説明

ペプチドの合成

固相ペプチド合成のためにペプチドへ結合され、固定化部分が活性化固相と配位結合および可逆的に結合される、活性化固相および固定化部分の用途。さらに、前記ペプチドの精製および再折りたたみのための、前記固定化部分の競合的切り離しのための方法が提供される。活性化固相への前記ペプチドの配位および可逆的結合のための固定化部分を有するペプチドが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ペプチドの化学合成はよく確立されている。主に、2つの異なる方法を区別することができる。溶液中での合成はしばしば時間を要しおよびしたがって科学研究のためには有用でなく、一方、固相担体上での合成は反応サイクルの迅速な最適化を可能にする。固相ペプチド合成(SPPS)のために利用可能な手順は、規定の配列を有するペプチドを不溶性固相担体上で合成するメリフィールド(Merrifield)法(メリフィールド, R.B., J. Amer. Chem. Soc. 85, 1963, 2149)を基礎とし、この方法は可溶性試薬の分離を単純なろ過によって容易に操作しうるという利点を有する。SPPSはいくつかの変形(ここではメリフィールド型合成と要約する)を極めて速やかに生じており、および下記の段階から成る:
1.第一段階では、アミノ酸誘導体がC末端を介して共有結合する適当な固相担体マトリクス(樹脂)が選択される。通常は、合成すべき配列の最初のC末端アミノ酸を、リンカーを用いて固相担体に固定する。この最初のアミノ酸のアミノ基および側鎖基は、通常はFmocまたはBoc化学に適合する、最新技術による保護基によって保護される。
2.第二段階では、最初のアミノ酸のN末端を保護する基が選択的に除去される。
3.第三段階では、合成すべき配列中の二番目のアミノ酸に相当する、次のアミノ酸誘導体が、最初のアミノ酸の遊離末端アミノ基にカップリングされる一方、それ自身のアミノ基および側鎖基は適当な保護基によって保護されている。
4.第四段階では、新しくカップリングされたアミノ酸誘導体からN末端保護基が除去され、および第三段階が次のアミノ酸について繰り返される。
このように、ペプチドの固相合成は、固相担体上にアミノ酸の規定の配列を構築することができるサイクル過程を含む。その過程の最後に、ペプチドは固相担体から、たとえばトリフルオロ酢酸(別のスカベンジャーを含む)を用いた処理によって切り離される。同時に、アミノ酸の側鎖に存在してもよくそれによってイミダゾール-、メルカプト-、カルボキシ-、アミノ-、アルコール-または他の機能的に関連する基を保護していた保護基が除去されうる。これが最終ペプチドを生じ、最終ペプチドはしばしば、適当なクロマトグラフィー装置、通常は、成分を同時に分離および分析できるLC/MSシステムで精製する必要がある。これらおよび他の段階は、ペプチド合成に関する標準的な教科書で詳細に検討されている。
【背景技術】
【0002】
低分子ペプチド(最大30量体まで)の合成はSPPS法について問題が無い一方で、アミノ酸40個から最大120個(またはさらに多数の)の大きさのペプチドについては制限が存在する。それらの性質は、「大きいペプチド」の語よりも「小さいタンパク質」の語に遥かによく対応する:
a)その大きさのペプチドは、通常は一次構造(配列)だけでなく、構築すべき二次構造(たとえばへリックス、ベータ-シート)および三次構造(たとえばロイシンジッパー、ドメインのジスルフィド架橋)もまた有する。SPPS法のさまざまな変形は一次構造の組み立てだけを対象とする一方、それらは適当な方法での二次および三次構造の分子内形成の調節には何の手段も提供しない。大きなペプチドの折りたたみに関する調節機構の欠如は、樹脂からのすべての産物の同時の切り離しおよび保護基の除去が、非常に高い局所産物濃度を生じるという事実によってさらに悪化する。これらの条件下では、生じるのは分子内折りたたみだけではない。多くの場合には、樹脂から切り離された小タンパク質は、分子内折りたたみでなく互いに相互作用する傾向がある。LCシステムから溶出した精製産物を含む凍結乾燥画分が溶媒を用いて再構成される際に、同様の問題が起こる。このように、分子内折りたたみおよび分子間相互作用が競合し、この過程を適当に調節するために利用可能な方法は存在しない。このことはしばしば、目的の生物活性を全く示さない、機能的に役に立たない多分子凝集物を結果として生じる。
b)大きいペプチドの合成の場合には、適当に修飾された(保護された、部分的に保護された、または保護されていない)ペプチド断片を、単一のアミノ酸残基の代わりに、合成の各サイクルに用いるのが好ましい。通常は、合成段階の数を最小化するために、小さい断片は連結反応またはフラグメント縮合法によって結合される。これは、サイクルは通常は定量的収率を有せず、およびサイクル数が多すぎることはしばしば収率の許容できない低下を結果として生じるという事実のためである。さらに、単一アミノ酸の難しいカップリングは、単一アミノ酸の代わりに断片全体のカップリングによって単純に防ぐことができる。断片縮合の場合には、各カップリングサイクルの間に、かなり長いカップリング時間を用いなければならないという問題が生じる。低い反応速度は拡散に制限され、および、固定されたペプチド鎖の非拡散および周囲の樹脂の孔内の断片の最適に満たない拡散挙動が原因である。長い反応時間はしばしば、カップリングすべき断片のC末端アミノ酸の相当な程度のラセミ化に繋がり、このことは、反応時間を可能な限り短く保つ必要性を明らかにする。この問題を克服するための最良の方法は、溶液中のカップリングによる。古典的SPPSは、反応パートナーの両方を溶液中に持ち込みおよびそれらをサイクルの次の段階中に再結合させる一方で、この手順を合成の各段階で繰り返すための手法を提供しない。
c)ポリマー担体上の開始残基の希望の密度を調節することはしばしば困難であり、および最初のアミノ酸での樹脂の負荷はしばしばラセミ化を伴う。多数の予め負荷された樹脂が市販されているが、これらはすべての負荷を網羅せず、および所定のペプチド合成問題のための最適値はしばしば発見が困難である。
【0003】
金属アフィニティはこれまでペプチドの合成においては基礎的な用途しかなく、それは,カムリー(Comely)ら(Journal of the Chemical Society, 2001, 2526-2531)の発表に記録されている。この著者らは、たとえば誘導体化フェニルアラニンの側鎖に存在するような芳香族パイ電子系を用いて、アミノ酸をクロムと複合体化した。これらの複合体は溶液中で作製され、および既存のクロム複合体が次いで固相に固定され、および1回の合成サイクルの実施に成功した。固相への金属複合体固定化の重要な適用が実証された一方、その手順は下記の側面で、ここに示す本発明とは異なる。
【0004】
カムリー(Comely)らはまず金属イオンを系の可溶部分に結合させ、および次いでその複合体を固相へ第二段階で固定したが、一方、ここに示す本発明は、まず固相への金属イオンの結合を基礎とし、および次いで伸長するペプチド鎖を固相へ固定する。これは、カムリーによって示された系の、結果として生じる固相でのクロム含有複合体においてアミノ酸側鎖とクロムとの間の配位結合がクロムと固相担体との間の結合よりも強いという、欠点のひとつを失くす。したがって、競合剤を用いた複合体の溶出は、ペプチドと結合している化学量論的な量でクロムを常に伴って、ペプチド複合体を溶出する。分析および分離にも、ペプチドの医薬としての使用目的にも、これは不適当である。ここに示す本発明によって形成される複合体は、固相への金属イオンの強いキレート化およびペプチド鎖との容易に可逆的であるキレート化によって特徴づけられる。このため最終的には、結合している相当な量の金属イオンを含まないペプチドが溶出する。
【0005】
カムリー(Comely)らは芳香族系によって形成される非常に珍しい複合体を用いるが、一方、ここに示す本発明は、N、P、SまたはO原子を介して金属イオンを配位結合するキレート化部分を用いる。これらの原子は、標準的な有機基の一部となりうる。そのような基は、有機化学の全範囲を用いてキレート化および結合強度につて設計および最適化することができ、および芳香族系に限られない。ここに示す発明の原理は、したがって、カムリーの系よりもはるかに大きい柔軟性および順応性を提供する。
【0006】
カムリー(Comely)によって示された系は、使用する試薬の一部を保護するために不活性雰囲気を必要とする点の限りでは不利である。これらの条件下でさえ、収率は各段階当たり90%を超えず、このことは、最大10量体より長いペプチドは、適当な収率を示すことは期待できないことを意味する。ここに示す本発明およびそれに用いられる複合体化学は、標準的なfmoc化学に適合し、および特別の雰囲気または計測器を必要としない。カムリーは、ペプチドを遊離させるために、低速なおよび樹脂に対して破壊的な、苛酷な手順を用いる(粉末化ポリマーの白色光下DCM内で空気を用いる48時間酸化)。
【0007】
ペプチドの化学合成の分野においては金属複合体からは他の利用がこれまでなされなかった一方、金属アフィニティは生体分子の組み換え生産の分野で知られている。しかし、それは、粗生物学的混合物または体液からの一段階での生体分子の精製のための方法としてクロマトグラフィー構成においてのみ用いられている。イミノジ酢酸およびニトリロトリ酢酸を含むアガロース誘導体を用いるそのような戦略に関する特許が存在する(EP-A-253303;US-A-4877830)。組み換え産物のクロマトグラフィー精製に適したアガロースビーズは市販されている。さらに、側鎖に固定された遷移金属複合体を所定のペプチドについての発光標識化試薬として用いる意図で、金属アフィニティ側鎖を含むペプチドが構築された(たとえばWO−A−9603651A1;EPA−A−0178450)。これらのすべての説明は、生体分子の分析および/または精製における金属キレート法の適用を記録する。しかし、それらは下記に説明される通りの本発明の性質およびその用途を含意しない。
【0008】
解決すべき技術的問題は、アミノ酸120個を超えるようなペプチドを含む大小のペプチドの、固相合成、精製および再折りたたみ/凝集分解に適した方法を確立することであった。大きいペプチドについてのSPPSの問題を回避するために、ペプチドは固相担体と可逆的に結合すべきである。本発明のもう1つの目的は、望まれない誤って折りたたまれた構造および/または分子間凝集物を有する合成されたペプチドを再折りたたみおよび分離することであった。
【0009】
この問題は請求項1の方法によって解決されうる。
【0010】
固相担体、固相担体と共有結合した金属キレートリガンド、n=1から3を有し前記金属キレートリガンドと配位結合している金属イオンMn+を含む活性化固相であって、固相ペプチド合成またはペプチド精製のための、ペプチドの固定化部分の配位および可逆的結合のための配位部位を提供する前記活性化固相の用途が提供される。
【0011】
活性化固相は「金属アフィニティ樹脂」ともいう。
【0012】
好ましい一実施形態では、ペプチドは「伸長するペプチド」であり、およびペプチド伸長手順に供される。
【0013】
好ましくは、伸長するペプチドは少なくとも1つのアミノ酸から成る。好ましい別の一実施形態では、モノマーまたはオリゴマーアミノ酸が、カルボキシまたはアミノ末端(CまたはN末端)へ「伸長するペプチド」に、好ましくはfmoc化学に基づく、メリフィールド型連続反応工程において加えられる。好ましい別の一実施形態ではモノマーまたはオリゴマーアミノ酸は、天然および/または非天然アミノ酸であるか/またはそれを含む。さらに、メリフィールド型連続反応工程の各サイクルにおいて付加される、適当に保護されたアミノ酸誘導体またはオリゴマー断片は、自由に選択することができる。
【0014】
好ましくは固相担体は、シリカ、ガラスまたはセルロース、または、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂およびポリビニルアルコールを基礎とする樹脂から成る群から選択されるポリマーを基礎とする。
【0015】
本発明の他の適当な担体は、たとえば、官能基が適当な金属キレートリガンドで共有結合によって誘導体化されうる、官能基を有するポリスチレンである。そのような官能基の例は、クロロトリチル、アミノ、複素環式窒素、カルボキシ、ヒドロキシ、メルカプトおよびビニル基である。固相ペプチド合成のためには、固相担体の遊離のカルボキシル基または他の反応性基は、それらがペプチド伸長手順に干渉できないような方法で保護されなければならない。
【0016】
好ましい一実施形態では固相担体は強磁性粒子を含む。
【0017】
好ましい別の一実施形態では、合成サイクル中の液体と活性化固相との分離は、たとえば、ふるい、サイズに基づく分離、遠心分離または磁性粒子分離技術によって達成される。反応性官能基は固相担体へ、固相担体の既存の部分との反応によって、または(ポリマーの場合には)適当に誘導体化した共重合体との共重合体化によっても、導入することができる。
【0018】
好ましい一実施形態では、各金属キレートリガンドは、配位リガンド−金属結合を確立することができる少なくとも1つの窒素、酸素、リンまたは硫黄原子を含む。
【0019】
好ましい別の一実施形態では、各金属キレートリガンドは、アミノ、複素環式窒素、カルボキシ、ヒドロキシルおよびメルカプトから成る群から選択される少なくとも1つの官能基を含む。
【0020】
金属キレートリガンドは、固相担体と直接またはリンカー基を介して共有結合している。適当なリンカー基は、たとえばアミノ、カルボキシ、メチレン、オキシ、メチレンジオキシ、ポリメチレンジオキシ、エチレンジオキシおよびポリエチレンジオキシ基である。固相ペプチド合成のためには、金属キレートリガンドの遊離のカルボキシル基は、それらがペプチド伸長手順に干渉しないような方法で保護されなければならない。
【0021】
図1aは、5−アミノ-1,10−フェナントロリンで誘導体化された固相担体の例を示す。
【0022】
当業者には、金属イオンを配位結合することができる多数の有機部分を、たとえば本発明に記載の金属キレートリガンドに適した金属キレート部分を見つけるために用いることができるデータベースから、特定することは容易に可能である。本発明の枠組内で、この既存の知識は、本発明の範囲内である適当な部分を特定するのに用いることができる。各データを含むデータベースの例を、本明細書に記載の本発明を実施するのに適した群についての典型的なデータと共に、下記の表1に示す:
【0023】
【表1】

