説明

ペダルガイドシステム装置

【課題】
車両のブレーキペダルとアクセルペダルに対する運転者の誤操作を防止するためのペダルガイドシステム装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
車両のブレーキペダルとアクセルペダルに対する運転者の誤操作を防止するためのペダルガイドシステム装置において、前記ブレーキペダルまたは前記アクセルペダルの少なくとも一方の横に0.5cm〜10cmの所定の隙間をあけて車両に取付可能で、ダッシュボード下面から床までの高さと同程度の高さを有する板状または蛇腹状もしくは帯状、幕状のガイド部を備えることを特徴とし、床面やインナーパネル、ダッシュボードを含めた四面で覆われた空間の中でのペダル操作ができるため、ペダルの位置確認が簡単で理解しやすく、初心者や高齢者にも馴染みやすい、ペダルの誤操作を防止できるペダルガイドシステム装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルとアクセルペダルの踏み違いを防止する、車両のペダルガイドシステム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ブレーキペダルとアクセルペダルとの踏み違いによる事故が多発している。警察庁の統計によると、ペダルの踏み違いによる事故数は、平成20年で6546件(内死亡30件)、平成21年で6582件(内死亡33件)と、事故扱いとして判明しているだけでも1年間にこれだけの数のペダル踏み違い事故が発生している。
【0003】
踏み違い事故多発の原因として、従来のマニュアル車(MT車)は両足で3つのペダルを操作する構造であったため、左右両足の相関関係によりペダルの位置が把握しやすく踏み違い事故は非常に少なかった。しかしながら、現在大半を占めるオートマチック車(AT車)は、右足1本でのペダル操作であるため、ブレーキペダルとアクセルペダルとの位置関係が把握しづらい。特に、右足がペダルから一旦離れたとき、または、バック運転のような場合、前後左右を注視しながら、複雑な動作が必要で身体がねじれて基本姿勢が大きく崩れたときなどは、踏むべきペダルの位置が判明できず不安となり混乱を生じることがあり、このような場合に踏み違い事故は発生しやすい。したがって、このような事故の発生を防ぐためには、ブレーキペダルとアクセルペダルとの位置を瞬時に運転者にしっかりと認識させる必要がある。
【0004】
そこで、たとえば特許文献1のように、自動車のブレーキ作動用ペダルの左方に運転者の靴が触れる程度の適当な高さを有する突縁或は板を突設してなる自動車のアクセル及びブレーキ作動用ペダル踏み違い防止装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献2のように、自動車のアクセルペダルの中央上部に、ブレーキペダルの高さと同じかそれよりも低い板状または棒状の突起を、該突起とアクセルペダルとの間に足が十分入る隙間が取れるように配置したアクセルペダル踏み違い防止装置が提案されている。
【0006】
これらの先行技術は、いずれも自動車のブレーキペダルとアクセルペダルの踏み違いを防止するため、運転者がペダルにタッチして足先で防止装置の有無を確認することによって、ブレーキペダルとアクセルペダルとの位置を認識させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭38−10554号公報(図3、図4参照)
【特許文献2】実開平5−86658号公報(図1〜図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および2記載の発明は、足先で防止装置の有無を確認できるように、ブレーキペダルまたはアクセルペダルと同程度の高さ若しくは若干高い程度に構成した板状や棒状の防止装置となっている。このような構成であると、歩行者の急な飛び出しなどで運転者に急なペダルワークが必要となった場合、あわてた運転者は足が防止装置自体にひっかかるおそれがある。そして、通常の運転時にも、たとえば特許文献1の場合、ブレーキペダルの少し左方から足で踏み込むと、防止装置の突起がひっかかりブレーキペダルをしっかりと踏み込めなかったり、特許文献2の場合、アクセルペダルの少し前方から足で踏み込むと、防止装置の横棒がひっかかりアクセルペダルを踏み込めないといったおそれがある。基本的に特許文献1および2記載の発明は、足元が目で見えない空間の中で慎重に目的物を探り、踏むべきペダルを一旦靴で触って靴の感触で判断することになり、スピード感に欠ける。また、厚底の靴などを履いていた場合には感触が伝わりにくい。
