ室7は、ロータ2の回転に伴う拡縮によって作動油を給排する。
【0018】
駆動軸1は、ポンプボディ10に形成された軸受穴10aに設けられた軸受としてのブッシュ20を介してポンプボディ10に回転自在に支持される。駆動軸1は、軸受穴10aの開口部から外部へと突出している。ポンプボディ10から突出する駆動軸1の突出部1aの端部には、ベルトを介してエンジンの動力が伝達されるプーリ21が連結される。
【0019】
ポンプボディ10には、駆動軸1に連結されたロータ2が収容されるポンプ収容凹部10bが形成される。ポンプ収容凹部10b内には、サイドプレート6とカムリング4とが積層して収容され、駆動軸1はサイドプレート6を挿通している。
【0020】
ポンプボディ10のフランジ部10cにはポンプカバー5が締結され、ポンプボディ10のポンプ収容凹部10bはポンプカバー5によって封止される。
【0021】
また、ポンプボディ10には、吸込ポート8に連通し吸込ポート8に作動油を導く吸込通路11と、吐出ポート9に連通し吐出ポート9から吐出された作動油が流入する高圧室12と、高圧室12に連通し高圧室12の作動油を外部の油圧機器へと供給する吐出通路13とが形成される。
【0022】
ポンプボディ10の軸受穴10aの開口部には、駆動軸1外周とブッシュ20内周との間の潤滑油の漏れを防止するためのオイルシール22が嵌挿される。
【0023】
オイルシール22が外部に露出して設けられる場合には、車両の走行によって巻き上げられる泥水、砂、ダスト等の異物が駆動軸1とオイルシール22との間に侵入するおそれがある。そのような場合には、駆動軸1外周面との摺接部であるオイルシール22のリップ部22aに傷がつき、リップ部の傷は潤滑油の漏れの原因となる。
【0024】
そこで、ベーンポンプ100では、ポンプボディ10に、駆動軸1の突出部1aを覆い、オイルシール22を保護するダストカバー24が取り付けられる。
【0025】
以下では、図1〜図3を参照して、ダストカバー24について説明する。図2はダストカバー24の平面図であり、図3はダストカバー24の断面図である。
【0026】
ダストカバー24は、略環状のゴム製部材であり、ポンプボディ10に取り付けられる取付部25と、駆動軸1の突出部1aを覆うカバー部26と、取付部25とカバー部26とをつなぐ連結部27とからなる。なお、ダストカバー24は、ゴム製に限らず、合成樹脂製や金属製でもよい。
【0027】
取付部25の内径は、駆動軸1を支持するポンプボディ10の支持部10dの外径と略同一に形成される。また、カバー部26は、取付部25との間に駆動軸1の径方向に延びる連結部27が介在されることによって、取付部25と比較して小径に形成される。
【0028】
取付部25には、内側に向けて突設した環状の突起部25aが形成される。また、この突起部25aの外周には、環状の溝部25bが形成される。
【0029】
ダストカバー24をポンプボディ10に取り付けるには、取付部25をポンプボディ10の支持部10d外周に嵌挿し、かつ突起部25aを支持部10dに形成された環状の溝部10eに挿入することによって行う。このようにして取付部25が支持部10dに取り付けられた状態では、連結部27は支持部10dの端面に当接した状態となる。
【0030】
そしてさらに、突起部25aの外周の溝部25b内に、Cリング形状の止め輪28が嵌められる。この止め輪28によって、突起部25aが支持部10dの溝部10e内に押圧されるため、ダストカバー24は、取付部25を介してポンプボディ10の支持部10dにしっかりと取り付けられる。
【0031】
以上のように、ダストカバー24がポンプボディ10に取り付けられた状態では、カバー部26が駆動軸1の突出部1aを覆った状態となる。したがって、ポンプボディ10の軸受穴10aの開口部に設けられたオイルシール22は、カバー部26によって覆われ外部に露出しない。
【0032】
このように、オイルシール22がカバー部26にて覆われることによって、泥水、砂、ダスト等の異物が駆動軸1とオイルシール22との間に侵入することが防止され、オイルシール22のリップ部22aに傷がつくことが防止される。
【0033】
カバー部26は、自由端26aがプーリ21と所定の隙間を空けて配置される。つまり、カバー部26の自由端26aは開放して形成される。これは、カバー部26内に侵入した泥水を、隙間を通じて外部へ排出するためである。また、カバー部26は、内部に侵入した泥水を外部へ排出し易くするため、自由端26aに向けて内径が大きくなるテーパ形状に形成される。
【0034】
カバー部26の自由端26aは開放して形成されるため、内部に侵入した泥水が外部へ排出され易くなる一方、カバー部26の外周面に異物が当接した場合には、カバー部26が変形するおそれがある。しかし、連結部27が支持部10dの端面に当接しているため、異物の当接によってカバー部26に負荷がかかっても、その負荷は連結部を介して支持部10dの端面にて受けられるため、カバー部26の変形が防止される。
【0035】
さらに、カバー部26の変形を防止するために、カバー部26の外周には、駆動軸1の軸方向に延びる複数のリブ29が形成される。カバー部26にリブ29が形成されることによって、異物の当接によるカバー部26の変形をより防止することができると共に、ベーンポンプ100が発する熱によるカバー部26の熱変形も防止することができる。
【0036】
以上の本実施の形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0037】
オイルシール22は、駆動軸1の突出部1aを覆うダストカバー24によって覆われ、外部に露出しない。このように、オイルシールはダストカバー24によって保護されるため、異物が駆動軸1とオイルシール22との間に侵入することが防止され、潤滑油の漏れを防止することができる。
【0038】