【0024】
このように、リガンド分子を伴うさまざまな金属イオンの複合体形成に関するデータが公知であり、および主な文献およびデータベースに見出すことができる。表1のデータはマーテル(Martell)および共同研究者(2003)のデータベースから引用され、および関連する金属イオンリガンド相互作用についての典型的な概観を与える。金属イオンを固相へ結合するために、そのようなデータベースを利用することができる。これらのリガンドはまた、単一またはオリゴマーの天然または非天然アミノ酸の側鎖において、不飽和な金属イオンを結合するキレート基として下記の通り機能しうる。
【0025】
好ましい別の一実施形態では、各金属キレートリガンドは、トリフェニルホスフィン部分、アミノプリン部分、好ましくは6−アミノプリン部分、フタロシアニン部分、1,10-フェナントロリン部分、好ましくは5−アミノ-1,10−フェナントロリン部分、テルピリジン部分、好ましくは4'-アミノ-[2,2';6',2'']テルピリジン部分、トリアザシクロノナン部分、好ましくは[1,4,7]トリアザシクロノナン部分およびテトラアザ−シクロ−ドデカニル部分、好ましくは[1,4,7,10]テトラアザシクロドデカン部分から成る群から選択される少なくとも1つの部分を含む固相担体と共有結合している。
【0026】
好ましくは金属Mn+は、Mn2+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Fe2+、Fe3+およびランタノイドイオンから成る群から選択され、特に好ましいMn+はCu2+、Ni2+、Co2+およびZn2+である。
【0027】
図1bは、固相担体、共有結合した5−アミノ-1,10−フェナントロリン金属キレートリガンドおよびキレート化Cu2+金属イオンを含む、活性化固相の例を示す。
【0028】
図1cは、ペプチド残基およびオリゴヒスチジン部分固定化部分を含み、前記固定化部分が、固相担体、共有結合した5−アミノ-1,10−フェナントロリン金属キレートリガンドおよびキレート化Cu2+金属イオンを含む活性化固相に共有結合している、結合ペプチドの例を示す。
【0029】
活性化固相担体の表面上の、固定されたペプチドおよび固定された(モノマーまたはオリゴマー)アミノ酸(後者は固相ペプチド合成用の開始点と呼ばれる)のカバー率は、非常に容易に調節することができる。活性化固相の配位部位が表面上に均一に散らばるならば、結合ペプチドおよび開始点の密度(カバー率)は、ペプチドの合成、精製または再折りたたみの特異的必要性に合わせることができ、および、第一結合段階中に樹脂に加えられる開始点の量によって決定される。表面のカバー率は、既知の表面積値およびペプチド数(モルで測定)および/または直径から計算することができる。
【0030】
複合体化反応は通常は迅速であるため、結合は有機または水系溶媒の存在下で数分以内に完了することができる。
【0031】
固定化部分が、固相担体、固相担体に共有結合した金属キレートリガンド、前記金属キレートリガンドに対するn=1から3である金属イオンMn+を含む活性化固相の配位部位に配位結合しているペプチドの固定化部分が、前記活性化固相から競合リガンドの添加によって分離される方法が提供される。
【0032】
本発明によると、ペプチドの固定された部分が活性化固相から競合的に分離するように、固定されたペプチドに競合剤を加えることができる。好ましくは競合剤は、メリフィールド型反応工程のカップリング段階の試薬混合物に添加される。
【0033】
適当な競合キレート剤は、活性化固相の遊離の配位部位に対して、前記配位部位に対するペプチドの固定化部分の各個別の金属イオンキレート部分とほぼ同等またはより弱いアフィニティを有する。
【0034】
好ましい一実施形態では、競合剤はカップリング段階の試薬混合物に可溶性であり、および試薬混合物の成分と反応しない。
【0035】
図2aでは、ペプチドの固定化部分がオリゴヒスチジン残基である例について、切り離しの原理が示される。
【0036】
切り離しとは対照的に、ペプチドの固定化部分の活性化固相への再結合は、活性化固相、競合剤および非結合ペプチドを含む混合物を希釈することによって可能である。
【0037】
好ましい一実施形態では、メリフィールド型反応工程中に、再結合は下記の洗浄段階の前に実施される。
【0038】
図2bでは、再結合の原理が、ペプチドの固定化部分がオリゴヒスチジン残基である例で示される。
【0039】
配位結合したペプチドの溶出のために、漸増する競合剤濃度を用いた切り離しが用いられる、活性化固相への所定のペプチドの結合に対する競合剤濃度の作用の例が図3aに示される。この過程は可逆的である。
【0040】
さらに提供される過程では、競合リガンドは、好ましくは窒素含有部分であってイミダゾール、N-メチルイミダゾール、アミノプリン、フェナントロリン、ビピリジン、テルピリジン、トリアザシクロノナンおよびテトラアザシクロドデカン、イミノジ酢酸部分、ニトリロトリ酢酸部分およびエチレンジアミンテトラ酢酸部分から成る群から選択される、金属イオンをキレートする少なくとも1つの部分を含む。
【0041】
好ましい別の一実施形態では、競合リガンドは、トリフェニルホスフィン部分,6-アミノプリン部分またはフタロシアニン部分といった配位結合のための電子対を有する構造部分を含む。
【0042】
競合リガンドのための具体例は、グルタチオン、エチレンジアミノテトラ酢酸、イミダゾール、N-メチル-イミダゾール、フェナントロリン、好ましくは5−アミノ-1,10−フェナントロリン、アミノテルピリジン、トリアザシクロノナンまたはテトラアザシクロドデカンである。
【0043】
前記過程の好ましい一実施形態では、ペプチドは「伸長するペプチド」であって、固定化部分を介して金属イオンと結合し、金属イオンは固相担体に結合した金属キレートリガンドと結合し、およびペプチド伸長手順に供される。
【0044】
「伸長する」ペプチドという語は、通常は、たとえばすべてのfmocを基礎とするペプチド合成手順の場合のような、n末端および側鎖が保護されたアミノ酸を用いる、ペプチド骨格の連続的な構築をいう。
【0045】
好ましくはモノマーまたはオリゴマーアミノ酸が、メリフィールド型連続反応工程において「伸長するペプチド」のCまたはN末端で付加される。
【0046】
上述の通り、固定化部分の金属イオンと共有結合した少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーアミノ酸を含む伸長するペプチドは、固相ペプチド合成のための開始点と見なされる。そのような開始点の例は、カルボキシル基を介して金属イオン複合体化部分と共有結合した単一グリシン残基である。
【0047】
好ましくは、開始点は少なくとも1つの側鎖および/またはC末端修飾を含み、それは活性化固相の金属イオンと配位結合することができる。前記アミノ酸は天然または非天然でありうる。
【0048】
固相ペプチド合成の開始点に用いられる個々の固定されたモノマーまたはオリゴマーアミノ酸は、ペプチド合成手順に適合しなければならない。
【0049】
好ましくはペプチドの固定化部分は、少なくとも1つの金属イオン複合体化部分を含み、前記部分のそれぞれが活性化固相の金属イオンと配位結合することができる少なくとも1つの窒素、酸素、リンまたは硫黄含有基を含む。
【0050】
好ましい一実施形態では、個々の金属イオン複合体化部分は、1〜10個の前記窒素、酸素、リンまたは硫黄含有基を含む。より好ましい個々の金属イオン複合体化部分は、1〜10個のアミノ、複素環式窒素、アザ、カルボキシ、硫黄およびリン含有基を含む。
【0051】
固定化部分の金属イオン複合体化部分は、得られる誘導体がペプチド合成手順に適合するという条件で、誘導体化することができる。図1c、2aおよび2bは、アミノ末端がFmoc化学によって保護されているオリゴヒスチジン部分を示す。
【0052】
本発明の別の一実施形態では、活性化固相の金属イオンに対する金属キレートリガンドの配位結合は、前記金属イオンに対するペプチドの固定化部分の配位結合よりも強い。
【0053】
より好ましくは、活性化固相の金属イオンと配位結合することができる窒素含有基は、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、メルカプト、イミダゾリル、N-メチルイミダゾリル、アミノプリニル部分、フェナントロリル部分、ピリジル部分、ビピリジル部分、テルピリジニル部分、トリアザシクロノナノニル部分、テトラアザシクロドデカニル部分、イミノジ酢酸部分、ニトリロトリ酢酸部分およびエチレンジアミンテトラ酢酸部分から成る群から選択される。
【0054】
特に好ましい前記部分は、2〜10個の天然または非天然アミノ酸を含む。金属イオン複合体化部分を含む前記アミノ酸に適した側鎖は、好ましくはイミダゾール、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、メルカプト、フェナントロリン、ピリジン、ビピリジン、テルピリジン、トリアザシクロノナン、テトラアザシクロドデカンまたはプリン部分および金属複合体をなお形成することができるその誘導体から選択されうる。金属イオンと配位結合を形成することができる適当な有機部分は、表1に例示されるデータベースで検索することができる。ペプチド伸長手順を確実にするために、遊離のカルボキシル基は適当に保護されなければならない。
【0055】
好ましくは、固定化部分のモノマーまたはオリゴマーアミノ酸は、随意的にN末端保護された、イミダゾール側鎖を含む。好ましい別の一実施形態では前記モノマーまたはオリゴマーアミノ酸は、オリゴヒスチジン、またはフェナントロリン部分を少なくとも1つの追加のアミノ酸の側鎖に有し、その追加のアミノ酸はグリシンのような固相担体に干渉しない、非天然アミノ酸の短い(1〜6残基)配列である。
【0056】
好ましくは前記オリゴヒスチジン部分は、少なくとも2個のヒスチジン残基;より好ましくは6〜10ヒスチジン残基を含む。
【0057】
好ましい別の一実施形態では、前記オリゴヒスチジン部分は、少なくとも2個の連続したL-またはDヒスチジン残基、より好ましくは6個のL-またはDヒスチジン残基の配列を含む。
【0058】
好ましい別の一実施形態では、固定化部分の前記モノマーまたはオリゴマーアミノ酸は、少なくとも1つの5−アミノ-1,10−フェナントロリン部分を含む。
【0059】
伸長するペプチド鎖を、繰り返して活性化固相から切り離しおよび活性化固相へ再結合することができる。好ましい一実施形態では、切り離しはペプチド合成のカップリング段階中に達成され、一方、再結合は、下記の脱保護に先行する洗浄段階の前の、反応混合物の希釈によって誘導される。これらの段階を用いて、特に断片縮合手法による大きいペプチドの合成のために、「一時的」液相合成およびその長所を用いることができる。
【0060】
好ましくはペプチド鎖の前記固定化部分は、C末端および/またはペプチドのアミノ酸の少なくとも1つの側鎖に位置する。
【0061】
好ましい別の一実施形態では、ペプチドの前記固定化部分は、ペプチドの以降の処理および検出を可能にする、天然および/または非天然アミノ酸の特定の群および/または配列によって伸長することができる。
【0062】
好ましい一実施形態では、ペプチドのC末端の固定化部分の少なくとも1つのアミノ酸は、検出系による検出を可能にする、1つ以上のアミノ酸によって伸長される。
【0063】
好ましい一実施形態では、抗体による最終ペプチド鎖の簡単な認識を可能にする、配列が伸長するペプチドに付加される。そのようなタグ配列の例はmyc-tagである。さらに、好ましくはオリゴマー開始点のC末端での、ビオチニル化アミノ酸(たとえばビオチニル化D-、L-リジン)の付加は、ビオチンとアビジン様分子との間の特異的相互作用に基づく、最終産物の簡単な定量を確立することができる。
【0064】
好ましい別の一実施形態では、ペプチドの固定化部分は、N末端でアミノ酸配列によって伸長され、特異的プロテアーゼのための認識部位を提供する。
【0065】
好ましい別の一実施形態では、開始点は、プロテアーゼ認識部位をコードする短いアミノ酸配列によって伸長される。このことは、合成過程および折りたたみ手順後の、開始点の選択的除去を可能にする。
【0066】
好ましい一実施形態では、競合リガンドを含むメリフィールド型連続反応工程の反応混合物を希釈することによって、ペプチドは活性化固相と再結合される。
【0067】
適当な競合リガンドは、切り離すべきペプチド(開始点)の固定化部分の金属イオン複合体化部分の、単一残基、好ましくはオリゴマー窒素基の、アフィニティと比較して同様の、活性化固相(金属アフィニティ樹脂)に対するアフィニティを有する。ペプチドの固定化部分としてのオリゴヒスチジンの場合には、適当な競合リガンドは、イミダゾール(水系溶媒中で)またはN-メチルイミダゾール(有機溶媒中で)である。切り離しは、結合ペプチドと比較して大過剰(結合したリガンドに類縁の、典型的には102〜106モル過剰の競合リガンド)の競合リガンドを溶媒に加えることによって達成される。たとえば水系溶媒では、完全な切り離しを達成するためには、100〜250mMのイミダゾール(競合リガンド)が適当である。同じ条件で、再結合は、競合リガンドを含む溶媒の、好ましくは10〜20倍の希釈によって達成することができる。これは、競合リガンドの濃度の低下に繋がり、および担体へのペプチドの多座配位固定化部分の再結合を提供する。固定化部分に対する競合リガンドのモル比は、各溶媒中の固定化部分および活性化固相の比について、固定化部分を金属アフィニティ樹脂から溶出するクロマトグラフィー手順によって容易に測定することができる。
【0068】
好ましい別の一実施形態では、ペプチド合成のための固定化部分の結合(たとえばオリゴヒスチジン)は、活性化固相への開始点の希釈アルカリまたは中性溶液の存在下で達成される。
【0069】
さらに、固定化部分を含む随意的に保護された、ペプチドの精製のための方法が提供され、前記固定化部分は、固相担体、固相担体と共有結合した金属キレートリガンド、前記金属キレートリガンドに対するn=1〜3である金属イオンMn+を含む活性化固相の配位部位と配位結合し、保護基およびスカベンジャーの残留物またはペプチド合成の望まれない副産物といった夾雑物を洗い去るために洗浄する。
【0070】
本発明の好ましい別の一実施形態は、ペプチドへ合成の最終段階で結合するキレート基を利用する(鎖のアミノ末端側で、たとえばGly-フェナントロリン誘導体)。この場合、夾雑する副生成物からの原生成物の精製は、活性化固相へのペプチドの配位結合を利用するクロマトグラフィー手順によって達成される。この原理は、遊離のカップリングしていないアミノ基の規則的な末端キャッピングを各合成サイクルで用いることによって適用される。この原理の適用において、原生成物の精製は、単一回のクロマトグラフィー運転中に達成することができる。
【0071】
切り離しは、上記の通り適当な競合剤の添加によって、または、特に水溶液中で、溶媒の酸性度を臨界度へ、好ましくは少なくともpH6未満へ、より好ましくはpH5以下へ高めることによって達成することができ、これは固定されたペプチドを金属アフィニティ樹脂から切り離す別の洗練された方法を提供する。
【0072】
活性化固相へのペプチドの前述の配位および可逆的結合を基礎とする別の方法が提供される。
【0073】
(a)少なくとも1つのカオトロピック剤または変性剤へのペプチドの曝露、および
(b)カオトロピーを徐々に低下させおよび再折りたたみおよび二次および三次構造の再確立の再現性のある条件を提供するための、一連の溶媒へのその後の曝露
の段階を含む、ペプチドの固定化部分が活性化固相と配位および可逆的に結合し、および正しく折りたたまれたペプチド構造を新しく確立する、随意的に保護されたペプチドの誤って折りたたまれた構造の再折りたたみおよび/または分子間凝集物の凝集分解のための方法。
【0074】
好ましい一実施形態では、カオトロピック剤または変性剤は、適当な溶媒中での、尿素、ドデシル硫酸ナトリウムといった界面活性剤、高塩濃度およびメルカプトエタノールまたはその混合物から成る群から選択される。
【0075】
適当な樹脂への共有結合の代わりに、本発明は伸長するペプチド鎖をカップリング段階中に切り離す可能性を提供する一方、伸長するペプチド鎖を下記の段階の前に再び結合することができる。さらに、ペプチドの活性化固相への可逆的固定化の同じ原理を、精製産物の折りたたみを調節するために用いることができる。この目的で、産物は精製されおよび活性化固相へ再結合され、金属アフィニティ樹脂の表面積に対する結合ペプチド分子(モルで測定)の比は、結合ペプチドが互いに相互作用しないように選択される。これは分子間相互作用(凝集)の代わりに分子内折りたたみを優先する。精製および結合され、産物は次いで、分子の徐々の折りたたみを可能にしおよびペプチド鎖の正しい分子内立体配置を支持するいくつかの溶媒で処理される。折りたたみ段階は、たとえば正しい位置でのジスルフィド結合の形成によって固定することができる。この手順の最後に、安定化された産物は活性化固相から、競合リガンドの添加によってまたは溶媒の酸性度を高めることによって放出される。
【0076】
結合ペプチドの再折りたたみは、再折りたたみ手順で実施される。この手順のためには、産物は適当な溶媒に溶解される必要がある。産物は適当な溶媒中で凍結乾燥および再構成することができるが、通常は、最も好ましい溶媒は、LCクロマトグラフィー系からの溶出溶媒である。この溶液から産物は活性化固相へ配位結合で再結合される。これは、非保護イミノジ酢酸またはトリニトリロ酢酸を基礎とする樹脂の使用を含めて行うことができる。再折りたたみは通常は、遊離のカルボキシル基を活性化する試薬を用いないため、これが可能である。結合の密度(表面のカバー率)は、産物分子が互いに近く接触するようになるのを避けるために、非常に低く選択される。結合の完了後、樹脂に一連の溶媒を徐々に通す。すべての産物分子を同等の折りたたみ状態にするため、原則として最初の溶媒は高度に変性的および/またはカオトロピックである。徐々に、次の段階および溶媒は、分子折りたたみが支持されるような方法で、生理的条件に近づく。手順の最後に、産物分子は、好ましくは水系の、最終溶媒中に存在し、随意的にたとえばジスルフィド結合で固定され、および活性化固相から放出されうる。
【0077】
好ましい別の一実施形態では、ペプチドの二次および三次構造は、ペプチドを適当な薬剤で処理することによって、前記ペプチドの反応性側鎖間の共有結合によって維持され、活性化固相からのペプチドの切り離しの前の共有結合の形成を含む。
【0078】
好ましくは再折りたたみペプチドの反応性側鎖間に形成される共有結合は、ジスルフィド結合、アミド結合または安定な芳香族または脂肪族ヒドラゾンである。
【0079】
たとえばジスルフィド架橋を閉じるための適当な薬剤は、ヨウ素、フェロシアン酸、酸素および過酸化物といったさまざまな酸化還元試薬から選択することができる。従来の溶液相反応における共有結合の形成のために確立された他の試薬もまた選択されうる。
【0080】
正しく折りたたまれたペプチドの二次および三次構造が、アミノ酸の側鎖間の共有結合の生成によって、好ましくは遊離のメルカプト基に由来するジスルフィド結合の形成、アミド結合の生成、または安定な芳香族または脂肪族ヒドラゾンの生成によって固定され、試薬混合物を活性化固相に結合した再折りたたみ産物に通すことによって達成される過程が提供される。
【0081】
X=d-アラニンおよび(Ala=ベータ-アラニンである配列