【0009】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、
(1)運転者のペダル踏み違いを抑制するために、ペダルを踏む前にガイドできるよう運転者が足の感覚で察知し瞬時に踏むべきペダルを認識でき、
(2)ブレーキペダルやアクセルペダルを踏み込む際に、特にあわてている時など、装置自体を踏み込んでしまったり、装置にひっかかったりすることなどの干渉を抑制する、
ペダルガイドシステム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(請求項1)
上記課題を解決するために本発明に係るペダルガイドシステム装置は、車両のブレーキペダルとアクセルペダルに対する運転者の誤操作を防止するためのペダルガイドシステム装置において、
ブレーキペダルまたはアクセルペダルの少なくとも一方の横に0.5cm〜10cmの所定の隙間をあけて車両に取付可能で、ダッシュボード下面から床までの高さの2/3〜1の高さを有する板状または蛇腹状もしくは帯状、幕状のガイド部を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ガイド部によって運転者がペダルの位置を自分の足で容易に確認することができ、さらに、ガイド部がダッシュボード下面から床までの高さの2/3〜1の高さであるため、ガイド部を上から踏み込むといったことがなく安心である。また、ガイド部に高さがあるため、運転者は足先以外の例えばふくらはぎ等でもガイド部に触れることができるなど、ガイド部を探ることなく大雑把にガイド部の方に足を持っていくだけでよく、ペダル位置の確認を従来よりも素早く容易にでき、安心感がある。ここで、ダッシュボード下面から床までの高さとは、ダッシュボード下面から床までの最大高さをいう(図2の符号H参照)。また、ガイド部がペダル横に0.5cm〜10cmの所定の隙間をあけて取り付けるため、ガイド部がブレーキペダルやアクセルペダルに干渉しない。なお、好ましくは、ガイド部をペダルのパッド位置よりも運転者側に5cm〜30cm程度突出させ、ガイド部の側面積を大きくすればよく、このようにすれば、ガイド部を足で確認しやすくペダル位置の認識が容易となる。さらに、より好ましくは10cm〜20cm程度突出させるとよい。
【0012】
また、ガイド部は、ブレーキペダルまたはアクセルペダルのいずれか一方の横に取り付けてもよいし、両方に取り付けてもよい。なお、ガイド部をブレーキペダルに取り付ける場合はブレーキペダルの左横に、アクセルペダルに取り付ける場合はアクセルペダルの右横に取り付ける。
【0013】
そして、ガイド部をブレーキペダルの左横およびアクセルペダルの右横の両方に設けることで、ブレーキペダルを踏み込む時は左側のガイド部を足で確認した後に、アクセルペダルを踏み込む時は右側のガイド部を足で確認した後に、それぞれのペダルを踏み込めばよく、安全である。さらに、ガイド部を両方に設けることで、両ガイド部と床とダッシュボードによって、運転者が右足を移動するための空間を形成でき、運転者は該空間に右足を入れることで安心感も得られる。
【0014】
なお、ガイド部の素材としては、運転者が右足をあてるため、頑丈であるが足をあてても痛くない素材が好ましく、たとえばABS等の樹脂やウレタンなどを用いるとよい。
【0015】
(請求項2)
請求項2に係るペダルガイドシステム装置は、前記ガイド部が、乗り降りの時など使用しない場合に収納可能であることが望ましい。ここで、収納可能とは、(1)板状のガイド部の場合、たとえばレールを敷設して二段や三段の引き出し式としたり、(2)蛇腹状のガイド部の場合、アコーディオンカーテンのように折りたたみ可能としたり、(3)帯状・幕状の場合、巻き取り可能とすることが考えられる。この構成によれば、運転者の乗り降り時にガイド部を収納状態とすることで、ガイド部が干渉しづらく乗り降りがしやすい。そして、運転席に着座した状態で、ガイド部を使用状態とすればよい。
【0016】
(請求項3)
請求項3に係るペダルガイドシステム装置は、車両のブレーキペダルとアクセルペダルに対する運転者の誤操作を防止するためのペダルガイドシステム装置において、