ダストカバー24は、ポンプボディ10と別体の部材であるため、ポンプボディ10は設計変更することなく現状の構造のまま用いることができる。したがって、低コストでオイルシール22の保護構造を実現することができる。
【0039】
また、ダストカバー24は、取付部25をポンプボディ10の支持部10d外周に嵌挿し、突起部25aを支持部10dの溝部10eに挿入すると共に、突起部25a外周の溝部25b内に止め輪28を嵌めることによって、ポンプボディ10に取り付けられる。このように、ダストカバー24は、簡単にポンプボディ10に取り付けることができるため、製造工程が複雑になることがない。
【0040】
また、カバー部26は、自由端26aが開放し、かつ自由端26aに向けて内径が大きくなるテーパ形状に形成されるため、カバー部26内に侵入した泥水を、外部へ容易に排出することができる。
【0041】
また、ダストカバー24を設けることによって、ポンプボディ10が熱膨張した際におけるオイルシール22の抜けも防止することができる。
【0042】
次に、ダストカバー24の他の形態について説明する。
【0043】
図4に示すように、カバー部26の自由端26aをプーリ21に接触して形成してもよい。このように、ダストカバー24をプーリ21に接触させることによって、オイルシール22を完全に覆うことができるため、駆動軸1とオイルシール22との間への異物の侵入をより防止することができる。
【0044】
また、図5に示すように、カバー部26の自由端26aを駆動軸1の外周面に接触して形成してもよい。このように、ダストカバー24を駆動軸1の外周面に接触させることによっても、オイルシール22を完全に覆うことができるため、駆動軸1とオイルシール22との間への異物の侵入をより防止することができる。
【0045】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るベーンポンプは、車両用のパワーステアリング装置や変速機等の油圧供給源に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係るベーンポンプにおける駆動軸に平行な断面を示す断面図である。
【図2】ダストカバーの平面図である。
【図3】ダストカバーの断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係るベーンポンプを示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係るベーンポンプを示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
100 ベーンポンプ
1 駆動軸
1a 突出部
2 ロータ
4 カムリング
5 ポンプカバー
10 ポンプボディ
10a 軸受穴
10d 支持部
10e 溝部
20 ブッシュ
21 プーリ
22 オイルシール
22a リップ部
24 ダストカバー
25 取付部
25a 突起部
25b 溝部
26 カバー部
26a 自由端
27 連結部
28 止め輪
29 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸がポンプボディに設けられた軸受に回転自在に支持されたベーンポンプであって、
前記駆動軸が突出する前記ポンプボディの開口部に設けられ、前記駆動軸外周と前記軸受内周との間の潤滑油の漏れを防止するためのオイルシールと、
前記ポンプボディに取り付けられ、前記ポンプボディから突出する前記駆動軸の突出部を覆うダストカバーと、
を備えることを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
前記ポンプボディには、環状の溝部が設けられ、
前記ダストカバーは、内側に向けて突設した環状の突起部が前記溝部に挿入されることによって前記ポンプボディに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項3】
前記ダストカバーの前記突起部を前記ポンプボディの前記溝部内に押圧する止め輪をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のベーンポンプ。
【請求項4】
前記突起部の外周には環状の溝部が形成され、
前記止め輪は、前記突起部の前記溝部に嵌められることを特徴とする請求項3に記載のベーンポンプ。
【請求項5】
前記ダストカバーの自由端は開放して形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のベーンポンプ。
【請求項6】
前記駆動軸の前記突出部を覆う前記ダストカバーのカバー部は、前記自由端に向けて内径が大きくなるテーパ形状に形成されることを特徴とする請求項5に記載のベーンポンプ。
【請求項7】
前記カバー部の外周には、前記駆動軸の軸方向に延びるリブが形成されることを特徴とする請求項6に記載のベーンポンプ。
【請求項8】
前記ダストカバーの自由端は、前記駆動軸の前記突出部に連結され動力源の動力が伝達されるプーリに接触して形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のベーンポンプ。
【請求項9】
前記ダストカバーの自由端は、前記駆動軸の外周面に接触して形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のベーンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−59907(P2010−59907A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228169(P2008−228169)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】