HHHH-XX-TIVESCNRWITFAQSIISTLT-(Ala-G-G-(Ala-TKKTQLQLEHLLLDLQMCLNGINN-XX (I)

のペプチドの合成のための、システイン残基間のジスルフィド結合の形成を含み、そのようにして下記を形成する、さらに具体的な過程が提供され、


ここでXおよび(Alaは上記の定義の通りである。
【0082】
精製および再折りたたみの少なくとも1つの段階およびシステイン残基間のジスルフィド結合の形成を含む、メリフィールド型連続反応工程での上記の方法を用いる、活性化固相上で合成される配列(I)のペプチドの合成のための具体的な方法。aスルフィド結合の生成を可能にするさらに2個のシステイン残基が離れて存在するため、同じ方法がアミノ酸欠失またはアミノ酸置換を有するそのペプチド誘導体に当てはまる。
【0083】
固定化部分を含み、好ましくは活性化固相の表面へのペプチドの配位および可逆的結合のための非天然アミノ酸から成り、固定化部分がペプチドのNまたはC末端および/または側鎖に位置し、少なくとも1つの金属イオン複合体化部分を含み、前記部分のそれぞれがペプチド以外は少なくとも1つの窒素含有基を含み、前記金属イオン複合体化部分が2〜5ヒスチジン残基のアミノ酸配列であるペプチドがさらに提供される。
【0084】
好ましくは、提供されるペプチドの金属イオン複合体化基、好ましくは窒素含有基は、NまたはC末端または少なくとも1つのアミノ酸の側鎖部分に固定され、およびアミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、メルカプト、イミダゾリル、N-メチル−イミダゾリル、アミノプリニル部分、フェナントロリル部分、ピリジル部分、ビピリジル部分、テルピリジニル部分、トリアザシクロノナノニル部分およびテトラアザシクロドデカニル部分、またはその組み合わせから成る群から選択される。
【0085】
好ましい別の一実施形態では、アミノ酸部分は単一またはオリゴマー天然または非天然アミノ酸を含む。
【0086】
好ましい一実施形態では、固定化部分は少なくとも1つのイミダゾリル部分を含む。より好ましくは、ペプチドの固定化部分は1〜10個のイミダゾリル部分を含む。
【0087】
好ましい別の一実施形態では、アミノ酸は、少なくとも2個、より好ましくは6〜10個のヒスチジニル部分を含む。好ましい一実施形態では、アミノ酸部分は少なくとも1つのイミダゾリル部分を含む。より好ましくは、固定化部分は1〜10個のイミダゾリル部分を含む。
【0088】
本発明に伴うもうひとつの利点は、金属アフィニティ樹脂はペプチド合成後に再使用できることである。これは、陽イオンを除去しおよび樹脂に同一のまたは別の適当な陽イオンを再負荷することによって達成できる。さまざまな陽イオンの結合強度は互いに異なるため、結合および再結合手順および結果として生じる複合体の安定性を改変する方法は、樹脂表面と合成の開始点との間の架橋リガンドとして別の陽イオンを選択することである。
【0089】
本発明は下記の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0090】
略語 物質
DMF N,N-ジメチルホルムアミド(ペプチド合成グレード)
DCM ジクロロメタン(ペプチド合成グレード)
HOBT 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(無水)
DBU 1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン98%
PyBOP ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピ ロリジノ-ホスホニウム-ヘキサフルオロホスフェート
DIPEA、DIEA N-エチルジイソプロピルアミン98+%
TIS トリイソプロピルシラン99%
MeOH メタノールHPLC(グラジエントグレード)
TFE 2,2,2-トリフルオロエタノール99.8%
EDT 1,2-エタンジチオール
HCl 塩酸
NaOH 水酸化ナトリウム溶液
THF テトラヒドロフラン
DMSO-d6 ジメチルスルホキシド、重水素化
br 幅広(シグナル)
s 一重線
d 二重線
t 三重線
q 四重線
p 五重線
m 多重線
TFA トリフルオロ酢酸
NMI N-メチルイミダゾール
Ni-NTA スーパーフロー(Superflow)樹脂(ノバジェン社(Novagen))
【0091】
実施例1: Fmoc-Gly-His4-Gly-OMe [TAG1]の合成
2mmolの最初のアミノ酸および4mmolのDIPEAを10mlの乾燥DCMに溶解する。この溶液を1.0gの乾燥塩化2-クロロトリチル樹脂(200〜400メッシュ)に加え、および混合物を60分間攪拌機上で反応させた。反応終了時に樹脂を、20mlのDCM/MeOH/DIPEAと3分間2回反応させ、20mlのDCMで2回およびDMFで2回洗浄する。樹脂を次いで20mlのピペリジン/DMF(1:3)で2回、3/20分間反応させ、および20mlのDMFで6回洗浄する。
【0092】
5mmolのアミノ酸、7.5mmolのHOBTおよび10mmolのDIPEAを15mlのDMFに溶解する。5分後に5mmolのPyBOPおよび10mmolのDIPEAを加え、およびこの溶液を樹脂上に注ぐ。攪拌機上で60分後、樹脂を20mlのDMFで6回洗浄し、20mlのピペリジン/DMF(1:3)で2回、20/20分間処理し、および20mlのDMFで6回洗浄する。N末端アミノ酸の場合は、樹脂はピペリジン/DMFで処理しない。
【0093】
最後のアミノ酸の結合後、樹脂を20mlのDMFで6回、20mlのDCMで2回洗浄し、および次いで50mlのTFE/DCM(2/8)で60分間反応させる。樹脂をろ別し、溶媒を減圧して除去し、および粗ペプチド断片をそれ以上精製せずに使用した。
【0094】
粗ペプチド、10mmolのCl-HOBT、10mmolのDIEAおよび20mmolのDICを最小量の乾燥DCMに溶解する。溶液を10分間反応させ、および10mmolのDIEAおよび10mmolのGly-Omeの溶液を添加する。2時間の攪拌後、100mlのDCMを添加し、および溶液を、各200mlの硫酸水素ナトリウム(1〜2mol/l)で3回、各200mlの濃塩化ナトリウムで3回、および各200mlの炭酸水素ナトリウム(1〜2mol/l)で3回抽出する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を除去し、および粗ペプチドをそれ以上精製せずに使用した。
【0095】
粗ペプチドを50mlのTFA/TIS/H2O(95/2.5/2.5)に溶解し、および攪拌機上で60分間反応させる。TFAをDCMとの共蒸発によって除去する。粗ペプチドをDMSOに溶解し、および1000μlをギルソン社(Gilson)のネビュラ(Nebula)LCMSシステムでクロマシル(Kromasil)RPC18カラムを用いて精製した。直線グラジエントは5%TFA水溶液(0.1%)から50%アセトニトリル(0.085%TFAを含む)へ30分間で達した。流速は20mL/分であって、および吸光度を214nmで監視した。
【0096】
実施例2: Fmoc-Gly-His6-Gly-OMe [TAG3]の合成
2mmolの最初のアミノ酸および4mmolのDIPEAを10mlの乾燥DCMに溶解する。この溶液を、1.0gの乾燥塩化2-クロロトリチル樹脂(200〜400メッシュ)に添加し、および混合物を攪拌機上で60分間反応させる。反応終了時に樹脂を20mlのDCM/MeOH/DIPEAで3分間2回反応させ、20mlのDCMで2回、およびDMFで2回洗浄する。樹脂を次いで20mlのピペリジン/DMF(1:3)で2回、3/20分間反応させ、および20mlのDMFで6回洗浄する。
【0097】
5mmolのアミノ酸、7.5mmolのHOBTおよび10mmolのDIPEAを15mlのDMFに溶解する。5分後に5mmolのPyBOPおよび10mmolのDIPEAを加え、およびこの溶液を樹脂上に注ぐ。攪拌機上で60分後、樹脂を20mlのDMFで6回洗浄し、20mlのピペリジン/DMF(1:3)で2回、20/20分間処理し、および20mlのDMFで6回洗浄する。N末端アミノ酸の場合は、樹脂はピペリジン/DMFで処理しない。
【0098】
最後のアミノ酸の結合後、樹脂を20mlのDMFで6回、20mlのDCMで2回洗浄し、および次いで50mlのTFE/DCM(2/8)で60分間反応させる。樹脂をろ別し、溶媒を減圧して除去し、および粗ペプチド断片をそれ以上精製せずに使用した。
【0099】
粗ペプチド、10mmolのCl-HOBT、10mmolのDIEAおよび20mmolのDICを最小量の乾燥DCMに溶解する。溶液を10分間反応させ、および10mmolのDIEAおよび10mmolのGly-Omeの溶液を添加する。2時間の攪拌後、100mlのDCMを添加し、および溶液を、各200mlの硫酸水素ナトリウム(1〜2mol/l)で3回、各200mlの濃塩化ナトリウムで3回、および各200mlの炭酸水素ナトリウム(1〜2mol/l)で3回抽出する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を除去し、および粗ペプチドをそれ以上精製せずに使用した。
【0100】
粗ペプチドを50mlのTFA/TIS/H2O(95/2.5/2.5)に溶解し、および攪拌機上で60分間反応させる。TFAをDCMとの共蒸発によって除去する。粗ペプチドをMEOHに溶解し、および1000μlをギルソン社(Gilson)のネビュラ(Nebula)LCMSシステムでクロマシル(Kromasil)RPC18カラムを用いて精製した。直線グラジエントは5%TFA水溶液(0.1%)から80%アセトニトリル(0.085%TFAを含む)へ50分間で達した。流速は20mL/分であって、および吸光度を214nmで監視した。
【0101】
実施例3: Fmoc-Gly-His3-Gly-His3-Gly-OMe [TAG4]の合成
2mmolの最初のアミノ酸および4mmolのDIPEAを10mlの乾燥DCMに溶解する。この溶液を、1.0gの乾燥塩化2-クロロトリチル樹脂(200〜400メッシュ)に添加し、および混合物を攪拌機上で60分間反応させる。反応終了時に樹脂を20mlのDCM/MeOH/DIPEAで3分間2回反応させ、20mlのDCMで2回、およびDMFで2回洗浄する。樹脂を次いで20mlのピペリジン/DMF(1:3)で2回、3/20分間反応させ、および20mlのDMFで6回洗浄する。
【0102】
5mmolのアミノ酸、7.5mmolのHOBTおよび10mmolのDIPEAを15mlのDMFに溶解する。5分後に5mmolのPyBOPおよび10mmolのDIPEAを加え、およびこの溶液を樹脂上に注ぐ。攪拌機上で60分後、樹脂を20mlのDMFで6回洗浄し、20mlのピペリジン/DMF(1:3)で2回、20/20分間処理し、および20mlのDMFで6回洗浄する。N末端アミノ酸の場合は、樹脂はピペリジン/DMFで処理しない。
【0103】
最後のアミノ酸の結合後、樹脂を20mlのDMFで6回、20mlのDCMで2回洗浄し、および次いで50mlのTFE/DCM(2/8)で60分間反応させる。樹脂をろ別し、溶媒を減圧して除去し、および粗ペプチド断片をそれ以上精製せずに使用した。
【0104】
粗ペプチド、10mmolのCl-HOBT、10mmolのDIEAおよび20mmolのDICを最小量の乾燥DCMに溶解する。溶液を10分間反応させ、および10mmolのDIEAおよび10mmolのGly-Omeの溶液を添加する。2時間の攪拌後、100mlのDCMを添加し、および溶液を、各200mlの硫酸水素ナトリウム(1〜2mol/l)で3回、各200mlの濃塩化ナトリウムで3回、および各200mlの炭酸水素ナトリウム(1〜2mol/l)で3回抽出する。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を除去し、および粗ペプチドをそれ以上精製せずに使用した。