ブレーキペダルの左横およびアクセルペダルの右横に0.5cm〜10cmの所定の隙間をあけて車両に取付可能で、ダッシュボード下面から床までの高さの2/3〜1の高さを有する板状の側壁部と、前記側壁部を上方で繋ぐ棒様部材とを有し、前記側壁部と前記棒様部材とにより、ブレーキペダルおよびアクセルペダルを覆うことで、運転者が右足でブレーキペダルとアクセルペダルを操作するための空間を形成するガイド部を備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、前記側壁部と前記棒様部材とを有するガイド部によって、左右を前記側壁部で規制し、上下を床と前記棒様部材とにより規制でき、ブレーキペダルとアクセルペダルとを操作するための空間が形成されるので、運転者は着座後にこの空間に右足を入れて運転すれば、ブレーキペダルを踏み込む時は左側の側壁部を足で確認した後にブレーキペダルを踏み、アクセルペダルを踏み込む時は右側のガイド部を足で確認した後にアクセルペダルを踏むことができるので、各ペダルの位置確認を瞬時に、かつ、容易にできる。また、前方については、床が、床からダッシュボードに繋がるように、せり上がっているため、せり上がった床が前方を塞ぐ形となる。このように、左右が側壁部で、上が棒様部材とダッシュボードで、下および前が床で囲われるので、右足が思いもよらぬ位置に移動せず、安心である。なお、側壁部の形状は、床からダッシュボードにかけて、これに沿った形状が好ましい。また、両側壁部および棒様部材の素材としては、運転者が右足をあてるため、頑丈であるが足をあてても痛くない素材が好ましく、たとえばABS等の樹脂やウレタンなどを用いるとよい。
【0018】
(請求項4)
請求項4に係るペダルガイドシステム装置は、車両のダッシュボードに取付可能であって、運転者がブレーキペダルまたはアクセルペダルに右足を置いた状態で、前記ダッシュボードから運転者の足のつま先からすねまでの任意の部分に向けて下方に伸び、下端が運転者の足に触れない長さに構成した、弾性部材からなる吊り棒部を備えることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、運転者がブレーキペダルまたはアクセルペダルから足を少し浮かせて吊り棒部に触れることで、自分の足がブレーキペダルまたはアクセルペダルにあることを確認できる。また、ブレーキペダルまたはアクセルペダルに足がない時も、吊り棒部の横から足が触れることで、運転者は吊り棒部の下にブレーキペダルまたはアクセルペダルがあることを認識でき安心である。また、吊り棒部は、発泡樹脂やスポンジなどの弾性部材からなるため、高剛性のものに比べて安全でひっかかりも少なく、かつ、横から足で触れた後も吊り棒部は元の状態に戻るので、ペダル位置のガイド機能を継続できる。
【0020】
(請求項5)
請求項5に係るペダルガイドシステム装置は、前記吊り棒部が、上下または前後、左右の少なくとも一方向に調整可能であることが望ましい。この構成によれば、運転者が好みの位置に吊り棒部を調整することができる。ここで運転者の好みの位置とは、上下方向の調整は足をどの程度浮かせれば吊り棒部に触れるように設定するか、前後または左右方向の調整は足のどの位置(つま先や足首、すね等)で触れるように設定するかを決めることができる。
【0021】
(請求項6)
請求項6に係るペダルガイドシステム装置は、運転者が、自分の右足の位置を確認するためのものであって、ブレーキペダルとアクセルペダルの中間に配置する足位置確認部を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、運転者は自分の足位置がブレーキペダルとアクセルペダルの中間位置にあることを確認することができ、そこから足を左に移動すればブレーキペダル、右に移動すればアクセルペダルであることがわかる。
【0023】
(請求項7)
請求項7に係るペダルガイドシステム装置は、前記足位置確認部が、光センサーまたはブザーボタンもしくは突起のいずれかより選択されるものであってもよい。この構成によれば、足位置確認部が、ブレーキペダルとアクセルペダルの中間位置の床に配する山なりの突起や、同位置に配するブザーボタンや、同位置に配する足が通過した際に反応するセンサーなどである。突起は足の感触で足位置を確認でき、ブザーボタンは足の感触およびそれを押した時の音で足位置を確認でき、センサーは足の通過を光や音で知らせることで運転者の視覚や聴覚で足位置を確認できる。
【0024】
(請求項8)
請求項8に係るペダルガイドシステム装置は、ブレーキペダルのパッド部と軸部のうち、軸部に設置するものであって、本体部とサック部とこれらを繋ぐコードとを有し、運転者の右足に靴の上から前記サック部を装着して使用でき、運転者の操作によって前記コードを前記本体部に巻き戻し、右足をブレーキペダル位置に戻すことのできる誘導靴サック部を備えることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、急ブレーキが必要な時など運転者が自分の足位置がどこにあるか混乱したような場合に、運転者の操作により、右足をブレーキペダル位置に強制的に移動させることができる。ここで運転者の操作とは、例えばあらかじめ設置したボタンを押すことや、掃除機のコードのように右足でコードを最大限まで伸ばすことで、コードを巻き戻すことなどが考えられる。なお、前記サック部は、前部を網状とし、その網状部分に靴を入れ込み、靴の後ろから面ファスナーで留めることによって靴を保持するように構成するとよい。また、作動ボタンはハンドルなど、運転者の押しやすい位置に設けるとよい。