【0105】
粗ペプチドを50mlのTFA/TIS/H2O(95/2.5/2.5)に溶解し、および攪拌機上で60分間反応させる。TFAをDCMとの共蒸発によって除去する。粗ペプチドをDMSOに溶解し、および1000μlをギルソン社(Gilson)のネビュラ(Nebula)LCMSシステムでクロマシル(Kromasil)RPC18カラムを用いて精製した。直線グラジエントは5%TFA水溶液(0.1%)から50%アセトニトリル(0.085%TFAを含む)へ30分間で達した。流速は20mL/分であって、および吸光度を214nmで監視した。
【0106】
実施例4:Fmoc-Gly-5−アミノ-1,10−フェナントロリン[TAG5]の合成
2mlのDIEA、6mmolのCl-HOBtおよび12mmolのDICを、2.56mmolのFmoc-Gly-OHを含む最小量のDMFの溶液へ加える。この溶液を5分間攪拌し、および0.5gの5−アミノ-1,10−フェナントロリンを含む最小量のDMFの溶液を加える。混合物を12時間インキュベートし、および5倍量の酢酸エチルで希釈する。溶液を炭酸水素ナトリウムで3回洗浄する。粗生成物が沈澱し、それをろ別し、およびカラムクロマトグラフィーまたはLCMSによって精製する。粗ペプチドをDMSOに溶解し、および1000μlをギルソン社(Gilson)のネビュラ(Nebula)LCMSシステムでクロマシル(Kromasil)RPC18カラムを用いて精製した。直線グラジエントは5%TFA水溶液(0.1%)から50%アセトニトリル(0.085%TFAを含む)へ50分間で達した。流速は20mL/分であって、および吸光度を214nmで監視した。
【0107】
実施例5:(ビス-tert-ブトキシカルボニルメチル-アミノ)-酢酸[TAG8b]の合成
a)(ビス-tert-ブトキシカルボニルメチル-アミノ)-酢酸ベンジルエステル[TAG8a]の合成
20mmolのグリシンベンジルエステルp-トシラート、40mmolのブロモ酢酸tert-ブチルエステルおよび60mmolのDIEAを35mlの乾燥DMFに溶解する。反応混合物を4日間攪拌する。沈澱した塩をろ別し、および溶液を250酢酸エチルに溶解する。有機層を下記の溶液で抽出する:2x200ml 1N NaOH、3x 1N NaOH/食塩水1:1。溶液をNa2SO4を用いて乾燥し、溶媒を減圧蒸留によって除去し、および粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン1:4)によって精製する。
【0108】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) ppm 7.42-7.29 (m, 5H), 5.10 (s, 2H), 3.60 (s, 2H), 3.50 (s, 4H), 1.38 (s, 18H); LC-MS (ESI): (M+H)+ = 394
【0109】
b)(ビス-tert-ブトキシカルボニルメチル-アミノ)-酢酸[TAG8b]の合成
17.5mmolの(ビス-tert-ブトキシカルボニルメチル-アミノ)-酢酸ベンジルエステルを75mlのTHFに溶解し、および10%触媒パラジウム炭素0.70gを添加する。反応容器を水素で数回洗浄し、および反応混合物を水素消費が止まるまで水素下で攪拌する。触媒をセライトでろ別し、および溶媒を減圧除去する。
【0110】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) ppm, 12.2 (br s, 1H), 3.46 (s, 2H), 3.44 (s, 4H), 1.40 (s, 18H); LC-MS (ESI): (M+H)+ = 304
【0111】
実施例6:4-(ビス-tert-ブトキシカルボニルメチル-カルバモイル)-酪酸[TAG10b]の合成
a)4-(ビス-tert-ブトキシカルボニルメチル-カルバモイル)-酪酸ベンジルエステル[TAG10a]
24mmolのペンタン二酸モノベンジルエステル,30mmolの塩化オキサリル,および2滴のDMFを、20mlの乾燥DCMに溶解する。反応混合物を、気体生成が止まるまで還流する。溶液を10mlのトルエンと共蒸発する。粗生成物をDCMに溶解し、および、12.0mmolの(tert-ブトキシカルボニルメチル-アミノ)-酢酸tert-ブチルエステルおよび26.4mmolのDIEAを含むDCM溶液を0℃にて滴加する。反応混合物を1時間0℃にておよび室温にて一夜攪拌する。溶媒を減圧除去し、および残渣を150mlのジエチルエーテルに溶解する。有機層を下記の溶液で抽出する:100mlの1N HCl、100mlの1/2濃炭酸水素ナトリウム溶液、および100mlの食塩水。溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、および溶媒を減圧除去する。粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン1:1)によって精製する。
【0112】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) ppm 7.4-7.2 (m, 5H), 5.08 (s, 2H), 4.11 (s, 2H), 3.91 (s, 2H), 2.38 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.28 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.75 (p, J=7.4 Hz, 2H) , 1.41 (s, 9H), 1.39 (s, 9H); LC-MS (ESI): (M+H)+ = 450
【0113】
b)4-(ビス-tert-ブトキシカルボニルメチル-カルバモイル)-酪酸[TAG10b]の合成
2mmolの4-(ビス-tert-ブトキシカルボニルメチル-カルバモイル)-酪酸ベンジルエステルを20mlのTHFに溶解し、および10%触媒パラジウム炭素0.09gを加える。反応容器を水素で数回洗浄し、および反応混合物を気体消費が止まるまで水素下で攪拌する。
【0114】
触媒をセライトでろ別し、および溶媒を減圧除去する。
【0115】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) ppm 12.1 (br s, 1H), 4.11 (s, 2H), 3.91 (s, 2H), 2.30-2.17 (m, 4H), 1.68 (p, J=7.2 Hz, 2H), 1.42 (s, 9H), 1.39 (s, 9H); LC-MS (ESI): (M+Na)+ = 382
【0116】
実施例7:4-([1,10]フェナントロリン-5-イルカルバモイル)-酪酸[TAG12b]の合成
a)4-([1,10]フェナントロリン-5-イルカルバモイル)-酪酸メチルエステル[TAG12a]の合成
アルゴン雰囲気中で5mmolの5−アミノ-[1、10]-フェナントロリンを25mlの乾燥DMFに溶解する。6.5mmolのDIEAを加え、および5.5mmolの4-クロロカルボニル-酪酸メチルエステルを滴加する。1時間攪拌後、溶媒および過剰の塩基を減圧蒸発によって除去する。粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィーによって精製する(メルク社(Merck)ローバー(Lobar)RP18カラム、溶離液:アセトニトリル/炭酸水素アンモニウム、5重量%、グラジエント:20%〜40%)
【0117】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) ppm 10.11 (s, 1H), 9.13 (dd, J=1.6, 4.3 Hz, 1H), 9.03 (dd, J=1.7, 4.3 Hz, 1H), 8.60 (dd, J=1.6, 8.4 Hz, 1H), 8.44 (dd, J=1.7, 8.2 Hz, 1H), 8.17 (s, 1H), 7.82 (dd, J=4.2, 8.4 Hz, 1H), 7.74 (dd, J=4.3, 8.1 Hz, 1H), 3.63 (s, 3H), 2.59 (t, J=7.2 Hz, 2H), 2.46 (t, J=7.4 Hz, 2H), 1.95 (p, J=7.3Hz, 2H); LC-MS (ESI): (M+H)+ = 324
【0118】
b)4-([1,10]フェナントロリン-5-イルカルバモイル)-酪酸[TAG12b]の合成
1.5mmolの4-([1,10]フェナントロリン-5-イルカルバモイル)-酪酸メチルエステルを15mlの1,4-ジオキサンおよび15mlの蒸留水に溶解する。1.5mlの1N水酸化カリウム溶液を加え、および溶液を1時間還流する。溶媒を減圧蒸留によって除去し、および粗生成物を逆相カラムクロマトグラフィーによって精製する(メルク社ローバーRP18カラム、溶離液:アセトニトリル/トリフルオロ酢酸、1重量%、グラジエント:10%〜20%)
【0119】
1H-NMR (400 MHz,CD3OD) 、K 塩として: ppm 9.11 (dd, J=1.6、4.3 Hz, 1H), 9.04 (dd, J=1.6, 4.4 Hz, 1H), 8.65 (dd, J=1.5, 8.4 Hz, 1H), 8.41 (dd, J=1.6, 8.1 Hz, 1H), 8.14 (s, 1H), 7.82 (dd, J=4.4, 8.4 Hz, 1H), 7.74 (dd, J=4.4, 8.1 Hz, 1H), 2.64 (t, J=7.6 Hz, 2H), 2.36 (t, J=7.2 Hz, 2H), 2.10 (q, J=7.5 Hz, 2H) ); LC-MS (ESI): (M+H)+ = 310
【0120】
さらに、グルタル酸以外のジカルボン酸誘導体を含むタグを、ここに記載の手順と同様に調製することができる。
【0121】
実施例8:[5-([1,10]フェナントロリン-5-イルカルバモイル)-ペンタノイルアミノ]-酢酸[TAG15]の合成
アルゴン雰囲気中で、Fmoc-Gly-OH(0.7mmol/g)を負荷した1mmolのワング(Wang)樹脂を、ピペリジン/DMF1:3に懸濁し、および電子レンジ(CEM社製システム「ディスカバー(Discover)」)で3回30秒間照射する。樹脂をDMFで3回、およびDCMで3回洗浄する。樹脂を15mlのDCMに懸濁し、および9mmolのDIEAおよび10mmolのアジポイルクロリドを加える。懸濁液を30分間攪拌後、反応溶液をろ別し、および樹脂をDCMで2回、およびDMFで1回施錠する。樹脂を15mlのDMFに懸濁し、および3mmolの5−アミノ-1,10-フェナントロリンおよび5mmolのDIEAを含む20mlのDMF溶液を加える。懸濁液を一夜攪拌後、樹脂をDMFで6回洗浄し、およびTFA/TIS/H2O95:2.5:2.5に懸濁することによって生成物を樹脂から切り離す。樹脂をろ別し、およびろ液を数回クロロホルムと共蒸発させて生成物を得る。
【0122】
この手順はまた、他の樹脂結合ペプチドおよび他のジカルボン酸の活性化誘導体にも同様に適用できる。
【0123】
実施例9:5−アミノ-1,10-フェナントロリン/塩化2-クロロトリチル-樹脂
2mmolの5−アミノ-1,10-フェナントロリンを、不活性雰囲気下で50mlの乾燥DMFに懸濁する。結果として生じる混合物に、5gの塩化2-クロロトリチル-樹脂(200〜400メッシュ)を加え、および樹脂を室温にて2時間インキュベートする。樹脂をろ別し、および過剰のフェナントロリンが除去されるまでDMFで洗浄する。樹脂上の未反応基をブロックするために、10mlのDCM/MeOH/DIEA(80:15:5)で3回10分間インキュベートし、および次いで10mlのDMFで3回洗浄する。樹脂をDMF下で室温にて保存できる。樹脂にNi2+-イオンを負荷するには、樹脂をNiCl2を含むDMF飽和溶液と30分間インキュベートする。NiCl2がそれ以上見られなくなるまで、樹脂をDMFで洗浄する。さらに5回のDMF洗浄後に、下記の手順を適用する:
4x5' DMF/N-メチルイミダゾール(0.25mol/l)
4x15' DMF/N-メチルイミダゾール(0.25mol/l)
1x12h DMF/N-メチルイミダゾール(0.25mol/l)
2x5' DMF
1x1' イソプロパノール
1x15' イソプロパノール
1x5' DMF
1x30' DMF
1x1' イソプロパノール
1x15' イソプロパノール
1x5' DMF
1x30' DMF
1x1' イソプロパノール
1x15' イソプロパノール
1x5' DMF
1x30' DMF
【0124】
実施例10:5−アミノ-1,10-フェナントロリン/ノバシン(Novasyn)TGカルボキシ-樹脂
5gのノバシン(Novasyn)TG樹脂を50mlの乾燥DMFを用いて30分間平衡化する。10mmolのDIEAおよび10mmolのHOBtを加える。5分間インキュベート後、2gの5−アミノ-1,10-フェナントロリンおよび10mmolのPybopおよび10mmolのDIEAを加え、および混合物を一夜攪拌する。翌朝、樹脂を各50mlのDMFで6回洗浄する。樹脂にニッケルを負荷するため、10mlの飽和塩化ニッケルDMF溶液を加え、および30分間攪拌する。この段階の後、上清を除去し、および、上清中に色が見えなくなるまで樹脂を50mlのDMFのバッチで洗浄する。吸着された過剰のニッケルイオンを下記の洗浄手順によって除去する:
4x5' DMF/N-メチルイミダゾール(0.25mol/l)
4x15' DMF/N-メチルイミダゾール(0.25mol/l)
1x12h DMF/N-メチルイミダゾール(0.25mol/l)
2x5' DMF
1x1' イソプロパノール
1x15' イソプロパノール
1x5' DMF
1x30' DMF
1x1' イソプロパノール
1x15' イソプロパノール
1x5' DMF
1x30' DMF
1x1' イソプロパノール
1x15' イソプロパノール
1x5' DMF
1x30' DMF
【0125】
実施例11:1,4,7-トリアザシクロノナン/塩化2-クロロトリチル-樹脂の合成
2.5gの塩化2-クロロトリチル-樹脂(200〜400メッシュ)を40mlの乾燥DMFに懸濁する。500mgの1,4,7-トリアザシクロノナン三塩酸塩および2mlのジイソプロピルエチルアミンを加える。樹脂を室温にて8時間インキュベートする。樹脂をろ別し、およびDMFで6回洗浄する。樹脂上の未反応基をブロックするため、20mlのDCM/MeOH/DIEA(80:15:5)で30分間2回インキュベートし、および次いで20mlのDMFで3回洗浄する。ニッケルを用いた樹脂の負荷は、実施例10に従って実施できる。樹脂をDMF下で冷蔵庫で保存する。
【0126】
実施例12:樹脂へのタグの負荷(バッチ実験)
1mlの各樹脂をDMF(ペプチド合成グレード)で3回洗浄する。1mgのタグを1mlのDMFに溶解し、および1滴のDIEAを加える。50μlのこの溶液を950μlの水で希釈し、およびHPLCによって分析する。混合物の残りを、洗浄した樹脂に加え、および30分間インキュベートする。樹脂へのタグの結合を調べるため、50μlの溶液を950μlの水で希釈し、およびHPLCによって分析する。
【0127】
実施例12a:Ni-フェナントロリン-2Cl-Trt-樹脂へのTAG1の負荷
上清液のHPLCは検出可能なTAG1をもう示さない。
【0128】
実施例12b:Ni-フェナントロリン-2Cl-Trt-樹脂へのTAG3の負荷
上清液のHPLCは検出可能なTAG3をもう示さない。同様の保持時間を有する残りの痕跡は、結合しなかった少量の不純物である。この実施例はまた、夾雑物からの生成物の精製のための方法の可能性を示す。
【0129】
実施例12c: Ni-フェナントロリン-2Cl-Trt-樹脂へのTAG4の負荷
上清液のHPLCは検出可能なTAG3をもう示さない。
【0130】
実施例12d: Ni-フェナントロリン-ノバシン(Novasyn)-TG-樹脂へのTAG3の負荷
上清液のHPLCは検出可能なTAG3をもう示さない。
【0131】
実施例13:樹脂からのTAG3の溶出(バッチ実験)
負荷した樹脂10mlを、20mlの混合物1で3回洗浄し、および樹脂を10分割した。上清液を除去し、および樹脂を5分間下記の溶液と共にインキュベートする:
(TAG3#01) 6mgのグルタチオン(酸化型)を含む2mlの混合物1(5mmol/l)
(TAG3#02) 3mgのグルタチオン(還元型)を含む2mlの混合物1(5mmol/l)
(TAG3#03) 2mlの1N HCl
(TAG3#04) 2mlの0.1N HCl
(TAG3#05) 0.68mgのイミダゾールを含む2mlの混合物1(5mmol/l)
(TAG3#06) 1.36mgのイミダゾールを含む2mlの混合物1(10mmol/l)
(TAG3#07) 2.72mgのイミダゾールを含む2mlの混合物1(20mmol/l)
(TAG3#08) 0.82mgのN-メチルイミダゾールを含む2mlの混合物1(5mmol/l)
(TAG3#09) 1.64mgのN-メチルイミダゾールを含む2mlの混合物1(10mmol/l)
(TAG3#10) 3.28mgのN-メチルイミダゾールを含む2mlの混合物1(20mmol/l)
【0132】
より高濃度のイミダゾールおよびN-メチルイミダゾールを用いた溶出に関する実験については、実験はチューブ(TAG3-07)および(TAG3#10)からの樹脂を用いて実施する。これらの樹脂を、漸増濃度の溶出試薬(100mmol、200mmol、500mmol)と共にインキュベートし、上清液を分析し、および樹脂をincubatedfor5分間、次の濃度の溶出試薬とインキュベートする。
【0133】
結果:
タグの溶出は、塩酸を用いて容易に達成できる。100mmol/lを超える濃度のイミダゾールまたはN-メチル-イミダゾールもまた効果的に溶出する。
【0134】
実施例14:Ni-NTA樹脂からのTAG3の結合および溶出(FPLC実験)
ペプチド:TAG3(Fmoc-(His)6-OMe、M=1191.25g/mol)、HPLC-グレード
樹脂:Ni-NTAスーパーフロー(SuperFlow)(容量約5μmol/ml)
カラム:バイオラッド社(Biorad)2.0ml
FPLC装置:アクタ・ファルマシア(Akta Pharmacia)
【0135】
a)N-メチルイミダゾールを用いた溶出
1.1mg(0.92μmol)のTAG3を含む0.75mlの溶離液Aを注入した
溶離液A:2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)/H2O/ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)/N-メチルイミダゾール(NMI)1:1:+1%:+5mM
溶離液B:TFE/H2O/DIEA/NMI1:1:+1%:+500mM
流速:1ml/分
プログラム:注入(5mlA)→洗浄(10mlA)→グラジエント:溶出(10mlで0%B→100%B)→持続(5mlB)→再生(8mlA)
【0136】
TAG3は定量的に結合し、およびN-メチルイミダゾール濃度100〜125mMで溶出する。そのようなFPLC手順はまた、それを超えると固定化分子がキレート剤によって有効に競合される閾濃度を決定するために用いることができる。閾濃度未満では、固定化分子はまだ樹脂に結合している。バッチ手順では、閾濃度を下回る点への混合物の希釈は、溶解した固定化分子を樹脂へ再固定する。
【0137】
b)塩酸を用いた溶出
2.4mgのTAG3(2.0μmol)を含む0.75mlの溶離液Aを、アクタ(Akta)FPLC装置に注入する。下記のプログラムを運転する:
溶離液A1:TFE/H2O/DIEA/NMI 1:1:+1%:+5mM
溶離液B:TFE/H2O/NMI 1:1:+5mM
溶離液A2:TFE/H2O/HCl 1:1:+10mM
流速:0.5〜1ml/分
プログラム:注入(2.5mlA1)→洗浄(10mlA1)→グラジエント:DIEAを除去(10mlで0%B→100%B)→次いで溶離液A2(10mMHCl:20%、40%、60%、70%)へ「段階グラジエント」
TAG3は60%溶離液A2で溶出する。
【0138】
実施例15:Fmoc-Glyを用いた合成サイクル
TAG3およびFmoc-GlyのTG-樹脂上へのカップリング
TAG3を負荷した1mlのTG-樹脂を、5mlのDMFで3回洗浄する。N末端を脱保護するために、5mlの20%ピペリジンを加え、および樹脂を30分間インキュベートする。樹脂を次いでDMFで6回洗浄し、および、1mmolのFmoc-Gly-OH、2mmolのDIEA、2mmolのHOBtおよび2mmmolのDICを含む最小量のDMFの予備活性化溶液を加える。60分後、樹脂を各5mlのDMFで6回、および各2mlの水で6回洗浄する。ペプチドを樹脂から切り離すため、1mlの1N HClを加え、および樹脂を30分間インキュベートする。
【0139】
結果:切り離されたペプチドをLCMSによって、バイダック(Vydac)C18質量分析カラム(218MS5415)で分析した。5〜95%Bの30分間にわたるグラジエントおよび流速1ml/分を用いた(A=水、0.1%TFA;B=アセトニトリル、0.085%TFA)。
【0140】
抽出物は検出できなかった。混合物中に存在した唯一のペプチドは、予測された質量(M=1247、M2+=625)を示した。HOBt以外には、他の重要な不純物は検出できなかった。
【0141】
実施例16:Ni-NTA-樹脂上でのTAG5-G-A-Fmocの合成
【0142】
2.65mgのTAG5を、1.7mlオムニフィット(Omnifit)カラム中でNi-NTA-樹脂上に結合した。樹脂をマイクロ波反応容器に移し、および各5mlのDMFで6回洗浄した。上清を捨て、および樹脂を、3x30秒の各50Wのマイクロ波パルスにディスカバリー(Discovery)電子レンジ(CEM GmbH)内で曝露しながら、5mlの25%ピペリジン含有DMFとインキュベートした。樹脂をDMFで6回洗浄する。目的のアミノ酸(適当に保護された)1mMを含む最小量の溶媒(DMF)の溶液を調製する。この溶液へ、2mmolのDIEA、2mmolのHOBtおよび2mmolのDICを加える。5分間のインキュベート時間後、この溶液を、脱保護された樹脂へ加え、および3x30秒間各50Wでマイクロ波処理する。最後のアミノ酸のカップリング後、末端fmoc基は除去されない。樹脂を水(pH7より高)で5回洗浄する。最後に、2mlの1N HClを樹脂に加える。樹脂を30分間インキュベートし、上清を除去しおよび保存する。上清は直接、分析LC/MSに使用する。樹脂を再循環用に回収する。LC/MSは、検出可能な唯一のペプチドピークにペプチドの正確な質量を明らかにする。非特異的夾雑物はHOBtおよびHOBt-H2Oであった。
【0143】
実施例17:IL-2イムノマー(Immunomer)の精製
2,2,2-トリフルオロエタノール/H2O/ジイソプロピルエチルアミン/N-メチルイミダゾール中でNi-NTA上のIL-2イムノマー(DIM03A)の精製
ペプチド:実施例19で規定した通り(M=6237g/mol)、樹脂切り離しからの粗生成物;
樹脂:Ni-NTAスーパーフロー(SuperFlow)