【0026】
(請求項9)
請求項9に係る車両は、請求項1〜8のいずれか1項記載のペダルガイドシステム装置を備えることを特徴とする。ペダルガイドシステム装置は、車両の製造過程において、あらかじめ車両に組み込むこととしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明に係るペダルガイドシステム装置によれば、運転者がブレーキペダルの位置や自分の右足の位置を確認できるため、ブレーキペダルとアクセルペダルの踏み違いを素早く効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るペダルガイドシステム装置の斜視図である。
【図2】図1のペダルガイドシステム装置を側面視XX線断面図である。
【図3】図1のペダルガイドシステム装置の上面視YY線断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るペダルガイドシステム装置のガイド部を示す斜視図であって、(a)は板状ガイド部の引き出し式、(b)は蛇腹状のガイド部、(c)は折りたたみ式、(d)は幕状のガイド部である。
【図5】本発明の一実施形態に係るペダルガイドシステム装置の吊り棒部を示す斜視図であって、(a)は上下・左右に調整可能な吊り棒部、(b)は固定式の吊り棒部、(c)はボールジョイントを利用した吊り棒部である。
【図6】本発明の一実施形態に係るペダルガイドシステム装置の足位置確認部を示す斜視図であって、(a)は突起式、(b)はブザーボタン式、(c)はセンサー式である。
【図7】図1のペダルガイドシステム装置1の変形例である、誘導靴サック部を追加したペダルガイドシステム装置1’を示す説明図であって、(a)は上面視YY線断面図である。(b)はハンドルの正面図である。
【図8】図1のペダルガイドシステム装置1の変形例である、側壁部と棒様部材とを有するガイド部を備えたペダルガイドシステム装置1’’を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0030】
[ペダルガイドシステム装置の構成]
1.(全体の構成)
図1〜図3に示すように、本発明に係るペダルガイドシステム装置1は、ガイド部2と吊り棒部3と足位置確認部4とを備え、自動車の運転者がアクセルペダルAとブレーキペダルBとを操作するための空間に配置する。以下、ガイド部2、吊り棒部3、足位置確認部4について、それぞれ詳細を説明する。
【0031】
2.(ガイド部)
図4(a)に示すように、ガイド部2は、板状部材が21、22、23と引き出し式に構成されている。運転者の乗り降り時には、板状部材21に22と23を順に収納しておき、使用時に板状部材21から22と23とを引き出す。板状部材21の側面上方および下方に、自動車のダッシュボードCの下面と床上面とに固定するための金具24を設けている。これを介してガイド部2をダッシュボードCの下面および床上面にネジ止めして固定する。
【0032】
また、図1〜図3に示すように、ガイド部2の設置位置は、ブレーキペダルBの左方に2cm程度の隙間をとって設置するのが好ましい。このように設置すれば、ブレーキペダルBを踏み込む時にガイド部2が干渉せず、かつ、運転者がガイド部2に右足を当て、そのまま右足を下に降ろせばブレーキペダルBがあることとなる。
【0033】
なお、本実施形態において、ガイド部2はブレーキペダルBの左方に設置しているが、これに限定されず、アクセルペダルAの右方に設置したり、アクセルペダルAの右方およびブレーキペダルBの左方にそれぞれ設置することもできる。
【0034】
次に、図4(b)〜(d)にガイド部2の変形例を示す。図4(b)は、蛇腹式のガイド部120である。不使用時には蛇腹をたたみ、使用時に蛇腹を広げることができる。
【0035】
また、図4(c)は、観音開きのように収納可能なガイド部220である。不使用時は上下に倒して固定しておき、使用時にこれを戻して上下を止めればよい。
【0036】