76.7mg(12.2μmol)、5ml溶離液Aに溶解、5画分として注入、図3a〜cの記録を参照。

カラム:バイオラッド社(Biorad)2.0ml
溶離液A:TFE/H2O/DIEA/NMI1:1:+1%:+5mM
溶離液B:TFE/H2O/DIEA/NMI1:1:+1%:+500mM
流速:1ml/分
プログラム:注入(5mlA)→洗浄(10mlA)→グラジエント:溶出(10mlで0%B→100%B)→持続(5mlB)→再生(8mlA)
目的の産物は単一ピークとして約125mM NMIに溶出する。同一性は分析LC-MSによって確認される。
【0144】
実施例18:ペプチドの合成後修飾
ペプチド中のジスルフィド架橋の形成

H2N-HHHHGC(Acm)GNGGGC(Trt)GSGN-COOH
AcmおよびTrtは、システイン残基のSH部分のための標準的な保護基である。ペプチド通常のペプチド合成によって合成され、およびLC/MSシステムで95%を超える純度へ前精製された。
【0145】
ペプチドを負荷された1mlのNi-NTA-樹脂を、2mlのMeOHで3回洗浄する。2時間の間に50μlのヨウ素溶液(0.5mol/l)を加え、および混合物をさらに2時間室温にてインキュベートする。樹脂をMeOHで6回、水(pH>7)で3回洗浄し、および次いで2mlのHCl(1N)とインキュベートする。樹脂をろ別し、および溶液をLCMSによって分析する。単一産物ピークが得られ、それは正しい質量を示す。
【0146】
実施例19:ここで提供する手順の再折りたたみ段階を用いたインターロイキン-2イムノマーの合成

合成すべき物質の化学式:

X = D-アラニン
(Ala = ベータ-アラニン
その他の文字 = 標準アミノ酸記号
【0147】
一般的戦略:
合成は、置換率0.2mmol/gの塩化2-クロロトリチル樹脂(200〜400メッシュ)上で実施する。最初の7個のアミノ酸は断片としてカップリングされる。下記のアミノ酸の結合は、単一、二重または三重カップリングによって、10倍過剰のアミノ酸およびカップリング添加剤としてPyBOP/HOBT/DIPEAを用いて達成される。伸長するペプチド鎖のN末端脱保護は、ピペリジン/DMF(1/3)を用いた二重処理によって達成される。困難な場合には、DBU/ピペリジン/DMF(2/2/96)を用いて第3の処理が行われる。カップリングの数および使用する脱保護サイクルを下記の図式に示す(各伸長をHPLC-MSによって監視することで得られた、難しいカップリング/脱保護についての情報。)

RES-XXNNIGN-LCMQLDLLLHELQLQTKKTBGGB-TLTSIISQAFTIWRNCSEVITXXHHHH
カップリング:
22221211111111122222222-223333333333333333333333333
脱保護: 22222222222222322222222-223333333333333333333333333
1、2、3=カップリングまたは脱保護サイクルの数
X = D-アラニン
B = s-アラニン
【0148】
手順1:最初のペプチド断片の合成
2mmolの最初のアミノ酸および4mmolのDIPEAを10mlの乾燥DCMに溶解する。この溶液を、1.0gの乾燥塩化2-クロロトリチル樹脂(200〜400メッシュ)に加え、および混合物を攪拌機上で60分間反応させる。反応終了時に樹脂を20mlのDCM/MeOH/DIPEAで3分間2回反応させ、20mlのDCMで2回、およびDMFで2回洗浄する。樹脂を次いで20mlのピペリジン/DMF(1:3)で2回、3/20分間反応させ、および20mlのDMFで6回洗浄する。アミノ酸2〜7の結合は、下記の手順によって達成される:5mmolのアミノ酸、7.5mmolのHOBTおよび10mmolのDIPEAを15mlのDMFに溶解する。5分後に5mmolのPyBOPおよび10mmolのDIPEAを加え、およびこの溶液を樹脂上に注ぐ。攪拌機上で60分後、樹脂を20mlのDMFで6回洗浄し、20mlのピペリジン/DMF(1:3)で2回、20/20分間処理し、および20mlのDMFで6回洗浄する。N末端アミノ酸の場合は、樹脂はピペリジン/DMFで処理しない。
【0149】
手順2:ペプチド断片の切り離し
最後のアミノ酸の結合後、樹脂を20mlのDMFで6回、20mlのDCMで2回洗浄し、および次いで50mlのTFE/DCM(2/8)で60分間反応させる。樹脂をろ別し、溶媒を減圧して除去し、および粗ペプチド断片をそれ以上精製せずに使用した。
手順3:ペプチド断片の再結合
1mmolの断片および2mmolのDIPEAを50mlの乾燥DCMに溶解する。この溶液を5.0gの乾燥塩化2-クロロトリチル樹脂(200〜400メッシュ)に加え、および混合物を12時間攪拌機上で反応させる。反応終了時に樹脂を50mlのDCM/MeOH/DIPEAで3分間2回反応させ、50mlのDCMで2回、および50mlのDMFで2回洗浄する。
【0150】
手順4:アミノ酸8〜57のカップリング
乾燥した樹脂を50mlのピペリジン/DMF(1/3)中で30分間膨潤させ、30mlのピペリジン/DMF(1/3)で20分間処理し、30mlのDBU/ピペリジン/DMF(2/2/96)で20分間処理し、および30mlのDMFで6回洗浄する。10mmolのアミノ酸、15mmolのHOBTおよび20mmolのDIPEAを30mlのDMFに溶解する。5分後に10mmolのPyBOPおよび20mmolのDIPEAを加え、およびこの溶液を樹脂上に注ぐ。攪拌機上で60分後、樹脂を30mlのDMFで2回洗浄し、およびカップリングを1回または(困難な場合には)2回60分間繰り返す。樹脂を次いで30mlのDMFで6回洗浄する。樹脂は、次のアミノ酸をカップリングするのに直接用いることができ、または(30mlのDCMで2回洗浄後))減圧して乾燥しおよび-80℃にて保存できる。
【0151】
手順5:切り離しおよび脱保護
最後のアミノ酸のカップリング後、N末端保護基は、30mlのピペリジン/DMF(1/3)での20分間の二重処理およびDBU/ピペリジン/DMF(2/2/96)での20分間の処理によって除去される。樹脂を30mlのDMFで6回洗浄、30mlのDCMで2回洗浄し、および50mlのTFE/DCM(2/8)で180分間処理する。ろ過後に溶媒を減圧して除去し、および保護基を、30mlのTFA/TIS/EDT/水(94/1/2.5/2.5)を用いた180分間の不活性雰囲気下での処理によって除去する。この溶液を300mlの冷エーテル中に注ぎ、沈澱をアセトニトリルに溶解し、およびペプチドをRP-HPLC(クロマシル(Kromasil)100 C4 10μm、250x4.6mm)によって精製し、および回収された画分を直接、再折りたたみ手順に用いる。
【0152】
代替的に、IL-2イムノマー原生成物を、金属アフィニティカラムで効果的に精製することができる:

IL-2原生成物76.7mg(12.2μmol)を含む約5mlの溶離液A、5回で注入(図3a〜cも参照)

カラム:オムニフィット(Omnifit)1.7ml
溶離液A:TFE/H2O/DIEA/NMI1:1:+1%:+5mM
溶離液B:TFE/H2O/DIEA/NMI1:1:+1%:+500mM
流速:1ml/分
プログラム:注入(5mlA)→洗浄(16.5mlA)→グラジエント:溶出(10mlで0%B→100%B)→持続(5mlB)→再生(8mlA)
【0153】
手順6:再折りたたみ手順
各溶出画分を、溶出画分中に存在するのと正確に同一の溶媒を用いて、終容量20mlへ希釈した。精製産物のこの溶液を、30分間室温にて、10mlのNi-NTAスーパーフロー(Superflow)(キアゲン社(Qiagen))と共に、ビーカー内で微弱な攪拌下でインキュベートした。スーパーフロー粒子を空のFPLCカラムに充填し、およびFPLC-装置に接続した。この装置のクロマトグラフィープログラムを用いて、溶媒を水によって10分間グラジエントで交換し、次いでさらに10分間グラジエントを用いて、溶媒を水/トリフルオロエタノール(1/1)の混合物へ交換した。24時間の期間中に、ジスルフィド架橋を形成するために、リザーバーボトルに酸素を通気しおよび酸素をボトル中の雰囲気として用いることによって、この溶媒を酸化した。酸化中に、0.1ml/分の定流速をカラムに一夜流し、一方、溶出液を定常的にリザーバーボトルへ再循環した。
【0154】
24時間の期間終了時に、再折りたたみされおよびジスルフィド架橋によって固定されている最終産物が、150mMイミダゾールを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)の使用によって、または0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)を用いることによって溶出された。
【0155】
実施例20:ペプチドのN末端への(ビス-tert-ブトキシカルボニルメチル-アミノ)-酢酸[TAG8b]のカップリング
実施例19、手順1に記載の通りの標準的な手順に従って、配列WETGLRLAPLを有するペプチド1mmolが、塩化2-クロロトリチル樹脂(200〜400メッシュ)上で調製されている。
【0156】
Tag8bをペプチドのN末端へカップリングするために、アミノ酸をカップリングするための手順が同様に適用される。5mmolのTag8b、7.5mmolのHOBTおよび10mmolのDIPEAを15mlのDMFに溶解する。5分後に5mmolのPyBOPおよび10mmolのDIPEAを加え、およびこの溶液を樹脂上に注ぐ。攪拌機上で60分後、樹脂を20mlのDMFで6回、30mlのDCMで2回洗浄する。
【0157】
ペプチドの切り離しおよび脱保護は、標準的な手順に従って行われる:樹脂を50mlのTFE/DCM(2/8)で180分間反応させる。ろ過後に溶媒を減圧して除去し、および保護基を、30mlのTFA/TIS/水(95/2.5/2.5)を用いた180分間の不活性雰囲気下での処理によって除去する。この溶液を300mlの冷エーテル中に注ぎ、沈澱をアセトニトリルに溶解し、およびペプチドをRP-HPLC(クロマシル(Kromasil)100C4 10μm、250x4.6mm)によって精製する。
【0158】
脱保護段階中に、タグのtert-ブチルエステル基もまた切り離し、ペプチドTag8-WETGLRLAPLを与える。
LC-MS(ESI):(M+H)+:1331
【0159】
実施例21:ペプチドのN末端への4-(ビス-tert-ブトキシカルボニルメチル-カルバモイル)-酪酸[TAG10b]のカップリング
実施例19、手順1に記載の通りの標準的な手順に従って、配列GDQYIQQAHRSHIを有するペプチド1mmolが、塩化2-クロロトリチル樹脂(200〜400メッシュ)上で調製されている。
【0160】
Tag10bをペプチドのN末端へカップリングするために、アミノ酸をカップリングするための手順が同様に適用される。5mmolのTag10b、7.5mmolのHOBTおよび10mmolのDIPEAを15mlのDMFに溶解する。5分後に5mmolのPyBOPおよび10mmolのDIPEAを加え、およびこの溶液を樹脂上に注ぐ。攪拌機上で60分後、樹脂を20mlのDMFで6回、30mlのDCMで2回洗浄する。
【0161】
ペプチドの切り離しおよび脱保護は、標準的な手順に従って行われる:樹脂を50mlのTFE/DCM(2/8)で180分間反応させる。ろ過後に溶媒を減圧して除去し、および保護基を、30mlのTFA/TIS/水(95/2.5/2.5)を用いた180分間の不活性雰囲気下での処理によって除去する。この溶液を300mlの冷エーテル中に注ぎ、沈澱をアセトニトリルに溶解し、およびペプチドをRP-HPLC(クロマシル(Kromasil)100C4 10μm、250x4.6mm)によって精製する。
【0162】
脱保護段階中に、タグのtert-ブチルエステル基もまた切り離し、ペプチドTag10-GDQYIQQAHRSHIを与える。
LC-MS(ESI):(M+H)+:1783
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1a】図1aは、5-アミノ-1,10−フェナントロリンで誘導体化された固相担体の例を示す。
【図1b】図1bは、固相担体、共有結合した5−アミノ-1,10−フェナントロリン金属キレートリガンドおよびキレート化Cu2+金属イオンを含む、活性化固相の例を示す。
【図1c】図1cは、ペプチド残基およびオリゴヒスチジン部分固定化部分を含み、前記固定化部分が、固相担体、共有結合した5−アミノ-1,10−フェナントロリン金属キレートリガンドおよびキレート化Cu2+金属イオンを含む活性化固相に共有結合している、結合ペプチドの例を示す。
【図2a】図2aでは、ペプチドの固定化部分がオリゴヒスチジン残基である例について、切り離しの原理が示される。
【図2b】図2bでは、ペプチドの固定化部分がオリゴヒスチジン残基である例について、切り離しの原理が示される。
【図3a】活性化固相への所定のペプチドの結合に対する競合剤濃度の作用の例を図3aに示し、図3aでは配位結合したペプチドの溶出のために競合剤の漸増濃度を用いた切り離しが用いられる。この過程は可逆的である。図3a:IL-2イムノマー(Immunomer)合成の原生成物の、金属アフィニティカラムでの精製。曲線は、5回の反復注入、および、N-メチルイミダゾールのグラジエント中の、結合した生成物の溶出を示す。
【図3b】IL-2イムノマー原生成物の精製前のUVパターンを示すクロマトグラム。これは、図3aで5回注入された生成物のクロマトグラフィー挙動を記録する。本生成物は強く凝集し、およびグラジエント全体にわたってカラムから不鮮明になる。このプロファイルは質量分析による適切な特徴づけができない。
【図3c】図3aで溶出した物質のクロマトグラフィー挙動を示すクロマトグラム。この物質は明瞭なクロマトグラフィー挙動を示し、凝集の無い単一物質として溶出した。質量分析は目的生成物の同一性を確認する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相担体、固相担体と共有結合した金属キレートリガンド、n=1〜3を有し前記金属キレートリガンドと配位結合した金属イオンMn+を含む活性化固相であって、固相ペプチド合成またはペプチド精製のためのペプチドの固定化部分の配位および可逆的結合のために配位部位を提供する前記活性化固相の使用。
【請求項2】
ペプチドが「伸長するペプチド」でありおよびペプチド伸長手順に供される、請求項1の使用。
【請求項3】
固相担体がシリカ、ガラスまたはセルロース、または、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂およびポリビニルアルコールから成る群から選択されるポリマーである、請求項1または2の使用。
【請求項4】
各金属キレートリガンドが、配位リガンド-金属結合を確立することができる少なくとも1つの窒素、酸素、リンまたは硫黄原子を含む、請求項1から3のいずれかの使用。
【請求項5】
各金属キレートリガンドが、アミノ、複素環式窒素、カルボキシ、ヒドロキシルおよびメルカプトから成る群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、請求項1から4のいずれかの使用。
【請求項6】
各金属キレートリガンドが、トリフェニルホスフィン部分、アミノプリン部分、好ましくは6-アミノプリン部分、フタロシアニン部分、1,10-フェナントロリン部分、好ましくは5−アミノ-1,10-フェナントロリン部分、テルピリジン部分、好ましくは4'-アミノ-[2,2';6',2'']テルピリジン部分、トリアザシクロノナン部分、好ましくは[1,4,7]トリアザシクロノナン部分およびテトラアザシクロドデカニル部分、好ましくは[1,4,7,10]テトラアザシクロドデカン部分から成る群から選択される少なくとも1つの部分を含む固相担体と共有結合している、請求項1から5のいずれかの使用。
【請求項7】
金属Mn+がMn2+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Fe2+、Fe3+およびランタノイドイオンから成る群から選択され、特に好ましいMn+がCu2+、Ni2+、Co2+、Zn2+、Mg2+である、請求項1から6のいずれかの使用。
【請求項8】
ペプチドの固定化部分が、固相担体、固相担体と共有結合した金属キレートリガンド、n=1〜3を有する前記金属キレートリガンドに対する金属イオンMn+を含む活性化固相の配位部位と共有結合し、前記活性化固相から競合リガンドの添加によって切り離される方法。
【請求項9】
競合リガンドが、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、アミノプリン、フェナントロリン、ビピリジン、テルピリジン、トリアザシクロノナン、テトラアザシクロドデカン、イミノジ酢酸部分、ニトリロトリ酢酸部分およびエチレンジアミンテトラ酢酸部分から成る群から選択される、キレート金属イオンをキレートする少なくとも1つの部分、好ましくは窒素含有部分を含む、請求項8の方法。
【請求項10】
ペプチドが、固定化部分を介して金属イオンへ結合した伸長するペプチドであり、その金属イオンが固相担体に結合した金属キレートリガンドへ結合しており、およびペプチド伸長手順に供される、請求項8または9の方法。
【請求項11】
モノマーまたはオリゴマーアミノ酸が、伸長するペプチドのCまたはN末端へ、メリフィールド型連続反応工程において付加される、請求項10の方法。
【請求項12】
ペプチドの固定化部分が少なくとも1つの金属イオン複合体化部分を含み、各前記部分が活性化固相の金属イオンと配位結合することができる少なくとも1つの窒素、酸素、リンまたは硫黄含有基を含む、請求項8から11のいずれかの方法。
【請求項13】
活性化固相の金属イオンと配位結合することができる窒素含有基が、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、メルカプト、イミダゾリル、N-メチルイミダゾリル、アミノプリニル部分、フェナントロリル部分、ピリジル部分、ビピリジル部分、テルピリジニル部分、トリアザシクロノナノニル部分、テトラアザシクロドデカニル部分、イミノジ酢酸部分、ニトリロトリ酢酸部分およびエチレンジアミンテトラ酢酸部分から成る群から選択される、請求項8から12のいずれかの方法。
【請求項14】
ペプチド鎖の固定化部分が、ペプチドのC末端および/または少なくとも1つのアミノ酸側鎖に位置する、請求項8から13のいずれかの方法。
【請求項15】
ペプチドのC末端にある固定化部位の少なくとも1つのアミノ酸が、1つ以上のアミノ酸によって延長され、それが検出系による検出を可能にする、請求項14の方法。
【請求項16】
ペプチドの固定化部分がN末端にて、特異的プロテアーゼのための認識部位を提供するアミノ酸配列によって延長される、請求項8から15のいずれかの方法。
【請求項17】
切り離し後に、競合リガンドを含むメリフィールド型連続反応工程の反応混合物を希釈することによってペプチドが活性化固相と再結合される、請求項8から16のいずれかの方法。
【請求項18】
固定化部分を含み、前記固定化部分が固相担体、固相担体と共有結合した金属キレートリガンド、n=1〜3を有する前記金属キレートリガンドに対する金属イオンMn+を含む活性化固相の配位部位と共有結合しており、保護基およびスカベンジャーといった残留物またはペプチド合成の望まれない副産物といった夾雑物を洗い去るために洗浄される、随意的に保護された、ペプチドの精製のための方法。
【請求項19】
(a)少なくとも1つのカオトロピック剤または変性剤へのペプチドの曝露、および
(b)カオトロピーを徐々に低下させおよび再折りたたみおよび二次および三次構造の再確立の再現性のある条件を提供するための、一連の溶媒へのその後の曝露
の段階を含む、ペプチドの固定化部分が活性化固相と配位結合および可逆的に結合し、および正しく折りたたまれたペプチド構造を再確立する、随意的に保護されたペプチドの誤って折りたたまれた構造を再折りたたみおよび/または分子間凝集物を凝集分解するための方法。
【請求項20】
ペプチドの二次および三次構造が、ペプチドを適当な薬剤で処理することによって、前記ペプチドの反応性側鎖間の共有結合によって維持される、活性化固相からのペプチドの切り離しの前の前記共有結合の生成を含む、請求項19の方法。
【請求項21】
共有結合が、ジスルフィド結合、アミド結合または安定な芳香族または脂肪族ヒドラゾンである、請求項20の方法。
【請求項22】
X=d-アラニンおよび(Ala=ベータ-アラニンである配列