また、図4(d)は、幕状のガイド部320である。このガイド部320は、布製の幕321とその上下辺に筒状部材322、323とを備える。そして、ガイド部320とダッシュボードCとの固定は、2つの接続部材324をダッシュボードCに両面テープまたはねじ止めにより固定し、上辺の筒状部材322の左右から接続部材324を筒状部材322の中空部に挟み込み、接続部材324が筒状部材322を回転可能に保持する。ガイド部320を不使用時には、上辺の筒状部材322に幕321を巻き取り収納しておく。一方、床には弾性の接続部材325を2つ固定しておき、ガイド部320の使用時は、幕321を垂らして下辺の筒状部材323を左右の接続部材325を筒状部材323の中空部に挟み込むように保持しておく。
【0037】
なお、幕321の幅を短くして、帯状のガイド部としてもよい。
【0038】
3.(吊り棒部)
図5(a)に示すように、吊り棒部3は、材質を発泡樹脂とする約10cmの長さの円柱形の棒状部材31と、これを上下移動可能に保持する保持部32と、保持部32を前後左右に移動可能なレール部33とを有する。
【0039】
棒状部31は、材質が発泡樹脂であるため、運転者が足を当てても痛くなく、当てた後には元の位置に戻るようになっている。なお、発泡樹脂以外にもスポンジやゴムなどの弾性部材を用いてもよい。
【0040】
保持部32は円筒形の部材で、ピンチコックのようにボルトを締めれば内円の径が小さくなり、ボルトを緩めれば内円の径が大きくなる。そして、この内円部分に棒状部材31を差し込み、ボルトを締めて棒状部材31を任意の位置で保持固定できる。また、保持部32にはレール33と接続するスライダー部材32aが設けられている。
【0041】
レール33は、前後方向(詳しくは、ダッシュボードCに設置した状態で、斜め前下・斜め後上方向)に伸びるレール33aと、レール33aに嵌合するスライダー部材(図示せず)を裏面に備えた左右方向に伸びるレール33bとを有し、レール33bに保持部32のスライダー部材32aを嵌合する。これにより、棒状部材31が保持部32に伴って、前後・左右に滑動する。また、レール33a、33bは波状のレールであり、カッターナイフのように所定間隔でスライダーが係止するように構成されている。また、レール33aは基台34に固定されており、基台34の裏には強力な両面テープ(図示せず)が貼り付けられ、これにより自動車のダッシュボードCに固定する。なお、基台34は両面テープによる固定以外にも、ネジ穴を設けてダッシュボードCにネジ止めすることとしてもよい。
【0042】
また、図1〜3に示すように、吊り棒部3の設置位置は、運転者がアクセルペダルAに右足を置いた状態で、右足のつま先、踝、脛を結ぶ三角形の上部中間点くらい(右足首から3〜5cm程度上方)に吊り棒部3の下端がくるように、基台34をダッシュボードCに固定するのが好ましい。この配置であれば、普通に運転する場合は吊り棒部3が右足に干渉しづらく、必要な場合に右足を少し浮かせることで確認もできる。なお、基台34を一端固定した後に、前記の通り上下・前後・左右に調整することもできる。
【0043】
なお、本実施形態において、吊り棒部3はアクセルペダルAの上方に設置しているが、これに限定されず、ブレーキペダルBの上方に設置したり、アクセルペダルAおよびブレーキペダルBの上方にそれぞれ設置することもできる。
【0044】
次に、図5(b)(c)に吊り棒部3の変形例を示す。図5(b)は、基台132に棒状部材131が固定された吊り棒部130である。これは吊り棒部3と異なり、基台132を両面テープ133でダッシュボードCに一旦固定した後は、上下・前後・左右の調整はできないが、簡単な構造であるためコストがかからず安価に製造できる。なお、設置した後、棒状部材131を切って好みの長さに調整することが可能である。
【0045】
また、図5(c)は、基台232と棒状部材231とがボールジョイント233により接続された吊り棒部230である。運転者の右足が側方から当たった場合に、ボールジョイント233によって棒状部材231がフレキシブルに動くことができる。
【0046】
4.(足位置確認部)
図6(a)に示すように、足位置確認部4は、山なりの突起である。図1〜図3に示すように、足位置確認部4の設置は、アクセルペダルAとブレーキペダルBとの中間位置で、床マットの下に固定して使用する。床マットの下に固定して使用するため足位置確認部4の裏に強力な両面テープ41を設けている。なお、床マットの上に設置して使用してもよく、その場合には、足位置確認部4の裏に強力な面ファスナーを設けて、床マットに貼り付ければよい。運転者はこの突起を右足で踏みつけ確認することにより、自分の右足がアクセルペダルAとブレーキペダルBとの中間にあることを認識できる。つまり、そこから右足を左に動かせばブレーキペダルB、右に動かせばアクセルペダルAがあることがわかる。
【0047】
次に、図6(b)〜(c)に足位置確認部4の変形例を示す。図6(b)は、センサー式の足位置確認部140である。なお、センサーには赤外線センサーを用いており、検出部141の上に右足がくると、その赤外線を検出して音が鳴る。つまり、右足が足位置確認部4を通過するか、もしくはここに右足を置いている間は、センサーが反応して音が鳴り、聴覚により自分の右足の位置を確認できる。
【0048】
また、図6(c)は、ボタン式の足位置確認部240である。運転者は右足でボタンを踏みつけることで音が鳴り、触覚と聴覚とにより自分の右足の位置を確認できる。なお、これらの音は、PCの警告音のように低くてあまり大きくない音がよい。
【0049】
5.(インナーパネル)
なお、通常自動車のアクセルペダルAの右横は、内側にインナーパネルが張り出した状態となっている。このインナーパネルの張出部5に右足を当てれば、そこにアクセルペダルAがあることを運転者は認識できる。したがって、このインナーパネルの張出部5も利用すれば、前記吊り棒部2とガイド部3と足位置確認部4との四面によって、より確実に運転者に自分の右足位置およびアクセルペダルA、ブレーキペダルBの位置を認識させることが可能となる。
【0050】
[ペダルガイドシステム装置1の変形例I]
続き、ペダルガイドシステム装置1の変形例Iについて説明する。図7に示すように、ペダルガイドシステム装置1’は、ペダルガイドシステム装置1の構成に、誘導靴サック部6を加えた変形例である。なお、図7中、ペダルガイドシステム装置1と同一の構成については同一の符号を付す。
【0051】
誘導靴サック部6は、サック61と、ブレーキペダルBの軸に固定するための接続部62と、これらを繋ぐコード63とを備える。なお、サック61は前部に右足先を入れる網状の袋部材61aと右足後ろで留めるための面ファスナーを有するベルト部材61bとからなる。また、接続部62の内部にはモータが組み込まれており、リモコンボタン64を押せば、モータが作動して瞬時にコード63が巻き取られる仕組みである。通常時運転者は右足をサック61に嵌めた状態で運転し、急ブレーキが必要な時など運転者が自分の足位置がどこにあるか混乱したような場合、運転者がハンドルD等に設置したリモコンボタン64を押すことでコード63が巻き取られ、右足をブレーキペダル位置に強制的に移動させることができる。
【0052】
また、モータとリモコンを使ったもの以外にも、掃除機のコードのように、サック61を嵌めた状態で右足を伸ばしコード63を最大限まで伸ばすことで、コード63を接続部62に巻き戻す構成としてもよい。なお、いずれの場合も誘導靴サック部6の固定は、接続部62をブレーキペダルBの軸を挟み込むようにネジ止め固定する。
【0053】
[ペダルガイドシステム装置1の変形例II]
さらに、ペダルガイドシステム装置1の変形例IIについて説明する。図8に示すように、ペダルガイドシステム装置1’’は、ペダルガイドシステム装置1の構成から、吊り棒部3を除し、ガイド部2を両側壁部と棒様部材からなる正面視コの字様のガイド部420に変更した変形例である。なお、図8中、ペダルガイドシステム装置1と同一の構成については同一の符号を付す。
【0054】
図8の示すように、ガイド部420は、両側壁部421と棒様部材422とからなる。なお、棒様部材422は、両側壁部421の運転者側上方でこれらを繋ぐ。そして、このガイド部420をアクセルペダルAとブレーキペダルBとを覆うように配置する。これにより、ガイド部420が、右足の左右および上下の移動を規制できる。具体的には、左右を両側壁部421で、上を棒様部材422およびダッシュボードで、前面および下面が床で覆われた空間が形成され、運転者は、該空間に右足を入れてアクセルペダルAとブレーキペダルBとを操作する。運転者は、ブレーキペダルBを踏み込むときは、左の側壁部421に右足をあててからブレーキペダルBを踏み、アクセルペダルAを踏み込むときは、右の側壁部421に右足をあててからアクセルペダルAを踏めばよい。したがって、運転者はアクセルペダルAとブレーキペダルBとの位置を容易に把握でき、また、いずれかの側壁部に大雑把に右足をあてるだけでよいため、ガイド部を探る必要がなく、瞬時に各ペダル位置を認識し操作が可能となる。