HHHH-XX-TIVESCNRWITFAQSIISTLT-(Ala-G-G-(Ala-TKKTQLQLEHLLLDLQMCLNGINN-XX (I)

のペプチドの合成のための、システイン残基間のジスルフィド結合の生成を含み、そのようにして、Xおよび(Alaは上記で定義の通りである


を生じる、ペプチドの合成のための請求項8、18、19および20の方法。
【請求項23】
固定化部分を含み、好ましくは活性化固相の表面へのペプチドの配位および可逆的結合のための非天然アミノ酸から成り、固定化部分がペプチドのNまたはC末端および/または側鎖に位置し、少なくとも1つの金属イオン複合体化部分を含み、各前記部分がペプチド以外は少なくとも1つの窒素含有基を含み、前記金属イオン複合体化部分がヒスチジン残基2〜5個のアミノ酸配列であるペプチド。
【請求項24】
金属イオン複合体化基、好ましくは窒素含有基、がNまたはC末端または少なくとも1つのアミノ酸の側鎖の部分に固定され、およびアミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、メルカプト、イミダゾリル、N-メチルイミダゾリル、アミノプリニル部分、フェナントロリル部分、ピリジル部分、ビピリジル部分、テルピリジニル部分、トリアザシクロノナノニル部分およびテトラアザシクロドデカニル部分、またはその組み合わせから成る群から選択される、請求項23のペプチド。
【請求項25】
各固相の活性成分が、伸長するペプチド鎖の固定化部分に存在するキレート基を介した、活性化固相への伸長するペプチド鎖の非共有結合のための遊離の配位部位との金属キレート複合体によって形成される、活性化固相への伸長するペプチド鎖の非共有結合によるペプチドの固相合成のための方法。
【請求項26】
請求項1に記載の活性化固相によって特徴づけられ、活性化固相が金属イオンと金属-キレートリガンドとの間の複合体によって形成される活性成分を含み、そのリガンドは、直接にまたはリンカー分子を介して、固相と共有結合している、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ペプチド合成中の反復される合成サイクルのための完全に確立された金属複合体が、固相、金属-キレートリガンド、金属イオン(金属イオンは金属-キレートリガンドとペプチド鎖の固定化部分のキレート基との間に入る)および、反復合成サイクルのために段階的に伸長するペプチド鎖の固定化部分を形成するモノマーまたはオリゴマーアミノ酸のNまたはC末端位置および/または側鎖に存在するキレート基を含む、請求項25および/または26に記載の方法。
【請求項28】
金属-キレートリガンドに対する金属イオンの非共有および配位結合が、キレート基への結合の力よりも強い力を有する、請求項25から28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
金属複合体構造が、
a)固相へ共有結合によって固定され、およびN、O、Pおよび/またはS原子を介して金属イオンをキレートすることができる、金属-キレートリガンド、
b)金属イオン(Me[n+];nは1〜3の間、好ましくは2、金属-キレートリガンドによって錯体化される一方、遊離の配位部位は利用可能なままである、
c)キレート基を有しおよびしたがって、a)およびb)および請求項1〜4に記載される活性化固相にてMen+イオンとの部分的に飽和した金属-キレートリガンドの複合体によって提供される遊離の配位部位と複合体化することができ、それによってキレート基がN、O、Pおよび/またはS原子を介して金属イオンをキレートすることができ、およびそれによって少なくとも1つの、好ましくは1〜3個のキレート基が、伸長するペプチド鎖の結合のための安定な固定化部分を形成するために1つの側鎖中に存在しうる、天然に存在するかまたは化学修飾された、側鎖またはNまたはC末端修飾を含む単一またはオリゴマー天然または非天然アミノ酸
から成る、請求項25から28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
固相がアミノ-、複素環式窒素-、カルボキシ-、ヒドロキシル-、チオール-基または他の官能基から選択される化学官能基の存在によって特徴づけられ、その官能基についてそれ自体が公知のカップリング反応が存在し、それによって請求項25〜29に記載の金属-キレートリガンドで固相を共有結合により誘導体化するためにこれらの化学官能基およびカップリング反応が用いられる、請求項25から29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
金属-キレートリガンドが請求項30に記載の固相の表面での化学官能基への化学カップリングを可能にする官能基を含み、および同じ金属-キレートリガンドおよび請求項29に記載のアミノ酸側鎖のキレート基が、請求項5に記載の金属イオン(Men+)を錯体化することができ、アミノ-、複素環式窒素、アザ基、カルボキシ基、硫黄-またはリン含有部分から選択される1つ以上の、好ましくは1〜3個の官能基を含む、請求項25から30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
金属イオン(Men+)が、固相上の金属-キレートリガンドと錯体化し;これらの金属イオンがMn2+、Ni2+、Cu2+、Co2+またはZn2+、Ca2+、Fe2+、Fe3+またはランタノイドイオンから選択される、請求項25から31のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
連続反応が、請求項27に記載の完全に確立された金属複合体のCまたはN末端へ追加のモノマーまたはオリゴマーアミノ酸を結合するために用いられ;各サイクルで結合される適当に保護されたアミノ酸誘導体またはオリゴマー断片が任意の天然または非天然アミノ酸から自由に選択または構成されうる、請求項25から32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
伸長するペプチド鎖をその段階中に固相から競合によって切り離すために、競合キレート化剤がメリフィールド型反応工程のカップリング段階の試薬混合物へ添加され;適当な競合キレート剤は、活性化固相に存在する遊離の配位部位に対して伸長するペプチド鎖を固相へ固定するために用いられるモノマーまたはオリゴマーアミノ酸の側鎖の個々のキレート基とほぼ同じアフィニティを有し、競合キレート剤はカップリング段階の試薬混合物に可溶でありおよびカップリング段階の試薬混合物の成分と反応しないかまたは干渉しない、請求項25から33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
すすぎまたは洗浄といった以降の段階の前に、ペプチド鎖の活性化固相への固定化部分を形成するモノマーまたはオリゴマーアミノ酸を再結合するために、競合キレート剤を含むカップリング段階の反応混合物が、以後の洗浄段階の前に希釈される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項29に記載のキレート基を有する側鎖またはNまたはC末端部分を含むモノマーまたはオリゴマーアミノ酸を有する、切り離されおよび脱保護されたペプチド合成の原生成物が、請求項25〜32のいずれか1つに記載の固相と金属複合体を生じることができ、および
a)固相へ目的産物を再結合する条件下で請求項25〜32に記載の活性化固相へ原生成物の溶液を曝露することによって、および、保護基およびスカベンジャーといった残留物または望まれない副生成物といった夾雑物を過剰の溶媒で洗い去ることによって精製し、一方で、活性化固相への生成物の複合体化を選択的に維持し、およびさらに
b)結合した生成物を、たとえば尿素、ドデシル硫酸ナトリウムといった界面活性剤、高塩濃度、メルカプトエタノール、またはその他といったカオトロピック剤または変性剤へ曝露し、それによって、二次および三次構造の破壊によって特徴づけられる変性状態へ結合した生成物を移行させ、一方で固相への結合が維持されることによって、生成物の可能な望まれない誤って折りたたまれた構造および生成物分子の分子間凝集物を除去すること
によってさらに処理されうる、請求項25から35のいずれか1つに記載の方法。
【請求項37】
精製、結合および変性した産物が一連の溶媒に曝露され、一連の溶媒は各生成物が徐々にカオトロピーを低下させおよび結合した生成物分子の再折りたたみの再現性のある条件および二次および三次構造の再出現の調節につながるように設計および最適化され、一方で生成物分子を固相に結合したまま保つ、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
アミノ酸の側鎖間の共有結合,好ましくは遊離のスルフヒドリル基に由来するジスルフィド結合の形成、アミド結合の生成、または安定な芳香族または脂肪族ヒドラゾンの生成が、固相に結合した再折りたたみされた生成物に試薬混合物を通すことによって達成される、請求項36および/または 37に記載の方法。
【請求項39】
固相が、シリカ、セルロースから、またはポリマーから、好ましくはジビニルベンゼン、クロロトリチル樹脂と架橋したポリスチレン樹脂から、誘導体化(好ましくはカルボキシル化)メラミン粒子から、または誘導体化(好ましくはカルボキシル化)ポリビニルアルコールポリマー担体から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
樹脂マトリクスが強磁性粒子を含み、および磁性粒子分離技術の適用を可能にする、請求項30および/または39に記載の方法。
【請求項41】
モノマーまたはオリゴマーアミノ酸が、イミダゾール側鎖、好ましくは6個以上のヒスチジン残基、2個以上のヒスチジン残基;より好ましくは、6〜10個のヒスチジン残基を含む、請求項25から33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
使用したモノマーまたはオリゴマーアミノ酸が、N末端にて特異的プロテアーゼ認識部位を提供する短いアミノ酸配列によって延長される、請求項29および41に記載の方法。
【請求項43】
修飾または被修飾(請求項41に記載)モノマーまたはオリゴマーアミノ酸がC末端にて、アビジン様相互作用による検出を可能にするために結合されるビオチニル化アミノ酸といった検出系による検出を可能にする1つ以上のアミノ酸によって延長される、請求項29、41および/または42のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
競合キレート剤が、配位イミダゾリル、N-メチルイミダゾリル、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、アミノプリン、フェナントロリン、ビピリジル、テルピリジニル、トリアザシクロノナンまたはテトラアザシクロドデカン由来部分のための電子対を有する金属-キレート部分を含む構造部分を含む、請求項34および/または35、および/または41〜43のいずれか1つに記載の方法。
【請求項45】
キレートリガンドが、トリフェニルホスフィン、6-アミノプリン、フタロシアニンといった配位結合のための電子対を有する構造部分を含む、請求項25から32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項46】
リガンドが5−アミノ-1,10-フェナントロリンまたはアミノ-テルピリジンまたはトリアザシクロノナンまたはテトラアザシクロドデカンまたはその誘導体である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
アミノ酸の側鎖のキレート基が、イミダゾール、アミノ-、ヒドロキシル-、カルボキシ-、チオール-、ニトリロトリ酢酸-、イミノジ酢酸-、フェナントロリン-、ピリジン-、ビピリジン-、テルピリジン、トリアザシクロノナン、テトラアザシクロドデカンまたはプリン-部分、または、請求項25〜32のいずれか1つに記載される金属複合体を依然として形成することができるこれらの部分の誘導体から選択される、請求項25から46のいずれか1つに記載の方法。
【請求項48】
方法が完全に自動化され合成ロボット装置に適合する、および合成サイクル中の液相と固相の分離がそれ自体が公知の方法によって、好ましくはふるい、サイズを基礎とする分離、遠心分離または磁性粒子分離技術によって達成される、請求項25から47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項49】
請求項25〜48のいずれか1つに記載のペプチドの固相合成を実施するための装置。
【請求項50】
請求項25〜49のいずれかに記載の伸長するペプチド鎖の活性化固相への配位固定化のための、好ましくは天然および/または非天然、好ましくは非天然アミノ酸から成るモノマーまたはオリゴマーペプチドである、固定化部分。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公表番号】特表2007−528870(P2007−528870A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529910(P2006−529910)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005568
【国際公開番号】WO2004/104023
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(503470263)アプラーゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【Fターム(参考)】