【0055】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。たとえば、ガイド部2のみで構成したペダルガイドシステム装置や、ガイド部2と吊り棒部3とで構成したペダルガイドシステム装置などでも、運転者の右足をガイドすることは可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。また、ペダルガイドシステム装置は、既存の車両に取り付けるものでもよく、車両の製造過程であらかじめ車両に組み込むものでもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ペダルガイドシステム装置
2 ガイド部
21 板状部材
22 板状部材
23 板状部材
24 接続金具
3 吊り棒部
31 棒状部
32 保持部
33 レール部
34 基台
4 足位置確認部
5 インナーパネルの張出部
6 誘導靴サック部
61 サック
62 接続部
63 コード
64 リモコンボタン
A アクセルペダル
B ブレーキペダル
C ダッシュボード
D ハンドル
1’,1’’ ペダルガイドシステム装置(変形例)
120,220,320,420 ガイド部(変形例)
130,230 吊り棒部(変形例)
140,240 足位置確認部(変形例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキペダルとアクセルペダルに対する運転者の誤操作を防止するためのペダルガイドシステム装置において、
ブレーキペダルまたはアクセルペダルの少なくとも一方の横に0.5cm〜10cmの所定の隙間をあけて車両に取付可能で、ダッシュボード下面から床までの高さの2/3〜1の高さを有する板状または蛇腹状もしくは帯状、幕状のガイド部、
を備えることを特徴とするペダルガイドシステム装置。
【請求項2】
前記ガイド部が、乗り降りの時など使用しない場合に収納可能であることを特徴とする請求項1記載のペダルガイドシステム装置。
【請求項3】
車両のブレーキペダルとアクセルペダルに対する運転者の誤操作を防止するためのペダルガイドシステム装置において、
ブレーキペダルの左横およびアクセルペダルの右横に0.5cm〜10cmの所定の隙間をあけて車両に取付可能で、ダッシュボード下面から床までの高さの2/3〜1の高さを有する板状の側壁部と、前記側壁部を上方で繋ぐ棒様部材とを有し、前記側壁部と前記棒様部材とにより、ブレーキペダルおよびアクセルペダルを覆うことで、運転者が右足でブレーキペダルとアクセルペダルを操作するための空間を形成するガイド部、
を備えたことを特徴とするペダルガイドシステム装置。
【請求項4】
車両のダッシュボードに取付可能で、運転者がブレーキペダルまたはアクセルペダルに右足を置いた状態で、前記ダッシュボードから運転者の足のつま先からからすねまでの任意の部分に向けて下方に伸び、下端が運転者の足に触れない長さに構成した、弾性部材からなる吊り棒部を備えることを特徴とする請求項1または2記載のペダルガイドシステム装置。
【請求項5】
前記吊り棒部は、上下または前後、左右の少なくとも一方向に調整可能であることを特徴とする請求項4記載のペダルガイドシステム装置。
【請求項6】
運転者が、自分の右足の位置を確認するためのものであって、
ブレーキペダルとアクセルペダルの中間に配置する足位置確認部を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のペダルガイドシステム装置。
【請求項7】
前記足位置確認部が、光センサーまたはブザーボタンもしくは突起のいずれかより選択されるものからなることを特徴とする請求項6記載のペダルガイドシステム装置。
【請求項8】
ブレーキペダルのパッド部と軸部のうち、軸部に設置するものであって、
本体部とサック部とこれらを繋ぐコードとを有し、
運転者の右足に靴の上から前記サック部を装着して使用でき、運転者の操作によって前記コードを前記本体部に巻き戻し、右足をブレーキペダル位置に戻すことのできる誘導靴サック部を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のペダルガイドシステム装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載のペダルガイドシステム装置を備えることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−113410(P2012−113410A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260110(P2010−260110)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(510308768)
【Fターム(参考)】